(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】多孔性無機粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20220725BHJP
B01J 27/24 20060101ALI20220725BHJP
B01J 35/12 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
B01J27/24
B01J35/12
(21)【出願番号】P 2019566699
(86)(22)【出願日】2018-05-30
(86)【国際出願番号】 KR2018006133
(87)【国際公開番号】W WO2018221951
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-03-31
(31)【優先権主張番号】10-2017-0068849
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ, ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ヒョンソク
(72)【発明者】
【氏名】ユ, ジェウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヨンジン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ギ-ラ
(72)【発明者】
【氏名】イム, イ-ラン
(72)【発明者】
【氏名】キム, スン-ヒョン
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0004939(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0125479(KR,A)
【文献】国際公開第2014/188924(WO,A1)
【文献】特開2011-001205(JP,A)
【文献】特開2011-051802(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024379(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0273460(US,A1)
【文献】特開2014-122147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/18
B01J 27/24
B01J 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)メタクリレート基を有するシリコンアルコキシド及び極性溶媒を含むエマルジョンを製造する段階;
b)前記a)のエマルジョンに有機溶媒を添加して乳化粒子を膨潤させる段階;
c)前記b)の膨潤したエマルジョンと表面に正電荷を持つ高分子粒子とを混合する段階(ここで、前記高分子粒子はポリスチレン、ポリメチルメタクリレート及びポリアミドからなる群より選択される);
d)前記c)の混合物に界面活性剤を添加及び有機溶媒を除去する段階;
e)前記d)の結果物に開始剤を添加して重合する段階;及び
f)前記e)の結果物を焼成し前記高分子粒子を除去してマクロ気孔(macropore)を形成する段階;
を含む多孔性
シリカ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記極性溶媒は、水、エタノール、及びメタノールからなる群より選択される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶媒は、トルエン、テトラヒドロフラン、デカン、オクタノールからなる群より選択される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤は、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド-ポリエチレンオキサイドトリブロック共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Polyoxyethylene alkyl ether)類、及びモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(polyoxyethylene sorbitan monolaurate)類からなる群より選択される、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記d)の有機溶媒を除去することは、60~80℃の温度で撹拌することを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記開始剤は、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、過酸化ベンゾイル(benzoyl peroxide、BPO)、ペルオキソ二硫酸カリウム(potassium persulfate、KPS)からなる群より選択される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記e)の重合は、60~90℃で行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記焼成は、500~750℃で行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記a)メタクリレート基を有するシリコンアルコキシド及び極性溶媒を含むエマルジョンは、触媒を更に含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記触媒は、酸触媒及び塩基触媒からなる群より選択される、請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は多孔性無機粒子の製造方法に関して記述する。
【背景技術】
【0002】
紫外線(Ultraviolet radiation)は、200nm~400nmの波長に存在する太陽光であって、暴露強度や時間によっては潜在的に有害な影響を及ぼし得る。紫外線は、波長に応じてUVC(200~290nm)、UVB(290~320nm)、UVA(320~400nm)に分けられる。肌がUVCに直接曝された場合、命に致命的な影響を及ぼすが、該UVCはオゾン層に吸収されるため地表面には到逹しない。しかし、UVBに曝された場合、火傷をすることがあり、UVAは皮膚の真皮層に浸透して皮膚癌や老化を誘発することがある。光老化は実際に皮膚老化の70~80%以上を占めると知られており、現代人にとって紫外線遮断剤は必須製品となった。これに伴い、様々な種類の紫外線遮断及び吸収機能を有する化粧品についての開発が活発に進められている。
【0003】
紫外線遮断剤は、大別して化学的遮断剤と物理的遮断剤とに分けられる。化学的遮断剤は、紫外線を吸収して肌を紫外線から保護する。アボベンゾン(Avobenzone)またはオキシベンゾン(Oxybenzone)といった芳香族物質が主に用いられる。化学的遮断剤は透明であるという長所があるものの、光安定性が劣り、且つアレルギーのような肌副作用を誘発するという短所がある。物理的遮断剤は、屈折率による紫外線反射及び散乱によって紫外線を遮断する。物理的遮断剤として二酸化チタン(Titanium Dioxide)、酸化亜鉛(Zinc Oxide)などが用いられ、皮膚安定性が高く且つUVAとUVBを効果的に遮断するが、肌への塗布の際に白濁現象が生じることがある。
【0004】
その他、100nm以下のナノ無機物粒子を用いた研究が進められているが、体内に吸収されて光毒性を誘発するおそれがあるという問題が提起された。一部ではこれを解決するためにナノ粒子の組立によってマイクロ大きさの粒子を用いたりしていたが、分解の可能性があり、体内に吸収され得るという問題が新たに懸念される。
【0005】
従来、界面活性剤を用いたミセルを気孔のテンプレート(template)として用いる多孔性粒子の形成方法が知られているが、この場合、0~30nmの小さい気孔(mesopore)しか形成できず、均一な大きさ及び規則的な配列を有する気孔の形成は困難であるという問題があった。
【0006】
そこで、光毒性のおそれがなく且つ反射及び吸収波長を調節することができる多孔性無機粒子についての要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0029752号公報
【文献】韓国公開特許第10-2013-0125479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一観点において、本発明が解決しようとする課題は、気孔の大きさ及び気孔の配列が均一且つ規則的な球状の多孔性無機粒子を製造する方法を提供することである。
【0009】
他の観点において、本発明が解決しようとする課題は、球状の粒子形状に変形がなく且つ大きさの調節が可能な気孔を含む多孔性無機粒子を製造する方法を提供することである。
【0010】
他の観点において、本発明が解決しようとする課題は、50nm以上のマクロ気孔(macropore)を含む球状の多孔性無機粒子を製造する方法を提供することである。
【0011】
他の観点において、本発明が解決しようとする課題は、50nm以上のマクロ気孔(macropore)を均一な気孔の配列で含む球状の多孔性無機粒子を製造する方法を提供することである。
【0012】
他の観点において、本発明が解決しようとする課題は、均一な気孔の大きさを有する50nm以上のマクロ気孔(macropore)を含む球状の多孔性無機粒子を製造する方法を提供することである。
【0013】
また他の観点において、本発明が解決しようとする課題は、気孔の大きさに応じて吸収または反射させる光の波長領域を調節することができる球状の多孔性無機粒子を製造する方法を提供することである。
【0014】
また他の観点において、本発明が解決しようとする課題は、気孔の中心間の距離を調節することにより、UVだけでなく可視光線領域の光を反射させることができる球状の多孔性無機粒子を製造する方法を提供することである。
【0015】
また他の観点において、本発明が解決しようとする課題は、紫外線を効果的に反射させることができる多孔性無機粒子を製造する方法を提供することである。
【0016】
また他の観点において、本発明が解決しようとする課題は、光毒性のない多孔性無機粒子を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一観点において、本発明は、a)無機前駆体及び極性溶媒を含むエマルジョンを製造する段階;
b)前記a)のエマルジョンに有機溶媒を添加して乳化粒子を膨潤させる段階;
c)前記b)の膨潤したエマルジョンと表面に正電荷を持つ高分子粒子を混合する段階;
d)前記c)の混合物に界面活性剤を添加及び有機溶媒を除去する段階;
e)前記d)の結果物に開始剤を添加して重合する段階;及び
f)前記e)の結果物を焼成し前記高分子粒子を除去してマクロ気孔(macropore)を形成する段階;
を含む多孔性無機粒子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
一観点において、本発明は、気孔の大きさ及び気孔の配列が均一且つ規則的な多孔性無機粒子を製造する方法を提供することができる。
【0019】
他の観点において、本発明は、気孔の大きさ及び気孔の配列が均一且つ規則的な球状の多孔性無機粒子を製造する方法を提供することができる。
【0020】
他の観点において、本発明は、球状の粒子の形成に変形がなく且つ大きさの調節が可能な気孔を含む多孔性無機粒子を製造する方法を提供することができる。
【0021】
他の観点において、本発明は、50nm以上のマクロ気孔(macropore)を含む多孔性無機粒子を製造する方法を提供することができる。
【0022】
また他の観点において、本発明は、50nm以上のマクロ気孔(macropore)を均一な気孔の配列で含む球状の多孔性無機粒子を製造する方法を提供することができる。
【0023】
また他の観点において、本発明は、均一な気孔の大きさを有する50nm以上のマクロ気孔(macropore)を含む球状の多孔性無機粒子を製造する方法を提供することができる。
【0024】
また他の観点において、本発明は、気孔の大きさに応じて吸収または反射させる光の波長領域を調節することができる球状の多孔性無機粒子を製造する方法を提供することができる。
【0025】
また他の観点において、本発明は、気孔の中心間の距離を調節することにより、UVだけでなく可視光線領域の光を反射させることができる球状の多孔性無機粒子を製造する方法を提供することができる。
【0026】
また他の観点において、本発明は、紫外線を効果的に反射させることができる多孔性無機粒子を製造する方法を提供することができる。
【0027】
また他の観点において、本発明は、光毒性のない多孔性無機粒子を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施例に係る多孔性無機粒子の製造方法の模式図である。
【
図2】本発明の実施例1における(a)段階の膨潤前に形成されたエマルジョンの乳化粒子の光学顕微鏡写真(倍率:×100)である。
【
図3】本発明の実施例1における(a)段階でシリカ前駆体の段階的添加による乳化粒子の大きさの変化を確認した光学顕微鏡写真である。
【
図4】本発明の実施例1によって製造された多孔性無機粒子の走査電子顕微鏡写真である(左側写真の倍率:5万倍、右側写真の倍率:5千倍)。
【
図5】本発明の実施例1によって製造された多孔性無機粒子の粒子大きさ分布を示したグラフである。
【
図6】本発明の実施例1によって製造された多孔性無機粒子の透過電子顕微鏡写真である。
【
図7】本発明の実施例2によって製造された多孔性無機粒子の透過電子顕微鏡写真である。
【
図8】本発明の実施例3によって製造された多孔性無機粒子の走査電子顕微鏡写真及び透過電子顕微鏡写真である。左側から×30000倍率の走査電子顕微鏡写真、×5000倍率の走査電子顕微鏡写真及び透過電子顕微鏡写真である。
【
図9】本発明の実施例3によって製造された多孔性無機粒子の反射顕微鏡のダークフィールドイメージ(dark field image)である。
【
図10】本発明の実施例3によって製造された多孔性無機粒子の散乱データロック、DF1~DF4は測定位置(上、下、左、右)である。
【
図11】本発明の比較例1によって製造された多孔性無機粒子の光学顕微鏡写真であって、左側から倍率5万倍、3万倍、5千倍の写真である。
【
図12】本発明の比較例2に係る高分子の投入前のエマルジョンの乳化粒子を確認した光学顕微鏡写真(倍率:×100)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照して、本出願の実施例をより詳細に説明することにする。なお、本出願に開示された技術はここで説明される実施例に限定されるものではなく、他の形態に具体化することもできる。ここで紹介される実施例は、単に開示された内容が徹底且つ完全なものになるように、また当業者に本出願の思想を十分に伝えられるようにするために提供されるものである。図面では各構成要素を明確に表現するために構成要素の幅や厚さなどの大きさをやや拡大して示した。また、説明の便宜上、構成要素の一部のみを図示したりもしているが、当業者であれば構成要素の残りの部分についても容易に把握できるはずである。さらに、当該分野における通常の知識を有する者であれば本出願の技術的思想を逸脱しない範囲内で本出願の思想を多様な他の形態に具現できるはずである。
【0030】
一実施例において、本発明は、多孔性無機粒子の製造方法を提供する。
【0031】
本実施例に係る製造方法は、下の段階を含んでよい。
a)無機前駆体及び極性溶媒を含むエマルジョンを製造する段階;
b)前記a)のエマルジョンに有機溶媒を添加して乳化粒子を膨潤させる段階;
c)前記b)の膨潤した乳化粒子を含むエマルジョンと表面に正電荷を持つ高分子粒子とを混合する段階;
d)前記c)の混合物に界面活性剤を添加及び有機溶媒を除去する段階;
e)前記d)の結果物に開始剤を添加して重合する段階;及び
f)前記e)の結果物を焼成し前記高分子粒子を除去してマクロ気孔(macropore)を形成する段階。
【0032】
本実施例に係る製造方法の各段階を詳述すると、下のとおりである。
(a)無機前駆体及び極性溶媒を含むエマルジョンを製造する段階
極性溶媒に無機前駆体を投入してエマルジョンを製造することができる。
【0033】
前記無機前駆体は、多孔性無機粒子を形成するための前駆体であって、シリカ(SiO2)前駆体、二酸化チタン(TiO2)前駆体、またはこれらの混合物を用いてよい。無機前駆体は、エマルジョン中で乳化粒子を形成する。
【0034】
前記シリカ前駆体として、シリコンアルコキシド(silicon alkoxide)化合物を用いてよく、例えば、高分子重合し得る構造のシリコンアルコキシドとして、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(3-(trimethoxysilyl)propyl methacrylate、TPM)、3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピルメタクリレート(3-(diethoxy(methyl)silyl)propyl methacrylate)、3-(ジメトキシ(メチル)シリル)プロピルメタクリレート(3-(dimethoxy(methyl)silyl)propyl methacrylate)、フェニルトリエトキシシラン(phenyl triethoxysilane、PTES)、フェニルトリメトキシシラン(phenyl trimethoxysilane、PTMS)、ジフェニルジエトキシシラン(diphenyl diethoxysilane、DDES)、ジフェニルジメトキシシラン(diphenyl dimethoxysilane、DDMS)であってよい。
【0035】
一例において、シリカ前駆体は、例えば、メタクリレート基を有するシリコンアルコキシドであってよく、例えば、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(3-(trimethoxysilyl)propyl methacrylate、TPM)、3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピルメタクリレート(3-(diethoxy(methyl)silyl)propyl methacrylate)、3-(ジメトキシ(メチル)シリル)プロピルメタクリレート(3-(dimethoxy(methyl)silyl)propyl methacrylate)などを用いてよい。メタクリレート基を有するシリコンアルコキシドを用いて均一な大きさの乳化粒子を含むエマルジョンを製造することができる。従来のホモジナイザーを用いてシリカ前駆体を分散させる方法によれば、形成される乳化粒子の大きさが均一に形成されておらず、所望の大きさの粒子を得るためには更なる粒子の除去工程が必要となるのに対し、メタクリル基を有するシリコンアルコキシドをシリカ前駆体として用いる場合、均一な大きさの乳化粒子を形成することができる。また粒子除去工程を施すことなく均一な大きさの多孔性無機粒子を得ることができるので、シリカ前駆体の投入量に対して高い効率で多孔性無機粒子を得ることができる。メタクリレート基は、シリカ前駆体が極性溶媒に投入されると同時に加水分解が生じ、乳化粒子の界面で外相側に親水性基が位置し、乳化粒子の内相側に疎水性のメタクリルレート基が位置するようになる。このような構造的特性によって、メタクリレート基を有するシリカ前駆体を更に添加すると、シリカ前駆体が乳化粒子の内部に安定的に入り込み、その結果、粒子の形状を変形させることなく乳化粒子の大きさを調節することができる。したがって、繰り返しのシリカ前駆体の添加によって多孔性粒子の大きさを調節することができる。
【0036】
前記二酸化チタン前駆体として、チタンアルコキシド(titanium alkoxide)を用いてよく、例えば、チタンメタクリレートトリイソプロポキシドを用いてよいが、これに制限されない。
【0037】
前記極性溶媒としては、水(蒸留水)、エタノール、メタノール、またはこれらの混合物を用いてよい
【0038】
一例において、前記エマルジョンは、極性溶媒に無機前駆体に加えて触媒を更に含んでよい。前記触媒としては、酸または塩基触媒を用いてよく、例えば、アンモニア、塩酸、NaOH、またはこれらの混合物を用いてよい。
【0039】
前記エマルジョンは、ゾルゲル法(sol-gel method)を用いて製造してよく、極性溶媒に触媒及び無機前駆体を投入し撹拌して均一な大きさの負電荷を持つ乳化粒子を含むエマルジョンを製造することができる。前記エマルジョンの製造は、例えば、常温で2~10時間、例えば、3~5時間撹拌することを含んでよい。
【0040】
(b)前記(a)段階のエマルジョンに有機溶媒を添加して乳化粒子を膨潤させる段階
前記(a)段階で製造されたエマルジョンに有機溶媒を添加して乳化粒子を膨潤させることができる。乳化粒子の膨潤によって乳化粒子の内部に高分子粒子を多量浸透させることができ、均一に配列されたマクロ気孔の形成が可能になる。
【0041】
前記有機溶媒としては、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン、デカン、オクタノール、またはこれらの混合物を用いてよく、例えば、有機溶媒の除去容易性の側面から、好ましくは沸点の低いものを用いてよい。
【0042】
前記有機溶媒は、高分子粒子が十分に浸透できるように乳化粒子を膨潤させる側面から、無機前駆体:有機溶媒を1:1~1:2の重量比で用いてよく、例えば、1:1.4であってよい。前記範囲内で高分子粒子が十分に浸透できるように膨潤されてよく、有機溶媒によるエマルジョンの電荷に対する影響を排除することができる。
【0043】
(c)前記(b)段階の膨潤した乳化粒子を含むエマルジョンと表面に正電荷を持つ高分子粒子とを混合する段階
本段階において、負電荷を持つ乳化粒子と表面に正電荷を持つ高分子粒子との間の電気的引力によって、前記(b)段階で膨潤した乳化粒子の内部に表面に正電荷を持つ高分子粒子が浸透する。
【0044】
前記表面に正電荷を持つ高分子粒子(以下、「高分子粒子」)は、多孔性無機粒子の内部にマクロ気孔を形成するためのテンプレート(template)として用いられてよい。
【0045】
前記高分子粒子は、表面に正電荷を持つ高分子粒子であれば用いてよく、有機溶媒に溶解し又は膨潤することなく気孔の形態を保つことができるものを用いてよい。例えば、表面に正電荷を持つ架橋された高分子粒子を用いてよい。前記高分子粒子は、その表面または全体に正電荷を持っていてよい。
【0046】
一例において、前記高分子粒子としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミドなどを用いてよく、正電荷を持つように重合されたもの、または表面正電荷処理されたものを用いてよい。
【0047】
一例において、前記高分子粒子は、ジビニルベンゼン(divinylbenzene、DVB)を用いて架橋されたポリスチレンであってよい。例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、及び蒸留水に分散させた開始剤を投入して無乳化剤重合法によってポリスチレンを製造して用いてよい。前記開始剤として、例えば、2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド(2’-Azobis(2-methylpropionamidine)dihydrochloride)を用いてよく、重合反応は60~90℃、例えば、80℃で15時間以上、例えば、19時間以上撹拌して製造してよいが、これに制限されない。
【0048】
一例において、前記無機前駆体は、前記高分子粒子に対する無機前駆体:高分子粒子の重量比を1:0.12~1:2にして用いてよく、例えば、1:0.12~1:1、例えば、1:1にして用いてよい。前記範囲内で粒子中に安定して気孔が形成され得る。
【0049】
前記高分子粒子は、マクロ気孔を形成するためのテンプレートとして用いられる側面から、平均粒子径50nm~500nm、例えば、100nm~400nmのものを用いてよい。前記平均粒子径は、単一粒子での径の平均値を意味する。
【0050】
一例において、前記高分子粒子の量を調節して、多孔性粒子の気孔密度を調節したり、多孔性粒子をオープンセル(open cell)またはクローズドセル(closed cell)に形成したりすることができる。他の例において、クローズドセルは、製造された多孔性粒子の表面にシェル(shell)をコートして形成することができる。
【0051】
(d)前記(c)段階で得られた混合物に界面活性剤を添加及び有機溶媒を除去する段階
内部に高分子粒子が浸透したシリカ前駆体の乳化粒子の間の電気的引力による乳化粒子の融合を防止するために界面活性剤を添加して安定化することができる。
【0052】
前記界面活性剤としては、例えば、電荷を持たない非イオン性界面活性剤を用いてよい。一例において、疎水性基及び親水性基の双方を有する非イオン性界面活性剤を用いてよい。一例において、前記非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド-ポリエチレンオキサイドトリブロック共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Polyoxyethylene alkyl ether)類、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(polyoxyethylene sorbitan monolaurate)類、またはこれらの混合物を用いてよいが、これらに制限されない。例えば、前記非イオン性界面活性剤としては、Pluronic P-123(SigmaAldrich)、Pluronic P-103(SigmaAldrich)、Pluronic P-105(SigmaAldrich)、Pluronic F-127(SigmaAldrich)、Pluronic F-108(SigmaAldrich)、Pluronic F-108(SigmaAldrich)、Brij 72(SigmaAldrich)、Span 20(SigmaAldrich)、Tween 80(SigmaAldrich)、Tween 20(SigmaAldrich)などを用いてよいが、これらに制限されるものではない。
【0053】
有機溶媒の除去は、加熱及び撹拌によって行ってよく、加熱温度は、例えば、50~80℃、例えば、60℃~80℃であってよい。前記範囲内で高分子粒子の形態に影響を及ぼすことなく有機溶媒を除去することができる。80℃を超える場合、高分子粒子が溶けることがある。撹拌は、例えば、約12時間以上行ってよい。
【0054】
(e)前記(d)段階の結果物に開始剤を添加して重合する段階
前記安定化及び有機溶媒の除去を行ったエマルジョンを重合して無機粒子を形成することができる。焼成にて高分子粒子を除去する前に無機粒子を重合にて製造するため、高分子粒子が互いに集まって融合することなく均一な分布で配列され、多孔性粒子中の気孔を均一に分布させることができる。また、粒子の内部まで均一に気孔が形成され、所望の波長の光を反射させる多孔性無機粒子を製造することができる。
【0055】
前記開始剤としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、過酸化ベンゾイル(benzoyl peroxide、BPO)、ペルオキソ二硫酸カリウム(potassium persulfate、KPS)、またはこれらの混合物を用いてよい。
【0056】
前記重合は、開始剤を添加した後、60~90℃の温度で3時間以上、例えば、5時間以上加熱して行ってよい。
【0057】
(f)前記(e)段階の結果物を焼成し前記高分子粒子を除去してマクロ気孔(macropore)を形成する段階
重合された粒子を焼成し高分子粒子を除去して、高分子粒子の部分に気孔を形成することができる。
【0058】
前記焼成は、例えば、500~750℃の温度で1~10時間行ってよく、例えば、600℃で3時間行ってよい。一例として、前記焼成は、1℃/分の昇温速度で行ってよいが、これに制限されるものではない。
【0059】
高分子粒子の粒子大きさに応じて気孔の大きさを調節することができ、且つ均一な大きさの平均径50nm~500nm、例えば、100nm~400nmのマクロ気孔を形成することができる。気孔の平均径は、単一気孔における径の平均値を意味する。
【0060】
一例において、高分子粒子を架橋重合して用いる場合、有機溶媒を用いて架橋されなかった高分子粒子を除去してよい。
【0061】
本発明の他の実施例において、本発明は、a)表面に正電荷を持つ高分子粒子を合成する段階;
b)無機前駆体及び極性溶媒を含むエマルジョンを製造する段階;
c)前記b)のエマルジョンに有機溶媒を添加して乳化粒子を膨潤させる段階;
d)前記c)の膨潤したエマルジョンと表面に正電荷を持つ高分子粒子とを混合する段階;
e)前記d)の混合物に界面活性剤を添加及び有機溶媒を除去する段階;
f)前記e)の結果物に開始剤を添加して重合する段階;及び
g)前記f)の結果物を焼成し前記高分子粒子を除去してマクロ気孔(macropore)を形成する段階;
を含む多孔性無機粒子の製造方法に関する。
【0062】
前記a)高分子粒子を合成する段階を更に含むことを除いては、上述した本発明の一実施例に係る多孔性無機粒子の製造方法に関する記述と同様である。
【0063】
本実施例のa)高分子粒子を合成する段階に関して、前記本発明の一実施例に係る多孔性無機粒子の製造方法の(c)段階に関して説明したのと同様な方法にて合成してよい。
【0064】
本発明の実施例によると、形成される多孔性無機粒子の大きさを均一に形成することができるので、従来のホモジナイザーを用いた場合のように所望しない大きさの粒子を除去する別途の工程を必要としないため大量生産に有利であるという利点がある。
【0065】
また、これに伴い用いられた無機前駆体の損失が少なく且つ無機粒子として形成される効率が高いという利点がある。
【0066】
本発明の実施例によって製造された多孔性無機粒子は、粒子の内部まで均一に分布されたマクロ気孔を有することができ、且つ気孔の大きさが均一なものとなる。したがって、光学特性に優れ且つ多重散乱を防止することができる多孔性無機粒子を提供することができる。また、マクロ気孔の大きさを調節して製造することができるので、所望の波長の光を反射する多孔性無機粒子の製造が可能となる。さらには、粒子の内部まで気孔が均一に形成されるので、所望の特定の波長のみを強く反射させる多孔性無機粒子の製造が可能となる。
【0067】
本発明の実施例によって製造された多孔性無機粒子は、フォトニック結晶またはUV反射物質、CO2吸着物質などの多様な分野に応用され得る。
【0068】
以下、実施例、比較例、及び試験例を参照して本発明を詳しく説明する。なお、これらは単に本発明をより具体的に説明するために例示的に提示したものであるに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例、比較例、及び試験例によって制限されるものではないということは当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0069】
[製造例1]正電荷を持つ高分子粒子の製造(平均粒子径:240nm)
蒸留水675g、スチレン37.2gとジビニルベンゼン1.86gをダブルジャケット反応器内に入れた後、80℃で1時間混合させた。次いで、窒素雰囲気で蒸留水12.5mlに分散させた2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド開始剤を注射器を用いて投入し、80℃で19時間以上撹拌を行って、240nmの均一な平均粒子径を有する正電荷を持つポリスチレンを製造した。
【0070】
[製造例2]正電荷を持つ高分子粒子の製造(平均粒子径:110nm)
蒸留水190g、スチレン1.52gとジビニルベンゼン0.0304gをダブルジャケット反応器内に入れた後、80℃で1時間混合させた。次いで、窒素雰囲気で蒸留水12.5mlに分散させた2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド開始剤を注射器を用いて投入し、90℃で24時間以上撹拌を行って、110nmの均一な平均粒子径を有する正電荷を持つポリスチレンを製造した。
【0071】
[実施例1]多孔性無機粒子の製造
図1に概略的に示した方法に従い実施例1の多孔性無機粒子を製造した。具体的な段階を下に記述する。
【0072】
(a)エマルジョンの製造及び乳化粒子の膨潤
蒸留水40mlとアンモニア20μlをフラスコ中に入れてから混合した。これに3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(TPM)を200μlずつ30分毎に4回入れながら撹拌し、負電荷を持つエマルジョンを製造した。
図2にエマルジョンの光学顕微鏡写真を示しており、乳化粒子の大きさが均一に形成されたことを確認することができる。次いで、トルエン1.5mlを添加して乳化粒子を膨潤させた。
【0073】
(b)高分子粒子の添加
蒸留水40mlを添加した後、乳化粒子の内部にポリスチレン粒子を浸透させるために、前記(a)で製造した負電荷を持つエマルジョンに前記製造例1で製造した正電荷を持つポリスチレン24mlを添加した。
【0074】
(c)安定化及び有機溶媒の除去
ポリスチレンを内部に含む乳化粒子の安定化のために、5重量%のポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド-ポリエチレンオキサイドトリブロック共重合体1.2mlを投入し10分間撹拌した。次いで、トルエンを除去するために、60℃で12時間以上撹拌した。
【0075】
(d)シリカ重合
前記(c)の結果物に2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を0.2g入れ、80℃で5時間加熱してシリカ重合を行った。
【0076】
(e)焼成
前記(d)で製造した粒子を洗浄した後、600℃で3時間焼成を施して有機物を除去して気孔を含む無機粒子を製造した。
【0077】
製造された粒子は、
図4及び
図5に示すように均一な大きさを有する粒子であって、粒子平均大きさの標準偏差0.05の均一度を示した。また、
図6から、内部に気孔を含む多孔性粒子であることを確認することができる。
【0078】
[実施例2]多孔性無機粒子の製造
高分子粒子として前記製造例2で製造した平均粒子径110nmのポリスチレン粒子を用いたことを除いては、前記実施例1と同じ方法にて多孔性無機粒子を製造した。
図7に製造された多孔性無機粒子の透過電子顕微鏡写真を示す。
【0079】
[実施例3]クローズドセル多孔性無機粒子の製造
実施例1と同じ方法にて製造した多孔性無機粒子を25ml(5%)とビニルトリエトキシシラン(vinyltrimethoxysilane、VTMS)3.75mLをアンモニア(17.5ml)と水(750ml)の条件で24時間撹拌して、粒子の表面にシリカシェル(shell)がコートされたクローズドセル多孔性無機粒子を製造した。
【0080】
図8に示すように均一な大きさを有し且つ表面に気孔が露出しないクローズドセル多孔性無機粒子が得られ、気孔の大きさは190nm~200nmであった。
【0081】
[試験例1]多孔性無機粒子の反射波長の測定
前記実施例3に従い製造された多孔性無機粒子を反射顕微鏡にて分析し、粒子の反射波長を確認した。
【0082】
図9及び
図10の結果から、前記粒子は、約500~550nm波長を反射することを確認することができる。特に、
図8中のDF1~DF4の散乱データ測定位置に依らず、均一に同じ波長領域の光を反射させることから、均一且つ規則的な配列の気孔を有する多孔性粒子であることを確認することができる。
【0083】
[比較例1]膨潤段階なしで製造した多孔性無機粒子の製造
実施例1と同じ方法にて製造するが、(a)段階でトルエンを添加することなく製造して比較例1の多孔性無機粒子を製造した。
【0084】
図11の結果から、高分子粒子が無機前駆体の内部まで十分に浸透できず、均一な配列の気孔を形成できないことを確認した。
【0085】
[比較例2]焼成前の重合段階なしで製造した多孔性無機粒子の製造
実施例1と同じ方法にて製造するが、無機前駆体としてオルトケイ酸テトラエチル(tetraethyl orthosilicate、TEOS)を用い、(a)段階でトルエンを添加することなくホモジナイザーを用いてシリカ前駆体を分散させ、(d)シリカ重合段階なしでシリカをゲル化してから焼成して、比較例2の多孔性無機粒子を製造した。
【0086】
図12に(a)段階で製造されたエマルジョンの乳化粒子の光学顕微鏡写真を示す。多孔性粒子の大きさを決める乳化粒子の大きさが不均一に形成されることを確認することができる。このことから、比較例2の場合、均一な大きさの多孔性無機粒子の形成が難しい。