(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】アンモニアスリップ触媒を有する触媒ウォールフローフィルタ
(51)【国際特許分類】
B01J 29/76 20060101AFI20220725BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20220725BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20220725BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220725BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20220725BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20220725BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220725BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20220725BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
B01J29/76 A ZAB
B01J35/04 301E
B01J37/02 301L
B01J35/04 301L
B01D53/94 222
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
F01N3/28 301D
F01N3/022 C
F01N3/035 A
F01N3/28 301F
(21)【出願番号】P 2019551342
(86)(22)【出願日】2018-03-20
(86)【国際出願番号】 IB2018051855
(87)【国際公開番号】W WO2018172930
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-01-18
(32)【優先日】2017-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】バージェス, ゲイリー アダム
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラー, ガイ リチャード
(72)【発明者】
【氏名】フラナガン, キース アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】マーヴェル, デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス, ポール リチャード
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/160988(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/203249(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0152768(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/86
B01D 53/94
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出処理システムにおける使用のための触媒ウォールフローモノリスフィルタであって、第1の端面、第2の端面、第1の端面から第2の端面までの距離によって規定されるフィルタ長さ、第1の端面と第2の端面との間の縦方向
、縦方向に延びる第1及び第2の複数のチャネル
並びにモノリスを通って軸方向に走る壁を含み、
第1の複数のチャネルが、第1の端面で開いており、第2の端面で閉じており、第2の複数のチャネルが、第2の端面で開いており、第1の端面で閉じており、
モノリスフィルタが、チャネルを規定する表面を有し、且つフィルタ長さ未満の距離にわたって第1の端面から第2の端面へ向かって縦方向に延びる第1のゾーンと、フィルタ長さ未満の距離にわたって第2の端面から第1の端面へ向かって縦方向に延びる第2のゾーンとを有する多孔質基材を含み、
第1のゾーンが、多孔質基材全体に分布する第1のSCR触媒を含み、第2のゾーンが、多孔質基材全体に分布するアンモニア酸化触媒を含み、第2のSCR触媒が、多孔質基材の第2のゾーンの表面を覆う層に位置して
おり、
第1のSCR触媒が、実質的にフィルタの壁内にあり、壁の表面上にはなく、
アンモニア酸化触媒が、実質的にフィルタの壁内にあり、壁の表面上にはなく、
第2のSCR触媒が、第2のゾーンの多孔質基材の表面を覆う層にのみ存在する、
触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項2】
第1のSCR触媒が第2のSCR触媒と同一である、請求項
1に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項3】
第
1のSCR触媒が第2のSCR触媒とは異なる、請求項
1又は2に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項4】
第1のSCR触媒及び第2のSCR触媒の少なくとも一つが、小細孔モレキュラーシーブ、好ましくはゼオライト、中細孔モレキュラーシーブ、好ましくはゼオライト、大細孔モレキュラーシーブ、好ましくはゼオライト、又は卑金属を含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項5】
小細孔モレキュラーシーブが、AEI、AFT、CHA、DDR、EAB、ERI、GIS、GOO、KFI、LEV、LTA、MER、PAU、VNI及びYUGから、好ましくはAEI、CHA及びLTAからなる群より独立して選択される骨格構造を有する、請求項
4に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項6】
第1のSCR触媒及び第2のSCR触媒の少なくとも一つが銅ベータゼオライトを含む、請求項
4に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項7】
第1のSCR触媒及び第2のSCR触媒の少なくとも一つが、Wを含浸させたCeO
2、Wを含浸させたCeZrO
2、及びFeとWを含浸させたZrO
2を含む、請求項
1に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項8】
第1のSCR触媒が、好ましくは、AEI、AFT、CHA、DDR、EAB、ERI、GIS、GOO、KFI、LEV、LTA、MER、PAU、VNI及びYUGの構造ファミリーから、より好ましくはAEI、CHA及びLTAからなる群より選択される骨格構造を有する小細孔モレキュラーシーブを含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項9】
第2のSCR触媒が、大細孔モレキュラーシーブ、好ましくは銅ベータゼオライトであるか、又はWを含浸させたCeO
2、Wを含浸させたCeZrO
2、若しくはFeとWを含浸させたZrO
2から選択される非ゼオライト材料である、請求項1から
8のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項10】
縦方向における第2のゾーンの長さ対第1のゾーンの長さの比が、1:20から1:5、好ましくは約1:9である、請求項1から
9のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項11】
第2のSCR触媒が、モノリス基材の長さの約10%から約50%、約10%から約45%、約10%から約40%、約10%から約35%、約10%から約30%、約10%から約25%、又は約10%から約20%で存在する、請求項1から
6のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項12】
酸化触媒が、貴金属、好ましくは白金、パラジウム又はそれらの組み合わせを含む、請求項1から
11のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項13】
フィルタが、100cpsiから600cpsi(15.5cpscmから93cpscm)のセル密度を有する、請求項1から
12のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項14】
隣接するチャネル間の基材の平均最小厚さが6から20mil(0.015から0.05cm)である、請求項1から
13のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項15】
第2のゾーンの第2のSCR触媒が、10μmから80μmの厚さを有するコーティングとして第2の複数のチャネルの壁を覆っている、請求項1から
14のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項16】
第1のゾーンと第2のゾーンとの間に位置する第3のゾーンであって、多孔質基材全体に分布している第1のSCR触媒と、多孔質基材の表面を覆い、多孔質基材全体に分布していない層に位置する第2のSCR触媒とを含む、第3のゾーンをさらに含む、請求項1から
15のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項17】
第3のゾーンが、モノリス基材の長さの最大10%、好ましくは最大5%の長さを有する、請求項
16に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項18】
(a)第1のゾーンと第2のゾーン;(b)第1のゾーンと第3のゾーン;又は(c)第3のゾーンと第2のゾーンの少なくとも一部の間に間隙をさらに含む、請求項1から
17のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項19】
(a)第1のゾーンと第2のゾーン;(b)第1のゾーンと第3のゾーン;又は(c)第3のゾーンと第2のゾーンの少なくとも一部の間に間隙がない、請求項1から
18のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタ。
【請求項20】
燃焼排気ガスの流れを処理するための排出処理システムであって、請求項1から
19のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタを含み、第1の端面が第2の端面の上流にある、排出処理システム。
【請求項21】
第2のゾーンのコーティングとして第2のSCR触媒を含まないウォールフローフィルタと比較して、NO
x
変換の改善及びN
2
O形成の減少の少なくとも一つを提供する、請求項
20に記載の排出処理システム。
【請求項22】
請求項1から
19のいずれか一項に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタの製造のための方法であって、
(a)第1の端面と第2の端面との間に縦方向を規定する第1の端面及び第2の端
面、縦方向に延びる第1及び第2の複数のチャネル
並びにモノリスを通って軸方向に走る壁を有する多孔質基材を提供することであって、第1の複数のチャネルが、第1の端面で開いており、第2の端面で閉じており、第2の複数のチャネルが、第2の端面で開いており、第1の端面で閉じている、多孔質基材を提供すること;
(b)第1のSCR触媒を含むウォッシュコートを多孔質基材に選択的に浸透させることにより、第1のゾーンを形成すること、
(c)アンモニア酸化触媒を含むウォッシュコートを多孔質基材に選択的に浸透させることにより、アンモニア酸化触媒を含む第2のゾーンの一部を形成すること、及び
(d)第2の複数のチャネルの壁がコーティングにより覆われている第2のゾーンのアンモニア酸化触媒上に第2のSCR触媒のコーティングを形成すること、
を含み、
工程(b)が工程(c)の前に実施され得るか、又は工程(c)が工程(b)の前に実施され得る、方法
であって、
第1のSCR触媒が、実質的にフィルタの壁内にあり、壁の表面上にはなく、
アンモニア酸化触媒が、実質的にフィルタの壁内にあり、壁の表面上にはなく、
第2のSCR触媒が、第2のゾーンの多孔質基材の表面を覆う層にのみ存在する、方法。
【請求項23】
NO
xを含む燃焼排気ガスの流れを処理するための方法であって、排気流を請求項1から
19のいずれか一項に記載のモノリスに通すことを含み、第1の端面が第2の端面の上流にある、方法。
【請求項24】
第2のゾーンのコーティングとして第2のSCR触媒を含まないウォールフローフィルタと比較して、NO
x変換の改善及びN
2O形成の減少の少なくとも一つ
を提供する、請求項
23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車における排出処理システム及び内燃機関排気システムを有する定置システムにおける使用に適したSCR触媒及びアンモニアスリップ触媒を含む触媒ウォールフローモノリスに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン、定置ガスタービン、及び他のシステムにおける炭化水素の燃焼は排気ガスを生成するが、この排気ガスは、NO(一酸化窒素)及びNO2(二酸化窒素)を含む窒素酸化物(NOx)を除去するために処理されなければならない。NOxは、人々の健康問題を多く引き起こすだけでなく、スモッグや酸性雨の形成を含む多くの有害な環境影響を引き起こすことが知られている。排気ガス中のNOxのヒト及び環境への影響を軽減するためには、これらの望ましくない成分を、好ましくは他の有害又は毒性物質を生成しないプロセスによって、排除することが望ましい。
【0003】
エンジン及び発電所における炭化水素系燃料の燃焼は、大部分において、比較的無害な窒素(N2)、水蒸気(H2O)及び二酸化炭素(CO2)を含有する排気ガス又は煙道ガスを生成する。だが、排気ガス及び煙道ガスは、有害及び/又は毒性物質、例えば不完全燃焼から生じる一酸化炭素(CO)、未燃燃料から生じる炭化水素(HC)、過度の燃焼温度から生じる窒素酸化物(NOx)、及び粒子状物質(大部分はスート)も比較的少量で含有する。大気中に放出される排気ガス及び煙道ガスの環境影響を軽減するために、望ましくない成分の量を、好ましくは、別の有害又は有毒な物質を生じないプロセスにより、除去又は低減することが望ましい。
【0004】
リーンバーンガスエンジンで生成された排気ガスは、一般的に、炭化水素燃料の適度な燃焼を確実にするためにもたらされる高比率の酸素に起因して、酸化的である。NOxを元素窒素(N2)と水に変換する選択的触媒還元(SCR)として知られている方法において、触媒及び還元剤を用いてNOxを選択的に還元する必要がある。このプロセスは、地球のオゾン層にとって有害なガスであるN2Oも形成し得る。SCRプロセスでは、ガス状還元剤、典型的には無水アンモニア、アンモニア水又は尿素が、排気ガスが触媒と接触する前に排気ガス流に添加される。還元剤は触媒上に吸着され、NOxは触媒された基材の中及び/又は上を通過する際に還元される。NOxの変換を最大にするためには、化学量論量より多いアンモニアをガス流に添加することがしばしば必要である。しかし、過剰のアンモニアを大気中に放出することは、人々の健康及び環境に有害であろう。さらに、アンモニアは、特に水溶液形態で苛性である。排気管下流の排気管の領域におけるアンモニア及び水の凝縮は、排気システムを損傷し得る腐食性の混合物を生じる可能性がある。したがって、排気ガス中のアンモニアの放出は止めるべきである。従来型の排気システムの多くでは、アンモニア酸化触媒(アンモニアスリップ触媒又は「ASC」としても知られている)がSCR触媒の下流に設置されており、排気ガス中のアンモニアを窒素に変換することによってアンモニアを除去する。アンモニアスリップ触媒の使用は、典型的なディーゼル走行サイクルにわたって90%を超えるNOx変換を可能にし得る。
【0005】
ディーゼルエンジンからの排気ガスにおいて、除去の負担が最も大きい成分の一つはNOxである。NOxのN2への還元は、排ガスが還元の代わりに酸化反応を有利にするのに十分な酸素を含むことから、特に問題となる。それにもかかわらず、NOxは、選択的触媒還元(SCR)として一般に知られるプロセスにより還元されうる。SCRプロセスは、触媒の存在下、アンモニア等の窒素含有還元剤を用いて、NOxを元素の窒素(N2)と水に変換することを含む。SCRプロセスにおいて、アンモニアのようなガス状の還元剤が、排気ガスをSCR触媒と接触させる前に、排気ガス流に添加される。該還元剤は該触媒上に配され、ガスが該触媒化された基材中又はその上を通過する間にNOX還元反応は起こる。アンモニアを使用した化学量論的SCR反応の化学式は次の通りである:
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O
2NO2+4NH3+O2→3N2+6H2O
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2O
【0006】
ほとんどのSCRプロセスは、NOXの変換を最大限にするために、化学量論的過剰量のアンモニアを使用する。放出されたアンモニアガスが大気に負の影響を与え、他の燃焼種と反応し得るため、SCRプロセスを通過する未反応のアンモニア(「アンモニアスリップ」とも呼ばれる)は望ましくない。アンモニアスリップを低減するために、SCRシステムは、SCR触媒の下流にアンモニア酸化触媒(AMOX)(アンモニアスリップ触媒(ASC)としても知られる)を含み得る。
【0007】
排ガス中の過剰アンモニアを酸化するための触媒は既知である。例えば、米国特許第7,393,511号は、貴金属、例えば白金、パラジウム、ロジウム、又はチタニアアルミナ、シリカ、ジルコニア等の担体上の金を含有するアンモニア酸化触媒を記載している。他のアンモニア酸化触媒は、チタニア担体上の酸化バナジウム、酸化タングステン、及び酸化モリブデンの第1の層と、チタニア担体上の白金の第2の層とを含有する(例えば、米国特許第7,410,626号及び同第8,202,481号を参照)。
【0008】
よって、従来のSCRF/ASCオンウォール設計と比較して改善されたNOx変換を提供し、同様のNH3変換及び減少したN2O形成を達成する改善された触媒化ウォールフローモノリスを提供することが望ましい。広範な温度ウインドウにわたる改善されたNOx変換、同様のNH3変換及び減少した望ましくないN2O形成を提供する改善された触媒化ウォールフローモノリスを有することも望ましい。本発明は、これらのニーズを満たす。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様では、排出処理システムにおける使用のための触媒ウォールフローモノリスフィルタは、第1の端面、第2の端面、第1の端面から第2の端面までの距離によって規定されるフィルタ長さ、第1の端面と第2の端面との間の縦方向、並びに縦方向に延びる第1の及び第2の複数のチャネルを含み、
第1の複数のチャネルは、第1の端面で開いており、第2の端面で閉じており、第2の複数のチャネルは、第2の端面で開いており、第1の端面で閉じており、
モノリスフィルタは、チャネルを規定する表面を有し、且つフィルタ長さ未満の距離にわたって第1の端面から第2の端面へ向かって縦方向に延びる第1のゾーンと、フィルタ長さ未満の距離にわたって第2の端面から第1の端面へ向かって縦方向に延びる第2のゾーンとを有する多孔質基材を含み、
第1のゾーンは、多孔質基材全体に分布する第1のSCR触媒を含み、第2のゾーンは、多孔質基材全体に分布するアンモニア酸化触媒を含み、
第2のSCR触媒は、多孔質基材の第2のゾーンの表面を覆う層に位置する。第2のSCR触媒は、(1)第2のゾーンの多孔質基材の表面を覆う層にのみ存在し得る(すなわち、多孔質基材全体に分布していない)(オンウォール)か、又は(2)第2のゾーンの多孔質基材の表面を覆う層(オンウォール)と、第2のゾーンの多孔質基材の実質的に全て又は一部(例えば壁中)(インウォール)とに存在し得る。第2のSCR触媒は、第2のゾーンの多孔質基材の全て又は一部に存在するとき、アンモニア酸化触媒の全て又は一部と共に存在し得る。
【0010】
本発明の第2の態様は、
(a)間に縦方向を規定する第1の端面及び第2の端面並びに縦方向に延びる第1及び第2の複数のチャネルを有する多孔質基材を提供することであって、第1の複数のチャネルが、第1の端面で開いており、第2の端面で閉じており、第2の複数のチャネルが、第2の端面で開いており、第1の端面で閉じている、多孔質基材を提供する、こと;
(b)第1のSCR触媒を含むウォッシュコートを多孔質基材に選択的に浸透させることにより、第1のゾーンを形成すること、
(c)アンモニア酸化触媒を含むウォッシュコートを多孔質基材に選択的に浸透させることにより、第2のゾーンの一部を形成すること、
(c)第2の複数のチャネルの壁がコーティングにより覆われている第2のゾーンのアンモニア酸化触媒上に第2のSCR触媒のコーティングを形成すること、
を含む触媒ウォールフローモノリスフィルタの製造のための方法に関し、
工程(b)が工程(c)の前に実施され得るか、又は工程(c)が工程(b)の前に実施され得る。
【0011】
本発明の第3の態様は、NOx及びアンモニアを含む排気ガスを、本発明の第1の態様の触媒ウォールフローモノリスフィルタと接触させることを含む、排気ガスを処理する方法に関する。
【0012】
次に、以下の非限定的な図面に関して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一態様によるウォールフローモノリスフィルタ1を概略的に示す斜視図である。
【
図2】第2のSCR触媒が第2のゾーンのアンモニア酸化触媒上のコーティングにのみ存在する本発明の構成における二つのSCR触媒及びアンモニア酸化触媒の位置を示す概略図である。
【
図3】触媒が
図2に示される構成に位置する
図1における平面A-Aを通じて示されるウォールフローモノリスフィルタの断面図である。
【
図4】第2のSCR触媒が第2のゾーンのアンモニア酸化触媒上のコーティング及びアンモニア酸化触媒の一部を有する第2のゾーンの基材の一部に存在する本発明の構成における二つのSCR触媒及びアンモニア酸化触媒の位置を示す概略図である。
【
図5】第2のSCR触媒が第2のゾーンのアンモニア酸化触媒上のコーティング及びアンモニア酸化触媒の全てを有する第2のゾーンの基材の全てに存在する本発明の構成における二つのSCR触媒及びアンモニア酸化触媒の位置を示す概略図である。
【
図6】ディーゼルエンジンのための排気ガス処理システムの概略図である。
【
図7】ウォールフローフィルタ及び他の触媒が置かれ得る位置を示すディーゼルエンジンのための排気ガス処理システムの概略図である。
【
図8】約200から約625℃の温度範囲にわたる酸化触媒のインウォール配置対オンウォール配置のNH
3変換率を示すグラフである。
【
図9】約200から約625℃の温度範囲にわたる酸化触媒のインウォール配置対オンウォール配置のNOX変換率を示すグラフである。
【
図10】約200から約625℃の温度範囲にわたる酸化触媒のインウォール配置対オンウォール配置のN
2Oメイクの量を示すグラフである。
【
図11】約200から約625℃の温度範囲にわたる酸化触媒のインウォール配置対オンウォール配置のN
2O選択性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、以下でさらに説明される。以下の文脈において、本発明の異なる態様がより詳細に記載される。そのように記載される各態様は、反することが明らかに示されていない限り、任意の他の態様(複数可)と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であるとして示される任意の特徴は、好ましい又は有利であるとして示される他の特徴と組み合わせることができる。
【0015】
本発明は、排出処理システムにおける使用のためのアンモニアスリップ触媒を含む触媒ウォールフローモノリスフィルタに関する。ウォールフローモノリスは、ディーゼルパーティキュレートフィルターにおける使用に関する当該技術分野でよく知られている。それらは、排気ガス(粒子状物質を含む)の流れを多孔質材料で形成されたウ壁を通過するよう強制することにより作用する。
【0016】
ウォールフローモノリスは、排気ガスの入口である第1の端面と、排気ガスの出口である第2の端面とを有し、それらの間に縦方向を規定する。
【0017】
ウォールフローモノリスフィルタは、モノリスを通って軸方向に走り、一又は複数の触媒でコーティングされている薄壁により分離された多くの平行チャネルを含む。用語「壁」とは、チャネルを形成する基材の物理的構造を意味する。用語「チャネル」とは、基材中の壁により形成される空間を意味する。チャネルの断面は、円形、楕円形又は多角形(三角形、正方形、長方形、六角形又は台形)であり得る。構造は、ハニカムを連想させる。
【0018】
ウォールフローモノリスは、縦方向に延びる第1及び第2の複数のチャネルを有する。第1の複数のチャネルは、第1の端面で開いており、第2の端面で閉じている。第2の複数のチャネルは、第2の端面で開いており、第1の端面で閉じている。チャネルは、好ましくは互いに平行であり、チャネル間に比較的一定の壁厚を提供する。その結果、複数のチャネルの一つに入るガスは、チャネル壁を通って他の複数のチャネルに拡散することなく、モノリスから出ることができない。チャネルは、チャネルの開口端部へのシーラント材料の導入によって閉じられる。好ましくは、第1の複数のチャネルの数は、第2の複数のチャネルの数に等しく、各複数は、モノリス全体に均等に分布する。
【0019】
ウォールフローモノリスは数多くのセルを含む。用語「セル」とは、一又は複数の壁に囲まれたチャネルを意味する。単位断面積当たりのセルの数がセル密度である。好ましくは、多孔質壁と組み合わせた第1及び第2の複数のチャネルの平均断面幅は、1平方インチ当たり(cpsi)100から600、好ましくは200から400(1平方cm当たり(cpscm)15.5から93セル、好ましくは31から64cpscm)のセル密度をもたらす。チャネルは、一定の幅であり得、各複数のチャネルは、均一なチャネル幅を有し得る。しかしながら、好ましくは、使用時に入口として機能する複数のチャネルは、出口として機能する複数のチャネルよりも大きな平均断面幅を有する。好ましくは、差は少なくとも10%である。これにより、フィルタにおける灰貯蔵容量が増加し、再生頻度を低くすることができる。非対称フィルタは米国特許第7,247,184号に記載されており、それは参照により本明細書に援用される。
【0020】
好ましくは、隣接するチャネル間の基材の平均最小厚さ(即ち壁厚)は、6から20ミリ(ここで、「ミリ」は1/1000インチである)(0.015から0.05センチ)である。チャネルは、好ましくは平行であり、好ましくは一定幅を有するため、隣接するチャネル間の最小壁厚は好ましくは一定である。理解されるように、平均最小距離を測定して、再現性のある測定を保証することが必要である。例えば、チャネルが、円形の断面を有し、密集している場合、隣接する二のチャネルの間で壁が最も薄いときに少なくとも一つの点が存在する。壁厚は、好ましくは壁の多孔性及び/又は平均細孔サイズに関連する。例えば、壁厚は、平均細孔サイズの10から50倍であり得る。
【0021】
処理されるガスのチャネル壁の通過を容易にするために、モノリスは多孔質基材から形成されている。基材はまた、触媒材料を保持するための担体としても作用し得る。多孔質基材を形成するのに適した材料は、セラミック様の材料、例えば、コーディエライト、α-アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカ-マグネシア若しくはケイ酸ジルコニウム、又は多孔質、耐火性金属を含む。ウォールフロー基材はまた、セラミック繊維複合材料から形成され得る。好ましいウォールフロー基材はコーディエライト及び炭化ケイ素から形成される。そのような材料は、排気流を処理する際に直面する環境、特に高温に耐えることができ、十分に多孔質に作製されうる。多孔質モノリス基材の製造におけるそのような材料及びそれらの使用は当該技術分野でよく知られている。
【0022】
好ましくは、モノリスフィルタは多孔質であり、40から75%の多孔率を有し得る。多孔率を決定するための適切な技術は、当該技術分野で知られており、水銀ポロシメトリー及びX線トモグラフィーを含む。
【0023】
好ましくは、コーティングされた多孔質基材は、約25から50%の多孔率を有し、触媒表面コーティングは、25から75%の多孔率を有する。触媒コーティングの多孔率は、コーティングされた多孔質基材の多孔率よりも高いことがあり、コーティングされた多孔質基材は、触媒コーティングの多孔率と比較して高い多孔率を有することがある。
【0024】
ウォールフローモノリスフィルタは、少なくとも二つのSCR触媒と、アンモニア酸化触媒とを含む。触媒は、一般的には、触媒材料としてウォールフローモノリスフィルタに塗布される。用語「触媒材料」とは、触媒と一又は複数の非触媒材料、例えば担体、結合剤、レオロジー調整剤、促進剤、安定剤等との組み合わせを意味する。
【0025】
SCR触媒
SCR触媒は、卑金属の酸化物、モレキュラーシーブ、金属交換モレキュラーシーブ又はこれらの混合物であり得る。卑金属は、セリウム(Ce)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、バナジウム(V)、及びこれらの混合物からなる群より選択され得る。アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア及びそれらの組み合わせなどの耐火性金属酸化物上に担持されたバナジウムからなるSCR組成物は、周知であり、自動車用途で商業的に広く使用されている。典型的な組成物は、米国特許第4010238号及び同第4085193号に記載されており、これらの全内容は参照により本明細書に援用される。商業的に、特に自動車用途において使用される組成物は、TiO2であってその上にWO3及びV2O5が各々5~20重量%及び0.5~6重量%の範囲の濃度で分散されているTiO2を含む。これらの触媒は、結合剤及び促進剤として作用する、SiO2及びZrO2などの他の無機材料を含んでもよい。
【0026】
SCR触媒が卑金属である場合、触媒物品は、少なくとも1種の卑金属促進剤をさらに含んでもよい。本明細書で使用される場合、「促進剤」は、触媒に添加されたときに触媒の活性を増加させる物質を意味すると理解される。卑金属促進剤は、金属、金属の酸化物、又はこれらの混合物の形態であってもよい。少なくとも一つの卑金属触媒促進剤は、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、ネオジム(Nd)、ニオブ(Nb)、プラセオジム(Pr)、ストロンチウム(Sr)、タンタル(Ta)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、及びそれらの酸化物から選択され得る。少なくとも一つの卑金属触媒促進剤は、好ましくは、CeO2、CoO、CuO、Fe2O3、MnO2、Mn2O3、SnO2、及びこれらの混合物であり得る。少なくとも1種の卑金属触媒促進剤は、水溶液中の塩、例えば硝酸塩又は酢酸塩などの形態で触媒に添加してもよい。少なくとも1種の卑金属触媒促進剤及び少なくとも1種の卑金属触媒(例えば銅)は、酸化物担体材料上に水溶液から含浸されてもよく、酸化物担体材料を含むウォッシュコートに添加されてもよく、ウォッシュコートで予めコーティングされた担体に含浸されてもよい。SCR触媒は、促進剤金属及び担体の総重量に基づき、少なくとも約0.1重量パーセント、少なくとも約0.5重量パーセント、少なくとも約1重量パーセント、又は少なくとも約2重量パーセントから最大約10重量パーセント、約7重量パーセント、約5重量パーセントの促進剤金属を含有し得る。
【0027】
SCR触媒は、モレキュラーシーブ又は金属交換モレキュラーシーブを含んでもよい。本明細書で使用されるように、「モレキュラーシーブ」とは、ガス又は液体の吸着剤として使用することができる、適切かつ均一なサイズの小さな細孔を含む準安定物質を意味すると理解される。細孔を通過するのに十分小さい分子は吸着され、大きい分子は吸着されない。モレキュラーシーブは、ゼオライトモレキュラーシーブ、非ゼオライトモレキュラーシーブ、又はこれらの混合物であってもよい。
【0028】
ゼオライトモレキュラーシーブは、国際ゼオライト協会(International Zeolite Association(IZA))が発表しているDatabase of Zeolite Structures(ゼオライト構造のデータベース)に列挙されている骨格構造のいずれか1つを有する微多孔アルミノシリケートである。骨格構造には、CHA、BEA、FAU、LTA、MFI、及びMOR型のものが含まれるが、これらに限定されない。これらの構造を有するゼオライトの非限定的な例には、チャバサイト、フージャサイト、ゼオライトY、超安定Y型ゼオライト、ベータゼオライト、モルデナイト、シリカライト、X型ゼオライト、及びZSM-5が含まれる。アルミノシリケートゼオライトは、少なくとも約5、好ましくは少なくとも約20のシリカ/アルミナモル比(SAR)(SiO2/Al2O3と定義される)を有することができ、有効測定範囲は約10~200である。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「非ゼオライト系モレキュラーシーブ」とは、四面体部位の少なくとも一部がケイ素又はアルミニウム以外の元素によって占められている頂点共有四面体骨格を指す。非ゼオライト系モレキュラーシーブの特定の非制限的な例には、SAPO-34、SAPO-37及びSAPO-44等のシリコアルミノホスフェートが含まれる。シリコアルミノホスフェートは、BEA、CHA、FAU、LTA、MFI、MOR及び以下に記載される他の種類等のゼオライトに見られる骨格要素を含有する骨格構造を有し得る。
【0030】
SCR触媒は、小細孔、中細孔又は大細孔モレキュラーシーブ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0031】
SCR触媒は、アルミノシリケートモレキュラーシーブ、金属置換アルミノシリケートモレキュラーシーブ、アルミノホスフェート(AlPO)モレキュラーシーブ、金属置換アルミノホスフェート(MeAlPO)モレキュラーシーブ、シリコアルミノホスフェート(SAPO)モレキュラーシーブ及び金属置換シリコアルミノホスフェート(MeAPSO)モレキュラーシーブ、並びにこれらの混合物からなる群より選択される小細孔モレキュラーシーブを含んでもよい。SCR触媒は、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、LTA、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG及びZON、並びにこれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格型の群より選択される小細孔モレキュラーシーブを含んでもよい。好ましくは、小細孔モレキュラーシーブは、AEI、AFX、CHA、DDR、ERI、ITE、KFI、LTA、LEV、及びSFWからなる骨格型の群より選択される。
【0032】
SCR触媒は、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI及びWEN、並びにこれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格型の群より選択される中細孔モレキュラーシーブを含んでもよい。好ましくは、中細孔モレキュラーシーブは、FER、MFI、及びSTTからなる骨格型の群より選択される。
【0033】
SCR触媒は、AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY及びVET、並びにこれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格型の群より選択される大細孔モレキュラーシーブを含んでもよい。好ましくは、大細孔モレキュラーシーブは、BEA、MOR、及びOFFからなる骨格型の群より選択される。
【0034】
金属交換モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブの外面又はチャネル、キャビティ若しくはケージ内の余分な骨格部位に堆積した、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB又はIIB族のうちの1つからの少なくとも1種の金属を有してもよい。金属は、0価の金属原子又はクラスター、単離されたカチオン、単核又は多核オキシカチオンを含むがこれらに限定されないいくつかの形態のうちの1つの形態で存在しても、又は拡大された(extended)金属酸化物として存在してもよい。好ましくは、金属は、鉄、銅、及びこれらの混合物又は組み合わせである。
【0035】
金属は、適切な溶媒中の金属前駆体の混合物又は溶液を用いて、ゼオライトと組み合わせることができる。用語「金属前駆体」は、ゼオライト上に分散されて触媒活性金属成分をもたらすことができる任意の化合物又は錯体を意味する。溶媒は、他の溶媒を使用することの経済面及び環境面の双方に因り、好ましくは水である。好ましい金属である銅を使用する場合、好適な錯体又は化合物には、限定されないが、無水及び水和硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、銅アセチルアセトネート、酸化銅、水酸化銅、及び銅アミンの塩(例えば[Cu(NH3)4]2+)が含まれる。本発明は、特定の種類、組成又は純度の金属前駆体に限定されない。モレキュラーシーブを金属成分の溶液に添加して懸濁液を形成し、その後これを反応させて金属成分をゼオライト上に分散させることができる。金属は、モレキュラーシーブの外面だけでなく細孔チャネルにも分散されてもよい。金属は、イオン形態で、又は金属酸化物として分散されてもよい。例えば、銅は、銅(II)イオン、銅(I)イオン又は酸化銅として分散されてもよい。金属を含有するモレキュラーシーブを、懸濁液の液相から分離し、洗浄し、乾燥させることができる。その後、得られた金属含有モレキュラーシーブをか焼して、モレキュラーシーブ中に金属を固定することができる。
【0036】
金属交換モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブの外面又はチャネル、キャビティ若しくはケージ内の余分な骨格部位に配置されている、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB又はIIB族を約0.10重量%~約10重量%の範囲で含有してもよい。好ましくは、余分な骨格金属は、約0.2重量%~約5重量%の範囲の量で存在し得る。
【0037】
金属交換モレキュラーシーブは、触媒の総重量の約0.1~約20.0重量%の銅(Cu)を有する銅担持小細孔モレキュラーシーブであり得る。好ましくは、銅は、触媒の総重量の約1重量%から約6重量%で、より好ましくは、触媒の総重量の約1.8重量%から約4.2重量%で存在する。
【0038】
金属交換モレキュラーシーブは、触媒の総重量の約0.1~約20.0重量%の鉄(Fe)を有する鉄担持小細孔モレキュラーシーブであり得る。好ましくは、鉄は、触媒の総重量の約1重量%から約6重量%で、より好ましくは、触媒の総重量の約1.8重量%から約4.2重量%で存在する。
【0039】
金属交換モレキュラーシーブは、触媒の総重量の約0.1~約20.0重量%のマンガン(Mn)を有するマンガン担持小細孔モレキュラーシーブであり得る。好ましくは、マンガンは、触媒の総重量の約1重量%から約6重量%で、より好ましくは、触媒の総重量の約1.8重量%から約4.2重量%で存在する。
【0040】
酸化触媒
酸化触媒は、貴金属又はその混合物を含み得る。好ましくは、貴金属は、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム若しくはロジウム、又はそれらの組み合わせである。より好ましくは、貴金属は、白金又はパラジウム又は白金とパラジウムの組み合わせである。
【0041】
貴金属は、好ましくは、耐火性金属酸化物担体上に配置される。
【0042】
白金族金属は、約0.1g/ft3から約75g/ft3、好ましくは約2g/ft3から約50g/ft3、より好ましくは約5g/ft3から約30g/ft3の量で存在し得る。
【0043】
アンモニア酸化触媒は、低アンモニア貯蔵を有する担体上に白金、パラジウム、又は白金とパラジウムの組み合わせを含み得る。用語「低アンモニア貯蔵を有する担体」とは、担体1m3当たり0.001mmol未満のNH3を貯蔵する担体を意味する。低アンモニア貯蔵を有する担体は好ましくは、AEI、ANA、ATS、BEA、CDO、CFI、CHA、CON、DDR、ERI、FAU、FER、GON、IFR、IFW、IFY、IHW、IMF、IRN、-IRY、ISV、ITE、ITG、-ITN、ITR、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JOZ、LTA、LTF、MEL、MEP、MFI、MRE、MSE、MTF、MTN、MTT、MTW、MVY、MWW、NON、NSI、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFS、SFV、SGT、SOD、SSF、SSO、SSY、STF、STO、STT、SVR、SVV、TON、TUN、UOS、UOV、UTL、UWY、VET、VNIからなる群より選択される骨格型を有するモレキュラーシーブ又はゼオライトである。モレキュラーシーブ又はゼオライトは、より好ましくはBEA、CDO、CON、FAU、MEL、MFI、及びMWWからなる群より選択される骨格型を有するモレキュラーシーブ又はゼオライトであり、さらに一層好ましくは、骨格型はBEA及びMFIからなる群より選択される。
【0044】
酸化触媒を含む層は、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、ジルコニア(ZrO2)、セリア(CeO2)及びチタニア(TiO2)、又はそれらの混合物を含む酸化物担体材料をさらに含み得る。酸化物担体材料は、ペロブスカイト、酸化ニッケル(NiO)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化プラセオジム(III)(Pr2O3)等の他の酸化材料をさらに含み得る。酸化物担体材料は、それら二つ以上の酸化物又は混合酸化物を含み得る(例えば、CeZrO2混合酸化物、TiZrO2混合酸化物、TiSiO2混合酸化物、及びTiAlOx酸化物(xはTiO2対Al2O3の比による))。酸化物担体材料は、担体として機能することに加えて、結合剤としても機能し得る。例えば、アルミナは、アルミナ及びCeZrO2混合酸化物において、担体と結合剤の両方として機能し得る。第2の層は、安定化アルミナ、セリア、シリカ、チタニア及びジルコニアのうちの一又は複数を含む酸化物担体材料を含み得る。安定剤は、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、それらの酸化物、それらいずれか二つ以上の複合酸化物若しくは混合酸化物、又は少なくとも一つのアルカリ土類金属、例えば、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)及びストロンチウム(Sr)から選択され得る。各酸化物担体材料が安定化されている場合、安定剤は同一であっても異なっていてもよい。酸化物担体材料は、Al2O3及びCeO2であり得る。酸化物担体材料がAl2O3である場合、それは、例えばアルファ-、ガンマ-、ベータ-、デルタ-、又はシータ-Al2O3であり得る。担体材料は、混合酸化物又は安定化混合酸化物の形態であり得る。混合酸化物中の金属酸化物は単一層の形態であり、安定化混合酸化物は二相で存在する。好ましくは、酸化触媒を含む層は、第1の及び第2の金属としてのCu及びMn、アルミナ、並びにCeO2/ZrO2又はZr安定化CeO2混合酸化物を含む。Zr安定化CeO2混合酸化物は、Ce及びZrを約1:1のモル比で含み得る。酸化物担体材料は、La安定化Al2O3及びZr安定化CeO2であり得る。第2の層の酸化物担体材料は、約20モル%のLa安定化Al2O3及び約80モル%のZr安定化CeO2を含み得る。
【0045】
本発明のウォールフローモノリスフィルタは、第1の端面から縦方向に延びる第1のゾーンを有するように第1のSCR触媒で処理され、且つ、第2の端面から第1のゾーンへ向かって縦方向に延びる第2のゾーンを形成するようにアンモニア酸化触媒及び第2のSCR触媒で処理される。言い換えれば、(排気ガスの流れに対して)モノリスの一端部は第1のゾーンを形成し、他方の端部の残りのモノリスは第2のゾーンを形成する。第1及び第2のゾーンは、好ましくは、第1及び第2の端面にほぼ平行な平面にある境界で会う。これは、ウォッシュコーティングプロセスを容易にする。しかしながら、円錐形の境界線のような、モノリスの断面にわたって変化する境界線を有することも可能である。モノリスの中心部で温度上昇が認められるため、これは、有利には、モノリス内の第2のゾーンの体積を増加させるのに使用され得る。
【0046】
ウォールフローモノリスフィルタは、第1のゾーンと第2のゾーンの少なくとも一部の間に間隙をさらに含み得る。好ましくは、第1のゾーンと第2のゾーンに少なくとも一部の間には間隙はない。
【0047】
本発明の触媒ウォールフローモノリスを提供するために、触媒材料は多孔質基材に、典型的にはウォッシュコートの形態で塗布される。塗布は、「インウォール」塗布又は「オンウォール」塗布として特徴づけることができる。「インウォール」とは、触媒材料が多孔質材料内の細孔に存在することを意味する。「オンウォール」とは、触媒材料が、チャネル壁上の触媒コーティングとして存在することを意味する。用語「触媒コーティング」とは、コーティングが配置される壁の厚さの約0.1から15%の厚さでモノリスフィルタの壁上に存在する触媒材料を意味する。オンウォール塗布における触媒材料のいくつかは、インウォールで存在し得る。いくつかの構成では、第2のゾーンの第2のSCR触媒は、「オンウォール」及び「インウォール」コーティングの両方に存在し得る。インウォールで存在する第2のSCR触媒の量が本明細書に記載される。
【0048】
「インウォール」又は「オンウォール」塗布のための技術は、塗布される材料の粘度、塗布技術(例えば噴霧又は浸漬)及び異なる溶媒の存在に依拠しうる。かかる塗布技術は、当該技術分野で知られている。ウォッシュコートの粘度は、例えば、その固体含有量に影響を受ける。また、ウォッシュコートの粒子サイズ分布(比較的平坦な分布は、粒子サイズ分布に鋭いピークを有する細かく粉砕されたウォッシュコートとは異なる粘度を与える)、並びにグアーガム及び他のゴムのようなレオロジー調整剤の影響を受ける。適切なコーティング法は、米国特許第6,599,570号、同第8,703,236号及び同第9,138,735号に記載されており、それらは参照により本明細書に援用される。
【0049】
異なる分布の触媒材料を有する基材内の異なるゾーンを提供するために従来技術を使用することが可能である。例えば、基材の特定のゾーンへの「オンウォール」塗布が所望される場合、保護ポリマーコーティング(ポリビニルアセテート等)は、触媒コーティングがそこに形成しないように、残りのゾーンに塗布され得る。例えば、減圧下で残りのウォッシュコートが除去されると、保護ポリマーコーティングは燃焼され得る。
【0050】
第1のゾーンは、多孔質基材全体に分布する第1のSCR触媒を含む。第1のSCR触媒の例は上に記載される。「多孔質基材全体に分布する」とは、材料が多孔質基材内に見られることを意味する。細孔の大部分は、第1のSCR触媒を含有し得る。例えば、これは、触媒に応じて、顕微鏡法又は以下に記載される様々な他の技術を使用して、視覚的に観察することができる。
【0051】
第1のゾーンにおいて、好ましくは、第1の複数のチャネルは、その表面上に触媒材料を含まない。用語「表面上に触媒材料を含まない」とは、触媒材料の外観がないか、チャネルの壁で検出された触媒材料がないか、又はチャネルの壁で検出された任意の触媒材料が、モノリスフィルタの全体的な触媒活性に影響を及ぼさない濃度で存在することを意味する。好ましくは、第2の複数のチャネルは、その表面上に触媒材料を含まない。より好ましくは、第1及び第2の両方の複数のチャネルは、それらの表面上に触媒材料を含まない。
【0052】
第1のSCR触媒は、例えばウォッシュコート法での浸透により、基材の細孔に置かれ得る。この方法は、細孔をコーティングし、その中の触媒材料を保持する一方、ガスがチャネル壁を通って入り込むのに十分な多孔率を維持する。
【0053】
第2のゾーンは、多孔質基材全体に分布している酸化触媒と、基材の壁上のコーティングとしての第2のSCR触媒とを有する。第2のゾーンでは、細孔の大部分はアンモニア酸化触媒を含有する。第1のゾーン及び第2のゾーンの第1のSCR触媒及びアンモニア酸化触媒はそれぞれ、実質的にフィルタの壁内にあり、壁の表面上にはない。
【0054】
第2のSCR触媒は、多孔質基材の第2のゾーンの表面を覆う層に位置する。第2のSCR触媒は、(1)第2のゾーンの多孔質基材の表面を覆う層にのみ存在し得る(すなわち、多孔質基材全体に分布していない)(オンウォール)か、又は(2)第2のゾーンの多孔質基材の表面を覆う層(オンウォール)と、第2のゾーンの多孔質基材の実質的に全て又は一部(例えば壁中)(インウォール)とに存在し得る。用語「第2のゾーンの多孔質の実質的に全て」とは、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の多孔質基材が、基材の壁に第2のSCR触媒を含有することを意味する。用語「第2のゾーンの多孔質の一部」とは、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%、又は約5%未満の多孔質基材が、基材の壁に第2のSCR触媒を含有することを意味する。
【0055】
一構成では、第2のゾーンの第2のSCR触媒は、多孔質基材全体に分布していない。用語「多孔質基材全体に分布していない」とは、材料が基材の壁にのみ存在するか、又は材料の大部分が多孔質基板の壁に存在し、残りの材料が第2のゾーンと関連している多孔質基材の全てではなく一部に存在するかのいずれかを意味する。用語「基材の一部」とは、基材の全てではなく、ある部分を意味する。
【0056】
好ましくは、第2のゾーンのチャネルの触媒材料コーティングは、<25%、<20%、<15%、<10%、及び<5%の一又は複数の厚さのチャネル壁に入り込む。
【0057】
触媒ウォールフローモノリスフィルタは、第2のゾーンの多孔質基材の表面を覆う層及び第2のゾーンの多孔質基材の全てに存在する第2のSCR触媒を有し得る。
【0058】
触媒ウォールフローモノリスフィルタは、多孔質基材の第2のゾーンの表面を覆う層及び第2のゾーンの多孔質基材の一部に存在する第2のSCR触媒を有し得る。
【0059】
第2のSCR触媒は、第2のゾーンの多孔質基材の全て又は一部に存在するとき、アンモニア酸化触媒の全て又は一部と共に存在し得る。
【0060】
第2のゾーンにおいて、一構成において、第2のSCR触媒は、壁中ではなく、実質的に壁上に存在し得る。用語「壁中ではなく、実質的に壁上」とは、大部分、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、又は95%の材料が、第2のゾーンのモノリスの壁上に存在することを意味する。これは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)によって決定され得る。触媒が金属、例えば銅を含むとき、壁中及び壁上の分布を決定するために(電子プローブ微量分析)EPMAが使用され得る。これらの触媒は、例えば、基材の壁中のウォッシュコートの不存在により、顕微鏡法を使用して観察され得る。
【0061】
ある構成では、第2のゾーンの触媒材料は、第2のゾーンの基材の表面に近い細孔中へ延び、コーティング近くの基材の一部に存在し得る。これは、コーティングが基材に接着するために必要であり得る。
【0062】
第2のゾーンでは、酸化触媒はフィルタの壁に存在し、第2のSCR触媒は第2の複数のチャネルの壁を覆うコーティングとして存在する(多孔質壁の出口側)。酸化触媒は、第1のSCR触媒をフィルタの壁に置くのに使用され得る任意の技術を使用して、第2の端面からモノリスへ塗布され得る。第2のSCR触媒を含む触媒コーティングは、コーティングが配置される壁の厚さの約0.1から15%の平均厚さを有し得る。この厚さには、細孔中へ入り込むことに関連している任意の深さは含まれない。第2のSCR触媒を含む触媒材料は、壁上のコーティングとして、第2の端面から第2の複数のチャネルのチャネル壁を覆い得る。壁上のコーティングは、10μmから80μ、好ましくは15から60μm、より好ましくは15から50μmの厚さを有し得る。
【0063】
第2のゾーンは、第2の端面から測定される、約10から約50%のフィルタ長さを覆い得る。例えば、第2のゾーンは、フィルタ長さの10~45%、10~40%、10~35%、10~25%、10~20%、又は10~15%を覆い得る。好ましくは、第2のゾーンは、フィルタ長さの10~25%、25~50%、より好ましくは10~25%を覆う。第2のゾーンの第2のSCR触媒のコーティングは、触媒の濃度勾配も含むことができ、高濃度の第2のSCR触媒はフィルタの入口端に向かっている。
【0064】
触媒ウォールフローモノリスフィルタは、1:10対1:1、好ましくは1:10から1:2、より好ましくは1:10から1:4、さらにより好ましくは1:10から1:5の縦方向における第2のゾーンの長さ対第1のゾーンの長さの比を有し得る。
【0065】
触媒材料の粒子のサイズは、基材中へのそれらの動きを制限するように選択され得る。当業者は、このサイズは処理前のモノリスフィルタの細孔のサイズに依拠することを認識するであろう。
【0066】
アンモニア酸化触媒上の第2のSCR触媒のコーティングは、第2のSCR触媒と、任意選択的に結合剤(例えば、金属酸化物粒子)、繊維(例えば、ガラス又はセラミック不織繊維)、マスキング剤、レオロジー調整剤及び孔形成剤のような一又は複数の他の構成要素とを含有する触媒ウォッシュコートとして塗布され得る。
【0067】
触媒材料は、チャネルの壁上の層として堆積され得る。これは、当該技術分野で知られる様々な技術のいずれか一つ、例えば噴霧又は浸漬により実施され得る。触媒材料は、上記のような厚い粘性のコーティング溶液を使用するなどのいくつかの技術の一つによって多孔質基材に浸透することを実質的に防止することができる。第2のSCR触媒のいくつが多孔質基材に見られる構成において、第2のSCR触媒の粒子サイズ分布は、より広く、第2のSCR触媒が多孔質基材の表面上のコーティングとしてのみ存在するときに使用される大量の小さなサイズの粒子を包含し得る。当業者は、薄められた溶液などのウォッシュコートへの変更が、壁への浸透を増加させることを可能にすることを認識するであろう。
【0068】
多孔質基材の第1のゾーン全体に分布する第1のSCR触媒は、第2の複数のチャネルの表面を覆う第2のSCR触媒と同一であり得る。
【0069】
あるいは、多孔質基材の第1のゾーン全体に分布する第1のSCR触媒は、第2の複数のチャネルの表面を覆う第2のSCR触媒とは異なり得る。
【0070】
好ましくは、多孔質基材の第1のゾーン全体に分布している触媒材料は、小細孔ゼオライトを含む。リーンバーン内燃機関の排気ガス中のNOxを処理するための特定用途を有する小細孔ゼオライトは、AEI、AFT、AFX、CHA、DDR、EAB、ERI、GIS、GOO、KFI、LEV、LTA、MER、PAU、SFW、VNI及びYUG構造ファミリーより選択されるゼオライトを含む。適切な例は米国特許第8,603,432号に記載されており、それは参照により本明細書に援用される。AEI、CHA及びLTAファミリーからの小細孔ゼオライトは、特に好まれる。小細孔ゼオライトは、好ましくは、Cu、Fe及びMnの一又は複数を含む。小細孔ゼオライトは、一又は複数の貴金属(金、銀及び白金族金属)を含み、好ましくは白金族金属、より好ましくはパラジウム又は白金、最も好ましくはパラジウムも含み得る。触媒材料は、Ceをさらに含み得る。
【0071】
第1のSCR触媒は、好ましくは、バナジウムを含有せず、ゼオライトを含まない触媒、又はCu/ベータなどのゼオライト若しくはゼオライトを含有する金属などの、高速過渡応答の触媒を含み得る。
【0072】
好ましくは、銅含有小細孔ゼオライトなどのより耐久性のある触媒は、ウォールフローモノリスの下流部分に位置する。
【0073】
好ましくは、ウォールフローモノリスの下流(後部)セクションに位置するオンウォール触媒である第2のSCR触媒は、第1のSCR触媒よりも高い熱安定性を有する。
【0074】
好ましくは、多孔質基材の第1のゾーン全体に分布する触媒材料と、第2の複数のチャネルの表面を覆う触媒材料とは、銅、鉄又はマンガン含有ゼオライト、例えばAEI、AFX、BEA、CHA及びLTAから独立して選択される。
【0075】
触媒ウォールフローモノリスフィルタは、第1のゾーンと第2のゾーンとの間に位置する第3のゾーンであって、多孔質基材全体に分布している第1のSCR触媒と、多孔質基材の表面を覆い、多孔質基材全体に分布していない層に位置する第2のSCR触媒とを含む、第3のゾーンをさらに含み得る。
【0076】
第3のゾーンは、モノリス基材の長さの最大10%、好ましくは最大5%の長さを有し得る。
【0077】
触媒ウォールフローモノリスフィルタは、(a)第1のゾーンと第2のゾーン;(b)第1のゾーンと第3のゾーン;又は(c)第3のゾーンと第2のゾーンの少なくとも一部の間の間隙をさらに含み得る。
【0078】
触媒ウォールフローモノリスフィルタは、(a)第1のゾーンと第2のゾーン;(b)第1のゾーンと第3のゾーン;又は(c)第3のゾーンと第2のゾーンの少なくとも一部の間に間隙を含まないこともあり得る。
【0079】
排気ガスからのNOxの処理における困難の一つは、排気ガス中に存在するNOxの量が一過性であること、すなわち、加速、減速、及び様々な速度での走行といった運転条件と共に変わることである。この問題を克服するためには、SCR触媒は、窒素還元剤、例えばアンモニアを吸着(又は貯蔵)し、それにより、入手可能な還元剤の適切な供給のための、バッファを提供し得る。上記のようなモレキュラーシーブに基づく触媒はアンモニアを貯蔵することができ、触媒のNH3への曝露の開始時の触媒活性は、触媒がNH3への比較的高い曝露又は飽和曝露を有するときの活性よりも実質的に低い可能性がある。実用的な車両の用途については、これは、良好な活性を確保するために適切なNH3ローディングで触媒を事前にロードする必要があることを意味する。しかしながら、この要件にはいくつかの重大な問題がある。特に、一部の操作条件では、必要なNH3ローディングを達成することは不可能である。また、この事前ローディング法には制限があり、これは、事前ローディング後にエンジンの動作条件がどうなるかを知ることができないためである。たとえば、触媒にNH3が事前にローディングされているが、その後のエンジン負荷がアイドル状態の場合、NH3は大気にスリップする可能性がある。ゼロアンモニア曝露から飽和アンモニア曝露へのSCR触媒の活性の増加率は、「過渡応答」と呼ばれる。これに関して、第2の複数のチャネルの表面を覆う第2のSCR触媒は、大細孔ゼオライト、好ましくは銅ベータゼオライトであることが好ましい。あるいは、他の非ゼオライト触媒材料、例えばWを含浸させたCeO2、Wを含浸させたCeZrO2、又はFe及びWを含浸させたZrO2などが使用され得る。他の適切な触媒は、当該技術分野で知られており、米国特許第7,985,391号及び米国特許公開第2012275977号に記載され、それらは参照により本明細書に援用される。このような大細孔ゼオライト又は非ゼオライト材料をコーティングとして使用することは、これらの材料が一般に上記の小細孔ゼオライトよりも高速過渡SCR応答を提供するため、これらが有効に機能するために必要な事前にローディングされたアンモニアが大幅に少ないため、有利である。言い換えれば、それらは、小細孔ゼオライトと比較して、より低いNH3曝露で高い活性を有する(触媒の飽和貯蔵容量に比べて低曝露)。上記の小細孔ゼオライトと、現在記載されている大細孔ゼオライト及び非ゼオライト材料との間に相乗的な関係があり得る。
【0080】
別の態様では、燃焼排気ガスの流れを処理するための排出処理システムであって、本発明の第1の態様に記載されるような触媒ウォールフローモノリスを含むシステムが提供される。
【0081】
本明細書に記載の触媒ウォールフローモノリスフィルタは、多くの理由から有益である。SCRFの従来のASCコーティングは、ASCコーティングのDPFの多孔質壁への浸透を≦30%に最小限にする。NOx変換は、酸化成分をフィルタの多孔質壁に位置させることによって同様のNH3変換及びN2O形成の減少を維持しながら、従来のSCRF/ASCオンウォール設計上で改善される。
【0082】
本明細書に記載のフィルタは、下流のウォールフローフィルタチャネルを介して、オンウォールコーティングの第2のSCR触媒と接触できるように、第1のSR触媒を含む第1ゾーンを出た後の排気ガス中に依然としてNOxが存在することを可能にする。これは、SCR触媒がインウォールでのみ存在し、排気ガスの一部が第1ゾーンをバイパスできる構成よりも、反応物と活性触媒成分部位との間のより良好な接触/アクセス性を提供し得る。この構成は、比較的高流量の用途でNOx変換を提供することができ、又は製造コストが安く、潜在的に軽量(燃費を向上させ、CO2排出量が削減される)、パッケージングの問題(キャニング)が少なく、且つ車両にスペースを見つけやすい、より短い/少ない体積の基材を可能にする。本明細書に記載の構成を有するフィルタは、ガス/触媒接触の増加を可能にすることができるが、これは、排気ガスがコーティング中の第2のSCRとさらに接触し得るためである。
【0083】
更なる態様によれば、触媒ウォールフローモノリスの製造のための方法であって、
(a)第1の端面と第2の端面との間に縦方向を規定する第1の端面及び第2の端面並びに縦方向に延びる第1及び第2の複数のチャネルを有する多孔質基材を提供することであって、第1の複数のチャネルが、第1の端面で開いており、第2の端面で閉じており、第2の複数のチャネルが、第2の端面で開いており、第1の端面で閉じている、多孔質基材を提供すること;
(b)第1のSCR触媒を含むウォッシュコートを多孔質基材に選択的に浸透させることにより、第1のゾーンを形成すること、
(c)アンモニア酸化触媒を含むウォッシュコートを多孔質基材に選択的に浸透させることにより、第2のゾーンの一部を形成すること、
(d)第2の複数のチャネルの壁がコーティングにより覆われている第2のゾーンのアンモニア酸化触媒上に第2のSCR触媒のコーティングを形成すること、
を含む方法が提供され、ここで、工程(b)は工程(c)の前に実施され得るか、又は工程(c)は工程(b)の前に実施され得る。
【0084】
第1及び第2基材部分の間の所望の境界がスラリーの表面にあるように、基材を触媒スラリーに垂直に浸すことによって、ウォッシュコートによる基材の選択的な浸透が実施され得る。基材は、所望の量のスラリーが基材へ移動するのを可能にするために十分な期間スラリー中に残され得る。期間は、1分未満、好ましくは約30秒であるべきである。基材はスラリーから除去され、余分なスラリーは、最初に基材のチャネルから排出することを可能にすることによって、その後(スラリー浸透の方向に対して)圧縮空気を基材上のスラリーに吹き付け、その後、スラリーの浸透の方向から真空を引き抜くことによって、ウォールフロー基材から除去される。この技術を使用することにより、触媒スラリーは基材の第1のゾーンの壁に浸透するが、孔は、背圧が最終的な基材に許容できないレベルまで蓄積するほど吸蔵されない。当業者は、背圧の許容できないレベルが、フィルタが結合しているエンジンのサイズ、エンジンが作動される条件、及びフィルタを再生する頻度と方法を含む様々な要因に依拠することを認識するであろう。
【0085】
当業者は、限定されないが、粒子サイズ分布、ウォッシュコートの粘度及び他の非触媒材料、例えば担体、結合剤、レオロジー調整剤、促進剤、安定剤等の存在を含む様々な要因が多孔質壁中に移動され得る第2のSCR触媒の量を制御するために調整され得ることを認識するであろう。
【0086】
コーティングされた基材は、典型的には約100℃で乾燥し、より高い温度(例えば300から450℃)で焼成される。焼成後、ウォッシュコートのローディングは、基材のコーティングされた重量及びコーティングされていない重量から決定され得る。触媒のローディングは、ウォッシュコート中の触媒の量に基づくウォッシュコートのローディングから決定され得る。当業者には明らかであるように、ウォッシュコートのローディングは、コーティングスラリーの固形物含有量を変更することにより修正され得る。あるいは、コーティングスラリー中の基材の繰り返しの浸漬を行い、続いて上記のように過剰のスラリーを除去することができる。
【0087】
第2の触媒材料のコーティングを形成する方法は、当該技術分野で知られており、米国特許第6,599,570号、同第8,703,236号及び同第9,138,735号に記載され、それらは参照により本明細書に援用される。第2の触媒材料のコーティングが基材の第1のゾーンに形成するのを防ぐために、第1のゾーンの表面は、ポリビニルアセテートのような保護ポリマーフィルムで予備コーティングされ得る。これは、触媒材料が第1のゾーンの表面に接着するのを防ぐ。保護ポリマーコーティングは、その後、燃焼され得る。
【0088】
好ましくは、前述の方法によって製造された触媒ウォールフローモノリスは、本明細書に記載の発明の第1の態様のモノリスである。つまり、本発明の第1の態様の全ての特徴は、本明細書に記載のさらなる態様と自由に組み合わせることができる。
【0089】
本発明のさらなる態様によれば、NOx及び粒子状物質を含む燃焼排気ガスの流れを処理するための方法であって、排気流を本発明の第1の態様のモノリスに通すことを含む方法、が提供される。
【0090】
本発明の排気システムは、内燃機関、特にリーンバーン内燃機関、特にディーゼルエンジンのためのものである。
【0091】
図1、3及び4は、本発明の態様の様々な特徴を示す。以下は、特徴の名称及びこれらの図面中の対応する識別子の目録である。
【0092】
本発明によるウォールフローモノリス1が
図1及び
図3に示される。モノリス、縦方向(
図1の両側矢印「a」により示される)に互いに平行に配置された多数のチャネル5,10を含む。多数のチャネルはチャネル5の第1のサブセット及びチャネル10の第2のサブセットを有する。モノリスフィルタは、多孔質材料で構成されている。
【0093】
図1は、第1の端面15で開いており、第2の端面25で密封されている第1のサブセットのチャネル5を通じて排気ガスがモノリスフィルタ1に入る前面へ向かう第1の端面15を有するモノリスフィルタ1を示す。第2のサブセットのチャネル10は、シーリング材20を有する第1の端面15で密封されており、第2の端面25に開口端を有する。フィルタモノリスは、合計長さaを有し、長さbを有する第1のゾーン35及び長さcを有する第2のゾーン40を含む。
図1は、モノリスフィルタを通る平面A-Aも示す。
【0094】
ウォールフローモノリス1の第1のゾーン35は、第1の端面15から距離bだけ延び、チャネル壁45の細孔内の第1のSCR触媒を備えている。これは、当該技術分野で知られ、本明細書の他の箇所で論じられているように、ウォッシュコート塗布法を用いて提供され得る。
【0095】
ウォールフローモノリス1の第2のゾーン40は、第1の端面15に向かって第2の端面25から距離cだけ延び、第1のゾーン35に会う。第2のゾーン40は、チャネル壁45の細孔内にアンモニア酸化触媒41を備えている。第2のSCR触媒42、例えばゼオライト(必ずではないが、好ましくは、第1のSCR触媒36と同一)を含む表面コーティングは、第2のゾーン54内のチャネル壁45の表面に塗布され得る。第2のゾーン40内の閉じたチャネル壁(図示されず)は、好ましくは表面をコーティングされていない。
【0096】
図2は、第2のSCR触媒が第2のゾーンのアンモニア酸化触媒上のコーティングにのみ存在する本発明の構成における二つのSCR触媒及びアンモニア酸化触媒の位置を示す概略図である。第1のゾーンは、フィルタの壁内に位置する第1のSCR触媒を含む。第1のゾーンの下流に位置する第2のゾーンは、フィルタの壁内にアンモニア酸化触媒を、フィルタの壁上に第2のSCR触媒を含む、第2のSCR触媒は、多孔質基材全体に分布していない。当業者は、少量(<約20%、<約15%、約10%未満、約5%未満、約3%未満)の第2のSCRが多孔質基材の一部に存在し得ることを理解するであろう。
【0097】
図3は、触媒が
図2に示される構成に位置する
図1における平面A-Aを通じて示されるウォールフローモノリスフィルタの断面図である。第1のサブセットのチャネル5は、ウォールフローモノリス1の第1の端面15で開いており、第2の端面25でシーリング材20によって密封されている。第2のサブセットのチャネル10は、ウォールフローモノリス1の第2の端面25で開いており、第1の端面15でシーリング材20によって密封されている。第1の端面15は、エンジンから排気ガスGを受け取る。排気ガスGは、第1のサブセットのチャネル5の開口端でモノリスフィルタ1に入る。第1のサブセットのチャネル5を下行するガスは、第2の端面25でチャネルを出ることはできないが、これは端部が密封されているためである20。ガスGは、多孔質チャネル壁35を通り、第2のサブセットのチャネル10へ移動し、その後、エンジンの排気システムに結合している第2の端面25でモノリスフィルタを出る。ガスGが多孔質チャネル壁45を通るとき、スートを壁上又は壁中で捕捉することができるようになる。モノリスフィルタは、モノリスフィルタの壁45内に第1のSCR触媒36を含有し、第1の端面15から第2の端面25へ向かって距離bだけ延びる第1のゾーン35を含む。モノリスフィルタはまた、壁35内にアンモニア酸化触媒41と、モノリスフィルタの壁45上に第2のSCR触媒42を含むコーティングとを含有する第2のゾーン40も含む。第2のゾーン40は、第2の端面25から第1の端面15へ向かって距離cだけ延びる。
【0098】
図4は、第2のSCR触媒が第2のゾーンのアンモニア酸化触媒上のコーティング及びアンモニア酸化触媒の一部を有する第2のゾーンの基材の一部に存在する本発明の構成における二つのSCR触媒及びアンモニア酸化触媒の位置を示す概略図である。
【0099】
図5は、第2のSCR触媒が第2のゾーンのアンモニア酸化触媒上のコーティング及びアンモニア酸化触媒の全てを有する第2のゾーンの基材の全てに存在する本発明の構成における二つのSCR触媒及びアンモニア酸化触媒の位置を示す概略図である。
【0100】
例示的な排気ガス処理システム100が
図6に示される。エンジン115で生成される排気ガス110は、ダクト120を通されて排気システム100へ送られる。アンモニア還元剤105は、本発明の第1の態様のウォールフローフィルタ125の上流の排気ガス110の流れに噴射される。アンモニア還元剤105は、必要に応じて(コントローラ135によって決定される)貯蔵容器130から噴射ノズル140を通って分配され、第1のゾーンに第1のSCR触媒を含む本発明の第1の態様のモノリスフィルタ125に到達する前且つ排気ガスがモノリスへ入る前に排気ガスと混合する。(
図7)
【0101】
ウォールフローモノリス1は、好ましくは、単一成分である。しかしながら、モノリスは、複数のチャネルを一緒に接着することによって、又は本明細書に記載されるような複数の小さなモノリスを一緒に接着することによって形成され得る。そのような技術は、当該技術分野においてよく知られており、排出処理システムの適切なケーシング及び構成も同様である。
【0102】
排気ガス処理システム100は、本発明の第1の態様のモノリスフィルタの前に位置する触媒127をさらに含み得る。本発明の第1の態様のモノリスフィルタの前に位置する触媒127は、第1のSCR触媒を含むウォールフローモノリス1の上流のインジェクタ140を通して還元剤105が排気ガスに添加される前に排気システムに位置する。本発明の第1の態様のモノリスフィルタの前に位置する触媒127は、好ましくは、ディーゼル酸化触媒(DOC)、NOxトラップ又は受動的NOx吸着体(PNA)である。
【実施例】
【0103】
実施例1インウォール酸化触媒
初めに、アルミナ上白金を含む酸化触媒を含むウォッシュコートを、一端からフィルタ長さの10%にわたって置くことにより、フィルタの壁中のアンモニア酸化触媒を有するフィルタを、SiCフィルタ基材(300cpsi、12milの壁厚)で調製した。Ptローディングは、6g/ft3であった。その後、アルミナ上Ptを含むウォッシュコートを含むフィルタを乾燥させ、500℃で1時間焼成した。その後、銅チャバザイト(Cu-CHA)、アルミナ及びレオロジー調整剤を含むウォッシュコートを塗布することにより、SCR層をアンモニア酸化触媒を含有しなかったフィルタ長さの90%にわたって置いた。その後、SCRウォッシュコートを含む層をアンモニア酸化触媒上に置いた。Cu-CHAのローディングは1.71g/in3であった。SCRウォッシュコートを含むフィルタを乾燥させ、その後500℃で1時間焼成した。フィルタを800℃で16時間熱水的にエイジングした。
【0104】
実施例2オンウォール酸化触媒
初めに、銅チャバザイト(Cu-CHA)、アルミナ及びレオロジー調整剤を含むSCRウォッシュコートウォッシュコートをフィルタに置いてSCR層を形成することにより、フィルタの壁上のアンモニア酸化触媒を有するフィルタを、SiCフィルタ基材(300cpsi、12milの壁厚)で調製した。Cu-CHAのローディングは1.71g/in3であった。SCRウォッシュコートを含むフィルタを乾燥させ、その後500℃で1時間焼成した。アルミナ上白金を含む酸化ウォッシュコートを、フィルタの一端からフィルタ長さの20%にわたってSCR触媒上に塗布することによって、SCR触媒上の酸化触媒の層を形成した。Ptローディングは、3g/ft3であった。SCR触媒の長さの20%にわたって酸化触媒の層を有するフィルタを乾燥させ、その後500℃で1時間焼成した。フィルタを800℃で16時間熱水的にエイジングした。
【0105】
実施例1と実施例2は、酸化コーティングの長さにおいて異なり、インウォール酸化コーティング(実施例1)はフィルタ長さの10%にわたり、オンウォール酸化コーティングはフィルタ長さの20%にわたっていた。しかしながら、Ptの量はどちらの実施例においても同一であったが、これは、インウォールコーティングにおけるローディングが6g/ft3であったのに対し、オンウォールコーティングのローディングは3g/ft3であったためである。
【0106】
試験方法及び条件
3l V6エンジンを備えた自動車で実施例1及び2の試料を試験した。ディーゼル酸化触媒(DOC)は、実施例1又は2の試料の前に位置していた。1:2のアンモニア:NOxの比(アルファ)で車両を操作した。エンジンの負荷を調整して、フィルタの入口温度を610℃にし、その後、入口温度を610℃で約20分間維持した。その後、負荷を減少させ、入口温度を420℃に低下させた。入口温度を420℃で約20分間維持した。入口温度が以下の表に示される温度で維持されるように、エンジンの負荷を数回減少させた。温度を定常状態で維持しながら、以下に示すように、ガスの流れ及び排気中の様々な成分について測定した。
【0107】
エンジン温度が約600℃であったとき、フィルタの再生が生じ、炭化水素が排気ガス流へ導入されて、スートがフィルタから除去された。これは、610℃でのエンジンからの排気ガス中の大量の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)により、上の表で見られる。
【0108】
図8は、実施例1(インウォール酸化触媒)が、実施例2(オンウォール酸化触媒)と比較して、約200℃から約325℃の温度でNH
3変換の増加をもたらしたことを示す。試料はどちらも、約325℃から約425℃の温度で、同様のNH
3変換をもたらしたが、オンウォール試料からのNH
3変換の量は、約625℃で増加すると見られる。
【0109】
図9は、実施例1(インウォール酸化触媒)が、実施例2(オンウォール酸化触媒)と比較して、NOx変換の増加をもたらしたことを示す。約200℃から約275℃の温度では、インウォール酸化触媒を有する試料は、オンウォール酸化触媒を有する試料よりも、約10%多くNOxを変換した。約300℃から約625℃の温度では、インウォール酸化触媒を有する試料は、オンウォール酸化触媒を有する試料よりも、約15~20%多くNOxを変換した。
【0110】
図10は、実施例1(インウォール酸化触媒)が、実施例2(オンウォール酸化触媒)と比較して、約275℃から約550℃の温度でN
2Oメイクをあまりもたらさなかったことを示す。200℃から約250℃の温度では、インウォール酸化触媒を有する試料は、オンウォール酸化触媒を有する試料よりも、わずかに多いN
2Oメイクをもたらした。
【0111】
図11は、約200℃から約250℃の温度では、実施例1(インウォール酸化触媒)は、実施例2(オンウォール酸化触媒)と同一のN
2O選択性をもたらしたことを示す。しかしながら、実施例1(インウォール酸化触媒)は、実施例2(オンウォール酸化触媒)と比較して、約275℃から約550℃の温度で低いN
2O選択性をもたらした。N
2Oの形成を減少させる必要性のため、より低いN
2O選択性が望まれる。
【0112】
当業者は、本発明の範囲及び添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、触媒ウォールフローモノリスフィルタ及び触媒ウォールフローモノリスフィルタを含むシステムの組成及び構成の変更がなされ得ることを、理解するであろう。