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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】ニトリルの接触水素化
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/61 20060101AFI20220725BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220725BHJP
【FI】
C07D213/61
C07B61/00 300
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019533402
(86)(22)【出願日】2017-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017083321
(87)【国際公開番号】W WO2018114810
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】16205582.6
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507203353
【氏名又は名称】バイエル・クロップサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ワーヘド・アハメド・モラディ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ヒムラー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ノルベルト・ミュラー
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0280230(US,A1)
【文献】特表2006-528613(JP,A)
【文献】特表2008-524308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 213/00
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]エタンアミンまたはその対応する塩を調製する方法(A)であって、
ステップ(A1)で、[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]アセトニトリルを、ラネーコバルト触媒の存在下で水素化することを特徴とする、方法(A)。
【請求項2】
ステップ(A1)で得た2-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]エタンアミンを、追加のステップ(A2)で、式(IV)
【化1】
(式中、
Halはフッ素、塩素または臭素であり;
qは1、2、3または4に等しい整数であり;
各置換基Yは、他と独立に、ハロゲン、C1~C4アルキルまたはC1~C4ハロアルキルとして選択される)
によるハロゲン化ベンゾイルと反応させて、下式:
【化2】
(式中、qは1、2、3または4に等しい整数であり;
各置換基Yは、他と独立に、ハロゲン、C1~C4アルキルまたはC1~C4ハロアルキルとして選択される)
による化合物にする、
請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属触媒、例えば、特にラネー触媒の存在下での、置換がピリジン環上に存在する置換2-メチルシアノピリジル誘導体、特に3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]アセトニトリル[=Py-CN]の対応する置換2-エチルアミノピリジン誘導体、特に2-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]エタンアミン[=Py-エタンアミン]またはその塩への新規な接触水素化に関する。
【背景技術】
【0002】
置換がピリジン環上に存在する置換2-メチルシアノピリジル誘導体、例えば、特に3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]アセトニトリルは、フルオピラム(N-[2-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジニル]エチル]-2-(トリフルオロメチル)ベンズアミド)、以下に示される式(Ia)による商業的に入手可能な殺真菌薬を調製するための重要な中間体である。
【化1】
【0003】
フルオピラムの製造は、国際公開第2004/16088号パンフレットに開示されている。
【0004】
一般に、ニトリルの接触水素化は、文献で周知であり、酸性、塩基性または中性条件下でも異なる触媒を用いて行うことができる(Nishimura「Handbook of Heterogeneous Catalytic Hydrogenation for Organic Synthesis」、254~285頁、John Wiley and Sons、ニューヨーク、2001)。ニトリルの所望の一級アミンへの接触水素化が、所望の一級アミンを汚染し、単離を極めて複雑で、高価で、非効率的にする有意な量の二級アミンおよび三級アミンの形成を通常伴うので、工業規模で使用するのに適していないことも知られている。
【0005】
プロトン性溶媒中、金属触媒の存在下、水素圧下での、置換2-メチルシアノピリジル誘導体の式(III)による置換2-エチルアミノピリジン誘導体またはその対応するアンモニウム塩への接触水素化が、国際公開第2004/016088号パンフレットおよび欧州特許第1674455号明細書に記載されている。国際公開第2004/016088号パンフレットおよび欧州特許第1674455号明細書は、酢酸であるプロトン性溶媒中、パラジウム炭触媒の存在下での、[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]アセトニトリル[Py-CN]の[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]エタンアミン[Py-エタンアミン]への接触還元を具体的に開示している。国際公開第2004/016088号パンフレットおよび欧州特許第1674455号明細書に記載されている方法は、[Py-CN]の水素化反応、続くN-アセチル中間体の[Py-エタンアミン]への加水分解の収率が低いという欠点を有する。この方法の別の問題は、最終生成物の最大60%に達し得る大量の副産物が形成することによる触媒失活の可能性である。副産物には、それだけに限らないが、特に2-[5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]エタンアミンの脱塩素化合物が含まれる。所望の生成物への低い選択性および異なる副産物の形成によって、式(III)による化合物の経済的な単離が工業規模で許容されないものとなっている。
【0006】
活性化金属触媒とも呼ばれるラネー触媒は、少なくとも1種の触媒活性金属と塩基で浸出させることができる少なくとも1種の金属の合金を含む。多くの場合、アルミニウムがアルカリ可溶性合金成分に使用されるが、亜鉛、ケイ素、モリブデンまたはクロムなどの他の金属も使用することができる。アルカリを合金に添加することによって、浸出性成分が溶出し、それにより触媒が活性化する。合金を浸出させるために使用される温度は、様々なサイズの孔を有する三次元網目状構造をもたらし、触媒に高い熱的および構造的安定性ならびに孔内に水素を吸収する能力を与える。ラネー触媒の例は、NaOHなどの強塩基の存在下で活性化されるニッケル合金またはコバルト-アルミニウム合金に基づくラネーニッケル触媒またはラネーコバルト触媒である。さらに、ラネー触媒は、担持触媒よりも製造が容易であるため、経済的に興味深く、より容易に入手可能である。
【0007】
アシル化剤の存在下で、ニトリルの対応するアミンへの水素化を改善することが先行技術で知られている。例えば、欧州特許第1674455号明細書は、水素圧下、溶媒中、アシル化剤および触媒の存在下で2-メチルシアノピリジン誘導体の反応物を接触還元してそれぞれの2-エチルアミノピリジル誘導体を得るステップを含む置換2-エチルアミノピリジン誘導体の2段階合成を開示している。
【0008】
接触水素化ステップは、過剰の4当量の無水酢酸(Ac2O)の存在下で行われる。中間体の加水分解後、所望の生成物が有意な量の副産物と共に形成した。さらに、この方法は、いかなる後処理手順も、高価なパラジウム触媒のリサイクル法も開示していない。さらに、反応混合物が大量の塩酸を含むので、極めて腐食性である。溶媒メタノールが塩酸と反応して、毒性であり、分離する必要があるガスクロロメタンを形成する。結果として、記載される方法は、経済的、環境的および安全性の見地から不利である。
【0009】
国際公開第2004/041210号パンフレットは、細菌感染症の治療に有用な化合物に関する。この中に、BH3・THFおよびHClの添加の下THF中で、置換ピリジニルアセトニトリル化合物を反応させて対応する置換ピリジニルアミン化合物にし、引き続いてNaOHを添加し、EtOAcで抽出するステップを含む、置換ピリジニルカルバメートの調製が言及されている。しかしながら、この中で、金属触媒の存在、特にパラジウム触媒の存在は言及されていない。
【0010】
国際公開第2008/125839号パンフレットは、特定のピリミジン化合物およびその医薬使用に関する。この中で、THF中ボランジメチルスルフィド錯体の添加、およびその後のHCLの添加の下、THF中での対応するピリジン-2-イルアセトニトリルからの2-(6-メチル-ピリジン-2-イル)エタンアミンの調製が言及されている。しかしながら、この中で、金属触媒の存在、特にパラジウム触媒の存在は言及されていない。
【0011】
国際公開第2011/047156号パンフレットは、セピアプテリンレダクターゼの低分子複素環式阻害剤およびその医学的使用に関する。この中で、BH3・DMSの添加の下、THF中での塩素置換ピリジニルアセトニトリル化合物の対応する塩素置換ピリジニルエタンアミン化合物への反応が言及されている。しかしながら、この中で、酸の添加も金属触媒の存在、特にパラジウム触媒の存在も言及されていない。
【0012】
Skerljら(Journal of Organic Chemistry、第67巻、第4号、2002、1407~1410頁)は、環窒素が位置選択的に官能化されているアザマクロサイクル(azamacrocyle)の合成に関する。この中で、官能化ブロモピリジンとの有機亜鉛パラジウム触媒カップリングが行われている。しかしながら、この中では、ボラン還元、続くいわゆるNegishiカップリングのみが行われ、接触水素化は行われていない。いずれにせよ、この中に記載されるボラン還元反応は、望ましくない反応生成物を利用し、もたらし、高価であるので、大規模製造に適していない。
【0013】
記載されている先行技術の方法のいずれも大規模製造に適していない。対照的に、以下で詳細に記載される本発明の新規な方法は、不要な毒性副産物の形成が有意に減少し、特に、不要な脱ハロゲン副産物の形成が減少し、所望の反応生成物の収率が増加した経済的な方法を提供する。
【0014】
X置換基の少なくとも1個がハロゲンである以下に開示される式(II)によるニトリルの化学選択的接触水素化が一般的に問題となる。このような化合物は、接触水素化中に容易に脱ハロゲン化されるので、望ましくない脱ハロゲン副産物を形成する。
【0015】
少なくとも1個のX置換基がハロゲン、好ましくは塩素である式(II)によるそれぞれの2-メチルシアノピリジル誘導体は、以下の式(II’)によって定義することができる。接触水素化工程中の脱ハロゲン化の下では、以下に定義される式(II’’)の対応する脱ハロゲン化合物が形成され得る。
【0016】
【表1】
【0017】
接触水素化中にハロゲン含有化合物が脱ハロゲン化する傾向は、塩素含有化合物よりも臭素含有化合物で高く、一置換化合物よりも二置換以上の化合物で高い(Nishimura「Handbook of Heterogeneous Catalytic Hydrogenation for Organic Synthesis」、623~637頁、John Wiley and Sons、ニューヨーク、2001参照)。芳香族化合物の水素化脱ハロゲンを減少させるための異なる添加剤を用いた多数の方法が開発されている。これらの添加剤のほとんどは、低い化学選択性、望ましくない副産物、費用および毒性などの欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】国際公開第2004/016088号パンフレット
【文献】欧州特許第1674455号明細書
【文献】国際公開第2004/041210号パンフレット
【文献】国際公開第2008/125839号パンフレット
【文献】国際公開第2011/047156号パンフレット
【非特許文献】
【0019】
【文献】Nishimura「Handbook of Heterogeneous Catalytic Hydrogenation for Organic Synthesis」、254~285頁、John Wiley and Sons、ニューヨーク、2001
【文献】Skerljら(Journal of Organic Chemistry、第67巻、第4号、2002、1407~1410頁)
【文献】Nishimura「Handbook of Heterogeneous Catalytic Hydrogenation for Organic Synthesis」、623~637頁、John Wiley and Sons、ニューヨーク、2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
そのため、以下に定義される、式(II)の置換2-メチルシアノピリジル誘導体から式(III)の置換2-エチルアミノピリジン誘導体を調製するための、工業規模に適した新規で、より安全で、より経済的および環境的に実行可能な方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明
目的は、
ステップ(A1)で、式(II)
【化2】
(式中、pは1、2、3または4に等しい整数であり;
各置換基Xは、他と独立に、ハロゲン、C1~C4アルキルまたはC1~C4ハロアルキルとして選択される)
による置換2-メチルシアノピリジル誘導体を、ラネー金属触媒の存在下で水素化することを特徴とする、
式(III)の置換2-エチルアミノピリジン誘導体およびその対応する塩
【化3】
(式中、pは1、2、3または4に等しい整数であり;
各置換基Xは、他と独立に、ハロゲン、C1~C4アルキルまたはC1~C4ハロアルキルとして選択される)
を調製する方法(A)によって本発明により達成された。
【0022】
方法(A)が、式(III)による単離生成物を式(IV)
【化4】
(式中、
Halはフッ素、塩素または臭素であり;
qは1、2、3または4に等しい整数であり;
各置換基Yは、他と独立に、ハロゲン、C1~C4アルキルまたはC1~C4ハロアルキルとして選択される)
によるハロゲン化ベンゾイルと反応させて、式(I)
【化5】
(式中、pおよびXは上に定義されており;
qは1、2、3または4に等しい整数であり;
各置換基Yは、他と独立に、ハロゲン、C1~C4アルキルまたはC1~C4ハロアルキルとして選択される)
による化合物にする、ステップ(A1)の後の追加のステップ(A2)を含んでもよい。
【0023】
pが好ましくは1または2である。
【0024】
pが極めて好ましくは2である。
【0025】
各場合で、Xが、好ましくは他と独立に、フッ素、塩素、臭素、C1~C2アルキルまたは互いに独立にフッ素、塩素から選択される1~5個のハロゲン原子を有するC1~C2ハロアルキルである。
【0026】
各場合で、Xが、より好ましくは他と独立に、フッ素、塩素、メチル、エチルまたは互いに独立にフッ素、塩素から選択される1~5個のハロゲン原子を有するC1~C2ハロアルキルである。
【0027】
各場合で、Xが、特に好ましくは他と独立に、フッ素、塩素、またはジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチルである。
【0028】
各場合で、Xが、極めて特に好ましくは他と独立に、塩素またはトリフルオロメチルである。
【0029】
2-ピリジル部分がXによって置換されている位置に関して、2-ピリジル部分は、好ましくは3位および/または5位でXによって置換されている。好ましくは、2-ピリジル部分が、3位および5位でXによって置換されている。
【0030】
qが好ましくは1または2である。
【0031】
qが極めて好ましくは1である。
【0032】
Yが、好ましくは他と独立に、フッ素、塩素、臭素、C1~C2アルキルまたは互いに独立にフッ素、塩素から選択される1~5個のハロゲン原子を有するC1~C2ハロアルキルである。
【0033】
Yが、より好ましくは他と独立に、フッ素、塩素、メチル、エチルまたは互いに独立にフッ素、塩素から選択される1~5個のハロゲン原子を有するC1~C2ハロアルキルである。
【0034】
Yが、特に好ましくは他と独立に、フッ素、塩素、またはジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチルである。
【0035】
Yが、極めて特に好ましくは、トリフルオロメチルである。
【0036】
Yが、極めて特に好ましくは、塩素である。
【0037】
フェニル部分がYによって置換されている位置に関して、フェニル部分は、好ましくは2位および/または6位でYによって置換されている。好ましくは、フェニル部分が、2位でYによって置換されている。
【0038】
極めて特に好ましくは、式(II)による化合物が3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]アセトニトリルであり、式(III)による化合物が2-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]エタンアミンである。極めて好ましくは、式(IV)による化合物が2-トリフルオロメチル-ベンゾイルクロリドである。
【0039】
極めて好ましくは、式(I)による化合物が式(Ia)に定義されるフルオピラムである。
【0040】
一実施形態では、式(III)による化合物が遊離アミンまたはその塩として存在し得る。
【0041】
式(III)による化合物の対応する塩が、好ましくはリン酸塩、ギ酸塩または酢酸塩である。
【0042】
一実施形態では、ステップ(A2)が塩基の存在下で行われる。
【0043】
別の実施形態では、ステップ(A2)が、塩基が存在することなく減圧下で行われる。
【0044】
別の実施形態では、ステップ(A2)が、減圧下および塩基の存在下で行われる。
【0045】
本発明による方法、例えば、特にステップ(A2)で使用され得る有用な塩基は、無機または有機塩基、例えば、Na2CO3、NaHCO3、K2CO3、KHCO3、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Mg(OH)2、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミンである。
【0046】
以下の塩基が、ステップ(A2)にとって特に好ましい:Na2CO3、NaHCO3、K2CO3、KHCO3、NaOH、KOH、Ca(OH)2。より好ましいのはNaOH、KOH、Ca(OH)2である。最も好ましいのはNaOH、KOHである。好ましくは、ステップ(A6)で、反応溶液のpH値のpH4~14、好ましくはpH5~13までの調整が達成されるまで、本明細書に定義される塩基を添加する。
【0047】
金属触媒は、ラネー触媒の群から選択される任意の水素化触媒である。一実施形態では、金属触媒が、ラネーニッケルおよびラネーコバルトの群から選択されるラネー触媒である。
【0048】
一実施形態では、金属触媒が任意のラネーコバルト触媒である。
【0049】
ラネー触媒は、様々な形態で、例えば粉末、固定床触媒として、中空球、押出物、顆粒、繊維状錠剤またはシェル活性化錠剤(shell-activated tablet)として存在してもよい。
【0050】
一実施形態では、ラネー触媒が0.1~2g/mlの密度を有する。
【0051】
本発明により使用される触媒の触媒合金は、好ましくは最大20~80重量%の1種または複数の触媒活性金属、好ましくはコバルトおよびニッケルと、最大20~80重量%の1種または複数のアルカリ浸出性金属、好ましくはアルミニウムとで構成される急冷合金または徐冷合金を触媒合金として使用することができる。急冷は、例えば、10~105K/秒の速度での冷却を意味すると理解される。冷却媒体は、種々の気体または液体、例えば水であり得る。徐冷は、より低い冷却速度を用いる方法を意味すると理解される。
【0052】
他の金属をドーピングしたラネー触媒を使用してもよい。ドーピング金属はしばしば促進剤とも呼ばれる。ラネー触媒のドーピングは、例えば、文献、米国特許第4153578号明細書、ドイツ特許第2101856号明細書、ドイツ特許第2100373号明細書またはドイツ特許第2053799号明細書に記載されている。ドーピングのための好ましい元素は、周期系の1A、2A、3B~7B、8、1B、2Bおよび3A族の元素ならびにゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモンおよびビスマスである。クロム、マンガン、鉄、バナジウム、タンタル、チタン、タングステン、モリブデン、レニウムおよび/または白金族の金属が特に好ましい。ラネー触媒中の促進剤の量は、好ましくは0~20重量%であり得る。促進剤が合金成分として既に含有されていてもよいし、または後で、特に活性化後にのみ添加することもできる。
【0053】
一実施形態では、直径0.05~20mmおよびシェル厚0.05~7mmの中空触媒が使用され得る。触媒シェルは不透過性であり得る、または80%以上の空隙率を有することができる。
【0054】
触媒は、企業BASF、Acros、Evonikなどの商業的供給源から入手可能である。
【0055】
触媒を任意の形態、例えば、乾燥または湿潤(水湿潤)で使用することができる。好ましくは、触媒を数回使用する。より好ましくは、触媒を3回以上使用する。最も好ましくは、触媒を1~10回使用する。触媒を回分式、半回分式または固定床式水素化反応ならびに連続水素化反応工程で使用することができる。より好ましくは、触媒を回分式または固定床式水素化反応で使用することができる。
【0056】
本発明による方法では、触媒を、式(II)によるシアノピリジル誘導体の量に関して約0.01mol%~約50mol%触媒の濃度で使用する。触媒を好ましくは約0.1~約50mol%の濃度で使用し、より好ましくは、触媒を約0.5mol%~約3mol%の濃度で使用する。
【0057】
理論によって拘束されないが、本発明の方法では、ラネー触媒によって、不要な脱ハロゲン化された、特に脱塩素化された副産物の形成の減少が可能になる。一方では、これにより毒性が減少し、他方では所望の反応生成物の収率が増強される。
【0058】
本発明の方法でラネー触媒を使用することによって、脱ハロゲン、特に脱塩素副産物の減少が達成され、国際公開第2004/016088号パンフレットおよび欧州特許第1674455号明細書で先行技術に記載される反応と比較して、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、さらにより好ましくは15%以下、特により好ましくは10%以下、さらに特により好ましくは5%以下、最も好ましくは3%以下、最も特に好ましくは1%以下への減少が達成される。
【0059】
ラネーコバルト触媒は、様々な形態で、例えば粉末、固定床触媒として、中空球、押出物、顆粒、繊維状錠剤またはシェル活性化錠剤として存在してもよい。
【0060】
一実施形態では、ラネーコバルト触媒が、0.1~2g/mlの密度を有する。
【0061】
本発明により使用される触媒の触媒合金は、好ましくは最大20~80重量%の1種または複数の触媒活性金属、好ましくはコバルトおよびニッケルと、最大20~80重量%の1種または複数のアルカリ浸出性金属、好ましくはアルミニウムとで構成される急冷合金または徐冷合金を触媒合金として使用することができる。急冷は、例えば、10~105K/秒の速度での冷却を意味すると理解される。冷却媒体は、種々の気体または液体、例えば水であり得る。徐冷は、より低い冷却速度を用いる方法を意味すると理解される。
【0062】
他の金属をドーピングしたラネーコバルト触媒を使用してもよい。ドーピング金属はしばしば促進剤とも呼ばれる。ラネーコバルト触媒のドーピングは、例えば、文献、米国特許第4153578号明細書、ドイツ特許第2101856号明細書、ドイツ特許第2100373号明細書またはドイツ特許第2053799号明細書に記載されている。ドーピングのための好ましい元素は、周期系の1A、2A、3B~7B、8、1B、2Bおよび3A族の元素ならびにゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモンおよびビスマスである。クロム、マンガン、鉄、バナジウム、タンタル、チタン、タングステン、モリブデン、レニウムおよび/または白金族の金属が特に好ましい。ラネーコバルト触媒中の促進剤の量は、好ましくは0~20重量%であり得る。促進剤が合金成分として既に含有されていてもよいし、または後で、特に活性化後にのみ添加することもできる。
【0063】
一実施形態では、直径0.05~20mmおよびシェル厚0.05~7mmの中空触媒が使用され得る。触媒シェルは不透過性であり得る、または80%以上の空隙率を有することができる。
【0064】
触媒は、企業BASF、Acros、Evonikなどの商業的供給源から入手可能である。
【0065】
触媒を任意の形態、例えば、乾燥または湿潤(水湿潤)で使用することができる。好ましくは、触媒を数回使用する。より好ましくは、触媒を3回以上使用する。最も好ましくは、触媒を1~10回使用する。触媒を回分式、半回分式または固定床式水素化反応ならびに連続水素化反応工程で使用することができる。より好ましくは、触媒を回分式または固定床式水素化反応で使用することができる。
【0066】
本発明による方法では、触媒を、式(II)によるシアノピリジル誘導体の量に関して約0.01mol%~約50mol%触媒の濃度で使用する。触媒を好ましくは約0.1~約50mol%の濃度で使用し、より好ましくは、触媒を約0.5mol%~約3mol%の濃度で使用する。
【0067】
理論によって拘束されないが、本発明の方法では、ラネーコバルト触媒によって、不要な脱ハロゲン化された、特に脱塩素化された副産物の形成の減少が可能になる。一方では、これにより毒性が減少し、他方では所望の反応生成物の収率が増強される。
【0068】
本発明の方法でラネーコバルト触媒を使用することによって、脱ハロゲン、特に脱塩素副産物の減少が達成され、国際公開第2004/016088号パンフレットおよび欧州特許第1674455号明細書で先行技術に記載される反応と比較して、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、さらにより好ましくは15%以下、特により好ましくは10%以下、さらに特により好ましくは5%以下、最も好ましくは3%以下、最も特に好ましくは1%以下への減少が達成される。
【0069】
ラネーニッケル触媒は、様々な形態で、例えば粉末、固定床触媒として、中空球、押出物、顆粒、繊維状錠剤またはシェル活性化錠剤として存在してもよい。
【0070】
一実施形態では、ラネーニッケル触媒が、0.1~2g/mlの密度を有する。
【0071】
本発明により使用される触媒の触媒合金は、好ましくは最大20~80重量%の1種または複数の触媒活性金属、好ましくはコバルトおよびニッケルと、最大20~80重量%の1種または複数のアルカリ浸出性金属、好ましくはアルミニウムとで構成される急冷合金または徐冷合金を触媒合金として使用することができる。急冷は、例えば、10~105K/秒の速度での冷却を意味すると理解される。冷却媒体は、種々の気体または液体、例えば水であり得る。徐冷は、より低い冷却速度を用いる方法を意味すると理解される。
【0072】
他の金属をドーピングしたラネーニッケル触媒を使用してもよい。ドーピング金属はしばしば促進剤とも呼ばれる。ラネーニッケル触媒のドーピングは、例えば、文献、米国特許第4153578号明細書、ドイツ特許第2101856号明細書、ドイツ特許第2100373号明細書またはドイツ特許第2053799号明細書に記載されている。ドーピングのための好ましい元素は、周期系の1A、2A、3B~7B、8、1B、2Bおよび3A族の元素ならびにゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモンおよびビスマスである。クロム、マンガン、鉄、バナジウム、タンタル、チタン、タングステン、モリブデン、レニウムおよび/または白金族の金属が特に好ましい。ラネーニッケル触媒中の促進剤の量は、好ましくは0~20重量%であり得る。促進剤が合金成分として既に含有されていてもよいし、または後で、特に活性化後にのみ添加することもできる。
【0073】
一実施形態では、直径0.05~20mmおよびシェル厚0.05~7mmの中空触媒が使用され得る。触媒シェルは不透過性であり得る、または80%以上の空隙率を有することができる。
【0074】
触媒は、企業BASF、Acros、Evonikなどの商業的供給源から入手可能である。
【0075】
触媒を任意の形態、例えば、乾燥または湿潤(水湿潤)で使用することができる。好ましくは、触媒を数回使用する。より好ましくは、触媒を3回以上使用する。最も好ましくは、触媒を1~10回使用する。触媒を回分式、半回分式または固定床式水素化反応ならびに連続水素化反応工程で使用することができる。より好ましくは、触媒を回分式または固定床式水素化反応で使用することができる。
【0076】
本発明による方法では、触媒を、式(II)によるシアノピリジル誘導体の量に関して約0.01mol%~約50mol%触媒の濃度で使用する。触媒を好ましくは約0.1~約50mol%の濃度で使用し、より好ましくは、触媒を約0.5mol%~約3mol%の濃度で使用する。
【0077】
理論によって拘束されないが、本発明の方法では、ラネーニッケル触媒によって、不要な脱ハロゲン化された、特に脱塩素化された副産物の形成の減少が可能になる。一方では、これにより毒性が減少し、他方では所望の反応生成物の収率が増強される。
【0078】
本発明の方法でラネーニッケル触媒を使用することによって、脱ハロゲン、特に脱塩素副産物の減少が達成され、国際公開第2004/016088号パンフレットおよび欧州特許第1674455号明細書で先行技術に記載される反応と比較して、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、さらにより好ましくは15%以下、特により好ましくは10%以下、さらに特により好ましくは5%以下、最も好ましくは3%以下、最も特に好ましくは1%以下への減少が達成される。
【0079】
水素化反応は、任意の適当な反応条件で行うことができる。一般に、水素化反応を、回分式、半回分式または固定床式条件下ならびに連続水素化反応工程で行う。
【0080】
一実施形態では、水素化反応を、回分式または固定床式条件下で行う。
【0081】
その中で、水素化反応を、回分式、半回分式または連続スラリー反応のいずれかで行う。半回分式水素化は、ニトリルを触媒の溶媒中(またはなし)スラリーに供給することを伴う。この様式では、ニトリルと触媒の比が回分式工程と比べて低い。連続様式における回分式または半回分式工程と対照的に、ニトリルを添加するのと同じ速度で生成物が取り出される。
【0082】
圧力
本発明による接触水素化を、好ましくは高圧(すなわち、最大約600bar)下、好ましくは水素ガス雰囲気下オートクレーブで、好ましくは半回分式水素化工程で行う。窒素またはアルゴンなどの不活性ガスを供給することによって、(追加の)圧力上昇を引き起こすことができる。本発明による水素化を、好ましくは約0~約300barの範囲の水素圧で、より好ましくは約5~約200barの範囲の水素圧で行う。水素圧の好ましい範囲はまた、約0.5~約50barである。
【0083】
一実施形態では、本発明による接触水素化を、好ましくは高圧(すなわち、最大約200bar)下で行う。
【0084】
本発明による水素圧はまた、工程中に変化し得る。
【0085】
必要に応じて、発熱反応からの熱を消散する適当な手段を適用することができる。
【0086】
温度
本発明による接触水素化を、好ましくは約-20℃~約200℃の範囲の温度、より好ましくは約0℃~約100℃の範囲、最も好ましくは約5~70℃の範囲の温度で行う。
【0087】
溶媒
接触水素化を溶媒を用いないで行うこともできる。しかしながら、溶媒(希釈剤)の存在下で本発明による方法を行うことが一般的に有利である。溶媒を、有利には反応混合物が工程全体にわたって効率的に撹拌可能なままである量で使用する。有利には、使用するニトリル基準で、1~50倍の量の溶媒、好ましくは2~40倍の量の溶媒、より好ましくは2~30倍の量の溶媒を使用する。
【0088】
本発明による水素化方法の実施に有用な溶媒には、水および反応条件下で不活性な全ての有機溶媒が含まれ、使用する溶媒の種類は、反応手順、さらに特に使用する触媒の種類および/または水素源(気体水素の導入もしくは原位置での生成)に依存する。溶媒はまた、本発明によると、純粋な溶媒の混合物を意味すると理解される。
【0089】
本発明により適した溶媒は、水、酸(例えば、酢酸、無水酢酸)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-プロパノール、ブタノール、tert.ブタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-アミルアルコール、ベンジルアルコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-ブトキシエタノール、シクロヘキサノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、2-エトキシエタノール、エタノールアミン、エチルエングリコール、グリセロール、ヘキサノール、ヘキシレングリコール、イソアミルアルコール、イソブタノール、2-メトキシエタノール、1-オクタノール、ペンタノール、プロピレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール);エーテル(例えば、エチルプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、n-ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、シクロヘキシルメチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、ジフェニルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、メチルシクロペンチルエーテル、ジオキサン、ジクロロジエチルエーテル、石油エーテル、リグロインならびにエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドのポリエーテル);ケトン(例えば、アセトン、シクロヘキサノン、3-ペンタノン)、アミン(例えば、トリメチル-、トリエチル-、トリプロピル-およびトリブチルアミン、tert-アミルメチルエーテル(TAME)、N-メチルモルホリン)、脂肪族、環状脂肪族または芳香族炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン)ならびにフッ素および塩素原子によって置換されていてもよい技術的な等級の炭化水素(例えば、ジクロロメタン、フルオロベンゼン、クロロベンゼンまたはジクロロベンゼン)、例えば、40℃~250℃の範囲の沸点を有する成分を有するホワイトスピリット、シメン、70℃~190℃の沸点範囲内の石油留分、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、エステル(例えば、酢酸アミル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸2-メトキシエチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、プロピレングリコール酢酸メチルエーテル、炭酸エステル(例えば、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル);N,N-ジメチルアセトイミド、N,N-ジメチルホルムアミド、2-ピロリドンおよびN-メチルピロリドンである。
【0090】
本発明による方法では、アルコール、エステルまたはエーテルを溶媒として使用することが好ましい。メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-プロパノール、ブタノール、tert.ブタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-アミルアルコール、ベンジルアルコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-ブトキシエタノール、シクロヘキサノール、ジエチレングリコール、メチル-tert-ブチルエーテル、アミルアセテート、ブチルアセテート、エチルアセテート、イソブチルアセテート、イソプロピルアセテート、2-メトキシエチルアセテート、メチルアセテート、プロピルアセテート、プロパグリコールメチルエーテルアセテート(prop glycol methyl ether acetate)が好ましい。
【0091】
ステップ(A1)で使用され得る溶媒は同じであっても異なっていてもよく、各場合で独立に、溶媒の混合物、特に水を含む混合物として、または1成分のみからなる溶媒として使用することができる。
【0092】
実施例
以下の実施例は、本発明を限定することなくさらに説明する。
【0093】
方法(A)に関する実施例:
実施例1:ラネーコバルト触媒による水素化
水を含むラネーコバルト触媒(Actimet Cobalt(BASF))を水で3回およびtert-ブチルメチルエーテル(MTBE)でさらに3回洗浄する。
【0094】
オートクレーブに、30%(w/w)の洗浄したラネーコバルト触媒およびMTBE 340gに溶解した[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]アセトニトリル66gを装入する。MTBEさらに50gを添加する。次いで、約3時間後に水素取り込みが止まるまで、内容物を25℃で20barの高水素圧で撹拌する。次いで、撹拌をさらに1時間続ける。反応混合物をオートクレーブから濾過によって取り出す。取り出した反応混合物をHPLCによって分析してアミン含量を定量化する。
【0095】
生成物2-[3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]エタンアミンが、第1の実施例で76.59%の収率、および第2の実施例で74.74%の収率で得られた。