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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】医薬化合物のアミンプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
   C07D 277/82 20060101AFI20220725BHJP
   C07F 9/6541 20060101ALI20220725BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220725BHJP
   A61K 31/428 20060101ALI20220725BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20220725BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20220725BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220725BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20220725BHJP
   C07D 417/12 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
C07D277/82 CSP
C07F9/6541
A61P43/00 123
A61K31/428
A61K47/54
A61K47/59
A61P21/00
A61P25/02
A61P43/00 111
C07D417/12
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018526135
(86)(22)【出願日】2016-11-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-24
(86)【国際出願番号】 US2016062400
(87)【国際公開番号】W WO2017087594
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2019-11-15
(31)【優先権主張番号】62/257,533
(32)【優先日】2015-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517178900
【氏名又は名称】バイオヘイブン・ファーマシューティカル・ホールディング・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biohaven Pharmaceutical Holding Company Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・マーファット
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-337589(JP,A)
【文献】特表2015-524394(JP,A)
【文献】特表2003-534312(JP,A)
【文献】特表2011-522838(JP,A)
【文献】特表2006-510618(JP,A)
【文献】特表2009-504677(JP,A)
【文献】特表2008-518970(JP,A)
【文献】特表2010-539191(JP,A)
【文献】特表2015-521598(JP,A)
【文献】特表2014-533718(JP,A)
【文献】国際公開第2004/052841(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/109767(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0111932(US,A1)
【文献】HOLGER STARK,ENZYME-CATALYZED PRODRUG APPROACHES FOR THE HISTAMINE H3-RECEPTOR AGONIST (R)-α-METHYLHISTAMINE,BIOORGANIC & MEDICINAL CHEMISTRY,2000年12月15日,VOL:9,PAGE(S):191 - 198,https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0968089600002376?via%3Dihub
【文献】JEFFREY J. HALE,PHOSPHORYLATED MORPHOLINE ACETAL HUMAN NEUROKININ-1 RECEPTOR ANTAGONISTS AS WATER-SOLUBLE PRODRUGS,JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,2000年02月25日,VOL:43,PAGE(S):1234 - 1241,http://dx.doi.org/10.1021/jm990617v
【文献】J. Med. Chem.,1988年,31,318-322
【文献】Pharm. Res.,1993年,10,1350-1355
【文献】Bioorg. Med. Chem. Lett.,2013年,23,3028-3033
【文献】J. Heterocyclic Chem.,1985年,22,429-432
【文献】Bioorg. Med. Chem. Lett.,2005年,15,709-713
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 277/82
C07F 9/6541
A61P 43/00
A61K 31/428
A61K 47/54
A61K 47/59
A61P 21/00
A61P 25/02
C07D 417/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のプロドラッグ付加部分をリルゾール分子に結合する工程を含む、リルゾールプロドラッグの製造法。
【化1】
〔式中、
Rはプロドラッグ付加部分であり、
プロドラッグ付加部分はリルゾール分子のアミン部分に結合し、独立して、
【化2】
【化3】
から成る群から選択され、ここでリルゾールプロドラッグが
【化4】
から成る群から選択され、ここで
式中、
はHまたはアルキルであり;
は置換または非置換であるアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;
はH、金属、Rまたは置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンであり;
はH、金属、アンモニウム塩またはアルキルであり;
は置換または非置換天然アミノ酸であり;
はアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;
Yは(CH)P(=O)(OR)であり;
kは1または2であり、mは2~22であり、または(CH)は飽和、不飽和もしくは共役炭化水素であり;
nは0~2であり;
mは2~12であり
金属はNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnであり、そして
R’またはR’’は環状または非環状アルキルであり、
ここで、「置換」とは水素原子をそれぞれ置換する同一または異なる1以上の置換基をいい、ここで1以上の置換基は、F、Cl、Br、I、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、オキソ、チオ、イミノ、ホルミル、カルバミド、カルバミル、カルボキシル、チオウレイド、チオシアナト、スルホアミド、スルホニルアルキル、スルホニルアリール、アルキル、アルケニル、アルコキシ、メルカプトアルコキシ、アリール、ヘテロアリールおよびシクリルから選択され、ここでアルキル、アルケニル、アルキルオキシ、アリール、ヘテロアリールおよびシクリルは、場合により、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、メルカプト、シアノ、ニトロ、オキソ、チオキソまたはイミノにより置換されていてよい〕
【請求項2】
次の
【化5】
〔式中、
はHまたはアルキルであり;
は置換または非置換であるアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;
はH、金属、Rまたは置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンであり;
はH、金属、アンモニウム塩またはアルキルであり;
はアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;
kは1または2であり、mは2~22であり、または(CH)は飽和、不飽和もしくは共役炭化水素であり;
N’は置換または非置換である一級、二級および三級アミン、または金属塩であり;
YはPOH、CHPOHまたはそれらの塩であり;
金属はNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnであり;そして
R’またはR’’は環状または非環状アルキルであり、
ここで、「置換」とは水素原子をそれぞれ置換する同一または異なる1以上の置換基をいい、ここで1以上の置換基は、F、Cl、Br、I、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、オキソ、チオ、イミノ、ホルミル、カルバミド、カルバミル、カルボキシル、チオウレイド、チオシアナト、スルホアミド、スルホニルアルキル、スルホニルアリール、アルキル、アルケニル、アルコキシ、メルカプトアルコキシ、アリール、ヘテロアリールおよびシクリルから選択され、ここでアルキル、アルケニル、アルキルオキシ、アリール、ヘテロアリールおよびシクリルは、場合により、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、メルカプト、シアノ、ニトロ、オキソ、チオキソまたはイミノにより置換されていてよい〕
から選択される構造を有する、リルゾールプロドラッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2015年11月19日に出願された米国仮出願番号第62/257,533号の利益および優先権を主張するものであり、その開示はその全体を参照により本明細書に包含させる
【0002】
技術分野
本発明はアミンプロドラッグおよびその合成法に関する。アミンプロドラッグは薬物分子および少なくとも1以上のプロドラッグ付加(appendage)部分を含む。アミンプロドラッグの合成法は薬物分子と少なくとも1以上のプロドラッグ付加部分をカップリングさせる工程を含む。
【背景技術】
【0003】
新規プロドラッグの発見は、現在の医薬品産業において不可欠な部分である。プロドラッグはある薬物の別の形態であり、該薬物の吸収、分布、代謝および排出(ADME)特性を改善するために代わりに使用される。プロドラッグは不活性形態または低活性形態で投与され、続いて対象において加水分解または他の化学反応のような通常の代謝過程によりその活性薬物に変換される。
【0004】
商業的に入手可能なプロドラッグ製品の中で、カペシタビン(ゼローダ)、ドカルパミン、プルリフロキサシン、ギャバペンチンエンカブリルおよびアルトロフロキサシンのようなアミンプロドラッグは上市が成功している。一級または二級アミンプロドラッグが実質的に製造されており、さらに三級アミンまたは四級アミンのプロドラッグもまた製造され、同様に臨床開発に進んでいる(Prodrugs of Amines, Ana L. Simplicio et al, Molecules, 2008,13 519-547; Prodrugs of Amines, Jeffrey Krise et al, Prodrugs, Challenges and Rewards Part 1 and Part 2, Springer new York, 2007; Drug Synthesis II, presentation by Tapio Nevalainen, University of Eastern Finland, 2012)。
【0005】
したがって、他のアミンプロドラッグは薬剤開発の潜在的な候補物質である。
【発明の概要】
【0006】
本発明はアミンプロドラッグおよびその合成法を提供する。
【0007】
ある態様において、本発明は薬剤分子および少なくとも1以上のプロドラッグ付加部分を含むプロドラッグを提供する。プロドラッグは以下のとおり形成され得る。
【化1】
【0008】
特に、プロドラッグ付加部分は薬剤分子のアミンと結合され得る。本発明のプロドラッグにおいて、iは1または2でよく、jは0または1でよい。例えば、iは1であり、jは1である;またはiは2であり、jは0である。
【0009】
プロドラッグ付加部分は独立して、
【化2】
【化3】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルでよく;
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルでよく、
はH、金属、Rまたは置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンでよく;
はH、金属、アンモニウム塩またはアルキルでよく;
は置換または非置換天然アミノ酸でよく;
またはRはH、アルキルまたはアリールでよく;またはNRまたはNRはアミノ酸でよく;
XはCまたはOでよく;
kは1または2でよく、mは2~22でよく、または(CH)は飽和、不飽和または共役炭化水素でよく;
nは0~2でよく;そして
金属はNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnである〕
から成る群から選択され得る。例示的な実施態様において、薬剤分子はリルゾールであり得る。
【0010】
別の態様において、本発明はプロドラッグの製造法を提供する。
【0011】
ある実施態様において、リルゾールプロドラッグの製造法が提供される。該方法は、以下に記載のとおり1以上のプロドラッグ付加部分をリルゾール分子にカップリングさせる工程を含む。
【化4】
【0012】
特に、iが1または2であり得て、jが0または1であり得る場合、プロドラッグ付加部分はリルゾール分子のアミンに結合し得る。例えば、iは1であり、jは1であり;またはiは2であり、jは0である。
【0013】
プロドラッグ付加部分は独立して、
【化5】
【化6】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルでよく;
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルでよく、
はH、金属、Rまたは置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンでよく;
はH、金属、アンモニウム塩またはアルキルでよく;
は置換または非置換天然アミノ酸でよく;
またはRはH、アルキルまたはアリールでよく;またはNRまたはNRはアミノ酸でよく;
XはCまたはOでよく;
kは1または2でよく、mは2~22でよく、または(CH)は飽和、不飽和または共役炭化水素でよく;
nは0~2でよく;そして
金属はNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnでよい〕
から成る群から選択され得る。
【0014】
例示的なリルゾールプロドラッグは、
【化7】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルでよく;
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルでよく;
はH、金属、Rまたは置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンでよく;
はH、金属、アンモニウム塩またはアルキルでよく;
はアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルでよく;
N’は置換または非置換であり得る一級、二級および三級アミン、または金属塩でよく;そして
YはPOH、CHPOHまたはそれらの塩でよい〕
であり得る。特に、金属はNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnでよい。
【0015】
本発明はまた、リルゾールプロドラッグの合成法を提供する。
【0016】
ある実施態様において、該方法はリルゾールと
【化8】
を反応させて
【化9】
を製造する工程を含む。
【0017】
該方法はさらに、
【化10】

【化11】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルでよく;
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルでよく;
はH、金属、アンモニウム塩またはアルキルでよく;
kは1または2でよく、mは2~22でよく、または(CH)は飽和、不飽和または共役炭化水素でよく;
Bcは保護基でよく;
Y’はH、POBc、CHPOBc、MPOBcもしくはそれらの塩またはN(R) であり、ここでRaはHまたはアルキルであり;
MはNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnのような金属でよく;そして
R’またはR’’は環状または非環状アルキルでよい〕
から成る群から選択される化合物と反応させる工程を含む。
【0018】
ある実施態様において、リルゾールプロドラッグの合成法はリルゾールをCO、CsCOと反応させ、得られた化合物を
【化12】
〔式中、Lgは脱離基である〕
と反応させる工程を含む。
【0019】
ある実施態様において、リルゾールプロドラッグの合成法は、リルゾールを
【化13】
〔式中、Lgは脱離基であり、
はHまたはC-Cアルキルでよい〕
と反応させる工程を含む。
【0020】
ある実施態様において、リルゾールプロドラッグの合成法は、リルゾールを
【化14】
〔式中、Lgは脱離基である〕
と反応させる工程を含む。
【0021】
ある実施態様において、リルゾールプロドラッグの合成法は、リルゾールを
【化15】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルでよく;
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルでよく;そして
はH、金属、Rまたは置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンでよい〕
と反応させる工程を含む。
【0022】
ある実施態様において、リルゾールプロドラッグの合成法は、リルゾールを((PhCHO)PO)Oおよびナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS)と反応させ、得られた化合物をその後水素と反応させる工程を含む。
【化16】
〔式中、
はアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルでよく;そして
N’は置換または非置換であり得る一級、二級および三級アミン、または金属塩でよい〕
【0023】
本発明の他の態様を以下に開示する。
【0024】
本発明の詳細な説明
以下は、本発明の実施において当業者を補助するために提供される詳細な説明である。当業者は本発明の概念および範囲を逸脱することなく、本明細書に記載の実施態様においいて修飾および変更を実施し得る。特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明の属する技術分野の当業者により一般的に理解されるのと同一の意義を有する。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施態様を説明するためのみのものであり、限定することを意図しない。本明細書で言及する全ての公報、特許出願、特許、図および他の引用文献は、それらの全体を参照することにより明示的に包含させる。
【0025】
以下の用語は本発明を説明するために使用される。用語が本明細書において具体的に定義されない場合、その用語は、その用語を本発明を説明する際に使用される文脈に適用することにより、当業者により、当分野で認識される意味を与えられる。
【0026】
本発明の説明および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「ある(a)」、「ある(an)」および「その(the)」は、文脈から異なる解釈が明確に示されない限り、相互交換可能に使用され、複数形もまた含み、それぞれの意味に入ることを意図する。また、本明細書で使用される「および/または」とは、列挙された項目の1以上の任意のおよび全ての可能性のある組合せ、ならびに選択肢(「または」)と解釈されるときは組合せの欠如をいい、包含する。特に明記されない限り、単数形は複数形を含むことを意図し、同様に本明細書において適宜相互交換可能に使用され、それぞれの意味を包含する。
【0027】
本明細書で使用される用語「プロドラッグ」は、別の形態または低活性形態で投与され得る薬物の前駆物質である。プロドラッグは加水分解または他の代謝経路により生理学的環境で活性薬物形態に変換され得る。プロドラッグは薬物の治療効果を向上させるための改善した生理化学的または生理学的特性を提供し得る。
【0028】
本明細書で使用される用語「プロドラッグ付加部分」は、薬物分子に共有結合または非共有結合し、それにより薬物のプロドラッグ形態を生成する化学基または部分をいう。プロドラッグ付加部分は分子内転位または開裂により薬剤分子の薬物動態コアまたは性質を変化させないことがある。特定の実施態様において、限定されないが、多数のプロドラッグ付加部分は薬剤分子に結合し得る。さらにプロドラッグ付加部分は、限定されないが、1以上の薬剤分子に結合し得る。
【0029】
本明細書で使用される用語「リルゾール」は、一般的に筋萎縮性側索硬化症(ALS)を処置するために使用される薬物、6-(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾール-2-アミンをいう。これはまた、RILUTEK(登録商標)として市販されている。
【化17】
【0030】
本明細書で使用される用語「脱離基」または「LG」は、当該基に関与する化学反応の過程で脱離する任意の基をいい、限定されないが、例えばハロゲン基、ブロシレート基、メシレート基、トシレート基、トリフレート基、p-ニトロベンゾエート基、ホスホネート基を含む。
【0031】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、1~18個(例えば、C-C18(両端を含む);および任意のその部分範囲)の炭素原子を含む直鎖または分岐炭化水素基をいう。用語「低級アルキル」は、C-Cアルキル鎖をいう。アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル(n-ペンチル、sec-ペンチル、tert-ペンチル)およびピバロイルを含む。アルキル基は1以上の置換基で場合により置換されていてよい。
【0032】
用語「シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルのような3~12個の炭素原子の非芳香族性単環式または多環式環系を示し、多環式シクロアルキル基の例は、パーヒドロナフチル、アダマンチルおよびノルボロニル基、架橋環式基またはスピロ二環式基、例えばスピロ(4,4)ノン-2-イルを含む。
【0033】
本明細書で使用する用語「ハロゲン」または「ハライド」は、-F、-Cl、-Brまたは-Iを意味する。
【0034】
本明細書で使用される用語「ハロアルキル」は1以上(全てを含む)の水素基がハロ基により置換されたアルキル基を意味し、ここで各ハロ基は独立して-F、-Cl、-Brおよび-Iから選択される。用語「ハロメチル」は1~3個の水素基がハロ基により置換されたメチルを意味する。代表的なハロアルキル基はトリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ブロモメチル、1,2-ジクロロエチル、4-ヨードブチル、2-フルオロペンチルなどを含む。用語「パーハロアルキル」は、全ての水素原子がハロ基により置換されたアルキル基(例えば、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル)をいう。特定の実施態様において、ハロアルキルは活性化アルキルであり得る。
【0035】
用語「シクロアルキル」は、少なくとも1つの非芳香環を有する3~8員単環式または7~14員二環式環系炭化水素をいう。シクロアルキル基は1以上の置換基で場合により置換されていてよい。ある実施態様において、シクロアルキル基の各環の0個、1個、2個、3個または4個の原子は置換基により置換されていてよい。シクロアルキル基の代表的な例はシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロブチル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルおよびシクロデシルを含む。
【0036】
用語「アリール」は、単環式、二環式または三環式芳香環系の炭化水素をいう。アリール基は1以上の置換基で場合により置換されていてよいある実施態様において、アリール基の各環の0個、1個、2個、3個、4個、5個または6個の原子は置換基により置換されていてよい。アリール基の例はフェニル、ナフチル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニルなどを含む。
【0037】
用語「ヘテロアリール」は、単環式ならば1~4個の環ヘテロ原子、二環式ならば1~6個のヘテロ原子、または三環式ならば1~9個のヘテロ原子を有し、前記ヘテロ原子がO、N、またはSから選択され、残りの環原子が炭素(特に断らない限り、適切な水素原子を有する)である芳香族性単環式、二環式または三環式環系をいう。ヘテロアリール基は1以上の置換基で場合により置換されていてよい。ある実施態様において、ヘテロアリール基の各環の0個、1個、2個、3個または4個の原子は置換基により置換されていてよい。ヘテロアリール基の例はピリジル、1-オキソ-ピリジル、フラニル、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、ベンゾ[1,4]ジオキシニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、キノリニル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、トリアゾリル、チアジアゾリル、イソキノリニル、インダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフリル、インドリジニル、イミダゾピリジル、テトラゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、インドリル、テトラヒドロインドリル、アザインドリル、イミダゾピリジル、キナゾリニル、プリニル、ピロロ[2,3]ピリミジニル、ピラゾロ[3,4]ピリミジニル、およびベンゾ(b)チエニル、3H-チアゾロ[2,3-c][1,2,4]チアジアゾリル、イミダゾ[1,2-d]-1,2,4-チアジアゾリル、イミダゾ[2,1-b]-1,3,4-チアジアゾリル、1H,2H-フロ[3,4-d]-1,2,3-チアジアゾリル、1H-ピラゾロ[5,1-c]-1,2,4-トリアゾリル、ピロロ[3,4-d]-1,2,3-トリアゾリル、シクロペンタトリアゾリル、3H-ピロロ[3,4-c]イソオキサゾリル、1H,3H-ピロロ[1,2-c]オキサゾリル、ピロロ[2,1b]オキサゾリルなどを含む。
【0038】
本明細書で使用される用語「置換基(substituent)」または「置換された(substituted)」は、化合物上の水素基または基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクリル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクリル基)が化合物の安定性に実質的に悪影響を及ぼさない、任意の望ましい基で置換されることをいう。ある実施態様において、望ましい置換基は化合物の活性に悪影響を与えない置換基である。用語「置換された」とは、水素原子をそれぞれ置換する1以上の置換基(同一であっても異なってもよい)をいう。置換基の例は、限定されないが、ハロゲン(F、Cl、BrまたはI)、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、オキソ(すなわち、カルボニル)、チオ、イミノ、ホルミル、カルバミド、カルバミル、カルボキシル、チオウレイド、チオシアナト、スルホアミド、スルホニルアルキル、スルホニルアリール、アルキル、アルケニル、アルコキシ、メルカプトアルコキシ、アリール、ヘテロアリール、シクリル、ヘテロシクリルを含み、ここでアルキル、アルケニル、アルキルオキシ、アリール、ヘテロアリール、シクリルおよびヘテロシクリルはアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、メルカプト、シアノ、ニトロ、オキソ(=O)、チオキソ(=S)またはイミノ(=NR)で場合により置換されていてよく、ここでRは本明細書で定義される。いずれかの基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロシクロアルケニル)上の置換基はその基の任意の原子上にあり、ここで置換され得るいずれかの基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクリル、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロシクリル)は、水素原子をそれぞれ置換する1以上の置換基(同一であっても異なってもよい)で場合により置換されていてよい。適当な置換基の例は、限定されないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクリル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、ヒドロキシルアルキル、オキソ(すなわち、カルボニル)、カルボキシル、ホルミル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールオキシカルボニル、チオ、メルカプト、メルカプトアルキル、アリールスルホニル、アミノ、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノカルボニルまたはアルコキシカルボニルアミノ;アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルカルボニルまたはアリールアミノ置換アリール;アリールアルキルアミノ、アラルキルアミノカルボニル、アミド、アルキルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、イミノ、カルバミド、カルバミル、チオウレイド、チオシアナト、スルホアミド、スルホニルアルキル、スルホニルアリールまたはメルカプトアルコキシを含む。
【0039】
アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクリル、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロシクリル上のさらなる適切な置換基は、限定されないが、ハロゲン、CN、NO、OR15、SR15、S(O)OR15、NR1516、C-Cパーフルオロアルキル、C-Cパーフルオロアルコキシ、1,2-メチレンジオキシ、(=O)、(=S)、(=NR15)、C(O)OR15、C(O)NR1516、OC(O)NR1516、NR15C(O)NR1516、C(NR16)NR1516、NR15C(NR16)NR1516、S(O)NR1516、R17、C(O)H、C(O)R17、NR15C(O)R17、Si(R15)、OSi(R15)、Si(OH)15、P(O)(OR15)、S(O)R17またはS(O)17を含む。各R15は独立して、水素、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリールで場合により置換されていてよいC-Cアルキルである。各R16は独立して、水素、C-Cシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C-CアルキルもしくはC-Cシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルアリールまたはヘテロアリールで置換されたC-Cアルキルである。各R17は独立して、C-Cシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C-CアルキルまたはC-Cシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルもしくはヘテロアリールで置換されたC-Cアルキルである。各R15、R16およびR17における各C-Cシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリールおよびC-Cアルキルは、ハロゲン、CN、C-Cアルキル、OH、C-Cアルコキシ、COOH、C(O)OC-Cアルキル、NH、C-CアルキルアミノまたはC-Cジアルキルアミノで場合により置換されていてよい。
【0040】
本明細書における可変基のあらゆる定義における化学基の一覧の記載は、その可変基の任意の単一の基または列記された基の組合せとしての定義を含む。本明細書における可変基についての実施形態の記載は、任意の単一の実施態様または任意の他の実施態様もしくはその一部との組合せとしてのその実施形態を含む。
【0041】
本発明で開示される化合物は商業的に入手可能であるか、または本明細書で説明される試薬および技術を含む、当分野で知られる試薬および技術を用いて合成できる。合成経路において使用される化学物質は、例えば溶媒、試薬、触媒ならびに保護および脱保護試薬を含み得る。上記の方法はまた、最終的に本明細書に記載の化合物の合成を可能にするために適切な保護基を付加または除去するための工程を、本明細書に具体的に記載される工程の前または後にさらに含む。さらに、種々の合成工程は、所望の化合物を得るために別の順序または順番で実施され得る。適切な化合物の合成に有用な合成化学変換および保護基法(保護および脱保護)は当分野で知られており、例えば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley and Sons (1999); L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994); and L. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)およびその後続版に記載されている合成化学変換および保護基法を含む。
【0042】
プロドラッグ付加部分
ある態様において、本発明はアミンプロドラッグの新規なデザインを提供する。特に、プロドラッグは少なくとも1つのアミン基および少なくとも1つの親薬物分子のアミンに結合したプロドラッグ付加部分を有する親薬物分子を含み得る。
【化18】
〔式中、
Rはプロドラッグ付加部分であり、
iは1または2でよく、jは0または1でよい〕。
例えば、iは1であり、jは1であり;またはiは2であり、jは0である。
【0043】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化19】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルでよく;
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルでよい〕
である。
【0044】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化20】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルでよく;そして
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルでよい〕
である。
【0045】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化21】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルでよく;
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルでよく;そして
はH、金属、Rまたは置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンでよい。〕
である。金属はNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnでよい、
【0046】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化22】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルでよく;
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルでよく;そして
はH、金属、Rまたは置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンでよく;そして
またはRはH、アルキルまたはアリールでよいか、またはNRまたはNRはアミノ酸でよい。
金属はNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnでよい〕
である。
【0047】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化23】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルでよく;
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルでよく;そして
XはCまたはOである〕
である。
【0048】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化24】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルでよく;
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルでよく;そして
はH、金属、Rまたは置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンでよく;そして
またはRはH、アルキルまたはアリールでよいか、またはNRまたはNRはアミノ酸でよい。
nは0~2でよい〕
である。
【0049】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化25】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルでよく;そして
はH、金属、アンモニウム塩またはアルキルでよく;
特に、金属はNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnでよい〕
である。
【0050】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化26】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルでよく;そして
はH、金属、アンモニウム塩またはアルキルでよく;
kは1または2でよく、mは2~22でよく、または(CH)は飽和、不飽和または共役炭化水素でよい。〕
である。特に、金属はNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnでよい。
【0051】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化27】
〔式中、RはH、アルキルまたは特にC-Cアルキルでよい〕
である。
【0052】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化28】
である。
【0053】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化29】
である。
【0054】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化30】
である。
【0055】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化31】
〔式中、
はH、金属、置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルでよいか、または置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンでよく;
またはRはH、アルキルまたはアリールでよいか、またはNRもしくはNRはアミノ酸でよい〕
である。
【0056】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化32】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルでよく;そして
は置換または非置換天然アミノ酸でよい〕
である。特定の実施態様において、iは1であり、jは1である。
【0057】
特定の実施態様において、iは2であり、jは0である。
【0058】
例示的な実施態様において、アミンプロドラッグは以下のとおり形成されるN-アシルオキシカルバメートプロドラッグであり得る。
【化33】
〔式中、
はHまたはCHであり;
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルである〕
【0059】
特定の例示的な実施態様において、プロドラッグのアミンが一級または二級アミンであるとき、N-アシルオキシカルバメートプロドラッグそれ自体は、OからNへの分子内アシル移動により自然にN-アシル化合物へさらに変換され得る。スキームAに示すとおり、N-アシル化合物が結果として遊離され得て、安定なカルバメート化合物を実質的に提供し得る。
【化34】
【0060】
特定の例示的な実施態様において、アミンプロドラッグは改善された生理化学的安定性を有し得て、それにより単離、結晶化度、固体状態安定性、溶解度、製剤などにおいて利益を与える。
【0061】
特定の例示的な実施態様において、プロドラッグが対象により取り込まれたときおよび摂取されたとき、アミンプロドラッグは改善された生理学的安定性を有し得る。例えば、N-アシルオキシカルバメート薬物は悪影響を与えることなく対象においてより有効な薬物形態に変換または遊離され得る。
【0062】
特定の例示的な実施態様において、本発明のアミンプロドラッグは特定の酵素反応に対する特異性を有し得る。さらに特定の実施態様において、プロドラッグは酵素反応または生化学的反応により活性薬物を遊離する代謝経路のもとに存在し得る。
【0063】
特定の実施態様において、本発明のアミンプロドラッグは標的細胞に対して透過性である改善された細胞を提供し得る。
【0064】
特定の実施態様において、アミンプロドラッグの付加部分は改善された生理化学的安定性、改善された生理学的安定性または特定の酵素に対する特異性を提供し得る。
【0065】
リルゾールプロドラッグ
ある態様において、本発明はリルゾールプロドラッグを提供する。リルゾールプロドラッグはリルゾールおよびリルゾールの芳香族アミンでそのアミンに結合した少なくとも1以上のプロドラッグ付加部分を含み得る。
【化35】
【0066】
ある実施態様において、リルゾールは1以上のプロドラッグ付加部分(R)と結合してリルゾールプロドラッグを形成し得る。特定の実施態様において、iは1または2であり、jは0または1である。例えば、iは1であり、jは1であり;またはiは2であり、jは0である。
【0067】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化36】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルである〕
である。
【0068】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化37】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;そして
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルである〕
である。
【0069】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化38】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;そして
はH、金属、Rまたは置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンである〕
である。
【0070】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化39】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;
置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;そして
はH、金属、Rまたは置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンであり;そして
またはRはH、アルキルまたはアリールであるか、またはNRまたはNRはアミノ酸である〕
である。
【0071】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化40】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;
置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;そして
XはCまたはOである〕
である。
【0072】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化41】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;
置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;そして
はH、金属、Rまたは置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンであり;そして
またはRはH、アルキルまたはアリールであるか、またはNRまたはNRはアミノ酸である〕
である。
【0073】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化42】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;そして
はH、金属、アンモニウム塩またはアルキルである〕
である。特に、金属はNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnである。
【0074】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化43】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;そして
はH、金属、アンモニウム塩またはアルキルであり;
kは1または2であり、mは2~22であるか、または(CH)は飽和、不飽和もしくは共役炭化水素である〕
である。
特に、金属はNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnである。
【0075】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化44】
〔式中、RはH、アルキルまたは特にC-Cアルキルである〕
である。特定の例示的な実施態様において、Rは
【化45】
である。
【0076】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化46】
である。
【0077】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化47】
である。
【0078】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化48】
〔式中、
はH、金属、置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであるか、または置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンであり;RまたはRはH、アルキル、アリールであるか、またはNRまたはNRはアミノ酸である〕
である。
【0079】
特定の例示的な実施態様において、Rは
【化49】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;そして
は置換または非置換天然アミノ酸である〕
である。
【0080】
特定の実施態様において、iは1であり、jは1である。
【0081】
特定の実施態様において、iは2であり、jは0である。
【0082】
例示的なリルゾールプロドラッグは、限定されないが、以下のものであり得る。
【化50】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;
はH、金属、Rまたは置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンであり;
はH、金属、アンモニウム塩またはアルキルであり;
はアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;
kは1または2であり、mは2~22であるか、または(CH)は飽和、不飽和もしくは共役炭化水素であり;
N’は置換または非置換であり得る一級、二級および三級アミン、または金属塩であり;そして
YはPOH、CHPOHまたはそれらの塩である〕
である。特に、金属はNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnである。
【0083】
リルゾールプロドラッグの合成
ある態様において、リルゾールプロドラッグは中間体形態を経て合成され得る。
【0084】
ある実施態様において、リルゾールは塩基性条件で活性化され、メチルカルボキシル基との反応により中間体を生成する。
【化51】
【0085】
中間体はハライドのような良好な脱離基を含み得て、他の求核試薬からの求核攻撃の影響を受けることがある。例示的な脱離基は、限定されないが、Cl、BrまたはIであり得る。
【0086】
例示的な反応は以下のとおり記載できる。
【化52】
【0087】
ある例示的な実施態様において、リルゾールプロドラッグは以下のスキーム1により形成され得る。スキーム1において、化合物1はカルボキシレート金属と反応して化合物2を生成する。
【化53】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;そして
XはNa、K、Li、AgまたはZnである〕
さらに、金属はNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnである。
【0088】
ある例示的な実施態様において、リルゾールプロドラッグは以下のスキーム2により形成され得る。スキーム2において、化合物1は塩基性条件下でフェニルカルボキシレートと反応して化合物3を生成する。
【化54】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;
YはPOH、CHPOHまたはそれらの塩であり;
Y’はH、POBc、CHPOBc、MPOBcまたはそれらの塩であるか、またはRがHまたはアルキルであるN(R) である〕
【0089】
ある例示的な実施態様において、リルゾールプロドラッグは以下のスキーム3により形成され得る。スキーム3において、化合物1は保護されたホスフェートと反応し、得られた化合物は脱保護されて化合物3を生成する。
【化55】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;
は置換または非置換アルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;
はH、金属、Rまたは置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンであり;そして
Bcは保護基である。
MはNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnを含む金属である〕
【0090】
ある例示的な実施態様において、リルゾールプロドラッグは以下のスキーム4およびスキーム4’により形成され得る。スキーム4において、化合物1はフマレートと反応して化合物5を生成する。
【化56】
【0091】
スキーム4’において、化合物は飽和、不飽和または共役ジカルボン酸と反応して化合物5’を生成する。
【化57】
【0092】
スキーム4および4’において、RはH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;RはH、金属、アンモニウム塩またはアルキルであり;kは1または2であり、mは2~22であるか、または(CH)は飽和、不飽和共役炭化水素であり;そしてMはNa、K、Li、Mg、Ca、AgまたはZnを含む金属である。
【0093】
ある例示的な実施態様、リルゾールプロドラッグは以下のスキーム5により形成され得る。スキーム5において、化合物1は保護されたアミノアセテートと反応し、得られた化合物は脱保護されて化合物6を生成する。
【化58】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;Rは置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;そして
は置換または非置換天然アミノ酸であり;そして
MはNa、K、Li、Mg、Ca、AgまたはZnを含む金属である。
Bcは保護基である〕
【0094】
ある例示的な実施態様において、リルゾールプロドラッグは以下のスキーム6により形成され得る。スキーム6において、化合物1はアミノアセテートと反応し化合物7を生成する。
【化59】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;
は置換または非置換天然アミノ酸であり;そして
XはNa、K、Li、AgまたはZnである〕
【0095】
別の実施態様において、リルゾールプロドラッグはアミンのカルボアミノ化のために、炭酸セシウムを使用して効率的に形成され得る。
【0096】
ある例示的な実施態様において、リルゾールプロドラッグはN-アシルオキシカルバメート形態で形成され得る。スキーム7において、活性化されたカルボン酸と二酸化炭素がリルゾールと縮合してプロドラッグ(化合物8)を形成する。
【化60】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;
Lgは脱離基であり;
は置換または非置換であり得るアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルである。
特に、LgはF、Cl、BrおよびIのようなハライドであってよい〕
【0097】
スキーム8において、リルゾールは4-メチル-1,3-ジオキソール-2-オンと反応して化合物9を生成する。例示的な実施態様において、プロドラッグは以下のとおり合成できる。
【化61】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;
Lgは脱離基である。
特に、LgはF、Cl、BrおよびIのようなハライドであってよい〕
【0098】
スキーム9において、リルゾールはイソベンゾフラン-1-オンと反応して化合物10を生成する。
【0099】
例示的な実施態様において、プロドラッグは以下のとおり合成できる。
【化62】
【0100】
特に、Lgは脱離基である。LgはF、Cl、BrおよびIのようなハライドであってよい。
【0101】
スキーム10において、リルゾールは((PhCHO)PO)Oおよびナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS)と反応し、得られた化合物は水素ガスと反応して化合物11を生成する。
【0102】
例示的な実施態様において、プロドラッグは以下のとおり合成され得る。
【化63】
〔式中、
はアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;そして
N’は置換もしくは非置換一級、二級および三級アミン、または金属塩である〕
【0103】
ある例示的な実施態様において、N-アシルオキシカルバメートプロドラッグもまた、(4-(ニトロフェノキシ)カルボニルオキシ)メチル ホルメート
【化64】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC-Cアルキルであり;そして
は置換または非置換アルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルである〕
を用いて合成され得る。例示的な反応スキームを以下に示す。スキーム11において、リルゾールは((4-ニトロフェノキシ)カルボニルオキシ)メチル ホルメートと反応して化合物12を生成する。
【化65】
【0104】
本明細書で引用される全ての特許、公開特許出願および他の引用文献の内容は、参照によりそれらの全体を本明細書に明確に包含させる。
【0105】
当業者は、本明細書に記載の特定の方法についての多数の均等物を認識し、または所定の実験のみを用いてそれらを解明することができる。このような均等物は本発明の範囲内であると考えられ、以下の請求項により包含される。
本発明はさらに、次の態様を含む。
項1.薬剤分子および少なくとも1以上のプロドラッグ付加部分を含む、次のとおり形成されるプロドラッグ。
【化66】
〔式中、
プロドラッグ付加部分は薬剤分子のアミンと結合し、
iは1または2であり、
jは0または1である〕
項2.プロドラッグ付加部分が独立して、
【化67】
【化68】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC -C アルキルであり;
は置換または非置換であるアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり、
はH、金属、R または置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンであり;
はH、金属、アンモニウム塩またはアルキルであり;
は置換または非置換天然アミノ酸であり;
またはR はH、アルキルまたはアリールでよく;またはNR またはNR はアミノ酸であり;
XはCまたはOであり;
kは1または2であり、mは2~22であり、または(CH ) は飽和、不飽和もしくは共役炭化水素であり;
nは0~2であり;そして
金属はNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnである〕
から成る群から選択される、項1に記載のプロドラッグ。
項3.iが1であり、jが1である、項1に記載のプロドラッグ。
項4.iが2であり、jが0である、項1に記載のプロドラッグ。
項5.薬剤分子がリルゾールである、項1に記載のプロドラッグ。
項6.1以上のプロドラッグ付加部分をリルゾール分子に結合する工程を含む、リルゾールプロドラッグの製造法。
【化69】
〔式中、
プロドラッグ付加部分はリルゾール分子のアミン部分に結合し、
iは1または2であり、
jは0または1である〕
項7.プロドラッグ付加部分が独立して、
【化70】
【化71】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC -C アルキルであり;
は置換または非置換であるアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり、
はH、金属、R または置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンであり;
はH、金属、アンモニウム塩またはアルキルであり;
は置換または非置換天然アミノ酸であり;
またはR はH、アルキルまたはアリールであり;またはNR またはNR はアミノ酸であり;
XはCまたはOであり;
kは1または2であり、mは2~22であり、または(CH ) は飽和、不飽和または共役炭化水素であり;
nは0~2であり;
mは2~12であり;そして
金属はNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnである〕
からなる群から選択される、項6に記載の方法。
項8.iが1であり、jが1である、項6に記載の方法。
項9.iが2であり、jが0である、項6に記載の方法。
項10.リルゾールプロドラッグが
【化72】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC -C アルキルであり;
は置換または非置換であるアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;
はH、金属、R または置換もしくは非置換一級、二級もしくは三級アミンであり;
はH、金属、アンモニウム塩またはアルキルであり;
は置換または非置換天然アミノ酸であり、
はアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;
kは1または2であり、mは2~22であるか、または(CH ) は飽和、不飽和もしくは共役炭化水素であり;
N’は置換もしくは非置換一級、二級および三級アミン、または金属塩であり;そして
YはPO H、CH PO Hまたはそれらの塩であり;そして
金属はNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnである〕
から成る群から選択される、項6に記載の方法。
項11.リルゾールを
【化73】
と反応させて
【化74】
を製造する工程を含む、リルゾールプロドラッグの合成法。
項12.項11に記載の方法であって、
【化75】

【化76】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC -C アルキルであり;
は置換または非置換であるアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;
はH、金属、アンモニウム塩またはアルキルであり;
kは1または2であり、mは2~22であり、または(CH ) は飽和、不飽和もしくは共役炭化水素であり;
Bcは保護基であり;
Y’はH、PO Bc 、CH PO Bc、MPO Bcもしくはそれらの塩またはN(R ) であり、ここでRaはHまたはアルキルであり;
MはNa、K、Li、Ca、Mg、AgまたはZnであり;そして
R’またはR’’は環状または非環状アルキルである〕
から成る群から選択される化合物とさらに反応させる工程を含む、方法。
項13.リルゾールをCO 、Cs CO と反応させ、得られた化合物を
【化77】
〔式中、Lは脱離基である〕
と反応させる工程を含む、リルゾールプロドラッグの合成法。
項14.リルゾールを
【化78】
〔式中、
Lは脱離基であり、
はC -C アルキルである〕
と反応させる工程を含む、リルゾールプロドラッグの合成法。
項15.リルゾールを
【化79】
〔式中、
Lgは脱離基である〕
と反応させる工程を含む、リルゾールプロドラッグの合成法。
項16.リルゾールを
【化80】
〔式中、
はH、アルキルまたは特にC -C アルキルであり;そして
は置換または非置換アルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルである〕
と反応させる工程を含む、リルゾールプロドラッグの合成法。
項17.リルゾールを((PhCH O) PO) Oおよびナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS)と反応させ、得られた化合物をその後水素と反応させる工程を含む、リルゾールプロドラッグの合成法。
【化81】
〔式中、
はアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールまたはハロアルキルであり;
N’は置換もしくは非置換である一級、二級および三級アミン、または金属塩である〕