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特許7110334モリブデン、ケイ素及びホウ素を含有する合金からなる粉末、この粉末の使用並びにこの粉末製のワークピースの付加製造方法
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  • 特許-モリブデン、ケイ素及びホウ素を含有する合金からなる粉末、この粉末の使用並びにこの粉末製のワークピースの付加製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】モリブデン、ケイ素及びホウ素を含有する合金からなる粉末、この粉末の使用並びにこの粉末製のワークピースの付加製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20220725BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20220725BHJP
   C22C 27/04 20060101ALI20220725BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220725BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220725BHJP
【FI】
B22F1/00 P
B22F10/28
C22C27/04 102
B33Y70/00
B33Y10/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020516734
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2018075847
(87)【国際公開番号】W WO2019063498
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-07-20
(31)【優先権主張番号】102017217082.4
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ,クリストフ
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/112151(WO,A1)
【文献】特表平10-512329(JP,A)
【文献】国際公開第2016/188696(WO,A1)
【文献】特開2004-052112(JP,A)
【文献】特開平08-085840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0169369(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105714169(CN,A)
【文献】国際公開第2008/117802(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0273368(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0219295(US,A1)
【文献】YANG Ying et al.,Effects of Ti, Zr, and Hf on the phase stability of Mo_ss+Mo3Si+Mo5SiB2 alloys at 1600℃,Acta MATERIALIA,2010年,vol.58,p.541-548
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 5/00-25/00
C22C 27/00-28/00
C22C 30/00-30/06
C22C 35/00-45/10
B22F 1/00-8/00
C22C 1/04-1/05
C22C 33/02
B29C 64/00-64/40、
67/00-67/08、
69/00-69/02、
73/00-73/34
B29D 1/00-7/01
11/00-29/10
33/00、99/00
B33Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン、ケイ素及びホウ素を含有するMo(x)Si(y)B型の合金からなる粉末であって、
ケイ素の合金化分率xは、少なくとも8原子%から最大19原子%であり、
ホウ素の合金化分率yは、少なくとも5原子%から最大13原子%である粉末において、
それに加えて、合金化分率が少なくとも5原子%から最大10原子%のチタンからなり、及び/又は合金化分率が少なくとも5原子%から最大8原子%のハフニウムからなり、
及び/又は合金化分率が少なくとも1.5原子%から最大1.9原子%の鉄からなる少なくとも1種の更なる合金元素が、前記合金に提供されており、
100原子%までの残りの合金化分率は、モリブデン及び不可避的不純物からなり、
前記粉末が、粉末床(13)の粉末層(25)においてワークピース(19)の連続層を製造するためにエネルギービーム(17)によって、溶融される、粉末床方式の付加製造方法において使用されることを特徴とする、粉末。
【請求項2】
前記少なくとも1種の更なる合金元素が、合金化分率が少なくとも5原子%から最大8原子%のハフニウムからなるか、又は合金化分率が少なくとも1.5原子%から最大1.9原子%の鉄からなること、並びに
更に、前記少なくとも1種の更なる合金元素の合金元素が、合金化分率が少なくとも5原子%から最大10原子%のチタンからなることを特徴とする、請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
粒径が少なくとも10μmから最大45μmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粉末。
【請求項4】
少なくとも17μmから最大27μmの質量基準サイズ分布D50を有することを特徴とする、請求項3に記載の粉末。
【請求項5】
粉末が、粉末床(13)の粉末層(25)においてワークピース(19)の連続層を製造するためにエネルギービーム(17)によって、溶融される、粉末床方式の付加製造方法における請求項1~4のいずれか一項に記載の粉末の使用であって、
前記粉末床(13)が、前記粉末の合金の脆性-延性遷移温度(BDTT)よりも少なくとも50℃高い温度水準に加熱される、使用。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の粉末を使用してワークピース(19)を製造するための方法であって、前記粉末が、粉末床(13)の粉末層(25)においてワークピース(19)の連続層を製造するためにエネルギービーム(17)によって溶融される粉末床方式の付加製造方法において、
前記粉末床(13)が700℃以上に達する温度水準に加熱され、
前記粉末床(13)の温度が、前記粉末床(13)の表面から100μm~500μmの前記粉末床(13)の深さまで広がる深さ範囲及び前記粉末床の表面から前記粉末層(25)の層厚の5~10倍に相当する前記粉末床の深さまで広がる深さ範囲において、前記温度水準に維持されることを特徴とする、方法。
【請求項7】
前記脆性-延性遷移温度が、前記粉末床方式の付加製造方法を用いて前記粉末から製造された試験片を試験することによって決定されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記試験片として4点曲げ試験片が製造されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粉末床(13)が1000℃以上に達する温度水準に加熱されることを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
付加製造方法として、
少なくとも500mm/秒から最大2,000mm/秒の前記エネルギービーム(17)のスキャン速度と、
少なくとも125Wから最大250Wのレーザ出力と、
少なくとも60から最大130μmのトラック間隔と、
少なくとも20μmから最大50μmの前記粉末層(25)の層厚と、を用いる、
選択的レーザ溶融が使用されることを特徴とする、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モリブデン、ケイ素及びホウ素を含有するMo(x)Si(y)B型の合金からなる粉末に関する。ケイ素の合金化分率(alloying fraction)xは、この合金では、少なくとも8原子%から最大19原子%、好ましくは少なくとも10原子%から最大15原子%、である。ホウ素の合金化分率yは、少なくとも5原子%から最大13原子%、好ましくは少なくとも8原子%から最大12原子%、である。更に、本発明は、そのような粉末の使用に関する。最後に、本発明は、上記粉末を使用してワークピースを製造するための方法であって、粉末床方式の付加製造方法が使用される方法にも関する。本方法では、粉末床の複数の粉末層内の粉末は、ワークピースの連続層を製造するためにエネルギービームによって溶融される。
【背景技術】
【0002】
モリブデン-ケイ素-ホウ素合金は、例えば、特許文献1から公知である。これらの合金は、ケイ化モリブデン、ホウケイ化モリブデン及びホウ化モリブデンなどの金属間相からなる微細構造を形成し、金属間相の合計含有量は、25~90体積%であってよく、微細構造の残りは、モリブデン又はモリブデン混晶からなる。これらの合金は、その機械的強度特性に基づいて、高温用途に使用できる。例えば、特許文献2から推論できるように、大きい熱負荷に曝されるガスタービンの部品に使用できる。
【0003】
特許文献2は、更に、上記合金の加工が、粉末冶金法(例えば、ホットプレス)又はゾーンメルト法によって実行できることを記載している。それに加えて、複雑な形状の部品の製造をも可能にするために、上記合金からなる粉末を層状に塗布しエネルギービームによって選択的に固化させる付加製造方法で使用することが提案されている。
【0004】
特許文献3は、様々な材料で作製されたターボ機械のブレード及びその製造方法を開示している。金属間化合物相が埋め込まれて金属-金属間化合物複合材料を形成している金属マトリックスは、モリブデン合金から形成されている。記載されているモリブデン合金は、合金化分率が9~15原子%のケイ素、5~12原子%のホウ素及び18~32原子%のチタンからなり、100原子%までの残余の合金化分率は、モリブデンからなる。
【0005】
非特許文献1の学術論文では、反応性元素及び希土類の混合物のMo-Si-B合金の酸化挙動に対する効果が研究された。研究された合金には、Mo-9Si-8B-1Ti及びMo-9Si-8B-1.8Tiが含まれる。
【0006】
非特許文献2の学術論文には、1,400~1,560℃の温度における真空中での多相Mo-Si-B合金の引張特性に関する研究が記載されている。研究された合金は、Mo-9Si-8B-3Hf及びMo-10Si-14B-3Hf(原子%)の組成を有する。
【0007】
特許文献4には、モリブデン合金を製造するための方法が開示されている。開示された方法を使用することによって、例えば、Mo-3Si-1B-3Nb、Mo-3Si-1B-10Nb及びMo-3Si-1B-20Nbが製造された。
【0008】
本出願において、付加製造方法とは、それから部品が製造されることとなる材料が、その部品の形成中にその部品に追加される方法であると理解されたい。その場合、部品は、その最終形状に又は少なくともほぼ最終形状に既に形成されている。
【0009】
部品を製造できるようにするために、部品を記述するデータ(CADモデル)が、選択された付加製造方法用に作成される。製造装置に指示を与えるために、このデータが、製造することとなるワークピースのための製造方法に適合したデータに変換されるので、このワークピースの連続製造のために適切なプロセスステップが製造装置において実行できる。そのために、データは、それぞれ製造されるべきワークピースの各層(スライス)用の形状データが利用できるように作成され、これは、スライシングとも称される。ワークピースは、部品とは異なる形状を有してもよい。例えば、製造に由来する部品の歪みを考慮してもよく、その部品の歪みは、異なるワークピースの形状によって補償される。また、ワークピースは、通常、部品の後処理時に取り外す必要がある支持構造体を有する。
【0010】
付加製造の例としては、選択的レーザ焼結(Selective Laser Sintering(選択的レーザ焼結)を略したSLSとも称する。)、選択的レーザ溶融(Slective Laser Melting(選択的レーザ溶融)を略したSLMとも称する。)及び電子ビーム溶融(Electron Beam Melting(電子ビーム溶融)を略したEBMとも称する。)を挙げることができる。これらの方法は、構造部品の製造に使用できる粉末状の金属材料を加工するために特に適している。
【0011】
SLM、SLS及びEBMにおいては、部品は、粉末床において積層して製造される。従って、これらの方法は、粉末床方式の付加製造方法とも称される。各場合において、粉末の層がそれぞれ粉末床で生成され、この層は、次いでエネルギー源(レーザ又は電子ビーム)によって、部品が形成されることとなる同じ領域で、局所的に溶融され又は焼結される。このように、部品は、連続的に積層して製造され、完成後に粉末床から取り出すことができる。
【0012】
しかし、モリブデン-ケイ素-ホウ素合金からなる部品の付加製造では、問題がすぐに生じる。その場合、付加製造された部品は、クラックを有するか又は必要な機械的強度に達していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】欧州特許第1664362(B1)号明細書
【文献】独国特許出願公開第102015209583(A1)号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0273368(A1)号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0285990(A1)号明細書
【非特許文献】
【0014】
【文献】Majumdar,Sanjibら、「Mo-Si-B系の酸化挙動に対する反応性希土類元素の添加の効果についての研究(A study on effect of reactive and rare earth element additions on the oxidation behavior of Mo-Si-B system.)」、Oxidation of metals 80.3-4(2013):219-230
【文献】Yu,J.L.ら、「高められた温度における多相Mo-Si-B耐熱合金の引張特性(Tensile properties of multiphase Mo-Si-B refractory alloys at elevated temperatures.)」、Materials Science and Engineering:A 532(2012):392-395
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の課題は、冒頭で提示された種類の粉末、その粉末の使用及びこの粉末から部品を付加製造する方法を提供することであり、これらにより、高品質の、特に改善された機械的性質を有する、付加製造ワークピースを生成できる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は、冒頭に提示された本発明による粉末を用いて、少なくとも1種の更なる合金元素を前記合金に提供することにより達成される。少なくとも1種の更なる合金元素は、合金化分率が少なくとも5原子%から最大10原子%のチタン、及び/又は合金化分率が少なくとも5原子%から最大8原子%のハフニウム、及び/又は合金化分率が少なくとも1.5原子%から最大1.9原子%の鉄である。ケイ素及びホウ素の合金化分率に関しては、残余の合金化分率が、モリブデンであり、その合金化分率は、場合によりあり得る不純物及び更なる合金元素(これに関しては以下で詳述)と併せて、合金の100原子%になる。
【0017】
チタン又はハフニウム又はニオブの共合金化は、その合金から製造された部品が改善された耐クリープ性を有するという利点と関連付けられている。特に、粉末は、粉末床方式の付加製造方法を用いて加工することができるため、使用に関する課題は、本発明により解決される。特に、鉄を共合金化すると、合金の耐酸化性もまた改善される。
【0018】
本方法に関する課題は、本発明によれば、加工のための粉末床方式の付加製造方法において、粉末床が、この粉末の合金の脆性-延性遷移温度(Brittle-to-Ductil Transition Temperature、以下、略してBDTTと称する。)よりも少なくとも50℃高い温度水準に加熱されることにより、解決される。製造中のワークピースのBDTT未満の温度水準までの冷却を確実に防止した場合に、付加製造された部品の機械的特性の問題、特にクラック形成の傾向、を軽減できることが判明した。設定温度水準は、BDTTよりも50℃高い温度範囲で緩衝ゾーンを提供し、製造されたワークピースの微細組織の延性特性が脆性挙動に遷移することを確実に防ぐ。従って、ワークピース内に生じる温度勾配に起因して製造の結果として生じるワークピース内の応力は、有利には、微細組織にクラックを生じない(又は少なくとも、より少ないクラックしか生じない)。ワークピースの完成後、より均質な温度分布でワークピースを冷却できる。というのは、粉末を凝固させることを目的とするエネルギービームからの局所的な熱入力をもはや必要としないためである。
【0019】
一方、製造中の溶融浴の急速な冷却はワークピースにおいて所望の組織の形成を促進することが示された。繊維マトリックス微細組織が形成され、これが微細組織の機械的特性を改善する。微細組織は、モリブデンマトリックスMoSS、ケイ化モリブデンMoSi、ホウケイ化モリブデンMoSiB及び更にケイ化物(Mo,X)Siの個々の相からなる。モリブデンマトリックスは、モリブデン又はモリブデン混晶からなる。ケイ化物は、結晶析出物として、好適には、繊維状で存在する。合金元素Xは、合金組成に応じて、チタン及び/又はハフニウム及び/又はニオブによって提供される(これに関しては以下で詳述)。
【0020】
本発明の有利な実施形態によれば、少なくとも1種の更なる合金元素が、合金化分率が少なくとも5原子%から最大8原子%のハフニウムからなるか、又は、合金化分率が少なくとも1.5原子%から最大1.9原子%の鉄からなり、少なくとも1種の更なる合金元素のうちの一つの合金元素は、合金化分率が少なくとも5原子%から最大10原子%のチタンからなることが企図されている。合金元素のハフニウム及びチタンは、とりわけ、既に述べた耐クリープ性に加えて、ワークピースの破壊靭性及び耐酸化性を改善し、他方、合金元素の鉄は、特に耐酸化性を改善する。これらの特性は、ワークピースから作られた部品の高温での動作にとって最も重要である。高い破壊靭性により、機械的応力のピークでクラックの発生に至らないという部品の特性が改善される。耐酸化性は、特に高温ガスに曝されるタービン部品にとって重要である。耐クリープ性は、特に回転部品において、発生する遠心力による変形を防ぐ。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、追加の更なる合金元素は、合金化分率が少なくとも15原子%から最大25原子%、好ましくは少なくとも17原子%から最大21原子%、のニオブからなることが企図されている。それに加えて、合金化分率が少なくとも5原子%から最大8原子%のハフニウム、又は合金化分率が少なくとも5原子%から最大10原子%のチタンからなる少なくとも1種の更なる合金元素が提供される。ニオブは、部品の耐クリープ性に加えて、有利には、また、部品の一般的な強度も改善する。従って、ニオブを合金元素のハフニウム及びチタンのうちの1種と組み合わせると、有利には、部品の強度、破壊靭性、耐酸化性及び耐クリープ性の観点から、要求特性プロファイルにプラスの影響を与えることができる。本発明の更なる実施形態によれば、そのような特性プロファイルは、少なくとも1種の更なる合金元素が、合金化分率が少なくとも5原子%から最大10原子%のチタンからなる合金元素を含みその合金元素が、合金化分率が少なくとも5原子%から最大8原子%のハフニウムからなり、追加の更なる合金元素が、合金化分率が少なくとも15原子%から最大25原子%、好ましくは少なくとも17原子%から最大21原子%、のニオブからなる粉末の組成によっても、また、達成でき、ここで、好ましくは合金化分率が少なくとも1.5原子%から最大1.9原子%の鉄からなる少なくとも1種の更なる合金元素が合金に提供されている。その場合、チタン(Ti)及びハフニウム(Hf)及びニオブ(Nb)及び所望により鉄(Fe)の共合金化により、合金の強度(Nb)、破壊靭性(Ti、Hf)、耐酸化性(Hf、Ti、Fe)及び耐クリープ性(Nb、Ti、Hf)が有利に向上するため、要求特性プロファイルは、タービンブレードなどの熱的かつ機械的に高負荷に曝される部品に最適に適合する。
【0022】
従って、上記で提示された特徴に従って合金化分率を選択することにより、本発明の粉末から製造された部品の特性プロファイルは、有利に、それぞれの用途事例の要件に適合できる。この場合、使用目的及び特に使用温度も、また、重要な役割を果たす。というのは、部品が延性材料挙動を有するために、使用温度はBDTTよりも高くなければならないからである。
【0023】
部品のBDTTは、少なからず、部品内で生じる組織にも依存する。このため、本発明の特別な形態によれば、部品に使用されることとなる粉末から粉末床方式の付加製造方法で製造された試験片を試験することによりBDTTが決定されることが、企図されている。特に、試験片として、4点曲げ試験片を製造してもよい。次いで、4点曲げ試験片を4点曲げ試験で検査して、試験片の延性を決定できる。様々な温度で試験片を試験して、微細組織の延性特性と脆性特性との間で転換が生じる温度を決定することにより、BDTTを決定できる。4点曲げ試験では、2つの加圧点を有する試験ピストンが、2点上に載置された試験片に荷重をかける。その場合、支持点間に一定の曲げモーメントが存在している。代わりに、例えば、3点曲げ試験又は2点曲げ試験などの別の曲げ試験も、また、実行してよい。3点曲げ試験においては、試験片は、両端で支持され、中央で試験ピストンによって荷重がかけられる。このとき、試験片の摩擦荷重及びねじり荷重を最小限に抑える必要がある。2点曲げ試験では、試験ピストンは、一端でクランプ固定されている試験片の自由側に荷重をかける。
【0024】
粉末床が700℃以上、特に1,000℃以上、の温度水準に加熱されるという、別の可能性がある。この温度水準を超えている場合、粉末床がBDTTを超えていると仮定できる。この範囲の温度水準は、例えば、BDTTの決定用の試験片を製造するために選択してもよい。粉末をその後使用するときには、粉末床の加熱が必要な範囲でのみ行われるように、決定されたBDTTを根拠として使用できる。これは、有利には、エネルギーの節約につながり、加熱時間を短縮するので、本方法のパフォーマンスをより経済的にする。
【0025】
それに加えて、有利には、粉末床の温度が、粉末床の表面から100μm~500μmの粉末床の深さまで広がる深さ範囲において、上記温度水準に維持されることが、企図されてもよい。言い換えれば、この深さ範囲は、表面から100μm~500μmの粉末床の深さまで広がっている。詳しく言えば、応力に起因するクラックが製造中に発生することを防ぐために粉末床全体を温度調節する必要がないことが判明した。既に製造されたワークピースの表面領域において、局所的な温度勾配を低減することで十分である。
【0026】
本発明の別の実施形態によれば、深さ範囲は、また、代替的に、粉末層の層厚を参照して決定してもよい。従って、深さ範囲は、粉末床の表面から粉末層の層厚の5~10倍に相当する粉末床の深さまで広がる。
【0027】
本発明の更なる詳細を、図面を参照して以下に説明する。同一の又は対応する図面要素にはそれぞれ同じ参照番号が付与されており、個々の図の間で相違がある場合にのみ複数回説明される。
【0028】
以下に説明する実施例は、本発明の好ましい実施形態である。実施例では、実施形態の記載された構成要素は、それぞれ、互いに独立して考慮されるべき本発明の個々の特徴を表しており、それぞれまた独立して本発明を更に発展させるものであり、従って、また個別に又は列挙した組み合わせとは異なる別の組み合わせにおいて、本発明の一部と見なすべきである。更に、記載された実施形態は、既に説明された本発明の特徴の更なる特徴によって補足可能である。
【0029】
ただ一つの図は、断面で示したレーザ溶融装置における本発明による方法の実施例を示す。
【0030】
図1には、レーザ溶融のための装置11が概略的に示されている。この装置は、窓12aを備えたプロセスチャンバ12を有し、プロセスチャンバ12の中で粉末床13が製造される。粉末床13のそれぞれの層を製造するために、ドクターブレード14の形態の分配装置が、粉末供給部15の上を移動し、続いて粉末床13の上を移動し、それにより粉末床の最上層25を形成する粉末の薄層が粉末床13に形成される。次いで、レーザ16がレーザビーム17を生成し、レーザビーム17は、ミラー18を備えた光偏向装置によって窓12aを通ってプロセスチャンバ12に到達し、粉末床13の表面の上を移動する。これにより、粉末は、レーザビーム17の衝撃点で溶融され、それにより、ワークピース19が形成される。
【0031】
粉末床13は、構築プラットフォーム20上に形成され、構築プラットフォーム20はアクチュエータ21を介して、深鍋形状のハウジング22内で、それぞれの粉末層の厚さの分だけ段階的に下げられることができる。ハウジング22及び構築プラットフォーム20の中には、加熱装置23aが電気抵抗加熱手段(あるいは、誘導コイル(図示せず)もまた可能である)の形態で設けられており、加熱装置23aは、形成中のワークピース19及び粉末床13の粒子を予熱できる。これに代えて又は追加して、赤外線輻射器が、プロセスチャンバ12内に加熱装置23bとして配置されて、粉末床13の表面を照射することにより粉末床13を加熱することも、また、できる。予熱のためのエネルギー必要量を制限するために、ハウジング22の外側に熱伝導率の低い断熱材24がある。粉末13の表面の温度は、必要に応じて加熱装置23a、23bの加熱出力を調整するために、熱画像カメラ27によって決定してもよい。熱画像カメラ27の代わりに、粉末床上の温度センサ(図示せず)も、また、使用してもよい。
【0032】
レーザ溶融のための装置11は、第1のインターフェースS1を介して制御装置CRLによって制御されるが、制御装置CRLには、適切なプロセスデータが事前に与えられる必要がある。このために、複数のプログラムモジュールからなるコンピュータプログラム製品26が用いられる。ワークピース19の製造を準備するために、最初に、設計プログラムモジュールCADで、ワークピースの3次元形状データを作成することが必要である。そのように作成された形状データセットSTL(例えば、STLファイル)は、第2のインターフェースS2を介して製造準備用のシステムCAMに転送される。製造準備用のシステムCAMには、作成プログラムモジュールCON及び変換プログラムモジュールSLCがインストールされている。作成プログラムモジュールCON及び変換プログラムモジュールSLCは、第3のインターフェースS3を介して互いに通信する。変換プログラムモジュールSLCでは、(第2のインターフェースS2を介して受信された)設計データセットSTLが、製造されることとなる層においてワークピース19を記述する製造データセットCLI(例えば、CLIファイル)に、変換される。この変換プロセスは、スライシングとも称される。それに加えて、作成プログラムモジュールCONは、製造データセットCLIの作成にも影響を与え製造データセットCLIと共に第4のインターフェースS4を介して制御部CRLに転送されるプロセスパラメータPRTを確定するために使用される。これらは、制御部CRLによって装置11用のコンピュータコマンドに変換できる製造パラメータである。
【0033】
プロセスパラメータPRTの決定において、作成プログラムモジュールCONは、試験方法TSTの範囲内で、前以て付加製造された試験片の実験によって4点曲げ試験を用いて決定された知見もまた考慮する。これは、特定の合金種類については、例えば、付加製造方法の特定のプロセスパラメータについて、製造された4点曲げ試験片を用いて決定されたBDTTである。これらは、インターフェースS5を介して作成プログラムモジュールCONに提供される。同時に、これらの試験結果は、インターフェースS6を介してデータベースDATに提供される。また、データベースDATは、インターフェースS7を介して同様に作成プログラムモジュールCONにリンクされているため、一度作成された測定結果並びに関連するプロセスパラメータ及び合金組成を援用でき、部品ごとに新たに実験する必要はない。
【0034】
少なくとも500mm/秒から最大2,000mm/秒、好ましくは少なくとも800mm/秒から最大1,200mm/秒、のレーザビームのスキャン速度と、少なくとも125Wから最大250W、好ましくは少なくとも150Wから最大250W、のレーザ出力と、少なくとも60μmから最大130μm、好ましくは少なくとも80μmから最大120μm、のトラック間隔と、少なくとも20μmから最大50μmの粉末層の層厚と、を用いて加工してもよい。
【0035】
レーザ溶融のために、粒径が少なくとも10μmから最大45μmの粉末を使用でき、ここで、粒径分布D50(すなわち、粒子の50%は、この値よりも小さい)は、少なくとも17μmから最大27μmに達する。
【0036】
そのような粒径分布を有する粉末が、有利には、粉末床方式の付加製造方法を使用して良好に製造できる。なぜなら、そのような粉末を粉末床で確実に配量できるからである。
図1