(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】生分解性フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20220725BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20220725BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20220725BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
C08J5/18 CEP
C08J5/18 CFD
C08L67/00 ZBP
C08L101/16
B65D65/02 F BRQ
(21)【出願番号】P 2019554797
(86)(22)【出願日】2018-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2018057669
(87)【国際公開番号】W WO2018184897
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2019-11-29
(31)【優先権主張番号】102017003340.4
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503422262
【氏名又は名称】バイオ-テック ビオローギッシュ ナチューフェアパックンゲン ゲーエムベーハー ウント コンパニ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ハラルド シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス マタール
(72)【発明者】
【氏名】トシュテン ロロフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング フリーデク
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-537495(JP,A)
【文献】特開2004-176076(JP,A)
【文献】特開2002-047402(JP,A)
【文献】特開平11-335913(JP,A)
【文献】特開平03-157450(JP,A)
【文献】特開2017-222791(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105916919(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0257098(US,A1)
【文献】国際公開第2016/079244(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
B65D 65/00 - 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分AおよびBの合計に対して10~50重量%の成分Aと50~90重量%の成分Bとを含むフィルムであって、
成分Aが、開環重合から得ることができかつ-30℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するポリマーからなる群から選択され、成分Aはポリカプロラクトンであり、
成分Bが、熱可塑性脂肪族コポリエステルおよびその混合物からなる群から選択され、
ここで、成分Bが、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヘキサノエート)および/またはポリ(ブチレンアジペート-co-スクシネート)であり、
前記フィルムが、10~80μmの全厚を有する、
フィルムであって、
ここで、前記フィルムが、EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも100%である機械的特性を有し、
また、前記フィルムが、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での12週間の期間にわたる塩水への導入後に、2.0mmのメッシュサイズを有するシーブによる篩分けの後に、元の乾燥重量の最大30重量%を有し、かつ/またはASTM D6691-09の方法に準拠した30±2℃の温度での180日以内での塩水への導入後に、前記フィルムの有機炭素の少なくとも30%が二酸化炭素に転化されていることを特徴とする、フィルム。
【請求項2】
前記フィルムが、以下の機械的特性:
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも100%である、
のうちの少なくとも1つを示すことを特徴とする、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
成分Aが、-40℃、-50℃、および-55℃からなる群から選択されるいずれかの温度未満のガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
成分Aが、60000~120000g/モルまたは70000~90000g/モルの数平均分子量を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
成分Bによる前記熱可塑性脂肪族コポリエステルが、70000~1500000g/モル、90000~1000000g/モル、100000~800000g/モル、100000~700000g/モル、および100000~600000g/モルからなる群から選択されるいずれかの数平均分子量を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-ヘキサノエート)が、100000~1500000g/モル、200000~1000000g/モル、300000~800000g/モル、400000~700000g/モル、および500000~600000g/モルからなる群から選択されるいずれかの数平均分子量を有することを特徴とする、請求項1から
4までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
ポリ(ブチレンアジペート-co-スクシネート)が、50000~500000g/モル、70000~400000g/モル、90000~300000g/モル、および100000~200000g/モルからなる群から選択されるいずれかの数平均分子量を有することを特徴とする、請求項1から
4及び6のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項8】
前記フィルムが、全重量に対して0.1~30重量%、1~25重量%、3~20重量%、4~15重量%、5~12重量%、15~25重量%、17~23重量%、および18~22重量%からなる群から選択されるいずれかの含量のポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)を含むことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項9】
前記フィルムが、全重量に対して0.1~30重量%、1~25重量%、3~20重量%、4~15重量%、5~12重量%、15~25重量%、17~23重量%、および18~22重量%からなる群から選択されるいずれかの含量のポリ(ブチレンセバケート-co-テレフタレート)を含むことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
前記フィルムが、全重量に対して0.1~20重量%、2~18重量%、5~15重量%、および8~12重量%からなる群から選択されるいずれかの含量のデンプンまたは熱可塑性デンプンを含むことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項11】
前記フィルムが、15~60μmの全厚を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
前記フィルムが、成分AおよびBの合計に対して20~40重量%、25~40重量%、25~35重量%、および28~32重量%からなる群から選択されるいずれかの含量の成分Aを含むことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項13】
前記フィルムが、成分AおよびBの合計に対して60~80重量%、60~75重量%、65~75重量%、および68~72重量%からなる群から選択されるいずれかの含量の成分Bを含むことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項14】
EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも20MPaまたは少なくとも25MPaであることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項15】
EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも20MPaまたは少なくとも25MPaであることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項16】
EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも200%、少なくとも300%、および少なくとも400%からなる群から選択されるいずれかの伸び率であることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項17】
EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも200%、少なくとも300%、および少なくとも400%からなる群から選択されるいずれかの伸び率であることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項18】
ASTM D6691-09の方法に準拠した30±2℃での180日以内での塩水への導入後に、前記フィルムの有機炭素の少なくとも40%または少なくとも50%が二酸化炭素に転化されていることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項19】
前記フィルムが、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での12週間の期間にわたる塩水への導入後に、2.0mmのメッシュサイズを有するシーブによる篩分けの後に、元の乾燥重量の最大20重量%または最大10重量%を有することを特徴とする、請求項1から18までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項20】
DIN EN ISO 14855-1:2012の方法に準拠した活性分解条件において、180日以内で、前記フィルムの有機炭素の少なくとも70%、少なくとも80%、および少なくとも90%からなる群から選択されるいずれかの含量が二酸化炭素に転化されたことを特徴とする、請求項1から19までのいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項21】
1~200μmの全厚を有するとともに、EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも100%である機械的特性を示すフィルムであって、該フィルムは、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での12週間の期間にわたる塩水への導入後に、2.0mmのメッシュサイズを有するシーブによる篩分けの後に、元の乾燥重量の最大30重量%を有し、かつ/またはASTM D6691-09の方法に準拠した30±2℃の温度での180日以内での塩水への導入後に、該フィルムの有機炭素の少なくとも30%が二酸化炭素に転化されているフィルムを製造するための、成分Aおよび成分Bを含むポリマーブレンドの使用であって、
ここで、成分Bがポリ(ブチレンアジペート-co-スクシネート)であり、
成分Aがポリカプロラクトンである、
使用。
【請求項22】
成分Aが、請求項1または請求項3、4に規定されているとおりであり、かつ/または成分Bが、請求項
7に規定されているとおりであることを特徴とする、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記ポリマーブレンドが、成分AおよびBの合計に対して10~50重量%、20~40重量%、25~40重量%、25~35重量%、および28~32重量%からなる群から選択されるいずれかの含量の成分A、ならびに/または成分AおよびBの合計に対して50~90重量%、60~80重量%、60~75重量%、65~75重量%、および68~72重量%からなる群から選択されるいずれかの含量の成分Bを含むことを特徴とする、請求項21または22に記載の使用。
【請求項24】
請求項1から20までのいずれか一項に記載のフィルムを含む、輸送用袋。
【請求項25】
前記輸送用袋が、手提げ袋、果実用袋、野菜用袋、軽量Tシャツバッグおよび超軽量Tシャツバッグからなる群から選択されることを特徴とする、請求項24に記載の輸送用袋。
【請求項26】
前記輸送用袋が、1~90g、2~50g、20~40g、1~10g、および1.5~5gからなる群から選択されるいずれかの重量を有することを特徴とする、請求項24または25に記載の輸送用袋。
【請求項27】
a.成分Aおよび成分Bを含むポリマーブレンドを準備するステップと、
b.ステップaよる前記ポリマーブレンドからフィルムを形成するステップと、
を含む、請求項1から20までのいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項28】
前記方法が、共押出ステップを含むことを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、積層ステップを含むことを特徴とする、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
成分Aが、請求項1または請求項3、4に規定されているとおりであり、かつ/または成分Bが、請求項1または請求項5から7までのいずれか一項に規定されているとおりであることを特徴とする、請求項27から29までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ポリマーブレンドが、成分AおよびBの合計に対して10~50重量%、20~40重量%、25~40重量%、25~35重量%、および28~32重量%からなる群から選択されるいずれかの含量の成分A、ならびに/または成分AおよびBの合計に対して50~90重量%、60~80重量%、60~75重量%、65~75重量%、および68~72重量%からなる群から選択されるいずれかの含量の成分Bを含むことを特徴とする、請求項27から30までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムおよびその製造方法に関する。さらに本発明は、フィルム製造へのポリマーブレンドの使用に関する。さらに本発明は、輸送用袋に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック廃棄物による海洋への負荷は、すでに数十年来にわたり知られている、今日まで解決されていない問題である。特に海洋動物にとって、プラスチックは重大な問題である。こうした動物は、比較的大きな合成樹脂部品に引っかかり、小さな合成樹脂部品を、消化できない食物と混同する。特に小さな合成樹脂部品、いわゆるマイクロプラスチックは、食物を通して動物に吸収され、人間の食物連鎖にまで達する。
【0003】
海洋中に存在する合成樹脂部品の大半は、買い物など日常的に使用されるような合成樹脂製手提げ袋(「プラスチック袋」)に由来する。「合成樹脂」および「プラスチック」という概念は、以下で同義に用いられる。
【0004】
合成樹脂製品のリサイクル、持続可能な使用および海洋の浄化は、海洋中のプラスチック量の削減に寄与するアプローチである。しかし、最も安全でかつ最も持続可能な解決策は、海洋中に存在する自然条件下で生分解されるプラスチック製品を製造し得ることであろう。
【0005】
天然の海水(塩水)中での合成樹脂製品の生分解は、堆肥などの活性媒体中での生分解や産業用堆肥化プラント内に存在するような比較的高温での生分解よりもはるかに時間がかかり、また問題が多い。一方では、堆肥は、分解に関与する微生物の濃度が特に高い。他方で、産業用堆肥化プラントでは、堆肥の最適な生分解を保証する条件(温度、酸素濃度など)が厳密に制御されている。したがって、海洋の自然条件で生分解し得る合成樹脂製品に課される要求は、他の分解条件よりもはるかに高い。
【0006】
さらに、合成樹脂製品は、海洋の自然条件下での良好な生分解性に加え、用途に応じた機械的特性をも備えている必要がある。例えば、合成樹脂製の輸送用袋は、日常生活で目的に応じて使用できるようにするためには、例えば十分な引張強さおよび破断点伸びの値を有する必要がある。そうして初めて、合成樹脂製の輸送用袋が、従来の非生分解性プラスチック製品の代替品として考慮される。
【0007】
(a)一方での海水中での合成樹脂フィルムの良好な生分解性と、(b)他方での合成樹脂フィルムの良好な機械的特性との組合せは、実際には極めて困難であることが判明している。フィルムのこうした2つの一見相反する特性を互いに合致させるこれまでの試みは、部分的にしか成功しなかった。
【0008】
特許文献1には、微生物が存在する環境での生分解性が改善されていると同時に、良好な貯蔵安定性、強度および柔軟性を示す、ポリヒドロキシアルカノエートとポリラクチドとを含むフィルムが記載されている。しかしこの生分解は、天然海水中の特に厳しい分解条件に最適化されているわけではない。
【0009】
特許文献2には、100重量部の脂肪族ポリエステル樹脂と1~200重量部のポリカプロラクトンとを含む生分解性ポリエステル樹脂が記載されている。このポリマー混合物から、多数の様々な生分解性製品を製造することが可能である。しかしこの生分解性は、天然海水中の特に厳しい分解条件に適合しているわけではない。
【0010】
上記のフィルムはいずれも、海水中での生分解という特定の課題を同時に解決するものではなく、そうかといって、満足のいく機械的特性を示すものでもない。
【0011】
上述の従来技術から出発して、本発明の課題は、海水中で非常に良好な生分解性を示すと同時に、卓越した機械的特性をも示すフィルムを提供することである。有利には、該フィルムは、海水への導入後に、該フィルム(部分)から二酸化炭素および水への生分解の開始と同時にまたはその前後に、より小さな粒子に分解する。本発明ではさらに、輸送用袋の製造に特に適したフィルムを提供するという目標も設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】欧州特許出願公開第2 913 362(A1)号
【文献】欧州特許出願公開第1 008 629(A1)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題は、請求項1記載のフィルム、請求項27記載の使用、請求項30記載の製品および請求項33記載の方法により、完全にまたは部分的に解決される。
【0014】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載されており、一般的発明概念のように以下に詳細に説明される。
【0015】
本発明によるフィルムは、該フィルムが、成分AおよびBの合計に対して10~50重量%の成分Aと50~90重量%の成分Bとを含み、成分Aが、開環重合から得ることができかつ-30℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するポリマーからなる群から選択され、成分Bが、熱可塑性脂肪族コポリエステルおよびその混合物からなる群から選択され、該フィルムが、1~200μmの全厚を有することを特徴とする。
【0016】
驚くべきことに、本発明によるフィルムは、高い引張強さおよび/または高い破断点伸びといった卓越した機械的特性と、天然海水中での非常に良好な生分解性とを併せ持つことが判明した。
【0017】
科学的理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の驚くべき効果は、成分AとBの組合せの特定の特性によるものと考えられる。成分AおよびBについての適切な構成要素および比率を見出すには、広範な実験的研究が必要であった。成分AおよびBについて規定されたもの以外のポリマーを一緒に組み合わせた場合、それから製造されたフィルムは、機械的特性が不十分であるか、または海水中での該フィルムの生分解性が不十分であった。さらに、該フィルムの海水中での生分解性および機械的特性には、成分Aと成分Bとの正しい量比率を選択することが不可欠である。
【0018】
有利には、該フィルムは、以下の機械的特性:
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも100%である、
- EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも100%である、
のうちの少なくとも1つを示す。
【0019】
上記の機械的特性が、EN ISO 527-3:2003-07に準拠して測定されることが好ましい。
【0020】
有利には、該フィルムは、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での12週間の期間にわたる塩水への導入後に、2.0mmのメッシュサイズを有するシーブによる篩分けの後に、元の乾燥重量の最大30重量%を有し、かつ/またはASTM D6691-09の方法に準拠した30±2℃の温度での180日以内での塩水への導入後に、該フィルムの有機炭素の少なくとも30%が二酸化炭素に転化されている。
【0021】
ASTM D6691-09に準拠した制御試験条件による塩水中での分解性についての測定は有利には、1~100μm、特に10~40μm、より好ましくは約20μmの厚さを有するフィルムで行われる。
【0022】
好ましい実施形態によれば、該フィルムは、成分AおよびBの合計に対して10~50重量%の成分Aと50~90重量%の成分Bとを含み、成分Aは、開環重合から得ることができかつ-30℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するポリマーからなる群から選択され、成分Bは、熱可塑性脂肪族コポリエステルおよびその混合物からなる群から選択され、該フィルムは、1~200μmの全厚を有するとともに、以下の機械的特性:
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも100%である、
- EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも100%である、
のうちの少なくとも1つを示し、該フィルムは、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での12週間の期間にわたる塩水への導入後に、2.0mmのメッシュサイズを有するシーブによる篩分けの後に、元の乾燥重量の最大30重量%を有し、かつ/またはASTM D6691-09の方法に準拠した30±2℃の温度での180日以内での塩水への導入後に、該フィルムの有機炭素の少なくとも30%が二酸化炭素に転化されている。
【0023】
本発明によるフィルムは、開環重合から得ることができかつ-30℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するポリマーからなる群から選択される成分Aを含む。
【0024】
ガラス転移温度の測定方法は、当業者に知られている。例えばガラス転移温度は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry,DSC)により測定可能である。ポリマーサンプルを所定の昇温/降温プログラムに供した場合に、ガラス転移温度を、DSCチャートのベースラインシフト(Stufe)として検知することができる。
【0025】
この測定には通常、昇温-降温-昇温サイクルで構成される温度プログラムが使用される。この温度プログラムでは、サンプルをまず事前に設定した初期温度で2~5分間平衡状態にすることができる。この1回目の平衡段階の後、サンプルを、事前に設定した第1の目標温度まで一定の昇温速度で加熱する。通常は、10℃/分の昇温速度が用いられる。この第1の目標温度でサンプルを再度2~5分間平衡状態にし、次いで、事前に設定した第2の目標温度まで一定の降温速度で冷却する。通常は、10℃/分の降温速度が用いられる。この第2の目標温度でサンプルを再度2~5分間平衡状態にし、次いで、事前に設定した第3の目標温度まで一定の昇温速度で加熱し、この第3の目標温度でサンプルを2~5分間一定に保持してから測定を終了することができる。通常は、1回目の昇温段階と同一の昇温速度、例えば10℃/分が用いられる。第1の目標温度と第3の目標温度とは、同一であっても異なっていてもよく、また同様に、初期温度と第2の目標温度とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0026】
ガラス転移温度として、特にDSCチャートの2回目の昇温段階のベースラインシフトの中点温度Tmgが報告され、その際この測定は、それぞれ10℃/分の昇温および降温速度、ならびにそれぞれ2分間の温度終点での平衡時間で行われた。中点温度Tmgは、例えば教科書「プラスチックの熱分析の実践(Praxis der Thermischen Analyse von Kunststoffen)」、ゴットフリード ヴェー.エーレンシュタイン(Gottfried W. Ehrenstein)、ガブリエーラ リーデル(Gabriela Riedel)、ピア トラヴィール(Pia Trawiel)著、第2版、カール ハンゼル出版社(Carl Hanser Verlag)、ミュンヘン 2003、p.9に定義されている。
【0027】
ここでまたは他の箇所で、開環重合から得ることができるポリマーに言及する場合、それは、環状モノマーの連鎖重合により得られるようなポリマーを指す。環状モノマーは、有利には環状エステル、環状エーテル、環状アミドおよび/または環状アルケンであってよい。モノマーの連鎖重合は、有利には触媒によりおよび/または熱により実施可能である。開環重合の触媒は、アルコールおよび/またはジオールであってよい。
【0028】
有利には、成分Aは、-40℃未満、さらに好ましくは-50℃未満、特に好ましくは-55℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する。本発明のさらなる有利な実施形態によれば、成分Aはポリエステルである。成分Aがポリエステルである場合、これを有利には、環状エステル、すなわちラクトンの開環重合によって得ることができる。
【0029】
本発明の特に有利な実施形態によれば、成分Aとしてポリカプロラクトンを使用する。ここでまたは他の箇所でポリカプロラクトンに言及する場合、それは特に、ポリ-ε-カプロラクトンを意味する。ポリ-ε-カプロラクトンは、ε-カプロラクトンの開環重合によって得ることができる。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、成分Aは、60000~120000g/モル、有利には70000g/モル~90000g/モルの数平均分子量MWを有する。
【0031】
成分Aに加えて、該フィルムは、少なくとも1つのさらなる成分Bを含む。本発明によれば、成分Bは、熱可塑性脂肪族コポリエステルおよびその混合物からなる群から選択される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、成分Bの熱可塑性脂肪族コポリエステルのモノマー単位1つ当たりの炭素原子の数nは、4~10である。モノマー単位1つ当たりの炭素原子の数nが4~8、さらにより好ましくは4~6である熱可塑性脂肪族コポリエステルが特に好ましい。
【0033】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、成分Bは、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヘキサノエート)(PHBH)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリ(ブチレンアジペート-co-スクシネート)(PBSA)およびそれらの混合物からなるポリエステルの群から選択される。特に好ましくは、成分Bとして、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヘキサノエート)および/またはポリ(ブチレンアジペート-co-スクシネート)が使用される。
【0034】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、成分Bは、熱可塑性脂肪族ポリエステルからなる。
【0035】
本発明のもう1つの好ましい実施形態では、成分Bは、複数の異なる熱可塑性脂肪族ポリエステルからなり、特に2つまたは3つの異なる熱可塑性脂肪族ポリエステルからなる。
【0036】
成分Bとして使用されるポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヘキサノエート)について、3-ヒドロキシヘキサノエートのモル分率が、それぞれPHBHの全量に対して5~15モル%、有利には7~13モル%または10~13モル%である場合に、特に良好な結果が得られる。
【0037】
有利には、成分Bによる熱可塑性脂肪族コポリエステルは、70000~1500000g/モル、有利には90000~1000000g/モル、有利には100000~800000g/モル、さらに好ましくは100000~700000g/モル、さらにより好ましくは100000~600000g/モルの数平均分子量MWを有する。
【0038】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-ヘキサノエート)が本発明によるフィルムの成分Bの部分構成要素であるかまたは唯一の構成要素である本発明の好ましい実施形態では、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-ヘキサノエート)は有利には、100000~1500000g/モル、有利には200000~1000000g/モル、さらに好ましくは300000~800000g/モル、特に好ましくは400000~700000g/モル、極めて特に好ましくは500000~600000g/モルの数平均分子量を有する。
【0039】
ポリ(ブチレンアジペート-co-スクシネート)が本発明によるフィルムの成分Bの部分構成要素であるかまたは唯一の構成要素である本発明の好ましい実施形態では、ポリ(ブチレンアジペート-co-スクシネート)は有利には、50000~500000g/モル、さらに好ましくは70000~400000g/モル、特に好ましくは90000~300000g/モル、極めて特に好ましくは100000~200000g/モルの数平均分子量を有する。
【0040】
本発明によるフィルムは、成分AおよびBに加えてさらなるポリマー成分を含んでもよい。特に、本発明によるフィルムは、成分AおよびBに加えて、ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)(PBAT)またはポリ(ブチレンセバケート-co-テレフタレート)(PBST)またはそれらの混合物を含んでよい。
【0041】
一実施形態によれば、該フィルムは、0.1~30重量%、有利には1~25重量%、有利には3~20重量%、さらに好ましくは4~15重量%、特に好ましくは5~12重量%のポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)および/またはポリ(ブチレンセバケート-co-テレフタレート)(PBST)を有する。さらなる実施形態によれば、該フィルムは、15~25重量%、有利には17~23重量%、特に好ましくは18~22重量%のポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)および/またはポリ(ブチレンセバケート-co-テレフタレート)(PBST)を有する。
【0042】
さらなる構成要素として、本発明によるフィルムは、0.1~20重量%、有利には2~18重量%、さらに好ましくは5~15重量%、特に好ましくは8~12重量%のデンプンを含んでよい。
【0043】
本発明によれば、デンプンとして、特に熱可塑性デンプン、加工デンプンおよび/またはデンプン誘導体を使用することができる。好ましくは、熱可塑性デンプンを使用することができる。
【0044】
該フィルムの全厚が5~200μm、有利には10~80μm、特に好ましくは15~60μmである場合に、多くの用途に有利である。該フィルムは、様々な製品の製造に様々な厚さで適している。記載されている厚さのフィルムは、日常使用向けの手提げ袋および輸送用袋の製造に特に適している。
【0045】
本発明によるフィルムの機械的特性および生分解性は、主に成分Aと成分Bとの量比率によって決定される。
【0046】
本発明によるフィルムは、成分AおよびBの合計に対して10~50重量%の成分Aを含む。本発明の好ましい実施形態によれば、該フィルムは、成分AおよびBの合計に対して20~40重量%、有利には25~40重量%、より好ましくは25~35重量%、特に好ましくは28~32重量%の成分Aを含む。
【0047】
本発明によるフィルムは、成分AおよびBの合計に対して50~90重量%の成分Bを含む。本発明の好ましい実施形態では、該フィルムは、成分AおよびBの合計に対して60~80重量%、有利には60~75重量%、より好ましくは65~75重量%、特に好ましくは68~72重量%の成分Bを含む。
【0048】
ここでまたは他の箇所で成分Bに言及する場合、この成分Bは、1つの化合物および/または複数の化合物からなっていてよい。本発明の好ましい実施形態では、成分Bは、単一の化合物からなる。本発明のさらなる好ましい実施形態では、成分Bは、いくつかの異なる化合物からなり、特に2つまたは3つの異なる化合物からなる。
【0049】
本発明によるフィルムは、優れた機械的特性が顕著であり、それによって輸送用袋におけるその使用が可能となる。
【0050】
したがって、乾燥状態での本発明によるフィルムは有利には、EN ISO 527に準拠した押出方向(MD(独:Maschinenlaufrichtung,英:machine direction))における破断点伸びが、少なくとも100%である。本発明の好ましい実施形態では、EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における破断点伸びは、少なくとも150%、有利には少なくとも200%、好ましくは少なくとも300%、特に好ましくは少なくとも400%である。
【0051】
さらに、乾燥状態での本発明によるフィルムは有利には、EN ISO 527に準拠した押出方向と直交する方向(TD(独:Querrichtung,英:transverse direction))における破断点伸びが、少なくとも100%である。本発明の好ましい実施形態では、EN ISO 527に準拠した押出方向と直交する方向(TD)における破断点伸びは、少なくとも150%、有利には少なくとも200%、好ましくは少なくとも300%、特に好ましくは少なくとも400%である。
【0052】
さらに、乾燥状態での本発明によるフィルムは有利には、EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における引張強さが、少なくとも15MPaである。本発明の好ましい実施形態によれば、乾燥状態での該フィルムの押出方向(MD)における引張強さは、少なくとも20MPa、有利には少なくとも25MPa、特に好ましくは少なくとも30MPaである。
【0053】
さらに、乾燥状態での本発明によるフィルムは有利には、EN ISO 527に準拠した押出方向と直交する方向(TD)における引張強さが、少なくとも15MPaである。本発明の好ましい実施形態によれば、乾燥状態での該フィルムの押出方向と直交する方向(TD)における引張強さは、少なくとも20MPa、有利には少なくとも25MPa、特に好ましくは少なくとも30MPaである。
【0054】
有利には該フィルムは、ASTM D1709の方法に準拠した乾燥状態でのダートドロップ値が、少なくとも4g/μm、有利には少なくとも5g/μm、特に好ましくは少なくとも6g/μmである。
【0055】
本発明によるフィルムは、卓越した機械的特性に加え、塩水中での非常に良好な生分解性および迅速な分解が顕著である。
【0056】
したがって、本発明によるフィルムは有利には、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での12週間の期間にわたる塩水への導入後に、2.0mmのメッシュサイズを有するシーブによる篩分けの後に、元の乾燥重量の最大30重量%を有する。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、該フィルムは、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での12週間の期間にわたる塩水への導入後に、2.0mmのメッシュサイズを有するシーブによる篩分けの後に、元の乾燥重量の最大20重量%、有利には最大10重量%を有する。
【0058】
本明細書中での塩水という概念は、ASTM D6691-09の方法の第7.5.2項による天然の海水媒体を指す。
【0059】
ここでまたは他の箇所でASTM D6691-09の方法に言及する場合、これは、標題「Standard Test Method for Determining Aerobic Biodegradation of Plastic Materials in the Marine Environment by a Defined Microbial Consortium or Natural Sea Water Inoculum」の2009年11月15日発行版を意味する。
【0060】
本発明によるフィルムは、塩水中で卓越した生分解性を示す。有利には、ASTM D6691-09の方法に準拠した30±2℃の温度での180日以内での塩水への本発明によるフィルムの導入後に、該フィルムの有機炭素の少なくとも30%が二酸化炭素に転化されている。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での30±2℃の温度での180日間にわたる塩水への該フィルムの導入後に、該フィルムの有機炭素の有利には少なくとも40%、特に好ましくは少なくとも50%が二酸化炭素に転化されている。本明細書中での塩水という概念は、ASTM D6691-09の方法の第7.5.2項による天然の海水媒体を指す。
【0062】
本発明によるフィルムの生分解が非常に効果的に生じるのは、海水の自然条件においてのみではない。本発明の好ましい実施形態では、DIN EN ISO 14855-1:2012の方法に準拠した活性分解条件において、180日以内で、該フィルムの有機炭素の有利には少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%が二酸化炭素に転化されている。
【0063】
海水中での該フィルムの生分解は、通常は2ステップで行われ、各ステップは、同時にまたは互いに時間をずらして始まる。一方では、本発明によるフィルムは、海水中でより小さな部分へと分解する(「断片化」)。他方で、合成樹脂部品は、微生物によって二酸化炭素および水に転化されることで、生物学的に分子レベルで分解される(「生分解」)。多くの場合、必ずというわけではないが、「生分解」ステップの前に「断片化」ステップが始まる。
【0064】
本発明によるフィルムは、単層フィルムとして形成されていてもよいし、多層フィルムとして形成されていてもよい。本発明によるフィルムは、有利には単層フィルムとして形成されている。なぜならば、単層フィルムは、特に簡便かつ廉価に製造でき、また輸送用袋へとさらに加工できるためである。しかし、本発明によるフィルムが、1つまたは複数の同一のまたは異なるさらなる層を含むことも可能である。多層フィルムの個々の層は、例えばそれらの組成および厚さが互いに異なっていてもよい。
【0065】
本発明によるフィルムは、上述の構成要素に加えて、さらなる構成要素を含んでもよい。
【0066】
本発明によるフィルムは、さらに例えば可塑剤を含んでもよい。可塑剤の例は、グリセリン、ソルビトール、アラビノース、リコース、キシロース、グリコース、フルクトース、マンノース、アロース、アルトロース、ガラクトース、グロース、イドース、イノシトール、ソルボース、タリトールおよびそれらのモノエトキシレート-、モノプロポキシレート-およびモノアセテート誘導体、およびエチレン、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレンジグリコール、プロピレンジグリコール、エチレントリグリコール、プロピレントリグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-、1,3-、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-、1,5-ヘキサンジオール、1,2,6-、1,3,5-ヘキサントリオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールおよびそれらのアセテート-、エトキシレート-およびプロポキシレート誘導体、ならびにそれらの混合物である。
【0067】
有利には、本発明によるフィルムは、重量平均分子量が500~5000g/モルであるオリゴマーエステル化合物を含まず、特に、それぞれ重量平均分子量が500~5000g/モルである、2-エチルヘキサノール末端を有するポリ(1,3-ブチレングリコール-co-1,2-プロピレングリコールアジピン酸)、2-エチルヘキサノール末端を有するポリ(ネオペンチルグリコール-co-1,4-ブチレングリコールアジピン酸)、末端部を有しないポリ(1,3-ブチレングリコールアジピン酸)、2-エチルヘキサノール末端を有するポリ(1,2-プロピレングリコールアジピン酸-co-フタル酸)、2-エチルヘキサノール末端を有するポリ(ネオペンチルグリコールアジピン酸)、2-エチルヘキサノール末端を有するポリ(1,2-プロピレングリコールアジピン酸-co-フタル酸)、混合脂肪酸末端を有するポリ(1,3-ブチレングリコールアジピン酸)、2-エチルヘキサノール末端を有するポリ(1,2-プロピレングリコールアジピン酸)、2-エチルヘキサノール末端を有するポリ(1,2-プロピレングリコール-co-1,4-ブチレングリコールアジピン酸)、ポリ(1,4-ブチレングリコールアジピン酸)またはポリ(1,4-ブチレングリコール-co-エチレングリコールアジピン酸)を含まない。
【0068】
さらに本発明によるフィルムは、分散助剤、例えば界面活性剤、溶融安定剤、加工助剤、安定剤、酸化防止剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、充填剤および/または添加剤を含んでもよい。
【0069】
さらに本発明によるフィルムは、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、キチン、キトサン、セルロース、セルロース誘導体、ポリエステル、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートおよびそれらの混合物などのさらなるポリマーをさらに含んでもよい。
【0070】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、本発明によるフィルムは、1つもしくは複数の充填剤および/または1つもしくは複数の崩壊剤を含む。充填剤および/または崩壊剤の種類および量に応じて、本発明によるフィルムの崩壊速度が影響を受ける可能性がある。
【0071】
この目的のための好ましい充填剤は、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、ドロマイト、マイカ、ケイ酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0072】
崩壊剤は、当業者に知られている。この目的のための好ましい崩壊剤は、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ポリビニルピロリドンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。デンプンは、天然のものであっても分解されたものであってもよい。
【0073】
本発明はさらに、1~200μmの全厚を有するとともに、以下の機械的特性:
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での引張強さが、少なくとも15MPaである、
- EN ISO 527に準拠した押出方向(MD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも100%である、
- EN ISO 527に準拠した押出方向に対する横方向(TD)における乾燥状態での破断点伸びが、少なくとも100%である、
のうちの少なくとも1つを示すフィルムであって、該フィルムは、ASTM D6691-09の方法に準拠した制御試験条件下での12週間の期間にわたる塩水への導入後に、2.0mmのメッシュサイズを有するシーブによる篩分けの後に、元の乾燥重量の最大30重量%を有し、かつ/またはASTM D6691-09の方法に準拠した30±2℃の温度での180日以内での塩水への導入後に、該フィルムの有機炭素の少なくとも30%が二酸化炭素に転化されているフィルムを製造するための、成分Aおよび成分Bを含むポリマーブレンドの使用に関する。
【0074】
本発明による使用の成分AおよびBについては、本発明によるフィルムの成分AおよびBに関してなされた記述がそれぞれ準用される。さらに該ポリマーブレンドは、前述の構成要素のうちの1つまたは複数を含んでもよい。
【0075】
有利には該ポリマーブレンドは、成分AおよびBの合計に対して10~50重量%、特に20~40重量%、25~40重量%、25~35重量%または28~32重量%の成分Aを含む。さらに該ポリマーブレンドは、成分AおよびBの合計に対して有利には50~90重量%、特に60~80重量%、60~75重量%、65~75重量%または68~72重量%の成分Bを含む。
【0076】
さらに、本発明によるフィルムを用いて製造されたまたは製造可能である製品も本発明の対象である。
【0077】
特に重要であるのは、本発明によるフィルムから製造されたまたは製造可能である輸送用袋である。本発明によるフィルムは、手提げ袋、果実用袋、野菜用袋、軽量Tシャツバッグおよび超軽量Tシャツバッグを含む、あらゆる種類の輸送用袋の製造に適している。
【0078】
異なる種類の輸送用袋は、用途に応じて異なる重量を有し得る。本発明の好ましい実施形態では、例えば本発明による輸送用袋は、有利には1~90g、さらに好ましくは2~50gまたは特に好ましくは20~40gの重量を有する。他の用途に適しているのは特に、有利には1~10g、特に好ましくは1.5~5gの重量を有する本発明による輸送用袋である。
【0079】
最後に、本発明は、フィルムの製造方法にも関する。フィルムの本発明による製造方法は、
a.成分Aおよび成分Bを含むポリマーブレンドを準備するステップと、
b.ステップaよる前記ポリマーブレンドからフィルムを形成するステップと、
を少なくとも含む。
【0080】
ステップbによりフィルムを形成するための適切な方法は当業者に周知であり、典型的には押出ステップ(特に共押出ステップ)および/または積層ステップを含む。
【0081】
本発明による方法の成分AおよびBについては、本発明によるフィルムの成分AおよびBに関してなされた記述がそれぞれ準用される。さらに該ポリマーブレンドは、前述の構成要素のうちの1つまたは複数を含んでもよい。
【0082】
有利には該ポリマーブレンドは、成分AおよびBの合計に対して10~50重量%、特に20~40重量%、25~40重量%、25~35重量%または28~32重量%の成分Aを含む。さらに該ポリマーブレンドは、成分AおよびBの合計に対して有利には50~90重量%、特に60~80重量%、60~75重量%、65~75重量%または68~72重量%の成分Bを含む。
【0083】
本発明を、実施例を参照して以下に詳説する。
【実施例】
【0084】
比較例および実施例において、以下の材料を使用した。ポリ(ブチレンスクシネート-co-アジペート)PBSA(BioPBS FD92PM、PTT MCCバイオケム社(PTT MCC Biochem Company Limited社));ポリカプロラクトンPCL(Capa 6800、パーストープ社(Perstorp社));ポリ(ヒドロキシブチレート-co-ヘキサノエート)PHBH(AONILEX 151N、株式会社カネカ);エルカ酸アミド(LOXIOL E SPEZ P、エメリー オレオケミカルズ社(Emery Oleochemicals社))。
【実施例1】
【0085】
スクリュ径40mm、L/D=42のヴェルナー・ウント・プフライデラー社(Coperion Werner & Pfleiderer社)ZSK 40型2軸スクリュ押出機(2軸スクリュ混練機)を使用して、表1に示す配合Aのポリマーブレンドを製造し、造粒体に加工した(計量供給割合を質量パーセントで示す)。
【0086】
【0087】
その際、以下のコンパウンディングパラメータを維持した。
【0088】
【0089】
製造した造粒体から、インフレーションフィルムを製造した。このために、造粒体Aを、スクリュ径65mm、L/D=23のKABRA型単軸押出機で溶融して、インフレーションフィルムに加工した。
【0090】
水中での該フィルムの耐久性を調べるために、該フィルムのサンプルをスライドフレームに張り、天然の海水に漬けた。該フィルムの分解を、目視により評価した。表3に、海水中での72日の期間内での該フィルムの相対的な分解を示す。
【0091】
【0092】
さらに、フィルムの機械的特性を試験した。引張強さおよび破断点伸びの測定を、ティニウス オルセン社(Tinius Olsen社)万能試験機H10KSで行った。フィルムの厚さを求めるために、ヴォルフ メシュテクニク社(Wolf-Messtechnik社)製精密厚さ計DM 2000を使用した。測定結果を、表4に示す。
【0093】
【0094】
表3および表4から分かるように、該フィルムは、輸送用袋として使用するための卓越した機械的特性と、海水中での非常に急速な分解性とを示す。海水中で約1ヶ月経過した後、該フィルムはすでにほぼ完全に分解した(表3の第2行目)。
【実施例2】
【0095】
スクリュ径40mm、L/D=42のヴェルナー・ウント・プフライデラー社(Coperion Werner & Pfleiderer社)ZSK 40型2軸スクリュ押出機(2軸スクリュ混練機)を使用して、表5に示す配合Bのポリマーブレンドを製造し、造粒体に加工した(計量供給割合を質量パーセントで示す)。
【0096】
【0097】
その際、以下のコンパウンディングパラメータを維持した。
【0098】
【0099】
製造した造粒体から、インフレーションフィルムを製造した。このために、造粒体Bを、スクリュ径65mm、L/D=23のKABRA型単軸押出機で溶融して、インフレーションフィルムに加工した。
【0100】
該フィルムの機械的特性を試験した。この測定を、実施例1と同一の装置で行った。測定結果を、表7に示す。
【0101】
【0102】
表7から分かるように、該フィルムは、輸送用袋として使用するための卓越した機械的特性を示す。
【実施例3】
【0103】
スクリュ径40mm、L/D=42のヴェルナー・ウント・プフライデラー社(Coperion Werner & Pfleiderer社)ZSK 40型2軸スクリュ押出機(2軸スクリュ混練機)を使用して、表8に示す配合Cのポリマーブレンドを製造し、造粒体に加工した(計量供給割合を質量パーセントで示す)。
【0104】
【0105】
その際、以下のコンパウンディングパラメータを維持した。
【0106】
【0107】
製造した造粒体から、インフレーションフィルムを製造した。このために、造粒体Cを、スクリュ径30mm、L/D=33のドクトル コリン社(DR. COLLIN社)30型単軸押出機で溶融して、インフレーションフィルムに加工した。
【0108】
該フィルムの機械的特性を試験した。この測定を、実施例1と同一の装置で行った。測定結果を、表10に示す。
【0109】
【0110】
表10から分かるように、該フィルムは、輸送用袋として使用するための卓越した機械的特性を示す。