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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】光電変換素子および光電変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20220725BHJP
【FI】
H01L31/10 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019541645
(86)(22)【出願日】2018-05-30
(86)【国際出願番号】 JP2018020773
(87)【国際公開番号】W WO2019053959
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2017176194
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】吉河 訓太
(72)【発明者】
【氏名】口山 崇
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-151085(JP,A)
【文献】特開昭61-069170(JP,A)
【文献】実公平06-048575(JP,Y2)
【文献】特開平08-018093(JP,A)
【文献】特開2002-367218(JP,A)
【文献】特開2005-209294(JP,A)
【文献】特開平02-062921(JP,A)
【文献】特開2001-284632(JP,A)
【文献】国際公開第2011/013172(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03171406(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/02
H01L 31/08-31/20
H01L 51/42-51/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの主面を備える光電変換基板を含む光電変換素子において、
分離された第1感度部分と第2感度部分とを含み、
前記第1感度部分の前記主面に現れる感度領域を第1感度領域とし、前記第2感度部分の前記主面に現れる感度領域を第2感度領域とすると、前記第1感度領域は、
前記主面に入射する入射光の少なくとも一部を受光し、
前記主面における入射光の照射される照射領域の増大につれて、前記照射領域における前記第2感度領域の面積に対する前記第1感度領域の面積の比率を小さくするパターンになっており
前記光電変換基板は、単結晶シリコン材料を含み、
前記光電変換基板の一方の前記主面側に第1導電型半導体層が形成されており、
前記光電変換基板の他方の前記主面側に第2導電型半導体層が形成されており、
前記光電変換基板の一方の前記主面側に順に形成されたパッシベーション層、前記第1導電型半導体層および透明電極層は、前記第1感度領域と前記第2感度領域との間において連続しており、前記光電変換基板の他方の前記主面側に順に形成されたパッシベーション層、前記第2導電型半導体層および透明電極層は、前記第1感度領域と前記第2感度領域との間において分離されている、
或いは、前記光電変換基板の一方の前記主面側に順に形成されたパッシベーション層、前記第1導電型半導体層および透明電極層は、前記第1感度領域と前記第2感度領域との間において分離されており、前記光電変換基板の他方の前記主面側に順に形成されたパッシベーション層、前記第2導電型半導体層および透明電極層は、前記第1感度領域と前記第2感度領域との間において連続している、
光電変換素子。
【請求項2】
前記第1感度領域は、前記主面において放射状に延在する少なくとも2本以上の帯状のパターンを形成する、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記第1感度領域は、直交する2本の帯状のパターンを形成する、請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記第1感度領域は、前記主面において1本の帯状のパターンを形成する、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記帯状のパターンの幅は一定である、請求項2~4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記帯状のパターンの幅は、前記主面の中心から周辺に向かって広くなる、請求項2~4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記第1感度部分から電流を出力する複数の第1電極と、
前記第2感度部分から電流を出力する複数の第2電極と、
を備え、
前記複数の第1電極および前記複数の第2電極は、周辺部に分離して配置される、
請求項1~6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記主面のうち、受光する側の前記主面である受光面側に順に形成されたパッシベーション層、前記第1導電型半導体層および透明電極層は、前記第1感度領域と前記第2感度領域との間において連続しており、
前記受光面の反対側の前記主面である裏面側に順に形成されたパッシベーション層、前記第2導電型半導体層および透明電極層は、前記第1感度領域と前記第2感度領域との間において分離されている、
請求項1~7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項9】
前記主面のうち、受光する側の前記主面である受光面側に順に形成されたパッシベーション層、前記第1導電型半導体層および透明電極層は、前記第1感度領域と前記第2感度領域との間において分離されており、
前記受光面の反対側の前記主面である裏面側に順に形成されたパッシベーション層、前記第2導電型半導体層および透明電極層は、前記第1感度領域と前記第2感度領域との間において連続している、
請求項1~7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の光電変換素子を含む、光電変換装置。
【請求項11】
前記光電変換素子における前記第1感度部分の出力電流および前記第2感度部分の出力電流に基づいて、前記光電変換素子における入射光のスポットサイズを演算する演算部を更に含む、請求項10に記載の光電変換装置。
【請求項12】
入射光の上流側に配置された光学レンズを更に含み、
前記光電変換素子は、前記入射光の下流側に配置される、
請求項10または11に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記光電変換素子における前記第2感度部分の複数の第2電極の出力電流の差分に基づいて、前記複数の第2電極の出力電流の差分を低減し、前記光電変換素子の主面における入射光の照射領域の中心を前記第1感度部分に近づけるように、入射光を発する光源を追尾する光源追尾機構を更に含む、
請求項12に記載の光電変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出分野等において用いられる光電変換素子および光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入射光の強度(照度)を検出する光電変換素子(半導体受光素子)が開示されている。このような光電変換素子として、例えば、結晶シリコン基板を用いた素子が知られている。結晶シリコン基板を用いた光電変換素子では、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であってもS/N比が比較的に高く、高感度(照度によらず安定した応答)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6093061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、入射光のスポットサイズが検出できる光電変換素子が要望されている。
【0005】
本発明は、入射光のスポットサイズを検出するための光電変換素子および光電変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光電変換素子は、2つの主面を備える光電変換基板を含む光電変換素子において、分離された第1感度部分と第2感度部分とを含み、第1感度部分の主面に現れる感度領域を第1感度領域とし、第2感度部分の主面に現れる感度領域を第2感度領域とすると、第1感度領域は、主面に入射する入射光の少なくとも一部を受光し、主面における入射光の照射される照射領域の増大につれて、照射領域における第2感度領域に対する第1感度領域の比率を小さくするパターンになっている。
【0007】
本発明に係る光電変換装置は、入射光の上流側に配置された光学レンズと、入射光の下流側に配置され、上記した光電変換素子とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、入射光のスポットサイズを検出するための光電変換素子および光電変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る光電変換装置の構成を示す図である。
図2図1の光電変換素子におけるII-II線断面図である。
図3図1および図2の光電変換素子を受光面側から示す図である。
図4図3の光電変換素子に入射光が入射した様子を示す図である。
図5】光電変換素子の受光面における入射光の照射領域と第1感度部分との重なりの近似計算を説明するための図である。
図6A】光電変換素子による、入射光の照射領域の半径に対する入射光の検出強度の特性の一例を示す図である。
図6B図6Aにおける入射光の照射領域の中心位置のずれ量が(0.05,0.05)であるときの特性の部分を拡大して示す図である。
図7A】受光面の中心位置に対する入射光の照射領域の中心位置のずれ量(dmin,dmax)を示す図である。
図7B】受光面のX方向の中心位置に対する入射光の照射領域の中心位置のX方向のずれ量dmaxを示す図である。
図8】光源からの入射光の焦点が光電変換素子の受光面に合っている状態(横軸0mm)から、光源を光電変換素子から遠ざけたときの、光電変換素子による入射光の検出強度(相対値)の一例を示す図である。
図9A】光電変換素子の第1感度部分の第1感度領域のパターンの変形例を示す図である。
図9B】光電変換素子の第1感度部分の第1感度領域のパターンの変形例を示す図である。
図10】第2実施形態に係る3次元センサの構成を示す図である。
図11A】第2実施形態の変形例1に係る3次元センサ2の構成を示す図である(光源追尾前)。
図11B】第2実施形態の変形例1に係る3次元センサ2の構成を示す図である(光源追尾後)。
図12A】第2実施形態の変形例2に係る3次元センサ2の構成を示す図である(光源追尾前)。
図12B】第2実施形態の変形例2に係る3次元センサ2の構成を示す図である(光源追尾後)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングおよび部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る光電変換装置の構成を示す図である。図1に示す光電変換装置1は、入射光の強度のみならず、入射光のスポットサイズを検出する。光電変換装置1は、光電変換素子20と、記憶部30と、演算部40とを含む。
【0012】
なお、図1および後述する図面には、XYZ直交座標系を示す。XY平面は光電変換素子20の受光面に平行な面であり、Z方向はXY平面に対して直交な方向である。
【0013】
また、図1および後述する図面のうち、平面図における2本の一点鎖線の交点は、XY平面の中心を示し、一方の一点鎖線はX方向、他方の一点鎖線はY方向に平行となっている。また、平面図における2本の点線の交点は、XY平面における入射光のスポットサイズの中心を示し、一方の点線はX方向、他方の点線はY方向に平行となっている。
【0014】
光電変換素子20は、第1感度部分21(詳細は後述する)に入射する入射光の強度に応じた電流を生成する。光電変換素子20は、第1感度部分21で生成した電流を、受光面(XY平面)における入射光の中心位置(座標)(以下、XY位置ともいう。)に応じて、4辺に配置された4つの電極層223(および、後述する裏面側の電極層233)に分配して出力する。
また、光電変換素子20は、第2感度部分22(詳細は後述する)に入射する入射光の強度に応じた電流を生成する。光電変換素子20は、第1感度部分21で生成した電流を、受光面(XY平面)における入射光の中心位置(座標)(以下、XY位置ともいう。)に応じて、4角に配置された4つの電極層224(および、後述する裏面側の電極層234)に分配して出力する。
【0015】
これにより、光電変換素子20は、第1感度部分21の4対の電極層223,233の電流および第2感度部分22の4対の電極層224,234の電流の総和として、入射光の強度(総量)に応じた電流を生成する。
また、光電変換素子20は、第2感度部分22の4対の電極層224,234の各々に、受光面における入射光のXY位置(座標)に応じた電流を生成する。また、光電変換素子20は、第1感度部分21の4対の電極層223,233の各々に、受光面における入射光のXY位置(座標)に応じた電流を生成する。
また、光電変換素子20は、第1感度部分21の4対の電極層223,233の電流の総和として、入射光の密度に応じた電流、換言すれば入射光のスポットサイズに応じた電流を生成する。光電変換素子20の構成の詳細は後述する。
【0016】
記憶部30は、光電変換素子20の受光面における入射光のXY位置(座標)ごとに、光電変換素子20の第1感度部分21および第2感度部分22の出力電流(総量)(すなわち、光電変換素子20の入射光の強度(総量))、および、光電変換素子20の第1感度部分21の出力電流(総量)(すなわち、光電変換素子20の第1感度部分21への入射光の強度)と、光電変換素子20の受光面における入射光のスポットサイズとを対応付けたテーブルを予め記憶する。記憶部30は、例えばEEPROM等の書き換え可能なメモリである。
【0017】
演算部40は、光電変換素子20の第1感度部分21の4つの電極層223(233)から出力された電流、および、光電変換素子20の第2感度部分22の4つの電極層224(234)から出力された電流の総量に応じて、入射光の強度(総量)を演算して検出する。
【0018】
また、演算部40は、光電変換素子20の第2感度部分22の4つの電極層224(234)各々から出力された電流の割合に基づいて、光電変換素子20の受光面における入射光のXY位置(座標)を演算して検出する。なお、演算部40は、光電変換素子20の第1感度部分21の4つの電極層223(233)各々から出力された電流の割合に基づいて、光電変換素子20の受光面における入射光のXY位置(座標)を演算して検出してもよい。
【0019】
また、演算部40は、記憶部30に記憶されたテーブルを参照して、光電変換素子20の受光面における入射光のXY位置(座標)において、光電変換素子20の8つの電極層223(233),224(234)から出力された電流の総量(すなわち、光電変換素子20の入射光の強度(総量))、および、光電変換素子20の4つの電極層223(233)から出力された電流の総量(すなわち、光電変換素子20の第1感度部分21への入射光の強度)に対応した、光電変換素子20の受光面における入射光のスポットサイズを求めて検出する。
【0020】
演算部40は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算プロセッサで構成される。演算部40の各種機能は、例えば記憶部30に格納された所定のソフトウェア(プログラム、アプリケーション)を実行することで実現される。演算部40の各種機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
以下、光電変換素子20の構成について詳細に説明する。
【0021】
<光電変換素子>
図2は、図1の光電変換素子20におけるII-II線断面図である。光電変換素子20は、2つの主面を備えるn型(第2導電型)半導体基板(光電変換基板)210と、半導体基板210の主面のうちの受光する側の一方の主面である受光面側に順に積層されたパッシベーション層220、p型(第1導電型)半導体層221、透明電極層222,電極層(第1電極)223および電極層(第2電極)224を備える。また、光電変換素子20は、半導体基板210の主面のうちの受光面の反対側の他方の主面である裏面側の第1特定領域および第2特定領域に順に積層されたパッシベーション層230、n型(第2導電型)半導体層231、透明電極層232、電極層(第1電極)233および電極層(第2電極)234を備える。
【0022】
なお、この第1特定領域における積層部分、すなわち、透明電極層232、n型半導体層231、パッシベーション層230、半導体基板210、パッシベーション層220、p型半導体層221、および透明電極層222で形成される積層部分を第1感度部分21とする。また、第2特定領域における積層部分、すなわち、透明電極層232、n型半導体層231、パッシベーション層230、半導体基板210、パッシベーション層220、p型半導体層221、および透明電極層222で形成される積層部分を第2感度部分22とする。
【0023】
半導体基板(光電変換基板)210は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板210は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。
半導体基板210の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であってもS/N比が比較的に高く、高感度(照度によらず安定した応答)である。
【0024】
パッシベーション層220は、半導体基板210の受光面側の全面に連続的に形成されている。一方、パッシベーション層230は、半導体基板210の裏面側における第1感度部分21と第2感度部分22とに分離して形成されている。パッシベーション層220,230は、例えば真性(i型)アモルファスシリコン材料で形成される。
パッシベーション層220,230は、半導体基板210の第1感度部分21および第2感度部分22で生成されたキャリアの再結合を抑制し、キャリアの回収効率を高める。
【0025】
p型半導体層221は、パッシベーション層220上、すなわち半導体基板210の受光面側の全面に連続的に形成されている。p型半導体層221は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。p型半導体層221は、例えばアモルファスシリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型の半導体層である。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。
【0026】
n型半導体層231は、パッシベーション層230上、すなわち半導体基板210の裏面側における第1感度部分21と第2感度部分22とに分離して形成されている。n型半導体層231は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。n型半導体層231は、例えばアモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型半導体層である。
上述したパッシベーション層220,230、p型半導体層221およびn型半導体層231は、例えばCVD法を用いて形成される。
【0027】
透明電極層222は、p型半導体層221上、すなわち半導体基板210の受光面側の全面に連続的に形成されている。一方、透明電極層232は、n型半導体層231上、すなわち半導体基板210の裏面側における第1感度部分21と第2感度部分22とに分離して形成されている。透明電極層222,232は、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)等が挙げられる。透明電極層222,232は、例えばスパッタリング法を用いて形成される。
【0028】
電極層223は、透明電極層222上、すなわち半導体基板210の受光面側における第1感度部分21の4辺部の各々に4つ独立して形成されており、電極層233は、透明電極層232上、すなわち半導体基板210の裏面側における第1感度部分21の4辺部の各々に4つ独立して形成されている。電極層224は、透明電極層222上、すなわち半導体基板210の受光面側における第2感度部分22の4角部の各々に4つ独立して形成されており、電極層234は、透明電極層232上、すなわち半導体基板210の裏面側における第2感度部分22の4角部の各々に4つ独立して形成されている。電極層223,233,224,234は、銀等の金属粉末を含有する導電性ペースト材料で形成される。電極層223,233,224,234は、例えば印刷法を用いて形成される。
【0029】
図3は、図1および図2の光電変換素子20の半導体基板210の裏面側の層230,231,232を、受光面側から示す図である。図2および図3に示すように、光電変換素子20は、第1感度部分21と第2感度部分22とを有する。第1感度部分21における半導体基板210の両主面(受光面及び裏面)に現れる感度領域は第1感度領域であり、第2感度部分22における半導体基板210の両主面に現れる感度領域は第2感度領域である。
【0030】
図2及び図3に示すように、半導体基板210の裏面側に形成されたパッシベーション層230、n型半導体層231および透明電極層232は、第1感度部分21と第2感度部分22との間において分離されている。
一方、半導体基板210の受光面側に形成されたパッシベーション層220、p型半導体層221および透明電極層222は、第1感度部分21と第2感度部分22との間において連続している。すなわち、半導体基板210の受光面側の全面に、パッシベーション層220、p型半導体層221および透明電極層222が形成されている。これにより、受光面側において光学特性(例えば、反射特性)が一様となる。
【0031】
第1感度部分21の光電変換特性(感度)と第2感度部分22の光電変換特性(感度)とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
第1感度部分21の裏面側の第1感度領域は、受光面の中心からX方向およびY方向に放射状に延在し、互いに直交する帯状のパターンを形成する。第1感度部分21の第1感度領域の帯状のパターンの幅は一定である。これにより、図4に示すように、受光面における入射光の照射される照射領域Rの増大につれて(すなわち、入射光の密度が低くなるにつれて)、照射領域Rにおける第2感度部分22(第2感度領域)に対する第1感度部分21(第2感度領域)の比率が小さくなる。そのため、受光面における入射光のスポットサイズが大きくなるにつれて、第1感度部分21の出力電流が低下する。
【0033】
<テーブル>
次に、記憶部30に記憶されるテーブルの作成方法の一例について説明する。テーブルは、予め実測して作成されてもよいし、以下のように、近似計算を用いて作成されてもよい。
【0034】
図5は、光電変換素子20の受光面における入射光の照射領域Rと第1感度部分21(第1感度領域)との重なりの近似計算を説明するための図である。図5に示すように、光電変換素子20の受光面の中心位置に対する入射光の照射領域Rの中心位置のずれ量を(x,y)とし、入射光の照射領域Rの半径をrとし、第1感度部分21(第1感度領域)の帯状のパターンの幅をwとし、r≫wとすると、照射光の照射領域Rと、第1感度部分21(第1感度領域)のX方向に延在する部分との重なりは、次式により求められる。
2×w×√(r-y
また、照射光の照射領域Rと、第1感度部分21(第1感度領域)のY方向に延在する部分との重なりは、次式により求められる。
2×w×√(r-x
これにより、入射光の照射領域Rと第1感度部分21(第1感度領域)との重なりは、次式により求められる。
2×w×√(r-y)+2×w×√(r-x)-w
この近似計算を用いて、テーブルを作成してもよい。
【0035】
図6Aは、光電変換素子20による、入射光の照射領域Rの半径に対する入射光の検出強度の特性の一例を示す図である。図6Aには、受光面の中心位置に対する入射光の照射領域Rの中心位置のずれ量(x[cm],y[cm])が(0,0)、(0.01,0.01)、(0.02,0.02)、(0.03,0.03)、(0.04,0.04)、(0.05,0.05)のときの特性が示されている。図6Bは、図6Aにおける入射光の照射領域Rの中心位置のずれ量(x[cm],y[cm])が(0.05,0.05)であるときの特性の部分(二点鎖線で囲った部分)を拡大して示す図である。
図6Aおよび図6Bに示すように、r≫wでない場合、入射光の照射領域Rの中心位置(スポット中心座標)によっては、入射光の検出強度が極大値を有する。つまり、1つの検出強度に対して二重の解(半径)が生じる。
【0036】
そこで、図7Aに示すように、受光面の中心位置に対する入射光の照射領域Rの中心位置のずれ量(x,y)が(dmin,dmax)のとき、dminとdmaxのいずれか大きい方dmaxに基づいて、入射光の照射領域Rの半径rが下記式を満たすように調整されてもよい。例えば、光電変換素子20の配置、または、光電変換装置1と組み合わせて用いられる光学レンズの種類(曲率)を調整してもよい。
r>dmax×√(2)
例えば、図6Bに示すように、受光面の中心位置に対する入射光の照射領域Rの中心位置のずれ量dmax=0.05cmの場合、入射光の照射領域Rの半径r=0.71cm以上となるように調整される。
【0037】
なお、図7Bに示すように、光電変換素子20の第1感度部分21(第1感度領域)が、受光面の中心を通り、Y方向に延在する1本の帯状のパターンで形成されている場合(図9Aにおいて後述する。)、上記式におけるdmaxは、受光面のX方向の中心位置に対する入射光の照射領域Rの中心位置のX方向のずれ量であればよい。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の光電変換装置1では、光電変換素子20は、第1感度部分21に入射する入射光の強度に応じた電流を生成する。光電変換素子20は、生成した電流を、受光面(XY平面)における入射光の中心のXY位置(座標)に応じて、4辺に配置された4対の電極層223,233に分配して出力する。
また、光電変換素子20は、第2感度部分22に入射する入射光の強度に応じた電流を生成する。光電変換素子20は、生成した電流を、受光面(XY平面)における入射光の中心のXY位置(座標)に応じて、4角に配置された4対の電極層224,234に分配して出力する。
【0039】
これにより、光電変換素子20は、第1感度部分21の4対の電極層223,233の電流および第2感度部分22の4対の電極層224,234の電流の総和として、入射光の強度(総量)に応じた電流を生成する。
また、光電変換素子20は、第2感度部分22の4対の電極層224,234の各々に、受光面における入射光のXY位置(座標)に応じた電流を生成する。また、光電変換素子20は、第1感度部分21の4対の電極層223,233の各々に、受光面における入射光のXY位置(座標)に応じた電流を生成する。
また、光電変換素子20は、第1感度部分21の4対の電極層223,233の電流の総和として、入射光の密度に応じた電流、換言すれば入射光のスポットサイズに応じた電流を生成する。
【0040】
演算部40は、光電変換素子20の第1感度部分21の4対の電極層223,233から出力された電流、および、光電変換素子20の第2感度部分22の4対の電極層224,234から出力された電流の総量に応じて、入射光の強度(総量)を演算して検出する。
【0041】
また、演算部40は、光電変換素子20の第2感度部分22の4対の電極層224,234各々から出力された電流の割合(または、光電変換素子20の第1感度部分21の4対の電極層223,233各々から出力された電流の割合)に基づいて、光電変換素子20の受光面における入射光のXY位置(座標)を演算して検出する。
【0042】
また、演算部40は、記憶部30に記憶されたテーブルを参照して、光電変換素子20の受光面における入射光のXY位置(座標)において、光電変換素子20の8対の電極層223,233,224,234から出力された電流の総量(すなわち、光電変換素子20の入射光の強度(総量))、および、光電変換素子20の4対の電極層223,233から出力された電流の総量(すなわち、光電変換素子20の第1感度部分21への入射光の強度)に対応した、光電変換素子20の受光面における入射光のスポットサイズを求めて検出する。
【0043】
図8は、光源からの入射光(波長940nm)の焦点が光電変換素子20の受光面に合っている状態(横軸0mm)から、光源を光電変換素子20から遠ざけたときの、光電変換素子20における第1感度部分21による入射光の検出強度(相対値)の一例を示す図である。図8には、第1感度部分21の第1感度領域が図3に示すように受光面の中心からX方向およびY方向に放射状に延在し、互いに直交する帯状のパターンを形成し、その幅がそれぞれ1.5mm、1.0mm、0.5mmであるときの特性A、特性B、特性Cと、第1感度部分21の第1感度領域が図9Aに示すように受光面の中心を通り、Y方向に延在する帯状のパターンを形成し、その幅が0.5mmであるときの特性Dが示されている。
【0044】
特性Aによれば、第1感度部分21の第1感度領域のパターンの幅が太い方が、検出距離が長くても線形な検出特性が得られることがわかる。また、特性C及び特性Dによれば、第1感度部分21の第1感度領域のパターンの幅が細い方が、検出距離が短い場合に線形な検出特性が得られることがわかる。これらの結果より、第1感度部分21の第1感度領域のパターンの幅が太い方が、長距離の光検出に適しており、第1感度部分21の第1感度領域のパターンの幅が細い方が、短距離の光検出に適していることがわかる。
【0045】
(第1実施形態の変形例)
本実施形態では、光電変換素子20の裏面側に順に形成されたパッシベーション層230、n型半導体層231および透明電極層232が、第1感度部分21と第2感度部分22との間において分離されている形態を例示したが、これに限定されない。光電変換素子20は、受光面側および裏面側の少なくとも一方において、第1感度部分21のパッシベーション層、導電型半導体層および透明電極層と、第2感度部分22のパッシベーション層、導電型半導体層および透明電極層とが分離されている形態であってもよい。換言すれば、光電変換素子20の受光面側および裏面側の少なくとも一方に、第1感度部分21(第1感度領域)の帯状のパターンが形成される形態であってもよい。
【0046】
例えば、上述した本実施形態とは逆に、光電変換素子20の受光面側に、第1感度部分21の帯状のパターンが形成される形態であってもよい。より具体的には、光電変換素子20の裏面側のパッシベーション層230、n型半導体層231および透明電極層232は、第1感度部分21と第2感度部分22との間において連続しており、光電変換素子20の受光面側のパッシベーション層220、p型半導体層221および透明電極層222は、第1感度部分21と第2感度部分22との間において分離されている形態であってもよい。
また、例えば、光電変換素子20の受光面側および裏面側に、第1感度部分21の帯状のパターンが形成される形態であってもよい。より具体的には、光電変換素子20の受光面側のパッシベーション層220、p型半導体層221および透明電極層222は、第1感度部分21と第2感度部分22との間において分離されており、光電変換素子20の裏面側のパッシベーション層230、n型半導体層231および透明電極層232も、第1感度部分21と第2感度部分22との間において分離されている形態であってもよい。
この場合、受光面の光学特性(例えば、反射特性)は、別途調整されればよい。
【0047】
また、光電変換素子20の第1感度部分21と第2感度部分22との間の部分には、透明電極層が形成されていてもよい。特に、光電変換素子20の受光面側のパッシベーション層220、p型半導体層221および透明電極層222が分離されている場合に、透明電極層が形成されると、受光面側の光学特性(例えば、反射特性)が改善される。
【0048】
ところで、光センサでは、パン(水平(左右)方向の首振り)機構またはチルト(垂直(上下)方向の首振り)機構を備える場合がある。例えば、パン機構を備える光センサに本実施形態の光電変換装置1を適用する場合、光電変換素子20の第1感度部分21の第1感度領域は、図9Aに示すように、受光面の中心を通り、Y方向に延在する1本の帯状のパターンで形成されてもよい。この場合、パン機構により、入射光は受光面のX方向の中心に位置するように調整されるため、光電変換素子20および演算部40は、入射光のY方向の位置を検出すればよい。入射光のX方向の位置は、パン機構の角度から求められる。
一方、チルト機構を備える光センサに本実施形態の光電変換装置1を適用する場合、光電変換素子20の第1感度部分21の第1感度領域は、受光面の中心を通り、X方向に延在する1本の帯状のパターンで形成されてもよい。この場合、チルト機構により、入射光は受光面のY方向の中心に位置するように調整されるため、光電変換素子20および演算部40は、入射光のX方向の位置を検出すればよい。入射光のY方向の位置は、チルト機構の角度から求められる。
【0049】
また、パン機構およびチルト機構を備える光センサに本実施形態の光電変換装置1を適用する場合、パン機構およびチルト機構により、入射光は受光面のX方向およびY方向の中心に位置するように調整されるため、光電変換素子20および演算部40は、入射光のX方向およびY方向の位置を検出せずともよい。入射光のX方向およびY方向の位置は、パン機構およびチルト機構の角度から求められる。
【0050】
さらに、パン機構およびチルト機構を備える光センサに本実施形態の光電変換装置1を適用する場合、光電変換素子20の第1感度部分21の第1感度領域は、図9Bに示すように、受光面の中心からX方向およびY方向に向かって次第に幅が広くなるパターンで形成されてもよい。この場合、スポットサイズの変化による出力電流の変化が線形になる。
これに対して、光電変換素子20の第1感度部分21の第1感度領域が、図3に示すように、受光面の中心からX方向およびY方向に向かって幅が一定であるパターンで形成された場合、演算部40における演算が容易である。
【0051】
また、本実施形態において、光電変換素子20の第1感度部分21の第1感度領域は、受光面の中心から放射状に延在する3本以上の帯状のパターンで形成されてもよい。
また、光電変換素子20の第1感度部分21の第1感度領域は、複数の島状(ドット状)のパターンで形成されてもよい。この場合、島状のパターンの密度が受光面の中心から放射状に広がるにつれて変化してもよいし、島状のパターンの大きさが受光面の中心から放射状に広がるにつれて変化してもよい。この場合、受光面の中心から放射状に広がる島状のパターンが電気的に接続されて、電極層に接続されればよい。
また、光電変換素子20の第1感度部分21の第1感度領域は、格子状のパターンで形成されてもよい。この場合、複数の交点が生じ、この交点に入射光の中心が近づくときに出力電流が大きくなる特異点が生じることが予想されるので、この特異点において出力電流を補正することが好ましい。
【0052】
(第2実施形態)
光センサとして、被写体からの拡散光を入射して、被写体のX方向およびY方向の位置(XY位置)に加え、Z方向(奥行き)の位置をも検出する3次元センサがある。このような3次元センサでは、被写体のZ方向(奥行き)の位置が変化すると、内部の光電変換素子に入射する入射光のスポットサイズが変化する(デフォーカス)。
【0053】
そこで、このような3次元センサに上述した光電変換装置1を適用すれば、光電変換素子に入射する入射光のスポットサイズを検出することにより、被写体のZ方向(奥行き)の位置が検出できる。そして、入射光の入射方向(詳細な求め方は後述する。)とZ方向(奥行き)の位置とから、被写体の3次元の位置が検出できる。
【0054】
図10は、第2実施形態に係る3次元センサの構成を示す図である。図10に示す3次元センサ2は、例えば被写体にレーザ光を照射することにより被写体から発せられた光学像(拡散光)を集光する光学レンズ50と、光学レンズ50からの集光光を入射する上述した光電変換装置1、すなわち光電変換素子20、記憶部30および演算部40を備える。
【0055】
光電変換素子20は、第1感度部分21に入射する入射光の強度に応じた電流を生成する。光電変換素子20は、第1感度部分21で生成した電流を、受光面(XY平面)における入射光の中心位置(XY位置)に応じて、4辺に配置された4対の電極層223,233に分配して出力する。
また、光電変換素子20は、第2感度部分22に入射する入射光の強度に応じた電流を生成する。光電変換素子20は、第1感度部分21で生成した電流を、受光面(XY平面)における入射光の中心位置(XY位置)に応じて、4角に配置された4対の電極層224,234に分配して出力する。
【0056】
これにより、光電変換素子20は、第1感度部分21の4対の電極層223,233の電流および第2感度部分22の4対の電極層224,234の電流の総和として、入射光の強度(総量)に応じた電流を生成する。
また、光電変換素子20は、第2感度部分22の4対の電極層224,234の各々に、受光面における入射光のXY位置(座標)に応じた電流を生成する。また、光電変換素子20は、第1感度部分21の4対の電極層223,233の各々に、受光面における入射光のXY位置(座標)に応じた電流を生成する。
また、光電変換素子20は、第1感度部分21の4対の電極層223,233の電流の総和として、入射光の密度に応じた電流、換言すれば入射光のスポットサイズに応じた電流を生成する。
【0057】
記憶部30は、光電変換素子20の受光面における入射光のXY位置(座標)ごとに、光電変換素子20の第1感度部分21および第2感度部分22の出力電流(総量)(すなわち、光電変換素子20の入射光の強度(総量))、および、光電変換素子20の第1感度部分21の出力電流(総量)(すなわち、光電変換素子20の第1感度部分21への入射光の強度)と、光電変換素子20の受光面における入射光のスポットサイズとを対応付け、更に、このスポットサイズに被写体のZ方向(奥行き)の位置を対応付けたテーブルを予め記憶する。
【0058】
演算部40は、上述したように、光電変換素子20の第1感度部分21の4対の電極層223,233から出力された電流、および、光電変換素子20の第2感度部分22の4対の電極層224,234から出力された電流の総量に応じて、入射光の強度(総量)を演算して検出する。
また、演算部40は、上述したように、光電変換素子20の第2感度部分22の4対の電極層224,234各々から出力された電流の割合(または、光電変換素子20の第1感度部分21の4対の電極層223,233各々から出力された電流の割合)に基づいて、光電変換素子20の受光面における入射光のXY位置(座標)を演算して検出する。
ここで、光学レンズ50の中心のXY位置(座標)に対する光電変換素子20の中心のXY位置(座標)が予め分かっていれば、演算部40は、光学レンズ50の中心のXY位置(座標)と、光電変換素子20の受光面における入射光のXY位置(座標)とから、入射光の入射方向を演算して検出する。
【0059】
また、演算部40は、記憶部30に記憶されたテーブルを参照して、光電変換素子20の受光面における入射光のXY位置(座標)において、光電変換素子20の8対の電極層223,233,224,234から出力された電流の総量(すなわち、光電変換素子20の入射光の強度(総量))、および、光電変換素子20の4対の電極層223,233から出力された電流の総量(すなわち、光電変換素子20の第1感度部分21への入射光の強度)に対応した、光電変換素子20の受光面における入射光のスポットサイズ、および、被写体のZ方向(奥行き)の位置を求めて検出する。
そして、演算部40は、上述したように検出した入射光の入射方向と、Z方向(奥行き)の位置とから、被写体の3次元の位置を検出する。
【0060】
(第2実施形態の変形例1:光源追尾機能(2軸)を有する3次元センサ)
上述した第2実施形態の3次元センサ2は、光源を追尾する機能を有していてもよい。変形例1に係る3次元センサ2は、光源を追尾するために、例えば、上述したパン(水平(左右)方向の首振り)機構およびチルト(垂直(上下)方向の首振り)機構を備える。
【0061】
図11A及び図11Bは、第2実施形態の変形例1に係る3次元センサ2の構成を示す図である。図11Aには、光源追尾前の状態が示されており、図11Bには、光源追尾後の状態が示されている。
図11A及び図11Bに示すように、変形例1の3次元センサ2は、上述した第2実施形態の3次元センサ2の構成に加え、パンおよびチルト機構(光源追尾機構)60を備える。
【0062】
演算部40は、パンおよびチルト機構60の駆動制御部として機能し、光電変換素子20の第2感度部分22の4対の電極層224,234の出力電流の差分に応じた駆動信号を生成する。
パンおよびチルト機構60は、モータ等の駆動部を有し、演算部40で生成された駆動信号に応じて、光学レンズ50および光電変換素子20の光学ユニットの向きを変更する。
【0063】
例えば、第2感度部分22の4対の電極層224,234の出力電流を、周方向に順にA1,A2,A3,A4とすると、演算部40は、X軸に対して対向配置された電極層224,234の出力電流(A1+A4)と出力電流(A2+A3)との差分に応じた駆動信号(チルト)を生成する。
例えば(A1+A4)>(A2+A3)の場合、パンおよびチルト機構60は、出力電流(A1+A4)と出力電流(A2+A3)との差分に応じた駆動信号に応じて(A1+A4)=(A2+A3)となるように、X軸に対して光学ユニットの向きを変更する(チルト)。
【0064】
また、演算部40は、Y軸に対して対向配置された電極層224,234の出力電流(A1+A2)と出力電流(A3+A4)との差分に応じた駆動信号(パン)を生成する。
例えば(A1+A2)>(A3+A4)の場合、パンおよびチルト機構60は、出力電流(A1+A2)と出力電流(A3+A4)との差分に応じた駆動信号に応じて(A1+A2)=(A3+A4)となるように、Y軸に対して光学ユニットの向きを変更する(パン)。
【0065】
これにより、パンおよびチルト機構60は、光電変換素子20の第2感度部分22の4対の電極層224,234の出力電流の差分を低減し、光電変換素子20の受光面における入射光の照射領域Rの中心位置(XY位置)を光電変換素子20の中心位置(XY位置)、すなわち第1感度部分21の中心位置(XY位置)に近づけるように、光源を追尾できる。
【0066】
この変形例1の3次元センサ2によれば、光電変換素子20の受光面における入射光の照射領域Rが第1感度部分21から外れていても、照射領域Rの中心位置(XY位置)を第1感度部分21の中心位置(XY位置)に近づけることができ、光源の3次元の位置検出の精度が高まる。
【0067】
(第2実施形態の変形例2:光源追尾機能(1軸)を有する3次元センサ)
変形例2に係る3次元センサ2は、光源を追尾するために、例えば、上述したパン(水平(左右)方向の首振り)機構およびチルト(垂直(上下)方向の首振り)機構の何れか一方を備える。
【0068】
図12A及び図12Bは、第2実施形態の変形例2に係る3次元センサ2の構成を示す図である。図12Aには、光源追尾前の状態が示されており、図12Bには、光源追尾後の状態が示されている。
図12A及び図12Bに示すように、変形例2の3次元センサ2は、上述した第2実施形態の3次元センサ2の構成に加え、パン機構(光源追尾機構)61を備える。なお、光電変換素子20の第1感度部分21の第1感度領域は、図9Aに示すように、受光面の中心を通り、Y方向に延在する1本の帯状のパターンで形成されている。
【0069】
演算部40は、パン機構61の駆動制御部として機能し、光電変換素子20の第2感度部分22の2対の電極層224,234の出力電流の差分に応じた駆動信号を生成する。
パン機構61は、モータ等の駆動部を有し、演算部40で生成された駆動信号に応じて、光学レンズ50および光電変換素子20の光学ユニットの向きを変更する。
【0070】
例えば、第2感度部分22の2対の電極層224,234の出力電流をA1,A2とすると、演算部40は、Y軸に対して対向配置された電極層224,234の出力電流A1と出力電流A2との差分に応じた駆動信号(パン)を生成する。
例えばA2>A1の場合、パン機構61は、出力電流A1と出力電流A2との差分に応じた駆動信号に応じてA1=A2となるように、Y軸に対して光学ユニットの向きを変更する(パン)。
【0071】
これにより、パン機構61は、光電変換素子20の第2感度部分22の2対の電極層224,234の出力電流の差分を低減し、光電変換素子20の受光面における入射光の照射領域Rの中心位置(XY位置)を光電変換素子20のX方向の中心位置、すなわち第1感度部分21に近づけるように、光源を追尾できる。
【0072】
この変形例2の3次元センサ2でも、光電変換素子20の受光面における入射光の照射領域Rが第1感度部分21から外れていても、照射領域Rの中心位置(XY位置)を第1感度部分21に近づけることができ、光源の3次元の位置検出の精度が高まる。
【0073】
また、変形例2の3次元センサ2によれば、複数の光源からの入射光を互いに異なる周波数で変調した変調光(パルス光)とすることにより、複数の光源の3次元の位置を同時に検出できる。複数の光源は、光電変換素子20の第1感度部分21の第1感度領域のパターンの延在方向に配列される。演算部40は、光電変換素子20から出力される複数の入射光に対応して変調された出力電流に基づいて、周波数ごとに、上述したように入射光の入射方向、入射光のスポットサイズ、および、光源のZ方向(奥行き)の位置を検出し、被写体の3次元の位置を検出すればよい。
【0074】
なお、変形例2の3次元センサ2では、パン機構により光源を追尾する形態を例示したが、変形例2の3次元センサ2の特徴は、チルト機構により光源を追尾する形態にも適用可能である。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、図2に示すようにヘテロ接合型の光電変換素子20を例示したが、本発明の特徴は、ヘテロ接合型の光電変換素子に限らず、ホモ接合型の光電変換素子等の種々の光電変換素子に適用可能である。
【0076】
また、本実施形態では、受光面側の導電型半導体層221としてp型半導体層を例示し、裏面側の導電型半導体層231としてn型半導体層を例示した。しかし、受光面側の導電型半導体層221が、アモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型半導体層であり、裏面側の導電型半導体層231が、アモルファスシリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型半導体層であってもよい。
【0077】
また、本実施形態では、半導体基板210としてn型半導体基板を例示したが、半導体基板210は、結晶シリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型半導体基板であってもよい。
【0078】
また、本実施形態では、結晶シリコン基板を有する光電変換素子を例示したが、これに限定されない。例えば、光電変換素子は、ガリウムヒ素(GaAs)基板を有していてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 光電変換装置
2 3次元センサ
20 光電変換素子
21 第1感度部分
22 第2感度部分
30 記憶部
40 演算部
50 光学レンズ
60 パンおよびチルト機構(光源追尾機構)
61 パン機構(またはチルト機構:光源追尾機構)
210 半導体基板(光電変換基板)
220,230 パッシベーション層
221 p型半導体層(第1導電型半導体層)
222,232 透明電極層
223,233 電極層(第1電極)
224,234 電極層(第2電極)
231 n型半導体層(第2導電型半導体層)
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B