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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】無駄の少ない注射器及び針集合体
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20220725BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20220725BHJP
   A61M 5/34 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
A61M5/31 530
A61M5/31 520
A61M5/315 510
A61M5/34
【請求項の数】 32
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020180470
(22)【出願日】2020-10-28
(62)【分割の表示】P 2017173992の分割
【原出願日】2014-03-07
(65)【公開番号】P2021035520
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】61/774,297
(32)【優先日】2013-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515245446
【氏名又は名称】ブラザーズ、 デイヴィッド ビー.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ブラザーズ、 デイヴィッド ビー.
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-005891(JP,A)
【文献】特開2001-161817(JP,A)
【文献】特表昭60-501193(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0130961(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0262435(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/315
A61M 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無駄の少ない注射器であって、
中空体であって、内径、内壁、及び前記中空体の前方端で前記中空体を閉鎖する端壁を有するとともに、開放された後端を有してチャンバを画定する中空体と、
前記中空体の端壁に取り付けられた注射器先端部と、
針組立体と
を含み、
前記注射器先端部は、長手方向軸に沿って前記注射器の前記中空体から離れるように延びる周方向壁を有し、
前記周方向壁の内部表面が、前記注射器先端部の第1端と第2端との間に延びる実質的に円錐台状の形状を有する内部空洞を画定し、
前記中空体の端壁には、前記内部空洞を前記中空体のチャンバとの密閉流体連通状態とする開口が画定され、
前記注射器先端部の第1端は前記中空体の端壁に結合されるように構成され、
前記注射器先端部の第2端は、前記端壁から所定距離に位置決めされ、
前記注射器先端部の第1端は、第1直径を有する開口部を画定し、
前記注射器先端部の第2端は、前記第1直径よりも大きな第2直径を有する開口部を画定し、
前記注射器先端部の第2端はさらに、前記注射器先端部の第2端から径方向に離れるように突出するべく構成された少なくとも一つのフランジを含み、
前記針組立体は、細長い針と、前記注射器先端部の前記少なくとも一つのフランジに選択的に嵌合するべく構成された針ハブとを含み、
前記針ハブは針基部及び円錐台状部材を含み、
前記円錐台状部材は、前記針基部の端壁に結合された遠位端と、前記針基部の端壁から所定距離だけ長手方向外方に延びる近位端とを有し、
前記針ハブの針基部は、前記注射器先端部の前記少なくとも一つのフランジに係合するべく構成された少なくとも一つのねじを有するとともに、前記針基部の端壁及び前記円錐台状部材を貫通する中心ボアを画定し、
前記細長い針は前記中心ボアに位置決めされ、
前記針基部のねじと前記少なくとも一つのフランジとの動作による係合を介して前記針ハブを前記注射器先端部に係合するときに、前記針ハブの円錐台状部材の外側表面が、前記注射器先端部の内側表面と前記中空体の開口の少なくとも一部分とに摺動的に係合するべく構成される結果、前記針ハブの円錐台状部材が前記注射器先端部の内部空洞に取り付けられて流体密封シールを形成し、前記無駄の少ない注射器における死空間を最小限にする、無駄の少ない注射器。
【請求項2】
前記注射器の中空体は、7.0cm未満の長さを有する、請求項1の無駄の少ない注射器。
【請求項3】
前記注射器の中空体は、10.0cm超過の長さを有する、請求項1の無駄の少ない注射器。
【請求項4】
前記注射器の中空体は、7.0cm~10.0cmの長さを有する、請求項1の無駄の少ない注射器。
【請求項5】
前記注射器の中空体の外径が0.25cm未満である、請求項1の無駄の少ない注射器。
【請求項6】
前記注射器の中空体の外径が2.0cm超過である、請求項1の無駄の少ない注射器。
【請求項7】
前記注射器の中空体の外径が0.25cm~2.0cmである、請求項1の無駄の少ない注射器。
【請求項8】
前記注射器の中空体の外径が実質的に一定である、請求項1の無駄の少ない注射器。
【請求項9】
前記注射器の中空体の内径が前記中空体のチャンバの容積容量を変化させる、請求項1の無駄の少ない注射器。
【請求項10】
前記チャンバに包含された流体の量を示すために前記中空体の外壁に位置付けられた複数の長手方向に延びるハッシュマークをさらに含む、請求項1の無駄の少ない注射器。
【請求項11】
前記ハッシュマークは前記注射器のチャンバに包含される流体の濃度を示す、請求項10の無駄の少ない注射器。
【請求項12】
前記ハッシュマークは希釈剤の容積当たりの薬剤の容積を示す、請求項10の無駄の少ない注射器。
【請求項13】
前記ハッシュマークは希釈剤の容積当たりの薬剤の相対単位を示す、請求項10の無駄の少ない注射器。
【請求項14】
前記ハッシュマークは希釈剤の容積当たりの神経毒の相対単位を示す、請求項10の無駄の少ない注射器。
【請求項15】
前記針組立体は、少なくとも一つの交換可能な針組立体を含む、請求項1の無駄の少ない注射器。
【請求項16】
前記注射器先端部は実質的に円柱状の外表面形状を有する、請求項1の無駄の少ない注射器。
【請求項17】
流体を選択的に包含するべく構成されるチャンバを画定するように前記中空体の内壁と往復密閉係合するピストンキャップを有するピストン手段をさらに含む、請求項1の無駄の少ない注射器。
【請求項18】
前記ピストン手段はさらに、前記ピストンキャップに結合されたプランジャを含む、請求項17の無駄の少ない注射器。
【請求項19】
前記ピストンキャップの遠位端は、前記注射器の中空体の端壁に相補的に係合するべく構成される、請求項18の無駄の少ない注射器。
【請求項20】
前記ピストンキャップの遠位端は、前記ピストンキャップの遠位端が前記端壁に接触する押し込み位置において、前記ピストンキャップの端壁と遠位端との間に実質的にいかなる隙間も形成されないようなサイズ及び形状とされる、請求項19の無駄の少ない注射器。
【請求項21】
前記針基部は円柱状の中空形状を有し、前記円錐台状部材は、前記針ハブの針基部に形成される、請求項1の無駄の少ない注射器。
【請求項22】
前記針ハブの円錐台状部材の近位端が、前記針基部を超えて長手方向外方に延びる、請求項1の無駄の少ない注射器。
【請求項23】
前記チャンバには事前に薬剤が充填される、請求項1の無駄の少ない注射器。
【請求項24】
前記針基部のねじと前記少なくとも一つのフランジとの動作による係合を介して前記針ハブを前記注射器先端部に係合するときに、前記針ハブの円錐台状部材の外側表面が、前記注射器先端部の内側表面と摺動的に係合するべく構成される結果、前記円錐台状部材の近位端が前記中空体の開口に近接して位置決めされて前記針ハブの円錐台状部材の外側表面と前記注射器の内側表面とが流体密封シールを形成し、前記無駄の少ない注射器における死空間を最小限にする、請求項1の無駄の少ない注射器。
【請求項25】
前記細長い針が前記中心ボアに位置決めされる結果、前記針の近位端が、前記円錐台状部材の近位端に近接して取り付けられる、請求項1の無駄の少ない注射器。
【請求項26】
無駄の少ない注射器であって、
中空体であって、内径、内壁、及び前記中空体の前方端で前記中空体を閉鎖する端壁を有するとともに、開放された後端を有してチャンバを画定する中空体と、
前記中空体の端壁に取り付けられた注射器先端部と、
針組立体と
を含み、
前記注射器先端部は、長手方向軸に沿って前記注射器の前記中空体から離れるように延びる周方向壁を有し、
前記周方向壁の内部表面が、前記注射器先端部の第1端と第2端との間に延びる実質的に円錐台状の形状を有する内部空洞を画定し、
前記中空体の端壁には、前記注射器先端部の内部空洞を前記中空体のチャンバとの密閉流体連通状態とする開口が画定され、
前記注射器先端部の第1端は、第1直径を有する開口部を画定し、
前記注射器先端部の第2端は、前記第1直径よりも大きな第2直径を有する開口部を画定し、
前記注射器先端部の中に画定された内部表面が、前記注射器先端部の第1端と第2端との間に延びる実質的に円錐台形状の空洞を画定し、
前記注射器先端部の第2端はさらに、対向するように位置決めされた一対のフランジであって、各フランジが前記注射器先端部の第2端から径方向に離れるように突出するべく構成された一対のフランジを含み、
前記針組立体は、細長い針と、前記注射器先端部の前記一対のフランジに選択的に嵌合するべく構成された針ハブとを含み、前記針ハブは針基部及び円錐台状部材を含み、前記円錐台状部材は、前記針基部の端壁に結合された遠位端と、前記針基部の端壁から所定距離だけ長手方向外方に延びる近位端とを有し、
前記針ハブの針基部は、前記注射器先端部の前記一対のフランジに係合するべく構成された少なくとも一つのねじを有するとともに、前記針基部の端壁及び前記円錐台状部材を貫通する中心ボアを画定し、
前記細長い針が前記中心ボアの中に位置決めされ、
前記針基部のねじと前記一対のフランジとの動作による係合を介して前記針ハブを前記注射器先端部に係合するときに、前記針ハブの円錐台状部材の外側表面全体が、前記注射器先端部の内側表面と前記中空体の開口とに摺動的に係合するべく構成される結果、前記針ハブの円錐台状部材が前記注射器先端部の内部空洞と前記中空体の開口の少なくとも一部分とを埋めて流体密封シールを形成し、前記無駄の少ない注射器における死空間を最小限にする、無駄の少ない注射器。
【請求項27】
流体を選択的に包含するべく構成されるチャンバを画定するように前記中空体の内壁と往復密閉係合するピストンキャップを有するピストン手段をさらに含む、請求項26の無駄の少ない注射器。
【請求項28】
前記ピストン手段はさらに、前記ピストンキャップに結合されたプランジャを含む、請求項27の無駄の少ない注射器。
【請求項29】
前記ピストンキャップの遠位端は、前記注射器の中空体の端壁に相補的に係合するべく構成される、請求項28の無駄の少ない注射器。
【請求項30】
前記ピストンキャップの遠位端は、前記ピストンキャップの遠位端が前記端壁に接触する押し込み位置において、前記ピストンキャップの端壁と遠位端との間に実質的にいかなる隙間も形成されないようなサイズ及び形状とされる、請求項29の無駄の少ない注射器。
【請求項31】
前記注射器先端部の第1端は前記中空体の端壁に結合されるように構成され、
前記注射器先端部の第2端は、前記端壁から所定距離に位置決めされる、請求項26の無駄の少ない注射器。
【請求項32】
前記細長い針が前記中心ボアに位置決めされる結果、前記針の近位端が、前記円錐台状部材の近位端に実質的に整列して取り付けられる、請求項26の無駄の少ない注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、概して、選択された流体を患者に注射するための針及び注射器に関し、より具体的には、少なくとも1つの交換可能な針を有する無駄の少ない注射器に関する。より具体的には、患者への所望の神経毒の注射用の交換可能な針をその中に少なくとも1つ有する無駄の少ない注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
AllerganのBotox(登録商標)(Onabotulinumtoxin Type A)、MedicisのDysport(登録商標)(Abobotulinumtoxin Type A)、及びMerzのXeomin(登録商標)(Incobotulinumtoxin Type A)等の神経毒は、過去10~15年間にわたり医療美容市場に参入しており、現在は世界中で使用され、世界規模の数10億ドル産業に達している。
【0003】
神経毒は、現在医療目的及び美容目的の両方に使用されている。米国食品医薬品局(FDA)は、Botox(登録商標)を眉間のしわ取りに対して、Dysport(登録商標)を頸部ジストニア及び眉間のしわに対して、Xeomin(登録商標)を頸部ジストニア、眼瞼けいれん、及び眉間のしわに対して認可している。これらの3つの薬物は、眉間のしわの治療のみのための、それらの神経毒素タイプAの「ラベル通り」の使用について米国においてFDAの認可を有する一方で、3つ全てが、頭部及び頸部全体にわたる動的しわ取りのために、ほとんどの注射を行う医師及び看護師によって、「適応外で」使用される。
【0004】
グローバルな美容市場における優勢企業は、Botox(登録商標)及びBotox(登録商標)Cosmetic(以下、合わせてBotox(登録商標)と称する)を世界規模で製造及び販売する、Allerganである。Botox(登録商標)は、50単位及び100単位凍結乾燥バイアル内に調剤され、使用の直前に、無保存料で無菌の注射可能食塩水、または痛みのより少ない中性pHの静菌食塩水を用いて、注射をする医師及び/または看護師によって再構成されなければならない。当業者には理解され得るように、従来の神経毒バイアルは、複数及び単一用量であり、針で無菌で貫通されることができるエラストマーの頂部を有する。Dysport(登録商標)は300単位バイアル内に調剤され、Xeomin(登録商標)はBotox(登録商標)と同様に100単位バイアル内に調剤される。
【0005】
Botox(登録商標)についてのFDA認可及び添付文書によると、100単位バイアルは、2.5mlの0.9%の無菌かつ無保存料の食塩水で、再構成されるべきである。しかしながらほとんどのユーザは、静菌食塩水が提供する不快感の低減及びより長い貯蔵寿命のために、静菌食塩水を使用する。そのFDA認可以来、Botox(登録商標)及び再構成に使用される希釈剤の量の臨床的使用は、ほとんどのユーザと共に大幅に発展しており、現在、標準希釈が存在しない。しかしながら、傾向は、より少ない希釈剤容積及びより濃度の高い神経毒溶液に向かっている。例えば、今日使用される最も一般的な希釈剤容積は、1バイアル当たり1ml(10単位/0.1ml)、1バイアル当たり2ml(5単位/0.1ml)、1バイアル当たり2.5ml(4単位/0.1mlでBotox(登録商標)のラベル通り)、及び1バイアル当たり4ml(2.5単位/0.1ml)である。この傾向の理由は、より良好な配置制御、より高い濃度でのより良好な候補部位有効性、より少ない痛み及び腫れを伴う注射されるより少ない流体容積、ならびに、上まぶたの下垂症(下垂)または額及び眉毛の下垂症等の逆効果を引き起こす注射の部位からの神経毒拡散のより少ない可能性である。Botox(登録商標)の標準神経毒希釈は(FDA認可の2.5ml以外に)存在せず、施術者が選択した希釈剤の量及び神経毒の濃度に基づく標準送達システムも存在しない。
【0006】
動的な眉間しわの治療のためにBotox(登録商標)を受ける平均患者は、およそ7回の注射にわたって分配される、およそ25単位の神経毒を受け得る。注射される追加の領域は、より多くの神経毒及びより多くの注射を必要とし得る。それぞれの注射は、部位及び注射をする人に応じて、1回の注射当たりおよそ1~4単位を送達する。神経毒が、1mlの希釈剤で希釈される場合、これは10単位/0.1mlまたは1単位/0.01mlの濃度を産生する。患者が25単位を受ける上記の例では、0.25mlの合計容積が患者に注射され得る。従来の1ml注射器は大きすぎてこれらの小容積を正確に調剤することができず、注射器の目盛りは難しすぎて読むことができず、よって神経毒の正確な調剤を可能にしない。さらに、1mlの注射器は、単位ではなく1ml刻みで目盛が付けられている。
【0007】
さらに、ほとんどの1ml神経毒注射器は、無駄の少ない注射器ではなく、かなりの量の神経毒が複数回使用のバイアルのそれぞれの使用に伴って無駄にされ得る。注射器のそれぞれの使用に伴い、高価な神経毒は、注射器先端部、針のハブ、及び/または針ルーメンの死空間で失われ得る。1ml注射器の場合、これは少なくともおよそ0.08mlであると測定されており、一連の注射中に針が交換される場合、無駄は悪化する。
【0008】
さらに、従来の神経毒注射器は、ユーザが神経毒を注射するために訓練されているような単位用量で目盛が付けられていない。さらに、従来の神経毒注射器がルアーロック接続を有さない場合、針は、注射中に注射器から外れ得、患者に損傷を引き起こし、高価な神経毒を無駄にし得る。
【0009】
よって、多くの施術者は、真の1:1注射比を得るために10単位/0.1mlの濃度を収容することができる、30単位または50単位注射器のいずれかであるインスリン注射器を使用することによってこれらの問題を避けてきた。結果として生じる濃度が1単位/.01mlで皮下インスリンと同一であるため、インスリン注射器は、神経毒の1ml希釈での単位用量にのみ使用することができる。インスリン注射器で注射される神経毒の他の全ての濃度において、それぞれの目盛りはもはや神経毒の1単位を表さない。
【0010】
インスリン注射器のほとんどは、無駄が少なく、永久の取り外し不能な針を有する。インスリン注射器は、皮下組織平面においてのみの単一注射のために設計されており、神経毒注射に必要とされる経皮穿刺のためには設計されていない。インスリン針は、複数回の経皮穿刺に耐えられるように十分に設計されていない。インスリン注射器は小さく、目盛りを読み取るのが非常に難しく、かつより大きい手には扱いにくい。針はすぐに鈍くなり、より鋭い針に変えることができない。針の長さは、筋肉内注射ではなく皮下注射のために設計されており(神経毒に用いられる)、多くの患者にとってあまりにも短く、よって乏しい結果をもたらす。30または50を超える単位が注射される場合、複数の注射器が必要であり、注射器の交換に時間を失い、追加の注射器に費用がかかる。
【0011】
永久針を用いるインスリン注射器の別の問題は、神経毒がエラストマー頂部を通してバイアルから吸引される場合、複数の注射により針がさらにより鈍くなり得ることである。多くの施術者は、バイアルの金属シール及びエラストマーの栓を取り外し、清潔であるが無菌ではない注射器をバイアルに挿入して、所望の量の神経毒を吸引し、その後エラストマーの栓を元の場所に戻す。本手順は、行われるごと(典型的には1つのバイアル当たり3回以上)にバイアルを汚染する。これは無菌の複数回使用のバイアルのための標準プロトコルではなく、注射部位感染及びバイアルに残された神経毒の細菌汚染の危険性を大幅に増加させる。永久針を有するインスリン注射器の別の問題は、一連の注射中に針が鈍くなり、かつ痛みを伴う場合、その針をより鋭い針と交換するか、または高価な神経毒が無駄にされないように神経毒を別の注射器に容易に移すための方法が存在しないことである。残念ながら、注射は、多くの場合、注射器が空になるまで、患者の犠牲及び不快感を伴って続く。
【0012】
この容積範囲の無駄の少なくない(non-low-waste)注射器には、1ml注射器及びいくつかのインスリン注射器が含まれる。従来の無駄の少なくない注射器中の測定された無駄は、先端部においておよそ0.04ml、針ハブにおいておよそ0.04mlを含む。よって、一連の注射の終わりにおよそ0.08mlの流体が注射器先端部及び針ハブに残される。これは、使用される希釈剤の量及び注射される神経毒の結果濃度に応じて、神経毒のかなりの損失及び施術者の費用につながる。いくつかの推測では、失われたまたは無駄にされた神経毒は、1年当たり1人のユーザにつき数万ドルに値し得る。さらに、1mlの無駄の少ない注射器が使用可能であるものの、これらはほとんどのユーザが注射するために訓練されるような単位注射のための目盛りが付けられない。さらに、従来の無駄の少ない1ml注射器は、針ハブではなく注射器先端部における神経毒の無駄のみを防止し、よって高価な神経毒はなおも無駄にされる。
【0013】
前述の観点から、当技術分野において、複数の神経毒濃度レベルで単位投与を示すことのできる無駄の少ない神経毒注射器及び針の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0014】
流体を患者に注射するための針及び注射器組立体、より具体的には、少なくとも1つの交換可能な針を有する無駄の少ない注射器が本明細書に記載される。
【0015】
一態様では、注射器は、内径と、本体の前方端を閉鎖する端壁と、を有する中空体を備え得る。別の態様では、本体の後端は開放であり得、本体の内壁と往復密閉係合にあるピストン手段が本体内の流体チャンバを画定し得る。流体チャンバは、例えば非限定的に神経毒等の薬剤を、流体チャンバ内に選択的に含むように構成され得る。
【0016】
一態様に従い、注射器の少なくとも一部は透明な高分子材料から形成され得る。別の態様では、本体の外壁は、チャンバ内に含まれる流体の種類を示すように、マーク及び/またはラベルを付けられ得る。例えば、流体が神経毒である場合、本体の外壁は、神経毒の種類及び/または神経毒の再構成に使用される希釈剤の量を示すように、マーク及びラベルを付けられ得る。一態様では、ハッチマークが、チャンバ内に含まれる流体の量及び/または流体の濃度を示すように、本体の外壁にマーク及び/またはラベルを付けられ得る。例えば、異なる色のハッチマークが異なる濃度に基づく投与量を示すことができるように、ハッチマークは色分けされ得る。透明な本体は、ユーザがチャンバ内の流体レベルを本体のハッチマークと比較することを可能にする。
【0017】
一態様では、注射器先端部は、内部空洞を画定するために注射器の端壁上に装着及び/または形成され得る。本体の端壁における開口部は、注射器先端部の内部空洞を、本体の流体チャンバとの密閉流体連通に配置することができる。別の態様では、注射器先端部は針組立体を注射器に嵌合係合及び固定するように構成され得る。さらなる態様では、注射器先端部は倒立円錐の少なくとも一部を形成し得る。本態様では、注射器先端部の少なくとも一部は、実質的に円錐台形状であり得、円錐台状の内部空洞を画定する。
【0018】
ピストン手段はプランジャ及びピストンキャップを備え得る。一態様では、プランジャは実質的に円柱状の柄から形成され得、ピストンキャップは柄の端に固定して取り付けられ得る。別の態様では、ピストンキャップはエラストマーから形成され得、ピストンキャップの少なくとも一部は注射器の本体の内径と実質的に等しい外径を有する。しかしながら、さらなる態様では、ピストンキャップの少なくとも一部は、注射器の本体の内径よりもわずかに大きい外径を有し得る。さらに別の態様では、ピストンキャップの遠位端は注射器の本体の端壁に相補的に係合するように構成され得る。つまり、ピストンキャップの遠位端は、使用の際にピストンキャップの遠位端が端壁に接触するように、寸法決定及び成形され得る。本態様では、使用中でピストンキャップが本体の端壁に接触する際に、端壁とピストンキャップの遠位端との間に実質的にいかなる隙間または「死空間」も存在しない。これは、流体チャンバ内に含まれる流体の実質的許可が、注射器先端部を通してチャンバから排出されることを可能にする。
【0019】
一態様では、少なくとも1つの針組立体は、細長い針と、針の内部ルーメンが注射器の流体チャンバと流体連通するように、針を支持し針を注射器に連結するように構成された高分子針ハブと、を備え得る。別の態様では、針は25G針、32G針等の従来の針であり得る。針ハブは、従来のルアーロック係合のように注射器のフランジと嵌合係合するように構成された内部スレッドを有する、実質的に円柱状の中空針基部を備え得る。一態様では、円錐台状部材が、針ハブの実質的に円柱状の中空針基部内に、形成され得る及び/または位置付けられ得る。本態様では、円錐台状部材は、注射器先端部において画定される円錐台状空洞に嵌合係合するように構成され得る。針ハブのスレッドが注射器に係合する場合、針ハブの円錐台状部材は、注射器の先端部の円錐台状空洞と流体密封密閉を形成することができ、よって使用の際に、針ハブと注射器との間に実質的にいかなる隙間または「死空間」も形成されない。
【0020】
本発明の追加の利点は、部分的に次の説明において述べられ得、部分的に説明から明白となり得、または、本発明の実践から学ばれ得る。本発明の利点は添付の請求項において具体的に指摘される要素及び組み合わせによって、気づかれ、獲得されるであろう。前述の概略的説明及び次の詳細な説明の両方は単に例示的かつ説明的であり、請求される本発明を制限するものではないということが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
好ましい実施形態のこれら及び他の特徴は、次の添付の図面が参照される詳細な説明においてより明白になるであろう。
【0022】
図1A】注射器中に含まれる流体を患者に注射するための針組立体及び注射器の実施形態の立面図である。
図1B】注射器中に含まれる流体を患者に注射するための針組立体及び注射器の実施形態の立面図である。
図2】一態様に従う、図1の注射器の立面図である。
図3】線3-3で切り取られた図2の注射器の断面図である。
図4】一態様に従う、図2の注射器の一部の立面図である。
図5】一態様に従う、注射器に連結された図1の針組立体の立面図である。
図6】代替の態様に従う、注射器に連結された針組立体の立面図である。
図7】一態様に従う、図1の注射器のプランジャの立面図である。
図8】一態様に従う、図1の注射器のプランジャの立面図であり、破線は、プランジャの頭部を示す。
図9】一態様に従う、図1の注射器の保護カバーの立面図である。
図10】一態様に従う、図1の針組立体の斜視図である。
図11】一態様に従う、図10の針組立体の断面図である。
図12】一態様に従う、図10の針組立体の上面図である。
図13】一態様に従う、針を覆って位置付けられる針ガードを示す、図10の針組立体の断面図である。
図14】一態様に従う、針を覆って位置付けられる針ガードと、針基部の少なくとも一部に重複するように配置される基部ガードと、を示す、図10の針組立体の分解断面図である。
図15】一態様に従う、図14の針ガード及び基部ガードの立面図であり、このガードが閉鎖位置であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、次の詳細な説明、実施例、図面、及び請求項、ならびにそれらの前後の説明への参照によってより容易に理解することができる。しかしながら、本デバイス、システム、及び/または方法が開示及び記載される前に、本発明は、別様が特定されない限り、開示される特定のデバイス、システム、及び/または方法に限定されず、よって当然のことながら変化し得るということが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、具体的な態様を説明する目的のみのためであり、限定的であることを意図しないということもまた理解されるべきである。
【0024】
本発明の次の説明は、その最善の現在既知の実施形態における、本発明の実施可能な教示として提供される。この目的のため、当業者は、本発明の有益な結果をなおも得ながら、本明細書に記載される発明の様々な態様に多くの変更がなされ得るということを認識及び理解するであろう。本発明の所望の利益のいくつかは、他の特徴を利用せずに本発明の特徴のいくつかを選択することによって得ることができるということもまた明らかになるだろう。したがって、当業者は、本発明への多くの修正及び適合が、可能であり、特定の状況においては所望であり得、本発明の一部であるということを理解するであろう。よって、次の説明は本発明の原理の例示として提供され、その限定において提供されない。一貫して使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別様を明らかに述べない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「針(a needle)」への参照は、文脈が別様を述べない限り、2本以上のかかる針を含み得る。
【0025】
範囲は、本明細書において「約」ある特定の値から及び/または「約」別の特定の値までとして表現され得る。かかる範囲が表現される場合、別の態様は、そのある特定の値から及び/またはその別の特定の値までを含む。同様に、値が近似値して表現される場合、「約」という先行詞の使用によって、その特定の値が別の態様を形成するということが理解されるだろう。範囲のそれぞれの端点は、他の端点に関して及び他の端点とは独立的に、の両方で、重要であるということがさらに理解されるであろう。
【0026】
本明細書で使用される場合、「任意の」または「任意で」という用語は、その後に記載される事象または状況が生じても生じなくてもよいということを意味し、その記載は、該事象または状況が生じる例及びそれが生じない例を含む。
【0027】
本明細書で使用される場合「流体」という用語は、神経毒、インスリン、ツベルクリン等のような任意の薬剤を指し得る。さらに、「流体」という用語は、希釈剤及び神経毒、インスリン、ツベルクリン等のような任意の薬剤を含む溶液を指し得る。
【0028】
様々な態様に従い、かつ図1A及び1Bにおいて例示されるように、流体を患者に注射するための針及び注射器集合体10が提供される。一態様では、針及び注射器集合体は、注射器12及び少なくとも1つの針組立体14を備える。別の態様では、針及び注射器集合体10は、無駄の少ない注射器及び少なくとも1つの交換可能な針を備える。さらなる態様では、注射器12は、少なくとも1つの交換可能な針組立体14を有する無駄の少ない1回使用の注射器であり得る。
【0029】
次に図2及び3を参照すると、一態様では、注射器12は、内径18と、本体の前方端22で本体を閉鎖し得る端壁20と、を有する中空体16を備え得る。別の態様では、本体16の後端24は開放であり得、本体の内壁28と往復密閉係合にあるピストン手段26は、本体内のチャンバ30を画定し得る。チャンバは、チャンバ30内に、例えば非限定的に薬剤等の流体を選択的に含むように構成され得る。一態様に従い、注射器12は、本体16の開放後端に隣接して形成されるまたは位置付けられる少なくとも1つのフィンガーフランジ32をさらに備え得る。
【0030】
一態様では、注射器12の本体16は、約7.0cm、約7.0cm、約7.15cm、約7.25cm、約7.4cm、約7.5cm、約7.65cm、約7.75cm、約7.85cm、約8.0cm、約8.15cm、約8.25cm、約8.4cm、約8.5cm、約8.65cm、約8.75cm、約8.85cm、約9.0cm、約9.15cm、約9.25cm、約9.4cm、約9.5cm、約9.65cm、約9.75cm、約9.85cm、約10.0cm未満、または約10.0cmを超える長さを有し得る。別の態様では、注射器の本体16は、約7.0cm~約10.0cmの長さを有する。
【0031】
別の態様では、本体16の外径34は、約0.25cm、約0.25cm、約0.3cm、約0.35cm、約0.4cm、約0.45cm、約0.5cm、約0.55cm、約0.6cm、約0.65cm、約0.7cm、約0.75cm、約0.8cm、約0.85cm、約0.9cm、約0.95cm、約1.0cm、約1.05cm、約1.1cm、約1.15cm、約1.2cm、約1.25cm、約1.3cm、約1.35cm、約1.4cm、約1.45cm、約1.5cm、約1.55cm、約1.6cm、約1.65cm、約1.7cm、約1.75cm、約1.8cm、約1.85cm、約1.9cm、約1.95cm、約2.0cm未満、または約2.0cmを超え得る。本態様では、本体16の外径は実質的に一定の直径であり得るということが企図され、本体の内径18は、本体16のチャンバ30の容積容量を変更するために変化し得ることが企図される。例えば、内径は、本体の容積容量が所定のレベルになるように、所定の直径であり得る。よって、同一の本体の大きさを有する2つの注射器は、チャンバの容積容量に基づいて異なる量の流体を含み得る。
【0032】
一態様では、注射器12の少なくとも一部が透明な高分子材料から形成され得る。別の態様では、注射器の本体16は、硬い透明なプラスチックから成形され得る。本体の外部表面または外壁36は、チャンバ内に含まれる流体の種類を示すように、印刷、マーク、及び/またはラベルを付けられ得る。例えば、流体が神経毒である場合、本体16の外壁は、神経毒の種類及び/または神経毒の再構成に使用される希釈剤の量を示すように、マーク及び/またはラベルを付けられ得る。さらなる態様では、ハッチマーク38が、チャンバ30内に含まれる流体の量を示すように、本体の外壁36に印刷、マーク、及び/またはラベルを付けられ得る。さらに別の態様では、ハッチマークは、左利き及び右利きの注射器のユーザがハッチマーク38を容易に見ることができるように、本体16の中心線の両側に位置付けられ得るまたは印刷され得る。本態様では、ハッチマークは、異なる色のハッチマーク38が異なる流体濃度を示すことができるように、色分けされ得る。
【0033】
一態様では、注射器12の外部表面または外壁36上のハッチマーク38は、濃度マーク目盛を示し得る。つまり、ハッチマークは、注射器のチャンバ30内に含まれる流体の濃度を指すために、注射器に印刷またはマークされ得る。例えば、それぞれのハッチマークは、希釈剤の容積当たりの薬剤の容積を指し得る。別の態様では、注射器の外壁のハッチマーク38は、希釈剤の容積当たりの薬剤の相対単位を示し得る。一実施例で、及び図2を参照すると、「10u」、「20u」・・・というマークは、希釈剤の容積当たりの神経毒の単位を示すことができる。これは、注射器のユーザが、ユーザが従来訓練されてきたように、患者に容易に「単位投薬」することを可能にする。理解され得るように、異なる注射器は、ユーザの所望の薬剤濃度レベルに基づいてユーザに提供され得る。
【0034】
例えば、100単位の神経毒が1mlの希釈剤で希釈された場合、溶液は0.1ml当たり10単位または0.01ml当たり1単位の濃度を有し得る。注射器12は、60単位及び0.6mlの合計容積を保持するように寸法決定されたチャンバ30を有し得る。注射器12の本体16のハッチマーク38は、1または2単位刻みで単位マークを付けられ得、それぞれの単位刻みは、溶液の0.01mlに対応し得る。別の例では、100単位の神経毒が2mlの希釈剤で希釈された場合、これは0.1ml当たり5単位または0.02ml当たり1単位の濃度を有する溶液を生成し得る。本実施例では、注射器は60単位及び1.2mlの合計容積を保持するように寸法決定されたチャンバを有し得る。つまり、本体の内径18は、チャンバ30が1.2mlの薬剤を含み得るように寸法決定され得る。本態様では、注射器12の本体16のハッチマークは、1または2単位刻みで単位マークを付けられ得、それぞれの単位刻みは溶液の0.02mlに対応し得る。別の実施例では、100単位の神経毒が2.5mlの希釈剤で希釈された場合(例えばBotox(登録商標)のラベル通りのように)、これは、0.1ml当たり4単位または0.025ml当たり1単位の濃度を生成し得る。本実施例では、本体のチャンバ30は、50単位及び1.25mlの合計容積を保持し得る。注射器12のハッチマーク38は、1または2単位刻みで単位マークを付けられ得、それぞれの単位刻みは溶液の0.025mlに対応し得る。なおも別の実施例では、100単位の神経毒が4mlの希釈剤で希釈された場合、この生成された溶液は0.1ml当たり2.5単位または0.04ml当たり1単位の濃度を有し得る。注射器のチャンバ30は、30単位及び1.2mlの合計容積を保持するように寸法決定され得る。注射器12のハッチマークは、1または2単位刻みで単位マークを付けられ得、それぞれの単位刻みは溶液の0.04mlに対応し得る。当然のことながら、注射器は、任意の所定の容積及び/または希釈量に従って寸法決定され、マークが付けられ得るということが企図される。
【0035】
図2、4、5、及び6を参照すると、一態様では、注射器先端部が注射器の本体16から離れて長手方向に延びるように、注射器先端部40は、注射器12の端壁20に装着及び/または形成され得る。本態様では、内部空洞42は、注射器先端部内に画定され得、端壁における開口部44は注射器先端部の内部空洞を、本体16のチャンバ30との密閉流体連通に配置し得る。注射器先端部40は、針組立体14を注射器に嵌合係合及び固定するように構成され得る。
【0036】
一態様に従い、注射器先端部40は倒立円錐の少なくとも一部であり得る。つまり、注射器先端部の少なくとも一部が実質的に円錐台形状であり得る。別の態様では、第1の直径を有する注射器先端部の第1の端46は、本体16の端壁20に連結され得、注射器先端部40の第2の端48は、端壁から所定の距離で位置付けられ得、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する。さらに別の態様では、注射器先端部内に画定される内部空洞42は、針組立体14の円錐台状部材50を受けるように構成される実質的に円錐台状の空洞を画定し得る(下記により完全に説明される)。さらなる態様では、2つのフランジ52は、注射器先端部の第2の端48から離れて半径方向に突出し得る。当業者に既知であるように、フランジは、針組立体のルアーロック機構に選択的に係合するように構成され得る。
【0037】
図6で任意に示されるように、注射器先端部40は、実質的に円柱状の外表面形状を有し得る。本態様では、当業者に既知であるように、注射器先端部の外表面は、針ハブ80の相補的ねじ付き基部86を協同的に受けることができる、その表面に画定される従来のらせんねじ付き表面を有し得ることが企図される。さらに別の態様では、注射器先端部内に画定される内部空洞42は、針組立体14の円錐台状部材50を受けるように構成される、実質的に円錐台状の空洞を画定し得る(下記でより完全に説明される)。
【0038】
図5~8に例示されるように、ピストン手段26はプランジャ54及びピストンキャップ56を備え得る。一態様では、プランジャは実質的に円柱状の成形シャフト58から形成され得る。シャフトは、プランジャ54が本体のチャンバ30内で移動することができるように、注射器12の本体16の内径18よりも小さい外径を有し得る。親指表面60は、注射器のユーザがチャンバ内でプランジャ54(及びピストンキャップ56)を押して移動させるために平坦な表面を提供するように構成され、シャフトの近位端62上に形成され得る。別の態様では、プランジャの遠位端64の一部は、シャフトの外径よりも小さい外径を有し得、プランジャ首66を形成する。本態様では、首はピストンキャップ56のシャフトへの取り付けのために構成され得る。プランジャ頭部68は、首に隣接して位置付けられ得る。一態様では、図7に例示されるように、プランジャ頭部は、実質的に円柱状であり得、プランジャシャフト58と実質的に同一の外径を有する。あるいは、別の態様では、プランジャ頭部68は、実質的に円錐台状であり得(図8に例示される通り)、頭部の一部はプランジャシャフト58と実質的に同一の外径を有する。
【0039】
ピストンキャップ56は、近位端70及び遠位端72を有する成形されたエラストマーから形成され得る。一態様では、ピストンキャップは、注射器12の本体16の内径に実質的に等しい外径を有し得る。さらなる態様では、ピストンキャップ56の少なくとも一部は、注射器の本体の内径18よりもわずかに大きい外径を有し得る。なおも別の態様では、ピストンキャップの近位端70は、ピストンキャップ56の遠位端72の外径よりもわずかに大きい外径を有し得る。さらに別の態様では、ピストンキャップの中心部74は、ピストンキャップ56の遠位端及び近位端の外径のいずれかまたは両方よりも小さい外径を有し得る。
【0040】
一態様に従い、ピストンキャップ56の遠位端72は、注射器12の本体16の端壁20に相補的に係合するように構成され得る。つまり、ピストンキャップの遠位端は、使用の際に、ピストンキャップ56の遠位端72が端壁20に接触するように、かつ、互いに接触する際に、端壁とピストンキャップの遠位端との間に実質的にいかなる隙間または「死空間」も存在しないように、寸法決定及び成形され得る。例えば、下記でより完全に説明されるように、本体16の端壁20が実質的に平面または平坦である場合、チャンバ30内に含まれる実質的に全ての流体が、針78を通ってチャンバから排出されるように、ピストンキャップ56の遠位端72は実質的に平面または平坦であり得る。
【0041】
一態様では、内部ボアが、プランジャシャフト58のプランジャ頭部68及び/またはプランジャ首66に嵌合係合するように構成される、ピストンキャップ56内に画定され得る。つまり、ピストンキャップ56の弾性性質に起因して、ピストンキャップの内部ボアは、ピストンシャフトの頭部及び/または首に位置付けられて「はまる」ことができる。例えば、及び図7を参照して、ピストンキャップ56はプランジャシャフト58にはまることができ、その弾性特性によって定位置に固定されることができる。
【0042】
さらなる任意の態様では、及び図6に示されるように、注射器の本体16のチャンバ30の遠位端を画定する壁の一部は、端壁における開口部44に向かって、遠位に及び内向きに先細であり得る。本態様では、プランジャのピストンキャップの遠位端は、プランジャが端壁に向かって遠位に完全に押し下げられると、プランジャのピストンキャップの遠位端は、チャンバの形成された端壁と同一平面接触をし、この押し下げ位置における本体のチャンバ内の任意の死空間を低減または除去するように、相補的に成形され得ることが企図される。
【0043】
使用において、下記により完全に説明されるが、ピストンキャップ56の少なくとも一部の外径は、注射器12の本体16の内径18に密封して係合し得、流体密封密閉を形成する。さらに、ピストンキャップ56の近位端70及び/または遠位端72の外径は、プランジャと本体との間の回転動作を防止または制限することによって、プランジャ54に安定性を提供し得る。別の態様では、ピストンキャップと本体16の内径との間に形成される密閉は、注射器12からの少量の流体の注射を制御するのに役立つ、所望の注射抵抗を提供し得る。
【0044】
任意で、及び図9に示されるように、注射器12は保護カバー76をさらに備え得る。一態様では、保護カバーは、保護カバーを注射器の前方端22及び/または注射器先端部40に選択的に連結するために、従来のルアーロックねじと同様の内部ねじを有し得る。注射器12に連結すると、保護カバー76は注射器先端部40を保護して、注射器自体のチャンバ30の無菌状態を維持することができる。保護カバーは、安全性のために、例えば非限定的に、使用される希釈剤の量及び注射される流体の結果濃度に応じて、色分けされ得ることが企図される。
【0045】
図10~12を参照すると、少なくとも1つの針組立体14は、針78自体及び針を支持し針を注射器に取り付けるように構成された高分子針ハブ80のうちの少なくとも1つを備え得る。
【0046】
一態様では、針78は、約25G1/2インチ長針及び32G1/2インチ長針のうちの少なくとも1つであり得る。例えば、吸引のための針78は、注射器12の充填を妨害しないように十分な流動特性をなおも有しながら、薬剤の無駄の最小化を可能にするために、25G針であり得る。別の例では、注射のために設計される針は、優れた流動特性を有しかつ筋肉内注射のために十分に長い、32G針78であり得る。当業者に既知であるように、32G針は、容易には曲がらず、複数回の経皮穿刺の後に鋭いままであることができる。32G針は、比較的痛みを伴わずに注射され得、注射器中にごくわずかしか薬剤の無駄を残し得ない。一態様では、かつ図11に示されるように、針の近位端82は鈍角であり得、針の遠位端84は斜角または鈍角であり得る。針は、既存の針規格慣習に対応するように色分けされ得ることが企図される。
【0047】
一態様では、針78は針ハブ80を通過する細長い針であり得る。別の態様では、針ハブは、内部ねじ88を有する実質的に円柱状の中空針基部86を備え得る。本態様では、内部ねじは、従来のルアーロック係合におけるように、注射器のフランジ52と嵌合係合するように構成され得る。例えば、針ハブ80の基部86の内部ねじ88は、注射器の本体16に対する針ハブのおよそ180度の回転が、針78を注射器12の定位置に完全に係合及び固定することができるように、構成され得る。理解され得るように、ルアーロック機構は、針78が注射中に外れて起こり得る損傷及び高価な薬剤の損失を引き起こさないように、針-注射器集合体10を安定に保つことができる。さらに、針ハブ80のルアーロック機構及び注射器のフランジは、所望に応じた素早い複数の針交換を可能にする。
【0048】
図10に示されるように、一態様では、針ハブ80の基部86は、操作を支援し、かつ針ハブを注射器先端部40に固定して留めるように構成される、少なくとも1つの外部長手方向溝90を備え得る。別態様では、基部は、針基部が注射器12に固定して取り付けられると、針78の遠位端84が所望の位置に回転され(すなわち遠位端が斜角である場合、斜角は注射器に対して所望の向きになる)、かつ注射のために注射器12を持っているときに注射器のマークと一列になることができるように、整列マーク92をさらに備え得る。つまり、本態様では、針ハブ80が完全に係合して注射器先端部上の定位置に回転された後、針基部の整列マーク92は、針の斜角と一列にかつ注射器の「正面」になり得る。
【0049】
一態様では、針組立体14の円錐台状部材50は、針ハブ80の実質的に円柱状の中空針基部86内で形成され得る及び/またはそこに位置付けられ得る。別の態様では、円錐台状部材は、基部の端壁98に連結する第1の直径を有する遠位端96と、基部の中空円柱102へと所定の距離に延びる第2の直径を有する近位端100と、を備え得る。本態様では、第2の直径は第1の直径よりも小さくあり得る。さらなる態様では、針ハブの円錐台状部材50の近位端100は、基部の中空円柱を超えて長手方向に延び得る(図10及び11に例示される通り)。
【0050】
一態様では、針ハブ80の円錐台状部材50は、注射器先端部40の実質的に円錐台状の空洞42に嵌合係合するように、寸法決定及び成形され得る。つまり、針ハブの円錐台状部材は、注射器12の先端部の円錐台状空洞内に滑り込むように構成され得る。針ハブ80のルアーロック機構が注射器に係合すると、針ハブの円錐台状部材50は、注射器の先端部40の円錐台状空洞42と流体密封密閉を形成することができる。
【0051】
一態様では、針ハブ80は、針基部86に連結される、少なくとも2つの段階的により小さくなる円柱104、106をさらに備え得る。一態様では、これらの段階的に小さくなる円柱は、穿刺部位のより良好な可視化を可能にし得、針78自体の軸安定性を提供し得る。別の態様では、複数のフランジ108は、互いから離間し得、かつ、最も小さい円柱に隣接して位置付けられ得る。本態様では、フランジは針に軸安定性も提供し得る。
【0052】
一態様では、中心ボア110は円柱104、106、針基部86の端壁98、及び針基部の円錐台状部材50において画定され得、それらを通って延び得る。中心ボアは、針78がその内部に位置付けられることを可能にするように寸法決定され得る。別の態様では、針の近位端82が針基部の円錐台状部材の近位端100と実質的に整列することができるように、針は中心ボア内に位置付けられ得る。しかしながら、任意で、針78の近位端は、円錐台状部材50の近位端100を超えて延び得、または、円錐台状部材の近位端は、針の近位端82を超えて延び得る。さらなる態様では、細長い針の遠位端84は針ハブ80から突き出し得る。例えば、針78の遠位端は、約0.25インチ、約0.25インチ、約0.30インチ、約0.35インチ、約0.40インチ、約0.45インチ、約0.50インチ、約0.55インチ、約0.60インチ、約0.65インチ、約0.70インチ、約0.75インチ、約0.80インチ、約0.85インチ、約0.90インチ、約0.95インチ、約1インチ未満、または約1インチを超えて、針ハブから突き出し得る。さらなる態様では、針78は、例えば非限定的に、のり、他の接着剤等の任意の複数の製造手段によって針ハブ80に固定され得、または、針ハブは、針が針ハブ80を通って滑ることを防止するために、レーザーエッチングされたまたは「ストップ」を製造された可能性がある針の周囲に成形され得る。
【0053】
図13~15に示されるように、一態様に従い、針組立体14は、選択的に取り外し可能な針ガード112及び選択的に取り外し可能な基部ガード114のうちの少なくとも1つをさらに備え得る。別の態様では、針ガード112は、針78を覆うように、及び針ハブ80の針基部86の少なくとも一部に重複するように、寸法決定及び成形され得る。さらなる態様では、基部ガード114は、針ハブの円錐台状部材50を覆うように、及び針基部の少なくとも一部に重複するように、寸法決定及び成形され得る。針ガード及び基部ガードは、針組立体にはまること及び/または針組立体14にねじ込むことによって、針組立体14に取り外し可能に連結され得る。なおも別の態様では、針ガード112及び基部ガード114は、両方のガードが針組立体上に設置されると、互いと実質的に同一平面になるように、寸法決定及び成形され得る。任意で、針ガード及び/または基部ガードは、製造及び使用期限情報等を有し得る、ひねって破ることができるラベル116によって、互いに固定され得る。針ガード112及び基部ガード114の両方が針組立体の周囲に(すなわち閉鎖位置に)設置され位置付けられる場合、針ガード及び基部ガードは、包装、輸送、及び保存の間に針78の無菌状態を維持するために共同することができる。
【0054】
本出願の針78及び注射器12を使用するために、基部ガード114は、所望の針78を保持する針ハブ80から取り外すことができる。例えば、薬剤が容器から吸引される場合、25G針を有する針ハブが選択され得る。針ハブの円錐台状部材50は、注射器先端部40の円錐台状空洞42へ挿入され得、注射器12のフランジ52が針基部のねじ88に係合し、それにより針ハブ80を注射器に固定するように、針ハブ80はおよそ180度回転され得る。つまり、針ハブ及び注射器は、互いへと互いに対して逆方向に回転され得る。針ハブ80は、注射器先端部40に係合されて固定してしっかりと引っ張られ、よって、注射器先端部の内部空洞42における死空間のほとんどまたは全てを除去する。
【0055】
ユーザはその後、針78の先端を所望の流体を含むバイアルへと挿入して、プランジャ54を引いて針のルーメン118を通って注射器12のチャンバ30へと流体を吸引することができる。針78は、所望の場合、注射器12に対する針ハブ80の回転を逆向きにして1つ目の針を注射器から外すことによって変更することができ、新しい針を前のように注射器に取り付けることができる。チャンバ30から流体を排出するために、ユーザはプランジャを押し下げて、所望の量の流体を注射器12のチャンバから端壁20における開口部44を通って針のルーメン118へと押し出すことができる。流体が患者へと排出される場合、針の遠位端84は、プランジャ54を押し下げる前に患者の皮膚を穿刺することができる。
【0056】
理解され得るように、注射器の本体16は、注射器12内の薬剤の希釈レベルに適切であるとしてマークが付けられ得る。さらに理解され得るように、ピストンキャップ56の遠位端72の平坦表面は、注射器の本体16の端壁20との接触を促され得(図2及び13に例示される通り)、それにより、注射器のチャンバ30内の死空間のほとんどまたは全てを除去する。さらに、この死空間の除去(及び注射器先端部40の内部空洞42と針ハブの円錐台状部材50との間の死空間の除去)は、注射中及び注射後に薬剤が残り得る面積を除去することができ、本針及び注射器集合体10を交換可能な針を有する無駄の少ない注射器12にとって効率的にする。本出願の注射器及び針が有する唯一の無駄は、針自体のルーメン118の内部にあり得る。
【0057】
前述の明細書において、本発明のいくつかの実施形態が開示されたが、当業者には、前述の説明及び関連する図面において提示される教示の利益を有する、本発明が関係する本発明の多くの修正及び他の実施形態が考えられ得るということが、理解される。よって、本発明は本明細書の上記で開示される特定の実施形態に限定されず、多くの修正及び他の実施形態が、添付の請求項の範囲内に含まれることが意図されることが理解される。さらに、本明細書ならびに以下の請求項において特定の用語が用いられるものの、それらは一般的かつ説明的目的のみで使用され、記載される発明及び以下の請求項を限定する目的のためには使用されない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
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図6
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