IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フレニ・ブレンボ エス・ピー・エーの特許一覧

特許7110321ブレーキディスクを作製する方法及びディスクブレーキのためのブレーキディスク
<>
  • 特許-ブレーキディスクを作製する方法及びディスクブレーキのためのブレーキディスク 図1
  • 特許-ブレーキディスクを作製する方法及びディスクブレーキのためのブレーキディスク 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】ブレーキディスクを作製する方法及びディスクブレーキのためのブレーキディスク
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/12 20060101AFI20220725BHJP
   C23C 4/10 20160101ALI20220725BHJP
【FI】
F16D65/12 E
C23C4/10
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020504120
(86)(22)【出願日】2018-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 IB2018055481
(87)【国際公開番号】W WO2019021161
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】102017000086975
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】501016696
【氏名又は名称】フレニ・ブレンボ エス・ピー・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ファビアーノ・カルミナーティ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・ヴァヴァッソーリ
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/046681(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013009955(DE,A1)
【文献】特表2013-535574(JP,A)
【文献】特開2014-040926(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0293849(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/00-6/00
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)2つの対向するブレーキ表面(2a、2b)が提供されるブレーキバンド(2)を備える、ブレーキディスクを配置するステップであって、ブレーキ表面のそれぞれは、少なくとも一部にディスクの2つの主要側面の1つを画定し、ブレーキバンドは、アルミニウムまたはアルミニウム合金で作られ、またはねずみ鋳鉄または鋼で作られる、配置するステップと、
b)HVOF(高速フレーム溶射)技術またはHVAF(高速フレーム溶射)技術またはKM(キネティックメタライゼーション)技術によって、粒子形態で、炭化クロム(Cr)及びニッケルクロム(NiCr)の層をディスクに堆積し、ブレーキ表面に直接接触する、ブレーキバンドの2つのブレーキ表面の少なくとも1つを覆う基礎保護コーティング(30)を形成するステップと、
c)HVOF(高速フレーム溶射)技術またはHVAF(高速フレーム溶射)技術またはKM(キネティックメタライゼーション)技術によって、炭化タングステン(WC)、鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなる粒子形態の材料を、前記基礎保護コーティング(30)上に堆積し、炭化タングステン(WC)、鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなる、表面保護コーティング(3)を形成し、ブレーキバンドの2つのブレーキ表面の少なくとも1つを覆うステップと、を備えるブレーキディスクを作製する方法。
【請求項2】
前記基礎保護コーティング(30)を作製するための堆積ステップb)で堆積される粒子形態の前記材料は、65%から95%の炭化クロム(Cr)と残りニッケルクロム(NiCr)からなることが好ましい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面保護コーティング(3)を作製するための堆積ステップc)で堆積される粒子形態の前記材料は、重量で75%から87%の炭化タングステン(WC)と残り鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)で、好ましくは、重量で10%から17%の鉄(Fe)、重量で2.5%から5.8%のクロム(Cr)、重量で0.6%から2.2%のアルミニウム(Al)と残り炭化タングステン(WC)からなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記表面保護コーティング(3)を作製するための堆積ステップc)で堆積される粒子形態の前記材料は、重量で85%の炭化タングステン(WC)と重量で15%の鉄(Fe)、クロム(Cr)、及びアルミニウム(Al)からなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基礎保護コーティング(30)を作製するための堆積ステップb)で堆積される粒子形態の前記材料と、表面保護コーティング(3)を作製するための堆積ステップc)で堆積される粒子形態の前記材料の両方は、HVOF(高速フレーム溶射)技術によって堆積される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記基礎保護コーティング(30)は、20μmから60μm、好ましくは40μmに等しい厚さを有する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記表面保護コーティング(3)は、30μmから70μm、好ましくは50μmに等しい厚さを有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記基礎保護コーティング(30)を形成するためのステップb)で堆積される粒子形態の前記材料は、5から40μmの粒子サイズを有する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記表面保護コーティング(3)を形成するためのステップc)で堆積される粒子形態の前記材料は、5から45μmの粒子サイズである、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記堆積ステップb)は、前記基礎保護コーティング(30)を形成するために同じ表面に炭化クロム(Cr)とニッケルクロム(NiCr)の2以上の分離した堆積ステップを備える、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記堆積ステップb)は、前記ディスクに直接基礎保護コーティング(30)の第1の層を作り出すための粒子形態の炭化クロム(Cr)とニッケルクロム(NiCr)の第1の堆積ステップと、第1の層上に第2の層を作り出すための粒子形態の炭化クロム(Cr)とニッケルクロム(NiCr)の堆積のための第2の堆積ステップを備え、
前記第1の堆積ステップで堆積される炭化クロム(Cr)とニッケルクロム(NiCr)は、前記第2の堆積ステップで堆積される炭化クロム(Cr)とニッケルクロム(NiCr)の粒子サイズよりも大きい、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の堆積ステップで堆積される炭化クロム(Cr)とニッケルクロム(NiCr)は、30から40μmの粒子サイズを有しながら、前記第2の堆積ステップで堆積される炭化クロム(Cr)とニッケルクロム(NiCr)は、5から20μmの粒子サイズを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ブレーキバンドは、ねずみ鋳鉄で作られ、好ましくは、全ディスクは、ねずみ鋳鉄で作られる、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
2つの対向するブレーキ表面(2a、2b)が提供されるブレーキバンド(2)であって、ブレーキ表面のそれぞれは、ディスク(1)の2つの主要側面の1つを少なくとも部分的に画定し、ブレーキバンド(2)は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であるまたはねずみ鋳鉄または鋼であるブレーキバンドを備え、
前記ディスクは、
-前記ブレーキバンドの前記2つのブレーキ表面の少なくとも1つを覆う基礎保護コーティング(30)であって、前記基礎保護コーティング(30)は、炭化クロム(Cr)及びニッケルクロム(NiCr)からなり、HVOF(高速フレーム溶射)技術、またはHVAF(高速フレーム溶射)技術、またはKM(キネティックメタライゼーション)技術によって粒子形態で炭化クロム(Cr)及びニッケルクロム(NiCr)をディスクに直接堆積することによって得られる、基礎保護コーティングと、
-前記ブレーキバンドの前記2つのブレーキ表面の少なくとも1つを覆う、表面保護コーティング(3)であって、前記表面保護コーティング(3)は、炭化タングステン(WC)、鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなり、HVOF技術、またはHVAF(高速フレーム溶射)技術、またはKM(キネティックメタライゼーション)技術によって、粒子形態で炭化タングステン(WC)、鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)を前記基礎保護コーティング(30)上に堆積することによって得られる表面保護コーティングと、
が設けられている、ディスクブレーキのためのブレーキディスク。
【請求項15】
前記基礎保護コーティング(30)は、65%から95%の炭化クロム(Cr)と、残りのニッケルクロム(NiCr)とからなる、請求項14に記載のディスク。
【請求項16】
前記表面保護コーティング(3)は、重量で75%から87%の炭化タングステン(WC)と残りの鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)、好ましくは、重量で85%の炭化タングステン(WC)、重量で15%の鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなる、請求項14または15に記載のディスク。
【請求項17】
前記基礎保護コーティング(30)は、20μmから60μm、好ましくは40μmに等しい厚さを有する、請求項14乃至16のいずれか1項に記載のディスク。
【請求項18】
前記表面保護コーティング(3)は、30μmから70μm、好ましくは50μmに等しい厚さを有する、請求項14乃至17のいずれか1項に記載のディスク。
【請求項19】
前記ブレーキバンドは、ねずみ鋳鉄であり、好ましくは全ディスクはねずみ鋳鉄である、請求項14乃至18のいずれか1項に記載のディスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキディスクを作製する方法及びディスクブレーキのためのブレーキディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のディスクブレーキシステムのブレーキディスクは、環状構造、またはブレーキバンド、及び例えばハブなど、ディスクが、車両サスペンションの回転部分に固定される、ベルとして知られる中央固定要素を備える。ブレーキバンドは、ブレーキバンドにまたがって設置され、車両サスペンションの非回転部品と一体の、少なくとも1つのキャリパ本体に収納された、摩擦要素(ブレーキパッド)と協働するように構成された対向するブレーキ表面が設けられる。対向するブレーキパッドとブレーキバンドの対向するブレーキ表面の間の制御された相互作用は、減速し、車両の停止ができる、摩擦によってブレーキ動作を決定する。
【0003】
一般に、ブレーキディスクは、ねずみ鋳鉄または鋼で作られる。実際に、この材料は、比較的低コストでよいブレーキ性能(特に摩耗抑制の観点から)を得ることができる。カーボンまたはカルボセラミック材料で作られたディスクは、さらによい性能を提供するが、非常に高価である。
【0004】
鋳鉄または鋼で作られる従来のディスクの制限は、過度の摩耗に関する。ねずみ鋳鉄で作れられたディスクに関して、別の非常に負の態様は、過度の表面酸化に関し、さびを形成する。ブレーキディスクのさびは、使用者にとって審美的観点から受け入れることができないため、この態様は、ブレーキディスクの性能及びその外見の両方に影響がある。保護コーティングを備えるねずみ鋳鉄または鋼で作られたディスクを提供することによってそのような問題に取り組む試みがなされてきた。保護コーティングは、一方で、ディスクの摩耗を減らし、他方で、表面酸化からねずみ鋳鉄基礎部を保護し、それにより、さびの層の形成を防ぐ。現在入手可能な、ディスクに適用される保護コーティングは、摩耗抵抗を提供するが、ディスク自身からそれらの分離を引き起こすピーリングにさらされる。
【0005】
アルミニウムで作られたディスクは、ディスクの重量を減らすためにねずみ鋳鉄または鋼で作られたディスクに代わりに提案されてきた。アルミニウムディスクは、保護コーティングが設けられる。保護コーティングは、一方で、ディスクの摩耗を減らし、それにより鋳鉄ディスクのそれと比較できる性能を保証し、他方で、ブレーキの間発生される、アルミニウムの軟化点より高い温度(200~400℃)からアルミニウム基礎部を保護する。
【0006】
現在入手可能な、アルミニウムディスク及びねずみ鋳鉄または鋼ディスクに適用される保護コーティングは、摩耗抵抗を提供するが、ディスク自身からそれらの分離を引き起こすピーリングにさらされる。
【0007】
このタイプの保護コーティングは、例えば低摩耗ディスクブレーキに関する、米国特許4715486号に記載される。特に鋳鉄で作られた、ディスクは、高運動エネルギ衝撃技術によってディスクに堆積された粒子材料で作られたコーティングを有する。第1の実施形態によると、コーティングは、20%から30%の炭化タングステンと、5%のニッケルと、残りが炭化クロムとタングステンの混合物を含む。第2の実施形態によると、コーティングは、80%から90%の炭化タングステンと、10%以下のコバルト、5%以下のクロム及び5%以下の炭素を含む。
【0008】
フレームスプレ技術のコーティングの用途の場合において、アルミニウムまたはアルミニウム合金で作られたディスクから従来の保護コーティングの分離によって、保護コーティングに遊離炭素の存在がある。この現象は、また、ねずみ鋳鉄または鋼で作られたディスクに影響を与える。実際に、炭素は燃え、形成される保護コーティングに含まれる酸素と結合する傾向がある。これは、コーティングの内側に微小泡の形成につながり、ディスクのコーティングの適切な接着を阻み、それによりその除去を促進する。
【0009】
上記から、保護コーティングが設けられたアルミニウムまたはアルミニウム合金またはねずみ鋳鉄または鋼で作られたディスクが現在ブレーキシステムの分野で用いられることができないことは明白である。
【0010】
しかしながら、保護コーティングによって保証される摩耗抵抗の観点から利点を考慮すると、当該分野には従来技術を参照して上記欠点を解決する要求が強く感じられる。特に、ディスクの摩耗抵抗を増加でき、同時に経時的に強い、保護コーティングを備えるアルミニウムディスクにおいてまたはねずみ鋳鉄または鋼において要求が感じられる。
【0011】
前述の問題の解決法は、ねずみ鋳鉄または鋼で作られたディスクのための国際公開2014/097187号及びアルミニウムディスクのための国際公開2014/097186号でこの出願人によって提案された。
【0012】
ねずみ鋳鉄または鋼で作られたディスクの場合において、それは、重量で70~95%の炭化タングステン、重量で5%から15%のコバルト及び重量で1%から10%のクロムからなる粒子形態で材料を堆積することによって得られるディスクブレーキのブレーキ表面の保護コーティングを作る際に成り立つ。粒子形態の材料の堆積は、HVOF(High Velocity Oxygen Fuel)(高速フレーム溶射)またはHVAF(High Velocity Air Fuel)(高速フレーム溶射)またはKM(キネティックメタライゼーション)技術によって得られる。
【0013】
さらに詳細に、国際公開2014/097187で提案された解決法によると、コーティングを形成するために用いられるHVOF、HVAFまたはKM堆積技術及び化学成分の組み合わせは、高結合強度を備える保護コーティングを得ることができ、ねずみ鋳鉄または鋼に高い度合いの固定を確実にする。用いられる粒子材料は、遊離炭素(C)が微量でも含まれていない。これにより保護コーティングピーリング現象を著しく減らすことができる。
【0014】
アルミニウムまたはアルミニウム合金で作られたディスクの場合において、保護コーティングを作るために用いられる粒子形態の材料は、重量で80から90%の炭化タングステン、重量で8%から12%のコバルト、重量で2%から6%のクロムからなる。また、この場合において、粒子形態の材料の堆積は、HVOF(高速フレーム溶射)またはHVAF(高速フレーム溶射)またはKM(キネティックメタライゼーション)技術によって得られる。
【0015】
ねずみ鋳鉄または鋼ディスクのための効果と同様の効果得るために、すなわち、高結合強度及び減少したピーリングの保護コーティングを得ることは、遊離炭素の存在に関連した。
【0016】
ねずみ鋳鉄または鋼で作られたディスクのための国際公開2014/097187またはアルミニウムまたはアルミニウム合金で作られたディスクのための国際公開2014/097186で提案された解決法を採用することにより、既知の従来技術で見られた保護コーティングピーリング現象を著しく減らすことができるが、それらを完全に排除できない。実際に、国際公開2014/097186または国際公開2014/097187に従って作られた保護コーティングが設けられたアルミニウムまたはアルミニウム合金または鋳鉄または鋼で作られたディスクにおいてさえ、保護コーティングのピーリング及び陥没は、従来技術より少ない頻度であるが起き続ける。
【0017】
保護コーティングのピーリング及び陥没の問題の解決法は、本出願人によって国際公開2017/046681号で提供された。特に、そのような解決法は、保護コーティングとブレーキ表面の間に65%から95%の炭化クロム(Cr)と残りニッケルクロム(NiCr)からなる基礎保護コーティングを作製することを含む。基礎保護コーティング上に作られる表面保護コーティングは、重量で80から90%の炭化タングステン(WC)及び残りがコバルト(Co)からなる。両方の保護コーティングのための粒子形態の材料の堆積は、HVOF(高速フレーム溶射)またはHVAF(高速フレーム溶射)またはKM(キネティックメタライゼーション)技術によって得られる。この解決法は、アルミニウム、ねずみ鋳鉄または鋼で作られたディスクに適用できる。
【0018】
国際公開2017/046681号で提供された技術解決法は、効果的であるが、表面保護コーティングにコバルト(Co)を含む欠点がある。この解決法は、もはや人体の健康におけるコバルトの有害性から受け入れられない。実際に、表面コーティングは、摩耗によって、経時的に環境にコバルト塵をまき散らすかもしれない危険がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】米国特許4715486号
【文献】国際公開2014/097187号
【文献】国際公開2014/097186号
【文献】国際公開2017/046681号
【発明の概要】
【0020】
そのため、経時的に摩耗抵抗を確実にし、同時にコバルトを含まないような、ピーリングを受けないまたは既知の解決法よりピーリングが非常に少ない保護コーティングが設けられた(アルミニウムまたはねずみ鋳鉄または鋼で作られた)ディスクの必要性が、参照している分野にある。
【0021】
経時的に摩耗抵抗を保証し、同時にコバルトを含まないように、ピーリングを受けない、または既知の解決法よりピーリングが非常に少ない、保護コーティングが設けられたディスクの要求が請求項1によるブレーキディスクを製造する方法及び請求項14によるディスクブレーキのためのブレーキディスクによって達成される。
【0022】
特に、この要求は、次の動作ステップを備える保護コーティングを備えるアルミニウムで作られたブレーキディスクを製造する方法によって達成される。
【0023】
a)2つの対向するブレーキ表面が提供されるブレーキバンドを備える、ブレーキディスクを配置するステップであって、ブレーキ表面のそれぞれは、少なくとも一部にディスクの2つの主要側面の1つを画定し、ブレーキバンドは、アルミニウムまたはアルミニウム合金で作られ、またはねずみ鋳鉄または鋼で作られる、配置するステップ。
【0024】
b)HVOF(高速フレーム溶射)技術またはHVAF(高速フレーム溶射)技術またはKM(キネティックメタライゼーション)技術によって、粒子形態で、炭化クロム(Cr)及びニッケルクロム(NiCr)の層をディスクに堆積し、ブレーキ表面に直接接触するブレーキバンドの2つのブレーキ表面の少なくとも1つを覆う基礎保護コーティングを形成するステップ。
【0025】
c)HVOF(高速フレーム溶射)技術またはHVAF(高速フレーム溶射)技術またはKM(キネティックメタライゼーション)技術によって、炭化タングステン(WC)、鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなる粒子形態の材料を、前記基礎保護コーティング上に堆積し、炭化タングステン(WC)、鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなる、表面保護コーティングを形成し、ブレーキバンドの2つのブレーキ表面の少なくとも1つを覆うステップ。
【0026】
基礎保護コーティング30を作製するための堆積のステップb)で堆積される粒子形態の材料は、65%から95%の炭化クロム(Cr)及び残りがニッケルクロム(NiCr)からなることが好ましい。
【0027】
特に、基礎保護コーティング30を作製するための堆積のステップb)で堆積される粒子形態の材料は、次の組成を有することができる。
【0028】
-重量で93%の炭化クロム(Cr)、7%のニッケルクロム(NiCr)。
【0029】
-重量で90%の炭化クロム(Cr)、10%のニッケルクロム(NiCr)。
【0030】
-重量で75%の炭化クロム(Cr)、25%のニッケルクロム(NiCr)。
【0031】
-重量で65%の炭化クロム(Cr)、35%のニッケルクロム。
【0032】
基礎保護コーティング30を作製するための堆積のステップb)で堆積される粒子形態の材料は、重量で75%の炭化クロム(Cr)と25%のニッケルクロム(NiCr)からなる。
【0033】
ニッケルクロム(NiCr)は80%のニッケルと20%のクロムからなることが好ましい。
【0034】
表面保護コーティング3を作製するための堆積のステップc)において堆積される粒子形態の材料は、重量で、75%から87%の炭化タングステン(WC)と、残りが鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなることが好ましい。
【0035】
表面保護コーティング3を作製するための堆積のステップc)において堆積される粒子形態の材料は、重量で10%から17%の鉄(Fe)、重量で2.5%から5.8%のクロム(Cr)、重量で0.6%から2.2%のアルミニウム(Al)及び残りが炭化タングステン(WC)からなることが好ましい。
【0036】
表面保護コーティング3を作製するための堆積のステップc)において堆積される粒子形態の材料は、重量で85%の炭化タングステン(WC)と、重量で15%の鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなることがさらに好ましい。
【0037】
本発明の特に好ましい実施形態によると、基礎保護コーティングを作製するための堆積のステップb)で堆積される粒子形態の材料と、表面保護コーティングを作製するための堆積のステップc)で堆積される粒子形態の材料の両方は、HVOF(高速フレーム溶射)技術によって堆積される。
【0038】
基礎保護コーティング3の厚さは、20μmから60μm、好ましくは40μmに等しいことが好ましい。
【0039】
表面保護コーティング3の厚さは、30μmから70μm、好ましくは50μmに等しいことが好ましい。
【0040】
有利に、基礎保護コーティングを形成するためのステップb)で堆積される粒子形態の材料は、5から40μmの粒子サイズを有する。
【0041】
有利に、表面保護コーティングを形成するためのステップc)で堆積される粒子形態の材料は、5から45μmの粒子サイズを有する。
【0042】
本発明の特に好ましい実施によると、堆積のステップb)は、同じ表面上に炭化クロム(Cr)及びニッケルクロム(NiCr)を堆積する、2以上の分離したステップを備え、基礎保護コーティングを形成する。
【0043】
特に、堆積のステップb)は、粒子形態の炭化クロム(Cr)及びニッケルクロム(NiCr)を堆積し、ディスク上に直接基礎保護コーティングの第1の層を作り出す、第1のステップと、粒子形態の炭化クロム(Cr)及びニッケルクロム(NiCr)を堆積し、第1の層上に第2の層を作り出す第2のステップとを備え、第1の堆積ステップで堆積される炭化クロム(Cr)とニッケルクロム(NiCr)は、第2の堆積ステップで堆積される炭化クロムとニッケルクロムよりも大きい粒子サイズを有する。
【0044】
さらに特に、第1の堆積ステップで堆積される炭化クロム(Cr)とニッケルクロム(NiCr)は、30から40μmの粒子サイズを有しながら、第2の堆積ステップで堆積される炭化クロム(Cr)及びニッケルクロム(NiCr)は、5から20μmの粒子サイズを有する。
【0045】
ステップb)において、粒子形態の炭化クロム(Cr)とニッケルクロム(NiCr)の堆積は、少なくともコーティングの厚さに関してディスクの表面に差別化された方法で実行される。
【0046】
特に、ディスクのそれぞれの主要面は、ブレーキバンドのブレーキ表面に対応して、少なくとも1つの第1の環状部分、及び第1の環状部分より内側で、車輪にディスクの取り付け領域を画定する第2の環状部分によって、画定される。堆積のステップb)の間、少なくとも両方の部分を覆う基礎保護コーティングがなされる。第1の環状部分で形成される基礎保護コーティングの厚さは、第2の部分でなされる基礎保護コーティングの厚さより大きい。
【0047】
有利に、炭化タングステン(WC)、鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)を堆積するステップc)は、同じ表面上に粒子材料を堆積する2以上の区別できるステップを備え、表面保護コーティングを形成する。
【0048】
特に、堆積のステップc)は、粒子形態の材料を堆積し、基礎保護コーティングに直接第1の表面保護コーティング層を作り出す、第1のステップと、粒子形態の材料を堆積し、第1の層上に第2の層を作り出す、第2のステップとを備える。第1の堆積ステップで堆積される粒子材料は、第2の堆積ステップによって堆積される粒子材料より大きい粒子サイズを有する。
【0049】
さらに特に、第1の堆積ステップで堆積された粒子材料(炭化タングステン、鉄、クロム及びアルミニウム)は、30から45μmの粒子サイズを有しながら、第2の堆積ステップで堆積された粒子材料は、5から20μmの粒子サイズを有する。
【0050】
堆積のステップc)において、粒子材料(炭化タングステン、鉄、クロム及びアルミニウム)は、少なくともコーティングの厚さに関して、ディスクの表面に差別化された方法で堆積される。特に、第1の環状部分に形成される表面保護コーティングの厚さは、第2の部分で作られる表面保護コーティングの厚さよりも大きい。
【0051】
特に、ピーリングを受けない、または既知の解決法よりピーリングが非常に少ないと同時に、コバルトを含まない保護コーティングを備えるディスクにおける要求は、2つの相互に対向するブレーキ表面が設けられたブレーキバンドを備えるディスクブレーキのブレーキディスクであって、ブレーキ表面のそれぞれがディスクの2つの主要面の1つを少なくとも部分的に画定する、ブレーキディスクによって達成される。
【0052】
ブレーキバンドは、アルミニウムまたはアルミニウム合金で作られることができまたは鋳鉄または鋼で作られることができる。
【0053】
本発明の特に好ましい実施形態によると、ディスクのブレーキバンドは、ねずみ鋳鉄で作られる。特に、全ディスクは、ねずみ鋳鉄で作られる。
【0054】
ディスクは、ブレーキバンドの2つのブレーキ表面の少なくとも1つを覆う、基礎保護コーティングが設けられる。基礎保護コーティングは、炭化クロム(Cr)及びニッケルクロム(NiCr)からなり、HVOF(高速フレーム溶射)技術またはHVAF(高速フレーム溶射)技術またはKM(キネティックメタライゼーション)技術によって粒子形態の炭化クロム(Cr)及びニッケルクロム(NiCr)をディスクに直接堆積することによって得られる。
【0055】
ディスクは、さらにブレーキバンドの2つのブレーキ表面の少なくとも1つを覆う、表面保護コーティングが設けられる。
【0056】
本発明によると、表面保護コーティングは、炭化タングステン(WC)、鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなり、HVOF技術またはHVAF(高速フレーム溶射)技術またはKM(キネティックメタライゼーション)技術によって、粒子形態の炭化タングステン(WC)、鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)を基礎保護コーティングに堆積することによって得られる。
【0057】
基礎保護コーティングは、65%から95%の炭化クロム(Cr)と残りがニッケルクロム(NiCr)からなることが好ましい。
【0058】
特に、基礎保護コーティングは、次の組成を有することができる。
【0059】
-重量で93%の炭化クロム(Cr)及び7%のニッケルクロム(NiCr)。
【0060】
-重量で90%の炭化クロム(Cr)及び10%のニッケルクロム(NiCr)。
【0061】
-重量で75%の炭化クロム(Cr)及び25%のニッケルクロム(NiCr)。
【0062】
-重量で65%の炭化クロム(Cr)及び35%のニッケルクロム(NiCr)。
【0063】
基礎保護コーティングは、重量で75%の炭化クロム(Cr)と25%のニッケルクロム(NiCr)からなることが好ましい。
【0064】
ニッケルクロム(NiCr)は、80%のニッケルと20%のクロムからなることが好ましい。
【0065】
表面保護コーティングは、重量で75%から87%の炭化タングステン(WC)及び残りが鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなることが好ましい。
【0066】
さらに、表面保護コーティングは、重量で85%の炭化タングステン(WC)と、重量で15%の鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなることが好ましい。
【0067】
有利に、基礎保護コーティングの厚さは、20μmから60μm、好ましくは40μmに等しい。
【0068】
有利に、表面保護コーティングの厚さは、30μmから70μmであり、好ましくは、50μmに等しい。
【0069】
本発明のさらなる特徴及び利点は、非限定の実施例を手段として与えられる好ましい実施形態の次の記載から理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】本発明の実施形態による、ディスクブレーキの上面図を示す。
図2図1に示される断面線II-IIに沿って取られる図1のディスクの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下に記載される実施形態の共通の要素及び部分は、同じ符号を使って示されるであろう。
【0072】
前述の図を参照しながら、符号1は、全体として本発明によるブレーキディスクを示す。
【0073】
添付された図に示される、本発明の一般的な実施形態によると、ディスクブレーキ1は、2つの対向するブレーキ表面2a及び2bが設けられたブレーキバンド2であって、ブレーキ表面のそれぞれは、ディスクの2つの主要面の1つを少なくとも部分的に画定する、ブレーキバンドを備える。
【0074】
ブレーキバンド2は、アルミニウムまたはアルミニウム合金で作られることができ、または鋳鉄または鋼で作られることができる。
【0075】
ブレーキバンドは、ねずみ鋳鉄で作られることが好ましい。特に、全ディスクは、ねずみ鋳鉄で作られる。それゆえ、次の記載において、アルミニウムまたはアルミニウム合金または鋼で作られる可能性を排除することなく、ねずみ鋳鉄で作られたディスクを参照するであろう。
【0076】
ディスク1は、以下が設けられる。
【0077】
-ブレーキバンドの2つのブレーキ表面の少なくとも1つを覆い、そのような表面と直接接触する、基礎保護コーティング30。
【0078】
ブレーキバンドの2つのブレーキ表面の少なくとも1つを覆い、前述の基礎保護コーティング30を覆う、表面保護コーティング3。
【0079】
基礎保護コーティング30は、炭化クロム(Cr)及びニッケルクロム(NiCr)からなり、HVOF技術またはHVAF技術またはKM(キネティックメタライゼーション)技術によって、粒子形態の炭化クロム及びニッケルクロムをディスク1に直接堆積することによって得られる。
【0080】
基礎保護コーティング30は、65%から95%の炭化クロム(Cr)及び残りがニッケルクロム(NiCr)からなることが好ましい。
【0081】
特に、基礎保護コーティング30は、次の組成を有することができる。
【0082】
-重量で93%の炭化クロム(Cr)及び7%のニッケルクロム(NiCr)。
【0083】
-重量で90%の炭化クロム(Cr)及び10%のニッケルクロム(NiCr)。
【0084】
-重量で75%の炭化クロム(Cr)及び25%のニッケルクロム(NiCr)。
【0085】
-重量で65%の炭化クロム(Cr)及び35%のニッケルクロム(NiCr)。
【0086】
基礎保護コーティング30は、重量で75%の炭化クロム(Cr)と25%のニッケルクロム(NiCr)からなることが好ましい。
【0087】
ニッケルクロム(NiCr)は80%のニッケルと20%のクロムからなることが好ましい。
【0088】
本発明によると、表面保護コーティング3は、炭化タングステン(WC)及び鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなり、HVOF技術またはHVAF(高速フレーム溶射)技術またはKM(キネティックメタライゼーション)技術によって粒子形態の炭化タングステン(WC)、鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)を基礎保護コーティング30に堆積することによって得られる。
【0089】
表面保護コーティング3は、重量で75%から87%の炭化タングステン(WC)、残りが、鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなることが好ましい。さらに表面保護コーティング3は、重量で85%の炭化タングステン(WC)及び重量で15%の鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなることが好ましい。
【0090】
有利に、基礎保護コーティング30の厚さは、20μmから60μmであり、好ましくは40μmに等しいながら、表面保護コーティング3の厚さは、30μmから70μmであり、好ましくは、50μmに等しい。
【0091】
驚くほどに、炭化タングステン(WC)、鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなる表面保護コーティング3は、通常の環境条件で、摩耗抵抗とトライボロジ挙動(摩擦、フェード、ならし)に関して、炭化タングステン及びコバルトからなる表面保護層に匹敵する挙動を有することが発見された。
【0092】
また、炭化タングステン(WC)、鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなる表面保護コーティング3は、炭化タングステン及びコバルトからなる表面保護層に対して環境ストレス(熱衝撃及び塩害)の存在下での強度に関して、最もよい性能を有することが測定された。
【0093】
言い換えると、本発明による表面保護コーティング(WC、Fe、Cr及びAl)は、完全にコバルトフリーで、与えられた動作状況で性能改善を示す、利点を備えた炭化タングステン及びコバルトで作られたコーディングの完全な置換物であることを示す(環境ストレスの存在下での強度を参照)。
【0094】
国際公開2017/046681号に記載された炭化タングステン及びコバルトの保護層と同様に、本発明による、WC、Fe、Crで作られた表面保護コーティングは、また炭化クロム(Cr)及びニッケルクロム(NiCr)で作られた基礎保護層3とよく結合し、基礎保護層はその防食剤機能を実行し、その結果、ピーリング現象の開始を防ぐことが実験的に証明された。
【0095】
実際に、本発明による表面保護コーティングを備えるディスクブレーキでさえ(すなわちWC、Fe、Cr及びAlで作られた)、表面保護コーティング3の下の炭化クロム(Cr)及びニッケルクロム(NiCr)で作られた基礎保護コーティング30の存在は、実質的に従来のディスクを悩ますピーリングの現象を排除することが証明された。
【0096】
さらに詳細に、保護コーティングを備える従来のディスクにおいて、ピーリングは、ディスクとコーティングの間の境界領域の酸化によって誘発されることが発見された。そのような酸化は、一般にディスクとコーティングの間の水分の浸透によって引き起こされる。基礎保護コーティング30を形成する炭化クロム(Cr)とニッケルクロム(NiCr)の層の存在は、効果的にそのような酸化現象と対照をなし、それにより非摩耗機能を備えた表面保護コーティング3のピーリングの問題を解決する。言い換えると、基礎保護コーティング30は、非腐食機能を有し、表面保護コーティング3(炭化タングステン及び鉄、クロム及びアルミニウムで作られた)の非摩耗機能と関連する。非腐食作用は、表面保護コーティング3のディスクへの一体性と接着性の利益につながる。
【0097】
基礎保護コーティング30は、また表面保護コーティング(非摩耗)のための機械的な「減衰」機能を実行する。実際に、炭化クロム及びニッケルクロムによって形成された基礎保護コーティング30は、炭化タングステン、鉄、クロム及びアルミニウムで形成された表面保護コーティング3より高い度合いの延性を有する。これは、使用時に、ディスクに加えられるストレスを、-少なくとも一部-軽減することを助ける基礎層30に弾性挙動を与える。それゆえ、基礎保護コーティング30は、ディスクと表面保護コーティング3の間の一種のダンパまたはクッションのような機能を果たす。これにより、2つの部分の間で応力が直接伝達することを防ぎ、それにより表面保護コーティング3のクラックのトリガとなるリスクを減らす。
【0098】
非摩耗機能に関しては、表面保護コーティング3は、炭化クロム及びニッケルクロムで作られた基礎保護コーティング30の存在によってバイアスをかけられない。
【0099】
簡単のために、ブレーキディスク1は、ここから本発明による方法とともに記載されるであろう。ブレーキディスク1は、必ずしもではないが、以下に記載された本発明による方法で作られることが好ましい。
【0100】
本発明による方法の一般的な実施によると、方法は、次の動作ステップを備える。
【0101】
a)2つの対向するブレーキ表面が提供されるブレーキバンドを備える、ブレーキディスクを配置するステップであって、ブレーキ表面のそれぞれは、少なくとも一部にディスクの2つの主要側面の1つを画定し、ブレーキバンドは、アルミニウムまたはアルミニウム合金で作られ、またはねずみ鋳鉄または鋼で作られる、配置するステップ。
【0102】
b)HVOF(高速フレーム溶射)技術またはHVAF(高速フレーム溶射)技術またはKM(キネティックメタライゼーション)技術によって、粒子形態で、炭化クロム(Cr)及びニッケルクロム(NiCr)の層をディスクに堆積し、ブレーキ表面に直接接触するブレーキバンドの2つのブレーキ表面の少なくとも1つを覆う基礎保護コーティングを形成するステップ。
【0103】
c)HVOF(高速フレーム溶射)技術またはHVAF(高速フレーム溶射)技術またはKM(キネティックメタライゼーション)技術によって、炭化タングステン(WC)、鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなる粒子形態の材料を、前記基礎保護コーティング上に堆積し、炭化タングステン(WC)、鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなる、表面保護コーティングを形成し、ブレーキバンドの2つのブレーキ表面の少なくとも1つを覆うステップ。
【0104】
基礎保護コーティング30を作製するための堆積のステップb)で堆積される粒子形態の材料は、65%から95%の炭化クロム(Cr)及び残りがニッケルクロム(NiCr)からなることが好ましい。
【0105】
特に、基礎保護コーティング30を作製するための堆積のステップb)で堆積される粒子形態の材料は、次の組成を有することができる。
【0106】
-重量で93%の炭化クロム(Cr)及び7%のニッケルクロム(NiCr)。
【0107】
-重量で90%の炭化クロム(Cr)及び10%のニッケルクロム(NiCr)。
【0108】
-重量で75%の炭化クロム(Cr)及び25%のニッケルクロム(NiCr)。
【0109】
-重量で65%の炭化クロム(Cr)及び35%のニッケルクロム(NiCr)。
【0110】
基礎保護コーティング30を作製するための堆積のステップb)で堆積される粒子形態の材料は、重量で75%の炭化クロム(Cr)と25%のニッケルクロム(NiCr)からなることが好ましい。
【0111】
ニッケルクロム(NiCr)は80%のニッケルと20%のクロムからなることが好ましい。
【0112】
表面保護コーティング3を作製するための堆積のステップc)で堆積される粒子形態の材料は、重量で75%から87%の炭化タングステン(WC)と、残りが鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなることが好ましい。
【0113】
表面保護コーティング3を作製するための堆積のステップc)で堆積される粒子形態の材料は、重量で10%から17%の鉄(Fe)、重量で2.5%から5.8%のクロム、重量で0.6%から2.2%アルミニウムと、残りが炭化タングステン(WC)からなることが好ましい。
【0114】
得られる表面保護コーティング3は、重量で85%の炭化タングステン(WC)、重量で15%の鉄(Fe)、クロム(Cr)及びアルミニウム(Al)からなることがさらに好ましい。
【0115】
有利に、ブレーキディスクは、ディスク1に対して中央に配置され、ブレーキバンド2に集中する環状部分4によって構成要素にされる、車両にディスクを固定するように構成された部分が設けられる。固定部分4は、車輪ハブ(すなわちベル)に対する接続要素5を支持する。ベルは、(添付された図に示されるように)環状固定部分を備える1つの部品で形成されることができ、または分離して形成されることができ、その結果、固定部分に適切な接続要素によって固定される。
【0116】
環状固定部分4は、ブレーキバンドと同じ材料、すなわち、ねずみ鋳鉄または別の適切な材料で作ることができる。ベル5は、またねずみ鋳鉄または他の適切な材料で作ることができる。特に、全ディスク(すなわち、ブレーキバンド、固定部、ベル)は、ねずみ鋳鉄で作ることができる。
【0117】
ブレーキバンド2は、鋳造によって作ることが好ましい。同様に、それらがねずみ鋳鉄で作られるとき、固定部及び/またはベルは、鋳造によって生産されることができる。
【0118】
環状固定部分は、(添付された図で示されるように)ブレーキバンドを備える単一体で作られることができ、またはブレーキバンドに機械的に接続される分離した本体として作られることができる。
【0119】
炭化クロム及びニッケルクロムの層を堆積するステップb)は、基礎保護コーティング30が作られる表面を準備するステップd)が先になされることが好ましい。特に、表面準備のステップd)は、油またはほこりを取り除くように構成された溶媒で表面を洗浄することで構成される。準備のステップd)は、例えば紙やすりによる研磨または研磨によって、ディスクの表面の研磨作用を備える。
【0120】
有利に、基礎保護コーティング30を形成するためのステップb)で堆積される粒子形態(クロム及びニッケルクロム)の材料は、5から40μmの粒子サイズを有する。そのような範囲の値を選択することにより、高い堆積表面密度とコーティングへの接着能力の特性を与えることができる。
【0121】
基礎保護コーティング3の厚さは、20μmから60μm、好ましくは40μmに等しいことが好ましい。そのような範囲の値を選択することにより、コーティング自身の非酸化保護作用の効果と熱膨張の制限の間の最適なバランスを達成することができる。言い換えると、もし基礎保護コーティング30の厚さが20μm未満であれば、十分な非酸化保護作用がないであろう。60μmより大きい厚さであると、他方では、ディスクブレーキの寿命サイクルの間生じる熱膨張によってやがて不完全な接着につながる。
【0122】
表面保護コーティング3の一体性を維持することを助ける前述の「減衰」効果は、基礎保護コーティング30の厚さの前述の範囲内で、実施することができる。
【0123】
有利に、表面保護コーティングを形成するためのステップc)で堆積される粒子形態の材料(炭化タングステン、鉄、クロム及びアルミニウム)は、5から45μmの粒子サイズを有する。そのような範囲の値を選択することにより、高い密度、硬度及びコーティングへの制限された多孔性の特性を与えることができる。
【0124】
表面保護コーティング3の厚さは、30μmから70μm、及び好ましくは50μmに等しいことが好ましい。そのような範囲の値を選択することにより、保護層の滅失とコーティング自身の熱膨張の制限の間の最適なバランスを達成することができる。言い換えると、保護コーティングの厚さが20μm未満であれば、摩耗の場合において、完全に過度に短い時間で、取り除かれるであろう。80μmよりも大きい厚さは、他方では、ディスクブレーキの寿命サイクルの間生じる熱膨張によってやがて不完全な接着につながる。
【0125】
上述のように、基礎保護コーティング30を形成する炭化クロムとニッケルクロムと、表面保護コーティング3を形成する炭化タングステン、鉄、クロム及びアルミニウムの両方は、HVOF技術またはHVAF技術またはKM技術によってディスク及び基礎保護コーティング30上にそれぞれ粒子形態で堆積される。
【0126】
これらの3つの堆積技術は、当業者によく知られ、それゆえ詳細に記載されない。
【0127】
HVOF(高速フレーム溶射)は、混合燃焼チャンバ及びスプレノズルが設けられたスプレ装置を用いる粉末スプレ堆積である。酸素及び燃料は、チャンバに供給される。1MPA近くの圧力で形成される熱い燃焼ガスは、収束発散ノズルを横切り、極超音速の速度(マッハ5より速い)へ粉末の材料を運ぶ。堆積される粉末の材料は、熱いガス流に注入され、急速に溶けて1000m/sのオーダの速度に加速される。堆積表面上に衝突されるとすぐに、溶融した材料は急速に冷え、高密度でぎっしり詰まった構造が、高運動エネルギ衝突の利点によって形成される。
【0128】
HVAF(高速フレーム溶射)堆積技術は、HVOF技術と似ている。違いは、酸素の代わりに空気がHVAF技術の燃焼チャンバに供給されることである。それゆえ、制御下の温度は、HVOF技術の温度より低い。これにより、コーティングの熱調整のよい制御ができる。
【0129】
KM(キネティックメタライゼーション)堆積技術は、不活性ガス流の金属粒子を加速し、摩擦静電的に帯電する2つのステップで、金属粉が音速堆積ノズルによって噴霧される固相堆積プロセスである。熱エネルギは、キャリア流に供給される。圧縮不活性ガス流と熱エネルギのポテンシャルエネルギは、プロセスの粉末の運動エネルギに変換される。高速に加速され、電荷帯電されるとすぐに粒子は、堆積表面に導かれる。そのような表面への金属粒子の高速衝突は、粒子の大きな変形を引き起こす(衝突に垂直な方向の約80%)。この変形は、粒子の表面領域の巨大な増加をもたらす。衝突の効果として、親密な接触が粒子と堆積表面の間で形成され、金属結合と高密度及びぎっしり詰まった構造を有するコーティングの形成につながる。
【0130】
有利に、高運動エネルギ衝突堆積技術である事実を共有する、上記された3つの堆積技術の代替手段として、異なる堆積方法を利用するが、高密度及びぎっしり詰まった構造を有するコーティングを発生することができる他の技術がある。
【0131】
2つの保護コーティング-基礎30及び表面3-を形成するために用いられる、HVOF、HVAFまたはKM堆積技術及び化学成分の組み合わせにより、それらが堆積される下の材料に高結合強度を備えた保護コーティングを得ることができる。
【0132】
特に、前述の組み合わせにより、ねずみ鋳鉄に炭化クロム及びニッケルクロム(基礎コーティング30)と、炭化クロム及びニッケルクロムの層上に炭化タングステン、鉄、クロム及びアルミニウム(表面コーティング3)の両方を高い度合いの固定を得ることができる。
【0133】
炭素(C)の欠如、好ましくは、2つのコーティングを構成する最終材料にわずかな形態であっても存在しないことは、分離のリスクを減らすことを助ける。実際に、フレームスプレ技術をコーティングに適用する場合において、アルミニウムまたはアルミニウム合金またはねずみ鋳鉄または鋼で作られたディスクから従来の保護コーティングの分離を引き起こす原因は、保護コーティングの遊離炭素の存在である。実際に、炭素は、燃焼し、形成される保護コーティングに取り込まれる酸素と結合する傾向がある。これは、コーティングの内側の微小泡の形成につながり、ディスク上へのコーティングの十分な接着を阻み、その取り除きを促進する。
【0134】
本発明の特に好ましい実施形態によると、基礎保護コーティング3を作製するための堆積のステップb)で堆積された粒子形態の材料と、表面保護コーティング30を作製するための堆積のステップc)で堆積される粒子形態の材料の両方は、HVOF(高速フレーム溶射)技術によって堆積される。実際に、この技術は、-特にブレーキバンドまたはねずみ鋳鉄で作られた全ディスクと関連するならば-摩耗抵抗及びトライボロジ性能の観点から、最もよい妥協を提供する結合保護コーティング(基礎+表面)を達成することができる。
【0135】
さらに詳細に、(好ましい)HVOF(高速フレーム溶射)技術に対して実施される実験試験によると、HVAF(高速フレーム溶射)技術は、名目上の値に近い規則正しい厚さを備える、ぎっしり詰まった均一のコーティングを得ることができる。HVOFで作られたコーティングは、ぎっしりさが少なく、「スポンジ」の外見と変化する厚さを有する。
【0136】
HVOF及びHVAFによって作られたコーティングを有するサンプルに実施された熱衝撃試験は、全てのサンプルにおいて見られ、コーティングの微小クラックがあるWC+Fe、Cr、Al表面保護コーティングのみに作用する損傷を示した。そのような微小クラックは、しかしながらおそらく塗布のより強い固さによって、HVAF技術によって作られたコーティングを備えるサンプルでさらに公表されるように見える。これによりHVOF技術はさらに好ましい。
【0137】
全ての場合において、Cr+Niで作られる基礎保護コーティングは、熱衝撃試験に続く結果に苦しまず、常にぎっしり詰まって、鋳鉄と完全に接着され、クラックがない。
【0138】
上記のように、基礎保護コーティング30及び表面保護コーティング3は、ブレーキバンドの2つのブレーキ表面の少なくとも1つを覆う。
【0139】
基礎保護コーティング30及び表面保護コーティング3の全ては、以後、「結合保護コーティング」3、30として全世界的に識別されるであろう。
【0140】
図2で示されるように、ディスク1は、ブレーキバンド2の両方のブレーキ表面2a及び2bを覆う、「結合保護コーティング」3、30が設けられることが好ましい。
【0141】
特に、結合保護コーティング3、30は、1つのブレーキ表面または両方のブレーキ表面上のブレーキバンドのみを覆ってもよい。
【0142】
添付された図に示されない実施形態の解決法によると、結合保護コーティング3、30は、ディスク1の全表面を覆うために、環状固定部4及びベル5のようなディスク1のその他の部分にも延在することができる。特に、結合保護コーティング3、30は、-ブレーキバンドに加えて-固定部のみまたはベルのみを覆うことができる。選択は、全ディスクまたはそのいくつかの部分の間の均一な着色及び/または仕上げを有するための、外見の理由によって実質的に決定される。
【0143】
有利に、結合保護コーティング3、30を形成するための粒子材料堆積は、少なくともコーティングの厚さに関してディスクの表面上に、差別化された方法で実施される。
【0144】
ブレーキバンドにおいて、結合保護コーティング3、30は、2つの対向するブレーキ表面に同じ厚さで作られることができる。結合保護コーティング3、30がブレーキバンドの2つのブレーキ表面の間で異なる厚さに違いをつけることによって作られる、代替の解決法が提供される。
【0145】
方法の特に好ましい実施形態によると、基礎保護コーティング30を形成するための炭化クロム及びニッケルクロムの層を堆積するステップb)は、保護コーティングを形成する表面自身に粒子炭化クロムを堆積する2以上の区別できるステップを備える。
【0146】
さらなる詳細において、前記堆積するステップb)は、以下を備える。
【0147】
ディスクに直接基礎保護コーティング30の第1の層を作り出すための粒子形態の炭化クロムとニッケルクロムを堆積する第1のステップ。
【0148】
第1の層上に第2の層を作り出すための粒子形態の炭化クロムとニッケルクロムを堆積する第2のステップ。
【0149】
以下に明確にされるように、第2の仕上げ層は、基礎保護コーティング3の表面仕上げを調整できる。
【0150】
2つのステップに炭化クロムとニッケルクロムを堆積するステップb)を分けることにより、特に、様々なステップで用いられる炭化クロムとニッケルクロムの少なくとも粒子サイズに違いをつけることができる。これにより、堆積するステップb)にさらに融通を利かせられる。
【0151】
有利に、第1の堆積ステップで堆積される炭化クロム及びニッケルクロム粒子は、第2の堆積ステップで堆積される粒子より大きい粒子サイズを有する。特に、第1の堆積ステップで堆積される炭化クロム及びニッケルクロムは、30から40μmの粒子サイズを有しながら、第2の堆積ステップで堆積される炭化クロム及びニッケルクロムは、5から20μmの粒子サイズを有する。
【0152】
第1の層を形成するための粗い粒子サイズと(仕上げ機能を備える)第2の層を形成するための微細な粒子サイズを用いて、2つの区別した堆積ステップにおいて、基礎保護コーティング30を作製することにより、すでに堆積の終了において、次の表面保護コーティング堆積の機能として、要求された表面仕上げ特性を有するコーティングを得ることができる。そのような所望の表面仕上げ特性は、コーティングにおいて研磨及び/または他の表面仕上げ操作を実行する必要なく得ることができる。第2のステップで堆積される粒子は、基礎層の表面の粗い粗さを満たす。有利に、コーティングの表面仕上げレベルは、第2のステップで堆積される粒子の粒子サイズを調整することによって調整される。
【0153】
基礎保護コーティング30の第1の層の厚さは、コーティングの総厚さの2/4から3/4でありながら、基礎保護コーティングの第2の層4の厚さは、コーティングの総厚さの1/4から2/4であることが好ましい。
【0154】
方法の特に好ましい実施形態によると、表面保護コーティング3を形成する粒子材料(WC+Fe+Cr+Al)を堆積するステップc)は、同じ表面上に粒子材料を堆積する2以上の区別したステップを備えて、保護コーティングを形成する。
【0155】
さらに詳細に、堆積する前記ステップc)は以下のステップを備える。
【0156】
-基礎保護コーティング30上に直接コーティングの第1の層を作り出すために粒子形態の材料を堆積する第1のステップ。
【0157】
-表面保護コーティング3の第1の層上に第2の層を作り出すために粒子形態の材料を堆積する第2のステップ。
【0158】
基礎コーティングを堆積するステップb)で提供されるものと同様に、2つ以上のステップに表面保護コーティング3を形成する粒子材料を堆積するステップc)を分けることにより、特に、様々なステップで用いられる粒子材料の少なくとも粒子サイズの間で違いをつけることもできる。これは、堆積ステップc)にさらに融通を利かせられる。
【0159】
有利に、第1の堆積ステップで堆積される粒子材料は、第2の堆積ステップで堆積される粒子材料より大きな粒子サイズを有する。特に、第1の堆積ステップで堆積される粒子材料は、30から40μmの粒子サイズを有しながら、第2の堆積ステップで堆積される粒子材料は、5から20μmの粒子サイズを有する。
【0160】
基礎層を形成するための粗い粒子サイズと仕上げ層を形成するための微細な粒子サイズを用いて、2つの区別した堆積ステップで保護コーティングまたは表面3の実施形態により、すでに堆積の終了においてコーティングにおいて研磨及び/または他の表面仕上げ操作を実行する必要なく、必要とされる表面仕上げ特性を有する、表面保護コーティング3を得ることができる。第2のステップで堆積された粒子は、基礎層の表面の粗い粗さを満たす。有利に、表面保護3の表面仕上げレベルは、第2のステップで堆積される粒子の粒子サイズを調整することによって調整されることができる。
【0161】
特に、第1のステップにおいて、30から40μmの粒子サイズの粒子と、第2のステップにおいて、5から20μmの粒子サイズの粒子を用いることによって、仕上げ層において、表面保護コーティング3は、2.0から3.0μmの範囲の表面粗さRaを有する。
【0162】
表面保護コーティング30の第1の層の厚さは、コーティングの総厚さの2/4から3/4でありながら、表面保護コーティング4の第2の層の厚さは、コーティングの総厚さの1/4から2/4である。
【0163】
全体に、粒子材料のHVOF、HVAFまたはKM堆積技術の組み合わせ、用いられる化学成分及び複数のステップで堆積する方法により、特にブレーキディスク1の使用の目的のために構成された、限定されたレベルの表面粗さを備えるコーティングを得ることができる。
【0164】
次のディスクの間で比較試験が実行された。
【0165】
A)40μm厚さの基礎保護コーティング(Cr+NiCr)及び50μm厚さの表面保護コーティング(WC+Fe+Cr+Al)のHVOF技術によって作られる、本発明による、「結合」保護コーティングを備えるねずみ鋳鉄で作られたディスクブレーキ。
【0166】
B)国際出願WO2017/046681号の教示によって作られる、40μm厚さの基礎保護コーティング(Cr+NiCr)及び50μm厚さ表面保護コーティング(WC+Co)のHVOF技術によって作られる、本発明による、「結合」保護コーティングを備えるねずみ鋳鉄で作られたディスクブレーキ。
【0167】
2つのディスクは、通常のダイナミックベンチ試験(ならし、AKマスタ及び摩耗)を受けた。
【0168】
そのような試験は、試験条件が等しいならば、本発明による耐久性ディスクAは、ディスクBと摩耗の観点で同等であることを示した。
【0169】
また、トライボロジ挙動(摩擦、フェード、ならし)の視点から、試験条件が等しいならば、本発明によるディスクAの性能は、従来のディスクBの性能と実質的に同等である。
【0170】
2つのディスクは、また、複合及び環境熱機械ストレスの存在下で、一連の抵抗試験を受けた。
【0171】
述べられたように、そのような試験は、本発明によるディスクAの性能が、環境ストレス(熱機械的衝撃及び腐食剤)の存在下で強度に関してディスクBよりもよいことを示した。
【0172】
より詳細に、2つのディスクは、複合ダイナミックベンチ試験の繰り返しを提供する試験プログラム(ディスクはそれぞれ複数の連続的なブレーキ動作を備える、異なるサイクルのブレーキを受けた)及び腐食環境の試験(塩水噴霧及び凝縮水試験:ディスク及びブレーキパッドは、塩水噴霧及び高温の偏位を伴う高度の水分を含む環境に保持される)を受けた。
【0173】
セットの繰り返しの終わりにおいて、Bは、一般的な保護コーティングの除去を見せたが、ディスクAは、保護コーティングの最小の局所的分離のみ有した。
【0174】
上記の記載から理解できるように、本発明によるディスクブレーキ及びそのようなディスクブレーキを作製する方法は、従来技術の不利を克服することができる。
【0175】
実際に、本発明により作られたブレーキディスクが提供される保護コーティングは、ピーリングしないまたは既知の解決法より(時間内の摩耗抵抗を確実にするように)非常に少ない度合いでしかピーリングしないと同時にコバルトを含まない。
【0176】
実際に、本発明によるコバルトフリーの表面保護コーティングは、効果的に国際公開2017/046681号で提供される炭化タングステン及びコバルトコーティングを置き換えることができることが発見された。実際に、本発明による表面保護コーティングは、通常の環境条件で同様の摩耗抵抗及び同様のトライボロジ挙動を示した。
【0177】
また、本発明による(炭化タングステン、鉄、クロム及びアルミニウムで作られた)表面保護コーティングは、環境ストレス(熱衝撃及び塩害)の存在下で強度に関して最もよい性能を有することが測定された。
【0178】
さらに、本発明によるコバルトフリー表面保護コーティングは、効果的に炭化クロム及びニッケルクロムで作られた基礎保護コーティングと結合し、基礎保護コーティングが非腐食作用を適用でき、それにより表面保護コーティングのピーリングを避けることがわかった。
【0179】
言い換えると、本発明によるコバルトフリー表面保護コーティングは、炭化クロム及びニッケルクロムからなる基礎保護コーティングの作用に影響を与えない。そのため、そのような基礎保護コーティングは、(アルミニウム、アルミニウム合金、ねずみ鋳鉄または鋼で作られた)ディスク酸化現象を抑制し続ける。
【0180】
特に、炭化クロム及びニッケルクロムで作られた基礎保護コーティングは、連続して、ディスクと非摩耗表面保護コーティングの間のある種のダンパまたは弾性クッションを定義し、それによりディスクの動作寿命に関するストレスの結果として、表面保護コーティングのクラックのリスクを減らす。
【0181】
最終的に、本発明によるディスク1は、以下を有する(少なくともブレーキバンドを覆う)表面保護コーティングが設けられる。
【0182】
-炭化クロム及びニッケルクロムで作られた基礎保護コーティング上に高い度合いの固定を保証する高結合強度。
【0183】
-高摩耗抵抗。
【0184】
-限定されたレベルの表面粗さ。
【0185】
-高密度。
【0186】
-高硬度。
【0187】
-制限された多孔性。
【0188】
ブレーキディスク1は、また一般に製造されるのに費用効果が高い。
【0189】
条件、特定の要求を満足させるために、当業者は、次の請求項によって定義される発明の範囲内にすべて含まれる、上記ディスク及びブレーキディスクのいくつかの変更及び変形を作ることができる。
図1
図2