(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】付着物除去装置
(51)【国際特許分類】
F28G 1/16 20060101AFI20220725BHJP
F28G 11/00 20060101ALI20220725BHJP
B08B 7/00 20060101ALI20220725BHJP
F22B 37/48 20060101ALN20220725BHJP
F23J 1/00 20060101ALN20220725BHJP
【FI】
F28G1/16 Z
F28G11/00
B08B7/00
F22B37/48 C
F23J1/00 Z
(21)【出願番号】P 2020183593
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】田井 宏
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/225984(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/028264(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28G 1/16
F28G 11/00
B08B 7/00
F22B 37/48
F23J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に付着した付着物を圧力波を利用して除去する付着物除去装置であって、
開口部を有する容器と、
前記開口部に対応する蓋体と、
を備え、
前記蓋体は、前記容器内に通じる複数の噴射口部を有し、
前記噴射口部を塞ぐ封止体を配設した状態で前記容器内の圧力を高めることで、前記封止体を破壊して前記圧力波を発生させるように構成される付着物除去装置。
【請求項2】
前記封止体は、シール層と形態維持層とを含む可燃性の積層体から構成されている請求項1に記載の付着物除去装置。
【請求項3】
前記噴射口部の開口面積S
1と前記開口部の開口面積S
2との比(S
1/S
2)が、0.3~0.7である請求項1又は2に記載の付着物除去装置。
【請求項4】
前記容器と前記蓋体との間に前記封止体を供給する封止体供給機構を備える請求項1~3の何れか一項に記載の付着物除去装置。
【請求項5】
前記封止体に対する前記容器及び前記蓋体の挟持状態と非挟持状態とを切り換える切換機構を備え、
前記封止体供給機構は、前記非挟持状態のときに、前記封止体の破壊された部分に代えて、破壊されていない部分で前記噴射口部を塞ぐように前記封止体を供給する請求項4に記載の付着物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に付着した付着物を圧力波を利用して除去する付着物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発電設備が併設された廃棄物焼却施設での発電量向上が重要となっている。廃棄物焼却施設での発電は、焼却炉での廃棄物の燃焼に伴い発生する高温の排ガスからボイラにて熱回収を行い、所定の温度、圧力の蒸気を生成してタービン発電機に導入することにより行われている。
【0003】
ボイラは、放射室と対流伝熱室とを有している。放射室には、放射伝熱管が放射伝熱面として配設され、対流伝熱室には、過熱器が対流伝熱面として配設されている。過熱器は、水平方向に伝熱管(過熱管)が複数配設された伝熱管群が高さ方向に複数段配設されて構成されている。
【0004】
焼却炉からの排ガスには、腐食成分や、重金属類等を含むダストが含まれている。このため、運転経過に伴い、ボイラの放射伝熱面や、対流伝熱面に徐々にダストが付着、堆積し、熱回収性能の低下や、ガス流路の閉塞、伝熱管の腐食といった障害を招き、正常な運転の継続が困難な状態に陥ることがある。
【0005】
そこで、圧力波を利用して付着物を除去する付着物除去装置をボイラに付設することにより、ボイラの正常な運転を継続的に行うことを可能としている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
特許文献1に係る付着物除去装置は、開口部を有する耐圧容器と、開口部を塞ぐ閉鎖体とを備え、供給ラインを介して耐圧容器内に供給された酸化剤を含むガス状の燃料の爆発によって圧力波を発生させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に係る付着物除去装置において、耐圧容器内への燃料の供給に伴って耐圧容器内の圧力が大きくなる。このとき、閉鎖体における耐圧容器の開口部に対応する部分の全体に耐圧容器内の圧力が作用する。このため、閉鎖体(封止体)の構成材料として、引張強度が低い材料を使用した場合、耐圧容器内への燃料の充填が完了する前に、封止体が破断してしまい、燃料を爆発させることができず、圧力波を発生させることができない虞がある。このような事態を回避するために、封止体の構成材料として、一般的に引張強度が高い金属材料に使用が限定されてしまい、封止体の構成材料として使用可能な材料の選択の幅が狭くなる。
【0009】
なお、例えば、封止体の厚みを増すことによって封止体に作用する応力を抑えるようにすれば、封止体の構成材料として、一般的に引張強度が低い非金属材料でも使用可能になる場合がある。しかしながら、封止体の厚みを増すと、耐圧容器に対し封止体を固定する手段が大型化し、引いては装置全体の大型化を招くことになる。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、封止体を破壊して圧力波を発生させる構成の付着物除去装置において、封止体に作用する応力を抑えることができ、これによって封止体の構成材料として使用可能な材料の選択の幅を広げることができる付着物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係る付着物除去装置の特徴構成は、
対象物に付着した付着物を圧力波を利用して除去する付着物除去装置であって、
開口部を有する容器と、
前記開口部に対応する蓋体と、
を備え、
前記蓋体は、前記容器内に通じる複数の噴射口部を有し、
前記噴射口部を塞ぐ封止体を配設した状態で前記容器内の圧力を高めることで、前記封止体を破壊して前記圧力波を発生させるように構成されることにある。
【0012】
本構成の付着物除去装置によれば、開口部を有する容器と、容器の開口部に対応する蓋体とを備えている。蓋体は、容器内に通じる複数の噴射口部を有している。使用前において、複数の噴射口部は、封止体によって塞がれている。本構成の付着物除去装置において、圧力波を発生するにあたり、例えば、容器内にガス状の可燃性物質等を供給したり、圧縮ガスを供給したりすると、容器内への可燃性物質等の供給に伴って容器内の圧力が大きくなる。このとき、封止体は、蓋体における複数の噴射口部の周りの部分に支持される。このため、封止体に対し圧力が作用する面積が小さくなり、封止体に作用する応力を抑制することができる。従って、封止体の構成材料として、一般的に引張強度が高い金属材料が使用可能であるのは勿論のこと、一般的に引張強度が低い非金属材料でも使用可能となり、封止体の構成材料として使用可能な材料の選択の幅を広げることができる。
【0013】
本発明に係る付着物除去装置において、
前記封止体は、シール層と形態維持層とを含む可燃性の積層体から構成されていることが好ましい。
【0014】
本構成の付着物除去装置によれば、封止体は、シール層と形態維持層とを含む可燃性の積層体から構成されている。このような構成により、容器内への可燃性物質等の供給に伴って容器内の圧力が大きくなっても、シール層によって可燃性物質等の漏れを確実に防ぐことができるとともに、シール層の変形を形態維持層によって抑えてシール層としての機能を維持することができる。従って、容器内への可燃性物質等の充填時に複数の噴射口部を封止体によって漏れなく確実に塞ぐことができる。また、封止体は、可燃性の材料から構成されている。これにより、例えば、付着物除去装置がボイラに付設されている場合、圧力波の発生時に破壊された封止体は、ボイラ内の熱によって燃焼される。従って、破壊された封止体からボイラの伝熱管群を保護するプロテクタが不要になるとともに、圧力波によってボイラの伝熱管群から除去された付着物の回収ラインに、破壊された封止体が混入するのを未然に防ぐことができる。
【0015】
本発明に係る付着物除去装置において、
前記噴射口部の開口面積S1と前記開口部の開口面積S2との比(S1/S2)が、0.3~0.7であることが好ましい。
【0016】
本構成の付着物除去装置によれば、蓋体に設けられた複数の噴射口部の開口面積S1と、容器に設けられた開口部の開口面積S2との比(S1/S2)が、0.3~0.7とされている。これにより、付着物を除去するのに必要な圧力波の威力を確保しつつ、封止体に作用する応力を確実に抑制することができる。
【0017】
本発明に係る付着物除去装置において、
前記容器と前記蓋体との間に前記封止体を供給する封止体供給機構を備えることが好ましい。
【0018】
本構成の付着物除去装置によれば、容器と蓋体との間に封止体を供給する封止体供給機構を備える構成とされる。このような構成により、先の圧力波を発生させた後、次の圧力波を容易に発生させることができ、封止体供給機構によって新たな封止体が直ちにセットされるため、圧力波を連続的に発生させることが可能となる。
【0019】
本発明に係る付着物除去装置において、
前記封止体に対する前記容器及び前記蓋体の挟持状態と非挟持状態とを切り換える切換機構を備え、
前記封止体供給機構は、前記非挟持状態のときに、前記封止体の破壊された部分に代えて、破壊されていない部分で前記噴射口部を塞ぐように前記封止体を供給することが好ましい。
【0020】
本構成の付着物除去装置によれば、封止体に対する容器及び蓋体の挟持状態と非挟持状態とが切換機構によって切り換えられる。封止体に対する容器及び蓋体の挟持状態では、容器内の圧力を高めることで封止体が破壊されるまで、蓋体の複数の噴射口部を封止体で確実に塞ぐことができるので、所望の圧力波を確実に発生させることができる。一方、封止体に対する容器及び蓋体の非挟持状態では、封止体を移動させることができる。従って、切換機構と封止体供給機構との協働により、すなわち切換機構による挟持状態と非挟持状態との切り換え動作と、切換機構が非挟持状態にあるときに、封止体の破壊された部分に代えて、破壊されていない部分で複数の噴射口部を塞ぐように封止体を供給する動作との組み合わせにより、容器内の圧力を高めることによる封止体の破壊と、次の圧力波の発生に備えて封止体をセットする動作とを交互に行うことができるので、圧力波を連続的に発生させることができ、付着物を継続的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る付着物除去装置がボイラに付設されている状態図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一実施形態に係る付着物除去装置を一部破断して示し、封止体を挟持した封止体挟持状態図である。
【
図3】
図3は、本発明の第一実施形態に係る付着物除去装置を一部破断して示し、封止体を挟持していない封止体非挟持状態図である。
【
図4】
図4は、
図2のA矢印方向から見た蓋体の部分正面図である。
【
図5】
図5は、封止体を示し、(a)は
図2のB矢視図、(b)は
図2のC矢視図である。
【
図6】
図6は、本発明の第二実施形態に係る付着物除去装置を一部破断して示し、封止体を挟持した封止体挟持状態図である。
【
図7】
図7は、本発明の第二実施形態に係る付着物除去装置を一部破断して示し、封止体を挟持していない封止体非挟持状態図である。
【
図8】
図8は、切換機構の別態様例を示す図である。
【
図9】
図9は、封止体供給機構の別態様例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、廃棄物焼却施設の焼却炉に並設されたボイラに備え付けられる付着物除去装置を例に挙げて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0023】
〔第一実施形態〕
<概略説明>
図1は、本発明の第一実施形態に係る付着物除去装置がボイラに付設されている状態図である。
図1に示すように、付着物除去装置10Aは、ボイラ1の排ガス流路2を構成する側壁3の外側に配置されている。ボイラ1の排ガス流路2には、水平方向に配列される複数の伝熱管4をボイラ1の上下方向に複数段設けてなる複数の伝熱管群5,6が配設されている(
図1では2つの伝熱管群のみ図示する。)。伝熱管群5,6を構成する伝熱管4が、付着物(ダスト)が付着した対象物となる。上側の伝熱管群5と下側の伝熱管群6との間には、所定広さの空間が設けられ、この空間に連通状態で接続ダクト7が側壁3に突設されている。付着物除去装置10Aは、ノズル体8を介して接続ダクト7に取り付けられている。付着物除去装置10Aは、容器11、蓋体12、切換機構13及び封止体供給機構15を備えている。
【0024】
図2は、本発明の第一実施形態に係る付着物除去装置を一部破断して示し、封止体を挟持した封止体挟持状態図である。また、
図3は、本発明の第一実施形態に係る付着物除去装置を一部破断して示し、封止体を挟持していない封止体非挟持状態図である。なお、
図2及び
図3では、後述するケーシング31の内部構造を明示する都合上、
図1において描かれている左側の連結板36を図示省略している。
【0025】
<容器>
図2に示すように、容器11は、側壁3(
図1参照)に向かう方向を「前方」とした場合、後方(
図2の左側から右側に向う方向)に向かってこの記載順に配される小径円筒状部11a、円錐台筒状部11b、及び大径円筒状部11cを有している。これら筒状部11a,11b,11cは、互いの軸線(管軸)を一致させた状態で一体的に連設されている。ここで、大径円筒状部11cの後端側は、端壁部20によって閉鎖されている。一方、小径円筒状部11aの前端側は、開口されて開口部21が形成されている。また、小径円筒状部11aの前端部には、開口部21を包含するように容器側フランジ部22が外向きに張り出すように形成されている。容器側フランジ部22の前面には、開口部21を円環状に取り囲むように形成されるOリング溝にOリング23が装着されている。なお、以下の説明において、管軸方向とは、特に断りのない限り、容器11の軸線(管軸)が延びる方向のことである。
【0026】
<蓋体>
蓋体12は、容器11の開口部21に対応して設けられるものであり、容器側フランジ部22と対向するように容器側フランジ部22の前方側に配置されている。蓋体12は、開口部21を含む容器側フランジ部22の全体を覆うのに十分な大きさの板面を有する矩形板状部材で構成されている。
【0027】
<噴射口部>
図4は、
図2のA矢印方向から見た蓋体の部分正面図である。
図4に示すように、蓋体12は、容器11内に通じる複数(本例では19個)の噴射口部25を有している。複数の噴射口部25の夫々は、蓋体12を貫通する断面円形の丸孔状に形成されている。複数の噴射口部25は、蓋体12における容器11の開口部21に対応する部分に同心円状に規則的に並ぶように配置されている。すなわち、蓋体12には、蓋体12における容器の開口部21に対応する部分の中央に1個の噴射口部25が配置され、この中央に配置された噴射口部25の周りに、6個の噴射口部25が等角度(60°毎)で各々の噴射口部25の中心をその中央に配置された噴射口部25の中心を基準とする第一ピッチ円直径D
1の円周CR
1上に一致させるように配置され、さらに、それら6個の噴射口部25の周りに、12個の噴射口部25が等角度(30°毎)で各々の噴射口部25の中心をその中央に配置された噴射口部25の中心を基準とする第二ピッチ円直径D
2(D
1<D
2)の円周CR
2上に一致させるように配置されている。
【0028】
<複数の噴射口部と容器の開口部との開口面積比>
本実施形態において、複数(19個)の噴射口部25の全ての開口面積を合計した開口面積S1と、容器11の開口部21の開口面積S2との比(S1/S2)は、0.3~0.7であることが好ましく、より好ましくは、0.4~0.6である。これにより、付着物を除去するのに必要な圧力波の威力を確保しつつ、後述する封止体90に作用する応力を確実に抑制することができる。なお、比(S1/S2)が0.3未満である場合、付着物を除去するのに必要な圧力波の威力を確保するのが難しくなる。比(S1/S2)が0.7を超える場合、封止体90に作用する応力を十分に抑制することができず、容器11内への可燃性物質等の充填が完了する前に封止体90が破断する虞がある。
【0029】
<切換機構>
図2に示すように、切換機構13は、ケーシング31、油圧シリンダ32及び付勢手段33を備えている。
【0030】
[ケーシング]
ケーシング31は、主フレーム部材35及び連結板36を備えている。主フレーム部材35は、容器11の小径円筒状部11aが貫通可能な開口部(図示省略)を有する矩形板状部材で構成されている。主フレーム部材35は、蓋体12に対し管軸方向に所定間隔を存して、前後方向に板面を向けて蓋体12と対向するように配置されている。前方に向かって左右両側の連結板36は、蓋体12及び主フレーム部材35の左右両側部同士を連結する。
【0031】
後述する巻回体91から繰り出される封止体90は、管軸方向に板面を向けた状態でケーシング31内における蓋体12と容器側フランジ部22との間の領域を通り、管軸方向と交差(直交)する方向である鉛直下方へと送り出すことができるようになっている。
【0032】
蓋体12、主フレーム部材35及び連結板36の下面側には、容器11の下方に位置するように管軸方向に延設される支持部材39が固定されている。容器11は、支持部材39に転動可能に取り付けられるガイドローラ40を介して管軸方向に移動可能に支持部材39に支持されている。
【0033】
[油圧シリンダ]
油圧シリンダ32は、蓋体12に容器側フランジ部22を近づけるように相対移動させる流体アクチュエータである。本実施形態の場合は、油圧シリンダ32の伸長作動により、容器側フランジ部22が蓋体12へと近づくように相対移動される。
【0034】
油圧シリンダ32は、複数(本例では4個)設けられている。複数の油圧シリンダ32は、主フレーム部材35に固定状態で組み付けられている。複数の油圧シリンダ32は、容器11の管軸回りに等角度(90°毎)で配置されている。具体的には、主フレーム部材35の前面側から見て、容器11の管軸に原点Oを一致させるようにX-Y直交軸を設定し、X軸の正の向きの軸を基準(0°)として、原点Oを中心に反時計回りを正の回転方向と定めた場合、45°、135°、225°及び315°のそれぞれの位置に油圧シリンダ32が配置されている。
図2及び
図3では、説明の都合上、主フレーム部材35の前面側から見て45°及び315°のそれぞれの位置に配置される油圧シリンダ32のみが図示されている。
【0035】
油圧シリンダ32は、単動形の片ロッドシリンダである。油圧シリンダ32におけるシリンダロッドの先端部には、先端側が半球状に形成された押当部材41が取り付けられている。押当部材41の先端は、容器側フランジ部22の後面に当接されている。油圧シリンダ32において、図示省略されるピストンの復帰は、当該油圧シリンダ32に内蔵された圧縮コイルばね(図示省略)の付勢力や、付勢手段33の付勢力によってなされる。なお、押当部材41の先端が当接される容器側フランジ部22の後面側に当板(図示省略)を交換可能に配設するのが好ましい。こうすることにより、押当部材41から作用する押圧力によって容器側フランジ部22が局所的に凹むのを防ぐことができ、押当部材41から容器側フランジ部22を保護することができる。
【0036】
[案内手段]
上述したように、容器側フランジ部22は、油圧シリンダ32の伸長作動により、蓋体12に近づくように管軸方向に相対移動される。また、容器側フランジ部22は、油圧シリンダ32に内蔵された圧縮コイルばねの付勢力や、付勢手段33の付勢力により、蓋体12から離れるように管軸方向に相対移動される。このような、蓋体12に対する容器側フランジ部22の相対移動が正確、且つスムーズに行われるようにするために、案内手段45が設けられている。案内手段45は、ガイドピン46と、ガイドブシュ47とにより構成されている。
【0037】
ガイドピン46は、複数(本例では2本)設けられている。複数のガイドピン46は、容器側フランジ部22を貫通し、且つ各ガイドピン46の軸線が容器11の管軸と平行をなすように、蓋体12と主フレーム部材35との間に配設され、蓋体12及び主フレーム部材35に図示されないボルト等の締結具により固定されている。複数のガイドピン46は、容器11の管軸回りに等角度(180°毎)で配置されている。具体的には、蓋体12の前面側から見て、容器11の管軸に原点Oを一致させるようにX-Y直交軸を設定し、X軸の正の向きの軸を基準(0°)として、原点Oを中心に反時計回りを正の回転方向と定めた場合、90°及び270°のそれぞれの位置にガイドピン46が配置されている。
図2及び
図3では、ガイドピン46及びその他の部品を識別可能に図面上に示す都合上、実際は蓋体12の前面側から見て90°及び270°のそれぞれの位置にあるガイドピン46を、蓋体12の前面側から見て67.5°及び292.5°のそれぞれの位置にずらした状態で図示している。
【0038】
ガイドブシュ47は、複数のガイドピン46に対応するように、複数(本例では2個)設けられている。複数のガイドブシュ47は、容器側フランジ部22に設けられた取付孔に圧入されて容器側フランジ部22に固定されている。複数のガイドブシュ47は、容器11の管軸回りに等角度(180°毎)で配置されている。具体的には、容器側フランジ部22の前面側から見て、容器11の管軸に原点Oを一致させるようにX-Y直交軸を設定し、X軸の正の向きの軸を基準(0°)として、原点Oを中心に反時計回りを正の回転方向と定めた場合、90°及び270°のそれぞれの位置にガイドブシュ47が配置されている。
図2及び
図3では、ガイドブシュ47及びその他の部品を識別可能に図面上に示す都合上、実際は蓋体12の前面側から見て90°及び270°のそれぞれの位置にあるガイドブシュ47を、蓋体12の前面側から見て67.5°及び292.5°のそれぞれの位置にずらした状態で図示している。
【0039】
案内手段45においては、蓋体12と主フレーム部材35との間に配設されるガイドピン46がガイドブシュ47の内部に摺動可能に差し込まれている。これにより、蓋体12に対し容器側フランジ部22が管軸方向に相対移動する際に、ガイドピン46に沿ってガイドブシュ47が摺動される。こうして、蓋体12に対する容器側フランジ部22の相対移動の際に、容器側フランジ部22が案内手段45によって案内されるようになっている。
【0040】
[付勢手段]
付勢手段33は、引張ロッド51、圧縮コイルばね52、座金53、第一ナット54及び第二ナット55を備えている。
【0041】
引張ロッド51は、複数(本例では2本)設けられている。複数の引張ロッド51は、各引張ロッド51の軸線が容器11の管軸と平行をなすようにして、容器側フランジ部22の後面側に突出するように容器側フランジ部22に固定状態で植設されている。複数の引張ロッド51は、容器11の管軸回りに等角度(180°毎)で配置されている。具体的には、容器側フランジ部22の前面側から見て、容器11の管軸に原点Oを一致させるようにX-Y直交軸を設定し、X軸の正の向きの軸を基準(0°)として、原点Oを中心に反時計回りを正の回転方向と定めた場合、0°及び180°のそれぞれの位置に引張ロッド51が配置されている。
図2及び
図3では、引張ロッド51及びその他の部品を識別可能に図面上に示す都合上、実際は蓋体12の前面側から見て0°及び180°のそれぞれの位置にある引張ロッド51を、蓋体12の前面側から見て90°及び270°のそれぞれの位置にずらした状態で図示している。
【0042】
容器側フランジ部22の後面側に突出されている引張ロッド51は、主フレーム部材35を貫通し、主フレーム部材35の後面側にさらに突出されている。主フレーム部材35の後面側に突出されている引張ロッド51の部分には、主フレーム部材35の後方に向かってこの記載順に配される圧縮コイルばね52及び座金53がそれぞれ外嵌されている。主フレーム部材35の後面側に突出されている引張ロッド51の部分には、当該引張ロッド51の後端から先端に向かう所要の領域に雄螺子部51aが形成されている。この雄螺子部51aには、後方に向かってこの記載順に配される第一ナット54及び第二ナット55がそれぞれ螺合されている。
【0043】
圧縮コイルばね52において、前端側は、主フレーム部材35の後面に当接され、後端側は、座金53に当接されている。座金53には、第一ナット54が当接されており、第一ナット54を締め込んだり、緩めたりする操作により、圧縮コイルばね52の初期たわみ量を調整することができるようになっている。そして、第一ナット54の操作による圧縮コイルばね52の初期たわみ量調整後において、第一ナット54に当接状態で第二ナット55を締め付け、その後、第一ナット54を緩める方向に逆回転させることにより、第一ナット54の締め込み状態がダブルナットの効果で保持される。
【0044】
付勢手段33において、圧縮コイルばね52の弾性力は、座金53、ナット54,55を介して引張ロッド51に伝達される。こうして、付勢手段33は、蓋体12に対し容器側フランジ部22を引き離す方向(後方)に容器側フランジ部22を付勢する。
【0045】
<油圧駆動手段>
切換機構13を油圧シリンダ32により駆動する油圧駆動手段60は、エアハイドロブースタ(以下、単に「ブースタ」と略称する。)61と、方向制御弁62とを備えている。
【0046】
[ブースタ]
ブースタ61は、ブースタ本体65と、ブースタ本体65に内蔵されるピストン体66とを備えている。ピストン体66は、大径ピストン67と小径ピストン68とが連結ロッド69によって連結されてなるものである。ブースタ本体65の一方側(
図2において右側)の閉鎖端部と大径ピストン67との間には、第一駆動室71が区画形成されている。大径ピストン67と小径ピストン68とブースタ本体65との間には、第二駆動室72が区画形成されている。ブースタ本体65の他方側(
図2において左側)の閉鎖端部と小径ピストン68との間には、増圧室73が区画形成されている。増圧室73内には、作動油が充満されている。増圧室73と油圧シリンダ32とは、油圧管路75によって接続されている。
【0047】
[方向制御弁]
方向制御弁62は、例えば、第一出入ポート、第二出入ポート、第一排気ポート、第二排気ポート及び圧縮エア導入ポートを有する5ポート2位置切換電磁操作式の方向制御弁である。方向制御弁62の第一出入ポートと第一駆動室71とは、エア管路76によって接続されている。方向制御弁62の第二出入ポートと第二駆動室72とは、エア管路77によって接続されている。方向制御弁62の第一排気ポートは、エア管路78を介してサイレンサ81に接続されている。方向制御弁62の第二排気ポートは、エア管路79を介してサイレンサ82に接続されている。方向制御弁62の圧縮エア導入ポートは、エア管路80を介して圧縮空気供給源85に接続されている。
【0048】
<封止体供給機構>
封止体供給機構15は、蓋体12に設けられた複数(本例では19個)の噴射口部25の全てを同時に塞ぐのに十分な広さを有する封止体90を供給するものであり、巻回体91、繰り出しドラム92及び回収機構93を備えている。
【0049】
<封止体>
封止体90は、帯状に長く成形した板状体からなるものであり、シール層90aと形態維持層90bとを含む可燃性の積層体から構成されている。シール層90aは、容器11内への後述する可燃性物質等の供給に伴って容器11内の圧力が大きくなっても、可燃性物質等が漏れないように気密性を持たせるための層であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂材料により製造されたシートからなる。形態維持層90bは、シール層90aに隣接する位置に、当該シール層90aの形態を維持するために設けられる層であり、例えば、紙や不織布等により製造されたシートからなる。封止体90は、例えば、紙や不織布等よりなるシートと、熱可塑性樹脂によりなるシートとを、一対のピンチロールで熱を加えながら挟み付けて一体的に接合して製造される。
【0050】
封止体90は、シール層90a側を容器側フランジ部22に臨ませ、形態維持層90b側を蓋体12に臨ませるように、蓋体12と容器側フランジ部22との間に、管軸方向に板面を向けた状態で配されている。こうして、容器11内への後述する可燃性物質等の供給に伴って容器11内の圧力が大きくなっても、シール層90aによって可燃性物質等の漏れを確実に防ぐことができるとともに、シール層90aの変形を形態維持層90bによって抑えてシール層90aとしての機能を維持することができる。従って、容器11内への可燃性物質等の充填時に複数の噴射口部25を封止体90によって確実に塞ぐことができる。また、封止体90は、可燃性の材料から構成されている。これにより、圧力波の発生時に破壊されてボイラ1内に向って吹き飛ばされた封止体90は、ボイラ1内の熱によって燃焼される。従って、圧力波の発生時に破壊されてボイラ1内に向って吹き飛ばされた封止体90からボイラ1の伝熱管群を保護するプロテクタが不要になるとともに、圧力波によってボイラの伝熱管群5,6から除去された付着物の回収ラインに、破壊された封止体90が混入するのを未然に防ぐことができる。
【0051】
[巻回体]
巻回体91は、帯板状の封止体90をロール状に巻き回してなるものであり、容器11の上方に配される繰り出しドラム92に装着されている。
【0052】
[繰り出しドラム]
繰り出しドラム92は、容器11の管軸を含む平面上に投影したときに直交する関係にある軸線を有する支持軸94を介して図示されない装置フレームに回転可能に取り付けられている。ここで、巻回体91から繰り出される封止体90は、その板面を容器11の管軸方向に向けて開口部21及び噴射口部25を塞ぎながら管軸方向と交差(直交)する方向である鉛直下方へと向かう送りラインに沿って進むように、図示されない装置フレームに対する繰り出しドラム92の取付位置等が定められている。
【0053】
[回収機構]
回収機構93は、巻取りドラム95、巻取りモータ96、ガイドローラ97及び送り量検出手段98を備えている。
【0054】
巻取りドラム95は、容器11の管軸(軸線)を基準として、繰り出しドラム92と対称の位置関係となるように容器11の下方に配設されている。巻取りドラム95は、容器11の管軸(軸線)を含む平面上に投影したときに直交する関係にある軸線を有する支持軸99を介して図示されない装置フレームに回転可能に取り付けられている。巻取りドラム95には、繰り出しドラム92から繰り出され、蓋体12と容器側フランジ部22との間を通った封止体90の先端が取り付けられている。
【0055】
巻取りドラム95には、支持軸99に回転動力を伝達可能に巻取りモータ96が付設されている。巻取りモータ96の作動により、繰り出しドラム92から繰り出される封止体90が巻取りドラム95によって巻き取られるようになっている。
【0056】
ガイドローラ97は、繰り出しドラム92から蓋体12と容器側フランジ部22との間、及び巻取りドラム95に至る送りラインの途中の要所に配設されており、繰り出しドラム92から繰り出されて巻取りドラム95で巻き取られる封止体90を案内する。
【0057】
図5は、封止体を示し、(a)は
図2のB矢視図、(b)は
図2のC矢視図である。送り量検出手段98としては、例えば、照射したレーザ光線の反射光により封止体90の破壊された部分(複数の丸孔90d:
図5(b)参照)を検出できるレーザセンサ等が挙げられる。封止体供給機構15に付設された図示されない制御装置は、送り量検出手段98の検知結果に基づいて、封止体90の送り量を演算し、算出された送り量に基づいて、巻取りモータ96の回転を制御する。
【0058】
封止体供給機構15は、切換機構13が後述する封止体非挟持状態のときに、送り量検出手段98の検出結果に基づいて、制御装置が巻取りモータ96の回転を制御することにより、封止体90の破壊された部分(丸孔90d:
図5(b)参照)に代えて、破壊されていない部分90c(
図5(a)参照)で複数の噴射口部25の全てを塞ぐように封止体90を供給することができる。
【0059】
図2に示すように、容器11の端壁部20には、主供給管路100の一端側が接続されている。主供給管路100の他端側には、可燃性ガス供給管路101を介して可燃性ガス供給源102が接続されるとともに、酸化剤ガス供給管路103を介して酸化剤ガス供給源104が接続されている。容器11の内部には、可燃性ガス供給源102からの可燃性ガスが、可燃性ガス供給管路101及び主供給管路100を介して供給されるとともに、酸化剤ガス供給源104からの酸化剤ガスが、酸化剤ガス供給管路103及び主供給管路100を介して供給されるようになっている。ここで、可燃性ガス(可燃性物質)としては、例えば、メタン、水素等が挙げられる(本例ではメタン)。一方、酸化剤ガスとしては、例えば、酸素、空気等が挙げられる(本例では酸素)。
【0060】
主供給管路100の途中には、主供給弁105が介設されている。主供給管路100における主供給弁105の上流側には、容器11の内部の圧力を計測する圧力計106が接続されている。可燃性ガス供給管路101には、可燃性ガス供給弁107が介設されている。酸化剤ガス供給管路103には、酸化剤ガス供給弁108が介設されている。
【0061】
本実施形態においては、圧力計106の計測信号に基づいて、可燃性ガスと酸化剤ガスとが所定の圧力下で所定の混合比となるように、主供給弁105、可燃性ガス供給弁107及び酸化剤ガス供給弁108のそれぞれの弁開度を制御する。これにより、所定の圧力下において容器11の内部で可燃性ガスと酸化剤ガスとが所定の混合比で混合される。
【0062】
容器11の端壁部20には、プラグ保護部材110を介してグロープラグ111が取り付けられている。このような構成において、グロープラグ111に通電することにより、容器11の内部の混合ガスを発火させることができる。また、混合ガスの燃焼・爆発に伴い生じた圧力波の殆どは、プラグ保護部材110によって遮られるので、グロープラグ111を保護することができ、グロープラグ111の寿命を大幅に延ばすことができる。
【0063】
<ノズル体>
ノズル体8は、蓋体12に設けられた噴射口部25を通して容器11の開口部21に対応するように開口された小径円筒状部8aと、前方に向って徐々に拡径する逆截頭円錐筒状部8bと、小径円筒状部8aよりも口径が大きい大径円筒状部8cとを有している。小径円筒状部8a、逆截頭円錐筒状部8b及び大径円筒状部8cは、前方に向かってこの記載順で一体的に連設されている。
【0064】
ノズル体8において、大径円筒状部8c及び逆截頭円錐筒状部8bは、接続ダクト7の内部に差し込まれている。ノズル体8の中間部は、小径円筒状部8aの前端部に一体的に設けられたフランジが接続ダクト7の本体部分115の後端部に一体的に設けられたフランジに所要のボルトで締着されることによって接続ダクト7に固定されている。ノズル体8の後端は、小径円筒状部8aの後端部に一体的に設けられたフランジが蓋体12に所要のボルトで締着されることによって蓋体12に固定されている。
【0065】
<パージ手段>
付着物除去装置10Aは、圧力波放出口である複数の噴射口部25に向かって飛来するダスト等を含む飛来物をバージするパージ手段をさらに備えている。具体的には、パージ手段は、飛来物を吹き飛ばすためのパージガス(例えば、圧縮空気等)を吹き出す吹出管120である。吹出管120は、ノズル体8における小径円筒状部8aの管軸と直交する軸方向に延びる円筒状部材から構成されている。吹出管120は、ノズル体8における小径円筒状部8aの前端と後端との中間部において、当該吹出管120の一端部が、小径円筒状部8aの内部に連通状態で小径円筒状部8aに接合されている。吹出管120の他端部には、図示されないエア配管や、流量制御弁等を介して圧縮空気供給源と接続されている。
【0066】
以上に述べたように構成される付着物除去装置10Aの作動について、主に、
図2及び
図3を用いて説明する。
【0067】
図2に示すように、蓋体12と容器側フランジ部22との間に封止体90を位置させた状態において、方向制御弁62の所定の操作により、方向制御弁62の弁位置を第一位置に切り換える。この場合、圧縮空気供給源85からの圧縮空気は、エア管路80、方向制御弁62及びエア管路76を介して第一駆動室71に供給される。これと同時に、第二駆動室72内の空気は、エア管路77、方向制御弁62、エア管路79及びサイレンサ82を介して排気される。
【0068】
これにより、ピストン体66は、
図2において左側に移動され、増圧室73内の作動油が圧縮される。増圧室73内の作動油は、大径ピストン67と小径ピストン68との面積比に応じて増圧される。増圧された作動油(圧油)は、油圧管路75を介して油圧シリンダ32に供給される。これにより、油圧シリンダ32が伸長作動され、容器側フランジ部22が蓋体12に近づくように前方へと移動される。これに伴い、容器11が管軸に沿って前方に移動される。容器11は、ガイドローラ40を介して支持部材39に支持されているので、容器11の前方への移動がスムーズに行われる。
【0069】
容器側フランジ部22が前方へ移動されると、蓋体12と容器側フランジ部22との間に位置する封止体90が、容器側フランジ部22と蓋体12とによって挟持される状態となる(以下、この状態を「封止体挟持状態」と称する。)。この封止体挟持状態においては、Oリング23のシール効果と封止体90のシール層90aとの相乗効果により、容器側フランジ部22と封止体90とが気密状態に保たれる。従って、後述するように容器11の内部の圧力を高めることで封止体90が破壊されるまで、蓋体12の複数の噴射口部25を封止体90によって確実に塞ぐことができるので、所望の圧力波を確実に発生させることができる。
【0070】
また、容器側フランジ部22が前方へと移動されると、容器側フランジ部22と共に引張ロッド51も前方へと移動される。これに伴い、圧縮コイルばね52が引張ロッド51の移動に応じて圧縮され、圧縮量に応じた弾性反発力が付勢手段33において蓄勢される。
【0071】
上記のようにして、封止体挟持状態とした後に、可燃性ガス供給源102及び酸化剤ガス供給源104から供給管路101,103,100を介して、容器11の内部に可燃性ガス及び酸化剤ガスをそれぞれ供給し、容器11の内部において可燃性ガスと酸化剤ガスとが所定の混合比で混合される状態とする。
【0072】
そして、グロープラグ111に通電することにより、容器11内の混合ガスの温度を上昇させて発火させる。容器11内の混合ガスが発火すると、容器11の内部で火炎が急速に伝播するような燃焼・爆発が起こる。容器11の内部の気体は、燃焼によって引き起こされる温度上昇によって一気に膨張しようとする。閉鎖空間である容器11の内部の圧力は、急激に高まり、圧力に耐えきれなくなった封止体90が、粉々に破壊される。封止体90が破壊されると、蓋体12の複数の噴射口部25から一気に高圧の気体が噴出することによって圧力が急激に開放される。圧力の急激な開放の結果、圧力波が発生する。発生した圧力波は、ノズル体8における小径円筒状部8a、逆截頭円錐筒状部8b及び大径円筒状部8cを介してボイラ1の排ガス流路2内に放出される(
図1参照)。このようにして放出された圧力波による風圧、振動により、伝熱管4に付着したダストが剥離して除去される。
【0073】
圧力波を放出した後、次の圧力波放出の準備のため、方向制御弁62の所定の操作により、方向制御弁62の弁位置を
図3に示すような第二位置に切り換える。
【0074】
図3に示すように、方向制御弁62の弁位置が第二位置にある場合、圧縮空気供給源85からの圧縮空気は、エア管路80、方向制御弁62及びエア管路77を介して第二駆動室72に供給される。これと同時に、第一駆動室71内の空気は、エア管路76、方向制御弁62、エア管路78及びサイレンサ81を介して排気される。
【0075】
これにより、ピストン体66が、
図3において右側に移動され、増圧室73の作動油受入容積が増加する。そして、油圧シリンダ32に内蔵されたピストン復帰用の圧縮コイルばね(図示省略)の付勢力や、付勢手段33の付勢力の作用により、油圧シリンダ32内の作動油が油圧管路75を介して増圧室73へと送り込まれ、油圧シリンダ32が収縮する。これと同時に、付勢手段33における圧縮コイルばね52の弾性反発力により、引張ロッド51が後方へと引っ張られ、容器側フランジ部22が蓋体12から離れるように後方へと移動される。これに伴い、容器11が管軸に沿って後方へと移動される。容器11は、ガイドローラ40を介して支持部材39に支持されているので、容器11の後方への移動がスムーズに行われる。
【0076】
容器側フランジ部22が後方へ移動されると、容器側フランジ部22と封止体90の間に隙間が生じ、蓋体12と容器側フランジ部22との間に位置する封止体90が、容器側フランジ部22と蓋体12とによって挟持されない状態となる(以下、この状態を「封止体非挟持状態」と称する。)。
【0077】
封止体非挟持状態とした後に、巻取りモータ96を作動させて、封止体90を下方へと所定の送りピッチで送る。これにより、封止体90の破壊された部分(丸孔90d:
図5(b)参照)に代えて、破壊されていない部分90c(
図5(a)参照)で容器11の複数の噴射口部25の全てを塞ぐように、封止体90を位置させることができる。
【0078】
付着物除去装置10Aにおいては、封止体挟持状態として混合ガスを充填、発火する動作と、封止体非挟持状態として封止体90を送る動作とを交互に繰り返し実行可能である。これにより、圧力波を連続的に放出することが可能であり、伝熱管4の付着物を継続的に除去することができる。
【0079】
付着物除去装置10Aにおいては、容器11内への可燃性ガス及び酸化剤ガスの供給に伴って容器11内の圧力が大きくなる。このとき、封止体90は、蓋体12における複数の噴射口部25の周りの部分に安定的に支持される。このため、封止体90に対し圧力が作用する面積が小さくなり、封止体90に作用する応力を抑制することができる。
【0080】
封止体90は、紙や不織布等よりなるシートと熱可塑性樹脂よりなるシートとの複合材であり、一般的な金属材料よりも引張強度が低い。付着物除去装置10Aによれば、封止体90に作用する応力を抑制することができるとともに、蓋体12における複数の噴射口部25の周りの部分で封止体90を安定的に支えることができるので、封止体90が局所的に変形するのを抑制することができる。従って、引張強度が一般的に低い非金属材料で構成される封止体90であっても使用可能となり、封止体90の構成材料として使用可能な材料の選択の幅を広げることができる。
【0081】
封止体90は、可燃性の材料から構成されている。これにより、圧力波の発生時に破壊されてボイラ1の内部に向って吹き飛ばされた封止体90は、ボイラ1内の熱によって燃焼される。従って、圧力波の発生時に破壊されてボイラ1の内部に向って吹き飛ばされた封止体90からボイラ1の伝熱管群を保護するプロテクタが不要になるとともに、圧力波によってボイラの伝熱管群5,6から除去された付着物の回収ラインに、破壊された封止体90が混入するのを未然に防ぐことができる。
【0082】
〔第二実施形態〕
図6は、本発明の第二実施形態に係る付着物除去装置を一部破断して示し、封止体を挟持した封止体挟持状態図である。また、
図7は、本発明の第二実施形態に係る付着物除去装置を一部破断して示し、封止体を挟持していない封止体非挟持状態図である。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同一又は同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第二実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0083】
<蓋体>
図6に示すように、第二実施形態の付着物除去装置10Bは、容器側フランジ部22の前方側に配設される蓋体12(付着物除去装置10Bの説明において、この蓋体12を「第一蓋体12」と称する。)に加えて、容器11における小径円筒状部11aの前端部に嵌着される蓋体130(以下、「第二蓋体130」と称する。)を備えている。第二蓋体130は、小径円筒状部11aの前端部の内周側に形成される段付き穴部125に、締め代を持たせた圧入や、ボルト等の締結具、溶接等の固着手段によって固定状態で嵌め込まれている。なお、第二蓋体130と容器側フランジ部22とを一体的に形成する態様もある。
【0084】
<噴射口部>
第二蓋体130は、第一蓋体12と同様に、複数(本例では19個)の噴射口部25を有している。第一蓋体12に設けられる複数の噴射口部25と第二蓋体130に設けられる複数の噴射口部25とは、管軸方向で見たときに互いの配置が重なるようにされている。従って、第一蓋体12及び第二蓋体130にそれぞれ設けられる複数の噴射口部25は、容器11内に通じている。
【0085】
第二実施形態の付着物除去装置10Bにおいても、容器11内への可燃性ガス及び酸化剤ガスの供給に伴って容器11内の圧力が大きくなる。このとき、封止体90は、蓋体12における複数の噴射口部25の周りの部分に安定的に支持されて、封止体90に対し圧力が作用する面積が小さくなり、封止体90に作用する応力を抑制することができることは第一実施形態の付着物除去装置10Aと同様である。
【0086】
第二実施形態の付着物除去装置10Bでは、第一蓋体12における複数の噴射口部25の周りの部分と、第二蓋体130における複数の噴射口部25の周りの部分とによって封止体90が挟まれる。これにより、封止体90がより安定的に支持されることになる。従って、容器11内への可燃性ガス等の充填時において、封止体90の局所的な変形をより確実に抑制することができる。
【0087】
以上、本発明の付着物除去装置について、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。具体的な別実施形態は以下のとおりである。
【0088】
〔別実施形態〕
図8は、切換機構の別態様例を示す図である。上記各実施形態における切換機構に代えて、
図8(a)~(d)に示す切換機構を採用することができる。なお、上記各実施形態と同一又は同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとする(他の別実施形態においても同様)。
【0089】
<切換機構>
図8(a)に示す切換機構213は、ケーシング214と、トグルリンク215と、トグルリンク215を駆動するアクチュエータとしてのエアシリンダ216とを備えている。
【0090】
ケーシング214は、主フレーム部材35と、主フレーム部材35と蓋体12とを連結するように配設されるアクチュエータ支持部材217とを備えている。
【0091】
トグルリンク215は、容器側フランジ部22と主フレーム部材35との間に配設されている。トグルリンク215は、第一リンク221と第二リンク222とにより構成されている。第一リンク221の後端部は、主フレーム部材35に固着されたブラケットに第一連結ピン231を介して連結されている。第二リンク222の前端部は、容器側フランジ部22に固着されたブラケットに第二連結ピン232を介して連結されている。第一リンク221の前端部と第二リンク222の後端部とは、第三連結ピン233によって連結されている。
【0092】
エアシリンダ216のシリンダロッド先端部は、第三リンク223及び第三連結ピン233を介してトグルリンク215(第一リンク221及び第二リンク222)に連結されている。ここで、第三リンク223における第三連結ピン233が挿通される挿通孔223aは、小径円筒状部11aの管軸方向に長い長孔状に形成されている。このような挿通孔223aを設けることにより、エアシリンダ216の伸縮作動によってトグルリンク215が拡縮する際に、第三連結ピン233が小径円筒状部11aの管軸方向に移動するのを許容してエアシリンダ216にラジアル方向の力が作用するのを防ぎつつ、エアシリンダ216の伸縮力(推力)を第三リンク223、及び第三連結ピン233を介してトグルリンク215に確実に伝達することができる。なお、エアシリンダ216に代えて、油圧シリンダを用いてもよい。
【0093】
切換機構213において、エアシリンダ216が伸長作動すると、第三連結ピン233が小径円筒状部111aに近づくように押され、これに伴い第一連結ピン231と第二連結ピン232との相対距離が広がり、トグルリンク215が拡げられる。これにより、容器側フランジ部22が蓋体12に向かって近づくように容器11の全体が移動され、蓋体12と容器側フランジ部22との間に位置する封止体90が、蓋体12と容器側フランジ部22とによって挟持され、封止体挟持状態とされる。
【0094】
切換機構213において、エアシリンダ216が収縮作動すると、第三連結ピン233が小径円筒状部111aから離れるように引かれ、これに伴い第一連結ピン231と第二連結ピン232との相対距離が縮まり、トグルリンク215が縮められる。これにより、蓋体12から容器側フランジ部22が離れるように容器11の全体が移動され、封止体90が蓋体12と容器側フランジ部22とによって挟持されていない封止体非挟持状態とされる。
【0095】
図8(b)に示す切換機構313は、反力受け部材315、エアシリンダ316及び油圧ジャッキ317を備えている。
【0096】
反力受け部材315は、容器11を内包する骨組構造体からなり、蓋体12に固定されている。エアシリンダ316は、反力受け部材315に取り付けられている。エアシリンダ316と容器11とは、アーム部材318によって接続されている。油圧ジャッキ317は、容器11の端壁部20と反力受け部材315との間に介設されている。
【0097】
切換機構313においては、エアシリンダ316の伸長作動により、蓋体12から容器側フランジ部22が離れるように、容器11が蓋体12に対して相対移動される。これにより、封止体非挟持状態とされる。油圧ジャッキ317の伸長作動により、容器側フランジ部22が蓋体12へと近づくように、容器11が蓋体12に対して相対移動される。これにより、封止体挟持状態とされる。こうして、エアシリンダ316と油圧ジャッキ317との協働により、封止体挟持状態と封止体非挟持状態とが切り換えられる。なお、エアシリンダ316や油圧ジャッキ317等の流体アクチュエータに代えて、電動アクチュエータ(例えば、電動シリンダ等)を用いてもよい。
【0098】
図8(c)に示す切換機構413は、反力受け部材415、エアシリンダ416及び押付機構417を備えている。
【0099】
反力受け部材415は、容器11の端壁部20と対向する反力受け板部418と、蓋体12に固定されて反力受け板部418を支持する支持板部419とにより構成されている。エアシリンダ416は、反力受け板部418に取り付けられている。エアシリンダ416のシリンダロッドは、容器11の端壁部20に接続されている。押付機構417は、本体部420、爪部421、及び油圧作動部422を備えている。本体部420は、蓋体12における容器側フランジ部22と対向する部分に向かって延びるように蓋体12に形成されるT溝(図示省略)に摺動自在に装着されている。爪部421は、蓋体12と容器側フランジ部22とが封止体90を挟んだ状態にあるときの容器側フランジ部22の側部に対して押付状態と非押付状態とを切り換え可能に枢支軸423を介して本体部420に取り付けられている。油圧作動部422は、爪部421が前記押付状態とするための枢支軸423回りのトルクを爪部421に作用させる。
【0100】
切換機構413においては、蓋体12と容器側フランジ部22とが封止体90を挟んだ状態にあるときに、容器側フランジ部22に近づくように押付機構417が相対移動される。そして、油圧作動部422の作動によって爪部421が容器側フランジ部22を蓋体12へと押し付ける。これにより、封止体挟持状態とされる。一方、押付機構417における油圧作動部422が作動停止状態とされて爪部421が非押付状態とされた後に、容器側フランジ部22から離れるように押付機構417が相対移動される。これにより、封止体非挟持状態とされる。こうして、押付機構417の容器側フランジ部22への相対移動と、爪部421の容器側フランジ部22への押付状態と非押付状態との切り換えとの連携動作により、封止体挟持状態と封止体非挟持状態とを切り換えることができる。
【0101】
図8(d)に示す切換機構513は、蓋体12と容器側フランジ部22とを締結する締結具500を備えて構成されている。締結具500としては、例えば、蓋体12及び容器側フランジ部22を封止体90を避けて貫通するボルト501と、ボルト501に螺合するナット502とよりなるものが挙げられる。切換機構513においては、ボルト501及びナット502の締付操作により、封止体挟持状態とし、ボルト501及びナット502の締付解除操作により、封止体非挟持状態とすることができる。
【0102】
図9は、封止体供給機構の別態様例を示す図である。上記各実施形態における封止体供給機構15に代えて、
図9(a)及び(b)に示す封止体供給機構615を採用することができる。
【0103】
図9(a)及び(b)に示す封止体供給機構615は、上記各実施形態における回収機構93に代えて、送り機構660を備えている。
図9(a)及び(b)に示すように、送り機構660は、封止体90の両側部に対応して配設される一対のチャック機構661と、一対のチャック機構661を支持する取付ベース板662と、取付ベース板662を介して一対のチャック機構661を昇降する昇降機構663とを備えて構成されている。
【0104】
チャック機構661は、帯板状の封止体90の板厚方向に相対移動自在な一組の爪664を備え、封止体90の側部(
図9(a)及び(b)における丸孔90dの両側の外郭余剰部90e)に対し一組の爪664を近づけるように相対移動させることで封止体90の側部を一組の爪664で挟んだり、封止体90の側部に対し一組の爪664を離すように相対移動させることで封止体90の側部を解放したりすることができるようになっている。
【0105】
昇降機構663は、エアシリンダ665と直動案内部材666とを組み合わせてなるものである。エアシリンダ665は、その本体部に対する圧縮空気の給排を切換制御することにより、上下方向にシリンダロッド665aが進退作動してエアシリンダ665全体が伸縮するように構成されている。
【0106】
エアシリンダ665のシリンダロッド665aの先端部は、取付ベース板662の中央部に接合されている。直動案内部材666は、エアシリンダ665の本体部の両側部に上下方向に出没自在に差し込まれる軸状部材からなるものである。直動案内部材666の先端部は、取付ベース板662における中央寄りの部位に接合されている。
【0107】
送り機構660においては、封止体非挟持状態にあるときに、一対のチャック機構661における一組の爪664で封止体90の両側部を挟むとともに、昇降機構663におけるエアシリンダ665の収縮作動で取付ベース板662を介して一対のチャック機構661を下降させると、封止体90が容器11の容器側フランジ部22に接触しながら下方へと送られる。その後、一対のチャック機構661における一組の爪664を離すように相対移動させることで封止体90の側部を解放するとともに、昇降機構663におけるエアシリンダ665の伸長作動で取付ベース板662を介して一対のチャック機構661を上昇させることにより、上述した封止体90の下方送り動作が実施可能な状態とすることができる。このように、一対のチャック機構661で封止体90の両側部を挟んで一対のチャック機構661を下降させる動作と、封止体90を解放した状態で一対のチャック機構661を上昇させる動作とを繰り返すことにより、封止体90を下方へと所定の送りピッチで順次送ることができる。
【0108】
上記各実施形態では、容器11の内部に可燃性ガスと酸化剤ガスとを供給し、これらの混合ガスを容器11の内部で急激に燃焼することによって容器11の内部の圧力を高めて封止体90を破壊し、圧力波を発生させるようにしたが、これに限定されるものではなく、容器11の内部に圧縮ガス(例えば、圧縮空気)を供給することで容器11の内部の圧力を高めて封止体90を破壊し、圧力波を発生させるようにしてもよい。このような態様の付着物除去装置の場合、着火源とはならないので、伝熱管4に可燃性のダストが付着する場合でも、適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の付着物除去装置は、例えば、焼却炉に並設されるボイラの伝熱管に付着したダストを除去する用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0110】
10A,10B 付着物除去装置
11 容器
12 蓋体
13 切換機構
15 封止体供給機構
21 開口部
25 噴射口部
90 封止体
90a シール層
90b 形態維持層