(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】光信号における位相変化検出
(51)【国際特許分類】
H04B 10/67 20130101AFI20220725BHJP
H04L 27/22 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
H04B10/67
H04L27/22 Z
(21)【出願番号】P 2020554218
(86)(22)【出願日】2019-04-08
(86)【国際出願番号】 US2019026293
(87)【国際公開番号】W WO2019199650
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-10-02
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ドルギン,ベンジャミン,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】グラセフォ,ゲイリー,エム.
(72)【発明者】
【氏名】コワレヴィッチ,アンドリュー
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0091228(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0269523(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
H04L 27/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある波長を持つ到着光信号を受信し、該到着光信号を受信したことに応答して第1の出力光信号エネルギーを放出するように構成された第1の光共振器
であり、前記到着光信号の前記波長に対して正側に離調されるように構成された第1の光共振器と、
前記到着光信号を受信し、前記到着光信号を受信したことに応答して第2の出力光信号エネルギーを放出するように構成された第2の光共振器
であり、前記到着光信号の前記波長に対して負側に離調されるように構成された第2の光共振器と、
前記第1の出力光信号エネルギー及び前記第2の出力光信号エネルギーのうちの少なくとも一方における過渡応答に基づいて、前記到着光信号における位相遷移を割り出すように構成された検出器と、
を有
し、
前記検出器は更に、前記位相遷移の大きさ及び方向を区別するように構成されている、
光信号受信器。
【請求項2】
前記検出器は更に
、前記位相遷移の前記大きさ及び
前記方向を一組の候補位相遷移の中から一意に特定するように構成され、前記一組の候補位相遷移は、前記到着光信号の共通の最終状態をもたらす一組の位相遷移である、請求項1に記載の光信号受信器。
【請求項3】
前記検出器は更に、360°以上の位相遷移を
、当該位相遷移が引き起こす過渡的な乱れによって区別するように構成される、請求項1に記載の光信号受信器。
【請求項4】
前記第1及び第2の光共振器の各々が、2つの半反射面を持つエタロンであり、前記半反射面は、前記半反射面の各々に衝突する光信号エネルギーの一部を反射することによって、前記光信号エネルギーを少なくとも部分的にトラップするように構成される、請求項1に記載の光信号受信器。
【請求項5】
到着光信号を受信し、該到着光信号を受信したことに応答して第1の出力光信号エネルギーを放出するように構成された第1の光共振器と、
前記到着光信号を受信し、前記到着光信号を受信したことに応答して第2の出力光信号エネルギーを放出するように構成された第2の光共振器と、
前記到着光信号を受信し、前記到着光信号を受信したことに応答して第3の出力光信号エネルギーを放出するように構成された第3の光共振器
と、
前記第1の出力光信号エネルギー、前記第2の出力光信号エネルギー、及び前記第3の出力光信号エネルギーのうちの少なくとも2つの間の比較に少なくとも部分的に基づいて
、位相遷移を割り出すように構成され
た検出器と、
を有する光信号受信器。
【請求項6】
到着光信号にエンコードされた情報を検出する方法であって、
複数の光共振器の各々において
、ある波長を持つ前記
到着光信号の一部を受信し、
前記複数の光共振器の各々からのそれぞれの出力光信号を分析し、且つ
前記出力光信号のうちの1つ以上の出力光信号の強度レベルにおける1つ以上の違いに基づいて、前記
到着光信号における位相遷移を割り出す、
ことを有
し、
前記複数の光共振器のうちの第1の光共振器が、前記到着光信号の前記波長に対して正側に離調され、且つ前記複数の光共振器のうちの第2の光共振器が、前記到着光信号の前記波長に対して負側に離調され、
前記位相遷移を割り出すことは、前記位相遷移の大きさ及び方向を区別することを含む、
方法。
【請求項7】
前記位相遷移を割り出すことは
更に、前記位相遷移の大きさ及び方向を一組の候補位相遷移の中から一意に特定することを含み、前記一組の候補位相遷移は、前記到着光信号の共通の最終状態をもたらす一組の位相遷移である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記位相遷移を割り出すことは、360°以上の位相遷移を
、当該位相遷移が引き起こす過渡的な乱れによって区別することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の光共振器の各々が、2つの半反射面を持つエタロンであり、
当該方法は更に、
前記半反射面の各々に衝突する光信号エネルギーの一部を反射することにより、前記複数の光共振器の各々の内部で光信号エネルギーを共振させることによって、前記複数の光共振器の各々からの前記それぞれの出力光信号を生成する、
ことを有する、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2018年4月12日に出願された米国仮出願第62/656,821号の利益を主張するものであり、あらゆる目的のためにその全体をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
光波は、例えば振幅、位相、周波数、波長などの光の様々な特性を変化させるように、レーザ光源であることが多い光源を変調することによって、情報を搬送するようにされ得る。光波は、可視スペクトル帯、赤外スペクトル帯、又は電磁スペクトルの別の領域内にあり得る。一部のケースにおいて、例えば無線周波数信号などの基礎信号が、振幅変調、位相変調、若しくは周波数変調、又はこれらの組み合わせを介して変調され、そして、該基礎信号によって光源が変調され得る。光受信器が、光波を受けて、振幅、位相遷移、及びこれらに類するものなどの光波の特性又は変化を測定し、該特性又は変化から基礎信号及び情報が復元され得る。
【0003】
光変調の様々な形態は、コヒーレント光の位相変化を含む。エンコードされた情報は、伝送された通信データを含むことができ、あるいは、例えば、光信号のソース、光信号と物体との相互作用、それを通って光信号が進んだ光チャネル、及び/又は光信号が相互作用した物体、に関する情報などの、他の情報を含むことができる。位相変化を復調することができる従来の受信器は非常に複雑であり、精密な光学系、ローカル発振器、回折格子(例えば、ファイバブラッググレーティングなど)、及び/又は遅延線干渉計(delay line interferometer;DLI)などを必要とし得る。高次のコヒーレントにエンコードされた信号用の受信器は、従来、ローカル発振器(LO)として機能する周波数制御レーザ、複数の検出器、及び相当なデジタル信号処理(DSP)を必要とする。
【発明の概要】
【0004】
ここに記載される態様及び例は、光信号における位相変化の復調のためのシステム及び方法を提供する。特に、特定の例は、位相エンコードされた光信号を1つ以上の強度エンコードされた光信号へと変換するための、例えばファブリーペローフィルタ/共振器、マイクロリング、又は他の共振器などの光共振器を有する受信器を含む。強度エンコードされた光信号は、容易に電気信号に変換されて、元々受信された光信号における位相変化を割り出すように処理され得る。光共振器を使用するここでのシステム及び方法はまた、変更なく、広範囲の変調速度にわたって機能し得る。
【0005】
様々な例において、到着光信号と相互作用するように2つ以上の光共振器を使用することができ、該2つ以上の光共振器からの応答(例えば、放出される強度エンコードされた光)の処理及び比較を通じて、広い位相変化(例えば、360°以上)を決定及び区別することや、位相変化が発生/到着するときの光信号の光共振器との相互作用による位相変化の方向を区別する(例えば、位相前進を位相後退から区別する)ことを含め、到着光信号における位相変化に関して様々な情報を割り出し得る。
一態様によれば、光信号受信器が提供され、当該光信号受信器は、到着光信号を受信し、該到着光信号を受信したことに応答して第1の出力光信号エネルギーを放出するように構成された第1の光共振器と、前記到着光信号を受信し、前記到着光信号を受信したことに応答して第2の出力光信号エネルギーを放出するように構成された第2の光共振器と、第1の出力光信号エネルギー及び第2の出力光信号エネルギーのうちの少なくとも一方の過渡応答に基づいて、到着光信号における位相遷移を割り出すように構成された検出器と、を含む。
【0006】
一部の実施形態において、検出器は、到着光信号の共通の最終状態をもたらす複数の位相遷移を区別する。
【0007】
一部の実施形態において、検出器は、360°以上の位相遷移を割り出す。
【0008】
特定の例において、第1及び第2の光共振器の各々が、2つの半反射面を持つエタロンであり、半反射面は、半反射面の各々に衝突する光信号エネルギーの一部を反射することによって、光信号エネルギーを少なくとも部分的にトラップするように構成される。
【0009】
特定に実施形態は、第3の光共振器を含み、検出器は、第1の出力光信号エネルギー、第2の出力光信号エネルギー、及び第3の光共振器からの第3の出力光信号エネルギーのうちの少なくとも2つの間の比較に少なくとも部分的に基づいて、位相遷移を割り出すように構成される。
【0010】
他の一実施形態によれば、光信号にエンコードされた情報を検出する方法は、複数の光共振器の各々において光信号の一部を受信することと、複数の光共振器の各々からのそれぞれの出力光信号を分析することと、出力光信号のうちの1つ以上の出力光信号の強度レベルにおける1つ以上の違いに基づいて、光信号における位相遷移を割り出すことと、を含む。
【0011】
一例において、位相遷移を割り出すことは、位相遷移の大きさ及び方向を一組の候補位相遷移の中から一意に特定することを含み、一組の候補位相遷移は、到着光信号の共通の最終状態をもたらす一組の位相遷移である。位相遷移を割り出すことは、360°以上の位相遷移を区別することを含み得る。
【0012】
特定の例において、複数の光共振器の各々が、2つの半反射面を持つエタロンであり、当該方法は、半反射面の各々に衝突する光信号エネルギーの一部を反射することにより、複数の光共振器の各々の内部で光信号エネルギーを共振させることによって、複数の光共振器の各々からのそれぞれの出力光信号を生成することを含む。
【0013】
他の一実施形態によれば、情報を伝送する方法は、初期位相及び初期振幅を持つ初期状態を光信号に与えることと、第1の情報シンボルを表すように、第1の位相変化量及び第1の位相変化方向を持つ第1の位相遷移を通じて、光信号を初期状態から最終状態へと変調することと、第1の情報シンボルとは異なる第2の情報シンボルを表すように、第2の位相変化量及び第2の位相変化方向を持つ第2の位相遷移を通じて、光信号を初期状態から最終状態へと変調することと、を有する。
【0014】
更なる他の態様、例、及び利点が、以下にて詳細に説明される。ここに開示される実施形態は、ここに開示される原理のうちの少なくとも1つと一貫したやり方で他の実施形態と組み合わされることができ、“実施形態”、“一部の実施形態”、“代替実施形態”、“様々な実施形態”、“一実施形態”、又はこれらに類するものへの言及は、必ずしも相互に排他的なものではなく、記載される特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを指し示すことを意図したものである。ここにこれらの用語が複数現れることは、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているわけではない。ここに記載される様々な態様及び実施形態は、記載される方法又は機能のいずれかを実行する手段を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下、縮尺通りに描くことは意図していない添付の図面を参照して、少なくとも1つの実施形態の様々な態様を説明する。図面は、様々な態様及び実施形態の例示及び更なる理解を提供するために含められており、この明細書に組み込まれてその一部を構成するが、本開示の限定を規定するものとして意図したものではない。図面において、様々な図に示される同じ又は略同じ構成要素は各々、似通った参照符号によって表される。明瞭さの目的のため、全ての図で全ての構成要素にラベルを付すことはしていない場合がある。
【
図1A】
図1A-1Fは、様々な光信号位相遷移を示す極線図である。
【
図1B】
図1A-1Fは、様々な光信号位相遷移を示す極線図である。
【
図1C】
図1A-1Fは、様々な光信号位相遷移を示す極線図である。
【
図1D】
図1A-1Fは、様々な光信号位相遷移を示す極線図である。
【
図1E】
図1A-1Fは、様々な光信号位相遷移を示す極線図である。
【
図1F】
図1A-1Fは、様々な光信号位相遷移を示す極線図である。
【
図2】ここに記載される様々な例に従った光受信器のブロック図である。
【
図4】複数の光共振器からの一組の出力信号のグラフである。
【
図5】複数の光共振器からの一組のフィルタリングされた出力信号のグラフである。
【
図6A】
図6A-6Bは、光共振器を利用する光受信器部分の例の概略図である。
【
図6B】
図6A-6Bは、光共振器を利用する光受信器部分の例の概略図である。
【
図7】光共振器を利用する光受信器部分の他の一例の概略図である。
【
図8】ここに記載されるプロセスの様々な例を実装するように構成され得るコンピューティングシステムの一例の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここに記載される態様及び例は、光信号における位相変化の復調のためのシステム及び方法を提供する。特に、特定の例は、位相エンコードされた光信号を1つ以上の強度エンコードされた光信号へと変換するための、例えばファブリーペローフィルタ/共振器、マイクロリング、又は他の共振器などの光共振器を有する受信器を含む。強度エンコードされた光信号は、容易に電気信号に変換されて、元々受信された光信号における位相変化を割り出すように処理され得る。光共振器を使用するここでのシステム及び方法はまた、変更なく、広範囲の変調速度にわたって機能し得る。
【0017】
ここに記載されるシステム及び方法は、従来の位相変化を検出することができるだけでなく、それらの遷移が初期位相に対して同じ結果の位相を生み出す場合であっても、正の位相遷移(例えば、位相前進)を負の位相遷移(例えば、位相後退)から区別することもできる。従来の位相復調受信器は、初期(遷移前)位相に対する結果位相の比較をインスタンス化しており、従って、各々が同じ最終信号位相(例えば、遷移前の初期位相などの基準に対して)をもたらす例えば+360°遷移を-360°遷移から区別することができない。
【0018】
従って、ここでのシステム及び方法は、+180°位相遷移を-180°位相遷移から区別することができ、+360°位相遷移を-360°位相遷移から区別することでき、等々である。さらに、ここでのシステム及び方法は、+720°位相遷移を+360°位相遷移から区別するために使用されてもよい。一般に、概して、ここに記載されるシステム及び方法は、以下に限られないが例えば+90°/-270°、-90°/+270°、+180°/-180°、+360°/-360°、+540°/+180°/-180°、+720°/+360°/-360°など、等しい結果位相を生み出す幾つもの位相遷移を区別するために有利に適用され得る。その他の等しい結果位相の例は、90°の倍数である位相遷移に限らず、例えば、+52°/-308°、+132°/-228°、-27°/+333°、及びこれらに類するものを更に含む。等しい結果位相を生み出す位相遷移には無限の数の組み合わせが存在し、それらの各々が、ここに記載される態様及び実施形態に従ったシステム及び方法の適用によって区別され得る。
【0019】
従って、ここに記載されるシステム及び方法は、光信号に情報エンコードする新たな手法を可能にする。何故なら、例えば+360°位相遷移が、-360°位相遷移とは異なる意味を持つように伝送されることができ、そして、ここに記載されるシステム及び方法を使用する受信器が、そのような遷移を区別する(及びその適切な解釈を可能にする)ことができるからである。従って、例えば直交振幅変調(QAM)及びこれに類するものなどの様々な符号化コンステレーションが、拡張された意味をとることができる。伝わるものがどのようにしてそのコンステレーションポイントに到達したのか基づいて、コンステレーション上のある特定のポイントが異なるシンボルを指し示し得る。例えば、反時計回り(正の)位相遷移に対しての時計回り(負の)位相遷移、又はそのコンステレーションポイントに到達する前に(例えば、極座標系の周りで)完全な位相回転を行う位相遷移といったものである。また、リモートセンシング及び/又はイメージングシステムは、物体と相互作用する光信号を用いて物体の様相(例えば、大きさ、速さ、形状、方向、材料など)をセンシングすることがあり、一部の相互作用は、伝統的な位相復調技術では区別することが困難な位相変化を生じさせることがあるが、ここに記載されるものに従ったシステム及び方法を用いることで、そのようなさもなければ等価な位相遷移又は変化を区別することができる。
【0020】
特定の例において、システムは、受信した位相遷移を出力における強度変化へと変換する例えばファブリーペローフィルタ/共振器、光ファイバループ、又は光ファイバマイクロリングなどの2つ以上の光共振器を含む。一部の例において、出力信号レベルはまた、受信信号の振幅変化も指し示し得る。従って、2つ以上の光共振器からの強度変化の分析が、受信光信号の様々な位相及び振幅遷移の割り出しを可能にし、それにより、受信光信号を復調することを可能にする。態様及び実施形態は、変換器素子としてこのような光共振器を含み且つ/或いは到着光信号における位相変化を割り出すための共振器出力信号の処理を含む受信器に向けられる。
【0021】
光共振器からの出力強度の違いは、例えば、到着光信号(例えば、位相、振幅)における変化、共振器(例えば、ファブリーペローエタロン、マイクロリング)の光学長、並びに光共振器の吸収、反射、及び他の特性の組み合わせなど、様々なパラメータに依存し得る。特定の実施形態は、2つ以上のエタロンを含む復調器を提供する。特に、特定の実施形態によれば、3つのエタロンの使用であって、それらのうちの1つが、(可能性として入射角も考慮に入れて)到着光信号の公称波長の整数倍に等しい実効ラウンドトリップ長を有することができ(例えば、エタロンが同調され)、それ以外が到着光信号と同調されていない、3つのエタロンの使用で、復調に十分である。例えばデジタル又は他の処理による、2つ又は3つのエタロンの出力の分析が、到着光信号における位相変化の復調を可能にする。
【0022】
ここに記載される態様及び実施形態は、種々の光共振器を用いて複雑な符号化フォーマットの復調を可能にする。このアプローチは、処理電力及びハードウェア要求も低減させながら、受信器内の基準レーザ源、ファイバカプラ、位相シフタなどの必要性を排し得る。
【0023】
光信号は、様々なソース及び/又はプロセスを介して位相及び/又は振幅変調され得る。例えばレーザビームなどのコヒーレント光信号が、伝達される情報を光信号上にエンコードするように、例えばデータ通信送信器によって、意図的に変調され得る。多数のプロセスが、コヒーレント光源を位相及び/又は振幅変調することができ、そこから、変調された光信号の適切な復調(例えば、解釈)によって、そのプロセスに関する情報が復元され得る。例えば、様々な測定システムは、光信号を送信し、反射信号を分析して寸法、動き、欠陥などを割り出し得る。位相及び/又は振幅変調された光信号の復調が有益であり得る様々なシステムの例は、標的照射器、レーザ誘導システム、レーザ照準器、レーザスキャナ、3Dスキャナ、ホーミングビーコン及び/又は測量システム、並びに通信システムを含む。これらの例のうちの一部において、光信号は、自由空間信号経路(例えば、自由空間光通信、FSO)又はファイバ若しくは他の導波システムを介して到着し得る。ここに開示される態様及び例に従った、位相及び/又は振幅変調された光信号の復調のためのシステム及び方法は、光信号から有用な情報を受信、検出、復元などするために、上述の光学システムのいずれか又はその他に有益に適用され得る。
【0024】
理解されるべきことには、ここで説明される方法及び装置の実施形態は、適用において、以下の記載に説明され又は添付図面に図示される構成の詳細及び構成要素の配置に限定されるものではない。これらの方法及び装置は、他の実施形態での実装も可能であり、また、様々なやり方で実施あるいは実行されることが可能である。具体的な実装の例が、単に例示の目的でここに提供されるが、限定することを意図したものではない。また、ここで使用される言葉遣い及び用語は、記述目的でのものであり、限定するものとして見なされるべきでない。“含む”、“有する”、“持つ”、“含有する”、“伴う”及びこれらの変形のここでの使用は、その後に挙げられる品目及びそれらの均等物並びに更なる品目を含む意味である。“又は”への言及は、“又は”を用いて記載される項目が、記載される項目のうちの、単一の、1つよりも多くの、及び全ての、の何れかを指し示し得るように、包含的なものとして解釈され得る。前及び後ろ、左及び右、頂部及び底部、上側及び下側、並びに縦方向及び横方向の如何なる参照も、説明の便宜のためであり、本システム及び本方法又はそれらのコンポーネントを何らかの1つの位置的又は空間的な向きに限定するものではない。
【0025】
この開示の目的では、当業者に理解されることになるように、光、光信号、及び光学信号なる用語はここでは相互に交換可能に使用されることがあり、概して、所与の媒体中を伝播する電磁信号を指し、該所与の媒体は、例えば真空である何もない空間であってもよいし、例えば空気である大気であってもよいし、例えばファイバ若しくは他の光学コンポーネントなどのその他の媒体であってもよい。光、光信号、及び光学信号なる用語は、例えば周波数若しくは波長、バンド、コヒーレンス、スペクトル密度、品質係数などの光の特定の特性を意味するものではなく、電波、マイクロ波、赤外、可視、及び/又は紫外の電磁放射、又は光学分野で従来から処理されているその他の非電離電磁放射を含み得る。従って、ここに記載されるものと同様の方法で好適な共振器と相互作用することができる如何なる好適な電磁放射線も、光、光信号、又は光学信号という用語に含まれ得る。また、位相変化、位相遷移、位相シフトなる用語は、文脈によって別のことが明瞭に指し示されない限り、ここでは相互に交換可能に使用される。
【0026】
様々な実施形態において、システム及び方法は、2つ以上の光共振器に基づき、そこから、それらの出力の解釈が、到着光信号における位相変化の特定をもたらし得る。一部の例において、第1の共振器が、位相遷移の量に関する情報を提供し得るとともに、別の共振器が、位相遷移の方向(例えば、符号)に関する情報を提供し得る。他の例では、いずれの特定の共振器も位相シフトの量又は方向のいずれかに関する完全な情報を与えることなく、位相シフトの量及び方向を割り出すように光共振器からの2つ以上の出力信号が分析/解釈され得る。様々な実施形態において、それら共振器のうち1つ以上が、到着光信号に同調され得るとともに、それら共振器のうち他のものは離調され得る。他の実施形態では、1つ以上の共振器の各々が離調されてもよい。特定の実施形態は、いずれも必ずしも正確な波長に同調されるわけではない2つ以上の光共振器を含むが、受信光信号波長からの離調の量が、共振器のリアルタイム出力に基づいて区別され得る。様々な実施形態において、光共振器は、正確な伝送速度又は正確な光波長に同調される必要はない。
【0027】
従って、ここに開示される態様及び実施形態は、基準レーザ波長の同期の必要性を排除し、レーザがローカル発振器として機能する必要性を排除し、光ファイバ内での偏光ドリフトに関連する問題を排除し、偏光効果に対処するために必要な検出器の数を減らし、高次コヒーレント復調に必要なプロセッサの量及び/又はDSP複雑性を低減させ、及び/又は、例えば伝送速度に一致するためなどで正確な光学遅延を必要とするのでなく、同じハードウェアで可変伝送速度を可能にし得る。
【0028】
図1A-1Fは、様々な変調スキーム及び/又は光信号と物体との相互作用、又は光信号を変調し得る他のプロセスに適用可能であり得る位相遷移の例を示している。例えば、極座標チャート上の基準点110が、光信号の(位相遷移前の)開始位置を表し得る。点120における光信号は、特定の振幅A及び位相Φを持つ光信号を表す。例えば
図1Aの0°の基準点110から点120への遷移など、ある点から別の点への遷移は、振幅の変化、位相の変化、又はこれら両方を含み得る。
【0029】
ここでの態様及び実施形態に従った到着光信号の復調は、コンステレーション中で光信号が通った経路(例えば、極座標系の周り)の特性を割り出すことで、単にコンステレーションにおけるどの点が現在光信号によって占有されているのかということを超える追加の情報を割り出し得る。ここに記載される態様及び実施形態は、位相変化の様相を割り出すことに向けられるが、記載されるシステム及び方法に従った概念の適用はまた、位相変化と共に、極座標系内での光信号の経路を特定し得る振幅変動の様相を割り出すことにも適用され得る。
【0030】
図1Bは、光信号が、基準点110から、基準点の0°位相に対して180°の位相を持つ新たな点130に変化するときに起こり得る位相遷移の2つの例を示している。光信号は、Δφ=+180°の位相遷移132を介して位相を増加(例えば、位相前進)させて反時計回りに進むことができ、あるいは、光信号は、Δφ=-180°の位相遷移134を介して位相を減少(例えば、位相後退)させて時計回りに進むことができる。これら2つの位相遷移132、134の各々が、同じ点130に到達する。例えば基準点110から±540°及びその他といった、他の位相遷移も点130に到達し得る。光信号の従前状態(例えば、点110)に対しての光信号の最終状態(例えば、点130)に基づいて動作する従来の位相復調方法は、これら2つの異なる位相遷移132、134の間で区別を行うことができない。しかしながら、ここに記載されるシステム及び方法に従った態様及び実施形態は、到着光信号が位相遷移の間に光共振器と相互作用することを伴って、+180°の位相遷移132(例えば、位相前進)が起こったのか、それとも-180°の位相遷移134(例えば、位相後退)が起こったのかの特定を可能にし、及び/又は、どちらが起こったのかを特定するための、光共振器からの出力信号の分析を伴う。
【0031】
図1Cは、例えば+90°位相遷移若しくは-270°位相遷移又はその他といった、やはり複数の異なる位相遷移によって至られ得る点140を示している。同様に、
図1Dは、例えば+270°位相遷移若しくは-90°位相遷移又はその他といった、複数の異なる位相遷移によって至られ得る点150を示している。
図1Eは、光信号が基準点(開始点)110に(反時計回りに)戻り得る+360°の位相遷移を示し、
図1Fは、光信号が基準点(開始点)110に(時計回りに)戻り得る-360°の位相遷移を示している。従来の受信器は、
図1E及び1Fに示される位相遷移を区別することができない、あるいは、少なくとも、到着光信号の最終状態がその元の状態と同じであるために、位相遷移が起こったことを検出することさえできない。しかしながら、ここに記載されるシステム及び方法に従った態様及び実施形態は、位相遷移を通じて(位相遷移中に)到着光信号の特性を検出し、+360°位相遷移を-360°位相遷移から区別することができ、さらに、もっと大きい位相遷移(360°を超える)を割り出すことができる。
【0032】
コンステレーション上又は極座標系上のいずれの点も2つ以上の位相遷移によって至られることができ、いずれの点に至ることにも、無限の数の位相遷移が利用可能である。ここに記載されるものに従ったシステム及び方法は、光信号の開始特性及び最終特性のみで評価されるときには等価となってしまう異なる位相遷移のセットを区別することができる。
【0033】
光共振器と相互作用する到着光信号における位相遷移は、光共振器からの出力信号に過渡的な乱れを引き起こし得る。到着光信号における位相遷移に応答しての、2つ以上の光共振器の各々の出力信号における過渡的な乱れが、位相遷移(その例を上述した)の詳細を割り出すために、記載される方法に従って分析され得る。
【0034】
図2は、ここで説明される様々な例に従った光受信器200の一例を示している。図示した受信器200は、光信号210を受信し、また、光共振器230と、出力270を提供するデジタル処理サブシステム250とを含んでいる。光共振器230は、例えば、光電変換器242及びアナログ-デジタル変換器244によってデジタル処理サブシステム250に結合され得る。
【0035】
光共振器230の例は、ファブリーペローエタロン、マイクロリング、又は他のタイプの共振器を含み得る。光共振器230は、受信した光信号210の変調を表す例えば位相遷移などの遷移を検知することができるとともに、該遷移を例えば出力光信号232といった出力光信号の強度変調へと変換することができるコンポーネントである。光共振器230は、部分的に、光共振器230内に構築又は保持される光信号エネルギーとの到着光信号210の相互作用によって、到着光信号210の変調を変換する。
【0036】
光共振器230によって受信される光信号は、定常的なエネルギー保存状態を確立することができ、該状態では、光信号エネルギーが共振器に連続して到着し、共振器内部に存在する蓄積エネルギーへと蓄積し又は足し合わさり、そして、一定の割合で共振器から出てくる。光信号の到着位相、周波数、又は振幅の変化が、定常状態を中断させることがあり、それにより、定常状態が再構築されるまで、共振器から出てくる光強度が中断される。従って、到着光信号210の位相、周波数、又は振幅における変化は、出てくる光信号232の強度における変化を引き起こす。例えば、到着光信号210における大きい位相遷移は、出てくる光信号232における大きい(しかし一時的な)強度変化を引き起こし得る。例えばエタロン、光ループ、マイクロリング、又は他の光共振器などの様々な共振器タイプで、同様の動作が起こり得る。従って、光共振器230は、光信号210用の復調器又は変調コンバータとして機能する。出てくる光信号232は、それ故に、強度変調された形態ではあるが、到着した光信号210と同じ情報コンテンツを担持し得る。
【0037】
出てくる強度変調された光信号232は、例えばフォトダイオードなどの光検出器を含み得るものである例えばOEC242といった光電変換器、によって、電気信号へと変換され得る。従って、OEC242の出力は、強度変調された光信号232を表す振幅変調信号であることができ、例えばADC244といったアナログ-デジタル変換器によってデジタル形式に変換され得る。このデジタル信号が、デジタル処理のためにデジタル処理サブシステム250に提供される。デジタル処理サブシステム250は、デジタル信号を処理して、光信号210の情報担持コンテンツを取り出す。
【0038】
様々な例において、ここに開示される態様及び例に従った受信器は、上述したものよりも追加の又はより少ない光学系を含むことができ、上述したものに対して様々なコンポーネントを省略又は追加し得る。例えば、光共振器230から出てきた光信号232を受けて、光信号232をOEC242上にフォーカシングするために集束光学系が含められてもよい。特定の例は、アナログ受信器回路を使用してもよく、従って、ADC224を省略し得る。様々な例は、技術的に知られているように位相回転又は他の信号調整を提供するために、デジタル処理サブシステム250の一部としてチャネル推定器を含み得る。
【0039】
上述のように、好適な光共振器は、エタロン、マイクロリング、又は他の構造を含み得る。エタロンの少なくとも1つの例の一部詳細を、ここに記載される態様及び実施形態に従った光共振器230として使用され得るエタロン300の例を示すものである
図3に関して説明する。特に、エタロン300は、受信光信号210の位相変調を出力光信号232の強度変調又は振幅変調へと変換するために使用され得る。そして、強度変調又は振幅変調された出力光信号232が、一部の実施形態において、上述のように電気信号へと変換され得る。エタロン300は、受信光信号210における位相遷移に応答して出力強度変化を呈する。
【0040】
エタロン300は、光信号エネルギーを内部304に反射する半反射面306、308を備えた内部304を含む。入力側312は、例えば光信号210などの光信号エネルギーが内部304に入ることを許す。それにより、入力側312は、到着した光信号210がそれを通って受信される開口を形成する。出力側322は、少なくとも部分的に、トラップされた光信号エネルギーの一部が内部304から例えば出力光信号232などの出力光信号として出てくることを可能にする半反射面306の作用によって、光出力を形成する。従って、半反射面306はまた、(内部304から)半反射面306に到着した光信号エネルギーが、部分的に内部304へと反射され返すとともに、部分的に出力側322に透過されるよう、半透過性でもある。エタロン300は、様々なレベルの反射率の半反射面306、308を有し得る。特定の例において、反射率は、内部304へと反射され返す光振幅の割合として表されることができ、あるいは、内部304へと反射され返す光強度の割合として表されることができる。特定の一例において、第1の半反射面308の振幅反射率はr1=0.999とすることができ、第2の半反射面306の振幅反射率はr2=0.985とすることができる。他の例において、第1及び第2の半反射面の各々の反射率は異なることができ、特定の実装に適した値とし得る。
図4-
図5に示す様々な例において、反射面306、308の各々は、反射面306、308のいずれかとの各相互作用において、光エネルギーの約70%が反射される(又は様々な例において、50%から85%以上が反射される)ように、r1=r2=0.707なる強度反射率を有し得る。他の例では、設計基準を変えることによって如何なる好適な反射率が確立されてもよい。エタロン300は、ここに記載される態様及び実施形態に従った好適な光共振器の一例である。
【0041】
この開示全体を通しての用語“エタロン”の使用は、限定することを意図するものではなく、ここで使用されるとき、反射面を持つプレート並びに間に様々な材料を持つ平行ミラーを含め、複数の構造のいずれを含んでもよく、また、キャビティ、干渉計、及びこれらに類するものとして参照されてもよい。さらに、エタロン構造は、ラミネート、層、フィルム、コーティング、これらに類するものとして形成され得る。
【0042】
ここでの光共振器は、従来特性の構造だけでなく、95%から98%以上の範囲内の反射率を持ち得るものである従来例と比較して比較的低いとし得る50%から85%以上の範囲内の内部反射率を含み得る構造を含む。様々な実施形態において、比較的低い反射率値を持つ光共振器は、より強い定常モードを呈し得る比較的高い反射率値を持つ光共振器と比較して、いっそう過渡的なモード特性を呈し得る。
【0043】
一部の例において、エタロンは、同一平面上にない及び/又は同一直線上にない反射面(半反射面を含む)を含んでもよい。例えば、エタロンのある内部反射面が幾分の湾曲を含むことができ、そして、対向する表面も、一部の例においてエタロンの様々な領域にわたって2つの表面間の距離が実質的に一定であるように湾曲されることができる。他の例において、エタロンは、同一直線上にない又は同一平面上にない表面を有して、様々な領域で表面間の距離が変化しながら、なお、様々な波長に対して様々な領域で、ここで説明される例での使用に適した光共振器として機能し得る。従って、エタロンは、特定の例において、ある表面に適合するように、あるいは、異なる波長に応じて又は所与の波長で異なる到着角度に応じて様々な領域を持つように、目的をもって設計され得る。
【0044】
様々な実施形態において、光ループ又はマイクロリングも好適な光共振器であることができ、1つ以上の導波路から形成され、うち少なくとも1つが、ループを“ぐるりと”横断する光信号エネルギーが1つ以上の波長でループの寸法と位相整合され得るような閉ループである。従って、ループを横断する光信号エネルギーが、特定の周波数(波長)においてそれ自身と建設的又は相殺的に干渉することができ、そのような建設的又は相殺的な相互作用が、到着光信号の位相変化によって乱され得る。従って、到着光信号を復調するために、到着光信号における位相及び振幅の変化が検出されて解釈され得る。同様に、エタロン300は、エタロンを横断する光信号エネルギーが同様の方法でそれ自身と建設的又は相殺的に干渉し得るように、一部の光信号エネルギーをトラップ又は蓄積する。
【0045】
特定の例によれば、例えばエタロン300などの光共振器は、入力信号に基づいて定常出力信号を発生し、入力信号の変調が生じるまで所定レベルの出力信号を維持する。入力信号に位相変調が発生すると、自己干渉(建設的又は相殺的)が、出力信号の強度に位相依存の過渡的な乱れを生じさせ得る。このような過渡的な乱れは、更に詳細に後述するように、エタロン(又は他の光共振器)の同調に依存し得る。従って、エタロン300は、受ける光信号波長λ、入射角、又は他のファクタに対して、同調の様々な状態を有し得る。例えば、同調されたエタロンは、例えばL=nλ/2など、半波長の整数倍である光学的な内部寸法302(例えば、内部304の材料中での光の速さに基づく)を有し得る。離調されたエタロンは、例えばL=nλ/2+εなど、僅かに大きい寸法を持つことによって正側に離調され、又は、例えばL=nλ/2-εなど、僅かに小さい寸法を持つことによって負側に離調され得る。一部の実施形態において、寸法の異なりεは、例えばε=λ/8など、1/8波長の公称値を有し得る。他の実施形態において、寸法の異なりは、例えばε=λ/10など、1/10波長の公称値、又はε=λ/12など、1/12波長の公称値を有し得る。他の実施形態は、異なる公称寸法異なりεを有してもよく、また、寸法異なりεは、様々な実施形態においてもっと精密なものであってもよいし、あまり精密なものでなくてもよい。
【0046】
特定の波長又は入射角に対して正側に離調された光共振器は、別の波長又は角度に対して負側に離調された光共振器であり得る。一部の実施形態において、特定の波長に対する同調は、2つ以上の光共振器間での同調における差よりも重要ではないことがある。例えば、上述の正側に離調された共振器寸法及び負側に離調された共振器寸法は、これらの光共振器のいずれかにおいてどの波長が共振を生じ得るかに関係なく、2つの光共振器に関して、互いに対して2εだけ離調されているとして等価的に記述され得る。同調された共振器の動作並びに同調された共振器を離調された共振器とともに用いることによって位相変調を検出及び復調することの更なる詳細は、“SYSTEMS AND METHODS FOR DEMODULATION OF PSK MODULATED OPTICAL SIGNALS”と題されて2017年10月5日に出願された米国特許出願第15/725,457号、及び“DEMODULATION OF QAM MODULATED OPTICAL BEAM USING FABRY-PEROT ETALONS AND MICRORING DEMODULATORS”と題されて2017年11月17日に出願された米国特許出願第15/816,047号に見出すことができ、それらの各々を、あらゆる目的のためにその全体にてここに援用する。
【0047】
上述のように、到着光信号は、特定の初期状態から特定の最終状態に到達するのに様々な位相遷移のいずれかを受けているので、到着光信号の初期状態及び最終状態に基づいて位相遷移を決定するシステムによってでは、様々な位相遷移を検出することができない。従って、
図4及び
図5を参照して、ここでのシステム及び方法がどのようにして異なる位相遷移を区別し得るのかに焦点を当てて、多様な異なる位相遷移を説明する。
【0048】
図4は、到着光信号における様々な位相遷移に応答しての、例えばエタロン300などの様々な同調されたエタロン及び離調されたエタロンからの幾つかの出力光信号強度を例示している。等価的に、
図4のグラフは、これらエタロンの出力の各々における光信号強度を示す、例えば光信号の詳細を再現するのに十分な高さの帯域幅を持つ光検出器といった理想的な光電変換器の電気信号出力を表し得る。グラフ400は、同調されたエタロンの出力信号を表している。グラフ420、440は各々、正側に離調されたエタロンの出力を表しており、グラフ440は、グラフ420よりも大きく正側に離調されたエタロンの出力を表している。グラフ410、430は各々、負側に離調されたエタロンの出力を表しており、グラフ430は、グラフ410よりも大きく負側に離調されたエタロンの出力を表している。
【0049】
図4の様々なグラフは、様々な同調されたエタロン及び離調されたエタロンが、到着光信号におけるその他では同じ位相遷移に対して様々な応答を有し得ることを例示している。例えば、同調されたエタロンは、到着信号における+90°位相遷移に応答して、出力における一時的な低下である応答401を有し得る一方で、正側に離調されたエタロンは、同じ+90°位相遷移に応答して、出力における一時的な増加である応答421を有し得る。同調されたエタロンは、-90°位相遷移に対して、+90°位相遷移に対する応答401と同様の応答402を有し得るが、離調されたエタロンのいずれもが、-90°位相遷移に対して、+90°位相遷移に対するそれらそれぞれの応答とは異なる応答(例えば、応答422)をもたらし得る。従って、一部の実施形態において、同調された光共振器が、ある一定の大きさの位相遷移を示し得るのに対し、離調された光共振器は、位相遷移が正であるのか負であるのかを指し示す異なる応答を提供し得る。
【0050】
図4はまた、例えば±270°の位相遷移など、より大きい大きさの一部の位相遷移が、例えば応答405、406においてなど、応答401、402と比較して大きい過渡的な乱れ(例えば、時間及び/又は振幅応答に関して)を引き起こし得ることを示している。従って、より大きい大きさの位相遷移は、それが引き起こす過渡的な乱れによって区別され得る。例えば+270°位相遷移及び-270°位相遷移などの、異なる方向の位相遷移は、例えば応答425及び426によって又は応答445及び446によってなど、少なくとも1つの他の光共振器の応答によって区別され得る。
【0051】
様々な実施形態において、(例えば、位相遷移に応答した)光共振器の出力を表す信号は、その電気出力では出力光信号からの全ての詳細を再現することができない光検出器に提供されることがあり、例えば、実世界の光検出器は有限の帯域幅を持ち、その結果、光検出器の電気出力は、
図4の信号のローパスフィルタリングされたバージョンと同等となり得る。
図4の光信号に対応した、有限の帯域幅を持つ光検出器からの電気出力信号の例を、
図5に示す。
【0052】
従来のシステムでは、光受信器内の光検出器は典型的に、通信速度(ボーレート)の2倍から4倍の帯域幅を提供することを要求される。従って、1GB/sの光リンクは、2-4GHzの帯域幅が可能な光検出器を使用し得る。種々のいっそう高いデータレートがもっと高い通信速度を要求することがあり、それにより、従来の受信器では、例えば光学的なアライメント許容度などのその他の特性に置かれるよりも高いコスト及び厳しい要件で、より高い帯域幅の光検出器を必要とし得る。従って、従来の受信器は、従来において100-200GHzの光検出器を必要とするものである40GB/sを超えるデータレートには利用可能でない。しかしながら、ここでの態様及び実施形態に従ったシステム及び方法は、従来の受信器よりも低い帯域幅の光検出器を用いて、より高い通信速度の検出を提供する。
【0053】
図5は、
図5の信号が例えば有限の帯域幅を持つ光検出器からの出力信号を表すことを除いて、様々な同調されたエタロン及び離調されたエタロンからの、
図4の信号と同様の幾つかの出力信号を例示している。様々な実施形態において、光検出器は、通信速度の2倍よりもかなり小さい帯域幅を持ちながらも、
図5のものと同様の信号を生成するのに有効であることができる。従って、ここでのシステム及び方法は、従来のシステムと比較して相対的に低い帯域幅の光検出器で、より高い通信速度の復調を可能にする。
【0054】
第1の例において、+180°位相遷移と、-180°位相遷移とが、離調された光共振器のうちのいずれかの応答によって区別され得る。例えば、異なる応答523及び524によって、又は異なる応答543及び544によって、又は異なる応答513及び514によって、又は異なる応答533及び534によってなどである。様々な代わりの離調された光共振器のいずれかも、+180°/-180°位相遷移を区別する応答を提供し得る。
【0055】
第2の例において、+270°位相遷移と、-90°位相遷移とが、同調された共振器の応答又は離調された共振器のいずれかの応答によって区別され得る。一部の実施形態において、単一の光共振器が、+270°、-90°、-270°、及び+90°の位相遷移を区別するのに十分な応答を提供し得る。例えば、応答521、522、525、及び526は各々特有であり、それ故に、いずれか1つの分析、又は1つと他の1つとの比較が、どの位相遷移が生じたのかを特定するのに十分な情報を提供し得る。一部の実施形態において、1つ以上の追加の光共振器からの出力信号の分析が、特定された位相遷移を裏付けて、例えば、受信器の感度を増加させ、誤り検出を減少させる。
【0056】
第3の例において、+360°位相遷移と、-360°位相遷移とが、離調された光共振器のうちのいずれかの応答によって検出されて区別され得る。例えば、異なる応答527及び528によってなどである。例えば、違いが分かる特徴の一部は、(1)応答527が、応答528には存在しない又はあまり見られない初期の上向きの応答(増加する振幅)を持つこと、(2)応答527が、応答528における一致する減少よりも振幅的に大きく減少すること、及び(3)応答527が、応答528がオーバーシュートするよりも大きくオーバーシュートして定常状態に戻ること、を含む。様々な実施形態において、応答527の他の独特な特徴が、応答528と比較して識別可能であることがある。また、様々な代わりの離調された光共振器のうちのいずれかも、+360°/-360°位相遷移を区別する応答を提供することができ、且つ/或いは、位相遷移を互いに区別する際の比又は確実性を増大させるために、複数の光共振器の応答が処理及び比較されてもよい。
【0057】
従って、位相変調にて情報をエンコードする新たな手法が、ここでのシステム及び方法によって可能にされる。例えば、+180°/-180°又は+270°/-90°又は+360°/-360°などの、さもなければ冗長であり得る(例えば、到着光信号の初期状態に対して同一の最終状態をもたらす)様々な位相遷移を使用することで、異なる情報シンボルを別々に指し示し得る。別の言い方をすれば、他の点では同じ位相遷移の異なる方向(前進、後退)を用いて、追加の情報を送信したり、追加の2進数を運んだり、異なるシンボルを指し示したりなどすることができる。
【0058】
同様に、2つ以上の光共振器間での様々な区別が、360°よりも大きい位相遷移を検出するために識別可能であり、ここでのシステム及び方法によって位相変調にて情報をエンコードする新たな方法を更に提供する。なお、従来のシステムは、+360°の位相遷移又は-360°の位相遷移が生じたことさえ検出できない。何故なら、このような位相遷移後の到着光信号の最終状態は、初期状態から不変であるからである。少なくとも第2の様式では、例えば+720°/+360°又は+810°/+450°/+90°などの、完全な回転よりも大きい位相遷移が特定されて区別され、そして、異なる情報シンボルを指し示すために使用され得る。これらの位相遷移例の各々、及び数多くの他の好適な位相遷移が、従来の受信器では検出及び/又は区別することができない到着光信号の特徴を区別するために、受信器又は位相検出器で使用され得る。
【0059】
一部の実施形態において、2つの光共振器が含められ得る。例えば、同調された共振器の応答の大きさが、位相遷移の大きさに関する情報を提供し得るとともに、離調された共振器が、位相遷移の方向に関する情報を提供し得る。他の例では、共振器のうちのいずれかによって、さもなければ同様の応答を生じさせ得る2つの位相遷移の検出及び区別を確認するために、もっと多くの区別できる特徴を持つ信号応答を提供するよう、追加の光共振器が含められてもよい。
【0060】
様々な実施形態において、光共振器からの出力信号(これは、オプションで電気信号に変換され、オプションで特定の特徴を除去又は区別するためにフィルタリングされ、及びオプションでデジタル形式に変換され得る)が、位相遷移に対するその応答の様々な特徴に関して分析され得る。例えば、そのような特徴は、以下に限られないが、応答の大きさ、応答の傾き、初期方向(増加/減少)、(1つ以上の)ピーク値、後続の方向及び大きさ、オーバーシュート及び/又はセトリング特徴(例えば、定常状態への戻り)、持続時間などを含み得る。必ずしも全ての実施形態で特定の特徴が必要とされるわけではなく、むしろ、いずれの実施形態も様々な特徴を呈することができ、それについて、処理システムが、様々なシステム要求及び/又は動作環境に適合するよう、様々な位相遷移を区別及び特定するように構成又はプログラムされ得る。
【0061】
この開示の利益により、到着光信号に対して異なるチューニング状態を持つ好適数の光共振器によって、及び光共振器によって出力される様々な応答信号を分析する十分な処理リソースによって、任意数の位相遷移が検出され、区別され、且つ一意に特定され得る。従って、通信又はセンシングシステムの受信器が、(例えば、物体、環境などとの相互作用を介した光信号の予期される変調に適合するよう、)位相遷移の所望のコンステレーションに合わせて設計され又はセンシングシステムの任意の光学位相分解能に合わせて設計され得る。
【0062】
到着光信号の位相遷移に関して、同調された光共振器及び離調された光共振器の上述の応答を引き続き参照するに、任意の大きさ及び方向の一般的な位相遷移が、少なくとも一方が到着光信号の波長から離調されている2つの光共振器の組み合わせによって検出されて区別され得る。一部の例において、位相遷移の大きさが、同調された光共振器からの出力信号強度における減少量によって特定され得るとともに、位相遷移の方向(前進又は後退)が、離調された光共振器からの出力信号を分析することによって特定され得る。
【0063】
さらに、2つ以上の光共振器からの出力光信号の分析が、いずれが同調されている(共振している)のか(例えば、比較的高い出力強度、正側及び負側の両方の位相遷移に対する同様の応答)及び/又は離調されているのか特定してもよい。また、波長においてドリフトする受信光信号は、同調された光共振器を離調された光共振器とし、その逆もまた然りであり、例えば
図2のデジタル処理サブシステム250などの処理サブシステムが、2つ以上の光共振器からの出力強度を分析して、それらが離調されているのか、それとも1つが同調されているのかを特定し、それに従って出力信号を解釈するように構成(例えば、プログラム)されてもよい。一般的な位相遷移の区別は、ここでのシステム及び方法が2つのみの光共振器を有することによって達成可能であるが、様々な実施形態は、例えば3つ以上の共振器を有して、よりロバストに動作し得る。従って、到着光信号が一般的な波長を有することに対処するため、又は到着光信号が波長ドリフト若しくは変動を受けることに対処するため、又は、例えば温度、製造公差、若しくはこれらに類するものに起因する光共振器の寸法変化に対処するために、特定の実施形態は、以下に限られないが、
図7に関して更に詳細に後述する固定された寸法異なりεなどの、幾らかの量だけ他のものとは異なる光学的寸法を各々が持つ3つ以上の光共振器を含み得る。
【0064】
従って、任意の一般的な位相遷移が、上述のシステム及び方法によって割り出され得る。一部の実施形態において、1つ以上の光共振器及び/又は光検出器が、到着光信号における位相遷移及び振幅遷移の両方を割り出すために使用される出力光信号を提供し得る。
【0065】
同調された光共振器、正側に離調された光共振器、及び負側に離調された光共振器の各々で、到着光信号の振幅における変化(例えば、振幅遷移)が、共振器からの出力強度を新たな定常状態レベルに落ち着かせ(セトリングさせ)得る。従って、一部の実施形態において、到着光信号における振幅遷移を割り出すために、定常状態出力強度が検出され得る。
【0066】
上記の全てによれば、例えばエタロン300又はマイクロリングなどの光共振器から出現する光強度における変化は、例えば位相変化又は振幅変化などの遷移が到着光信号中で発生したことを指し示し、それが適切な信号処理によって使用され、出現する光強度を分析することによって、有用な情報を割り出し得る。従って、一部の例において電気的形態であり且つオプションでデジタル形態である2つ以上の光共振器からの強度変調された出力光信号の適切な処理は、強度変化を解釈して、到着光信号の振幅及び位相の遷移を割り出し得る。
【0067】
図6Aは光学システム600aを示し、
図6Bは光学システム600bを示し、これらは各々、様々な大きさ及び方向を持つ位相遷移の検出及び復調を可能にするコンビネーション光共振器として動作し得る。図示の光学システム600の各々は、正側に離調された共振器602及び負側に離調された共振器604を含み、これらは図示のようなエタロンであるが、前述のような他の形態の光共振器であってもよい。他の例において、共振器602、604のうちの一方は、同調された共振器であってもよい。光学システム600aの場合、到着光信号610がスプリッタ612によって分割されて、到着光信号610の一部が正側に離調された共振器602に到達し、他の一部が負側に離調された共振器604に到達するようにされる。光学システム600bでは、到着光信号610の異なる部分が、スプリッタなしで、正側に離調された共振器602及び負側に離調された共振器604の各々に到達する。正側に離調された共振器602及び負側に離調された共振器604の各々は、前述のように動作する。
【0068】
正側に離調された共振器602及び負側に離調された共振器604の各々は、到着光信号の一部を受け、そして、前述のように、位相及び振幅遷移をそれぞれの出力光信号622、624の強度変調へと変換する。出力光信号622、624は、一部の例において、それぞれの光学系632、634(例えば、レンズ632、634)によって様々な広がりに集束されて、集束出力光信号642、644を提供し得る。他の例において、出力光信号622、624は集束されなくてもよい。出力光信号622、624又は集束出力光信号642、644のいずれかが、前述のように例えばフォトダイオードなどの光検出器とし得るものであるそれぞれの光電変換器652、654に提供されて、強度変調された出力光信号エネルギーが電気信号へと変換され、それが更に、やはり前述のように、デジタル形式に変換され得る。出力光信号622、624における強度変化、及び/又は変換器652、654によって出力される電気信号における振幅変化は、従って、到着光信号610における位相及び振幅遷移を指し示し得る。上述のように、正側及び負側に離調された共振器602、604は、同調された共振器と、波長の1/8、波長の1/10、又は別の量とし得る量εだけ光学的寸法において異なり得る。一部の実施形態において、正側及び負側に離調された共振器602、604は、同調された共振器に関係なく、量2εだけ互いに異なってもよく、例えば、離調された共振器602、604のうち一方が、他方よりも、到着光信号610の波長に関して、いっそう共振に近くてもよい(例えば、より同調に近くてもよい)。
【0069】
図7は、3つの光共振器702、704、706を有する光学システム700を示しており、これらの各々が到着光信号710の一部を受けるように構成される。一部の実施形態において、光信号710は、光共振器702、704、706の各々に一部を提供するように、
図6Aと同様にしてスプリッタによって分割されてもよい。一部の実施形態において、光共振器702、704、706の各々は、図示のように、関連付けられた集束光学系及び/又はそれぞれの光電変換器を有してもよい。一部の実施形態において、光共振器702、704、706のうちの1つが同調され得る。他の実施形態において、光共振器702、704、706のいずれもが同調されなくてもよい。到着光信号710は、一部の例において幾分不安定であることがあり、波長の変動又はドリフトを持ち、それによって、様々な時点において、光共振器702、704、706のうちの1つ又は他のものを到着波長に対して同調状態に入らせ得る。さらに、温度の変化が、光共振器702、704、706のうちの1つ以上の寸法に変動を生じさせることがあり、それが、光共振器702、704、706のうちの1つ以上を同調状態に向かうように又は同調状態から離れるようにシフトさせ得る。一部の実施形態において、最も正側に離調された共振器と最も負側に離調された共振器との間の差が、公称寸法異なり2εとして確立されてもよく、ここでεは、様々な動作要件に適合するように様々な値に等しくし得る。一部の実施形態において、εは、公称上、波長の1/8又は波長の1/10に等しいとし得る。様々な実施形態において、εは、公称上、半波長から波長の1/16以下の範囲内で波長のある割合に等しいとし得る。一部の実施形態において、光共振器702、704、706はエタロンとし得る。一部の実施形態において、光共振器702、704、706は、光学ループ又はマイクロリングであってもよく、εは、光学ループ又はマイクロリングの実施形態では、エタロンの実施形態に対して異なる公称値を有してもよい。様々な実施形態は、ある範囲の潜在的に望ましい到着光信号、又は様々な波長を持つ、ある範囲の、所望の到着光信号の揺らぎ、又はこれらの組み合わせ、に適合するよう、公称上同調された又は離調された寸法の更なる光共振器を含んでもよい。多数の光共振器を含む様々な実施形態において、最大の光学的寸法を持つ共振器と最小の光学的寸法を持つ共振器との間の寸法差は、様々な用途及び/又は動作パラメータに適合するよう、波長のある割合とすることができ、又は一波長又は複数波長のオーダーであってもよい。これら様々な実施形態の各々において、それぞれの光共振器からの出力光信号の強度変調が各々、例えば処理サブシステムによって分析されて、上述のシステム及び方法に従って一般的な光信号の位相変調及び振幅変調が復調される。
【0070】
ここに記載される態様及び実施形態の利点は多数ある。例えば、光学コンポーネントが、従来システムに必要とされるものよりも低コスト又は低い複雑性であり、例えば、クリスタルコーティング又は高価なコーティングではなく、コーティングされたガラス又はコーティングされていないガラスを許容し得る。位相変調を強度変調へと変換するための例えばエタロンなどの光共振器の使用は、改善された信号対雑音特性を提供し得るフィルタリング(例えば、共振寸法を介した負所望信号の拒絶)を組み込むように有利に設計され得る。ここに記載されるものに従った態様及び実施形態は、適応光学系が機能しなくなるような極端な収差又は乱れにおいても満足に動作し得る。さらに、ここに記載されるものに従った態様及び実施形態は、低い大きさ、重量、電力、及びコスト要求で自由空間光受信を達成することができ、例えば無人航空機及びマイクロ衛星などのプラットフォームに対するサポートを向上させ得る。
【0071】
理解されるべきことには、到着光信号の変調によって生じる出力強度への変化は、例えばエタロン又はマイクロリングの寸法長などの光共振器の物理的な共振寸法、及び例えばエタロンが1つ以上の波長に対してどれだけよくチューニングされるかなど、それがどれだけ正確に製造されるか、によって変わり得る。より小さい寸法長を持つ同調されたエタロンからの出力強度は、入力信号における遷移によっていっそうすぐに乱されるとともに、そのような遷移の後には、より大きい共振寸法を持つ同調されたエタロンよりも、いっそう迅速に定常状態を再確立する。また、より精密な公差に製造された、すなわち、より正確に特定の波長に同調されたエタロンは、より高い定常状態出力信号強度を提供し得るとともに、入力信号における遷移に対して、あまり精密でない公差に製造されたエタロンよりも高い感度を呈し得る。
【0072】
様々な実施形態は、特定の設計基準に基づいて、また、様々な動作特性に適合するように、様々なエタロン寸法及び公差を有し得る。一部の例において、様々なエタロン寸法及び公差は、到着光信号における遷移に対してエタロンがどれだけ強く及び/又はどれだけ速く応答するかと、遷移後にエタロンがどのくらい速く及び/又はどれくらい強く定常状態に戻るのに近づくかと、をトレードオフさせる、すなわち、バランスさせるように選択され得る。さらに、様々なエタロン寸法及び公差は、特定のデータレート及び/又は特定の波長に対して例えば受信器200などの受信器を最適化するように選択され得る。
【0073】
特定の実施形態は、他の光信号に対する1つの光信号の選択性を提供するために、様々な追加の態様又はコンポーネントを組み込み得る。例えば、周波数選択性フィルタ、周波数選択性コーティングの使用を通じて、及び/又は光共振器若しくは他の共振構造の周波数選択的な寸法若しくは他の特徴の選択によって、特定の波長の光が好まれたり、拒絶されたりし得る。
【0074】
様々な例において、受信器のコンポーネントは、アナログ回路、デジタル回路、又は1つ以上のデジタル信号プロセッサ(DSP)、又はソフトウェア命令を実行する他のマイクロプロセッサのうちの1つとして又はそれらの組み合わせとして実装され得る。ソフトウェア命令はDSP命令を含み得る。ここに記載される様々な態様及び機能は、特殊化されたハードウェア、又は1つ以上のコンピュータシステムで実行されるソフトウェアコンポーネントとして実装され得る。
【0075】
図8は、例えば
図2のデジタル処理サブシステム250及び/又は受信器200の他のコンポーネントなど、受信器の様々なコンポーネントに対応するソフトウェアルーチンを実装し得る制御回路(例えば、コントローラ800)の一例を示している。コントローラ800は、プロセッサ802、データストレージ804、メモリ806、及び例えばシステムインタフェース及び/又はユーザインタフェースなどの1つ以上のインタフェース808を含み得る。
図8には明示的に示されていないが、特定の例において、コントローラ800は電源に結合され得る。電源は、コントローラ800の1つ以上のコンポーネント、及び光受信器200の他のコンポーネントに電力を送達し得る。
【0076】
図8において、プロセッサ802は、データストレージ804、メモリ806、及び様々なインタフェース808に結合されている。メモリ806は、コントローラ800の動作中にプログラム(例えば、プロセッサ802によって実行可能であるようにコード化された命令のシーケンス)及びデータを格納する。故に、メモリ806は、例えばダイナミックランダムアクセスメモリ(“DRAM”)又はスタティックメモリ(“SRAM”)などの、比較的高性能な揮発性のランダムアクセスメモリとし得る。しかしながら、メモリ806は、例えばディスクドライブ又はその他の不揮発性ストレージデバイスなどの、データを記憶する如何なるデバイスを含んでいてもよい。様々な例は、メモリ806を、ここに開示される機能を実行するように特定化された、そして一部のケースでは固有の、複数の構造へと編成し得る。これらのデータ構造は、特定のデータに関する値及びデータのタイプを格納するようにサイズを決められて編成され得る。
【0077】
データストレージ804は、非一時的な命令及びその他のデータを記憶するように構成されたコンピュータ読み取り可能且つ書き込み可能なデータ記憶媒体を含み、例えば光ディスク若しくは磁気ディスク、ROM又はフラッシュメモリなどの不揮発性記憶媒体を含むことができる。命令は、ここに記載される機能の何れかを実行するように少なくとも1つのプロセッサ802によって実行されることが可能な実行可能プログラム又はその他のコードを含み得る。
【0078】
様々な例において、コントローラ800は、例えばシステムインタフェース及び/又はユーザインタフェースなどの一部の幾つかのインタフェースコンポーネント808を含む。インタフェースコンポーネント808の各々は、コントローラ800の他のコンポーネント(及び/又は付随する送信器又は受信器)、又はコントローラ800と通信する他の装置と、データを交換する(例えば、送信又は受信する)ように構成される。様々な例によれば、インタフェースコンポーネント808は、ハードウェアコンポーネント、ソフトウェアコンポーネント、又はハードウェアコンポーネントとソフトウェアコンポーネントとの組み合わせを含み得る。
【0079】
特定の例において、システムインタフェースのコンポーネントは、プロセッサ802を、
図2に示した光受信器200の1つ以上の他のコンポーネントに結合する。システムインタフェースは、1つ以上の制御信号をそのようなコンポーネントに提供し得るとともに、そのようなコンポーネントの動作を管理し得る。
【0080】
ユーザインタフェースは、コントローラ800が組み込まれた対応する送信器又は受信器が、例えばユーザなどの外部エンティティと通信することを可能にするハードウェアコンポーネント及び/又はソフトウェアコンポーネントを含み得る。これらのコンポーネントは、ユーザインタフェースとのユーザインタラクションから情報を受信するように構成され得る。ユーザインタフェース内で使用され得るコンポーネントの例は、キーボード、ポインティングデバイス、ボタン、スイッチ、発光ダイオード、タッチスクリーン、ディスプレイ、記憶されたオーディオ信号、音声認識、又はコントローラ800と通信するコンピュータ対応装置上のアプリケーションを含む。様々なインタフェースで受信されたデータは、
図8に例示するように、プロセッサ802に提供され得る。プロセッサ802、メモリ806、データストレージ804、及び(1つ以上の)インタフェース808の間の通信結合(例えば、図示の相互接続機構810)は、標準的な、独自の、又は特殊化されたコンピューティングバス技術に準拠した1つ以上の物理的なバスとして実装され得る。
【0081】
プロセッサ802は、操作されたデータをもたらす一連の命令を実行し、該データは、データストレージ804に格納され及びそこから取り出され得る。様々な例において、一連の命令は、上述のような光共振器からの出力の解釈をもたらす。このような命令は、そのような出力信号のピーク及びトラフを解釈して、ここで説明したように到着光信号における位相、周波数、又は振幅変化(変調)を割り出し及び/又はそこからデータペイロードを復元するためのコマンドに対応し得る。
【0082】
プロセッサ802は、市販されているのか、それとも特別に製造されているのかにかかわらず、任意のタイプのプロセッサ、マルチプロセッサ、又はコントローラとすることができ、それらは、特定用途向け集積回路(ASIC)、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又は他の好適な処理ハードウェアを含み得る。一部の例において、プロセッサ802は、例えばリアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)又は非リアルタイムオペレーティングシステムなどのオペレーティングシステムを実行するように構成され得る。オペレーティングシステムは、アプリケーションソフトウェアに対してプラットフォームサービスを提供し得る。それらのプラットフォームサービスは、とりわけ、プロセス間及びネットワーク通信、ファイルシステム管理、及び標準データベース操作を含み得る。数多くあるオペレーティングシステムのうちの1つ以上を使用することができ、例は、特定のオペレーティングシステム又はオペレーティングシステム特性に限定されない。
【0083】
少なくとも1つの実施形態の幾つかの態様をかように記載してきたが、理解されるように、当業者には様々な改変、変更、及び改良が容易に浮かぶであろう。そのような改変、変更、及び改良は、この開示の一部であることが意図され、また、開示の範囲内であることが意図される。従って、以上の説明及び図面は単に例によるものである。