(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】ニードルピッチ調節可能な2本針縫製方法
(51)【国際特許分類】
D05B 19/14 20060101AFI20220725BHJP
D05B 1/12 20060101ALI20220725BHJP
A41H 43/00 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
D05B19/14
D05B1/12 Z
A41H43/00 A
(21)【出願番号】P 2020136885
(22)【出願日】2020-08-14
【審査請求日】2020-08-14
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】504337671
【氏名又は名称】啓翔股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳旭輝
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-213750(JP,A)
【文献】特開2005-296501(JP,A)
【文献】特開平11-192392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 19/14
D05B 1/12
A41H 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X-Y軸送り機構と、回転可能な針棒機構と、針板回転機構と、ニードルピッチ調整機構とを有する2本針ミシンに応用され、2本のニードルが2本の縫いステッチの縫製期間に、所定寸法範囲におけるニードルピッチを調節できるニードルピッチ調節可能な2本針縫製方法であって、
2本の前記縫いステッチに基づき、移動座標データと、回転角度データと、ニードル距離データを含む順位付けられる複数組の縫製情報を取得するデータ取得ステップと、
前記X-Y軸送り機構がこれらの移動座標データに基づき、
被縫製物を順に水平方向移動させる縫製移動ステップと、
前記回転可能な針棒機構がこれらの回転角度データに基づき針棒を順に軸方向回転させ、前記針板回転機構が同様にこれらの回転角度データに基づき、針板及び外釜を順に、前記軸方向回転と同期する水平回転させる縫製回転ステップと、
前記ニードルピッチ調整機構が前記ニードル距離データに基づき、前記2本のニードルに対して、ニードルピッチの幅を変える調節変位を順に行うことで、前記2本のニードルが2本の前記縫いステッチの連続縫製期間に、幅の異なる複数のニードルピッチ寸法を発生するニードルピッチ調節ステップと、
を備えることを特徴とする、
ニードルピッチ調節可能な2本針縫製方法。
【請求項2】
前記データ取得ステップは、
2つの前記被縫製物に成形される前記縫いステッチを取得し、前記2本の縫いステッチに縫い目距離を設定するステッチ設定手順と、
2本の前記縫いステッチにそれぞれ、縫い始め位置を確立し、前記縫い目距離に基づきそれぞれ、2本の前記縫いステッチに複数の第1ステッチ縫製点と複数の第2ステッチ縫製点とを順に取得する縫製点設定手順と、
順番位置が対応するこれらの第1ステッチ縫製点とこれらの第2ステッチ縫製点とを相互に繋いで複数の前記ニードル距離データを取得し、前記第1ステッチ縫製点、前記第2ステッチ縫製点及び前記ニードル距離データを計算して前記縫製情報の前記移動座標データ及び前記回転角度データを生成するデータ生成手順と、
を備えることを特徴とする、
請求項1に記載のニードルピッチ調節可能な2本針縫製方法。
【請求項3】
前記データ取得ステップは、
これらのニードル距離データをそれぞれ前記所定寸法範囲と照合し、全ての前記ニードル距離データが前記所定寸法範囲に収まる場合、前記2本針ミシンが縫製実施指令を生成し、また、これらのニードル距離データ中の何れかが前記所定寸法範囲よりも大きいか、または前記所定寸法範囲よりも小さい場合、2本の前記縫いステッチにおける前記縫い始め位置を再選択するシミュレーション照合手順をさらに備えることを特徴とする、
請求項2に記載のニードルピッチ調節可能な2本針縫製方法。
【請求項4】
前記シミュレーション照合手順が、前記縫い始め位置を複数回再選択しても、前記縫製実施指令を取得できない場合、前記2本針ミシンは、前記縫い目の距離を再設定する注意メッセージを生成することを特徴とする、
請求項3に記載のニードルピッチ調節可能な2本針縫製方法。
【請求項5】
これらの移動座標データを各前記ニードル距離データの中心点の座標から選び、これらの中心点の座標を計算して加工経路を生成し、前記X-Y軸送り機構が前記被縫製物を動かして前記加工経路に沿い水平方向に変位させることを特徴とする、
請求項3に記載のニードルピッチ調節可能な2本針縫製方法。
【請求項6】
前記所定寸法範囲が前記ニードルピッチ調整機構における調節できる距離の最大値と最小値、又はユーザが予め設定した最大基準値と最小基準値から選ばれることを特徴とする、
請求項1に記載のニードルピッチ調節可能な2本針縫製方法。
【請求項7】
前記ニードルピッチ調整機構は前記2本のニードルの一方を、前記針棒の軸心と位置合わせる基準位置に固定し、他方は相対的に変位して前記ニードルピッチの幅を変更することができることを特徴とする、
請求項1に記載のニードルピッチ調節可能な2本針縫製方法。
【請求項8】
前記ニードルピッチ調整機構は前記2本のニードルをそれぞれ、前記針棒の軸心の両側の等距離位置に設け、前記2本のニードルを動かして同期変位させて前記ニードルピッチの幅を変更することができることを特徴とする、
請求項1に記載のニードルピッチ調節可能な2本針縫製方法。
【請求項9】
前記針板回転機構は、前記ニードル距離データに基づき、前記針板の2つの針穴を動かしてこれらのニードルと同期して相対変位を発生させることが可能であることで、前記2つの針穴が前記縫製期間に2本の前記ニードルと位置合わせるように保持される移動装置をさらに備えることを特徴とする、
請求項1に記載のニードルピッチ調節可能な2本針縫製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本針コンピュータミシンに用いられる2本針縫製方法に関し、特に、2本針の縫いステッチによる複数の針穴間にニードルピッチの幅を変更できる縫製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンの自動化及び高速化の発展に伴い、工業用ミシンは、労力の節約及び生産能力の向上に加えて、現在、各種の異なる目的に対し、対応する機能が開発されている機種、例えば1本針模様縫いミシン(X-Y軸で自動的に移動する材料を駆動し、縫製経路を任意に変更できる)、1本針回転ヘッド模様縫いミシン(各縫製方向におけるステッチの一致性をさらに保持できる)、又は2本針回転ヘッド模様縫いミシン(2本の等距離の曲線のステッチを同時に縫うことができる)を含んでいる。
【0003】
しかし、2本針の平行なステッチで被縫製物は美しく見える好ましい効果を発生することができ、さらに生活中の種々の服飾の何れにも2本針縫いの応用が見られる。
図1、
図2A及び
図2Bを参照する。2本針回転ヘッド模様縫いミシン9は、同時に縫製する2本のニードル903を有しているコンピュータ制御ミシンである。2本針回転ヘッド模様縫いミシン9の上にヘッド部回転機構90を有し、ヘッド部回転機構90の下にベース回転機構91とX-Y軸送り機構92とが設けられている。なかでも、ヘッド部回転機構90は、回転ジョイント901を介して針棒902を回転駆動でき、ベース回転機構91は、針板911及び外釜機構(図示せず)を動かして針棒902と同期回転させることで、針板911の2つの針穴912がそれぞれ常に一対一で、2本のニードル903に整列できるように保持される。また、X-Y軸送り機構92は治具を介して縫製材料を水平方向に移動駆動する。このように2本の平行なステッチ93を縫い出すことに用いられ、従来の手動操作の2本針ミシンに取って代わり、物品を縫う作業効率を向上することができる。
【0004】
しかし、縫われる生地の種類が多く、厚い材料もあれば、薄い材料もあり、そして、柔らかい材料もあれば、硬い材料もあるので、異なる生地条件によって、使用する必要があるニードルピッチ及び縫い目は異なっている。一般的には、厚い材料及び硬い材料を縫う場合、2本のニードルのニードルピッチを大きくしなければならず、薄い材料又は柔らかい材料の場合、2本のニードルのニードルピッチを小さくする必要があるので、2本針縫いの場合、所定のニードルピッチに応じて、縫製全過程に必要な針止め904及び針板911を交換しなければならない。
【0005】
それに加えて、通常、2本針縫いの場合、2本のニードル903のニードルピッチ903aが同じであるように保持されなければならないので、従来の2本針ミシンは、平行なステッチ以外の図柄を縫製することができない。なお、2本針回転ヘッド模様縫いミシン9が曲線経路94で縫う必要のある場合、2本のニードル903が経由した折れ曲がるコースはプリセットの縫い目の長さ95と異なる。しかし、2本のニードル903は同時に上下に動き、かつ2本のニードル903の接続線が曲線経路94に垂直であるので、曲線経路94で縫う際に生じる2本の平行なステッチ93は、実際の縫い目の長さ931、932の寸法が明らかに異なることで、被縫製物の美観性が低下することが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、2本針ミシンが2本の縫いステッチを縫製する過程において、2本のニードルのニードルピッチが、設定されたデータに従い変化することができ、2本の平行なステッチに幅が同様である形態を維持させるほかに、ステッチに沿う縫い目の長さを均一に保持することができることにより、2本針ミシンが縫える図柄の適用範囲を拡大し、縫われる図柄の美観性を向上し、2本針ミシンの実用性を大幅に改善することである。
【0007】
本発明の副次的な目的は、2本針ミシンが同一の材料に幅の異なる複数の平行なステッチの図柄を縫い出すか、又は同一の二重線の縫製経路で幅の異なるステッチの図柄に変形することができることにより、2本針ミシンが縫える模様の適用範囲を拡大することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を実現するために、本発明に係るニードルピッチ調節可能な2本針縫製方法は、主として、X-Y軸送り機構と、回転可能な針棒機構と、針板回転機構と、ニードルピッチ調整機構とを有する2本針ミシンに応用され、2本のニードルが2本の縫いステッチの縫製期間に、所定寸法範囲におけるニードルピッチを調節でき、前記所定寸法範囲が前記ニードルピッチ調整機構における調節できる距離の最大値と最小値、又はユーザが予め設定した最大基準値と最小基準値から選ばれる。
【0009】
前記2本針縫製方法は、2本の前記縫いステッチに基づき、移動座標データと、回転角度データと、ニードル距離データを含む順位付けられる複数組の縫製情報を取得するデータ取得ステップと、前記X-Y軸送り機構がこれらの移動座標データに基づき、被縫製物を順に水平方向移動させる縫製移動ステップと、前記回転可能な針棒機構がこれらの回転角度データに基づき針棒を順に軸方向回転させ、前記針板回転機構が同様にこれらの回転角度データに基づき、針板及び外釜を順に、前記軸方向回転と同期する水平回転させる縫製回転ステップと、前記ニードルピッチ調整機構が前記ニードル距離データに基づき、前記2本のニードルに対して、ニードルピッチの幅を変える調節変位を順に行うことで、前記2本のニードルが2本の前記縫いステッチの連続縫製期間に、幅の異なる複数のニードルピッチ寸法を発生するニードルピッチ調節ステップと、を備える。
【0010】
一つの好ましい実施形態において、前記データ取得ステップは、主として2つの前記被縫製物に成形される前記縫いステッチを取得し、2本の前記縫いステッチに縫い目距離を設定するステッチ設定手順と、2本の前記縫いステッチにそれぞれ、縫い始め位置を確立し、前記縫い目距離に基づきそれぞれ、2本の前記縫いステッチに複数の第1ステッチ縫製点と複数の第2ステッチ縫製点とを順に取得する縫製点設定手順と、順番位置が対応するこれらの第1ステッチ縫製点とこれらの第2ステッチ縫製点とを相互に繋いで複数のニードル距離データを取得し、前記第1ステッチ縫製点、第2ステッチ縫製点及び前記ニードル距離データを計算して前記縫製情報の移動座標データ及び回転角度データを生成するデータ生成手順と、を備える。
【0011】
それに加えて、前記データ取得ステップは、これらのニードル距離データをそれぞれ前記所定寸法範囲と照合し、全てのニードル距離データが前記所定寸法範囲に収まる場合、前記2本針ミシンが縫製実施指令を生成し、また、これらのニードル距離データ中の何れかが前記所定寸法範囲よりも大きいか、または前記所定寸法範囲よりも小さい場合、2本の前記縫いステッチにおける前記縫い始め位置を再選択するシミュレーション照合手順をさらに備えることができる。
【0012】
前記シミュレーション照合手順が、前記縫い始め位置を複数回再選択しても、前記縫製実施指令を取得できない場合、前記2本針ミシンは、前記縫い目の距離を再設定する注意メッセージを生成する。
【0013】
また、これらの移動座標データを各前記ニードル距離データの中心点の座標から選び、これらの中心点の座標を計算して加工経路を生成し、前記X-Y軸送り機構が前記被縫製物を動かして前記加工経路に沿い水平方向に変位させる。
【0014】
一つの実施可能な実施形態において、前記ニードルピッチ調整機構は前記2本のニードルの一方を、前記針棒の軸心と位置合わせる基準位置に固定し、他方は相対的に変位して前記ニードルピッチの幅を変更することができる。
【0015】
別の実施可能な実施形態において、前記ニードルピッチ調整機構は前記2本のニードルをそれぞれ、前記針棒の軸心の両側の等距離位置に設け、前記2本のニードルを動かして同期変位させてニードルピッチの幅を変更することができる。
【0016】
前記針板回転機構は、前記ニードル距離データに基づき、前記針板の2つの針穴を動かしてこれらのニードルと同期して相対変位を発生させることが可能であることで、前記2つの針穴が前記縫製期間に前記2本のニードルと位置合わせるように保持される移動装置を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、2本のニードルが実際に2つの縫製経路を経て縫製する場合、2本のニードル間のニードルピッチ及び回転角度を即時に変え、それにより被縫製物に発生する全ての縫い目を設定寸法に適合させることを特徴とする。このようにすれば、被縫製物に形成される縫糸のステッチの美観性及び一致性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は既知の2本針回転ヘッド模様縫いミシンの斜視図である。
【
図2B】
図2Bは従来の2本針ミシンが形成した縫製経路の概略図である。
【
図3】
図3は本発明に係る2本針ミシンの第1の実施形態の概略構成図である。
【
図4】
図4は本発明に係る2本針縫製方法の第1の実施形態のフローチャートである。
【
図5】
図5は本発明に係るデータ取得ステップの手順概略図である。
【
図6】
図6は1本のニードルが移動及び回転を行う概略図である。
【
図7】
図7は被縫製物に縫いステッチを形成する第1の実施形態の概略図である。
【
図8】
図8は2本のニードルが同時に移動及び回転を行う概略図である。
【
図9】
図9は被縫製物に縫いステッチを形成する第2の実施形態の概略図である。
【
図10】
図10は本発明に係る2本針ミシンの第2の実施形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の構造、使用及びその特徴をより一層明確で具体的に認識及び理解するために、好ましい実施形態を挙げて、図面を参照しながら以下のように詳しく説明する。
【0020】
図3を参照する。本発明に係るニードルピッチ調節可能な2本針縫製方法は、主として2本のニードル10を有する2本針ミシン1に応用され、前記2本針ミシン1が、ヘッド部に回転可能な針棒機構11とニードルピッチ調整機構12とが設けられており、またベース部に針板回転機構13とX-Y軸送り機構(図示せず)とが設けられていることで、前記2本針ミシン1の2本のニードル10は、2本の縫いステッチ2(
図7を参照)の縫製期間に、所定寸法範囲におけるニードルピッチを調節できる。
【0021】
一つの実施可能な実施形態において、前記所定寸法範囲は、2本のニードル10が前記ニードルピッチ調整機構12において設計される調節可能な距離の調節最大値と調節最小値から選ばれ、又は当該ユーザは直接最大基準値及び最小基準値を設定する。前記最大基準値は前記調節最大値以下であり、前記最小基準値は前記調節最小値以上である。
【0022】
図4を参照する。本発明2本針縫製方法は、データ取得ステップ3と、縫製移動ステップ4と、縫製回転ステップ5と、ニードルピッチ調節ステップ6とを備える。
【0023】
前記データ取得ステップ3は、被縫製物7に縫われる2本の縫いステッチ2の移動軌跡を計算し、前記移動軌跡の順番性により第1縫製情報、第2縫製情報、第3縫製情報等の複数組の縫製情報を取得する。それぞれの縫製情報は、何れも移動座標データと、回転角度データと、ニードル距離データ25とを含む。
【0024】
前記縫製移動ステップ4は、これらの移動座標データに基づき、前記X-Y軸送り機構が前記被縫製物7を順に水平方向移動させる。前記水平方向移動は、X軸に沿う単一の直線方向、Y軸に沿う単一の直線方向又はX軸及びY軸に結合する斜め方向であってもよい。
【0025】
前記縫製回転ステップ5は、これらの回転角度データに基づき、前記回転可能な針棒機構11が針棒111を順に軸方向回転させ、それと同時に、前記針板回転機構13が同様にこれらの回転角度データに基づき、針板131及び1組の外釜132を順に、前記軸方向回転と同期する回転を複数回行う。
【0026】
前記ニードルピッチ調節ステップ6は、前記ニードル距離データ25に基づき、前記ニードルピッチ調整機構12が2本のニードル10に対して、ニードルピッチの幅を変える調節変位を順に行うことで、2本のニードル10は2本の縫いステッチ2の連続縫製期間に、幅の異なる複数のニードルピッチ寸法を発生する。
【0027】
図5乃至
図7を参照する。本発明に係るデータ取得ステップ3は、ステッチ設定手順31と、縫製点設定手順32と、データ生成手順33と、シミュレーション照合手順34と、を備える。
【0028】
まず、前記ステッチ設定手順31では、前記2本針ミシン1が前記被縫製物7に縫製成形することが予定される2本の平行な縫いステッチ2を取得し、ユーザが前記2本針ミシン1に対して縫い目距離21を予め設定しておくことで、前記2本針ミシン1は2本の縫いステッチ2及び前記縫い目距離21のステッチ設定データを取得する。しかし、前記2つの平行な縫いステッチ2は、前記縫い目距離21を保持することを例を挙げて説明するためのものに過ぎない。即ち、2本の縫いステッチ2間は、2本の縫いステッチ2が平行でない形態となる(図示せず)ように、一部の領域に幅の異なる間隔距離を有してもよく、これにより、2本針縫いにより縫製できる図柄の形態を広げる。
【0029】
その後、前記縫製点設定手順32では、前記2本針ミシン1におけるコンピュータ装置は2本の縫いステッチ2にそれぞれ、縫い始め位置22を確立し、一方の縫いステッチ2に前記縫い目距離21に基づき、相互の間隔が同様である複数の第1ステッチ縫製点23が生じ、他方の縫いステッチ2に同じ縫い目距離21に基づき、相互の間隔が同様である複数の第2ステッチ縫製点24が生じる。
【0030】
さらに、前記データ生成手順33では、前記コンピュータ装置が順番位置の同様であるこれらの第1ステッチ縫製点23と、これらの第2ステッチ縫製点24とを相互に繋いで複数のニードル距離データ25を取得する。図示するように、同様にそれぞれ第1位置に属する前記第1ステッチ縫製点23aと前記第2ステッチ縫製点24aとを繋いで第1ニードル距離データを生成し、第2位置に属する前記第1ステッチ縫製点23bと前記第2ステッチ縫製点24bとを繋いで第2ニードル距離データを生成する。このように第3、第4等々のニードル距離データ25を生成する。その後、前記第1ステッチ縫製点23、第2ステッチ縫製点24及び前記ニードル距離データ25から、前記移動座標データ及び前記回転角度データを生成する。
【0031】
前記シミュレーション照合手順34では、前記コンピュータ装置がこれらのニードル距離データ25をそれぞれ前記所定寸法範囲と照合し、全てのニードル距離データ25が前記所定寸法範囲に収まる場合、前記コンピュータ装置は前記2本針ミシン1に送信する縫製実施指令を生成する。逆に、これらのニードル距離データ25の何れか一方が前記所定寸法範囲より大きいか、又は前記所定寸法範囲より小さい場合、前記コンピュータ装置は前記縫製実施指令を送信することなく、2本の縫いステッチ2における前記縫い始め位置22を再選択し、元の縫い始め位置22の代わりに新しい縫い始め位置を用いてシミュレーション照合を再び行う。前記シミュレーション照合手順34が、前記縫い始め位置22を複数回再選択しても、前記縫製実施指令を取得できない場合、前記2本針ミシン1は前記縫い目距離21を再設定する注意メッセージを生成する。
【0032】
図6を再び参照する。一つの実施可能な実施形態において、前記ニードルピッチ調整機構12は2本のニードル10の一方を、前記針棒111の軸心と位置合わせる基準位置に固定し、他方は相対的に変位してニードルピッチの幅、即ち、上記第1ニードルピッチデータ、第2ニードルピッチデータ等を変更することができる。針板131における対応する2つの針穴133も、一方が前記針棒111の軸心に配列する基準位置に固定され、他方が相対的に変位して別のニードル10に対応することもできる。
【0033】
図8乃至
図10を参照する。別の実施可能な実施形態において、前記ニードルピッチ調整機構12は2本のニードル10をそれぞれ、前記針棒111の軸心の両側の等距離位置に設け、2本のニードル10を動かして同期変位させてニードルピッチの幅を変更することができる。この実施例において、これらの移動座標データは各ニードル距離データ25の中心点の座標から選ばれてもよく、これらの中心点の座標が計算されて加工経路26を生成し、前記X-Y軸送り機構が前記被縫製物7を動かして前記加工経路26に沿い水平方向に変位させる。それと同時に、針棒111は、これらの回転角度データに基づき、順に軸方向回転し、針板131及び外釜132は同様にこれらの回転角度データに基づき、前記軸方向回転と同期する回転を順に行うことにより、2本のニードル10は2本の縫いステッチ2にそれぞれ、これらの第1ステッチ縫製点23及びこれらの第2ステッチ縫製点24を生成することができる。
【0034】
図10に示すように、前記針板回転機構13は1組の移動装置134を備える。前記移動装置134は、前記ニードル距離データ25に基づき、前記針板131の2つの針穴133及び2つの外釜132を動かして前記2本のニードル10と同期して相対変位を発生させることが可能であることで、2つの針穴133が縫製期間に2本のニードル10と位置合わせるように保持される。
【0035】
図3に比べ、
図10に示される実施の結果は2本上糸と2本下糸による直線の縫いステッチであり、1本針型ミシンでそれぞれ2本のステッチを縫製することに相当する効果でもある。そのため、2つの垂直軸の外釜132はそれぞれ、2つの針穴133と同期横移動しなければならない。
図3に示される水平軸を用いる外釜13は、一定のニードルピッチ範囲にその下糸が同時に2本の上糸と交錯することが可能であるので、針穴133が長孔にされ、横移動する必要がなく、針板131と外釜132のみが針板回転機構13に動かされて針棒111と同期水平回転する。その実施の効果は2本針1本下糸ミシンで、下糸が折れ曲がる様子を呈する縫いステッチを縫製することに相当する。
【符号の説明】
【0036】
1 2本針ミシン
10 ニードル
11 回転可能な針棒機構
111 針棒
12 ニードルピッチ調整機構
13 針板回転機構
131 針板
132 外釜
133 針穴
134 移動装置
2 縫いステッチ
21 縫い目距離
22 縫い始め位置
23、23a、23b 第1ステッチ縫製点
24、24a、24b 第2ステッチ縫製点
25 ニードル距離データ
26 加工経路
3 データ取得ステップ
31 ステッチ設定手順
32 縫製点設定手順
33 データ生成手順
34 シミュレーション照合手順
4 縫製移動ステップ
5 縫製回転ステップ
6 ニードルピッチ調節ステップ
7 被縫製物
9 2本針回転ヘッド模様縫いミシン
90 ベース回転機構
901 回転ジョイント
902 針棒
903 ニードル
903a ニードルピッチ
904 針止め
91 ベース回転機構
911 針板
912 針穴
92 X-Y軸送り機構
93 ステッチ
931、932 実際の縫い目の長さ
94 曲線経路
95 プリセットの縫い目の長さ