(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】抗酸化用栄養補助食品組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20220725BHJP
A61K 36/15 20060101ALI20220725BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20220725BHJP
A61K 36/82 20060101ALI20220725BHJP
A61K 36/87 20060101ALI20220725BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220725BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20220725BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220725BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220725BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20220725BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20220725BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20220725BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220725BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20220725BHJP
A61K 129/00 20060101ALN20220725BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20220725BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/15
A61K36/185
A61K36/82
A61K36/87
A61K47/22
A61K47/46
A61P11/00
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/16
A61P39/06
A61P43/00 121
A61K127:00
A61K129:00
A61K131:00
(21)【出願番号】P 2020512929
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(86)【国際出願番号】 GB2018051290
(87)【国際公開番号】W WO2018206985
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-16
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519403783
【氏名又は名称】アベル アプリケーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ABEL APPLICATIONS LIMITED
【住所又は居所原語表記】15 Wolseley Close Business Park,Plymouth PL2 3BY United Kingdom
(73)【特許権者】
【識別番号】519403794
【氏名又は名称】ナチュラライフ ヘルス アンリミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】NATURALIFE HEALTH UNLIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】3-5 Charvey Business Park,Rathnew,Co.Wicklow A67 CF50 Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ナイト,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ハモンド,ダラー
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-528125(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0087996(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0086986(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0110789(US,A1)
【文献】特表2006-505501(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0132758(KR,A)
【文献】EL-BELTAGI, Hossam S. et al.,Synergetic Antioxidant Scavenging Activities of Grape Seed and Green Tea Extracts against Oxidative Stress,Not Bot Horti Agrobo,2016年12月14日,Vol.44, No.2,pp.367-374,DOI: 10.15835/nbha44210358
【文献】SHAH, Manzoor Ahmad et al.,Plant extracts as natural antioxidants in meat and meat products,Meat Science,2014年04月24日,Vol.98, No.1,pp.21-33,DOI: 10.1016/j.meatsci.2014.03.020
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
C09K 15/00-15/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/FSTA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウ種子抽出物、緑茶抽出物、マツ樹皮抽出物およびザクロ抽出物を含む抗酸化用栄養補助食品組成物であって、
該組成物中のブドウ種子抽出物、緑茶抽出物、マツ樹皮抽出物およびザクロ抽出物の総重量に対して、ブドウ種子抽出物の含量が30~45重量%であり、緑茶抽出物の含量が30~45重量%であり、マツ樹皮抽出物の含量が5~20重量%であり、ザクロ抽出物の含量が5~20重量%であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記組成物中のブドウ種子抽出物、緑茶抽出物、マツ樹皮抽出物およびザクロ抽出物の総重量に対して、ブドウ種子抽出物の含量が35~45重量%であり、緑茶抽出物の含量が30~40重量%であり、マツ樹皮抽出物の含量が5~15重量%であり、ザクロ抽出物の含量が5~15重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物中のブドウ種子抽出物、緑茶抽出物、マツ樹皮抽出物およびザクロ抽出物の総重量に対して、ブドウ種子抽出物の含量が37~42重量%であり、緑茶抽出物の含量が32~37重量%であり、マツ樹皮抽出物の含量が7~15重量%であり、ザクロ抽出物の含量が7~15重量%である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
充填剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記充填剤が、米粉、ビタミンC、エキナシア、エルダーベリー抽出物およびエルダーフラワー抽出物から選択される1種以上の物質である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
哺乳動物または鳥類のウイルス性感染症の治療において使用するための、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ウイルス性感染症が、風邪およびインフルエンザから選択される呼吸器感染症である、請求項6に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化用栄養補助食品組成物に関する。より具体的には、本発明は、ブドウ種子抽出物および緑茶抽出物を含む組成物に関する。本発明の組成物は、哺乳動物の風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症の治療において使用される。本発明は、ブドウ種子抽出物および緑茶抽出物を含む抗酸化用栄養補助食品組成物であって、該組成物中の該ブドウ種子抽出物の含量が、該ブドウ種子抽出物と該緑茶抽出物の総重量の40~60重量%であること、および該組成物中の該緑茶抽出物の含量が、該ブドウ種子抽出物と該緑茶抽出物の総重量の60~40重量%であることを特徴とする組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
ブドウ種子抽出物および緑茶抽出物は、栄養補助食品として知られている。ブドウ種子抽出物は、ブドウ種子から工業的に生産され、抗酸化物質を極めて豊富に含み、通常95%以上のプロアントシアニジンを含むオリゴメリックプロアントシアニジン複合体であり、様々な治療的特性を有している可能性が示唆されている。ブドウ種子抽出物は、市販品として容易に入手でき、通常、赤褐色の微粉末の形態で提供されている。ブドウ種子抽出物は、ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera L.)の種子から水とエタノールで抽出したものが市販されている。ブドウ種子抽出物は、高コレステロール、アテローム性動脈硬化症、黄斑変性、血行不良、神経損傷などの疾患の治療に有益である可能性が示唆されている。また、緑茶抽出物も容易に入手可能な材料であり、黄褐色の微粉末として提供されている。緑茶抽出物は、チャノキ(Camellia sinensis)の葉からアルコール溶液で抽出したものが市販されている。緑茶抽出物は、中国伝統医学において、頭痛から抑うつまで様々な病態の治療に何世紀にもわたって使用されている。緑茶抽出物は、フラバノール、フラバンジオール、フラボノイドなどのポリフェノール類を高濃度で含むことが知られている。緑茶抽出物は、通常95%以上のポリフェノール類を含む。緑茶に含まれるポリフェノール類としては、主に、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキンおよび没食子酸エピガロカテキン(EGCGとしても知られている)からなる6種のカテキン化合物が挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
ブドウ種子抽出物および緑茶抽出物の抗酸化作用は知られているが、本発明者らは、これら2種の物質を前述の量で組み合わせた場合、得られた混合物の抗酸化活性は、ブドウ種子抽出物単独での活性と緑茶抽出物単独での活性を合わせたものよりも大きくなることを見出した。したがって、本発明者らは、特定の割合で混合物中に含まれるブドウ種子抽出物および緑茶抽出物が相互作用して相乗効果を発揮し、それによって、該混合物の抗酸化活性が達成されると見られることを発見した。
【0004】
さらに、本発明者らは、前述の相乗効果に加えて、前記組成物にマツ樹皮抽出物およびザクロ抽出物の少なくとも一方がさらに含まれている場合、さらなる相乗効果が得られることを見出した。マツ樹皮抽出物は、黄褐色の微粉末として容易に市販品を入手可能である。マツ樹皮抽出物は、95%以上のオリゴメリックプロアントシアニジン(OPC)を含むことが知られている。ザクロ抽出物は、薄灰色または褐色の微粉末として市販品を入手可能であり、エラグ酸を40~90%含むことが知られている。ザクロ抽出物は、ザクロの種子から得られる。本発明の組成物は、マツ樹皮抽出物とザクロ抽出物の両方を含むことが好ましい。
【0005】
したがって、本発明の好ましい一実施形態によれば、本発明の組成物は、該組成物中のブドウ種子抽出物、緑茶抽出物、マツ樹皮抽出物およびザクロ抽出物の総重量に対して、ブドウ種子抽出物30~45重量%、緑茶抽出物30~45重量%、マツ樹皮抽出物5~20重量%およびザクロ抽出物5~20重量%を含む。また、本発明の組成物は、該組成物中のブドウ種子抽出物、緑茶抽出物、マツ樹皮抽出物およびザクロ抽出物の総重量に対して、ブドウ種子抽出物35~45重量%、緑茶抽出物30~40重量%、マツ樹皮抽出物5~15重量%およびザクロ抽出物5~15重量%を含むことがより好ましい。さらに、本発明の組成物は、該組成物中のブドウ種子抽出物、緑茶抽出物、マツ樹皮抽出物およびザクロ抽出物の総重量に対して、ブドウ種子抽出物37~42重量%、緑茶抽出物32~37重量%、マツ樹皮抽出物7~15重量%およびザクロ抽出物7~15重量%を含むことが最も好ましい。
【0006】
本発明の組成物は、別の原料をさらに含んでいてもよく、たとえば1種以上の充填剤を含んでいてもよい。該充填剤としては、米粉、ビタミンC、エキナシア、エルダーベリー抽出物、エルダーフラワー抽出物、ならびにRibes属およびRubus属のベリー類(クロフサスグリ(Ribus nigrum)、ブラックベリー(Rubus fruticosus)、ラズベリー(Ribus idaeus)、アカフサスグリ(Ribus rubrum)など)の抽出物が挙げられる。
【0007】
本発明の組成物は、特に、哺乳動物(ヒトなど)および鳥類のウイルス性感染症の治療、特に、風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症の治療において使用される。また、本発明の組成物を摂取したヒトにおいて帯状疱疹が急速に回復したという事例報告を受けていることから、本発明の組成物は、ヒトにおける帯状疱疹の治療に効果的であると考えられる。さらに、本発明の組成物は、ラクダ痘に感染したラクダの治療において使用することができると考えられる。ラクダ痘は、天然痘の病原体である痘瘡ウイルスと密接に関連するラクダ痘ウイルスによって引き起こされるウイルス性皮膚疾患である。
【0008】
さらに、本発明は、哺乳動物または鳥類のウイルス性感染症(特に呼吸器感染症)を治療する方法であって、本発明による前記組成物を哺乳動物または鳥類に投与することを含む方法を提供する。本発明の方法は、ヒトの治療に有用である。しかし、本発明の方法は、非ヒト哺乳動物および鳥類の治療に使用することもできる。非ヒト哺乳動物としては、ウマ、ラクダ、イヌおよびネコが挙げられる。鳥類としては、ニワトリおよびその他の家禽が挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、特に、最初から抗生物質の使用に頼ることなく、感染症を治療することができるという利点がある。感染症がウイルス性であると見られる場合、たとえそうであると確認できなくても、本発明の組成物を該感染症の罹患者に摂取させてもよく、投与してもよい。24時間後に、罹患者自身が改善していないと感じたり、かつ/または血液試料を使用して作製した発光曲線において改善が認められなかった場合は、抗生物質の投与を考慮に入れてもよい。感染症が細菌性の場合、発光曲線は特徴的な形状を示すことから、感染症が本発明の組成物に反応性を示さない場合、抗生物質の使用を決定することができる。さらに、抗生物質が使用されたにも関わらず、発光曲線において、使用した抗生物質に対する反応が認められない場合、別の抗生物質を使用して患者を治療することを推奨することができる。したがって、本発明によって、不必要な抗生物質の使用を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】個人Iから採取した試料を使用して作製した発光曲線と、正常健常者に関連する標準曲線を示す。
【
図3】試験期間にわたって個人Iから採取した血液試料を使用して作製したすべての発光曲線を重ねたグラフを示す。
【
図4】
図3に示した発光曲線の最大反応を示す棒グラフである。
【
図5】試験期間にわたって個人IIから採取した血液試料を使用して作製したすべての発光曲線を重ねたグラフを示す。
【
図6】
図5に示した発光曲線の最大反応を示す棒グラフである。
【
図7】個人IIIから採取した血液試料を使用して作製したすべての発光曲線を重ねたグラフを示す。
【
図8】
図7に示した発光曲線の最大発光反応を示す棒グラフである。
【
図9】個人IVから採取した血液試料を使用して作製したすべての発光曲線を重ねたグラフを示す。
【
図10】
図9に示した発光曲線の最大発光反応を示す棒グラフである。
【
図11】A~B)個人Vから採取した血液試料を使用して作製した発光曲線と、基準としての正常基準曲線の形状Aを示す。C)正常基準の最大発光反応と、
図11Aおよび
図11Bに示した曲線の最大発光反応を示す棒グラフである。
【
図12】個人VIから採取した血液試料から作製した発光曲線と、正常健常者に関連する基準曲線を示す。
【
図13】個人VIIから採取した血液試料を使用して作製した発光曲線と、正常健常者に関連する基準曲線を示す。
【
図14】個人VIIIから採取した血液試料を使用して作製した発光曲線と、正常健常者に関連する基準曲線を示す。
【
図15】
図14に示した発光曲線の最大発光反応を示す棒グラフである。
【
図17】スポーツ選手から採取した血液試料を使用して作製した発光曲線と、正常健常者に関連する基準曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ヒトに対する1回投与量は、通常、400~500mgである。通常、カプセルまたは錠剤の形態で経口投与する。しかし、本発明の組成物は、水性懸濁剤として投与することもできる。ウマに投与する場合の用量は、通常、ヒトに対する用量の約5倍である。同様の用量をラクダの治療に使用してもよい。しかしながら、ラクダは偽反芻動物であるため、液体形態の本発明の組成物がラクダの胃に到達しないようにすることが重要である。ラクダを治療する場合、注射器を使用して本発明の組成物を口腔内に送達し、その際に、本発明の組成物を口腔後部の粘膜上に注意深く送達し、血液中に直接吸収されるようにすることが好ましい。イヌ、ネコおよびその他の小型哺乳動物の治療では、食餌の上に振りかけたり、食餌中に混ぜたりするか、あるいはウマやラクダに使用されるような液体形態で送達することができる。1回投与量は動物の体重に応じて変更する必要があることは言うまでもない。ニワトリおよびその他の鳥類では、食餌および/または飲料水に混ぜて本発明の組成物を送達することができる。
【0012】
本発明者らは、症状が現れる前であっても、ヒト体内の感染因子の存在を検出することができることを過去に見出しており、これは、酸化剤と反応して光を発する発光試薬を、ヒト体内から得られた白血球と接触させ、該白血球と該発光試薬の混合物に活性化剤を加え、発光を連続的にモニターおよび/または測定することによって実施することができる。この方法によって、本発明の組成物の投与後における体内での該組成物の効果をモニターすることができる。
【0013】
したがって、本発明の組成物の効果のモニタリングは、
a)酸化剤と反応して光を発する発光試薬を、個体から提供された血液試料中の白血球または該血液試料から得られた白血球と接触させること;
b)前記白血球と前記発光試薬の混合物に活性化剤を加えること;
c)前記活性化剤の添加前から該活性化剤の添加後までの所定時間にわたって、前記発光試薬から生じた光を連続的にモニターおよび/または測定すること;ならびに
d)感染因子の存在を判断するために発光を評価すること
を含む方法によって行うことができる。
【0014】
前記方法は、試験を受ける個体から採取された血液試料中に含まれる白血球または該血液試料から得られた白血球に対して実施される。また、この試験は、(任意で希釈した)全血または白血球含有単離物(単離した白血球細胞など)を使用して実施することもできる。言うまでもなく、全血から白血球を単離する方法はよく知られている。この方法による試験は、少量の試料で実施することができ、たとえば、個体を針で突いた小さな穴から得られた試料などでも実施できる。
【0015】
前記方法によれば、酸化剤と反応して光を発する発光試薬を、血液試料(通常は希釈したもの)または全血から単離した白血球試料と接触させる。このような発光試薬は、当技術分野で一般によく知られており、例として、ルシゲニン、ルミノール(3-アミノフタルヒドラジド、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン)、イソルミノール(4-アミノフタルヒドラジド)、MCLA(5-(メトキシフェニル)-2-メチル-3,7-ジヒドロイミダゾール[1,2-a]ピラジン-3(7H)-オン塩酸塩)および海洋性二枚貝Pholas dactylusに由来する発光タンパク質であるPHOLASIN(商標)(PHOLASINはKnight Scientific Limitedの登録商標である)が挙げられる。PHOLASINは、スーパーオキシドアニオンやその他の活性酸素含有化学種(ROS)などのフリーラジカルに対して超感受性を示し、ペルオキシダーゼなどの酵素との反応性を有することから、前記方法において使用することが好ましい。さらに、Pholas dactylusに由来する発光タンパク質の合成等価体を使用することもできる。
【0016】
白血球と発光試薬の混合物に活性化剤を加えて、白血球のNADPHオキシダーゼ系を刺激する。この刺激により生成されたフリーラジカルおよび/または活性酸素種によって発光試薬が励起され、発光試薬から光が発生する。使用してもよい活性化剤としては、受容体刺激剤であるN-ホルミル-メチオニル-ロイシル-フェニルアラニン(fMLP)、およびホルボールエステルであるホルボール-12-ミリスタート-13-アセタート(PMA)が挙げられる。PMAは、細胞内に入り、プロテインキナーゼCを直接活性化する。添加されたfMLPとPMAは協働して、モニターされる細胞表面上のNADPHオキシダーゼを活性化させるとともに、二次顆粒が見られる白血球の細胞膜上のNADPHオキシダーゼを活性化させることができる。PMAは、細胞全体のNADPHオキシダーゼを活性化するが、その速度はfMLPよりも遅い。さらにPMAは脱顆粒も促進する。また、血小板活性化因子(PAF)は、fMLPとPMAの組み合わせを使用した場合と同様の作用を発揮することから、血小板活性化因子(PAF)を使用することもできる。血小板活性化因子(PAF)は、fMLP受容体に結合し細胞に入る。また、抗Fc受容体抗体やリポ多糖類(LPS)などのその他のメディエーターを、fMLPもしくはPAFに対する細胞の反応が誘導される濃度、またはフリーラジカルの産生が実際に刺激されて酵素含有顆粒の放出が誘導される濃度で使用してもよい。
【0017】
前記方法によれば、発光試薬と白血球の混合物への活性化剤の添加前から該活性化剤の添加後までの所定時間にわたって、発光試薬から生じた光をモニターおよび/または測定する。発光は、通常、ルミノメーターを使用してモニターおよび/または測定する。発光試薬としてPHOLASINを使用した場合は、白血球の活性化前に、静止発光として知られる弱い光が発せられるが、活性化剤を添加すると、発光量が増加して、白血球の刺激の程度により決まる発光量が得られ、観察時間中の発光量が、活性化剤が添加されてからの経過時間に応じて変動する。したがって、発光がモニターおよび/または測定される所定時間にわたって、白血球と発光試薬の混合物に活性化剤を添加した効果、すなわち白血球の反応量が観察される。所定時間は活性化剤の種類に応じて選択され、すなわち、活性化剤が細胞表面の受容体に結合することにより白血球を活性化するのか(fMLPなどで見られる)、細胞膜の内側から白血球を活性化するのか(すなわちPMA)、またはこれらの組み合わせによって白血球を活性化するのか(血小板活性化因子などで見られる)によって選択される。試験溶液中の白血球の濃度および/または発光試薬の濃度に応じて、アッセイの実施時間および使用するルミノメーターの種類が決まる。マイクロプレート用ルミノメーターでアッセイを行う場合、チューブ用ルミノメーターでアッセイを行う場合よりも、通常、1つの試料のアッセイの完了に要する時間は長くなる。測定時間は通常30分未満であり、20分未満であることが好ましく、15分未満であることがより好ましい。さらに、前記方法を標準化して、活性化剤を添加してから通常5分間実施されるような、より迅速なアッセイを構築することも可能である。
【0018】
発光試薬による発光は、所定時間内の時間の経過に従って記録することが好ましい。研究過程において本発明者らは、時間に対して発光強度をプロットした発光曲線を作製したところ、驚くべきことに、予想外にも、感染因子による感染を受けた個体では、正常で体調が良好な健常者から採取した白血球を使用して作製したコントロール発光曲線とは異なる特徴的な発光曲線が得られることを見出した。たとえば、白血球と発光試薬の混合物に活性化剤を添加した後に記録された発光強度のピークおよび/または発光曲線の全体的な形状を、コントロール発光曲線と比較することによって、試験を受けた個体の健康および身体状態における1つ以上の問題点が示されることがあることが見出された。正常で体調が良好な健常者から採取した血液試料から得た白血球を使用して作製されたコントロール発光曲線の形状は、活性化剤の添加後、即座に発光が急速に増加してピークに達し、その後、時間の経過とともに発光がピーク値から次第に有意に減少して、数分以内に徐々に低値に戻るという特徴を有する。さらに、本発明者らは、385人の平均反応曲線±1標準偏差(SD)から、前述の「正常」な曲線形状を有する基準曲線を作製することに成功した。この基準曲線の高さおよび平均曲線下面積によって、非常に良好な健康状態を示す発光反応の範囲が定義される。
【0019】
感染因子に感染した個体から採取された血液試料から得た白血球を使用して作製された曲線は、コントロール曲線すなわち基準曲線と比較して、血液試料の採取時に該個体が感染症の症状を経験しているかどうかに関係なく、コントロールよりも発光ピークが高値となることを特徴とする過剰反応を示す。受容体刺激剤fMLPによる刺激後に、基準範囲の上限よりも有意に高いピークが急速に発生した場合、白血球が反応を示している感染因子は通常ウイルスである。感染症が進行すると、全体的な曲線の形状は、感染症の初期段階で得られた曲線よりも少し丸みを帯びるようになる。しかしながら、ウイルスに白血球が曝露した結果として得られる丸みを帯びたこの曲線形状は、さらに時間が経過してからピークが見られる曲線下面積が有意に大きい極めて丸みを帯びた曲線と混同すべきではない。さらに時間が経過してからピークが見られるさらに丸みを帯びたこの曲線は、この形状の曲線を有する個体が抗生物質による治療に反応性を示し、治療の経過とともに健康状態が非常に良くなり、血液検査において発光のピークが減少したことから、細菌によるものであると間接的に確認されている。したがって、症状が現れる前に発光曲線の高さが正常基準範囲の上限よりも高くなる場合、個体の健康状態が悪い可能性があること、および血液試料を採取した時点からある一定期間内(たとえば1日以内または2日以内)に感染症の症状が現れる可能性があることを該個体に知らせることができ、有用である。
【0020】
細菌性感染症に罹患した個体から採取した試料の発光反応曲線では、反応が極めて増強する傾向があり、特徴的な形状を示す。したがって、前述の試験手順を行うことによって、ウイルス性感染症と細菌性感染症を識別することが可能となる。このように、前述の試験手順によって、抗生物質を処方してもよい細菌性感染症に罹患した個体と、抗生物質の処方が不要な、ウイルス性感染症に罹患した個体とを特定することができる。
【0021】
識別可能な特徴を有する発光曲線のライブラリーを作製することができ、試験を受ける個体から採取した血液試料から得た白血球を使用して作製した発光曲線と比較するための基準として使用してもよい。このような識別可能な特徴を有する標準曲線に対して比較を行うことによって、試験を受けた個体から得た発光反応が正常であるのか、あるいは異常であるのかを判断することが可能になるだけではなく、コントロールと比較して発光反応が正常でなかった場合、異常が示された理由として考えられるものを特定することが可能となる。この方法によって得られた結果により異常反応が示された個体は、問題を特定するためのより詳細な医療検査を受けるべきであるとして選択されてもよい。
【0022】
前記方法の好ましい一態様によれば、試験を受ける個体から作製された発光曲線は、識別可能な特徴を有する1つ以上の標準曲線と比較され、識別可能な特徴を有する1つ以上の標準曲線の特徴と個体の発光曲線の特徴との間の類似点または相違点に基づいて前記特定を行う。識別可能な特徴を有する1つ以上の標準曲線の特徴と個体の発光曲線の特徴は、曲線の形状、曲線の強度およびその組み合わせから選択されることが好ましい。通常、試験を受ける個体から作製された発光曲線の比較対照としての、識別可能な特徴を有する1つ以上の標準曲線は、感染症に罹患していることが臨床的に確認された個体の血液試料から得た白血球を使用して作製された曲線から選択される。
【0023】
前記方法は、個体の体内において、細菌性感染因子またはウイルス性感染因子などの感染因子の存在を検出するのに有用である。特に、前記方法は、個体において、ライノウイルスまたはインフルエンザウイルスなどの、上気道感染症を起こす感染因子の存在を検出するのに有用である。
【0024】
本発明に従って得られた発光曲線の形状は、活性化剤による活性化に応答した白血球によるフリーラジカルおよび/またはその他の活性物質の産生に依存する。これらの応答は、血液中の白血球の生理学的状態に依存するため、血液試料が採取された患者の生理学的状態または医学的状態と関連する。このように、曲線の形状の主観的な観察は、診断を下すのに非常に有益であるが、曲線を定量する方法を使用すれば、血液中の白血球の異常をより客観的に判断することができ、したがって、より客観的な診断を下すことができる。
【0025】
発光曲線は、ルミノメーターの反応をプロットしたものであり、相対発光量(RLU)で示され、3つの部分からなる。第1の部分は、活性化剤で白血球を刺激する前の発光を記録するものであり、必要であれば別個に分析してもよい。発光曲線の大部分は、上昇と、これに続く下降から構成されている。発光曲線のこの部分全体を1つの単位として分析することができ、または発光曲線のこの部分を、上昇部および下降部に分割し、この2つの部分を別々に分析することもできる。
【0026】
適切なソフトウェアを使用して、ax3+bx2+cx+dの一般式で示される三次式を導くことができ、この式は、発光曲線の大部分に密接に近似する。様々な曲線から算出されたa、b、cおよびdの各値を比較することによって、曲線を定量することが可能であり、したがって、様々な患者から採取した血液試料を使用して得た複数の反応をより客観的に比較することが可能となる。
【0027】
前記方法は、活性化された白血球の存在下において、発光試薬からの発光をモニターおよび/または測定することができる従来の装置を使用して実施することができる。前記方法は、非常に持ち運びが簡単であり、コンパクトで、簡便に使用できる携帯型ルミノメーターにおいて実施するのに適している。このような装置は、分析対象の白血球試料と発光試薬の混合物を収容するための手段;該混合物に活性化剤を導入するための手段;前記活性化剤の導入前から該活性化剤の導入後までの時間にわたって、前記発光試薬からの発光をモニターおよび/または測定するための手段;前記発光試薬からの発光量を表示するためのディスプレイ;ならびに片手で該装置をつかむための持ち手を備えている。
【0028】
前述したように、本発明の組成物は、対象において、風邪などの呼吸器感染症の発症を阻止するか、または対象が既に呼吸器感染症に罹患しているのであれば回復を促進すると見られる天然産物を開示された相対的割合で含む。スポーツ選手およびスポーツを嗜む人々では、集中訓練を行ったり、競技または試合に頻繁に参加したりすることによる影響の1つとして極度の筋肉炎症を起こすことがあり、しばしば疲労を伴う。このような状態では、呼吸器感染症やその他の感染症を併発することが多い。筋肉炎症は、訓練を行った通常の結果であり、筋繊維の損傷を伴い、これにより、循環系に炎症メディエーターが放出されるとともに、活性酸素窒素種(RO(N)S)が発生する。循環白血球は、これらの炎症メディエーター(サイトカイン)を検出し、これらに応答して、循環系を去る準備を開始し、炎症部位である筋肉に浸潤する。白血球は筋肉において炎症反応を開始し、フリーラジカルおよびその他の活性酸素種を放出して、化学物質による情報伝達および酵素を損ない、炎症部位にさらに白血球を動員する。本発明者らは、本発明の組成物を投与することによって、ウイルスを原因とする呼吸器感染症からの対象の回復を促進できるだけでなく、疲労および炎症の様々な状態ならびに感染症を起こすその他の原因によって引き起こされる呼吸バースト活性の抑制を対象において促進できることを見出した。以下の実施例において、本明細書で述べた試験手順を使用して本発明の組成物の効果を示す。
【実施例】
【0029】
解説
1.発光曲線
図1A、
図1Bおよび
図1Cは、様々な代表的な発光曲線の形状を示す(基準A~基準Lとして示す)。これらの曲線の形状は、実際の測定に基づく曲線から得たものであり、高さの最大値が常に100%になるように正規化されている。実験または臨床から得られた結果は、曲線の形状と発光反応の強度に基づいて最終的に分類する。
図1A~1Cに示した発光曲線の形状を記号A~Lで示し、これらの各発光曲線の形状に関する簡単な説明を以下の表に示す。
【表1】
【0030】
2.抗酸化能スコア:EC
50
値およびABEL-RAC mgスコア
各濃度の試験物質および試料非含有コントロールからそれぞれ別個の光反応曲線を作製する。結果は、EC50値およびABEL-RACスコアとして示す。EC50(有効濃度(mg))は、(Pholasinとフリーラジカルまたはその他の活性酸素種とを使用して発生させた)光を50%減少させる物質の濃度(g/Lまたはmg/mLで標準化)である。この発光の減少が、試験物質の抗酸化能に相当する。
【0031】
発光を50%減少させるのに必要な物質の量が多ければ多いほど、抗酸化能は低くなる。発光を50%減少させるのに必要な物質の量をEC50(50%有効濃度)と呼ぶ。非常に高い抗酸化作用を有する物質は、非常に低いEC50値を有する。このことの理解をより容易にするため、EC50値を、試験物質に作用させた各フリーラジカルすなわち酸化剤に対する相対的な抗酸化能を示す正のスコア(ABEL-RAC mgスコア)に変換した。たとえば、ペルオキシナイトライトをROSとして使用して作用させた場合、ABEL-RAC mgペルオキシナイトライトとして結果を示す。スーパーオキシドを作用させた場合、ABEL-RAC mgスーパーオキシドとして結果を示す。ABEL-RAC mgスコアは、EC50値の逆数に100を掛けた値である(1/EC50×100)。ABEL-RAC mgスコアが高ければ高いほど、試料の抗酸化能は高くなる。
【0032】
図4では、発光タンパク質であるPholasinの存在下において、特定のフリーラジカルすなわち酸化剤を作用させて、試験試料の抗酸化能を評価する。発光を50%減少させる濃度は、一定範囲の濃度での結果を使用して求め、指数回帰曲線を使用して分析する。テンプレートを使用して、発光を50%減少させる濃度を得る。発光を50%減少させる濃度とは、試料の有効濃度(EC
50)である。EC
50は、式:1/EC
50(mg)×100を使用してABEL-RAC(商標)スコアに変換する。ABEL-RACスコアは、様々なROSを作用させたあらゆる実験において、1mgあたり、1回投与量あたり、製剤中のパーセンテージまたは単位コストあたりで示すことができる。
【0033】
試験物質に対して各ROSを作用させて求めたABEL-RACスコアは、乾燥物1mgあたりまたは液体1μLあたりで示される。いくつかの物質は、いくつかのフリーラジカルに対してその他のフリーラジカルよりも良好な抗酸化作用を示す。
【0034】
それぞれ異なる種類のフリーラジカルまたは非フリーラジカルを使用してROSを作用させる6種の抗酸化アッセイにより実験を行う。具体的には、これら6種の抗酸化アッセイは、
・高濃度スーパーオキシドアッセイ
・ハロゲン化酸化剤(=次亜塩素酸)アッセイ
・ペルオキシナイトライトアッセイ
・ヒドロキシルラジカルアッセイ
・酵素により生成したスーパーオキシドを使用したアッセイ
・ペルオキシルラジカルアッセイ
・一重項酸素アッセイ
である。
【0035】
各原料1mgあたりのスコアを直接公式に当てはめて、最終製品における総ABEL-RACスコアの理論値を求めることができる。次に、得られたスコアの理論値を、最終製品の実際のスコアと比較する。ABEL-RACスコアの理論値に対する実際のスコアの比率を求めることによって、正の相乗効果または負の相乗効果を定量することができる。
【表2】
【0036】
新規な抗酸化用栄養補助食品に含まれる様々な原料のABEL-RAC mgスコアを、いずれもペルオキシナイトライトをROSとして作用させて算出した。
【0037】
【0038】
各成分および最終製剤をそれぞれ抗酸化アッセイに供して、抗酸化活性を測定した。使用したアッセイはABEL-ペルオキシナイトライト抗酸化アッセイ(Knight Scientific Limited)であった。
【0039】
このアッセイには以下の工程が含まれる。
1.分析対象の試料中の固形物を粉砕し、粉砕した試料を50mg/mLの濃度で水に溶解または懸濁する。
2.Pholasin(発光剤)の存在下において、マイクロプレートの各ウェルに各試料を入れて、マイクロプレート用ルミノメーター上でアッセイを行い、各ウェルにおける発光を(0.2秒間)測定し、測定を複数回繰り返す。各回の発光測定間のサイクル時間は、ペルオキシナイトライトアッセイでは38秒で標準化する。
3.アッセイは、ペルオキシナイトライトを生成する試薬をマイクロプレートウェルに注入したゼロ時間から開始する。このアッセイにおいて、ペルオキシナイトライトアニオンは持続的に生成される。スーパーオキシドおよび硝酸が、SIN-1(3-モルホリノシドノンイミン塩酸塩)から同時に遊離し、これらが互いに反応してペルオキシナイトライトアニオン(ONCO-)を生成し、試料物質に作用する。
4.各試験試料および試料非添加コントロールから別々の光反応曲線を作製する。
5.様々な濃度の試料を使用して別々にアッセイを行う。様々な濃度でアッセイを行うことにより、発光を50%減少させることができる物質の濃度、すなわち、試料の有効濃度(EC50)を求める。
6.求めたEC50値から、相対的抗酸化能(RAC)を算出してもよい。RACスコアは、EC50値の逆数に100を掛けた値である。
【0040】
前述したように、ブドウ種子抽出物、緑茶抽出物、米粉および製剤全体をそれぞれ別々に分析した。ペルオキシナイトライト(POX)アッセイにより求めたABEL-RACスコアを以下に示す。前記製剤中の各原料のPOX RACスコアを使用して、各スコアに基づいた製剤への寄与の予測値を求め、以下の表に示した。この予測されたスコアを、製剤全体から得られた実際のスコアと比較した。相乗効果(実際のスコアを予測スコアで除した値)を算出した。
【0041】
【0042】
前記の表に示したように、製剤中の各原料の活性の合計に基づくと、実際の製剤の抗酸化活性は、予測された活性よりも大きいことが分かった。算出された相乗効果は1.51であった。
【0043】
実施例2
ブドウ種子抽出物165mg、緑茶抽出物125mgおよび米粉192.5mgを含む、実施例1のものとは異なる製剤を調製した。実施例1と同様にして、この製剤および各原料を分析した。下記の表に結果を示す。
【0044】
【0045】
前記の表に示したように、製剤中の各原料の活性の合計に基づくと、実際の製剤の抗酸化活性は、予測された活性よりも大きいことが分かった。算出された相乗効果は0.66であり、実施例1の製剤で認められた相乗効果よりも低かった。
【0046】
実施例3
ブドウ種子抽出物150mg、緑茶抽出物132mg、マツ樹皮抽出物50mgおよびザクロ抽出物50mgを含む製剤を調製した。実施例1と同様にして、この製剤および各原料を分析した。下記の表に結果を示す。
【0047】
【0048】
前記の表に示したように、製剤中の各原料の活性の合計に基づくと、実際の製剤の抗酸化活性は、予測された活性よりも大きいことが分かった。算出された相乗効果は1.33であった。
【0049】
実施例4
試験を実施するため、2016年9月23日から週1回、個人Iから新鮮血試料を採取した。2016年9月23日に、個人Iから体調が良いという報告を受けた。2016年9月29日に、該個人から、呼吸器感染症のための体調が悪いという報告を受けた。2016年10月13日に、実施例3に記載の製剤の1回量を個人Iに投与した。
【0050】
血液試料を採取したのと同じ日に、本明細書に記載の方法に従って血液試料を試験した。
【0051】
EDTAを含む試験管に各血液試料を採取した。血液希釈緩衝液2mlを空の試験管に加え、これにEDTA血液20μlを加えて試験用希釈全血試料を調製した。試験管に蓋をし、穏やかに3回転倒混和して、試験管内の内容物を混合した。
【0052】
PHOLASIN用Reconstitution and Assay Buffer(Knight Scientific Limited)222μL、ルミネッセンスエンハンサーである再構築したADJUVANT-K(「ADJUVANT-K」はKnight Scientific Limitedの商標である)50μL、PHOLASIN 125μLおよび希釈した全血50μLをポリスチレン製の透明なキュベットに加えた。再構築したADJUVANT-Kルミネッセンスエンハンサーは、Reconstitution and Assay Buffer 5mLでADJUVANT-Kを再構築することによってあらかじめ調製した。キュベットに蓋をし、キュベットを3回転倒混和することにより内容物を混合した。すべての試薬と血液を含むキュベットをインキュベーターに入れて、37℃で6分間インキュベートした。(インキュベーション時間は、少なくとも5分間でなければならないが、6分間を超えてもよく、2つ以上の試料を同時にインキュベートすることもできる。)
【0053】
6分後に、キュベットの蓋を外し、黒色のチューブエクステンダーを取り付け、試験管用超高感度ルミノメーターABELmeterに挿入した。次に、fMLP 50μlをインジェクションピペットに装填し、ABELmeterに挿入した。
【0054】
図16の左上パネルに、(組み立てる前の)ABELmeterを示す。上中央のパネルに、黒色のチューブエクステンダーを取り付けたキュベットと、インジェクションピペットを示す。右上のパネルに、すべての試薬を含むキュベットをチューブエクステンダーに差し込んでいる様子を示す。左下のパネルに、ABELmeterにセットしたキュベットを示す。下中央のパネルに、fMLPをあらかじめ充填したインジェクションキュベットをABELmeterにセットしている様子を示す。右下のパネルに、すべてのセットが完了し、アッセイを開始する準備ができていることを示す。
【0055】
アッセイを開始し、キュベット中の試料からの発光を、0.5秒間隔で1分間持続的に記録した。1分後にfMLP 50μlをキュベットに分注し、さらに5分間、発光を持続的に記録した。
【0056】
発光プロファイルを、fMLP活性化剤を添加する1分前からfMLP活性化剤を添加した5分後までの時間にわたって発生した光を示す発光曲線として記録した。
【0057】
2016年11月17日に採取した試料から得た発光曲線を
図2に示す。曲線Aは、個人Iから採取した試料を使用して得た発光曲線であり、曲線Bは、正常健常者に関連する標準曲線である。影をつけた部分は、標準曲線Bの周囲の許容範囲を示す。
【0058】
図3は、試験期間にわたって個人Iから採取した血液試料を使用して作製したすべての発光曲線を重ねたグラフを示す。各曲線は、C:2016年9月23日に採取した試料、D:2016年9月29日に採取した試料、E:2016年10月6日に採取した試料、F:2016年10月13日に採取した試料、G:2016年10月20日に採取した試料、H:2016年10月27日に採取した試料、J:2016年11月3日に採取した試料、K:2016年11月10日に採取した試料、およびL:2016年11月17日に採取した試料を示す。これらの曲線のうち、白血球と発光試薬の混合物に活性化剤を添加した後に曲線Fが過剰な反応を示したことが分かる。曲線Fでは、fMLP活性化剤の添加後に発光が極めて急激に増加し、基準曲線(ref)よりも傾斜が急であった。また、曲線Fにおける発光のピークは、基準曲線のピークよりも大幅に高くなっている。本発明の組成物を投与すると(2016年10月13日)、その後に得た血液試料から作製した曲線では発光のピークが低下し、発光曲線の形状が基準曲線の形状に近づいている。
【0059】
前記発光曲線における最大反応を示した棒グラフを
図4に示す。DおよびEでは、本発明の組成物の1回量を投与する前の2016年10月13日まで反応の増強が進行したことから、DおよびEにおける反応の増強は、個人Iが感染症を有することを示している。
【0060】
実施例5
個人IIから最初の血液試料が提供され、実施例4に記載した前記手順に従ってこの試料を試験した。この最初の血液試料は、正常健常者に関連する標準曲線と比較して高いシグナルを示した。同じ日に1日を通して複数の血液試料をさらに採取し、これらの血液試料から得られたシグナルをモニターした。最初の試料を試験した2時間後に、実施例1に記載した組成物をカプセルの形態で前記個人に投与した。前記個人から定期的に血液試料をさらに採取し、実施例4に記載の手順に従って試験した。
【0061】
図5は、試験期間にわたって個人IIから採取した血液試料を使用して作製したすべての発光曲線を重ねたグラフを示す。
図5は以下の曲線を示す。曲線Aは、正常健常者に関連する基準曲線である。曲線Bは、モニタリング期間の開始時に提供された最初の血液試料を使用して作製した発光曲線である(2017年6月20日;時間10:50)。曲線Cは、1時間後に提供された血液試料を使用して作製した発光曲線である(2017年6月20日11:50)。曲線Dは、最初の試料を採取した2時間後に提供された別の血液試料を使用して作製した曲線である(2017年6月20日12:50)。曲線Eは、前記個人が、処方された製剤を摂取した80分後に提供された別の血液試料を使用して作製した曲線である(2017年6月20日14:10)。曲線Fは、前記個人が、処方された製剤を摂取した140分後に提供された血液試料を使用して作製した曲線である(2017年6月20日15:10)。曲線Gは、前記個人が、処方された製剤を摂取した203分後に提供された血液試料を使用して作製した曲線である(2017年6月20日16:13)。曲線Hは、さらに60分後に提供された血液試料を使用して作製した曲線である(2017年6月20日17:13)。前記発光曲線における最大反応を示した棒グラフを
図6に示す。
【0062】
図5および
図6に示したように、製剤の投与後、初期では反応の増加が観察されたが(曲線E)、その後、シグナルは急速に低下し(曲線F、曲線G、曲線H)、白血球の反応が抑制された。後期のシグナルにより示された白血球反応の抑制は、本発明の製剤の抗酸化活性を白血球が吸収したことによるものであると説明することができる。後期の曲線F~Hでは、曲線の形状が徐々に改善し、基準曲線Aの形状に近づいた。
【0063】
実施例6
試験を実施するため、2016年9月23日から数日間隔で個人IIIから新鮮血試料を採取した。2016年9月23日に、前記個人から体調が良いという報告を受けた。2016年9月29日に、該個人から、風邪のための体調が悪いという報告を受けた。その日に、実施例3に記載の組成物の1回量を前記個人に投与した。血液試料を採取し、実施例4に記載の試験手順に従って試験した。再び症状がはっきりと確認されたため、2016年10月13日に採取した試料から得た結果に従って、その日に、前記組成物の1回量を前記個人にさらに投与した。
【0064】
図7は、前記個人から採取した血液試料を使用して作製したすべての発光曲線を重ねたグラフを示す。各曲線は、M:2016年9月23日に採取した試料、N:2016年9月29日に採取した試料、O:2016年10月3日に採取した試料、P:2016年10月6日に採取した試料、Q:2016年10月13日に採取した試料、R:2016年10月27日に採取した試料およびS:2016年11月3日に採取した試料を示す。
【0065】
曲線Nは、白血球と発光試薬の混合物にfMLP活性化剤を添加した後、基準曲線(ref)と比べて反応の増強が認められ、発光が極めて急激に増加している。したがって、曲線Nで示される反応は、感染症の存在を示している。2016年9月29日に本発明の組成物を投与した後に採取した次の2つの血液試料では、発光反応曲線は抑制されていた。しかしながら、その後、感染症の進行が再び確認されたため(曲線Q参照)、2016年10月13日に本発明の組成物の1回量をさらに投与した。最後に得た血液試料から得た曲線Sおよび曲線Tでは、光反応が、基準曲線と比較して正常な状態に戻っていることが分かる。
【0066】
図8は、曲線M~Tの最大発光反応を示す棒グラフである。曲線Nおよび曲線Qに見られる反応の増強は、試験した個人における試料の採取時の感染症の程度を示している。
【0067】
実施例7
試験を実施するため、2016年9月23日から数日間隔で個人IVから新鮮血試料を採取した。その日に、前記個人から、風邪またはインフルエンザのような症状があるという報告を受けたため、その日のうちに、実施例3に記載の組成物の1回量を前記個人に投与した。血液試料を採取し、実施例4に記載の試験手順に従って試験した。2016年9月23日に採取した試料から得られた結果では、基準と比較して光反応がわずかに増加していた。2016年10月3日、すなわち前記個人に本発明の組成物を投与した10日後に血液試料を採取して試験したところ、2016年9月23日よりも光反応が低下したが、その日のうちに前記個人から、未だ体調が優れないという報告を受けた。さらに、2016年10月6日に採取した血液試料を使用して試験を行ったところ、非常に高い光反応シグナルが示された。この試料から得られた光反応曲線は、非常に高いピークと丸い形状を示し、これは細菌性感染症に特徴的なものであった。その日のうちに前記個人に抗生物質を投与し、細菌性感染症の治療を実施した。7日後に、前記個人から体調が良くなったとの報告を受けた。2016年10月13日に血液試料を採取して試験を行ったところ、光反応が大幅に低下して基準に近くなった。
【0068】
図9は、個人IVから採取した血液試料を使用して作製したすべての発光曲線を重ねたグラフを示す。各曲線は、U:2016年9月23日に採取した試料、V:2016年10月3日に採取した試料、W:2016年10月6日に採取した試料およびX:2016年10月13日に採取した試料を示す。曲線Uは、基準曲線(ref)と比較して反応が増強していることを示す。曲線Vは、曲線Uおよび基準曲線と比較して反応が抑制されていることを示す。曲線Wは、曲線Vから3日後に作製したものであり、反応が大幅に増強していることを示す。この曲線の非常に高いピークと丸い形状は、細菌性感染症の存在を示している。細菌性感染症の治療を施した1週間後に血液試料を採取し、試験を実施し、曲線Xを得て基準曲線と比較したところ、正常よりも反応がわずかに高いことが示されたが、正常値に近づいていた。曲線U~Xの最大発光反応を棒グラフに示す(
図10)。
【0069】
この実施例では、前記試験手順によって、血液試料から得られる光反応に基づき、ウイルス性感染症と細菌性感染症を識別することができることが示されている。この試験手順を利用することによって、細菌性感染症の存在を示す光反応が得られるまで、疾患に罹患した人への抗生物質の投与を待つことが可能となるため、ウイルス性感染症の徴候のみを示す人に対する抗生物質の投与を回避することができる。
【0070】
実施例8
男性の個人Vは、少し体調がすぐれず、ストレスを感じていることを訴えていた。その時の血液試料を前記個人から採取し、実施例4に記載の手順に従ってこの試料を試験した。この血液試料を使用して得た発光曲線を
図11A(1)に示す。さらに、基準としての正常基準曲線の形状Aを
図11A(1)に示す。
図11A(1)から分かるように、前記血液試料を試験することにより得られた発光曲線の形状は、基準曲線の形状Fおよび形状G(
図1B)と似ていることから、感染症を発症している可能性が示唆される。1時間後に、前記個人から別の血液試料を採取し、前記手順に従って試験した。1時間後に採取したこの試料を使用して得た発光曲線を
図11A(2)に示す。図から分かるように、反応は正常範囲の上限を超えていた。次に、実施例3に記載の4種の原料からなる栄養補助食品組成物を含むカプセル1個を前記個人に摂取させた。さらに1時間経過後、前記個人から別の血液試料を採取し、前記手順に従って試験した。この血液試料から得た発光曲線を
図11B(3)に示す。この図では、
図11A(2)よりもさらに高い反応が示されている。
図11B(3)に示した試験を行った1時間後(すなわち栄養補助食品組成物を摂取した2時間後)に別の血液試料を採取し、この血液試料を前記手順に従って試験した。得られた発光曲線を
図11B(4)に示す。この図からは、反応シグナルが、
図11B(3)で示されたものよりも低下していることが分かる。さらに1時間経過後(すなわち前記個人が栄養補助食品組成物を摂取した3時間後)、別の血液試料を採取して試験した。得られた発光曲線の形状(
図11B(5))は、(
図11B(4)と比較して)反応がさらに低下し、正常範囲内(正常基準曲線の形状A参照)であったことを示している。曲線の形状は、前記個人が栄養補助食品組成物を摂取する前に作製した
図11A(1)および11A(2)に示された曲線の形状よりも丸みを帯びており、ピークがはっきりと右にシフトしていた。
【0071】
図11Cは、正常基準の最大発光反応と、
図11A(1)および(2)ならびに
図11B(3)、(4)および(5)に示した曲線の最大発光反応を示す棒グラフである。試験を受けた個人が栄養補助食品組成物を摂取した時点も示す。
【0072】
実施例9
個人VIから提供された血液試料から発光曲線(
図12A;2)を作製したところ、正常健常者に関連する基準曲線(
図12A;1)と比較して異常な反応が示された。第1の試料を採取してから1時間後に第2の試料を採取し、発光曲線を作製したところ(
図12B;3)、なお異常な形状を示していた。次に、マツ樹皮抽出物50mgとザクロ抽出物100mgを含む製剤をカプセルの形態で前記個人に投与した。これら2種の成分を含む製剤を投与した1時間後に、前記個人から血液試料を採取した。この血液試料から発光曲線を作製したところ(
図12C;4)、細胞の反応が低下したことが示されたが、曲線の形状はほとんど変化していなかった。実施例3に記載の4種の成分を含む製剤をカプセルの形態で前記個人に投与し、この投与の1時間後に別の血液試料を採取した。この血液試料から発光曲線を作製したところ(
図12D;5)、形状が基準曲線に近づいていた。前記4種の成分を含む製剤を投与した2時間15分後に採取した血液試料を使用して作製した発光曲線から、曲線の形状が徐々に変化して、基準曲線にさらに近づいたこと(
図12E;6)、およびシグナルが低下して正常範囲内となったことが確認された。
【0073】
実施例10
個人VIIは、ストレスを感じ、疲れていることを訴えていた。前記個人から提供された血液試料を使用して発光曲線を作製したところ(
図13A;1参照)、基準曲線の形状Fと似た形状が示され(解説の節の「1.発光曲線」および
図1Bを参照されたい)、シグナルが低いことから、ストレスおよび疲労(抑うつ反応)が示唆された。実施例3に記載の製剤をカプセルの形態で前記個人に投与し、この投与の1時間後に該個人から別の血液試料を採取し、
図13Bに示す発光曲線2を得た。曲線2は、(
図13A;1と比較して)曲線が顕著に右にシフトし、反応が正常範囲の上限を超えていることを示している。さらに3時間経過後、別の血液試料を採取し、この血液試料から発光曲線を作製したところ(
図13C;3)、正常範囲内のシグナルが示された。曲線3では、fMLPの注入が遅延したため曲線がわずかに移動したが、曲線全体は右に有意にシフトしている。
【0074】
実施例11
2016年10月6日に個人VIIIから体調が優れないという報告を受けた。その日に前記個人から血液試料を採取し、実施例4に記載の手順に従って試験した。この試料を使用して作製した発光曲線(
図14;曲線B)は、正常健常者に関連する基準曲線(
図14;曲線A)と比較して反応が増加していた。提示された症状を考慮に入れて、2016年10月6日に前記個人に抗生物質を投与した。1週間後(2016年10月13日)に採取した血液試料を試験して、この試料から発光曲線を作製したところ(
図14;曲線C)、さらに増強した反応が示された。2016年10月20日および2016年10月27日に採取した血液試料を使用して発光曲線をそれぞれ作製したところ(
図14;DおよびE)、反応が徐々に低下しており、2016年10月27日には前記個人から体調が良いとの報告を受けた。しかし、2016年11月3日には前記個人から再び体調が優れないとの報告を受けた。その日に採取した血液試料を使用して発光曲線を作製したところ(
図14;曲線F)、強い反応が示され、基準曲線Aと比較して異常な曲線形状であった。2016年11月3日に実施例3に記載の製剤をカプセルの形態で前記個人に投与し、2016年11月10日、17日および24日に週1回、再度製剤を投与した。これらの日に採取した血液試料を使用して曲線を作製したところ(曲線G、曲線Hおよび曲線I)、反応が徐々に低下したことが示された。1週間後(2016年12月1日)、前記個人から気分が良いという報告を受け、その日に採取した血液試料を使用して光反応曲線を作製したところ(
図14;曲線J)、反応がさらに低下したことが示された。2016年12月8日にも、前記個人から気分が良いことを報告されていたが、その日に得られた血液試料から発光曲線を作製したところ(
図14;曲線K)、基準曲線Aに形状が近づいていたものの、反応が増強しており、正常範囲をわずかに超えていた。反応が増強した理由として、血液試料の採取前に前記個人が運動を行った可能性、および体調が良かったという事実があったものの、別の感染症に感染しており、その症状が出ていなかった可能性が考えられる。しかしながら、後者の可能性は、試験後に前記個人から報告されなかった。
【0075】
図15は、
図14に示した曲線A~Kの最大発光反応を示す棒グラフである。
【0076】
実施例12
障害競走馬(ナショナルハントレースに出場するウマ)を主に訓練する厩舎で試験を行った。100頭を超えるウマが常時飼育されていたため、よく似た症状のウイルス性呼吸器感染症がほぼ同じ期間にわたって持続していた年齢と性別が一致した複数のペアを、厩舎副長の手により非常に容易に見出すことができた。発症した症状のうちのいくつかは重篤な漏出(鼻水)を示し、咳および恐らくは発熱を伴うことが多く見受けられた。この試験では、肺の奥深くまで進行した高度の症状を呈し、二次細菌感染症を発症したウマは除外した。この試験に選択したウマはいずれも呼吸器感染症を有していたため、競馬に出場するための訓練は一時中断されていた。5対のウマを試験に選択した。
【0077】
各対のウマにおいて、一方を治療対象のウマとして無作為に選択し、もう一方を非治療コントロールとした。治療対象の各ウマには、実施例3に記載の製剤の初回量を投与した。この1回量は、50mLネジ蓋付ポリプロピレン製遠心管中で水30mLに製剤2gを混合することによって調製した。遠心管を穏やかに少なくとも5回転倒混和することによって、激しく振盪することなく、製剤粉末を穏やかに溶解/分散させた。遠心管中の全量を50mLの投薬用シリンジに充填し、ウマの咽頭の後方から下方に送達することにより胃へと直接注入した。治療対象のウマには、試験開始時の最初の2日間は1日3回投薬し、その後4日間は1日2回投薬した。
【0078】
結果:
治療対象のウマはいずれも前記治療に反応性を示した。症状がそれほど重くないウマでは、対になった非治療コントロールと比べて24時間以内に良好な改善が示された。重度の症状を有するウマでは、改善が見られ始めるまでに48時間を要した。コントロールウマにおける感染症の症状は、治療対象のウマと比べていずれも悪化した。1つの事例では、治療対象のウマは36時間以内にトレーナーを背中に乗せて走ることが可能となったが、非治療コントロールは、厩舎の隅で非常に元気がなさそうに見えた。治療対象のウマはいずれも5日以内に人を乗せて走れるほどに十分な回復を見せた。非治療コントロールのうち3頭は、最終的に3週間後に回復したが、2頭の非処置コントロールは、二次細菌感染症が示唆される症状を発症したため、厩舎の獣医により治療を行った。
【0079】
実施例13
非常に多数のレース用ラクダを診察してきた経験のある熟練の獣医の手によって、各回5頭の罹患ラクダに対して2度の機会にわたり実施例3に記載の製剤を使用した。ラクダへの投与に使用した方法は、ウマに対する投与と同様とし、製剤2.0~2.2gを水30mlと混合し、50mlの投薬用シリンジに充填した。ラクダの口腔粘膜に向けて投薬用シリンジから液状製剤を吐出して、血流中に直接吸収させた。ラクダは偽反芻動物であるため、第一胃に向けて製剤を直接投与すると、血液中への吸収が恐らくは何日も遅延すると考えられる。さらに、ラクダ同士で治療を比較することは不可能であると考えられた。ここで使用した口腔内フラッシュ法と呼ばれる手順は、ラクダに薬物を送達する際に通常使用される方法である。1度目の投与後、特に風邪様症状およびインフルエンザ様症状を有していたラクダから良い反応が得られたとの報告を獣医から得た。この獣医の報告によると、治療を行ったラクダは1週間未満で回復したが、治療を行わなかったラクダでは、回復までに10~15日を要した。
【0080】
2度目の投与では、前記獣医の手によって前述と同様に、前記罹患ラクダに投与した前記製剤の1回量2.2gを1日3回投与することにより治療を開始した。24時間以内にラクダの咳が止まり、それから数日以内に鼻水も完全に止まったという報告を獣医から得た。ラクダは完全に回復し、次の週にはレースに出場できるほどまでに体調が良くなったことが認められた。
【0081】
実施例14
2016年9月23日にスポーツ選手から、頻繁に疲労を感じ、呼吸器感染症の症状があるという報告を受けた。その日のうちに採取した血液試料を使用して発光曲線を作製した(
図17、曲線B)。2016年9月23日の試験後、カプセル形態の実施例3に記載の製剤を前記スポーツ選手に摂取させた。前記スポーツ選手の自覚、および2016年10月3日に提供された血液試料を使用して作製した発光曲線Cから、感染症の改善が示された。2016年10月6日に、前記スポーツ選手から疲労を感じるという訴えを得た。その日のうちに提供された血液試料を使用して発光曲線Dを作製したところ、非常に高いシグナルとピークまでの時間の延長を示した曲線の形状より強い感染症が示唆され、恐らくは細菌性感染症であることが示された。適切な抗生物質で治療したところ、その後の試験結果(曲線E、曲線F、曲線Gおよび曲線H)から前記スポーツ選手の症状が改善したことが示された。