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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】自己巻き付け遮蔽チューブ
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20220725BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20220725BHJP
   H01B 5/02 20060101ALI20220725BHJP
   H01B 5/12 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
H05K9/00 L
H01B7/18 D
H01B5/02 A
H01B5/12
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020184639
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2021077886
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2020-11-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0139911
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0134389
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513096691
【氏名又は名称】エルエス ケーブル アンド システム リミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】チョ、チャンウン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ヨンフン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チャンソク
(72)【発明者】
【氏名】パク、ウンキョ
【審査官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-526218(JP,A)
【文献】特開2013-110053(JP,A)
【文献】特表2006-521669(JP,A)
【文献】特表2016-512580(JP,A)
【文献】特表2016-512581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01B 7/18
H01B 5/02
H01B 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CCA(Copper Clad Aluminium)材質の金属ワイヤーで構成される複数個のワイヤーバンドル;及び、前記ワイヤーバンドルと垂直な方向に配置され、熱収縮性を持つ複数個の収縮部材;を編組して形成された編組部材で構成され、
前記編組部材を構成する前記ワイヤーバンドルが長さ方向に並んで配置され、前記収縮部材が前記長さ方向と垂直な円周方向に配置され、前記編組部材が熱収縮することによって円筒状に形成され、前記円周方向に重なった重複部を含み、
前記ワイヤーバンドルを構成するCCA材質の金属ワイヤーの銅体積比は、10パーセント(vol%)~25パーセント(vol%)であることを特徴とする、自己巻き付け遮蔽チューブ。
【請求項2】
前記自己巻き付け遮蔽チューブは、1MHz~10MHzの信号条件において、遮蔽率(dB)が50dB以上の値を有することを特徴とする、請求項に記載の自己巻き付け遮蔽チューブ。
【請求項3】
前記自己巻き付け遮蔽チューブの円周方向における1ミリメートル(mm)幅に対する抵抗値F1は、下記の式と定義され、前記抵抗値F1は、0.3オーム(Ω)未満であることを特徴とする、請求項に記載の自己巻き付け遮蔽チューブ。
F1={CCAワイヤーバンドルの数(N)X1個のCCAワイヤーバンドルを構成するワイヤーの数(n)X1個のCCAワイヤーの比抵抗(Ωm)}/編組部材の幅(W(mm))
【請求項4】
前記自己巻き付け遮蔽チューブの内径は、10ミリメートル(mm)以下であり、前記編組部材の状態において各ワイヤーバンドルの幅は0.3ミリメートル(mm)~1ミリメートル(mm)であることを特徴とする、請求項に記載の自己巻き付け遮蔽チューブ。
【請求項5】
前記ワイヤーバンドルを構成する金属ワイヤーの直径は0.15ミリメートル(mm)以下であり、前記ワイヤーバンドルは10個以下の金属ワイヤーで構成されることを特徴とする、請求項に記載の自己巻き付け遮蔽チューブ。
【請求項6】
前記自己巻き付け収縮チューブのケーブル未装着状態において、前記重複部の円周方向重複範囲は20°~50°であることを特徴とする、請求項1に記載の自己巻き付け遮蔽チューブ。
【請求項7】
前記CCA材質の金属ワイヤーは、アルミニウムワイヤー、及び前記アルミニウムワイヤーの外側を覆う銅クラッド層からなることを特徴とする、請求項1に記載の自己巻き付け遮蔽チューブ。
【請求項8】
前記アルミニウムワイヤーは、純度99%以上のアルミニウムからなり、前記銅クラッド層は、純度99.9%以上の無酸素銅からなることを特徴とする、請求項に記載の自己巻き付け遮蔽チューブ。
【請求項9】
前記収縮部材は、ポリオレフィン系列の樹脂材質ワイヤーで構成されることを特徴とする、請求項1に記載の自己巻き付け遮蔽チューブ。
【請求項10】
前記収縮部材は、前記遮蔽チューブの長さ方向に1インチ(inch)当たりに平均17個~41個が備えられることを特徴とする、請求項に記載の自己巻き付け遮蔽チューブ。
【請求項11】
前記自己巻き付け遮蔽チューブは、100MHzの信号条件において遮蔽率(dB)が40dB以上の値を有することを特徴とする、請求項10に記載の自己巻き付け遮蔽チューブ。
【請求項12】
前記収縮部材は、直径が0.25ミリメートル(mm)~0.3ミリメートル(mm)であることを特徴とする、請求項11に記載の自己巻き付け遮蔽チューブ。
【請求項13】
前記収縮部材は、複数個が隣接して配置されて1個の収縮部を構成し、複数個の前記収縮部が前記自己巻き付け遮蔽チューブの長さ方向に沿って離間して配置されることを特徴とする、請求項12に記載の自己巻き付け遮蔽チューブ。
【請求項14】
前記収縮部を構成する複数個の収縮部材は、前記自己巻き付け遮蔽チューブの長さ方向と垂直な方向に並んで配置されることを特徴とする、請求項13に記載の自己巻き付け遮蔽チューブ。
【請求項15】
前記収縮部材2個が1個の収縮部を構成することを特徴とする、請求項14に記載の自己巻き付け遮蔽チューブ。
【請求項16】
前記ワイヤーバンドルを構成する前記金属ワイヤーは単層で配置されることを特徴とする、請求項1に記載の自己巻き付け遮蔽チューブ。
【請求項17】
CCA(Copper Clad Aluminium)材質の金属ワイヤーで構成される複数個のワイヤーバンドル;及び、
前記ワイヤーバンドルと垂直な方向に配置され、熱収縮性を持つ複数個の収縮部材;を編組して形成された編組部材であって、
前記ワイヤーバンドルを構成するCCA材質の金属ワイヤーの銅体積比は、10パーセント(vol%)~25パーセント(vol%)であり、前記CCA材質の金属ワイヤーは、アルミニウムワイヤー、及び前記アルミニウムワイヤーの外側を被覆する銅クラッド層からなることを特徴とする、編組部材。
【請求項18】
前記収縮部材は、前記ワイヤーバンドルの長さ方向に1インチ(inch)当たりに平均17個~41個が備えられることを特徴とする、請求項17に記載の編組部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己巻き付け(Self-Wrap)遮蔽チューブ及び編組部材に関する。より詳細には、本発明は、ケーブル接続又はケーブル遮蔽作業の作業性を向上させ、車の電装空間において十分な電磁波遮蔽性能を確保しながらも重さ及び費用を最小化できる自己巻き付け遮蔽チューブ及び編組部材に関する。
【背景技術】
【0002】
車の便宜増大のために導入した各種の電子制御部品及び装置によって使用者又は搭乗者の便宜性は大きく向上したが、電子機器から放出される電磁波による車電装部品の誤作動及び性能低下、安全事故などへの心配も大きく増加している。したがって、車内電装部品から発生する電磁波の遮蔽の必要性が増大し、電磁波障害に対する国際的な規制も強化しつつあり、それに対応するために多く努力している。電磁波遮蔽(Electromagnetic Interference Shielding,EMI shielding)の主な目的は、遮蔽対象物から発生する電磁波を反射(Reflection)又は吸収(Absorption)して遮蔽対象物固有の性能を維持することにある。
【0003】
車に導入される電装部品の他にも、電装部品を連結するために多量のケーブルが車に適用されており、ケーブルの数は車の機能高度化にしたがって増加しつつある。
【0004】
一般に、ケーブルは、遮蔽のためにケーブル製造過程で遮蔽層が付加されるが、遮蔽層が備えられていないケーブル又はケーブルの接続部位では事後的に遮蔽層を付加する必要がある。
【0005】
一般に、ケーブルの遮蔽のための遮蔽手段として熱収縮チューブを考慮できるが、熱収縮チューブは、収縮していない状態で、ケーブルの接続前に一側のケーブルにまず装着し、ケーブルの接続が完了した後に熱収縮チューブを遮蔽部位に移し、火気を用いて内径を縮小する熱収縮工程を行う必要がある。
【0006】
また、あらかじめ熱収縮された開いた構造の自己巻き付けチューブが紹介されたことがあり、これは、ケーブル接続後に装着が可能であるが、主に収縮性樹脂材質又は炭素繊維材質で構成されるため、遮蔽部位の十分な電磁波遮断が難しいという短所があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ケーブル接続又はケーブル遮蔽作業の作業性を向上させ、車の電装空間で十分な電磁波遮蔽性能を確保しながらも重さ及び費用を最小化できる自己巻き付け遮蔽チューブ及び編組部材を提供することを、解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、CCA(Copper Clad Aluminium)材質の金属ワイヤーで構成される複数個のワイヤーバンドル;及び、前記ワイヤーバンドルと垂直な方向に配置され、熱収縮性を持つ複数個の収縮部材;を編組して形成された編組部材で構成され、前記編組部材を構成する前記ワイヤーバンドルが長さ方向に並んで配置され、前記収縮部材が前記長さ方向と垂直な円周方向に配置され、前記編組部材が熱収縮することによって円筒状に形成され、前記円周方向に重なった重複部を含む自己巻き付け遮蔽チューブを提供することができる。
【0009】
また、前記ワイヤーバンドルを構成するCCA材質の金属ワイヤーの銅体積比は、10パーセント(vol%)~25パーセント(vol%)であり得る。
【0010】
そして、前記自己巻き付け遮蔽チューブは、1MHz~10MHzの信号条件において遮蔽率(dB)が50dB以上の値を有することができる。
【0011】
ここで、前記自己巻き付け遮蔽チューブの円周方向における1ミリメートル(mm)幅に対する抵抗値F1は、下記式と定義され、前記抵抗値F1は、0.3オーム(Ω)未満であり得る。
F1={CCAワイヤーバンドルの数(N)X1個のCCAワイヤーバンドルを構成するワイヤーの数(n)X1個のCCAワイヤーの比抵抗(Ωm)}/編組部材の幅(W(mm))
【0012】
この場合、前記自己巻き付け遮蔽チューブの内径は、10ミリメートル(mm)以下であり、前記編組部材の状態において各ワイヤーバンドルの幅は、0.3ミリメートル(mm)~1ミリメートル(mm)であり得る。
【0013】
そして、前記ワイヤーバンドルを構成する金属ワイヤーの直径は、0.15ミリメートル(mm)以下であり、前記ワイヤーバンドルは10個以下の金属ワイヤーで構成され得る。
【0014】
また、前記自己巻き付け収縮チューブのケーブル未装着状態で前記重複部の円周方向重複範囲は20°~50°であり得る。
【0015】
そして、前記CCA材質の金属ワイヤーは、アルミニウムワイヤー、及び前記アルミニウムワイヤーの外側を被覆する銅クラッド層からなり得る。
【0016】
ここで、前記アルミニウムワイヤーは純度99%以上のアルミニウムからなり、前記銅クラッド層は純度99.9%以上の無酸素銅からなり得る。
【0017】
この場合、前記収縮部材は、ポリオレフィン系列の樹脂材質ワイヤーで構成され得る。
【0018】
そして、前記収縮部材は、前記遮蔽チューブの長さ方向に1インチ(inch)当たりに平均17個~41個が備えられ得る。
【0019】
そして、前記自己巻き付け遮蔽チューブは、100MHzの信号条件において遮蔽率(dB)が40dB以上の値を有することができる。
【0020】
ここで、前記収縮部材は、直径が0.25ミリメートル(mm)~0.3ミリメートル(mm)であり得る。
【0021】
また、前記収縮部材は複数個が隣接して配置されて1個の収縮部を構成し、複数個の前記収縮部が前記自己巻き付け遮蔽チューブの長さ方向に沿って離間して配置され得る。
【0022】
そして、前記収縮部を構成する複数個の収縮部材は、前記自己巻き付け遮蔽チューブの長さ方向と垂直な方向に並んで配置され得る。
【0023】
ここで、前記収縮部材2個が1個の収縮部を構成することができる。
【0024】
この場合、前記ワイヤーバンドルを構成する前記金属ワイヤーは単層で配置され得る。
【0025】
また、前記課題を解決するために、本発明は、CCA(Copper Clad Aluminium)材質の金属ワイヤーで構成される複数個のワイヤーバンドル;及び、前記ワイヤーバンドルと垂直な方向に配置され、熱収縮性を持つ複数個の収縮部材;を編組して形成された編組部材を提供できる。
【0026】
ここで、前記ワイヤーバンドルを構成するCCA材質の金属ワイヤーの銅体積比は、10パーセント(vol%)~25パーセント(vol%)であり、前記CCA材質の金属ワイヤーは、アルミニウムワイヤー、及び前記アルミニウムワイヤーの外側を被覆する銅クラッド層からなり得る。
【0027】
そして、前記収縮部材は、前記ワイヤーバンドルの長さ方向に1インチ(inch)当たりに平均17個~41個が備えられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来紹介された炭素繊維が適用された自己巻き付けチューブの撮影イメージである。
図2】本発明に係るCCAワイヤーが適用された自己巻き付け遮蔽チューブの撮影イメージである。
図3】遮蔽物質(S)における電磁波遮蔽特性を説明するための概念図である。
図4】本発明に係る編組部材を示す平面図及び拡大図である。
図5】本発明に係る自己巻き付け遮蔽チューブを示す斜視図である。
図6】本発明に係る自己巻き付け遮蔽チューブの断面構成図である。
図7】銅の体積比率が15%であるCCA材質のワイヤーが適用された本発明に係る自己巻き付け遮蔽チューブの電磁波遮蔽試験テスト結果である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。しかし、本発明は、ここに説明される実施例に限定されず、他の形態として具体化してもよい。むしろ、ここで紹介される実施例は、開示の内容が徹底且つ完全になり得るように、そして当業者に発明の思想が十分に伝達され得るようにするために提供されるものである。明細書全体を通じて同一の参照番号は同一の構成要素を示す。
【0030】
図1には、従来紹介された炭素繊維が適用された自己巻き付けチューブ1の撮影イメージを示し、図2には、本発明に係るCCAワイヤーが適用された自己巻き付け遮蔽チューブ100の撮影イメージを示す。
【0031】
自己巻き付けチューブとは、外力がない場合にも自ら周り方向に巻かれる自己巻き付け特性を保有し、円周方向の両端部が一定角度だけ重なり合う(overlap)重複部が存在するチューブを意味する。したがって、前記重複部を作業者が手やその他のツールで分離して開いた間隙を通じてケーブルなどを挿入すれば設置が完了し、別の火気使用又は締付部材などが不要なので、ケーブル現場作業の作業性が大きく向上し得る。
【0032】
図1に示す従来の炭素繊維が適用された自己巻き付けチューブ1は、長さ方向に炭素繊維が適用され、円周方向には収縮性樹脂材質繊維又はワイヤーが適用されて編組された状態で熱収縮されると円筒状に巻かれ、図1に示すように自己巻き付け式に提供されるので、ケーブルなどに火気などを適用しなくても容易に装着することができる。
【0033】
炭素繊維は非金属であるにも拘わらず遮蔽性能をある程度提供するが、車内に装着される遮蔽材としては十分な遮蔽性能を提供できないという問題があった。
【0034】
これに対し、図2に示す本発明に係る自己巻き付け遮蔽チューブ100は、長さ方向に金属ワイヤーが適用され、円周方向には収縮性樹脂材質の収縮部材が適用されるので、十分な遮蔽性能を提供すると同時にケーブル遮蔽作業の作業性を大きく向上させることができる。
【0035】
しかし、長さ方向に金属材質のワイヤーを適用する場合にも、金属材質、ワイヤーの直径又は1個のバンドルを構成する金属ワイヤーの個数によって遮蔽品質又は加工性などにバラツキが多く発生することがある。以下、本発明に係る編組部材及びこれを用いた自己巻き付け遮蔽チューブについて詳しく説明する。
【0036】
図3は、遮蔽物質Sにおける電磁波遮蔽特性を説明するための概念図である。
【0037】
一般に、遮蔽物質Sが電磁波を遮蔽する原理は、図3に示すように、放射された電磁波の一部を遮蔽物質S内に吸収SEしたり、一部を遮蔽物質Sの表面で反射SEさせたり、残りを遮蔽物質の内部で多重反射SEMRさせたりすることであり、これによって、遮蔽物質Sを透過して外側に伝播される電磁波の大きさを最小化する。
【0038】
また、遮蔽物質S内に伝達された電磁波が速く消滅する尺度は、電磁波が遮蔽物質Sの内部で進行する長さと関連しており、電磁波の遮蔽物質S内における進行長さに関する概念であるスキンデプス(Skin depth)δは、特定遮蔽物質S内に流入した電磁波の強度が1/eに減衰するまでの電磁波の進行長さを意味するもので、次の式1と知られている。
【0039】
【数1】
【0040】
特定遮蔽物質Sの電磁波遮蔽性能が高いということは、結局、上の式1に記載のスキンデプスδが小さいことを意味する。
【0041】
したがって、遮蔽材の電磁波遮蔽性能を高めるためには、スキンデプスδの小さい遮蔽物質Sで遮蔽材を構成する必要があることが分かり、上の式1から、スキンデプスδを減らすためには、電気伝導度の高い物質、すなわち金属材料を適用しなければならないことが確認できる。
【0042】
したがって、本発明に係る遮蔽部材とこれを用いた自己巻き付け遮蔽チューブは、遮蔽物質Sとして金属材料を適用することが好ましい。
【0043】
一般に、銅は、比抵抗が1.72×10-8Ωmで、電気伝導度の高い材質であるが、純粋な銅の場合、電気伝導度は良いが、重さ及び費用が大きすぎるため、遮蔽部材とこれを用いた自己巻き付け遮蔽チューブに適用し難い。
【0044】
また、遮蔽材として純粋アルミニウムは軽くて安価であるが、比抵抗が2.74×10-8Ωmで、電気伝導度が相対的に小さく、遮蔽性能が銅に比べて大きく劣る。
【0045】
そこで、本発明に係る遮蔽部材及びこれを用いた自己巻き付け遮蔽チューブの遮蔽材として、CCA材質のワイヤーを適用する。
【0046】
CCA(Copper Clad Aluminium)材質のワイヤーは、アルミニウムワイヤーの外側を銅層で被覆し溶接して銅クラッド層を形成し、これを伸線(drawing)などの工程によって所望のサイズの外径を有するワイヤーとして製造したものであり、内部にアルミニウムコア及びコア外側に銅クラッド層が設けられ、銅とアルミニウムの長所を揃えるという特徴がある。CCAワイヤーの製造方法は、前記の方法に限定されず、メッキなどの様々な工程を考慮してもよいが、溶接及び伸線工程を適用する方が、銅クラッド層を均一に形成する上で有利である。
【0047】
そして、CCA材質のワイヤーは、銅とアルミニウムとの比率、例えば体積比率によって銅又はアルミニウムの特性を強化してもよいが、ワイヤーの直径、単一ワイヤーに要求される電気伝導度又は銅クラッド層の溶接性などによって、後述のようにCCA材質のワイヤーの銅体積比率を決定する必要がある。
【0048】
そして、前記アルミニウムワイヤーは、電気伝導度を考慮して1000系列アルミニウムのような純度99%以上のアルミニウムで構成し、前記銅クラッド層は純度99.9%以上の無酸素銅で構成することが好ましい。
【0049】
CCA材質のワイヤーにおける銅体積比率の具体的な範囲に関する詳細な説明は、後述する。
【0050】
図4は、本発明に係る編組部材100’の平面図及び拡大図であり、図5は、本発明に係る自己巻き付け遮蔽チューブ100の斜視図であり、図6は、本発明に係る自己巻き付け遮蔽チューブの断面構成図である。
【0051】
本発明に係る自己巻き付け遮蔽チューブ100は、図4に示す編組部材100’を編組によって構成した後、図5及び図6に示すように、円周方向に重複部Oが形成されるように、編組部材100’を火気などを用いた熱収縮工程によって製造することができる。
【0052】
本発明に係る編組部材100’は、第1方向に配置され、CCA材質のワイヤー11で構成される複数個のワイヤーバンドル10;及び、第1方向と垂直な第2方向に配置され、熱収縮性を持つ収縮部材21で構成される複数個の収縮部20;を編組して構成でき、本発明に係る自己巻き付け遮蔽チューブ100は、CCA(Copper Clad Aluminium)材質の金属ワイヤーで構成される複数個のワイヤーバンドル10;及び、前記ワイヤーバンドル10と垂直な方向に配置され、熱収縮性を持つ複数個の収縮部材21;を編組して形成された編組部材100’で構成され、前記編組部材100’を構成する前記ワイヤーバンドル10が長さ方向に並んで配置され、前記収縮部20が前記長さ方向と垂直な円周方向に配置され、前記編組部材100’が熱収縮されることにより円筒状に形成され、前記編組部材100’の幅方向端部が円周方向に重なり合った重複部が形成されることを特徴とする。
【0053】
ここで、ワイヤーバンドルにおける‘バンドル’とは、多数のワイヤーの一団又は束を意味し、収縮部における‘部’とは、複数個の収縮部材で構成された収縮部材の集合を意味するもので、バンドルを構成するワイヤーの数が収縮部を構成する収縮部材の個数に比べてはるかに多いことを意味する。
【0054】
本発明に係る編組部材100’及び自己巻き付け遮蔽チューブ100は、編組構造で製造され、基本的に、金属ワイヤー11と収縮性収縮部材を基本構成とする。金属ワイヤー11は熱収縮特性を持たないので、本発明に係る編組部材100’及び自己巻き付け遮蔽チューブ100は、金属ワイヤー11だけでは構成されず、収縮を要する方向には収縮繊維を適用し、金属ワイヤー11の長所を生かしながら熱収縮特徴を活用する。
【0055】
図4に示す本発明に係る編組部材100’は、第1方向にワイヤーバンドル10が配置され、その垂直方向(第2方向)に収縮部20を編組方式で組み合わせて編組構造を形成することができる。
【0056】
前記収縮部材21としては、例えばポリオレフィン(Polyolefine)系列のワイヤーを用いることができる。
【0057】
前記収縮部材21は、直径が0.25ミリメートル(mm)~0.3ミリメートル(mm)であり、図4及び図5では2個の収縮部材21が1個の収縮部20を構成するとしているが、その個数は増減可能である。
【0058】
前記収縮部20も、前記ワイヤーバンドル10と垂直な方向に離間して並んで配置され、1個の収縮部を構成する収縮部材21も1個の収縮部に前記ワイヤーバンドル10と垂直な方向に並んで配置され得る。
【0059】
そして、前記収縮部材21は、前記編組部材100’又は自己巻き付け遮蔽チューブ100の長さ方向に1インチ(inch)当たりに平均17個~41個程度が配置されるように構成されることが好ましい。
【0060】
すなわち、収縮部材の個数が1インチ(inch)当たりに平均17個~41個以下である条件では、100MHzの信号条件において遮蔽率が約40dBと良好であり、収縮部材の個数が17個よりも少ないか或いは41個よりも多い場合には、遮蔽率40dBを満たせず、遮蔽部材として適さない。
【0061】
これは、1インチ(inch)当たりに収縮部材の平均個数が17個未満であると、CCAワイヤーバンドルと収縮部材との間に隙間が多く発生して遮蔽効果が低下し、1インチ(inch)当たりに収縮部材の平均個数が41個を超えると、CCAワイヤーバンドルを構成するCCAワイヤーが収縮部材による干渉によって円周方向に十分に分散されず、遮蔽効果が低下するためである。
【0062】
一方、収縮部材の材料の一実施例としてポリオレフィンを適用でき、ポリオレフィンとは、合成樹脂の一種で、エチレン及びプロピレンのようなオレフィン(分子1個当りに1個の二重結合を含んでいる炭化水素)を添加して重合反応させて作る有機物質を意味する。
【0063】
収縮部材の材料として適用可能なポリオレフィンは、ポリエチレン(HDPE(High Density Polyethylene)、LDPE(Low Density Polyethylene)、LLDPE(Linear Low Density Polyethylene)、EVA(ethylene-vinylacetate copolymer)、UHMWPE(ultra-high molecular weight PE)などを挙げることができ、その他にも各種ポリプロピレン(PP,polypropylene)、ラバー/エラストマー(EPR,ethylene-propylene rubber)、EPDM(ethylene-propylene-diene monomer)、POE(polyolefin elastomer,ethylene/octene-1))などを挙げることができる。
【0064】
ポリオレフィン収縮部材は一般に、弾性があり、大部分の有機溶媒に溶けず、酸と塩基に耐性があり、電気絶縁性があり、通常の熱収縮チューブの材料として多く適用される。
【0065】
このようなポリオレフィン材質で構成された複数個の収縮部材21でそれぞれの収縮部20を構成し、前記ワイヤーバンドル10の配置方向と垂直な方向に配置する。
【0066】
図4に示すように構成された編組部材100’を熱風機などで加熱し、図5に示すように重複部を形成するように自己巻き付け遮蔽チューブ100を構成することができる。
【0067】
本発明に係る遮蔽部材で構成される自己巻き付け遮蔽チューブ100は、車両用ケーブルなどの保護及び電磁波遮蔽を目的とし得る。
【0068】
したがって、自己巻き付け遮蔽チューブ100の内径Dは、車両用ケーブルの直径に対応して、巻かれた状態で10ミリメートル(mm)以下であり得、自己巻き付け遮蔽チューブ100の内径Dが10ミリメートル(mm)以下である場合、ワイヤーバンドル10を構成する金属ワイヤー11の直径は0.15ミリメートル(mm)以下であり、金属ワイヤー11が単層で配置されたワイヤーバンドル10の幅が0.3ミリメートル(mm)~1.0ミリメートル(mm)を満たすように、ワイヤーバンドル10を構成するCCAワイヤーの個数を決定することができる。例えば、前記CCA金属ワイヤー10の個数は10個以下とすることができる。
【0069】
ワイヤーバンドル10の幅を0.3ミリメートル(mm)~1ミリメートル(mm)にする理由に関しては、CCA材質の金属ワイヤー11で構成されるワイヤーバンドル10の幅が0.3ミリメートル(mm)未満であると、編組段階で当該製品の最小幅を満たすためにあまりにも多数のバンドルが投入され、生産性及び生産効率に劣る他、1個のワイヤーバンドル10が熱収縮しながら屈曲が発生して完成品に屈曲ができることも確認した。
【0070】
一方、ワイヤーバンドル10の幅が1ミリメートル(mm)を超える場合、編組後の熱収縮過程においてワイヤーバンドル10を構成する金属ワイヤーが単層で配置されずに重なるなどの現象によって各ワイヤーバンドル10の幅が縮み、編組部材の全幅と自己巻き付け遮蔽チューブの円周全長との差が大きくなり、製品設計に困難が多いので、好ましくない。
【0071】
したがって、単一CCAワイヤーの直径が0.15ミリメートル(mm)以下である場合、ワイヤーバンドル10の幅は0.3ミリメートル(mm)~1ミリメートル(mm)が好ましい。
【0072】
そして、本発明に係る編組部材を熱収縮して自己巻き付け遮蔽チューブを構成する場合、図6に示すように、収縮部20の収縮によって断面が円形を形成しつつチューブ状になるが、編組部材が半径方向に重なる重複部Oが形成される。
【0073】
前記自己巻き付け遮蔽チューブ100に装着される装着対象ケーブルの外径は、装着状態におけるケーブル又は自己巻き付け遮蔽チューブの移動が防止されるように、ケーブル未装着状態の自己巻き付け遮蔽チューブ100の内径Dよりも大きいことが好ましい。ただし、ケーブルが装着された状態でも重複部が存在してケーブルの全領域を被覆できる程度であることが好ましい。したがって、ケーブルの外径に応じて適切なサイズの内径を有する自己巻き付け遮蔽チューブ100を選択する必要がある。
【0074】
図5及び図6に示す前記自己巻き付け遮蔽チューブ100は、遮蔽対象物が内部に装着された状態で開きを防止しながらも不要な材料浪費を防止するために、ケーブル未装着状態で円周方向重複角度は20°~50°の範囲に含まれることが好ましい。
【0075】
具体的な例として、ワイヤーの直径が0.12ミリメートル(mm)で、このワイヤー6個でワイヤーバンドル10を構成すれば、ワイヤーバンドル10の幅が0.72ミリメートル(mm)であり、重複部が約45°の大きさに形成されるとき、8ミリメートル(mm)内径の自己巻き付け遮蔽チューブ100を構成する場合にはワイヤーバンドル10が56個使用され、4ミリメートル(mm)内径の自己巻き付け遮蔽チューブ100の場合はワイヤーバンドル10が36個使用され得る。
【0076】
以下、上記のような条件のCCAワイヤーバンドル10及び収縮部20で編まれた編組部材及び自己巻き付け遮蔽チューブにおいて、電磁波遮蔽性能を極大化するためのCCAワイヤーの銅体積比率に関して説明する。
【0077】
図4を参照した自己巻き付け遮蔽チューブ100の円周方向における1ミリメートル(mm)幅に対する抵抗値F1は、次の式2と単純化できる。
【0078】
【数2】
【0079】
上の式2によるF1値は、自己巻き付け遮蔽チューブ100の円周方向幅1ミリメートル(mm)に対する抵抗値であると仮定できるので、CCAワイヤーを構成する銅クラッド層の体積比率が変更されるにしたがってF1値も変更され、自己巻き付け遮蔽チューブ100の遮蔽性能が左右され得る。
【0080】
次の表1は、様々な内径とバンドルの数による、ワイヤーバンドル10を構成するCCAワイヤーの銅体積比(5%、6%、7%、8%、9%、10%、25%、100%)による上の式1のF1値を整理したものである。
【0081】
車両用ケーブルに適用される自己巻き付け遮蔽チューブ100の場合、安全率を考慮して、1~10MHz信号条件で遮蔽率(dB)が50dB以上であれば十分な遮蔽性能を有するとすることができ、その時のF1基準値は約0.3オーム(Ω)と確認された。
【0082】
下の表1に記載の通り、CCAワイヤーの銅体積比が10パーセント(vol%)未満(5%、6%、7%、8%、9%)である場合、チューブの内径などによってF1値が0.3オーム(Ω)以上と確認され、1~10MHz信号条件において遮蔽率(dB)が50dB以下となり、安定した遮蔽率が確保できないと予想され、自己巻き付け遮蔽チューブ100として遮蔽性能が十分でないと推測できる。
【0083】
一方、CCAワイヤーの銅体積比が10パーセント(vol%)以上である場合、遮蔽性能には満たすことが確認できるが、銅体積比が25パーセント(vol%)を超えると、銅が過度に使用されたことを意味し、使用量が多い車両用ケーブルの遮蔽材用途に使用する場合、費用及び重さが嵩むので好ましくない。
【0084】
【表1】
【0085】
したがって、上記の結果から、CCAワイヤーを適用して自己巻き付け遮蔽チューブ100を構成する場合、自己巻き付け遮蔽チューブ100の内径又は編組部材の幅などに関係なく、ワイヤーバンドル10を構成するCCAワイヤーの銅体積比は10パーセント(vol%)以上、好ましくは10パーセント(vol%)以上25パーセント(vol%)以下になることが好ましいことが確認できる。
【0086】
図7には、アルミニウムに対する銅体積比が15パーセント(vol%)であるCCA材質のワイヤーが適用された本発明に係る自己巻き付け遮蔽チューブ100の電磁波遮蔽試験テスト結果を示す。
【0087】
図7に示すように、アルミニウムに対する銅体積比が15パーセント(vol%)であるCCA材質のワイヤーが適用された本発明に係る自己巻き付け遮蔽チューブ100の場合、1~10MHz信号条件で通常の車両電装に要求される遮蔽率である40dBを超えて、安全率がさらに考慮された50dB以上の安定した遮蔽率(SE)が確保されることが確認できる。
【0088】
また、前記自己巻き付け遮蔽チューブは1MHz~10MHzの信号条件で、安全率を考慮する場合にも遮蔽率(dB)が50dB以上の値を有し、さらには、高周波信号条件である100MHz(100,000KHz)でも、通常の車両電装に要求される遮蔽率である40dBを満たしていることが確認できる。
【0089】
本明細書は、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野における当業者は、添付する特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を様々に修正及び変更して実施可能であろう。したがって、変形された実施が基本的に本発明の特許請求の範囲の構成要素を含めばいずれも本発明の技術的範ちゅうに含まれるといえよう。
【符号の説明】
【0090】
100’ 編組部材
100 自己巻き付け遮蔽チューブ
10 ワイヤーバンドル
20 収縮部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7