(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】抗第XI/XIa因子抗体による処置法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220725BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220725BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220725BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20220725BHJP
C12N 9/99 20060101ALI20220725BHJP
C07K 16/36 20060101ALN20220725BHJP
【FI】
A61K39/395 P ZNA
A61P13/12
A61P9/10
A61P7/02
C12N9/99
C07K16/36
(21)【出願番号】P 2019533396
(86)(22)【出願日】2017-12-22
(86)【国際出願番号】 IB2017058345
(87)【国際公開番号】W WO2018116267
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-21
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン,カローラ
(72)【発明者】
【氏名】キーダー,ヤセル
(72)【発明者】
【氏名】レフコウィッツ,マーティン
【審査官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-517305(JP,A)
【文献】特表2018-526976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00 - 39/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末期腎疾患に罹患している対象における、脳卒中または血栓塞栓症の危険性を、防止、処置、または管理、または低減する方法に使用するための医薬組成物であって、
抗第XI因子(FXI)および/または活性化型第XI因子(FXIa)抗体またはその抗原結合性断片を含み、
前記抗体が、配列番号
29のアミノ酸配列を含む重鎖
可変ドメインと、配列番号
39のアミノ酸配列を含む軽鎖
可変ドメインとを
含むか、または、前記抗原結合性断片が、配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含み、
前記方法が、前記抗体またはその抗原結合性断片を前記対象に投与することを含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記対象が、透析を施されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記対象が、血液透析、または腹膜透
析を施されている、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記対象が、非弁膜症性心房細動などの心房細動に罹患している、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
心房細動および末期腎疾患に罹患しており、血液透析などの透析を受けている対象における、脳卒中または血栓塞栓症の危険性を、防止または低減する方法に使用するための医薬組成物であって、
抗FXIまたはFXIa抗体またはその抗原結合性断片を含み、
前記抗体が、配列番号
29のアミノ酸配列を含む重鎖
可変ドメインと、配列番号
39のアミノ酸配列を含む軽鎖
可変ドメインとを
含むか、または、前記抗原結合性断片が、配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含み、
前記方法が、前記抗体またはその抗原結合性断片を前記対象に投与することを含む、医薬組成物。
【請求項6】
前記対象が、非弁膜症性心房細動に罹患している、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
末期腎疾患に罹患しており、カテーテルによる血液透析を開始した対象における、カテーテル関連血栓症の危険性を、防止、処置、または管理、または低減する方法に使用するための医薬組成物であって、
抗FXIおよび/またはFXIa抗体またはその抗原結合性断片を含み、
前記抗体が、配列番号
29のアミノ酸配列を含む重鎖
可変ドメインと、配列番号
39のアミノ酸配列を含む軽鎖
可変ドメインとを
含むか、または、前記抗原結合性断片が、配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含み、
前記方法が、前記抗体またはその抗原結合性断片を前記対象に投与することを含む、医薬組成物。
【請求項8】
前記対象が、裏付けられた、出血の高危険性を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記対象が、以下の危険性因子:
(a)65歳を超えること;
(b)脳卒中または一過性虚血性発作の既往歴;
(c)既往の大規模出血または臨床的に問題となる出血;
(d)慢性腎疾患(CKD)の病期が3~4であること;
(e)単剤または二剤の抗血小板療法による処置;および
(f)血腫によるあざと関連する転倒または他の症状の履歴
のうちの、1つ、2つ、またはこれを超える危険性因子を有することとして特徴付けられる、裏付けられた、出血の高危険性を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記方法が、前記抗体またはその抗原結合性断片を前記対象に皮下投与することを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記方法が、前記抗体またはその抗原結合性断片を前記対象の静脈内へ投与することを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記方法が、前記抗体またはその抗原結合性断片を前記対象に、少なくとも90mg、120mg、150mg、180mg、または210mgの用量で投与することを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記方法が、前記抗体またはその抗原結合性断片を前記対象に、120mg、150mg、または180mgの用量で投与することを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記方法が、前記抗体またはその抗原結合性断片を前記対象に、毎月1回投与することを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む抗原結合性断片を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、各々が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、2016年12月23日に出願された米国特許仮出願第62/438,654号明細書、および2017年11月22日に出願された米国特許仮出願第62/589,851号明細書の利益を主張する。
【0002】
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる配列表を含有する。2017年11月30日に作成された前記ASCIIコピーは、PAT057550-WO-PCT_SL.txtと名付けられ、45,591バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
血栓症とは、血栓性素因または凝固亢進状態として公知の遺伝性危険因子と、後天性危険因子との組合せに後続する、血管内部の血栓形成を指す。血管壁の損傷、うっ血、血小板の反応性の増大、および凝血因子の活性化は、血栓症の根源的な特色のうちの一部である。血栓症は、静脈循環および動脈循環のいずれにおいても生じる可能性があり、深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓症、および脳卒中の発症を結果としてもたらしうる。動脈系内で血栓が生じると、下流で虚血症が生じることから、急性冠動脈症候群(ACS)、虚血性脳卒中、および急性下肢虚血症がもたらされうる。静脈系内の血栓形成は、深部静脈血栓症、肺塞栓症、および慢性血栓塞栓性肺高血圧症をもたらすことが典型的である。凝血はまた、AF(AF)を伴う患者の左心耳内でも形成される可能性があり、脱離した血栓は、重篤となる可能性のある合併症、すなわち、血栓塞栓性脳卒中および全身性塞栓症を結果としてもたらしうる。低分子量ヘパリン(LMWH)、トロンビンインヒビター、および第Xa因子(FXa)インヒビターを含む、現在利用可能な抗血栓薬は全て、著明な出血の危険性と関連する(Weitz J.I. (2010) Thromb. Haemost. 103, 62)。止血に影響を及ぼさず、したがって、出血合併症を結果としてもたらさない抗血栓剤の開発が、強く所望される。
【0004】
現行の抗凝固剤は、注射されるか、または経口服用される。注射用の抗凝固性LMWHは、広く使用されており、かつて適用された未分画ヘパリンを上回る治療プロファイルの改善をもたらしている。過去数十年間にわたり、最も一般に使用された経口抗凝固剤は、ワルファリンであった。ワルファリンは、治療ウィンドウが狭く、このため、凝固状態についての頻繁なモニタリングを要求し、様々な薬物間相互作用を示す。より近年では、経口で利用可能な直接的FXaおよびトロンビンインヒビターが、抗凝固剤市場に参入し、適用を増大させている。
【0005】
LMWH、FXaインヒビター、およびトロンビンインヒビターは全て、手術後の静脈血栓塞栓性疾患の防止、自発的なDVTおよび肺塞栓症の処置、ならびに心房細動における脳卒中の防止に効果的である。しかし、これらの抗凝固剤はまた、旧来の薬物であるワルファリンおよび未分画ヘパリンについて観察される出血合併症と一般に同等な出血合併症とも関連する。ADVANCE-2臨床試験では、FXaインヒビターアピキサバン(Eliquis)が、人工膝関節置換術後の患者において、LMWHであるエノキサパリンと比較された。急性アピキサバン療法は、静脈血栓塞栓性疾患を防止するのに、エノキサパリンより効果的であったが、いずれの薬剤も、出血の著明な危険性と関連した。臨床的に問題となる出血は、アピキサバンを施される患者のうちの4%、およびエノキサパリンで処置された患者のうちの5%において生じた(Lassen, M.R., et al. (2009) N. Engl. J. Med. 361, 594)。
【0006】
RE-LY試験では、直接的トロンビンインヒビターであるダビガトラン(Pradaxa)が、AFおよび脳卒中の危険性を伴う患者において、ワルファリンと比較された(Connolly, S.J., et al. (2009) N. Engl. J. Med. 361, 1139)。慢性ダビガトラン療法は、脳卒中または全身性塞栓症の危険性の著明な低下と関連した。しかし、大量出血の合併症が、毎日150mgのダビガトランを施される患者のうちの3.1%、およびワルファリンを施される患者のうちの3.4%において生じた(p=0.31)。
【0007】
心房細動(AF)は依然として、臨床実践において、最も一般的な心不整脈であり、心調律異常のための入院のうちの約3分の1を占める。現在、AFは、欧州において、600万を超える患者に、および米国において、約230万に影響を及ぼすと推定されており、老化人口の比率の増大のため、この数は、急速に増大し続けている。65歳を超える人口のうちの約5%、および80歳を超える人々のうちの10%が、AFを発症すると推定されているが、AFの有病数は、年齢だけで説明される有病数を超えて増大しつつある。高血圧症、うっ血性心不全、左室肥大、冠動脈疾患、および糖尿病、ならびに閉塞性睡眠時無呼吸症などのAF危険因子もまた、増加しつつある。AFに罹患する個体の数はそれ自体、欧米人において、今後30年間で、2~3倍に増大することが期待される(Kannel and Benjamin (2008) Med Clin North Am. 2008; 92:17-40; Bunch, et al. (2012) J Innovations of Card Rhythm Manag 2012; 3: 855-63)。
【0008】
AFの主要な危険性は、塞栓性脳卒中の4~5倍の増大である。AFとの関連に帰着しうる脳卒中の危険性は、年齢と共に急激に増大し、80~89歳では、23.5%へと増大する。AFは、いずれの性別においても、死亡率の倍増と関連する(Kannel and Benjamin 2008)。AFはまた、認知機能の低下および認知症の全ての形態とも非依存的に関連する(Marzona, et al. (2012) CMAJ 2012; 184: 329-36; Geita et al 2013; Bunch et al 2012)。
【0009】
AFを伴う大半の患者は、心塞栓性脳卒中および全身性塞栓症を防止するのに、生涯にわたる抗凝固療法を要求する。CHA2DS2-VASc危険性スコアは、妥当性が確認され、AF患者における血栓塞栓性の危険性を予測し、抗凝固療法から利益を得る患者を同定するのに広く使用されている層別化ツールであり(LIP 2011;Camm, et al. (2012) Eur Heart J 2012; 33: 2719-2747)、証拠の蓄積は、CHA2DS2-VAScが、脳卒中および血栓塞栓症を発症する患者を同定するのに、CHADS2などのスコアと少なくとも同程度に正確であるか、または、おそらく、これらより優れており、AFを伴う患者であって、「真に危険性の小さな」患者を同定するのには、決定的に優れていることを示す。AF患者のうちの85~90%は、抗凝固療法を要求することが推定される。
【0010】
近年では、直接的経口抗凝固剤(DOAC)とも称する、新たな経口抗凝固剤(NOAC)が、承認され、臨床実践へと導入されている。これらの薬物は、血栓塞栓性疾患の低減において、ワルファリンと、少なくとも同程度に効果的であるか、またはなお優れている(Connolly, et al. (2009) N Engl J Med; 361:1139-51; Connolly, et al. (2011) N Engl J Med; 364:806-17; Patel, et al. (2011) N Engl J Med 2011; 365:883-91)。NOACはまた、ワルファリンの最も重篤な合併症、すなわち、出血性脳卒中および頭蓋内出血の大幅な低減とも関連した。大量出血事象は、良好に施されたワルファリン療法と同等であるか、またはわずかに少なかった。加えて、NOACは、ワルファリンより小さな薬物間相互作用の可能性と関連し、ルーチンのモニタリングを伴わずに使用することができ、これは、日常的な医療実践におけるそれらの使用を容易とすることが期待される。
【0011】
近年の改善にもかかわらず、抗凝固剤の使用に伴う出血の危険性は、依然として高いままである。例えば、大量出血および臨床的に問題となる非大量出血の年間発症率は、14.9%であり、ROCKET研究で、リバーロキサバンにより処置された患者における、大量出血事象の年間発症率は、3.6%であった(Patel et al 2011)。出血の危険性が高く、HAS Bled危険性スコアが≧3であると規定された患者における、大量出血の年間発症率は>5%であった(Gallego, et al. (2012) Carc Arrhythm Electrophysiol.; 5:312-318)。大量出血は、特に問題となる臨床転帰であり、例えば、ROCKET研究では、大量出血が生じた場合、全死因死亡率は、リバーロキサバン群において20.4%およびワルファリン群において26.1%であった。大量出血事象が生じた場合、リバーロキサバン群およびワルファリン群、それぞれの患者のうちの4.7%および5.4%で、脳卒中および全身性塞栓症が生じた(Piccini, et al. (2014) Eur Heart J; 35:1873-80)。入院、血液製剤の輸液、および血液供給源の活用もまた、大量出血の発生から重大な影響を受けた。出血の危険性はまた、適格性患者において抗凝固剤を施さない、主要な理由でもある。35カ国の182の病院ならびに5333人の外来AF患者および入院AF患者からのデータを含む、Euro Heart Survey on AFでは、適格性患者のうちの67%が、退院時に経口抗凝固剤を施されるに過ぎなかった(Nieuwlaat, et al (2005) Eur Heart J;26, 2422-2434)。したがって、既存の治療と同等な有効性を伴うが、易出血性を低下させた、脳卒中、全身性塞栓症、認知機能の低下、および死亡率など、AFの血栓塞栓性合併症を低減しうる、より安全な治療に対する満たされていない大きな医療上の必要が存在する。
【0012】
末期腎疾患(ESRD)状況では、血栓性事象の発生率および危険性が増大し、特に、血液透析を受けるESRD患者では、抗凝固剤の使用が一般的である。しかし、出血の発生率もまた、高頻度に生じる問題であり、抗凝固治療の管理における、さらなる難題を招来する。
【発明の概要】
【0013】
さらに、AFも、ESRDを伴う患者における有病率が高い、併存疾患である(Zimmerman et al., Nephrol Dial Transplant (2012) 27: 3816-3822)。例えば、AFは、ESRDを伴う患者における、脳卒中の危険性および死亡率の上昇と関連する(Zimmerman et al., Nephrol Dial Transplant (2012) 27: 3816-3822)。したがって、ESRDを伴う患者、特に、透析を受ける、AFおよびESRDを伴う患者では、腎クリアランスされない、安全な抗凝固剤に対する、満たされていない、大きな医学的必要が存在する。
【0014】
本開示は、末期腎疾患(ESRD)に罹患している対象の処置と関連する、血栓症または血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減する方法に関する。方法は、対象に、ヒトの第XI凝固因子およびXIa(活性化型第XI因子)(以下、場合によって、「FXI」、「FXIa」、および類似の用語で称する)に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。末期腎疾患の処置と関連する、血栓症または血栓塞栓性疾患/障害(例えば、血栓性脳卒中、AF、AFにおける脳卒中の防止(SPAF)、深部静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、肺塞栓症、虚血性脳卒中、急性下肢虚血症、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、全身性塞栓症)の防止および処置において効果的であるが、出血の危険性を保有しないか、または最小限の出血の危険性を保有するに過ぎない抗血栓剤を開発すれば、満たされていない大きな医療上の必要が満たされるであろう。
【0015】
一部の実施形態では、対象は、透析を施されている。例えば、対象は、末期腎疾患およびAF(例えば、非弁膜症性AF)を有し、透析を施されている。
【0016】
特定の態様では、本開示は、末期腎疾患(ESRD)およびAF(例えば、非弁膜症性AF)を伴い、透析を受ける対象における、血栓症または血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減する方法であって、対象へと、抗FXI/FXIa抗体(例えば、表1に記載されている、抗FXI/FXIa抗体)を投与するステップを含む方法に関する。
【0017】
一部の実施形態では、対象は、肥満症である。
【0018】
具体的な態様では、対象に、ヒトのFXIaおよびFXIの触媒ドメイン(CD)に、同様の高アフィニティーで結合し、FXIa内で、不活性のプロテアーゼドメインコンフォメーションを誘導する、本明細書で提示される抗体または断片(例えば、ヒトモノクローナル抗体または断片、キメラモノクローナル抗体または断片、ヒト化モノクローナル抗体または断片)を投与する。
【0019】
一部の実施形態では、本明細書で記載される方法における使用のための、抗体またはその抗原結合性断片は、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内、具体的には、活性部位領域の表面に結合する。
【0020】
本明細書で記載される方法は、FXIおよび/またはFXIaに結合し、表1に記載されている抗体(例えば、NOV1401)との結合について競合する抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含みうる。本明細書で記載される、抗体および/またはその抗原結合性断片の間の「競合」とは、両方の抗体(またはその結合性断片)が、同じまたは重複するFXIエピトープおよび/もしくはFXIaエピトープに結合すること(例えば、当業者に周知の方法のうちのいずれかにより、競合結合アッセイにおいて決定される)を意味する。本明細書で使用される抗体またはその抗原結合性断片は、前記競合抗体またはその抗原結合性断片が、本開示の抗体または抗原結合性断片と同じFXIエピトープおよび/もしくはFXIaエピトープ、またはこれと重複するFXIエピトープおよび/もしくはFXIaエピトープに結合しない限りにおいて、本開示のFXI抗体および/もしくはFXIa抗体または抗原結合性断片(例えば、NOV1401またはNOV1090)と「競合」しない。本明細書で使用される競合抗体またはその抗原結合性断片は、(i)本開示の抗体または抗原結合性断片が、その標的に結合することを、立体的に遮断し(例えば、前記競合抗体が、近傍の、重複しないFXIエピトープおよび/またはFXIaエピトープに結合し、本開示の抗体または抗原結合性断片が、その標的に結合することを物理的に防止する場合);かつ/あるいは(ii)異なる、重複しないFXIエピトープおよび/またはFXIaエピトープに結合し、FXIタンパク質および/またはFXIaタンパク質に、本開示のFXI抗体および/もしくはFXIa抗体または抗原結合性断片が、コンフォメーション変化の非存在下で生じる形ではもはや結合できないように、前記コンフォメーション変化を、前記タンパク質に誘導する、競合抗体またはその抗原結合性断片を含まない。
【0021】
一実施形態では、方法は、活性のFXI(FXIa)に結合し、活性のFXI(FXIa)触媒ドメインに結合すると、FXIaに、そのコンフォメーションを、不活性コンフォメーションへと変化させる抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、不活性コンフォメーションのN末端の4つの残基、ループ145、188、および220が、活性コンフォメーションと比較して、シフトし、かつ/または不規則的になる変化をさらに誘導する。
【0022】
一実施形態では、方法は、FXI(例えば、ヒトFXI)に結合し、FXIに結合すると、FXI触媒ドメインが、ループ145、188、および220がFXIa触媒ドメインの構造内における場合と同様に規則的である活性コンフォメーションを取ることを防止する抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。
【0023】
一実施形態では、方法は、FXIに結合し、FXIに結合すると、FXI触媒ドメインが、N末端の4つの残基、ループ145、188、および220がFXIa触媒ドメインの構造内における場合と同様に規則的である活性コンフォメーションを取ることを防止する抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。
【0024】
一実施形態では、方法は、FXIに結合し、FXIに結合すると、チモーゲン構造内のコンフォメーション変化を誘導し、FXIaに結合するときに観察される阻害性FXIコンフォメーションと緊密に関連する阻害性FXIコンフォメーションをさらにもたらすことにより、FXI触媒ドメインが、活性コンフォメーションを取ることを防止する抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。
【0025】
一実施形態では、方法は、FXIに結合し、チモーゲン構造内のコンフォメーション変化を誘導し、これにより、FXIaに結合するときに観察される阻害性FXIコンフォメーションと緊密に関連する阻害性FXIコンフォメーションをもたらすことにより、触媒ドメインが、活性コンフォメーションを取ることを防止する抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。
【0026】
本明細書で記載される方法は、表1に記載されている抗体(例えば、NOV1401)と同じエピトープに結合する抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含みうる。
【0027】
記載される方法で使用される、抗FXI抗体および/もしくはFXIa抗体または抗原結合性断片は、第IX因子(また、FIXとしても公知である)、第X因子(FX)、および/またはトロンビンの、直接的または間接的な活性化を、100nM以下、50nM以下、35nM以下、25nM以下、10nM以下、または5.2nM以下のIC50で阻害することができる。より具体的には、抗体またはその抗原結合性断片は、第IX因子(また、FIXとしても公知である)、第X因子(FX)、および/またはトロンビンの、直接的または間接的な活性化を、100nM以下、50nM以下、35nM以下、25nM以下、10nM以下、または5.2nM以下のIC50で阻害しうる。より具体的には、抗体またはその抗原結合性断片は、第IX因子(また、FIXとしても公知である)、第X因子(FX)、および/またはトロンビンの、直接的または間接的な活性化を、100nM以下、50nM以下、35nM以下、25nM以下、20nM以下、または18nM以下のIC50で阻害しうる。より具体的には、抗体またはその抗原結合性断片は、第IX因子(また、FIXとしても公知である)、第X因子(FX)、および/またはトロンビンの、直接的または間接的な活性化を、100nM以下、50nM以下、35nM以下、25nM以下、10nM以下、または5nM以下のIC50で阻害しうる。具体的な実施形態では、抗FXI/FXIa抗体またはその抗原結合性断片は、その天然の基質であるFIXの、FXIaを媒介する活性化を、2nM以下の、例えば、1.8nMのIC50で阻害する。
【0028】
一部の実施形態では、方法は、例えば、実施例節で記載されるaPTTアッセイにより決定される通り、濃度依存的に、ヒト血漿の凝血時間(例えば、血餅が形成し始めるまでの時間)を延長する、抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。具体的な実施形態では、凝血時間(aPTT)は、aPTTアッセイにより決定される通り、10nM~20nMの範囲、例えば、約14nMまたは15nMの全抗FXI抗体(例えば、NOV1401)濃度で、ベースラインと比較して倍増する。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、実施例節で記載されるaPTTアッセイにより決定される通り、5nM~20nMの範囲、例えば、約13nMのIC50で、濃度依存的に、ヒト血漿の凝血時間を延長する。
【0029】
一部の実施形態では、方法は、例えば、実施例節で記載されるaPTTアッセイにより決定される通り、例えば、濃度依存的に、少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、または2倍、ヒト血漿の凝血時間(例えば、血餅が形成し始めるまでの時間)を延長する、抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。具体的な実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、実施例節で記載されるaPTTアッセイにより決定される通り、少なくとも1.4倍、1.5倍、1.6倍、または1.7倍、ヒト血漿の凝血時間(例えば、血餅が形成し始めるまでの時間)を延長する。
【0030】
一部の実施形態では、方法は、非常に低濃度の組織因子(TF)の存在下において、FXIa阻害の、トロンビン→FXIaのフィードフォワードループに対する効果を測定する、ヒト血漿中のトロンビン生成アッセイ(TGA)において、トロンビンの量を濃度依存的に低減する、抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト血漿中のトロンビン生成アッセイ(TGA)において、10nM~30nMの範囲、例えば、約20nMまたは24nMのIC50値および約159nMの残留トロンビン濃度で、トロンビンの量を低減する。
【0031】
一部の実施形態では、方法は、ヒトのFXIおよび/またはFXIaの触媒ドメインに特異的に結合し、カニクイザルにおける全抗体の終末相消失半減期(t1/2)を、約14~15日間とする、抗体(例えば、NOV1401、またはNOV1401のHCDR1~3およびLCDR1~3を含む抗体など、表1における抗体)、またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。具体的な実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、約61~66%の絶対皮下(s.c.)バイオアベイラビリティを呈する。
【0032】
一実施形態では、方法は、ヒトのFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合し、以下の特徴:
(i)例えば、それぞれ、約1~2pMおよび4~5pMの見かけのKDで、ヒトのFXIおよびFXIaの触媒ドメイン(CD)に特異的に結合すること;
(ii)活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイにより査定された凝血時間を延長すること;
(iii)活性化型第XII因子(FXIIa)およびトロンビンのそれぞれによるFXI活性化の阻害を介して、ヒト血漿中のトロンビン生成を阻害すること;
(iv)ヒトFXIで再構成されたFXI-/-マウスにおいて、抗血栓活性および抗凝固活性を示すこと;
(v)例えば、カニクイザルにおいて、遊離FXI(FXIf)レベルを低減するか、または低減を延長すること;
(vi)例えば、カニクイザルにおける全抗体の終末相消失半減期を、約14~15日間とすること;
(vii)ヒトおよびサルのFXIおよび/またはFXIaには特異的に結合するが、マウスまたはラットのFXIおよび/またはFXIaには特異的に結合しないこと;ならびに
(viii)ヒトFXIの以下の残基(Swissprotによる番号付け):Pro410、Arg413、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472~Glu476、Tyr521~Lys527、Arg548、His552、Ser575、Ser594~Glu597、およびArg602~Arg604のうちの1つまたは複数(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、もしくは7つ、またはこれを超える)、または一部、または全てに接触すること
のうちの1つまたは複数(例えば、2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つ、または7つ)、または全てを呈する、抗体またはその抗原結合性断片(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体)を投与するステップを含む。
【0033】
本明細書で記載される方法において使用される、抗体またはその抗原結合性断片は、モノクローナル抗体、ヒトまたはヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、Fv断片、F(ab’)2断片、またはscFv断片、および/またはIgGのアイソタイプ(例えば、ヒトIgG1などのIgG1)でありうる。具体的な実施形態では、抗体は、組換えヒト抗体でありうる。具体的な実施形態では、抗体は、ヒトIgG1/ラムダ(λ)抗体である。具体的な実施形態では、抗体は、エフェクター機能(例えば、ADCCおよび/またはCDC)の可能性を低減するように操作されたFcドメイン、例えば、D265A置換および/またはP329A置換を含むヒトFcドメインを含むヒトIgG1/ラムダ(λ)抗体である。
【0034】
本明細書で記載される方法における使用のための、抗体またはその抗原結合性断片はまた、アミノ酸が、ヒトVH生殖細胞系列配列またはヒトVL生殖細胞系列配列のそれぞれに由来する抗体フレームワークへと置換されたフレームワークも含みうる。
【0035】
本明細書で記載される方法は、表1に記載されている抗体の重鎖配列および軽鎖配列を有する、抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含みうる。より具体的には、抗体またはその抗原結合性断片は、NOV1090またはNOV1401の重鎖配列および軽鎖配列を有しうる。
【0036】
本明細書で記載される方法は、表1に記載されているFabの、重鎖可変ドメイン配列および軽鎖可変ドメイン配列を有する、抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含みうる。より具体的には、単離抗体またはその抗原結合性断片は、NOV1090およびNOV1401の重鎖および軽鎖可変ドメイン配列を有しうる。
【0037】
本明細書で記載される方法は、Kabat CDR、IMGT CDR、Chothia CDR、または組み合わされたCDRなど、表1に記載されている抗体の、重鎖可変ドメインCDR(すなわち、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)配列と、軽鎖可変ドメインCDR(すなわち、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)配列とを含む抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含みうる。より具体的には、単離抗体またはその抗原結合性断片は、Kabat CDR、IMGT CDR、Chothia CDR、または組合せCDRなど、例えば、表1に提示された、NOV1090およびNOV1401の、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列を有しうる。
【0038】
具体的な態様では、本明細書で記載される方法は、Chothiaにより規定される、配列番号9および29の可変重鎖のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびに配列番号19および39の可変軽鎖のLCDR1、LCDR2、LCDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含みうる。本開示の別の態様では、抗体または抗原結合性断片は、Kabatにより規定される、配列番号9および29の重鎖可変ドメイン配列のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびに配列番号19および39の軽鎖可変ドメイン配列のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を有しうる。
【0039】
具体的な態様では、本明細書で記載される方法は、IMGTにより規定される、配列番号9および29の可変重鎖のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびに配列番号19および39の可変軽鎖のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含みうる。本開示の別の態様では、抗体または抗原結合性断片は、Combinedにより規定される、配列番号9および29の重鎖可変ドメイン配列のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、ならびに配列番号19および39の軽鎖可変ドメイン配列のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を有しうる。
【0040】
具体的な態様では、本明細書で記載される方法は、配列番号9および29からなる群から選択される重鎖可変ドメイン配列を含む抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。単離抗体または抗原結合性断片は、軽鎖可変ドメイン配列をさらに含むことが可能であり、この場合、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとは、組み合わさって、FXIaに対する抗原結合性部位を形成する。特に、軽鎖可変ドメイン配列は、配列番号19および39から選択することができ、この場合、前記単離抗体またはその抗原結合性断片は、FXIおよび/もしくはFXIaに結合する。
【0041】
具体的な態様では、本明細書で記載される方法は、配列番号19および39からなる群から選択される軽鎖可変ドメイン配列を含み、ヒトFXIおよび/もしくはヒトFXIaに結合する抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。単離抗体または抗原結合性断片は、重鎖可変ドメイン配列をさらに含むことが可能であり、この場合、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとは、組み合わさって、FXIおよび/もしくはFXIaに対する抗原結合性部位を形成する。
【0042】
具体的な態様では、本明細書で記載される方法は、FXIおよび/もしくはFXIaに結合し、配列番号9および19;または19および39の配列をそれぞれ含む、重鎖および軽鎖可変ドメインを有しうる抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。
【0043】
具体的な態様では、本明細書で記載される方法は、配列番号9および29からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する重鎖可変ドメインを含む抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。この場合、前記抗体は、FXIおよび/もしくはFXIaに結合する。一態様では、単離抗体またはその抗原結合性断片はまた、配列番号19および39からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメインも含む。本開示のさらなる態様では、単離抗体または抗原結合性断片は、Kabatにより規定され、表1に記載されている、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を有する。具体的な実施形態では、単離抗体または抗原結合性断片は、Chothia、IMGT、または組合せにより規定され、表1に記載されている、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を有する。
【0044】
具体的な態様では、本明細書で記載される方法は、配列番号19および39からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを有する抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。この場合、前記抗体は、FXIおよび/もしくはFXIaに結合する。
【0045】
具体的な態様では、本明細書で記載される方法は、FXIおよび/もしくはFXIaに結合する、配列番号11または31の配列を含む重鎖を有しうる抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。単離抗体はまた、重鎖と組み合わさって、ヒトFXIおよび/もしくはヒトFXIaに対する抗原結合性部位を形成しうる軽鎖も含みうる。特に、軽鎖は、配列番号21または41を含む配列を有しうる。特に、FXIおよび/もしくはFXIaに結合する単離抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11および21;または31および41のそれぞれの配列を含む重鎖および軽鎖を有しうる。
【0046】
具体的な態様では、本明細書で記載される方法は、配列番号11または31からなる群から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖を含む抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。この場合、前記抗体は、FXIおよび/もしくはFXIaに結合する。一態様では、単離抗体またはその抗原結合性断片はまた、配列番号21または41からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する軽鎖も含む。
【0047】
具体的な態様では、本明細書で記載される方法は、配列番号21または41からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する軽鎖を含む抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。この場合、前記抗体は、FXIおよび/もしくはFXIaに結合する。
【0048】
具体的な態様では、本明細書で記載される方法は、例えば、抗体であるNOV1090およびNOV1401など、表1の抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物を投与するステップを含む。具体的な態様では、本明細書で記載される方法は、表1の単離抗体またはそれらの抗原結合性断片のうちの2つ以上の組合せを含む医薬組成物を投与するステップを含む。
【0049】
本開示はまた、対象における血栓塞栓性疾患を処置、改善、または防止する方法であって、対象へと、有効量の、本明細書で記載されるFXIおよび/もしくはFXIaに結合する抗体またはその抗原結合性断片を含む組成物を、投与するステップを含む方法にも関する。一態様では、血栓塞栓性疾患は、血栓性障害(例えば、血栓症、血栓性脳卒中、AF、AFにおける脳卒中の防止(SPAF)、深部静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、および肺塞栓症)である。対象は、ヒトであることも企図される。
【0050】
前出の単離抗体またはそれらの抗原結合性断片のうちのいずれも、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片でありうる。
【0051】
本開示の非限定的な実施形態を、以下の態様において記載する:
【0052】
1.脳卒中または血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減する方法であって、末期腎疾患に罹患している対象へと、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体または抗原結合性断片を含む、有効量の医薬組成物を投与するステップを含む方法。
2.対象が、透析または体外式膜型人工肺を施されている、態様1の方法。
3.対象が、心房細動に罹患している、態様1または2の方法。
4.対象が、非弁膜症性心房細動に罹患している、態様3の方法。
5.脳卒中または血栓塞栓症の危険性を防止または低減する方法であって、心房細動および末期腎疾患に罹患しており、透析または体外式膜型人工肺を受けている対象へと、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体または抗原結合性断片を含む、有効量の医薬組成物を投与するステップを含む方法。
6.対象が、非弁膜症性心房細動に罹患している、態様5の方法。
7.対象が、裏付けられた、出血の高危険性を有する、態様3、4、5、または6の方法。
8.抗体またはその断片が、FXIおよび/またはFXIaの1つまたは複数のエピトープに結合し、エピトープが、Pro410、Arg413、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Lys527、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの2つ以上のアミノ酸残基を含む、態様1~7のいずれか1つの方法。
9.抗体またはその断片が、抗FXIおよび/またはFXIaの1つまたは複数のエピトープに結合し、エピトープが、Pro410、Arg413、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Lys527、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの4つ以上のアミノ酸残基を含む、態様8の方法。
10.抗体またはその断片が、抗FXIおよび/またはFXIaの1つまたは複数のエピトープに結合し、エピトープが、Pro410、Arg413、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Lys527、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの6つ以上のアミノ酸残基を含む、態様8の方法。
11.抗体またはその断片が、抗FXIおよび/またはFXIaの1つまたは複数のエピトープに結合し、エピトープが、Pro410、Arg413、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Lys527、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの8つ以上のアミノ酸残基を含む、態様8の方法。
12.抗体またはその断片が、抗FXIおよび/またはFXIaの1つまたは複数のエピトープに結合し、エピトープが、Pro410、Arg413、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Lys527、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604の残基を含む、態様8の方法。
13.抗体またはその断片が、抗FXIおよび/またはFXIaの1つまたは複数のエピトープに結合し、エピトープが、Pro410、Arg413、Lys527のアミノ酸残基と、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの1つまたは複数のアミノ酸残基とを含む、態様8の方法。
14.抗体またはその断片が、抗FXIおよび/またはFXIaの1つまたは複数のエピトープに結合し、エピトープが、Pro410、Arg413、Lys527のアミノ酸残基と、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの4つ以上のアミノ酸残基とを含む、態様8の方法。
15.抗体またはその断片が、抗FXIおよび/またはFXIaの1つまたは複数のエピトープに結合し、エピトープが、Pro410、Arg413、Lys527のアミノ酸残基と、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604のうちの6つ以上のアミノ酸残基とを含む、態様8の方法。
16.抗体または断片が、FXIおよび/またはFXIaの、第IX因子、第XIIa因子、およびトロンビンのうちの1つまたは複数への結合を遮断する、態様1~15のいずれが1つの方法。
17.抗体または断片が、FXIおよび/またはFXIaの、第IX因子、第XIIa因子、またはトロンビン、および凝固経路の他の成分のうちの1つまたは複数への結合を遮断する、態様16の方法。
18.抗体または断片が、FIX、FXI、およびFXIaのうちの1つまたは複数の、血小板受容体への結合を遮断する、態様1~15のいずれか1つの方法。
19.抗体または断片が、内因系凝固経路または共通凝固経路の活性化を防止する、態様1~15のいずれか1つの方法。
20.抗体またはその断片が、ヒトFXIタンパク質および/またはヒトFXIaタンパク質に、BIACORE(商標)アッセイにより測定される34nM以下の、または溶液中平衡滴定アッセイ(SET)により測定される4pM以下のKDで結合する、態様1~19のいずれか1つの方法。
21.抗体または断片が、表1に列挙されたCDRのうちの少なくとも1つに対して、少なくとも90%の同一性を有する、少なくとも1つの相補性決定領域を含む、態様1~20のいずれか1つの方法。
22.抗体または断片が、表1のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む、態様1~20のいずれか1つの方法。
23.抗体または断片が、配列番号5および25からなる群から選択される重鎖CDR3を含む、態様1~20のいずれか1つの方法。
24.抗体または断片が、配列番号9および29からなる群から選択されるVH、またはそれに対して90%の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに配列番号19および39からなる群から選択されるVL、またはそれに対して90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様1~23のいずれか1つの方法。
25.抗体または断片が、配列番号9および29からなる群から選択されるVH、またはそれに対して95%の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに配列番号19および39からなる群から選択されるVL、またはそれに対して95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様24の方法。
26.抗体または断片が、配列番号9および29からなる群から選択されるVH、またはそれに対して97%の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに配列番号19および39からなる群から選択されるVL、またはそれに対して97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様24の方法。
27.抗体または断片が、配列番号9および29からなる群から選択される可変重鎖配列を含む、態様24の方法。
28.抗体または断片が、配列番号19および39からなる群から選択される可変軽鎖配列を含む、態様24の方法。
29.抗体または断片が、配列番号9および29からなる群から選択される可変重鎖;ならびに配列番号19および39からなる群から選択される可変軽鎖配列を含む、態様24の方法。
30.抗体または断片が、(i)配列番号9の可変重鎖および配列番号19の可変軽鎖配列を含む抗体もしくは断片;(ii)配列番号29の可変重鎖および配列番号39の可変軽鎖配列を含む抗体もしくは断片;(iii)配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体;ならびに(iv)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体からなる群から選択される、態様24の方法。
31.抗体または断片が、(i)配列番号46のアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域のCDR1;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR2;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR3;ならびに(ii)配列番号33のアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域のCDR1;配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR2;および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、態様1~30のいずれか1つの方法。
32.抗体または断片が、(i)配列番号3および23からなる群から選択される重鎖可変領域のCDR1;配列番号4および24からなる群から選択されるCDR2;5および25からなる群から選択されるCDR3;ならびに(ii)配列番号13および33からなる群から選択される軽鎖可変領域のCDR1;配列番号14および34からなる群から選択されるCDR2;ならびに配列番号15および35からなる群から選択されるCDR3を含む、態様1~30のいずれか1つの方法。
33.抗体または断片が、(i)配列番号6および26からなる群から選択される重鎖可変領域のCDR1;配列番号7および27からなる群から選択されるCDR2;8および28からなる群から選択されるCDR3;ならびに(ii)配列番号16および36からなる群から選択される軽鎖可変領域のCDR1;配列番号17および37からなる群から選択されるCDR2;ならびに配列番号18および38からなる群から選択されるCDR3を含む、態様1~30のいずれか1つの方法。
34.抗体または断片が、配列番号3の重鎖可変領域のCDR1;配列番号4の重鎖可変領域のCDR2;配列番号5の重鎖可変領域のCDR3;配列番号13の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号14の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域のCDR3を含む、態様1~30のいずれか1つの方法。
35.抗体または断片が、配列番号23の重鎖可変領域のCDR1;配列番号24の重鎖可変領域のCDR2;配列番号25の重鎖可変領域のCDR3;配列番号33の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号34の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号35の軽鎖可変領域のCDR3を含む、態様1~30のいずれか1つの方法。
36.抗体または断片が、配列番号6の重鎖可変領域のCDR1;配列番号7の重鎖可変領域のCDR2;配列番号8の重鎖可変領域のCDR3;配列番号16の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号17の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号18の軽鎖可変領域のCDR3を含む、態様1~30のいずれか1つの方法。
37.抗体または断片が、配列番号26の重鎖可変領域のCDR1;配列番号27の重鎖可変領域のCDR2;配列番号28の重鎖可変領域のCDR3;配列番号36の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号37の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号38の軽鎖可変領域のCDR3を含む、態様1~30のいずれか1つの方法。
38.抗体または断片が、配列番号9の可変重鎖および配列番号19の可変軽鎖配列を含む抗体、または配列番号29の可変重鎖および配列番号39の可変軽鎖配列を含む抗体と同じエピトープに結合する、態様1~30のいずれか1つの方法。
39.抗体または断片が、ヒトFXIタンパク質および/またはヒトFXIaタンパク質への結合について、配列番号9の可変重鎖および配列番号19の可変軽鎖配列を含む抗体、または配列番号29の可変重鎖および配列番号39の可変軽鎖配列を含む抗体と競合する、態様1~30のいずれか1つの方法。
40.抗体または断片が、NOV1090およびNOV1401からなる群から選択される、態様1~30のいずれか1つの方法。
41.末期腎疾患に罹患している対象であり、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片で処置されるか、またはこれを投与された対象における、出血または出血危険性を管理または低減する方法であって、それを必要とする対象へと、抗FXI/FXIa抗体に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体またはその断片を投与し、抗FXI/FXIa抗体の、FXIおよび/またはFXIaへの結合を遮断するステップを含み、抗イディオタイプ抗体またはその断片が、抗FXI/FXIa抗体の抗凝固活性を反転させる、方法。
42.抗イディオタイプ抗体またはその断片を、対象へと、1回または数回(例えば、2回、3回、または4回)にわたり投与して、抗FXI/FXIa抗体の抗凝固効果を反転させる、態様41の方法。
43.末期腎疾患に罹患している対象であり、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片で処置されるか、またはこれを投与された対象における、出血または出血危険性を管理または低減する方法であって、以下:(i)コロイド、晶質、ヒト血漿、もしくはアルブミンなどの血漿タンパク質を使用する体液の置きかえ;(ii)濃厚赤血球もしくは全血液による輸血;または(iii)新鮮凍結血漿(FFP)、プロトロンビン複合体濃縮物(PCC)、第VIII因子インヒビターなどの活性化PCC(APCC)、および/もしくは組換え活性化型第VII因子の投与のうちの1つにより、出血を管理するのに十分な時間にわたる、抗凝固効果の一時的な反転を含む方法。
44.対象が、血液透析などの透析を施されている、態様41~43のいずれか1つの方法。
45.対象が、心房細動に罹患している、態様41~43のいずれか1つの方法。
46.対象が、非弁膜症性心房細動に罹患している、態様45の方法。
47.対象が、裏付けられた、出血の高危険性を有する、態様45または46の方法。
48.抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片が、配列番号9および29からなる群から選択されるVH、またはそれに対して90%の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに配列番号19および39からなる群から選択されるVL、またはそれに対して90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様41~47のいずれか1つの方法。
49.抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片が、ヒトFXIタンパク質および/またはヒトFXIaタンパク質への結合について、配列番号9の可変重鎖および配列番号19の可変軽鎖配列を含む抗体、または配列番号29の可変重鎖および配列番号39の可変軽鎖配列を含む抗体と、濃度依存的に競合する、態様41~47のいずれか1つの方法。
50.抗体が、組換えヒト抗体またはヒト化抗体である、態様1~49のいずれか1つの方法。
51.末期腎疾患に罹患している対象における、脳卒中または血栓塞栓症の危険性の、防止、処置、または管理、または低減における使用のための、FXIおよび/もしくはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体もしくはその抗原結合性断片、または抗体もしくはその抗原結合性断片を含む医薬組成物であって、抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、抗体もしくはその抗原結合性断片、または抗体もしくはその抗原結合性断片を含む医薬組成物。
52.対象が、透析を施されている、態様51に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
53.対象が、血液透析、または腹膜透析など、他の種類の透析を施されている、態様51または52に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
54.対象が、非弁膜症性心房細動などの心房細動に罹患している、態様51~53のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
55.心房細動および末期腎疾患に罹患しており、血液透析などの透析を受けている対象における、脳卒中または血栓塞栓症の危険性の、防止または低減における使用のための、FXIおよび/もしくはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体もしくはその抗原結合性断片、または抗体もしくはその抗原結合性断片を含む医薬組成物であって、抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、抗体もしくはその抗原結合性断片、または抗体もしくはその抗原結合性断片を含む医薬組成物。
56.対象が、非弁膜症性心房細動に罹患している、態様51~55のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
57.末期腎疾患に罹患しており、カテーテルによる血液透析を開始した対象における、カテーテル関連血栓症の危険性の、防止、処置、または管理、または低減における使用のための、FXIおよび/もしくはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体もしくはその抗原結合性断片、または抗体もしくはその抗原結合性断片を含む医薬組成物であって、抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、抗体もしくはその抗原結合性断片、または抗体もしくはその抗原結合性断片を含む医薬組成物。
58.対象が、裏付けられた、出血の高危険性を有する、態様51~58のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
59.心房細動に罹患している対象における、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性の、防止または低減における使用のための、FXIおよび/もしくはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体もしくはその抗原結合性断片、または抗体もしくはその抗原結合性断片を含む医薬組成物であって、対象が、≧2のCHA2DS2VASc危険性スコアにより特徴付けられる、裏付けられた、出血の高危険性を有し、抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、抗体もしくはその抗原結合性断片、または抗体もしくはその抗原結合性断片を含む医薬組成物。
60.対象が、少なくとも55歳である、態様51~59のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
61.対象が、(i)≧2のCHA2DS2VASc危険性スコアと、(ii)以下の危険性因子:
(a)65歳を超えること;
(b)脳卒中または一過性虚血性発作の既往歴;
(c)既往の大規模出血または臨床的に問題となる出血;
(d)慢性腎疾患(CKD)の病期が3~4であること;
(e)単剤または二剤の抗血小板療法による処置;および
(f)血腫によるあざと関連する転倒または他の症状の履歴
のうちの、1つ、2つ、またはこれを超える危険性因子とを有することとして特徴付けられる、裏付けられた、出血の高危険性を有する、態様51~60のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
62.抗体またはその抗原結合性断片が、対象へと、皮下投与される、態様51~61のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
63.抗体またはその抗原結合性断片が、少なくとも90mg、120mg、150mg、180mg、または210mgの用量で投与される、態様37~48のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
64.抗体またはその抗原結合性断片が、120mg、150mg、または180mgの用量で投与される、態様51~63のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
65.抗体またはその抗原結合性断片が、毎月1回投与される、態様51~64のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
66.末期腎疾患に罹患している対象における、脳卒中または血栓塞栓症の危険性を、防止、処置、または管理、または低減するための医薬の製造のための、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体またはその抗原結合性断片の使用であって、抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、使用。
67.対象が、透析を施されている、態様66に記載の使用。
68.対象が、血液透析、または腹膜透析など、他の種類の透析を施されている、態様66または67に記載の使用。
69.対象が、非弁膜症性心房細動などの心房細動に罹患している、態様66~68のいずれか1つに記載の使用。
70.心房細動および末期腎疾患に罹患しており、血液透析などの透析を受けている対象における、脳卒中または血栓塞栓症の危険性を、防止または低減するための医薬の製造のための、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体またはその抗原結合性断片の使用であって、抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、使用。
71.対象が、非弁膜症性心房細動に罹患している、態様66~70のいずれか1つに記載の使用。
72.末期腎疾患に罹患しており、カテーテルによる血液透析を開始した対象における、カテーテル関連血栓症の危険性を、防止、処置、または管理、または低減するための医薬の製造のための、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体またはその抗原結合性断片の使用であって、抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、使用。
73.対象が、裏付けられた、出血の高危険性を有する、態様66~72のいずれか1つに記載の使用。
74.心房細動に罹患している対象における、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を、防止または低減するための医薬の製造のための、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体またはその抗原結合性断片の使用であって、対象が、≧2のCHA2DS2VASc危険性スコアにより特徴付けられる、裏付けられた、出血の高危険性を有し、抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、使用。
75.対象が、少なくとも55歳である、態様66~74のいずれか1つに記載の使用。
76.対象が、(i)≧2のCHA2DS2VASc危険性スコアと、(ii)以下の危険性因子:
(a)65歳を超えること;
(b)脳卒中または一過性虚血性発作の既往歴;
(c)既往の大規模出血または臨床的に問題となる出血;
(d)慢性腎疾患(CKD)の病期が3~4であること;
(e)単剤または二剤の抗血小板療法による処置;および
(f)血腫によるあざと関連する転倒または他の症状の履歴
のうちの、1つ、2つ、またはこれを超える危険性因子とを有することとして特徴付けられる、裏付けられた、出血の高危険性を有する、態様66~75のいずれか1つに記載の使用。
77.医薬が、対象への皮下投与に適する、態様66~76のいずれか1つに記載の使用。
78.医薬が、対象への、少なくとも90mg、120mg、150mg、180mg、または210mgの用量における投与に適する、態様66~77のいずれか1つに記載の使用。
79.医薬が、対象への、120mg、150mg、または180mgの用量における投与に適する、態様66~78のいずれか1つに記載の使用。
80.医薬が、対象への、毎月1回の投与に適する、態様66~79のいずれか1つに記載の使用。
81.対象へと、1つまたは複数の治療活性薬剤を投与するステップをさらに含む、態様1~40のいずれか1つの方法。
82.1つまたは複数の治療活性薬剤が、トロンボキサンインヒビター(例えば、アスピリン)、チエノピリジン系(例えば、クロピドグレルおよびプラスグレル)および非チエノピリジン系(例えば、チカグレロルおよびカングレロル)などのアデノシン二リン酸受容体アンタゴニスト(またはP2Y12インヒビター)、およびプロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)アンタゴニスト(例えば、Vorapaxar)からなる群から選択される、態様81の方法。
83.1つまたは複数の治療活性薬剤が、プロトンポンプインヒビター(PPI)であり、対象が、既往のGI出血または消化性潰瘍の前駆症状などのGI障害を有するか、またはこの履歴を有する、態様81の方法。
84.1つまたは複数の治療活性薬剤と組み合わせた使用のためのものである、態様51~64のいずれか1つに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
85.1つまたは複数の治療活性薬剤が、トロンボキサンインヒビター(例えば、アスピリン)、チエノピリジン系(例えば、クロピドグレルおよびプラスグレル)および非チエノピリジン系(例えば、チカグレロルおよびカングレロル)などのアデノシン二リン酸受容体アンタゴニスト(またはP2Y12インヒビター)、およびプロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)アンタゴニスト(例えば、Vorapaxar)からなる群から選択される、態様84に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
86.対象が、既往のGI出血または消化性潰瘍の前駆症状などのGI障害を有するか、またはこの履歴を有する、態様84に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
87.脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減する方法であって、FXIの触媒ドメイン内に特異的に結合する、約100mg~約250mgの抗第XI因子(「FXI」)抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含み、対象が、以下の特徴:
(i)≧55歳かつ<85歳の男性対象および女性対象;
(ii)端点を含む50~130kgの間の体重;
(iii)心電図により記録された心房細動(AF)または心房粗動;
(iv)男性対象および女性対象についてのCHA2DS2-VASc危険性スコア≧2;
(v)男性対象のCHA2DS2VASc危険性スコアが1であり、抗凝固治療が正当であること;および
(vi)抗凝固剤非処置であるか、または処置の8週間を超える以前において、推奨用量の新規経口抗凝固剤(NOAC)の安定的処置を施されていること
のうちの、1つ、2つ、もしくはこれを超えるか、または全てを有する、方法。
88.対象が、非弁膜症性心房細動に罹患している、態様87の方法。
89.抗FXI抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、態様87または88の方法。
90.抗FXI抗体またはその抗原結合性断片が、120mg、150mg、または180mgの用量で、毎月1回投与される、前記態様のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
用語
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本開示が関する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0054】
「FXIタンパク質」、「FXI抗原」、および「FXI」という用語は、互換的に使用され、異なる種における第XI因子タンパク質を指す。第XI因子とは、限定的なタンパク質分解により、活性のセリンプロテアーゼへと転換されると、血液凝固の内因系経路に参与するチモーゲンとして、ヒト血漿中に、25~30nMの濃度で存在する糖タンパク質である、哺乳動物の第XI血漿凝固因子である。
【0055】
「FXIaタンパク質」、「FXIa抗原」、および「FXIa」という用語は、互換的に使用され、異なる種における活性化型FXIタンパク質を指す。チモーゲンである第XI因子は、血液凝固の接触相を介して、または血小板表面上の、トロンビンを媒介する活性化を介して、その活性形態である第Xla凝固因子(FXIa)へと転換される。第XI因子のこの活性化時に、内部のペプチド結合は、2つの鎖の各々に切断され、ジスルフィド結合により共に保持された、2つの重鎖および2つの軽鎖から構成されるセリンプロテアーゼである、活性化型第Xla因子を結果としてもたらす。このセリンプロテアーゼであるFXIaは、第IX凝固因子を、IXaへと転換し、続いて、IXaは、第X凝固因子を活性化させる(Xa)。次いで、Xaは、第ll凝固因子/トロンビンの活性化を媒介しうる。例えば、ヒトFXIは、表1(配列番号1)に示される配列を有し、先行の報告および文献(Mandle RJ Jr, et al. (1979) Blood;54(4):850;NCBI基準配列:AAA51985)において記載されている。
【0056】
本開示の文脈では、「FXI」および「FXIa」(など)という用語は、天然のFXIタンパク質およびFXIaタンパク質のそれぞれの突然変異体および変異体であって、上述の報告において記載されている、天然の一次構造(アミノ酸配列)のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を有する突然変異体および変異体を含む。
【0057】
「触媒ドメイン」、「セリンプロテアーゼ触媒ドメイン」という用語、および本明細書で使用される同様な用語は、循環中の成熟タンパク質のN末端のGlu1から数えた、アミノ酸Ile370~Val607を意味する。これはまた、FXIのC末端における残基388~625としても記載することができる。本明細書で使用される「活性部位」という用語は、アミノ酸であるHis413、Asp462、およびSe557を含む、触媒性三残基を意味する(Bane and Gailani (2014) Drug Disc. 19(9))。
【0058】
数値xに関する「約」という用語は、例えば、x±10%を意味する。
【0059】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、全抗体および任意の抗原結合性断片(すなわち、「抗原結合性部分」)またはそれらの単鎖体を意味する。全抗体は、ジスルフィド結合により相互接続される少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書では、VHと略記する)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメインであるCH1、CH2、およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書では、VLと略記する)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメインであるCLを含む。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称するより保存的な領域を散在させた、相補性決定領域(CDR)と称する超可変性の領域へとさらに細分することができる。各VHおよび各VLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと、以下の順序で配置される3つのCDRおよび4つのFR:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4からなる。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合性ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、宿主組織または免疫系の多様な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1の成分(Clq)を含む因子への結合を媒介しうる。一部の具体的態様では、抗体は、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、またはキメラ抗体でありうる。抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスの抗体でありうる。
【0060】
本明細書で使用される、抗体の「抗原結合性部分」または「抗原結合性断片」という用語は、所与の抗原(例えば、XIa因子(FXIa))に特異的に結合する能力を保持する、インタクトな抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体の抗原結合性機能は、インタクトな抗体の断片により果たされうる。抗体の抗原結合性部分または抗原結合性断片という用語内に包含される結合性断片の例は、Fab断片、VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、およびCH1ドメインからなる一価断片;ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab)2断片;VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一のアームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片;VHドメインまたはVLドメインからなる単一ドメイン抗体(dAb)断片(Wardら、1989 Nature 341:544~546);ならびに単離相補性決定領域(CDR)を含む。
【0061】
さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLドメインおよびVHドメインは、個別の遺伝子によりコードされるが、組換え法を使用して、それらを単一のタンパク質鎖として作製することを可能とする人工のペプチドリンカーにより付着することができ、この場合、VL領域およびVH領域は、対合して一価分子(単鎖Fv(scFv)として公知であり、例えば、Birdら、1988 Science 242:423~426;およびHustonら、1988 Proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879~5883を参照されたい)を形成する。このような単鎖抗体は、抗体の1つまたは複数の抗原結合性部分または抗原結合性断片を含む。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技法を使用して得られ、断片も、インタクトな抗体と同じ形で有用性についてスクリーニングされる。
【0062】
抗原結合性断片はまた、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、およびbis-scFv(例えば、HollingerおよびHudson、2005、Nature Biotechnology、23、9、1126~1136を参照されたい)へと組み込むこともできる。抗体の抗原結合性部分は、III型フィブロネクチン(Fn3)などのポリペプチド(フィブロネクチンポリペプチドモノボディについて記載する米国特許第6,703,199号明細書を参照されたい)に基づく足場へとグラフトすることができる。
【0063】
抗原結合性断片は、相補的な軽鎖ポリペプチドと併せて抗原結合性領域の対を形成する、タンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)の対を含む単鎖分子へと組み込むことができる(Zapataら、1995 Protein Eng. 8(10):1057~1062;および米国特許第5,641,870号明細書)。
【0064】
本明細書で使用される「アフィニティー」という用語は、単一の抗原性部位における抗体と抗原との間の相互作用の強度を指す。各抗原性部位内では、抗体「アーム」の可変領域は、多数の部位において、弱い非共有結合的力を介して抗原と相互作用し、相互作用が大きいほど、アフィニティーは強くなる。抗体またはその抗原結合性断片(例えば、Fab断片)について本明細書で使用される「高アフィニティー」という用語は一般に、10-9M以下のKD(例えば、10-10M以下のKD、10-11M以下のKD、10-12M以下のKD、10-13M以下のKD、10-14M以下のKDなど)を有する抗体または抗原結合性断片を指す。
【0065】
「アミノ酸」という用語は、自然発生のアミノ酸および合成アミノ酸のほか、自然発生のアミノ酸と同様の形で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体も指す。自然発生のアミノ酸とは、遺伝子コードによりコードされるアミノ酸のほか、後で修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンでもある。アミノ酸類似体とは、自然発生のアミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムに結合したアルファ炭素を有する化合物を指す。このような類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド骨格を有するが、自然発生のアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造を有するが、自然発生のアミノ酸と同様の形で機能する化学化合物を指す。
【0066】
本明細書で使用される「結合特異性」という用語は、1つの抗原決定基だけと反応する個別の抗原結合部位の能力を指す。
【0067】
抗体(例えば、FXI結合性抗体および/またはFXIa結合性抗体)に「特異的に(または選択的に)結合する」という語句は、タンパク質および他の生体物質の異質な集団内のコグネイト抗原(例えば、ヒトのFXIおよび/もしくはFXIaまたはカニクイザルのFXIおよび/もしくはFXIa)の存在を決定する結合反応を指す。本明細書では、「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という語句は、「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と互換的に使用される。
【0068】
「FXIおよび/またはFXIaを媒介する」という用語は、FXIおよび/またはFXIaが、第IX因子(また、FIXとしても公知である)、第X因子(FX)、および/もしくはトロンビンを、直接的もしくは間接的に活性化させることにより、かつ/または血小板受容体に結合することにより、内因系凝固経路および/または共通凝固経路を媒介するという事実を指す。
【0069】
「止血」という用語は、損傷部位における血流を止めるための主要な機構、および創傷治癒時に血管の開存を回復するための主要な機構のそれぞれを表す。正常な止血および病理学的血栓症では、3つの機構:活性化血小板の、血管壁との相互作用を意味する一次止血、フィブリンの形成、および線溶と称する過程が同時に活性化する。
【0070】
「凝固および凝固カスケード」、「凝固のカスケードモデル」などという用語は、創傷を密封するように形成される凝血を安定化させるのに用いられる、タンパク質ベースの系を指す。凝固経路とは、タンパク質分解性カスケードである。経路の各酵素は、血漿中に、活性化すると、タンパク質分解性切断を受けて、前駆体分子から活性の因子を放出する、チモーゲン(不活性形態にある)として存在する。凝固カスケードは、活性化過程を制御する一連の正および負のフィードバックループとして機能する。経路の最終目標は、次いで、可溶性フィブリノゲンを、凝血を形成するフィブリンへと転換しうる、トロンビンを産生することである。
【0071】
トロンビンの生成過程は、3つの相:内因系経路、および活性の凝血因子:FXa(活性化型第X因子)を生成させるための代替的な経路である外因系経路、およびトロンビンの形成を結果としてもたらす、最終的な共通経路に分けることができる(Hoffman M.M. and Monroe D.M. (2005) Curr Hematol Rep. 4:391 -396; Johne J, et al. (2006) Biol Chem. 387:173-178)。
【0072】
「血小板の凝集」とは、血管の破断が生じたら、正常では血流と直接接触しない物質が曝露される過程を指す。これらの物質(主に、コラーゲンおよびフォンヴィレブランド因子)は、血小板が、破断した表面に接着することを可能とする。血小板は、表面に付着すると、さらなる血小板を損傷領域へと誘引する化学物質を放出するが、これを血小板の凝集と称する。これらの2つの過程が、出血を止める最初の応答である。
【0073】
本明細書で使用される「血栓塞栓性障害」という用語または類似の用語は、内因系凝固経路および/または共通凝固経路が、異常に活性化しているか、または自然に不活化しない(例えば、治療手段を伴わずに)、任意の数の状態または疾患を指す。これらの状態は、血栓塞栓性脳卒中、および他の種類の虚血由来の脳卒中、心房細動、心房細動における脳卒中の防止(SPAF)、深部静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、ならびに肺塞栓症を含むがこれらに限定されない。これらはまた、カテーテルが血栓化する、カテーテル関連血栓症(例えば、がん患者におけるヒックマンカテーテル)、ならびにチューブおよび酸素化膜が、凝血を発症する、体外式膜型人工肺(ECMO)の防止および処置も含みうる。
【0074】
本明細書で使用される「血栓塞栓性」という用語または類似の用語はまた、本開示の抗FXI抗体および/もしくは抗FXIa抗体またはそれらの抗原結合性断片を使用して防止または処置しうる、以下:
・発作性心房細動もしくは発作性心房粗動、遷延性心房細動もしくは遷延性心房粗動、または永続性心房細動もしくは永続性心房粗動などの心不整脈を疑われるか、または確認されている対象における血栓塞栓症;
・心房細動における脳卒中の防止(SPAF)を伴う対象であって、その亜集団が、経皮冠動脈インターベンション(PCI)を受けるAF患者である対象;
・出血の危険性が大きな患者における、急性静脈血栓塞栓性事象(VTE)の処置、および長期的な続発性VTEの防止;
・一過性虚血性発作(TIA)または非機能障害誘発性脳卒中の後の二次防止における大脳および心血管事象、ならびに洞調律を伴う心不全における、血栓塞栓性事象の防止における大脳および心血管事象;
・心不整脈のための心除細動を受ける対象における、左心房内の凝血形成および血栓塞栓症;
・心不整脈のためのアブレーション手順の前、その間、およびその後における血栓症;
・静脈血栓症であり、これは、下肢または上肢における、深部静脈血栓症または表在静脈血栓症、腹部静脈および胸部静脈における血栓症、静脈洞血栓症および頸静脈血栓症の処置および二次防止を含むがこれらに限定されない;
・カテーテル、ペースメーカーの導線、合成動脈グラフト;機械的心弁もしくは生物学的心弁または左心室補助デバイスなど、静脈内または動脈内の、任意の人工表面上の血栓症;
・静脈血栓症を伴うかまたは伴わない患者における肺塞栓症;
・慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH);
・破裂したアテローム性プラーク上の動脈血栓症、動脈内の人工装具上またはカテーテル上の血栓症、および見かけ上正常な動脈内の血栓症であり、これらは、急性冠動脈症候群、ST上昇型心筋梗塞、非ST上昇型心筋梗塞、不安定狭心症、ステント血栓症、動脈系内の任意の人工表面の血栓症、および肺高血圧症を伴うかまたは伴わない対象における肺動脈血栓症を含むがこれらに限定されない;
・経皮冠動脈インターベンション(PCI)を受ける患者における、血栓症および血栓塞栓症;
・心塞栓性脳卒中および潜因性脳卒中;
・侵襲性および非侵襲性のがん性悪性腫瘍を伴う患者における血栓症;
・留置カテーテルにわたる血栓症;
・重病患者における血栓症および血栓塞栓症;
・心血栓症および血栓塞栓症であり、これらは、心筋梗塞後における心血栓症、心動脈瘤、心筋線維症、心肥大および心機能不全、心筋炎、ならびに心臓内の人工表面などの状態と関連する心血栓症を含むがこれらに限定されない;
・心房細動を伴うかまたは伴わない、心弁性心疾患を伴う患者における血栓塞栓症;
・心弁用の機械的または生物学的人工装具にわたる血栓塞栓症;
・単純型心奇形または複合型心奇形の心臓修復術後において、天然または人工の心パッチ、動脈または静脈の導管を有した患者における血栓塞栓症;
・人工膝関節置換術、人工股関節置換術、および整形外科術、胸部手術または腹部手術の後における、静脈血栓症および血栓塞栓症;
・頭蓋内インターベンションおよび脊髄インターベンションを含む神経外科術の後における、動脈血栓症または静脈血栓症;
・第V因子 Leiden、プロトロンビンの突然変異、抗トロンビンIII、プロテインC欠損症およびプロテインS欠損症、第XIII因子の突然変異、家族性異常フィブリノゲン血症、先天性プラスミノゲン欠損症、第XI因子レベルの上昇、鎌状赤血球病、抗リン脂質症候群、自己免疫疾患、慢性腸疾患、ネフローゼ症候群、溶血性尿毒症、骨髄増殖性疾患、播種性血管内凝固、発作性夜間ヘモグロビン尿症、およびヘパリン誘導性血小板減少症を含むがこれらに限定されない、先天性または後天性の血栓性素因;
・慢性腎疾患における血栓症および血栓塞栓症;ならびに
・血液透析を受ける患者、および体外式膜型人工肺を受ける患者における、血栓症および血栓塞栓症
のうちの任意の数も指す場合がある。
【0075】
「キメラ抗体」という用語は、(a)抗原結合性部位(可変領域)を、クラス、エフェクター機能、および/もしくは種が異なるか、またはクラス、エフェクター機能、および/もしくは種を改変された定常領域、あるいはキメラ抗体に新たな特性を付与する全く異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物などへと連結するように、定常領域またはその一部を、改変するか、置きかえるか、または交換した抗体分子;あるいは(b)可変領域またはその一部を、抗原特異性が異なるか、または抗原特異性を改変された可変領域により改変するか、置きかえるか、またはこれと交換した抗体分子を指す。例えば、マウス抗体は、その定常領域を、ヒト免疫グロブリンに由来する定常領域で置きかえることにより修飾することができる。ヒト定常領域による置きかえに起因して、キメラ抗体は、ヒトにおける抗原性を、元のマウス抗体と比較して低減しながら、抗原の認識におけるその特異性を保持しうる。
【0076】
「保存的に修飾された変異体」という用語は、アミノ酸配列および核酸配列のいずれにも適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体とは、同一なアミノ酸配列もしくは本質的に同一なアミノ酸配列をコードする核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合は、本質的に同一な配列を指す。遺伝子コードの縮重性のために、多数の機能的に同一な核酸が、所与の任意のタンパク質をコードする。例えば、コドンであるGCA、GCC、GCG、およびGCUのいずれも、アミノ酸であるアラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより指定されるあらゆる位置で、コードされるポリペプチドを改変せずに、コドンを、記載された対応するコドンのうちのいずれかへと改変することができる。このような核酸変異は、保存的に修飾された変異のうちの1種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする、本明細書のあらゆる核酸配列はまた、核酸のあらゆる可能なサイレント変異についても記載する。当業者は、核酸内の各コドン(通常メチオニンだけのコドンであるAUG、および通常トリプトファンだけのコドンであるTGGを除く)を修飾して、機能的に同一な分子をもたらしうることを認識するであろう。したがって、記載される各配列内では、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異が含意されている。
【0077】
ポリペプチド配列では、「保存的に修飾された変異体」は、アミノ酸の、化学的に類似するアミノ酸による置換を結果としてもたらす、ポリペプチド配列への個別の置換、欠失、または付加を含む。当技術分野では、機能的に類似するアミノ酸を提示する保存的置換表が周知である。このような保存的に修飾された変異体は、本開示の多型変異体、種間相同体、および対立遺伝子に追加されるものであり、これらを除外するものではない。以下の8つの群:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)は、互いに対して保存的置換であるアミノ酸を含有する(例えば、Creighton、Proteins(1984)を参照されたい)。いくつかの実施形態では、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特徴にそれほど大きな影響を及ぼしたりこれを改変したりしないアミノ酸修飾を指すのに使用する。
【0078】
「エピトープ」という用語は、抗体への特異的な結合が可能なタンパク質決定基を意味する。エピトープは通例、アミノ酸または糖側鎖など、化学的に活性な表面分子群からなり、通例、特異的な三次元構造特徴のほか、特異的な電荷特徴も有する。コンフォメーショナルエピトープと非コンフォメーショナルエピトープとは、前者への結合は、変性溶媒の存在下で失われるが、後者への結合は失われないという点で区別される。競合結合アッセイにおいて、当業者に周知の方法のうちのいずれかにより、一方の抗体が、第2の抗体と同じエピトープに結合することが示される場合、2つの抗体は、「競合する」という。
【0079】
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、フレームワーク領域およびCDR領域のいずれもが、ヒト由来の配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことを意図する。さらに、抗体が定常領域を含有する場合、定常領域もまた、このようなヒト配列、例えば、ヒト生殖細胞系列配列またはヒト生殖細胞系列配列の突然変異させたバージョンに由来する。本開示のヒト抗体は、ヒト配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroにおけるランダム突然変異誘発もしくは部位特異的突然変異誘発により導入された突然変異、またはin vivoにおける体細胞突然変異により導入された突然変異)を含みうる。
【0080】
「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、単一の結合特異性を提示する抗体であって、フレームワーク領域およびCDR領域のいずれもが、ヒト配列に由来する可変領域を有する抗体を指す。一実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ法を使用して調製する。
【0081】
「ヒト化」抗体とは、ヒトにおける免疫原性は小さいが、非ヒト抗体の反応性を保持する抗体である。これは、例えば、非ヒトCDR領域を保持し、抗体の残りの部分を、それらのヒト対応物(すなわち、可変領域の定常領域ならびにフレームワーク部分)で置きかえることにより達成することができる。例えば、Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81:6851~6855、1984; MorrisonおよびOi、Adv. Immunol.、44:65~92、1988; Verhoeyenら、Science、239:1534~1536、1988; Padlan、Molec. Immun.、28:489~498、1991;およびPadlan、Molec. Immun.、31:169~217、1994を参照されたい。ヒト操作技術の他の例は、US5,766,886において開示されているXoma技術を含むがこれらに限定されない。
【0082】
2つ以上の核酸配列またはポリペプチド配列の文脈における「同一な」または「同一性」パーセントという用語は、2つ以上の配列または部分配列が同じであることを指す。以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して、または手作業のアライメントおよび目視により測定される比較域または指定領域にわたり、最大の対応性について比較され、配列決定された場合の、2つの配列の、指定された百分率のアミノ酸残基またはヌクレオチドが同じであれば(すなわち、指定される領域にわたる、または、指定されない場合は、配列全体にわたる、60%の同一性、任意選択で、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%の同一性を有すれば)、2つの配列は「実質的に同一」である。任意選択で、同一性は、少なくとも約50ヌクレオチド(または10アミノ酸)の長さの領域にわたり、またはより好ましくは、100~500、または1000ヌクレオチド以上(または20、50、または200アミノ酸以上)の長さの領域にわたり存在する。
【0083】
配列比較では、1つの配列が、それに照らして被験配列を比較する基準配列として働くことが典型的である。配列比較アルゴリズムを使用する場合、被験配列および基準配列をコンピュータへと入力し、必要な場合は、部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを使用することもでき、代替的なパラメータを指定することもできる。次いで、配列比較アルゴリズムにより、プログラムパラメータに基づき、被験配列について、基準配列と比べた配列同一性パーセントを計算する。
【0084】
本明細書で使用される「比較域」は、2つの配列を最適に配列決定した後で、配列を、同じ数の連続的な位置による基準配列と比較しうる、20~600、通例約50~約200、より通例では、約100~約150からなる群から選択される連続的な位置の数のうちのいずれか1つによるセグメントに対する言及を含む。当技術分野では、比較のための配列アライメント法が周知である。比較のための最適な配列アライメントは、例えば、SmithおよびWaterman (1970) Adv. Appl. Math. 2:482cによる局所相同性アルゴリズムにより行うこともでき、NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol. 48:443、1970による相同性アライメントアルゴリズムにより行うこともでき、PearsonおよびLipman、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444、1988による類似性検索法により行うこともでき、これらアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)により行うこともでき、手作業のアライメントおよび目視(例えば、Brentら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons, Inc.(Ringbou編、2003)を参照されたい)により行うこともできる。
【0085】
配列同一性パーセントおよび配列類似性パーセントを決定するのに適するアルゴリズムの2つの例は、それぞれ、Altschulら、(1977) Nuc. Acids Res. 25:3389~3402;およびAltschulら、(1990) J. Mol. Biol. 215:403~410において記載されている、BLASTアルゴリズムおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationにより公表されている。このアルゴリズムは、データベース配列内の同じ長さのワードで配列決定したときに、ある正の値の閾値スコアTにマッチするかまたはこれを満たす、クエリー配列内の短いワード長Wを同定することにより、高スコア配列対(HSP)をまず同定することを伴う。Tを、隣接ワードスコア閾値(Altschulら、前出)と称する。これらの初期の隣接ワードヒットが、これらを含有するより長いHSPを見出す検索を開始するためのシードとして働く。累積アライメントスコアが増大しうる限りにおいて、ワードヒットを、各配列に沿っていずれの方向にも拡張する。累積スコアは、ヌクレオチド配列では、パラメータM(マッチする残基の対についてのリウォードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基についてのペナルティースコア;常に<0)を使用して計算する。アミノ酸配列では、スコアリングマトリックスを使用して、累積スコアを計算する。累積アライメントスコアが、達成されたその最大値から量Xだけ低下した場合;1つまたは複数の負スコア残基のアライメントの累積のために、累積スコアが、ゼロ以下に低下した場合;または配列のいずれかの末端に達した場合は、各方向へのワードヒットの拡張を停止させる。BLASTアルゴリズムパラメータであるW、T、およびXにより、アライメントの感度および速度が決定される。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列の場合)では、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=-4をデフォルトとして使用し、両方の鎖の比較を行う。アミノ酸配列のためのBLASTPプログラムでは、3のワード長、および10の期待値(E)、および50のBLOSUM62スコアリングマトリックス(HenikoffおよびHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915、1989を参照されたい)アライメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=-4をデフォルトとして使用し、両方の鎖の比較を行う。
【0086】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列の間の類似性についての統計学的解析(例えば、KarlinおよびAltschul、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873~5787、1993を参照されたい)も実施する。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの尺度は、2つのヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間のマッチングが偶然に生じる確率の指標をもたらす最小合計確率(P(N))である。例えば、被験核酸を基準核酸に照らして比較したときの最小合計確率が約0.2未満であり、より好ましくは、約0.01未満であり、最も好ましくは、約0.001未満であれば、核酸は基準配列と類似すると考えられる。
【0087】
2つのアミノ酸配列の間の同一性パーセントはまた、PAM120重みづけ残基表、12のギャップ長ペナルティー、および4のギャップペナルティーを使用するALIGNプログラム(バージョン2.0)へと組み込まれた、E. MeyersおよびW. Miller(Comput. Appl. Biosci.、4:11~17、1988)によるアルゴリズムを使用しても決定することができる。加えて、2つのアミノ酸配列の間の同一性パーセントは、Blossom 62マトリックスまたはPAM250マトリックス、および16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重みづけ、および1、2、3、4、5、または6の長さ重みづけを使用する、GCGソフトウェアパッケージ(インターネット上のgcg.comで入手可能である)内のGAPプログラムへと組み込まれた、NeedlemanおよびWunsch(J. Mol, Biol. 48:444~453、1970)によるアルゴリズムを使用しても決定することができる。
【0088】
上記で言及した配列同一性百分率以外の、2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であることの別の指標は、下記で記載される通り、第1の核酸によりコードされるポリペプチドが、第2の核酸によりコードされるポリペプチドに対する抗体と免疫学的に交差反応性であることである。したがって、例えば、2つのペプチドが保存的置換だけによって異なる場合、ポリペプチドは、第2のポリペプチドと実質的に同一なことが典型的である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、下記で記載される通り、2つの分子またはそれらの相補体が、厳密な条件下で、互いとハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であることのさらに別の指標は、同じプライマーを使用して配列を増幅しうることである。
【0089】
「単離抗体」という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、FXIおよび/もしくはFXIaに特異的に結合する単離抗体は、FXIおよび/もしくはFXIa以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、FXIおよび/もしくはFXIaに特異的に結合する単離抗体は、他の抗原に対する交差反応性を有しうる。さらに、単離抗体は、他の細胞内物質および/または化学物質を実質的に含まない場合もある。
【0090】
「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によりもたらされる抗体クラス(例えば、IgM、IgE、IgG1またはIgG4などのIgG)を指す。アイソタイプはまた、これらのクラスのうちの1つの修飾バージョンも含み、その修飾は、Fc機能を改変する、例えば、エフェクター機能またはFc受容体への結合を増強または低減するように施されている。
【0091】
本明細書で使用される「Kassoc」または「Ka」という用語が、特定の抗体-抗原間相互作用の会合速度を指すことを意図するのに対し、本明細書で使用される「Kdis」または「Kd」という用語は、特定の抗体-抗原間相互作用の解離速度を指すことを意図する。本明細書で使用される「KD」という用語は、KdのKaに対する比(すなわち、Kd/Ka)から得られる解離定数を指すことを意図し、モル濃度(M)として表す。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。抗体のKDを決定するための方法は、BIACORE(商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用して表面プラズモン共鳴を測定するか、または溶液平衡滴定(SET)により溶液中のアフィニティーを測定するステップを含む。
【0092】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一の分子組成による抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性およびアフィニティーを提示する。
【0093】
本明細書では、「核酸」という用語が、「ポリヌクレオチド」という用語と互換的に使用され、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらの一本鎖形態または二本鎖形態におけるポリマーを指す。「核酸」という用語は、公知のヌクレオチド類似体または修飾骨格残基もしくは修飾連結を含有する核酸であって、合成の核酸、自然発生の核酸、および非自然発生の核酸であり、基準核酸と同様の結合特性を有し、基準ヌクレオチドと同様の形で代謝される核酸を包含する。このような類似体の例は、限定なしに述べると、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)を含む。
【0094】
別段に指し示されない限りにおいて、特定の核酸配列はまた、保存的に修飾されたその変異体(例えば、縮重コドン置換)および相補的配列も暗示的に包含するほか、明示的に指し示される配列も包含する。とりわけ、下記で詳述される通り、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(または全ての)コドンの第3の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作り出すことにより達成することができる(Batzerら、Nucleic Acid Res. 19:5081、1991; Ohtsukaら、J. Biol. Chem. 260:2605~2608、1985;およびRossoliniら、Mol. Cell. Probes 8:91~98、1994)。
【0095】
「作動可能に連結された」という用語は、2つ以上のポリヌクレオチド(例えば、DNA)セグメントの間の機能的関係を指す。「作動可能に連結された」という用語は、転写調節配列の、転写される配列に対する機能的関係を指すことが典型的である。例えば、プロモーター配列またはエンハンサー配列は、それが、適切な宿主細胞内または他の発現系内のコード配列の転写を刺激またはモジュレートするとき、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、転写される配列に作動可能に連結されたプロモーター転写調節配列は、転写される配列と物理的に隣接する、すなわち、シス作用型である。しかし、エンハンサーなど、一部の転写調節配列は、その転写をそれらが増強するコード配列に物理的に隣接する必要も、近接して配置される必要もない。
【0096】
本明細書で使用される「最適化された」という用語は、ヌクレオチド配列を、産生細胞または産生生物、一般に、真核細胞、例えば、ピキア(Pichia)属細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、またはヒト細胞において好ましいコドンを使用してアミノ酸配列をコードするように改変していることを意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、「親」配列としてもまた公知の出発ヌクレオチド配列により本来コードされるアミノ酸配列を、完全に、または可能な限り多く保持するように操作する。本明細書の最適化された配列は、哺乳動物細胞において好ましいコドンを有するように操作されている。しかし、本明細書ではまた、他の真核細胞または原核細胞におけるこれらの配列の最適化された発現も企図される。最適化されたヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列もまた、最適化されていると称する。
【0097】
本明細書では、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語が、アミノ酸残基のポリマーを指すように互換的に使用される。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する自然発生のアミノ酸の人工の化学的模倣体であるアミノ酸ポリマーのほか、自然発生のアミノ酸ポリマーおよび非自然発生のアミノ酸ポリマーにも適用される。別段に指し示されない限りにおいて、特定のポリペプチド配列はまた、保存的に修飾されたその変異体も暗示的に包含する。
【0098】
本明細書で使用される「組換えヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックまたはトランスクロモソーマルである動物(例えば、マウス)またはこれにより調製されるハイブリドーマから単離される抗体、ヒト抗体を発現させるように形質転換された宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマから単離される抗体、組換えのコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離される抗体、およびヒト免疫グロブリン遺伝子配列の全部または一部の、他のDNA配列へのスプライシングを伴う、他の任意の手段により調製されるか、発現させるか、創出されるか、または単離される抗体など、組換え手段により調製されるか、発現させるか、創出されるか、または単離される、全てのヒト抗体を含む。このような組換えヒト抗体は、フレームワーク領域およびCDR領域が、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかし、ある種の実施形態では、このような組換えヒト抗体は、in vitroの突然変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックである動物を使用する場合は、in vivoの体細胞突然変異誘発)にかけることができ、したがって、組換え抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列のVH配列およびVL配列に由来し、これらに関連するが、in vivoのヒト抗体の生殖細胞系列レパートリー内で天然には存在しない可能性がある配列である。
【0099】
「組換え宿主細胞」(または、簡単に、「宿主細胞」)という用語は、組換え発現ベクターを導入した細胞を指す。このような用語は、特定の対象細胞だけを指すことを意図するものではなく、このような細胞の子孫細胞も指すことを意図するものであることを理解されたい。後続する世代では、突然変異または環境的影響に起因して、ある種の修飾が生じうるため、このような子孫細胞は、実のところ、親細胞と同一ではない可能性もあるが、やはり本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
【0100】
「対象」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物を含む。非ヒト動物は、非ヒト霊長動物(例えば、カニクイザル)、ヒツジ、ウサギ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、および爬虫類など、全ての脊椎動物(例えば、哺乳動物および非哺乳動物)を含む。特記される場合を除き、本明細書では、「患者」または「対象」という用語が互換的に使用される。本明細書で使用される「カニクイザル(cyno)」または「カニクイザル(cynomolgus)」という用語は、カニクイザル(cynomolgus monkey)(カニクイザル(Macaca fascicularis))を指す。具体的な態様では、患者または対象は、ヒトである。
【0101】
一実施形態では、本明細書で使用される、任意の疾患または障害(例えば、血栓塞栓性障害)「~を処置すること」またはこれらの「処置」という用語は、疾患または障害を改善すること(すなわち、疾患またはその臨床症状のうちの少なくとも1つの発症を緩徐化するか、停止させるか、または軽減すること)を指す。別の実施形態では、「~を処置すること」または「処置」とは、患者により識別可能でない可能性があるパラメータを含む少なくとも1つの物理的パラメータを緩和または改善することを指す。さらに別の実施形態では、「~を処置すること」または「処置」とは、疾患または障害を、物理的にモジュレートする(例えば、識別可能な症状の安定化)か、生理学的にモジュレートする(例えば、物理的パラメータの安定化)か、または物理的かつ生理学的にモジュレートすることを指す。さらに別の実施形態では、「~を処置すること」または「処置」とは、疾患または障害の発生または発症または進行を防止するかまたは遅延させることを指す。
【0102】
例えば血栓塞栓性障害を含む、本明細書で記載される適応に関する場合の「防止」とは、例えば、前記悪化の危険性がある患者における、下記で記載される、血栓塞栓性疾患パラメータの悪化を防止または緩徐化する任意の作用を意味する。
【0103】
「ベクター」という用語は、それが連結された別のポリヌクレオチドを輸送することが可能なポリヌクレオチド分子を指すことを意図する。ベクターのうちの1つの種類は、さらなるDNAセグメントをライゲーションしうる、環状の二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。ベクターの別の種類は、さらなるDNAセグメントを、ウイルスゲノムへとライゲーションしうる、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVまたはAAV2)などのウイルスベクターである。ある種のベクター(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよび哺乳動物のエピソームベクター)は、それらが導入された宿主細胞における自己複製が可能である。他のベクター(例えば、非哺乳動物のエピソームベクター)は、宿主細胞へと導入すると、宿主細胞のゲノムへと組み込むことができ、これにより、宿主ゲノムと共に複製する。さらに、ある種のベクターは、それらが作動的に連結された遺伝子の発現を方向付けることが可能である。本明細書では、このようなベクターを、「組換え発現ベクター」(または簡単に、「発現ベクター」)と称する。一般に、組換えDNA法において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態にあることが多い。プラスミドはベクターの最も一般的に使用される形態であるので、本明細書では、「プラスミド」と「ベクター」とを互換的に使用することができる。しかし、本開示は、同等な機能をもたらすウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)など、発現ベクターの他の形態も含むことを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【
図1-1】
図1A~1Cは、ヒトFXIタンパク質で再構成されたFXI
-/-マウスにおける、FeCl
3誘導性血栓症に対する、NOV1401の効果を示す図である。NOV1401は、血栓症を、用量依存的に阻害した。抗体は、非処置FXI
-/-マウスにおける場合と同じ程度に、aPTTを延長した。
【
図2】
図2A~2Bは、3mg/kg、10mg/kgおよび30mg/kgのNOV1401の、複数回にわたる静脈内(i.v.)(A;N=2)投与または皮下(s.c.)(B;N=2)投与の、aPTT(ひし形)に対する効果と、カニクイザルにおける総血漿NOV1401レベル(四角)に対する関係とを示す図である。3mg/kgの単回投与は、約2倍のaPTTをもたらし、これを、5~6週間にわたり維持した。全ての被験用量は、aPTTを、同様な程度に延長し、高被験用量が、3mg/kgの用量で観察されるaPTTの延長の大きさを増大させるとは考えられなかった。
【
図3】
図3A~3Bは、3mg/kg、10mg/kgおよび30mg/kgのNOV1401の、複数回にわたるi.v.(A;N=2)投与またはs.c.(B;N=2)投与の、血漿遊離FXI(四角)に対する効果と、カニクイザルにおけるaPTT(ひし形)に対する関係とを示す図である。3mg/kgの単回投与は、遊離FXIを、5~6週間にわたり、約90%低減した。全ての被験用量は、遊離FXIを、同様な程度に低減し、高被験用量が、3mg/kgの用量で観察される遊離FXIの低減の大きさを増大させるとは考えられなかった。
【
図4-1】
図4A~4Cは、抗FXI/FXIa抗体についての複合応答曲線を示す図である。
図4Aは、NOV1401による第XIa因子活性の阻害を示す。全長ヒトFXIaの酵素活性を阻害する抗体であるNOV1401の代表的な複合応答曲線。アッセイは、実施例2で記載される通り、蛍光標識されたペプチドの切断を測定する。ロジスティック当てはめモデル[y=A2+(A1-A2)/(1+(x/IC50)
p)[式中、yは、インヒビター濃度をxとするときの阻害%であり、A1は、最小の阻害値であり、A2は、最大の阻害値である。指数pは、ヒル係数である]による非線形曲線の当てはめを、この代表的データセットにおいて使用することにより、160pMのIC
50値がもたらされる。
図4Bは、aPTTについての複合応答曲線を示す。プールされたヒト血漿を使用するaPTTアッセイにおける、抗体であるNOV1401による、凝固時間の延長についての代表的な複合応答曲線。アッセイは、実施例3で記載される通り、異なる濃度のNOV1401の存在下で、内因系凝血カスケードを開始させた後における、凝固時間を測定する。黒線は、ロジスティック非線形当てはめモデルを使用する当てはめを表す。点線は、NOV1401の非存在下における、プールされたヒト血漿の、ベースラインの凝固時間を表す。ベースラインの凝固時間は、32.3秒間であり、グラフ内では、グレーの破線で指し示される。グレーの点線は、凝血時間が、ベースラインと比較して倍増したとき、すなわち、2×aPTT値となるときの抗体濃度を指し示し、これは、14nMである。
図4Cは、TGA応答曲線を示す。プールされたヒト血漿を伴うTGAにおける、抗体であるNOV1401による、トロンビン生成の阻害についての代表的な複合応答曲線を示す。アッセイは、実施例3で記載される通り、異なる濃度のNOV1401の、いわゆるトロンビン→FXIaフィードフォワードループを介する、非常に低濃度の組織因子(TF)により誘発されうるトロンビン生成に対する効果を測定する。黒線は、4パラメータ用量応答曲線モデルを使用する当てはめを表す。点線は、少量のTFにより誘導されるトロンビン生成に起因する、残留トロンビン濃度を表す。24nMのIC
50値および159nMの残留トロンビン濃度(点線)を、この複合応答曲線について計算した。
【
図5-1】
図5A~5Bは、NOV1401の、毎週10mg/kg(N=3)および100mg/kg(N=5)の13週間(14回の投与)にわたるs.c.投与、または毎週50mg/kg(N=3)の4週間(5回の投与)にわたるi.v.投与の、aPTTおよびFXI活性(FXI:C)に対する効果を示す図である。
図5Aは、研究の2、23、および79日目に測定される、aPTTに対する効果を示す。aPTTは、NOV1401を施される全ての動物において、2.1~3倍に増加され、研究の投与期を通して、高値を維持した。用量依存性は、観察されず、性別に関連する差異も、認められなかった。
図5Bは、研究の2、23、および79日目に測定され、血漿FXI活性に対するパーセントとして描示される、FXI:Cに対する効果を示す。FXI:Cは、NOV1401を施される全ての動物において、5~12%のレベルまで低下し、研究の投与期を通して、これらのレベルを維持した。用量依存性は、観察されず、性別に関連する差異も、認められなかった。
【発明を実施するための形態】
【0105】
本開示は、FXIaに特異的に結合し、その生物学的活性を阻害する抗体分子(例えば、NOV1090またはNOV1401)であって、血液透析を受ける、ESRDを伴う対象など、ESRDを伴う対象における、脳卒中など、血栓症または血栓塞栓症の危険性の防止または低減における使用のための抗体分子の発見に部分的に基づく。本明細書の特定の態様では、血液透析を受ける、ESRDを伴う対象など、AFおよびESRDを伴う対象における、脳卒中または全身性塞栓症など、血栓症または血栓塞栓症の危険性を防止または低減するための方法が提示される。具体的な態様では、このような対象は、出血の高危険性がある。
【0106】
本開示は、全長IgGフォーマット抗体(例えば、ヒト抗体)、ならびにFab断片(例えば、抗体NOV1090およびNOV1401)など、それらの抗原結合性断片の両方の使用に関する。
【0107】
第XI因子
FXIは、内因系凝固経路および外因系凝固経路の両方において、ならびに血漿による止血の開始期および増幅期の橋渡しにおいて重要な役割を果たす。第XIIa因子およびトロンビンのいずれも、FXIを活性化させる結果として、持続的なトロンビンの生成および線溶の阻害をもたらしうる。FXIは、「血管損傷後」に、高組織因子環境下にある、正常な止血で果たす役割は小さいが、血栓症では、鍵となる役割を果たすと考えられる。重度の第XI因子欠損症は、虚血性脳卒中および静脈の血栓塞栓性事象の発症率の低下と関連する(Salomon et al 2008; Salomon, et al. (2011) Thromb Haemost.; 105:269-73)。重度の第XI因子欠損症を伴う対象における出血症状は、低頻度であり、軽度で、損傷誘導性であることが多く、口腔粘膜、鼻腔粘膜、および尿路など、線溶活性が増大した組織に影響することが好ましい(Salomon et al 2011)。致命的な臓器における出血は、極めてまれであるか、または認められていない。
【0108】
血漿凝固とは、血中の凝固因子が相互作用し、活性化する、逐次的な過程であり、最終的には、フィブリンの生成および凝血の形成を結果としてもたらす。凝固の古典的カスケードモデルでは、フィブリン生成の過程は、2つの顕著に異なる経路、すなわち、内因系経路および外因系経路のそれぞれにより開始されうる(Mackman, 2008)。
【0109】
外因系経路では、血管損傷は、血管外組織因子(TF)を、第VII因子(FVII)と相互作用させ、これを活性化させ、これにより、第X因子およびプロトロンビンの活性化を逐次的にもたらす。活性トロンビンは最終的に、可溶性フィブリノゲンを、フィブリンへと転換する。外因系経路は、止血に中心的であり、この経路内の凝固因子に対する干渉は、出血の危険性を結果としてもたらす。
【0110】
内因系経路では、第XII因子は場合によって、接触活性化と称する過程により活性化しうる。活性化型第XIIa因子の生成は、第XI因子および第IX因子の逐次的な活性化をもたらす。第IXa因子は、第X因子を活性化させるので、外因系経路と、内因系経路とは、この段階で合流する(共通経路)。トロンビン活性は、トロンビンが、第XI因子を、第XII因子に依存せずに活性化させる、フィードフォワードループを介して、それ自体の生成を増幅することによりブーストされる。このフィードフォワードループは、持続的な血栓成長には寄与するが、凝血の形成には、血管外組織因子による強力な活性化で十分であるので、止血への関与は、最小限に限られる。したがって、内因系経路は、止血には実質的に関与しない(Gailani and Renne (2007) Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2007, 27(12):2507-13, Muller, Gailiani, and Renne 2011)。
【0111】
様々な手法を使用して、様々な種にわたるFXIまたはFXIaを阻害する前臨床研究が、この標的の検証に寄与している。FXI-/-マウスは、実験による静脈血栓症(Wang, et al. (2006) J Thromb Haemost; 4:1982-8)および動脈血栓症(Wang, et al. (2005) J Thromb Haemost; 3:695-702)に対して抵抗性である。FXIIaによるFXIの活性化を遮断する抗体(Ab;14E11)によるマウスの処置は、実験による血栓症の阻害を結果としてもたらし(Cheng, et al. (2010) Blood, 116:3981-9)、虚血性脳卒中のマウスモデルにおける脳梗塞サイズを低減した(Leung, et al. (2012) Transl Stroke Res 2012; 3:381-9)。FXIaによるFIXの結合および活性化を遮断する抗FXI Abを投与されたヒヒでは、コラーゲンでコーティングされた血管グラフト上において、血小板に富む血栓の増殖の低減が観察され(Tucker, et al. (2009) Blood 2009; 113:936-44)、同様の結果は、このモデルにおいて、14E11によっても見出された(Cheng 2010)。これらの研究のうちのいずれにおいても、過剰な出血は認められなかった。
【0112】
マウス(Zhang, et al. (2010) Blood 2010; 116:4684-92)、カニクイザル(Younis, et al. (2012) Blood 2012; 119:2401-8)、およびヒヒ(Crosby, et al. (2013) Arterioscler Thromb Vasc Biol 2013; 33:1670-8)において、アンチセンスオリゴヌクレオチドにより、FXIの合成を遮断することは、過剰な出血を伴わずに、抗血栓効果および抗凝固効果を結果としてもたらした。さらに、ラット(Schumacher, et al. (2007) Eur J Pharmacol 2007; 570:167-74)およびウサギ(Wong, et al. (2011) J Thromb Thrombolysis 2011; 32:129-37)の静脈血栓症モデルおよび動脈血栓症モデルにおいて、低分子量インヒビターでFXIaを遮断することによっても、同様な効果がもたらされている。
【0113】
重度のFXI欠損症を伴う患者は、自発的に出血することがまれであり、線溶活性が高度な組織内を除き、軽度の外傷誘導性出血を示すにとどまる。重度のFXI欠損症の希少性は、これらの患者について、一般集団と比べた血栓プロファイルを明らかにする集団研究の使用を必然化する。とりわけ、このような研究は、これらの患者では、虚血性脳卒中(Salomon 2008)および深部静脈血栓症(DVT)(Salomon, et al. (2011) Blood 2008; 111: 4113-17)の発症率が低減されることを報告している。こうして、重度のFXI欠損症を伴う115例の患者において観察される虚血性脳卒中の数(N=1)は、イスラエルの一般集団において予測される発症数(N=8.6)より少なく(p<0.003)、重度のFXI欠損症を伴う患者におけるDVTの発症数(N=0)は、対照集団において予測される発症数(N=4.7)より少なかった(p<0.019)。逆に、FXIレベルが第90百分位数を上回る個体は、DVTを発症する危険性が2倍であった(Meijers, et al. (2000) N Engl J Med. 2000; 342:696-701)。
【0114】
近年、DVTの素因となる手順である、人工膝関節置換術を受ける患者を、FXIアンチセンス療法または標準治療(エノキサパリン)で処置した。アンチセンス群(300mg)は、標準治療と比較した、静脈血栓症の発症率の7分の1の低下と、出血事象の減少(有意ではない)とを示した(Buller et al, (2014) N Engl J Med. 372(3):232-40. doi: 10.1056/NEJMoa1405760. Epub 2014 Dec 7)。
【0115】
まとめると、上記研究は、FXIを、抗血栓療法に妥当な標的として、強く支持する。
【0116】
FXIa抗体および抗原結合性断片
本開示は、脳卒中など、血栓症または血栓塞栓症の危険性の、処置、防止、または低減における使用のための、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体を提示する。一部の実施形態では、本開示は、ヒト、ウサギ、およびカニクイザルのFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体を提示する。本開示の抗体は、実施例で記載される通りに単離されたヒトモノクローナル抗体およびFabを含むがこれらに限定されない。
【0117】
本開示は、FXIタンパク質および/もしくはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、およびカニクイザルのFXIおよび/もしくはFXIa)に特異的に結合する抗体であって、配列番号9および29のアミノ酸配列を有するVHドメインを含む抗体を提供する。本開示はまた、FXIタンパク質および/またはFXIaタンパク質に特異的に結合する抗体であって、以下の表1に列挙されるVH CDRのうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む抗体も提供する。特に、本開示は、FXIタンパク質および/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、およびカニクイザルのFXIおよび/またはFXIa)に特異的に結合する抗体であって、下記の表1に列挙したVH CDRのうちのいずれかのアミノ酸配列を有する1つ、2つ、3つ、またはこれを超えるVH CDRを含む(または、代替的に、これらからなる)抗体を提示する。(2016年6月24日に出願され、国際公開第2016/207858号パンフレットとして公開された、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、PCT国際特許出願第PCT/IB2016/053790号明細書を参照されたい)。
【0118】
本開示は、FXIaタンパク質に特異的に結合する抗体であって、本明細書で記載される方法(例えば、ESRDおよび/またはAFを伴う対象における、脳卒中および/または全身性塞栓症の危険性を低減する方法)における使用のための、配列番号19または39のアミノ酸配列を有するVLドメインを含む抗体を提示する。本開示はまた、FXIタンパク質および/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、およびカニクイザルのFXIおよび/またはFXIa)に特異的に結合する抗体であって、本明細書で記載される方法(例えば、ESRDおよび/またはAFを伴う対象における、脳卒中および/または全身性塞栓症の危険性を低減する方法)における使用のための、下記の表1に列挙したVL CDRのうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む抗体も提示する。特に、本開示は、FXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、およびカニクイザルのFXIおよび/またはFXIa)に特異的に結合する抗体であって、以下の表1に列挙されるVL CDRのうちのいずれかのアミノ酸配列を有する、1つ、2つ、3つ以上のVL CDRを含む(または、代替的に、これらからなる)抗体を提供する。
【0119】
本明細書で記載される方法(例えば、ESRDおよび/またはAFを伴う対象における、脳卒中および/または全身性塞栓症の危険性を低減する方法)における使用のための他の抗体は、突然変異しているが、CDR領域内で、表1に記載されている配列内で描示されたCDR領域との、少なくとも60、70、80、85、90、または95パーセントの同一性を有するアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、本発明の他の抗体は、CDR領域内で、表1に記載されている配列内で描示されるCDR領域と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以下のアミノ酸を突然変異させた、突然変異体のアミノ酸配列を含む。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【0126】
本明細書で記載される方法(例えば、ESRDおよび/またはAFを伴う対象における、脳卒中および/または全身性塞栓症の危険性を低減する方法)における使用のための他の抗体は、アミノ酸またはアミノ酸をコードする核酸が、突然変異しているが、表1に記載された配列に対して、少なくとも60、65、70、75、80、85、90、または95パーセントの同一性を有する抗体を含む。いくつかの実施形態は、可変領域内で、実質的に同じ抗原結合活性を保持しながら、表1に記載されている配列内で描示された可変領域と比較した場合に、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以下のアミノ酸を突然変異させている、突然変異体のアミノ酸配列を含む。
【0127】
これらの抗体の各々は、FXIおよび/もしくはFXIaに結合しうるので、VH配列、VL配列、全長軽鎖配列、および全長重鎖配列(アミノ酸配列と、アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列と)を「混合し、マッチさせて」、本開示の他のFXI結合性抗体および/もしくはFXIa結合性抗体を創出することができる。このような「混合し、マッチさせた」FXI結合性抗体および/もしくはFXIa結合性抗体は、当技術分野で公知の結合アッセイ(例えば、ELISAおよび実施例節で記載される他のアッセイ)を使用して調べることができる。これらの鎖を混合し、マッチさせる場合、特定のVH/VL対合に由来するVH配列を、構造的に類似するVH配列で置きかえるものとする。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖対合に由来する全長重鎖配列を、構造的に類似する全長重鎖配列で置きかえるものとする。同様に、特定のVH/VL対合に由来するVL配列を、構造的に類似するVL配列で置きかえるものとする。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖対合に由来する全長軽鎖配列を、構造的に類似する全長軽鎖配列で置きかえるものとする。
【0128】
したがって、本明細書で記載される方法(例えば、ESRDおよび/またはAFを伴う対象における、脳卒中および/または全身性塞栓症の危険性を低減する方法)における使用のための一態様では、本開示は、配列番号9および29からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号19および39からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを有する、単離抗体またはその抗原結合性領域を提示し、この場合、抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、およびカニクイザルのFXIa)に特異的に結合する。
【0129】
より具体的に、ある種の態様では、本開示は、配列番号9および29;または19および39のそれぞれから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを有する、単離抗体またはその抗原結合性領域を提供する。
【0130】
本明細書で記載される方法(例えば、ESRDおよび/またはAFを伴う対象における、脳卒中および/または全身性塞栓症の危険性を低減する方法)における使用のための、具体的な実施形態では、ヒトFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本明細書で提示される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0131】
本明細書で記載される方法(例えば、ESRDおよび/またはAFを伴う対象における、脳卒中および/または全身性塞栓症の危険性を低減する方法)における使用のための、具体的な実施形態では、ヒトFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本明細書で提示される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0132】
本明細書で記載される方法における使用のための、別の態様では、本開示は、(i)哺乳動物細胞における発現について最適化されたアミノ酸配列であって、配列番号11または31からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む全長重鎖、ならびに哺乳動物細胞における発現について最適化されたアミノ酸配列であって、配列番号21または41からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む全長軽鎖を有する単離抗体、または(ii)その抗原結合性部分を含む機能的タンパク質を提供する。より具体的に、ある種の態様では、本開示は、配列番号11および31;または19および39のそれぞれから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖を有する単離抗体またはその抗原結合性領域を提供する。
【0133】
本明細書で記載される方法における使用のための、具体的な実施形態では、ヒトのFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本明細書で提示される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0134】
本明細書で記載される方法における使用のための、具体的な実施形態では、ヒトのFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本明細書で提示される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0135】
本明細書で使用される「相補性決定領域」および「CDR」という用語は、抗原特異性および抗原結合アフィニティーを付与する、抗体可変領域内のアミノ酸の配列を指す。一般に、各重鎖可変領域(HCDR1、HCDR2、HCDR3)内には、3つのCDRがあり、各軽鎖可変領域(LCDR1、LCDR2、LCDR3)内には、3つのCDRがある。
【0136】
所与のCDRの正確なアミノ酸配列の境界は、Kabat et al. (1991), “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(「Kabat」番号付けスキーム)、Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273, 927-948(「Chothia」番号付けスキーム)、Lefranc et al., (2003) Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77(「IMGT」番号付けスキーム)により記載されているスキーム、または「組合せ」システムを含む、周知の多数のスキームのうちのいずれかを使用して、たやすく決定することができる。
【0137】
例えば、Kabatによれば、重鎖可変ドメイン(VH)内の抗体であるNOV1090のCDRアミノ酸残基は、31~35(HCDR1)、50~66(HCDR2)、および99~111(HCDR3)と番号付けされており、軽鎖可変ドメイン(VL)内のCDRアミノ酸残基は、22~35(LCDR1)、51~57(LCDR2)、および90~100(LCDR3)と番号付けされている。Chothiaによれば、VH内のCDRアミノ酸は、26~32(HCDR1)、52~57(HCDR2)、および99~111(HCDR3)と番号付けされており、VL内のアミノ酸残基は、25~33(LCDR1)、51~53(LCDR2)、および92~99(LCDR3)と番号付けされている。KabatおよびChothiaの両方のCDR定義を組み合わせることにより、CDRは、ヒトVH内のアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50~66(HCDR2)、および99~111(HCDR3)、ならびにヒトVL内のアミノ酸残基22~35(LCDR1)、51~57(LCDR2)、および90~100(LCDR3)からなる。KabatおよびChothiaの両方のCDR定義を組み合わせることにより、「組合せ」CDRは、ヒトVH内のアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50~66(HCDR2)、および99~108(HCDR3)、ならびにヒトVL内のアミノ酸残基24~38(LCDR1)、54~60(LCDR2)、および93~101(LCDR3)からなる。別の例として、IMGTによれば、重鎖可変ドメイン(VH)内のCDRアミノ酸残基は、26~33(HCDR1)、51~58(HCDR2)、および97~108(HCDR3)と番号付けされており、軽鎖可変ドメイン(VL)内のCDRアミノ酸残基は、27~36(LCDR1)、54~56(LCDR2)、および93~101(LCDR3)と番号付けされている。表1は、抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1090およびNOV1401について、Kabat、Chothia、組合せ、およびIMGTによる、例示的なHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を提示する。別の態様では、本開示は、表1に記載されている、重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3、またはそれらの組合せを含むFXIa結合性抗体を提供する。抗体のVH CDR1のアミノ酸配列を、配列番号3および23に示す。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号4および24に示されている。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号5および25に示されている。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号13および33に示されている。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号14および34に示されている。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は、配列番号15および35に示されている。これらのCDR領域は、Kabatシステムを使用して表される。
【0138】
代替的に、Chothiaシステム(Al-Lazikaniら、(1997)、JMB 273 927~948)を使用して規定される通り、抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は、配列番号6および26に示されている。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号7および27に示されている。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号8および28に示されている。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号16および36に示されている。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号17および37に示されている。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は、配列番号18および38に示されている。
【0139】
代替的に、組合せシステムを使用して規定される通り、抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は、配列番号46に示されている。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号4に示されている。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号5に示されている。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号33に示されている。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号14に示されている。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は、配列番号15に示されている。
【0140】
代替的に、IMGT番号付けスキームを使用して規定される通り、抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は、配列番号43に示されている。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号44に示されている。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号45に示されている。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号47に示されている。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号37に示されている。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は、配列番号15に示されている。
【0141】
これらの抗体の各々は、FXIおよび/もしくはFXIaに結合することが可能であり、抗原結合特異性は主に、CDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域によりもたらされることを踏まえれば、各抗体は、本開示の他のFXI結合性分子および/もしくはFXIa結合性分子を創出するのに、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3、ならびにVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含有することが好ましいが、VH CDR1配列、VH CDR2配列、およびVH CDR3配列、ならびにVL CDR1配列、VL CDR2配列、およびVL CDR3配列を、「混合し、マッチさせる」ことができる(すなわち、異なる抗体に由来するCDRを、混合し、マッチさせることができる)。このような「混合し、マッチさせた」FXI結合性分子および/もしくはFXIa結合性抗体は、当技術分野で公知の結合アッセイおよび実施例で記載される結合アッセイ(例えば、ELISA、SET、BIACORE(商標)アッセイ)を使用して調べることができる。VH CDR配列を混合し、マッチさせる場合は、特定のVH配列に由来するCDR1配列、CDR2配列、および/またはCDR3配列を、構造的に類似するCDR配列で置きかえるものとする。同様に、VL CDR配列を混合し、マッチさせる場合は、特定のVL配列に由来するCDR1配列、CDR2配列、および/またはCDR3配列を、構造的に類似するCDR配列で置きかえるものとする。当業者には、新規のVH配列およびVL配列を、1つまたは複数のVH CDR領域配列および/またはVL CDR領域配列を、本開示のモノクローナル抗体のための、本明細書で示されるCDR配列に由来する、構造的に類似する配列で置換することにより創出しうることがたやすく明らかであろう。前出に加えて、一実施形態では、本明細書で記載される抗体の抗原結合性断片は、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3、またはVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含むことが可能であり、この場合、断片は、FXIおよび/もしくはFXIaに、単一の可変ドメインとして結合する。
【0142】
本開示のある種の実施形態では、抗体またはそれらの抗原結合性断片は、表1に記載されているFabの重鎖および軽鎖配列を有しうる。より具体的には、抗体またはその抗原結合性断片は、NOV1090およびNOV1401の重鎖および軽鎖配列を有しうる。
【0143】
本開示の他の実施形態では、FXIおよび/もしくはFXIaに特異的に結合する抗体または抗原結合性断片は、Kabatにより規定され、表1に記載されている、重鎖可変領域のCDR1、重鎖可変領域のCDR2、重鎖可変領域のCDR3、軽鎖可変領域のCDR1、軽鎖可変領域のCDR2、および軽鎖可変領域のCDR3を含む。本開示のさらに他の実施形態では、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体または抗原結合性断片は、Chothiaにより規定され、表1において記載されている重鎖可変領域のCDR1、重鎖可変領域のCDR2、重鎖可変領域のCDR3、軽鎖可変領域のCDR1、軽鎖可変領域のCDR2、および軽鎖可変領域のCDR3を含む。他の実施形態では、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体または抗原結合性断片は、組合せシステムにより規定され、表1において記載されている重鎖可変領域のCDR1、重鎖可変領域のCDR2、重鎖可変領域のCDR3、軽鎖可変領域のCDR1、軽鎖可変領域のCDR2、および軽鎖可変領域のCDR3を含む。本開示のさらに他の実施形態では、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体または抗原結合性断片は、IMGTにより規定され、表1において記載されている重鎖可変領域のCDR1、重鎖可変領域のCDR2、重鎖可変領域のCDR3、軽鎖可変領域のCDR1、軽鎖可変領域のCDR2、および軽鎖可変領域のCDR3を含む。
【0144】
本明細書で記載される方法における使用のための具体的な実施形態では、本開示は、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体であって、配列番号3の重鎖可変領域のCDR1;配列番号4の重鎖可変領域のCDR2;配列番号5の重鎖可変領域のCDR3;配列番号13の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号14の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体を含む。
【0145】
具体的な実施形態では、本開示は、FXIおよび/もしくはFXIaに特異的に結合する抗体であって、配列番号23の重鎖可変領域のCDR1、配列番号24の重鎖可変領域のCDR2、配列番号25の重鎖可変領域のCDR3、配列番号33の軽鎖可変領域のCDR1、配列番号34の軽鎖可変領域のCDR2、および配列番号35の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体を含む。
【0146】
具体的な実施形態では、本開示は、FXIおよび/もしくはFXIaに特異的に結合する抗体であって、配列番号6の重鎖可変領域のCDR1、配列番号7の重鎖可変領域のCDR2、配列番号8の重鎖可変領域のCDR3、配列番号16の軽鎖可変領域のCDR1、配列番号17の軽鎖可変領域のCDR2、および配列番号18の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体を含む。
【0147】
具体的な実施形態では、本開示は、FXIおよび/もしくはFXIaに特異的に結合する抗体であって、配列番号26の重鎖可変領域のCDR1、配列番号27の重鎖可変領域のCDR2、配列番号28の重鎖可変領域のCDR3、配列番号36の軽鎖可変領域のCDR1、配列番号37の軽鎖可変領域のCDR2、および配列番号38の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体を含む。
【0148】
本明細書の具体的な実施形態では、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体であって、配列番号43の重鎖可変領域のCDR1;配列番号44の重鎖可変領域のCDR2;配列番号45の重鎖可変領域のCDR3;配列番号47の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号37の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
【0149】
本明細書の具体的な実施形態では、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体であって、配列番号46の重鎖可変領域のCDR1;配列番号4の重鎖可変領域のCDR2;配列番号5の重鎖可変領域のCDR3;配列番号33の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号14の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域のCDR3を含む抗体が提示される。
【0150】
ある種の実施形態では、本開示は、表1に記載されている、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体または抗原結合性断片を含む。本明細書で記載される方法における使用のための、具体的な実施形態では、FXIおよび/またはFXIaに結合する抗体または抗原結合性断片は、NOV1090およびNOV1401である。
【0151】
抗体の可変領域または全長鎖が、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られる場合、本明細書で使用されるヒト抗体は、特定の生殖細胞系列配列「の産物」であるかまたはこれ「に由来する」、重鎖もしくは軽鎖可変領域または全長重鎖もしくは軽鎖を含む。このような系は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを、対象の抗原で免疫化するか、または対象の抗原を伴うファージ上で提示されるヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることを含む。ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列「の産物」であるかまたはこれ「に由来する」ヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列を、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し、配列がヒト抗体の配列と最も近似する(すなわち、同一性%が最大である)ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列を選択することにより、それ自体として同定することができる。
【0152】
特定のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列「の産物」であるかまたはこれ「に由来する」ヒト抗体は、例えば、自然発生の体細胞突然変異または部位特異的突然変異の意図的な導入に起因して、生殖細胞系列配列と比較したアミノ酸の差異を含有しうる。しかし、VHフレームワーク領域またはVLフレームワーク領域では、選択されたヒト抗体は、アミノ酸配列が、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一であり、ヒト抗体を、他の種の生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列(例えば、マウス生殖細胞系列配列)と比較した場合に、ヒトとして同定するアミノ酸残基を含有することが典型的である。ある種の場合には、ヒト抗体は、アミノ酸配列が、生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と、少なくとも60%、70%、80%、90%、または少なくとも95%、なおまたは、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一でありうる。
【0153】
組換えヒト抗体は、VHフレームワーク領域内またはVLフレームワーク領域内のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列との、10アミノ酸以下の差異を提示することが典型的である。ある種の場合には、ヒト抗体は、生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列との、5アミノ酸以下、なおまたは、4、3、2、または1アミノ酸以下の差異を提示しうる。ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子の例は、下記で記載される生殖細胞系列の可変ドメイン断片のほか、DP47およびDPK9も含むがこれらに限定されない。
【0154】
相同抗体
本明細書で記載される方法(例えば、ESRDおよび/またはAFを伴う対象における、脳卒中および/または全身性塞栓症の危険性を低減または防止するための方法)における使用のための、さらに別の実施形態では、本開示は、表1に記載された配列(例えば、配列番号29、31、39、または41)と相同なアミノ酸配列を含む抗体またはその抗原結合性断片を提示し、抗体は、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、およびカニクイザルのFXIa)に結合し、NOV1090およびNOV1401など、表1に記載されている抗体の、所望の機能的特性を保持する。具体的な態様では、このような相同抗体は、表1に記載されているCDRアミノ酸配列(例えば、Kabat CDR、Chothia CDR、IMGT CDR、または組合せCDR)を保持する。
【0155】
例えば、本開示は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む単離抗体またはその機能的な抗原結合性断片を提供し、この場合、重鎖可変ドメインは、配列番号9および29からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;軽鎖可変ドメインは、配列番号19および39からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒトFXIa、ウサギFXIa、およびカニクイザルFXIa)に特異的に結合する。一実施形態では、単離抗体またはその機能的な抗原結合性断片は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、この場合、重鎖可変ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;軽鎖可変ドメインは、配列番号19のアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒトFXIa、ウサギFXIa、およびカニクイザルFXIa)に特異的に結合する。一実施形態では、単離抗体またはその機能的な抗原結合性断片は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、この場合、重鎖可変ドメインは、配列番号29のアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;軽鎖可変ドメインは、配列番号39のアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒトFXIa、ウサギFXIa、およびカニクイザルFXIa)に特異的に結合する。本開示のある種の態様では、重鎖および軽鎖配列は、Kabatにより規定される、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ、配列番号3、4、5、13、14、および15をさらに含む。本開示のある種の他の態様では、重鎖配列および軽鎖配列は、Chothiaにより規定される、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ、配列番号6、7、8、16、17、および18をさらに含む。ある種の他の態様では、重鎖配列および軽鎖配列は、組合せシステムにより規定される、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ、配列番号46、4、5、33、14、および15をさらに含む。ある種の他の態様では、重鎖配列および軽鎖配列は、IMGTにより規定される、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ、配列番号43、44、45、47、37、および15をさらに含む。
【0156】
本明細書で記載される方法における使用のための他の実施形態では、VHアミノ酸配列および/またはVLアミノ酸配列は、表1に示される配列と、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一でありうる。他の実施形態では、VHアミノ酸配列および/またはVLアミノ酸配列は、1、2、3、4、または5カ所以下のアミノ酸位置におけるアミノ酸置換を除き同一でありうる。表1に記載されている抗体のVH領域およびVL領域と大きな(すなわち、80%以上の)同一性を有するVH領域およびVL領域を有する抗体は、配列番号10または30、および配列番号20および40のそれぞれをコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発)の後、本明細書で記載される機能アッセイを使用して、コードされる改変抗体を、機能の保持について調べることにより得ることができる。
【0157】
本明細書で記載される方法における使用のための他の実施形態では、全長重鎖アミノ酸配列および/または全長軽鎖アミノ酸配列は、表1に示される配列と(例えば、配列番号11および/もしくは21、または31および/もしくは41)、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一でありうる。配列番号11または31のうちのいずれかの全長重鎖、および配列番号21または41のうちのいずれかの全長軽鎖と大きな(すなわち、80%以上の)同一性を有する全長重鎖および全長軽鎖を有する抗体は、このようなポリペプチドをコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発)の後、本明細書で記載される機能アッセイを使用して、コードされる改変抗体を、機能の保持について調べることにより得ることができる。
【0158】
本明細書の一態様では、重鎖および軽鎖を含む単離抗体またはその機能的な抗原結合性断片を提示し、この場合、重鎖は、配列番号11および31からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;軽鎖は、配列番号21および41からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒトFXIa、ウサギFXIa、およびカニクイザルFXIa)に特異的に結合する。一実施形態では、単離抗体またはその機能的な抗原結合性断片は、重鎖および軽鎖を含み、この場合、重鎖は、配列番号11のアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;軽鎖は、配列番号21のアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒトFXIa、ウサギFXIa、およびカニクイザルFXIa)に特異的に結合する。一実施形態では、単離抗体またはその機能的な抗原結合性断片は、重鎖および軽鎖を含み、この場合、重鎖は、配列番号31のアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;軽鎖は、配列番号41のアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒトFXIa、ウサギFXIa、およびカニクイザルFXIa)に特異的に結合する。本開示のある種の態様では、重鎖配列および軽鎖配列は、Kabatにより規定される、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ、配列番号3、4、5、13、14、および15をさらに含む。本開示のある種の他の態様では、重鎖配列および軽鎖配列は、Chothiaにより規定される、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ、配列番号6、7、8、16、17、および18をさらに含む。ある種の他の態様では、重鎖配列および軽鎖配列は、組合せシステムにより規定される、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ、配列番号46、4、5、33、14、および15をさらに含む。ある種の他の態様では、重鎖配列および軽鎖配列は、IMGTにより規定される、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ、配列番号43、44、45、47、37、および15をさらに含む。
【0159】
本明細書で記載される方法における使用のための他の実施形態では、全長重鎖および/または全長軽鎖のヌクレオチド配列は、表1に示される配列(例えば、配列番号12および/もしくは22、または32および/もしくは42)と60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一でありうる。
【0160】
本明細書で記載される方法における使用のための他の実施形態では、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域のヌクレオチド配列は、表1に示される配列(例えば、配列番号10および/もしくは20、または30および/もしくは40)と60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一でありうる。
【0161】
本明細書で使用される、2つの配列の間の同一性パーセントとは、2つの配列の最適なアライメントのために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮する配列により共有される、同一な位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一な位置の数/位置の総数×100)である。2つの配列の間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、下記の非限定的な例で記載されている、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。
【0162】
加えて、または代替的に、本開示のタンパク質配列は、公表されたデータベースに照らして検索を実施する、例えば、関連の配列を同定するための「クエリー配列」としてさらに使用することもできる。例えば、このような検索は、Altschulら、1990 J. Mol. Biol. 215:403~10によるBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。
【0163】
保存的修飾を伴う抗体
ある特定の実施形態では、本明細書で記載される方法(例えば、ESRDおよび/またはAFを伴う対象における、脳卒中および/または全身性塞栓症の危険性を低減または防止するための方法)における使用のための、本開示の抗体は、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域と、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域とを有し、この場合、これらのCDR配列のうちの1つまたは複数は、本明細書で記載される抗体またはこれらの保存的修飾に基づく、指定されたアミノ酸配列を有し、この場合、抗体は、本開示のFXIa結合性抗体の、所望の機能的特性を保持する。
【0164】
したがって、本明細書で記載される方法における使用のために、本開示は、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびにCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域からなる単離抗体またはその抗原結合性断片であって、重鎖可変領域のCDR1アミノ酸配列が、配列番号3および23、ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され、重鎖可変領域のCDR2アミノ酸配列が、配列番号4および24、ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され、重鎖可変領域のCDR3アミノ酸配列が、配列番号5および25、ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され、軽鎖可変領域のCDR1アミノ酸配列が、配列番号13および33、ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され、軽鎖可変領域のCDR2アミノ酸配列が、配列番号14および34、ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され、軽鎖可変領域のCDR3アミノ酸配列が、配列番号15および35、ならびにそれらの保存的修飾からなる群から選択され、FXIaに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0165】
本明細書の一態様では、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびにCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域からなる単離抗体またはその抗原結合性断片であって、重鎖可変領域のCDR1アミノ酸配列が、表1に記載されているアミノ酸配列およびその保存的修飾からなる群から選択され;重鎖可変領域のCDR2アミノ酸配列が、表1に記載されているアミノ酸配列およびその保存的修飾からなる群から選択され;重鎖可変領域のCDR3アミノ酸配列が、表1に記載されているアミノ酸配列およびその保存的修飾からなる群から選択され;軽鎖可変領域のCDR1アミノ酸配列が、表1に記載されているアミノ酸配列およびその保存的修飾からなる群から選択され;軽鎖可変領域のCDR2アミノ酸配列が、表1に記載されているアミノ酸配列およびその保存的修飾からなる群から選択され;軽鎖可変領域のCDR3アミノ酸配列が、表1に記載されているアミノ酸配列およびその保存的修飾からなる群から選択され;抗体またはその抗原結合性断片が、FXIaに特異的に結合する。
【0166】
本明細書で記載される方法における使用のための他の実施形態では、本開示の抗体は、哺乳動物細胞における発現について最適化されており、全長重鎖配列および全長軽鎖配列を有し、これらの配列のうちの1つまたは複数は、本明細書で記載される抗体またはそれらの保存的修飾に基づき指定されたアミノ酸配列を有し、抗体は、本開示のFXIa結合性抗体の所望の機能的特性を保持する。したがって、本開示は、全長重鎖および全長軽鎖からなる、哺乳動物細胞における発現について最適化された単離抗体であって、全長重鎖が、配列番号11または31、ならびにそれらの保存的修飾の群から選択されるアミノ酸配列を有し、全長軽鎖が、配列番号21または41、ならびにそれらの保存的修飾の群から選択されるアミノ酸配列を有し、FXIおよび/もしくはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、およびカニクイザルのFXIa)に特異的に結合する抗体を提供する。
【0167】
同じエピトープに結合する抗体
本開示は、本明細書で記載される方法(例えば、ESRDおよび/またはAFを伴う対象における、脳卒中および/または全身性塞栓症の危険性を低減または防止するための方法)における使用のための、表1に記載されているFXIおよび/またはFXIa結合性抗体と同じエピトープに結合する抗体を提示する。したがって、FXIおよび/またはFXIa結合アッセイ(実施例節で記載されるFXIおよび/またはFXIa結合アッセイなど)において、本開示の他の抗体と競合する(例えば、本開示の他の抗体の結合を、同じエピトープまたは重複するエピトープへの結合により、統計学的に有意な形で競合的に阻害する)それらの能力に基づき、さらなる抗体を同定することができる。本開示の抗体の、FXIタンパク質および/またはFXIaタンパク質への結合を阻害する被験抗体の能力により、被験抗体が、その抗体と、FXIおよび/またはFXIaへの結合について競合することが可能であり、このような抗体は、非限定的な理論によれば、FXIタンパク質および/またはFXIaタンパク質上の、それが競合する抗体と同じであるかまたは関連の(例えば、構造的に類似するか、または空間的に近接した)エピトープに結合しうることが裏付けられる。ある種の実施形態では、本開示の抗体と同じFXIおよび/またはFXIa上のエピトープに結合する抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。このようなヒトモノクローナル抗体は、本明細書で記載される通りに、調製および単離することができる。
【0168】
本明細書で使用される通り、等モル濃度の競合抗体の存在下で、競合抗体が、本開示の抗体または抗原結合性断片(例えば、NOV1401またはNOV1090)と同じFXIエピトープおよび/またはFXIaエピトープに結合し、本開示の抗体または抗原結合性断片の、FXIおよび/またはFXIaへの結合を、50%を超えて(例えば、80%、85%、90%、95%、98%、または99%)阻害する場合、抗体は、結合について「競合する」。これは、例えば、当業者に周知の方法のうちのいずれかにより、競合結合アッセイにおいて決定することができる。
【0169】
本明細書で使用される抗体またはその抗原結合性断片は、前記競合抗体またはその抗原結合性断片が、本開示の抗体または抗原結合性断片と同じFXIエピトープおよび/もしくはFXIaエピトープ、またはこれと重複するFXIエピトープおよび/もしくはFXIaエピトープに結合しない限りにおいて、本開示のFXI抗体および/もしくはFXIa抗体または抗原結合性断片(例えば、NOV1401またはNOV1090)と「競合」しない。本明細書で使用される競合抗体またはその抗原結合性断片は、(i)本開示の抗体または抗原結合性断片が、その標的に結合することを、立体的に遮断し(例えば、前記競合抗体が、重複しないFXIエピトープおよび/またはFXIaエピトープの近傍に結合し、本開示の抗体または抗原結合性断片が、その標的に結合することを物理的に防止する場合);かつ/あるいは(ii)異なる、重複しないFXIエピトープおよび/またはFXIaエピトープに結合し、前記タンパク質に、本開示のFXI抗体および/もしくはFXIa抗体または抗原結合性断片が、前記コンフォメーション変化の非存在下で生じる形では結合しないように、コンフォメーション変化を、FXIタンパク質および/またはFXIaタンパク質に誘導する、競合抗体またはその抗原結合性断片を含まない。
【0170】
操作抗体および修飾抗体
本明細書で記載される方法における使用のための、本開示の抗体は、さらに、出発抗体から特性を改変した修飾抗体を操作する出発材料として、本明細書で示されるVH配列および/またはVL配列のうちの1つまたは複数を有する抗体を使用して調製することもできる。抗体は、一方または両方の可変領域(すなわち、VHおよび/またはVL)内、例えば、1つもしくは複数のCDR領域内、および/または1つもしくは複数のフレームワーク領域内の1つまたは複数の残基を修飾することにより操作することができる。加えて、または代替的に、抗体は、定常領域内の残基を修飾して、例えば、抗体のエフェクター機能を改変することによっても操作することができる。
【0171】
実施しうる可変領域操作のうちの1つの種類は、CDRグラフティングである。抗体は、主に6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)内に位置するアミノ酸残基を介して、標的抗原と相互作用する。この理由で、CDR内のアミノ酸配列は、個別の抗体の間の多様性が、CDRの外部の配列より大きい。CDR配列は、大半の抗体-抗原間相互作用の一因となるため、異なる特性を伴う異なる抗体に由来するフレームワーク配列へとグラフトされた特異的自然発生抗体に由来するCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特異的自然発生抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann, L.ら、1998 Nature 332:323~327; Jones, P.ら、1986 Nature 321:522~525; Queen, C.ら、1989 Proc. Natl. Acad. U.S.A. 86:10029~10033;Winterによる米国特許第5,225,539号明細書、ならびにQueenらによる米国特許第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693,762号明細書;および同第6,180,370号明細書を参照されたい)。
【0172】
したがって、本開示の別の実施形態は、配列番号3および23からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列、配列番号4および24からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列、配列番号5および25からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列のそれぞれを含む重鎖可変領域と、配列番号13および33からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列、配列番号14および34からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列、ならびに配列番号15および35からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるCDR3配列のそれぞれを有する軽鎖可変領域とを含む単離抗体またはその抗原結合性断片に関する。したがって、このような抗体は、モノクローナル抗体のVH CDR配列およびVL CDR配列を含有するが、これらの抗体に由来する異なるフレームワーク配列を含有しうる。
【0173】
このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列の抗体遺伝子配列を含む公表されたDNAデータベースまたは公表された参考文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、ヒト生殖細胞系列の配列データベースである「VBase」(インターネットのmrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで入手可能である)のほか、それらの各々の内容が、参照により本明細書に明示的に組み込まれる、Kabat, E. A.ら、1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication第91-3242号; Tomlinson, I. M.ら、1992 J. Mol. Biol. 227:776~798;およびCox, J. P. L.ら、1994 Eur. J Immunol. 24:827~836においても見出すことができる。
【0174】
本開示の抗体における使用のためのフレームワーク配列の例は、本開示の選択された抗体により使用されるフレームワーク配列、例えば、本開示のモノクローナル抗体により使用されるコンセンサス配列および/またはフレームワーク配列と構造的に類似するフレームワーク配列である。VH CDR1配列、VH CDR2配列、およびVH CDR3配列、ならびにVL CDR1配列、VL CDR2配列、およびVL CDR3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子内で見出される配列と同一の配列を有するフレームワーク領域へとグラフトすることもでき、CDR配列は、生殖細胞系列配列と比較して、1つまたは複数の突然変異を含有するフレームワーク領域へとグラフトすることもできる。例えば、ある種の場合には、フレームワーク領域内の残基を突然変異させて、抗体の抗原結合能力を維持または増強することが有益であると見出されている(例えば、Queenらによる米国特許第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693,762号明細書;および同第6,180,370号明細書を参照されたい)。本明細書で記載される抗体および抗原結合性断片をその上に構築する足場として用いられうるフレームワークは、VH1A、VH1B、VH3、Vk1、Vl2、およびVk2を含むがこれらに限定されない。当技術分野では、さらなるフレームワークが知られており、例えば、インターネットのvbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/index.php?&MMN_position=1:1上のvBaseデータベースにおいて見出すことができる。
【0175】
したがって、本明細書で記載される方法における使用のために、本開示の実施形態は、配列番号9および29からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはこのような配列のフレームワーク領域内に1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、配列番号19または39からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはこのような配列のフレームワーク領域内に1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、単離FXIa結合性抗体またはそれらの抗原結合性断片に関する。
【0176】
可変領域修飾の別の種類は、「アフィニティー成熟」として公知の、VH CDR1領域内、VH CDR2領域内、および/もしくはVH CDR3領域内、ならびに/またはVL CDR1領域内、VL CDR2領域内、および/もしくはVL CDR3領域内のアミノ酸残基を突然変異させて、これにより、対象の抗体の1つまたは複数の結合特性(例えば、アフィニティー)を改善することである。部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発を実施して、突然変異を導入することができ、本明細書で記載され、実施例節でも提示される、in vitroアッセイまたはin vivoアッセイにおいて、抗体結合性または他の対象の機能的特性に対する効果を査定することができる。保存的修飾(上記で論じた)を導入することができる。突然変異は、アミノ酸の置換の場合もあり、付加の場合もあり、欠失の場合もある。さらに、CDR領域内の、典型的には1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以下の残基も改変する。
【0177】
したがって、本明細書で記載される方法における使用のための、別の実施形態では、本開示は、配列番号3および23からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号3および23と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR1領域、配列番号4および24からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号4および24と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR2領域、配列番号5および25からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号5および25と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR3領域、配列番号13および33からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号13および33と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR1領域、配列番号14および34からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号14および34と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR2領域、ならびに配列番号15および35からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号15および35と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR3領域を有する重鎖可変領域からなる単離FXIa結合性抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。
【0178】
したがって、本明細書で記載される方法における使用のための、別の実施形態では、本開示は、配列番号6および26からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号6および26と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR1領域、配列番号7および27からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号7および27と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR2領域、ならびに配列番号8および28からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号8および28と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR3領域を有する重鎖可変領域と、配列番号16および36からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号16および36と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR1領域、配列番号17および37からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号17および37と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR2領域、ならびに配列番号18および38からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号18および38と比較して、1、2、3、4、もしくは5カ所のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR3領域を有する軽鎖可変領域とからなる単離FXIa結合性抗体またはそれらの抗原結合性断片を提供する。
【0179】
半減期を延長した抗体
本開示は、本明細書で記載される方法における使用のために、in vivoにおける半減期を延長した、FXIaタンパク質に特異的に結合する抗体を提供する。
【0180】
多くの因子が、in vivoにおけるタンパク質の半減期に影響を及ぼしうる。例えば、腎臓における濾過、肝臓における代謝、タンパク質分解性酵素(プロテアーゼ)による分解、および免疫原性応答(例えば、抗体によるタンパク質の中和およびマクロファージおよび樹状細胞による取込み)。様々な戦略を使用して、本開示の抗体の半減期を延長することができる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、reCODE PEG、抗体足場、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミン結合性リガンド、および炭水化物シールドとの化学的連結により、アルブミン、IgG、FcRn、およびトランスフェリンなどの血清タンパク質に結合するタンパク質との遺伝子融合により、ナノボディ、Fab、DARPin、アビマー、アフィボディ、およびアンチカリンなど、血清タンパク質に結合する他の結合部分とカップリングする(遺伝子的または化学的に)ことにより、rPEG、アルブミン、アルブミンのドメイン、アルブミン結合性タンパク質、およびFcとの遺伝子融合により、またはナノ担体、徐放製剤、もしくは医療デバイスへの組込みにより、本発明の抗体の半減期を延長することができる。
【0181】
in vivoにおける抗体の血清中循環を延長するため、高分子量のPEGなど、不活性のポリマー分子を、PEGの、抗体のN末端もしくはC末端への部位特異的コンジュゲーションを介して、またはリシン残基上に存在するイプシロン-アミノ基を介して、多官能性リンカーを伴うかまたは多官能性リンカーを伴わない、抗体またはそれらの断片へと付着することができる。抗体をPEG化するには、抗体またはその断片を、ポリエチレングリコール(PEG)の反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などのPEGと、1つまたは複数のPEG基が抗体または抗体断片に付着する条件下で反応させることが典型的である。PEG化は、反応性PEG分子(または類似する反応性の水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応により実行することができる。本明細書で使用される「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1~C10)アルコキシ-ポリエチレングリコールもしくはアリールオキシ-ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール-マレイミドなど、他のタンパク質を誘導体化するのに使用されているPEGの形態のうちのいずれかを包含することを意図するものである。ある種の実施形態では、PEG化される抗体は、脱グリコシル化抗体である。直鎖状ポリマーまたは分枝状ポリマーの誘導体化であって、生物学的活性の喪失を結果として最小とする誘導体化が、使用されるであろう。コンジュゲーションの程度を、SDS-PAGEおよび質量分析により緊密にモニタリングして、PEG分子の抗体への適正なコンジュゲーションを確認することができる。反応しなかったPEGは、サイズ除外クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーにより、抗体-PEGコンジュゲートから分離することができる。PEG誘導体化抗体は、当業者に周知の方法を使用して、例えば、本明細書で記載されるイムノアッセイにより、結合活性ならびにin vivoにおける有効性について調べることができる。当技術分野では、タンパク質をPEG化する方法が知られており、本開示の抗体に適用することができる。例えば、NishimuraらによるEP0154316およびIshikawaらによるEP0401384を参照されたい。
【0182】
他の改変されたPEG化技術は、tRNAシンセターゼおよびtRNAを含む再構成系を介して、化学的に特定された側鎖を、生合成タンパク質へと組み込む、再構成化学的直交性直接操作技術(reconstituting chemically orthogonal directed engineering)(ReCODE PEG)を含む。この技術は、30を超える新たなアミノ酸の、大腸菌(E. coli)細胞内、酵母細胞内、および哺乳動物細胞内の生合成タンパク質への組込みを可能とする。tRNAは、非天然アミノ酸を、アンバーコドンが配置される任意の位置へと組み込み、終止アンバーコドンから、化学的に特定されたアミノ酸の組込みシグナルを伝達するコドンへと転換する。
【0183】
組換えPEG化技術(rPEG)はまた、血清半減期の延長にも使用することができる。この技術は、300~600アミノ酸の非構造化タンパク質テールを、既存の医薬用タンパク質へと遺伝子融合させることを伴う。このような非構造化タンパク質鎖の見かけの分子量は、その実際の分子量の約15倍であるため、タンパク質の血清半減期は、大きく増大する。化学的コンジュゲーションおよび再精製を要求する従来のPEG化とは対照的に、製造工程は大きく簡略化され、生成物は、均質である。
【0184】
ポリシアリル化は、天然のポリマーであるポリシアル酸(PSA)を使用して、活性寿命を延長し、治療用ペプチドおよび治療用タンパク質の安定性を改善する、別の技術である。PSAとは、シアル酸(糖)のポリマーである。タンパク質および治療用ペプチドの薬物送達に使用される場合、コンジュゲーション時に、ポリシアル酸は、保護的微小環境をもたらす。これは、循環内の治療用タンパク質の活性寿命を延長し、それが免疫系により認識されることを防止する。PSAポリマーは、天然では、ヒト体内で見出される。PSAは、数百万年にわたり、それらの壁をPSAでコーティングするように進化したある種の細菌により採用された。次いで、これらの天然でポリシアリル化した細菌は、分子的模倣により、体内の防御系を失効化することが可能となった。自然の究極のステルス技術であるPSAは、このような細菌から、大量に、かつ、所定の物理的特徴を伴って、容易に作製することができる。細菌PSAは、ヒト体内ではPSAと化学的に同一であるので、タンパク質へとカップリングさせた場合でもなお、完全に非免疫原性である。
【0185】
別の技術は、抗体に連結されたヒドロキシエチルデンプン(「HES」)誘導体の使用を含む。HESとは、蝋状トウモロコシデンプンに由来する、修飾された天然ポリマーであり、体内の酵素により代謝されうる。HES溶液は通例、血液量不足を補い、血液のレオロジー特性を改善するために投与される。抗体のHES化は、分子の安定性を増大させることのほか、腎クリアランスを低減することによっても、循環半減期の延長を可能とし、生物学的活性の増大を結果としてもたらす。HESの分子量など、異なるパラメータを改変することにより、広範にわたるHES抗体コンジュゲートをカスタマイズすることができる。
【0186】
in vivoにおける半減期を延長した抗体はまた、1つまたは複数のアミノ酸修飾(すなわち、置換、挿入、または欠失)を、IgG定常ドメインまたはそのFcRn結合性断片(好ましくはFcドメイン断片またはヒンジFcドメイン断片)へと導入しても作り出すことができる。例えば、国際特許公開第98/23289号パンフレット、国際特許公開第97/34631号パンフレット;および米国特許第6,277,375号明細書を参照されたい。
【0187】
さらに、抗体または抗体断片を、in vivoにおいてより安定的とするか、またはin vivoにおける半減期を延長するために、抗体を、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン;HSA)へとコンジュゲートさせることもできる。当技術分野では、技法が周知であり、例えば、国際特許公開第93/15199号パンフレット、同第93/15200号パンフレット、および同01/77137号パンフレット;ならびに欧州特許第413,622号明細書を参照されたい。加えて、上記で記載した二特異性抗体の文脈では、抗体の特異性は、抗体の1つの結合性ドメインが、FXIaに結合するのに対し、抗体の第2の結合性ドメインは、血清アルブミン、好ましくは、HSAに結合するようにデザインすることもできる。
【0188】
半減期を延長するための戦略は、in vivoにおける半減期の延長が所望される、ナノボディ、フィブロネクチンベースの結合剤、および他の抗体またはタンパク質においてとりわけ有用である。
【0189】
抗体コンジュゲート
本開示は、融合タンパク質を作り出すように、異種タンパク質または異種ポリペプチドへと(またはその断片、好ましくは、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100アミノ酸のポリペプチドへと)、組換えにより融合させるかまたは化学的にコンジュゲートさせた(共有結合的コンジュゲーションおよび非共有結合的コンジュゲーションの両方を含む)、FXIaタンパク質に特異的に結合する、本明細書で記載される方法における使用のための、抗体またはそれらの断片を提供する。特に、本開示は、本明細書で記載される抗体の抗原結合性断片(例えば、Fab断片、Fd断片、Fv断片、F(ab)2断片、VHドメイン、VH CDR、VLドメイン、またはVL CDR)と、異種タンパク質、異種ポリペプチド、または異種ペプチドとを含む融合タンパク質を提供する。当技術分野では、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを、抗体または抗体断片と融合またはコンジュゲートさせる方法が知られている。例えば、米国特許第5,336,603号明細書、同第5,622,929号明細書、同第5,359,046号明細書、同第5,349,053号明細書、同第5,447,851号明細書、および同第5,112,946号明細書;欧州特許第307,434号明細書および同第EP367,166号明細書;国際特許公開第96/04388号パンフレットおよび同第91/06570号パンフレット;Ashkenaziら、1991、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10535~10539; Zhengら、1995、J. Immunol. 154:5590~5600;およびVilら、1992、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337~11341を参照されたい。
【0190】
さらなる融合タンパク質は、遺伝子シャフリング、モチーフシャフリング、エクソンシャフリング、および/またはコドンシャフリング(まとめて、「DNAシャフリング」と称する)の技法を介して作り出すことができる。DNAシャフリングを利用して、本開示の抗体またはそれらの断片の活性を改変する(例えば、アフィニティーが大きく、解離速度が小さい抗体またはそれらの断片)ことができる。一般に、米国特許第5,605,793号明細書、同第5,811,238号明細書、同第5,830,721号明細書、同第5,834,252号明細書、および同第5,837,458号明細書;Pattenら、1997、Curr. Opinion Biotechnol. 8:724~33; Harayama、1998、Trends Biotechnol. 16(2):76~82; Hanssonら、1999、J. Mol. Biol. 287:265~76;ならびにLorenzoおよびBlasco、1998、Biotechniques 24(2):308~313(これらの特許および刊行物の各々は、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる)を参照されたい。抗体もしくはそれらの断片、またはコードされる抗体もしくはそれらの断片は、組換えの前に、エラープローンPCRによるランダム突然変異誘発、ランダムヌクレオチド挿入、または他の方法にかけることにより改変することができる。FXIaタンパク質に特異的に結合する抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドは、1つまたは複数の異種分子の1つまたは複数の成分、モチーフ、区間、一部、ドメイン、断片などで組み換えることができる。
【0191】
さらに、抗体またはそれらの断片は、精製を容易とするペプチドなどのマーカー配列へと融合させることもできる。好ましい実施形態では、マーカーのアミノ酸配列は、それらのうちの多くが市販されている中でとりわけ、pQEベクター(QIAGEN,Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、CA、91311)において提供されているタグなどのヘキサヒスチジンペプチド(配列番号48)である。Gentzら、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821~824において記載されている通り、例えば、ヘキサヒスチジン(配列番号48)は、融合タンパク質の簡便な精製をもたらす。精製に有用な他のペプチドタグは、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープ(Wilsonら、1984、Cell 37:767)に対応するヘマグルチニン(「HA」)タグ、および「フラッグ」タグを含むがこれらに限定されない。
【0192】
他の実施形態では、本開示の抗体またはそれらの断片を、診断剤または検出可能薬剤へとコンジュゲートさせる。このような抗体は、疾患または障害の発生、発症、進行、および/または重症度を、特定の治療の有効性を決定することなど、臨床検査手順の一部としてモニタリングまたは予後診断するのに有用でありうる。このような診断および検出は、抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼなどであるがこれらに限定されない多様な酵素;ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなどであるがこれらに限定されない補欠分子族;ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、またはフィコエリトリンなどであるがこれらに限定されない蛍光材料;ルミノールなどであるがこれらに限定されない発光材料;ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンなどであるがこれらに限定されない生物発光材料;ヨウ素(131I、125I、123I、および121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115In、113In、112In、および111In)、テクネシウム(99Tc)、タリウム(201Tl)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、および117Tinなどであるがこれらに限定されない放射性材料;ならびに多様なポジトロン断層法を使用するポジトロン放出金属および非放射性の常磁性金属イオンを含むがこれらに限定されない検出可能な物質へとカップリングすることにより達成することができる。
【0193】
本開示は、治療用部分へとコンジュゲートさせた抗体またはそれらの断片の使用もさらに包含する。抗体またはその断片は、細胞毒素、例えば、細胞増殖抑制剤または殺細胞剤、治療剤または放射性金属イオン、例えば、アルファ放射体などの治療用部分へとコンジュゲートさせることができる。細胞毒素または細胞傷害剤は、細胞に有害な任意の薬剤を含む。
【0194】
さらに、抗体またはその断片は、所与の生物学的応答を修飾する治療用部分または薬物部分へとコンジュゲートさせることもできる。治療用部分または薬物部分は、古典的化学的治療剤に限定されるとはみなされないものとする。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を保有するタンパク質、ペプチド、またはポリペプチドでありうる。このようなタンパク質は、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス属外毒素、コレラ毒素、またはジフテリア毒素などの毒素;腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノゲン活性化因子、アポトーシス剤、抗血管新生剤;または例えば、リンホカインなどの生体応答修飾剤などのタンパク質を含みうる。
【0195】
さらに、抗体は、213Biなどのアルファ放射体などの放射性金属イオン、131In、131LU、131Y、131Ho、131Smを含むがこれらに限定されない放射性金属イオンを、ポリペプチドへとコンジュゲートするのに有用な大環状キレート化剤などの治療用部分へとコンジュゲートさせることもできる。ある種の実施形態では、大環状キレート化剤は、リンカー分子を介して抗体へと付着させうる、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-テトラ酢酸(DOTA)である。当技術分野では、このようなリンカー分子が一般に公知であり、各々が参照によりそれらの全体において組み込まれる、Denardoら、1998、Clin Cancer Res. 4(10):2483~90; Petersonら、1999、Bioconjug. Chem. 10(4):553~7;およびZimmermanら、1999、Nucl. Med. Biol. 26(8):943~50において記載されている。
【0196】
治療用部分を、抗体へとコンジュゲートさせるための技法は周知であり、例えば、Arnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeldら(編)、243~56頁(Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」、Controlled Drug Delivery(2版)、Robinsonら(編)、623~53頁(Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」、Monoclonal Antibodies 84: Biological And Clinical Applications、Pincheraら(編)、475~506頁(1985); 「Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Baldwinら(編)、303~16頁(Academic Press 1985);およびThorpeら、1982、Immunol. Rev. 62:119~58を参照されたい。
【0197】
抗体はまた、特に、イムノアッセイまたは標的抗原の精製に有用な固体支持体へと付着させることもできる。このような固体支持体は、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンを含むがこれらに限定されない。
【0198】
抗体を作製する方法
抗体をコードする核酸
本開示は、上記で記載したFXIa結合性抗体鎖のセグメントまたはドメインを含むポリペプチドをコードする、実質的に精製された核酸分子のほか、抗体を作製するためのベクターおよび宿主細胞も提示する。本開示の核酸のいくつかは、配列番号10または30に示される重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、および/または配列番号20または40に示される軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む。具体的な実施形態では、核酸分子は、表1において同定される核酸分子である。本開示の他のいくつかの核酸分子は、表1において同定される核酸分子のヌクレオチド配列と実質的に(例えば、少なくとも65、80%、95%、または99%)同一なヌクレオチド配列を含む。適切な発現ベクターから発現させるとき、これらのポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、FXIおよび/もしくはFXIa抗原結合能を呈することが可能である。具体的な態様では、コードの縮重性のために、様々な核酸配列は、免疫グロブリンアミノ酸配列の各々をコードするであろう。
【0199】
核酸分子は、抗体の可変領域および定常領域の両方をコードしうる。本開示の核酸配列のうちのいくつかは、配列番号11または31に示される重鎖配列と実質的に(例えば、少なくとも80%、90%、または99%)同一な重鎖配列をコードするヌクレオチドを含む。他のいくつかの核酸配列は、配列番号21または41に示される軽鎖配列と実質的に(例えば、少なくとも80%、90%、または99%)同一な軽鎖配列をコードするヌクレオチドを含む。
【0200】
ポリヌクレオチド配列は、デノボの固相DNA合成、またはFXIa結合性抗体またはその結合性断片をコードする既存の配列(例えば、下記の実施例で記載される配列)に対するPCRによる突然変異誘発により作製することができる。核酸の直接的な化学合成は、Narangら、1979、Meth. Enzymol. 68:90によるホスホトリエステル法;Brownら、Meth. Enzymol. 68:109、1979によるホスホジエステル法;Beaucageら、Tetra. Lett., 22:1859、1981によるジエチルホスホルアミダイト法;および米国特許第4,458,066号明細書による固体支持体法など、当技術分野で公知の方法により達成することができる。PCRによる、突然変異の、ポリヌクレオチド配列への導入は、例えば、PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification、H.A. Erlich(編)、Freeman Press、NY、NY、1992;PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications、Innisら(編)、Academic Press、San Diego、CA、1990; Mattilaら、Nucleic Acids Res. 19:967、1991;およびEckertら、PCR Methods and Applications 1:17、1991において記載されている通りに実施することができる。
【0201】
多様な発現ベクターを、利用して、FXIa結合性抗体鎖または結合性断片をコードするポリヌクレオチドを発現させることができる。ウイルスベースの発現ベクターおよび非ウイルス発現ベクターのいずれを使用しても、哺乳動物宿主細胞内で抗体を作製することができる。非ウイルスベクターおよび非ウイルス系は、プラスミド、典型的に、タンパク質またはRNAを発現させるための発現カセットを伴うエピソームベクター、およびヒト人工染色体を含む(例えば、Harringtonら、Nat Genet 15:345、1997を参照されたい)。例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞内のFXIa結合性ポリヌクレオチドおよびLOX-1結合性ポリペプチドの発現に有用な非ウイルスベクターは、pThioHis A、pThioHis B、およびpThioHis C、pcDNA3.1/His、pEBVHis A、pEBVHis B、およびpEBVHis C(Invitrogen、San Diego、CA)、MPSVベクター、ならびに他のタンパク質を発現させるための、当技術分野で公知の他の多数のベクターを含む。有用なウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスに基づくベクター、SV40に基づくベクター、パピローマウイルス、HBPエプスタインバーウイルス、ワクシニアウイルスベクター、およびセムリキ森林熱ウイルス(SFV)を含む。Brentら、前出; Smith、Annu. Rev. Microbiol. 49:807、1995;およびRosenfeldら、Cell 68:143、1992を参照されたい。
【0202】
発現ベクターはまた、挿入されたFXIa結合性抗体配列によりコードされるポリペプチドとの融合タンパク質を形成するように、分泌シグナル配列の位置ももたらしうる。挿入されたFXI結合性抗体配列および/もしくはFXIa結合性抗体配列は、ベクター内に組み入れる前に、シグナル配列へと連結することが多い。FXI結合性抗体および/もしくはFXIa結合性抗体の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインをコードする配列を受容するのに使用されるベクターは、場合によってまた、定常領域またはそれらの一部もコードする。このようなベクターは、定常領域との融合タンパク質としての可変領域の発現を可能とし、これにより、インタクトな抗体またはそれらの断片の作製をもたらす。このような定常領域は、ヒト定常領域であることが典型的である。
【0203】
FXI結合性抗体鎖および/もしくはFXIa結合性抗体鎖を保有し、これを発現させるための宿主細胞は、原核細胞の場合もあり、真核細胞の場合もある。大腸菌(E. coli)は、本開示のポリヌクレオチドをクローニングし、発現させるのに有用な1つの原核生物宿主である。使用に適する他の微生物宿主は、枯草菌(Bacillus subtilis)などの桿菌、およびサルモネラ(Salmonella)属種、セラチア(Serratia)属種、および多様なシュードモナス(Pseudomonas)属種など、他の腸内細菌科を含む。これらの原核生物宿主内ではまた、典型的に、宿主細胞と適合性の発現制御配列(例えば、複製起点)を含有する発現ベクターも作製することができる。加えて、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ベータ-ラクタマーゼプロモーター系、またはファージラムダに由来するプロモーター系など、任意の数の、様々な周知のプロモーターも存在する。プロモーターは、任意選択で、オペレーター配列により発現を制御することが典型的であるが、転写および翻訳を開始して終結させるためのリボソーム結合性部位配列なども有する。本開示のFXIa結合性ポリペプチドを発現させるのに、酵母など、他の微生物もまた利用することができる。また、バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞も使用することができる。
【0204】
具体的な態様では、本開示のFXI結合性ポリペプチドおよび/もしくはFXIa結合性ポリペプチドを発現させ、作製するのに、哺乳動物宿主細胞を使用する。哺乳動物宿主細胞は、任意の正常非不死化動物細胞または正常不死化動物細胞もしくは非正常不死化動物細胞またはヒト細胞を含む。例えば、CHO細胞系、多様なCos細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、および形質転換B細胞を含む、インタクトな免疫グロブリンを分泌することが可能な多数の適切な宿主細胞系が開発されている。ポリペプチドを発現させるための、哺乳動物組織細胞培養物の使用については、例えば、Winnacker、FROM GENES TO CLONES、VCH Publishers、N.Y.、N.Y.、1987において一般に論じられている。哺乳動物宿主細胞のための発現ベクターは、複製起点、プロモーター、およびエンハンサーなどの発現制御配列(例えば、Queenら、Immunol. Rev. 89:49~68、1986を参照されたい)、ならびにリボソーム結合性部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列などの、必要なプロセシング情報部位を含みうる。
【0205】
対象のポリヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを導入する方法は、細胞宿主の種類に応じて変化する。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションが一般に原核細胞に用いられるのに対し、リン酸カルシウム処理または電気穿孔は、他の細胞宿主に使用することができる(一般に、Sambrookら、前出を参照されたい)。他の方法は、例えば、電気穿孔、リン酸カルシウム処理、リポソーム媒介型形質転換、注射およびマイクロインジェクション、遺伝子銃法、ウィロソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質であるVP22との融合体(ElliotおよびO'Hare、Cell 88:223、1997)、DNAの薬剤増強型取込み、およびex vivoにおける形質導入を含む。組換えタンパク質の長期にわたる高収率作製のためには、安定的発現が所望されることが多い。例えば、FXIa結合性抗体鎖または結合性断片を安定的に発現させる細胞系は、ウイルス複製起点または内因性発現エレメント、および選択マーカー遺伝子を含有する、本発明の発現ベクターを使用して調製することができる。ベクターを導入した後、細胞は、強化培地中で1~2日間にわたり成長させてから、選択培地へと切り替えることができる。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与し、その存在により細胞の成長を可能とし、これにより、導入された配列を選択培地中で発現させることに成功することである。耐性で安定的にトランスフェクトされた細胞は、細胞型に適する組織培養法を使用して増殖させることができる。
【0206】
予防的使用および治療的使用
本明細書で記載される、FXIおよび/またはFXIaに結合する抗体(例えば、NOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗体)は、透析を受ける、ESRDおよび/またはAFを伴う患者における、脳卒中および/または全身性塞栓症の危険性を低減するためなど、血栓塞栓性疾患または血栓塞栓性障害の処置のために、治療的に有用な濃度で使用することができる。本開示は、それを必要とする対象へと、有効量の、本開示の抗体を投与することにより、血栓塞栓性障害を処置する方法を提示する。本開示は、それを必要とする対象へと、有効量の、本開示の抗FXI/FXIa抗体を投与することにより、血栓塞栓性障害(例えば、血栓性脳卒中(心塞栓性、血栓性)または全身性塞栓症、AF、AFにおける脳卒中の防止(SPAF)、深部静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、肺塞栓症、急性冠動脈症候群(ACS)、急性下肢虚血症、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、または全身性塞栓症)を処置する方法を提示する。本明細書ではまた、組合せ療法も提示される。
【0207】
本明細書で記載される抗体(例えば、NOV1401もしくはNOV1090、またはNOV1401もしくはNOV1090のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗体)はとりわけ、本明細書でより詳細に記載される通り、血栓性障害を含むがこれらに限定されない、血栓塞栓性状態または血栓塞栓性障害を処置、防止、および改善するのに使用することができる。
【0208】
本明細書で提示される抗体(例えば、NOV1401またはNOV1090のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗体)はまた、血栓塞栓性障害を防止、処置、または改善するために、他の薬剤と組み合わせて使用することもできる。例えば、スタチン療法は、血栓性障害および/または血栓塞栓性障害を伴う患者を処置するために、本開示のFXIa抗体および抗原結合性断片と組み合わせて使用することができる。
【0209】
本明細書の具体的な実施形態では、AFを伴う患者における脳卒中を処置または防止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要とする患者へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0210】
本明細書の具体的な実施形態では、AFを伴う患者における心塞栓性脳卒中および全身性塞栓症など、心房細動(AF)と関連する危険性または状態を管理または防止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要とする患者へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0211】
本明細書の具体的な実施形態では、AFを伴う患者における心塞栓性脳卒中および全身性塞栓症など、心房細動(AF)と関連する状態を処置、管理、または防止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要とする患者へと投与するステップを含む方法が提示される。特定の実施形態では、AF患者は、出血の危険性が高い。特定の態様では、AF患者は、≧2のCHA2DS2VASc危険性スコアにより決定される、出血の高危険性を有する。具体的な態様では、AF患者は、非弁膜症性AFと、≧2のCHA2DS2VASc危険性スコアにより決定される、出血の高危険性とを有する。具体的な態様では、AF患者は、55歳またはこれより老齢であり、非弁膜症性AFと、≧2のCHA2DS2VASc危険性スコアにより決定される、出血の高危険性とを有する。
【0212】
本明細書の具体的な実施形態では、対象(例えば、深部静脈血栓症を伴うか、またはこれを発症する危険性がある対象)における深部静脈血栓症またはこれと関連する状態を処置、管理、または防止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要とする対象へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0213】
本明細書の具体的な実施形態では、対象(例えば、静脈血栓塞栓症を伴うか、またはこれを発症する危険性がある対象)における静脈血栓塞栓症(VTE)またはこれと関連する状態を処置、管理、または防止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要とする対象へと投与するステップを含む方法が提示される。特定の実施形態では、本明細書で提示される抗FXI/FXIa抗体で処置される対象は、がん患者を含め、1)出血の危険性が低い、初回の誘発性または特発性VTE、2)特発性VTEの再発、または3)血栓性素因と関連するVTEを経ている。特定の態様では、VTEのために処置される対象は、0~18歳の間である。特定の態様では、VTEのために処置される対象は、1~18歳の間である。特定の態様では、VTEのために処置される対象は、2~18歳の間である。特定の態様では、VTEのために処置される対象は、0~12歳の間である。特定の態様では、VTEのために処置される対象は、1~12歳の間である。特定の態様では、VTEのために処置される対象は、2~12歳の間である。特定の態様では、VTEのために処置される対象は、12~18歳の間である。特定の態様では、VTEのために処置される対象は、少なくとも2歳であり、かつ、18歳未満の小児である。特定の態様では、VTEのために処置される対象は、少なくとも12歳であり、かつ、18歳未満の小児である。
【0214】
本明細書の具体的な実施形態では、静脈血栓塞栓症の二次防止(例えば、28日間~18年間の範囲の期間にわたる二次防止)のための方法であって、それを必要とする対象へと、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を投与するステップを含む方法が提示される。本明細書で提示される、静脈血栓塞栓症の二次防止(例えば、28日間~18年間の範囲の期間にわたる二次防止)のための方法についての特定の態様では、対象は、0~18歳の間である。本明細書で提示される、静脈血栓塞栓症の二次防止(例えば、28日間~18年間の範囲の期間にわたる二次防止)のための方法についての特定の態様では、対象は、0~12歳の間である。本明細書で提示される、静脈血栓塞栓症の二次防止のための方法についての特定の態様では、対象は、12~18歳の間である。本明細書で提示される、静脈血栓塞栓症の二次防止のための方法についての特定の態様では、対象は、少なくとも2歳であり、かつ、18歳未満の小児である。本明細書で提示される、静脈血栓塞栓症の二次防止のための方法についての特定の態様では、対象は、少なくとも12歳であり、かつ、18歳未満の小児である。
【0215】
本明細書の具体的な実施形態では、対象(例えば、肺塞栓症を伴うか、またはこれを発症する危険性がある対象)における肺塞栓症またはこれと関連する状態を処置、管理、または防止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要とする対象へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0216】
本明細書の具体的な実施形態では、対象における急性冠動脈症候群(ACS)またはこれと関連する状態を処置、管理、または防止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要とする対象へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0217】
本明細書の具体的な実施形態では、対象(例えば、虚血性脳卒中を伴うか、またはこれを発症する危険性がある対象)における虚血性脳卒中を処置、管理、または防止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要とする対象へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0218】
本明細書の具体的な実施形態では、対象における急性下肢虚血症を処置、管理、または防止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要とする対象へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0219】
本明細書の具体的な実施形態では、対象における慢性血栓塞栓性肺高血圧症を処置、管理、または防止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要とする対象へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0220】
本明細書の具体的な実施形態では、対象(例えば、全身性塞栓症を伴うか、またはこれを発症する危険性がある対象)における全身性塞栓症を処置、管理、または防止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要とする対象へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0221】
本明細書のある種の実施形態では、カテーテルが血栓性となったカテーテル(例えば、がん患者におけるヒックマンカテーテル)関連状態である、またはチュービングが凝血を発症させる体外式膜型人工肺(ECMO)である血栓塞栓性状態を処置、管理、または防止する方法であって、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を、それを必要とする対象へと投与するステップを含む方法が提示される。
【0222】
本明細書の具体的な態様では、カテーテル関連血栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減する方法であって、ESRDに罹患しており、カテーテル(例えば、挿入されたトンネル型カテーテル)による血液透析開始した、それを必要とする対象へと、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDR(例えば、配列番号31のVH CDR、および配列番号41のVL CDR)を含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を含む、有効量の医薬組成物を投与するステップを含む方法が提示される。本明細書で提示される方法の特定の態様では、対象は、裏付けられた、出血の高危険性を有する。本明細書で提示される方法の特定の態様では、ESRDに罹患した対象は、非弁膜症性AFなどのAFと、≧2のCHA2DS2VASc危険性スコアにより決定される、出血の高危険性とを有する。具体的な態様では、本明細書で提示される方法の特定の態様では、ESRDに罹患した対象は、非弁膜症性AFなどのAFと、≧2のCHA2DS2VASc危険性スコアにより決定される、出血の高危険性とを有し、55歳またはこれより老齢である。
【0223】
本明細書の具体的な態様では、ESRDのための血液透析を受ける患者における、血栓症の発生率を低減し、血管アクセスの存続(例えば、トンネル型カテーテル、動静脈グラフトおよび動静脈癆)を改善し、単独で、または非分画ヘパリンまたは低分子量ヘパリンなど、他の抗凝固剤と組み合わせて使用される場合に、体外血栓症を防止する方法および使用であって、患者へと、有効量の、NOV1401(例えば、配列番号31および41を含む抗体)など、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体を投与するステップを伴う方法または使用が提示される。
【0224】
他の実施形態では、本明細書では、急性VTE処置、VTEの一次防止および長期二次防止、透析を受ける患者(AFを伴うか、またはを伴わない)における、主要な血栓塞栓性有害事象の防止、CADを伴う患者であって、PCIを受け、単剤または二剤の抗血小板療法を施される患者、急性冠動脈症候群(ACS)後患者における、主要な心血管および脳事象(MACCE)、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)の防止、心不全患者における、血栓塞栓性事象の防止、および脳卒中の二次防止のための方法であって、それを必要とする対象へと、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を投与するステップを含む方法が提示される。
【0225】
特定の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401(例えば、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体)、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体による処置を必要とする対象は、
・慢性の抗凝固療法の適応(例えば、AF、左室性血栓、既往の心塞栓性脳卒中)を伴う対象;
・大量出血の危険性が中等度~高度である対象;
・ステント血栓症を防止するように、単剤または二剤の抗血小板療法(例えば、アスピリンおよび/またはP2Y12受容体アンタゴニスト)を施すことを要求しうるステント留置を伴う、待機的経皮冠動脈インターベンション(PCI)または直接的PCIを受ける対象
を含みうる。
【0226】
特定の実施形態では、以下の状態:
・発作性心房細動もしくは発作性心房粗動、遷延性心房細動もしくは遷延性心房粗動、または永続性心房細動もしくは永続性心房粗動などの心不整脈を疑われるか、または確認されている対象における血栓塞栓症;
・心房細動における脳卒中の防止(SPAF)を伴う対象であって、その亜集団が、経皮冠動脈インターベンション(PCI)を受けるAF患者である対象;
・出血の危険性が大きな患者における、急性静脈血栓塞栓性事象(VTE)の処置、および長期的な続発性VTEの防止;
・一過性虚血性発作(TIA)または非機能障害誘発性脳卒中の後の二次防止における大脳および心血管事象、ならびに洞調律を伴う心不全における血栓塞栓性事象の防止における大脳および心血管事象;
・心不整脈のための心除細動を受ける対象における、左心房内の凝血形成および血栓塞栓症;
・心不整脈のためのアブレーション手順の前、その間、およびその後における血栓症;
・静脈血栓症であり、これは、下肢または上肢における、深部静脈血栓症または表在静脈血栓症、腹部静脈および胸部静脈における血栓症、静脈洞血栓症および頸静脈血栓症の処置および二次防止を含むがこれらに限定されない;
・カテーテルまたはペースメーカーの導線など、静脈内の任意の人工表面上の血栓症;
・静脈血栓症を伴うかまたは伴わない患者における肺塞栓症;
・慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH);
・破裂したアテローム性プラーク上の動脈血栓症、動脈内の人工装具上またはカテーテル上の血栓症、および見かけ上正常な動脈内の血栓症であり、これらは、急性冠動脈症候群、ST上昇型心筋梗塞、非ST上昇型心筋梗塞、不安定狭心症、ステント血栓症、動脈系内の任意の人工表面の血栓症、および肺高血圧症を伴うかまたは伴わない対象における肺動脈血栓症を含むがこれらに限定されない;
・経皮冠動脈インターベンション(PCI)を受ける患者における、血栓症および血栓塞栓症;
・心塞栓性脳卒中および潜因性脳卒中;
・侵襲性および非侵襲性のがん性悪性腫瘍を伴う患者における血栓症;
・留置カテーテルにわたる血栓症;
・重病患者における血栓症および血栓塞栓症;
・心血栓症および血栓塞栓症であり、これらは、心筋梗塞後における心血栓症、心動脈瘤、心筋線維症、心肥大および心機能不全、心筋炎、ならびに心臓内の人工表面などの状態と関連する心血栓症を含むがこれらに限定されない;
・心房細動を伴うかまたは伴わない、心弁性心疾患を伴う患者における血栓塞栓症;
・心弁用の機械的または生物学的人工装具にわたる血栓塞栓症;
・単純型心奇形または複合型心奇形の心臓修復術後において、天然または人工の心パッチ、動脈または静脈の導管を有した患者における傷害または外傷;
・人工膝関節置換術、人工股関節置換術、および整形外科術、胸部手術または腹部手術の後における、静脈血栓症および血栓塞栓症;
・頭蓋内インターベンションおよび脊髄インターベンションを含む神経外科術の後における、動脈血栓症または静脈血栓症;
・第V因子 Leiden、プロトロンビンの突然変異、抗トロンビンIII、プロテインC欠損症およびプロテインS欠損症、第XIII因子の突然変異、家族性異常フィブリノゲン血症、先天性プラスミノゲン欠損症、第XI因子レベルの上昇、鎌状赤血球病、抗リン脂質症候群、自己免疫疾患、慢性腸疾患、ネフローゼ症候群、溶血性尿毒症、骨髄増殖性疾患、播種性血管内凝固、発作性夜間ヘモグロビン尿症、およびヘパリン誘導性血小板減少症を含むがこれらに限定されない、先天性または後天性の血栓性素因;
・慢性腎疾患(例えば、病期3または4)における血栓症および血栓塞栓症;
・末期腎疾患(ESRD)における血栓症および血栓塞栓症;
・慢性腎疾患またはESRDを伴い、血液透析を受ける患者における、血栓症または血管アクセスの閉塞(例えば、カテーテル血栓症、動静脈グラフト、血栓症、または動静脈癆)を含む、動脈および静脈の血栓症および血栓塞栓症;
・血液透析を受ける、ESRDを伴う患者における、主要な心事象および脳事象(例えば、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、および緊急の血管再建)の防止;
・主要下肢有害事象(MALE)の防止(例えば、重大な下肢虚血における、血管再建療法であって、インデックス下肢における、切断または任意の主要な血管リインターベンション(血栓切除術、血栓溶解、または主要な手術手順[新たなバイパスグラフト、ジャンプ/インターポジションによるグラフトの修正])を含む血管再建療法)。
のうちの1つを、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体で処置または管理することができる。
【0227】
末期腎疾患(ESRD)患者における心房細動(AF)の発生率および有病率は、人口全体において高く、脳卒中および死亡率の危険性の増大と関連する(Zimmerman et al., Nephrol Dial Transplant (2012) 27: 3816-3822)。ESRDまたは末期腎不全は、慢性腎疾患の末期(例えば、病期4)であり、腎機能の低下と関連することが典型的である。例えば、ESRD患者の糸球体濾過量(GFR)は、15%未満の腎機能を指し示すことが典型的である。ESRDの症状は、貧血、出血しやすく、あざができやすいこと、頭痛、疲労および眠気、体力減退、精神症状(精神的機敏さの低下、集中力の低下、混迷、発作など)、悪心、嘔吐、一般に、食欲の低下、筋痙攣、筋肉収縮、夜尿(夜間の排尿)、四肢末端における無感覚、下痢、皮膚のかゆみ、眼のかゆみ、皮膚の色の変化(場合によって、黄褐色の色調の、グレーがかった顔色)、腫脹およびむくみ、呼吸困難(肺内の体液、貧血による)、高血圧、および消化不良を含みうるがこれらに限定されない。ESRDの処置選択肢は、透析(例えば、血液透析または腹膜透析)である。
【0228】
したがって、本明細書では、とりわけ、脳卒中または血栓塞栓症(例えば、全身性塞栓症)の危険性を防止、処置、または管理、または低減する方法であって、末期腎疾患(ESRD)に罹患している対象へと、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を含む、有効量の医薬組成物を投与するステップを含む方法が提示される。具体的な態様では、対象は、透析または体外式膜型人工肺を施されている。ある種の態様では、対象は、病期4の慢性腎疾患を伴うと診断されている。ある種の態様では、対象は、病期3または4の慢性腎疾患を伴うと診断されている。特定の態様では、対象は、約15~60mL/分のクレアチニンクリアランス速度(Cr Cl:15~60mL/分)を有することが決定されている。
【0229】
したがって、本明細書では、とりわけ、脳卒中または血栓塞栓症(例えば、全身性塞栓症)の危険性を防止、処置、または管理、または低減する方法であって、末期腎疾患(ESRD)に罹患している、それを必要とする対象へと、それぞれ、配列番号29および39を含むVHおよびVLを含むか、または配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗FXI/FXIa抗体を含む、有効量の医薬組成物を投与するステップを含む方法が提示される。具体的な態様では、対象は、血液透析などの透析、または体外式膜型人工肺を施されている。ある種の態様では、対象は、病期4の慢性腎疾患を伴うと診断されている。ある種の態様では、対象は、病期3または4の慢性腎疾患を伴うと診断されている。特定の態様では、対象は、約15~60mL/分のクレアチニンクリアランス速度(Cr Cl:15~60mL/分)を有することが決定されている。具体的な態様では、対象はまた、非弁膜症性AFなどの心房細動(AF)も有する。
【0230】
本明細書の具体的態様では、とりわけ、ESRDのための血液透析と関連する、脳卒中または血栓塞栓症(例えば、全身性塞栓症)の危険性を防止、処置、または管理、または低減する方法であって、末期腎疾患(ESRD)に罹患している、それを必要とする対象へと、それぞれ、配列番号29および39を含むVHおよびVLを含むか、または配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗FXI/FXIa抗体を含む、有効量の医薬組成物を投与するステップを含む方法が提示される。具体的な態様では、対象は、血液透析などの透析、または体外式膜型人工肺を施されている。ある種の態様では、対象は、病期4の慢性腎疾患を伴うと診断されている。ある種の態様では、対象は、病期3または4の慢性腎疾患を伴うと診断されている。特定の態様では、対象は、約15~60mL/分のクレアチニンクリアランス速度(Cr Cl:15~60mL/分)を有することが決定されている。具体的な態様では、対象はまた、非弁膜症性AFなどの心房細動(AF)も有する。
【0231】
本明細書の、別の具体的態様では、脳卒中または血栓塞栓症の危険性を防止または低減する方法であって、心房細動(AF)およびESRDに罹患しており、血液透析などの透析または体外式膜型人工肺を受けている対象へと、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を含む、有効量の医薬組成物を投与するステップを含む方法が提示される。特定の態様では、対象は、非弁膜症性AFに罹患している。さらに具体的な態様では、対象は、裏付けられた、出血の高危険性を伴う、非弁膜症性AFに罹患している。ある特定の態様では、対象は、≧2のCHA2DS2VASc危険性スコアにより特徴付けられる高出血危険性を有する。
【0232】
本明細書の、別の具体的態様では、脳卒中または血栓塞栓症の危険性を防止または低減する方法であって、心房細動(AF)およびESRDに罹患しており、血液透析などの透析を受けている対象へと、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体、例えば、配列番号29のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号39のアミノ酸配列を含むVLと、または配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖とを含むか、または配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗FXI/FXIa抗体を含む、有効量の医薬組成物を投与するステップを含む方法が提示される。特定の態様では、対象は、非弁膜症性AFに罹患している。さらに具体的な態様では、対象は、裏付けられた、出血の高危険性を伴う、非弁膜症性AFに罹患している。ある特定の態様では、対象は、≧2のCHA2DS2VASc危険性スコアにより特徴付けられる高出血危険性を有する。
【0233】
本明細書の具体的な態様では、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減する方法であって、それを必要とする対象へと、FXIの触媒ドメイン内に特異的に結合する、約100mg~約250mgの抗FXI/FXIa抗体(例えば、配列番号29のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号39のアミノ酸配列を含むVLと、または配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖とを含むか、または配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗FXI/FXIa抗体)またはそれらの抗原結合性断片を投与するステップを含み、対象が、以下の特徴:
(i)≧55歳かつ<85歳の男性対象または女性対象;
(ii)端点を含む50~130kgの間の体重;
(iii)心電図により記録された心房細動(AF)または心房粗動;
(iv)男性対象および女性対象についてのCHA2DS2-VASc危険性スコア≧2;
(v)男性対象のCHA2DS2-VASc危険性スコアが1であり、抗凝固治療が正当であること;および
(vi)抗凝固剤非処置であるか、または処置の8週間を超える以前において、推奨用量の新規経口抗凝固剤(NOAC)の安定的処置を施されていること
のうちの、1つ、2つ、もしくはこれを超えるか、または全てを有する、方法が提示される。
【0234】
特定の態様では、脳卒中および全身性塞栓症についての危険性が中等度~高度である対象は、≧2のCHA2DS2VASc危険性スコアを有する。さらなる特定の態様では、HAS BLED危険性スコアが≧3である対象は、出血の高危険性を有するものとして特徴付けられる(Gallego, et al., (2012) Carc Arrhythm Electrophysiol.; 5:312-318, and Friberg et al., (2012) Circulation.; 125:2298-2307を参照されたい)。
【0235】
脳卒中、全身性塞栓症、冠動脈血栓症または末梢動脈血栓症、静脈血栓症、および肺塞栓症を含む血栓塞栓性事象の危険性は、血栓形成傾向、血管壁の損傷、およびうっ血など、素因となる因子の存在と共に増大する。医学的既往歴、家族的先行例、および関連する併存疾患についての査定は、患者を、それらの血栓塞栓性の危険性に従い層別化する一助となる。AFを伴う患者では、いくつかの評定システム、例えば、CHADS2およびCHA2DS2-VAScが、脳卒中の危険性を評価するために開発されている。各評定システムは、無作為化試験、ならびに臨床研究および病因論的コホート研究、ならびに簡略化され、使いやすく覚えやすいデバイス、アルゴリズム、計算機、またはオンラインツールへと、変換され、重み付けされた、脳卒中危険性因子についての多変量公式によるデータに基づき開発された。CHADS2危険性スコアは、AF患者における血栓塞栓性危険性を予測する層別化ツールとして使用された(LIP 2011; Camm et al 2012)が、蓄積された証拠は、CHA2DS2-VAScは、脳卒中および血栓塞栓症を発症する患者の同定において、CHADS2などのスコアと、少なくとも同程度に良好であるか、または、おそらく、これより良好であり、「真に低危険性の」、AFを伴う患者の同定では、決定的に良好であることを示す。CHA2DS2-VAScスコアは、現在、ガイドラインにより、抗凝固治療から利益を得るはずの患者に関する決定を導き、また、抗凝固治療が正当ではない、低危険性の患者を同定するのにも、推奨されている(Camm et al Eur Heart J (2012) 33, 2719-2747; January et al, AHA/ACC/HRS Atrial Fibrillation Guideline; J Am Coll Cardiol 2014;64:2246-80)。
【0236】
AF患者に特異的な、出血危険性の評価ツール、例えば、HAS-BLED、ATRIA、HEMORR2HAGES、ORBIT、およびABC危険性スコアは、AFを伴う患者における出血危険性を予測するために開発された。残念ながら、出血危険性は、脳卒中の危険性と緊密に相関するので、ワルファリンまたはNOACSなどのビタミンKアンタゴニストを使用するように治療的決定を導く、これらの危険性スコアの価値は、限定されたものであった。しかし、出血危険性スコアは、出血危険性を低減した新たな治療、例えば、抗FXI/FXIa抗体(例えば、抗体であるNOV1401)から利益を得る患者を同定するのに、大いに役立ちうる。
【0237】
ある特定の態様では、出血の高危険性が裏付けられた対象は、出血、例えば、手術中の出血もしくは手術後における出血、または抗凝固剤(例えば、ワルファリン)で処置された場合の出血の医学的既往歴により同定することができる。加えて、出血の高危険性が裏付けられた対象は、当技術分野で公知のin vitro/ex vivoアッセイ、例えば、対象の血漿を伴うaPTTアッセイにより同定することができる。出血危険性因子の、他の非限定的な例は、脳卒中/TIAの既往歴、既往の主要な出血または臨床的に問題となる出血、病期3または4のCKD(Cr Cl:15~60mL/分)、例えば、ACS/PCI後における、二剤抗血小板療法による処置、および血腫によるあざと関連する転倒または他の症状の履歴を含む。
【0238】
具体的態様では、本明細書で提示される方法により処置される対象は、少なくとも18歳である。別の態様では、本明細書で提示される方法により処置される対象は、少なくとも50歳である。別の態様では、本明細書で提示される方法により処置される対象は、少なくとも55歳である。別の態様では、本明細書で提示される方法により処置される対象は、少なくとも60歳である。別の態様では、本明細書で提示される方法により処置される対象は、少なくとも65歳である。
【0239】
具体的態様では、本明細書で提示される方法により処置される対象は、18kg/m2以上のボディマス指数(BMI)を有する。別の態様では、本明細書で提示される方法により処置される対象は、30kg/m2以上のBMIを有する。別の態様では、本明細書で提示される方法により処置される対象は、35kg/m2以上のBMIを有する。別の態様では、本明細書で提示される方法により処置される対象は、40kg/m2以上のBMIを有する。具体的態様では、本明細書で提示される方法により処置される対象は、ヒト対象である。
【0240】
具体的態様では、本明細書で提示される方法は、治療的利益:(i)抗凝固;(ii)入院期間の短縮;(iii)例えば、aPTTにより決定される凝血時間の延長;(iv)血栓症の発生率または血栓症の頻度の低減;および(v)血栓塞栓性障害(例えば、脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症、心血管死、緊急の血管再建に対する必要)と関連する、1つもしくは複数の症状の軽減、または血栓塞栓性障害と関連する、1つもしくは複数の症状の重症度の軽減のうちの1つまたは複数を結果としてもたらす。特定の態様では、本明細書で提示される方法は、例えば、aPTTにより決定される凝血時間の延長であって、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、または2倍の延長を結果としてもたらす。
【0241】
具体的な態様では、本開示は、それを必要とする対象へと、別の治療活性薬剤と組み合わせた、有効量の、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401)を投与することにより、血栓塞栓性障害の危険性を処置、防止、または管理、または低減する方法を提示する。このような組合せ療法は、虚血性脳卒中(心塞栓性、血栓性)または全身性塞栓症、AF、AFにおける脳卒中の防止(SPAF)、深部静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、肺塞栓症、急性冠動脈症候群(ACS)、急性下肢虚血症、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、全身性塞栓症など、血栓塞栓性障害を処置するために有用でありうる。
【0242】
特定の態様では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401)と組み合わせた使用に適する治療活性薬剤の非限定的な例は、トロンボキサンインヒビター(例えば、アスピリン)、チエノピリジン系(例えば、クロピドグレルおよびプラスグレル)および非チエノピリジン系(例えば、チカグレロルおよびカングレロル)などのアデノシン二リン酸受容体アンタゴニスト(またはP2Y12インヒビター)、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)アンタゴニスト(例えば、ボラパクサールおよびアトパクサール)、およびプロトンポンプインヒビター(PPI)(例えば、オメプラゾール、ジアゼパム、フェニトイン、ランソプラゾール、デクスランソプラゾール、ラベプラゾール、パントプラゾール、エソメプラゾール、およびナプロキセン)を含む。組合せ治療におけるPPIの使用は、対象が、既往のGI出血または消化性潰瘍の前駆症状などのGI障害を有するか、またはこの履歴を有する症例に適しうる。
【0243】
本明細書の具体的な態様では、本明細書で提示される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗体)で処置されるかまたはこれを投与される患者における出血、例えば、外傷、手術、月経、または産後と関連する出血を管理する方法であって、抗凝固効果の反転を含む方法が提示される。FXI欠損症は、自発的な出血症状と関連することがまれであり、具体的な態様では、出血は、外傷、手術、月経、または産後と関連することが最も典型的である。出血の遷延は、大きな外傷の後、または口腔粘膜、鼻腔粘膜、生殖器粘膜、または泌尿器粘膜などの高線溶領域を伴う臓器に関与する手術の後で生じうる。抜歯、扁桃摘出術、および子宮または前立腺のアブレーションは、出血の大きな危険性を伴う手術の例である。また、障害を伴う人々も、鼻血および斑状出血を発症させる傾向が強く、まれだが、尿中または腸内への出血を発症させる場合もある。FXI欠損症を伴う患者では、自発的な筋肉または関節の出血および頭蓋内出血の頻度は増大しない。静脈穿刺は通例、出血の長期化と関連しない。FXI欠損症と関連する他の遺伝子突然変異は、重度のFXI欠損症を伴う患者における、異質な予測外の出血傾向に寄与しうる。抗血小板剤、他の抗凝固剤、および線溶薬剤の併用は、出血の危険性を増大させうる。
【0244】
本明細書の特定の実施形態では、本明細書で提示される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗FXI/FXIa抗体など、表1に記載されている抗体)で処置される患者(例えば、ESRDおよび/またはAFを伴う患者)における出血を管理する方法であって、出血を管理するのに十分な時間にわたる、一次的な抗凝固効果の反転を含む方法が提示される。具体的な実施形態では、抗凝固効果を反転するステップは、(i)コロイド、晶質、ヒト血漿、もしくはアルブミンなどの血漿タンパク質を使用する体液の置きかえ;または(ii)濃厚赤血球もしくは全血液による輸血を含む。特定の実施形態では、例えば、重度の救急症例における、抗凝固剤の効果の反転のための治療剤は、新鮮凍結血漿(FFP)、プロトロンビン複合体濃縮物(PCC)、および活性化PCC[(APCC);例えば、第VIII因子インヒビターバイパス活性(FEIBA)]ならびに組換え活性化型第VII因子(rFVIIa)など、止血促進性の血液成分を含むがこれらに限定されない。一実施形態では、30μg/kgの用量におけるrFVIIaの投与に続き、6時間ごと、5~7日間にわたる、1gのトラネキサム酸に加えて、2~4時間ごとに15~30μg/kgの用量で、24~48時間にわたるrFVIIaの投与を含むレジメンは、大きな手術を受ける本明細書で提示される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)で処置される対象、および接近不可能な出血が進行中の部位を伴う患者における止血を回復させ、出血を止める可能性を有しうる。例えば、Riddelleらは、インヒビターを伴わない重度のFXI欠損症を伴う、手術を受ける患者4例における経験について報告したが(Riddell et al., 2011, Thromb. Haemost.; 106: 521-527)、患者は、30μg/kgのrFVIIaおよび1gのトラネキサム酸を、麻酔導入時にi.v.投与された。後続の、15~30μg/kgのrFVIIaのボーラス投与は、Rotational Thromboelastometry(ROTEM)結果により示される指針の通り、2~4時間間隔で投与された。患者は、上述の用量のrFVIIaで、24~48時間にわたり処置された。6時間ごとに1gのトラネキサム酸は、5日間にわたり継続された。この少量シリーズでは、トラネキサム酸と組み合わせた、15~30μg/kgという低用量のrFVIIaは、この研究の重度のFXI欠損症における止血異常の矯正において、安全かつ有効であった。インヒビター(通例、重度のFXI欠損症を伴う患者への輸血または血液製剤の投与の後で獲得される、自家FXI中和抗体)を伴う重度のFXI欠損症を伴う、5件の手術を経た患者4例を含む別の研究では、著者ら(Livnat et al., 2009, Thromb. Haemost.; 102: 487-492)は、以下のプロトコールを適用した:手術の2時間前における、経口トラネキサム酸1g、次いで、インターベンションの直前に、患者に、別のi.v.トラネキサム酸1gを施した。用量を15~30μg/kgの範囲とする組換えFVIIaを、手術の完了時に注入した。その後、経口トラネキサム酸1gを、6時間ごとに、少なくとも7日間にわたり施した。フィブリン接着剤を、患者1例における、摘出された胆嚢床に噴霧した。このプロトコールは、インヒビターを伴う重度のFXI欠損症を伴う患者における、正常な止血を確保した。
【0245】
一態様では、フィブリン接着剤を使用して、FXI欠損症を伴う患者における、歯科手術時の局所止血を回復させることができる(Bolton-Maggs (2000) Haemophilia; 6 (S1):100-9)。本明細書で提示される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401)で処置される患者における出血を管理する方法に関する、ある種の実施形態では、フィブリン接着剤の使用と関連する、6時間ごと、5~7日間にわたるトラネキサム酸1gからなるレジメンは、小さな手術を受ける対象、および口腔および鼻腔における出血事象を含む、出血している部位が接近可能な対象において、局所的な止血を確立するのに使用されうる。
【0246】
本明細書の特定の態様では、本明細書で記載される抗FXI抗体(例えば、NOV1401またはNOV1401のHCDRおよびLCDRを含む抗FXI抗体など、表1に記載されている抗体)で処置されるか、またはこれを投与された患者(例えば、ESRDおよび/またはAFを伴う患者)における、出血または出血危険性を管理する方法であって、それを必要とする患者へと、抗FXI抗体の、抗イディオタイプ抗体またはその抗原結合性断片(例えば、Fab)を投与するステップを含み、抗イディオタイプ抗体またはその抗原結合性断片(例えば、Fab)が、抗FXI抗体に特異的に結合し、抗FXI抗体の、FXIへの結合を遮断する、方法が提示される。具体的な実施形態では、抗イディオタイプ抗体またはその抗原結合性断片(例えば、Fab)は、例えば、緊急の大手術時または外傷時において、本明細書で記載される抗FXI抗体の効果を反転させて、出血危険性を緩和する。
【0247】
具体的な態様では、抗イディオタイプ抗体またはその抗原結合性断片(例えば、Fab)は、抗FXI抗体の抗凝固効果を反転させるか、またはこれを阻害する。特定の態様では、抗イディオタイプ抗体またはその抗原結合性断片(例えば、Fab)を、それを必要とする患者へと投与して、本明細書で記載される抗FXI抗体(例えば、NOV1401またはNOV1401のHCDRおよびLCDRを含む抗FXI抗体など、表1に記載されている抗体)の抗凝固効果を、一時的に反転させる。
【0248】
本明細書の特定の態様では、NOV1401(例えば、配列番号31および41)などの抗FXI抗体で処置されるか、またはこれを投与された患者における、出血または出血危険性を管理する方法であって、それを必要とする患者へと、NOV1401(例えば、配列番号31および41)などの抗FXI抗体の、抗イディオタイプ抗体またはその抗原結合性断片(例えば、Fab)を投与するステップを含み、抗イディオタイプ抗体またはその抗原結合性断片(例えば、Fab)が、NOV1401(例えば、配列番号31および41)などの抗FXI抗体の抗原結合性領域に特異的に結合し、抗FXI抗体の、FXIおよび/またはFXIaへの結合を遮断する、方法が提示される。具体的な実施形態では、NOV1401(例えば、配列番号31および41)などの抗FXI抗体の抗イディオタイプ抗体またはその抗原結合性断片(例えば、Fab)は、抗FXI抗体(例えば、NOV1401)の抗凝固効果のうちの1つまたは複数を反転させるか、またはこれを阻害する。ある特定の実施形態では、抗FXI抗体(例えば、NOV1401)の抗凝固効果のうちの1つまたは複数の、一時的な反転または阻害が達成される。具体的な実施形態では、抗FXI抗体(例えば、NOV1401)の一時的な反転または阻害の後、抗FXI抗体(例えば、NOV1401)を、患者へと再度投与する。
【0249】
抗イディオタイプ抗体は、既に記載されている多様な方法により作製することができる(例えば、Pan et al., 1995, FASEB J. 9:43-49を参照されたい)。抗イディオタイプ抗体は、抗体分子(例えば、NOV1401)により誘発され、抗体の結合性部位内、またはこの近傍の抗原決定基(イディオタイプ)に対して方向付けられる。抗イディオタイプ抗体は、元の抗原と接触する結合性部位の一部と重複する抗原決定基を認識し、誘発性抗原を模倣しうる。
【0250】
医薬組成物
本開示は、本明細書で記載される方法(例えば、脳卒中および/または全身性塞栓症の危険性を低減する方法)における使用のために、薬学的に許容される担体と併せて製剤化されたFXIa結合性抗体(全抗体または結合性断片)、例えば、表1に記載されている抗FXI/FXIa抗体を含む医薬組成物を提示する。組成物は加えて、例えば、血栓塞栓性障害(例えば、血栓性障害)の処置または防止に適する1つまたは複数の他の治療剤も含有しうる。薬学的に許容される担体は、組成物を増強するかもしくは安定化させるか、または、組成物の調製を容易とするのに使用することもできる。薬学的に許容される担体は、生理学的に適合性の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。
【0251】
本開示の使用のための医薬組成物は、当技術分野で公知の様々な方法により投与することができる。投与経路および/または投与方式は、所望される結果に応じて変化する。投与は、静脈内投与(i.v.)、筋内投与(i.m.)、腹腔内投与(i.p.)、もしくは皮下投与(s.c.)であるか、または標的部位に近接して投与することが好ましい。薬学的に許容される担体は、静脈内投与、筋内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与、または表皮投与(例えば、注射または注入による)に適するものとする。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち、二特異性分子および多特異性分子である抗体は、化合物を、化合物を不活化しうる酸および他の天然の状態の作用から保護する材料でコーティングすることができる。
【0252】
特定の態様では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401、またはNOV1401のLCDRおよびHCDRを含む抗体など、表1に記載されている抗体)を、皮下注射のための流体バイアル中に1mL当たり約75mg~1mL当たり約200mgの濃度で製剤化する。特定の実施形態では、医薬組成物は、医薬担体または医薬賦形剤、例えば、スクロースおよびポリソルベート20を含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、L-ヒスチジンおよび/またはヒスチジンHCl一水和物を含む。ある種の実施形態では、医薬組成物は、約4~7または5~6のpHを有する。
【0253】
特定の態様では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401、またはNOV1401のLCDRおよびHCDRを含む抗体など、表1に記載されている抗体)を、皮下注射のための流体バイアル中に1mL当たり150mgの濃度で製剤化する。一実施形態では、150mg/mLの流体製剤は、pH=5.5±0.5として、150mgの抗FXI/FXIa抗体、L-ヒスチジン、ヒスチジンHCl一水和物、スクロース、およびポリソルベート20を含有する。組成物は、滅菌であり、かつ、流体であるものとする。適正な流体性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することにより維持することができ、分散液の場合には、要求される粒子サイズを維持し、界面活性剤を使用することにより維持することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、マンニトールまたはソルビトールなどの多価アルコール、および塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長時間吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組み入れることによりもたらすことができる。
【0254】
本開示の使用のための医薬組成物は、当技術分野において周知であり、日常的に実施されている方法に従い調製することができる。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、Mack Publishing Co.、20版、2000;およびSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R. Robinson編、Marcel Dekker, Inc.、New York、1978を参照されたい。医薬組成物は、GMP条件下で製造することが好ましい。本開示の医薬組成物中では、FXIa結合性抗体の治療的に有効な用量または治療的に効果的な用量を利用することが典型的である。FXIa結合性抗体は、当業者に公知の従来の方法により、薬学的に許容される剤形へと製剤化する。投与レジメンは、所望される最適応答(例えば、治療的応答)をもたらすように調整する。例えば、単一のボーラスを投与することもでき、複数に分割された用量をある期間にわたり投与することもでき、治療状況の要件により指し示されるのに応じて、用量を比例的に低減するかまたは増大させることもできる。投与の容易さおよび投与量の均一性のために、非経口組成物を、投与量単位形態で製剤化することがとりわけ有利である。本明細書で使用される投与量単位形態とは、処置される対象のための単位投与量として適する、物理的に個別の単位を指す。各単位は、要求される医薬担体との関連で、所望の治療効果をもたらすように計算された、所定量の活性化合物を含有する。
【0255】
本開示の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者に毒性とならずに、特定の患者、組成物、および投与方式に所望される治療的応答を達成するのに有効な量の有効成分を得るように変化させることができる。選択される投与量レベルは、利用される本開示の特定の組成物、それらの活性、投与経路、投与時期、利用される特定の化合物の排出速度、処置の持続期間、利用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物、および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的健康、および医療既往歴などの因子を含む様々な薬物動態因子に依存する。
【0256】
医師は、医薬組成物中で利用される本開示の抗体の投与を、所望の治療効果を達成するのに要求されるレベル未満のレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで、投与量を漸増させることができる。一般に、本明細書で記載される血栓性および/または血栓塞栓性障害を処置するのに有効な、本開示の組成物の用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、投与される他の薬物、および処置が予防的であるのか治療的であるのかを含む、多くの異なる因子に応じて変化する。処置投与量は、安全性および有効性を最適化するように滴定することが必要である。抗体の全身投与では、投与量は、宿主の体重1kg当たり約0.01~15mgの範囲である。抗体の投与(例えば、皮下投与)では、投与量は、0.1mg~5mgまたは1mg~600mgの範囲でありうる。例えば、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体は、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kg、2.1mg/kg、2.2mg/kg、2.3mg/kg、2.4mg/kg、2.5mg/kg、2.6mg/kg、2.7mg/kg、2.8mg/kg、2.9mg/kg、3.0mg/kg、3.1mg/kg、3.2mg/kg、3.3mg/kg、3.4mg/kg、3.5mg/kg、3.6mg/kg、3.7mg/kg、3.8mg/kg、3.9mg/kg、4.0mg/kg、4.1mg/kg、4.2mg/kg、4.3mg/kg、4.4mg/kg、4.5mg/kg、4.6mg/kg、4.7mg/kg、4.8mg/kg、4.9mg/kg、または5.0mg/kgの用量で投与することができる。例示的な処置レジメは、2週間ごとに1回、または毎月1回、または3~6カ月ごとに1回の全身投与を伴う。例示的な処置レジメは、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、毎月1回、もしくは3~6カ月ごとに1回、または必要に応じて(PRN)の全身投与を伴う。
【0257】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、表1に記載されている抗体)を、例えば、i.v.またはs.c.により、3mg/kgの用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0258】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、表1に記載されている抗体)を、例えば、i.v.またはs.c.により、10mg/kgの用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0259】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、表1に記載されている抗体)を、例えば、i.v.またはs.c.により、30mg/kgの用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0260】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、表1に記載されている抗体)を、例えば、i.v.またはs.c.により、50mg/kgの用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0261】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、表1に記載されている抗体)を、例えば、i.v.またはs.c.により、100mg/kgの用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0262】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、例えば、i.v.経路またはs.c.経路により、5mg~600mgの範囲の用量で投与する。ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、例えば、i.v.経路またはs.c.経路により、100mg~200mgの範囲の用量で、例えば、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0263】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、例えば、i.v.経路またはs.c.経路により、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、約5mg、10mg、15mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、90mg、100mg、120mg、150mg、180mg、200mg、210mg、240mg、250mg、270mg、300mg、330mg、350mg、360mg、390mg、400mg、420mg、450mg、480mg、500mg、510mg、540mg、550mg、570mg、または600mgの用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0264】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、例えば、s.c.経路により、5mgの用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0265】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、例えば、s.c.経路により、15mgの用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0266】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、例えば、s.c.経路により、50mgの用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0267】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、例えば、s.c.経路により、120mgの用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0268】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、例えば、s.c.経路により、150mgの用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0269】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、例えば、s.c.経路により、180mgの用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0270】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、例えば、s.c.経路により、210mgの用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0271】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、例えば、s.c.経路により、300mgの用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0272】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、例えば、s.c.経路により、600mgの用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0273】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、例えば、s.c.経路により、5mgまたはこれを超える用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0274】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、例えば、s.c.経路により、15mgまたはこれを超える用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0275】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、例えば、s.c.経路により、50mgまたはこれを超える用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0276】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、例えば、s.c.経路により、120mgまたはこれを超える用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0277】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、例えば、s.c.経路により、150mgまたはこれを超える用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0278】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、例えば、s.c.経路により、180mgまたはこれを超える用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0279】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、例えば、s.c.経路により、210mgまたはこれを超える用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0280】
ある種の実施形態では、本明細書で提示される方法(例えば、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減するための方法)における使用のための、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401など、表1に記載されている抗体、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体)を、それを必要とする対象(例えば、心房細動を伴い、かつ/またはESRDを伴う対象)へと、例えば、s.c.経路により、300mgまたはこれを超える用量で投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0281】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、表1に記載されている抗体)を、例えば、i.v.経路またはs.c.経路により、aPTTの平均持続時間の、2倍以上の延長を、30日間、35日間、36日間、37日間、38日間、39日間、40日間、41日間、42日間、43日間、44日間、45日間、または50日間を超えない期間にわたり達成するのに十分な用量で投与する。
【0282】
ある種の実施形態では、本明細書で記載される抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401、またはNOV1401のVL CDRおよびVH CDRを含む抗体など、表1に記載されている抗体)を、例えば、i.v.経路またはs.c.経路により、aPTTの平均持続時間の、2倍以上の超える延長を、42日間を超えない期間にわたり達成するのに十分な用量で投与する。
【0283】
ある種の実施形態では、抗体であるNOV1401(例えば、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体)、またはNOV1401と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物は、血液透析など、ESRDのための処置と関連する、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性の、防止、処置、または管理、または低減における使用のためのものであり、この場合、抗体は、100mg~300mgの範囲の用量で、皮下投与される。
【0284】
具体的な態様では、抗体であるNOV1401(例えば、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体)、またはNOV1401と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物は、対象における、血液透析など、ESRDのための処置と関連する、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性の、防止、処置、または管理、または低減における使用のためのものであり、この場合、抗体は、約100mg、120mg、150mg、180mg、210mg、または240mgの用量で、毎月1回、皮下投与される。具体的な態様では、対象は、AFおよびESRDに罹患している。
【0285】
ある種の実施形態では、抗体であるNOV1401(例えば、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体)、またはNOV1401またはそれらの抗原結合性断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物は、非弁膜症性AFなどのAFに罹患した対象における、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性の、防止、処置、または管理、または低減における使用のためのものであり、この場合、抗体は、100mg~300mgの範囲の用量で、毎月1回、皮下投与される。具体的な態様では、対象は、例えば、≧2のCHA2DS2VASc危険性スコアにより決定される、裏付けられた、出血の高危険性を伴う、非弁膜症性AFを有し、この場合、対象は、55歳またはこれより老齢である。
【0286】
具体的な態様では、抗体であるNOV1401(例えば、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体)、またはNOV1401またはその抗原結合性断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物は、非弁膜症性AFなどのAFに罹患した対象における、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性の、防止、処置、または管理、または低減における使用のためのものであり、この場合、抗体は、約100mg、120mg、150mg、180mg、210mg、240mg、または300mgの用量で、毎月1回、皮下投与される。具体的な態様では、対象は、例えば、≧2のCHA2DS2VASc危険性スコアにより決定される、裏付けられた、出血の高危険性を伴う、非弁膜症性AFを有し、この場合、対象は、55歳またはこれより老齢である。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、毎週1回、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、隔週1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、約100mg、110mg、120mg、130mg、または140mgの用量で、毎週1回または隔週1回投与する。具体的な態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、約140mg、150mg、160mg、170mg、または180mgの用量で、3週間ごとに1回または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。特定の態様では、このような抗FXI/FXIa抗体を、150mgまたは180mgの用量で、3週間ごとに1回または4週間ごとに1回(または毎月1回)投与する。
【0287】
具体的な態様では、抗体であるNOV1401(例えば、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体)、またはNOV1401またはその抗原結合性断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物は、非弁膜症性AFなどのAFに罹患した対象における、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性の、防止、処置、または管理、または低減における使用のためのものであり、この場合、抗体は、120mg、150mg、または180mgの用量で、毎月1回、皮下投与される。具体的な態様では、対象は、例えば、≧2のCHA2DS2VASc危険性スコアにより決定される、裏付けられた、出血の高危険性を伴う、非弁膜症性AFを有し、この場合、対象は、55歳またはこれより老齢である。
【0288】
抗体は通例、複数回投与する。単回の投与の間の間隔は、毎週、隔週、毎月、または毎年でありうる。間隔はまた、患者におけるFXI結合性抗体および/もしくはFXIa結合性抗体の血中レベルを測定することにより指し示される通り、不規則でもありうる。加えて、医師が代替的な投与間隔を決定する場合もあり、毎月または効果的であるのに必要な間隔で投与する。全身投与のいくつかの方法では、投与量は、抗体の血漿中濃度1~1000μg/mLまたは1~1200μg/mLを達成するように調整し、いくつかの方法では、25~500μg/mLを達成するように調整する。代替的に、抗体は、持続放出製剤として投与することもでき、この場合は、低頻度の投与が要求される。投与量および頻度は、患者における抗体およびその標的の半減期に応じて変化する。一般に、ヒトおよびヒト化抗体は、キメラ抗体および非ヒト抗体の半減期より長いヒトにおける半減期を示す。投与量および投与頻度は、処置が予防的であるのか治療的であるのかに応じて変化しうる。予防的適用では、比較的低投与量を、比較的低頻度の間隔で、長期にわたり投与する。一部の患者には、彼らの余生にわたり処置を施し続ける。治療的適用では場合によって、比較的高投与量が、疾患の進行が軽減されるか終結するまで、比較的短い間隔で要求され、好ましくは、患者が、疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで要求される。その後、患者には、予防的レジメンを投与することができる。
【実施例】
【0289】
以下の実施例は、本開示をさらに例示するために提示されるものであり、その範囲を限定するために提示されるものではない。当業者には、本開示の他の変形がたやすく明らかであろうし、添付の特許請求の範囲によっても包含される。
【0290】
[実施例1]
結合データ
FXI触媒ドメインについての表面プラズモン共鳴(SPR)解析
SPR測定は、表面プラズモン共鳴ベースの光学バイオセンサーであるBIACORE(商標)T200(BIACORE(商標)、GE Healthcare、Uppsala)上で実施した。Series Sセンサーチップ(CM5)、固定化キット、および再生緩衝液は、GE Healthcare(Uppsala)から購入した。IgGまたはFabのリガンドフォーマットに応じて、2つの異なるアッセイセットアップを実施した。まず、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミドヒドロクロリド(EDC)により、表面を活性化させた。標準的なアミンカップリング法(GE Healthcare、Uppsala)により、NOV1401-Fabを、CM5チップ上の活性化デキストランマトリックスへと共有結合的に付着させた。NOV1401-IgGについて捕捉アッセイを実施し、ヤギ抗ヒトIgG-Fc抗体(JIR)を、14000RUで、チップ上に固定化した。残りの活性表面基は、エタノールアミン(EA)で不活化した。リガンドを固定化させていない基準細胞を調製し、システムを、1倍濃度のHBS-EP+緩衝液(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%のP20、pH7.4;Teknova H8022)で平衡化させた。
【0291】
全ての結合実験は、HBS-EP+緩衝液を使用して、25℃、50μL/分の流量で実施した。捕捉アッセイのために、NOV1401-IgGを、80のRUレベルに達するまで捕捉した。反応速度研究のために、HBS-EP+緩衝液中0~200nMの範囲の濃度で、FXI触媒ドメインの希釈系列を使用した。会合時間は、120秒間であり、解離時間は、180秒間であった。表面は、10mMグリシン、pH1.5の単回注入(接触時間を60秒間とし、安定化時間を120秒間とする)により再生させた。データの加工ならびにkon、koff、およびKDの決定は、T200 BiaEvaluationソフトウェアバージョン1.0により達成した。二重基準(基準注入およびブランク注入の控除)を適用して、バルク効果および他の系統的アーチファクトについて補正した。1:1結合モデル(Rmaxをグローバルに設定した)を適用することにより、センサーグラムを当てはめた。
【0292】
FXIおよびFXIaについての溶液中平衡滴定(SET)
22の1.6倍抗原希釈系列(serial 1.6 n dilution)を、試料緩衝液(0.5%のBSAおよび0.02%のTween 20を含有する、pH7.4のPBS)中で調製し、一定濃度のNOV1401-Fab(huFXIについては、200pMとし、huFXIaについては、500pMとした)またはNOV1401抗体(huFXIおよびhuFXIaについては、10pMとする)を、各抗原濃度へと添加した。抗原希釈系列の出発濃度は、huFXIaについては、100nMとし、huFXIについては、20nM(Fabアッセイ)または1nM(IgGアッセイ)とした。ウェル1つ当たり60μlずつの希釈ミックスを、二連で、384ウェルのポリプロピレンMTPへと分配した。試料緩衝液を、陰性対照として用い、抗原を含有しない試料を、陽性対照(Bmax)として用いた。プレートを、シェーカー上、室温で一晩にわたり、シーリングおよびインキュベートした。標準的な384ウェルMSDアレイMTPを、PBS中で希釈された、0.1μg/mlのhuFXIa(huFXIaおよびhuFXIについて)ウェル1つ当たり30μlでコーティングし、4℃で一晩にわたり、シーリングおよびインキュベートした。
【0293】
インキュベーションおよびTBST(0.05%のTween 20を含有するTBS)による3回にわたる洗浄の後、抗原でコーティングしたMSDプレートを、ウェル1つ当たり50μlのブロッキング緩衝液(5%のBSAを含有するPBS)でブロッキングし、シェーカー上、室温で1時間にわたりインキュベートした。洗浄ステップを繰り返し、ウェル1つ当たり30μlのFab-抗原調製物/IgG-抗原調製物を、ポリプロピレンMTPから、抗原でコーティングしたMSDプレートへと移し、シェーカー上、室温で20分間にわたりインキュベートした。さらなる洗浄ステップの後、試料緩衝液中で希釈された、0.5μg/mlのECL標識ヤギ抗ヒト-IgG/Fab検出抗体(MSD)30μlを、各ウェルへと添加し、振とうしながら、室温で30分間にわたりインキュベートした。再度、プレートを3回にわたり洗浄した後で、35μlのリード緩衝液(MSD)を、各ウェルへと添加した。電気化学発光(ECL)シグナルを発生させ、MSD Sector Imager 6000で検出した。
【0294】
平均ECLシグナルを、各アッセイ内の二連の測定から計算した。データは、全てのデータ点から最低値を控除することにより、ベースラインで調整し、対応する抗原濃度に対してプロットした。KD値は、プロットを、以下の1:1(Fabについて)または1:2(IgGについて)の当てはめモデル(Piehler et al,. 1997に従う)で当てはめることにより決定した。
【0295】
結果
結果を、表3および4にまとめる。FabおよびIgGのいずれのNOV1401フォーマットについても、BIACORE(商標)により決定される通り、FXI触媒ドメインについて、約20nMのKD値を得た。Fabの、活性化型FXIおよびチモーゲンFXIのいずれに対するアフィニティーもpMの範囲であり、触媒ドメインに対するアフィニティーの、それぞれ、66および300倍であった。それらの高アフィニティーに基づき、これらの相互作用を、SETアッセイにより測定した。NOV1401-Fabは、チモーゲンFXI(62pM)に対して、活性化型FXI(305pM)に対する場合の5倍のアフィニティーを呈した。相互作用は、アビディティー効果による影響を受ける可能性があるので、NOV1401-IgGの、二量体のチモーゲンFXIおよび活性化型FXIのいずれに対するアフィニティーも、見かけのKD値として記録される。
【0296】
NOV2401はまた、カニクイザルFXIにも結合することを確認するため、SET実験を、カニクイザル活性化型FXIおよびカニクイザルチモーゲンFXIについて実施し、結果として、それぞれ、12.5±6.6pM(N=2)および5.0±0.7pM(N=2)の、見かけのKD値を得た。よって、NOV1401の、カニクイザルFXIタンパク質(活性形態およびチモーゲン)に対するアフィニティーは、ヒトFXIへの結合についてのアフィニティーと同等である(表3)。
【0297】
【0298】
【0299】
[実施例2]
生化学アッセイ:蛍光ペプチドを基質として使用する活性アッセイにおけるFXIaの阻害
ヒトFXIa(Kordia Life Science NL:型番HFXIa 1111a)の活性は、配列D-Leu-Pro-Arg*Rh110-D-Pro(製品番号:BS-2494;Biosyntan GmbH、Berlin、Germany)を伴う、蛍光標識されたペプチドの切断をモニタリングすることにより決定する。上に記載した基質配列では、*は、切断性結合である、D-Leu:D-ロイシン、Pro:プロリン、Arg:アルギニン、Rh110:ローダミン110、D-Pro:D-プロリン)を指し示す。ペプチド基質の切断性結合の、FXIaを媒介する切断は、それぞれ、485nmおよび535nmの励起波長および発光波長を使用する場合の、ローダミン110の蛍光強度の増大をもたらす。蛍光強度は、室温(RT)で、マイクロタイタープレートリーダーSafire2(TECAN、Maennedorf、Switzerland)を使用して連続して測定する。アッセイ緩衝液は、pH7.4の50mM HEPES、125mMのNaCl、5mMのCaCl2、および0.05%(w/v)のCHAPSを含有する。最終的な活性アッセイでは、ヒトFXIaおよび基質であるBS-2494は、それぞれ、0.1nMおよび0.5μMのアッセイ濃度を有する。これらの条件下で、時間経過にわたる蛍光強度の増大は、少なくとも60分間にわたり直線的である。
【0300】
抗体の阻害活性について調べるため、0.05%(w/v)のCHAPSを含有するPBS緩衝液(137mMのNaCl、2.7mMのKCl、10mMのNa2HPO4、1.8mMのKH2PO4)中で、抗体の希釈系列を調製する。2μLの抗体溶液を、10μLのFXIa溶液(アッセイ緩衝液中)と共に、室温で60分間にわたりプレインキュベートする。プレインキュベーションステップの後で、10μLの基質であるBS-2494(アッセイ緩衝液中で希釈した)を添加し、酵素反応を60分間にわたり進行させ、その後、蛍光強度を測定する。対照反応(阻害されていない反応物のシグナルは、0%の阻害と同等であり、酵素を含有しない反応物のシグナルは、100%の阻害と同等である)および値を移行させるための以下の式:
y=100%-[FI(x)-FI(min)]/[FI(max)-FI(min)]
[式中、yは、抗体濃度をxとするときの阻害%であり、FI(x)は、抗体濃度をxとするときに測定される蛍光強度であり、FI(min)は、抗体の非存在下にある対照反応において測定される蛍光強度であり、FI(max)は、阻害されていない対照反応において測定される蛍光強度である]を使用することにより、蛍光強度値を、阻害パーセントへと変換する。データは、Origin 7.5SR6プログラム(OriginLab Corporation、USA)を使用して解析する。平均データによるIC50値は、ロジスティックス関数:
y=A2+(A1-A2)/(1+(x/IC50)p)
[式中、yは、抗体濃度をxとするときの阻害%であり、A1は、最小の阻害値であり、A2は、最大の阻害値である。指数pは、ヒル係数である]を使用して計算する。
【0301】
図4Aは、抗体であるNOV1401の、全長ヒトFXIaの酵素活性に対する阻害についての代表的な複合応答曲線を示す。結果は、NOV1401が、ヒト全長FXIaの酵素活性を、濃度依存的に阻害することを示す(
図4A)。ロジスティック当てはめモデルによる当てはめは、約160pMのIC
50値をもたらす。
【0302】
[実施例3]
抗FXIa Abの抗凝固活性
活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイおよびトロンビン生成アッセイ(TGA)を使用することにより、抗体であるNOV1401およびNOV1090の抗血栓活性について調べた。
【0303】
aPTTアッセイ:
凍結乾燥正常ヒト血漿「凝固対照N」(参照番号:5020050)は、Technoclone GmbH(Vienna、Austria)から購入した。凝固対照Nは、選択された健常ドナーのクエン酸血漿からプールされた。この正常血漿に関して得られる凝血時間は、凝血に関与する凝固因子の正常濃度を反映する。凍結乾燥血漿は、4℃で保管した。その使用前に、バイアルを注意深く回転させ、次いで、室温で10分間にわたり保つことにより、血漿を、1mLの蒸留水中に再懸濁させた。
【0304】
内因系経路誘発試薬である「aPTT-s」(参照番号:TE0350)は、SYCOmed(Lemgo、Germany)から購入したものであり、緩衝液(塩化ナトリウム、ポリエチレングリコール20000;スクロース、アジ化ナトリウム)中に、リン脂質およびケイ酸塩(コロイド状)を含有する。溶液は、4℃で保管した。
【0305】
塩化カルシウム(参照番号:C1016-500G;Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Steinheim、Germany)は、二回蒸留水中に25mMの原液濃度で調製した。
【0306】
pH7.5のUltraPureトリス/HCl緩衝液(参照番号:15567-027;Life Technologies Corporation、NY、USA)およびリン酸緩衝生理食塩液(PBS;参照番号:P4417-100TAB;Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Steinheim、Germany)を、複合希釈剤とした。
【0307】
3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネートヒドレート(CHAPS;参照番号:C3023-25G)および無水ジメチルスルホキシド(DMSO、参照番号:276855-100ML)は、Sigma-Aldrich Chemie GmbH(Steinheim、Germany)から購入した。
【0308】
凝血時間の測定は、半自動式の機械的凝血検出システムである、Amelung ball coagulometer model KC4A(SYCOmed、Lemgo、Germanyから購入した)により実施した。システムは、ステンレス鋼製のボール(参照番号:AI5000;SYCOmed)を入れた特製のキュベット(参照番号:AI4000;SYCOmed)を活用する。
【0309】
試料を、キュベットへと添加する。適切なインキュベーション時間の後、キュベットを、Amelung ball coagulometerの測定ウェルに入れる。測定ウェルは、ゆっくりと回転し、キュベットにその長軸の周りを回転させる。キュベットは、やや傾いて置かれるため、重力および慣性力は、ボールを、常にキュベットの最も低い位置に置く。ボール位置の正反対の位置に、磁気センサーがある。誘発試薬を添加したら、タイマーを始動させる。凝固が生じると、反応混合物中に、フィブリン鎖が形成される。フィブリン鎖は、ボールを、その慣性位置から引き離し、これにより、磁気センサー内に、インパルスを誘発する。このインパルスは、タイマーを電気的に停止させる。ピペッティングスキームは、以下(表4a)の通りであった。
【0310】
【0311】
試料は、Amelung ball coagulometer内、二連、37℃の温度で測定した。
【0312】
図4Bは、aPTT凝血時間の濃度依存的延長をもたらす抗体であるNOV1401の代表的な複合応答曲線を示す。結果は、NOV1401が、ヒト血漿のaPTT凝血時間の延長を、濃度依存的にもたらすことを示唆する。aPTT凝血時間は、約14nMの濃度のNOV1401でベースラインと比較して、倍増する。IC
50値は、約13nMであると計算された。
【0313】
トロンビン生成アッセイ(TGA):
TGA凍結乾燥正常ヒト血漿(凝固対照N)は、Technoclone GmbH(参照番号:5020040、ロット番号:1P37B00)から購入し、製造元により示唆される容量中の蒸留水中で再構成する。
【0314】
Technoclone GmbH(参照番号:5006230、ロット番号:8F41B00)製の蛍光性基質であるZ-Gly-Gly-Arg-AMCを使用して、基質溶液を調製した。凍結乾燥基質のアリコートを、4℃に保った。アッセイにおけるその使用の20分前に、バイアル上に表示の容量の蒸留水中に新たに基質を溶解させた。再構成された基質溶液は、1mMの濃度の蛍光性ペプチドと、15mMの濃度のCaCl2とを含有する。
【0315】
内因系経路および外因系経路をそれぞれ誘発するための2つの異なる試薬である、「TGA RD」(参照番号:500622)および「TGA RC Low」(参照番号:5006213)は、Technoclone GmbH(Vienna、Austria)から購入した。誘発試薬である「PPP(乏血小板血漿)-Reagent Low」は、Thrombinoscope(TS31.00、ロット番号:PPL1409/01)から購入し、バイアル上に表示の蒸留水中で再構成した。「PPP-Reagent Low」は、リン脂質と組織因子との混合物を、非常に低濃度で含有する。試薬は、使用の直前に、pH7.4の80mMトリス/HCl、0.05%(w/v)のCHAPS中で8倍希釈した。
【0316】
試料は、Costar(製品番号:3603)から購入した96ウェル黒透明底プレートにアリコート分割し、この中で測定した。自動化移入のために、試料を、V字底96ウェルプレート(Costar、3894)に入れ、CyBio自動化システム(Analytik Jena US、Woburn、MA、USA)を使用して移した。
【0317】
再構成されたヒト血漿、誘発試薬である「PPP-Reagent Low」、および基質を、水浴中37℃で10分間にわたり、あらかじめ加熱した。PBS中に1:3の抗体希釈系列を、96ウェルプレート内、5μM(1μMの最終最高濃度の5倍の濃度)のNOV1401濃度で始めて、合計8つの希釈率にわたり調製した。222μlの誘発試薬を、1108μlの基質溶液と混合して、10+50誘発試薬基質ミックスを作り出した。自動化システムを使用する後続の移入のために、ウェル1つ当たり80μlを、V字底96ウェルプレートへと添加した。プレートは、37℃に保った。試薬は、表4bに示すスキームに従い添加した。
【0318】
【0319】
自動化を使用して、誘発剤/基質混合物を移した。混合物を添加した後で、Synergy Neo instrument(BioTek Instrument Inc.、Winooski、VT、USA)を使用して、それぞれ360nmおよび460nmの励起および発光を、速やかに記録した。試料は、プレートリーダー内、37℃の温度で、55秒間隔の二連で、90分間にわたり測定した。
【0320】
ピークを生成するために、Technocloneから提供されるTGA査定ソフトウェアファイルを使用して、トロンビン濃度値データを加工した。ピークについてのプロットを作り出すために、GraphPadソフトウェアを使用して、トロンビン濃度対抗体濃度のデータを当てはめた。これらのデータを、GraphPad Prism5ソフトウェア(GraphPad Software Inc.、La Jolla、CA、USA)内の非線形回帰モデルへと当てはめた。IC50値は、ビルトイン型の4パラメータ用量応答曲線式(傾き可変型):y=Bottom+(Top-Bottom)/(1+10(Log IC50-x)×HillSlope)[式中、yは、インヒビター濃度をxとするときに形成される最大トロンビン濃度であり、TopおよびBottomは、それぞれ、インヒビターを伴わない場合のトロンビン濃度およびインヒビターの最大濃度におけるトロンビン濃度を表す]を使用して決定した。
【0321】
図4Cは、TGAでのトロンビン生成の濃度依存的な阻害を表示する、抗体であるNOV1401についての代表的な複合応答曲線を示す。24nMのIC
50値および159nMの残留トロンビン濃度(点線)を、この複合応答曲線について計算した。
【0322】
[実施例5]
FXI抗体の、マウスにおけるFeCl3誘導性血栓症に対する効果
C57Blバックグラウンド上でFXIを欠損するマウス(FXI-/-マウス)を、Novartis(E.Hanover、NJ)において飼育し、NOV1401の抗血栓有効性を評価するのに使用した。ヒトFXI(hFXI)により静脈内で再構成する場合、これらのマウスは、血栓形成刺激へと曝露されると、野生型の、血栓性素因のある表現型を獲得する。本明細書の研究では、動脈の表面へと、塩化第二鉄(FeCl3)を適用することにより、頸動脈内に血栓症を誘導した。
【0323】
NOV1401を、麻酔下にあるマウスの頸静脈を介するボーラスとして、血栓症を誘導する15分前に注射した。抗体の用量は、0.24mg/kg~0.47mg/kgの範囲であった。FeCl3チャレンジの10分前に、頸静脈を介して、0.47mg/kgのヒトFXIを注射することにより、FXI-/-マウスを、ヒトFXIで再構成した。次いで、3.5%のFeCl3を含浸させた1mm×1.5mmの濾紙小片2枚を、その外膜表面と接触させて、頸動脈の反対側に貼付し、3分後に除去するのに続き、生理食塩液で完全に洗浄した。頸動脈を介する血流は、Transonic flow probeにより測定した。ベースラインの血流は、FeCl3適用前の5分間にわたり、次いで、FeCl3の適用後30分間(すなわち、血栓形成期)にわたり得た。実験の終了時に、血液を、大静脈から、3.8%のクエン酸ナトリウムを含有するシリンジへとサンプリングし、血漿を調製し、aPTTアッセイにかけた。
【0324】
図1Aは、ヒトFXIで再構成されたFXI
-/-マウス(ヒト化FXIマウスモデル)における、FeCl
3誘導性血栓症に対する、NOV1401の効果を示す。
図1Bは、同じマウスモデルにおけるaPTTに対するNOV1401の効果を示す。
図1Cは、野生型マウスと比較した、FXI
-/-マウスにおけるaPTT延長を示す。
【0325】
NOV1401は、0.24mg/kgから始めて、hFXIで再構成されたFXI
-/-マウス(
図1A)におけるFeCl
3誘導性血栓の形成を完全に阻害した。急勾配の用量応答が観察され、化学量論的で悉無律的な抗血栓応答を反映する可能性が高い。aPTTは、高用量群において、媒体対照の1.6倍超まで延長され(
図1B)、FXIの遺伝子枯渇による同じレベルの延長(
図1C)、すなわち、最大効果に対応する。これらの結果は、NOV1401が、マウスFeCl
3血栓症モデルにおいて、抗血栓活性を有することを示す。
【0326】
[実施例6]
FXI抗体の、カニクイザルにおける遊離FXIおよびaPTTに対する効果
NOV1401など、抗FXI/FXIa抗体の薬物動態(PK)プロファイルおよび薬理学的効果について査定するため、用量漸増研究において、抗体を、皮下(s.c.)注射または静脈内(i.v.)注射を介して、カニクイザルへと投与した。
【0327】
カニクイザルにおいて、aPTTを延長し、3mg/kgの単回静脈内投与(N=2)または単回皮下投与(N=2)の後において、遊離FXI(FXIf)レベルを低減する抗体の能力について調べることにより、NOV1401の抗凝固効果を特徴付けた。10mg/kgの第2の用量を、全ての動物へと投与するのに続いて、30mg/kgの第3の用量を、全ての動物へと投与して、3mg/kgで観察された効果が、高用量により強化されうるのかどうかを決定した。これらの結果は、NOV1401が、カニクイザルにおいて、持続的な抗凝固活性を有することを示す。次いで、aPTTおよびFXIfレベルにより決定される、その抗凝固効果を特徴とする、NOV1401の薬力学(PD)を、PKプロファイルと比較した。比較は、良好なPK/PD相関が存在することを指し示す。
【0328】
動物に、NOV1401を研究の1日目に、3mg/kg、85日目に、10mg/kg、114日目に、30mg/kgで、i.v.(N=2)投与するか、またはS.C.(N=2)投与した。血液試料は、クエン酸ナトリウム凝固チューブへと、i.v.投与された動物では、投与の15分後および2時間後において回収し、全ての動物では、試験前、投与の6、24、48、72、および96時間後(1日目、85日目、および114日目)、ならびに投与の8、11、15、18、22、25、29、32、36、39、43、46、50、53、57、60、64、66、71、75、および78日後(92、95、99、102、107、110、121、124、128日目、および114日目の投与前にもまた、血液の回収だけ行った)において回収した。全ての血液試料を遠心分離し、血漿試料を得、約-70℃以下で凍結させた。
【0329】
NOV1401の血漿総濃度は、捕捉抗体としてのマウス抗ヒトIgGモノクローナル抗体と、検出抗体としての、HRP標識を伴うヤギ抗ヒトIgGとによる、サンドイッチイムノアッセイを使用するELISAにより、ヒトIgGを検出するための標準的な方法により測定した。
【0330】
FXIおよびNOV1401の両方を含有する血漿試料中の遊離FXIを測定するために、結合していないFXIを、固定化NOV1401により捕捉し、NOV1401と既に複合体したFXIは、洗い流した。次いで、プレートに結合したFXIを、FXIのA2ドメインに結合し、文献(Cheng, et al. Blood, 116:3981-3989, 2010)において記載されているモノクローナル抗体である、抗体14E11を含有するマウスFcにより検出した。NOV1401の、FXIおよびFXIaの両方に対する非常に大きなアフィニティー、ならびにNOV1401および検出抗体14E11に対する異なる結合性部位は、遊離FXIの正確な決定を可能とした。
【0331】
遊離FXIを結合させるために、ELISAプレート(384-Well LUMITRAC(商標)600 HB)を、NOV1401(PBS中に5μg/mL)でコーティングした。ブロッキング(ミルクによるブロッカー:KPL:型番50-82-01、1:20希釈液)し、プレートを洗浄緩衝液(PBS;0.05%のTween 20)で洗浄した後、アッセイ緩衝液(pH7.4の50mM HEPES、125mMのNaCl、5mMのCaCl2、5mMのEDTA、および0.05%(w/v)のCHAPS)中で1:40に希釈した血漿試料を、室温で30分間にわたりインキュベートし、洗浄緩衝液で3回にわたり洗浄した。検出抗体である14E11を、0.7%のカゼインを含有する希釈緩衝液(1.7mMの一塩基性リン酸ナトリウム、8.1mMの二塩基性リン酸ナトリウム七水和物、0.15Mの塩化ナトリウム、0.7%のTriton X-100、および0.1%のアジ化ナトリウム、pH7)中、1μg/mLで添加した。洗浄緩衝液によりプレートを洗浄した後、二次検出抗体である、ペルオキシダーゼで標識された抗マウスIgG(Sigma:型番A5278)を、0.4%のカゼインを含有する希釈緩衝液中、0.5μg/mLで添加した。洗浄緩衝液中でプレートを洗浄した後、50μLのペルオキシダーゼ化学発光基質溶液(LumiGLO;KPL:型番54-61-01)を添加し、発光シグナルを、マルチモードのマイクロプレートリーダー(SPECTRAMAX M5E)上で速やかに読み取った。各試料中の遊離FXI濃度は、100nMのFXIから始め、希釈係数を2および希釈ステップを22として、Enzyme Research Laboratories(型番:HFXI 1111)製のヒトFXI(チモーゲン)について作成した検量線を使用して決定した。測定前の1:40の希釈率を考慮し、定量下限(LLOQ)を、0.24nMのFXIとした。
【0332】
全ての時点の血漿試料を、aPTT解析にかけ、aPTT結果を、総血漿NOV1401濃度および遊離FXIレベルと比較した。
図2Aおよび2Bは、i.v.およびS.C.投与された動物について、総血漿NOV1401レベルとの関係におけるaPTT凝血時間の変化を示す。
図3Aおよび3Bは、i.v.およびS.C.投与された動物について、遊離FXIレベルとの関係におけるaPTT凝血時間の変化を示す。
【0333】
i.v.投与されたNOV1401について、最高血漿総NOV1401レベルは、投与の15分後に観察された(
図2A)。この時点で、aPTTは、いずれの動物においても、ベースラインと対比してほぼ倍増し、平均で5~6週間にわたりこのレベルを維持した。投与の15分後から、ベースラインへの減衰に先立つ測定までの、平均のaPTT延長は、各動物について、2.0±0.02倍および1.9±0.03倍であった。
【0334】
2回目の投与を行う前の85日目までに、aPTTは、ベースラインレベルに達し、NOV1401の血漿濃度は、10nMを下回って降下した。10mg/kgの2回目の投与を、85日目に行ったところ、血漿総NOV1401濃度が少なくとも約3倍に増大し、結果として、1回目の投与後に観察されたaPTT延長と同様のaPTT延長がもたらされた。30mg/kgの3回目の投与を、114日目に行ったところ、aPTTは延長を保ったが、血漿総NOV1401濃度は、さらに少なくとも3倍増大したにもかかわらず、さらなる著明なaPTT延長を結果としてもたらすことはなかった(
図2A)。したがって、3mg/kgより高用量のNOV1401が達成するaPTT延長は、3mg/kgの用量による場合と同等であり、aPTT延長の大きさを増大させることはないと考えられた。予測される通り、NOV1401のs.c.投与は、i.v.投与の場合より緩徐なaPTTの延長を結果としてもたらしたが、延長の程度は、i.v.群の場合と同等であった(
図2B)。aPTTは、2つの動物において、ベースラインと対比して、平均で5~6週間にわたり延長された。平均aPTT延長倍数は、i.v.処置動物の場合と同様:投与の6時間後からベースラインへの減衰に先立つ測定まで、2.0±0.03および1.8±0.02であった。i.vの場合と同様、高用量の投与は、高血漿NOV1401曝露量にもかかわらず、高度なaPTT応答をもたらさなかった。
【0335】
図2A~2Bにおける結果は、カニクイザルにおいて、NOV1401が、aPTTを延長することを裏付ける。
【0336】
i.v.群では、平均ベースライン血漿FXI
f濃度は、10.9±0.3nMであり、NOV1401を注射して急速に(15分後までに)降下した(
図3A)。血漿FXI
fレベルは、総NOV1401血漿レベルが、15nM~25nMの間に低下するまで、低値を維持した(
図2A、
図3A)。s.c.群では、平均ベースラインのFXI
f濃度は、14.3±1.0nMであった。FXI
fは、処置の6時間後までに、ベースラインと対比して、急激に減少し(
図3B)、NOV1401血漿レベルが、15nM~25nMの間に低下するまで、低値を維持した(
図2B、
図3B)。FXI
fは、全ての動物において、10mg/kgの2回目の投与の後で、再び急激に減少し、研究の終了時まで、低値を維持した。2回にわたる高用量の投与は、ベースラインと比べて、FXI
fをさらに低減することはなかった。
【0337】
全ての処置動物において、FXIfレベルの低下および回復は、一時的であり、aPTTのNOV1401誘導性延長と反比例したことから、NOV1401は、FXIfを減少させることにより、内因系凝固経路の機能を阻害する(aPTTを延長する)ことが確認される。
【0338】
これらの結果(例えば、
図3Aおよび3B)は、NOV1401が、カニクイザルにおいて、血漿FXI
fレベルを低下させることを裏付ける。カニクイザル研究では、過剰な出血の証拠は、静脈穿刺部位においても、剖検時の粗観察によっても観察されなかった。さらに、研究を通して、糞便中の潜血も検出されなかった。
【0339】
NOV1401の持続的な抗凝固効果はまた、カニクイザルにおける、13週間にわたるs.c./4週間にわたるi.v.反復投与毒性研究でも観察された。この研究では、NOV1401を、毎週10mg/kg(N=3、雄および雌の組合せ)および100mg/kg(N=5、雄および雌の組合せ)の用量で13週間(14回の投与)にわたりs.c.投与するか、または毎週50mg/kg(N=3、雄および雌の組合せ)の用量で4週間(5回の投与)にわたりi.v.投与した。対照群(N=5、雄および雌の組合せ)には、媒体を、13および4週間にわたり、それぞれ、s.c.およびi.v.で施した。FXI:Cは、ヒトFXIを欠損する血漿の存在下で、カニクイザル血漿試料の凝血時間(一段階aPTT)を測定することにより評価した。aPTTおよびFXI:Cは、s.c.群については、研究の2、23、および79日目において測定し、i.v.群については、2および23日目において測定した。全ての動物および全ての処置群にわたり、2.1~3倍のaPTT延長が観察された(
図5A)。効果は、研究の投与期を通して持続的であり、先行の漸増用量研究における観察と同様な用量依存性は観察されなかった。FXI:Cは、動物および処置群にわたり、88~95%低減され、研究の投与期を通してこれらのレベルで維持された(
図5B)。FXI:Cに対する効果もまた、これらの用量にわたり、用量非依存的であった。
【0340】
過剰な出血を含む、出血の肉眼的兆候または顕微鏡的兆候についての証拠は、静脈穿刺部位(s.c.注射部位およびi.v.注射部位ならびに採血部位を含む)においても、剖検時の粗観察によっても観察されなかった。さらに、研究の終了時において、糞便中の潜血も検出されなかった。加えて、死亡も生じず、臨床徴候、体重、食物摂取、眼科パラメータおよび心電図パラメータ、血液学、臨床化学、または尿検査に対する被験物質関連効果も見られなかった。毒性の標的臓器は、同定されなかった。
【0341】
雄における100mg/kgのs.c.では、甲状腺重量の増大は観察されなかった。しかし、組織学的相関物は見られないので、この所見の毒性学的意義は結論的なものではない。甲状腺重量には、動物間で大きなばらつきが見られ、所見が認められたのは、1つの性別に限られた。顕微鏡的には、s.c.注射部位では、用量依存的な線維症が、いずれの性別でも、毎週10および100mg/kgのs.c.で観察された。これらの所見は、有害とは考えられなかった。
【0342】
著明な毒性所見は、最長13週間にわたる、カニクイザルにおける、単回用量漸増投与または反復投与による一般的毒性研究では観察されなかった。したがって、13週間にわたるGLP毒性研究で投与された最高のs.c.用量レベル(毎週100mg/kg)を、NOAELと規定した。
【0343】
[実施例7]
カニクイザル(単回投与)における薬物動態
カニクイザル(雌、N=2)に、3mg/kgのNOV1401の単回i.v.投与または単回s.c.投与を行い、血漿FXIf濃度およびaPTTが、投与前の値に戻るまで観察した。次いで、動物に、10mg/kgのNOV1401の単回i.v.投与または単回s.c.投与の2週間後、30mg/kgのi.v.投与またはs.c.投与を行い、さらに2週間にわたる観察期間を設けた。NOV1401のPKは、総NOV1401を測定することにより評価した。最大観察総NOV1401濃度(Cmax)または総NOV1401濃度-時間曲線下面積(AUC0-14d)により測定される、総NOV1401への曝露量は、各群内の個別の動物間で同等であった。曝露量(CmaxまたはAUC0-14d)は、各投与経路について、ほぼ用量に比例した(表9)。Cmaxは、i.v.群において、s.c.群の約3倍であった。しかし、血漿総NOV1401濃度は、初期分布期後のいずれの群においても同等であった。終末相消失半減期(t1/2)は、3mg/kgの用量の投与後において、各動物について、2コンパートメントモデルを使用して推定した。t1/2は、14~15日間の範囲であった(N=2)。s.c.注射後における絶対バイオアベイラビリティは、61~66%の範囲であった(3つの用量レベル)。抗NOV1401抗体は、いずれの動物へのi.v.投与後においても、s.c.投与後においても検出されなかった。
【0344】
【0345】
[実施例8]
カニクイザル(反復投与)におけるトキシコキネティクス
カニクイザルに、NOV1401を毎週10もしくは100mg/kgの用量で13週間(14回の投与)にわたりs.c.投与するか、または毎週50mg/kgの用量で4週間(5回の投与)にわたりi.v.投与した。NOV1401で処置された動物は、研究の投与期中に、NOV1401へと曝露されたが、対照動物における曝露は認められなかった。血漿総NOV1401への曝露の、性別に関連する差異は、観察されなかった。曝露量(CmaxおよびAUC0-7dの両方)の増大は、雄動物および雌動物のいずれにおいても、用量に比例した(表10)。抗NOV1401抗体は、毎週10mg/kgのs.c.における動物6匹中5匹、毎週100mg/kgのs.c.における動物10匹中1匹、および毎週50mg/kgのi.v.における動物6匹中1匹で検出された。いずれのs.c.投与群においても、総NOV1401への曝露は損なわれなかった。抗薬物抗体(ADA)陽性動物1匹だけは、研究の22日目におけるAUC0-7dが、同じ群(毎週50mg/kgのi.v.)内の他の動物より小さかった。この動物において、aPTT延長に対する影響は認められず、毒性も観察されなかった。
【0346】
【0347】
[実施例9]
ヒトにおける用量漸増研究1
ヒト研究を実行して、健常対象における単回用量投与後の、NOV1401など、抗FXI/FXIa抗体の安全性および忍容性を評価する。18~55歳の間の、健常男性対象および閉経期後不妊/手術による不妊の健常女性対象の合計約60例を、この研究に登録する。良好な健康は、過去の医療履歴、スクリーニング時における身体検診、神経学的検診、バイタルサイン、心電図(ECG)、および検査室検査により決定する。選択された対象は、体重が、少なくとも50kgであり、ボディマス指数(BMI)が、18~35kg/m2の範囲内である。BMI=体重(kg)/[身長(m)]2。
【0348】
いかなる被験用量でも、≧2倍のaPTTの予測平均持続時間の延長が、≧42日間にわたり持続することはないという条件で、ヒト研究では、5、15、50、150、300、および600mgの、6つのs.c.用量レベルについて調べるものとする。2回にわたる中間解析(IA)を行って、2つの最高用量レベルについて、用量の選択を確認する。300mgまたは600mgの用量で、モデルにより予測されるaPTTの平均持続時間の延長が、42日間を超える期間にわたり、≧2倍である場合、用量を、例えば、モデルシミュレーションに基づき減少させて、aPTTの平均持続時間の延長が、≧42日間にわたり、2倍を超えないことを確保することができる。非限定的で例示的な用量の調整は、10mg、20mg、30mg、40mg、または50mgの減少量を使用する、用量の減少を伴いうる。
【0349】
最初の3つの用量漸増ステップは、約1/2 logの増分で行う。最後の2つの用量漸増ステップは、標的飽和の遷延およびaPTT延長の延伸の危険性を軽減するように、≦2倍の増分とする。
【0350】
FXIを標的化する治療による、2倍のaPTT延長の、ある種の日数(例えば、30日間、35日間、40日間、42日間など)にわたる最大持続時間は、重度のFXI欠損症を伴う患者において、軽度の出血表現型を示す遺伝子データ、後天性インヒビターを伴うFXI欠損症を伴う患者に由来するデータ、およびヒト研究、例えば、6週間にわたる、FXI-ASOの複数回投与が、>6週間(42日間)にわたり、出血事象を伴わない、ロバストで持続的なFXI枯渇を結果としてもたらした、FXI-ASO研究(例えば、Liu et al., (2011) “ISIS-FXIRx, a novel and specific antisense inhibitor of factor XI, caused significant reduction in FXI antigen and activity and increased aPTT without causing bleeding in healthy volunteers.” Presented at the 53rd American Society of Hematology annual meeting and exposition, San Diego, California. Blood; 118: Abstract 209を参照されたい)に由来するデータにも基づいて評価することができる。ある種の実施形態では、モデルベースの解析は、50mgのNOV1401のs.c.投与(60kgの対象)で、約2.7倍(投与前と比べて)の最大aPTT延長を、一過性に達成しうることを予測する。ある種の実施形態では、高用量は、この2.7倍の最大aPTT延長の持続時間を延伸することが予測される。
【0351】
対象は、身体検診、神経学的検診、バイタルサイン、心電図(ECG)、安全性についての検査室検査、および重篤なAE(SAE)を含む有害事象(AE)など、安全性パラメータおよび/または安全性評価項目について、研究を通して、投与後106日目を含む、それまでの期間においてモニタリングされる。
【0352】
抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401)の、aPTTに対する効果は、ベースラインからの相対変化に基づき評価する。抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401)の総血漿濃度を測定して、これらの対象における単回投与についてのPKを評価する。
【0353】
抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401)の免疫原性(IG)を評価するために、ADAについてのスクリーニングおよび確認を行う。
【0354】
遊離FXIおよび総FXIならびに遊離FXI凝固活性(FXI:C)および総FXI:Cを測定して、抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401)の、ターゲットエンゲージメントおよび標的に関連するPDパラメータに対する効果を評価する。
【0355】
D-二量体、プロトロンビン断片1.2(F1.2)、およびプロトロンビン-抗トロンビン複合体(TAT)について評価して、抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401)の、血栓形成パラメータに対する効果を決定する。
【0356】
抗FXI/FXIa抗体(例えば、NOV1401)の、他の凝固パラメータに対する効果について研究するためには、以下:対象における、プロトロンビン時間(PT)、トロンビン時間(TT)、ならびにトロンビン活性化可能な線溶インヒビター、フィブリノゲン、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、およびTGAなど、凝固についての探索的な検査室パラメータについて評価することができる。
【0357】
研究されるバイオマーカーは、D-二量体、FXI活性、PT/INR、TT、F1.2、フィブリノゲン、TGA、TAFI活性、TAT、PAI-1抗原、TFPi活性、tPA活性、およびvWF活性を含みうるがこれらに限定されない。
【0358】
ヒトにおける用量漸増研究2
NOV1401を、FIH(first-in-human)研究において、単回のs.c.投与後の健常対象における、その安全性/忍容性、薬物動態(PK)、および薬力学(PD)を特徴付けるように査定した。合計60例の対象を、対象を各々10例ずつ(8例のNOV1401:2例のプラセボ)とする、6つの連続コホートに登録し、NOV1401または対応するプラセボの、5mg~240mg(例えば、5mg、15mg、50mg、150mg、240mg)の皮下投与を施した。
【0359】
本研究では、NOV1401は、安全かつ十分に忍容され、有害事象(AE)の発生率は、用量群間で同等であり、プラセボとも同等であった。出血事象、過敏反応、または注射部位反応は、報告されなかった。曝露量は、s.c NOV1401の用量の増大と共に増大し、観察最大濃度(Cmax)の中央値は、7~21日目に生じ、終末相排出半減期(t1/2)の平均値は、20~28日間の範囲であった。aPTTの、用量および時間に依存する延長は、単回s.c.投与後の、NOV1401により生じ、150mgの投与は、29日目において、≧2倍の平均値aPTT延長を結果としてもたらし、240mgの投与は、aPTT延長の長期持続を結果としてもたらした。遊離FXIの、≧90%に及ぶ、ロバストかつ持続的な低減が、全ての患者において、150mgのNOV1401では、29日目まで、240mgでは、43日目まで観察された。240mgのNOV1401の投与は、病期2/3の肥満症を伴う対象では、≧43日間にわたり、他の対象では、≧57日間にわたる、≧80%のFXI阻害を結果としてもたらした。
【0360】
遊離FXIおよびFXI凝固活性のロバストな低減、ならびに適当なaPTTの延長は、適当な臨床用量による、NOV1401のs.c.投与後12~24時間以内に生じることが予測される。
【0361】
本研究の結果は、ヒトにおけるNOV1401の抗凝固活性を裏付け、FXIa活性を阻害する文脈で、抗凝固が治療的に有益な臨床状況における、NOV1401の使用を支持する。
【0362】
[実施例10]
AFを伴うヒトにおける研究1
ヒト研究を実行して、心房細動を伴う患者(AF)における、NOV1401の、PK、PD、安全性、および忍容性を評価する。組入れ基準は、≧2のCHA2DS2VASc危険性スコアと、以下の危険性因子:
(a)65歳またはこれを超える年齢;
(b)脳卒中または一過性虚血性発作の既往歴;
(c)既往の大規模出血または臨床的に問題となる出血;
(d)慢性腎疾患(CKD)の病期が3~4であること;
(e)単剤または二剤の抗血小板療法による処置;および
(f)血腫によるあざと関連する転倒または他の症状の履歴
のうちの、1つ、2つ、またはこれを超える危険性因子とを有することとして特徴付けられる、裏付けられた、出血の高危険性を伴うAF患者を含む。
【0363】
NOV1401の、毎月1回、90mg、120mg、150mg、180mg、210mg、および240mgのs.c.用量レベルを、3カ月間にわたり調べるものとする。
【0364】
対象は、研究を通して、身体検査、神経学的検査、バイタルサイン、心電図(ECG)、安全性検査値、および重篤なAE(SAE)を含む有害事象(AE)などの安全性パラメータおよび/または評価項目についてモニタリングされる。本研究の主要目的は、NOV1401の、毎月の投与後のトラフにおいて、≧80%のFXI阻害を達成する患者の比率について査定することである。
【0365】
NOV1401の、aPTTに対する効果を評価し、NOV1401の全血漿濃度を測定して、PKを評価する。
【0366】
遊離FXIおよび全FXIならびにFXIの凝固活性(FXI:C)を測定して、NOV1401の、標的との会合および標的関連PDパラメータに対する効果を評価する。
【0367】
D二量体、プロトロンビン断片1.2(F1.2)、およびプロトロンビン-抗トロンビン複合体(TAT)について評価して、NOV1401の、血栓形成パラメータに対する効果を決定する。
【0368】
NOV1401の、他の凝固パラメータに対する効果について研究するために、以下:対象における、プロトロンビン時間(PT)、トロンビン時間(TT)、およびTAFI(thrombin activatable fibrinolysis inhibitor)、フィブリノーゲン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、およびTGAなど、凝固についての探索的な検査パラメータについて評価することができる。
【0369】
研究されたバイオマーカーは、D二量体、FXI活性、PT/INR、TT、F1.2、フィブリノーゲン、TGA、TAFI活性、TAT、PAI-1抗原、TFPi活性、tPA活性、およびvWF活性を含みうるがこれらに限定されない。
【0370】
AFを伴うヒトにおける研究2
研究目的(purpose/objectives):本研究の目的は、脳卒中の、低度~中等度の危険性がある、心房細動を伴う患者における、NOV1401の薬物動態(PK)、薬力学(PD)、安全性、および忍容性について査定することである。試験は、NOV1401の3つの投与レジメンの、第XI因子阻害、凝固指数、血栓形成バイオマーカー、出血、ならびに主要な心血管(CV)事象および脳血管事象に対する効果について査定する。また、PK/PD関係、過敏反応、注射部位反応、および免疫原性についても評価する。NOACとの比較研究も、並行して行うことができる。
【0371】
主要目的:本研究の主要目的は、NOV1401の3つの用量レベルでの、毎月の投与後(91日目)のトラフにおいて、≧80%のFXI阻害を達成する患者の比率について査定することである。
【0372】
副次的目的:
1.NOV1401の3つの用量レベルでの、1回目および2回目の投与後(31日目および61日目)のトラフにおいて、≧80%のFXI阻害を達成する患者の比率について査定すること;
2.処置期間中における、NOV1401による、主要な出血事象、臨床的に問題となる副次的出血事象、および全出血の発生率について、NOACと比べて査定すること;
3.NOV1401の、有効性の指標としての、D二量体および他の血栓形成バイオマーカーに対する効果について、31日目、61日目、および91日目において、NOACと比較して評価すること;ならびに
4.NOV1401の安全性および忍容性について、NOACと比較して査定すること。
【0373】
研究デザイン:本研究は、無作為化、オープンラベル、盲検化評価項目査定、実薬対照、用量範囲発見研究である。1~2週間にわたるスクリーニング期間の後、患者を、下記の4つの処置群(低用量、中用量、または高用量のNOV1401またはNOAC):
1.NOV1401の、毎月1回、120mgの皮下投与;
2.NOV1401の、毎月1回、150mgの皮下投与;
3.NOV1401の、毎月1回、180mgの皮下投与;および
4.NOAC
のうちの1つへと、1:1:1:1の比で無作為化し、90日の処置期間中に追跡した。
【0374】
無作為化は、出身国および患者が、スクリーニング時において、抗凝固剤非処置であるのかどうか(非処置である/非処置ではない)により層別化する。患者は、91日目に、医師の指示により、NOACおよび/または他の標準治療へと移行し、170日目まで追跡される。
【0375】
集団:年齢が≧55~<85であり、心房細動を伴う、600例の男性患者および女性患者を、研究において無作為化する。
【0376】
鍵となる組入れ基準:
・≧55歳かつ<85歳の男性患者および女性患者;
・端点を含む50~130kgの間の体重;
・心電図により記録された心房細動または心房粗動;
・男性患者および女性患者についてのCHA2DS2-VASc危険性スコア≧2であり、抗凝固治療が正当である場合は、CHA2DS2VASc危険性スコアが1である男性患者も組み入れうること;および
・抗凝固剤非処置であるか、またはスクリーニングの8週間を超える以前において、推奨用量の新規経口抗凝固剤(NOAC)の安定的処置を施されていること。
【0377】
有効性の評価:
・31、61、および91日目における、遊離第XI因子の阻害;ならびに
・ベースライン~31、61、および91日目における、D二量体、プロトロンビン断片1.2、トロンビン-抗トロンビンIII複合体、およびフィブリノーゲンの変化。
【0378】
鍵となる安全性評価:
・主要な出血事象、臨床的に問題となる副次的出血事象、および全出血事象の確認;
・有害事象のモニタリング;
・主要な心血管事象および脳事象(脳卒中、一過性虚血性発作、全身性塞栓症、心筋梗塞、静脈血栓塞栓症、および心血管死)の発生;
・身体検査;
・血中の検査パラメータのモニタリング;
・ECG;
・過敏反応;
・注射部位反応;ならびに
・抗薬物抗体の発生。
【0379】
他の評価:第XI因子の凝固活性、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、および薬物動態。
【0380】
中間解析:4回の中間解析を計画する。中間解析は、約80、160、および300例の患者が、少なくとも1カ月間にわたる処置を完了し、全ての患者が、処置期間を完了し、91日目の来院時に回収されたデータが利用可能である場合に実施する。利用可能なPDパラメータ(例えば、関連する凝固パラメータ)、安全性データ、および忍容性データについて評価する。
【0381】
参照による組込み
本明細書で引用される全ての参考文献であって、特許、特許出願、論文、出版物、教科書などを含む参考文献、およびそれらにおいて引用された参考文献は、それらについて既に言及した程度において、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。
【0382】
同等物
前出の明細書は、当業者が、本発明を実施することを可能とするのに十分であると考えられる。前出の記載および実施例は、本発明のある種の好ましい実施形態について詳述し、本発明者らにより企図される最良の方式について記載する。しかし、前出の記載および実施例が、本文中でいかに詳述されているように見えるとしても、本発明は、多くの様式で実施することができ、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの任意の同等物に従うとみなされるべきであることが察知されるであろう。
本発明は、以下の態様を提供し得る。
[1]
脳卒中または血栓塞栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減する方法であって、末期腎疾患に罹患している対象へと、第XI因子(「FXI」)および/または活性化FXI(「FXIa」)の触媒ドメイン内に結合する抗体または抗原結合性断片を含む、有効量の医薬組成物を投与するステップを含む方法。
[2]
前記対象が、透析を施されている、上記[1]に記載の方法。
[3]
前記対象が、血液透析、または腹膜透析など、他の種類の透析を施されている、上記[1]または[2]に記載の方法。
[4]
前記対象が、心房細動に罹患している、上記[1]、[2]、または[3]に記載の方法。
[5]
前記対象が、非弁膜症性心房細動に罹患している、上記[4]に記載の方法。
[6]
脳卒中または血栓塞栓症の危険性を防止または低減する方法であって、心房細動および末期腎疾患に罹患しており、血液透析などの透析を受けている対象へと、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体または抗原結合性断片を含む、有効量の医薬組成物を投与するステップを含む方法。
[7]
前記対象が、非弁膜症性心房細動に罹患している、上記[6]に記載の方法。
[8]
カテーテル関連血栓症の危険性を防止、処置、または管理、または低減する方法であって、末期腎疾患に罹患しており、トンネル型カテーテルを挿入して、血液透析を開始した対象へと、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体または抗原結合性断片を含む、有効量の医薬組成物を投与するステップを含む方法。
[9]
前記対象が、裏付けられた、出血の高危険性を有する、上記項のいずれかに記載の方法。
[10]
脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を防止または低減する方法であって、心房細動に罹患している対象へと、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体または抗原結合性断片を含む、有効量の医薬組成物を投与するステップを含み、前記対象が、≧2のCHA
2
DS
2
VASc危険性スコアにより特徴付けられる、裏付けられた、出血の高危険性を有する、方法。
[11]
前記対象が、少なくとも55歳である、上記[1]から[10]のいずれかに記載の方法。
[12]
前記対象が、≧2のCHA
2
DS
2
VASc危険性スコアと、以下の危険性因子:
(a)65歳を超えること;
(b)脳卒中または一過性虚血性発作の既往歴;
(c)既往の大規模出血または臨床的に問題となる(clinically relevant)出血;
(d)慢性腎疾患(CKD)の病期が3~4であること;
(e)単剤または二剤の抗血小板療法による処置;および
(f)血腫によるあざと関連する転倒または他の症状の履歴
のうちの、1つ、2つ、またはこれを超える危険性因子とを有することとして特徴付けられる、裏付けられた、出血の高危険性を有する、上記[9]から[11]のいずれかに記載の方法。
[13]
前記抗体または断片が、配列番号9および29からなる群から選択されるVH、またはそれに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに配列番号19および39からなる群から選択されるVL、またはそれに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、上記[1]から[12]のいずれかに記載の方法。
[14]
前記抗体または断片が、配列番号9および29からなる群から選択されるVH、またはそれに対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに配列番号19および39からなる群から選択されるVL、またはそれに対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、上記[13]に記載の方法。
[15]
前記抗体または断片が、配列番号9および29からなる群から選択されるVH、またはそれに対して少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに配列番号19および39からなる群から選択されるVL、またはそれに対して少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、上記[13]に記載の方法。
[16]
前記抗体または断片が、配列番号9および29からなる群から選択される可変重鎖;ならびに配列番号19および39からなる群から選択される可変軽鎖配列を含む、上記[13]に記載の方法。
[17]
前記抗体または断片が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、上記項のいずれかに記載の方法。
[18]
前記抗体または断片が、(i)配列番号9の可変重鎖および配列番号19の可変軽鎖配列を含む抗体もしくは断片;(ii)配列番号29の可変重鎖および配列番号39の可変軽鎖配列を含む抗体もしくは断片;(iii)配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体;または(iv)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体である、上記[13]に記載の方法。
[19]
前記抗体または断片が、(i)配列番号46のアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域のCDR1;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR2;および配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR3;ならびに(ii)配列番号33のアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域のCDR1;配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR2;および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、上記[1]から[18]のいずれかに記載の方法。
[20]
前記抗体または断片が、(i)配列番号3および23からなる群から選択される重鎖可変領域のCDR1;配列番号4および24からなる群から選択されるCDR2;5および25からなる群から選択されるCDR3;ならびに(ii)配列番号13および33からなる群から選択される軽鎖可変領域のCDR1;配列番号14および34からなる群から選択されるCDR2;ならびに配列番号15および35からなる群から選択されるCDR3を含む、上記[1]から[18]のいずれかに記載の方法。
[21]
前記抗体または断片が、配列番号6および26からなる群から選択される重鎖可変領域のCDR1;配列番号7および27からなる群から選択されるCDR2;8および28からなる群から選択されるCDR3;配列番号16および36からなる群から選択される軽鎖可変領域のCDR1;配列番号17および37からなる群から選択されるCDR2;ならびに配列番号18および38からなる群から選択されるCDR3を含む、上記[1]から[18]のいずれかに記載の方法。
[22]
前記抗体または断片が、(i)配列番号3の重鎖可変領域のCDR1;配列番号4の重鎖可変領域のCDR2;配列番号5の重鎖可変領域のCDR3;配列番号13の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号14の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域のCDR3;
(ii)配列番号23の重鎖可変領域のCDR1;配列番号24の重鎖可変領域のCDR2;配列番号25の重鎖可変領域のCDR3;配列番号33の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号34の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号35の軽鎖可変領域のCDR3;
(iii)配列番号6の重鎖可変領域のCDR1;配列番号7の重鎖可変領域のCDR2;配列番号8の重鎖可変領域のCDR3;配列番号16の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号17の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号18の軽鎖可変領域のCDR3;または
(iv)配列番号26の重鎖可変領域のCDR1;配列番号27の重鎖可変領域のCDR2;配列番号28の重鎖可変領域のCDR3;配列番号36の軽鎖可変領域のCDR1;配列番号37の軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号38の軽鎖可変領域のCDR3を含む、上記[1]から[18]のいずれかに記載の方法。
[23]
前記抗体または断片が、配列番号9の可変重鎖および配列番号19の可変軽鎖配列を含む抗体、または配列番号29の可変重鎖および配列番号39の可変軽鎖配列を含む抗体と同じエピトープに結合する、上記[1]から[22]のいずれかに記載の方法。
[24]
前記抗体または断片が、ヒトFXIタンパク質および/またはヒトFXIaタンパク質への結合について、配列番号9の可変重鎖および配列番号19の可変軽鎖配列を含む基準抗体、または配列番号29の可変重鎖および配列番号39の可変軽鎖配列を含む基準抗体と競合し、前記抗体または断片が、以下:Pro410、Arg413、Leu415、Cys416、His431、Cys432、Tyr434、Gly435、Glu437、Tyr472、Lys473、Met474、Ala475、Glu476、Tyr521、Arg522、Lys523、Leu524、Arg525、Asp526、Lys527、Arg548、His552、Ser575、Ser594、Trp595、Gly596、Glu597、Arg602、Glu603、およびArg604から選択される、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、もしくは10、またはこれを超える残基に接触する、上記[1]から[22]のいずれかに記載の方法。
[25]
前記抗体または断片が、NOV1090、NOV1401、またはNOV1401の配列番号29の3つのVH CDRと配列番号39の3つのVL CDRとを含む抗体からなる群から選択される、上記[1]から[24]のいずれかに記載の方法。
[26]
末期腎疾患に罹患している対象であり、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片で処置されるか、またはこれを投与された対象における、出血または出血危険性を管理または低減する方法であって、それを必要とする対象へと、前記抗FXI/FXIa抗体に特異的に結合し、前記抗FXI/FXIa抗体の、FXIおよび/またはFXIaへの結合を遮断する抗イディオタイプ抗体またはその断片を投与するステップを含み、前記抗イディオタイプ抗体またはその断片が、前記抗FXI/FXIa抗体の抗凝固活性を反転させる、方法。
[27]
前記抗イディオタイプ抗体またはその断片を、前記対象へと、1回または数回(例えば、2回、3回、または4回)にわたり投与して、前記抗FXI/FXIa抗体の抗凝固効果を反転させる、上記[26]に記載の方法。
[28]
末期腎疾患に罹患している対象であり、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片で処置されるか、またはこれを投与された対象における、出血または出血危険性を管理または低減する方法であって、以下:(i)コロイド、晶質、ヒト血漿、もしくはアルブミンなどの血漿タンパク質を使用する体液の置きかえ;(ii)濃厚赤血球もしくは全血液による輸血;または(iii)新鮮凍結血漿(FFP)、プロトロンビン複合体濃縮物(PCC)、第VIII因子インヒビターなどの活性化PCC(APCC)、および/もしくは組換え活性化型第VII因子の投与のうちの1つにより、前記出血を管理するのに十分な時間にわたる、抗凝固効果の一時的な反転を含む方法。
[29]
前記対象が、血液透析などの透析、または体外式膜型人工肺を施されている、上記[26]から[28]のいずれかに記載の方法。
[30]
前記対象が、心房細動に罹患している、上記[26]から[28]のいずれかに記載の方法。
[31]
前記対象が、非弁膜症性心房細動に罹患している、上記[30]に記載の方法。
[32]
前記対象が、裏付けられた、出血の高危険性を有する、上記[30]または[31]に記載の方法。
[33]
前記抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片が、配列番号9および29からなる群から選択されるVH、またはそれに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに配列番号19および39からなる群から選択されるVL、またはそれに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、上記[26]から[32]のいずれかに記載の方法。
[34]
前記抗FXI/FXIa抗体または抗原結合性断片が、ヒトFXIタンパク質および/またはヒトFXIaタンパク質への結合について、配列番号9の可変重鎖および配列番号19の可変軽鎖配列を含む抗体、または配列番号29の可変重鎖および配列番号39の可変軽鎖配列を含む抗体と、濃度依存的に競合する、上記[26]から[32]のいずれかに記載の方法。
[35]
前記抗FXI/FXIa抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、上記[1]から[34]のいずれかに記載の方法。
[36]
前記抗FXI/FXIa抗体またはその抗原結合性断片が、前記対象へと、皮下投与される、上記[1]から[35]のいずれかに記載の方法。
[37]
末期腎疾患に罹患している対象における、脳卒中または血栓塞栓症の危険性の、防止、処置、または管理、または低減における使用のための、FXIおよび/もしくはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体もしくはその抗原結合性断片、または前記抗体もしくはその抗原結合性断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物であって、前記抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、抗体もしくはその抗原結合性断片、または前記抗体もしくはその抗原結合性断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
[38]
前記対象が、透析を施されている、上記[37]に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
[39]
前記対象が、血液透析、または腹膜透析など、他の種類の透析を施されている、上記[37]または[38]に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
[40]
前記対象が、非弁膜症性心房細動などの心房細動に罹患している、上記[37]から[39]のいずれかに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
[41]
心房細動および末期腎疾患に罹患しており、血液透析などの透析を受けている対象における、脳卒中または血栓塞栓症の危険性の、防止または低減における使用のための、FXIおよび/もしくはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体もしくはその抗原結合性断片、または前記抗体もしくはその抗原結合性断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物であって、前記抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、抗体もしくはその抗原結合性断片、または前記抗体もしくはその抗原結合性断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
[42]
前記対象が、非弁膜症性心房細動に罹患している、上記[37]から[41]のいずれかに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
[43]
末期腎疾患に罹患しており、カテーテルによる血液透析を開始した対象における、カテーテル関連血栓症の危険性の、防止、処置、または管理、または低減における使用のための、FXIおよび/もしくはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体もしくはその抗原結合性断片、または前記抗体もしくはその抗原結合性断片を含む医薬組成物であって、前記抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、抗体もしくはその抗原結合性断片、または前記抗体もしくはその抗原結合性断片を含む医薬組成物。
[44]
前記対象が、裏付けられた、出血の高危険性を有する、上記[37]から[43]のいずれかに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
[45]
心房細動に罹患している対象における、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性の、防止または低減における使用のための、FXIおよび/もしくはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体もしくはその抗原結合性断片、または前記抗体もしくはその抗原結合性断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物であって、前記対象が、≧2のCHA
2
DS
2
VASc危険性スコアにより特徴付けられる、裏付けられた、出血の高危険性を有し、前記抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、抗体もしくはその抗原結合性断片、または前記抗体もしくはその抗原結合性断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
[46]
前記対象が、少なくとも55歳である、上記[37]から[45]のいずれかに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
[47]
前記対象が、(i)≧2のCHA
2
DS
2
VASc危険性スコアと、(ii)以下の危険性因子:
(a)65歳を超えること;
(b)脳卒中または一過性虚血性発作の既往歴;
(c)既往の大規模出血または臨床的に問題となる出血;
(d)慢性腎疾患(CKD)の病期が3~4であること;
(e)単剤または二剤の抗血小板療法による処置;および
(f)血腫によるあざと関連する転倒または他の症状の履歴
のうちの、1つ、2つ、またはこれを超える危険性因子とを有することとして特徴付けられる、裏付けられた、出血の高危険性を有する、上記[37]から[46]のいずれかに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
[48]
前記抗体またはその抗原結合性断片が、前記対象へと、皮下投与される、上記[37]から[47]のいずれかに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
[49]
前記抗体またはその抗原結合性断片が、少なくとも90mg、120mg、150mg、180mg、または210mgの用量で投与される、上記[37]から[48]のいずれかに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
[50]
前記抗体またはその抗原結合性断片が、120mg、150mg、または180mgの用量で投与される、上記[37]から[48]のいずれかに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
[51]
前記抗体またはその抗原結合性断片が、毎月1回投与される、上記[37]から[50]のいずれかに記載の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物。
[52]
末期腎疾患に罹患している対象における、脳卒中または血栓塞栓症の危険性を、防止、処置、または管理、または低減するための医薬の製造のための、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体またはその抗原結合性断片の使用であって、前記抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、使用。
[53]
前記対象が、透析を施されている、上記[52]に記載の使用。
[54]
前記対象が、血液透析、または腹膜透析など、他の種類の透析を施されている、上記[52]または[53]に記載の使用。
[55]
前記対象が、非弁膜症性心房細動などの心房細動に罹患している、上記[52]から[54]のいずれかに記載の使用。
[56]
心房細動および末期腎疾患に罹患しており、血液透析などの透析を受けている対象における、脳卒中または血栓塞栓症の危険性を、防止または低減するための医薬の製造のための、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体またはその抗原結合性断片の使用であって、前記抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、使用。
[57]
前記対象が、非弁膜症性心房細動に罹患している、上記[52]から[56]のいずれかに記載の使用。
[58]
末期腎疾患に罹患しており、カテーテルによる血液透析を開始した対象における、カテーテル関連血栓症の危険性を、防止、処置、または管理、または低減するための医薬の製造のための、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体またはその抗原結合性断片の使用であって、前記抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、使用。
[59]
前記対象が、裏付けられた、出血の高危険性を有する、上記[52]から[58]のいずれかに記載の使用。
[60]
心房細動に罹患している対象における、脳卒中または全身性塞栓症などの血栓塞栓症の危険性を、防止または低減するための医薬の製造のための、FXIおよび/またはFXIaの触媒ドメイン内に結合する抗体またはその抗原結合性断片の使用であって、前記対象が、≧2のCHA
2
DS
2
VASc危険性スコアにより特徴付けられる、裏付けられた、出血の高危険性を有し、前記抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、使用。
[61]
前記対象が、少なくとも55歳である、上記[52]から[60]のいずれかに記載の使用。
[62]
前記対象が、(i)≧2のCHA
2
DS
2
VASc危険性スコアと、(ii)以下の危険性因子:
(a)65歳を超えること;
(b)脳卒中または一過性虚血性発作の既往歴;
(c)既往の大規模出血または臨床的に問題となる出血;
(d)慢性腎疾患(CKD)の病期が3~4であること;
(e)単剤または二剤の抗血小板療法による処置;および
(f)血腫によるあざと関連する転倒または他の症状の履歴
のうちの、1つ、2つ、またはこれを超える危険性因子とを有することとして特徴付けられる、裏付けられた、出血の高危険性を有する、上記[52]から[60]のいずれかに記載の使用。
[63]
前記医薬が、前記対象への皮下投与に適する、上記[52]から[62]のいずれかに記載の使用。
[64]
前記医薬が、前記対象への、少なくとも90mg、120mg、150mg、180mg、または210mgの用量における投与に適する、上記[52]から[63]のいずれかに記載の使用。
[65]
前記医薬が、前記対象への、120mg、150mg、または180mgの用量における投与に適する、上記[52]から[63]のいずれかに記載の使用。
[66]
前記医薬が、前記対象への、毎月1回の投与に適する、上記[52]から[65]のいずれかに記載の使用。
【配列表】