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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】フィルム延伸装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/20 20060101AFI20220725BHJP
【FI】
B29C55/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019548444
(86)(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2018054751
(87)【国際公開番号】W WO2018162278
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】102017104582.1
(32)【優先日】2017-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591021578
【氏名又は名称】リンダウェル、ドルニエ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング
【氏名又は名称原語表記】LINDAUER DORNIER GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】カルシュテン、レッシュ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン、ベイル
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-247139(JP,A)
【文献】特開2009-092760(JP,A)
【文献】特開平10-278108(JP,A)
【文献】特表2000-500714(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第03023505(DE,A1)
【文献】特開2012-153134(JP,A)
【文献】特開2009-113488(JP,A)
【文献】特開2014-194483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00-55/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともそれぞれ1つの横延伸領域と1つのフィルム収縮領域とを備えた逐次二軸延伸するためのフィルム延伸装置であって、該フィルム延伸装置が、処理すべきフィルム(2)を前記装置を通して移動させる無端の駆動チェーン(1)を有しており、該駆動チェーン(1)が、クリップ(9)として形成されたクランプ要素を支持しており、前記駆動チェーン(1)が、前記フィルム収縮領域が終わる領域または前記フィルム収縮領域の下流側に配置された第1の駆動装置(4)によって駆動可能であり、前記駆動チェーン(1)によって、前記クリップ(9)の相互間隔が可変である、フィルム延伸装置において、
前記クリップ(9)の相互間隔が減少可能となる前記フィルム収縮領域の上流側に、スプロケット歯列によって前記駆動チェーン(1)に係合する少なくとも1つの第2の駆動装置(5)が配置されており、該第2の駆動装置(5)が、連結されて前記フィルム収縮領域の上流側の前記駆動チェーン(1)の力を吸収することによって、前記第1の駆動装置(4)にかかる負荷を軽減し、前記第2の駆動装置(5)によって、連結された状態において、該第2の駆動装置(5)の下流側のチェーン力FK3が、前記横延伸領域が終わるところのチェーン力FK2に対して小さいことが達成されることを特徴とする、フィルム延伸装置。
【請求項2】
前記第1の駆動装置(4)が回転数調整式であり、前記第2の駆動装置(5)が、トルク調整式であり、該第2の駆動装置(5)が、前記第1の駆動装置(4)を実質的に一定の最小引張応力に保つことを特徴とする、請求項1記載のフィルム延伸装置。
【請求項3】
前記スプロケット歯列がピン歯車歯列として形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載のフィルム延伸装置。
【請求項4】
前記第2の駆動装置(5)が、循環するクリップチェーンとして形成された前記駆動チェーン(1)に力伝達要素(13)によって係合していることを特徴とする、請求項1記載のフィルム延伸装置。
【請求項5】
前記第2の駆動装置(5)が、前記横延伸領域の始点の下流側または実質的に前記横延伸領域の中間または前記横延伸領域の終点の下流側であって前記フィルム収縮領域の上流側で前記駆動チェーン(1)に係合して、該駆動チェーン(1)を駆動することを特徴とする、請求項記載のフィルム延伸装置。
【請求項6】
前記第2の駆動装置(5)が、選択的にオンまたはオフに切換可能であることを特徴とする、請求項1記載のフィルム延伸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともそれぞれ1つの横延伸領域と1つのフィルム収縮領域とを備えたフィルム延伸装置に関する。
【0002】
キャストフィルムは、相応のフィルム延伸装置において逐次または同時に行われる二軸延伸によって製造することができる。
【0003】
同時に作業するフィルム延伸装置は、縦延伸および横延伸のプロセスを同じ機械内で実施する。逐次に作業するフィルム延伸装置は、両方のステップを切り離している。まず、流延されたフィルムが縦延伸機内で長く引き延ばされる。その際、倍率は材料に応じて異なっている(例えば、PETでは約1:3.5およびPPでは約1:5.5)。通常、この縦延伸プロセスは、それぞれ異なる速度のロールによって実現される。その後、フィルムが後続の機械内にガイドされ、そこで、横方向に引き延ばされる。これは、通常、フィルムを固定する左右のチェーンによって実現される。両チェーンは横延伸領域で互いに遠ざけられる。その際、倍率は材料に応じて異なっている(例えば、PETでは約1:4およびPPでは1:9)。
【0004】
本発明は、逐次に製造されるフィルムに関する。フィルムの逐次の製造は、多数の利点のほかに、ある制限を有している。つまり、横延伸が行われた後、フィルムが熱処理される。この工程は「熱固定」とも呼ばれる。その際には、両チェーンが再びほぼ並走させられる。こうして、意図した横収縮が達成される。350~900%の寸法変化を伴う延伸工程と異なり、収縮は材料に応じて20%を大幅に下回る(例えば、PETでは約4%およびPPでは約8%)。通常、フィルムは縦方向でチェーンに挟持されており、このチェーンは不変の長さを有しているので、通常の機械では、縦収縮を機械的に調整することができない。その結果、こうして製造されたフィルムが、それぞれ異なる物理的な値、例えば縦方向および横方向における降伏点を有することになる。これを阻止するために、可変のピッチを有するチェーンが使用される。本発明は、正確には、機械的に調整可能な縦収縮を可能にする可変のチェーンピッチを有する特殊な横延伸機に関する。ここで、収縮機について論じる。なぜならば、延伸と異なり、ここでは、フィルムの短縮が生じるからである。これは、横延伸後または横延伸中に生じる。しかしながら、通常は専ら横延伸が行われた後である。
【0005】
このような機械によって、例えば光学フィルムを製造することができる。この光学フィルムは、炉内にて150℃で製造した後、縦方向および横方向に正確に等しい収縮値を有している。つまり、このような機械の目的は、逐次の延伸が行われた後、製造後のフィルムの縦収縮および横収縮を意図したように互いに調和させることができるようにすることである。
【0006】
同時に作業するフィルム延伸装置は、MESIMシステムとして知られている機械的なシステムまたはLISIMシステムとして知られている電気的なシステムとして形成することができる。両システムは、理論上、横延伸が行われた後、上述した収縮も実現することができる。本発明は、機械的なシステム、例えばMESIM装置を基にしている。しかしながら、公知のMESIM装置は、まさに延伸後に極めて狭い使用制限を受ける。その結果、公知のシステムでは、横延伸が行われた後にチェーンに大きな力が存在していることになる。公知のMESIMシステムは、クリップのセルフロックのため、小さなピッチの領域で不均一に運転される傾向にある。延伸すべきフィルムの特性を変えるために延伸状況の変更を行いたい場合、このことは、MESIMシステムでは、通常、フィルム延伸装置における比較的大規模な組換え作業によってしか可能とならない。以下に、これらの公知のMESIMシステムおよびその制限のうちの幾つかを詳しく説明する。
【0007】
LISIMシステムについては、明細書では詳しく説明しない。なぜならば、これは、全く別の駆動コンセプトを有しているからである。このシステムでは、互いに関連し合うチェーンが存在しない。これに相応して、変位・調節システムによるチェーンピッチの変更も不要となる。これによって、調節システムに高い変位力も発生しない。
【0008】
「二重クリップ型折尺状ジョイント要素(Doppelkluppe-Zollstock-Gelenkelemente)」とも呼ばれる第1の原理は、クリップ支持体を有している。このクリップ支持体は、主ガイドレール、つまり、クリップトラックに沿ってガイドされ、ジョイントバーによって折尺もしくはフォールディングルールの形態で互いに結合されている。この結合は、2つのクリップ支持体の間にそれぞれ1つのジョイント点が存在していて、このジョイント点に付加的なガイド要素が枢着されているように実施されている。この付加的なガイド要素、いわゆる二重クリップの列は、付加的なガイドレール、つまり、制御レールに主制御レールから規定された間隔を置いてガイドされる。この間隔は可変である。機械的な伝動装置用のこの第1の原理は、例えば独国特許第3741582号明細書に基づき公知である。
【0009】
「縮図器に類似のシザース機構(Scherensystem)」である第2の原理は、クリップ支持体を有している。このクリップ支持体は、主ガイドレール、つまり、クリップトラックに沿ってガイドされ、ジョイントバーの二重のシステムによって互いに結合されている。ここでも、2つのクリップの間にそれぞれ1つのジョイント点が設けられていて、このジョイント点でジョイントバーはシザースジョイントのように交差している。各クリップ支持体には、付加的なガイド要素が位置している。この付加的なガイド要素の列は、付加的なガイドレール、つまり、制御レールに主制御レールから間隔を置いてガイドされる。この間隔は可変である。この第2の原理は、例えば独国特許出願公開第3023505号明細書に基づき公知である。この第2の原理では、永久磁石を備えた搬送ベルトが、ジョイントバーチェーンに沿って、しかしながら、少なくとも延伸ゾーンの領域で各クリップガイドトラックに対して平行に配置されている。ジョイントバーチェーンのリンクは、搬送ベルトに面した領域に、磁界に応答する反応材料から成るライニングを有している。いま、運動フローは、搬送ベルトの運動速度が、延伸すべきフィルムの走出速度よりも高くなるように実現される。これによって、縦延伸が実現される。
【0010】
したがって、これに関連した欠点を改善するために、機械的なシステムでは、装置の入口および出口に、多少なりとも手間のかかる補助駆動システムが使用される。このようなシステムは、クリップチェーンの上流側の端部に設けられた駆動装置と、チェーンの戻り側の端部に設けられた別の駆動装置との2つの駆動装置を有している。通常、これら両駆動装置は互いに同期され、これによって、実質的に遅れなしの循環を保証することができる。このようなシステムは、米国特許第7322078号明細書に基づき公知である。前述した2つの駆動装置は横延伸領域にしか関与しておらず、例えばフィルム収縮領域において生じる特別な問題は、米国特許第7322078号明細書では取り扱われていない。両駆動装置は、意図的にチェーン反転点に配置されており、明らかに、これによって、クリップチェーンへの駆動される歯車の良好な噛合いが保証される。
【0011】
さらに、特開2004-122640号公報には、高い延伸率、急激な延伸および横延伸方向における高い延伸率にも適したフィルム延伸装置が記載されている。急激な延伸は、短縮された延伸区分でもって保証されることが望ましい。
【0012】
独国特許第2841510号明細書に基づき、二軸延伸されたフィルムウェブを製造するための装置が公知である。この公知の装置では、延伸すべきフィルムの両側に緊締手段として設けられた複数のクリップの相互の位置が可変である。これらのクリップは、延伸すべきフィルムの両側に配置された無端のガイドトラックにガイドされていて、互いに結合手段によって結合されている。公知の装置は、ガイドトラックが互いに発散する延伸ゾーンと、ガイドトラックが収斂もする熱固定ゾーンとを有している。クリップ同士の間隔は、所望の縦延伸比もしくは可能な縦収縮比に応じて、結合手段同士の間隔、つまり、クリップからクリップまでの間隔が増加するかまたは減少するように、結合手段を介して制御可能である。間隔の変更はドラムによって実現され、このドラムが各緊締手段を有している。また、ドラムに対して結合手段が、繰出し可能であり、巻上げ可能である。公知の装置では、極めて僅かな縦収縮状況しか可能とならない。緊締手段もしくはクリップを有する各ガイドトラックには、各駆動装置が設けられている。
【0013】
また、独国特許出願公開第3207384号明細書に基づいても、フィルム延伸のための装置が公知である。この公知の装置では、クリップとして形成されたクランプ部材が、クリップが取り付けられている駆動チェーンに対して相対的に調整可能である。クリップチェーンは、無端に循環しかつ駆動装置により駆動可能なクリップチェーンである。延伸すべきフィルムは両側でクリップによって保持され、個々のクリップの間の間隔は、縦延伸比もしくは可能な縦収縮比に応じて、制御部材により外部から影響を与えることができる独立した機構を介して制御可能である。緊締手段用の支持体として、歯列を備えていて、駆動可能であり、自体伸張し得ない無端の引張機構が用いられる。この引張機構には、歯車を介して、縦方向に移動可能な緊締手段が係合している。
さらに、米国特許出願公開第2018/0290370号明細書には、同時延伸のためのフィルム延伸装置が記載されている。このフィルム延伸装置では、炉を通走してフィルムを保持するためのクリップが、伝動モータによって歯車を介して駆動チェーンに機械的に結合されている。伝動モータはハウジングによって取り囲まれている。このハウジングは、同じく炉の領域に配置されているという理由から常に手間をかけて冷却される。各チェーンには、各側で6つの歯車が割り当てられている。これらの歯車は、駆動装置としての対応する伝動モータを横延伸領域に備えている。この横延伸領域では、同時に縦延伸も実施される。この公知のフィルム延伸装置の対象では、別個のフィルム収縮領域が記載されており、ましてや、高い収縮率を可能にする収縮領域など決して記載されていない。そして、最後に、特開平02-095825号公報に記載された同時延伸装置では、確かに、駆動チェーンの各変向領域に配置された駆動装置同士の間で、駆動チェーンの真っ直ぐなもしくは引き伸ばされた領域に、チェーン用の中間駆動装置もしくは補助駆動装置が設けられている。しかしながら、この駆動装置は、チェーンリンクを折り畳むために働く。これによって、個々のクリップの相互間隔が減少させられる。しかしながら、この公知のフィルム延伸装置では、中間駆動装置が、各駆動チェーンの走行中の所定の不整を安定させるために働くように寸法設定されるにすぎない。フィルム収縮領域のすぐ上流側またはフィルム収縮領域が始まるところのチェーンにおける力が、横延伸領域が終わるところのチェーンにおける力に対して小さくなるように、チェーンにおける力を形成するかもしくは可能にする示唆は、この公知先行技術には記載されていない。これに応じて、収縮も極めて僅かしか行われず、また、極めて僅かしか可能とならない。
【0014】
さらに、独国特許第112008000240号明細書に基づき、縮図器に類似のシザース機構が公知である。この公知のシザース機構では、クリップチェーンに配置されたクリップの相互間隔が、基準レールに対して相対的なスペース間隔に応じて可変に確定可能である。駆動装置の駆動力をクリップチェーンに伝達するために、駆動リングギヤが用いられる。
【0015】
フィルムを二軸延伸するための公知の装置には共通して、片側にそれぞれ配置された無端のクリップチェーンを駆動するために、それぞれ1つの単独の駆動装置が設けられているかまたは無端のクリップチェーンの各反転領域にだけ駆動装置が設けられている。このような配置形態では、米国特許第7322078号明細書に記載の配置形態でさえ、ほんの僅かな収縮率しか実現することができない。なぜならば、このような駆動装置配列は、クリップチェーンにかかる負荷を横延伸領域で確かに減少させるからである。しかしながら、クリップチェーンは、前述した同先行技術明細書に特段記載されていない収縮領域において、クリップチェーンの摩耗を最小限に抑えることができるように、クリップチェーンもしくは個々のクリップにかかる負荷を補償することができない。横延伸後のチェーンにおける力は、チェーンの短縮のために必要となる力を小さく保つために、十分に減少させられることが望ましい。この場合に注意しなければならないのは、横延伸中にこそチェーン力が極めて高いパーセンテージで発生するということである。ここ横延伸の領域では作業が行われなければならず、横延伸領域の上流側の全ての駆動装置はこの力を加えることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の課題は、クリップを保持しかつガイドするチェーンに作用する力を、公知のシステムに基づき存在する力と比較して増加させることなく、例えば最大25%の高い収縮率を実現することができる、少なくとも1つの横延伸領域と1つのフィルム収縮領域とを備えたフィルム延伸装置を提供することにある。特に調節システムにおけるチェーンの高い変位力が回避されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、この課題は、請求項1に記載の特徴を有するフィルム延伸装置によって解決される。有利な改良形態は従属請求項に定義してある。
【0018】
本発明によれば、フィルム延伸装置は、少なくとも1つの横延伸領域と1つのフィルム収縮領域とを有している。フィルム延伸装置は、延伸すべきフィルムの各側に設けられた無端の駆動チェーンを有している。この駆動チェーンは、クリップとして形成されたクランプ要素を支持していて、処理すべきフィルムを装置を通して移動させる。各駆動チェーンは各第1の駆動装置によって駆動可能である。この第1の駆動装置は、フィルム収縮領域が終わる領域またはフィルム収縮領域の下流側に配置されている。クリップとして形成されたクランプ要素を支持していて、処理すべきフィルムを装置を通して移動させる各駆動チェーンのクリップの相互間隔は可変である。
【0019】
フィルム収縮領域では、クリップの相互間隔を減少させることができなければならない。したがって、クリップが配置された無端の駆動チェーンに、フィルムの収縮率に対してクリップ同士の間隔を調整することができるかもしくは適合させることができる機構が設けられている。フィルム収縮領域の上流側には、駆動チェーン用の少なくとも1つの第2の駆動装置が設けられている。この第2の駆動装置は、補助駆動装置と呼ぶこともできるかもしくは補助駆動装置として機能し、駆動チェーンの力が第2の駆動装置によって吸収されることにより、フィルム収縮領域の上流側で駆動チェーンにかかる負荷を軽減する。公知の装置では、横延伸後にチェーンに加えられている力が、チェーンの短縮のために必要となる変位力に直接関与する。これによって、例えば、延伸比(大きな延伸角は大きなチェーン力を意味する)、固有の延伸力(各種材料はここでは固有の値を有する)、フィルム厚さ(延伸すべきフィルムが厚くなれば、チェーン力も大きくなる)が、実現すべき収縮値に直接関与する。例えば、約6mのフィルム幅および125μmの最終厚さを有するPETフィルムでは、このシステムの機械的な耐用年数が過度に短くなってしまうほど、チェーンの短縮のための変位力が大きくなる前に、約2~3%の収縮しか可能とならない。このフィルムの場合、3%を上回る値であると、変位システムが機械的に故障すらしてしまう恐れがある。いま、本発明によれば、第2の駆動装置がフィルム収縮領域の上流側に配置されていて、そこで、駆動チェーンに係合することにより、この駆動チェーンに作用する力が収縮の開始前にチェーンから、いわば取り除かれる。これは、チェーンが実質的に力なしの状態にされることを意味している。この力なしの状態にされることによって、つまるところ、チェーンリンクにかかる負荷が過度に増加することなしに、フィルム通走方向に対して側方への、互いに隣り合ったチェーンリンクの大きな変位を実現することが可能となる。つまり、本発明によれば、第2の駆動装置、すなわち、補助駆動装置もしくは付加駆動装置によって、縦収縮領域において制御された力が可能となる。第2の駆動装置はオフに切換可能であるかもしくは離脱可能である。これによって、このような機械的な収縮機の、フィルム幅、延伸角、フィルム厚さ、材料特性値等に関する制限が無くなる。
【0020】
フィルム収縮領域で、いわゆるMD収縮が実施されるような場合に、第2の駆動装置がオンに切り換えられるかまたは連結されると、この駆動装置は、駆動チェーンの駆動のために必要となる張力の、好ましくは約80%を担う。
【0021】
好ましくは、第1の駆動装置が回転数調整式であり、第2の駆動装置がトルク調整式である。これによって、第1の駆動装置にかかる負荷が実質的に一定に保たれることが達成される。つまり、駆動チェーンがその引伸しの傾向を維持するように、最小引張応力が維持される。これは、第1の駆動装置が実質的に一定の最小引張応力に保たれることを意味している。
【0022】
さらに好ましくは、第2の駆動装置が、スプロケット歯列によって駆動チェーンに係合する。好ましくは、駆動チェーンが終わるところに相応の巻掛け角を伴って配置された第1の駆動装置と異なり、第2の駆動装置は、無端チェーンの両変向点の間に配置されたフィルム収縮領域の上流側の領域に配置されていて、そのスプロケット歯列によって、好ましくは、実質的に引き伸ばされて走行する駆動チェーンに係合する。
【0023】
好ましくは、スプロケット歯列がピン歯車歯列として形成されている。
【0024】
本発明のさらに1つの改良形態によれば、第2の駆動装置が、個々のリニアモータによって駆動チェーンに係合する。これによって、この駆動チェーンが駆動される。
【0025】
好ましくは、第2の駆動装置が、循環するクリップチェーンに対して、力伝達要素によって駆動チェーンに係合するように形成されている。
【0026】
ますます大型化して広幅になる傾向にあるフィルム延伸装置によって、例えば、装置1つあたり多くの個数のクリップ、例えば約2000個のクリップが設けられなければならない。装置が大型化すれば、横延伸後のチェーン力も大きくなり、同じパラメータで収縮システムに必要となる変位力も大きくなる。つまり、公知の機械的な収縮システムの使用に対する制限も狭くなる。この極端に大きくて重い駆動チェーンにおいて、特に最大25%の高い収縮率に基づき、枢動自在に互いに結合された隣り合ったチェーンリンクの大きな変位を実現したい場合には、変位軸受に加えられる力が過度に高くなり、これによって、相応の構成部材が壊れてしまう。とりわけ、クリップチェーンの実質的に引き伸ばされた領域への1つの駆動装置の係合時に、第2の駆動装置から駆動チェーンへの力の導入に関する問題があるという問題が生じる。なぜならば、本発明により提案されたフィルム収縮領域の上流側の箇所には、クリップチェーンが引き伸ばされているため、このチェーンへの相応の駆動装置の歯の好ましくない係合条件が存在するからである。この理由から、1つの改良形態によれば、ピン歯車スプロケットがスプロケット歯列として設けられていることが提案される。
【0027】
以下に、本発明の更なる利点、構成および詳細を、実施例に関連した図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1a】補助駆動装置なしのフィルム延伸装置のクリップチェーンを、横延伸領域および収縮領域でもって把持されたフィルムと共に示す原理的な平面図である。
図1b】記入した相応の力によるクリップチェーンの変位を説明するための図1aの詳細Xを示す図である。
図2a】本発明による付加的な補助駆動装置を備えたフィルム延伸装置のクリップチェーンを、横延伸領域および収縮領域でもって把持されたフィルムと共に示す原理的な平面図である。
図2b】記入した相応の力によるクリップチェーンの変位を説明するための図2aの詳細Xを示す図である。
図3】クリップチェーンに係合したスプロケットを備えた補助駆動装置の斜視図である。
図4】クリップチェーンに係合した図3に示したスプロケットの平面図である(補助駆動装置の図示はなし)。
図5】付加的な補助駆動チェーンを介してクリップチェーンに作用する摩擦面または磁石の形態の力伝達要素を備えた本発明の第2の実施例による補助駆動装置を示す図である。
図6】クリップチェーンに作用するリニアモータを備えた補助駆動装置の第3の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1aには、フィルム延伸装置のクリップチェーン1がフィルム区分と共に原理的な平面図で示してある。このフィルム区分は、クリップチェーン1によって把持されていて、図示の区分を通して搬送され、横延伸領域および収縮領域において処理される。簡略化のため、フィルム延伸装置のフィルム2の左側だけが図示してある。フィルム延伸装置の中心3もしくはフィルム2の中心は、一点鎖線の中心線によって図示してある。クリップチェーン1は、このクリップチェーン1がフィルム2をリリースする反転点に、モータMの形態の駆動装置4を備えている。公知の装置では、この駆動装置4が、クリップチェーン1全体をその戻りに関しても送りに関しても横延伸領域および収縮領域で運動させなければならない駆動装置である。
【0030】
この力状況を考慮して、図1bに示した詳細図Xに相応して、図の上側の部分では、変位力Fがゼロに等しく、したがって、クリップチェーン1が引き伸ばされていることが明らかである。チェーンは、例えば、2つのクリップ9にわたってもしくはフィルム2のクランプ箇所に対して図示してある。両クリップ9は相互間の中間に、それぞれクリップピッチの半分のピッチIの間隔を置いてジョイントを有している。つまり、クリップピッチは2Iである。上側の図には、縦収縮Sが生じていない場合の状況が示してある。横延伸領域が終わるところに、チェーン力FK2が付加的に記入してある。このチェーン力FK2はここでチェーンに作用している。図1bに示した詳細図Xの下側の部分には、クリップチェーン1が、2つの隣り合ったクリップ9の間で変位力Fによって、この変位力Fが作用する中間のジョイントを中心として、チェーンの引き伸ばされた位置から変位させられていることが示してある。
【0031】
図2aによれば、収縮領域が始まる領域に付加的に補助駆動装置5が設けられている。この補助駆動装置5は補助モータHMによって駆動されていて、フィルム2の縦収縮も横収縮も実施される領域でクリップチェーン1に係合している。縦収縮8は符号Sによって示してあり、図2bに詳細Xとして、相応の作用力を記入して拡大して示してある。さらに、フィルム2は、符号Sで示した横収縮7を受ける。縦収縮Sと横収縮Sとは、収縮領域で同時に実施される。図2aの左側には、クリップチェーン1に対してチェーン緊張力FSpが記入してある。さらに、フィルム係合が始まるところのチェーン力としてのチェーン力FK0と、横延伸が始まるところのチェーン力としてのチェーン力FK1と、横延伸が終わるところのチェーン力としてのチェーン力FK2と、補助駆動装置5の下流側のチェーン力としてのチェーン力FK3と、フィルム係合が終わるかもしくはチェーンの戻りが始まるところのチェーン力としてのチェーン力FK4とが記入してある。FK1とFK2との間では、延伸角αを同じく記入した横延伸領域に延伸力FReが作用する。付加的には、同じくクリップチェーン1により加えられなければならないフィルム張力Fが記入してある。力FK0は、張力の半分の力とチェーン緊張力との和から得られる。チェーン力FK1自体は、FK0と摩擦力Fとの和から得られる。少ない摩擦力を前提とすれば、FK1がFK0にほぼ等しいことが明らかとなる。FK1とFK2との間の横延伸領域では、横延伸が終わるところのチェーン力FK2に対して、延伸角αを考慮して、FK1とFReとの力の和が、sinαと、同じく再び無視できる程度の摩擦力Fとの和により割られることで得られる。無視できる程度の摩擦力の場合、フィルム係合が終わるかもしくはチェーンの戻りが始まるところのチェーン力FK4に対しても、FK4がFK3にほぼ等しい大きさであることが明らかとなる。
【0032】
縦収縮Sの値は2(1-cosβ)である。これは、変位角βが大きくなれば、縦収縮Sも大きくなることを意味している。また、変位力は、2FK3×tanβによって得られる。これは、βが大きくなれば、FK3もF ’も大きくなることを意味している。図2bに示した図面の下側の部分には、縦収縮が符号Sで示してある。これは、変位力F’による変位により、チェーンの引き伸ばされた長さが短縮されることによって達成される。このような本発明に係るフィルム延伸装置の利点は、簡単なスプロケット駆動装置を使用することができる点にある。しかしながら、特に重要な利点は、あらゆる機械構成において、ほぼあらゆる収縮値を実現することができる点にある。なぜならば、本発明によれば、オンに切り換えられているかもしくは連結されている補助駆動装置5によって、FK3<<FK2となり、これによって、F’<<Fとなることを達成することができるからである。
【0033】
本発明により設けられた付加的な補助駆動装置は、クリップチェーン1に同期されなければならない。さらに、このような付加的な補助駆動装置によって、スプロケット(図3図4も参照)を介して、縦収縮と横収縮とが同時に実現されることが考慮されなければならない。本発明による補助駆動装置5は、駆動チェーンに伝達された力が補助駆動装置、つまり、第2の駆動装置によって吸収されることにより、この第2の駆動装置が、フィルム収縮領域の上流側で駆動チェーンにかかる負荷を軽減するという利点を有している。
【0034】
図3には、本発明による補助駆動装置5が示してある。この補助駆動装置5はスプロケット6を備えている。このスプロケット6は、クリップチェーン1の図示の部分としてのクリップ9に係合した状態で示してある。図4には、クリップチェーン1のクリップ9へのスプロケット6のこの係合条件が平面図で示してある。補助駆動装置5は、図示の簡略化のため省略してある。クリップチェーン1の、実質的に引き伸ばされた部分でスプロケットの歯に係合する補助駆動装置の欠点は、確かに、駆動装置4のスプロケットに当てはまるように、スプロケットへの巻掛けが行われていない点にある。しかしながら、重要な利点は、クリップチェーン1の力が第2の駆動装置により吸収され、これによって、ほぼ任意の収縮率に対して、変位力F’による変位が調整可能かつ実現可能となるように、補助駆動装置5によって、フィルム収縮領域の上流側でのクリップチェーンの負荷軽減を保証することができる点にある。
【0035】
図5には、補助駆動装置5に対する第2の実施例が示してある。この第2の実施例では、クリップの背中部分10を原理図で示したに過ぎないクリップチェーン1への補助駆動装置の力の導入が、付加的な補助駆動チェーン11を介して保証されるかもしくは実現される。この補助駆動チェーン11は、力伝達要素13としての摩擦ライニングまたは磁石を有しており、これによって、補助駆動装置5により発生させられた力が、引き伸ばされたクリップチェーン1の可能な限り長い領域にわたってクリップチェーン1に導入される。スプロケットに比べて、補助駆動装置5の、クリップチェーン1に導入すべき力に応じて、補助駆動チェーン11の相応の長さを選択することができ、これによって、均一な力導入を実現することができるという利点がある。
【0036】
図5に示した実施例に関連して、図6には、別の実施例が示してある。この別の実施例では、本来のクリップチェーン1に対して、同じく補助駆動装置が複数のリニアモータ12によって実現される。これらのリニアモータ12は、クリップチェーン1の引き伸ばされた領域に対して、互いに連続する数多くのチェーンリンクに直接作用し、これによって、分配された均一な力作用ひいてはリニアモータ12から本来のクリップチェーンへの均一な力導入を実現することができる。リニアモータ12によって、図5に示した別の実施例と比較して、場合により生じるスリップを回避することができる。いずれにせよ、図6に示した実施例は、リニアモータ12が、補助駆動チェーンのリンクのように、クリップチェーン1のチェーンリンクに形状接続的に係合し、これによって、リニアモータ12と本来のクリップチェーン1との間のスリップを最初から回避することができ、それにもかかわらず、クリップチェーン1もしくは駆動チェーンひいては駆動装置4(図1a、図2a参照)の負荷軽減のための確実な力導入を保証することができるという利点を有している。
【符号の説明】
【0037】
1 駆動チェーン/クリップチェーン
2 フィルム
3 フィルム延伸装置の中心/縦方向におけるフィルムの中心
4 第1の駆動装置
5 第2の駆動装置/補助駆動装置
6 スプロケット/補助駆動装置
7 横収縮S
8 縦収縮S
9 クリップ
10 背中部分/クリップ
11 補助駆動チェーン
12 リニアモータ
13 力伝達要素(摩擦ライニングまたは磁石)
α 延伸角
β 変位角
I クリップピッチの半分のピッチ
補助駆動装置なしの変位力
’ 補助駆動装置ありの変位力
K0 フィルム係合が始まるところのチェーン力
K1 横延伸が始まるところのチェーン力
K2 横延伸が終わるところのチェーン力
K3 存在する補助駆動装置の下流側のチェーン力
K4 フィルム係合が終わるところの/クリップチェーンの戻りが始まるところのチェーン力
Re 延伸力
摩擦力
フィルム張力
Sp チェーン緊張力
HM 補助モータ
モータ
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6