(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/566 20210101AFI20220725BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20220725BHJP
H01M 50/536 20210101ALI20220725BHJP
H01M 50/538 20210101ALI20220725BHJP
H01M 50/56 20210101ALI20220725BHJP
【FI】
H01M50/566
H01M50/545
H01M50/536
H01M50/538
H01M50/56
(21)【出願番号】P 2019526841
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2018023567
(87)【国際公開番号】W WO2019004039
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2017126115
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 一路
(72)【発明者】
【氏名】森 信也
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/085918(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/147425(WO,A1)
【文献】特開2007-273258(JP,A)
【文献】特開2005-44691(JP,A)
【文献】国際公開第2009/128335(WO,A1)
【文献】特開2010-3686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極の一方に接続された複数本の集電タブを有し、前記複数本の集電タブの重なり部と外装缶とが前記外装缶の外側表面から前記重なり部に向けて形成された溶接群で溶接された電池であって、
前記溶接群は、前記外装缶の外側から見た場合の形状がそれぞれ線状である第1溶接部及び第2溶接部を含み、
前記第1溶接部は、前記外装缶と前記複数本の集電タブの全てとを溶接し、
前記第2溶接部は、前記外装缶と前記複数本の集電タブの一部の集電タブのみとを溶接する、電池。
【請求項2】
請求項1に記載の電池において、
前記第2溶接部は、前記外装缶と、前記複数本の集電タブのうち、前記外装缶に接する集電タブのみとを溶接する、電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電池において、
前記複数本の集電タブが2本の集電タブである、電池。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の電池において、
前記第1溶接部及び前記第2溶接部は交わらない、電池。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の電池において、
前記第1溶接部及び前記第2溶接部が少なくとも一個所以上で交わる、電池。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1に記載の電池において、
前記第1溶接部及び前記第2溶接部の前記外装缶の外側から見た場合の形状がそれぞれ円状である、電池。
【請求項7】
正極及び負極の一方に接続された複数本の集電タブの重なり部と、外装缶とを溶接する溶接工程を含む電池の製造方法であって、
前記溶接工程は、前記外装缶の外部から、第1のエネルギー量を有する第1エネルギービームを照射し前記外装缶と前記複数本の集電タブの全てとを第1溶接部により溶接する第1溶接部溶接工程と、
前記第1エネルギービームより小さい第2のエネルギー量を有する第2エネルギービームを照射し前記外装缶と前記複数本の集電タブの一部の集電タブのみとを第2溶接部により溶接する第2溶接部溶接工程とを有する、電池の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電池の製造方法において、
回折格子を用いて1つのエネルギービームを前記第1エネルギービームと前記第2エネルギービームに分岐させることで、前記第1溶接部及び前記第2溶接部を同時に形成する、電池の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の電池の製造方法において、
前記第1エネルギービームと、前記第2エネルギービームとを、別々に位置をずらして照射することで、前記第1溶接部及び前記第2溶接部を形成する、電池の製造方法。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれか1に記載の電池の製造方法において、
前記複数本の集電タブと前記外装缶とを回転させる駆動部、または光学要素を回転させる駆動部を用いることで、前記外装缶の外側から見た場合の形状が円状である前記第1溶接部及び前記第2溶接部を形成する、電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数本の集電タブと外装缶とが溶接された電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の二次電池は、パソコン等の電子機器に組み込んで用いるだけでなく、車両の走行用のモータに電力を供給する電力源として期待されている。リチウムイオン二次電池は、高いエネルギーを得られる代わりに、電池内への金属異物などの混入による内部短絡が発生すると、電池自体の発熱等の問題が発生する可能性がある。
【0003】
従来、外装缶と集電タブとの接続は主に抵抗溶接によって行われている。しかしながらこの抵抗溶接は、溶接過程で電池内部でスパッタが発生し、金属異物が電池内に混入することで、電圧不良による電池の製造品質、安全性、及び信頼性が悪化する課題があった。そのため近年では、外装缶の外側からエネルギービーム、例えばレーザ光を照射して外装缶と集電タブとを溶接することにより、電池内部でのスパッタの発生が防止されている(例えば特許文献1~3参照)。
【0004】
さらに電池内部の電気抵抗を下げるために、電極体の同一極に接続された2本以上の集電タブを外装缶に接続するものがある(例えば特許文献1、2参照)。
【0005】
特許文献1における2本以上の集電タブを外装缶に接続する電池を、
図10を用いて説明する。この電池では、電極体11が挿入された外装缶14の外側からレーザ光を照射して、2本以上の集電タブ12a、12b、12c、12dを外装缶14に1個所の溶接部13で溶接している。その溶接部13の深さは、レーザのエネルギーと照射時間とを調節することにより制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-3686号公報
【文献】特開2015-162326号公報
【文献】特開2016-207412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エネルギービームを用いて電極体に接続された1本の集電タブを外装缶に溶接する場合、十分な溶接強度の確保が必要である。しかし、外装缶の外側から照射されるレーザなどのエネルギービームの出力が高すぎると、溶融部がその集電タブを貫通して電池内部でスパッタが発生してしまう。一般的に集電タブの厚みは外装缶よりも薄く、溶接強度を確保し、かつ溶接部が集電タブを貫通しないようにするためには、照射するエネルギービームの出力を厳密にコントロールする必要がある。
【0008】
エネルギービームを用いて2本以上の集電タブを外装缶に溶接する場合、特許文献1のように複数本の集電タブの重なり部と外装缶とをエネルギービームの照射により1個所の溶接部で溶接する方法が考えられる。しかしながら、溶接強度を確保するための接合面積を得るためには、エネルギービームのスポット径を広くすることが必要であり、集電タブが2本以上となることを考慮すると、照射するエネルギービームの出力は非常に高くする必要がある。集電タブを外装缶に溶接する際のエネルギービームの出力の許容範囲は、スパッタを発生させないための第1条件と、集電タブと外装缶の間に十分な溶接強度を確保するための第2条件とによって決まる。
【0009】
2本以上の集電タブを用いる場合、外装缶及び集電タブの厚みの和のばらつきが大きくなることや、エネルギービームの出力を大きくしなければならないことを考慮する必要がある。エネルギービームの出力には一定の割合でばらつきが含まれるため、その出力が大きくなると、エネルギービームの出力のばらつき範囲の絶対量が増加する。そのため、2本以上の集電タブを用いる場合、エネルギービームの出力のマージンを確保することが困難になるという課題がある。さらに、高出力のレーザ発振器等のビーム生成装置が必要となるため、設備がコストアップするという課題もある。本開示では、エネルギービームの出力がその出力の許容範囲に影響を与えることを考慮して、エネルギービームの出力に対する上記の第1条件と第2条件から求められる出力の許容範囲(絶対量)の割合(%)を出力のマージンの指標として用いる。
【0010】
本開示は、エネルギービームを用いて複数本の集電タブを外装缶に溶接する場合において、エネルギービームの出力を低減しその出力のマージンを十分に確保することで、高品質かつ低コストで生産できる電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る電池は、正極及び負極の一方に接続された複数本の集電タブを有し、複数本の集電タブの重なり部と外装缶とが外装缶の外側表面からその重なり部に向けて形成された溶接群で溶接された電池であって、溶接群は、外装缶の外側から見た場合の形状がそれぞれ線状である第1溶接部及び第2溶接部を含み、第1溶接部は、外装缶と複数本の集電タブの全てとを溶接し、第2溶接部は、外装缶と複数本の集電タブの一部の集電タブのみとを溶接する、電池である。
【0012】
また、本開示に係る電池の製造方法は、正極及び負極の一方に接続された複数本の集電タブの重なり部と、外装缶とを溶接する溶接工程を含む電池の製造方法であって、溶接工程は、外装缶の外部から、第1のエネルギー量を有する第1エネルギービームを照射し外装缶と複数本の集電タブの全てとを第1溶接部により溶接する第1溶接部溶接工程と、第1エネルギービームより小さい第2のエネルギー量を有する第2エネルギービームを照射し外装缶と複数本の集電タブの一部の集電タブのみとを第2溶接部により溶接する第2溶接部溶接工程とを有する、電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る電池及びその製造方法によれば、複数本の集電タブを外装缶に溶接する上で、溶接のためのエネルギービームの出力を低減することができ、エネルギービームの出力マージンの確保や設備コストの抑制が可能になる。したがって本開示は、高品質かつ低コストで生産できる電池およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】
図1Aは、実施形態の一例の非水電解質二次電池の底面側半部の断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の別例の非水電解質二次電池の底面側半部の断面図である。
【
図3A】
図3Aは、実施形態の別例の非水電解質二次電池の底面側半部の断面図である。
【
図4A】
図4Aは、実施形態の別例の非水電解質二次電池の底面図である。
【
図4B】
図4Bは、実施形態の別例の非水電解質二次電池の底面図である。
【
図5】
図5は、実施形態の別例の非水電解質二次電池の底面図である。
【
図6】
図6は、実施形態の別例の非水電解質二次電池の底面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す非水電解質二次電池の底面側半部の断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態の非水電解質二次電池の製造方法の別例において、複数本の集電タブと外装缶とを溶接する方法を示している非水電解質二次電池の底面側半部の断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態の非水電解質二次電池の製造方法の別例において、複数本の集電タブと外装缶とを溶接する方法を示している非水電解質二次電池の底面側半部の断面図である。
【
図10】
図10は、比較例の非水電解質二次電池の底面側半部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、電池の仕様に合わせて適宜変更することができる。また、以下において「略」なる用語は、例えば、完全に同じである場合に加えて、実質的に同じとみなせる場合を含む意味で用いられる。さらに、以下において複数の実施形態、変形例が含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0016】
また、以下では、電池が円筒形の非水電解質二次電池である場合を説明するが、電池は、円筒形電池以外の角形電池等としてもよい。また、電池は、以下で説明するようなリチウムイオン二次電池に限定するものではなく、ニッケル水素電池、ニッカド電池等の他の二次電池、または乾電池、リチウム電池等の一次電池であってもよい。また、電池が有する電極体は、以下で説明するような巻回型に限定するものではなく、複数の正極と負極がセパレータを介して交互に積層された積層型としてもよい。
【0017】
図1Aは、実施形態の一例の円筒形の非水電解質二次電池20の底面側半部の断面図である。
図1Bは、非水電解質二次電池20の底面図である。以下では、非水電解質二次電池は、二次電池と記載する。
図1A及び
図1Bに例示するように、二次電池20は、巻回型の電極体22と、非水電解質(図示せず)と、外装缶50とを備える。巻回型の電極体22は、正極23と、負極24と、セパレータ25とを有し、正極23と負極24がセパレータ25を介して渦巻状に巻回されている。以下では、電極体22の軸方向一方側を「上」、軸方向他方側を「下」という場合がある。非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水電解質は、液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。
【0018】
正極23は、帯状の正極集電体23aと、当該集電体23aに接合された正極集電タブ(図示せず)とを有する。正極集電タブは、正極集電体23aを正極端子(図示せず)に電気的に接続するための導電部材であって、電極群の上端から電極体22の軸方向αの一方側(
図1Aの上方)に延出している。ここで、電極群とは電極体22において各集電タブを除く部分を意味する。正極集電タブは、例えば電極体22の径方向βの略中央部に設けられている。
【0019】
負極24は、帯状の負極集電体24aと、当該集電体24aに接続された第1集電タブ26、第2集電タブ27、及び第3集電タブ28とを有する。第1集電タブ26、第2集電タブ27、及び第3集電タブ28は、後述するように、それらの重なり部Kが外装缶50に溶接された本開示の複数本の集電タブに相当する。第1集電タブ26、第2集電タブ27、及び第3集電タブ28は、負極端子となる外装缶50に負極集電体24aを電気的に接続するための導電部材であって、電極群の下端から軸方向αの他方側(
図1Aの下方)に延出している。例えば、第1集電タブ26は電極体22の巻き終わり側端部に設けられ、第2集電タブ27は電極体22の径方向βの略中央部に設けられる。また、第3集電タブ28は、電極体22の巻き始め側端部に設けられる。
【0020】
各集電タブの構成材料は特に限定されない。正極集電タブはアルミニウムを主成分とする金属によって、第1~第3集電タブ26,27,28はニッケルまたは銅を主成分とする金属によって、または、ニッケル及び銅の両方を含む金属によって、それぞれ構成されることが好ましい。後述の
図3A、
図3Bに示すように、第1~第3集電タブ26,27,28のうち、1本の集電タブを省略してもよい。負極集電体24aに4本以上の集電タブが接続されていてもよい。一方、後述の外装缶50に電気的に接続されない正極集電タブの数は特に制限されず、1本又は複数本とすることができる。
【0021】
第1~第3集電タブ26,27,28は、後述の外装缶50における底板部51の近くで略直角に曲げられて、絶縁板30を介して電極体22の巻き芯部29と対向する部分で重ねられて重なり部Kを形成する。このとき、底板部51の内面に対し第1集電タブ26、第2集電タブ27、第3集電タブ28が順に重ねられ、第1集電タブ26が底板部51に接する。そして、重なり部Kが外装缶50の底板部51の内面の中心部に重ねられた状態で、レーザ光40によって形成された溶接群60により、重なり部Kと外装缶50とが溶接される。レーザ光40は、レーザビームに相当する。レーザ光40は、後述の第1レーザ光40a、第2レーザ光40b、及び第3レーザ光40cを含んでいる。
図1Aでは、破線円Lにより、第1~第3集電タブ26,27,28が配置される部分を示している。溶接群60は、底板部51の外側(
図1Aの下側)から見た場合の形状がそれぞれ線状である溶接部61,62,63により構成される。なお、本開示で溶接部とは、外装缶50及び第1~第3集電タブ26,27,28のうちレーザ光40が照射されて溶融し、凝固した部分をいう。
【0022】
外装缶50は、有底円筒形の金属製容器である。外装缶50の開口部は、封口体(図示せず)によって封止される。外装缶50は、電極体22及び非水電解質を収容する。電極体22の下部には、絶縁板30が配置される。第1集電タブ26は絶縁板30の外側を通って、第2集電タブ27及び第3集電タブ28は絶縁板30の貫通孔(図示せず)を通って、外装缶50の底部側に延び、外装缶50の底板部51の内面に溶接される。外装缶50の底部である底板部51の厚みは、例えば0.2~0.5mmである。
【0023】
電極体22は、正極23と負極24がセパレータ25を介して渦巻状に巻回されてなる巻回構造を有する。正極23、負極24、及びセパレータ25は、いずれも帯状に形成され、渦巻状に巻回されることで電極体22の径方向βに交互に積層された状態となる。本実施形態では、電極体22の巻中心軸Oを含む巻き芯部29は、円柱状の空間である。
【0024】
正極23は、帯状の正極集電体23aと、正極集電体23a上に形成された正極活物質層とを有する。例えば正極集電体23aの両面に正極活物質層が形成されている。正極集電体23aには、例えばアルミニウムなどの金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。好適な正極集電体23aは、アルミニウムまたはアルミニウム合金を主成分とする金属の箔である。
【0025】
正極活物質層は、正極活物質、導電剤、及び結着剤を含むことが好ましい。正極23は、例えば正極活物質、導電剤、結着剤、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の溶剤を含む正極合剤スラリーを正極集電体23aの両面に塗布した後、乾燥および圧延することにより作製される。
【0026】
正極活物質としては、Co、Mn、Ni等の遷移金属元素を含有するリチウム含有遷移金属酸化物が例示できる。リチウム含有遷移金属酸化物は、特に限定されないが、一般式Li1+xMO2(式中、-0.2<x≦0.2、MはNi、Co、Mn、Alの少なくとも1種を含む)で表される複合酸化物であることが好ましい。
【0027】
上記導電剤の例としては、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料などが挙げられる。上記結着剤の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはその塩、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
負極24は、帯状の負極集電体24aと、負極集電体24a上に形成された負極活物質層とを有する。例えば負極集電体24aの両面に負極活物質層が形成されている。負極集電体24aには、例えば銅などの金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。
【0029】
負極活物質層は、負極集電体24aの両面において、後述の無地部を除く全域に形成されることが好適である。負極活物質層は、負極活物質及び結着剤を含むことが好ましい。負極24は、例えば負極活物質、結着剤、及び水等を含む負極合剤スラリーを負極集電体24aの両面に塗布した後、乾燥および圧延することにより作製される。
【0030】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、Si、Sn等のリチウムと合金化する金属、またはこれらを含む合金、複合酸化物などを用いることができる。負極活物質層36に含まれる結着剤には、例えば正極23の場合と同様の樹脂が用いられる。水系溶媒で負極合剤スラリーを調製する場合は、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、CMCまたはその塩、ポリアクリル酸またはその塩、ポリビニルアルコール等を用いることができる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
負極24には、負極集電体24aを構成する金属の表面が露出した無地部が設けられる。無地部は、負極集電タブである第1集電タブ26、第2集電タブ27及び第3集電タブ28がそれぞれ接続される部分であって、負極集電体24aの表面が負極活物質層に覆われていない部分である。無地部は、負極24の幅方向である軸方向αに沿って長く延びた正面視略矩形形状であり、負極の各集電タブ26,27,28よりも幅広に形成される。
【0032】
負極の各集電タブ26,27,28は、負極集電体24aの表面に例えば超音波溶接等の溶接により接合されている。
図1Aに示す例では、負極24の巻き終わり側端部、巻き方向中間部、及び巻き始め側端部に、それぞれ負極集電タブである第1集電タブ26,第2集電タブ27,及び第3集電タブ28が設けられている。このように負極集電タブを負極の複数位置に設けることで、集電性が向上する。各無地部は、例えば負極集電体24aの一部に負極合剤スラリーを塗布しない間欠塗布により設けられる。
【0033】
正極集電タブは、正極集電体23aに形成された無地部に接合され、正極集電体23aから上方に突出した部分が正極端子または正極端子に接続された部分に接合される。
【0034】
セパレータ25には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布などが挙げられる。セパレータ25の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂が好ましい。
【0035】
溶接群60は、底板部51の外側(
図1Aの下側)から、第1集電タブ26、第2集電タブ27、及び第3集電タブ28の全てが重なる部分にレーザ光40を照射することにより外装缶50の外側表面から重なり部Kに向けて形成される。レーザ光40としては、ファイバーレーザのレーザ光を用いることが好適である。ファイバーレーザのスポット径は、例えば直径が0.02mm~0.05mm程度と非常に小さく、そのファイバーレーザにより形成される溶融部の幅も約0.1mmと非常に小さい。このため、レーザ光の集光点のパワー密度を非常に高くできる。また、後述のように二次電池20をレーザ光の照射方向に対し直交する方向に移動させることで、レーザ光による溶接部が底板部51の外側から見た場合に細い線状となる。このとき、二次電池20は底部を上にした状態で配置し、その底部に向けてレーザ光を照射させることができる。二次電池20は底部を横に傾けた状態で配置し、その底部に向けてレーザ光を照射させることもできる。また、ファイバーレーザを用いる場合、線状の溶接部を複数設けることで溶接強度を確保しやすい。
【0036】
図1Bに示すように、底板部51の外側(
図1Aの下側)から見た場合に、第1集電タブ26、第2集電タブ27、及び第3集電タブ28が底板部51と重畳する部分では、第1集電タブ26及び第2集電タブ27が第3集電タブ28と直交している。第1~第3集電タブ26,27,28は、絶縁板30を介して対向する電極体22の巻き芯部29と重なり部Kを形成すれば十分であるため、それらの配置方法は
図1Bに示す方法に限定されない。また、電極体22の巻き方向である周方向における第1集電タブ26、第2集電タブ27、及び第3集電タブ28の幅は同じであっても異なっていてもよい。
【0037】
溶接群60を形成する溶接部61は、外装缶50の底部、第1集電タブ26、第2集電タブ27、及び第3集電タブ28を溶融させることで、外装缶50と第1集電タブ26、第2集電タブ27、及び第3集電タブ28とを溶接している。したがって、溶接部61は第1溶接部に相当する。溶接群60を形成する溶接部62は、外装缶50の底部及び第1集電タブ26を溶融させることで、外装缶50と第1集電タブ26とを溶接している。したがって、溶接部62は第2溶接部に相当する。溶接群60を形成する溶接部63は、外装缶50の底部、第1集電タブ26、及び第2集電タブ27を溶融させることで、外装缶50と第1集電タブ26及び第2集電タブ27とを溶接している。したがって、溶接部63は第2溶接部に相当する。
【0038】
このように溶接群60を形成する複数の溶接部61,62,63のうち、溶接部61が、外装缶50と、負極の複数本の集電タブの全てである第1集電タブ26、第2集電タブ27及び第3集電タブ28とを溶接する。このとき、溶接部61は、第1集電タブ26及び第2集電タブ27を貫通するが、最内端の集電タブである第3集電タブ28は貫通しない。
【0039】
また、複数の溶接部61,62,63のうち、溶接部62が、外装缶50と、負極の複数本の集電タブのうち、これら複数本の集電タブの一部の集電タブである第1集電タブ26のみとを溶接する。このとき、溶接部62は、第1集電タブ26を貫通しない。
【0040】
また、溶接部63が、外装缶50と、負極の複数本の集電タブのうち、これら複数本の集電タブの一部の集電タブである第1集電タブ26及び第2集電タブ27のみとを溶接する。このとき、溶接部63は、第1集電タブ26を貫通するが、第2集電タブ27は貫通しない。
【0041】
このように本開示では、複数の溶接部のうち、少なくとも1つの溶接部が第1溶接部に相当し、少なくとも1つの溶接部が第2溶接部に相当する。その条件が満たされる限り、第1溶接部と第2溶接部の配置は自由に選択することができる。例えば、
図1A及び
図1Bに示す構成において、溶接部63が第1溶接部に相当し、溶接部61,62が第2溶接部に相当するように、溶接部61,63の深さ(
図1Aの矢印α方向の長さ)を変えることができる。その例において、第1溶接部と第2溶接部の配置を変えることもできる。
【0042】
各溶接部61,62,63は、底板部51の外側から見た場合の形状が線状の溶接形状であり、これらの溶接部61,62,63の並びの順序は限定されない。各溶接部61,62,63を底板部51の外側から見た場合の形状が直線状であるので、溶接形状を容易に形成できる。また、レーザ光40と、電極体11が挿入された外装缶50とが相対的に直線移動することにより、直線形状の各溶接部61,62,63を形成でき、各溶接部61,62,63は互いに交わらない。
【0043】
外装缶50と電極体22は別構造体であり、外装缶50と第1集電タブ26の接合部のみによって互いに接合される。一方、第1集電タブ26、第2集電タブ27及び第3集電タブ28は、巻き構造によって一体化された単一の構造体である電極体22に接合されているので、集電タブ間に形成される接合部は別構造体である電極体22と外装缶50を互いにに接合するものではない。そのため、レーザ溶接後の電池組み立て工程中または電池使用環境下おける電極体22と外装缶50の間の接続を確保するために、外装缶50と第1集電タブ26の間の溶接強度は、第1集電タブ26、第2集電タブ27及び第3集電タブ28の間の溶接強度よりも大きいことが好ましい。言い換えると、第1集電タブ26、第2集電タブ27及び第3集電タブ28の間の溶接強度は、外装缶50と第1集電タブ26の間の接合強度より小さくてよい。
【0044】
図1Aの溶接部62及び溶接部63の深さを溶接部61の深さよりも小さくする。これにより、3つの溶接部61,62,63の深さが同一の場合に比べて、溶接群60において接合に必要な溶融体積を減らすことができる。このため、溶接群60による接合部において溶融のために必要なレーザ光40のエネルギー量としての出力を小さくできる。しかも、外装缶50と第1集電タブ26の溶接強度を十分に確保することができる。
【0045】
次に、負極24に接続された複数本の集電タブの重なり部Kと、外装缶50とを溶接する溶接工程を含む実施形態の電池の製造方法を説明する。この製造方法において、複数本の集電タブの重なり部Kと外装缶50とを溶接する場合、溶接工程は、第1溶接部溶接工程、一方側第2溶接部溶接工程、及び他方側第2溶接部溶接工程を有する。第1溶接部溶接工程は、負極の複数本の集電タブの少なくとも一部の集電タブと接触させた外装缶50の外部から、第1のエネルギー量を有する第1エネルギービームとしての第1レーザ光40aを照射する。第1レーザ光40aの照射により、複数本の集電タブの全てである第1集電タブ26、第2集電タブ27及び第3集電タブ28を溶融し、外装缶50と複数本の集電タブの全てとを溶接部61により溶接する。
【0046】
一方側第2溶接部溶接工程は、第1レーザ光40aのエネルギー量より小さい第2のエネルギー量を有する第2エネルギービームとしての第2レーザ光40bを、外装缶50の外部から照射する。これにより、外装缶50と複数本の集電タブの一部の集電タブである第1集電タブ26及び第2集電タブ27のみとを溶接部63により溶接する。
【0047】
他方側第2溶接部溶接工程は、第1レーザ光40a及び第2レーザ光40bのエネルギー量のいずれよりも小さい第3のエネルギー量を有する第3エネルギービームとしての第3レーザ光40cを、外装缶50の外部から照射する。これにより、外装缶50と複数本の集電タブの一部の集電タブである第1集電タブ26のみとを溶接部62により溶接する。
【0048】
第3レーザ光40cが、外装缶50と第1集電タブ26とを溶融する場合、第1レーザ光40aの約50%程度の出力で溶接が可能となる。第2レーザ光40bが、外装缶50と第1集電タブ26及び第2集電タブ27とを溶融する場合、第1レーザ光40aの約75%程度の出力で溶接が可能となる。このように、溶接のために照射するレーザ光のエネルギー量を変化させることで、外装缶50と全ての集電タブを溶接する溶接部61と、外装缶50と一部の集電タブを溶接する溶接部62及び溶接部63とを形成することが可能となる。
【0049】
3つの溶接部61,63,62は、外装缶50に対して、第1レーザ光40a、第2レーザ光40b、第3レーザ光40cが相対的に移動して形成されることで、外装缶50の底部の外側から見た場合の形状が線状の溶接形状となる。第1溶接部溶接工程、一方側第2溶接部溶接工程、及び他方側第2溶接部溶接工程の順序は限定しないが、第1溶接部溶接工程、一方側第2溶接部溶接工程、他方側第2溶接部溶接工程の順に行うことが好ましい。
【0050】
例えば、第1レーザ光40aを照射することにより溶接部61を形成する第1溶接部溶接工程を行った後、第1レーザ光40aに対してレーザ出力を小さくした第2レーザ光40bを照射することにより溶接部63を形成する一方側第2溶接部溶接工程を行う。その後、第2レーザ光40bに対してレーザ出力をさらに小さくした第3レーザ光40cを照射することで溶接部62を形成する他方側第2溶接部溶接工程を行う。
【0051】
より具体的には、電極体22が挿入された外装缶50に対し、第1レーザ光40aが
図1Aの紙面の手前から奥へ、もしくは奥から手前へ向かう方向に一軸上で相対的に移動することで、溶接部61を形成する(第1溶接部溶接工程)。そして、
図1Aの紙面横方向にずらした位置において、第2レーザ光40bで同様に溶接部63を形成し(一方側第2溶接部溶接工程)、さらに
図1Aの紙面横方向にずらした位置で、第3レーザ光40cで同様に溶接部62を形成する(他方側第2溶接部溶接工程)。
【0052】
また、別例の製造方法として、第1レーザ光40aを用いた溶接部61の溶接と、第2レーザ光40bを用いた溶接部63の溶接と、第3レーザ光40cを用いた溶接部62の溶接とを同時に行うこともできる。
【0053】
[実施例]
表1に、比較例1及び実施例1~4のそれぞれにおける、溶接部61,62,63が形成されている集電タブ及びレーザ光40の出力(レーザ出力)の算出値を示している。
図1A及び
図1Bに示すように、溶接部61は、三列に並ぶ溶接部61,62,63の一端(例えば
図1Aの左端)に位置し、溶接部62は、三列に並ぶ溶接部61,62,63の他端(例えば
図1Aの右端)に位置する。溶接部63は、溶接部61及び溶接部62の間に位置する。なお、レーザ出力の算出は、溶接速度が470mm/secの一定条件で、かつ、外装缶50の厚み0.3mm、第1集電タブ26、第2集電タブ27、及び第3集電タブ28の厚みが全て同じ0.1mmである場合で行った。表1では、溶融させるタブとして第1集電タブ26、第2集電タブ27、第3集電タブ28を、それぞれ第1タブ、第2タブ、第3タブとして記載している。
【0054】
【0055】
[比較例1]
比較例1では、3つの溶接部61、62、63の全てが、第1集電タブ26、第2集電タブ27、及び第3集電タブ28に形成されている。このとき、各溶接部61,62,63は、第1溶接部に相当する。
【0056】
[実施例1]
実施例1では、溶接部61及び溶接部63が、第1集電タブ26、第2集電タブ27、及び第3集電タブ28に形成されている。一方、溶接部62が、第1集電タブ26及び第2集電タブ27のみに形成されている。このとき、溶接部61及び溶接部63が第1溶接部に相当し、溶接部62が第2溶接部に相当する。
【0057】
[実施例2]
実施例2では、溶接部61が、第1集電タブ26、第2集電タブ27、及び第3集電タブ28に形成されている。一方、溶接部62及び溶接部63が、第1集電タブ26及び第2集電タブ27のみに形成されている。このとき、溶接部61が第1溶接部に相当し、溶接部62及び溶接部63が第2溶接部に相当する。
【0058】
[実施例3]
実施例3では、溶接部61が、第1集電タブ26、第2集電タブ27、及び第3集電タブ28に形成されている。一方、溶接部62が、第1集電タブ26のみに形成されている。また、溶接部63が、第1集電タブ26及び第2集電タブ27のみに形成されている。実施例3は、上記の
図1A、
図1Bに示した構成に相当する。このとき、溶接部61が第1溶接部に相当し、溶接部62及び溶接部63が第2溶接部に相当する。
【0059】
[実施例4]
実施例4では、溶接部61が、第1集電タブ26、第2集電タブ27、及び第3集電タブ28に形成されている。一方、溶接部62及び溶接部63が、第1集電タブ26のみに形成されている。このとき、溶接部61が第1溶接部に相当し、溶接部62及び溶接部63が第2溶接部に相当する。
【0060】
表1の「レーザ出力」の欄には、比較例1のレーザ出力を100%とした相対量を記載している。表1の「レーザ出力マージン」の欄には、レーザ出力の絶対量に対するレーザ出力の許容範囲の絶対量の割合(%)として算出された値を記載している。レーザ出力の許容範囲は、スパッタを発生させないための第1条件と、溶接強度を得るための第2条件とによって決まる。
【0061】
表1に示すように、3つの溶接部61,62,63の全てが、第1集電タブ26と第2集電タブ27と第3集電タブ28に形成されている比較例1では、レーザ出力マージンは、+側、-側のそれぞれで1.9%であった。
【0062】
一方、溶接部62及び溶接部63の少なくとも一方で溶融体積を減らした実施例1~4の場合には、比較例1の場合に比べてレーザ出力が低減した。そして、これに伴って、実施例1~4の全てで、レーザ出力マージンは、+側、-側のそれぞれで2.1~2.8%と拡大した。例えば、
図1Aに相当する実施例3では、レーザ出力マージンは、+側、-側のそれぞれで2.5%と拡大した。これにより、レーザ光により集電タブを溶接する二次電池20の製造の容易化を図れることを確認できた。
【0063】
上記の実施形態によれば、負極の複数本の集電タブを外装缶50に溶接する上で、溶接のためのエネルギービームの出力を低減することができ、かつ第1集電タブ26と外装缶50の間に十分な溶接強度を確保することが可能になる。これにより、信頼性の高い二次電池20を製造することができる。さらにエネルギービームの出力を低減することができるので、設備コストの抑制により二次電池20の低コスト化が可能となる。
【0064】
なお、負極集電タブが1本の場合の溶接時のレーザ出力は、表1と同様のレーザ出力の算出方法では、52.4%となった。これにより、比較例1の場合には、負極集電タブが1本の場合の溶接時と同じ溶接設備として、ファイバーレーザ発振器を含む設備を用いたのでは、ファイバーレーザ発振器の最大出力自体に不足が生じる懸念があった。一方、実施例1~4及び後述の表2に示す実施例5,6においては負極集電タブが1本の場合の溶接時と同じファイバーレーザ発振器を用いた溶接が可能であることが分かった。
【0065】
図2は、実施形態の別例の二次電池20aの底面側半部の断面図である。
図2に示す構成では、3本の集電タブである第1集電タブ26、第2集電タブ27及び第3集電タブ28が外装缶50にレーザ光40により溶接される。
【0066】
溶接群60aは、3つの溶接部61,62,63aにより形成される。溶接部63aは、外装缶50と、負極の複数本の集電タブの一部の集電タブである第1集電タブ26のみとを溶接し、2つの溶接部61,62の間で形成される。溶接部61及び溶接部62については、
図1Aの場合と同様である。
図2に示す構成は、表1の実施例4に相当する。
【0067】
この構成では、表1の実施例1~4のうちで最もレーザ出力を低減できる。具体的には、この構成の場合には、3つの溶接部61,62,63aの全てで、負極の全ての集電タブを溶融させる比較例1に比べて、レーザ出力を68.3%にまで低減できた。これにより、比較例1のレーザ出力マージンである+側、-側それぞれでの1.9%に対して、レーザ出力マージンを+側、-側のそれぞれで2.8%に拡大できた。これにより、十分な溶接強度を確保でき、安全性および信頼性の高い電池を製造することができる。本例において、その他の構成及び作用は、
図1A、
図1Bの構成と同様である。
【0068】
図3Aは、実施形態の別例の二次電池20bの底面側半部の断面図である。
図3Bは、
図3Aに示す二次電池20bの底面図である。
図3A、
図3Bに示す構成では、2本の集電タブである第4集電タブ64及び第5集電タブ65の重なり部が外装缶50にレーザ光により溶接されている。第4集電タブ64の構成は、
図1Aに示した第1集電タブ26の構成と同様である。第5集電タブ65の構成は、
図1Aに示した第3集電タブ28の構成と同様である。
【0069】
溶接群66は、3つの溶接部67、68、69により形成される。具体的には、
図3A、
図3Bに示す構成では、
図1A、
図1Bの構成と異なり、第2集電タブ27(
図1A)に相当する集電タブが省略されている。第4集電タブ64と第5集電タブ65とは、外装缶50の底部の内面における中心部で重ねられて重なり部Mを形成し、その重なり部Mが外装缶50の底部に溶接されている。溶接群66を構成する溶接部67が、外装缶50と、負極の複数本の集電タブの全てである第4集電タブ64及び第5集電タブ65とを溶接する。また、溶接部68及び溶接部69の両方が、外装缶50と、負極の複数本の集電タブの一部の集電タブである第4集電タブ64のみとを溶接する。本例の構成では、溶接部67が第1溶接部に相当し、溶接部68,69が第2溶接部に相当する。
【0070】
なお、溶接部69を、第4集電タブ64及び第5集電タブ65に形成することにより、外装缶50と、第4集電タブ64及び第5集電タブ65とを溶接していてもよい。このときには、溶接部69は、第1溶接部に相当する。
【0071】
表2に、比較例2、実施例5、及び実施例6のそれぞれにおける、溶接部67,68,69が形成されている集電タブ及びレーザ光40の出力(レーザ出力)の算出値を示している。
図3A及び
図3Bに示すように、溶接部67は、三列に並ぶ溶接部67,68,69の一端(例えば
図3Aの左端)に位置し、溶接部68は、三列に並ぶ溶接部67,68,69の他端(例えば
図3Aの右端)に位置する。溶接部69は、溶接部67及び溶接部68の間に位置する。なお、レーザ出力の算出は、溶接速度が470mm/secの一定条件で、かつ、外装缶50の厚み0.3mm、第4集電タブ64及び第5集電タブ65の厚みが全て同じ0.1mmである場合で行った。表2では、溶融させるタブとして第4集電タブ64、第5集電タブ65を、それぞれ第4タブ、第5タブとして記載している。
【0072】
【0073】
[比較例2]
比較例2では、3つの溶接部67,68,69の全てが、第4集電タブ64及び第5集電タブ65に形成されている。このとき、各溶接部は第1溶接部に相当する。
【0074】
[実施例5]
実施例5では、溶接部67,69が、第4集電タブ64及び第5集電タブ65に形成されているが、溶接部68は、第4集電タブ64に形成されている。このとき、溶接部67,69が第1溶接部に相当し、溶接部68が第2溶接部に相当する。
【0075】
[実施例6]
実施例6では、溶接部67が、第4集電タブ64及び第5集電タブ65に形成されているが、溶接部68及び溶接部69は、第4集電タブ64のみに形成されている。実施例6は、上記の
図3Aに示した構成に相当する。このとき、溶接部67が第1溶接部に相当し、溶接部68、69が第2溶接部に相当する。
【0076】
表2の「レーザ出力」の欄には、比較例2の場合におけるレーザ出力を100%とした相対量を記載している。比較例2におけるレーザ出力の絶対量は、表1の比較例1におけるレーザ出力の絶対量より小さい。
【0077】
表2に示すように、比較例2に比べて、溶融体積を減らした実施例5及び実施例6によれば、レーザ出力が89.6%、79.2%と低減した。さらに、実施例5及び実施例6では、レーザ出力が低減することで、レーザ出力マージンが+側、-側のそれぞれで比較例2に比べて拡大した。特に、最もレーザ出力が低減された実施例6においては、レーザ出力マージンが、+側、-側のそれぞれで比較例2の2.5%に比べて、3.2%と拡大した。集電タブが第4集電タブ64と第5集電タブ65との2本の場合において、実施例6のように溶融部を少なくした場合でも、第4集電タブ64と外装缶50の間に十分な溶接強度を確保でき、信頼性の高い電池を製造することができる。本例において、その他の構成及び作用は、
図1A、
図1Bの構成と同様である。
【0078】
図4Aは、実施形態の別例の二次電池20cの底面図である。
図4Aに示す構成では、外装缶50の底板部51の外側から見た場合に、溶接群60bにおいて、溶接部61b、溶接部62b及び溶接部63bのそれぞれの形状が、複数の直線部を連結してなるジグザグ状の波形である。このような構成では、外装缶50と集電タブ26,27,28との溶接面積が増えることで高い溶接強度を得られる。レーザ光と、電極体が挿入された外装缶50とが相対的にジグザグに移動すれば、より溶接面積が増すことで高い溶接強度が得られる。溶接強度が高くなるとレーザ出力マージンが拡大する。本例において、その他の構成及び作用は、
図1A、
図1Bの構成と同様である。
【0079】
図4Bは、実施形態の別例の二次電池20dの底面図である。
図4Bに示す構成では、外装缶50の底板部51の外側から見た場合に、溶接群60cにおいて、溶接部61c、溶接部62c及び溶接部63cのそれぞれの形状が、曲線状の波形である。このような構成では、
図4Aと同様に、外装缶50と集電タブ26,27,28との溶接面積が増えることで高い溶接強度を得られる。本例において、その他の構成及び作用は、
図1A、
図1Bの構成、または
図4Aの構成と同様である。
【0080】
図5は、実施形態の別例の二次電池20eの底面図である。
図5に示す構成では、溶接群70は、4つの溶接部71,72,73,74により形成される。第1集電タブ26、第2集電タブ27及び第3集電タブ28の重なり部が外装缶50の底部に溶接群70により溶接されている。溶接部71及び溶接部73は、例えば第1集電タブ26、第2集電タブ27及び第3集電タブ28と外装缶50とを溶接する。このとき、溶接部71,73は第1溶接部に相当する。溶接部72及び溶接部74は、例えば、負極の集電タブ26,27,28の一部の集電タブのみ、例えば第1集電タブ26のみと、外装缶50とを溶接する。このとき、溶接部72,74は第2溶接部に相当する。溶接部73が、負極の集電タブ26,27,28の一部の集電タブのみと、外装缶50とを溶接してもよい。このとき、溶接部73は第2溶接部に相当する。溶接部72及び溶接部74の一方の溶接部が、第1集電タブ26、第2集電タブ27及び第3集電タブ28と外装缶50とを溶接してもよい。このとき、この一方の溶接部が第1溶接部に相当する。外装缶50の底板部51の外側から見た場合に、溶接部71及び溶接部73は平行な2直線であり、溶接部72及び溶接部74も平行な2直線である。溶接部72及び溶接部74は、溶接部71及び溶接部73に対し直交し、溶接部71及び溶接部73とそれぞれ1個所ずつで交わっている。
図5に示す溶接部71,72,73,74のそれぞれは、
図4Aに示すようなジグザグ状の波形又は
図4Bに示すような曲線状の波形としてもよい。
【0081】
上記のように4本の溶接部71,72,73,74が形成されるので、溶接面積が高くなり、より高い溶接強度を得ることができる。また、溶接部71,72,73,74が交わることで、
図5に円Nで示す溶接群70の溶接領域を小さくすることもできる。溶接領域が小さいので、二次電池20eと外部回路との接続において、二次電池20eにおける外部接続領域を大きくすることが可能となり、二次電池20eの商品力が向上する。
図5では、溶接部71及び溶接部72が1個所のみで交わっているが、溶接部71及び溶接部72を、底板部51の外側から見た場合に互いに開口が向き合う円弧形の曲線またはV字形とする等により、2個所以上で交わるようにしてもよい。勿論、上記の
図4A、
図4Bの構成のように、波形の溶接部を形成する場合にその溶接部が交わる場合でも、同様の効果を得ることができる。
【0082】
図6は、実施形態の別例の二次電池20fの底面図である。
図7は、
図6に示す二次電池20fの底面側半部の断面図である。
図6、
図7に示す構成では、溶接群75は、溶接部76、溶接部77、及び溶接部78により形成される。第1集電タブ26、第2集電タブ27及び第3集電タブ28の重なり部Pが外装缶50の底部に溶接群75により溶接されている。溶接部76は、例えば第1集電タブ26、第2集電タブ27及び第3集電タブ28と外装缶50とを溶接する。このとき、溶接部76は第1溶接部に相当する。溶接部77は、例えば、負極の集電タブ26,27,28の一部の集電タブのみ、例えば第1集電タブ26のみと、外装缶50とを溶接する。溶接部78も、負極の集電タブ26,27,28の一部の集電タブのみと、外装缶50とを溶接する。このとき、溶接部77,78は第2溶接部に相当する。溶接部77及び溶接部78の一方の溶接部が、第1集電タブ26、第2集電タブ27及び第3集電タブ28と外装缶50とを溶接してもよい。このとき、一方の溶接部が第1溶接部に相当する。溶接部77が、負極の集電タブのうち、第1集電タブ26及び第2集電タブ27のみと、外装缶50とを溶接してもよい。外装缶50の底板部51の外側から見た場合に、3つの溶接部76,77,78は中心軸が一致する同心の円状である。例えば、溶接部76が最も直径が大きく、溶接部77が最も直径が小さく、溶接部78は、第1溶接部76及び第2溶接部の77の直径の中間の大きさの直径を有する。
図6に示す円状の溶接部76、77、78のそれぞれは、例えばC字形状のように、一部が非連続の形状としてもよい。
【0083】
このような溶接群75を形成する場合、電極体22が挿入された外装缶50を駆動部であるモータ(図示せず)により外装缶50の中心軸を中心に、
図7の矢印γ方向に回転させる。レーザ光は、回折格子等により3つに分岐させ、それぞれで強度の異なるエネルギービームであるレーザ光80を底板部51の外面(
図7の下側面)において、中心付近で径方向βに並ぶように照射する。これにより、底板部51と、第1集電タブ26、第2集電タブ27及び第3集電タブ28の重なり部Pとが、底板部51の外側から見た場合の形状が円状である溶接群75により溶接される。このような製造方法では、電極体22の同一極に対して接続された複数本の集電タブと外装缶50とを回転させる駆動部を用いることで、円状の溶接部76、溶接部77及び溶接部78を形成する。
【0084】
図6に示すように、溶接部76,77,78を円状に形成することにより、小さい溶接領域(
図6に円Qで示す領域)内において、溶接形状の長さを最大化することができ、結果としてより高い溶接強度を得ることができる。
図6、
図7の構成において、その他の構成及び作用は、
図1A、
図1Bの構成と同様である。なお、
図6、
図7の構成において、溶接群を構成する溶接部は、2本、または4本以上としてもよい。
【0085】
図8は、実施形態の二次電池20の製造方法の別例において、複数本の集電タブと外装缶50とを溶接する方法を示している二次電池20の底面側半部の断面図である。
図8では、電池構成部材を簡略化して示している。
図8は、
図1A、
図1Bに示した二次電池20の製造方法の別例を示している。
図8に示す二次電池20の構造自体は、
図1A、
図1Bに示した二次電池と同様である。
図8に示す別例の製造方法では、レーザ光80aは、回折格子90により光学的に第1レーザ光81、第2レーザ光82、及び第3レーザ光83に分岐される。回折格子90のパターン設計により、第1レーザ光81、第2レーザ光82、及び第3レーザ光83のレーザ出力を変化させることが可能である。つまり第1レーザ光81の出力を100%としたときに、第2レーザ光82の出力を約75%に、第3レーザ光83の出力を約50%にすることが可能である。第1レーザ光、第2レーザ光、及び第3レーザ光のレーザ出力の組み合わせは、表1の実施例1~4における第1溶接部、第2溶接部、及び第3溶接部において溶融させる集電タブの組み合わせと同様である。
図8の回折格子90を用いて、実施例1~4のいずれか1つの実施例に対応してレーザ光80aを分岐させる。同様に、
図3A、
図3Bに示した二次電池20bの構造においても、回折格子を用いてレーザ光を分岐させることができる。
【0086】
レーザ光80aを回折格子90により分岐させることで、溶接部61、溶接部62、及び溶接部63を同時に形成することが可能である。電極体が挿入された外装缶50に対し、回折格子90により分岐された第1レーザ光81、第2レーザ光82、及び第3レーザ光83が
図8の紙面の手前から奥に向かう方向もしくは奥から手前に向かう方向に一軸上に沿って相対的に移動するようにすればよい。このように移動させるだけで、外装缶50の底部の外側から見た場合に線状となる溶接部61、溶接部63、及び溶接部62が同時に形成される。
【0087】
なお、第1レーザ光81、第2レーザ光82、及び第3レーザ光83が
図8の紙面の手前から奥に、もしくは奥から手前に、外装缶に50対し相対的に移動する際に、
図8の紙面の横方向への相対的移動を加えることもできる。これにより、
図4A又は
図4Bの構成のように、外装缶50の底部の外側から見た場合にジクザグ状の波形又は曲線状の波形となる溶接部61b、溶接部63b、及び溶接部62bを同時に形成することもできる。
【0088】
図9は、実施形態の二次電池20fの製造方法の別例において、複数本の集電タブと外装缶50とを溶接する方法を示している二次電池20fの底面側半部の断面図である。
図9では、電池構成部材を簡略化して示している。
図9は、
図6、
図7に示した二次電池20fの製造方法の別例を示している。
図9に示す二次電池20fの構造自体は、
図6、
図7に示した二次電池と同様である。
図9に示す別例の製造方法では、二次電池20fの中心軸の延長線上に配置された光学要素であるガルバノミラー91をこの延長線に対し傾斜した状態で回転可能に配置する。そして、レーザ光をガルバノミラー91に当てた状態でガルバノミラー91を駆動部であるモータ(図示せず)により回転させることにより、外装缶50の底部に照射されるレーザ光をこの底部の中心軸周りに一回転させる。これにより、外装缶50の底部の外側から見た場合に円状となる溶接部76、溶接部77、及び溶接部78が同時に形成される。このように、光学要素を回転させる駆動部を用いることで、外装缶50の底部の外側から見た場合の形状がそれぞれ円状である溶接部76、溶接部77及び溶接部78を形成する。
【0089】
なお、上記では、負極板に接続された複数本の集電タブを外装缶に溶接する場合を説明したが、外装缶を正極とする場合に正極板に接続された複数本の集電タブを外装缶に溶接して本開示の構成を適用することもできる。
【符号の説明】
【0090】
11 電極体、12a~12d 集電タブ、13 溶接部、14 外装缶、20,20a~20f 非水電解質二次電池(二次電池)、22 電極体、23 正極、23a 正極集電体、24 負極、24a 負極集電体、25 セパレータ、26 第1集電タブ、27 第2集電タブ、28 第3集電タブ、29 巻き芯部、30 絶縁板、40 レーザ光、40a 第1レーザ光、40b 第2レーザ光、40c 第3レーザ光、50 外装缶、51 底板部、60,60a~60c 溶接群、61,61b,61c 溶接部、62,62b,62c 溶接部、63,63a~63c 溶接部、64 第4集電タブ、65 第5集電タブ、66 溶接群、67,68,69 溶接部、70 溶接群、71,72,73,74 溶接部、75 溶接群、76,77,78 溶接部、80,80a レーザ光、81 第1レーザ光、82 第2レーザ光、83 第3レーザ光、90 回折格子、91 ガルバノミラー。