(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】創傷処置への使用にとって改善された特性を有する繊維材料
(51)【国際特許分類】
D06M 15/53 20060101AFI20220725BHJP
A61F 13/00 20060101ALI20220725BHJP
A61F 13/02 20060101ALI20220725BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20220725BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20220725BHJP
A61L 15/20 20060101ALI20220725BHJP
A61L 15/22 20060101ALI20220725BHJP
A61L 15/24 20060101ALI20220725BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20220725BHJP
A61L 15/46 20060101ALI20220725BHJP
A61L 15/60 20060101ALI20220725BHJP
D04H 1/4309 20120101ALI20220725BHJP
D06M 13/148 20060101ALI20220725BHJP
D06M 13/17 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
D06M15/53
A61F13/00 301A
A61F13/00 301M
A61F13/00 301Z
A61F13/02 345
A61F13/15 142
A61F13/53 300
A61L15/20
A61L15/22
A61L15/24
A61L15/26
A61L15/46
A61L15/60
D04H1/4309
D06M13/148
D06M13/17
(21)【出願番号】P 2019538528
(86)(22)【出願日】2018-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2018051064
(87)【国際公開番号】W WO2018137979
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-11-25
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226709
【氏名又は名称】メンリッケ・ヘルス・ケア・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】エリック,カールソン
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-143653(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0274415(US,A1)
【文献】特表平08-500270(JP,A)
【文献】特表平09-511029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 15/53
A61F 13/00
A61F 13/02
A61F 13/15
A61F 13/53
A61L 15/20
A61L 15/22
A61L 15/24
A61L 15/26
A61L 15/46
A61L 15/60
D04H 1/4309
D06M 13/148
D06M 13/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料であって:
・非イオン性不織繊維の基材、
・水素結合を形成することができる少なくとも1つの基を含む薬剤である、少なくとも1つの追加の構成要素
を含み、
前記非イオン性繊維材料が、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)および/もしくはポリプロピレングリコール官能基を有するポリウレタンポリマー、ならびに/あるいはそのコポリマーを含むか、またはそれからなり、
前記繊維材料中の前記薬剤の量が、複合材料の総体的な重量に対して相対的に5%w/w~35%w/wである、繊維材料。
【請求項2】
前記基材が、非イオン性不織繊維のウェブである、請求項1に記載の繊維材料。
【請求項3】
非イオン性繊維材料が、架橋PVAを含むか、またはそれからなる、請求項
1又は2に記載の繊維材料。
【請求項4】
水素結合を形成することができる少なくとも1つの基を含む薬剤が、次の基の少なくとも1つを含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の繊維材料:ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、スルフヒドリル基、および/またはグリコシド連結部、ペプチド結合を包含するがこれに限定されない水素ドナー連結部。
【請求項5】
さらに少なくとも1つの抗微生物薬剤を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の繊維材料。
【請求項6】
さらに、少なくとも1つの吸収性材料を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の繊維材料。
【請求項7】
水素結合を形成することができる少なくとも1つの基を含む少なくとも1つの薬剤によって処理されていない点以外は同一の繊維材料と比較して、本発明に従う繊維材料について、繊維材料の濡れ引張強度が少なくとも5%増大している、請求項1~
6のいずれか1項に記載の繊維材料。
【請求項8】
次のステップを含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の繊維材料を作るためのプロセス:
・不織基材として存在する少なくとも1つの非イオン性繊維材料を提供すること;
・前記少なくとも1つの非イオン性繊維材料を、水素結合を形成することができる少なくとも1つの基を含む少なくとも1つの薬剤と接触させること。
【請求項9】
さらに次のステップを含む、請求項
8に記載のプロセス:
・互いと接触させられている非イオン性繊維材料および薬剤を乾燥すること。
【請求項10】
水素結合を形成することができる少なくとも1つの基を含み、かつ少なくとも1つの非イオン性繊維材料と接触させられる少なくとも1つの薬剤が、液体中に溶解または分布している化合物として提供される、請求項
8または請求項
9に記載のプロセス。
【請求項11】
家庭製品、化粧品、衛生用品、女性用衛生用品、おむつ、吸水性パッド、創傷処置、または創傷ケア処置における基材/担体材料としての、請求項1~
7のいずれか1項に記載の、または請求項
8~
10のいずれか1項に記載の通り製造される、繊維材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された特性、特に改善された機械的特性を有する繊維材料に関する。とりわけ、それらの改善は、不織繊維の基材、好ましくは不織繊維のウェブを、水素結合を形成することができる少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの基を有する薬剤と一緒に提供することによって達成される。とりわけ、もたらされる繊維材料は、かかる薬剤によって処理されていない繊維材料と比べて改善された引張強度、特に濡れ引張強度を有する。
【0002】
本発明に従う繊維材料は種々の分野において、特に担体材料、家庭製品、衛生製品などとして有用であり得るが、それらの繊維材料は創傷処置に特に有用である。
【0003】
本発明はそれらの材料を製造するための方法にもまた関する。
【背景技術】
【0004】
繊維材料、特に液体(流体)を吸収および保持することができる繊維材料は、担体基材として家庭製品、衛生製品、および創傷処置を包含する種々の適用に有用である。創傷処置の領域は繊維材料にとって特に難問を呈する。なぜなら、充分な流体管理のみならず、特に適用、使用、および取り外しの間の繊維を含有する製品総体のインテグリティもまた要求されるからである。繊維材料は、まさに創傷ケア製品総体のように、無菌であり、体液と接触して用いることが安全であり、理想的には患者にとって装着することが快適でなければならない。
【0005】
特許文献1は高性能繊維材料および関連する製造の方法を開示している。さらに、文書は、かかる繊維または繊維質構造を含有する担体材料、衛生製品、化粧品製品、および包帯または創傷ドレッシングとしての、かかる繊維または繊維質構造の使用を開示している。
【0006】
繊維材料の特性を改変することに基づいていない創傷ケア製品を得るための代替的アプローチはGeliperm(ガイストリッヒファーマAG)によって実現されており、これは2つの異なるインターレースポリマー、すなわち寒天ゲルおよびポリアクリルアミドからなるハイドロゲルシートである。水和シート形態は約96%の水、1%の寒天、および3%のポリアクリルアミドを含有する。一方、乾燥シート形態は、シートが速やかに水を吸収し得るように35%グリセロールが追加されるという点で水和形態とは異なる(非特許文献1参照)。
【0007】
これらの適用に用いられる繊維材料の特性を改善または改変するために、所与の繊維材料を物理的および/または化学的に処理/改変するための種々のアプローチが従来技術によって追求されてきた。従来技術に従うと、それらの改変は主として繊維材料の取り扱い特性を改善することに焦点を合わせている。
【0008】
例えば、特許文献2はセルロース水溶液から得られる再生セルロース製品を開示しており、それらは含浸または柔軟化の目的のためにグリセロール誘導体によって処理されている。特に、1.5%グリセロール-モノメチルエーテルと1.5%トリアセチンとを含有する溶液が再生セルロース製品の柔軟化の目的のために記載されており、減じた吸湿挙動を有する柔軟で弾性のセルロース箔をもたらす。
【0009】
すでに、創傷ケアにおいては、改善された創傷滲出液管理という理由のために、流体を吸収および保持することができる繊維材料が、他の考えられる基材材料よりも一般的に好ましい。流体との接触をするときにゲルを形成することができる、すなわち流体を取り込み得る繊維材料が特に好ましい。
【0010】
しかしながら、繊維材料、ゆえにそれと関連する創傷ケア製品の濡れおよび/または膨潤(ゲル化)は、創傷ケア製品、特にその繊維材料構成要素の安定性/インテグリティの点で問題に至り得る。例えば、創傷ケア製品総体は層/フィルム間においておよび/または層/フィルム内においてどちらかで剥離し得る。そのため、インテグリティ損失、性能の低下、および/またはドレッシングの残留物が創傷に留まる恐れを避けるために、理想的には、繊維材料、特にゲル形成性繊維材料はドレッシング交換を包含する使用の間にそれらのインテグリティを維持するべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】US2013/0323195
【文献】US2273636
【非特許文献】
【0012】
【文献】"Surgical Dessings and Wound Management", by StephanThomas, Medetec, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
先行技術の上述および他の欠点または叶えられていないニーズに鑑みて、本発明の1つの目的は特に湿潤または濡れ条件下における改善された安定性/インテグリティを有する繊維材料を提供することである。
【0014】
本発明の根底にある一般的なコンセプトは、繊維材料のインテグリティ/安定性、特に下により詳細に記載されている繊維材料の濡れ引張強度は、前記繊維材料が水素結合を形成することができる少なくとも1つの基、好ましくは水素結合を形成することができる少なくとも2つの基を含む薬剤と接触させられるときに改善され得、有利に改変されている繊維材料をもたらすという認識に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様に従うと、これらおよび他の目的は:
・非イオン性不織繊維の基材、好ましくは非イオン性不織繊維のウェブ、
・水素結合を形成することができる少なくとも1つの基、好ましくは水素結合を形成することができる少なくとも2つの基を含む薬剤である、少なくとも1つの追加の構成要素、
を含む繊維材料によって達成される。
【0016】
好ましくは、繊維材料は流体を吸収および保持することができる。
【0017】
本発明に従い、かつ特に請求項においては、用語「含む(comprising)」および「含む(comprise(s))」は他の要素またはステップを排除しない。不定冠詞「a」または「an」の使用は複数の要素またはステップを排除しない。特に、1つよりも多くの(非イオン性のまたは別様の)種類の繊維が繊維材料中に存在し得、かつ水素結合を形成することができる1つよりも多くの薬剤が本発明の材料中に存在し得る。繊維材料でも水素結合を形成することができる薬剤でもない他の好適な材料が本発明に従う繊維材料中に存在し得る。
【0018】
ある種の手段が相異なる従属的な実施形態または請求項に記載されているという単なる事実は、それらの手段の組み合わせが有利に用いられ得ないということを意味するわけではない。
【0019】
本発明に従うと、繊維の基材は、(x-y)平面において、それに対する垂直な方向(z方向)よりも大きい広がりを有する繊維のいずれかの配列である。基材は、水素結合を形成することができる少なくとも1つの基、好ましくは水素結合を形成することができる少なくとも2つの基を含む少なくとも1つの薬剤と接触させられることができる。好ましくは、繊維基材は20~500g/m2、好ましくは50~350g/m2の面積重量(「坪量」)を有する。
【0020】
本発明に従い、かつ当業者の広く認められている理解にもまた従うと、「不織」は、(織物について従来なされる通り)織りまたは編みではなく、繊維またはフィラメントを機械的、熱的、または化学的に絡合することによって結合されたシートまたはウェブ構造として定義される。不織布はISO規格9092およびCEN-EN29092によって定義される。典型的には、不織基材またはウェブは、別々の繊維からまたは溶融プラスチックもしくはプラスチックフィルムから直接的に作られる平らな多孔質シートである。
【0021】
本発明に従い、かつ用語の広く認められている定義にもまた従うと、特徴「水素結合を形成することができる少なくとも1つの基」の「水素結合」は、そこに結合形成の証拠がある、XがHよりも電気陰性である分子または分子断片X-Hからの水素原子と同じまたは異なる分子内の原子または原子の群との間の引力的相互作用に関すると理解されるべきである(Pure Appl. Chem., Vol. 83, No. 8, pages 1637-1641, 2011の「水素結合」のIUPAC定義を参照)。
【0022】
当業者に公知の通り、かつ上述のIUPAC参照にまとめられている通り、水素結合を形成することができる基は次の公認の実験的基準(E1)~(E6)の1つまたはいずれかのセットによって直ちに同定され得る:
・(E1)水素結合X-H・・・Y-Zの形成に関与する力は、静電的起源のもの、HとYとの間の部分的な共有結合形成に至るドナーとアクセプターとの間の電荷移動から生起するもの、および分散に起因するものを包含する。
・(E2)原子XおよびHは互いに共有結合され、X-H結合は分極し、H・・・Y結合強度はXの電気陰性度の増大によって増大する。
・(E3)X-H・・・Y角度は通常は直線的(180°)であり、角度が180°に近いほど、水素結合は強くかつH・・・Y距離は短い。
・(E4)X-H結合の長さは通常は水素結合形成によって増大し、赤外X-H伸縮振動数のレッドシフトとX-H伸縮振動の赤外吸収断面の増大とに至る。X-H・・・YのX-H結合の伸長が多大であるほど、H・・・Y結合は強い。同時に、H・・・Y結合の形成に関連する新たな振動モードが発生する。
・(E5)X-H・・・Y-Z水素結合は、典型的には、核オーバーハウザー増強、およびXとYとの間の水素結合スピン-スピンカップリングによって、X-HのHの顕著なプロトン脱遮蔽を包含する特徴的なNMRシグネチャーに至る。
・(E6)水素結合が実験的に検出されるためには、水素結合の形成のギブズエネルギーは系の熱エネルギーよりも多大であるべきである。
【0023】
本発明のある実施形態において、水素結合を形成することができる少なくとも1つの基、好ましくは水素結合を形成することができる少なくとも2つの基を含む薬剤は、次の基の少なくとも1つを含む:ヒドロキシル基(OH)、カルボキシル基(COOH)、アミノ基(NH)、スルフヒドリル基(SH)、および/またはグリコシド連結部、ペプチド結合を包含するがこれに限定されない水素ドナー連結部。
【0024】
好ましくは、それらの基はヒドロキシル基、アミノ基、またはスルフヒドリル基である。
【0025】
本発明に従うと、用語「繊維」は一般的に糸または糸様構造を言うと理解されるべきであり、一般的には、その長さに比して細いフレキシブルな構造に関すると理解される。繊維は小さい直径を有し、対応する結合プロセスによって互いに組み上げられて、繊維質構造または繊維材料を製造し得る。本発明に従うと、繊維材料を作り上げている繊維の平均直径は好ましくは50nm~1000μm、好ましくは1μm~100μm、さらに好ましくは5~25μmの範囲である。
【0026】
本発明に従うと、繊維材料は少なくとも1つの非イオン性繊維材料を含む。本発明に従うと、「非イオン性」繊維は、pH値が7において実質的に水溶液中でイオン化しないであろう繊維を示す。
【0027】
本発明の一部実施形態において、繊維材料中の薬剤の量は、複合材料の総体的な重量に対して相対的に1%w/w~40%w/w、好ましくは5%w/w~35%w/w、さらに好ましくは15%w/w~25%w/wである。
【0028】
本発明の一部実施形態において、繊維材料の濡れ引張強度(下で定義されている通り)は、本発明に従う繊維材料では、少なくとも1つの薬剤によっても処理されていない点以外は同一の繊維材料と比較して少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも15%増大している。
【0029】
本発明の一部実施形態において、繊維材料は抗微生物薬剤を含み、特に繊維材料は:
・非イオン性不織繊維の基材、好ましくは非イオン性不織繊維のウェブ、
・水素結合を形成することができる少なくとも1つの基、好ましくは水素結合を形成することができる少なくとも2つの基を含む薬剤である、少なくとも1つの追加の構成要素、
・少なくとも1つの抗微生物薬剤、
を含む。
【0030】
本発明に従うと、抗微生物薬剤は、水素結合を形成することができる少なくとも1つの、好ましくは2つの基を有する薬剤と一緒に適用され得るか、または最終製品中に存在し得る。そのため、繊維材料総体は濡れ状態におけるインテグリティの点で均一に改善されるのみならず、特に創傷処置にもまた適する。
【0031】
本発明の一部実施形態において、抗微生物薬剤は銀を含む。本発明の一部実施形態において、銀は金属銀である。本発明の一部実施形態において、銀は銀塩である。本発明の一部実施形態において、銀塩は硫酸銀、塩化銀、硝酸銀、スルファジアジン銀、炭酸銀、リン酸銀、乳酸銀、臭化銀、酢酸銀、クエン酸銀、CMC銀、酸化銀である。本発明の一部実施形態において、銀塩は硫酸銀である。本発明の一部実施形態において、抗微生物薬剤はモノグアニドまたはビグアニドを含む。本発明の一部実施形態において、モノグアニドまたはビグアニドはクロルヘキシジン二グルコン酸塩、クロルヘキシジン二酢酸塩、クロルヘキシジン二塩酸塩、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)もしくはその塩、またはポリヘキサメチレンモノグアニド(PHMG)もしくはその塩である。本発明の一部実施形態において、ビグアニドはPHMBまたはその塩である。本発明の一部実施形態において、抗微生物薬剤は第四級アンモニウム化合物を含む。本発明の一部実施形態において、第四級アンモニウム化合物は塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、またはポリDADMACである。本発明の一部実施形態において、抗微生物薬剤はトリクロサン、次亜塩素酸ナトリウム、銅、過酸化水素、キシリトール、または蜂蜜を含む。
【0032】
本発明の一部実施形態において、繊維材料はさらに抗微生物薬剤と1つ以上のポリマーとを含む抗微生物コーティングを含み、1つ以上のポリマーはセルロース系ポリマー、中性ポリ(メタ)アクリレートエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン、およびその組み合わせからなる群から選択される。
【0033】
本発明の一部実施形態において、繊維材料はポリビニルアルコールを含み、好ましくはポリビニルアルコールは架橋される。
【0034】
本発明の一部実施形態において、抗微生物コーティング中の1つ以上のポリマーは、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、およびエチルセルロース(EC)からなる群から選択されるセルロース系ポリマー、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)である。本発明の一部実施形態において、抗微生物コーティング中の1つ以上のポリマーはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)である。
【0035】
本発明の一部実施形態において、抗微生物コーティング中の抗微生物薬剤は銀、好ましくは酸化銀または銀塩であるか、またはそれを含む。
【0036】
本発明の一部実施形態において、繊維材料は、さらに、少なくとも1つの吸収性材料、好ましくは高吸水性材料、さらに好ましくは高吸水性ポリマーを、さらに好ましくは粒子の形態で含む。
【0037】
かかる(追加の)吸収性材料の存在は繊維材料の流体取り込みおよび管理可能性をさらにコントロールすることを許し、これは創傷処置に特に有利である。
【0038】
本発明の第2の態様に従うと、上で議論されている目的および他の目的は、次のステップを含む繊維材料を作るためのプロセスによって達成される:
・不織基材中に、好ましくは不織ウェブ中に存在する少なくとも1つの非イオン性繊維材料を提供すること;
・前記少なくとも1つの非イオン性繊維材料を、水素結合を形成することができる少なくとも1つの基、好ましくは水素結合を形成することができる少なくとも2つの基を含む少なくとも1つの薬剤と接触させること。
【0039】
本発明の一部実施形態において、前記プロセスは次のステップをもまた含み、これは上の「接触させる」ステップ後に実施される:
・互いと接触させられている非イオン性繊維材料および薬剤を乾燥すること。
【0040】
好ましくは、少なくとも1つの非イオン性繊維材料と接触させられる前記薬剤は、特に溶液、スラリー、エマルション、または同類の形態で液体中に溶解または分布している化合物として提供される。本発明に従うと、薬剤(化合物)が溶媒中に溶質として存在する場合が特に好ましい。
【0041】
しかしながら、固体形態に包含する溶媒なしの薬剤(化合物)の直接的適用もまた本発明の範囲内である。
【0042】
溶媒の点で制約または限定は存在しないが、ただし、溶媒は薬剤を溶解する能力がなければならず、溶媒は適用の間または後に非イオン性繊維材料の不可逆的膨潤を確かに引き起こす。かかる溶媒の例はエタノール、イソプロパノール、およびメタノールであるが、これに限定されない。エタノールは好ましい溶媒である。
【0043】
本発明に従うと、用語「接触させる」は、固体材料を固体または流体であり得る別の材料と物理的に接触させることに関する当業者に公知の方法に一般的に関すると理解されるべきである。かかる「接触させる」の例は:(繊維)材料上に(噴霧)堆積、カレンダリング、コーティング、ディップ処理などによって固体もしくは粘稠物質を適用することまたは流体媒体を適用および/もしくは噴霧すること、流体媒体によって(繊維)材料をディップ処理すること、流体媒体による(繊維)材料の飽和/ソーキング、あるいは流体媒体によって(繊維)材料のスラリー、懸濁液、または混合物を形成することを包含するが、これに限定されない。例えば、流体媒体は薬剤と上で議論されている溶媒の少なくとも1つとの混合物(例えば懸濁液または溶液)であり得る。
【0044】
本発明に従うと、繊維材料が少なくとも1つの薬剤によって含浸されることおよび/または少なくとも1つの薬剤が繊維材料上に適用されることが特に好ましい。
【0045】
本発明の1つの実施形態において、少なくとも1つの薬剤と接触させられている繊維材料は、純粋な液体(すなわち流体媒体)の圧力よりも低い流体媒体の分圧を有する雰囲気に暴露され、その結果、流体媒体が少なくとも部分的に蒸発する。かかる低圧は、例えば真空を包含する低圧を適用することによって達成され得る。
【0046】
本発明に従うと、「乾燥」ステップは周囲条件下において(すなわち大気圧かつ室温において)好ましくは6~12時間に渡って行われ得、または高温においておよび/または減圧下において行われ得る。
【0047】
本発明に従う繊維材料は公知の繊維材料と比べて改善された特性を見せる。本発明に従う繊維材料は、次に議論されているあり得る改善の全てを示さずとも、または全てを同じ程度もしくは完全な程度まで示さずともよいが、一般的には、次の改善が本発明に従う材料に見出される。
【0048】
すでに上で触れられている通り、濡れ状態の繊維材料のインテグリティは特に重要である。この「インテグリティ」または「安定性」を測定するための1つのやり方は、かかる繊維材料の濡れ引張強度(下でより詳細に定義されている通り)を測定することである。
【0049】
発明者は、(非イオン性繊維材料に追加の)少なくとも1つの追加の構成要素(これは、水素結合を形成することができる少なくとも1つの基、好ましくは水素結合を形成することができる少なくとも2つの基を含む薬剤であり、非イオン性繊維材料と薬剤とは水素結合によって連結される)を含む本発明に従う繊維材料が、前記薬剤を含まないおよび/または前記薬剤と接触させられていない点以外は同一の繊維材料と比べて、増大した濡れ引張強度を有するということを見出した。
【0050】
理論によって拘束されることを望まないが、発明者は、水素結合を形成することができる少なくとも1つの、好ましくは2つの基(単数または複数)を含む少なくとも1つの薬剤と非イオン性繊維材料が接触させられた(それによって処理された)非イオン性繊維材料の改善された(機械的)特性は、繊維材料を作り上げているポリマーの主鎖と薬剤の親水性基との間の水素結合の形成を原因とすると信ずる。このメカニズムは、改善された特性、例えば改善された濡れ強度、ゲル化速度、および製品があまりにすぐに乾き切らないようにすることに寄与すると信じられる。この効果は、グリセロールとの水素結合を形成することによってPVA主鎖を安定化することについて模式的に図解されている(
図1参照)。
【0051】
用語「濡れ引張強度」は、「自由膨潤吸収能力法(Free swell absorptive capacity method)」EN13726-1に従う溶液Aの最大量を吸収した濡れ状態において(23±2℃における10±1分の吸収時間による)EN29073-3:1992(下で規定される通りの補正を有する)によって測定される、前記引張強度試験において試験片が破断する前に耐えるであろう単位幅あたりの最大引張力として理解されるべきである。
【0052】
本発明に従って「濡れ引張強度」を測定する方法は、EN29073-3:1992と比べて次の様式で改変されている:i)材料はEN13726-1に従って(23±2℃における10±1分の吸収時間によって、かつ試験片を切り出す前に)ソーキングされる;ii)試験片は
図2に従って切り出され、20mmの幅を与える;iii)50mmのゲージ長さ(すなわち、EN29073-3:1992の7.2項に従うつかみ部間の距離)が用いられる;iv)方法は23±2℃の温度かつ50±5%rhにおいて実施される。これらの偏差は全てEN29073-3:1992の許される変更である(例えばEN29073-3:1992の6および7項の注釈を参照)。
【0053】
溶液Aは、EN13726-1に定義されている通り塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムの溶液からなり、142mmolのナトリウムイオンと2.5mmolのカルシウムイオンとを塩化物塩として含有する。この溶液はヒト血清または創傷滲出液と同等のイオン組成を有する。前記溶液はメスフラスコの「1L」マークまで8.298gの塩化ナトリウムおよび0.368gの塩化カルシウム二水和物を脱イオン水中に溶解することによって調製される。
【0054】
別の態様に従うと、ゲル形成性繊維材料、すなわち流体に暴露されたときに膨張する繊維材料を含む製品は、例えば創傷滲出液の流れが低下したことでそれらが乾き切ると、(より)硬くなり得る。特にドレッシング交換の間に、これは患者に不快感および/または痛みを引き起こし得る。発明者は、(非イオン性繊維材料に追加の)少なくとも1つの追加の構成要素(これは、水素結合を形成することができる少なくとも1つの基、好ましくは水素結合を形成することができる少なくとも2つの基を含む薬剤であり、非イオン性繊維材料と薬剤とは水素結合によって連結される)を含む本発明に従う繊維材料は、硬くなりにくく、そのため、前記薬剤を含まないおよび/または前記薬剤と接触させられていない点以外は同一の繊維材料と比較して「より柔軟」であり、患者にとってより快適であると見なされるということを見出した。
【0055】
本発明の一部実施形態においては、効率的に滲出液を吸収するために、非イオン性繊維材料は少なくとも部分的に親水性であるべきである。出発材料が(十分に)親水性ではない場合において、特に繊維材料がその巨視的挙動の点でもまた十分に速やかに水を吸収しないように見える場合には、いくつかの実施形態において、繊維材料は例えばプラズマ処理によって(より)親水性であるように処理される。ある種の状況下において、この処理はその有効性を経時的に失い得る。発明者は、(非イオン性繊維材料に追加の)少なくとも1つの追加の構成要素(これは、水素結合を形成することができる少なくとも1つの基、好ましくは水素結合を形成することができる少なくとも2つの基を含む薬剤である)を含む本発明に従う繊維材料は、前記薬剤を含まないおよび/または前記薬剤と接触させられていない点以外は同一の繊維材料と比較して使用時間の間に親水性特性を失いにくいということを見出した。
【0056】
本発明に従うと、用語「親水性」は、IUPAC: Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed. (the "GoldBook"), compiled by A. D. McNaught and A. Wilkinson. Blackwell ScientificPublications, Oxford (1997), ISBN 0-9678550-9-8に定義されている通り、分子実体または置換基が極性溶媒、特に水と、または他の極性基と相互作用する能力を一般的に言うと理解されるべきである。
【0057】
従来技術から公知の親水性繊維材料を含む創傷ドレッシングは、即座にはゲルを形成しないか、または所望のほどに速くはゲルを形成しないことがある。これは一般的には不利とみなされる。発明者は、水素結合を形成することができる少なくとも1つの、好ましくは2つの基を含む薬剤を含まないおよび/または前記薬剤と接触させられていない点以外は同一の繊維材料と比較して、本発明に従う繊維材料が改善されたゲル形成特性を有するということを見出した。
【0058】
本発明は主として創傷処置/創傷ケアの文脈において例示および図解されるが、本発明の繊維材料は増大した強度およびインテグリティの繊維材料が有利である全ての使用にとって一般的に好適であり、基材/担体材料としての使用、家庭製品への使用、および化粧品または衛生用品、例えば女性用衛生用品、おむつ、吸水性パッドなどへの使用を包含するが、これに限定されない。
【0059】
そのため、第3の態様において、本発明は、家庭製品への使用、化粧品または衛生用品、特に女性用衛生用品、おむつ、吸水性パッドへの使用、または創傷処置への使用のための基材/担体材料としての、本発明に従うまたは本発明に従って製造される繊維材料に関する。
【0060】
創傷ケア/創傷処置への使用は、開放または閉鎖創傷のケア/処置を包含し、例えば、なかでも慢性の創傷、急性の創傷、および術後創傷、例えば閉鎖切開創または瘢痕処置を包含する(が、これに限定されない)。
【0061】
本発明の繊維材料は液体を吸収および保持することができ、吸収可能性を要求するいずれかの使用に「スタンドアローン」[すなわち、別の(高)吸水剤の存在なしの]材料として用いられ得る。しかしながら、本発明の一部実施形態において、繊維材料は、好ましくは粒子の形態で、追加の吸収性材料、特に高吸水性材料、特に高吸水性ポリマーと一緒に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】水素結合によって連結されたポリマーを示す模式的図である。
【
図2】濡れ引張強度の測定に用いる試験片の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
限定なしに、好適な非イオン性繊維材料は、ポリビニルアルコール、多糖、ならびにポリエチレングリコール(PEG)および/またはポリプロピレングリコールを含むポリマー、例えばPEG官能基を有するポリウレタン、例えばWO2013/041620に開示されているポリマー繊維であるか、またはそれを包含する。
【0064】
いくつかの実施形態において、非イオン性繊維材料はポリビニルアルコールであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態において、非イオン性繊維材料は、ポリビニルアルコールを含む複数の繊維、例えばUS2013/0323195および/またはUS2013/0274415に開示されている複数の繊維を含み、繊維材料に関するそれらの内容はここに参照によって組み込まれる。
【0065】
いくつかの実施形態において、非イオン性繊維材料は、ポリエチレングリコール(PEG)および/またはポリプロピレングリコール官能基を有するポリウレタンポリマー、例えばWO2013/041620に開示されているポリマー繊維を含む。
【0066】
本発明の好ましい実施形態において、前記非イオン性繊維材料はポリビニルアルコールであるか、またはそれを含む。少なくとも1つのポリビニルアルコールコポリマーもまた用いられ得る。ポリビニルアルコールコポリマーの場合においては、例えばポリエチレンビニルアルコールが用いられ得る。
【0067】
ポリビニルアルコールコポリマーが非イオン性繊維材料として用いられる場合には、繊維の特性は適宜ターゲット型の様式で調整され得る。それゆえに、例えばポリエチレンビニルアルコールの使用の場合には、OH基の数は減じられ得る。しかしながら、他の官能基もまた共重合によって繊維中に導入され得る。それゆえに、ポリビニルアルコールコポリマーはさらなる非イオン性繊維材料を利用可能にする。
【0068】
ポリエチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコールスチレン、ポリビニルアルコール酢酸ビニル、ポリビニルアルコールビニルピロリドン、ポリビニルアルコールエチレングリコール、および/またはポリビニルアルコール、特に好ましくはポリエチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール酢酸ビニル、ポリビニルアルコールビニルピロリドン、ポリビニルアルコールビニルアミン、ポリビニルアルコールアクリル酸、ポリビニルアルコールアクリルアミド、ポリビニルアルコールエチレングリコール、および/またはポリビニルアルコール、特に好ましくはポリビニルアルコールであり、全て本発明に従う非イオン性繊維材料として用いられ得る。ブロックコポリマーおよび/またはグラフトコポリマーならびに/またはブロックおよびグラフトコポリマー、ランダムまたは交互系、ならびにそれらのいずれかの混合物は非イオン性繊維材料として用いられる。
【0069】
ポリビニルアルコールコポリマーは無置換または部分置換形態で用いられ得る。部分置換の場合には、-O(C=O)-Rまたは-ORによるOH基の部分置換が包含され、Rは各ケースにおいて互いに独立してC1-C4アルキル基を表す。この場合において、C1-C4アルキル基はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、1-ブチル、2-ブチル、またはtert-ブチルであると理解される。
【0070】
さらにその上、非イオン性繊維材料はポリマーブレンドとして形成され得る。この場合において、ポリマーブレンドはメルトまたは溶液からの少なくとも2つのポリマーの物理的混合物であると理解される。
【0071】
かかるポリマーブレンドを形成するためには、さらなるポリマーが用いられ得、例えばアルギン酸、セルロースエーテル、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースエステル、例えば酢酸セルロース、酸化セルロース、細菌性セルロース、セルロースカーボネート、ゼラチン、コラーゲン、澱粉、ヒアルロン酸、ペクチン、寒天、ポリアクリレート、ポリビニルアミン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、またはさらなる非ゲル化性ポリマー、例えばポリオレフィン、セルロース、セルロース誘導体、再生セルロース、例えばビスコース、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、キトサン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリエステルアミド、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、またはポリエステルである。
【0072】
いくつかの実施形態において、非イオン性繊維材料は、架橋されているポリマー、特に架橋ポリビニルアルコールを含む。本明細書において、用語「架橋」は、化学結合、特に共有結合もしくはイオン結合によって、または熱可塑性エラストマーなどにおける物理的架橋によって相互連結されている複数ポリマー分子を含む材料を記述するために用いられる。
【0073】
いくつかの実施形態において、非イオン性繊維材料は熱または化学的処理によって、特に熱によって架橋される。架橋された非イオン性繊維材料は、液体を吸収することによって、膨潤した一体的なゲルを形成することができる。それによって、かかる繊維材料を含む創傷ドレッシング基材は創傷から一体的に取り外され得る。(すでに)架橋されている非イオン性繊維材料を用いることは本発明に従っている。この点で、水素結合を形成することができる1つの、好ましくは2つの基(単数または複数)を含む少なくとも1つの薬剤と非イオン性繊維材料を接触させることは、非イオン性繊維材料の(さらなる)架橋をもたらすと信じられる(下の議論を参照)。
【0074】
総体的に、本発明の一部実施形態において、非イオン性繊維材料は、ポリビニルアルコール(PVA)、好ましくは架橋PVA、多糖、ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)および/もしくはポリプロピレングリコール官能基を有するポリウレタンポリマー、ならびに/あるいはそのコポリマーを含むか、またはそれからなる。
【0075】
いくつかの実施形態において、本発明に従う繊維材料、特にEN13726-1に従う溶液Aの最大量を吸収した濡れ状態における(23±2℃の温度において、かつ10±1分の吸収時間による)本発明に従う繊維材料を含む創傷ドレッシング基材は、EN29073-3:1992(上で規定されている通りの改変を有する)によって測定されると少なくとも0.2N/2cmの濡れ引張強度を有する。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明に従う繊維材料、特に上で定義されている濡れ状態における創傷ドレッシング基材は、少なくとも0.2N/2cm、好ましくは少なくとも0.6N/2cm、または少なくとも0.8N/2cm、または少なくとも1.0N/2cm、または少なくとも1.5N/2cm、または少なくとも2N/2cm、さらに好ましくは少なくとも2.5N/2cm、または少なくとも3N/2cm、例えば少なくとも4N/2cm、例えば少なくとも5N/2cm、または少なくとも6N/2cm、または少なくとも7N/2cm、または少なくとも8N/2cm、または少なくとも9N/2cm、または少なくとも10N/2cm、さらに好ましくは少なくとも15N/2cm、例えば少なくとも20N/2cm、または少なくとも25N/2cmの濡れ引張強度(上で定義されている通り)を有する。濡れたときの創傷ドレッシングのインテグリティ損失が避けられるべき事態である創傷処置において、濡れ引張強度のかかる「最小」要件を叶えることは特に重要である。
【0077】
いくつかの実施形態において、本発明に従う繊維材料、特に上で定義されている濡れ状態における創傷ドレッシング基材は、0.2~15N/2cmの濡れ引張強度(上で定義されている通り)を有する。いくつかの実施形態において、本発明に従う繊維材料、特に濡れ状態における創傷ドレッシング基材は、1~10N/2cmの濡れ引張強度(上で定義されている通り)を有する。いくつかの実施形態において、本発明に従う繊維材料、特に上で定義されている濡れ状態における創傷ドレッシング基材は、2~10N/2cmの濡れ引張強度(上で定義されている通り)を有する。
【0078】
本明細書において用いられる用語「濡れ状態における創傷ドレッシング基材」は、EN13726-1:2002(23±2℃の温度において、かつ10±1分の吸収時間による)に従って最大吸収能力まで濡らされている(またはソーキングされている)創傷ドレッシング基材として理解されるべきである。それゆえに、本明細書において与えられる引張強度は、かかる濡れた創傷ドレッシング基材および/または本発明に従う繊維材料について測定される引張強度を言う。
【0079】
いくつかの実施形態において、濡れ引張強度(上で定義されている通り)は、本発明に従う繊維材料では、水素結合を形成することができる少なくとも1つの基、好ましくは水素結合を形成することができる少なくとも2つの基を含む少なくとも1つの薬剤によって処理されていない点以外は同一の繊維材料と比較して少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも15%増大している。
【0080】
原則的には、水素結合を形成することができる少なくとも1つの基、好ましくは水素結合を形成することができる少なくとも2つの基を含む薬剤の点で限定は存在しない。前記薬剤は好ましくは化合物であり、この化合物はモノマー/小分子またはポリマーどちらかであり得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、水素結合を形成することができる少なくとも1つの基、好ましくは水素結合を形成することができる少なくとも2つの基を含む薬剤は、ポリオール、特に糖アルコール(糖ポリオール)、ポリマーポリオール;多糖、アルファ-ヒドロキシ酸;セルロースエーテルまたはセルロースエステル;ジまたはポリイソシアネート;ポリエーテルまたはポリエステルからなる群から選択される。
【0082】
かかる薬剤の限定しない例は:グリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、トリ酢酸グリセリル、ポリデキストロース、乳酸、パントテン酸、ヒアルロン酸、2-ピロリドン-5-カルボン酸ナトリウム(「PCAナトリウム」)、ポリエチレングリコール(PEG)(ポリエチレンオキシドまたはポリオキシエチレンとしてもまた公知)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、(ポリビドンまたはポビドンとしてもまた公知)である。
【0083】
いくつかの実施形態において、水素結合を形成することができる少なくとも1つの基、好ましくは水素結合を形成することができる少なくとも2つの基を含む薬剤は、グリセロールまたはポリエチレングリコールである。
【0084】
すでに上で議論されている通り、好ましくは、本発明に従う非イオン性繊維は流体/湿気との接触によって繊維直径が増大する。すなわち、使用の間におよび/または使用の時点においてゲル化する。ゲルは、少なくとも1つの固体および1つの液体相からなる微細分散系であると理解されるべきであり、固体相は三次元の網目を形成し、その孔は液体相によって満たされる。両方の相は互いに本質的に完全に入り込み、結果的に、液体相、例えば滲出液を例えば圧力に関係してより安定な様式で貯蔵し得る。好ましくは、本発明に従う繊維または繊維質構造は、ゲル化性、特にハイドロゲル化性であるように選ばれ、結果的に、対応する液体相について傑出した保持能力を有する。好ましくは、本発明に従う繊維または繊維質構造は乾燥状態で創傷に適用され、それらは創傷滲出液によって安定なゲルを形成し、それゆえに湿潤な創傷環境を作り出す。かかる湿潤創傷処置は治癒プロセスを補助し得る。
【0085】
同様に、湿潤創傷処置では、本発明に従う繊維または繊維質構造は液体相を有するゲル形態で用いられ得る。この場合においては、好ましくは水、特に好ましくは0.9%塩化ナトリウム水溶液、リンゲル液、または活性物質を含有する溶液が液体相として用いられる。結果的に、ゲル化は液体相を吸収することによってゲルを形成する能力として理解されるべきであり、ハイドロゲル化はハイドロゲルを形成する能力として理解されるべきであり、これは液体相として水または水溶液、特に好ましくは0.9%塩化ナトリウム水溶液を有する。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態において、EN13726-1:2002(「自由膨潤吸収能力」)によって測定すると、本発明に従う繊維材料はそれ自体の重量の少なくとも1倍という自由膨潤吸収能力(本発明に従う繊維材料の最大吸収能力に対応する)を有する。例えば、いくつかの実施形態において、EN13726-1:2002によって測定すると、本発明に従う繊維材料はそれ自体の重量の少なくとも3倍という自由膨潤吸収能力(本発明に従う繊維材料の最大吸収能力に対応する)を有する。例えば、いくつかの実施形態において、EN13726-1:2002によって測定すると、本発明に従う繊維材料はそれ自体の重量の少なくとも5倍という自由膨潤吸収能力(本発明に従う繊維材料の最大吸収能力に対応する)を有する。例えば、いくつかの実施形態において、EN13726-1:2002によって測定すると、本発明に従う繊維材料はそれ自体の重量の少なくとも10倍という自由膨潤吸収能力(本発明に従う繊維材料の最大吸収能力に対応する)を有する。例えば、いくつかの実施形態において、EN13726-1:2002によって測定すると、本発明に従う繊維材料はそれ自体の重量の少なくとも15倍という自由膨潤吸収能力(本発明に従う繊維材料の最大吸収能力に対応する)を有する。例えば、いくつかの実施形態において、EN13726-1:2002によって測定すると、本発明に従う繊維材料はそれ自体の重量の少なくとも20倍という自由膨潤吸収能力(本発明に従う繊維材料の最大吸収能力に対応する)を有する。例えば、いくつかの実施形態において、EN13726-1:2002によって測定すると、本発明に従う繊維材料はそれ自体の重量の少なくとも25倍という自由膨潤吸収能力(本発明に従う繊維材料の最大吸収能力に対応する)を有する。
【0087】
いくつかの実施形態において、基材は吸水性粒子を含む。いくつかの実施形態において、吸水性粒子は繊維材料中に分散される。いくつかの実施形態において、基材は非吸水性繊維をもまた包含する。いくつかの実施形態において、吸水性繊維および/または吸水性粒子は噴霧、ニードリング、またはカーディングによって非吸水性繊維と一緒にエアレイされる。
【0088】
本発明の利点は次の例によって実証された。
【実施例】
【0089】
例1-サンプルの調製
グリセロール(シグマ-アルドリッチから市販)、PEG200(アルファ・エイサーから市販)、およびPEG400(アルファ・エイサーから市販)を包含する各薬剤のそれぞれの量をエタノール(200プルーフ,メルクから市販)に追加することによって、表1に概説されている処方物を調製した。処方物を室温において15分間に渡って撹拌した。
【0090】
(非イオン性)架橋ポリビニルアルコール繊維を含む非イオン性不織繊維ドレッシングであるExufiber(登録商標)(メンリッケヘルスケアから市販;サイズ:20×30cm,250gsm)を、ピペットを用いて処方物を追加することによって異なる処方物によって処理して(0.15g/cm2)、それによって、表1に開示されている通り薬剤の増大していく濃度で異なる薬剤を有するサンプルを製造した。その後に、サンプルを室温において3日間に渡って乾燥した(例2に従うさらなる試験前に。下記参照)。
【0091】
加えて、カルボキシメチルセルロース(CMC)繊維をイオン形態で(例えばナトリウム塩として)含む不織だがイオン性の(荷電)繊維ドレッシングであるアクアセル(登録商標)(ConvaTecから市販,サイズ:15×15cm,100gsm)を、ピペットを用いてグリセロール処方物によって処理し(0.15g/cm2)、その後に室温において3日間に渡って乾燥して、表1に開示されている通り異なる濃度でグリセロールを含むアクアセル(登録商標)試験サンプルを製造した。Exufiber(登録商標)およびアクアセル(登録商標)両方の参照サンプルを、本発明に従う薬剤を追加することなしでもまた調製したが、代わりに100%エタノールによって然るべく処理し、その後に乾燥した。
【0092】
例2
濡れ引張強度を次の方法に従って試験した:サンプル(サイズは、吸収による起こり得る収縮後にパンチ器具に合うように十分に大きくあるべきである)を上に記載されている通り調製し(例1参照)、先ず、EN13726-1:2002に従う溶液Aの最大量を(10±1minに渡って)吸収することを許した。サンプルをカッティングボード上に置き、
図2に従ってネッキングパンチによって不織機械方向に打ち抜きした。サンプルの濡れ引張強度を引張試験装置(Zwick-Z005-TE)を用いて100mm/minのクロスヘッド速度および50mmのゲージ長さによって測定した。
【0093】
例2に従う濡れ引張強度試験の結果は下の表1に示されている。各試験はそれぞれ3回実施し、表1に提示されている値は計算上の平均値である。
【0094】
【0095】
見られ得る通り、Exufiber(登録商標)不織繊維ドレッシングでは、グリセロールを追加することは繊維の濡れ引張強度を驚くほど有意に改善し、参照Exufiber(登録商標)サンプル(薬剤なし)の引張強度と比較して8%w/wグリセロールでは4.4%、20%w/wグリセロールでは29.5%、35%w/wグリセロールでは63.4%という増大を有した。35%w/wのPEG200および35%w/wのPEG400の試験サンプルもまた有意な同じく驚くほど改善された濡れ引張強度を示し、それぞれ36.5%および44.9%という増大を有した。対照的に、グリセロール(それぞれ20%w/wおよび35%w/w)によって処理されたアクアセル(登録商標)サンプルは増大した濡れ引張強度をもたらさなかった。
【0096】
理論によって拘束されることを望まないが、架橋ポリビニルアルコール繊維の非イオン性の性質は、例えばポリビニルアルコール繊維上のヒドロキシル基と薬剤のヒドロキシル基との間の水素結合相互作用によって薬剤との化学的相互作用を促し、それゆえに繊維中のポリビニルアルコールポリマー鎖間に水素結合ブリッジ(例えば架橋)を作り出すと信じられる。
【0097】
例3
EN13726-1:2002に従う溶液Aへのソーキング後に、ストップウォッチを用いてサンプル1~4(上に記載されている通り調製)の目視点検によってゲル化時間を測定した。サンプルをソーキングすると同時にストップウォッチをスタートした。サンプルがそれらの元々の繊維質状態から透明ゲルに変わったときに、時間を記録した。
【0098】
表2に見られ得る通り、本発明に従う薬剤によるExufiber(登録商標)の含浸は水溶液と接触してのゲル時間を有意に減じる。それによって、より速い吸収が達成される。
【0099】
【0100】
全ての例1~3は23±2℃の温度かつ50±5%の相対湿度において実施した。