(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】光周波数混合モジュール
(51)【国際特許分類】
G02F 1/37 20060101AFI20220725BHJP
G02F 1/39 20060101ALI20220725BHJP
H01S 3/10 20060101ALI20220725BHJP
H01S 3/067 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
G02F1/37
G02F1/39
H01S3/10 Z
H01S3/067
(21)【出願番号】P 2018542753
(86)(22)【出願日】2017-02-03
(86)【国際出願番号】 GB2017050276
(87)【国際公開番号】W WO2017137728
(87)【国際公開日】2017-08-17
【審査請求日】2020-01-31
(32)【優先日】2016-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514010047
【氏名又は名称】エム スクエアード レーザーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】M SQUARED LASERS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マーカー,ガレス トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マルコム,グレーム ペーター アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ウェブスター,スティーヴン
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-149034(JP,A)
【文献】特開2013-142854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0037600(US,A1)
【文献】特開2000-012947(JP,A)
【文献】特開2012-203221(JP,A)
【文献】特表2013-546022(JP,A)
【文献】特開平10-239721(JP,A)
【文献】特開2012-150186(JP,A)
【文献】特開2012-173427(JP,A)
【文献】特開2014-032309(JP,A)
【文献】米国特許第08599474(US,B1)
【文献】特開2008-028380(JP,A)
【文献】特開2013-222173(JP,A)
【文献】特開2005-242257(JP,A)
【文献】特開平08-056037(JP,A)
【文献】特表2009-540538(JP,A)
【文献】特開2003-043533(JP,A)
【文献】特表2002-507784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光周波数混合モジュール
(1又は56)であって、
1以上の入力光電場
(3、4)の光子を周波数混合して出力光電場
(6)を生成する非線形媒質
(5)と、
前記非線形媒質
(5)によって生成された出力光電場
(6)の波長を選択するために、前記非線形媒質
(5)を前記1以上の入力光電場
(3、4)に位相整合させるための手段を提供する非線形媒質チューナ
(8、9)と、
第1の動作制御ステージ
(20又は63)に取り付けられた第1のプリズム
(19又は62)を含む第1の方向補正光学系
であって、前記第1の動作制御ステージ(20又は63)は、前記第1のプリズム(19または62)の位置を直線的に平行移動及び/又は回転させるための手段を提供する、第1の方向補正光学系(18又は61)と、
前記非線形媒質
(5)と前記第1の方向補正光学系
(18又は61)との間に配置され、前記非線形媒質
(5)の非線形特性によって変換されなかった前記1以上の入力光電場
(3、4)を前記出力光電場
(6)から空間的に分離する手段を提供する光電場分離装置
(12)とを具え、
前記非線形媒質
(5)に対する第1の方向補正光学系
(18又は61)の位置は、出力光電場
(6)の位置および伝搬角度が一定のままとなるように、出力光電場
(6)の選択された波長に依存することを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記光電場分離装置は、第2のプリズムを含むことを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記光電場分離装置は格子を含むことを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれかに記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記光周波数混合モジュールが、出力光電場から空間的に分離された1以上の入力光電場から光子を除去する手段を提供する光電場ダンパをさらに具えることを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項5】
請求項
4に記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記光電場ダンパは、1以上のビームステアリングミラーを具えることを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項6】
請求項
5に記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記光電場ダンパは、前記1以上のビームステアリングミラーから反射された光をトラップするように構成された光トラップをさらに具えることを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項7】
請求項
5または6に記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記光周波数混合モジュールは、前記非線形媒質と前記光電場分離装置との間に配置され、前記1以上のビームステアリングミラーに1以上の光電場を集束させるように構成された第1のレンズをさらに具えることを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれかに記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記非線形媒質は、ホウ酸バリウム(β-BaB
2O
4)またはBBO結晶を含むことを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項9】
請求項
8に記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記非線形媒質チューナは、1以上の入力光電場の光子に対してBBO結晶の位置を回転させる手段を提供する第2の動作制御ステージを具えることを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項10】
請求項
9に記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記光周波数混合モジュールは、BBO結晶の回転によって生じる出力電場の位置および伝搬の角度の偏差を補償する手段を提供する第2の方向補正光学系をさらに具えることを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項11】
請求項
10に記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記第2の方向補正光学系はブリュースタープレートを具え、これは当該ブリュースタープレートの位置を回転させる手段を提供する第3の動作制御ステージに取り付けられていることを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項12】
請求項1乃至
7のいずれかに記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記非線形媒質が周期的分極反転した結晶を含むことを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項13】
請求項
12に記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記周期的分極反転した結晶は、周期的分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)結晶、周期的分極反転カリウムチタニルホスフェート(PPKTP)結晶、および周期的分極反転化学量論的タンタル酸リチウム(PPSLT)結晶を含む群から選択されることを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項14】
請求項
12または13に記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記非線形媒質チューナは、前記PPLN結晶の位置を1以上の入力光電場の光子に対して直線的に平行移動させる手段を提供する第4の動作制御ステージを具えることを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項15】
請求項
12または13に記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記非線形媒質チューナは、前記PPLN結晶を加熱するように構成された加熱素子を含むことを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項16】
請求項1乃至
15のいずれかに記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記光周波数混合モジュールは、出力光電場をコリメートまたは焦点合わせするように構成された1以上のレンズをさらに具えることを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項17】
請求項
1乃至16のいずれかに記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記光周波数混合モジュールは、前記非線形媒質チューナと、前記非線形媒質に対する前記第1の方向補正光学系の位置とを自動制御する手段を提供するコントローラをさらに具えることを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項18】
請求項
17に記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記コントローラはまた、前記第2の方向補正光学系の位置を自動制御する手段を提供することを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項19】
請求項1乃至
18のいずれかに記載の光周波数混合モジュールにおいて、前記非線形チューナは、前記光周波数混合モジュールが前記非線形媒質を識別するための手段を提供する結晶登録装置を具えることを特徴とする光周波数混合モジュール。
【請求項20】
光学システムであって、レーザヘッドと、請求項1乃至
19のいずれかに記載の光周波数混合モジュールとを具え、前記レーザヘッドは、前記光周波数混合モジュールのための1以上の入力光電場を生成する手段を提供することを特徴とする光学システム。
【請求項21】
請求項
20に記載の光学システムにおいて、前記レーザヘッドは、ポンプレーザによって光学的にポンピングされた第1のTi:サファイアレーザを具えることを特徴とする光学システム。
【請求項22】
請求項
21に記載の光学システムにおいて、前記レーザヘッドは、第1のTi:サファイアレーザの周波数を倍にするための手段を提供する周波数ダブラをさらに具えることを特徴とする光学システム。
【請求項23】
請求項
21または22に記載の光学システムにおいて、前記レーザヘッドは、ポンプレーザによって光学的にポンピングされた第2のTi:サファイアレーザをさらに具えることを特徴とする光学システム。
【請求項24】
請求項
20乃至23のいずれかに記載の光学システムにおいて、前記レーザヘッドはファイバレーザをさらに具えることを特徴とする光学システム。
【請求項25】
請求項
24に記載の光学システムにおいて、前記ファイバレーザは、ツリウム添加シリカファイバレーザを含むことを特徴とする光学システム。
【請求項26】
請求項
24に記載の光学システムにおいて、前記ファイバレーザは、エルビウム添加シリカファイバレーザを含むことを特徴とする光学システム。
【請求項27】
請求項
20乃至26のいずれかに記載の光学システムにおいて、前記レーザヘッドは、周波数2倍バナジウム酸ネオジウムレーザをさらに含むことを特徴とする光学システム。
【請求項28】
請求項
20乃至27のいずれかに記載の光学システムにおいて、前記光学システムはコントローラをさらに具え、当該コントローラは、レーザヘッドの構成要素を自動制御する手段を提供することを特徴とする光学システム。
【請求項29】
請求項20乃至28のいずれかに記載の光学システムにおいて、前記光学システムは、前記光周波数混合モジュールの出力電場の周波数を倍にするように構成された周波数2倍ユニットをさらに具えることを特徴とする光学システム。
【請求項30】
1以上の入力光電場
(3、4)の光子を周波数混合する方法であって、
非線形媒質
(5)内の1以上の入力光電場
(3、4)の光子を周波数混合することによって出力電場
(6)を生成するステップと、
前記非線形媒質
(5)を前記1以上の入力光電場
(3、4)に位相整合させて、前記非線形媒質
(5)によって生成された前記出力光電場
(6)の波長を選択するステップと、
前記出力光電場
(6)の位置および伝搬の角度が一定に保たれるように、出力光電場
(6)の選択された波長に依存して、非線形媒質
(5)に対する第1の動作制御ステージ
(20又は63)に取り付けられた第1のプリズム
(19又は62)を含む第1の方向補正光学系
(18又は61)の位置を選択するステップ
であって、前記非線形媒質(5)に対する前記第1の方向補正光学系(18又は61)の位置を選択することは、前記第1のプリズム(19又は62)の位置を直線的に平行移動及び/又は回転させることを含む、ステップと、
前記非線形媒質
(5)と前記第1の方向補正光学系
(18又は61)との間に配置された光電場分離装置
(12)を用いて、前記非線形媒質
(5)の非線形特性によって変換されなかった前記1以上の入力光電場
(3a、4a)を前記出力光電場
(6)から空間的に分離するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項
30に記載の1以上の入力光電場の光子を周波数混合する方法において、前記出力光電場を空間的に分離するステップは、前記出力光電場から空間的に分離された1以上の入力光電場から光子を除去するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項
30または31に記載の1以上の入力光電場の光子を周波数混合する方法において、前記非線形媒質を1以上の入力光電場に位相整合させるステップは、前記非線形媒質の回転位置を変化させるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項
32に記載の1以上の入力光電場の光子を周波数混合する方法において、当該方法がさらに、出力光電場の選択された波長に依存して、非線形媒質に対する第2の方向補正光学系の位置を選択するステップによって、前記非線形媒質の回転位置を変化させることによって導入される出力電場の位置および伝播の角度の偏差を補償するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項
30乃至35のいずれかに記載の1以上の入力光電場の光子を周波数混合する方法において、前記非線形媒質を1以上の入力光電場に位相整合させるステップは、1以上の入力光電場の光子に対して前記非線形媒質の位置を直線的に平行移動させるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項
30または31に記載の1以上の入力光電場の光子を周波数混合する方法において、前記非線形媒質を1以上の入力光電場に位相整合させて、非線形媒質によって生成される出力光電場の波長を選択するステップは、非線形媒質を加熱するステップを含んでもよいことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項
30乃至35のいずれかに記載の1以上の入力光電場の光子を周波数混合する方法において、前記非線形媒質を1以上の入力光電場に位相整合させて、非線形媒質によって生成される出力光電場の波長を選択するステップは、コントローラによって自動的に設定されることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項
30乃至36のいずれかに記載の1以上の入力光電場の光子を周波数混合する方法において、前記非線形媒質に対する第1の方向補正光学系の位置を選択するステップは、コントローラによって自動的に選択されることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項
33乃至37のいずれかに記載の1以上の入力光電場の光子を周波数混合する方法において、前記非線形媒質に対する第2の方向補正光学系の位置を選択するステップは、コントローラによって自動的に選択されることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項
30乃至38のいずれかに記載の1以上の入力光電場の光子を周波数混合する方法において、当該方法がさらに、前記非線形媒質を自動的に認識するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項
39に記載の1以上の入力光電場の光子を周波数混合する方法において、当該方法がさらに、前記非線形媒質の認識に基づいて位相整合の方法を選択するステップを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非線形光学の分野に関し、特に、1またはそれ以上の光電場を周波数混合するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶の非線形光学特性は、所望の既知の周波数または波長で出力光電場を生成するように、1または複数の光電場の光子を混合するために、長年にわたって利用されてきた。
【0003】
このようなプロセスの一例が、和周波混合(SFM:sum-frequency mixing)である。この技術は、角周波数ω
1およびω
2での2つの入力光子の消滅に基づいて、周波数ω
3で1つの光子を生成する。和周波生成はパラメトリックプロセスであり、以下の式(1)によって定義されるように、光子がエネルギー保存を満たし、物質を変えないままにすることを意味する。
hはプランク定数である。
【0004】
和周波混合を効率的に行うためには、位相整合と呼ばれる式(2)で定義される条件を満足させる必要がある。
ここで、k
1、k
2およびk
3は、それらが媒体を通って進むときの3つの波の角度波数である。この条件がより正確に満たされるにつれて、和周波発生はますます効率的になる。また、和周波発生の長さがより長くなると、位相整合がより正確になる。
【0005】
SFMの特別なケースは、ω1=ω2である二次高調波混合(SHM)である。これはおそらく最も一般的なタイプのSFMである。これは、ω1≠ω2の場合、2つの同時入力電場が必要となり、構成が難しくなるのに対し、SHGでは、SFMと比較して1つの入力電場しか必要でないからである。
【0006】
当技術分野で知られているSFMの代替プロセスとして、差周波混合(DFM)がある。これは、異なるエネルギーの2つの光子を組み合わせて、以下の式(3)によって定義されるように、そのエネルギーが入射光子のエネルギー差と等しい第3の光子を生成する非線形プロセスである。
hはプランク定数である。
【0007】
DFMが効率的に発生するには、式(4)で定義される次の位相整合条件が満たされる必要がある。
ここで、k
1、k
2およびk
3は、それらが媒体を通って進むときの3つの波の角度波数である。
【0008】
当技術分野で知られている他の周波数混合プロセスには、三次高調波混合(THM)、高調波発生(HHG)および光パラメトリック増幅(OPA)およびダウンコンバージョンが含まれる。
【0009】
非線形光学系における任意の二次χ(2)、またはより高次の現象の場合と同様に、非線形プロセスは、所定の予め定められた条件の下でのみ生じ得る。すなわち光が物質と相互作用しており、非対称であり、入力電場が非常に高い強度(典型的にはレーザ源によって生成される)を有する。式(2)、式(4)の位相整合要件は、生成された出力電場の周波数または波長が、入力電場の波長および非線形媒体の位置の両方の調整された同調によって変更可能であることを意味する。非線形媒質の位置を変更するのは、典型的には、入力電場内の非線形結晶の回転または平行移動によって達成される。
【0010】
そのような運動は、生成された出力電場の周波数または波長の調整手段を提供するが、対応するように出力電場の伝搬方向の偏差が生じる。出力電場のこの偏差は、商業的な光周波数混合装置の開発にとって問題となる。なぜなら、オペレータが、所望の目的に使用できるように、出力電場のためのステアリング光学系を再調整する必要があるからである。この再調整プロセスは決して簡単な行為ではなく、オペレータ側で高度なスキルと努力を必要とする。このような再整列は時間がかかり、生成された出力電場を使用するためにかなりの休止時間をもたらす。
【0011】
当技術分野で知られているシステムの第2の問題は、非線形結晶が1または複数の入力電場の光子のすべてを出力電場の光子に変換できないという事実から生じる。その結果、そのようなデバイスからの出力電場は、しばしば、1以上の入力電場の波長で望ましくない成分を含む。特定の非線形プロセスでは、これらの望ましくない波長の光電場は、所望の出力波長の光電場よりも著しく高い出力となり得る。この問題に対処するために、波長依存性フィルタおよび/または注意深く設計されたミラーコーティングを、出力電場用のステアリング光学系内で使用することが必要となる。これら両方の種類の光学部品が、当該技術分野で知られているシステムを使用するオペレータにかかる再配列の問題にさらに加えられる。
【0012】
従って、本発明の1つの目的は、当技術分野で知られている光周波数混合装置の前述の欠点を取り除くか、または少なくとも軽減する光周波数混合モジュールを提供することである。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、光周波数混合モジュールであって、
1以上の入力光電場の光子を周波数混合して出力光電場を生成する非線形媒質と、
前記非線形媒質によって生成された出力光電場の波長を選択するために、前記非線形媒質を前記1以上の入力光電場に位相整合させるための手段を提供する非線形媒質チューナと、
第1の方向補正光学系とを具え、
前記非線形媒質に対する第1の方向補正光学系の位置は、出力光電場の位置および伝搬角度が確実に一定のままとなるように、出力光電場の選択された波長に依存することを特徴とする。
【0014】
光周波数混合モジュールは、出力電場の伝搬の位置または角度に偏差が加わらないような出力電場の波長を選択する手段を提供する。
【0015】
最も好ましくは、光周波数混合モジュールは、非線形媒質と第1の方向補正光学系との間に配置され、2以上の光電場をそれらの波長に応じて空間的に分離する手段を提供する光電場分離装置をさらに具える。光電場分離装置は、第1のプリズムを含むことができる。あるいは、光電場分離装置は格子を含む。
【0016】
前記第1の方向補正光学系は、好ましくは、第1の動作制御ステージに取り付けられた第2のプリズムを含む。
【0017】
第1の動作制御ステージは、好ましくは、第2のプリズムの位置を直線的に平行移動するための手段を提供する。第1の動作制御ステージは、第2のプリズムの位置を回転させる手段を提供してもよい。
【0018】
最も好ましくは、光周波数混合モジュールは、1以上の入力光電場から出力光電場から光子を除去する手段を提供する光電場ダンパをさらに備える。光電場ダンパは、1以上のビームステアリングミラーを具えてもよい。光電場ダンパは、1以上のビームステアリングミラーから反射された光をトラップするように構成された光トラップをさらに具えてもよい。
【0019】
最も好ましくは、光周波数混合モジュールは、非線形媒質と光電場分離装置との間に配置され、1以上のビームステアリングミラーに1以上の光電場を集束させるように構成された第1のレンズをさらに備える。
【0020】
したがって、光電場分離装置および光電場ダンパを組み込むと、出力電場内に含まれる1以上の入力電場の波長で不要な成分を除去しつつ、出力光電場の所望の波長を装置を通して伝搬させることを可能にする手段を提供する。
【0021】
非線形媒質は、ホウ酸バリウム(β-BaB2O4)またはBBO結晶を含むことができる。この実施形態では、非線形媒体チューナは、好ましくは、1以上の入力光電場の光子に対してBBO結晶の位置を回転させる手段を提供する第2の動作制御ステージを具える。
【0022】
光周波数混合モジュールは、BBO結晶の回転によって生じる出力電場の伝搬の位置および角度の偏差を補償する手段を提供する第2の方向補正光学系を具えてもよい。好ましくは、第2の方向補正光学系はブリュースタープレートを具え、これは当該ブリュースタープレートの位置を回転させる手段を提供する第3の動作制御ステージに取り付けられている。
【0023】
あるいは、非線形媒質が周期的分極反転した結晶、例えば、周期的分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)結晶;周期的分極反転カリウムチタニルホスフェート(PPKTP)結晶;または周期的分極反転タンタル酸リチウム(PPSLT)結晶を含む。この実施形態では、非線形媒質チューナは、好ましくは、周期的分極反転した結晶の位置を1以上の入力光電場の光子に対して直線的に平行移動させる手段を提供する第4の動作制御ステージを具える。あるいは、非線形媒質チューナは、周期的分極反転した結晶を加熱するように構成された加熱素子を含む。
【0024】
光周波数混合モジュールは、出力光電場をコリメートまたは焦点合わせするように構成された1以上のレンズをさらに具えることができる。
【0025】
最も好ましくは、光周波数混合モジュールは、非線形媒質チューナと、非線形媒質に対する第1の方向補正光学系の位置とを自動制御する手段を提供するコントローラを具える。このコントローラはまた、第2の方向補正光学系の位置を自動制御するための手段を提供してもよい。したがって、コントローラを組み込むことにより、光周波数混合モジュールを完全に自動化することが可能になり、市販の装置としての使用に理想的である。
【0026】
非線形チューナは、光周波数混合モジュールが非線形媒質を識別するための手段を提供する結晶登録装置を具えてもよい。この構成により、光周波数混合モジュールが異なる種類の結晶を識別し、周波数混合を行うための所望の位相整合を達成するために適切な制御機構を自動的に選択することが可能となる。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、光学システムが提供され、当該光学システムは、レーザヘッドと、本発明の第1の態様による光周波数混合モジュールとを具え、前記レーザヘッドは、光周波数混合モジュールのための1以上の入力光電場を生成する手段を提供する。
【0028】
レーザヘッドは、ポンプレーザによって光学的にポンピングされた第1のTi:サファイアレーザを具える。このレーザヘッドは、第1のTi:サファイアレーザを周波数倍増するための手段を提供する周波数ダブラを具えることができる。
【0029】
レーザヘッドは、ポンプレーザによって光学的にポンピングされた第2のTi:サファイアレーザを含むことができる。
【0030】
このレーザヘッドはファイバレーザを含んでもよい。ファイバレーザは、ツリウム添加シリカファイバレーザを含んでもよい。あるいは、ファイバレーザは、エルビウム添加シリカファイバレーザを含んでもよい。
【0031】
レーザヘッドは、周波数2倍バナジウム酸ネオジウムレーザを含んでもよい。
【0032】
光学システムは、コントローラを具えてもよく、当該コントローラは、レーザヘッドの構成要素を自動制御する手段を提供する。したがって、コントローラは、1以上の入力光電場の波長および/または出力を自動制御するための手段を提供する。
【0033】
光学システムは、光周波数混合モジュールの出力電場を周波数を倍にするように構成された周波数2倍ユニットをさらに具えることができる。
【0034】
本発明の第2の態様の態様は、本発明の第1の態様の好ましいか任意の特徴を実装するための特徴を含むことができ、またはその逆であってもよい。
【0035】
本発明の第3の態様によれば、1以上の入力光電場の光子を周波数混合する方法であって、
非線形媒質内の1以上の入力光電場の光子を周波数混合することによって出力電場を生成するステップと、
前記非線形媒質を前記1つ以上の入力光電場に位相整合させて、前記非線形媒質によって生成された前記出力光電場の波長を選択するステップと、
前記出力光電場の位置および伝搬の角度が確実に一定に保たれるように、出力光電場の選択された波長に依存して、非線形媒質に対する第1の方向補正光学系の位置を選択するステップとを含む方法が提供される。
【0036】
最も好ましくは、1以上の入力光電場の光子を周波数混合する方法は、出力光電場を複数の波長依存成分へと空間的に分離するステップをさらに含む。
【0037】
非線形媒体に対する第1の方向補正光学系の位置を選択するステップは、第1の方向補正光学系の位置を直線的に平行移動するステップを含んでもよい。
【0038】
非線形媒質に対する第1の方向補正光学系の位置を選択するステップは、第1の方向補正光学系の位置を回転させるステップをさらに含むことができる。
【0039】
最も好ましくは、出力光電場を空間的に分離するステップは、1以上の入力光電場から出力光電場から光子を除去することをさらに含む。
【0040】
非線形媒質を1以上の入力光電場に位相整合させて、非線形媒質によって生成された出力光電場の波長を選択するステップは、非線形媒質の回転位置を変化させるステップを含んでもよい。
【0041】
1以上の入力光電場の光子を周波数混合する方法は、非線形媒質の回転位置を変化させることによって導入される出力電場の位置および伝播の角度の偏差を補償するステップをさらに含むことができる。
【0042】
非線形媒質を1以上の入力光電場に位相整合させて、非線形媒質によって生成される出力光電場の波長を選択するステップは、1以上の入力光電場の光子に対して非線形媒質の位置を直線的に平行移動するステップを含んでもよい。
【0043】
非線形媒質を1以上の入力光電場に位相整合させて、非線形媒質によって生成される出力光電場の波長を選択するステップは、非線形媒質を加熱するステップを含んでもよい。
【0044】
最も好ましくは、非線形媒質を1以上の入力光電場に位相整合させて、非線形媒質によって生成される出力光電場の波長を選択するステップは、コントローラによって自動的に選択される。
【0045】
最も好ましくは、非線形媒体に対する第1の方向補正光学系の位置を選択するステップは、コントローラによって自動的に選択される。
【0046】
最も好ましくは、非線形媒体に対する第2の方向補正光学系の位置を選択するステップは、コントローラによって自動的に選択される。
【0047】
1以上の入力光電場の光子を周波数混合する方法は、非線形媒質を自動的に認識するステップをさらに含んでもよい。この方法は、非線形媒質の認識に基づいて位相整合の方法を選択するステップをさらに含んでもよい。
【0048】
本発明の第3の態様の実施形態は、本発明の第1または第2の態様の好ましいか任意の特徴を実装するための特徴を含むことができ、またはその逆であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本発明の様々な実施形態を図面を参照して例としてのみ説明する。
【
図1】
図1は、シングルヘッドレーザ源と共に使用される本発明の一実施形態による光周波数混合モジュールの概略図を示す。
【
図2】
図2は、
図1の光周波数混合モジュールおよびシングルヘッドレーザ源のためのコントローラの概略図を示す。
【
図3】
図3は、ダブルヘッドレーザ源を有する
図1の光周波数混合モジュールの概略図を示す。
【
図4】
図4は、
図2の光周波数混合モジュールおよびダブルヘッドレーザ源のためのコントローラの概略図を示す。
【
図5】
図5は、ダブルヘッドレーザ源と共に使用される本発明の代替実施形態による光周波数混合モジュールの概略図である。
【
図6】
図6は、
図5の光周波数混合モジュールおよびダブルヘッドレーザ源のためのコントローラの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下の説明において、同様の部品は、明細書および図面全体にわたって同じ参照番号で示されている。図面は必ずしも縮尺通りではなく、本発明の実施形態の詳細および特徴をよりよく説明するために、特定の部分の比率が誇張されている。
【0051】
本発明の説明を、
図1~
図6を参照して説明する。特に、
図1は、本発明の一実施形態による光周波数混合モジュールの概略図を示す。この実施形態では、シングルヘッドレーザ源を用いて、2つの入力光電場3、4を光周波数混合モジュール1に提供する。
【0052】
光周波数混合モジュール1は、所望の波長で出力光電場6を生成するために、2つの入力光電場3、4の光子を周波数混合するための手段を提供する非線形媒質5を具え得る。本実施形態では、非線形媒質5は、ベータバリウムボレート(β-BaB2O4)またはBBO結晶7を含み、非線形媒質5は、第1の動作制御ステージ8に取り付けられる。第1の動作制御ステージ8の回転が、非線形媒質5を入力光電場3、4に位相整合させる手段を提供し、出力光電場6の波長を選択的に調整することを可能にする。
【0053】
第2の動作制御ステージに取り付けられた方向補正光学系9、すなわちブリュースタープレート10が、第1の動作制御ステージ8上のBBO結晶7の回転によって生じる出力電場6の位置および伝搬の角度の偏差を補償する手段を提供するために使用される。
【0054】
非線形媒質5の後段には、光電場をそれらの波長に応じて空間的に分離する手段を提供する光電場分離装置12が配置される。説明されている実施形態では、光電場分離装置12は、BBO結晶7の非線形特性によって変換されなかった2つの入力光電場3a、4aの成分を出力電場6から空間的に分離するように作用する第1のプリズムを具える。このようにして、2つの入力光電場3aおよび4aの望ましくない成分が、簡単に光電場ダンパ13に導かれ、そこで光周波数混合モジュール1から出ることが防止される。ここで説明している実施形態では、光電場ダンパ13は、それぞれ2つの入力光電場3aおよび4aの望ましくない成分の1つを光トラップ16に再配向するように配置されている。
【0055】
このプロセスには、非線形媒質5と光電場分離装置12との間に配置され、出力電場6と不要成分とを2つのビームステアリングミラー14、15に集束させるように配置されたレンズ17を含むことが有益であることが分かる。この構成が、1以上の入力電場3aおよび4aの望ましくない成分を除去しつつ、出力光電場6が装置を通って伝搬することを可能にする手段を提供する。
【0056】
光電場分離装置12によって導入された波長分散によって生じる出力電場6の位置および伝搬の角度の偏差を補償するために、出力電場6は方向補正光学系18を通って伝播する。ここで説明している実施形態では、方向補正光学系18は、動作制御ステージ20に取り付けられた第2のプリズム19を含む。この構成が、出力電場6の波長がBBO結晶7の回転によって変化した際に、第2のプリズム19の位置を変化させる手段を提供し、したがって出力電場6の波長に関係なく、出力電場6の位置および伝搬角度が一定のままとなることが可能になる。
【0057】
光周波数混合モジュール1はまた、出力電場6が装置を出るときに出力電場6を集束あるいはコリメートするための手段を提供する出力レンズ21を具えてもよい。
【0058】
2つの入力光電場3、4を提供するために使用される
図1の実施形態のシングルヘッドレーザ源2は、ポンプレーザ24によって生成されたポンプ電場23で光学的にポンピングされるTi:サファイアレーザ22を含んで示されている。Ti:サファイアレーザ22は、M Squared Lasers Limited社によって提供され、670nmから1050nmの範囲の波長で最大6Wの出力を提供するSolsTiS(商標)Ti:Sapphireレーザを含むことができる。ポンプレーザ24は、532nmの波長で最大18Wの出力を提供する、単一周波数の光ポンピング半導体レーザを含むことができる。
【0059】
第1の偏光ビームスプリッタ25および第1の波長板26が、ポンプレーザ24とTi:サファイアレーザ22との間のポンプ電場23内に配置される。これらの構成要素が、Ti:サファイアレーザ22に向けられ、および第1のポンプ電場ビームステアリングミラー27に向かうポンプ出力の量を制御する手段を提供する。
【0060】
第1ポンプ電場ビームステアリングミラー27から反射されたポンプ電場23とTi:サファイアレーザ22からの出力とが、それぞれ第1および第2の入力光電場3、4となり、ダイクロイックミラー29上で組み合わせられて光周波数混合モジュール1へと提供される。ここで説明されている実施形態では、Ti:サファイアレーザ22の出力28は、第2の波長板30と、第2の偏光ビームスプリッタ31の複合効果によってダイクロイックミラー29に配向される。Ti:サファイア入力電場3の偏光が、光周波数混合モジュール1の非線形位相整合プロセスにとって確実に正しくなるように、第3の波長板32が用いられる。
【0061】
ダイクロイックミラー29に向けられないTi:サファイアレーザ22の出力28aの成分は、出力電場28の波長を正確に測定する手段を提供するために、波長計33に入射させてもよい。ここで説明している実施形態では、これは固定された赤外線ピックオフ34を介して行われる。固定されたIRピックオフ34を使用することにより、Ti:サファイアレーザ22からの出力28bを、オペレータが別の目的のために使用することができる。
【0062】
光周波数混合モジュール1とシングルヘッドレーザ源2の個々の構成要素の制御は、コントローラ35によって自動的に提供され、その概略図が
図2に示されている。コントローラ35は、出願人所有のICE-BLOC(商標)コントローラ技術に基づく多数のユニットを具える。
【0063】
具体的には、コントローラ35は、4つのサブユニット37、38、39、および40をを制御する第1のミキサ制御ユニットを含んで示されている。これらのサブユニットは、第1動作制御ステージ8の回転位置、したがってBBO結晶7の回転位置第2の動作制御ステージ11の回転位置、第2の動作制御ステージ11の回転位置、したがってブリュスタープレート9の回転位置、第2のプリズム19の直線位置、および第2のプリズム19の回転位置とをそれぞれ制御するために使用される。
【0064】
コントローラ35はまた、サブユニット42を制御する第2のミキサ制御ユニット41を具える。このサブユニットは、第1の波長板26の回転位置を制御するために使用される。
【0065】
コントローラ35はさらに、3つのさらなる制御ユニット43、44、および45を具える。これらの制御ユニットは、Ti:サファイアレーザ22、波長計33およびポンプレーザ24を制御するために使用される。
【0066】
様々なユニット間の通信は、一般に、伝送制御プロトコル(TCP)を採用して達成される。しかしながら、使用されるポンプレーザは、RS-232シリアル技術を使用する独自の装置を含むため、コントローラは、TCPをRS-232に変換する手段を提供するコンバータ46をさらに具える。
【0067】
BBO結晶7を用いることにより、光周波数混合モジュール1が、コントローラ35によって自動制御される3つの異なる構成、すなわちSHG、SFMおよびDFMで使用されることが可能になる。シングルヘッドレーザ源と組み合わせて使用される場合、以下の表1に要約されるように、出力電場6の大きな波長範囲を達成することができる。
【0068】
表1:Ti:サファイアレーザおよびポンプレーザ(532nm)
【0069】
これらの波長はすべて、オペレータによる所望の波長の選択に続いて自動的に得られる。一旦選択されると、コントローラ35は、Ti:サファイアレーザ22の出力波長と、所望の波長で出力光電場6を提供するために必要な光周波数混合モジュール1の光学部品の位置を自動的に制御し、すなわち、Ti:サファイアレーザ22によって生成された入力電場3と、非線形媒質5のための位相整合要件が自動的に設定される。
【0070】
出力電場6の生成の柔軟性を大きくし、出力電場6の関連出力を増大させるために、
図3に示す代替のレーザ源47を使用することができる。これは、ポンプレーザ24によって光学的にポンピングされる2つのTi:サファイアレーザ22a、22bを含むダブルヘッドレーザ源である。実際には、Ti:サファイアレーザ22aおよび22bのうちの一方のみが、入力電場3を生成する特定の時間に用いられる。
【0071】
ダブルヘッドレーザ源47は、上述したシングルヘッドレーザ源2と共通する多くの構成要素を共有しており、同じ部品が、
図3において同じ参照番号で示されている。しかしながら、ダブルヘッドレーザ源47は、第1のポンプ電場ビームステアリングミラー27とTi:サファイアレーザ22bとの間のポンプ電場23に配置された、第4の波長板48と第3の偏光ビームスプリッタ49を具えることが分かる。第2のポンプ電場ビームステアリングミラーも、第3の偏光ビームスプリッタ49とダイクロイックミラー29との間に配置されている。IRビームステアリングミラー51が、出力電場28aをTi:サファイアレーザ22aから第2の可変偏光ビームスプリッタ31に向けるために配置され、ここでTi:サファイアレーザ22bからの出力電場28bと組み合わされ、光周波数混合モジュール1のための第1の入力電場3を生成する。ここでも第3の波長板32が、Ti:サファイアレーザ22aおよび22bのどちらが由来しているかにかかわらず、光周波数混合モジュール1のための入力電場3の正しい偏光を維持するために用いられる。
【0072】
光周波数混合モジュール1とダブルヘッドレーザ源47の個々の要素の制御は、コントローラ52によって自動的に提供され、その概略が
図4に示されている。コントローラ52は、上述のコントローラ35と似ているが、第2のミキサ制御ユニット41内の第2のサブユニット53と第3のサブユニット54が追加されており、これらはTi:サファイアレーザ22bの動作を制御するために第3の波長板32と第4の波長板48の回転位置を制御し、とりわけオペレータに選択された出力電場6の波長を生成するのに必要な入力電場3に必要な波長を自動的に選択するための手段を提供する。
【0073】
図5は、本発明の別の実施形態による光周波数混合モジュールの概略図を示す。この実施形態では、2つの入力光電場3、4を光周波数混合モジュール56に提供するために、ダブルヘッドレーザ源57が使用される。
【0074】
この実施形態では、光周波数混合モジュール56の非線形媒質5は、第1の動作制御ステージ59に取り付けられた周期的に分極されたニオブ酸リチウム(PPLN)結晶を含む。PPLN結晶58は、第1の動作制御ステージ59を用いてPPLN結晶58を2つの入力光電場3、4の伝播方向に垂直な方向に動かした場合に出力光電場6の連続的または個別の同調を提供するように、ファン格子または単格子の組み合わせによって規定されるポーリング周期を含むことができる。
【0075】
代替の実施形態では、光周波数混合モジュール56の非線形媒質5は、単格子で規定されるポーリング周期を有するPPLN結晶58を含むことができる。この実施形態では、PPLN結晶58は、出力光電場6の波長を温度調整するための手段を提供する温度制御された台に搭載される。第1の動作制御ステージ59に加熱素子を設けると、上述したPPLN結晶58の両方の種類について同じ構成要素を使用することができる。
【0076】
光周波数混合モジュール56はまた、出力電場6の偏光を規定する手段を提供する第1の波長板60と、当該第1の波長板60を出るときに出力電場6を集束させるためのレンズ17とを具えることができる。
【0077】
非線形媒質5の後ろには光電場分離装置12が配置され、ここでも光電場をその波長に応じて空間的に分離する手段を提供するために使用される。現在説明している実施形態では、光電場分離装置12は、PPLN結晶58の非線形特性によって変換されない2つの入力光電場3a、4aの成分を出力電場6から空間的に分離するように作用する第1のプリズムを具える。このようにして、2つの入力光電場3a、4aの望まない成分を、上記と同じ方法で簡単に光電場ダンパ13に向けることができる。
【0078】
PPLN結晶58の出力波長のチューニングによって、および/または光電場分離装置12によって誘導される分散によって、導入される出力電場6の伝搬の位置および角度の偏差を補償するために、出力電場6は、方向補正光学系61を介して伝搬される。ここで説明している実施形態では、方向補正光学系61は、第2の動作制御ステージ63に取り付けられた第2のプリズム62を具える。この構成により、第2のプリズム62の位置を変化させる手段が提供され、PPLN結晶58の移動によって出力電場6の波長が変化するので、出力電場6の波長に関係なく出力電場6の位置および伝搬角度を一定に維持することが可能となる。
【0079】
光周波数混合モジュール56はまた、これも出力電場6の偏光を規定する手段を提供するための第2の波長板64と、出力電場6が装置を出るときに出力電場6を集束またはコリメートする手段を提供する出力レンズ21とを具えてもよい。
【0080】
2つの入力光電場3、4を提供するのに用いられる
図5の実施形態のダブルヘッドレーザ源57は、Ti:サファイアレーザ22およびファイバレーザ65を具えて示されている。ファイバレーザ65は、1550nmの波長で最大10Wの出力を提供するエルビウムドープシリカファイバレーザを含み得る。あるいは、ファイバレーザ65は、1950nmの波長で最大5Wの出力を提供するツリウムドープシリカファイバレーザを含み得る。
【0081】
第1の偏光ビームスプリッタ25および第1の波長板26は、Ti:サファイア出力電場28内に配置されている。これらの構成要素は、出力電場28をTi:サファイアレーザ22からダイクロイックミラー29に向けるために配置されたIRビームステアリングミラー51へと向かうTi:サファイア出力電場28の量を制御する手段を提供する。Ti:サファイア出力電場28のこの成分は、光周波数混合モジュール56の第1の入力光電場3として使用される。
【0082】
1つまたは複数のレンズ66、67、および68が、IRビームステアリングミラー51とダイクロイックミラー29との間に配置されてもよい。
【0083】
同様に、ビームステアリングミラー69が、ファイバレーザ65からの出力電場70をダイクロイックミラー29に向けるように配置される。ビームステアリングミラー69とダイクロイックミラー29との間にさらなるレンズ71を配置してもよい。ファイバレーザ出力電場70は、光周波数混合モジュール56の第2の入力光電場4として使用される。
【0084】
ダイクロイックミラー29に向けられないTi:サファイアレーザ22の出力電場28aの成分は、出力電場28aの波長を正確に測定する手段を提供するために、波長計33に入射させることができる。あるいは、出力電場28aのこの成分は、別の目的のためにオペレータが使用してもよい。
【0085】
光周波数混合モジュール56は、出力電場6の周波数を倍にするように配置された周波数2倍ユニット72をさらに具えることができる。適切な周波数2倍ユニット72は、この分野で知られている、共振増強キャビティ内のBBO結晶の角度チューニングに基づくものである。
【0086】
光周波数混合モジュール56およびダブルヘッドレーザ源47の個々の構成要素の制御は、コントローラ73によって自動的に提供され、その概略図が
図6に示されている。コントローラ73は、ここでも本出願人のICE-BLOC(商標)コントローラ技術に基づく多数のユニットを含んでもよい。
【0087】
特に、コントローラ73は、3つのサブユニット75、76および77を制御する第1のミキサ制御ユニット74を具える。これらのサブユニットは、PPLN結晶58が取り付けられている第1の動作制御ステージ59の加熱と、第1の動作制御ステージ59の直線位置すなわちPPLN結晶58の位置、および、第2の平行移動ステージ63すなわち第2のプリズム19の直線位置を制御するために設けられている。
【0088】
コントローラ73はさらに、2つのさらなる制御ユニット78、79を具える。これらの制御ユニットは、Ti:サファイアレーザ22および波長計33を制御し、特に波長計33からのフィードバックを用いることによってTi:サファイアレーザ22の波長を制御するために使用される。
【0089】
第1の動作制御ステージ59は、光周波数混合モジュール56がその上に取り付けられた周期分極反転結晶の種類を識別するための手段を提供する結晶レジスタ装置80をさらに具えることができる。これは、1つの部分が第1の動作制御ステージ59に取り付けられ、第2の部分が単格子で規定される分極周期を有するPPLN結晶58に取り付けられたリードスイッチの形態を取ることができる。
【0090】
単格子で規定された分極周期を有するPPLN結晶58が第1の動作制御ステージ59に取り付けられている場合、リードスイッチが作動され、コントローラ73が、第1の動作制御ステージ59を加熱するためにサブユニット75を作動させる必要があることを知る。あるいは、リードスイッチが起動されない場合、すなわち、ファン格子または単格子の組み合わせによって規定されるポーリング周期を含むPPLN結晶58が第1の動作制御ステージ59に取り付けられている場合、コントローラ73は、第1の動作制御ステージ59を並進移動させるためにサブユニット76を作動させる必要があることを知る。
【0091】
この構成により、光周波数混合モジュール56を、周波数混合を行うための所望の位相整合を達成するために異なる制御を必要とする、異なる種類の周期分極反転された非線形結晶とともに使用することができる。
【0092】
PPLN結晶58を使用することにより、光周波数混合モジュール56を、コントローラ73によって自動制御される3つの異なる構成、すなわちSFM、DFMおよびSHGに利用することが可能になる。ダブルヘッドレーザ源と共に使用される場合、以下の表2、表3に要約するように、出力電場6の範囲を大きくすることができる。
【0093】
表2:Ti:サファイアレーザおよびエルビウムドープシリカファイバレーザ(1550nm)
表3:Ti:サファイアレーザおよびツリウムをドープしたシリカファイバレーザ(1950nm)
【0094】
当業者は、異なる波長の光出力電場へのアクセスを提供するために、上述の光周波数混合モジュールと共に代替のレーザ源、例えば周波数2倍バナジウム酸ネオジムレーザを利用できることを理解するであろう。
【0095】
同様に、上記で詳細に説明したような、BBO結晶およびPPLN結晶に基づく代替の非線形媒質を使用して、異なる波長の光出力電場、例えば周期分極反転カリウムチタニルホスフェート(PPKTP)結晶または周期分極反転した化学量論的タンタル酸リチウム(PPSLT)結晶へのアクセスを得ることができる。
【0096】
上述の光周波数混合モジュールは、その内部構成要素の1またはそれ以上の自動チューニングと、入力光電場の一方または両方の波長のチューニングの結果として、出力電場の波長を自動的に選択する手段を提供する。特に、これは出力電場の伝播位置または角度に偏差が加わらないことによって達成される。
【0097】
さらに、光電場ダンパを組み込むと、当該分野で現在使用されているものと比較して、出力電場内に含まれる1つ以上の入力電場の波長における望ましくない成分の除去に対するより単純な解決策を提供する。
【0098】
結果として、オペレータは、出力電場に対して任意のステアリング光学系を再調整する必要がなく、したがって、光学周波数混合モジュールの使用をより簡単にしつつ、この分野で知られているシステムに関するダウン時間を短縮することができる。これにより、ここで説明している光周波数混合モジュールは、商業的な「ターンキー」光周波数混合モジュールとしての使用に非常に適したものとなる。
【0099】
1またはそれ以上の入力光電場の光子を周波数混合して出力光電場を生成するための非線形媒質と、前記非線形媒質によって生成された出力光電場の波長を選択するために前記非線形媒質を前記1またはそれ以上の入力光電場に自動的に位相整合させる非線形媒質チューナと、第1の方向補正光学系とを具える光周波数混合モジュールが記載されている。非線形媒質に対する第1の方向補正光学系の位置は、出力光電場の選択された波長に依存し、したがって、この電場の位置および伝搬角度が一定に維持され、その波長に依存しないことが保証される。したがって、光周波数混合モジュールは、出力電場の位置や伝搬角度に偏差を与えることなく、出力電場の波長を自動的に選択する手段を提供する。
【0100】
明細書を通して、文脈が他のことを要求しない限り、用語「具える」または「含む」、または「具えている」または「含んでいる」などの派生語は、記載された整数または整数群を含むが、他の整数または整数群を除外するものではない。
【0101】
さらに、記載中の任意の先行技術への言及は、当該先行技術が共通の一般知識の一部を形成することを示すものと解釈すべきではない。
【0102】
前述の本発明の説明は、例示および説明のために提示されたものであり、網羅的であること、または本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。記載された実施形態は、本発明の原理およびその実際的な適用を最も良く説明し、それにより、当業者が様々な実施形態において、また企図された特定の用途に適した様々な変更をもって本発明を最も有効に利用できるように選択および記載されている。したがって、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、さらなる変更または改良を組み込むことができる。