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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】リレートレイ
(51)【国際特許分類】
   B65D 55/14 20060101AFI20220725BHJP
   A61G 12/00 20060101ALI20220725BHJP
   A61J 7/00 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
B65D55/14
A61G12/00 F
A61J7/00 Z
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2020540756
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 US2019015199
(87)【国際公開番号】W WO2019152277
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】15/884,073
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505411125
【氏名又は名称】オムニセル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー、ハーバート ローソン
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-502315(JP,A)
【文献】特表2007-514399(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0187774(US,A1)
【文献】特表2012-516665(JP,A)
【文献】特表2016-506224(JP,A)
【文献】特表2002-516228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 55/14
A61J 7/00
A61G 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイテムを安全に輸送するリレートレイであって、
輸送される1つ以上のアイテムを保持するロック可能であり且つ輸送可能なコンテナと、
プロセッサを含む電子コントローラと、
電力インタフェースを介して前記リレートレイが電力を受け取ることができる前記電力インタフェースと、
通信インタフェースを介して前記コントローラが電子的に通信できる前記通信インタフェースと、
前記通信インタフェースを介して受信された通信に応答して、ロックされたコンテナ内のアイテムにアクセス可能にするように前記コントローラの制御下で動作可能な機構と、を備え、
前記機構は、前記電力インタフェースを介して電力が受信されている場合にのみ前記コントローラによって動作可能であ
前記電力インタフェースは、
電力接続を受け取るための前記コンテナの外面上の4つの電気コンタクトと、
前記4つの電気コンタクトから電力を受け取り、前記コントローラに電力を供給するのに適した極性の電圧を生成する整流器と、を含み、
前記4つの電気コンタクトは、正三角形の頂点と中央に位置付けられている、リレートレイ。
【請求項2】
前記機構は、前記リレートレイのコンパートメントのロックを解除するように前記コントローラによって動作可能なロックである、請求項1に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項3】
前記コントローラは、前記リレートレイ内のアイテムまたは複数のアイテムのリストを記憶する不揮発性メモリをさらに含む、請求項1または2に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項4】
前記コンテナ内に複数のコンパートメントをさらに備え、
前記複数のコンパートメントは、個別にロック可能であり、前記通信インタフェースを介して受信された通信に応答して、前記コントローラの制御下で個別に開けることができる、請求項1~3のいずれか1項に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項5】
前記複数のコンパートメントのうちの少なくとも一部分にそれぞれ関連付けられた複数のライトをさらに備え、
前記複数のライトは、前記コントローラの制御下で個別に動作可能である、請求項4に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項6】
前記電力インタフェースは、前記通信インタフェースとしても機能し、前記コントローラは、前記電力インタフェースから着信通信信号を抽出し、出力通信信号を前記電力インタフェースに付与するように構成される、請求項1~5のいずれか1項に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項7】
前記4つのコンタクトは、前記通信インタフェースとしても機能し、前記コントローラは、電源電圧に加えて前記4つのコンタクトに印加される通信信号を抽出するように構成される、請求項に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項8】
前記リレートレイは、DC電力を受け取るように構成され、前記整流器は、前記コントローラに電力を供給するのに適した極性のDC電圧を生成する、請求項のいずれか1項に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項9】
前記リレートレイは、AC電力を受け取るように構成され、前記整流器は、整流されたAC電圧を生成する、請求項のいずれか1項に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項10】
前記通信インタフェースは、短距離無線通信インタフェースである、請求項1~のいずれか1項に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項11】
前記通信インタフェースは、有線通信インタフェースである、請求項1~10のいずれか1項に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項12】
前記電力インタフェースは、誘導結合によって電力を受け取るコイルを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項13】
前記リレートレイは、1つまたは複数の電気機械式アクチュエータを含み、
前記リレートレイは、前記1つまたは複数の電気機械式アクチュエータのうちのいずれかのバッテリー電力供給動作を含まない、請求項1~12のいずれか1項に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項14】
前記機構は、前記コントローラの制御下でアイテムを分配するように構成された1つまたは複数の電気機械式分配器を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項15】
アイテムは、前記通信インタフェースを介して受信された通信に応答して分配される、請求項14に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項16】
前記リレートレイは、キーによって開けられることができる、請求項1~15のいずれか1項に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項17】
前記コンテナの外面に不揮発性の表示部をさらに備える請求項1~16のいずれか1項に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項18】
前記リレートレイは、前記リレートレイ内のアイテムが意図されている人物のハッシュ化された識別子を記憶する、請求項17に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項19】
前記リレートレイの識別子を記憶する受動外部発信可能なメモリデバイスをさらに備える請求項1~18のいずれか1項に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項20】
前記コントローラは、ロックされたコンテナ内のアイテムをアクセス可能にする前に、前記通信インタフェースを介して受信された前記通信のソースを認証するように構成されている、請求項1~19のいずれか1項に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項21】
低電力無線ビーコン受信機をさらに備え、
前記リレートレイの輸送中に、前記コントローラは、前記低電力無線ビーコン受信機によって検出されたビーコン信号の検出を記録する、請求項1~20のいずれか1項に記載のアイテムを安全に輸送するリレートレイ。
【請求項22】
薬剤または他のアイテムを安全に輸送するシステムであって、
中央コンピュータシステムと、
複数のリレートレイであって、
各リレートレイは、
輸送されるアイテムを保持するロック可能であり且つ輸送可能なコンテナと、プロセッサおよび不揮発性メモリを含む電子コントローラと、電力インタフェースを介して前記リレートレイが電力を受け取ることができる前記電力インタフェースと、通信インタフェースを介して前記コントローラが電子的に通信できる前記通信インタフェースと、前記通信インタフェースを介して受信された通信に応答して、ロックされたコンテナ内のアイテムにアクセス可能にするように前記コントローラの制御下で動作可能な機構であって、前記電力インタフェースを介して電力が受信されている場合にのみ前記コントローラによって動作可能である前記機構と、を含
前記電力インタフェースは、
電力接続を受け取るための前記コンテナの外面上の4つの電気コンタクトと、
前記4つの電気コンタクトから電力を受け取り、前記コントローラに電力を供給するのに適した極性の電圧を生成する整流器と、を含み、
前記4つの電気コンタクトは、正三角形の頂点と中央に位置付けられている、前記複数のリレートレイと、
分散した複数の位置にある複数の充電および通信ステーションであって、前記複数の充電および通信ステーションの各々は、当該ステーションの複数のリレートレイのうちの1つに電力を供給する電力インタフェースと、当該ステーションのリレートレイと通信する第1の通信インタフェースと、前記中央コンピュータシステムと通信する第2の通信インタフェースと、を含む、前記複数の充電および通信ステーションと、を備えるシステム。
【請求項23】
前記中央コンピュータシステムは、前記ロック可能であり且つ輸送可能なコンテナの内部へのアクセスを許可するための命令を通信する電子ネットワークをさらに備える請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記複数のリレートレイおよび前記複数の充電および通信ステーションの電力インタフェースは、前記複数のリレートレイの通信インタフェースおよび前記複数の充電および通信ステーションの第1の通信インタフェースとしても機能する、請求項22または23に記載のシステム。
【請求項25】
前記複数の充電および通信ステーションの各々は、
露出した金属表面を有する複数の第1の線状導電体であって、互いに接続され且つ第1の電圧で保持されている前記複数の第1の線状導電体と、
露出した金属表面を有する複数の第2の線状導電体であって、互いに接続され且つ第1の電圧とは異なる第2の電圧で保持されている前記複数の第2の線状導電体と、を含み、
前記第1および第2の線状導電体は、交互に配置されて平坦な表面を形成し、隣接する導電体は、互いに間隔を置いて配置されている、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記中央コンピュータシステムは、前記複数のリレートレイに格納されている任意の薬剤の在庫を維持する、請求項2225のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項27】
前記中央コンピュータシステムは、前記複数のリレートレイに格納された任意の規制物質の在庫を維持する、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
アイテムを輸送する方法であって、
第1のワークステーションにおいて第1の電源をリレートレイの電力インタフェースに接続することであって、
前記リレートレイは、
輸送されるアイテムを保持するロック可能であり且つ輸送可能なコンテナと、プロセッサおよび不揮発性メモリを含む電子コントローラと、前記電力インタフェースと、通信インタフェースを介して前記コントローラが電子的に通信できる前記通信インタフェースと、前記通信インタフェースを介して受信された通信に応答して、ロックされたコンテナ内のアイテムにアクセス可能にするように前記コントローラの制御下で動作可能な機構であって、前記電力インタフェースを介して電力が受信されている場合にのみ前記コントローラによって動作可能である前記機構と、を含
前記電力インタフェースは、
電力接続を受け取るための前記コンテナの外面上の4つの電気コンタクトと、
前記4つの電気コンタクトから電力を受け取り、前記コントローラに電力を供給するのに適した極性の電圧を生成する整流器と、を含み、
前記4つの電気コンタクトは、正三角形の頂点と中央に位置付けられている、前記接続すること、
輸送されるアイテムを前記リレートレイ内に配置すること、
前記リレートレイをロックすること、
電源から前記リレートレイを取り外すこと、
前記アイテムを含む前記リレートレイを第2のワークステーションに輸送すること、
前記第2のワークステーションにおいて第2の電源を前記リレートレイの電力インタフェースに接続すること、
前記第2のワークステーションにおいて、前記通信インタフェースを介して前記リレートレイに前記アイテムをアクセス可能にするための命令を送信すること、を備える方法。
【請求項29】
前記リレートレイを前記第1または第2の電源に接続することは、
前記リレートレイ上の複数のコンタクトが充電および通信面内の複数の導体と接触して前記リレートレイに電力を供給するように、前記リレートレイを前記充電および通信面に配置することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記リレートレイの電力インタフェースが前記リレートレイの通信インタフェースとしても機能するように、前記充電および通信面の2つの導体間の電圧に乗せられた通信信号を用いて、前記リレートレイと前記充電および通信面との間で電子通信を実行させることをさらに備える請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多くの産業は正確な棚卸と安全なアイテムの供給とに依存する。たとえば、病院の設定では、薬剤は、多くの場合、薬剤の在庫を追跡するコンピュータシステムと通信するロック可能なキャビネットに保管される。キャビネット、またはキャビネット内の個々のコンパートメントは、コンピュータシステムの制御下でのみ開かれることができる。たとえば、看護師または他の医療従事者は、認証資格情報をコンピュータシステムに提供し、特定の患者に特定の薬剤が必要であることを示し得る。次に、コンピュータシステムは、医療従事者がそれを取り出して患者に投与するために、特定の薬剤が保管されているコンパートメントを開くことができる。コンピュータシステムは、それに応じて追跡記録を調整できる。このようなシステムにより、正しい患者に正しい薬剤が調剤され、規制物質が適切に保護および追跡され、詳細な在庫記録が保持される。
【0002】
様々な供給キャビネットおよびカートは、薬剤および他のアイテムの管理を補助するように開発されている。しかしながら、特に、施設内で特定の位置から別の位置への薬剤などのアイテムの輸送中には、アイテムの供給および追跡において、依然として改良が望まれている。
【0003】
アイテムの安全な輸送及び追跡のための同様の要件は、他の産業、例えば、銀行又はビジネス環境における現金又は他の貴重品の輸送でも生じる。
【発明の概要】
【0004】
一側面によれば、複数のアイテムを安全に輸送するリレートレイは、輸送されるアイテムを保持するロック可能であり且つ輸送可能なコンテナと、プロセッサを含む電子コントローラと、電力インタフェースを介してリレートレイが電力を受け取ることができる電力インタフェースと、通信インタフェースを介してコントローラが電子的に通信できる通信インタフェースと、通信インタフェースを介して受信された通信に応答して、ロックされたコンテナ内のアイテムにアクセス可能にするようにコントローラの制御下で動作可能な機構を含む。機構は、電力インタフェースを介して電力が受け取っている場合にのみコントローラによって動作可能である。幾つかの実施形態では、機構は、リレートレイのコンパートメントのロックを解除するようにコントローラによって動作可能なロックである。幾つかの実施形態では、コントローラは、リレートレイ内のアイテムまたは複数のアイテムのリストを記憶する不揮発性メモリをさらに含む。幾つかの実施形態では、リレートレイは、コンテナ内に複数のコンパートメントをさらに備え、複数のコンパートメントは、個別にロック可能であり、通信インタフェースを介して受信された通信に応答して、コントローラの制御下で個別に開けることができる。幾つかの実施形態では、リレートレイは、複数のコンパートメントのうちの少なくとも一部分にそれぞれ関連付けられた複数のライトをさらに備え、複数のライトは、コントローラの制御下で個別に動作可能である。幾つかの実施形態では、電力インタフェースは、通信インタフェースとしても機能し、コントローラは、電力インタフェースから着信通信信号を抽出し、出力通信信号を電力インタフェースに付与するように構成される。幾つかの実施形態では、電力インタフェースは、電力接続を受け取るためのコンテナの外面上の4つの電気コンタクトと、4つの電気コンタクトから電力を受け取り、コントローラに電力を供給するのに適した極性の電圧を生成する整流器と、を含む。幾つかの実施形態では、4つのコンタクトは、正三角形の頂点と中央に位置付けられている。幾つかの実施形態では、4つのコンタクトは、通信インタフェースとしても機能し、コントローラは、電源電圧に加えて4つのコンタクトに印加される通信信号を抽出するように構成される。幾つかの実施形態では、リレートレイは、DC電力を受け取るように構成され、整流器は、コントローラに電力を供給するのに適した極性のDC電圧を生成する。幾つかの実施形態では、リレートレイは、AC電力を受け取るように構成され、整流器は、整流されたAC電圧を生成する。幾つかの実施形態では、通信インタフェースは、短距離無線通信インタフェースである。幾つかの実施形態では、通信インタフェースは、有線通信インタフェースである。幾つかの実施形態では、電力インタフェースは、誘導結合によって電力を受け取るコイルを含む。幾つかの実施形態では、リレートレイは、1つまたは複数の電気機械式アクチュエータを含み、リレートレイは、1つまたは複数の電気機械式アクチュエータのうちのいずれかのバッテリー電力供給動作を含まない。幾つかの実施形態では、機構は、コントローラの制御下で複数のアイテムを分配するように構成された1つまたは複数の電気機械式分配器を含む。幾つかの実施形態では、複数のアイテムは、通信インタフェースを介して受信された通信に応答して分配される。リレートレイは、キーによって開かれることができる。幾つかの実施形態では、リレートレイは、コンテナの外面に不揮発性の表示部をさらに備える。幾つかの実施形態では、リレートレイは、リレートレイ内のアイテムが意図されている人物のハッシュ化された識別子を記憶する。幾つかの実施形態では、リレートレイは、リレートレイの識別子を記憶する受動外部発信可能なメモリデバイスをさらに備える。幾つかの実施形態では、コントローラは、ロックされたコンテナ内のアイテムをアクセス可能にする前に、通信インタフェースを介して受信された通信のソースを認証するように構成されている。幾つかの実施形態では、リレートレイは、低電力無線ビーコン受信機をさらに備え、リレートレイの輸送中に、コントローラは、低電力無線ビーコン受信機によって検出されたビーコン信号の検出を記録する。
【0005】
別の態様によれば、電子デバイスのための充電および通信面は、露出した金属表面を有する複数の第1の線状導電体を含む。複数の第1の線状導電体は、互いに接続され且つ第1の電圧で保持されている。充電および通信面は、露出した金属表面を有する複数の第2の線状導電体をさらに備え、複数の第2の線状導電体は、互いに接続され且つ第1の電圧とは異なる第2の電圧で保持されている。第1および第2の線状導電体は、交互に配置されて平坦な表面を形成し、隣接する導電体は、互いに間隔を置いて配置されている。充電および通信面は、第1の線状導体と第2の線状導体との間の電圧に通信信号を乗せる変調器を含むコントローラを備える。幾つかの実施形態では、充電および通信面は、第1の線状導体と第2の線状導体との間の電圧から通信信号を抽出する復調器を備える。幾つかの実施形態では、充電および通信面は、デイジーチェーン方式で別の充電および通信面に接続可能に構成された電源コンセントをさらに備える。
【0006】
他の態様によれば、薬剤または他のアイテムを安全に輸送するシステムは、中央コンピュータシステム及び複数のリレートレイを備える。各リレートレイは、輸送されるアイテムを保持するロック可能であり且つ輸送可能なコンテナと、プロセッサおよび不揮発性メモリを含む電子コントローラと、電力インタフェースを介してリレートレイが電力を受け取ることができる電力インタフェースと、通信インタフェースを介してコントローラが電子的に通信できる通信インタフェースと、通信インタフェースを介して受信された通信に応答して、ロックされたコンテナ内のアイテムにアクセス可能にするようにコントローラの制御下で動作可能な機構であって、電力インタフェースを介して電力が受信されている場合にのみコントローラによって動作可能である機構と、を含む。システムは、分散した複数の位置にある複数の充電および通信ステーションをさらに備え、複数の充電および通信ステーションの各々は、当該ステーションの複数のリレートレイのうちの1つに電力を供給する電力インタフェースと、当該ステーションのリレートレイと通信する第1の通信インタフェースと、中央コンピュータシステムと通信する第2の通信インタフェースと、を含む。幾つかの実施形態では、システムは、中央コンピュータシステムがロック可能であり且つ輸送可能なコンテナの内部へのアクセスを許可するための命令を通信する電子ネットワークをさらに備える。幾つかの実施形態では、複数のリレートレイおよび複数の充電および通信ステーションの電力インタフェースは、複数のリレートレイの通信インタフェースおよび複数の充電および通信ステーションの第1の通信インタフェースとしても機能する。幾つかの実施形態では、複数の充電および通信ステーションの各々は、露出した金属表面を有する複数の第1の線状導電体であって、互いに接続され且つ第1の電圧で保持されている複数の第1の線状導電体と、露出した金属表面を有する複数の第2の線状導電体であって、複数の第2の線状導電体は、互いに接続され且つ第1の電圧とは異なる第2の電圧で保持されており、第1および第2の線状導電体は、交互に配置されて平坦な表面を形成し、隣接する導電体は、互いに間隔を置いて配置されている、複数の第2の線状導電体と、を含む。幾つかの実施形態では、中央コンピュータシステムは、複数のリレートレイに格納されている任意の薬剤の在庫を維持する。幾つかの実施形態では、中央コンピュータシステムは、複数のリレートレイに格納されている任意の規制物質の在庫を維持する。
【0007】
別の態様によれば、アイテムを輸送する方法は、第1のワークステーションにおいて、第1の電源をリレートレイの電力インタフェースに接続することを備える。リレートレイは、輸送されるアイテムを保持するロック可能であり且つ輸送可能なコンテナと、プロセッサおよび不揮発性メモリを含む電子コントローラと、電力インタフェースと、通信インタフェースを介してコントローラが電子的に通信できる通信インタフェースと、通信インタフェースを介して受信された通信に応答して、ロックされたコンテナ内のアイテムにアクセス可能にするようにコントローラの制御下で動作可能な機構と、を含む。機構は、電力インタフェースを介して電力が受け取られている場合にのみコントローラによって動作可能である。方法は、輸送されるアイテムをリレートレイ内に配置すること、リレートレイをロックすること、電源からリレートレイを取り外すこと、アイテムを含むリレートレイを第2のワークステーションに輸送すること、第2のワークステーションにおいて第2の電源をリレートレイの電力インタフェースに接続すること、をさらに備える。方法は、第2のワークステーションにおいて、通信インタフェースを介してリレートレイに、アイテムをアクセス可能にするための命令を送信することをさらに備える。幾つかの実施形態では、リレートレイを第1または第2の電源に接続することは、リレートレイ上の複数のコンタクトが充電および通信面内の複数の導体と接触してリレートレイに電力を供給するように、リレートレイを充電および通信面に配置することを含む。幾つかの実施形態では、方法は、リレートレイの電力インタフェースがリレートレイの通信インタフェースとしても機能するように、充電および通信面の2つの導体間の電圧に乗せられる通信信号を用いて、リレートレイと充電および通信面との間で電子通信を実行させることをさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に実用性が見出され得る環境を示す。
図2図2は、本発明の実施形態による、病院環境でのリレートレイの使用を示す。
図3図3は、本発明の実施形態による、図2のリレートレイをより詳細に示す。
図4図4は、本発明の実施形態による、図2のリレートレイとドッキングおよび通信面とを示す。
図5図5は、図4のリレートレイとドッキングおよび通信面との簡略化された電気ブロック図を示す。
図6図6は、他の実施形態におけるリレートレイとドッキングおよび通信面との簡略化された電気ブロックを示す。
図7図7は、本発明の実施形態による、出入口に設置された無線読取ステーションを示す。
図8図8は、他の実施形態による、リレートレイを示す。
図9図9は、図8のリレートレイの下方斜視図を示す。
図10図10は、他の実施形態による、リレートレイを示す。
図11図11は、本発明の実施形態による、デイジーチェーン方式で接続された2つのドッキングおよび通信面を示す。
図12図12は、本発明の実施形態による、例示的な壁に取り付けられたワークステーションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施形態に実用性が見出され得る環境を示す。具体的には図1は病院環境100を示すが、本発明の実施形態は他の環境においても同様に用いられてよいことが認識される。
【0010】
図1の病院環境の例において、中心的な薬局101は主要な薬剤保管位置としての機能を果たす。しかしながら、様々な固定されたキャビネット102、カート103、可動のキャビネット104ならびに他の保管装置および分配装置が、薬剤および他のアイテムの一時的な保管のために、病院の様々な場所に配置される。例えば、病院の特定の病棟または部門において一般に用いられる薬剤は、フロア職員による便利なアクセスのために、キャビネット102などのキャビネット内に保管されてよい。別の例において、特定の移動中に患者に分配されることが予期される薬剤は分配カート103に移送されてよく、分配カート103は看護師がベッド105a-105eにいる患者に巡回するときに、その看護師について回り得る。
【0011】
様々な分配装置102、103、104は、以下の権利者が共通である米国特許および特許出願に記載されるものなどの装置を含んでよく、その全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる:2001年8月7日にリップス(Lipps)に交付された米国特許第6,272,394号、2002年5月7日にリップスに交付された米国特許第6,385,505号、2004年7月6日にリップスに交付された米国特許第6,760,643号、1998年9月8日にリップスに交付された米国特許第5,805,455号、2003年8月19日にリップスに交付された米国特許第6,609,047号、1998年9月8日にハイアム(Higham)らに交付された米国特許第5,805,456号、1998年4月28日にハイアムらに交付された米国特許第5,745,366号、1999年5月18日にハイアムらに交付された米国特許第5,905,653号、1999年7月27日にゴドレフスキー(Godlewski)に交付された米国特許第5,927,540号、2000年3月21日にホームズ(Holmes)に交付された米国特許第6,039,467号、2003年10月28日にホームズらに交付された米国特許第6,640,159号、2000年11月21日にアーノルド(Arnold)らに交付された米国特許第6,151,536号、1995年1月3日にブレット(Blechl)らに交付された米国特許第5,377,864号、1993年3月2日にブレットに交付された米国特許第5,190,185号、2005年12月13日にダンカン(Duncan)らに交付された米国特許第6,975,922号、2009年8月4日にダンカンらに交付された米国特許第7,571,024号、2010年11月16日にダンカンらに交付された米国特許第7,835,819号、2000年1月4日にホームズに交付された米国特許第6,011,999号、2008年3月25日にハイアムに交付された米国特許第7,348,884号、2010年3月9日にハイアムに交付された米国特許第7,675,421号、2001年1月9日にウィルソン(Wilson)らに交付された米国特許第6,170,929号、2012年4月10日にヴァールベルク(Vahlberg)らに交付された米国特許第8,155,786号、2011年12月6日にヴァールベルクらに交付された米国特許第8,073,563号、2008年12月25日に公開されたヴァールベルクらの米国特許出願公開第2008/0319577号、2012年3月20日にヴァールベルクらに交付された米国特許第8,140,186号、2012年2月28日にヴァールベルクらに交付された米国特許第8,126,590号、2011年9月27日にヴァールベルクらに交付された米国特許第8,027,749号、2008年12月25日に公開されたヴァールベルクらの米国特許出願公開第2008/0319790号、2008年12月25日に公開されたヴァールベルクらの米国特許出願公開第2008/0319789号、2012年3月6日にヴァールベルクらに交付された米国特許第8,131,397号、2008年12月25日に公開されたヴァールベルクらの米国特許出願公開第2008/0319579号、2010年2月18日に公開されたレヴィ(Levy)らの米国特許出願公開第2010/0042437号、および2016年9月1日に公開されたウィルソン(Wilson)らの米国特許出願公開第2016/0253860号。本発明の実施形態は、任意の実行可能な組み合わせにおいて、これらの文書に記載される装置からの特徴を組み込んでよい。
【0012】
コンピュータシステム106は薬剤と供給量とを伴う処理を記録するために、病院中の薬剤と供給量とを追跡するプログラムを実行してよく、電子ネットワーク107を通じて、様々な分配装置102、103、104と通信してよい。電子ネットワーク107は有線ネットワーク、無線ネットワークであってよく、または有線部分と無線部分との両方を有してもよい。例えばWiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、イーサネット(登録商標)、セルラーデータネットワーク、または他の技術といった、任意の適切なネットワークまたは技術の組合せが用いられる。
【0013】
コンピュータシステム106は、特定の薬剤が複数の分配装置の1つから持ち去られまたは複数の分配装置の1つに戻されるときに通知されてよい。特に、法規制物質の特定の追跡のため、コンピュータシステム106は規制物質管理(controlled substance management : CSM)アプリケーション108を実行してよい。規制物質を含む供給量を追跡するシステムおよび方法の追加の詳細は、2013年1月3日に公開されたヴァールベルクらの米国特許出願公開第2013/0006652号において見出されることができ、その全内容はあらゆる目的のために本明細書に参照として組み込まれる。
【0014】
理想的には、薬剤は3つの方法でのみシステムを離れる。第1の方法では、薬剤は患者に投与される。システムを離れる第2の方法では、薬剤は廃棄される。例えば、特定の患者に対して処方される用量を上回る量で薬剤が梱包されると、各々の投与は再使用不能な端数となり、捨てられなければならない(109)。廃棄の別の例においては、バイアルが落下して破損し、その中身が使用不可能となる。システムを離れる第3の方法では、例えば薬剤がその使用期限を過ぎているために、薬剤は規制された方法110での処分のため薬局101に戻される。
【0015】
しかしながら、薬剤は他の方法でも、例えば故意でない誤りによってだけでなく、意図的な不正な使用または販売のためにも、システムを離れる可能性がある。規制物質の不正な持ち去りは、流用としてこの分野で既知である。薬剤及び供給物の流用を防止するか、少なくとも阻止することが非常に望ましい。
【0016】
コンピュータシステム106は、薬局101および分配装置102、103、104の中および外の薬剤と供給量との動きを追跡し得る。ただし、アイテムの多くの移送が必要である。例えば、調剤技師は、定期的に分配装置102,103,104を物理的に訪問し、使い切ったアイテムを補充し、返却されたアイテムまたは未使用のアイテムを回収し得る。このことは、薬局101から調剤技師のカートにアイテムを移送し、調剤技師のカートから分配装置にアイテムを再度移送する必要がある。その後、看護師が分配装置からアイテムを取り出す。これらの移送の各々は追跡されて文書化される必要がある。加えて、分配装置への巡回を行うのにかなりの薬局の時間が費やされる。分配装置から薬局へのアイテムの移動にも同様の移送及び文書化が必要である。
【0017】
リレーボックス(Relay boxes)は、通常の施設内メールシステムなどを用いてアイテムを移送するために開発されてきた。リレーボックスは、好ましくはそれが充填される場所(例えば、薬局101)またはその目的地(例えば、ナースステーション)においてのみ便宜的に開かれることができる安全で輸送可能なコンテナ(transportable container)である。その後、薬剤または供給品は、リレーボックスから分配装置に移送されるか、またはすぐに使用される。リレーボックスに関するさらなる詳細は、2017年8月10日に公開されたフット(Foot)らの米国特許出願公開第2017/0228951号において見出されることができ、その全内容はあらゆる目的のために本明細書に参照として組み込まれる。
【0018】
本発明の実施形態によれば、アイテムは、リレーボックスと比較して拡張された機能を有するリレートレイ(relay trays)に梱包される。
図2は、病院環境におけるリレートレイの使用を示している。図示した例では、薬局101から病室202に薬剤のバイアル201を輸送することが望ましい。リレートレイ203は、バイアル201を輸送するために使用される。リレートレイ203は、電子制御式ロック機構を備えた安全で輸送可能なコンテナである。リレーボックスと同様に、本発明の実施形態によるリレートレイは、好ましくはそれが補充される場所またはその目的地においてのみ便宜的に開かれることができる安全なコンテナである。バイアル201は、リレートレイ203内に配置され、リレートレイ203は、ワークステーション(workstation)205のコンピュータ204の制御下でロックされる。コンピュータ204は、プロセスを監視し、バイアル201のリレートレイ203への移送を記録するコンピュータシステム106と通信する。リレートレイ203は、コンピュータシステム106からの指示に従って、コンピュータ204からの指令に応答してロックされる。
【0019】
リレートレイ203は、リレートレイがワークステーション205にある間に電力が供給される電子コントローラを含む。例えば、リレートレイ203は、ドッキングおよび通信面206を介してまたはケーブル(図示せず)を介して直接的に、電力および通信を受け取ることができる。リレートレイ203の内容に関する情報は、コントローラ内の不揮発性メモリに書き込むことができる。例えば、リレートレイ203内のアイテムのリストをメモリに書き込むことができる。他の情報、例えば、リレートレイのルーム番号または他の宛先の指示、リレートレイの内容物が意図されている患者の識別子、または他の情報も同様に不揮発性メモリに書き込むこともできる。コントローラは、便宜的には、リレートレイ203の「上げ底(false bottom)」、または他の任意の動作可能な位置にあり得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、各リレートレイ203には、リレートレイ203内に記憶される固有のシリアル番号または他の識別子が割り当てられる。例えば、固有の識別子は、不揮発性メモリ内、安全な要素内、後述するような識別タグ内、または別の場所または場所の組み合わせにおいて記憶されてもよい。固有の識別子は、各リレートレイ203が永続的に一意に識別されるように、変更することが困難または不可能であることが好ましい。
【0021】
リレートレイ203がロックされてワークステーション205から取り除かれると、リレートレイは完全に電力供給されない場合があり、且つバッテリーまたは他の電源を含まない場合がある。他の実施形態では、リレートレイ203は、計時回路、追跡などを維持するための小型バッテリーまたはキャパシタを含むことができるが、この場合でさえ、リレートレイ203は、ワークステーション205などのワークステーションで見られるように、外部電源から切断されたときにそれ自体をロック解除する手段を有さないことが好ましい。適切なワークステーションにいないときにロックを解除できないことにより、リレートレイ203内のアイテムの輸送が安全になる。コンピュータシステム106からの適切な電子接続および指令なしでは、リレートレイ203内のアイテムは、リレートレイ203を物理的に損傷することなく取り出すことができない。いくつかの実施形態では、ロックされたリレートレイを開くための機械的手段、例えば、停電または他の緊急事態の場合に使用することができるキーを設けることができる。好ましくは、キーへのアクセスは、厳しく制御され、権限を与えられた職員のみに許可される。
【0022】
図2に示されるように、(内部にバイアル201を有する)リレートレイ203は、病室202の中または近くの別のワークステーション207に輸送される。リレートレイ203は、例えば別のドッキングおよび通信面209を使用して、コンピュータ208に接続して配置される。コンピュータシステム106からの指示に従って、リレートレイ203が開かれ、バイアル201が取り出され、それにより、バイアル201内の薬剤が患者に投与され得る。好ましくは、リレートレイ203は、開く指示が正当なソース(legitimate source)から来たことを保証するために、開く前にコンピュータシステム106を認証する。
【0023】
リレートレイ203に記憶された任意の患者情報は、意図された患者に固有であるが、人間が読めないように、ハッシュ化(hashed)されてもよい。例えば、患者の名前は、ワークステーション205で合意されたアルゴリズムを使用してハッシュ化され、その結果がリレートレイ203内の不揮発性メモリに記憶されてもよい。リレートレイ203がワークステーション207に到着すると、同じアルゴリズムを使用して部屋202の患者の名前がハッシュ化され、その結果がリレートレイ203に記憶されたハッシュ化された名前と比較して、リレートレイ203が正しい患者に到着したことを確認することを支援することができる。このようにして、患者のプライバシーのために、リレートレイ203が移動中に患者の名前が表示されないか、または他の方法で利用できない。他の実施形態では、リレートレイ203に格納された患者情報は暗号化され、ワークステーション207などの許可および認証された場所でのみ回復可能であり得る。
【0024】
好ましくは、リレートレイ203が正しい患者の正しい宛先に到着したことが確認されるまで、リレートレイ203は、ワークステーション207においてロックを解除しない。確認は、好ましくは、リレートレイ203とコンピュータシステム106との間の認証されたチャネルを介して行われる。
【0025】
図2は施設内のリレートレイ203を輸送することを示しているが、リレートレイは、大きく離れている施設間を輸送されることができる。例えば、リレートレイ203は、介護施設で薬剤供給品を補充するかまたは薬剤を在宅ケアの患者に配達するなどのために、ほぼ任意の場所に輸送されてもよい。その輸送は、陸上輸送又は航空輸送を含む任意の適切な手段によるものであり得る。バッテリーが無いリレートレイは、特に航空輸送に適している。
【0026】
図3は、本発明の実施形態による、リレートレイ203をより詳細に示す。リレートレイ203は、リレートレイのコンパートメント(compartment)を画定する主コンテナ部分301と、ヒンジ式蓋(hinged lid)302と、を含む。他の実施形態では、スライド式、取り外し可能、または回転式の蓋、または別の適切な種類の蓋を使用することができる。本発明の実施形態によるリレートレイは、任意の適切なサイズであってもよい。例えば、リレートレイ203は、便宜的には、約25.40~35.56cm(10~14インチ)の幅、約20.32~30.48cm(8~12インチ)の深さおよび約7.62~12.70cm(3~5インチ)の高さであってよい。他のより大きいかまたはより小さいサイズが可能である。多くの実施形態では、リレートレイは、内部の郵便配達と同様の方法で施設全体に輸送されるのに適したサイズである。しかしながら、いくつかの実施形態では、本発明を具現化するリレートレイは、補助無しで人が運ぶには大きすぎるかまたは重すぎる場合がある。
【0027】
リレートレイ203の外殻は、好適には、鋼、アルミニウム、強化ポリマーまたは別の適切な材料、または材料の組合せなど、強固な耐久性の材料から成り得る。いくつかの実施形態において、蓋302は透明または半透明であってよく、また蓋302が閉じられているときにリレートレイ203の中身が可視とされるように透明部分を備えてよい。リレートレイ203は、好ましくは容易に洗浄可能である。
【0028】
リレートレイ203はさらに、リレートレイ203の宛先アドレス、リレートレイ203の内容物が意図されている患者の識別子、または他の情報を表示し得る表示部303を含む。表示部303は、単に、リレートレイ203の任意の部分に取り付けられたタイプされた若しくは書かれたラベルであってもよく、又は電子ディスプレイであってもよい。好ましくは、任意の電子ディスプレイは不揮発性であり、リレートレイ203への電力入力がない場合でも、表示部303上の情報を輸送中に読み取ることができる。例えば、表示部303は、電力が供給されていない場合でも読み取り可能なままである電気泳動ディスプレイ(electrophoretic)または他の「電子ペーパー(electronic paper)」ディスプレイであり得る。このようなディスプレイは、米国のマサチューセッツ州ビレリカ(Billerica, Mass)のE-Ink Corporationによって製造されている。
【0029】
いくつかの場合において、異なる患者を対象とする複数の異なる薬剤は、リレートレイ203で輸送されてもよい。たとえば、薬剤は、2人の患者が近くにいる同じナースステーションに輸送され得る。その場合、患者名または他の識別子の両方がハッシュ化され、リレートレイ203に記憶され得る。複数の患者の利益のために単一のリレートレイの使用を具体化するために、リレートレイは、論理的に複数のトレイとして定義されてもよい。
【0030】
図4は、本発明の実施形態による、リレートレイ203と、ドッキングおよび通信面(docking and communication surface)206とを示す。ドッキングおよび通信面206は、露出した一組の金属導体401,402を含み、それらの交互(alternating)の金属導体401,402は、異なる電圧に保持される。図4の例では、複数の導体401は低電圧または接地電圧に保持され、複数の導体402はより高い電圧、例えば12V DCまたは別の適切な電圧に保持される。隣接する導体401,402が互いに離間されるように、交互の導体401,402の間にはギャップが設けられる。
【0031】
リレートレイ203は、リレートレイ203の外面に露出した4つのコンタクト403のセットを含む。この例では、コンタクト403は、リレートレイ203の底面にある。コンタクト403は、導体401,402の間の間隔よりも直径が小さいので、どのコンタクト403も、隣接する導体401,402に同時に接触することができない。しかしながら、リレートレイ203がその底面をドッキングおよび通信面206上に下ろされて配置されると、コンタクト403のうちの少なくとも1つは、低電圧導体401のうちの1つに接触し、コンタクト403のうちの少なくとも1つは高電圧導体402のうちの1つに接触する。4つのコンタクト403のうちのいずれか1つが低電圧に保持され、他の3つのコンタクト403のうちのいずれか1つが高電圧に接続されると、電気コンタクトの残りの2つの各々は、低電圧に保持されるか又は高電圧に保持されるかにかかわらず、リレートレイ203内の整流器は、リレートレイ203内の電子機器に電力を供給するのに適した極性のDC電圧を生成する。幾つかの実施形態では、コンタクト403とドッキングおよび通信面206とは、導体401,402およびコンタクト403に対して作業可能な寸法の組を規定するOpenDots(登録商標)規格に適合することができる。Open Dots(登録商標)規格に従った一実施形態では、4つのコンタクト403は、1.8mmの最大直径を有し、外側の3つのコンタクトが9.73mmの公称半径を有する円上にあるように、正三角形の中心および頂点に配置される。導体401,402の各々は、10.09~10.18mmの幅であり、導体401,402は、公称で12.2mm間隔で離間され、隣接する導体401,402は、1.86~1.96mmの幅の非導電性領域によって分離されている。その他の構成も可能である。
【0032】
他の実施形態では、リレートレイ203は、コンタクト403などのコンタクトを介するのではなく、ケーブルを介して電力および通信信号を受信してもよい。他の実施形態では、リレートレイ203は、誘導結合を介して電力および通信信号を受信してもよい。例えば、リレートレイ203は、その底面近くまたは別の場所にワイヤーコイル(wire coil)を含み得る。ワイヤーコイルは、電力を受け取り、ワークステーションにおいて別のワイヤーコイルと通信信号を交換するように使用され得る。誘導インタフェースは、ワイヤレスパワーコンソーシアム(Wireless Power Consortium)によって公表されたQiインタフェース規格に従ったインタフェースの特徴と同様の特徴を含み得る。複数の電力および通信インタフェースが提供されてもよい。例えば、ケーブル接続、誘導接続、およびコンタクト403などのコンタクトのいずれかまたはすべてが提供されてもよく、その結果、リレートレイ203は、異なる機能を有するワークステーションで使用され得る。
【0033】
ドッキングおよび通信面206は、ケーブル404を介してコンピュータ204などのコンピュータと通信されるか、または無線で通信されることができる。ドッキングおよび通信面206は、ケーブル404を介して、又は専用電力接続(図示せず)を介して電力を受け取ることができる。
【0034】
図5は、ドッキングおよび通信面206の導体401,402と接触するように、リレートレイ203のコンタクト403と並置されたドッキングおよび通信面206とリレートレイ203との簡略化された電気ブロック図を示す。ドッキングおよび通信面206は、コントローラ501を含み、コントローラ501は、プロセッサ、メモリ、およびドッキングおよび通信面206の機能を実行するための他の回路を含み得る。ドッキングおよび通信面206は、外部電源、例えば、商用電源、電源、または取り付けられたたコンピュータからのケーブルから電力を受け取る。ドッキングおよび通信面206は、ドッキングおよび通信面206の表面上の導体401,402に電圧を送る。図5は、ドッキングおよび通信面206によって受け取られた電圧が単に導体401,402に介していることを示すが、他の構成も可能である。例えば、ドッキングおよび通信面206は、商用電源から電力を受け取り、その電力を整流およびフィルタリングして、導体401,402にDC電圧を供給してもよい。ドッキングおよび通信面206はまた、例えばケーブル404または別の通信機構を介して、接続されたコンピュータと電子的に通信する。いくつかの実施形態では、ドッキングおよび通信面206への電力および通信接続は、単一の多導体ケーブル、例えば、ユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus : USB)ケーブルまたは別の種類のケーブルによって伝達される。
【0035】
ドッキングおよび通信面206は、モデム502として示される変調器および復調器をさらに含む。
リレートレイ203は、コントローラ503を含み、コントローラ503は、プロセッサ、メモリ、およびドッキングおよびリレートレイ203の機能を実行するための他の回路を含み得る。リレートレイ203は、整流器504を含み、この整流器504は、どのコンタクト403がどの導体401,402に対向するかにかかわらず、コントローラ503を動作させるために正しい極性の端子505に電圧を生成する。受け取った電圧は、コントローラ503およびリレートレイ203の他の機能に電力を供給するために使用される。コントローラ503は、電気機械式ロック(electromechanical lock)506を制御し、表示部303に情報を表示させることができる。
【0036】
リレートレイ203はまた、モデム507として示される変調器および復調器を含む。ドッキングおよび通信面206とリレートレイ203とは、送信デバイスによってDC電力線に通信信号を乗せ(変調)、受信デバイスによって信号を抽出(復調)することにより、導体401,402及びコンタクト403を介して通信することができる。例えば、乗せられた信号は、それぞれの復調器によって検出可能な比較的高い周波数のものであるかもしれないが、同じ線によって伝達される電力の品質にほとんどまたは全く影響を与えない。
【0037】
ドッキングおよび通信面206は、電源コンセント接続508を含むことができ、面509,510等の追加のドッキングおよび通信面を共にデイジーチェーン接続することを可能にし、各面は、例えばケーブル511,512を介して先の面から電力を受け取る。トレイ513,514などの追加のリレートレイは、面509,510上に配置されることができる。配置されると、追加のリレートレイは電源を投入され、ドッキングおよび通信面206、最終的にはコンピュータシステム106と、ドッキングおよび通信面間の電源接続を介して通信することができる。
【0038】
図4,5の実施形態では、リレートレイ203とドッキングおよび通信面206との間の電力インタフェースは直流(DC)を使用する。他の実施形態では、交流(AC)が使用されてもよい。図6は、直流の実施形態におけるリレートレイ601と、ドッキングおよび通信面602とを示す。リレートレイ601は、上述したリレートレイ203の複数のコンタクト403と同様に、外面に複数のコンタクト603を含み得る。ドッキングおよび通信面602。
【0039】
ドッキングおよび通信面602は、上述したドッキングおよび通信面206の導体401,402と同様の外面において露出した複数の導体604を含む。ドッキングおよび通信面602は、AC電力605を受け取ってそれを複数の導体604に送り、複数のコンタクト603を介してリレートレイ601に送る。ドッキングおよび通信面602は、例えばフィルタおよびレギュレータ606を用いてAC電力を調整し、コントローラ501に電力を供給するためのDC電力を提供する。コントローラ501は、ケーブル404を介して外部のコンピュータシステムと通信し、モデム502を制御して通信信号をAC信号に乗せ、AC信号から抽出する。AC信号は、複数のリレートレイがデイジーチェーン方式(daisy chain fashion)で一緒に接続されることを可能にするために、電源コンセント接続508に供給されてもよい。
【0040】
リレートレイ601は、AC電力605が供給されると、整流されたAC電力607を生成する整流器504を含む。フィルタおよびレギュレータ608は、ロック506、モデム507、および表示部303を制御するコントローラ503にDC電力を供給する。
【0041】
図6の例では、ドッキングおよび通信面602は、例えば、12ボルトまたは別の適切な電圧で低電圧AC電力605を受け取る。したがって、露出した導体604の電圧も低電圧であり、操作者にとって安全である。他の実施形態では、AC電力605は、ライン電圧(line voltage)、例えば110ボルトで受け取られてもよい。その場合、ドッキングおよび通信面602は、導体604に供給する前にライン電圧をより低い電圧に下げるための変圧器または他の回路を含み得る。
【0042】
いずれにしても、導体604における電圧は、非常に好ましくはライン電圧ではないが、例えば、約50ボルト未満の安全な低電圧である。
ドッキングおよび通信面の導体に生成される電圧がACであるかまたはDCであるかにかかわらず、短絡保護は、例えば、Open Dots(登録商標)規格に規定されているように、または別の構成で提供されることが好ましい。
【0043】
いくつかの実施形態では、ドッキングおよび通信面206とリレートレイ203との間の電力線接続を介して行われる通信は、G3-PLC Allianceによって公表されたG3-PLC電力線通信規格に記載された通信に適合するかまたは類似するものであり得る。このような通信は、適応変調およびトーンマッピング(tone mapping)を用いて、400kHzでサンプリングされた直交周波数分割多重を使用する。エラーの検出および訂正は、畳み込みコードおよびリードソロモンエラー訂正(Reed-Solomon error correction)によって行われ得る。
【0044】
他の実施形態では、ドッキングおよび通信面206とリレートレイとの間の通信は、PRIME Allianceによって公表されたPRIME電力線通信規格に記載された通信に適合するかまたは類似するものであり得る。他の適切な規格または独自の通信フォーマット、例えばIEEE 1901.2も使用することができる。他の実施形態では、例えば、HomePlug Powerline Alianceによって公表されたHomePlug(登録商標)規格で使用される構成と同様に、ブロードバンド電力線通信を使用することができる。
【0045】
上述したように、リレートレイ203は、好ましくは、開く前にコンピュータシステム106を認証して、開くための命令が許可されたソースからのものであることを保証する。このようにして、不正な「開く(open)」命令が検出され無視されることができる。認証は、任意の適切な方法で実行できるが、いくつかの実施形態では、公開鍵認証を使用して実行され得る。
【0046】
公開鍵認証では、コンピュータシステム106は公開鍵と秘密鍵を有し、両方を使用して署名を作成する。リレートレイ203は、コンピュータシステム106の公開鍵を知っており、それを使用して、署名が本物であるかどうかを判定することができるが、リレートレイ203は、コンピュータシステム106の秘密鍵を必要とせず、有していない。
【0047】
いくつかの実施形態では、リレートレイ203などのリレートレイは、無線周波数識別(radio frequency identification : RFID)タグまたは同様のデバイスなどの受動外部発信可能なメモリデバイス(passive, externally-excitable memory device)を含み得る。リレートレイ203の識別子は、RFIDタグに格納され、施設内のリレートレイ203の追加の追跡に使用されてもよい。例えば、図7に示されるように、無線読取ステーション701は、リレートレイ203がワークステーション205からワークステーション207に向かう途中で通過する出入口702に設置されている。無線読取ステーション701は、リレートレイ203内のRFIDタグまたは他のデバイスを発信させ、リレートレイに、その格納された識別子を開示させることができる。読取ステーション701は、識別子を受け取り、それをコンピュータシステム106に送ることができ、コンピュータシステム106は、リレートレイ203が出入り口702を通過したという事実を記録することができる。通過の日時などの他の情報が記録されてもよい。読取ステーション701は、施設の周りの複数の場所に配置されることができ、それにより、必要に応じてリレートレイを受動的に追跡することができる。施設からのリレートレイの持ち出される試みが検出されるように、読取ステーションが施設の出口に配置されてもよい。いくつかの例では、そのような持ち出しは、例えば、薬剤または他のアイテムがリレートレイ内の別の場所に移送されているときに、正当である可能性がある。他の場合では、施設からのリレートレイの持ち出しは、流用の試み(diversion attempt)を示し得る。
【0048】
施設全体にわたるリレートレイの追跡は、他の方法で達成されてもよい。例えば、バッテリーを含むリレートレイはまた、ブルートゥース(登録商標)LEまたは他の同様の受信機などの低電力無線受信機を含み得る。(上述したように、バッテリーは、好ましくは、移動中にリレートレイのロックを解除するかまたはリレートレイからアイテムを取り出すいかなる機構にも電力を供給しない。)多数のビーコン送信機(beacon transmitter)が、施設の周囲の既知の場所に配置されてもよい。輸送中、リレートレイは定期的または時折、たとえば数秒ごとに、近くのビーコン(beacon)を検出し、ビーコンが検出された時刻を記録する。トレイが目的地に到着し、通信インタフェースに接続されると、検出の記録が取得されることができる。特定のワークステーションから別のワークステーションへのリレートレイの移動は、ビーコン送信機の既知の場所に基づいて再構築されることができる。予想されるルートや移動のタイミングからの逸脱は、流用(diversion)の試みを示唆している可能性がある。リレートレイの移動の記録は、分析目的のために、例えば、最速又は最も効率的な配達のために薬局カートのルートを最適化するためにも使用されることができる。
【0049】
ビーコンに基づく追跡は、例えば、電力のみのドッキング面または他の適切な電力接続を有するカート上のリレートレイを輸送することによって、バッテリーを有さないリレートレイに対しても実施することができる。電力のみのドッキング面は、外側では、上述したドッキングおよび通信面206または602に類似しているが、電力インタフェース、例えば、導体401,402などの導体を介してまたは誘導コイルを介して通信するいかなる能力も欠いている。したがって、電力のみのドッキング面上に配置されたリレートレイは、その面のコンタクトまたはコイルを介して受け取った電力を使用してビーコン受信機を動作させることができるが、コンピュータシステム106からそのようにするための命令を受信することができないため、自身をロック解除するかまたは他の方法でその内容物をアクセス可能にしない。他の実施形態では、リレートレイが電力を受け取って追跡を行うことができるが、輸送中には開かないように、単純なプラグイン電力のみの接続が、輸送カートとリレートレイとの間に設けられてもよい。
【0050】
リレートレイ203は1つのコンパートメントのみを有するが、他のリレートレイはより複雑であってもよい。例えば、本発明を具現化するリレートレイは、個別にロック可能であり得る複数のコンパートメントを有し得る。
【0051】
図8は、他の実施形態による、リレートレイ801を示す。リレートレイ801は、いくつかの個別にロック可能な複数のコンパートメント802を含む。特定の患者のためにリレートレイ801から薬剤を回収するユーザが正しいコンパートメント802に案内されるように、誘導灯803が提供されてもよい。例えば、リレートレイ801がワークステーション205に設置された時点で、コンピュータシステム106は、どの薬剤がリレートレイ801のどのコンパートメント802に配置されたかを記録することができる。リレートレイ801が病室202に到着し、薬剤が患者への投与のために回収されるべきである場合、コンピュータシステム106は、患者のための薬剤を保持するコンパートメント802に対応する誘導灯803を照明するようにリレートレイ801に命令することができる。リレートレイ801は、正しい誘導灯803を照明し、正しいコンパートメント802のロックを解除することができる。
【0052】
複数のコンパートメントを有するリレートレイ801などのリレートレイは、複数の患者のための薬剤の輸送、一人の患者のための複数の薬剤の輸送、または規制物質の複数回の投薬量の輸送に特に有用であり得る。例えば、薬剤は、小さなコンパートメントごとに一回の投薬量でリレートレイ801に搭載されてもよい。複数のコンパートメントは、コンピュータシステム106からの命令があった場合にのみ開くことができ、コンピュータシステム106は、特定の薬剤の投薬スケジュールに従って一度に1つずつ命令を送出することができる。したがって、一度に1回の投薬量しか入手できないため、投薬ミスや流用の可能性が減少する。
【0053】
いくつかの実施形態では、リレートレイ801などのリレートレイは、どの薬剤がどのコンパートメント802に格納されているかの記録を記憶し得る。たとえば、記録は、リレートレイ801が薬局101に設置されたときに、リレートレイ801内の不揮発性メモリに記憶されてもよい。この構成では、コンピュータシステム106は、薬剤をコンパートメントレベルまで追跡する必要はなく、どの薬剤がどのリレートレイにあるかを追跡するだけでよい。アイテムを分配するために、コンピュータシステム106は、リレートレイ801に特定の薬剤の1回の投薬量を分配するように命令を送出するだけでよい。リレートレイ801は、薬剤が存在することを確認し、その内部記録を使用して正しいコンパートメント802を特定し、正しい誘導灯803を照明し、コンパートメント802を開くことができる。コンピュータシステム106からの命令は参照薬剤のみを必要とし、特定のコンパートメント802を必要としないので、この構成におけるコンピュータシステム106とリレートレイ801との間のインタフェースは、薬剤抽出層(medication abstraction layer)と呼ばれ得る。
【0054】
他の実施形態では、コンピュータシステム106は、アイテムをコンパートメントレベルまで追跡することができる。この構成では、コンピュータシステム106は、どの薬剤がどのリレートレイのどのコンパートメントにあるかの記録を記憶する。この記録は、リレートレイが薬局101に設置されたときに作成される。アイテムを分配するために、コンピュータシステム106は、リレートレイ801に命令を送出し、特定のコンパートメント802のロックを解除する。この構成では、抽出は含まれず、リレートレイ801はコンパートメント802の内容の記録を有しても有さなくてもよい。
【0055】
図9は、リレートレイ801の下方斜視図を示す。この例では、リレートレイ801は、上述したリレートレイ203の複数のコンタクト403と同様に、底面に複数のコンタクト403を有する。したがって、リレートレイ801は、ドッキングおよび通信面206,209などのドッキングおよび通信面から電力および通信信号を受け取ることができる。他の実施形態では、リレートレイ801は、ドッキングおよび通信面を使用する代わりに、電力および通信信号を伝送するケーブルを使用してワークステーションのコンピュータに接続されてもよい。その場合、リレートレイ801は、コンタクト403を含まなくてもよい。他の実施形態では、リレートレイ801を異なる機能を有するワークステーションで使用することができるように、ケーブル接続及びコンタクト403等のコンタクトの両方が設けられてもよい。
【0056】
図10は、他の実施形態による、リレートレイ1001を示す。リレートレイ1001は、任意の互換性のある種類のアイテムの輸送および分配に使用することができるが、規制物質の輸送において特に有用であり得る特徴を有する。リレートレイ1001は、いくつかの分配機構1003を収容するキャビネット1002を含む。分配機構1003は、投薬時に一回の投薬量を分配することができる電気機械装置である。各分配機構1003は、分配される複数のアイテムの供給量を保持し、これらをリレートレイ1001内のコントローラの制御下で一度に1つずつ分配することができる。異なる分配機構は、ブリスターパック(blister packs)、シリンジ(syringes)、バイアル1004等のバイアル、または他の種類のアイテム内の経口固形物を分配するように構成され得る。リレートレイ1001は、薬剤パッケージタイプの予想される使用法に応じて、分配機構1003の異なるタイプの組み合わせで構成されてもよい。1つの分配機構1005が、リレートレイ1001に挿入されているところが示されている。好ましくは、各分配機構1003は、挿入されると、リレートレイ1001の内部構造(図示せず)と電気的および機械的接続を行う。他の実施形態では、リレートレイは、単一の分配機構のみ、例えば、リレートレイの構造に組み込まれた機構のみを含み得る。
【0057】
使用中、分配機構1003は、好ましくは、薬局101において、分配される薬剤または他のアイテムが搭載され、リレートレイ1001の内側でロックされる。例えば、薬局職員に分配機構1003へのアクセスを付与すると、分配引き出し1006を開けることができる。分配機構1003が設置されると、分配引き出し1006を閉じてロックすることができる。
【0058】
輸送中、リレートレイ1001には電力が供給されておらず、分配機構を用いてアイテムを分配することはできない。ワークステーション207等のワークステーションにおいてリレートレイ1001が電源及びネットワークに接続されている場合、リレートレイ1001は、コンピュータシステム106からの指令に応じて個々のアイテムを分配できる。リレートレイ1001は、ドッキングおよび通信面から電力および通信信号を受信するための複数のコンタクト403等の複数のコンタクトを含むか、またはリレートレイ1001は、1つ以上のケーブルを介して電力および通信信号を受け取ってもよい。他の実施形態では、ケーブル接続及びコンタクト403等のコンタクトの両方が設けられてもよい。
【0059】
各分配機構1003は、分配引き出し1007内にアイテムを下方に落とし、分配引き出しは、分配されたアイテムを見せるためにリレートレイ1001から引き出されることができる。したがって、リレートレイ1001のユーザは、リレートレイ1001の内部または分配機構1003にアクセスできない。この構成は、人為的なエラーの機会を減少させ且つリレートレイ1001内の薬剤へのアクセスを制限し、場合によっては、流用を阻止する。本発明の実施形態での使用に適した分配装置の例は、参照により以前に組み込まれた、Wilsonらの米国特許出願公開第2016/0253860号に記載されている。本発明の他の実施形態では、他の種類の分配装置が使用されてもよい。
【0060】
リレートレイおよびワークステーションのシステムは、病院または他の施設内の薬剤分配および管理システムの一部として使用されてもよい。例えば、複数のリレートレイは、施設周辺の様々なワークステーションで必要とされることが予想される薬剤および他のアイテムを備えて薬局101に設置されてもよい。設置されたリレートレイは、調剤技師または他の施設内配達によってワークステーションに配達されてもよく、以前にワークステーションに配達された「使用済み」リレートレイと交換されてもよい。未使用の薬剤またはその他のアイテムが必要に応じて補充または処分されるように、使用済みのリレートレイは薬局101に戻すことができ、リレートレイが再利用されることができる。
【0061】
上述したように、本発明の実施形態による複数のドッキングおよび通信面は、複数のリレートレイが電力を受け取り且つコンピュータシステム106と通信することができるように、デイジーチェーン方式で互いに接続可能である。この構成の一例は、図11に示されている。図11では、リレートレイ203は、第1のドッキングおよび通信面206上に配置され、リレートレイ801は、第2のドッキングおよび通信面206上に配置される。2つのドッキングおよび通信面206は、ケーブル511によって互いに接続される。チェーンの第1の面は、ケーブル404または別の構成を介してコンピュータシステムに接続する。チェーンにおいて利用可能な電力量によってのみ制限される任意の数のドッキングおよび通信面は、たとえば追加のケーブル512を介してデイジーチェーン接続されることができる。図11に示されているように、チェーン内の複数のリレートレイは、任意のタイプの組み合わせ、例えば、リレートレイ203、801、および1001によって例示されるタイプ、または他のタイプであり得る。
【0062】
ワークステーション205,207等のワークステーションは、複数のドッキングおよび通信面206を含むことができ、任意のワークステーションにおけるリレートレイの集合体は、図1に示されているキャビネット102と同様の方法で機能するが、大きなキャビネット構造を必要としない。複数のリレートレイは、単に作業面に配置されるかまたは単純な引き出しに格納されていてもよい。複数のリレートレイは、ネットワークを介してコンピュータシステム106に見えるように、格納されている間では電力供給されたままである。
【0063】
図12は、本発明の実施形態による、例示的な壁に取り付けられたワークステーション1200を示す。作業面1201,1202は、格納時に折り畳み、使用時に下げることができる。作業面1201,1202のいずれか一方または両方がドッキングおよび通信面206等のドッキングおよび通信面を内蔵していてもよく、これにより、リレートレイ1203が下げられた作業面のうちの1つに直接配置されることができる。コンピュータ208等のコンピュータは、たとえばパネル1204の背後に組み込まれ、タッチスクリーンディスプレイ1205を有し得る。
【0064】
引き出し1206はまた、内蔵されたドッキングおよび通信面を含み、これにより、引き出し1206に格納された複数のリレートレイは、格納されている間、電力を供給されたままである。したがって、コンピュータシステム106は、引き出し1206に格納されている任意のリレートレイに問い合わせることができる。薬剤が複数のリレートレイのうちの1つから回収される場合、ユーザは、適切な引き出し1206のロックを解除し、リレートレイを作業面1202等の作業面に移動させ、そこで薬剤にアクセスすることができる。作業面1201,1202及び引き出し1206内の任意の複数のドッキングおよび通信面は、デイジーチェーン方式で接続されるか、または電源およびコンピュータシステムに別々に接続され得る。ワークステーションのようなワークステーションは、患者部屋のスペースをほとんど占有しないという利点を有し、他のいくつかの構成よりも柔軟性が高くかつ低コストで患者の投薬を管理することができる。
【0065】
本明細書に添付される請求項において、「a」または「an」という言葉は「1つ以上」を意味することを意図する。「備える(comprise)」ならびに「comprises」および「comprising」などのその変化形は、ステップまたは要素の列挙に先立つとき、さらなるステップまたは要素の追加は随意であり、また、除外されないという意味を意図する。要素の任意の実行可能な組み合わせと本明細書で開示される特徴とが開示されることも考慮されることが理解される。
【0066】
本発明は今、明快さおよび理解を目的として詳細に記載されている。しかしながら当業者は、添付される請求項の範囲内ある種の変更および修正が実施されてよいことを理解することとなる。
図1
図2
図3
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図7
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図10
図11
図12