(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】ロラゼパムのアルコール耐性経口用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5513 20060101AFI20220725BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220725BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220725BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220725BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220725BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220725BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20220725BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220725BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220725BHJP
A61K 9/58 20060101ALI20220725BHJP
A61K 9/62 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
A61K31/5513
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/38
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/58
A61K9/62
(21)【出願番号】P 2020543242
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(86)【国際出願番号】 US2018057433
(87)【国際公開番号】W WO2019089330
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-06-23
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520152412
【氏名又は名称】エッジモント・ファーマシューティカルズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー・トラスト
【氏名又は名称原語表記】EDGEMONT PHARMACEUTICALSPHARMACEUTICALS, LLC TRUST
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・サルテル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・バション
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-504390(JP,A)
【文献】国際公開第2016/193034(WO,A1)
【文献】特表2016-517430(JP,A)
【文献】特表2011-506493(JP,A)
【文献】特表2009-526825(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1194908(CN,A)
【文献】日本医薬品添加剤協会 編集 医薬品添加物辞典 2016,株式会社薬事日報社,2016年02月18日,第29,30,122~125頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロラゼパムのアルコール耐性制御性放出経口用医薬組成物であって、
基質、及び該基質を包囲するアルコール耐性コーティングを含むコーティング基質を含み、前記コーティング基質の基質は、持続性放出薬物含有コア、遅延性放出薬物含有コア、または、持続性放出薬物含有コア及び遅延性放出薬物含有コアの両方、を含む剤形の少なくとも1つであり;
前記持続性放出薬物含有コアは、ロラゼパム及び制御性放出ポリマーを含み;
前記遅延性放出薬物含有コアは、ロラゼパム及び制御性放出ポリマーを含む持続性放出薬物含有コア、及び、該持続性放出薬物含有コアを包囲する腸溶性コーティングを含み;
USP<711>に従う40%エタノール及び0.1N HCl溶液を含む酸性エタノール水性溶液中における37.0±0.5℃及び100rpmで2時間の溶出試験により測定されたときに、前記コーティング基質から放出されるロラゼパムの量が、アルコール耐性コーティングなしの対応する基質から放出されるロラゼパムの量の75%以下であり、そして、
USP<711>に従う水性0.1N HCl溶液中における37.0±0.5℃及び100rpmで2時間の溶出試験により測定されたときに、前記コーティング基質から放出されるロラゼパムの量が、前記アルコール耐性コーティングなしの対応する基質から放出されるロラゼパムの量に比べて±25%以下、±20%以下、±10%以下、±5%以下、または±1%以下である、医薬組成物。
【請求項2】
前記アルコール耐性コーティングが、エタノール不溶性のポリマー多糖、ポリマーエーテル、ポリマーアルコール、ポリマーカルボン酸、ポリマーカルボン酸エステル、及びポリマーカルボン酸アルコールからなる群より選択される1つ以上のエタノール不溶性構成要素を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記アルコール耐性コーティングが、エタノール不溶性のカルボマー、ポリエチレンオキシドポリマー、キサンタンガム、及びアルギン酸塩からなる群より選択される1つ以上のエタノール不溶性構成要素を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記アルコール耐性コーティングがカルボキシメチルセルロースナトリウムまたはアルギン酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記アルコール耐性コーティングがキサンタンガムを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
アルコール耐性コーティングと前記コーティング基質の基質との重量:重量比が少なくとも1:10である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
アルコール耐性コーティングと基質との重量:重量比が1:10~3:1である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
アルコール耐性コーティングと基質との重量:重量比が1:10~1:1である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
アルコール耐性コーティングと基質との重量:重量比が、少なくとも1:10、少なくとも1.5:10、少なくとも2:10、少なくとも2.5:10、少なくとも3:10、少なくとも3.5:10、少なくとも4:10、少なくとも4.5:10、少なくとも5:10、少なくとも5.5:10、少なくとも6:10、少なくとも6.5:10、少なくとも7:10、少なくとも7.5:10、少なくとも8:10、少なくとも8.5:10、少なくとも9:10、少なくとも9.5:10、及び少なくとも1:1からなる群より選択される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記コーティング基質が、40%エタノール及び0.1N HCl溶液を含む酸性エタノール溶液中における37.0±0.5℃及び100rpmで2時間の溶出試験により測定されたときに、アルコールの存在下で、前記アルコール耐性コーティングなしの対応する基質により放出されるロラゼパムの量に比べて50重量%未満のロラゼパムを放出する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記コーティング基質が、40%エタノール及び0.1N HCl溶液を含む酸性エタノール溶液中における37.0±0.5℃及び100rpmで2時間の溶出試験により測定されたときに、アルコールの存在下で、前記アルコール耐性コーティングなしの対応する基質により放出されるロラゼパムの量に比べて40重量%未満のロラゼパムを放出する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記コーティング基質が、40%エタノール及び0.1N HCl溶液を含む酸性エタノール溶液中における37.0±0.5℃及び100rpmで2時間の溶出試験により測定されたときに、アルコールの存在下で、前記アルコール耐性コーティングなしの対応する基質により放出されるロラゼパムの量に比べて25重量%未満のロラゼパムを放出する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記コーティング基質が、40%エタノール及び0.1N HCl溶液を含む酸性エタノール溶液中における37.0±0.5℃及び100rpmで2時間の溶出試験により測定されたときに、アルコールの存在下で、前記アルコール耐性コーティングなしの対応する基質により放出されるロラゼパムの量に比べて10重量%未満のロラゼパムを放出する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記コーティング基質が、40%エタノール及び0.1N HCl溶液を含む酸性エタノール溶液中における37.0±0.5℃及び100rpmで2時間の溶出試験により測定されたときに、アルコールの存在下で、前記アルコール耐性コーティングなしの対応する基質により放出されるロラゼパムの量に比べて1重量%未満のロラゼパムを放出する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記各コアが、粒子、顆粒、ペレット、またはビーズレットである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記コーティング基質が、錠剤またはカプセルである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記コーティング基質が、持続性放出薬物含有コア、または、持続性放出薬物含有コア及び遅延性放出薬物含有コアの組合せである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記アルコール耐性コーティングが、前記腸溶性コーティングの内部にある、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記アルコール耐性コーティングが、前記腸溶性コーティングの外部にある、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記コーティング基質が、錠剤に製剤化されるか、またはカプセル殻内に充填され、前記錠剤またはカプセル殻が、任意選択でアルコール耐性コーティングにより包囲されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記基質が、アルコール耐性コーティングにより包囲された錠剤またはカプセルの形態をとる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記コーティング基質がサシェパッケージ内に収容される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項23】
(A)コーティングされた持続性放出ビーズレットであって、(i)アルコール耐性コーティングにより包囲された持続性放出製剤におけるロラゼパムを含むビーズレットを含み、前記アルコール耐性コーティングが水中よりもエタノール中での可溶性が低い、ビーズレット;及び
(B)コーティングされた遅延性持続性放出ビーズレットであって、(i)持続性放出製剤におけるロラゼパムを含むビーズレットと、(ii)前記ビーズレットを包囲する腸溶性コーティングと、(iii)前記ビーズレットを包囲するアルコール耐性コーティングとを含み、前記アルコール耐性コーティングが水中よりもエタノール中での可溶性が低く、前記アルコール耐性コーティングが前記腸溶性コーティングの内部にあっても外部にあってもよい、ビーズレット
を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項24】
(A)持続性放出製剤におけるロラゼパムを含む持続性放出ビーズレット;及び
(B)遅延性持続性放出ビーズレットであって、(i)持続性放出製剤におけるロラゼパムを含むビーズレットと、(ii)前記ビーズレットを包囲する腸溶性コーティングを含み、カプセルまたは錠剤に製剤化され、前記カプセルまたは錠剤がアルコール耐性コーティングにより包囲されており、前記アルコール耐性コーティングが水中よりもエタノール中での可溶性が低く、前記アルコール耐性コーティングが前記腸溶性コーティングの内部にあっても外部にあってもよい、遅延性持続性放出ビーズレット、
を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項25】
即時性放出成分中にロラゼパムをさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項26】
必要とする対象に投与される、ロラゼパム及びアルコールの同時消費のリスクを低減するための、請求項1~25のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、アルコールの存在下で薬物放出の低減を呈する、ロラゼパムのアルコール耐性制御性経口用医薬組成物が記載されている。
【背景技術】
【0002】
多くの薬物は、アルコールと共に消費されると有害な影響を及ぼす。加えて、いくつかの制御性放出製剤は、アルコールを使用してより即時性の放出を達成するように制御性放出薬物送達プロファイルを改変することにより、乱用に供されやすい。経口用医薬製剤に対する意図的なまたは偶発性の不正加工は、多用量の薬物の急速な送達をもたらす場合があり、このような送達は、呼吸抑制、呼吸不全、鎮静、心血管虚脱、昏睡、及び死亡を含めた重篤かつ生命を脅かす副作用を伴う恐れがある。
【0003】
制御性放出製剤を伴ったアルコール不正加工またはアルコール乱用を防止するための様々なアプローチが開発されているが、依然としてロラゼパムのアルコール耐性経口用医薬剤形が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
1つの態様において、本明細書では、アルコール耐性経口用医薬組成物であって、アルコール耐性コーティングにより包囲された制御性放出ロラゼパムを含む基質を含むコーティング基質を含む、組成物が提供される。いくつかの実施形態において、コーティング基質から放出されるロラゼパムの量は、USP<711>に従う40%エタノール及び0.1N HCl溶液を含む酸性エタノール水性溶液中における37.0±0.5℃及び100rpmで2時間の溶出試験により測定されたときに、非コーティング基質から放出されるロラゼパムの量に対し75%以下、50%以下、25%以下、10%以下、または1%以下である。
【0005】
いくつかの実施形態において、アルコール耐性コーティングは、エタノール不溶性のポリマー多糖、ポリマーエーテル、ポリマーアルコール、ポリマーカルボン酸、ポリマーカルボン酸エステル、及びポリマーカルボン酸アルコールからなる群より選択される1つ以上のエタノール不溶性構成要素を含む。いくつかの実施形態において、アルコール耐性コーティングは、エタノール不溶性のカルボマー、ポリエチレンオキシドポリマー、キサンタンガム、及びアルギン酸塩からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、アルコール耐性コーティングはカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。いくつかの実施形態において、アルコール耐性コーティングはキサンタンガムを含む。いくつかの実施形態において、アルコール耐性コーティングとコーティング基質の基質との重量:重量比は少なくとも1:10であり、1:10~3:1、1:10~1:1、またはこれらの間の任意の比である。
【0006】
いくつかの実施形態において、コーティング基質から放出されるロラゼパムの量は、USP<711>に従う水性0.1N HCl溶液中における37.0±0.5℃及び100rpmで2時間の溶出試験により測定されたときに、前記アルコール耐性コーティングなしの対応する基質から放出されるロラゼパムの量に比べて±50%以下、±40%以下、±30%以下、±25%以下、±20%以下、±10%以下、±5%以下、または±1%以下である。
【0007】
いくつかの実施形態において、ロラゼパムのアルコールとの同時消費は臨床的リスクを伴う。
【0008】
いくつかの実施形態において、基質は、粒子、顆粒、ペレット、及びビーズレットからなる群より選択される形態をとる。いくつかの実施形態において、基質は、錠剤及びカプセルからなる群より選択される形態をとる。いくつかの実施形態において、基質はロラゼパムの制御性放出製剤を含む。いくつかの実施形態において、組成物または剤形は追加的にロラゼパムの即時性放出製剤を含み、この製剤は任意選択でアルコール耐性コーティングが供給された基質であってもよい。いくつかの実施形態において、制御性放出形態は、遅延性放出製剤、持続性放出製剤、または遅延性持続性放出製剤である。いくつかの実施形態において、コーティング基質は、基質とアルコール耐性コーティングとの間に配置された遅延性放出コーティングを含む。いくつかの実施形態において、コーティング基質は、基質と遅延性放出コーティングとの間に配置されたアルコール耐性コーティングを含む。いくつかの実施形態において、コーティング基質は、錠剤に製剤化されるか、またはカプセル殻内に充填され、錠剤またはカプセル殻は、任意選択でアルコール耐性コーティングにより包囲されている。いくつかの実施形態において、基質は、アルコール耐性コーティングにより包囲された錠剤またはカプセルの形態をとる。いくつかの実施形態において、コーティング基質はサシェパッケージ内に収容される。
【0009】
別の態様において、本明細書では、ロラゼパムのアルコール耐性経口用医薬組成物であって、(A)コーティングされた持続性放出ビーズレットであって、(i)アルコール耐性コーティングにより包囲された持続性放出製剤におけるロラゼパムを含むビーズレットを含み、アルコール耐性コーティングが水中よりもエタノール中での可溶性が低い、ビーズレット;及び(B)コーティングされた遅延性持続性放出ビーズレットであって、(i)持続性放出製剤におけるロラゼパムを含むビーズレットと、(ii)ビーズレットを包囲する腸溶性コーティングと、(iii)ビーズレットを包囲するアルコール耐性コーティングと、含み、アルコール耐性コーティングが水中よりもエタノール中での可溶性が低く、アルコール耐性コーティングが腸溶性コーティングの内部にあっても外部にあってもよい、ビーズレットを含む、組成物が提供される。
【0010】
別の態様において、本明細書では、カプセルまたは錠剤で製剤化された、ロラゼパムのアルコール耐性経口用医薬組成物であって、(A)持続性放出製剤におけるロラゼパムを含む持続性放出ビーズレット;及び(B)遅延性持続性放出ビーズレットであって、(i)持続性放出製剤におけるロラゼパムを含むビーズレットと、(ii)ビーズレットを包囲する腸溶性コーティングとを含む、ビーズレットを含み、カプセルまたは錠剤がアルコール耐性コーティングにより包囲されており、アルコール耐性コーティングが水中よりもエタノール中での可溶性が低く、アルコール耐性コーティングが腸溶性コーティングの内部にあっても外部にあってもよい、組成物が提供される。
【0011】
別の態様において、本明細書では、ロラゼパム及びアルコールの同時消費のリスクを低減する方法であって、本明細書に記載のロラゼパムのアルコール耐性経口用医薬組成物を、当該リスク低減を必要とする対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0012】
別の態様において、本明細書では、経口用医薬組成物からのロラゼパムのアルコール抽出を阻止する方法であって、本明細書に記載のロラゼパムのアルコール耐性経口用医薬組成物を調製することを含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本明細書に記載のアルコール耐性経口用医薬剤形の非限定的な例を示している。
図1に示されるように、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のアルコール耐性経口用医薬剤形は、活性薬剤(API)(例えば、ロラゼパム)を含む粒子、顆粒、ペレット、ビーズレットなど(10)を含む錠剤またはカプセルの形態(100)をとり、このとき、個々の粒子、顆粒、ペレット、ビーズレットなど(10)には任意選択のアルコール耐性コーティング(12)が供給される。追加的にまたは代替的に、いくつかの実施形態において、錠剤またはカプセルにアルコール耐性コーティング(102)が供給される。図に示されるように、剤形は、粒子、顆粒、ペレット、ビーズレットなど(10)の組成物に応じて、即時性放出剤形を含んでも、任意選択で制御性放出剤形を含んでもよく、任意の追加的なコーティングが粒子、顆粒、ペレット、ビーズレットなど、任意の錠剤もしくはカプセルマトリックスの組成物(104)に供給され、かつ/または任意の追加的なコーティングが錠剤もしくはカプセル(100)に供給される。
【
図2】実施例3に記載の溶出試験の結果を示している。
【
図3】実施例3に記載の溶出試験の結果を示し、本明細書に記載のアルコール耐性コーティング組成物の薬物放出を非コーティング基質との対比で報告している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書では、アルコールの存在下で薬物放出の低減を呈する、アルコール耐性経口用医薬組成物及び剤形について記載される。広義には、当該組成物は、アルコール耐性コーティングでコーティングされた制御性放出ロラゼパム製剤を含む基質を含む。具体的な実施形態において、アルコールの存在下でコーティング基質から放出されるロラゼパムの量は、USP<711>に従う40%エタノール及び0.1N HCl溶液を含む酸性エタノール水性溶液中における37.0±0.5℃及び100rpmで2時間の溶出試験により測定されたときに、アルコール存在下の非コーティング基質から放出されるロラゼパムの量に対し75%以下である。
【0015】
様々な実施形態が以下に記載される。具体的な実施形態は、本明細書に記載される本発明の網羅的な説明ではなく、本発明のより広い態様を限定するものではないことに留意されたい。さらに、具体的な組合せまたは構成で様々な態様が論じられ得るが、任意の態様が本明細書に記載の他の態様との任意の並べ替えまたは組合せで使用され得ることを理解されたい。
【0016】
別段の明記がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される以下の用語は、下記に示す意味を有する。
【0017】
本明細書において、「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「当該(the)」という用語、ならびに要素を説明する文脈における(特に、以下の特許請求の範囲の文脈における)同様の指示語は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を網羅するように解釈するものとする。本明細書における値範囲の記載は、単に、範囲内に収まる個々の値を個別に言及する簡略的方法として供するように意図されており、本明細書で別段の指示がない限り、個々の値は、本明細書で個別に記載されているかのように本明細書に組み入れられる。あらゆる例及び例示的な言葉(例えば、「~のような(such as)」)の使用は、例示的なものに過ぎず、限定的なものではない。
【0018】
本明細書で使用される場合、「約」は当業者に理解されており、使用される文脈に応じてある程度変動する。当業者にとって明確ではない「約」の使用が見られる場合、使用される文脈を仮定すれば、「約」は特定の用語のプラスまたはマイナス10%までを意味する。
【0019】
本明細書に記載の全ての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈による別段の明らかな指示がない限り、任意の好適な順序で実施することができる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「医薬的活性薬剤」、「活性薬剤」、及び「薬物」という用語は、ロラゼパムを指すために互換的に使用される。
【0021】
本明細書で使用される場合、「制御性放出製剤」という用語は、ロラゼパムの持続性及び/または遅延性の放出をもたらすように設計された製剤を意味する。本明細書で使用される場合、「持続性放出製剤」という用語は、ロラゼパムをゆっくりと、長期の時間期間にわたり放出するように設計された製剤を意味する。持続性放出の非限定的な例としては、ロラゼパム含有マトリックスの漸進的溶解もしくは崩壊による放出、または受動的拡散もしくは浸透圧性送達システムによる放出が挙げられる。本明細書で使用される場合、「遅延性放出製剤」という用語は、ある時間期間の後に、または胃腸管の標的領域内で、例えば、腸溶性コーティング、pH依存性コーティング、もしくはpH非依存性コーティングの浸食により、ロラゼパムを放出するように設計された製剤を意味する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「即時性放出製剤」という用語は、制御性放出製剤以外の製剤を意味する。いくつかの実施形態において、即時性放出製剤は、放出を制御または促進するように設計されたいかなる構成要素も伴わずに製剤化される。他の実施形態において、即時性放出製剤は、例えば、摂取時にロラゼパム含有マトリックスの溶解または崩壊を促進する構成要素を含めることにより、ロラゼパムの迅速な放出を達成するように製剤化される。
【0023】
本明細書で使用される場合、「単位剤形」という用語は、対象に投与されるまたは対象により摂取される医薬組成物の物理的な単位、例えば、粒子、顆粒、ペレット、ビーズレットなどを含有する錠剤、カプセル、またはサシェを意味する。
【0024】
いくつかの薬物は、アルコールと混合したりアルコールと共に使用したりすると、より強力及び/またはより危険になる。追加的または代替的に、対象は、制御性放出製剤からのより迅速な放出を達成させようとして、薬物をアルコールと混合したりアルコールと共に使用したりする可能性がある。多くの制御性放出製剤は、アルコール中での制御性放出をもたらすために使用される構成要素(例えば、制御性放出ポリマー(1つまたは複数))の溶解度ゆえに、アルコールの存在下でこのような「用量ダンピング」を受けやすい。アルコール誘導用量ダンピングに伴うリスクに対処するために様々なアプローチが開発されているが、このようなアプローチの目標は、アルコールの存在下または非存在下での同じ溶解プロファイルを達成することである。本発明以前には、アルコールの存在下または非存在下での放出低減を達成するためのアプローチは記載されていなかった。さらに、本発明以前には、即時性放出製剤及び制御性放出製剤を含めた全てのタイプの製剤に有用なアプローチは記載されていなかった。
【0025】
上述のように、本明細書では、アルコールの存在下でロラゼパムの放出の低減を呈する、アルコール耐性経口用医薬組成物及び剤形について記載される。当該組成物及び剤形は、様々な制御性放出製剤を含めて、さらに任意選択で即時性放出製剤構成要素を含めて、任意のタイプの製剤と共に使用することができる。本明細書に記載のアルコール耐性経口用医薬組成物または剤形が、アルコールの同時使用と共に摂取されるときには、当該組成物または剤形は、例えば、よりゆっくりとした速度を呈することにより、及び/または低減された量のロラゼパムを放出することにより、ロラゼパムの放出の低減を呈する。このアプローチは、アルコール耐性用量ダンピングに対照するように設計されたアプローチとは異なる。というのもそのようなアプローチにおける目標は、多くの場合、アルコールの存在下で、アルコールの非存在下で得られる放出と実質的に同じ放出を呈することであるからである。
【0026】
アルコール耐性経口用医薬剤形
上述のように、広義には、本明細書に記載のアルコール耐性組成物及び剤形は、基質を包囲するアルコール耐性コーティングでコーティングされた制御性放出ロラゼパム製剤を含む基質を含む。いくつかの実施形態において、コーティング基質は分離した粒子、顆粒、ビーズレット(など)であり、このような基質はより大きなマトリックス(例えば、錠剤もしくはカプセルマトリックス)において製剤化され、またはカプセルもしくはサシェ内に収容され得る。他の実施形態において、コーティング基質は、コーティング錠剤またはコーティングカプセルのような単位剤形である。いくつかの実施形態において、単位剤形において製剤化された分離した粒子、顆粒、ペレット、ビーズレットなどと、単位剤形それ自体とのいずれにも、同じでも異なってもよいアルコール耐性コーティングが供給される。例えば、いくつかの実施形態において、コーティングされたロラゼパム粒子、顆粒、顆粒、ペレット、ビーズレットなど(各々がアルコール耐性コーティングにより包囲されている)は、錠剤マトリックス内に分散している。任意選択で、全体としての錠剤にアルコール耐性コーティングが供給される。代替的に、全体としての錠剤のみ(ロラゼパム粒子、顆粒、顆粒、ペレット、ビーズレットなどは該当せず)にアルコール耐性コーティングが供給される。他の実施形態において、剤形はカプセルの形態をとり、このとき、コーティングされたロラゼパム粒子、顆粒、顆粒、ペレット、ビーズレットなど(各々がアルコール耐性コーティングにより包囲されている)はカプセル殻内に収容される。任意選択で、全体としてのカプセルにアルコール耐性コーティングが供給される。代替的に、全体としてのカプセルのみ(粒子、顆粒、顆粒、ペレット、ビーズレットなどは該当せず)にアルコール耐性コーティングが供給される。他の実施形態において、剤形は、ロラゼパム粒子、顆粒、顆粒、ペレット、ビーズレットなど(各々がアルコール耐性コーティングにより包囲されている)を収容するサシェの形態をとり、これらはサシェパッケージ内に収容される。
【0027】
便宜上、ロラゼパム含有粒子、顆粒、ビーズレットなどは、以下の解説では「薬物含有コア」と呼ぶことにする。薬物含有コアは、任意のタイプの薬物含有コアを含むことができ、これには当技術分野で知られているものが含まれ、またロラゼパムの制御性放出製剤を含むコアが含まれる。いくつかの実施形態において、組成物または剤形は追加的に、ロラゼパムの即時性放出製剤を含むコア、またはロラゼパムからなるコアを含むことができる。任意の実施形態に従えば、薬物含有コアに対し、経口用医薬組成物で典型的に使用されるコーティング、例えば、腸溶性コーティング、pH依存性コーティング、及び/もしくはpH非依存性コーティング、フレーバーコーティング、シールコーティングなどを含めた持続性放出コーティングまたは遅延性放出コーティングが供給される。任意の実施形態に従えば、組成物または剤形は、1つ以上の異なるタイプの薬物含有コア、例えば、任意の1つもしくは2つ以上の制御性放出コア、または任意の1つ以上の即時性放出コアと任意の1つ以上の制御性放出コアとの任意の組合せを含むことができる。したがって、本明細書で開示されているアルコール耐性技術は、アルコールの同時消費に伴う臨床リスクを低減するための、及び/またはアルコール抽出を阻止するための、ロラゼパムの任意の制御性放出経口用医薬組成物に適用され得る。
【0028】
組成物及び剤形は、具体的な実施形態に関し下記で論じられているものを含めた従来的な方法論によって調製することができる。例えば、錠剤は、薬物含有コアの直接圧縮により調製することができ、カプセルは、薬物含有コアをカプセル内に充填することにより調製することができ、サシェは、薬物含有コアをサシェパッケージ内に充填することにより調製することができる。
【0029】
アルコール耐性コーティング
上述のように、本明細書に記載の組成物及び剤形は、基質を包囲するアルコール耐性コーティングでコーティングされたロラゼパムの制御性放出製剤を含む基質を含む。いくつかの実施形態において、アルコール耐性コーティングは、1つ以上のエタノール不溶性構成要素を含む。本明細書で使用される場合、「エタノール不溶性構成要素」とは、最大で60%のエタノール中の相対的溶解度、例えば、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、1%以下の相対的溶解度を呈する、またはエタノール中で本質的に不溶性である構成要素を指す。具体的な実施形態において、エタノール不溶性構成要素は、20%以下のエタノール中の相対的溶解度を呈する。他の具体的な実施形態において、エタノール不溶性構成要素は、15%以下のエタノール中の相対的溶解度を呈する。さらなる具体的な実施形態において、エタノール不溶性構成要素は、10%以下のエタノール中の相対的溶解度を呈する。本明細書で使用される場合、「X%の相対的溶解度」という用語は、飽和フラスコ振とう法により室温で測定したときに、最大で構成要素のX%w/vがエタノールに溶解することを意味する。
【0030】
いくつかの実施形態において、アルコール耐性コーティングは、エタノール不溶性構成要素として1つ以上のエタノール不溶性ポリマーを含む。エタノール不溶性ポリマーの例としては、以下に限定されないが、エタノール不溶性多糖(例えば、セルロース系物質)、ポリマーエーテル、ポリマーアルコール、ポリマーカルボン酸、ポリマーカルボン酸エステル、及びポリマーカルボン酸アルコールが挙げられる。より具体的なエタノール不溶性ポリマーの例としては、エタノール不溶性カルボマー、ポリエチレンオキシドポリマー、キサンタンガム、アルギン酸塩、及び酢酸ポリビニルから誘導されるポリビニルアルコールが挙げられる。
【0031】
具体的な実施形態において、アルコール耐性コーティングはエタノール不溶性構成要素として、アルギン酸塩、例えば、アルギン酸ナトリウム、他の塩形態のアルギン酸塩、非イオン形態のアルギン酸塩、及びこれらの任意の組合せを含む。さらなる具体的な実施形態において、アルコール耐性コーティングはアルギン酸ナトリウムを含む。市販されているエタノール不溶性のアルギン酸ナトリウム製品の非限定的な例としては、PROTANAL(登録商標)CR 8133(FMC Corporation)、PROTANAL(登録商標)LFR5/60(FMC Corporation)、及びNS ENTERIC(登録商標)(Colorcon)が挙げられる。
【0032】
追加的または代替的に、アルコール耐性コーティングは、エタノール不溶性構成要素としてカルボキシメチルセルロース、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含むことができる。市販されているエタノール不溶性のカルボキシメチルセルロースナトリウム製品の非限定的な例はOPAGLOS(登録商標)2(Colorcon)であり、当該製品はマルトデキストリン、デキストロース一水和物、及びステアリン酸も含有する。
【0033】
追加的または代替的に、アルコール耐性コーティングは、エタノール不溶性構成要素としてキサンタンガムを含むことができる。
【0034】
アルコール耐性コーティングは、得られるコーティング基質にアルコール耐性を付与するのに有効な量で基質に適用される。いくつかの実施形態において、アルコール耐性コーティングとコーティング基質の基質との重量:重量比は少なくとも1:10である。これは、少なくとも1:10、少なくとも1.5:10、少なくとも2:10、少なくとも2.5:10、少なくとも3:10、少なくとも3.5:10、少なくとも4:10、少なくとも4.5:10、少なくとも5:10、少なくとも5.5:10、少なくとも6:10、少なくとも6.5:10、少なくとも7:10、少なくとも7.5:10、少なくとも8:10、少なくとも8.5:10、少なくとも9:10、少なくとも9.5:10、及び少なくとも1:1のアルコール耐性コーティングと基質との重量:重量比を含む。いくつかの実施形態において、アルコール耐性コーティングと基質との重量:重量比は、1:10、1:9、1:8、1:7、1.5:10、1:6、1:5、1:4、3:10、1:3、3.5:10、4:10、4.5:10、1:2、5.5:10、6:10、6.5:10、7:10、7.5:10、8:10、8.5:10、9:10、9.5:10、1:1、2:1、及び3:1(これらにおける増分比を含む)からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、アルコール耐性コーティングと基質との重量:重量比は1:10~3:1である。いくつかの実施形態において、アルコール耐性コーティングと基質との重量:重量比は1:10~2:1である。いくつかの実施形態において、アルコール耐性コーティングと基質との重量:重量比は1:10~1:1である。概して、アルコール耐性コーティングと基質とのより大きな重量:重量比はより大きなアルコール耐性と相関するが、非常に大量のアルコール耐性コーティングは、非アルコール環境においてコーティング基質の放出プロファイルに影響を及ぼす可能性があり、これは組成物における標的特性によっては望ましくない可能性がある。
【0035】
言及されているように、いくつかの実施形態において、コーティング基質は、USP<711>に従う40%エタノール及び0.1N HCl溶液を含む酸性エタノール水性溶液中における37.0±0.5℃及び100rpmで2時間の溶出試験により測定されたときに、アルコールの存在下で、アルコール耐性コーティングなしの対応する基質から放出されるロラゼパムの量に比べて75%未満のロラゼパムを基質から放出する。いくつかの実施形態において、コーティング基質から放出されるロラゼパムの量は、アルコール耐性コーティングなしの対応する基質から放出されるロラゼパムの量に比べて75%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、33%以下、30%以下、25%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または1%以下である。
【0036】
追加的または代替的に、いくつかの実施形態において、アルコール耐性コーティングは、例えば、USP<711>に従う水性0.1N HCl溶液中における37.0±0.5℃及び100rpmで2時間の溶出試験により測定されたときに、アルコール耐性コーティングなしの対応する基質から放出されるロラゼパムの量に比べて、非アルコール環境において、基質からのロラゼパムの放出に実質的に影響を及ぼさない。いくつかの実施形態において、コーティング基質から放出されるロラゼパムの量は、USP<711>に従う水性0.1N HCl溶液中における37.0±0.5℃及び100rpmで2時間の溶出試験により測定されたときに、アルコール耐性コーティングなしの対応する基質から放出されるロラゼパムの量に比べて±25%以下、±20%以下、±10%以下、±5%以下、または±1%以下である。他の実施形態において、アルコール耐性コーティングは、非アルコール環境において、基質からのロラゼパムの放出に影響を及ぼす場合がある。例えば、いくつかの実施形態において、コーティング基質から放出されるロラゼパムの量は、USP<711>に従う水性0.1N HCl溶液中における37.0±0.5℃及び100rpmで2時間の溶出試験により測定されたときに、アルコール耐性コーティングなしの対応する基質から放出されるロラゼパムの量に比べて±50%以下、±40%以下、±30%以下である。
【0037】
例示的な即時性放出製剤
具体的な実施形態において、制御性放出組成物及び剤形は追加的に、ロラゼパムの即時性放出形態を含む薬物含有コア、例えば、ロラゼパムまたはロラゼパムの即時性放出製剤(例えば、即時性放出組成物において製剤化されたロラゼパム)からなるコアを含む。即時性放出製剤は当技術分野で知られている。いくつかの実施形態において、即時性放出製剤は、放出を制御または促進するように設計されたいかなる構成要素も伴わずに製剤化される。他の実施形態において、即時性放出製剤は、例えば、摂取時にロラゼパム含有組成物の溶解または崩壊を促進する構成要素、例えば、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースなどのようなスーパー崩壊剤を含めることにより、ロラゼパムの迅速な放出を達成するように製剤化される。
【0038】
具体的な実施形態において、即時性放出製剤は、摂取から60分以内、摂取から30分以内、または摂取から15分以内にロラゼパムの少なくとも70%を放出する。具体的な実施形態において、即時性放出製剤は、摂取から60分以内、摂取から30分以内、または摂取から15分以内にロラゼパムの少なくとも80%を放出する。具体的な実施形態において、即時性放出製剤は、摂取から60分以内、摂取から30分以内、または摂取から15分以内にロラゼパムの少なくとも90%を放出する。
【0039】
いくつかの実施形態において、アルコール耐性経口用組成物または剤形は、ロラゼパムの制御性放出製剤を含む基質に加えて、ロラゼパムの即時性放出製剤を含む基質と、基質を包囲するアルコール耐性コーティングとを含む。
【0040】
例示的な制御性放出製剤
具体的な実施形態において、組成物または剤形は、ロラゼパムの制御性放出形態(例えば、持続性放出組成物において製剤化されたロラゼパム、ならびに/または持続性放出コーティング及び/もしくは遅延性放出コーティングが供給されたロラゼパム)を含む薬物含有コアを含む。制御性放出製剤及びコーティングは当技術分野で知られている。
【0041】
例示的な持続性放出コア製剤
具体的な実施形態において、持続性放出コアは、持続性放出組成物において製剤化されたロラゼパム、または持続性放出コーティングが供給されたロラゼパムを含む。
【0042】
持続性放出製剤で使用される典型的なポリマーとしては、様々なグレードのゲル化ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、様々なEUDRAGIT(登録商標)ブランド組成物(例えば、EUDRAGIT(登録商標)RS PO(ポリ(エチルアクリラート-co-メチルメタクリラート-co-トリメチルアンモニオエチルメタクリラートクロリド)1:2:0:1;粉末製品)(Evonik Industries)のようなポリアクリラート、ポリビニルアルコール、及びポリエチレンオキシドが挙げられる。異なる分子量及び/または異なる程度の架橋、粘性などを有する同じクラスのゲル化ポリマーのブレンドを使用することができる。持続性放出製剤は、所望の放出及び薬物動態特性を達成するための非ゲル化ポリマーを含むこともできる。
【0043】
PEOは、持続性放出組成物で使用される場合、典型的には少なくとも900,000かつ通常は5,000,000以下の平均(およその)分子量を有する。市販されているPEOポリマーとしては、最大7,000,000の平均分子量を有するPOLYOX(商標)(Dow Chemical Corp.)が挙げられる。より高い分子量のPEOポリマーは、概してよりゆっくりとした放出速度をもたらす。より高い濃度のPEOも放出速度を低下させる傾向がある。そのため、所望の放出及び薬物動態特性は、使用するPEOポリマー(1つまたは複数)の平均分子量及びその相対量を選択及び制御することにより、選択及び制御することができる。典型的には、徐放性放出コアは、約900,000から約4,000,000(約900,000~約2,000,000を含む)の間の平均分子量を有するPEOと共に形成される。
【0044】
持続性製剤中のゲル化ポリマーの量は、典型的には、コアの約20重量%~約70重量%(約30重量%~約60重量%を含む)である。ポリマーが、主に(または独占的に)900,000~1,500,000の平均分子量を有するPEOであるとき、ポリマーの量は約35~約55%の範囲内(約40%~約50%を含む)であり得る。上述のように、より高い平均分子量を有するポリマーはより低い量で、例えば、約20%~約50%(約25%~約45%を含む)の量で使用することができる。
【0045】
持続性放出製剤は概して、ポリマー材料(1つまたは複数)、ロラゼパム、ならびに任意選択で追加的な賦形剤(例えば、結合剤及び充填剤)を含む混合物を造粒し押し出すことによって作製される。結合剤及び充填剤としては、デンプン、微結晶性セルロース(MCC)などが挙げられる。押し出されたコアは、典型的には球形化及び乾燥に供される。
【0046】
バリアコーティングベースのコアは、ノンパレルシードコア(例えば、糖のコアまたはMCCのコア)を用いて作製することができ、この上に次の機能的コーティング層が形成される。例えば、コアをシールコートでコーティングし、次にロラゼパム及び結合剤を有する薬物層コートでコーティングし、次に放出制御ポリマーコート層(バリア層)でコーティングすることができる。バリア層は、例えば、フィルム形成材料のような水不溶性ポリマーであり得る。例としては、エチルセルロースのようなセルロースならびにアクリラートのポリマー及びコポリマーが挙げられる。フィルムの性能を強化するために追加の材料が含まれてもよい。このような材料としては、以下に限定されないが、柔軟性を付与し、かつコートのクラックまたは物理的変化が薬物放出特性を損なわないことを確実にする可塑剤(1つまたは複数);処理中または保管中の粒子の粘着/凝集を最小化するための粘着防止助剤;表面コーティングを補助するための分散剤/湿潤剤;及び薬物放出のためのチャネルを提供することが示される場合の抗形成剤が挙げられる。
【0047】
いくつかの実施形態において、持続性放出コアは、0.1N HClを溶解媒体として用いたUSP I型装置(バスケット)におけるように、実施例で例示されるようなin vitro溶出試験により試験されたときに、ロラゼパムの90重量%について約7~約12時間にわたり実質的にゼロ次の放出を呈する。明確性のために述べると、このような持続性放出は、実施例で例示されるようなin vitro溶出試験により試験したときに、7時間以降までロラゼパムの90%の放出を達成しない。例えば、いくつかの実施形態に従えば、実施例で解説されるin vitro溶出試験により試験したときに、2時間でロラゼパムの40%以下(35%以下、30%以下、または25%以下を含む)が放出される。具体的な実施形態において、持続性放出コアは、毎日の投薬を伴う定常状態条件下で24時間の治療効果をもたらす。具体的な実施形態において、持続性放出コアは、投与後6時間以上(投与後8時間以上、または10時間以上を含む)のTmaxを達成する。
【0048】
その他のコア構成要素
薬物含有コアは、ロラゼパム及び任意の制御性放出ポリマーに加えて、希釈剤及び滑沢剤のような他の賦形剤を含むことができる。希釈剤はバルクをもたらし、打錠または錠剤特性のような物理的特性を強化することができる。好適な希釈剤の例としては、糖類、例えば、ラクトースまたはマンニトール;微結晶性セルロース;ならびにリン酸カルシウム、例えば、リン酸カルシウム二水和物、第2リン酸カルシウム、及び第3リン酸カルシウムが挙げられる。希釈剤は、典型的にはコア粒子の約30重量%~約70重量%を構成する。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムが挙げられる。滑沢剤は、存在する場合、典型的にはコア粒子の約1重量%~約3重量%を構成する。例えば、コアは、ラクトース(例えば、10~50重量%または20~40重量%のラクトース一水和物)及びリン酸カルシウム(例えば、10~50重量%または20~40重量%の第2リン酸カルシウム)を希釈剤として含むことができる。
【0049】
例示的な遅延性放出コーティング
上述のように、薬物含有コアには遅延性放出コーティング、例えば、腸溶性コーティング、pH依存性コーティング、またはpH非依存性コーティングが供給され得る。遅延性放出コーティングは、典型的には、コーティングが十分に溶解してコアを胃腸管環境に露出させるまで、またはコーティングが十分に透過性になってロラゼパムが残存するコーティングを通過するまで、コアからのロラゼパムの放出を遅延させる。例えば、遅延性放出コーティングは、投与後少なくとも3時間までin vivoでの放出を遅延させるように、例えば、投与後4~8時間で放出をもたらすように設計することができる。遅延性放出コーティングは、即時性放出コアにも持続性放出コアにも供給され得る。
【0050】
遅延性放出コーティングでの使用に好適な材料は当技術分野で知られており、pH、溶解度、またはこれらの組合せに基づくものが挙げられる。pH依存性コーティングは、腸溶性コーティングとしても知られているが、環境のpHに応じて異なる溶解度を呈する。胃内で見られるような低pHにおいて、腸溶性コーティングは不溶性または実質的に不溶性であり、コアからのロラゼパムの放出を防止する。腸内で見られるような高pHにおいて、腸溶性コーティングは可溶性が高く、溶解しかつ/または透過性となり、よって体液がコアに到達しコアからのロラゼパムの放出を可能にする。このようなコーティングでは、具体的な遅延性放出は、コーティングが可溶性となるpHや、適用されるコーティングの厚さ/量によって制御することができる。可溶性ベースコーティングは、胃腸管環境でゆっくりと溶解または浸食する水溶性が低い材料を含む。このようなコーティングでは、具体的な遅延性放出は、コーティングの溶解度や、適用される厚さ/量によって制御することができる。両方の特色を呈する構成要素を有するコーティングも使用することができる。明確性のために述べると、pH依存性ポリマー及びpH非依存性ポリマーの両方を有する遅延コーティングは、pH依存性遅延性放出コーティングとみなされる。
【0051】
pH依存性遅延性放出コーティングに好適なポリマーとしては、酢酸フタル酸セルロースまたはポリメタクリラート及びこれらのコポリマーのような遊離酸基を有するものが挙げられる。有用な腸溶性コーティングは、EUDRAGIT(登録商標)FS 30 D(ポリ(メチルアクリラート-co-メチルメタクリラート-co-メタクリル酸)7:3:1;30%水性分散液)(Evonik Industries)に基づくものであり得る。その他の好適な腸溶性コーティング材料としては、EUDRAGIT(登録商標)S 100(ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリラート)1:2;粉末製品)(Evonik Industries)及びEUDRAGIT(登録商標)S 12.5(ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリラート)1:2;12.5%有機溶液)(Evonik Industries)が挙げられる。腸溶性コーティングは、単一の腸溶性ポリマーに基づいても組合せに基づいてもよく、典型的にはさらに可塑剤を含有してもよい。GI管内において、pHは小腸内で次第に増加し、回腸終末部でpH6からpH7.4になる。概して、腸溶性コーティングは、pH7以上(約pH7.4を含む)でロラゼパムを放出するように設計される。本明細書で使用される場合、EUDRAGIT(登録商標)FS 30 Dは、「pH7以上で放出するように設計された」腸溶性コーティングの提供に好適である。
【0052】
pH非依存性遅延性放出コーティングに好適なポリマーとしては、GI通過中に溶解する水溶性ポリマー、または生理的条件下で膨脹する水不溶性ポリマー(膨脹したコーティングを通じた拡散によってロラゼパムの放出が制御される)が挙げられる。好適なポリマーの例としては、酢酸セルロース、エチルセルロース、グリセリド、置換メタクリラート、酢酸ポリビニル、HPMC、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。水溶性ポリマーの例としては、セルロールエーテル、例えば、HPMC、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、Na CMC、及びポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。低可溶性または不溶性のポリマーとしては、エチルセルロース及びポリメタクリラートが挙げられる。いくつかの実施形態において、コーティングは、ゆっくりと溶解する低い水溶性を有するポリマーを含有する。他の実施形態において、コーティングは、水溶性ポリマーと水不溶性ポリマーとの(または水溶性が高いポリマーと低いポリマーとの)混合物を含有する。遅延性放出プロファイルは、ポリマー(1つまたは複数)の水溶性、親水性及び膨脹特性ならびにコーティングの厚さにより影響され得る。
【0053】
遅延性放出コーティングは、従来的な手段により、例えば、液体コーティング組成物によるコーティング及び乾燥により提供することができる。
【0054】
遅延性放出特性は、「2媒体溶出試験」を用いて評価することができる。「2媒体溶出試験」では、最初の2時間は0.1N HClを含む媒体を用いて行う。2時間で、媒体は、リン酸バッファーを含み7.4のpHを有する媒体に変更する。当技術分野で理解されているように、第1の媒体は胃条件に近似し、一方第2の媒体は腸管条件に近似する。上述のin vitro溶出試験で2つの媒体を評価するときに、pH依存性遅延性放出コーティングは、pH7.4媒体に交換した後すぐに放出を呈するが、pH依存性ではない溶解度ベース遅延性放出コーティングは媒体交換による影響を受けない。その他の成分、例えば酵素などは、当技術分野で知られているように、例えば模擬腸管液(SIF)を製剤化する際に、媒体中に存在してもよい。2媒体溶出試験は、典型的には37℃で行われ、500mlまたは900mlの容器を使用することができる。撹拌速度は典型的には100rpmであるが、溶出試験が特定の環境に対するより有用な情報をもたらすために必要である場合、速度を例えば75または50rpmなどに調整することができる。明確性のために述べると、異なるサイズの容器のような選択肢が示される場合、いずれかの選択肢下でプロファイル放出データを満たすコアは、放出基準を満たすとみなされる。例えば、2時間で900ml容器では31%放出を呈するが、500ml容器ではわずか27%の放出を示すコアは、選択肢の一方で範囲を満たすことにより2時間で30~50%の放出範囲を満たすとみなされる。ある時点における放出のパーセンテージは、当技術分野におけるこのような用語の従来的用法に従えば、その時点までの累積放出を意味する。コアから放出される(すなわち、溶解媒体中に溶解する)ロラゼパムの量は、標準的な方法によって定量することができる。
【0055】
溶解度ベースかつpH依存性である遅延性放出コーティングについては、2媒体in vitro溶出試験を用いた放出プロファイルは、概して、2時間以降、より典型的には4時間以降、多くの場合は6時間以降における10%の放出を示す。いくつかの実施形態において、遅延性持続性放出コアは、8時間でのロラゼパムの20~80%の放出(25~50%の放出を含む)を含み、90%の放出を10時間後、または12時間後までには達成せず、24時間後より前に達成し得る。
【0056】
pH依存性である遅延性放出コーティングについては、上述のような2媒体in vitro溶出試験を用いた放出プロファイルは、理論的には、(例えば、最初の2時間)第1の媒体中での放出を呈しないか、または本質的に呈しないはずである。ただし、実際には、より多くの(例えば、3%またはそれ以上の)ロラゼパムが放出される場合もある。それでも、このようなコーティングは、第2の媒体中でははっきりとより大きな放出を達成する。
【0057】
具体的な実施形態において、基質に遅延性放出コーティング及びアルコール耐性コーティングの両方が供給される場合、遅延性放出コーティング及びアルコール耐性コーティングは、任意の順序で基質(例えば、薬物含有コアまたは単位剤形)に適用することができる。具体的な実施形態において、遅延性放出コーティングは、基質とアルコール耐性コーティングとの間に配置することができる。他の実施形態において、アルコール耐性コーティングは、基質と遅延性放出コーティングとの間に配置することができる。
【0058】
上述のように、組成物及び剤形は、(i)持続性放出薬物含有コア及び(ii)遅延性放出薬物含有コアのうちの1つ以上を含むことができ、任意選択でさらに(iii)即時性放出薬物含有コアを含むことができ、このとき、コアタイプのうちの1つ以上はアルコール耐性コーティングにより包囲され、かつ/または全体としての剤形がアルコール耐性コーティングにより包囲されている。したがって、具体的な実施形態において、本明細書に記載のアルコール耐性コーティングのための「基質」は、(i)持続性放出薬物含有コア、及び(ii)遅延性放出薬物含有コア、及び任意選択で(iii)即時性放出薬物含有コア、及び/または(iv)全体としての剤形(例えば、錠剤またはカプセル)のうちの1つ以上であり得る。いくつかの実施形態において、全体としての剤形((i)、(ii)、または(iii)の個別ではなく)は、アルコール耐性コーティングにより包囲されている。2つ以上の基質を含む実施形態において、各基質に供給されるアルコール耐性コーティングは同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、薬物含有コアに供給されるアルコール耐性コーティングは同じであり、一方、全体としての剤形に供給されるアルコール耐性コーティングは、存在する場合、異なる。いくつかの実施形態において、薬物含有コア及び全体としての剤形に供給されるアルコール耐性コーティングは、存在する場合、同じである。いくつかの実施形態において、薬物含有コア及び全体としての剤形に供給されるアルコール耐性コーティングは異なる。いくつかの実施形態において、薬物含有コア及び全体としての剤形のいくつかに同じアルコール耐性コーティングが供給される。したがって、いくつかの実施形態において、(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)のうちの1つ以上に対するアルコール耐性コーティングは同じである。いくつかの実施形態において、(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)のうちの1つ以上に対するアルコール耐性コーティングは異なる。
【0059】
錠剤及びカプセル
上述のように、いくつかの実施形態において、アルコール耐性経口用剤形は錠剤の形態をとる。いくつかの実施形態において、錠剤はアルコール耐性コーティングで包囲されている。いくつかの実施形態において、錠剤はアルコール耐性コーティングでコーティングされたロラゼパムコア粒子を含み、錠剤はアルコール耐性コーティングにより包囲されている。いくつかの実施形態において、錠剤はアルコール耐性コーティングでコーティングされていないロラゼパムコア粒子を含み、錠剤はアルコール耐性コーティングにより包囲されている。いくつかの実施形態において、錠剤はアルコール耐性コーティングでコーティングされたロラゼパムコア粒子を含み、全体としての錠剤はアルコール耐性コーティングにより包囲されていない。
【0060】
いくつかの実施形態において、アルコール耐性経口用剤形はカプセルの形態をとる。いくつかの実施形態において、カプセルはアルコール耐性コーティングにより包囲されている。いくつかの実施形態において、カプセルはアルコール耐性コーティングでコーティングされたロラゼパムコア粒子を含み、カプセルはアルコール耐性コーティングにより包囲されている。いくつかの実施形態において、カプセルはアルコール耐性コーティングでコーティングされていないロラゼパムコア粒子を含み、カプセルはアルコール耐性コーティングにより包囲されている。いくつかの実施形態において、カプセルはアルコール耐性コーティングでコーティングされたロラゼパムコア粒子を含み、カプセルはアルコール耐性コーティングにより包囲されていない。
【0061】
例示的なロラゼパム実施形態
いくつかの実施形態において、アルコール耐性経口用組成物または剤形は、ロラゼパムの制御性放出製剤を含む基質であって、アルコール耐性コーティングが制御性放出基質を包囲する、基質を含み、また任意選択で追加的に、ロラゼパムの即時性放出製剤を含む基質であって、アルコール耐性コーティングが即時性放出基質を包囲する、基質を含む。いくつかの実施形態において、アルコール耐性経口用剤形は、(i)ロラゼパムの持続性放出製剤を含む第1の基質;及び/または(ii)ロラゼパムの遅延性持続性放出製剤を含む第2の基質を含み;任意選択でさらに、(iii)ロラゼパムの即時性放出製剤を含む第3の基質を含み、このとき、(i)、(ii)、及び(iii)(存在する場合)のうちの1つ以上がアルコール耐性コーティングにより包囲されている。いくつかの実施形態において、(i)、(ii)、及び(iii)のうちの1つ以上に対するアルコール耐性コーティングは同じである。いくつかの実施形態において、(i)、(ii)、及び(iii)のうちの1つ以上に対するアルコール耐性コーティングは異なる。いくつかの実施形態において、全体としてのアルコール耐性経口用剤形には、(i)、(ii)、または(iii)上の任意のアルコール耐性コーティングと同じであっても異なっていてもよいアルコール耐性物質が供給される。
【0062】
具体的な実施形態において、本明細書に記載の剤形は、約0.5~約10mgのロラゼパムを含有し、4時間以降におけるTmaxを含む薬物動態プロファイルを達成する。このような剤形は、1日1回の投薬レジメンで投与されたときに、(定常状態での)24時間の治療効果をもたらすことができる。具体的な実施形態において、剤形は、上述の2媒体溶出試験で試験したときに、4時間での20~80%(25~50%を含む)のロラゼパムの放出を達成し、6時間後、8時間後、または10時間後まで90%の放出を達成しない。具体的な実施形態において、ロラゼパムの50%が4~8時間以内に放出され、一方70%の放出は7~12時間まで到達されない。
【0063】
具体的な実施形態において、アルコール耐性経口用医薬剤形はロラゼパムを含み、また(A)持続性放出剤形においてロラゼパムを含む持続性放出粒子;及び(B)持続性放出製剤においてロラゼパムを含むコアと、コアを包囲する腸溶性コーティングとを含む遅延性持続性放出粒子のうちの1つ以上を含み;また任意選択で追加的に、(C)即時性放出製剤においてロラゼパムを含む即時性放出粒子を含み、このとき、(A)、(B)、及び(C)(存在する場合)は、本明細書に記載のアルコール耐性コーティングにより包囲され、かつ/または全体としての剤形は、本明細書に記載のアルコール耐性コーティングで包囲されている。
【0064】
1つの具体的な実施形態は、1日1回の投薬用の2mgのロラゼパムを含有する医薬組成物であって、ロラゼパムが均等に持続性放出粒子及び遅延性放出粒子に分割され、いずれの粒子に対してもアルコール耐性コーティングが供給される、医薬組成物に関する。いくつかの実施形態において、存在するロラゼパムの全てが、コーティング持続性放出粒子内及び遅延性持続性放出粒子内に存在する。他の実施形態において、剤形は追加的に、アルコール耐性コーティングが供給された即時性放出粒子を含む。このような組成物は、1日1回投与されたときに、26ng/ml以下(23ng/mlを含む)の定常状態Cmaxをもたらすことができる。いくつかの実施形態において、Cminは、剤形が1日1回投与されたときに、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約11ng/ml、または少なくとも約12ng/mlである。追加的または代替的に、いくつかの実施形態において、Tmaxは、1日1回の投与後に約4~約12時間の範囲内であり得る。
【0065】
明確性のために述べると、「定常状態」という用語は、医薬分野における通常の意味で使用される。当該用語は一定であることを意味するのではなく、ロラゼパムの一貫した連続的投与の後、典型的には数日後(例えば、半減期の5倍、すなわちロラゼパムの場合は3~5日)に得られる動的平衡を指す。例えば、既にロラゼパムの即時性放出製剤を規則的スケジュールで(例えば、1日当たり2または3回)服用している患者は、次の用量が投与されるときに、既に血液中にロラゼパムが存在する。摂取後、用量は放出され、血中のロラゼパムの量は最大血漿濃度、すなわち「Cmax」まで増加する。同時にロラゼパムは身体の生物学的作用によって代謝されかつ/または血液から除去され、血漿濃度は低下する。薬物血漿濃度の減少は、ロラゼパムの次の用量が服用されるまで継続する。薬物血漿濃度は、次の用量が投与され血液中に吸収される直前に、その最低濃度レベル「Cmin」に到達する。この用量は血漿濃度の上昇を引き起こし、周期は繰り返され、もう一度Cmaxに到達し、Cminまで低下し、次の用量が投与され、などとなる。定常状態とは対照的に、ロラゼパムの初回用量は、その用量時には血液中にロラゼパムが存在しないため、異なる血漿値をもたらす。このような単回用量実験におけるCminは、最初はゼロである。Cmaxは、典型的には定常状態Cmaxよりも著しく低い。本発明の技術はロラゼパムの慢性投与(1週間以上、場合によっては数ヵ月または数年)に適用可能であるため、定常状態パラメーターはより有意味なものであり得る。実際に、いくつかの実施形態において、単回用量試験(例えば、初回用量)は、1時間よく早く、多くの場合2時間より早く、いくつかの実施形態では3時間より早く、血流中の治療濃度をもたらさない。いくつかの実施形態において、最小治療血漿濃度は10ng/mlとみなされ得る。
【0066】
使用方法
別の態様において、本明細書では、ロラゼパム及びアルコールの同時消費に伴うリスク、例えば、このような同時消費に伴い得る臨床的リスクを低減する方法が提供される。当該方法は、本明細書に記載のアルコール耐性経口用医薬組成物または剤形を調製または投与することを含む。
【0067】
別の態様において、本明細書では、経口用医薬剤形からのロラゼパムのアルコール抽出を阻止する方法であって、本明細書に記載のアルコール耐性経口用医薬組成物または剤形を調製することを含む、方法が提供される。
【0068】
以下の実施例は例示として示され、本発明を限定するようには意図されていない。
【実施例】
【0069】
実施例1:全般的な調製方法
ロラゼパムの制御性放出製剤を含む基質が調製され、エタノール不溶性フィルムコーティングのようなアルコール耐性コーティングが供給される。任意選択でロラゼパムの即時性放出製剤を含む基質も調製され、任意選択でコーティングが供給される。コーティングの厚さは、所望のレベルのアルコール耐性をもたらすように選択及び制御される。
【0070】
図1に例示されるように、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のアルコール耐性経口用医薬剤形は、活性薬剤(API)を含む粒子、顆粒、ペレット、ビーズレットなど(10)を含む錠剤またはカプセルの形態(100)をとることができ、このとき、個々の粒子、顆粒、ペレット、ビーズレットなどに任意選択でアルコール耐性コーティング(12)が供給される。追加的にまたは代替的に、いくつかの実施形態において、錠剤またはカプセルにアルコール耐性コーティング(102)が供給される。図に示されるように、剤形は、粒子、顆粒、ペレット、ビーズレットなど(10)の組成物に応じて即時性放出剤形である場合も制御性放出剤形である場合もあり、任意の追加的なコーティングが粒子、顆粒、ペレット、ビーズレットなど、任意の錠剤もしくはマトリックスの組成物(104)に供給され、かつ/または任意の追加的なコーティングが錠剤もしくはカプセル(100)に供給される。
【0071】
錠剤は、粒子、顆粒、ペレット、ビーズレットなどを打錠用賦形剤と混合し、圧縮して錠剤にすることにより調製することができる。上述のように、圧縮した錠剤マトリックスには任意選択でアルコール耐性コーティングが供給され、このコーティングは粒子、顆粒、ペレット、ビーズレットなどに対するアルコール耐性コーティングと同じであっても異なっていてもよい。追加的または代替的に、圧縮した錠剤マトリックスに対し、1つ以上の従来的な医薬コーティング、例えばシールコーティングが供給される。
【0072】
カプセルまたはサシェは、粒子、顆粒、ペレット、ビーズレットなどをカプセル殻またはサシェパッケージング内に充填することにより調製することができる。上述のように、カプセルには任意選択でアルコール耐性コーティングが供給され、このコーティングは粒子、顆粒、ペレット、ビーズレットなどに対するアルコール耐性コーティングと同じであっても異なっていてもよい。追加的または代替的に、カプセルに対し、1つ以上の従来的な医薬コーティング、例えばシールコーティングが供給される。
【0073】
実施例2:アルコール耐性ロラゼパム剤形の調製
下記の表1に示される製剤に従って、ロラゼパムを含む持続性放出(SR)ビーズレットを調製した。いくつかの実施例では、SRビーズレットにアルコール耐性(AR)コーティングを供給してARコーティングSRビーズレットを得た。いくつかの実施例では、下記の表2に示される製剤に従って、SRビーズレットに遅延性放出コーティングを供給して遅延性放出(DR)ビーズレットを得た。いくつかの実施例では、そのように調製したDRビーズレットにARコーティングを供給してARコーティングDRビーズレットを得た。いくつかの実施例では、SRビーズレットにARコーティングを供給してからDRコーティングでコーティングした。
【0074】
【0075】
【0076】
ARコーティングは、カルボキシメチルセルロースナトリウム(54.160%w/wカルボキシメチルセルロースナトリウム、23.890%w/wマルトデキストリン、16.950%w/wデキストロース一水和物、及び5.000%w/wステアリン酸を含むOPAGLOS(登録商標)2を使用)またはアルギン酸ナトリウム(PROTANAL(登録商標)CR 8133(アルギン酸ナトリウム)、PROTANAL(登録商標)LFR5/60(アルギン酸ナトリウム)、及びNS ENTERIC(登録商標)(99%w/wアルギン酸ナトリウム、1%w/wステアリン酸)を使用)のいずれかに基づくエタノール不溶性フィルムコーティングシステムとした。コーティング懸濁液をWursterカラムを装備したAeromatic Strea-1流動床内でスプレーした。ポンプ速度は3g/分、入口温度は50~65℃とした。霧化空気圧は1.2±0.2バールとし、良好な流体化を維持するために空気流量を制御した。コーティング後、最終乾燥フェーズとして流体化をさらなる5分間維持した。2.5インチWursterカラムを装備したVFC Lab Micro Flo-CoaterによるボトムスプレーWursterコーティングにより、ロットL055-01046及びL055-01047をコーティングした。コーティングパラメーターを下記の表に収載する。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
SRビーズレット及びDRビーズレットを含むカプセルを調製し、いくつかのカプセルには下記の表に示すようにARコーティングを供給した。カプセルは合計2mgのロラゼパムを含有した。
【0081】
【0082】
実施例3:アルコール耐性溶解の評価
実施例2からの選択ロットに対する溶解プロファイルの評価を、水性0.1N HCl溶液中での37.0±0.5℃及び100rpmで2時間の溶解を評価することにより行った(データは示されず)。結果により、ARコーティングは、非アルコール溶解媒体で試験したときに、基質からの活性薬剤の放出に実質的に影響を及ぼさないことが示された。
【0083】
実施例2からの選択ロットに対する溶解プロファイルの評価を、40%エタノール及び水性0.1N HCl溶液を含む酸性エタノール水性溶液中での37.0±0.5℃及び100rpmで2時間の溶解を評価することにより行った。結果を下記の表7及び8ならびに
図2及び
図3で報告する。また、結果は、非コーティング基質(「対照」または「コア」)から放出される薬物の量との対比でも報告する。ここで、アルコールにおける相対的放出(%)は、試料製剤における2時間での溶解パーセントを対照製剤における2時間での溶解パーセントで割ることにより計算した。表7及び
図2で示されるように、いくつかのARコーティングDRビーズレット製剤は、アルコール溶解媒体で試験したときに、非コーティング(対照)SRビーズレット製剤から放出された活性薬剤の量との比較で75%以下の活性薬剤を放出した。
【0084】
陽性対照実験において、表7の非コーティングSRビーズレットは、エタノールなしの溶解媒体中では2時間で37%の溶解を呈し、これに対し40エタノール溶解媒体中では2時間で81%の溶解を呈した。これは、非コーティング基質がアルコールの存在下で活性薬剤の放出増加を呈することを確証するものである。同様に、表8の非コーティングSRビーズレットは、エタノールなしの溶解媒体中では2時間で18%の溶解を呈し、これに対し40エタノール溶解媒体中では2時間で80%の溶解を呈した。
【0085】
全体として解釈すると、これらの結果により、本明細書に記載のARコーティング基質は、アルコールの存在下では対応する非コーティング基質に比べて放出の低減を呈するが、非アルコール媒体中では同様の放出を呈することが示される。このことから、本明細書に記載の組成物は、アルコールの同時使用なしで投与されたときに非コーティング組成物と同様の薬物動態プロファイル及び治療有効性を達成するように使用することができるが、アルコールと同時に投与されたときにはより少ない放出を呈することが示される。また、データからは、本明細書に記載の組成物がアルコール抽出に対する耐性を有することも示される。
【0086】
【0087】