(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】知的噴霧システム
(51)【国際特許分類】
B05D 1/02 20060101AFI20220725BHJP
B05B 12/08 20060101ALI20220725BHJP
B05B 17/00 20060101ALI20220725BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20220725BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
B05D1/02 D
B05B12/08
B05B17/00
B05D3/00 D
B05D3/12 Z
(21)【出願番号】P 2019500856
(86)(22)【出願日】2017-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2017066609
(87)【国際公開番号】W WO2018011010
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-07-06
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507203353
【氏名又は名称】バイエル・クロップサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100104617
【氏名又は名称】池田 伸美
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー、グートマン
(72)【発明者】
【氏名】バイロン、リード
(72)【発明者】
【氏名】クリス、ピーナール
(72)【発明者】
【氏名】ピーター、ジャーディン
(72)【発明者】
【氏名】ガエル、ファージュ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル、ツィマーマン
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-009474(JP,A)
【文献】米国特許第09296551(US,B2)
【文献】特表2014-527445(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013109785(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0150355(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102541030(CN,A)
【文献】特開平06-007710(JP,A)
【文献】特開2006-034251(JP,A)
【文献】特開2009-034361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A01M 1/00 - 99/00
B05B 1/00 - 3/18
B05B 7/00 - 9/08
B05B 12/00 - 12/14
B05B 13/00 - 13/06
B05B 17/00 - 17/08
B05D 1/00 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性物質を塗布する方法であって、以下のステップ:
活性物質濃縮液を含有し、電子記憶部を有する交換可能なカートリッジを利用可能にするステップ、
携帯式噴霧装置であって、容器、前記カートリッジを前記携帯式噴霧装置へ接続するための手段、制御部、および噴射ノズルを含む携帯式噴霧装置、を利用可能にするステップ、
前記容器に希釈剤を注ぐステップ、
前記交換可能なカートリッジを前記噴霧装置へ接続するステップ、
ユーザが1つまたは複数の対象物へ前記活性物質を塗布するステップであって、前記活性物質濃縮液および前記希釈剤の流量が、前記活性物質濃縮液および前記希釈剤が前記噴射ノズルを通って一定の混合比を持つ混合物として前記噴霧装置から排出されるように前記制御部を利用して制御される、ステップ、
前記制御部を利用して塗布された活性物質濃縮液の量を判定するステップ、
前記制御部を利用して前記カートリッジに残る前記活性物質濃縮液の量を判定するステップ、
前記カートリッジに残る前記活性物質濃縮液の量を前記記憶部に記憶するステップ、および
前記塗布された活性物質についての情報および前記塗布された活性物質の量を携帯通信手段を用いて外部コンピュータシステムへ伝達するステップ、
を含んでなり、
前記活性物質は、農業用殺虫剤、殺虫剤、除草剤または殺菌剤であり、
前記容器は、ユーザの背中で輸送できるようにストラップを備えており、
前記噴射ノズルは交換可能であり、
前記噴射ノズルが前記噴霧装置に接続されている場合のみ、前記制御部が、前記カートリッジからの活性物質、前記容器からの希釈剤を噴射ノズルの方向へ送り始め、
前記混合比の情報が前記記憶部に記憶されており、
前記制御部は、前記
記憶部からの前記混合比の情報を読み取り可能であり、
前記制御部は、前記混合比を決定し、それに応じて、前記希釈剤および濃縮液の流量を調整する、方法。
【請求項2】
以下の情報:
前記噴霧装置の前記ユーザについての情報、
前記塗布を行った場所の情報、および/または
前記塗布の継続時間の情報、
が、前記外部コンピュータシステムへ伝達されることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
以下の構成要素:
希釈剤を保持する容器、
噴射ノズル、
前記希釈剤を前記噴射ノズルの方向へ送る手段、
活性物質濃縮液の入った交換可能なカートリッジを前記噴霧装置へ可逆的に接続する手段、
前記活性物質濃縮液を前記噴射ノズルの方向へ送る手段、および
前記活性物質濃縮液および前記希釈剤が前記噴射ノズルを通って一定の混合比を持つ混合物として排出されるように前記活性物質濃縮液および前記希釈剤の流量を制御する制御部
を含む携帯式噴霧装置;
交換可能なカートリッジであって、前記カートリッジを前記噴霧装置へ可逆的に接続する手段、前記活性物質濃縮液および電子記憶部を含む、交換可能なカートリッジ;並びに
外部コンピュータシステム;
を含んでなるシステムであって、散布工程中に塗布された活性物質濃縮液の量を判定し、前記散布工程の後に前記カートリッジに残る活性物質濃縮液の量を判定して前記電子記憶部に記憶させ、および実施された散布工程についての情報を携帯通信手段を用いて前記外部コンピュータシステムへ伝達させるように構成されたものであり、
前記活性物質は、農業用殺虫剤、殺虫剤、除草剤または殺菌剤であり、
前記容器は、ユーザの背中で輸送できるようにストラップを備えており、
前記噴射ノズルは交換可能であり、
前記噴射ノズルが前記噴霧装置に接続されている場合のみ、前記制御部が、前記カートリッジからの活性物質、前記容器からの希釈剤を噴射ノズルの方向へ送り始め、
前記混合比の情報が前記記憶部に記憶されており、
前記制御部は、前記
記憶部からの前記混合比の情報を読み取り可能であり、
前記制御部は、前記混合比を決定し、それに応じて、前記希釈剤および濃縮液の流量を調整する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液状活性物質の塗布に関する。本発明の主題は、携帯式噴霧装置を使って活性物質濃縮液を交換可能なカートリッジから希釈された形で対象物へ塗布するためのシステムおよび方法であり、散布工程の重要なパラメータがカートリッジおよび/または噴霧装置および/または外部コンピュータシステムとの間で交換される。
【背景技術】
【0002】
農業用殺虫剤、殺虫剤、除草剤および殺菌剤などの活性物質を塗布するための携帯式噴霧装置が知られている(ドイツ特許出願第102013109785A1、米国特許出願第2006/0249223A1、米国特許出願第2006/0102245A1、米国特許出願第2006/0261181A1、米国特許出願第2005/0006400A1)。
【0003】
これに関連して、圧縮式噴霧器と呼ばれる噴霧装置が普及している。この装置は、噴射される液体を保持するためのタンクを含む。通常手動で作動される、タンクの一部を形成する空気圧ポンプは、慣習的なピストンロッド構造およびその作動用ハンドルを含む。この空気圧ポンプは、噴射される液体を利用して空気圧を発生させるのに使用される。タンクは、操作者が周期的にポンプを作動させることで、所望のタンク圧力に達するまで加圧される。噴霧液体に作用する空気圧により、噴霧液体は、タンク内の噴霧液体の中に浸かっているパイプを通って排出され、ホース、ホースの外端の噴射ジェットバルブ、延長パイプ、そして最終的に噴射ノズルを通って、選択された目標の領域へと流れる。
【発明の概要】
【0004】
今日、農業用殺虫剤、殺虫剤、除草剤および殺菌剤は、濃縮液の形態でますます販売されている。濃縮液は、低い輸送費という利点を有する。ユーザは使用する前に活性物質を希釈する必要がある。希釈の指示は、通常は包装材または添付の冊子上で与えられる。
【0005】
しかし、ユーザによって行われる希釈には、以下の理由で不利益がある。
ユーザが活性物質と望まない接触をする可能性がある。濃縮液および希釈剤の量の計算の最中にユーザが間違うことが考えられる。高粘度の濃縮液では、必要量の体積の寸法指示が不正確となることがある。
【0006】
活性物質を不正確に投与することにより、一連の望ましくない結果がもたらされることがある。噴射される物体の処理が効果を持たないことがあったり、過剰投与が発生することがある。投与量についての正式な指示が守られないことが考えられる。投与量が不正確に計算されているために、在庫監視が不良となることが考えられる。
【0007】
多くの場合、活性物質の塗布は注文によりサービスプロバイダによって行われる。そのようなサービスプロバイダの一例は、害虫の大量発生との闘いに携わっている害虫防除業者である。様々な目的のため、とりわけ課金や在庫管理のために、どの人がどの活性物質をどの場所でどれだけの量を投与したかを記録することは重要であり、必要ですらある。これまで、この情報は非体系的で不正確な方法で記録されてきた。
【0008】
加えて、活性物質の全量が1回の塗布の間に使い切られるわけではないと考えられる。結果的に、活性物質濃縮液の残量がカートリッジ内に残る。ここで、例えば、この残量が以降の散布注文に対して十分であるかどうかを決定できるように、この残量がどれだけ大きいかを知っておくとよいであろう。
【0009】
上述した先行技術を出発点として、目的は、ユーザを塗布の最中に支援する上で、活性物質の塗布をもっと効率的で簡単にすることにあり、その結果、塗布中の間違いはほとんど回避されて、塗布工程をよりよく記録できる。
【0010】
本発明によれば、この目的は独立請求項1、9および14の主題を利用することで達成される。好ましい実施態様は、従属請求項内および本明細書内に見られる。
【0011】
本発明の第1主題は、活性物質を塗布する方法であって、
― 活性物質濃縮液が入った、電子記憶部を有する交換可能なカートリッジを利用可能にするステップと、
― 携帯式噴霧装置であって、容器、カートリッジを該噴霧装置へ接続するための手段、制御部および噴射ノズルを含む噴霧装置を利用可能にするステップと、
― 容器に希釈剤を注ぐステップと、
― 交換可能なカートリッジを噴霧装置へ接続するステップと、
― ユーザが1つまたは複数の対象物へ活性物質を塗布するステップであって、活性物質濃縮液および希釈剤の流量が、活性物質濃縮液および希釈剤が噴射ノズルを通って一定の混合比を持つ混合物として噴霧装置から排出されるように制御部を利用して制御される、塗布するステップと、
― 制御部を利用して塗布された活性物質濃縮液の量を判定するステップと、
― 制御部を利用してカートリッジに残る活性物質濃縮液の量を判定するステップと、
― カートリッジに残る活性物質濃縮液の量を記憶部に記憶するステップと、
― 塗布された活性物質についての情報および塗布された活性物質の量を外部コンピュータシステムへ伝達するステップ、
とを含む、方法である。
【0012】
本発明の更なる主題は、
― 携帯式噴霧装置であって、
― 希釈剤を保持する容器と、
― 噴射ノズルと、
― 希釈剤を噴射ノズルの方向へ送る手段と、
― 活性物質濃縮液の入った交換可能なカートリッジを噴霧装置へ可逆的に接続する手段と、
― 活性物質濃縮液を噴射ノズルの方向へ送る手段と、
― 制御部、
という構成要素を含む携帯式噴霧装置と、
― 交換可能なカートリッジであって、該カートリッジを噴霧装置へ可逆的に接続する手段、活性物質濃縮液および電子記憶部を含む交換可能なカートリッジと、
― 外部コンピュータシステム、
とを含むシステムであって、散布工程中に塗布された活性物質濃縮液の量を判定し、散布工程の後にカートリッジに残る活性物質濃縮液の量を判定して電子記憶部に記憶し、実施された散布工程についての情報を外部コンピュータシステムへ伝達するように構成された、システムである。
【0013】
本発明の更なる主題はコンピュータプログラム製品であって、コンピュータシステムの作業用メモリへロードすることができて該コンピュータシステムに
― 混合比を受信するステップと、
― 送り手段を作動させて希釈剤を容器から噴射ノズルの方向へ送り、活性物質濃縮液をカートリッジから噴射ノズルの方向へ送るステップと、
― 希釈剤の流量および/または活性物質濃縮液の流量を調整して、希釈剤および活性物質濃縮液が受信した混合比を持つ混合物として噴射ノズルを通過する、調整するステップと、
― 噴射ノズルを通って送られた活性物質濃縮液の量を判定するステップと、
― カートリッジに残る活性物質濃縮液の量を判定するステップと、
― カートリッジに残る活性物質濃縮液の量をカートリッジの電子記憶部に記憶するステップと、
― 塗布された活性物質濃縮液の量を外部コンピュータシステムへ伝達するステップ、
とを行わせるコンピュータプログラムが記憶されるデータ記憶媒体を含むコンピュータプログラム製品である。
【0014】
本発明によれば、活性物質濃縮液と希釈剤は別の容器に存在する。しかし、ユーザは手作業により自分で活性物質濃縮液を希釈する必要はなく、それどころか混合工程は散布工程の最中に自動的に行われる。好ましい実施態様では、ユーザは、活性物質濃縮液と希釈剤が混合されるべき比率を気にする必要すらなく、正しい混合比は、設定されるべき混合比の情報を濃縮液カートリッジの記憶部から読み出せるように構成された制御部により設定される。
【0015】
加えて、塗布された活性物質の量は自動的に記録され、外部コンピュータシステムへ伝達される。データは自動的に記録されるので、このデータを在庫管理および/もしくは課金のため、ならびに/または更なる目的のために直接使用することができる。手作業の誤った入力による間違いは回避される。
【0016】
また、散布工程の後にカートリッジに残る活性物質濃縮液の残量は判定されてカートリッジ上の記憶部に記憶される。記憶部を読み出すことで、いまだカートリッジに存在する活性物質濃縮液の残量を、カートリッジがなおも噴霧装置にあるかどうかに関わらず、またはカートリッジが散布工程の後に噴霧装置から取り外されて例えば貯蔵場所に置かれたかどうかに関わらず、判定することが可能である。
【発明の具体的説明】
【0017】
本発明に係るシステムおよび方法を特徴づける個々の要素は、以下でより詳細に説明される。この説明において、本発明の個々の主題(システム、方法、およびコンピュータプログラム製品)の間で区別は行われない。そうではなく、以下の説明は、その文脈とは関係なく本発明のすべての主題に同様に当てはまる。
【0018】
本発明の一つの構成要素は携帯式噴霧装置である。「携帯式」という用語は、装置を機械の助けなしに一つの場所から別の場所へ人が輸送可能であることを意味することが意図されている。
【0019】
噴霧装置は、好ましくはユーザが噴霧装置の希釈剤の入った容器を含む一部を背負って持ち運び輸送できるように具現化される(バックパック装置)。噴射ノズルを含む別の一部は片手で運ぶことができる。容器を背負って運ぶために、噴霧装置は好ましくは対応するストラップを備えている。
【0020】
噴霧装置は希釈剤を保持するための容器を含む。希釈剤は、それによって濃縮液を希釈するために濃縮液と混合するのに使用される。
【0021】
濃縮液のように、希釈剤も液体である。「液体」という用語は、ここでは溶液、乳濁液、および懸濁液も含むと理解されたい。
【0022】
好ましい実施態様では、希釈剤は水である。
【0023】
濃縮液は好ましくは活性物質濃縮液である。「活性物質濃縮液」という用語は、より濃縮された形で存在する、使用する前に希釈しないといけない/希釈するべきである活性物質の製剤を意味すると理解される。活性物質は、生物学的作用を持つ物質または物質の混合物である。活性物質の例は農業用殺虫剤、殺虫剤、除草剤および殺菌剤である。さらに好ましい実施態様では、濃縮液は農業用殺虫剤の濃縮液である。農業用殺虫剤は好ましくは害虫と闘うための手段、より好ましくは(ダニ、クモ形類と闘うための)ダニ防除剤、(有害な昆虫と闘うための)殺虫剤または(齧歯動物と闘うための)殺鼠剤である。
【0024】
希釈剤を保持するための容器は、希釈剤に適合する任意の所望の材料から構成することができる。「適合する」という用語は、材料が希釈剤により化学的に冒されないであろうということ、また材料が希釈剤に対して不浸透性であろうということを意味する。
【0025】
容器は、過剰圧力に耐えるタンクとして具現化することができる。過剰圧力は、希釈剤をタンクから排出口の方向へ送るのに使用することができる。
【0026】
好ましい実施態様では、容器は加圧することなく稼働される。容器が過剰圧力に耐える必要がないという事実は、容器を比較的薄肉のより軽い材料で製造可能であるということを意味する。
【0027】
特に好ましい一つの実施態様では、容器は可撓性バッグとして具現化される。そのようなバッグは、好ましくはバッグをユーザの背中へ固定してバックパックのように運ぶことができるようにストラップを有する。
【0028】
本発明に係る噴霧装置はまた、希釈剤を容器から噴射ノズルの方向へ送る手段を有する。既に説明したように、圧力を利用して希釈剤を容器から噴射ノズルの方向へ送ることができる。この圧力は、例えば手動式の、もしくは電動式の空気ポンプまたは圧力カートリッジを使って発生させることができる。
【0029】
希釈剤は、好ましくは電動式ポンプを使って噴射ノズルの方向へ送られる。
【0030】
本発明に係る噴霧装置は噴射ノズルを含む。塗布された混合物は、噴射ノズルを使って所望の空間分布とすることができる。通常、噴射ノズルはそれを通る液体を、とりわけ液体の圧力、液体の流量、および噴射ノズルの形状に依存する特定の液滴粒度分布を持つ液滴に変える。
【0031】
噴射ノズルは好ましくは交換可能であり、その結果、ユーザは塗布および対象物に適した、噴射される材料の液滴粒度分布および空間分布が所望のものである噴射ノズルを選択することができる。
【0032】
噴射ノズルは、例えばランスもしくはピストルの形、または他の形でありうる。噴射ノズルは、好ましくはユーザが片手で保持して対象物へ向けることができるように具現化される。
【0033】
通常、噴射ノズルは散布工程を開始するためにユーザによって動かされるハンドルを有する。バルブは通常ハンドルを動かすことで開けられ、その結果、活性物質濃縮液および希釈剤がそれぞれの容器から噴射ノズルの方向へ、噴射ノズルを通って対象物へと送られる。
【0034】
好ましい実施態様では、交換可能な噴射ノズルおよび制御部は、制御部が噴射ノズルの存在、および/または存在する噴射ノズルの種類を検知できるようにする手段を有する。例えば、噴射ノズルも接続されている場合のみ、制御部が液体をその容器から噴射ノズルの方向へ送り始めることが考えられる。噴射ノズルが接続されていない場合、例えば安全上の理由から送りは起こらない。さらに、制御部が、最適な散布結果となるように、液体を送るためのパラメータを存在する噴射ノズルの種類に適合させることが考えられる。噴射液の所望の空間分布を生成するため、流入する液体の圧力が最低であることを噴射ノズルが必要とすることが考えられる。この最低圧力は、制御部が読み取れるように噴射ノズルにおいて符号化されることがあり、その結果、ユーザはそのようなパラメータを手動で設定する必要はない。
【0035】
通常、圧力は噴射ノズルの上流で高まる。最適な散布結果を得るために、圧力を既定の範囲内にする必要があると考えられる。
【0036】
好ましい実施態様では、制御部に接続される圧力センサは噴射ノズルの上流に取り付けられる。圧力センサを利用して、制御部は圧力が常に既定の範囲内で変動するように希釈剤および/または濃縮液の流量を調整する。
【0037】
バルブは、好ましくは排出口の上流に取り付けられる。バルブは手動または自動的に開けたり閉じたりすることができる。
【0038】
このバルブは、好ましくは手動で作動させることができて、その結果、ユーザは排出口に取り付けられた噴射ノズルを対象物へ向けて、手動でバルブを開いて散布工程を始めることができる。
【0039】
また、バルブが自動的に開けられることも考えられる。例えば、噴霧装置が噴射ノズルの空間的な位置を検出するセンサを有し、特定の位置でバルブを自動的に開ける、または閉じることが考えられる。例えば、噴射ノズルが床面に向けられているとバルブが閉じられ、噴射ノズルが水平位置へ上げられるとバルブが開けられる、ということが考えられる。
【0040】
また、噴射ノズルが対象物に近づいた場合にバルブが自動的に開けられるということが考えられる。これは、例えばセンサまたはGPSの支援を利用して行うことができる。
【0041】
本発明に係る噴霧装置はまた、交換可能なカートリッジを噴霧装置へ可逆的に接続する手段を含む。カートリッジは濃縮液を保持する働きをする。カートリッジおよび噴霧装置は、互いに適合する、カートリッジを噴霧装置へ接続するための手段を有する。カートリッジが噴霧装置へ接続されると、カートリッジに入っている濃縮液をカートリッジから噴霧装置の一部を通して噴霧装置の噴射ノズルの方向へ送ることができる。
【0042】
カートリッジの噴霧装置への接続は、例えばネジによる接続またはバヨネット接続を使ってもたらされる。
【0043】
カートリッジは交換可能であり、つまり、噴霧装置へ接続して、また取り外すことができる。
【0044】
そして、カートリッジは好ましくはまた取り外されて、空になった場合、適切な場合は別の(例えば新しい)カートリッジと交換される。
【0045】
カートリッジは、濃縮液に対して不浸透性で、濃縮液により化学的に冒されることがないように具現化される。
【0046】
好ましい実施態様では、カートリッジは少なくとも部分的にプラスチックで具現化される。プラスチックは多くの物質に対して化学的に不活性であることが知られている。またプラスチックは軽くて良好に加工することができ、事実上任意の所望の形状を作ることができる。
【0047】
好ましい実施態様では、カートリッジは加圧容器として具現化される。カートリッジには、好ましくは濃縮液だけでなく、濃縮液から隔離され、圧力下にある噴射剤が入っている。カートリッジは好ましくはバルブを有する。バルブは、カートリッジが噴霧装置へ接続された場合に、好ましくは自動的に開けることができる。圧力下にある噴射剤は、濃縮液をカートリッジから噴霧装置へと押し出す。噴霧装置内に位置する追加のバルブは、濃縮液がさらに流れるのを阻止する。この追加のバルブは、好ましくはユーザが塗布工程を開始した際に、通常はハンドルを動かすことで開けられる。
【0048】
好ましくは加圧容器として具現化されるカートリッジは、耐圧性であって例えばスプレー缶(例えば髭剃り用クリーム)で使用される、例えばアルミニウムまたはスズめっきをした材料で構成することができる。
【0049】
カートリッジには、バルブ(バルブバッグシステム)へ接続され、濃縮液の入ったバッグが入っていると考えられる。噴射剤は濃縮液で満たされたバッグを取り囲み、濃縮液をカートリッジから押し出すのに必要な圧力を加える(ドイツ特許出願第69820260T2、米国特許出願第5505039、欧州特許出願第0718213Aを参照)。
【0050】
噴射剤および濃縮液がピストンによってお互いに隔離されていることも考えられる(ドイツ特許出願第3934237A1を参照)。噴射剤はピストンへ圧力を加える。バルブが開いている場合、濃縮液はピストンによりカートリッジから押し出される。例えば、ZIMAピストンを使用することが考えられる。
【0051】
カートリッジは使い捨てのカートリッジまたは複数回使用のカートリッジとして具現化することができる。
【0052】
カートリッジは電子記憶部を有する。
【0053】
電子記憶装置という用語は、情報を電子(半導体)部品内に、または電子(半導体)部品に基づいて記憶する、すべての記憶媒体を網羅する。例えば、ROM(読み出し専用メモリ)、PROM(プログラム可能型読み出し専用メモリ)、EPROM(消去可能プログラム可能型読み出し専用メモリ)、EEPROM(電気的消去可能プログラム可能型読み出し専用メモリ、フラッシュEEPROM(例えば、スティック形状USBメモリ)、FRAM(強誘電体ランダムアクセスメモリ)、MRAM(磁気抵抗ランダムアクセスメモリ)、および相変化RAM(相変化ランダムアクセスメモリ)である。電子記憶部は好ましくは情報、例えば散布工程の後にカートリッジにいまだある活性物質濃縮液の残量についての情報が可逆的に記憶、削除できる記憶部である。
【0054】
希釈度または希釈度の情報は、記憶部に記憶される。また、複数の希釈度または複数の希釈度の情報も記憶することができる。そのような希釈度は、所望の効果を得るために濃縮液と希釈剤(通常は水)を混合させる比率を指定する。「希釈度」という用語に加えて、「混合比」という用語もまた本明細書内で使用される。これらの用語は同義であると考えられるべきである。
【0055】
噴霧装置は制御部を有する。制御部はカートリッジの記憶部から情報を読み取ることができる。記憶部を読み出す手段および記憶部そのものは、お互いに適合している。制御部と記憶部の間の通信を実現する、様々な取り得る方法がある。こうした取り得る方法の一部が以下で説明される。
【0056】
読み出すのに取り得る一つの方法は、例えばRFIDタグを備えたカートリッジを与えることである。RFIDタグは記憶部を有する。制御部は、RFIDタグ内の記憶部を読み出すためにそれに応じた手段を有する。
【0057】
この場合、読み出しは非接触形式で行われる。指定された通信形式に加えて、記憶部と制御部の間での、ブルートゥースや近距離通信といった他の非接触式の通信が考えられる。
【0058】
しかし、通信は接触形式でも行うことができる。例えば、カートリッジおよび噴霧装置の両方が、カートリッジが噴霧装置へ接続された際にカートリッジと噴霧装置の間での電気的または光学的な接触をもたらす電気的または光学的な接点を有し、この接触を介して制御部が記憶部にアクセスすることができるということが考えられる。
【0059】
設定されるべき希釈度に加えて、更なる情報、例えば活性物質の種類、バッチ番号、使用期限等をカートリッジの記憶部に記憶することができる。
【0060】
設定されるべき希釈度は、カートリッジの記憶部に直接記憶することができる。また、制御部、カートリッジおよび/またはカートリッジに入っている濃縮液を明確に識別可能となる識別子(一連の文字、識別番号等)がカートリッジの記憶部に記憶されていることも考えられる。制御部が一連の濃縮液についての情報、とりわけ各濃縮液に対して設定されるべき希釈度が記憶されている記録簿を有することが考えられる。制御部が記憶部から識別子を読み出すと、制御部は濃縮液を明確に割り当てて、関連する希釈度を決定することができる。この場合、希釈度はカートリッジの記憶部に直接記憶されていないが、その代わりに希釈度の決定が可能となる情報が記憶されている。この情報により同じ結果が得られる(希釈度がカートリッジの記憶部によって利用可能となった情報を使って制御部により決定された)ので、希釈度がカートリッジの記憶部内の情報を使って制御部により決定される本実施態様は、希釈度がカートリッジの記憶部に直接記憶されている実施態様と同等であると考えられるべきである。
【0061】
本発明に係る噴霧装置は、濃縮液をカートリッジから排出口の方向へ送る手段を有する。この手段は好ましくは電動式ポンプである。特に好ましい一つの実施態様では、ステッピングモータ式投与ポンプが使用される(ドイツ特許出願第102004047584、国際出願第2012048976、ドイツ特許出願第102009006203を参照)。少量の濃縮液も、ステッピングモータ駆動により希釈剤へ加えることができる。
【0062】
制御部は必要な希釈度または所望の希釈度を決定し、それに応じて、希釈剤および/または濃縮液の流量を調整する。ここで異なる変形も考えられるが、いくつかの変形を以下で説明する。
【0063】
例えば、希釈剤が容器から排出口の方向へ送られ、流量が流量計を利用して決定されるということが考えられる。流量計は制御部へ接続することができて、濃縮液と希釈剤の間で一定の混合比が設定されるように、希釈剤の排出口の方向への流量を使って濃縮液の流量を調整することができる。したがって、希釈剤が流れる間に流量が測定され、所望の/必要な混合比(希釈度)の混合物をもたらす、正確な量の濃縮液が希釈剤へ送られる。
【0064】
もちろん、逆の変形も考えられて、濃縮液が排出口の方向へ送られ、流量が測定されて、所望の/必要な希釈度を設定する正確な量の希釈剤が濃縮液へ送られる。
【0065】
また、希釈剤および濃縮液の流量が、所望の/必要な希釈度を得るために調整手段により互いに合わせられるということも考えられる。そのような場合、両者の流量は、対応するセンサを使って記録される。
【0066】
好ましい実施態様では、希釈剤は容器から噴射ノズルの方向へ第1電動ポンプを使って送られる。希釈剤の流量は流量計を使って記録され、制御部へ伝達される。制御部は第2電動ポンプへ接続され、濃縮液および希釈剤が所望の/必要な混合比の混合物として噴射ノズルを通って噴霧装置から排出されるように、噴射ノズルの方向への濃縮液の流量を調整する。
【0067】
噴射ノズルの方向へ流れる液体の単位時間あたりの量は流量計を使って記録される。「液体の量」という用語は、使用される測定方法に応じて、体積または質量を意味すると理解される。
【0068】
流量計は、好ましくは通常は閉管路で使用される、例えば磁気誘導式流量計、浮き子式流量計、超音波流量計、コリオリ質量流量計、熱量流量計、または渦流量計といったものである。しかし、測定用オリフィスまたは動圧プローブを使用することも考えられる。
【0069】
好ましい実施態様では、流量測定は差圧検出器を使って行われる。
【0070】
さらに好ましい実施態様では、羽根車輪センサが流量を測定するのに使用される。測定原理は、羽根車輪が、羽根車輪を駆動する流体の流量に比例した回転数を取るという事実に基づいている。回転数を計測するために永久磁石を羽根車輪へ取り付けることができて、この永久磁石が羽根車輪と共に動く。永久磁石がその上を超えて動く、ホールセンサをパルス計数装置として使用することができる。測定される単位時間当たりのパルス数は羽根車輪の回転数と比例し、したがって流体の流量と比例する。
【0071】
流量測定の詳細は、例えば以下のマニュアルに見られる:K.W.Bonfig、Technische Durchflussmessung(技術的流量測定)、Vulkan-Verlag Essen、3rd edition 2002、ISBN 3-8027-2190-X。
【0072】
活性物質濃縮液および希釈剤は、噴射ノズルを通って混合物として噴霧装置から排出される。
【0073】
希釈剤および濃縮液は、対応する供給管内で噴射ノズルの直前で混ぜ合わされると考えられる。しかし、噴射ノズルの上流に、希釈剤と濃縮液が2つの別の供給管を通って送られる混合室があることも考えられる。そして、希釈剤と濃縮液は混合室に送られた後に、混合物が噴射ノズルを通って噴霧装置から排出される。
【0074】
希釈剤と濃縮液の完全な混合は、適切な手段を使って、例えば静的混合要素を利用して促進することができる。
【0075】
本発明によれば、塗布された活性物質の量が記録される。好ましい実施態様では、制御部は所望の/必要な希釈度を設定するために、ポンプを制御して濃縮液をカートリッジから噴射ノズルの方向へ送らせる。したがって、制御部はどれだけの活性物質が送られたかも「知って」いる。噴霧装置の供給管内に残る残量を無視すると、必要量は塗布量に対応する。
【0076】
この量は制御部の記録部に記録され、記憶される。
【0077】
好ましい実施態様では、塗布された活性物質の量はカートリッジの記憶部に(追加的に、または独占的に)記憶される、またはそこから算出された活性物質濃縮液の残量が前記記憶部に記憶される。カートリッジには、まだ使用されていない場合、通常はちょうど既定の量の濃縮液が入っている。カートリッジから噴射ノズルの方向へ送られた濃縮液の量が記録されると、残量はもともとの量と送られた量の間の差として得られる。この残量または必要量がカートリッジの記憶部へ返送されれば、どれだけの活性物質がすでに使用されたカートリッジ内にいまだ入っているかを非常に容易に判定することができる。
【0078】
したがって、いまだ存在する活性物質の量は、散布工程の間に継続的に監視することができる。ユーザは残量に基づいて現在の量が散布作業を行うのに十分であるかどうかを検知することができる。
【0079】
カートリッジは交換可能なので、散布作業の後にユーザがまだ完全には空になっていないカートリッジを噴霧装置から取り外してその後の散布作業のために貯蔵場所に置くことが考えられる。そして、後でユーザが単に記憶部を読み出すことで、残量が現在の散布作業に十分であるかどうかを判定することができる。
【0080】
また、本発明に係るシステムは外部コンピュータシステムを含む。「外部」という用語は、コンピュータシステムが通常は噴霧装置と共に運ばれず、むしろ一般的には噴霧装置が使用される場所とは別の場所に置かれていることを意味すると理解されるべきである。外部コンピュータシステムは通常は定置されたシステムであり、一方で噴霧装置は様々な場所で使用され、外部コンピュータシステムは常に同じ場所にとどまる。
【0081】
好ましい実施態様では、本発明に係るシステムは携帯型コンピュータシステムも含む。外部コンピュータシステムとは対照的に、携帯型コンピュータシステムは噴霧装置と共に運ばれる。好ましい実施態様では、噴霧装置は携帯型コンピュータシステムを使って操作することができる。携帯型コンピュータは、噴霧装置を操作するためにケーブルを使って(例えばUSBポートを使って)噴霧装置へ接続されることが考えられる。しかし、携帯型コンピュータシステムは非接触インタフェース(遠隔制御)を介して噴霧装置と通信可能であるとも考えられる。赤外線、超音波、ブルートゥース等を使って通信が行われることが考えられる。
【0082】
携帯型コンピュータシステムを利用してユーザは、例えばカートリッジが噴霧装置により検出されたかどうか、どれだけの(残った)量の濃縮液がいまだカートリッジに入っているか、噴射ノズルの上流でどれだけの圧力が設定されているか、またさらに多くのことを検出することができる。
【0083】
携帯型コンピュータシステムを利用してユーザは噴霧装置のデータを閲覧することができて、データおよび制御コマンドを入力することができる。
【0084】
例えばユーザは散布形状を変えるために噴射ノズルの上流での圧力を設定することができる。
【0085】
例えばユーザは携帯型コンピュータシステムを利用して、散布工程についての情報の外部コンピュータシステムへの伝達を始めることができる。
【0086】
好ましい実施態様では、携帯型コンピュータシステムは(例えば、いわゆる「アプリ」という形態の)対応するソフトウェアプログラムを搭載した携帯電話(スマートフォン)である。
【0087】
散布工程の後で、または散布工程の間に、以降の目的のために跳躍工程を記録するために、散布工程の情報を外部コンピュータシステムへ送信することができる。
【0088】
これに関連して、少なくとも使用される活性物質および活性物質の塗布量が送信される。さらに、噴霧装置のユーザの情報(誰が塗布を行ったか)、塗布場所の情報(どの人がどの物体に散布したか)、塗布時間の情報(どれだけ長く塗布が続いたか)、いつ行われたか(曜日、時間)、および更なる情報を外部コンピュータシステムへ送信することができる。
【0089】
この送信は例えば携帯通信手段(例えばGSM=Global System for Mobile communication)を使って行うことができる。また、WLANを使った通信も考えられる。
【0090】
外部コンピュータシステムへの情報の伝達は、様々な装置により行うことができる。例えば、噴霧装置の制御部が情報を送信するために外部コンピュータシステムへの接続を設定することが考えられる。接続は、情報を伝達するために好ましくは携帯型コンピュータシステムと外部コンピュータシステムの間で設定される。
【0091】
これは、散布工程についての情報がまず制御部から短距離の通信チャネル(例えばブルートゥース)を介して携帯型コンピュータシステムへ伝達され、その後、情報は携帯型コンピュータシステムから長距離の通信チャネル(例えばGSM)を使って外部コンピュータシステムへ伝達される、ということを意味する。
【0092】
しかし、噴霧装置の制御部および/または携帯型コンピュータシステムが情報を送信するために固定データ接続(例えばUSB=Universal Serial Busを使って)を使って外部コンピュータシステムへ接続されることも考えられる。
【0093】
本発明は、例示的な実施態様を参照して以下でより詳細に説明されるが、本発明をこうした例に限定することは意図していない。
【0094】
図1は、本発明に係るシステムの実施態様の模式図を示す。本実施態様は噴霧装置(A)、交換可能なカートリッジ(B)、外部コンピュータシステム(C)、および携帯型コンピュータシステム(D)を含む。
【0095】
噴霧装置(A)は希釈剤(11)で満たされた容器(10)を含む。容器(10)は可撓性バッグとして具現化され、開閉可能な閉鎖部材(12)が与えられている。噴霧装置(A)は噴霧装置をユーザの背中で輸送できるようにストラップ(17)を含む。電子的構成要素(例えば制御部など)および送り手段(例えばポンプなど)は筺体(16)内に収容され、そのためこの図には示されていない。交換可能なカートリッジ(B)は筺体へ接続されている。濃縮液はカートリッジ(B)内にある。濃縮液と希釈剤の混合は筺体(16)内で行われる。希釈された濃縮液は可撓性のホース(33)を通って筺体から噴射ランス(31)の方向へ排出される。噴射ランス(31)は手動で動かせるバルブ(32)および噴射ノズル(30)を有する。バルブ(32)が開けられる(ハンドルが動かされる)と、希釈された濃縮液が噴射ノズルを使って分散される。
【0096】
図1において、アンテナ(18)は噴霧装置(A)に取り付けられている。このアンテナは、データを伝達するために噴霧装置を外部コンピュータシステム(C)および/または携帯型コンピュータシステム(D)へ接続できることを象徴するのを目的としている。しかし、データの伝達は必ずしもケーブルのない方式で行われる必要はない。クラウド(60)は外部コンピュータシステム(C)、噴霧装置(A)および/または携帯型コンピュータシステム(D)により形成されるネットワークを表している。
【0097】
携帯型コンピュータシステム(D)はいわゆるスマートフォンとして具現化される。
【0098】
図2は、本発明に係るシステムの構成要素の好ましい実施態様の模式図を示す。このシステムは本発明に係る噴霧装置および本発明に係るカートリッジを含む。
【0099】
本発明に係る噴霧装置は、希釈剤(11)の入った容器(10)、噴射ノズル(30)、希釈剤(11)を容器(10)から排出口(30)の方向へ送る第1ポンプ(15)、バルブ(40)、交換可能なカートリッジ(20)を接続する手段(22b)、カートリッジ(20)内にある濃縮液(21)をカートリッジ(20)から噴射ノズル(30)の方向へ送る第2ポンプ、容器(10)から噴射ノズル(30)の方向への希釈剤(11)の流量を測定するための流量計(2)、圧力計(3)および制御部(1)を含む。
【0100】
容器(10)は可撓性バッグとして具現化され、開閉可能な閉鎖部材(12)が与えられている。
【0101】
希釈剤(11)を容器(10)から噴射ノズル(30)の方向へ送る手段(15)は、
図1において単に流れの方向を示す矢印として模式的に示されている。矢印は、対応する手段が供給管のこの場所に位置する必要があるということを意味するものではない。
【0102】
希釈剤および濃縮液は、一定の混合比を持つ混合物(50)の形で噴射ノズルを通って噴霧装置から排出される。
【0103】
本発明に係るカートリッジ(20)には濃縮液(21)が入っている。カートリッジはカートリッジ(20)を噴霧装置へ可逆的に接続する手段(22a)を有する。また、本発明に係るカートリッジ(20)は記憶部(28)も有する。
【0104】
制御部(1)は記憶部(28)へのアクセスを有する(アクセスは破線で示されている)。
【0105】
制御部(1)は流量計(2)、圧力計(3)、ポンプ(15)およびポンプ(25)にも接続されている。バルブ(40)が(手動でまたは自動的に)開けられると、希釈剤(11)は容器(10)から排出口(30)の方向へポンプ(15)により送られる。希釈剤(11)の流量は流量計(2)を利用して記録される。制御部(1)は流量計(2)により測定される流量に基づいて、ポンプ(25)を利用して希釈剤(11)へ送られる濃縮液(21)の量を調整し、その結果、記憶部から読み出された混合比が設定される。加えて、制御部は噴射ノズルの上流での(圧力計(3)で測定された)圧力が所望の散布形状を生成するために予め規定された範囲内で変動するように希釈剤(11)および濃縮液(21)の流量を設定する。
【0106】
図1に示されるシステムおよび
図2に示される構成要素の使用の典型的な順序は、以下の通りである。
【0107】
ユーザが開閉可能な閉鎖部材(12)を取り外して容器(10)を開ける。ユーザが希釈剤(11)、好ましくは水を容器(10)へと注ぎ、閉鎖部材(12)を利用して容器(10)を閉じる。
【0108】
ユーザが濃縮液(21)が中に入っているカートリッジ(B、20)を取る。カートリッジ(B、20)は新品である可能性もあるが、すでに使用されていることも考えられる。
【0109】
ユーザがカートリッジ(B、20)を噴霧装置へ結合する。結合を行うため、ユーザは相補接続手段(22a)および(22b)を接続する。
【0110】
制御部(1)はカートリッジ(B、20)の記憶部(28)から、自動的に、またはユーザの関与をきっかけとして、情報を読み出す。この情報は、濃縮液(21)の情報、カートリッジに入っている濃縮液(21)の(残った)量、および/または設定されるべき混合比でありうる。
【0111】
識別番号が記憶部(28)に記憶されていて、制御部(1)がこの識別番号を読み出してカートリッジ(B、20)およびその中に入っている濃縮液(21)の身元を内部記録簿に基づいて判定することも考えられる。
【0112】
すべての場合において、制御部(1)はカートリッジ(B、20)の記憶部(28)からデータを読み出して、希釈剤(11)と濃縮液(21)に対する混合比を設定することができる。
【0113】
ユーザが噴射ノズル(30)を対象物へ向けて、バルブ(40)を開ける。希釈された濃縮液が噴射ノズル(30)を通って排出される。ユーザは散布形状を変えることができる。これは、噴射ノズル(30)の上流での圧力を増加させる、または減少させることで行われる。散布形状は、噴霧装置(A)に対して対応する(制御部と通信することができる)入力装置を直接使って、またはリモコン装置として働く携帯型コンピュータシステム(D)を利用することのいずれかにより変化させることができる。
【0114】
送られる濃縮液の量は散布工程の間に決定される。適切な場合、カートリッジ内の濃縮液の残量はカートリッジ上、噴霧装置上および/または携帯型コンピュータシステム上の対応する表示装置を利用してユーザへ表示される。また、まだある残量の代わりまたは残量に加えて、散布条件が一定に保たれていれば現在の残量でまだ足りる時間が指定されることも考えられる。
【0115】
散布工程が終わった後に、濃縮液の残量の情報をカートリッジの記憶部へ返送することができる。
【0116】
ユーザは噴霧装置の入力装置または携帯型コンピュータシステム(D)で入力することで、散布作業の結果を文書に記録することができる。これに関連して、完了した散布工程に対する情報がまとめられる。この情報は、塗布された濃縮液の量、カートリッジ内の濃縮液の残量、ユーザ、使用された噴射ノズル、使用された噴射圧力、散布工程の継続時間、散布箇所、使用された濃縮液、などでありうる。
【0117】
このまとめられた情報は噴霧装置の記憶部、カートリッジの記憶部、携帯型コンピュータシステムの記憶部および/または外部コンピュータシステム(C)の記憶部に記憶することができる。
【0118】
すべての場合において、この情報は散布作業の完了後すぐに、またはユーザの関与をきっかけとして、もしくは自動的に後で、外部コンピュータシステム(C)へ送信される。外部コンピュータシステム(C)への送信はケーブルのない方式で、または情報が記憶される対応する構成要素に接続することで行われる。
【0119】
その結果、情報は外部コンピュータシステム(C)上に存在して、在庫管理、課金、物流計画、当局向けの資料作成、またさらに多くのことなど、様々な目的に使用することができる。