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特許7110302改良されたヒトヘルペスウイルス免疫療法用タンパク質
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】改良されたヒトヘルペスウイルス免疫療法用タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220725BHJP
   C07K 14/03 20060101ALI20220725BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220725BHJP
   C12N 15/38 20060101ALI20220725BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220725BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220725BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220725BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220725BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220725BHJP
   A61K 39/245 20060101ALI20220725BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220725BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20220725BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220725BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20220725BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/03 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/38
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C07K19/00
A61K39/245
A61K39/39
A61P31/22
A61K48/00
C12N5/0783
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020185772
(22)【出願日】2020-11-06
(62)【分割の表示】P 2018207238の分割
【原出願日】2013-10-21
(65)【公開番号】P2021036882
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】2012904604
(32)【優先日】2012-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】504200892
【氏名又は名称】ザ・カウンシル・オヴ・ザ・クイーンズランド・インスティテュート・オヴ・メディカル・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】カンナー、ラジブ
(72)【発明者】
【氏名】ビジェイエンドラ、ダサリ
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-514606(JP,A)
【文献】国際公開第2005/007689(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/056027(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/014567(WO,A2)
【文献】特表2005-504733(JP,A)
【文献】特開2012-162562(JP,A)
【文献】特開2010-260849(JP,A)
【文献】国際公開第2010/114628(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のCTLエピトープのアミノ酸配列を含むタンパク質であって、前記複数のCTLエピトープのうちの少なくとも2つは、AD、K、またはRを含む1または2アミノ酸配列からなるアミノ酸配列によって分離されており、外因性タンパク質として動物に投与されると細胞傷害性Tリンパ球免疫応答を惹起可能である、タンパク質。
【請求項2】
前記エピトープが、HLAクラスI特異性HLA-A1、-A2、-A3、-A11、-A23、-A24、-A26、-A29、-A30、-B7、-B8、-B27、-B35、-B38、-B40、-B41、-B44、-B51、-B57および-B58のうちの少なくともいずれかに拘束される、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
前記複数のCTLエピトープのうちの少なくとも1つがヘルペスウイルス抗原に由来する、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項4】
前記ヘルペスウイルスがサイトメガロウイルス(CMV)またはエプスタイン・バーウイルス(EBV)である、請求項3に記載のタンパク質。
【請求項5】
少なくとも1つのCMV CTLエピトープが、pp50、pp65、およびpp150またはIE-1に由来する、請求項4に記載のタンパク質。
【請求項6】
配列番号1~21で示されるアミノ酸配列のうちから選択されるCTLエピトープ配列のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項7】
少なくとも1つのEBV CTLエピトープが、BMLF1、LMP2a、BRLF1、LMP2、EBNA3A、BZLF1、EBNA3C、EBNA1およびEBNA3Bのうちから選択される1つ以上の抗原に由来する、請求項4に記載のタンパク質。
【請求項8】
配列番号22~41で示されるアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項9】
配列番号22~41で示されるCTLエピトープアミノ酸配列から選択される複数のCTLエピトープを含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項10】
請求項1に記載のタンパク質をコードする核酸。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸を含む遺伝子構築物であって、発現ベクターにおいて1つ以上の調節配列に作動可能に連結されている遺伝子構築物。
【請求項12】
請求項10に記載の核酸を含むアデノウイルス。
【請求項13】
請求項11に記載の遺伝子構築物を含む宿主細胞または請求項12に記載のアデノウイルスに感染した宿主細胞。
【請求項14】
請求項1に記載のタンパク質、および薬学上許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトヘルペスウイルス免疫療法に関する。特に、本発明は、限定されるものではないが、免疫療法に使用した際に細胞傷害性Tリンパ球免疫応答を惹起することができる複数のヒトサイトメガロウイルス(CMV:cytomegalovirus)またはエプスタイン・バーウイルス(EBV:Epstein-Barr virus)抗原に由来する複数の細胞傷害性T細胞エピトープを含む組換えタンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
エプスタイン・バーウイルスは、90%を超える成人が何らかの曝露の徴候を示すという、極めて高い罹患率で見られる。EBVはまた、一生の潜在感染として存続し、無症候性である場合もある。しかしながら、EBVは単核球症を生じることがあり、これは人によっては重い罹患を引き起こす腺熱としても知られる。EBVは、狼瘡、関節リウマチおよび多発性硬化症などのいくつかの自己免疫疾患に関連している可能性がある。重要なこととしては、EBVは、鼻咽頭癌(NPC:nasopharyngeal carcinoma)、バーキットリンパ腫およびホジキンリンパ腫などのいくつかの癌に関連することが知られている。NPCは、中国および東南アジアの集団に多い(他の集団ではほとんど稀である)癌である。初期段階では症状が十分に認識されないことから、患者は多くの場合、軽度(III期)または進行段階(IV期)の疾患を呈する。NPCと診断された際の患者の第一選択治療は放射線療法および化学療法であり、手術の選択は限られる。放射線療法/化学療法は多くの患者に効果的であるが、およそ20%は奏功が十分でないか再発し、この群の予後は不良である。III期およびIV期腫瘍を呈する患者の5年全生存率は50~60%に過ぎない(IV期患者だけではさらに低い)。最も多い形態のNPCは、これらの腫瘍を、EBV感染腫瘍細胞を標的として死滅させることによる免疫療法に対し修正可能(amendable)とするEBVに関連するものである。
【0003】
健常者の原発性CMVは一般に無症候性であり、潜伏状態を確立し、時折、再活性化され、粘膜表面から放出される。場合により、一次CMV感染は、エプスタイン・バーウイルスにより引き起こされるものと同様の単核球症様疾患の臨床症状を伴うことがある。CMVが重大な罹患および死亡を招く重要な臨床状況が2つある。これらには、先天性一次感染と免疫抑制成人におけるウイルスの一次活性化または再活性化が含まれる。先天性の場合、CMVは小児における精神遅滞、および難聴などの他の異常の主因となり、この影響は米国医学研究所によるレベルIワクチン候補[すなわち、費用および質調整生存年(QALY:quality-adjusted life years)の両方を守る最も有利な影響としてのその分類により強調された(Arvin,Fast et al.2004)。HIV感染者などの免疫不全者におけるCMV関連の合併症は、多くの場合、CD4T細胞総数が50/μl以下の患者に見られる(Palella,Delaney et al.1998;Salmon-Ceron,Mazeron et al.2000)。さらに、固形臓器移植レシピエントおよび同種異系造血幹細胞移植レシピエントの両方を含む移植患者におけるCMVの影響は十分認識されている。
【0004】
CMVへの一次曝露は強い一次免疫応答の誘導をもたらし、これが長期記憶応答として維持され、再活性化後のウイルス複製を制限する働きをする。現在、体液性免疫応答と細胞性免疫応答の両方がCMV感染を制御する上で重要な役割を果たすという確かな証拠がある。マウスCMVモデルで行われた研究では、T細胞免疫の重要性に関する最初の証拠が得られ、T細胞機能の欠如がウイルス感染の再活性化および播種の増大と同時に生じた(Reddehase,Weiland et al.1985;Mutter,Reddehase et al.1988)。さらに、ウイルス特異的T細胞免疫の再構築が急性ウイルス感染からの回復と同時に見られた。その後の、様々な臨床状況下でのヒトにおける研究で、ウイルス特異的T細胞の役割がさらに強調された。これらの研究では、抗ウイルスT細胞免疫が不十分であった同種異系幹細胞移植患者は、CMV関連合併症を発症するリスクの上昇を示すことが示された。CMV疾患の制御における細胞性免疫の役割についての確信的証拠は、ドナー由来CMV特異的CD8T細胞の養子移入が、抗原特異的細胞性免疫を回復させただけでなく、同種異系幹細胞移植患者のCMV関連臨床合併症を防いだという研究から得られた(Riddell,Watanabe et al.1992;Walter,Greenberg et al.1995)。
【0005】
これらの研究を考慮して、多様なCMVワクチンが前臨床試験および臨床試験で評価されてきた。
これらのCMVワクチンストラテジーは、糖タンパク質B(gB)、pp65およびIE-1を潜在標的として評価し、これらは弱毒CMV Towne株(Jacobson,Sinclair et al.2006)、全長抗原およびエピトープをコードする組換えウイルスベクター(Bernstein,Reap et al.2009;Zhong and Khanna 2009)、DNAワクチン(Wloch,Smith et al.2008)、濃染顆粒ワクチン(Frankenberg,Pepperl-Klindworth et al.2002)、およびサブユニットワクチン(Drulak,Malinoski et al.2000)を含む多くの送達プラットフォームによって送達されてきた。しかしながら、これらのアプローチで確信的な臨床有効性を示したものはなく、臨床実施に取り入れられていない。
【0006】
一般に、防御的CD8細胞傷害性T細胞応答を惹起するためには、ウイルス抗原が、外因性として送達されるタンパク質としてではなく、核酸形態で(例えば、ウイルスベクター送達系を使用して)送達されなければならず、そうすれば、発現されたタンパク質が適切にプロセシングされ、T細胞に提示されるとの提案がなされている(Koup&Douek,2012)。これらのワクチン送達プラットフォームの大多数、特に、弱毒生ワクチンおよびウイルスベクターに基づくワクチンは、認知される長期の理論的健康リスクなどのいくつかの規制上の懸念を浮上させた(Liu ;Soderberg-Naucler 2006;Anderson and Schneider 2007)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、安全な送達技術を用いて、ヘルペスウイルス免疫療法の開発の必要性に対処する。本発明は、発達中の胎児、ならびに固形臓器移植および造血幹細胞移植のレシピエントおよび進行したHIV疾患を有する患者などの免疫不全者に対するCMV関連傷害のリスクを軽減することを対象とする。本発明はまた、例えば免疫不全の移植患者において、または鼻咽頭癌(NPC)などのEBV関連癌の予防または治療において、既存のEBV感染の症状を治療することも対象とする。
【0008】
本発明は驚くことに、過去の仮説とは対照的に、対象に投与された外因性のポリエピトープタンパク質が防御的CD8細胞溶解性T細胞応答を惹起し得るという発見から生まれた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
よって、本発明は、広義には、細胞傷害性T細胞応答を惹起することができる複数のヒトヘルペスウイルス細胞傷害性T細胞(CTL:cytotoxic T cell)エピトープを含む単離されたポリエピトープタンパク質を対象とする。
【0010】
第1の態様において、単離されたタンパク質は、2つ以上の異なるヘルペスウイルス抗原に由来する複数のCTLエピトープのそれぞれの対応アミノ酸配列を含み、かつ、前記CTLエピトープの少なくとも2つの間に、プロテアソーム遊離アミノ酸またはアミノ酸配列および任意選択により抗原プロセシング関連輸送体(TAP:Transporter Associated with Antigen Processing)認識モチーフを含む介在アミノ酸またはアミノ酸配列をさらに含み、前記単離されたタンパク質は、外因性タンパク質として動物に投与した際に細胞傷害性Tリンパ球免疫応答を惹起することができる。
【0011】
好適には、該単離されたタンパク質は、広いヒト集団被覆率を提供するように選択されたエピトープを含む。これらには、HLAクラスI特異性HLA-Al、-A2、-A3、-All、-A23、-A24、-A26、-A29、-A30、-B7、-B8、-B27、-B35、-B38、-B40、-B41、-B44、-B51、-B57および-B58が含まれる。
【0012】
好適には、前記複数のエピトープは、合計20個未満のエピトープを含む。
一実施形態では、ヘルペスウイルスはCMVである。好ましくは、CTLエピトープは、pp50、pp65、pp150およびIE-lのうちから選択されるCMV抗原に由来する。
【0013】
好ましい実施形態では、単離されたタンパク質は、表1(配列番号1~21)から選択される複数のCTLエピトープを含む。特定の実施形態では、単離されたタンパク質は、表2(配列番号1~13)から選択される複数のCTLエピトープを含む。
【0014】
好ましい実施形態では、CTLエピトープの少なくとも1つは、アミノ酸配列VTEHDTLLY(配列番号11)を含む。
別の実施形態では、ヘルペスウイルスはEBVである。
【0015】
好ましくは、CTLエピトープは、BMLF1、LMP2a、BRLF1、LMP2、EBNA3A、BZLF1、EBNA3C、EBNA1およびEBNA3Bのうちから選択されるEBV抗原に由来する。
【0016】
好ましい実施形態では、単離されたタンパク質は、表3(配列番号22~41)から選択される複数のCTLエピトープを含む。
また、単離されたタンパク質は同じまたは異なるヘルペスウイルス(例えば、CMVおよび/またはEBV)由来のCTLエピトープを含んでよいと考えられる。
【0017】
単離されたタンパク質は、介在アミノ酸またはアミノ酸配列をさらに含んでよい。
好ましい実施形態では、介在アミノ酸またはアミノ酸配列は、プロテアソーム遊離アミノ酸またはアミノ酸配列である。
【0018】
任意選択の実施形態では、介在アミノ酸またはアミノ酸配列は、抗原プロセシング関連輸送体(TAP)認識モチーフである。
第2の態様において、本発明は、第1の態様の単離されたタンパク質をコードする単離された核酸を提供する。
【0019】
第3の態様において、本発明は、第2の態様の単離された核酸を含む遺伝子構築物を提供する。
好ましくは、遺伝子構築物は、前記第2の態様の単離された核酸が発現ベクター中に存在する1つ以上の調節配列に作動可能に連結されている発現構築物である。
【0020】
一実施形態において、発現構築物は、単離されたタンパク質を、その後精製される組換えタンパク質としてin vitroで製造するのに好適な発現ベクターを含む。
第4の態様において、本発明は、第3の態様の発現構築物を含む宿主細胞を提供する。
【0021】
別の実施形態では、宿主細胞は、続いての第1の態様の単離されたタンパク質をその後精製する目的で、in vitroにて発現構築物でトランスフェクションされているか、形質転換されているか、または他の方法で発現構築物を導入されている。
【0022】
第5の態様において、本発明は、第1の態様の単離されたタンパク質を生産する方法を提供し、前記方法は、第4の態様の宿主細胞内で単離されたタンパク質を発現させる工程、および前記単離されたタンパク質を実質的に非凝集形態で維持する条件下で、前記単離されたタンパク質を少なくとも部分的に精製する工程を含む。
【0023】
第6の態様において、本発明は、第5の態様の方法に従って生産された単離されたタンパク質を提供する。
第7の態様において、本発明は、第1もしくは第6の態様の単離されたタンパク質または第3の態様の遺伝子構築物と、薬学上許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0024】
好ましくは、医薬組成物は、動物においてCMVおよび/またはEBV感染に関連する疾患または病態の予防的処置または治療的処置において使用するために好適な免疫原性組成物である。
【0025】
より好ましくは、免疫療法組成物は、CMVおよび/またはEBVに対する防御免疫応答を惹起するためのワクチンである。これに関して、医薬組成物は、それぞれCMV CTLエピトープおよびEBV CTLエピトープを含む別個の単離されたタンパク質を含んでもよいし、またはEBVエピトープとCMVエピトープの両方を含む単一の単離されたタンパク質を含んでもよいと考えられる。
【0026】
1つの特定の実施形態では、医薬組成物は、1つ以上の免疫刺激性分子またはアジュバントをさらに含む。
好適には、免疫刺激性分子またはアジュバントは、1つ以上のToll様受容体(TLR:toll-like receptor)アゴニストを含む。
【0027】
好ましくは、TLRアゴニストとしては、TLR4アゴニストおよび/またはTLR9アゴニストが含まれる。
好ましいアジュバントとしては、限定されるものではないが、モノホスホリル脂質(MPL)および/または免疫刺激性DNA、例えば、CpG ODN1826、CpG ODN2006、CpG ODN2216および/またはCpG ODN2336が含まれる。
【0028】
第8の態様において、本発明は、動物においてヘルペスウイルス感染を予防的にまたは治療的に処置する方法であって、前記動物に第1もしくは第6の態様の単離されたタンパク質、または第7の態様の医薬組成物を投与し、それにより、前記動物におけるヘルペスウイルス感染を予防的にまたは治療的に処置する工程を含む方法を提供する。
【0029】
特定の実施形態では、ヘルペスウイルスはCMVまたはEBVである。
第9の態様において、本発明は、動物において細胞傷害性Tリンパ球(CTL)免疫応答を誘導する方法であって、前記動物に第1もしくは第6の態様の単離されたタンパク質、または第7の態様の医薬組成物を投与し、それにより、前記動物において細胞傷害性Tリンパ球(CTL)免疫応答を誘導または惹起する工程を含む方法を提供する。
【0030】
第10の態様において、本発明は、養子免疫療法用のヘルペスウイルス特異的CTLを増殖させる方法であって、
(i)動物から単離された1つ以上の細胞を第1または第6の態様の単離されたタンパク質と接触させる工程、および
(ii)前記1つ以上の細胞を培養し、それにより、前記1つ以上の細胞由来のヘルペスウイルス特異的CTLを増殖させる工程
を含む方法を提供する。
【0031】
特定の実施形態では、ヘルペスウイルスはCMVまたはEBVである。
第11の態様において、本発明は、第10態様の工程(ii)で生産された前記CMV特異的CTLを動物に投与し、それにより、前記動物のCMV感染を予防的にまたは治療的に処置する工程を含む養子免疫療法を提供する。
【0032】
特定の実施形態では、ヘルペスウイルスはCMVまたはEBVである。
第12の態様において、本発明は、動物におけるヘルペスウイルス感染の予防的処置または治療的処置に使用するための、第1もしくは第6の態様の単離されたタンパク質、または第3の態様の遺伝子構築物を提供する。
【0033】
特定の実施形態では、ヘルペスウイルスはCMVまたはEBVである。
好ましくは、上述の態様によれば、動物は哺乳類である。
より好ましくは、動物はヒトである。
【0034】
本発明がより容易に理解できるよう、また、実効下に置けるように、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照しながら、単に例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】CMVポリエピトープおよび下流プロセシングの設計の例示。CMVポリエピトープ20マーコード配列の設計を一例として示す。個々のエピトープアミノ酸配列を太字で示す;エピトープ配列の後のグレーの斜体の文字は、プロテアソームによるCMVポリエピトープタンパク質のプロセシングのためのアミノ酸残基を表し、下線のアミノ酸配列は、TAPのモチーフ(CMVポリ-PTLと呼ばれる)を表す。CMVポリエピトープタンパク質をコードするDNA配列は合成により作製し、大腸菌(E.coli)誘導性プラスミドpJexpress 404にクローニングし、大腸菌へ形質転換し、タンパク質発現および精製を行った。
図2】CMVポリ-PTLタンパク質の発現および精製。13、14、15または20個のCMV CD8T細胞エピトープを含むCMVポリ-PTLタンパク質を発現するpJexpress 404プラスミドを大腸菌BL21(DE3)pLysSへ形質転換した。タンパク質発現をIPTGで誘導し、誘導前後のサンプルを、SDS PAGEを用いて分析した。パネルAおよびBは、大腸菌におけるCMVポリ-PTLタンパク質の発現を示す:レーン1は分子量マーカー(kDa);レーン2、4および6は誘導が行われていない大腸菌細胞溶解液;レーン3、5および7は誘導が行われた大腸菌細胞溶解液。は、CMVポリ-PTLタンパク質を示す。
図3】Ni NTAカラムでのCMVポリ-PTL精製後の、精製されたCMVポリ-PTLタンパク質のSDS PAGE分析。種々の精製段階からのサンプルをSDSPAGEにより分析した。パネルA、B、CおよびDは、CMVポリ-PTLタンパク質(13マー、14マー、15マーおよび20マー)の精製を表す。全てのSDS PAGEゲルに関して、レーン1:分子量マーカー。レーン2:ロード前の可溶化タンパク質。レーン3:フロースルー。レーン4:洗液。レーン5、6、7および8:溶出画分。は、CMVポリ-PTLタンパク質を示す。
図4】可溶性タンパク質としてのCMVポリ-PTL保存に適合するバッファー系を決定するための、CMVポリ-PTLタンパク質溶解度試験および特性決定。精製タンパク質を、pH域が異なる種々のバッファー組成物で希釈し、4℃ O/Nでインキュベートし、遠心分離し、上清画分をSDS PAGEで分析した。パネルA:レーン1:分子量マーカー。レーン2:25mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)バッファーpH5.6で希釈。レーン3:25mM MESバッファーpH3.2で希釈。レーン4:25mM MES pH4.5で希釈。レーン5:25mM MES pH4.5および400mM Lアルギニンで希釈。レーン6:10mM Trisおよび100mM NaHPo pH4.3で希釈。レーン7:10mM Tris、100mM NaHPoおよび400mM LアルギニンpH4.3で希釈。レーン8:PBS、50mM L-アルギニンおよび50mM L-グルタミン酸pH7.4で希釈。レーン9:水で希釈。レーン10:100mMグリシンバッファーpH2で希釈。パネルB、CおよびDは、CMVポリ-PTLタンパク質純度分析を示す。CMVポリ-PTLポリエピトープタンパク質(13マー、14マーおよび15マー)をMESバッファーpH5.6に対して透析した後、種々の濃度の各タンパク質をSDS PAGEで分析し、最終的な純度および分解産物を観察した。
図5】CMV血清陽性ドナー由来のPBMCをCMVポリ-PTLタンパク質で刺激した後のCMV特異的T細胞の増殖:種々の健康なCMV血清陽性ドナー由来のPBMCをex vivoにて組換えCMVポリ-PTLタンパク質(13、14および15マー)で刺激し、組換えIL2の存在下で10日間培養した。増殖した、IFN-γを産生するペプチド特異的CD8T細胞のパーセンテージを、ICSアッセイを用いて求め、FIowJoを用いて結果を解析した。パネルAは、PBMCをCMVポリ-PTLタンパク質有またはなしで刺激した後に、in vitroで増殖したCMV特異的CD8T細胞の代表的FACSプロットを示す。パネルBおよびCは、CMVポリ-PTLタンパク質(13、14および15マー)で刺激した後に、異なる個体に由来するCMV特異的CD8T細胞を増殖させたものの分析の全体像を示す。
図6】CMVポリエピトープタンパク質で刺激した後に増殖したCMV特異的CD8T細胞の規模および質:PBMCをCMVポリ-PTLタンパク質(13マー)で刺激した後、細胞をマルチパラメータフローサイトメトリーにより分析し、エフェクター機能に関して評価した。細胞溶解機能(CD107a脱顆粒マーカー)および細胞内サイトカイン産生(IFNγ、TNFおよびMIP 1β)を示すCD8T細胞の頻度をFIowJoで分析し、SPICEプログラムを用い、多機能サイトカイン産生細胞をプロットした。円グラフのデータは個々のエピトープに関して示され、円グラフの各切片はそれぞれの可能性のある機能の組合せを表す。
図7】リンカーを用いた場合および用いない場合のCMVポリエピトープタンパク質構築物の基本設計とタンパク質精製:パネルAは、リンカーを用いないCMVポリエピトープタンパク質の設計を示す(配列番号46)(CMVポリと称する)。パネルBは、プロテアソームリンカーを用いたポリエピトープタンパク質の設計を示す(配列番号47)(CMVポリ-PLと称する)。各選択的CD8T細胞エピトープ配列を斜体の太字で示す。CMVポリ-PLについては、各エピトープ配列は、プロテアソーム分解の標的となるアミノ酸残基(赤で示す)によって分離されている。CMVポリエピトープタンパク質をコードするDNA配列をIPTG誘導性プラスミドpJexpress 404にクローニングし、タンパク質発現用の大腸菌へ形質転換した。ポリエピトープタンパク質は、Ni-NTAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。
図8】リンカーを用いた場合および用いない場合のCMVポリエピトープタンパク質のプロセシングおよび提示のin vitro評価:パネルAは、ヒト細胞によるCMVポリ、CMVポリ-PLおよびCMVポリ-PTLタンパク質のin vitro交差提示を示す。EBVで形質転換したLCLをCMVポリ、CMVポリ-PLまたはCMVポリ-PTLタンパク質(各25μg)で2時間パルス刺激し、洗浄し、一晩インキュベートした後、HLA A2拘束NLV(pp65)、HLA A1拘束VTE(pp50)、HLA B8拘束ELR(IE1)、HLA B7拘束RPH(pp65)およびHLA B7拘束TPR(pp65)エピトープに特異的なCMV特異的CD8T細胞に曝した。FACSプロットは、CMVポリ、CMVポリPLまたはCMVポリ-PTLタンパク質でパルス刺激したLCLと共培養した後の、CMV特異的CD8T細胞によるIFN-γ発現を示す。パネルBは、CMVポリ(白いバー)、CMVポリ-PL(黒いバー)またはCMVポリ-PTL(グレーのバー)でパルス刺激したLCLと共培養した後の、IFN-γを産生するCMVエピトープ特異的CD8T細胞の平均±SEMを示す。誤差は±SEMを表す。**または***は、スチューデントの両側t検定によって計算された統計学的有意性を示す(p<0.001またはp<0.0001)。
図9】ヒト細胞によるCMVポリエピトープタンパク質の交差提示の分析:CMVポリエピトープタンパク質の交差提示におけるペプチド輸送体(TAP-1およびTAP-2)の役割を特定するために、TAP1&2+細胞(CEM.T1)およびTAP1&2-細胞(CEM.T2またはCEM.T2 HLA B7)をCMV-PTLタンパク質で2時間パルス刺激し、洗浄し、一晩インキュベートし、HLA A2拘束NLV(pp65)またはHLA B7拘束TPR(pp65)エピトープ特異的CD8T細胞に曝した。パネルAは、CMVポリエピトープタンパク質に事前感作させたCEM.T1細胞の曝露の後のNLV特異的T細胞によるIFNγの発現を示す。パネルBおよびCは、CMVポリエピトープタンパク質に感作させたCEM.T2およびCEM.T2 HLA B7細胞それぞれに曝した後、IFN-γを発現するNLVおよびTPR特異的CD8T細胞のパーセンテージを示す。パネルA、BおよびCに示されるデータは、2回の独立した実験からの1つの代表的実験である。
図10】ポリエピトープタンパク質のプロセシングおよび提示に及ぼす種々の化学的阻害剤の影響:CEM.T1細胞およびCEM.T2細胞を、CMV-PTLタンパク質とのインキュベーション前に、非処理とするか、または自己貪食阻害剤(3-MA)、リソソーム/エンドソーム阻害剤(クロロキンまたはバフィロマイシンA1)、リサイクル経路阻害剤(プリマキン)、システインプロテアーゼ阻害剤(ロイペプチンまたはE64)または酸性プロテアーゼ阻害剤(ペプスタチンA)(パネルA)、プロテアソーム阻害剤、ラクタシスチン、エポキソミシンおよびMG132(パネルB)、および小胞体アミノペプチダーゼ阻害剤(ロイシンチオール+DTT)またはその対照(DDT単独)またはゴルジ阻害剤(ブレフェルジンAまたはモネンシン)(パネルC)で前処理した。細胞を洗浄し、各阻害剤の存在下で12時間培養した後、HLA A2拘束NLV(pp65)特異的CD8T細胞に曝し、その後、ICSアッセイによりIFN-γ発現を評価した。それぞれに示されるデータは、CMV-PTL感作CEM.T1細胞(白いバー;T1と示す)およびCEM.T2細胞(黒いバー;T2と示す)に曝した後の抗原特異的T細胞による相対的IFN-γ発現を表す。データは、トリプリケートで行った2回の独立した実験の平均を表す。エラーバーは±SEMを表す。または**は、両側スチューデント検定によって計算された統計学的有意性を示す(p<0.05またはp<0.01)。
図11】ポリエピトープタンパク質の交差提示に及ぼすSec61およびATG12 shRNAの影響:CEM T1細胞およびCEM T2細胞に、Sec61βサブユニットもしくはATG12のshRNAをコードする組換えレンチウイルス、または対照ベクター(pLKO)を用いて形質導入を行い、R10培地で2日間培養し、ピューロマイシン中で7日間選択した後、抗原提示細胞として使用した。パネルAおよびDは、shRNAの形質導入後のCEM.T1細胞およびCEM.T2細胞におけるSec61およびATG12タンパク質発現のウエスタンブロット解析を示す。GAPDHをタンパク質ロードに関する対照として使用した。パネルB~Fは、Sec61およびATG12 shRNAレンチウイルスまたは対照ベクターを用いて形質導入を行ったCEM.T1細胞およびCEM.T2細胞をCMVポリ-PTLに感作させたものに曝した後の、CMV特異的CD8T細胞によるIFN-γの発現を示す。
図12】CMVポリ、CMVポリ-PLおよびCMVポリ-PTLタンパク質の免疫原性のin vivo評価:CMVポリ、CMVポリ-PLまたはCMVポリ-PTLタンパク質の免疫原性を評価するために、一用量当たり100μL容量中に20μgのタンパク質を25μgのMPL(モノホスホリル脂質A)および50μgのCpG ODN1826とともに配合した。0日目に、6~8週齢のHLA A2トランスジェニックマウスに皮下免疫を行い、21日目に追加免疫用量を同じ配合で与えた。35日目にマウスを屠殺し、脾細胞をin vitroにおいてIL-2の存在下、HLA A2拘束NLV(pp65)およびHLA A2拘束VLE(IE-1)ペプチドエピトープで10日間刺激した後、ICSアッセイを用いてサイトカイン発現を評価した。パネルAは、CMVポリ、CMVポリ-PLまたはCMVポリ-PTLに基づくワクチン製剤で免疫した後のCMV特異的CD8T細胞の頻度を示す。パネルBは、CMVポリ、CMVポリ-PLまたはCMVポリ-PTLタンパク質によるワクチン接種後の、種々の組合せのサイトカイン(IFN-γ、TNFおよび/またはIL-2)を発現するCMV特異的CD8T細胞の絶対パーセンテージを示す。エラーバーは平均±SEMを表す。は統計学的有意性を示す(p<0.05)。
図13】プロテアソームリンカーを用いたエプスタイン・バーウイルス(EBV)ポリエピトープ構築物の基本設計およびタンパク質精製。パネルAは、プロテアソームリンカーを用いたEBVポリエピトープタンパク質(EBVポリと称する)の設計を示す。各選択的CD8T細胞エピトープ配列を斜体と下線で示す。EBVポリについては、各エピトープ配列は、プロテアソーム分解の標的となるアミノ酸残基(赤で示す)によって分離されている。パネルBは、EBVポリタンパク質の精製を示す。EBVポリタンパク質をコードするDNA配列をIPTG誘導性プラスミドpJexpress 404にクローニングし、タンパク質発現用の大腸菌へ形質転換した。EBVポリタンパク質を、Ni-NTAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した後、SDS-PAGEを用いて分析した。EBVポリの推定サイズは25Kdであった。
図14】EBVポリタンパク質を用いた、健康な血清陽性ドナー由来のEBV特異的CD8T細胞のin vitro増殖。健康なドナーのパネル(n=8)に由来するPBMCをin vitroにてEBVポリタンパク質有りまたはなしで刺激し、IL-2の存在下で14日間培養した後、細胞を、ICSアッセイを用いてEBV特異的T細胞の増殖に関して評価した。棒グラフは、EBVポリタンパク質で刺激した後の各ドナー由来の増殖したEBV特異的CD8T細胞の相対的パーセンテージを表す。
図15A】CMVポリエピトープタンパク質のアミノ酸配列およびコード核酸のヌクレオチド配列。CMVポリトープは配列番号42であり、CMVポリトープをコードするヌクレオチド配列は配列番号50である。
図15B】CMVポリエピトープタンパク質のアミノ酸配列およびコード核酸のヌクレオチド配列。CMVポリトープは配列番号43であり、CMVポリトープをコードするヌクレオチド配列は配列番号51である。
図15C】CMVポリエピトープタンパク質のアミノ酸配列およびコード核酸のヌクレオチド配列。CMVポリトープは配列番号44であり、CMVポリトープをコードするヌクレオチド配列は配列番号52である。
図15D】CMVポリエピトープタンパク質のアミノ酸配列およびコード核酸のヌクレオチド配列。CMVポリトープは配列番号45であり、CMVポリトープをコードするヌクレオチド配列は配列番号53である。
図15E】CMVポリエピトープタンパク質のアミノ酸配列およびコード核酸のヌクレオチド配列。CMVポリトープは配列番号46であり、CMVポリトープをコードするヌクレオチド配列は配列番号54である。
図15F】CMVポリエピトープタンパク質のアミノ酸配列およびコード核酸のヌクレオチド配列。CMVポリトープは配列番号47であり、CMVポリトープをコードするヌクレオチド配列は配列番号55である。
図15G】CMVポリエピトープタンパク質のアミノ酸配列およびコード核酸のヌクレオチド配列。CMVポリトープは配列番号48であり、CMVポリトープをコードするヌクレオチド配列は配列番号56である。
図15H】EBVポリエピトープタンパク質のアミノ酸配列およびコード核酸のヌクレオチド配列。EBVポリトープは配列番号49であり、EBVポリトープをコードするヌクレオチド配列は配列番号57である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、少なくとも一部には、外因性タンパク質として個体に投与される、CMVエピトープおよび/またはEBVエピトープなどの複数のヘルペスウイルスエピトープを含む単離されたタンパク質が防御的CD8細胞傷害性T細胞応答を惹起し得るという予期しない発見に基づく。ひと度投与されると、外因性タンパク質は、外因性タンパク質内にプロテアソーム遊離アミノ酸が含まれることで補助される、新規な、細胞TAP非依存的、プロテアソームおよび自己貪食依存的経路によってプロセシングされると考えられる。この結果、プロセシングを受けたCMVエピトープの、CD8細胞傷害性T細胞へのHLAクラスI依存的提示がなされる。この予期されない発見はまた、少なくとも一部には、組換えタンパク質の凝集を回避または軽減する、改良された組換えタンパク質精製法にも関連する可能性がある。このようなタンパク質が一般に直面する問題は、T細胞エピトープが疎水性であり、かつ/またはいくつかの疎水性アミノ酸を含むということであり、これはこのタンパク質が疎水性凝集を受けやすいことを意味し、このタンパク質のCTLエピトープが上記の様式でプロセシング可能であるような方法においては、組換えタンパク質の送達能が損なわれるおそれがある。これは、一般に疎水性である介在TAP認識モチーフを使用することにより悪化する。本明細書に記載の改良された組換えポリエピトープタンパク質精製法は、ポリトープタンパク質の凝集を回避するか、または少なくとも軽減し、それにより、ポリエピトープタンパク質の効率的送達およびプロセシングを可能とする。本発明者らはまた、単離されたポリエピトープタンパク質の生産、精製およびそれによる免疫誘導が、単離されたタンパク質内に20個未満のCTLエピトープを使用することによって最適化されることも見出した。上記に加え、本発明は、単離されたタンパク質の免疫原性を増強するtoll様受容体(TLR)アゴニストなどの特定の免疫原性成分を利用する。
【0037】
本明細書を通して、特に断りのない限り、「を含む」は、排他的にではなく包含的に使用され、従って、記載された整数または整数群は、記載されていない他の1つ以上の整数または整数群を含み得る。
【0038】
また、不定冠詞「1つの」は、単数形の不定冠詞として、またはそうでなければその不定冠詞が指す1つを超えるもしくは単一を超える対象を排除するものとして読まれるべきでないということも認識されるであろう。例えば、「1つの」タンパク質には、1つのタンパク質、1つ以上のタンパク質または複数のタンパク質が含まれる。
【0039】
第1の態様において、単離されたタンパク質は、2つ以上の異なるヘルペスウイルス抗原に由来する複数のCTLエピトープのそれぞれの対応アミノ酸配列を含み、かつ、前記CTLエピトープの少なくとも2つの間に、プロテアソーム遊離アミノ酸またはアミノ酸配列および任意選択により抗原プロセシング関連輸送体(TAP)認識モチーフを含む介在アミノ酸またはアミノ酸配列をさらに含み、前記単離されたタンパク質は、外因性タンパク質として動物に投与した際に細胞傷害性Tリンパ球免疫応答を惹起することができる。
【0040】
「単離された」とは、その天然状態から取り出されたか、または他の方法で人の操作を受けた材料を意味する。単離された材料は、その天然状態でそれに通常付随している成分を実質的または本質的に含んでいなくてもよいし、またはその天然状態でそれに通常付随している成分とともに人工的状態となるように操作されていてもよい。
【0041】
「タンパク質」とは、当技術分野で周知のように、天然および/または非天然アミノ酸、D-またはL-アミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味する。
「ペプチド」は、50個以下のアミノ酸を有するタンパク質である。
【0042】
「ポリペプチド」は、50個を超えるアミノ酸を有するタンパク質である。
本明細書で使用する場合、単離されたタンパク質は、単離されたポリエピトープまたはポリトープタンパク質、例えば、単離された「CMVポリエピトープ」、「EBVポリエピトープ」または単離された「CMVポリエピトープタンパク質」または「EBVポリエピトープタンパク質」と呼ばれる場合がある。
【0043】
本発明に関して、「外因性」タンパク質またはポリエピトープタンパク質は、それがその後投与された動物に対して外的に産生されるタンパク質である。効果的には、外因性タンパク質は、そのタンパク質をコードする核酸または遺伝子構築物が動物に送達された後に、動物によってin situで(例えば、動物の細胞または組織によって)産生または発現されるのではなく、動物に投与されるかまたは投与可能である。好ましい外因性タンパク質は、細菌宿主細胞などの単離された宿主細胞においてex vivoで産生される組換えタンパク質である。
【0044】
本明細書で使用する場合、「CTLエピトープ」は、適当なMHCクラスI分子を介してエピトープを提示する標的細胞を認識するように細胞傷害性Tリンパ球を刺激または活性化することができるペプチド、またはペプチドのアミノ酸配列である。標的細胞の認識は、サイトカイン産生(例えば、IFN-γ、IL-2、MIP-1βおよび/もしくはTNF)、細胞表面マーカー発現(例えば、CD107a)の変化、ならびに/または標的細胞の溶解および/もしくは標的細胞を殺すことを含み得るか、またはそれらをもたらし得る。
【0045】
排他的ではないが一般に、CTLエピトープは、対応するヘルペスウイルス抗原の、または前記抗原に由来する、または前記抗原から得られた、または前記抗原に基づく、7、8、9、10、11、12、13、14または15個の連続するアミノ酸を含む。
【0046】
ポリエピトープタンパク質は、好ましくは、複数の異なるCMVタンパク質抗原に由来する複数のCMVおよび/またはEBV CTLエピトープを含む。好ましくは、エピトープは、pp50、pp65、pp150およびIE-lのうちから選択されるCMV抗原、ならびに/またはBMLF1、LMP2a、BRLF1、LMP2、EBNA3A、BZLF1、EBNA3C、EBNA1およびEBNA3Bのうちから選択されるEBV抗原のものである。
【0047】
好適には、CMVおよび/またはEBVポリエピトープタンパク質は、集団に対して広い被覆率を提供するように選択されたCTLエピトープを含む。ヒトでは、これらには、HLAクラスI特異性HLA-Al、-A2、-A3、-All、-A23、-A24、-A26、-A29、-A30、-B7、-B8、-B27、-B35、-B38、-B40、-B41、-B44、-B51、-B57、-B58および-cw6が含まれる。
【0048】
特定の実施形態では、CTLエピトープは、表1または表2に示されるHLAクラスI特異性に拘束される。
特定の実施形態では、CMVポリエピトープタンパク質は、表1(配列番号1~21)または表3(配列番号22~41)から選択される複数のHLAクラスI拘束CTLエピトープを含む。
【0049】
特定の実施形態では、EBVポリエピトープタンパク質は、表3(配列番号22~41)から選択される複数のHLAクラスI拘束CTLエピトープを含む。
また、本発明が同じまたは異なるヘルペスウイルス(例えば、CMVおよび/またはEBV)に由来するCTLエピトープの包含を企図することも認識されるであろう。従って、単離されたタンパク質の一実施形態は、CMV抗原およびEBV抗原の両方に由来するCTLエピトープを含む。
【0050】
好適には、前記複数のエピトープは、合計20個未満のエピトープを含む。
特定の実施形態では、前記複数のエピトープは、合計10~15個のエピトープを含む。
【0051】
1つの特定の実施形態は、表2に示されるものなどの13個のCMV CTLエピトープを含む単離されたタンパク質を提供する。好ましい実施形態では、前記エピトープの少なくとも1つは、CMVアミノ酸配列VTEHDTLLY(配列番号11)を含む。
【0052】
全長連続ポリエピトープタンパク質は、配列番号42~48で示され、かつ、図15A~Gに示されるアミノ酸配列を含む。
また、国際公開第03/000720号に記載されているものなどの他のCMV CTLエピトープを使用してもよいことも認識されるであろう。
【0053】
1つの特定の実施形態は、表3に示されるものなどの13個のEBV CTLエピトープを含む単離されたタンパク質を提供する。全長連続EBVポリエピトープタンパク質は、図15Hに示されるように、配列番号49で示されるアミノ酸配列を含む。
【0054】
さらにまた、国際公開第95/024925号;第97/45444号;第99/02550号および第04/041849号に記載されているものなどの他のEBV CTLエピトープを使用してもよいことも認識されるであろう。
【0055】
単離されたポリエピトープタンパク質は、1つまたは複数のHLAクラスII拘束CTLエピトープをさらに含んでよい。
当業者には、選択されたエピトープが任意の集団、人種または他の個体群に適合するように調整可能であることが認識されるであろう。
【0056】
ヘルペスウイルスポリエピトープの他の包含基準としては、(i)配列変異が最小であるかまたは皆無であるもの;(ii)サブタイプが最小のHLAから選択されるもの;(iii)健康な血清陽性者においてCTL応答頻度が高いもの;および(iv)エピトープ疎水特性に基づくものであって、個々のエピトープの新規な順序が、細胞内移行を補助するようにポリエピトープの長さに沿って疎水性が均一に分布されるように配置されているものが含まれる。
【0057】
さらに、広いHLAクラスI拘束免疫原性を保持しつつ、構成CTLエピトープの特定の数および順序は容易に変更可能であることも認識されるであろう。
CTLエピトープに加え、単離されたタンパク質は、介在アミノ酸またはアミノ酸配列をさらに含み得る。介在アミノ酸またはアミノ酸配列は、前記CTLエピトープアミノ酸配列の少なくとも2つの間に、または各隣接CTLエピトープアミノ酸配列の間に存在し得る。
【0058】
好適には、介在アミノ酸またはアミノ酸配列は、CTLエピトープアミノ酸配列に対して、プロテアソームプロセシングを可能とするために、かつ、プロテアソームにより生成された個々のCTLエピトープペプチドをその後のHLA-I分子による提示のために小胞体(ER)へ輸送するように、配置または局在される。
【0059】
一実施形態では、介在アミノ酸またはアミノ酸配列は、プロテアソーム遊離アミノ酸またはアミノ酸配列である。
プロテアソーム遊離アミノ酸またはアミノ酸配列の限定されない例は、AD、KまたはRであるか、またはそれらを含む。
【0060】
任意選択の実施形態では、介在アミノ酸またはアミノ酸配列は、TAP認識モチーフである。一般に、TAP認識モチーフは、下式:(R/N:I/Q:W/Y)(式中、nは1以上の任意の整数である)に従うものとすることができる。
【0061】
TAP認識モチーフの限定されない例としては、RIW、RQW、NIWおよびNQYが挙げられる。
好ましい形態では、CMVおよび/またはEBV CTLエピトープは、各エピトープのカルボキシル末端で、プロテアソーム遊離アミノ酸配列および任意選択によりTAP認識モチーフにより連結または結合されている。
【0062】
TAP認識モチーフ、プロテアソーム遊離アミノ酸およびCTLエピトープアミノ酸配列に対するそれらの位置の限定されない例は表1および表2に示され、それらはまた図1(配列番号58)および図15A~H(配列番号42~49)に示されるポリエピトープアミノ酸配列中にも存在する。
【0063】
驚くことに、ひと度投与されれば、介在アミノ酸またはアミノ酸配列を含む外因性タンパク質は、新規な、細胞TAP非依存的、プロテアソームおよび自己貪食依存的経路によってプロセシングされる。この結果、プロセシングを受けたCMVエピトープの、CD8細胞傷害性T細胞へのHLAクラスI依存的提示がなされる。
【0064】
よって、TAPアミノ酸配列は、削除可能であるかまたは不在であってもよく、この場合、前記TAP非依存的経路は、単離されたタンパク質を、HLA-I分子による提示を可能とするように十分プロセシングすることができるものと提案または予想される。
【0065】
別の実施形態では、単離されたポリエピトープタンパク質は、1つまたは複数のCD4ヘルパーT細胞エピトープをさらに含み得る。
また、本明細書に記載の単離されたタンパク質は、本発明の概念から逸脱することなく、さらなる修飾、変更および/または誘導体化を施すことができることも認識されるであろう。
【0066】
アミノ酸配列の変更は、ヘルペスウイルスポリエピトープタンパク質における天然に存在する配列変動の結果であり得る。
いくつかのアミノ酸は、単離されたタンパク質の活性の性質を変化させずに、広範囲に類似する特性を有する他のアミノ酸に変更可能であること(保存的置換)は、当技術分野において十分理解されている。
【0067】
一般に、保存的置換は、電荷、親水性、疎水性および/または側鎖のサイズまたは「嵩高さ」などのアミノ酸特性が保持される、または少なくとも変更が最小限となるように行われる。
【0068】
アミノ酸置換の導入は、ペプチド合成中に、またはコード核酸の突然変異誘発によって容易に達成され得る。
核酸突然変異誘発法の限定されない例は、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGYのChapter 9,Ausubel et al.,前掲、Stemmer,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91 10747、Shafikhani et al.,1997,Biotechniques 23 304、Jenkins et al.,1995,EMBO J.14 4276-4287およびZaccolo et al.,1996,J.Mol.Biol.255 58ならびにQuickChange(商標)部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)およびDiversify(商標)ランダム突然変異誘発キット(Clontech)などのキットに提供されている。
【0069】
一般に、本発明は、構成要素であるCTLエピトープ配列と少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%またはいっそうより好ましくは少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質変異体を個々にまたは組み合わせて企図する。他の実施形態では、これは、CTLエピトープの1、2または3個のアミノ酸残基の保存的変更または置換を含み得る。
【0070】
用語「配列同一性」は、本明細書において、標準的なアルゴリズムを用いて適当なアラインメントを考慮し、ある比較ウインドウにわたって配列が同一である程度を考慮して、正確なアミノ酸一致の数を含むように最も広義に使用される。配列同一性は、例えば、Altschul et al.,1997,Nucl.Acids Res.25 3389により開示されるGAP、BESTFIT、FASTAおよびBLAST系列のプログラムなどのコンピュータアルゴリズムを用いて決定することができる。配列解析の詳細な考察は、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGYのUnit 19.3 Ausubel et al.編(John Wiley&Sons Inc NY,1995-1999)に見出すことができる。
【0071】
本明細書で使用する場合、本発明の「誘導体」タンパク質は、例えば、付加的タンパク質配列とのコンジュゲーション、融合によるか、他の化学部分との複合体形成によるか、または当技術分野で理解できるであろう翻訳後修飾技術によって変更されている。
【0072】
アミノ酸の「付加」は、組換えタンパク質の精製および/または同定を補助する「融合相手」または「エピトープタグ」などの他のタンパク質のアミノ酸配列との融合を含み得る。
【0073】
融合相手の周知の例としては、限定されるものではないが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ヒトIgGのFc部分、マルトース結合タンパク質(MBP)およびヘキサヒスチジン(HIS)が挙げられ、これらはアフィニティークロマトグラフィーによる融合ポリペプチドの単離に特に有用である。アフィニティークロマトグラフィーによる融合タンパク質の精製を目的としたアフィニティークロマトグラフィー用の適切なマトリックスは、それぞれグルタチオン、アミロース、およびニッケルまたはコバルトと結合させた樹脂である。このようなマトリックスの多くは、(HIS)融合相手を用いる場合に有用なQIAexpress(商標)システム(Qiagen)およびPharmacia GST精製システムなどの「キット」の形態で入手可能である。
【0074】
当技術分野で周知の別の融合相手は、緑色蛍光タンパク質(GFP)である。この融合相手は、本発明の融合タンパク質を蛍光顕微鏡によりまたはフローサイトメトリーにより識別可能とする蛍光「タグ」として機能する。GFPタグは、本発明の融合ポリペプチドの細胞内局在を評価する場合、または本発明の融合ポリペプチドを発現する細胞を単離するために有用である。蛍光活性化細胞選別(FACS:fluorescence activated cell sorting)などのフローサイトメトリー法は、この後者の適用において特に有用である。
【0075】
好ましくは、融合相手はまた、適切なプロテアーゼに本発明の融合タンパク質を部分的に消化させ、それにより、それから本発明の組換えタンパク質を遊離させる、因子Xまたはトロンビンに関するものなどのプロテアーゼ切断部位も有する。次に、遊離したタンパク質は、続いてクロマトグラフィー分離によって融合相手から単離することができる。
【0076】
本発明による融合相手はまた、それらの範囲内に通常は短い配列である「エピトープタグ」を含み、このエピトープタグに対する特異的抗体が入手可能である。特異的モノクローナル抗体が容易に入手可能なエピトープタグの周知の例としては、c-myc、インフルエンザウイルスヘマグルチニンおよびFLAGタグが挙げられる。
【0077】
本発明により企図される他の誘導体としては、限定されるものではないが、側鎖の修飾、ビオチン化、蛍光色素による修飾、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質合成中の非天然アミノ酸および/またはそれらの誘導体の組み込み、架橋剤の使用および本発明の単離されたタンパク質に立体的制約を課す他の方法の使用が挙げられる。本発明により企図される側鎖修飾の例としては、限定されるものではないが、アシル化によるなどのアミノ基の修飾;O-アシルイソ尿素形成を介したカルボジイミドの活性化とその後の誘導体化によるカルボキシル基の修飾;システイン酸への過ギ酸酸化などの方法によるスルフヒドリル基の修飾;水銀誘導体の形成;混合二硫化物の形成;トリプトファン残基のアルキル化;チロシン残基のニトロ化;およびヒスチジン残基のイミダゾール環のアルキル化による修飾が挙げられる。
【0078】
非天然アミノ酸の例としては、限定されるものではないが、4-アミノ酪酸、6-アミノヘキサン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、t-ブチルグリシン、ノルロイシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、2-チエニルアラニンおよび/またはアミノ酸のD-異性体の使用が挙げられる。
【0079】
別の態様において、本発明は、本発明の上述の単離されたタンパク質をコードする単離された核酸を提供する。
本発明の単離された核酸は、動物においてin vivoでの、またはその後の組換えタンパク質精製のために宿主細胞での、組換えタンパク質発現に有用であり得る。
【0080】
当業者には、アミノ酸配列のコードヌクレオチド配列を変更するには遺伝コードの縮重を利用できることが認識されるであろう。
特定の例では、ヌクレオチド配列は、生物または細胞種のコドン選好または利用頻度に従って操作し、それにより、その生物または細胞種においてコードされるタンパク質の翻訳および発現を最適化し得る。
【0081】
用語「核酸」は、本明細書で使用する場合、一本鎖または二本鎖のmRNA、RNA、cRNAおよびDNA(前記DNAはcDNAおよびゲノムDNAを含む)を表す。
核酸は、限定されるものではないが、アデニン、グアニン、シトシン、チミンおよびウラシルなどの遺伝的にコードされている塩基、またはイノシン、メチルイノシンおよびメチルアデノシン、チオウリジンおよびメチルシトシンなどの修飾塩基を含み得る。
【0082】
用語「組換え」は、本明細書で使用する場合、例えば当技術分野で十分に理解されているような「組換えDNA技術」の範囲に一般に入る技術を含む、ヒトによる遺伝物質の操作を介して人為的に生産されることを意味する。
【0083】
「ポリヌクレオチド」は、80個以上の連続するヌクレオチドを有する核酸であり、一方、「オリゴヌクレオチド」は、80個未満の連続するヌクレオチドを有する。
「プローブ」は、例えば、ノーザンまたはサザンブロット法において相補配列を検出する目的で適宜標識された一本鎖または二本鎖のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであり得る。
【0084】
「プライマー」は、通常、好ましくは15~50個の連続するヌクレオチドを有し、相補的核酸「鋳型」にアニーリングし、Taqポリメラーゼ、RNA依存性DNAポリメラーゼまたはシーケナーゼ(Sequenase)(商標)などのDNAポリメラーゼの作用によって鋳型依存的様式で延長され得る一本鎖オリゴヌクレオチドである。
【0085】
「増幅産物」は、核酸増幅技術によって生成された核酸産物を指す。
単離された核酸の一実施形態は、配列番号50~57のいずれか1つで示され、かつ、図15に示されるようなヌクレオチド配列を含む。
【0086】
また、上記のような単離されたタンパク質の変異体および/または誘導体をコードする単離された核酸も本発明により企図される。
いくつかの実施形態では、核酸変異体は、上記のような単離されたタンパク質の変異体をコードする。
【0087】
他の実施形態では、核酸変異体は、本明細書に開示される単離されたタンパク質、またはその変異体をコードし、前記核酸変異体は遺伝コードの冗長性のためにヌクレオチド配列変化を採っている。1つの特定の形態では、このような変異体は、特定の生物または細胞種における発現のために「コドンの最適化」がなされる。
【0088】
単離された核酸変異体は、単離されたポリエピトープタンパク質をコードする単離された核酸と、高ストリンジェンシー洗浄条件下でハイブリダイズし得る。
高ストリンジェンシー条件は、
(i)42℃でのハイブリダイゼーションのためには、少なくとも約31%v/v~少なくとも約50%v/vのホルムアミドおよび少なくとも約0.01M~少なくとも約0.15Mの塩、42℃での洗浄のためには、少なくとも約0.01M~少なくとも約0.15Mの塩;
(ii)65℃でのハイブリダイゼーションのためには、1%BSA、1mM EDTA、0.5M NaHPO(pH7.2)、7%SDS、65℃を超える温度で約1時間の洗浄のためには、(a)0.1×SSC、0.1%SDS;または(b)0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO(pH7.2)、1%SDS;および
(iii)68℃以上で約20分間の洗浄のためには、0.2×SSC、0.1%SDS
を含み、包含する。
【0089】
別の実施形態では、単離された核酸変異体は、参照核酸と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有し得る。参照核酸の限定されない例としては、配列番号50~57のいずれか1つで示されるヌクレオチド配列を含む。
【0090】
本発明の別の態様は、本発明の単離された核酸またはその変異体を含む遺伝子構築物を提供する。
遺伝子構築物は、単離された核酸の増幅、クローニングおよび/または発現を容易にすることができる。
【0091】
好ましい形態では、遺伝子構築物は、発現ベクター中に存在する1つ以上の調節配列に作動可能に連結された本発明の単離された核酸を含む発現構築物である。
「発現ベクター」は、プラスミドなどの自己複製する染色体外ベクターか、または宿主ゲノムに組み込まれるベクターのいずれかであり得る。好適には、発現ベクターは、前記1つ以上の調節ヌクレオチド配列を提供する。「作動可能に連結される」とは、前記1つまたは複数の調節ヌクレオチド配列が本発明の組換え核酸に対して、転写を開始する、調節する、またはその他の方法で制御するように配置されることを意味する。
【0092】
調節ヌクレオチド配列は、一般に、発現に使用される宿主細胞に適当なものである。多くのタイプの適当な発現ベクターおよび好適な調節配列が、多様な宿主細胞に関して当技術分野で公知である。
【0093】
一般に、前記1つ以上の調節ヌクレオチド配列には、限定されるものではないが、プロモーター配列、リーダーまたはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始および終結配列、翻訳開始および終結配列、ならびにサイレンサー、エンハンサーまたはアクチベーター配列を含み得る。
【0094】
プロモーターに関しては、構成プロモーター(例えば、CMV、SV40、ワクシニア、HTLV1およびヒト延長因子プロモーター)および誘導/抑制性プロモーター(例えば、tet抑制性およびIPTG誘導性、メタロチオネイン誘導性またはエクジソン誘導性プロモーター)が当技術分野で周知であり、本発明により企図される。また、プロモーターは、限定されるものではないが、HTLV1プロモーター要素とSV40プロモーター要素の間のハイブリッドであるSRαプロモーターなど、2種類以上のプロモーターの要素を組み合わせたハイブリッドプロモーターであってよいことも認識されるであろう。
【0095】
好ましくは、前記発現構築物はまた、形質転換細菌の選択のために好適な1つ以上の選択マーカー(例えば、bla、kanRおよびtetR)または形質転換哺乳類細胞の選択のために好適な1つ以上の選択マーカー(例えば、ハイグロマイシン、G418およびピューロマイシン)も含む。
【0096】
発現構築物は、限定されるものではないが、熱ショックによる形質転換、エレクトロポレーション、DEAE-デキストラントランスフェクション、マイクロインジェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法、プロトプラスト融合、微粒子銃、ウイルス形質転換などを含む、多くの周知の技術のいずれかによって、宿主細胞にトランスフェクト、形質転換またはその他の方法で導入することができる。
【0097】
タンパク質発現に適当な条件は、発現ベクターおよび宿主細胞の選択によって異なる。これは、当業者により、通常の実験によって容易に確認される。
発現に好適な宿主細胞は、原核生物または真核生物、例えば、大腸菌(Escherichia coli)(例えば、DH5α)を含む細菌細胞、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母細胞、バキュロウイルス発現系とともに使用されるSf9細胞、ヒト胎児由来腎臓(HEK)293細胞、CHO細胞、COS細胞、CV1細胞、JurkatおよびNIH3T3細胞などの哺乳類細胞株であり得るが、これらに限定されない。
【0098】
本発明の別の態様は、本明細書で開示される単離されたタンパク質を組換え形態で生産する方法を提供し、前記方法は、単離されたタンパク質を上記のような宿主細胞内で発現させる工程、および前記単離されたタンパク質を実質的に非凝集形態で維持する条件下で、前記単離されたタンパク質を少なくとも部分的に精製する工程を含む。
【0099】
この文脈で「非凝集」とは、単離されたタンパク質の実質的部分が、水溶液中、一般に、尿素、SDSまたは塩化グアニジニウムなどの変性剤の不在下で可溶性形態にあることを意味する。
【0100】
CTLエピトープ配列およびTAP配列の疎水性のため、細菌における単離されたタンパク質の発現は、封入体(IBs:inclusion bodies)の形態で凝集したタンパク質を生じる傾向にある。IBsは可溶化が可能であり、また、組換えタンパク質はアフィニティーマトリックス(例えば、Ni-NTAマトリックス)を用いて精製可能であるが、単離されたタンパク質は、20個のCMV CTLエピトープを含む場合、この処理に抵抗を示した。従って、本発明の好ましい形態は、20個未満のCMVおよび/またはEBV CTLエピトープを含む単離されたタンパク質を提供する。表1および2の各CMV CTLエピトープが8~13個のアミノ酸を含んでいるので、20個未満のCMV CTLエピトープは160~240個未満の構成エピトープアミノ酸に相当する。
【0101】
さらに、精製された組換えタンパク質を可溶性形態で維持することは難しく、これがCD8CTL応答を惹起する外因性タンパク質としてポリエピトープタンパク質を上手く投与することができないことへの寄与因子となっていた。実施例にさらに詳細に記載されるように、維持のための適合バッファー系は、単離されたポリエピトープタンパク質が可溶性を維持するために酸性pHのMESバッファーまたはグリシンバッファーを必要とすることを示した。
【0102】
従って、本発明の一実施形態は、本明細書で開示される単離されたタンパク質を組換え形態で生産する方法を提供し、前記単離されたタンパク質は20個よりも少ないCMVCTLエピトープまたは160~240個の構成エピトープアミノ酸を有し、前記方法は、単離されたタンパク質を上記のような細菌宿主細胞内で発現させる工程、および前記単離されたタンパク質を実質的に非凝集形態で維持する条件下で、前記単離されたタンパク質を少なくとも部分的に精製する工程を含み、前記条件は、酸性条件下のMESバッファーまたはグリシンバッファー中で前記単離された組換えタンパク質を維持することを含む。
【0103】
酸性条件は、7未満のいずれのpHであってもよく、好ましくは、pH2~6の範囲またはより好ましくは約pH2.5~約pH5.6の範囲である。
組換えタンパク質生産の一般的指針は、例えばSambrook et al.,MOLECULAR CLONING.A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press,1989)、特に第16節および第17節;CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY Ausubel et al.編,(John Wiley&Sons,Inc.NY USA 1995-2001)、特に第10章および第16章;およびCURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE Coligan et al.編, (John Wiley&Sons,Inc.NY USA 1995-2001、特に第1章、第5章および第6に記載されているような標準的プロトコールに見出すことができる。
【0104】
ヒトに投与するための発現構築物に関する実施形態では、本発明の発現構築物は、DNAワクチンとしての使用に好適である。
特定の形態において、本発明の発現構築物は、ポックスウイルスおよびアデノウイルスまたはDNAプラスミドベクターなどのウイルス起源の発現および送達ベクターを使用する構築物であり得る。
【0105】
ワクチン送達系として使用する場合、ウイルス起源の発現構築物はVLPの形態でまたは「裸の」核酸構築物として動物に投与され得る。
1つの特定の実施形態では、この実施形態による発現構築物は、プラスミドベクター中に存在するp7.5プロモーターなどのワクシニアウイルスプロモーターを含む。例えば、Khanna et al.,1992.J Exp Med.176 169で提供されるようなマーカーレスキュー組換えを用いたTK組換えワクシニアウイルスの生産がある。
【0106】
より好ましい実施形態では、本発明は、ワクチン送達系における使用のためのアデノウイルスに基づく発現構築物を提供する。アデノウイルスに基づく構築物は、静止細胞種および増殖細胞種の両方を含む広域の哺乳類およびヒト細胞に感染することができる。
【0107】
このようなアデノウイルスに基づく発現構築物は、構成または誘導性/抑制性プロモーターを含んでよく、例えばテトラサイクリン誘導/抑制系の方式による。
アデノウイルスに基づく発現構築物の一形態は、少なくともE1遺伝子を欠く複製不能A5アデノウイルスに由来する。
【0108】
特定の形態はAd5/F35アデノウイルスに基づく発現構築物であり、ワクチン送達系は以下に詳細に示す。また、アデノウイルス発現ベクターのAd5/F35の具体例に関しては、Yotdna et al.,2001,Gene Therapy 8 930も参照されたい。
【0109】
本発明の単離されたタンパク質、単離された核酸およびそれをコードする発現構築物は、動物、好ましくはヒトにおけるヘルペスウイルス関連疾患または病態、例えば、サイトメガロウイルス関連またはエプスタイン・バー関連疾患および/または病態の治療的処置および/または予防的処置において有用であり得ることが認識されるであろう。
【0110】
ヒトにおいて、CMV感染は、長期発熱および/または軽度の肝炎を伴う単核球症様症候群を引き起こし得る。ある特定の高リスク群、例えば、妊娠段階の胎児、小児とともに活動する人々、ならびに高齢者、臓器移植レシピエントおよびヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者などの免疫不全者の感染中では、疾患はより重篤となり得る。CMVはまた、神経膠腫などの一部の癌に関連する可能性がある。従って、本発明は、好ましくはヒトにおける、CMV感染の医薬組成物および/または予防的処置または治療的処置方法を提供する。
【0111】
EBV感染は、重篤な単核球症を引き起こすことがあり、多様な癌およびおそらくは脂肪性肝炎障害にも関連がある。従って、本発明は、好ましくはヒトにおける、CMV感染の医薬組成物および/または予防的処置または治療的処置方法を提供する。
【0112】
このような医薬組成物および方法は、組換え形態での、またはウイルス送達ベクターの場合などの発現構築物によりコードされている、単離されたタンパク質の送達に好適である。これに関して、本医薬組成物は、それぞれCMVおよびEBV CTLエピトープを含む別個の単離されたタンパク質を含んでもよく、またはEBVおよびCMVエピトープの両方を含む単一の単離されたタンパク質を含んでもよいことが認識されるであろう。
【0113】
好適には、医薬組成物は、薬学上許容される担体、希釈剤または賦形剤をさらに含む。
「薬学上許容される担体、希釈剤または賦形剤」とは、全身投与に安全に使用され得る固体もしくは液体の増量剤、希釈剤またはカプセル化物質を意味する。特定の投与経路に応じて、当技術分野で周知の多様な担体が使用可能である。これらの担体は、糖類、デンプン、セルロースおよびその誘導体、麦芽、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油、合成油、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝溶液、乳化剤、等張生理食塩水、および塩(例えば、塩酸塩、臭化物および硫酸塩を含む無機酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩およびマロン酸塩などの有機酸)および発熱性物質除去水を含む群から選択され得る。
【0114】
薬学上許容される担体、希釈剤および賦形剤を記載している有用な参照文献は、本明細書の一部として援用されるRemington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.N.J.USA,1991)である。
【0115】
本発明の組成物を患者に提供するためには、安全ないずれの経路を使用してもよい。例えば、経口投与、直腸投与、非経口投与、舌下投与、頬側投与、静脈内投与、関節内投与、筋肉内投与、皮内投与、皮下投与、吸入投与、眼内投与、腹腔内投与、脳室内投与および経皮投与が使用可能である。
【0116】
投与形としては、錠剤、分散剤、懸濁液、注射剤、溶液、シロップ剤、トローチ剤、カプセル剤、坐剤、エアゾール、経皮パッチなどが含まれる。これらの投与形は、この目的で特に設計された徐放性デバイス、またはさらにこの様式でも機能するように改良された他の形態のインプラントを注射または移植することも含み得る。治療薬の放出制御は、例えば、アクリル樹脂、ワックス、高級脂肪族アルコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびある種のセルロース誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む疎水性ポリマーでそれをコーティングすることによって達成され得る。加えて、放出制御は、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを使用することによっても達成され得る。
【0117】
好ましい医薬組成物は、それに対するCT:応答を惹起することによって、必ずしも防御免疫応答を惹起することなく、そのような免疫療法に応答性のあるヘルペスウイルス(例えば、CMVおよび/またはEBV)の予防的処置および/または治療的処置を提供する「免疫原性組成物」である。
【0118】
好ましい形態では、免疫原性組成物は、ヒト対象において、CMV感染から防御する、または既存のヘルペスウイル(例えば、CMVおよび/またはEBV)感染を治療する、防御的なCD8CTLに基づく免疫応答を惹起するためのワクチンであり得る。
【0119】
1つの特定の実施形態では、免疫原性組成物およびワクチンを含めた医薬組成物は、本明細書で開示される単離されたタンパク質と前記の薬学上許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含む。
【0120】
実施例にさらに詳細に記載されるように、複数のCMVおよび/またはEBV CTLエピトープを含む単離されたタンパク質は、健康なウイルス保有者においてCMV特異的CD8T細胞応答を生じさせる効率が高い。さらに、増殖したCD8T細胞は、そのタンパク質で刺激した後にIFN-γ、TNF、MIP-1βおよびCD107aの強い発現を示した。CD8T細胞のこれらの機能的特徴はCTL媒介性の免疫応答およびウイルスクリアランスの有効性を予測するために重要であることが提案される。
【0121】
別の実施形態は、本明細書で開示される単離されたタンパク質をコードする核酸発現構築物(DNAワクチンを含む)と前記の薬学上許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含む、免疫原性組成物およびワクチンを含めた医薬組成物を提供する。この別の実施形態によれば、免疫原性組成物およびワクチンを含めた医薬組成物は、上記のようなアデノウイルスベクターまたはポックスウイルス由来ベクターなどのウイルスベクターを使用する発現構築物を含み得る。
【0122】
このようなワクチンを生産するために任意の好適な手順が企図される。例示的手順としては、例えば、本明細書の一部として援用されるNew Generation Vaccines(1997,Levine et al.,Marcel Dekker,Inc.New York,Basel,Hong Kong)に記載されているものが含まれる。
【0123】
医薬組成物、免疫原性組成物、ワクチンおよび/または予防的処置または治療的処置の方法は、動物に投与するための1つ以上の免疫刺激性分子またはアジュバントを含み得る。
【0124】
好適な免疫刺激性分子およびアジュバントとしては、限定されるものではないが、TLRアゴニスト、リポ多糖類およびMPLなどのそれらの誘導体、フロイントの完全または不完全アジュバント、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデシルアミノ酸エステル、リゾレシチン、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、N,N-ジオクタデシル-N’,N’ビス(2-ヒドロキシエチル-プロパンジアミン)、メトキシヘキサデシルグリセロール、およびプルロニックポリオール;ピラン、デキストラン硫酸、ポリICカーボポールなどのポリアミン;ムラミルジペプチドおよび誘導体、ジメチルグリシン、タフトシンなどのペプチド;オイルエマルション;およびリン酸アルミニウム、水酸化アルミニウムまたはミョウバンなどの無機ゲル;リンホカイン、イミキモド、ガーディキモド(Guardiquimod)、QuilAおよび免疫刺激複合体(ISCOMS:immune stimulating complexes)が含まれる。
【0125】
医薬組成物、免疫原性組成物、ワクチンおよび/または予防的処置または治療的処置の方法は、動物に投与するための1つ以上の他のTLRアゴニストを含み得る。好ましくは、1つ以上のTLRアゴニストとしては、TLR4アゴニストおよび/またはTLR9アゴニストが含まれる。
【0126】
好ましいTLR4アゴニストは、リポ多糖(LPS)またはLPSの誘導体もしくは成分である。これらには、サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)由来のモノホスホリル脂質A(MPL(商標))およびリン酸アミノアルキルグルコサミニド(AGP)などの合成TLR4アゴニストが含まれる。好ましいTLR4アゴニストはMPLである。
【0127】
TLR9は、哺乳類DNAから細菌DNAを識別する特定の非メチル化CpGオリゴヌクレオチド(ODN)配列を認識する。CpG ODNオリゴヌクレオチドは、特定の配列コンテキスト(CpGモチーフ)中に非メチル化CpGジヌクレオチドを含む。これらのCpGモチーフは、細菌DNAには哺乳類DNAの20倍の頻度で存在する。刺激性ODNのタイプはすでに記載されている:タイプA、BおよびC。
【0128】
TLR9アゴニストの限定されない例としては、CpG ODN1826、CpG ODN2006、CpG ODN2216およびCpG ODN2336が挙げられるがこれらに限定されない。
【0129】
一般に、医薬組成物、免疫原性組成物、ワクチンおよび/または予防的処置または治療的処置の方法は、本発明の組成物を患者に与えるために使用可能ないずれの安全な投与経路を使用してもよい。例えば、経口、直腸、非経口、舌下、口内、静脈内、関節内、筋肉内、皮内、皮下、吸入、眼内、腹腔内、脳室内、経皮などが使用可能である。例えば、免疫原性組成物、タンパク質性ワクチンおよびDNAワクチンの投与には筋肉内注射および皮下注射が適当である。
【0130】
CMVもしくはEBV感染などのヘルペスウイルス感染および/またはCMVもしくはEBV感染に関連する、もしくはこれらから生じる疾患もしくは病態の処置の方法に関して、本発明は養子免疫療法を企図する。
【0131】
排他的ではないが好ましくは、本発明は、in vitroで産生された自己CTLを用いた養子免疫療法を企図する。
ヘルペスウイルス(例えば、CMVまたはEBV)CTLを増殖させるための現行法は非常に難しく、CMV溶解液かまたは個々のペプチドエピトープのいずれかの使用に基づく場合が多い。
【0132】
本発明の単離されたタンパク質は、広い標的のT細胞応答の増大を補助することにより、これらの従来技術のアプローチのいずれよりも有利であると思われる。
よって、養子免疫療法用のヘルペスウイルス特異的CTLを増殖させる方法は、
(a)動物から単離された1つ以上の細胞を本明細書で開示される単離されたタンパク質と接触させる工程、および
(b)前記1つ以上の細胞を培養し、それにより、前記1つ以上の細胞由来のヘルペスウイルス特異的CTLを増殖させる工程
を含む。
【0133】
さらに、養子免疫療法は、工程(b)で生産された前記ヘルペスウイルス特異的CTLを動物に投与し、それにより、前記動物のヘルペスウイルス感染を予防的にまたは治療的に処置する工程を含む。
【0134】
好ましくは、動物は、ヒトなどの哺乳類である。
一実施形態では、本発明は、
(A)ヒトから単離された1つ以上の細胞を本明細書で開示される単離されたタンパク質と接触させる工程、
(B)前記1つ以上の細胞を培養し、それにより、前記1つ以上の細胞由来のヘルペスウイルス特異的CTLを増殖させる工程、および
(C)前記ヘルペスウイルス特異的CTLを前記ヒトに投与し、それにより、前記動物のヘルペスウイルス感染を予防的にまたは治療的に処置する工程
を含む、ヒトにおける自己養子免疫療法を提供する。
【0135】
特定の実施形態では、ヘルペスウイルスはCMVまたはEBVである。
本発明がより容易に理解できるよう、また、実効下に置けるように、以下、特定の実施形態を下記の限定されない実施例により説明する。
【0136】
実施例
実施例1
CMVポリエピトープタンパク質の精製および免疫原性
材料および方法
CMVポリエピトープベクターの構築
一連のCMVポリエピトープインサートを、5つの異なる抗原(pp65、IE-1、pp50、pp150およびgB)由来の複数のHLAクラスI拘束T細胞エピトープをコードするように設計した。これらのポリエピトープ配列は、13、14、15または20個の異なるHLAクラスI拘束CD8エピトープをコードしていた(表1参照)。
【0137】
ポリエピトープ配列を、各エピトープ配列の前にプロテアソーム遊離アミノ酸配列(ADまたはKまたはR)およびTAP認識モチーフ(RIWRQWNIWまたはNQY)がくるように設計した。さらに、ニッケル-ニトリロ三酢酸(Ni-NTA)カラムを用いた精製が可能となるように、各ポリエピトープタンパク質のC末端にヘキサヒスチジンタグを挿入した。各構築物のアミノ酸配列を大腸菌コドン使用頻度に基づきDNA配列に翻訳し、インサートを合成構築し(DNA2.0、カリフォルニア州、USA)、発現プラスミド(pJexpress 404)のイソプロピル-β-D-チオガラクトピラニシド(IPTG:isopropyl-β-D-thiogalactopyraniside)誘導性プロモーター下にクローニングした。これらの合成設計したポリエピトープ構築物を化学的にコンピテントな大腸菌DH5α(Invitrogen、カールズバッド、CA、USA)に形質転換し、プラスミドを、QIAGEN(登録商標)maxi prepキット(QIAGEN、ヒルデン、ドイツ)を用いて精製した。
【0138】
タンパク質発現
化学的にコンピテントな大腸菌BL21(DE3)pLysS(Invitrogen、カリフォルニア州、USA)をCMVポリエピトープ発現ベクターで形質転換した。形質転換細胞を100μg/mLのアンピシリン(LB-Amp)を添加したルリア-ベルターニ(LB)寒天上に播種し、プレートを37℃で一晩インキュベートした。単離されたコロニーを採取し、10mlのLB-Ampブロスに植え込み、37℃、200rpmのシェーカーで一晩増殖させた。少量の一晩培養物を50mLのLB-Ampブロスに植え込み、12時間増殖させた後、培養物の1%を2LのLB-Ampブロスに移植し、その後、600nmでのO.D.が0.6となるまで増殖させた。CMVポリエピトープタンパク質誘導は、1mM/mLのIPTGを加えることにより行った。これらの細胞をさらに4時間増殖させ、12~15%ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で非誘導サンプルと誘導サンプルを分析することにより、タンパク質発現レベルを決定した。
【0139】
CMVポリエピトープタンパク質精製
誘導期の終了時に、大腸菌培養物を10,000rpmで15分の遠心分離により採取し、細胞ペレットを、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche、マンハイム、ドイツ)を添加した80mLの溶解バッファー(25mM Tris pH7.4、0.5%Triton(登録商標)X100、150mM NaCl、0.5mg/mLリゾチーム)に再懸濁させ、氷上で30分間インキュベートした。細胞溶解は、氷上で4×5分サイクルの音波処理により行い、各サイクル間に10分の中断を設けた。この溶解液を13,000rpmで30分間遠心分離し、上清およびペレット画分を、SDS-PAGEを用いて分析した。タンパク質の大部分はペレット画分中に封入体(IB)の形態で見られたので、IBを、撹拌下、室温で2時間、溶解バッファー(リゾチーム不含)で1回洗浄し、150mLの可溶化バッファー(100mM NaHPO、10mM Tris、8M尿素 pH8.0)中、4℃で一晩、可溶化した。可溶性タンパク質を13,000rpmで30分の遠心分離により清澄化し、上清をポリエピトープタンパク質の精製に用いた。
【0140】
CMVポリエピトープタンパク質を精製するために、本発明者らは、5mLのNi-NTA(QIAGEN、ヒルデン、ドイツ)金属アフィニティークロマトグラフィーマトリックスを用いた。このマトリックスを5カラム容量の蒸留水で洗浄した後、3カラム容量の可溶化バッファーで平衡化した。可溶性タンパク質をこのカラムにロードし、流速を1mL/分に調整した。非結合タンパク質および不純物を10カラム容量の洗浄バッファー1(100mM NaHPO、10mM Tris、8M尿素pH6.3)および20カラム容量の洗浄バッファー2(100mM NaHPO、10mM Tris、8M尿素pH5.9)で洗い流した。結合タンパク質は溶出バッファー(100mM NaHPO、10mM Tris、8M尿素pH4.3)で溶出させ、溶出画分を、SDS-PAGEを用いて分析した。陽性画分をプールし、CMVポリエピトープタンパク質評価は、ブラッドフォードアッセイキット(Bio-Rad、ハーキュリーズ、カリフォルニア州、USA)を製造者の指示に従って用いて行った。精製タンパク質に対して溶解度試験を行い(タンパク質を可溶性形態で保存するために適切なバッファー組成物を特定するため)、ここでは、80μLの精製タンパク質をpH範囲の異なる種々のバッファー組成物800μLで希釈した。これらは、(a)25mM MESバッファーpH5.6;(b)25mM MESバッファーpH3.2;(c)25mM MES pH4.5;(d)25mM MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)pH4.5および400mM L-アルギニン;(e)10mM Trisおよび100mM NaHPO pH4.3;(6)10mM Tris、100mM NaHPOおよび400mM L-アルギニンpH4.3;(f)PBS、50mM L-アルギニンおよび50mM L-グルタミン酸pH7.4;(g)水で希釈;(h)100mMグリシンバッファーpH2を含む。これらのサンプルを4℃で一晩インキュベートし、13,000rpmで25分間遠心分離し、上清画分を、SDS-PAGEを用いて分析した。CMVポリエピトープタンパク質を25mM MESバッファーpH5.6に対して透析した。CMVポリエピトープタンパク質を、Ultracel(登録商標)-10Kスピンカラム(Millipore、コーク州、アイルランド)を用いて濃縮した後、0.22μメンブランフィルターを用いて濾過除菌し、総タンパク質を、BIO-RAD(登録商標)ブラッドフォードタンパク質アッセイキットを用いて評価し、種々の濃度のCMVポリエピトープタンパク質を、SDS-PAGEを用いて分析し、ポリエピトープタンパク質の最終純度を決定した。精製タンパク質は1mlアリコートとして-70℃で保存した。
【0141】
ポリエピトープタンパク質を用いたin vitro刺激および健康ドナー由来CMV特異的T細胞の増殖
健康なウイルス保有者由来の末梢血単核細胞(PBMC)を25μgの精製ポリエピトープタンパク質とともに、37℃、6.5%COにて2時間インキュベートした。インキュベーション後、これらのPBMCを非パルス刺激PBMCと混合し、10%FCSを添加したRPMI 1640培地(増殖培地と称する)に再懸濁させた。これらの細胞を24ウェルプレートで10日間、37℃、6.5%COで培養した。3日目と6日目に、培養物に100Uの組換えIL-2を含有する1mLの増殖培地を添加した。これらのin vitro増殖細胞のT細胞特異性を、標準的なICSアッセイを用いて評価した。さらに、マルチパラメータフローサイトメトリーを用い、これらの培養物中のT細胞の多機能的能力も評価した。
【0142】
ヒト細胞によるCMVポリエピトープタンパク質由来CD8T細胞エピトープのプロセシングおよび提示の分析
エプスタイン・バーウイルス(EBV)で形質転換したLCLおよびHEK 293細胞を、これらのアッセイにおける抗原提示細胞として使用した。これらの細胞を37℃、6.5%COにて2時間、25~100μgのCMVポリエピトープタンパク質でパルス刺激した後、RPMI 1640培地で2回洗浄し、増殖培地に再懸濁させ、37℃、6.5%COで一晩インキュベートした。一晩のインキュベーション後、抗原提示細胞を、37℃、6.5%COで4時間、応答細胞と刺激細胞の比を4:1としてCMV特異的T細胞に曝し、ICSアッセイを用いてT細胞のサイトカイン発現を評価した。
【0143】
酵素阻害アッセイ
CMVポリエピトープタンパク質のプロセシングに関与する種々のプロテアーゼの役割を評価するために、LCLを様々な阻害剤で前処理した後に抗原提示細胞として使用した。これらの阻害剤は、リソソーム/エンドソーム酸性化の阻害(80μMクロロキンおよび10mMバフィロマイシンA1)、リサイクル経路の阻害(200μMプリマキン)、システインプロテアーゼの阻害(100μMロイペプチンおよび100μM E64)、酸性プロテアーゼの阻害(ペプスタチンA)、自己貪食メディエーターの阻害(10mM 3-メチルアデニン(3-MA))、プロテアソーム複合体の阻害(10μMラクタシスチン、1μMエポキソミシンおよびMG132)、ゴルジ輸送の阻害(1μg/mLブレフェルジンAおよび0.7μg/mLモネンシン)またはアミノペプチダーゼ酵素の阻害(0.5mMジチオトレイトール(DTT)を含む30μMロイシンチオール)を特異的に標的とするものであった。これらの阻害剤で前処理した後、細胞を25μgのCMVポリエピトープタンパク質とともに、37℃、6.5%COで2時間インキュベートし、RPMI 1640培地で2回洗浄し、増殖培地に再懸濁させ、37℃、6.5%COで一晩インキュベートした。一晩のインキュベーション後、細胞を37℃、6.5%COで4時間、応答細胞と刺激細胞の比を4:1としてCMV特異的T細胞に曝し、ICSアッセイを用いてT細胞のサイトカイン発現を評価した。
【0144】
短鎖ヘアピンRNA(shRNA)を用いたAtg12またはSec61のサイレンシング
ATG12 shRNA(クローンID NM_004707.2-485s1c1、CCGGTGTTGCAGCTTCCTACTTCAACTCGAGTTGAAGTAGGAAGCTGCAACATTTTT;配列番号59)またはSec61 shRNA(クローンID NM_006808.2-410s1c1、CCGGCCCAACATTTCTTGGACCAAACTCGAGTTTGGTCCAAGAAATGTTGGGTTTTTTG;配列番号60)をコードするレンチウイルスに基づくベクターを大腸菌宿主においてSigma-Aldrichから入手した。shRNAをコードするプラスミドを、ラージスケールプラスミド精製キット(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)を用いて精製した。shRNAベクターまたは対照ベクター(pLKO.1puro)をパッケージングベクターpHR8.2ΔRおよびエンベロープベクターpCMV-VSV-G(水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質G)とともにコトランスフェクションすることにより、HEK293T細胞内でレンチウイルスを産生させた。トランスフェクション48時間後および72時間後に、レンチウイルス含有上清を採取し、0.45μmで濾過し、-80℃で保存した。形質導入は、3×10個のCEM.T1、CEM.T2細胞またはLCLを1mLのレンチウイルス含有上清に再懸濁させ、32℃にて800gで30分間遠心分離することによって行った。形質導入の48時間後にピューロマイシン(1μg/mL)を加えた。完全なノックダウンを生じさせるために、10日目に細胞に同じレンチウイルスベクターを再感染させ、形質導入の5~7日後に細胞を以降のアッセイに用いた。
【0145】
ウエスタンブロット法
ウエスタンブロット解析は従前に記載されている通りに行った(Ausubel 1995)。簡単に述べれば、レンチウイルスshRNA感染細胞をPBSで洗浄し、氷上にて製造者の指示に従い、RIPAバッファー(Thermo Scientific、ロックフォード、IL、USA)で溶解させた。DCタンパク質アッセイキット(Bio-Rad laboratories、ハーキュリーズ、CA、USA)を用いてタンパク質を定量した。溶解液をSDS-PAGEローディングバッファーと混合し、12~15%のSDS-PAGEゲル上で分離した後、Mini Trans-Blot装置(Bio-Rad、CA、USA)を用い、予め冷却した転写バッファー(20%メタノールを含有する1×Tris-グリシンバッファー)中、100Vで1時間、ニトロセルロース膜に転写した。転写後、ニトロセルロース膜を洗浄バッファー(0.05%V/V Tween(登録商標)-20を含有するPBS)で3回洗浄し、次いで、シェーカー上で、ブロッキングバッファー(5%スキムミルクを含有するPBS)中、室温で1時間インキュベートした。この膜をシェーカー上、4℃で一晩、ウサギ抗Sec61(Thermo Scientific、オーストラリア)またはウサギ抗ATG12(Cell Signaling Technology、ダンバース、MA)一次抗体溶液(ブロッキングバッファーで希釈)中でインキュベートした。膜を洗浄バッファーで各回10分間6回洗浄した後、セイヨウワサビペルオキシダーゼに結合させたヒツジ抗ウサギ(Chemicon、オーストラリア)二次抗体(ブロッキングバッファーで希釈)とともに室温で1時間インキュベートした。このニトロセルロース膜を洗浄バッファーで洗浄し、ECL試薬(Merck、ダルムシュタット、ドイツ)とともにインキュベートし、タンパク質をX線フィルム上に可視化した。
【0146】
統計分析
統計分析は、グラフパッドソフトウエアまたはマイクロソフト(登録商標)・オフィス・エクセル2007を用いて行った。CD8T細胞応答について、平均±SDを算出し、スチューデントのt検定を用いてp値を決定した。エラーバーはS.E.M.を表す。**および***で示される場合は、対照と比較した際のそれぞれp<0.05、p<0.01およびp<0.001での統計学的有意性を表す。
【0147】
結果
CMVポリエピトープタンパク質の精製および特性評価
13、14、15または20個の最小CD8T細胞エピトープをコードするCMVポリエピトープインサートを、図1に概略を示すように設計した。これらの各ポリエピトープ配列に含まれるCMVエピトープの総覧を表1に示す。これらのCMVポリエピトープ構築物を大腸菌に形質転換し、タンパク質発現条件を最適化し、SDS-PAGEで分析した。これらの実験から得られた結果は、CMVポリエピトープタンパク質(13、14、15および20マー)が37℃、IPTG誘導プロモーター下で細菌発現系を用いて上手く発現できることを示した(図2AおよびB)。直鎖CD8T細胞エピトープの疎水性のため、CMVポリエピトープタンパク質は封入体(IB、データは示されていない)の形態で凝集されていた。これらのIBを可溶化し、13、14または15個のエピトープをコードする構築物由来のCMVポリエピトープタンパク質を、Ni-NTAマトリックスを用いて精製した。この一段階精製プロセスは、本発明者らにこれらのCMVポリエピトープタンパク質を均質となるまで精製することを可能とした(図3A~C)。しかしながら、CMVポリエピトープ20マーの精製は、8M尿素および6M塩酸グアニジンの2種類の異なる変性剤を使用したにもかかわらず、IBを上手く可溶化できなかった。CMVポリエピトープの可溶化の後、この20マータンパク質はペレット画分に残り、溶出画分にはタンパク質は検出されなかった(図3D)。維持に適合するバッファー系を特定するための溶解度試験から得られたデータは、CMVポリエピトープタンパク質が可溶性を維持するために酸性pHのMESバッファーまたはグリシンバッファーを必要とすることを示した(図4A)。CMVポリエピトープ精製の後、種々の濃度のタンパク質をSDS-PAGEで分析して完全性を確認した。図4B~Dに示されるデータは、最少の不純物を示し、組換えポリエピトープタンパク質の分子量はおよそ19、21および25kDaであり、これらはそれぞれ13、14および15マーポリエピトープの理論的に計算された分子量と一致していた。この一段階精製工程は、本発明者らに2Lの培養物から80mgの13マー、4mgの14マーおよび15mgの15マータンパク質を得ることを可能とした。
【0148】
ポリエピトープタンパク質で刺激した後のPBMCからのCMVエピトープ特異的CD8T細胞のex vivo増殖
CMVポリエピトープタンパク質の免疫原性を評価するために、本発明者らは、種々のHLA型のCMV血清陽性ドナーのPBMCを用いてCMV特異的CD8T細胞を増殖させるいくつかのin vitro実験を行った。健康なドナー由来のPBMCをex vivoにて精製CMVポリエピトープタンパク質で刺激した後、ICSアッセイにより抗原特異性を評価し、ex vivo応答と比較した。これらの実験から得られたデータは、13、14および15マーのCMVポリエピトープタンパク質は、そのポリエピトープ中に含まれるエピトープに特異的なCMV特異的CD8T細胞の迅速な増殖を誘導したことを示した(図5A)。ほとんどの場合で、優勢なCD8T細胞応答は、CMVポリエピトープ中に含まれる複数のエピトープに対するものであった。例えば、図5Aに示されるデータは、個々のドナーPBMC由来の複数のエピトープに対するCMV特異的CD8T細胞のパーセンテージに著しい増加を示す。さらに、本発明者らはまた、CMVポリエピトープ内の全てのエピトープがPBMCからCMV特異的CD8T細胞を増殖させる能力があり、これらの応答は全CD8T細胞の2~40%の範囲であったことも示した(図5Bおよび5C)。特に注目されるものはQIKエピトープであり、これは本発明者らのin vitro増殖試験が、ポリエピトープタンパク質で刺激した後にこのエピトープに特異的なT細胞が増殖され得ることを示したからである(図5B)。これに対して、QEF特異的T細胞では最少の増殖が見られ、このエピトープはヒト細胞により効率的にプロセシングされない可能性があることが示唆される。これらの結果は、ポリエピトープタンパク質中に含まれるCD8T細胞エピトープがヒト細胞により効率的にプロセシングおよび提示され得ること、およびヒトPBMCのポリエピトープタンパク質による感作がCMV特異的T細胞の迅速な増殖を誘導することを明らかに示す。
【0149】
ポリエピトープタンパク質で刺激した後に増殖したCD8T細胞は多機能的プロファイルを示す
報告されている多くの証拠が、多機能的CD4およびCD8T細胞応答がある範囲のウイルスおよび微生物病原体に対する防御を提供する上で重要であることを示唆している(Betts,Gray et al.2006;Darrah,Patel et al.2007;Millington,Innes et al.2007)。さらに、CMVに関して、多機能的CD8T細胞は肝臓移植後の高レベルのウイルス複製に対して防御する(Nebbia,Mattes et al.2008)。これらの所見は、多機能的CD8T細胞応答が有力なCMVワクチンの開発の必要条件であることを明らかに強調する。本発明者らの続いての実験で、本発明者らは、ポリエピトープタンパク質により増殖したCMV特異的CD8T細胞のエフェクター機能を分析した。これらの分析は、これらのエフェクター細胞が細胞溶解機能を遂行し(CD107a動員)、複数のサイトカイン(IFN-γ、TNFおよびMIP-1β)を発現する能力を評価するように設計された。これらの分析の1つからの代表的データを図6に示す。ポリエピトープによって増殖したCMV特異的CD8T細胞の大部分は強い細胞溶解機能(CD107a動員により示される)を示し、複数のサイトカイン(IFNγ、TNFおよびMIP1β)を発現した。
【0150】
リンカーを用いた場合および用いない場合のCMVポリエピトープ構築物の合理的設計、タンパク質発現および精製
ポリエピトープタンパク質のプロセシングおよび提示におけるスペーサー配列の厳密な役割を示すために、本発明者らは、プロテアソームリンカーを用いずに(CMVポリ)、また用いて(CMVポリ-PL)、13個の最小のCD8T細胞エピトープをコードするように設計した(図7Aおよび7B)。CMVポリエピトープ構築物を大腸菌に形質転換し、タンパク質発現条件を最適化し、ポリエピトープタンパク質を、Ni-NTAクロマトグラフィーを用いて精製した。これらの実験から得られた結果は、CMVポリおよびCMVポリ-PLの両方が細菌発現系を用いて上手く発現され、均質となるまで精製できたことを示した。
【0151】
リンカーを用いた場合および用いない場合のCMVポリエピトープタンパク質の免疫原性のin vitro評価
CMVポリ、CMVポリ-PLおよびCMVポリ-PTLタンパク質のプロセシングおよび提示を検討するために、本発明者らは、ヒトリンパ芽球様細胞株(LCLs:lymphoblastoid cell lines)を一晩CMVポリ、CMVポリ-PLおよびCMVポリ-PTLとともにインキュベートした後、細胞内IFN-γ分析を用い、CMV特異的T細胞パネルの活性化を評価した。図8Aに示される代表的なFACSプロットは、CMVポリ-PLまたはPTL由来のHLA A2拘束NLV(pp65)、HLA A1拘束VTE(pp50)、HLA B7拘束RPHおよびTPR(pp65)エピトープは、CMVポリでパルス刺激されたLCLに比べ、効率的にプロセシングされ、CMV特異的T細胞に提示されたことを示す。より重要なことに、CMV特異的T細胞の活性化は、CMVポリに比べてCMVポリ-PLまたはCMVポリ-PTLでパルス刺激したLCLで刺激した後に有意に高かった(図8B)。これらのデータを考え合わせると、外因的に送達されたポリエピトープタンパク質のプロセシングおよび抗原特異的CD8T細胞への提示を増強させるためには、エピトープ間にプロテアソームリンカーおよび/またはTAPリンカーを必要とすることが示される。
【0152】
ポリエピトープタンパク質由来のCD8T細胞エピトープはTAP非依存的経路を介して交差提示されるが、プロテアソームおよび自己貪食依存的経路も関わる
次の一連の実験で、外因的に付加されたポリエピトープタンパク質由来のCD8T細胞エピトープのプロセシングおよび提示の厳密な経路を示すために、本発明者らはポリエピトープタンパク質をTAP(CEM.T1)およびTAP(CEM.T2およびCEM.T2-HLA B7)LCL中でパルス刺激した後、これらの細胞をCMV特異的T細胞に曝した。図9に示されるデータは、TAPB細胞およびTAPB細胞の両方がポリエピトープタンパク質由来のCD8T細胞エピトープを効率的に提示することができることを示す。ポリエピトープ提示の機序を示すために、本発明者らは、抗原提示細胞としてCEM.T1およびCEM.T2細胞を用いてHLA A2拘束NLV特異的CD8T細胞を刺激した。これらの抗原提示細胞をまずリソソーム/エンドソーム酸性化の阻害剤(クロロキンおよびバフィロマイシンA1)、リサイクル経路の阻害剤(プリマキン)、システインプロテアーゼの阻害剤(ロイペプチンおよびE64)、および酸性プロテアーゼの阻害剤(ペプスタチンA)で前処理し、次に、ポリエピトープタンパク質でパルス刺激した。図10Aに示されるデータは、ポリエピトープタンパク質の提示を遮断するというよりもむしろ、リソソーム、リサイクル経路およびシステインプロテアーゼ阻害剤が、ポリエピトープタンパク質でパルス刺激されたCEM.T1細胞および/またはCEM.T2細胞のT細胞認識を有意に高めたことを示す。これらの所見は、ロイペプチン、E64またはペプスタチンAによる前処理が、ポリエピトープタンパク質内のCD8T細胞エピトープをシステインプロテアーゼおよび酸性プロテアーゼによる分解から保護し得ることを示唆する。予期しないことに、クロロキンとバフィロマイシンA1は、ポリエピトープタンパク質の交差提示に対して反対の作用を示した。クロロキンはCEM.T2細胞における抗原提示を高めたが、バフィロマイシンA1による前処理は、ポリエピトープでパルス刺激した抗原提示細胞のT細胞認識を有意に低下させた(図10A)。従前の研究では、バフィロマイシンA1は空胞型H+ATPアーゼの強力かつ特異的な阻害剤でもあり、オートファゴソームとリソソームの間の融合を阻害することによって自己貪食空胞の成熟を妨げることが示されている。ポリエピトープタンパク質プロセシングが自己貪食経路を含み得るかどうかを調べるために、本発明者らは、抗原提示細胞をPI3K阻害剤である3-メチルアデニン(3-MA)で前処理した後、CMV特異的T細胞に曝した。図10Aに示されるデータは、3-MA処理がポリエピトープタンパク質由来のCD8T細胞エピトープの提示も果たしたことを示す。これらの所見は、ポリエピトープタンパク質の交差提示が自己貪食依存的経路を介する可能性があることを示唆する。
【0153】
次の一連の実験で、本発明者らは、ポリエピトープタンパク質の交差提示におけるプロテアソーム複合体の潜在的役割を検討した。CEM.T1およびCEM.T2細胞をプロテアソーム阻害剤であるラクタシスチン、エポキソミシンおよびMG132で前処理した後、ポリエピトープタンパク質でパルス刺激した。次に、これらの細胞のCD8T細胞エピトープの提示を評価した。図10Bに示されるデータは、3種類のプロテアソーム阻害剤の全てが、ポリエピトープタンパク質由来のCD8T細胞エピトープの提示を完全に遮断したことを示す。CD8T細胞エピトープの提示は免疫プロテアソームの発現に依存せず、これはタンパク質分解複合体のこれらの成分を発現しないCEM.T2細胞がポリエピトープタンパク質由来のCD8エピトープを効率的に処理できるためであることに留意することが重要である。本発明者らは次に、ポリエピトープタンパク質由来のCD8T細胞エピトープの提示における分泌経路および小胞体アミノペプチダーゼの潜在的役割に着目した。図10Cに示されるデータは、ブレフェルジン-Aおよびモネンシンでの前処理はCD8T細胞への提示を有意に遮断したが、ロイシンチオール処理はCEM.T1およびCEM.T2細胞のT細胞認識に対して最小の効果しか示さなかったことを示す。これらの結果は、ポリエピトープタンパク質は、不適切に折り畳まれたERタンパク質を分解する逆輸送経路を含み得るプロテアソーム依存性のER非依存的経路を介してプロセシングされることを示唆する。
【0154】
ポリエピトープの交差提示における逆輸送および自己貪食を介する経路の影響をさらに解明するために、CEM.T1およびCEM.T2細胞に、Sec61βサブユニット遺伝子とATG12(自己貪食レギュレーター12)遺伝子のサイレンシングのためのshRNAを発現するレンチウイルスを感染させた。図11A~Cに示されるデータは、shRNAの発現はSec61βサブユニットの発現を劇的に減少させたが、この発現の欠如はポリエピトープタンパク質由来のT細胞エピトープの提示に最小の効果しか示さなかったことを示す。これに対して、CEM.T1細胞およびCEM.T2細胞の両方でATG12発現のダウンレギュレーションは、CMVポリエピトープタンパク質に感作した細胞の認識を有意に低下させた。これらの所見を考え合わせると、ポリエピトープタンパク質の交差提示はプロテアソーム経路と自己貪食経路の両方を含む新規な経路を介して起こることが示される。
【0155】
実施例2
アジュバントと組み合わせたCMVポリエピトープタンパク質の免疫原性
材料および方法
MPLおよびCpG ODN1826を含むCMVポリエピトープワクチン製剤
CMVポリエピトープワクチンを、100μL容量中、一用量当たり20μgのCMVポリ、CMVポリ-PLまたはCMVポリ-PTLと25μgのMPL(TLR4アゴニスト)および50μgのCpG ODN1826(TLR9アゴニスト)を混合することにより調剤した。TLRアゴニストはInvivoGen(サンディエゴ、CA、USA)から購入した。
【0156】
マウスの免疫
マウスMHCクラスIが破壊されたヒトHLA-A0201を含有するHHD Iマウスを育成し、QIMRにて特定病原体不在条件下で維持した。全てのプロトコールはQIMR動物倫理委員会に準拠した。各群、少なくとも5個体(M1~5)の6~8週齢マウスに、上記に明示したアジュバントの組合せで調剤したCMVポリエピトープワクチンで、尾の基部から皮下(s.c.)免疫を施した。21日目に同じワクチン製剤でマウスに追加免疫を施し、35日目にマウスを屠殺し、細胞内サイトカイン染色(ICS:intracellular cytokine staining)アッセイを用いてポリエピトープ特異的CD8T細胞応答を測定した。
【0157】
脾細胞の調製
マウスをCO窒息により屠殺し、3mLのマウスT細胞培養培地(10%FBS、100IU/mLペニシリン、200μg/mL硫酸ストレプトマイシン、β-メルカプトエタノール、非必須アミノ酸およびピルビン酸ナトリウムを添加したDMEM)中に脾臓を採取した。シリンジのプランジャーで脾臓を穏やかにすりつぶすことによって単細胞懸濁液を調製した。細胞を1200rpmで5分間遠心分離し、3mLの塩化アンモニウムおよびTrisバッファー(0.89%塩化アンモニウム中0.017MのTris塩基、pH7.4)に再懸濁させた後、室温で5分間インキュベートして赤血球を除去した。細胞を遠心分離し、2%FBSを含有するPBSで2回洗浄し、5mLのマウスT細胞培養培地に再懸濁させた。余分な組織および細胞残渣を除去するために、最終細胞懸濁液を70μMのセルストレーナー(Becton Dickinson、サンディエゴ、USA)で濾過した。その後、トリパンブルー排除法を用いて細胞生存率を求めた。
【0158】
免疫マウス由来のCMV特異的T細胞のin vitro刺激および増殖
ワクチン接種マウス由来のおよそ5×10個の脾細胞を、100μlのマウスT細胞培養培地中、37℃、6.5%COで2時間、1μgのHLA A2拘束NLVおよびVLEペプチドで刺激した。インキュベーション後、1mLのマウスT細胞培養培地を加え、細胞を24ウェルプレートに移し、37℃、6.5%COで10日間培養した。3日目と6日目に、培養物に、100Uの組換えIL-2を含有する1mLのT細胞培養培地を補給した。これらのin vitro増殖細胞のT細胞特異性を、標準的なIFN-γ ICSアッセイを用いて評価した。さらに、これらの培養物中のT細胞の多機能的能力も、マルチパラメータフローサイトメトリーを用いて評価した。
【0159】
細胞内サイトカイン染色によるマウスT細胞におけるIFN-γ応答の評価
NLVおよびVLEによるin vitro刺激の後、50μLのマウスT細胞培養培地中のおよそ2×10個のマウス脾細胞を、必要なウェルに加えた。これらの細胞を刺激するために、各ウェルに0.2μgのNLVおよびVLEペプチドを加え、次いで、0.3μLのブレフェルジンA(BD Pharmingen、サンディエゴ、CA)を含有する150μLのDMEMを加え、37℃、10%COで4時間インキュベートした。2%FCSを含有するPBS(洗浄バッファー)で細胞を2回洗浄し、洗浄バッファーに再懸濁させたAPC結合抗CD3、FITC結合抗CD4およびPerCP-Cy5.5結合抗CD8モノクローナル抗体で表面染色し、4℃で30分間インキュベートした。細胞を洗浄バッファーで2回洗浄し、100μL/ウェルのCytofix/Cytopermで固定し、Perm/洗浄バッファーで2回洗浄した。次いで、細胞を4℃で30分間、PE結合抗IFN-γモノクローナル抗体で細胞内染色し、細胞をPerm/洗浄バッファーで2回洗浄し、BD FACSCanto IIに採取した。
【0160】
マルチパラメトリックフローサイトメトリーによるワクチン接種マウスの免疫応答の評価
ワクチン接種後、前述のようにex vivoにて脾細胞を刺激した。細胞を4℃で30分間、FITC結合抗CD4およびPerCP-Cy5.5結合抗CD8で表面染色した。洗浄、固定および透過処理の後、細胞をPE結合抗IFN-γ、PE-Cy7結合抗TNFおよびAPC結合抗IL2抗体で細胞内染色した。細胞をBD FACSCanto IIに採取し、FlowJoソフトウエアおよびBooleanゲート分析を用いてデータを解析した。
【0161】
結果
最初の研究で、CMVによりコードされている糖タンパク質B(gB)とポリエピトープタンパク質に基づくサブユニットワクチン製剤を、ヒト適合性TLRアゴニストと組み合わせて試験した。ポリエピトープタンパク質は、CMVの異なる抗原に由来する複数の最小HLAクラスI拘束CD8T細胞エピトープを含んでいた。このサブユニットワクチンは、持続的抗ウイルス抗体、Th1 CD4およびCD8T細胞応答を生じさせた。このワクチンにより誘導された体液性免疫応答は強い中和能を示し、抗原特異的T細胞は、長期記憶維持を伴う複数のサイトカインを発現した。さらに、このサブユニットCMVワクチンは、TLR4およびTLR9の活性化を介して、抗原特異的T細胞の活性化に重要な役割を果たすIL12p70、IFN-α、IL-6およびTNF-αを発現する異なる樹状細胞(DC)サブセットを活性化した。
【0162】
リンカーを用いた場合および用いない場合のCMVポリエピトープタンパク質の免疫原性のin vivo評価
CMVポリ、CMVポリ-PLおよびCMVポリ-PTLの免疫原性を決定するために、本発明者らは、次に、TLR4およびTLR9アゴニストと組み合わせた場合のポリエピトープタンパク質の免疫原性を評価した。ヒトHLA A2 MHCクラスI対立遺伝子を発現するHHD-IトランスジェニックマウスをCMVポリ、CMVポリ-PLまたはCMVポリ-PTLで免疫した。ワクチン接種後、脾細胞をin vitroにてHLA A2拘束NLVおよびVLEペプチドで刺激した。in vitroで刺激した脾細胞におけるCMVポリエピトープ特異的応答の確立を分析するため、細胞内IFN-γアッセイを用い、CMVポリ特異的(HLA A2拘束エピトープNLVおよびVLE)CD8T細胞の存在を評価した。興味深いことに、in vitroデータと一致して、CMVポリ-PLまたはCMVポリ-PTLワクチン製剤で免疫したマウスは、CMVポリワクチン製剤で免疫したマウスに比べて、有意に高い頻度のCMVポリエピトープ特異的CD8T細胞を誘導した(図12A)。さらに、T細胞に基づくワクチンの防御有効性は多機能エフェクターの頻度に相関するという実質的な証拠がある。従って、続いての実験で、本発明者らは、CMV特異的CD8T細胞応答の機能の質を評価した。免疫マウス由来の脾細胞のin vitro増殖後、マルチパラメトリックフローサイトメトリーを用いてIL-2、TNFおよびIFN-γ産生のパターンを決定した。図12Bに示されるデータは、CD8T細胞がより高度な多機能性を示し、最も重要なこととしては、より高い頻度のCD8T細胞は、CMVポリワクチンよりもCMVポリ-PLまたはCMVポリ-PTLで免疫されたマウスのIFN-γおよびTNF産生細胞であったことを明らかに示す。これらの所見を考え合わせると、TLR4アゴニストおよびTLR9アゴニストの両方をアジュバントとしたCMVポリ-PLまたはCMVポリ-PTLに基づくCMVワクチン製剤が、多機能的能力を有するCMV特異的CD8T細胞を誘導する上で最も効果的であったことが明らかに示される。
【0163】
考察
新たに出現した証拠は、健康なCMV血清陽性個体におけるCMV特異的CD8T細胞の応答が、複数のCMV抗原、主としてpp65およびIE1に向けられるだけでなく、他の構造的初期/後期抗原および免疫調節剤(pp28、pp50、pp150、IE2 gH、gB、US2、US3、US6およびUL18)にも向けられるということを示唆している(Elkington,Walker et al.2003;Elkington,Shoukry et al.2004;Manley,Luy et al.2004;Khan,Bruton et al.2005;Sylwester,Mitchell et al.2005)。これらのCD8T細胞の応答は、動物モデルならびにヒトの両方において、CMVの免疫性、ウイルス複製の制御および進行性感染の臨床症状の予防に重要な役割を果たす(Quinnan,Kirmani et al.1982;Rook,Quinnan et al.1984;Reddehase,Weiland et al.1985)。これらの所見は、複数の抗原に対してT細胞応答を誘導し得るCMVに対するワクチンがCMV関連疾患に対する防御を強化する可能性があることを示す。従って、複数の抗原を標的とするために、特に、CD8T細胞応答を誘導するために、この研究で本発明者らは、新規な組換えに基づくポリエピトープワクチン技術を提案した。ポリエピトープに基づくワクチンは、未知の特性または病原性を含む可能性のある全長抗原を使用せずに、いくつかの抗原に由来する保存されている多様なエピトープに対して免疫応答を誘導するための有力なアプローチを提供する。
【0164】
異なる人種集団内のいくつかの抗原に対するCMV特異的CD8T細胞応答を増強するために、複数のHLAクラスI拘束T細胞エピトープを共有結合的に連結することにより、一連のCMVポリエピトープタンパク質(13マー、14マー、15マーおよび20マー)を設計した。CMVポリエピトープ構築物内の選択されたエピトープは、pp65、pp50、pp150、DNアーゼ、およびIE-1を含め、保存性の高いCMVの複数の抗原に由来した(Brytting,Wahlberg et al.1992;Retiere,Imbert et al.1998;Solache,Morgan et al.1999)。CMVポリエピトープの免疫原性を増強するために、選択されたCD8T細胞エピトープを、各エピトープのカルボキシル末端においてプロテアソーム遊離アミノ酸配列(ADまたはKまたはR)およびTAP(抗原プロセシング関連輸送体)認識モチーフ(RIWRQWNIWまたはNQY)からなるリンカー配列を用いて相互に連結した。これに関して、公開されているデータは、ポリエピトープタンパク質のプロテアソームプロセシングを提供するためのアミノ酸残基(Ishioka,Fikes et al.1999;Kuttler,Nussbaum et al.2000;Livingston,Newman et al.2001)およびTAP認識のためのモチーフの使用が、プロテアソームにより生成されたペプチドを小胞体(ER)に輸送するために必要であることを示す(Uebel,Wiesmuller et al.1999;Bazhan,Karpenko et al.2010)。3マー、14マーおよび15マーのCMVポリエピトープタンパク質は、大腸菌において組換えタンパク質として上手く発現され、Ni-NTAクロマトグラフィーを用いて精製された。しかしながら、CMVポリエピトープを20マーとする本発明者らの試みは、その高い疎水性のために上手くいかなかった。最適化されたタンパク質発現条件および精製プロトコールは一貫していた。およそ2Lの振盪フラスコ培養により、実質的量のポリエピトープタンパク質が得られた。
【0165】
次に、本発明者らは、健康なドナーPBMCを刺激してCMVエピトープ特異的CD8T細胞の頻度を高めることにより、in vitro実験において、CMVポリエピトープタンパク質の免疫原性を試験した。これらの研究からのデータは、これらのCMVポリエピトープタンパク質が、健康なウイルス保有者においてCMV特異的CD8T細胞応答を生じさせる上で極めて有効であることを明らかに示した。興味深いことに、本発明者らの結果は、複数のCMVペプチド特異的CD8T細胞応答を同時に増幅することの実現可能性を示し、これらの増殖したCD8T細胞は、ポリエピトープタンパク質による刺激の後に、CMV特異的CD8T細胞によるIFN-γ、TNF、MIP-1βおよびCD107aの強い発現を示した。これらのT細胞の機能的特性は、T細胞媒介性免疫応答およびウイルスクリアランスの有効性を予測するために極めて重要である[(Seder,Darrah et al.2008)に総説]。健康なドナーからのウイルス特異的CD8T細胞の増殖に加え、本発明者らはまた、ヒトB細胞(LCL)および上皮細胞(HEK293)を用いてポリエピトープタンパク質の免疫原性も試験した。これに関しては、CMVポリエピトープによりコードされているHLA拘束エピトープの大部分はプロセシングされ、抗原特異的T細胞に効率的に提示され、ポリエピトープタンパク質の、MHCクラスI経路を介した提示のためにエピトープを送達する傾向が確認された。
【0166】
多くの研究が、外因性タンパク質がどのようにインターナリゼーションを受け、プロセシングされ、MHCクラスI分子によって抗原提示細胞上で提示されるかを示しているが、外因的に付加されたポリエピトープタンパク質のプロセシングおよび抗原提示細胞による提示はまだ報告されていない。一般に、樹状細胞による外因性抗原の交差提示は、3つの異なる経路を用いて機能することが示されている。提案される第一のモデルは、プロテアソーム依存性プロセシングのために外因性抗原をファゴ-エンドソームからサイトゾルへ輸送する間接的経路を使用する。プロセシングされたペプチドは次に古典的MHCクラスI機構により小胞体に積載される(Huang,Bruce et al.1996)。第二のモデルは、直接的プロテアソーム依存的経路であり、これにより、抗原はプロセシングされ、エンドソームコンパートメント内のMHCクラスIに完全に積載される(Shen,Sigal et al.2004)。
【0167】
提案される第3のモデルは、エンドサイトーシスオルガネラへの小胞体成分の送達または入ってくる抗原の小胞体への輸送を利用する(Guermonprez,Saveanu et al.2003;Houde,Bertholet et al.2003)。実際に、有効なワクチンの開発、癌に対する免疫療法、ならびに自己免疫を回避するための自己抗原に対する免疫寛容において、ナイーブCD8T細胞への外因性抗原の交差提示は、細胞傷害性T細胞応答の誘導の必要条件である(Rock and Shen 2005)。従って、本発明者らは、どのCMVポリエピトープによる経路が、抗原提示の異なる段階に関与する様々な化学阻害剤の存在下でCEM.T1およびCEM.T2細胞によりプロセシングされ、交差提示されたかを解明した。
【0168】
本発明者らの結果は、ポリエピトープが、TAP非依存的、プロテアソームおよび自己貪食依存的経路でペプチドに分解されることを明らかに示す。プロテアソーム阻害剤および自己貪食阻害剤で処理したCEM.T1細胞およびCEM.T2細胞は両方ともCD8T細胞エピトープの効果的な提示を妨げたが、リソソーム阻害剤、リサイクル経路阻害剤、システインプロテアーゼ阻害剤、酸性プロテアーゼ阻害剤および小胞体アミノペプチダーゼ阻害剤を用いた場合には提示が増強された。さらに、本発明者らは、ブレフェルジンAおよびモネンシンで処理した後に、CEM.T1およびCEM.T2によるCD8T細胞エピトープの提示が低下することも見出した。これらの阻害剤は新たに合成されたMHC I分子の細胞表面への輸送を遮断することが知られているので、この効果はCD8T細胞エピトープの提示に対する間接的効果である可能性がある。
【0169】
CD8T細胞エピトープのプロセシングおよび提示はプロテアソーム阻害剤によって遮断されたがER阻害剤によっては遮断されなかったことから、本発明者らは、CD8T細胞エピトープ提示が、外因性抗原がファゴソームにインターナライズされ、次に、Sec61チャネルを介してサイトゾルへ送達され、プロテアソームによりオリゴペプチドに分解され、その後、ER内のMHCクラスI分子へと輸送されるという、逆輸送経路を介したものであったとの仮説を立てた(Ackerman,Giodini et al.2006;Rock 2006)。しかしながら、CEM.T1およびCEM.T2におけるSec61βサブユニットタンパク質のノックダウンはCD8T細胞エピトープの提示に効果が無く、このことは、逆輸送経路がポリエピトープによりコードされているCD8T細胞エピトープのプロセシングおよび提示には関与しない可能性があることを示す。
【0170】
本発明者らはポリエピトープタンパク質のプロセシングにおける逆輸送経路の証拠を見出すことはできなかったが、本発明者らは、ATG12のノックダウン後の自己貪食経路の役割に証拠を見出した。ATG12はユビキチン様修飾因子であり、別の自己貪食レギュレーターATG5とのその共有結合は、自己貪食の形成および伸長に不可欠な役割を果たす(Mizushima,Noda et al.1998;Mizushima,Sugita et al.1998)。従って、本発明者らは、ポリエピトープタンパク質由来のCD8T細胞エピトープは、新規なTAP非依存的、プロテアソームおよび自己貪食依存的経路を介してCEM.T1およびCEM.T2細胞によりプロセシングされ、提示されると結論づける。
【0171】
この経路をこれまでに提案されている交差提示モデルと一致させるのは難しいが、報告されている証拠は、プロテアソーム経路と自己貪食経路の間の協調が細胞内のタンパク質の質的制御に不可欠であることを示唆している(Ding,Ni et al.2007)。さらに、プロテアソームおよび自己貪食依存的経路が交差提示に関して報告されたことはないが、内因的に過剰発現されるタンパク質の分解に関与することが示されている(Webb,Ravikumar et al.2003)。
【0172】
よって、これらの所見に基づき、本発明者らは、ポリエピトープタンパク質が新規なプロテアソームおよび自己貪食依存的経路を介してプロセシングされ、提示されると推測する。要約すると、ポリエピトープタンパク質は、原核生物発現系を用いて組換えタンパク質として安定な形態で発現させることができる。これらのポリエピトープタンパク質は免疫原性が高く、抗原提示細胞による交差提示の際に、プロテアソームおよびオートファゴソーム依存的経路に優先的に接近する可能性がある。
【0173】
実施例3
アジュバントと組み合わせたEBVポリエピトープタンパク質の免疫原性
材料および方法
EBVポリエピトープ構築物の構築
EBVポリエピトープを、9種の異なる抗原(BMLF1、BRLF1、BZLF1、LMP2、LMP2a、EBNA1、EBNA3A、EBNA3BおよびEBNA3C)由来の複数のHLAクラスI拘束T細胞エピトープをコードするように設計した。エピトープHLA拘束、アミノ酸配列およびこれらのエピトープのアミノ酸位置を表3に示し、および図13Aに模式的に示す。
【0174】
ポリエピトープ配列は、各エピトープ配列の前にプロテアソーム遊離アミノ酸配列(ADまたはKまたはR)があり、ニッケル-ニトリロ三酢酸(Ni-NTA)カラムを用いた精製を可能とするために各ポリエピトープタンパク質のC末端にヘキサヒスチジンタグが挿入されるように設計した。各構築物のアミノ酸配列を大腸菌コドン使用頻度に基づきDNA配列に翻訳し、インサートを合成構築し(DNA2.0、カリフォルニア州、USA)、発現プラスミド(pJexpress 404)のイソプロピル-β-D-チオガラクトプラノシド(IPTG)誘導性プロモーターにクローニングした。合成設計したEBVポリエピトープを化学的にコンピテントな大腸菌DH5α(Invitrogen、カールズバッド、CA、USA)に形質転換し、プラスミドを、QIAGEN(登録商標)maxi prepキット(QIAGEN、ヒルデン、ドイツ)を用いて精製した。
【0175】
タンパク質発現
化学的にコンピテントな大腸菌BL21(DE3)pLysS(Invitrogen、カリフォルニア州、USA)をEBVポリエピトープ発現ベクターで形質転換した。形質転換細胞を100μg/mLのアンピシリン(LB-Amp)を添加したLuria Bertani(LB)寒天上に播種し、プレートを37℃で一晩インキュベートした。単離されたコロニーを採取し、10mlのLB-Ampブロスに植え込み、37℃、200rpmのシェーカーで一晩増殖させた。少量の一晩培養物を50mLのLB-Ampブロスに植え込み、12時間増殖させた後、培養物の1%を2LのLB-Ampブロスに移植し、その後、600nmでのO.D.が0.6となるまで増殖させた。EBVポリエピトープタンパク質誘導は、1mM/mLのIPTGを加えることにより行った。これらの細胞をさらに4時間増殖させ、15%SDS-PAGEで非誘導サンプルと誘導サンプルを分析することにより、タンパク質発現レベルを決定した。
【0176】
EBVポリエピトープタンパク質精製
誘導期の終了時に、大腸菌培養物を10,000rpmで15分の遠心分離により採取し、細胞ペレットを、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche、マンハイム、ドイツ)を添加した80mLの溶解バッファー(25mM Tris pH7.4、0.5%Triton(登録商標)X100、150mM NaCl、0.5mg/mLリゾチーム)に再懸濁させ、氷上で30分間インキュベートした。細胞溶解は、氷上で4×5分サイクルの音波処理により行い、各サイクル間に10分の中断を設けた。この溶解液を13,000rpmで30分間遠心分離し、上清およびペレット画分を、SDS-PAGEを用いて分析した。タンパク質の大部分はペレット画分中に封入体(IB)の形態で見られたので、IBを、撹拌下、室温で2時間、溶解バッファー(リゾチーム不含)で1回洗浄し、150mLの可溶化バッファー(100mM NaHPO、10mM Tris、8M尿素、0.5%TritonX100 pH8.0)中、4℃で一晩、可溶化した。可溶性タンパク質を13,000rpmで30分の遠心分離により清澄化し、上清をポリエピトープタンパク質の精製に用いた。
【0177】
EBVポリエピトープタンパク質を精製するために、本発明者らは、5mLのNi-NTA(QIAGEN、ヒルデン、ドイツ)金属アフィニティークロマトグラフィーマトリックスを用いた。このマトリックスを5カラム容量の蒸留水で洗浄した後、3カラム容量の可溶化バッファーで平衡化した。可溶性タンパク質をこのカラムにロードし、流速を1mL/分に調整した。非結合タンパク質および不純物を10カラム容量の洗浄バッファー1(100mM NaHPO、10mM Tris、8M尿素pH6.3)および20カラム容量の洗浄バッファー2(100mM NaHPO、10mM Tris、8M尿素pH5.9)で洗い流した。結合タンパク質は溶出バッファー(100mM NaHPO、10mM Tris、8M尿素pH4.3)で溶出させ、溶出画分を、図13Bに示されるようにSDS-PAGEを用いて分析した。陽性画分をプールし、精製されたEBVポリエピトープタンパク質を25mM MESバッファーpH3.5に対して透析した。透析後、EBVポリエピトープタンパク質を、Ultracel-10Kスピンカラム(Millipore、コーク州、アイルランド)を用いて濃縮した後、0.22μメンブランフィルターを用いて濾過除菌した。最終的なEBVポリエピトープタンパク質評価は、ブラッドフォードアッセイキット(Bio-Rad、ハーキュリーズ、カリフォルニア州、USA)を用いて行った。
【0178】
ポリエピトープタンパク質を用いたin vitro刺激および健康ドナー由来EBV特異的T細胞の増殖
健康なウイルス保有者由来の末梢血単核細胞(PBMC)を25μgの精製EBVポリエピトープタンパク質とともに、37℃、6.5%COにて2時間インキュベートした。インキュベーション後、これらのPBMCを非パルス刺激PBMCと混合し、10%FCSを添加したRPMI 1640培地(増殖培地と称する)に再懸濁させた。これらの細胞を24ウェルプレートで14日間、37℃、6.5%COで培養した。3日目、6日目および9日目に、培養物に100Uの組換えIL-2を含有する1mLの増殖培地を添加した。これらのin vitro増殖細胞のT細胞特異性を、標準的なICSアッセイを用いて評価した。
【0179】
結果
プロテアソームリンカーを有するEBVポリエピトープタンパク質の設計および精製
CMVに対する免疫療法のための組換えポリエピトープタンパク質の設計、発現および精製に十分確立されたプロトコールが開発されたので、続いての研究で、本発明者らは、このようなアプローチを、EBV関連悪性腫瘍に対抗するための免疫療法用の別の組換えポリエピトープタンパク質の設計に拡張した。特に、EBV関連再発性ホジキン病および鼻咽頭癌の治療のために、EBV特異的CD8T細胞はより有効であると考えられる。しかしながら、EBV特異的CD8T細胞の生成は、複合体作製法などのいくつかの限定要因により制限され、ほとんどの場合、このようなプロセスは抗原を抗原提示細胞に送達するために、例えば組換えアデノウイルスベクターなどの感染力のある臨床級のウイルス材料を必要とする。従って、このような問題を克服するために、本発明者らは、細菌発現系を用いて発現させることができる新規なEBVポリエピトープを設計した。9種の異なる抗原(BMLF1、LMP2a、BRLF1、LMP2、EBNA3A、BZLF1、EBNA3C、EBNA1およびEBNA3B)に由来する20個の最小CD8T細胞エピトープをコードするEBVポリエピトープを、図13Aに概略を示すように設計し、ポリエピトープ配列内の各エピトープをプロテアソームリンカーによって分離した。これらの各ポリエピトープ配列に含まれるEBVエピトープの総覧を表3に示す。このEBVポリエピトープ構築物を大腸菌に形質転換した。タンパク質発現条件を最適化し、発現したタンパク質をNi-NTAマトリックスを用いて精製した。CMVポリエピトープタンパク質の結果に一致して、これらの実験から得られた結果は、EBVポリエピトープが細菌発現系を用いて上手く発現でき、タンパク質が均質となるまで精製可能であることを示した(図13B)。
【0180】
リンカーを用いた場合および用いない場合のCMVポリエピトープタンパク質の免疫原性のin vitro評価
EBV特異的CD8T細胞を増殖させるためのEBVポリエピトープの潜在的有効性を決定するため、複数の異なるドナー由来のPBMCを精製された組換えEBVポリエピトープタンパク質で刺激した。刺激後に増殖したEBV特異的CD8T細胞を、細胞内サイトカインアッセイを用いて評価した。図14に示されるデータは、かなりの割合のドナーが、刺激されなかったPBMCに比べ、EBVポリエピトープで刺激された後にEBV特異的CD8T細胞の増殖を示したことを示す。興味深いことに、各ドナー由来の細胞は、いくつかのHLAクラスI対立遺伝子により拘束される複数のエピトープを認識し、ドナーの大多数で、少なくとも3つの異なるエピトープに対して増殖したCD8T細胞の頻度が高くなった。
【0181】
参考文献
【0182】
【表1-1】
【0183】
【表1-2】
【0184】
【表1-3】
【0185】
【表1-4】
【0186】
【表1-5】
【0187】
【表2】
【0188】
【表3】
【0189】
【表4】
【0190】
本明細書を通じ、目的は、本発明をいずれか1つの実施形態または特徴の特定の集合体に限定することなく、本発明の好ましい実施形態を記載することであった。よって、当業者には、本開示に鑑みて、本発明の範囲から逸脱することなく例示される特定の実施形態において様々な改変および変更を行うことができることが認識されるであろう。
【0191】
本明細書に引用された全てのコンピュータプログラム、アルゴリズム、特許文献および科学文献は、その全内容が本明細書の一部として援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
図15H
【配列表】
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