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特許7110114製紙プロセスにおけるサイジングを向上させるための方法及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】製紙プロセスにおけるサイジングを向上させるための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/16 20060101AFI20220725BHJP
   D21H 17/34 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
D21H21/16
D21H17/34 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018555578
(86)(22)【出願日】2017-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 US2017029069
(87)【国際公開番号】W WO2017189401
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-04-20
(31)【優先権主張番号】15/137,797
(32)【優先日】2016-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515050220
【氏名又は名称】エコラブ ユーエスエイ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン ウィリアム シー
(72)【発明者】
【氏名】ベンズ ブラッドレイ
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-088644(JP,A)
【文献】特表2016-501321(JP,A)
【文献】特開2016-056455(JP,A)
【文献】特開昭61-252398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 21/16
D21H 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙プロセスによって製造された紙をサイジングする方法であって、
前記製紙プロセスのヘッドボックスにおいて、またはその前に、サイジングエンハンサーを製紙プロセスの繊維完成紙料に添加することと、ここで、前記サイジングエンハンサーが、ジアリルアミンとアクリルアミドとのコポリマーであり、
乳化サイズ剤を前記繊維完成紙料に添加することと、ここで、前記乳化サイズ剤が、少なくとも1つの第1級または第2級アミン含有モノマーを含む乳化剤ポリマーで乳化された、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸無水物、及びそれらの混合物からなる群から選択されるサイズ剤を含み、前記乳化剤ポリマーはジアリルアミンとアクリルアミドとのコポリマーであり、前記乳化サイズ剤が、前記ヘッドボックスにおいて、またはその前に添加され、
前記サイジングエンハンサーの添加後に、前記乳化サイズ剤が、前記製紙プロセスにおけるスクリーニングの前もしくは後に添加されるか、
前記サイジングエンハンサーの添加前に、前記乳化サイズ剤が、スクリーニングの前もしくは後に添加されると共に、前記サイジングエンハンサーが、スクリーニング後に添加されるか、または、
前記サイジングエンハンサーの添加と同時に、前記サイジングエンハンサー及び前記乳化サイズ剤の両方が、スクリーニング後に添加され、
製紙プロセスに従って前記繊維完成紙料から紙製品を作製することと、を含み、
前記乳化サイズ剤を添加することが、乾燥繊維1トンあたり0.2kg(0.5ポンド)~9.1kg(20ポンド)の前記乳化サイズ剤の投与量率で実行され、前記サイジングエンハンサーを添付することが、乾燥繊維1トンあたり0.2kg(0.5ポンド)~15.9kg(35ポンド)の前記サイジングエンハンサーの投与量率で実行され、
前記乳化サイズ剤が、0.01重量%~40重量%の前記サイズ剤、及び0.001重量%~20重量%の乳化剤ポリマーを含む、方法。
【請求項2】
前記乳化サイズ剤が、前記繊維完成紙料が白水で希釈されたストック完成紙料の流れに添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サイジングエンハンサーが、前記製紙プロセスにおけるスクリーニングの前に、前記ストック完成紙料に添加される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サイジングエンハンサーが、前記製紙プロセスにおけるスクリーニングの後に添加される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記乳化サイズ剤及び前記サイジングエンハンサーが、前記製紙プロセスにおけるスクリーニングの後に、前記ストック完成紙料の流れに同時に、または連続して添加される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記乳化サイズ剤が、水中油型エマルジョンを含み、前記水中油型エマルジョンが、1~60mol%のジアリルアミンを含む乳化剤ポリマーで乳化されたアルケニルコハク酸無水物を含み、前記乳化剤ポリマーの残部が、アクリルアミドを含み、前記乳化サイズ剤が、約0.01~約10ミクロンの範囲のエマルジョン粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記サイジングエンハンサーの前記ポリマーが、ジアリルアミンと、少なくとも1%のAcAmとのコポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記乳化サイズ剤が、8~12重量%の前記サイズ剤、及び1~5重量%の前記乳化剤ポリマーを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記乳化サイズ剤の前記乳化剤ポリマーが、約10~約40%の範囲のモルパーセントのジアリルアミンを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記サイジングエンハンサーを添加することが、乾燥繊維1トンあたり0.9kg(2.0ポンド)~5.7kg(12.5ポンド)の前記サイジングエンハンサーの投与量率で実行される、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、紙及び板紙の製造におけるサイジングを改善するための組成物及び方法に関する。より具体的には、本開示は、製紙プロセスにおけるアルケニルコハク酸無水物エマルジョンなどの、サイズ剤のサイジング性能を向上させるための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙業界では、「サイジング」は、液体(特に水)または蒸気による浸透に対する抵抗性を与えるように紙を処理することである。サイジングはまた、インク保持を改善するために用いられる。親水性液体浸透(通常は水)に対するそのような抵抗性を付与することは、製紙プロセス及び最終製品の両方において、紙の重要な特性である。サイズ剤は、木材繊維の液体浸透に対する抵抗性を高めるために製紙プロセスにおいて使用される。液体の吸収に対する抵抗性は、紙製品が変換プロセス(印刷またはラミネート加工など)中に意図的に濡らされるか、または偶発的に濡れる(包装容器または新聞)場合に望ましい。
【0003】
一般に、水浸透に対する抵抗性は、製紙プロセスのウェットエンドにおけるサイズ剤の導入によって達成される。一般的なサイズ剤は、アルケニルコハク酸無水物(ASA)である。ASAは、製紙プロセスにおいて繊維を処理するために一般的に使用される内添サイズ剤であり、繊維をより疎水性にする。内添サイジングは、湿紙を形成する前の木質繊維の処理を指す。ASAは、本質的に非イオン性である水不溶性油である。したがって、ASAは、製紙プロセスに添加される前に乳化されなければならない。ASAの乳化は、水中油型エマルジョンを生成し、また、ASAエマルジョン液滴をカチオン化する。ASA液滴のカチオン化は、エマルジョン安定性の促進に役立ち、ASA保持を補助する。ASAのための一般的なカチオン性乳化剤は、誘導体化デンプン及び合成アクリルアミド系ポリマーを含む。
【0004】
この欄に記載された技術は、特にそのように指定されない限り、本明細書で言及されたいかなる特許、刊行物、または他の情報も、本発明に関する「先行技術」であるという承認を構成することを意図するものではない。さらに、この欄は、検索が行われたこと、または37 CFR§1.56(a)で規定されている他の関連情報が存在しないことを意味すると解釈されるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第3,821,069号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サイズ剤の適用には、多くの考慮が必要である。例えば、製造中のサイズプレスでの再湿潤によって紙が弱くなる程度は、そのサイジングの程度によって影響される。さらに、シートの内添サイジングが高レベルであることは、シートが液体と接触し得る環境においてシートの構造的安定性に寄与する。飲料及び食品包装は、高レベルのサイジングが望ましい板紙及び紙製品の使用の典型的な例である。
【0007】
サイジング材料としてASAを使用することの欠点は、ASAが水溶性でなく、典型的にはASAがセルロース系繊維と適切に接触し、最終製品に所望の効果をもたらすことができるように、エマルジョンとしてパルプ中に均一に懸濁しなければならないことである。ASAの性能に取り組む努力がなされている。しかしながら、従来の方法は、貯蔵寿命、エマルジョン安定性、及び装置使用に関する問題を有する可能性がある。
【0008】
利用可能な技術にもかかわらず、製紙プロセスにおけるサイジング性能及び効率を改善または向上させる必要性が存在する。また、紙及び板紙のサイジングを改善し、製紙プロセスに向上をもたらすサイジング製剤及び方法を開発するために、製紙業界において継続的な工業的必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、製紙プロセスにおけるサイジング処理を向上させるための方法及び組成物に関する。驚くべきことに、乳化ASAサイジング性能は、アミン系化学物質と組み合わされる場合に向上し、ここで両方が、製紙プロセスのウェットエンドに別々にまたは同時に添加される。アミン系化学物質をサイジングエマルジョンと組み合わせることはまた、紙/板紙の強度特性を向上させる能力も有する。
【0010】
少なくとも1つの実施形態では、本開示は、製紙プロセスによって製造された紙をサイジングする方法を含む。この方法は、乳化サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーの各々を、製紙プロセスの繊維完成紙料に、別々に、または同時に添加することを含む。少なくともいくつかの実施形態では、各々は、製紙プロセスのヘッドボックスにおいて、またはその前に添加される。これら及び他の実施形態では、サイズ剤は、少なくとも1つの第1級または第2級アミン含有モノマーを含む乳化剤ポリマーを含む乳化剤で乳化することができる。サイズ剤エンハンサーは、少なくとも1つの第1級または第2級アミン含有モノマーを含むポリマーを含む。少なくともいくつかの実施形態では、サイズ剤エンハンサーのポリマーは、ジアリルアミン(DAA)モノマーを含むコポリマーである。さらなる実施形態では、乳化剤ポリマーはDAAモノマーを含む。
【0011】
少なくともいくつかの実施形態では、サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーの両方が、高濃度ストック完成紙料に添加される。いくつかの実施形態では、サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーの両方を低濃度ストック繊維完成紙料に添加する。なおもさらなる実施形態では、サイズ剤エンハンサーは、繊維完成紙料、低濃度ストックまたは高濃度ストックに添加され、サイズ剤は、低濃度ストック完成紙料に添加される。これら及び他の実施形態では、サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーは、別々にまたは一緒に添加される。少なくともいくつかの実施形態では、各々は、製紙プロセスのヘッドボックスにおいて、またはその前に添加される。
【0012】
少なくともいくつかの実施形態では、乳化サイズ剤は、繊維完成紙料の低濃度ストック完成紙料流に添加され、サイズ剤エンハンサーは、高濃度及び/または低濃度完成紙料流に添加され、各々がヘッドボックスにおいて、またはその前に添加される。これら及び他の実施形態では、乳化サイズ剤を、製紙プロセスにおけるスクリーニングの前または後、サイズエンハンサーの前に添加することができ、乳化サイズ剤は、スクリーニングの前または後に添加され、サイズ剤は、スクリーニングの後、またはサイジングエンハンサーの前、後、もしくはそれと同時に添加され、サイジングエンハンサー及び乳化サイズ剤の両方は、スクリーニング後に添加される。
【0013】
少なくとも1つの実施形態では、サイジングエンハンサーは、製紙プロセスにおけるスクリーニングの前または後に、低濃度ストック完成紙料流に添加される。少なくとも1つの実施形態では、乳化サイズ剤及びサイジングエンハンサーは、製紙プロセスにおけるスクリーニングの後に、同時に、または連続して低濃度ストック完成紙料流にさらに添加される。これら及び他の実施形態では、乳化サイズ剤及びサイジングエンハンサーを、共通の導管または別個の導管を介して同時に添加することができる。
【0014】
少なくとも1つの実施形態では、本開示は、製紙プロセスの繊維完成紙料に乳化サイズ剤を添加することを含む、製紙プロセスによって製造された紙をサイジングする方法を含む。この実施形態及び他の実施形態では、サイズ剤は、DAAモノマーを含む乳化剤ポリマーを含む乳化剤で乳化される。これら及び他の実施形態では、乳化剤ポリマーは、1~60mol%のDAAを有するコポリマーである。少なくともいくつかの実施形態では、乳化サイズ剤は、製紙プロセスのヘッドボックスにおいて、またはその前に添加され、さらなる実施形態では、低濃度ストック完成紙料に添加される。
【0015】
上記及び他の実施形態では、サイジングエンハンサーは、DAAと、少なくとも1%のアクリルアミド(AcAm)、メタクリルアミド、もしくそれらの混合物とのコポリマー、ジメチルアミノエチルメタクリレート-塩化メチル4級ポリマー、グリオキサール化ポリアクリルアミド、炭水化物水性分散液、またはそれらの混合物を含み得る。少なくともいくつかの実施形態では、サイジングエンハンサーは、ジアリルアミンとアクリルアミドとのコポリマー(DAA/AcAm)を含む。
【0016】
これら及び他の実施形態では、サイズ剤は、アルキルケテンダイマー(AKD)、ASA、またはそれらの混合物を含む、様々な適切なサイズ剤を含むことができる。サイズ剤は、乳化剤で乳化され、乳化剤は、少なくとも1つの第1級または第2級アミン含有モノマーを含むポリマーを含む。少なくともいくつかの実施形態では、サイズ剤は、少なくとも1つの第1級または第2級アミン含有モノマーを含むポリマー中に乳化されたASAである。
【0017】
これら及び他の実施形態では、乳化サイズ剤は、水中油型エマルジョンを含むことができる。少なくともいくつかの実施形態では、水中油型エマルジョンは、ASAなどのサイズ剤、及び乳化剤を含む。乳化剤は、1~60mol%の少なくとも1つのアミン含有ビニルまたはアリルモノマーを含むポリマーであり、ポリマーの残部は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルメチルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、N-t-ブチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ビニルアセテート、ビニルアルコール、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される非イオン性モノマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーは、10~60mol%の少なくとも1つのアミン含有ビニルまたはアリルモノマーを含む。
【0018】
さらなる実施形態では、乳化剤のポリマーは、DAAと、少なくとも1%のAcAm、メタクリルアミド、もしくはそれらの混合物とのコポリマー、ジメチルアミノエチルメタクリレート-塩化メチル4級ポリマー、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプンなどの炭水化物水性分散液、またはそれらの任意の混合物を含む。少なくともいくつかの実施形態では、乳化剤のポリマーは、DAAとAcAmとのコポリマーを含む。少なくとも1つの実施形態では、乳化剤は、デンプンと組み合わせたDAAモノマーを含むポリマーを含む。
【0019】
少なくともいくつかの実施形態では、乳化サイズ剤は、0.01重量%~40重量%のサイズ剤を含む。いくつかの実施形態では、乳化サイズ剤は、0.001重量%~20重量%の乳化剤を含む。なおもさらなる実施形態では、乳化サイズ剤は、8~12重量%のサイズ剤、及び1~5重量%の乳化剤を含む。これら及び他の実施形態では、一例として、サイズ剤は、ASAであり得、乳化剤は、DAAとAcAmとのコポリマーであり得る。
【0020】
これら及び他の実施形態では、乳化サイズ剤の乳化剤ポリマーまたはコポリマーは、約1~約99%の範囲のDAAのモル%を有し得る。いくつかの実施形態では、乳化サイズ剤の乳化剤ポリマーまたはコポリマーは、約1~60mol%のDAA、及びいくつかの実施形態では、10~40mol%のDAAを含む。
【0021】
これらの及び他の実施形態では、乳化サイズ剤は、約0.01~約10ミクロンの範囲のエマルジョン粒径を有し得る。
【0022】
これら及び他の実施形態では、サイジングエンハンサーを、乾燥繊維1トンあたり0.5~35ポンドのサイジングエンハンサーの投与量率で完成紙料流に添加することができる。さらなる実施形態では、サイジングエンハンサーは、乾燥繊維1トンあたり1~20ポンドのサイジングエンハンサーの投与量率で添加される。なおもさらなる実施形態では、サイジングエンハンサーは、乾燥繊維1トンあたり2.0ポンド~12.5ポンドの投与量率で添加される。
【0023】
これら及び他の実施形態では、乳化サイズ剤を、乾燥繊維1トンあたり0.5ポンド~20ポンドの乳化サイズ剤の投与量率で完成紙料流に添加することができる。いくつかの実施形態では、乳化サイズ剤の添加は、乾燥繊維1トンあたり0.5ポンド~10ポンドの乳化サイズ剤の投与量率で行われる。
【0024】
これら及び他の実施形態では、本方法は、カチオン性薬剤を製紙プロセスに添加することを含み、カチオン性薬剤は、ミョウバン、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、長鎖脂肪アミン、アルミン酸ナトリウム、置換ポリアクリルアミド、硫酸第二クロム、カチオン性熱硬化性樹脂、ポリアミドポリマー、アミン含有デンプン誘導体、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0025】
これら及び他の実施形態では、本方法は、製紙プロセスに従って完成紙料から紙製品を作製するプロセスをさらに含む。乳化サイズ剤及びサイジングエンハンサーは、紙製品をサイジングするのに十分な量で添加され、紙製品は、サイジングエンハンサーなしで乳化サイズ剤を使用することよりも、液体及び気体を含む流体浸透に対する抵抗性の増大を呈する。
【0026】
少なくとも1つの実施形態では、本開示は、製紙プロセス中に紙をサイジングする方法を含む。本方法は、紙をサイジングするのに十分な量で、水中油型エマルジョンを製紙プロセスに添加することを含む。本方法はまた、スクリーニング後及び製紙プロセスのヘッドボックスにおいて、またはその前に、紙のサイズで水中油型エマルジョンを増強するのに十分な量で、サイジングエンハンサーを製紙プロセスに添加することを含む。いくつかの実施形態では、水中油型エマルジョンは、DAA及びAcAmからなるコポリマーで乳化されたASAを含む。サイジングエンハンサーは、少なくとも1つの第1級または第2級アミン含有モノマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、サイジングエンハンサーは、DAAとAcAmとのコポリマーを含む。
【0027】
本開示はまた、紙のサイジング方法における水中油型エマルジョン及びサイジングエンハンサーの使用に関する。水中油型エマルジョンは、ジアリルアミン及びアクリルアミドを含む(またはそれからなる)コポリマーで乳化されたアルケニルコハク酸無水物を含む。サイジングエンハンサーは、少なくとも1つの第1級または第2級アミン含有モノマーを含む。水中油型エマルジョンは、紙をサイジングするのに十分な量で製紙プロセスに添加される。サイジングエンハンサーは、スクリーニング後及びヘッドボックスにおいて、またはその前に、紙のサイジングにおいて水中油型エマルジョンを向上させるのに十分な量で添加されてもよい。
【0028】
本開示の様々な態様の上記要約は、本開示の各図示された態様またはすべての実装を説明することを意図するものではない。複数の実施形態が開示されているが、本発明のさらに他の特徴、実施形態、及び利点は、本発明の例証的な実施形態を図示及び説明する以下の詳細な説明から、当業者には明らかになるであろう。したがって、詳細な説明は、本来は例示的であり、限定的ではないものとしてみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】製紙プロセスにおける典型的なウェットエンド及び抄紙機の概略図である。
図2】Cobb試験の結果を示すグラフである。
図3】Herculesサイジング試験における試料の比較を示すグラフである。
図4】Herculesサイジング試験における試料の比較を示すグラフである。
図5】Herculesサイジング試験における試料の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、発明を実施するための形態を、以下の図面を具体的に参照しながら説明する。
【0031】
本開示の目的のため、特に指示がない限り、図中の類似の参照番号は、類似の特徴を指す。図面は、本開示の原理の単なる例示であり、本開示を例証された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0032】
本発明者らは、DAAまたはDAA-AcAmコポリマーなどのアミン含有ポリマーで乳化したASAなどのサイズ剤を含む水中油型エマルジョンであり得る、エマルジョンと、いくつかの実施形態では、DAA-AcAmコポリマーなどのアミン含有ポリマーを含む、サイズ剤エンハンサーとの組み合わせの使用が、製紙プロセスにおいて、驚くべきことに、粒径分布パラメータに著しい影響を及ぼすことなくサイジング性能の顕著な改善を提供することを発見した。
【0033】
本明細書で別段に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本文書が優先される。以下の定義は、本出願において使用される用語がどのように解釈されるべきかを決定するために提供されている。定義の体系化は利便性のみを意図しており、いずれの定義もいかなる特定の範疇に限定することも意図しない。
【0034】
「AKD」は、ウェットエンド添加に有用な蝋状粒子の水性分散液の形態の合成サイズ剤である、アルキルケテンダイマーを指す。
【0035】
「ASA」は、通常は抄紙機ウェットエンドに添加する直前にカチオン性デンプンで乳化される合成サイズ剤である、アルケニルコハク酸無水物を指す。
【0036】
「アミン含有ポリマー」は、本明細書では、「少なくとも1つの第1級または第2級アミン含有モノマーを含むポリマー」という語句と互換的に使用される。
【0037】
「アプローチフローシステム」は、ファンポンプからヘッドボックスへのストック流を指す。
【0038】
「チェスト」は、パルプ懸濁液の貯蔵、収集、混合、ブレンド、及び/または化学処理のための撹拌装置を備えた容器を指す。チェストは、水平及び/または垂直であり得る。タワーは、保持時間を提供し、パルプからの下向き/上向きの流れを提供するために、漂白プラントで一般的に使用される特別な種類のチェストである。
【0039】
「硬化」は、紙の乾燥中に生じる、ある特定のサイズ剤及び湿潤紙力増強剤の反応を指す。
【0040】
「脱水」は、製紙プロセスにおける水の除去を指す。脱水技術は、典型的には、抄紙機の主要部の各々に適用され、典型的には、形成部、プレス部、及び乾燥機部からなる。形成部の脱水において、希釈されたパルプ及び水スラリー中に存在する繊維は、紙ウェブを形成し、脱水は、重力による排水及び形成布の下の吸着によって起こり得る。プレス部の脱水において、脱水は、一連のプレスまたは回転ロールのニップを介して加えられる機械的圧力によって追加の水が除去されることによって起こり、湿紙はこの部で固結する。紙が乾燥機部内の一連の蒸気加熱されたシリンダーに接触する際に繊維間結合が発生するため、脱水は蒸発によりさらに生じる。
【0041】
「ファンポンプ」または「ストックポンプ」は、希釈されたストックを抄紙機のヘッドボックスに圧送するために使用される高流量の低ヘッドポンプを指す。ファンポンプは、白水で高濃度ストック完成紙料を受け取り、希釈し、また低濃度ストック完成紙料をヘッドボックスへ送るために装備され得る。
【0042】
「フェザリング(Feathering)」は、紙の吸い上げ及び/またはサイズ剤のレベルが不十分であるために、不規則なパターンでインクが広がる傾向を指す。
【0043】
「繊維完成紙料」は、抄紙機のウェットエンドに供給される顔料、染料、及び充填剤を含むことができるが、これらに限定されない繊維、水、及び他の材料のブレンドを指す。
【0044】
「飛散性サイジング」は、ある特定の紙試料が一時的にその耐水特性を失う傾向を指す。
【0045】
「硬質サイジング」は、水または他の流体による長期間の浸透に対する紙の強い抵抗性を指す。
【0046】
「フローボックス」または「ブレストボックス」とも呼ばれる「ヘッドボックス」は、製紙プロセスの抄紙機の一部を指し、その主な機能は、スライス開口部を通じて、抄紙機ワイヤへと適切な速度で水中の繊維の均一分散を送達することである。ヘッドボックスは、製紙プロセスにおける圧力スクリーンの後に位置付けられる。
【0047】
「加水分解物」は、反応性サイズ剤の分解産物を指し、効率の正味の低下及び可能性のある析出物の問題につながる。
【0048】
「妨害物質」は、滞留助剤、サイズ剤、強化剤等の製紙用添加剤の機能を妨害する、水性混合物中のものを指す。
【0049】
「マシンチェスト」は、高濃度ストックパルプを含有する製紙プロセスにおける容器またはポイントを指す。マシンチェストは、通常、低濃度ストック完成紙料を形成するために希釈され、その後紙にされる前に、高濃度ストックパルプを含有する最後の大きなチェストまたはタンクである。
【0050】
「反応性サイズ」は、繊維の存在下で加熱すると共有結合反応を受ける、ASAまたはAKDなどのサイズ剤を指す。
【0051】
「紙」及び「シート」は、層に形成されている水性セルロース性製紙用完成紙料から(任意に、炭酸カルシウム、粘土等の鉱物充填剤と共に)作製された製紙プロセスの中間体または産物を意味するように交換可能に使用される。文脈によって、紙またはシートは、製紙プロセスの中間体または産物を意味し得る。
【0052】
「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、または特定の文脈で1つの種が意図されていることが明らかにされない限り、結合した繰り返し「マー(mer)」単位からなる任意の有機化学組成物を意味する。
【0053】
「圧力スクリーン」または「スクリーン」は、繊維束及び薄片などの大きな固形物粒子をストックから除去するために使用される、製紙プロセスにおける装置を指す。圧力スクリーンは、製紙プロセスのヘッドボックスの直前に位置付けられる。
【0054】
「サイジング」は、液体(特に水)及び気体/蒸気を含む流体の浸透に対して抵抗性を与える紙の処理を指す。サイジングは、インクの保持を改善する。サイジングはまた、紙の吸水性を低下させ、したがってインクによる筆記性のための状態を作り出す。サイジングされた紙は、多くの他の目的(例えば、印刷、コーティング、接着等)にも使用され、サイズ剤は幅広い作業を満たさなければならない。例えば、それらは吸水性を制御し、水及びインクを保持する能力(ピック抵抗性)を高める。
【0055】
「サイズプレス」は、通常はロール間のパドル及びニップによって、またはゴムロール上に溶液を計量することによって、最初に乾燥された直後に紙の表面に溶液を適用するために、典型的に抄紙機の一部として含まれる装置を指す。典型的には、この溶液は、樹脂、糊、またはデンプンを含むサイズ剤を含み、紙の特性を変えるために適用される。
【0056】
「サイズ反転」は、ある特定の種類のサイジングされた紙が耐水性を徐々に失う傾向を指す。
【0057】
「内添サイジング」は、紙が流体に抵抗するように繊維スラリーの処理を指す。
【0058】
「表面サイジング」は、紙表面にデンプン溶液または他の材料のフィルムを添加することを指す。
【0059】
「表面サイジングされた」は、抄紙機のサイズプレスでデンプンまたは他のサイジング材料で処理された紙を指す。この用語は、「タブサイジングされた」という用語と互換的に使用されるが、より適切に、タブサイズは、紙がサイジング(デンプンまたは糊)のタブに浸漬され、その後に紙がスクイズロール間を通り、空気乾燥される、別の操作として適用される表面サイジングを指す。
【0060】
「ストック」は、製紙プロセスにおける機械的処理(精練または叩解)及び/または化学的処理(サイジング、ローディング、染色等)の後のパルプを指す。
【0061】
「ストックフロー」は、マシンチェストからヘッドボックスまでのストックの流れまたは経路を指す。
【0062】
「スタッフボックス」または「ブレンドボックス」は、マシンチェストから圧送されたパルプが、他のパルプとブレンドまたは混合され得るチェストを指す。スタッフボックスは、製紙プロセス中のマシンチェストの後、及び白水チェストの前に位置する。
【0063】
「高濃度ストック完成紙料」は、希釈前の繊維完成紙料を指し、典型的には、製紙パルプと、約2~5%の典型的な稠度を有する他の材料との混合物である。
【0064】
「低濃度ストック完成紙料」は、白水で希釈された後の繊維完成紙料を指し、典型的には、白水で希釈された後の、製紙パルプ及び他の材料との混合物である。高濃度ストック完成紙料を希釈して、低濃度ストック完成紙料を形成する。
【0065】
「ウェットエンド操作」または「ウェットエンド」は、一般に、パルプ化(または漂白)と紙の湿式プレスとの間の製紙プロセスの一部を指す。典型的には、繊維スラリー、充填剤、及び他の化学添加剤を必要とする製紙プロセスの部分を含む。また、ヘッドボックス、形成ワイヤ、及び湿式プレス部を含むことができ、そこではシートがストック完成紙料から形成され、乾燥機部に入る前に大部分の水が除去される。
【0066】
「白水」は、高濃度ストック完成紙料を希釈して低濃度ストック完成紙料を形成するために、抄紙機または製紙プロセスのウェットエンドで使用される濾液またはプロセス水を指す。白水は、シートの形成中に完成紙料から除去され、リサイクルすることができる。白水は、マシンチェストの後、及びファンポンプにおいて、またはその前に、高濃度ストック完成紙料と組み合わされ、希釈される。
【0067】
「白水チェスト」は、高濃度ストック完成紙料を受け取り、それを白水と混合して低濃度ストック完成紙料を形成するか、または高濃度ストック完成紙料から希釈された後に低濃度ストック完成紙料を受け取る、製紙プロセスにおけるチェスト、タンク、またはポイントを指す。白水チェストは、ファンポンプの前に、マシンチェスト及びスタッフボックスの後に位置し得る。
【0068】
「白水システム」は、抄紙機の白水の流れ回路を指し、パイプ、貯蔵タンク、洗浄装置、形成部からの水、及び戻りフィードを含む。
【0069】
上述の定義または本出願の他の場所で述べられた説明が、辞書において一般に使用されるか、または参照により本出願に組み込まれる出典において示される意味と(明白にもしくは暗に)矛盾する事象においては、本出願及び特に特許請求の範囲の用語は、一般的な定義、辞書による定義、または参照により組み込まれた定義に従うのではなく、本出願における定義または説明に従って解釈されると理解される。上述の見地から、ある用語が辞書によって解釈される場合にのみ理解され得る事象においては、その用語が、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,5th Edition,(2005)(Wiley,John & Sons,Inc.により出版)によって定義されている場合、この定義が、その用語が特許請求の範囲でどのように定義されるかを支配するものとする。また、例示されたすべての化学構造は、あらゆる可能な立体異性体の変更形態も含む。
【0070】
本発明は、多くの異なる形態の実施形態が可能であるが、本開示は、本発明の様々な実施形態を説明するものであり、本開示が、本発明の原理の例示とみなされ、本発明の広範な態様を例証された実施形態に限定するものではないという理解を伴う。
【0071】
本開示の少なくともいくつかの実施形態では、乳化サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーの組み合わせが、紙製品をサイジングするのに十分な量で、製紙プロセスの繊維完成紙料に添加される。得られる紙製品は、サイジングエンハンサーなしで乳化サイズ剤を使用することよりも、流体、液体、または気体の浸透に対する抵抗性の増大を呈する。少なくともいくつかの実施形態では、乳化サイズ剤は、少なくとも1つの第1級または第2級アミン含有モノマーを含むポリマーに乳化されたASAであり、サイズ剤エンハンサーは、少なくとも1つの第1級または第2級アミン含有モノマーを含むポリマーを含み、ASAの確認及び保持の改善をもたらす。
【0072】
製紙プロセスウェットエンド
ここで図1を参照すると、典型的な製紙プロセス(10)のウェットエンド及び抄紙機の概略図が示されている。製紙プロセス及び装置、化学物質及びプロセスプロトコルは、当業者に周知である。いくつかのプロセスは、本発明の新規の概念に影響を及ぼすことなく、ステップ及び順序が異なる場合がある。図1の概略図は、例証及び参照の目的のために示されており、本明細書における本発明の範囲を示された特定の構成に限定するものとして見なすべきではない。
【0073】
製紙プロセスにおけるストック流の上流から下流にかけて、ウェットエンドは、マシンチェスト(12)を含み、精練されたパルプストックが収集され、ブレンド及び化学添加剤の組み込みのために準備される。ブレンドは、マシンチェスト(12)の前または中に行うことができる。本開示の目的で、このポイントからヘッドボックスに向かって、含有されるパルプストックまたはストックは、完成紙料または繊維完成紙料と呼ばれる。また、繊維完成紙料がプロセスの後期に希釈されるまで、それは高濃度ストック完成紙料と呼ぶことができる。
【0074】
マシンチェスト(12)は、スタッフボックス(16)と流体連通している。高濃度ストック完成紙料または繊維完成紙料は、ポンプ(14)(「マシンチェストポンプ」または「MCポンプ」とも呼ばれる)を介して、ブレンドボックスと呼ばれることもあるスタッフボックス(16)に移される。スタッフボックス(16)において、高濃度ストック完成紙料を、他の精練されたパルプストックとブレンドすることができる。
【0075】
その後、高濃度ストック完成紙料は、導管(18)を通ってチェスト(22)(「白水チェスト」または「WWチェスト」とも呼ばれる)に圧送され、その間に高濃度ストック完成紙料は、白水で希釈されて低濃度ストック完成紙料を形成する。弁(20)(「主ストック弁」または「BW弁」とも呼ばれる)は、低濃度ストック完成紙料の流れ及び稠度を調節するために含まれてもよい。
【0076】
WWチェスト(22)に収集された低濃度ストック完成紙料は、導管(24)を通って移動し、ポンプ(26)(「ファンポンプ」とも呼ばれる)を介してヘッドボックス(34)に向かって前方に圧送される。低濃度ストック完成紙料は、導管(28)を通って圧力スクリーン(30)に流れ、ここで低濃度ストック完成紙料をスクリーニングして、大きな汚染物質を除去する。このプロセスはまた、典型的には圧力スクリーンの前に位置付けられた遠心クリーナーなどの1つ以上のクリーナーを含み、低濃度ストック完成紙料中のパルプよりも軽いまたは重い粒子を除去することができる。かかる装置及びプロセスは、当業者に周知である。
【0077】
その後、スクリーニングされた低濃度ストック完成紙料は、抄紙機(36)のヘッドボックス(34)の下流に移動する。繊維をワイヤ上に分配するヘッドボックス(34)は、抄紙機に低濃度ストック完成紙料を導入するものである。典型的な抄紙機はさらに、形成部(38)を含み、ここでシートが形成され、水が除去される。次いで、紙は、より多くの水を除去し、平滑性及び結合を改善するプレス部、蒸気を使用して紙を乾燥させる乾燥機部、及び紙を巻き取る紙リールを含む、抄紙機(36)の典型的な後半部分(図示せず)に移動される(40)。
【0078】
サイジングの適用
本開示は、製紙プロセスにおけるサイジング方法を提供する。少なくともいくつかの実施形態では、この方法は、乳化サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーを別々に調製することと、乳化サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーを製紙プロセスの繊維完成紙料に添加することと、を含む。少なくともいくつかの実施形態では、乳化サイズ剤は、サイズ剤エンハンサーとは別個に、またはそれと同時に、繊維完成紙料に添加される。
【0079】
本開示においてさらに記載されるように、少なくともいくつかの実施形態では、サイズ剤は、乳化剤として機能することができるサイズ剤エンハンサーの量で乳化されて、乳化サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーの組み合わせを形成する。適用において、その組み合わせは、製紙プロセスの繊維完成紙料に添加される。
【0080】
少なくとも1つの実施形態では、サイズ剤エンハンサー及び乳化サイズ剤は、別々に調製される。両方とも、繊維完成紙料、高濃度ストックまたは低濃度ストックに、別々にまたは同時に添加される。少なくともいくつかの実施形態では、サイズ剤エンハンサーは、乳化サイズ剤の前に添加される。
【0081】
さらなる実施形態では、サイズ剤エンハンサーは、製紙プロセスの繊維完成紙料、高濃度ストックまたは低濃度ストックに添加され、乳化サイズ剤は、その後の製紙プロセスの低濃度ストック完成紙料に添加される。いくつかの実施形態では、乳化サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーは、製紙プロセスにおいて繊維完成紙料の低濃度ストック完成紙料に添加される。
【0082】
少なくともいくつかの実施形態では、サイズ剤エンハンサーは、マシンチェスト(12)とヘッドボックス(34)との間の製紙プロセスにおいて繊維完成紙料に添加され、乳化サイズ剤は、ヘッドボックス(34)の前に低濃度ストック完成紙料に添加される。これら及び他の実施形態では、乳化サイズ剤は、ファンポンプ(26)とヘッドボックス(34)との間に添加される。
【0083】
さらなる実施形態では、サイズ剤エンハンサー及び乳化サイズ剤の両方が、低濃度ストック完成紙料に添加される。なおもさらなる実施形態では、サイズ剤エンハンサー及び乳化サイズ剤の両方が、スクリーニング(30)の後及びヘッドボックス(34)の前に、同時にまたは連続して低濃度ストック完成紙料に添加される。同時に添加される場合、サイズ剤エンハンサー及び乳化サイズ剤は、別々の導管及びポートを通って低濃度ストック完成紙料流に注入されるか、または別々の導管が、低濃度ストック完成紙料流の前に、例えば「T」字形導管に接合され、導管(32)内の単一ポートを介して注入される。
【0084】
少なくともいくつかの実施形態では、サイズ剤エンハンサーは、高濃度ストック完成紙料に添加され、いくつかの実施形態では、マシンチェスト(12)内または連続して、及び高濃度ストック完成紙料の希釈前に、添加される。いくつかの実施形態では、サイズ剤エンハンサーは、スクリーニング(30)の前に、低濃度ストック完成紙料に添加され、いくつかの実施形態では、ファンポンプ(26)の前に添加される。上述のように、サイズ剤エンハンサーは、スクリーン(30)とヘッドボックス(34)との間、例えば導管(32)内に、乳化サイズ剤の前、後、またはそれと同時に添加され得る。
【0085】
これら及び他の実施形態では、乳化サイズ剤は、白水チェスト(22)内またはその後、及びヘッドボックス(34)の前に、低濃度ストック完成紙料流に添加される。いくつかの実施形態では、乳化サイズ剤は、白水チェスト(22)とスクリーン(30)との間、及びいくつかの実施形態では、ファンポンプ(26)とスクリーン(30)との間に添加される。上述のように、乳化サイズ剤は、スクリーン(30)とヘッドボックス(34)との間、例えば導管(32)内に、サイズ剤エンハンサーの前、後、またはそれと同時に添加され得る。
【0086】
上記のように、他の実施形態では、サイズ剤をサイズ剤エンハンサーで乳化して、乳化サイズ剤を形成する。組み合わせた乳化サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーは、少なくともいくつかの実施形態では、繊維完成紙料、高濃度ストックまたは低濃度ストック完成紙料に添加される。さらなる実施形態では、この組み合わせは、乳化サイズ剤及び/またはサイズ剤エンハンサーの添加に関して上記のように、低濃度ストック完成紙料に添加される。いくつかの実施形態では、追加量のサイズ剤エンハンサーを、組み合わせた乳化サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーと、別々にまたは同時に、繊維完成紙料に添加することができる。組み合わせた乳化サイズ剤及びサイズ剤エンハンサー、及び追加量のサイズ剤エンハンサーは、乳化サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーの別々または同時の添加に関して上記のように、繊維完成紙料に添加される。
【0087】
サイズ剤
少なくともいくつかの実施形態では、サイズ剤は、ASA、AKD、またはそれらの混合物であり、いくつかの実施形態では、サイズ剤は、ASAである。好適なASA化合物の例としては、C16系以上のアルケニルコハク酸無水物及びそれらのブレンドを挙げることができる。いくつかの実施形態では、適切なASA化合物としては、C18系アルケニルコハク酸無水物、C16/C18系アルケニルコハク酸無水物ブレンド、及びC16系アルケニルコハク酸無水物が挙げられるが、これらに限定されない。さらなるサイズ剤の例としては、ロジン及びフルオロポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。本発明のサイズ剤は、米国特許第8,852,400号、同第8,709,207号、及び同第8,840,759号、ならびに米国特許出願公開第2015/0020988号及び同第2014/0336314号に開示、記載、及び請求されたものからさらに選択することができる。
【0088】
ASAは、無水マレイン酸(MA)と、長鎖内部オレフィンとの高温反応によって一般に産生され、オレフィンとMAとの比が、通常1より大きい。ASAを産生するために使用されるオレフィンの種類は、製品性能に重大な影響を及ぼし得る。商業的ASAサイズで用いられるオレフィンは、典型的には16~18の炭素鎖長を含む。しかしながら、本明細書に記載の水中油型エマルジョンに有用なASAは、異なる炭素鎖長のオレフィンから調製することができることを理解されたい。
【0089】
MA及び種々の内部オレフィンから調製されたASA化合物は、米国特許第3,821,069号に開示されている。MAから調製されたASA化合物、及び内部オレフィンを含むオレフィンの混合物もまた、米国特許第6,348,132号に開示されている。メタセシス反応による内部オレフィンの調製及びASA化合物の調製におけるメタセシス化オレフィンの有用性は、米国特許出願公開第2003/0224945号に開示されている。
【0090】
乳化剤
これら及び他の実施形態では、乳化剤は、少なくとも1つの第1級及び/または第2級アミン含有モノマー(アミン含有ポリマーとも呼ばれる)を含むポリマーであり得る。少なくともいくつかの実施形態では、ポリマーは、DAA(DAAホモポリマーもしくは本質的にDAAホモポリマー)、DAAのコポリマー、または少なくとも部分的にDAAを含む任意のポリマーからなるか、あるいは本質的にそれからなるアミン含有ポリマーであり得る。ある特定の実施形態では、アミン含有ポリマーは、DAA/AcAmコポリマーである。さらに他の実施形態では、アミン含有ポリマーは、DAAホモポリマーとDAA/AcAmコポリマーとの混合物である。
【0091】
これら及び他の実施形態では、乳化剤は、1~60mol%の少なくとも1つのアミン含有ビニルまたはアリルモノマーを含むポリマーであり、ポリマーの残部は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルメチルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、N-t-ブチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ビニルアセテート、ビニルアルコール、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される非イオン性モノマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーは、10~60mol%の少なくとも1つのアミン含有ビニルまたはアリルモノマーを含む。
【0092】
少なくともいくつかの実施形態では、乳化剤のポリマーは、DAAと、少なくとも1%のAcAm、メタクリルアミド、もしくはそれらの混合物とのコポリマー、ジメチルアミノエチルメタクリレート-塩化メチル4級ポリマー、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプンなどの炭水化物水性分散液、またはそれらの任意の混合物を含む。少なくともいくつかの実施形態では、乳化剤のポリマーは、DAA及びAcAmのコポリマーである。
【0093】
これら及び他の実施形態では、乳化剤のポリマー中のDAAのモル%は、1~99%の範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、DAA/AcAmコポリマーなどのポリマーは、主にDAA(AcAmモノマー単位よりも多くのDAAモノマー単位)からなり得る。さらなる実施形態では、アミン含有ポリマー中のDAAのモル%は、1~60、10~60、または10~40であり得る。様々な実施形態では、乳化剤は、本質的にDAA、DAA/AcAm、またはそれらの混合物である。
【0094】
さらなる実施形態では、乳化剤は、サイズ剤エンハンサーを含み、サイズ剤は本質的に乳化剤であるか、またはさらなる乳化剤と混合されるか、もしくは組み合わされる。いくつかの実施形態では、ある量のDAAもしくはDAA/AcAmなどのサイズ剤エンハンサーは、ASAなどのサイズ剤の乳化剤として本質的に使用されるか、またはデンプンもしくは蒸解デンプンなどのさらなる乳化剤と、ASAなどのサイズ剤の乳化剤として組み合わされる。
【0095】
本開示による乳化剤のさらなる例としては、米国特許第8,852,400号、同第8,709,207号、及び同第8,840,759号、ならびに米国特許出願公開第2015/0020988号及び同第2014/0336314号に開示、記載、及び請求されたもののうちの1つ以上が挙げられる。
【0096】
乳化サイズ剤
乳化サイズ剤の調製において、本明細書で開示されるようなサイズ剤は、本明細書に開示されるアミン含有ポリマーを含む乳化剤で乳化される。これら及び他の実施形態では、乳化剤ポリマーの濃度は、例えば、用いられる特定のサイジング組成物、関与する特定のパルプ、特定の操作条件、企図される紙の最終用途等に応じて変化し得る。
【0097】
少なくともいくつかの実施形態では、アミン含有ポリマーの濃度は、10重量部のサイズ剤あたり1~60重量部のポリマーの範囲である。さらなる実施形態では、濃度は、10重量部のサイズ剤あたり1~30重量部のポリマーの範囲である。なおもさらなる実施形態では、10重量部のサイズ剤あたりのポリマーの重量部は、1~5、少なくとも約10、及び10~30の範囲を含む。種々の実施形態では、エマルジョンは、乳化剤としてDAA含有ポリマーで乳化されたサイズ剤としてのASAである。
【0098】
少なくともいくつかの実施形態では、乳化サイズ剤は、0.01~40重量%のサイズ剤を含む。さらなる実施形態では、サイズ剤は、1~20重量%の乳化サイズ剤を含む。なおもさらなる実施形態では、乳化サイズ剤は、8~12重量%のサイズ剤を含む。これら及び他の実施形態では、乳化サイズ剤は、0.001~20重量%の乳化剤ポリマー、または0.1~10重量%の乳化剤ポリマー、または1~5重量%の乳化剤ポリマーを含むことができる。これら及び他の実施形態では、一例として、サイズ剤はASAであり得、乳化剤ポリマーは、DAA及び/またはDAA/AcAmであり得る。
【0099】
これら及び他の実施形態では、例えば、サイズ剤はASA、AKD、またはそれらの混合物であり、乳化剤は、DAAなどの少なくとも1つの第1級及び/もしくは第2級アミン含有モノマーを含むポリマー、またはDAAと、少なくとも1%のAcAm、メタクリルアミド、もしくはそれらの混合物とのコポリマー、ジメチルアミノエチルメタクリレート-塩化メチル4級ポリマー、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプンなどの炭水化物水性分散液、またはそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、サイズ剤は、DAA、またはDAAとAcAmとのコポリマーで乳化されたASAを含む。
【0100】
少なくともいくつかの実施形態では、ASAなどのサイズ剤は、本明細書に開示されるようなサイズ剤エンハンサーの量で乳化されるか、またはさらなる乳化剤と混合/組み合わされる。いくつかの実施形態では、ASAは、サイズ剤のための乳化剤として、及びサイズ剤エンハンサーとして使用される量のDAAまたはDAA/AcAmで乳化される。さらなる実施形態では、DAAまたはDAA/AcAmは、デンプンまたは蒸解デンプンと組み合わされ、ASAサイズ剤を乳化するために使用される。
【0101】
有利なサイジングを得るために、サイズ剤を繊維完成紙料/スラリー全体にできるだけ小さな粒径、例えば2ミクロン未満で均一に分散させることが一般に望ましい。これは、例えば、ストックに添加する前にサイジング組成物を乳化させることによって達成することができる。所望の結果は、通常、平均粒径及び粒径分布を指す。例えば、乳化のための機械的手段は、高速撹拌機、機械的ホモジナイザー、またはタービンポンプを含み得る。後者は、安定化されたサイズのエマルジョンを調製するためにしばしば用いられる。装置は、一般に約0.01~約10ミクロンの範囲のエマルジョン粒径を調製することができなければならない。
【0102】
少なくともいくつかの実施形態では、乳化サイズ剤は、約0.01~約10ミクロンの範囲のエマルジョン粒径を有する。いくつかの実施形態では、粒径は、約0.5~3ミクロンである。ここで、エマルジョンサイズは、Malvern Instruments,Ltd.(Malvern,UK)から入手可能なMalvern Mastersizerレーザー回折器具で得られた体積パーセント分布の中位径を指す。この中位径は、粒子の50%がこの値よりも大きく、かつ50%がその値よりも小さい直径として定義される。エマルジョンのサイズは、加えられるエネルギー及び安定剤の量によって制御することができる。通常、エマルジョンは、所望の希釈を達成するために、サイズ、ポリマー安定剤、及び十分な水の混合物から調製されるであろう。例えば、米国特許第4,657,946号及び同第7,455,751号に記載されているように(それらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)、界面活性剤を添加して乳化を向上させることができる。
【0103】
ある特定の実施形態では、乳化サイズ剤は、本質的にカチオン性であるか、または1つ以上のカチオンもしくは他の正に荷電した部分を産生するように、イオン化または解離することができる1種以上の材料と組み合わせて任意に使用することができる。かかるカチオン性薬剤は、紙のサイジング組成物の保持を助けるための手段として有用であることが見出されており、当業者は、これらを保持剤、補助剤、パッケージ等として一般に参照する。特に適切なカチオン性薬剤としては、例えば、第1級、第2級、第3級、または第4級アミンデンプン誘導体、及び他の窒素置換デンプン誘導体を含むカチオン性デンプン誘導体が挙げられる。かかる誘導体は、トウモロコシ、タピオカ、ジャガイモ、モチトウモロコシ、小麦、及び米を含むすべての種類のデンプンから調製されてもよい。カチオン性薬剤は、エマルジョンの添加前、添加と同時に、または添加後のいずれかに、ストック、すなわちパルプスラリーに添加することができる。最大限の分布を達成するために、カチオン性薬剤をエマルジョンに続いてまたはエマルジョンと組み合わせて添加することが好ましい場合がある。エマルジョン及び/またはカチオン性薬剤のストックへの添加は、湿潤パルプを乾燥ウェブまたはシートに最終的に変換する前に、製紙プロセスの任意の時点で行うことができる。
【0104】
本開示による乳化サイズ剤のさらなる調製方法、さらなる用途、及びさらなる成分及び成分濃度は、米国特許第8,852,400号、同第8,709,207号、及び同第8,840,759号、ならびに米国特許出願公開第2015/0020988号及び同第2014/0336314号に見出すことができる。本明細書で使用される乳化サイズ剤は、「サイジングエマルジョン」、「サイジング混合物」、または「乳化製品」と呼ぶこともできる。
【0105】
サイズ剤エンハンサー
「サイジングエンハンサー」とも呼ばれるサイズ剤エンハンサーは、少なくとも1つの第1級及び/または第2級アミン含有モノマー(アミン含有ポリマー)を含むポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーは、DAAとAcAmとのコポリマーである。サイズ剤エンハンサーのさらなる例としては、DAAと、少なくとも1%のAcAm、メタクリルアミド、またはそれらの混合物とのコポリマー、ジメチルアミノエチルメタクリレート-塩化メチル4級ポリマー、グリオキサール化ポリアクリルアミド、炭水化物水性分散液、及びそれらの任意の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本開示のサイズ剤エンハンサーは、米国特許第8,852,400号、同第8,709,207号、及び同第8,840,759号、ならびに米国特許出願公開第2015/0020988号及び同第2014/0336314号に開示、記載、及び請求される乳化剤のうちの1種以上であり得る。
【0106】
これら及び他の実施形態では、サイズ剤エンハンサーのポリマー中のDAAのモルパーセントは、1~99%の範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、DAA/AcAmコポリマーなどのポリマーは、主にDAA(AcAmモノマー単位よりも多くのDAAモノマー単位)からなり得る。さらなる実施形態では、アミン含有ポリマー中のDAAのモル%は、1~60、10~60、または10~40であり得る。様々な実施形態では、乳化剤は、本質的にDAA、DAA/AcAm、またはそれらの混合物である。
【0107】
一般に、本開示において使用されるサイジングエンハンサーポリマーは、油中水型エマルジョン、乾燥粉末、分散液、または水溶液の形態を取り得る。ある特定の実施形態では、サイジングエンハンサーポリマーは、フリーラジカル開始を使用して水中でのフリーラジカル重合技術を介して調製され得る。
【0108】
他の添加/添加剤
ある特定の実施形態では、本開示の乳化サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーは、本質的にカチオン性であるか、または1つ以上のカチオンもしくは他の正に荷電した部分を生成するように、イオン化または解離することができる1種以上の材料と組み合わせて任意に使用することができる。かかるカチオン性薬剤は、紙のサイジング組成物の保持を助けるための手段として有用であることが見出されており、当業者は、これらを保持剤、補助剤、パッケージ等として一般に参照する。サイジングプロセスにおいてカチオン性薬剤として用いることができる材料には、例えばミョウバン、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、長鎖脂肪アミン、アルミン酸ナトリウム、置換ポリアクリルアミド、硫酸第二クロム、カチオン性熱硬化性樹脂、及びポリアミドポリマーがある。適切なカチオン性薬剤の例としては、第1級、第2級、第3級、または第4級アミンデンプン誘導体、及び他の窒素置換デンプン誘導体を含むカチオン性デンプン誘導体が挙げられる。かかる誘導体は、トウモロコシ、タピオカ、ジャガイモ、モチトウモロコシ、小麦、及び米を含むすべての種類のデンプンから調製されてもよい。さらに、それらはそれら本来の顆粒形態であってもよく、またはそれらはα化された冷水可溶性産物に変換されてもよく、かつ/または液体形態で用いられてもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、追加の化学添加剤を、製紙プロセスのウェットエンドでストックまたは繊維完成紙料に添加することができる。例としては、pHを制御するための酸及び塩基;撥水性または制御された吸水速度のための、ロジン、蝋、ASA、及びAKDなどのサイズ剤、紙の強度及び剛性を改善するために使用されるデンプン及び種々のポリマー、繊維表面に架橋するポリマーなどの湿潤紙力添加剤、印刷グレード紙の光学特性及び表面特性を改善するための、粘土、タルク、TiO(二酸化チタン)などの充填剤、繊維微粉及び充填剤の保持を改善するポリマーなどの保持助剤、排水及びシート形成を改善するための消泡剤、抄紙機の白水中の粘液成長及び他の微生物を制御するための殺微生物剤が挙げられる。さらなる種類の顔料及び充填剤が、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、及び珪藻土などの、処理すべき紙に添加されてもよい。染料は、シートの色を制御するために添加することもできる。
【0110】
投与適用
乳化サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーとの組み合わせは、製紙プロセスにおいて化学添加剤を添加する従来の方法により、繊維完成紙料またはストック流に注入または投与することができる。製紙プロセスに投与され得る乳化サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーの量及び比率は、例えば、用いられる特定のサイジング組成物、関与する特定のパルプ、特定の操作条件、企図される紙の最終用途等に応じて変化し得る。
【0111】
種々の実施形態では、乳化サイズ剤は、乾燥繊維1トンあたり0.05~20ポンドの乳化サイズ剤の用量(lb/ton)(本明細書では受領ベースの乾燥繊維の重量)で用いられる(測定値は、0~13%の水分を含有するリールにおいて製造された紙のものであってもよい)。さらなる実施形態では、乳化サイズ剤は、乾燥繊維1トンあたり0.5~10ポンドの乳化サイズ剤の用量で用いられ、いくつかの実施形態では、乾燥繊維1トンあたり1.5~20ポンドの用量で用いられる。なおもさらなる実施形態では、乳化サイズ剤は、乾燥繊維1トンあたり3~7ポンドの乳化サイズ剤の用量で用いられる。
【0112】
様々な実施形態では、サイズ剤エンハンサーは、乾燥繊維1トンあたり0.5~35ポンドのサイズ剤エンハンサーの用量(lb/ton)で用いられる。さらなる実施形態では、サイズ剤エンハンサーは、乾燥繊維1トンあたり0.5~20ポンドのサイズ剤エンハンサーの用量(lb/ton)で用いられる。なおもさらなる実施形態では、サイズ剤エンハンサーは、乾燥繊維1トンあたり2~12.5ポンドのサイズ剤エンハンサーの用量(lb/ton)で用いられる。
【0113】
少なくとも1つの実施形態では、乳化サイズ剤は、本質的にDAA及び/またはDAA/AcAm中に乳化されたASAを含み、乾燥繊維1トンあたり0.05~20ポンドの乳化サイズ剤の用量(lb/ton)で用いられ、サイズ剤エンハンサーは、DAA/AcAmを含み、乾燥繊維1トンあたり0.5~35ポンドのサイズ剤エンハンサーの用量(lb/ton)で用いられる。
【0114】
さらなる実施形態では、乳化サイズ剤は、本質的にDAA及び/またはDAA/AcAm中に乳化されたASAを含み、乾燥繊維1トンあたり0.05~10ポンドの乳化サイズ剤の用量(lb/ton)で用いられ、サイズ剤エンハンサーは、DAA/AcAmを含み、乾燥繊維1トンあたり0.5~20ポンドのサイズ剤エンハンサーの用量(lb/ton)で用いられる。
【0115】
さらなる実施形態では、乳化サイズ剤は、本質的にDAA及び/またはDAA/AcAm中に乳化されたASAを含み、乾燥繊維1トンあたり3~7ポンドの乳化サイズ剤の用量(lb/ton)で用いられ、サイズ剤エンハンサーは、DAA/AcAmを含み、乾燥繊維1トンあたり2~12.5ポンドのサイズ剤エンハンサーの用量(lb/ton)で用いられる。
【0116】
少なくともいくつかの実施形態では、本開示は、製紙プロセスによって製造された紙をサイジングする方法を提供する。この方法は、製紙プロセスの繊維完成紙料にサイジングエンハンサーを添加することと、乳化サイズ剤を繊維完成紙料に添加することと、を含む。サイジングエンハンサーは、約1~約60%の範囲のモル%のDAAを有するコポリマーを含み、乳化サイズ剤は、0.01~40重量%のサイズ剤及び0.001~20重量%の乳化剤ポリマーを含む。サイズ剤は、少なくとも1つの第1級もしくは第2級アミン含有モノマーを含む乳化剤ポリマーで乳化された、AKD、ASA、またはそれらの混合物からなる群から選択される。サイジングエンハンサーは、乳化サイズ剤と別々に、または同時に添加される。少なくともいくつかの実施形態では、サイジングエンハンサーは、DAAとAcAmとのコポリマーを含む。これら及び他の実施形態では、乳化剤ポリマーは、DAAモノマーを含むことができ、いくつかの実施形態では、乳化剤ポリマーは、本質的にDAAモノマーを含むか、またはDAAとAcAmとのコポリマーを含む。少なくとも1つの実施形態では、乳化剤ポリマーは、デンプンと組み合わされる。
【0117】
少なくともいくつかの実施形態では、本開示は、製紙プロセスによって製造された紙をサイジングする方法を提供する。この方法は、乳化サイズ剤を製紙プロセスの繊維完成紙料に添加することを含む。乳化サイズ剤は、0.01~40重量%のサイズ剤及び0.001~20重量%の乳化剤ポリマーを含む。サイズ剤は、AKD、ASA、またはそれらの混合物からなる群から選択され、乳化剤ポリマーは、DAAモノマーを含む。少なくともいくつかの実施形態では、乳化剤ポリマーは、本質的にDAAモノマーを含むか、またはDAAとAcAmとのコポリマーを含む。少なくとも1つの実施形態では、乳化剤ポリマーは、デンプンと組み合わされる。
【0118】
少なくとも1つの実施形態では、本発明は、本明細書に開示された量の乳化サイズ剤及び/またはサイジングエンハンサーを印刷材料と共に含有する市販パッケージを含む。少なくともいくつかの実施形態では、印刷された材料は、含有された乳化サイズ剤及び/またはサイジングエンハンサーに関する情報を示す。いくつかの実施形態では、印刷された材料は、乳化サイズ剤及び/またはサイジングエンハンサーの調製及び/または使用説明書を示す。
【0119】
ある特定の実施形態では、乳化サイズ剤は、以下、ヘッドボックスの前に繊維完成紙料、高濃度ストック、または低濃度ストック中、ヘッドボックスの前に低濃度ストック完成紙料中、スクリーニングの前に低濃度ストック完成紙料中、ファンポンプの後及びスクリーニングの前に低濃度ストック完成紙料中、スクリーニングの後及びヘッドボックスにおいて、またはその前に高濃度ストック完成紙料中、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される時点で製紙プロセスに添加される。
【0120】
ある特定の実施形態では、サイズ剤エンハンサーは、上記の乳化サイズ剤の添加と組み合わせて、以下、高濃度ストック完成紙料中、低濃度ストック完成紙料中、マシンチェストの後に高濃度ストック完成紙料中、ヘッドボックスにおいてまたはその前に低濃度ストック完成紙料中、スクリーニングの前に低濃度ストック完成紙料中、ファンポンプの前に低濃度ストック完成紙料中、ファンポンプの後に低濃度ストック完成紙料中、ファンポンプの後及びスクリーニングの前に低濃度ストック完成紙料中、スクリーニングの後及びヘッドボックスにおいてまたはその前に低濃度ストック完成紙料中、スクリーニングとヘッドボックスとの間に、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される時点で製紙プロセスに添加される。
【0121】
ある特定の実施形態では、サイズ剤エンハンサー及び乳化サイズ剤はそれぞれ、以下、サイズ剤エンハンサーに次いで乳化サイズ剤、スクリーニングの後にサイズ剤エンハンサー及び乳化サイズ剤、スクリーニングの後にサイズ剤エンハンサー及び乳化サイズ剤、スクリーニングの後にサイズ剤エンハンサー及び乳化サイズ剤、乳化サイズ剤と同時にサイズ剤エンハンサー、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される順で製紙プロセスに添加される。
【0122】
ある特定の実施形態では、混合チャンバを使用して、乳化サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーを製紙プロセスに導入する。かかる混合チャンバの例は、米国特許第7,550,060号、同第7,785,442号、同第7,938,934号、及び同第7,981,251号に開示されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる(例えば、Nalco Company(1601 West Diehl Road,Naperville,Ill.60563)から入手可能なPARETO Mixing Technology、及びUltra Turax、モデル番号UTI-25(IKA(登録商標)Works,Inc.,Wilmington,N.C.から入手可能))。水中油型エマルジョンを導入するために、本明細書に開示された方法において、任意の適切な反応器または混合装置/チャンバを利用できることが想定される。
【0123】
本明細書に開示されるような乳化サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーの組み合わせは、セルロース系及びセルロース系と非セルロース系繊維との組み合わせの両方のすべての種類から調製された紙のサイジングに有用である。セルロース系繊維/代表的な完成紙料としては、例えば、バージンパルプ、リサイクルパルプ、クラフトパルプ(漂白及び未漂白)、亜硫酸パルプ、メカニカルパルプ、ポリマープラスチック繊維、ソーダ、中性亜硫酸セミケミカルパルプ(NSSC)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、砕木パルプ(GWD)、及びこれらの線維の任意の組み合わせが挙げられる。前述のセルロース系繊維のいずれも、漂白されていても漂白されていなくてもよく、それらは、使用前及び/または使用後の再生紙を含むことができる。これらの名称は、パルプ及び製紙産業において典型的に使用される様々なプロセスのうちのいずれかによって調製された木材パルプ繊維を指す。加えて、ビスコースレーヨンまたは再生セルロース系の合成繊維を用いてもよい。
【0124】
従来のサイズ剤とは対照的に、本明細書に開示される乳化サイズ剤及びサイズ剤エンハンサーの組み合わせの使用に対して少なくとも特定の利点があると考えられる。かかる利点としては、サイズ効率の高い増加、付加的な強化、脱水の改善、場合によっては蒸気の減少、ASA加水分解の最小化、コストの低下、及び機械走行性の改善が挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
本明細書に開示される様々な他の実施形態では、本明細書に開示される乳化サイズ剤の溶液は、単独で、または本明細書に開示されるサイズ剤エンハンサーと組み合わせて、抄紙機のサイズプレスにおいて/サイズプレスを介して製紙プロセス中に紙に適用される。少なくともいくつかの実施形態では、溶液は、サイズプレスのロールアプリケータ(浸水ニップ)またはノズルアプリケータを介して適用される。それは最後の乾燥機部の前に配置することができる。かかる用途は、紙の耐水性を改善し、毛羽立ちを低減し、摩耗性を低減し、その印刷特性及び表面結合強度を改善する点で、少なくとも特に有利である。少なくともいくつかの実施形態では、溶液は、蒸解デンプン及びスチレン-ブタジエンラテックスなどの結合剤中に懸濁され得る溶液のコーティングを適用するために、「コーター」を介して添加され得る。これらの適用は、単独で、または本明細書に開示される内添サイジング用途と組み合わせて行うことができる。
【0126】
本開示で参照される特許または刊行物は、本開示に関連して使用され得るか、または本開示の実施形態及び特許請求の範囲に関する理解及び範囲を拡張し得る、特許及び刊行物に報告されている化学物質、材料、機器、統計分析、及び方法論を記載及び開示することを含む、あらゆる目的のために、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に引用されたすべての参考文献は、当該分野における技術のレベルを示すものとして解釈されるべきである。本明細書中のいかなるものも、本発明が先行発明によって、かかる開示よりも先行する資格がないと認めるものとして解釈されるべきではない。
【0127】
上記は、以下の実施例を参照することによってさらに理解されるであろう。これらは例証を目的として提示され、本開示の範囲を限定することを意図していない。特に、実施例は、本開示に固有の原理の代表的な例を示し、これらの原理は、これらの実施例に詳述された特定の条件に厳密に限定されるものではない。結果として、本開示は、本明細書に記載される実施例に対する様々な変更及び修正を包含し、かかる変更及び修正は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつその利点を減少させることなく行われ得ると理解すべきである。したがって、かかる変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
【実施例1】
【0128】
サイズ剤エンハンサーを乳化サイズ剤と共に使用する効果を示すために種々の研究が行われた。図2において、DAA/AcAmで乳化したASAを含む、乳化サイズ剤の試料(試料A2)、及びDAA/AcAmコポリマーを含む、サイズ剤エンハンサーの試料(試料A3)を使用する、2分Cobb試験の結果が示されている。Cobb値には、「Cobb」というラベルが付けられている。
【0129】
使用した試験方法は、吸水試験(Tappi方法T-441 om-09)と名付けられている。Cobb値は、1平方メートルの紙に対する時間で吸収された水の質量を示す。サイズ剤の効率は、Cobb試験で示すことができる。サイジングの改善は、Cobb数の減少として示される。
【0130】
この試験では、試料A2中の乳化剤の活性投与量は、実質的に安定して保持された(ASAは、DAAで0.6:1.0の比で乳化された)。サイズ剤エンハンサー(試料A3)の投与量は、着実に増加した。グラフの右縦は、試料A2及びA3の投与量(lbs/T活性物質)を示す。グラフの下部は、lbs/Tを示す。
【0131】
図2のグラフは、試行データを示しており、グラフに示されているように試料のパラメータは、Cobbによって測定されたサイジング性能を最適化するように調整された。x軸に示された時間は、各データセットが採取され、化学物質の投与量が変更された時間を示す。示されるデータは、紙/板紙の試料を取り出して試験した時間を示している。各タイムスタンプは、異なるデータセット(異なるCobb試験)である。
【0132】
図から分かるように、サイズ剤エンハンサーの投与量が増加するにつれて(Cobb数が低下するにつれて)、乳化サイズ剤の効率が増加する。図2のグラフは、良好なサイジング性能を与えるDAA/AcAmの最適濃度を示す。サイジングエンハンサーの投与量、この場合はDAA/AcAm(試料A3)が、最適点を超えて増加すると、サイジング効率が低下するにつれてCobb値が増加し始める。
【0133】
図3図5には、サイズ剤エンハンサーを乳化サイズ剤と共に使用する効果のさらなる結果が示されている。図3図5のグラフの各々において、サイジング性能は、Herculesサイジング試験装置(「HST」)を使用する、Herculesサイジング試験において測定した。かかる試験及び試験装置は、当業者に周知である。HSTは、酸性インク溶液が紙/板紙試料に浸透し、光源の反射率を所定の値まで低下させるのにかかる時間を測定する機器である。試料の液体抵抗が大きいほど、酸性インク溶液が浸透するのにかかる時間が長くなる。したがって、HST数が増加するにつれて、サイジング性能が向上する。これは、Cobb数が減少するにつれて、サイジング性能が向上する、Cobb測定の逆である。
【0134】
図3に示すグラフを参照すると、HSTによってサイジング性能について実行され、測定された3つの異なるサイジングプログラムの結果が示されている。y軸は、秒単位のHST値であり、x軸は、活性試料組成物のlb/Tを示し、この場合、製造された紙の量に基づいて添加された試料組成物の活性量(製造された紙1トンあたりに投与されるポンド)である。
【0135】
図3において、試料B1は、本明細書に開示されるように、単独でDAA/AcAmを含むサイズ剤エンハンサーを表し、ASAなどのいかなる乳化サイズ剤またはサイズ剤も含まないウェットエンド添加剤として、DAA/AcAm自体を投与することを表す。このグラフから分かるように、試料B1の結果は、DAA/AcAm(x軸)の増加と共に、サイジングエンハンサー単独ではHST値が改善しないことを示している。
【0136】
試料B3は、Nalsize(登録商標)7541の名称で市販されており、Nalco Company(1601 West Diehl Road,Naperville,Ill.60563)から入手可能な乳化剤で乳化されたASAを含む、乳化サイズ剤を表す。図3から分かるように、ASAを乳化するために使用される乳化剤の量は、シートに添加される乳化剤の量が、1lb/Tから3lb/T活性組成に増加するように増加されたが、ASAの用量は、同じ1lb/Tのままであり、それによって乳化剤とサイズ剤との比が増加する。
【0137】
試料B2は、Nalsize(登録商標)7541の代わりに、本明細書に開示される乳化剤としてDAA/AcAmを使用すること以外は、試料B3と同じである。同様に、試料B2のサイズ剤ASAを、乳化剤(DAA/AcAm)でシートに投与される前に乳化した。ASAを乳化するために使用される乳化剤の量は、シートに添加される乳化剤の量が、1lb/Tから3lb/T活性ポリマーに増加するように増加されたが、ASAの用量は、同じ1lb/Tのままであり、それによって乳化剤とサイズ剤との比が増加する。
【0138】
1lb/TのASAサイズ剤及び漸増量の乳化剤(Nalsize(登録商標)7541)を表す試料B3に関して、結果は、シートに添加される乳化剤の量が増加するにつれて、サイジング性能がわずかに改善することを示す。しかしながら、本明細書に開示されるように、1lb/TのASAサイズ剤及び漸増量の乳化剤(DAA/AcAm)を表す試料B2に関して、結果は、ASAサイズの量は一定であるが、本明細書に開示されるように、より多くのDAA/AcAmを添加することにより、サイジングを著しく改善する。
【0139】
試料B1は、増加した量のエンハンサー(この場合DAA/AcAm)の存在だけでは、サイジングを著しく改善しないことを示す。しかしながら、試料B2は、乳化ASAサイズ剤の存在下での本明細書に開示されたサイジングエンハンサー(DAA/AcAm)の増加量が、固定量のASAサイズのサイジング効率を劇的に改善することを示す。これは、試料B1の結果を見るときに観察された傾向に基づく、予期しない結果であった。図3のグラフによって示されるように、本明細書に開示されるような乳化剤として使用されるDAA/AcAmは、試料B3の市販の乳化剤と比較して顕著な性能上の利点を有する。
【0140】
図3の試験及びグラフに関して、試料B1は、1% HST酸性インクを使用して試験し、試料B2及びB3は、20%酸性インクを使用して試験したことに言及することが重要である。酸性インク濃度の増加は、これらの方法によって提供される高いサイジング性能によるものであり、サイズ剤なしでDAA/AcAmを単独で投与した場合、他の方法と比較してサイジング性能がほとんど得られないことを示している。
【0141】
図4に示すグラフを参照すると、図3の試験と同様の試験が、試料C1、C2、及びC3に対して行われた。試料C1及びC2は、それぞれ試料B1及びB2と同じである。図4のグラフのy軸のスケールの変化は、図3のグラフのそれと比較して、分離の差異を説明することに留意することが重要である。20%酸性インクを使用して、試料C2及びC3を試験した。
【0142】
試料C3は、DAA/AcAmで乳化したASAを含む乳化サイズ剤である。試料B3とは対照的に、C3の乳化剤とサイズ剤との乳化比は、この場合固定され、変化しなかった。代わりに、シートに添加されたASAの量が増加した。このように、添加されるDAA/AcAmの量が増加しているにもかかわらず、シートにはサイズ剤(ASA)がより多く存在した。
【0143】
試料C3について示されるように、サイズ剤(ASA)の量が、1lb/Tに固定された試料C2と比較して、追加のサイズ剤(ASA)の存在は、DAA/AcAmの存在下でのサイジング性能を有意に改善した。示されるように、DAA/AcAmが乳化剤として使用される場合、サイジング応答は、使用されるサイズ剤の量と相関する。この試験はまた、乳化比及び/または製紙プロセスに添加されるサイズ剤の量を調整することによって、サイジング性能を実際に「調整する」ことが可能であることを実証する。
【0144】
図5に示すグラフを参照して、製紙プロセスのウェットエンドにサイズ剤エンハンサーを添加する効果を示す試験を行った。試料D1は、本明細書に開示されるように、1:1の比でDAA/AcAmで乳化されたASAを含む乳化サイズ剤である。試料D2は、1:1の比でNALSIZE(登録商標)7541で乳化されたASAを含む乳化サイズ剤である。試料D3及びD4は、乳化剤としてDAA/AcAm及びNALSIZE(登録商標)7541をそれぞれ用いた固定乳化比における、1lb/T ASAの基準サイジング性能を表す。D3の線は、1lb/T ASA及び1lb/TのDAA/AcAmを表し、D4の線は、1lb/T ASA及び1lb/TのNalsize 7541を表す。
【0145】
試験のために、DAA/AcAmをサイズ剤エンハンサーとして使用した。試料D1及びD2については、乳化サイズ剤及びサイジングエンハンサーを、サイジングエンハンサー、DAA/AcAmを最初に投与し、次いで乳化サイズ剤を連続的に添加した。試料D1及びD2について、1、2、及び3lb/TのDAA/AcAmを添加した。このように、試料D1は、合計2、3、及び4lb/TのDAA/AcAmを有し、試料D2は、合計1、2、及び3lb/TのDAA/AcAm及び1lb/TのNalsize(登録商標)7541を有していた。
【0146】
グラフから分かるように、サイズ剤エンハンサー(この場合DAA/AcAm)の存在は、試料D1及びD2の両方における乳化サイズ剤のサイジング性能を改善する。この効果は、ASAが最初にDAA/AcAmで乳化された試料D1について有意により顕著であった。
【0147】
図示されているように、製紙プロセスのウェットエンドに使用されるDAA/AcAmなどのサイズ剤エンハンサーの存在は、サイジング効率を改善または向上させることができる。乳化剤及びエンハンサーが同じである場合、例えば、乳化剤及びエンハンサーの両方がDAA/AcAmである場合に、この効果が著しく高まることが示される。
【0148】
本発明は、多くの異なる形態で具現化され得るが、本発明の特定の実施形態が、図面に示され、本明細書において詳細に説明されている。本開示は、本発明の背景及び原理の例示であり、本発明を例証された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。本明細書の任意の箇所で述べられているすべての特許、特許出願、科学論文、及び任意の他の参照された資料は、それらが本開示の方法及び組成物に関連する限り、材料、配合物、配合方法、ならびに作製、実施、及び使用の方法を提供することを含む、あらゆる目的のために、参照によりそれら全体が組み込まれる。さらに、本発明は、本明細書に記載され、本明細書に組み込まれる、様々な実施形態の一部またはすべての、あらゆる可能な組み合わせを包含する。
【0149】
上記の開示は例示的であることを意図とし、限定的ではない。本明細書は当業者に多くの変形形態及び変更形態を示唆するであろう。これらの変更形態及び変形形態のすべては、用語「含む」が、「含むがそれに限定されない」を意味する特許請求の範囲に含まれることを意図している。当業者は本明細書に記載の特定の実施形態に対する他の等価物を認識するであろうが、その等価物もまた特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【0150】
本明細書に含まれる「実施形態(複数可)」、「開示」、「本開示」、「本開示の実施形態(複数可)」、「開示された実施形態(複数可)」等の言及は、先行技術として認められていない本特許出願の明細書(特許請求の範囲及び図面を含む文書)を指す。
【0151】
本明細書にて開示されたすべての範囲及びパラメータは、その範囲に含まれる任意の及びすべての部分範囲、ならびに端点の間のすべての数字を包含するものとして理解される。例えば、「1~10」の記載された範囲は、最小値1と最大値10との間の(及びそれを含む)任意かつすべての部分範囲を含むと考えられるべきである。すなわち、最小値1以上(例えば、1~6.1)で始まり、最大値10以下で終わるすべての部分範囲(例えば、2.3~9.4、3~8、4~7)、ならびに最終的に、その範囲内に含まれる各数1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10である。
図1
図2
図3
図4
図5