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特許7110388硫黄-炭素複合体の製造方法、それにより製造された硫黄-炭素複合体、前記硫黄-炭素複合体を含む正極、及び前記正極を含むリチウム二次電池
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  • 特許-硫黄-炭素複合体の製造方法、それにより製造された硫黄-炭素複合体、前記硫黄-炭素複合体を含む正極、及び前記正極を含むリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】硫黄-炭素複合体の製造方法、それにより製造された硫黄-炭素複合体、前記硫黄-炭素複合体を含む正極、及び前記正極を含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/168 20170101AFI20220725BHJP
   H01M 4/38 20060101ALN20220725BHJP
   H01M 4/36 20060101ALN20220725BHJP
【FI】
C01B32/168
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020554495
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 KR2019011956
(87)【国際公開番号】W WO2020060132
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2020-10-05
(31)【優先権主張番号】10-2018-0111953
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ウンキョン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】クォンナム・ソン
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-527579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/39
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭素系物質を硫黄または硫黄化合物と混合する段階と、
(b)前記(a)段階で混合された硫黄-炭素混合物と下記(c)段階で気化可能な液体を密封容器に入れる段階;及び
(c)前記密封容器を120~160℃の温度で加熱する段階;を含み、
前記気化可能な液体は低級アルコールであり、
前記(c)段階で気化可能な液体は、硫黄-炭素の混合物100重量部を基準として、10~60重量部で入れる、硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項2】
前記(c)段階で加熱時間は、10分~3時間であることを特徴とする、請求項1に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項3】
前記炭素系物質と硫黄または硫黄化合物の混合重量比は、1:1~1:9であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項4】
前記炭素系物質は、炭素ナノチューブ、グラフェン、黒鉛、非晶質炭素、カーボンブラック、及び活性炭からなる群より選択される1種または2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年9月19日付け韓国特許出願第10-2018-0111953号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、硫黄-炭素複合体の製造方法、それにより製造された硫黄-炭素複合体、前記硫黄-炭素複合体を含む正極、及び前記正極を含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、携帯用電子機器、電気自動車及び大容量電力貯蔵システムなどの発展に伴い、大容量電池の必要性が台頭している。リチウム-硫黄電池は、S-S結合(Sulfur-sulfur bond)を有する硫黄系物質を正極活物質として用い、リチウム金属を負極活物質として用いる二次電池であり、正極活物質の主材料である硫黄は資源が非常に豊富で、毒性がなく、低い原子当たりの重量を持っている利点がある。
【0004】
また、リチウム-硫黄電池の理論放電容量は1672mAh/g-sulfurであり、理論エネルギー密度が2.600Wh/kgで、現在研究されている他の電池システムの理論エネルギー密度(Ni-MH電池:450Wh/kg、Li-FeS電池:480Wh/kg、Li-MnO電池:1,000Wh/kg、Na-S電池:800Wh/kg)に比べて非常に高いため、高エネルギー密度の特性を有する電池として注目を集めている。
【0005】
リチウム-硫黄電池の正極活物質としては硫黄が用いられるが、硫黄は不導体で、電気化学反応で生成した電子の移動が難しいので、これを補完するために、伝導性物質である炭素と複合化した硫黄-炭素複合体が一般的に使われている。
【0006】
前記硫黄-炭素複合体は硫黄と炭素系物質を混合し、加熱して硫黄を溶融させることにより(Melt diffusion process)硫黄がコーティング、浸透などにより炭素系物質と結合させる方式で製造される。
【0007】
前記硫黄-炭素複合体が、リチウム-硫黄電池の正極活物質として優れた活性を示すためには、硫黄が炭素系物質の表面に薄く均一にコーティングされることが重要である。
【0008】
しかしながら、硫黄が炭素系物質の表面に薄く均一にコーティングされるようにするための再現性の高い硫黄-炭素複合体の製造方法は、まだ確立されていない実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0017796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、前記のような従来技術の課題を鋭意研究したところ、硫黄の溶融過程(Melt diffusion process)で特定の反応雰囲気を形成する場合、硫黄が炭素系物質の表面に薄く均一にコーティングされることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
したがって、本発明は、硫黄が炭素系物質の表面に薄く均一にコーティングされるようにすることができる硫黄-炭素複合体の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、前記方法により製造され、電池に向上した初期容量を提供することができる硫黄-炭素複合体、前記硫黄-炭素複合体を含む正極、及び前記正極を含むリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、
(a)炭素系物質を硫黄または硫黄化合物と混合する段階;
(b)前記(a)段階で混合された硫黄-炭素混合物と下記(c)段階で気化が可能な液体を密封容器に入れる段階;及び
(c)前記密封容器を120~200℃の温度で加熱する段階;を含む硫黄-炭素複合体の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、
前記方法により製造された硫黄-炭素複合体を提供する。
【0015】
また、本発明は、
前記硫黄-炭素複合体を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0016】
また、本発明は、
前記リチウム二次電池用正極;負極;分離膜;及び電解質;を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の硫黄-炭素複合体の製造方法によれば、簡単な方法により硫黄が炭素系物質の表面に薄く均一にコーティングされるようにすることができる効果を提供する。
【0018】
また、前記方法により製造された硫黄-炭素複合体及びそれを含む正極は、硫黄が炭素系物質の表面に薄く均一にコーティングされた複合体を含むことにより、それを含むリチウム二次電池が向上した初期容量を示すことができるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1及び実施例2で製造された硫黄-炭素複合体の構造をSEMで撮影して示したものである(試験例1)。
図2】本発明の実施例5及び比較例3で製造されたリチウム-硫黄電池の初期容量テストの結果を示したグラフである(試験例2)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように、本発明の実施例について添付した図面を参考にして詳細に説明する。しかし、本発明は、複数の異なる形態で具現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0021】
本発明は、
(a)炭素系物質を硫黄または硫黄化合物と混合する段階;
(b)前記(a)段階で混合された硫黄-炭素混合物と下記(c)段階で気化可能な液体を密封容器に入れる段階;及び
(c)前記密封容器を120~200℃の温度で加熱する段階;を含む硫黄-炭素複合体の製造方法に関する。
【0022】
以下で、各段階別に説明する。
【0023】
(a)段階
本発明において、前記(a)段階は、この分野において通常使用される方法と同一の方法で行われる。したがって、(a)段階は特に限定されず、この分野における公知の方法が制限なく採用されることができる。
【0024】
前記炭素系物質と硫黄または硫黄化合物は、1:1~1:9の重量比で混合されることが好ましい。もし、硫黄成分の含有量が前記範囲未満であれば正極活物質として用いるのに活物質の量が不足になり、炭素系物質が前記範囲未満であれば硫黄-炭素複合体の電気伝導度が十分でないので、前記範囲内で適切に調節する。
【0025】
前記炭素系物質と硫黄または硫黄化合物の混合は、例えば、ボールミルを用いて行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0026】
前記炭素系物質としては、絶縁体である硫黄に導電性を付与できるものが用いられる。具体的には、炭素ナノチューブ、グラフェン、黒鉛、非晶質炭素、カーボンブラック、及び活性炭などからなる群より選択される1種または2種以上の混合物を用いることができる。このうち、電気伝導度、比表面積及び硫黄担持量に優れる点で炭素ナノチューブ、黒鉛、及びカーボンブラックがより好ましい。
【0027】
前記炭素ナノチューブ(CNT)は、単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT)または多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT)であってもよい。前記CNTの直径は1~200nmであることが好ましく、1~100nmであることがより好ましく、1~50nmであることが最も好ましい。CNTの直径が200nmを超える場合、比表面積が小さくなり、電解液との反応面積が減る問題がある。
【0028】
前記黒鉛は、人造黒鉛及び天然黒鉛のうち一つ以上を用いることができる。天然黒鉛としては、鱗状(flake)黒鉛、高結晶性(high crystalline)黒鉛、微晶質(microcrystalline or cryptocrystalline;amorphous)黒鉛などがあり、人造黒鉛としては、一次(primary)あるいは電気黒鉛(electrographite)、二次(secondary)黒鉛、黒鉛繊維(graphite fiber)などがある。前記黒鉛粒子は、上述した黒鉛の種類を1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
前記黒鉛粒子は、充放電時にリチウムイオンを可逆的に吸蔵放出(intercalation)することができるものであれば、結晶構造が特に制限されない。例えば、前記の黒鉛粒子は、X線広角回折による面の面間隔が、例えば0.335nm以上0.337nm未満であってもよい。
【0030】
また、前記黒鉛粒子の大きさは、混合均一及び合剤密度の向上の側面を考慮して好ましく選択されることができる。例えば、前記黒鉛粒子の平均粒径は20μm以下であってもよく、具体的に、例えば、0.1~20μm以下であってもよく、より具体的に0.1~10μm、1~10μm、または1~5μmであってもよい。
【0031】
前記カーボンブラックは、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、オイル-ファーネスブラック、コロンビア炭素、チャンネルブラック、ランプブラック、サマーブラックからなる群より選択された一つ以上であってもよい。このようなカーボンブラックの粒度は制限されないが、平均粒径が0.01~0.5μmであることが、電解液との反応面積の確保側面で好ましい。
【0032】
前記硫黄または硫黄化合物としては公知の成分を用いることができ、硫黄としては無機硫黄または元素硫黄(elemental sulfur、S)が好ましく用いられる。
【0033】
(b)段階
前記(b)段階で密封容器は特に制限されず、この分野において公知となっているものをすべて採用することができる。例えば、加熱装置としてオーブンなどが密封された空間を提供することができる場合は、別の密封容器を使用することなくオーブンで行うこともできる。また、密封が可能な様々な素材、例えば、高分子、ステンレスなどで製造された密封容器を使用して行うこともできる。
【0034】
前記(c)段階で気化可能な液体は、硫黄-炭素混合物100重量部を基準として、10~300重量部で入れることが好ましい。上述の範囲未満で添加すると、目的とする効果を達成することが難しく、上述の範囲を超えて添加すると、硫黄-炭素複合体の他の物性に否定的な影響を与える可能性があるので、好ましくない。
【0035】
前記(c)段階で気化可能な液体としては、置換または非置換のテトラヒドロフラン、置換または非置換のアルコール、及び水などから選択される1種以上を用いることができる。
【0036】
前記置換または非置換のテトラヒドロフランとしては、2-メチルテトラヒドロフランなどが挙げられ、前記置換または非置換のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコールを用いることができる。これらの中でも、エタノールを好ましく用いることができる。
【0037】
(c)段階
前記(c)段階で密封容器を120~200℃の温度で加熱する時間は、10分~3時間であってもよく、好ましくは20分~1時間であってもよい。
【0038】
しかし、前記加熱温度及び加熱時間は、硫黄成分を溶融させて炭素系物質に均等にコーティングさせるためのものなので、このような目的を満たす場合には、特に制限されない。
【0039】
また、前記(c)段階で密封容器の加熱温度は120~200℃であってもよく、より好ましくは120~160℃であってもよい。
【0040】
前記において詳しく説明したように、本発明の硫黄-炭素複合体の製造方法は、従来の技術とは異なり、前記(c)段階で気化可能な液体を用いて硫黄成分の溶融雰囲気を変更すること以外は、この分野公知の方法を採用して行うことができる。
【0041】
前記の本発明の方法で製造された硫黄-炭素複合体は、硫黄成分が炭素材物質の表面により薄くコーティングされ、それにより、より優れた初期容量を提供する。
【0042】
また、本発明は、
前記本発明の方法により製造された硫黄-炭素複合体、前記硫黄-炭素複合体を含む正極に関する。
【0043】
前記硫黄-炭素複合体は、図1に示すように、従来の方法による硫黄-炭素複合体と異なる構造を形成する。また、硫黄成分が炭素材物質の表面により薄くコーティングされるので、それを含む電池がより優れた初期容量を示すことができるようにする。
前記正極の場合も同一の効果を提供する。
【0044】
また、本発明は、
前記硫黄-炭素複合体を含むリチウム二次電池用正極;負極;分離膜;及び電解質;を含むリチウム二次電池を提供する。
【0045】
本発明に係るリチウム二次電池は、正極及び負極とこれらの間に存在する電解質を含み、前記正極としては、本発明に係る硫黄-炭素複合体を含む正極を用いる。このとき、前記電池は、正極及び負極の間に介在される分離膜をさらに含むことができる。
【0046】
前記負極、分離膜及び電解質の構成は、本発明において特に限定せず、この分野において公知のところに従う。
【0047】
以下では、本発明のリチウム二次電池の一例として、リチウム-硫黄電池を中心に電池の各構成について詳細に説明する。
【0048】
<硫黄-炭素複合体>
硫黄-炭素複合体は、不導体である硫黄と電気伝導性を有する炭素系物質を含み、リチウム-硫黄電池用正極活物質として用いることができる。
【0049】
リチウム-硫黄電池は、放電時に硫黄系化合物の硫黄-硫黄結合(sulfur-sulfur bond)が切れ、Sの酸化数が減少し、充電時にS-S結合が再生成され、Sの酸化数が増加する酸化-還元反応を利用して電気的エネルギーを生成する。
【0050】
本発明の硫黄-炭素複合体の複合化方法は、本発明の技術的特徴に該当する硫黄と炭素系物質の複合化雰囲気を除いては、特に限定せず、当業界において通常使用される方法を用いることができる。一例として、炭素系物質と硫黄を単純混合した後、熱処理して複合化する方法を用いることができる。
【0051】
本発明において提示する硫黄-炭素複合体は、硫黄と炭素系物質が単純混合されて複合化されるか、又はコア-シェル構造のコーティング形態または担持形態を有してもよい。前記コア-シェル構造のコーティング形態は、硫黄または炭素系物質のいずれかが他の物質をコーティングしたもので、一例として、炭素系物質の表面を硫黄で包むか、またはこの反対になることがある。また、担持形態は、炭素系物質が多孔性であるとき、この内部に硫黄が担持された形態であってもよい。前記硫黄-炭素複合体の形態は、前記提示した硫黄と炭素系物質の含有量比を満足するものであればいずれの形態でも使用可能であり、本発明において限定しない。
【0052】
このような硫黄-炭素複合体の直径は、本発明において特に限定せず、多様であるが、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは1~10μmである。前記範囲を満たすとき、高ローティング電極を製造することができる利点がある。
【0053】
<正極>
前記リチウム-硫黄電池用正極は、集電体上に形成された活物質層を含み、前記活物質層は、本発明により製造された硫黄-炭素複合体、導電材、バインダー及びその他の添加剤を含む。
【0054】
前記電極集電体は、活物質で電気化学反応が起きるように電子を外部から伝達するか、または活物質から電子を受けて外部に流す通路の役割をするものであり、当該電池に化学的変化を誘発することなく、かつ導電性を有するものであれば特に制限されない。その例として、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを用いることができる。また、前記電極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態を用いることができる。
【0055】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、かつ導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラックなどのカーボンブラック;グラフェン(graphene);炭素ナノチューブ(CNT)、カーボンナノ繊維(CNF)などの炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などを用いることができる。
【0056】
前記バインダーは、活物質と導電材の結合、活物質と集電体の結合のために添加されるものであり、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂であってもよい。前記バインダーは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体などを単独又は混合して用いることができるが、必ずしもこれらに限定されず、当該技術分野においてバインダーとして用いることができるものであればいずれも可能である。
【0057】
本発明のリチウム-硫黄電池用正極は、従来の方法により製造されることができ、具体的には、活物質である本発明の硫黄-炭素複合体と導電材及びバインダーを有機溶媒上で混合し、製造した活物質層形成用組成物を集電体上に塗布及び乾燥し、選択的に電極密度の向上のために集電体に圧縮成形して製造することができる。このとき、前記有機溶媒としては、正極活物質、バインダー及び導電材を均一に分散させることができ、容易に蒸発されるものを用いることが好ましい。具体的には、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、水、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
【0058】
<負極>
本発明に係る負極は、負極集電体上に形成された負極活物質を含む。
【0059】
前記負極集電体は、具体的に銅、ステンレス鋼、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、これらの合金及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるものであってもよい。前記ステンレス鋼は、カーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理されることができ、前記合金としては、アルミニウム-カドミウム合金を用いることができる。その他にも、焼成炭素、導電材で表面処理された非伝導性高分子、または伝導性高分子などを用いてもよい。
【0060】
前記負極活物質としては、リチウムイオン(Li)を可逆的に吸蔵(intercalation)または放出(Deintercalation)することができる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を用いることができる。前記リチウムイオン(Li)を可逆的に吸蔵または放出することができる物質は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であってもよい。前記リチウムイオン(Li)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化スズ、チタンナイトレートまたはシリコンであってもよい。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及ぶスズ(Sn)からなる群より選択される金属の合金であってもよい。
【0061】
前記負極は、負極活物質と導電材の結合と集電体への結合のためにバインダーをさらに含むことができ、具体的に、前記バインダーは前記正極のバインダーにおいて説明したことと同一である。
【0062】
また、前記負極は、リチウム金属またはリチウム合金であってもよい。非限定的な例として、負極はリチウム金属の薄膜であってもよく、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Al及びSn群より選択される1種以上の金属との合金であってもよい。
【0063】
<分離膜>
正極と負極との間は、通常の分離膜が介在されることができる。前記分離膜は、電極を物理的に分離する機能を有する物理的な分離膜であって、通常の分離膜として用いられるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解液のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液含湿能力に優れるものが好ましい。
【0064】
また、前記分離膜は、正極と負極を互いに分離または絶縁させながら正極と負極との間にリチウムイオンの輸送を可能にする。このような分離膜は多孔性であり、非伝導性または絶縁性である物質からなってもよい。前記分離膜はフィルムのような独立した部材であるか、または正極及び/または負極に付加されたコーティング層であってもよい。
【0065】
具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独またはこれらを積層して用いることができ、または通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0066】
<電解質>
本発明に係る電解液はリチウム塩を含有する非水系電解液であって、リチウム塩と溶媒で構成されており、溶媒は、非水系有機溶媒であることができる。有機固体電解質及び無機固体電解質などが用いられる。
【0067】
前記リチウム塩は、非水系有機溶媒に容易に溶解することができる物質として、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiB(Ph)4、LiCBO、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl 、LiSOCH、LiSOCF、LiSCN、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(SOF)、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、リチウムイミドからなる群から一つ以上であってもよい。
【0068】
前記リチウム塩の濃度は、電解液混合物の正確な組成、塩の溶解度、溶解した塩の伝導性、電池の充電及び放電条件、作業温度及びリチウム-硫黄電池分野において公知の他の要因のような様々な要因に応じて、0.1~4.0M、好ましくは0.5~2.0Mであってもよい。もし、リチウム塩の濃度が前記範囲未満であれば、電解液の伝導度が低くなって電池の性能が低下することができ、前記範囲を超えると電解液の粘度が増加し、リチウムイオン(Li)の移動度が低下することができるので、前記範囲内で適正濃度を選択することが好ましい。
【0069】
前記非水系有機溶媒は、リチウム塩をよく溶解させることができる物質として、好ましくは、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1-エトキシ-2-メトキシエタン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキサン、ジエチルエーテル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒を用いることができ、これらのうち一つまたは2以上の混合溶媒の形態で用いることができる。
【0070】
前記有機固体電解質としては、好ましくは、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアルギン酸リシン、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などを用いることができる。
【0071】
本発明の無機固体電解質としては、好ましくは、LiN、LiI、LiNI、LiN-LiI-LiOH、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiPO-LiS-SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などを用いることができる。
【0072】
本発明のリチウム-硫黄電池用非水系電解液は、添加剤として硝酸や亜硝酸系化合物をさらに含むことができる。前記硝酸または亜硝酸系化合物は、リチウム電極に安定した被膜を形成し、充放電効率を向上させる効果がある。このような硝酸または亜硝酸系化合物としては、本発明において特に限定されないが、硝酸リチウム(LiNO)、硝酸カリウム(KNO)、硝酸セシウム(CsNO)、硝酸バリウム(Ba(NO)、硝酸アンモニウム(NHNO)、亜硝酸リチウム(LiNO)、亜硝酸カリウム(KNO)、亜硝酸セシウム(CsNO)、亜硝酸アンモニウム(NHNO)などの無機系硝酸または亜硝酸化合物;メチルニトレート、ジアルキルイミダゾリウムニトレート、グアニジンニトレート、イミダゾリウムニトレート、ピリジニウムニトレート、エチルニトラート、プロピルニトラート、ブチルニトラート、ペンチルニトラート、オクチルニトラートなどの有機系硝酸または亜硝酸化合物;ニトロメタン、ニトロプロパン、ニトロブタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロピリジン、ジニトロピリジン、ニトロトルエン、ジニトロトルエンなどの有機ニトロ化合物及びこれらの組み合わせからなる群より選択された1種が可能であり、好ましくは硝酸リチウムを用いる。
【0073】
また、前記非水系電解液は充放電特性、難燃性などの改善を目的として他の添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤の例としては、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、N-グライム(glyme)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウム、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、プロペンスルトン(PRS)、ビニレンカーボネート(VC)などが挙げられる。
【0074】
前記リチウム-硫黄電池に含まれる前記正極、負極及び分離膜は、それぞれ通常の成分と製造方法により準備することができ、また、リチウム-硫黄電池の外形は特に制限はないが、円筒形、角形、ポーチ(Pouch)形またはコイン(Coin)形などになってもよい。
【0075】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは通常の技術者にとって明らかであり、このような変形及び修正が添付された特許請求の範囲に属するのも当然である。
【0076】
<実施例1:硫黄-炭素複合体の製造>
炭素ナノチューブ3.5gを硫黄(S)1.5gと混合して密封容器に入れ、ここにエタノール(100%)3gをともに添加した。
【0077】
前記密封容器(ステンレス密閉容器)をオーブンに入れた後、155℃で30分間加熱して硫黄-炭素複合体を製造した。
【0078】
<実施例2:硫黄-炭素複合体の製造>
炭素ナノチューブ3.5gを硫黄(S)1.5gと混合して密封容器に入れ、ここに2-methyl tetrahydrofuran 3gをともに添加した。
【0079】
前記密封容器をオーブンに入れた後、155℃で30分間加熱して硫黄-炭素複合体を製造した。
【0080】
<実施例3:硫黄-炭素複合体の製造>
炭素ナノチューブ3gを硫黄(S)3.5gと混合して密封容器に入れ、ここに水3gをともに添加した。
【0081】
前記密封容器をオーブンに入れた後、155℃で30分間加熱して硫黄-炭素複合体を製造した。
【0082】
<比較例1:硫黄-炭素複合体の製造>
エタノールを添加しないことを除いては、前記実施例1と同様の方法で硫黄-炭素複合体を製造した
【0083】
<実施例4:リチウム-硫黄電池用正極の製造>
前記実施例1で製造された硫黄-炭素複合体88.0重量%、導電材5.0重量%、及びバインダー7.0重量%を蒸留水と混合し、活物質層形成用組成物を製造した。前記組成物をアルミ集電体上に6mg/cmでコーティングして通常の正極を製造した。
【0084】
<比較例2:リチウム-硫黄電池用正極の製造>
実施例1で製造された硫黄-炭素複合体の代わりに比較例1で製造された硫黄-炭素複合体を用いたことを除いては、前記実施例4と同様の方法でリチウム-硫黄電池用正極を製造した。
【0085】
<実施例5:リチウム-硫黄電池の製造>
前記実施例4で製造された正極とともに分離膜としてポリエチレンを用い、負極として150μm厚さを有するリチウム箔を用いてリチウム-硫黄電池コインセルを製造した。このとき、前記コインセルは、ジエチレングリコールジメチルエーテルと1,3-ジオキソラン(DEGDME:DOL=6:4(体積比)からなる有機溶媒に1MのLiFSIと1重量%のLiNOを溶解させて製造した電解液を用いた。
【0086】
<比較例3:リチウム-硫黄電池用正極の製造>
実施例3で製造された硫黄-炭素複合体の代わりに比較例2で製造された硫黄-炭素複合体を用いたことを除いては、前記実施例4と同様の方法でリチウム-硫黄電池を製造した。
【0087】
<試験例1:硫黄-炭素複合体の構造確認>
前記実施例1及び実施例2で製造された硫黄-炭素複合体の構造をSEMで撮影し、構造上が差異を確認した。前記撮影されたSEM写真は図1に示した。前記図1によれば、Sの溶解度が高い2-methyl tetrahydrofuranを用いる場合、S/C複合体の形状が変わることも確認される。
【0088】
<試験例2:リチウム-硫黄電池の初期容量テスト>
前記実施例5及び比較例3で製造されたコイルセルを充放電測定装置を用いて、1.8~2.5Vまでの容量を測定した。また、0.1C rate CC/CVで充填し、0.1C rate CCで順次放電するサイクルを行って、放電容量及びクーロン効率を測定した(CC:Constant Current、CV:Constant Voltage)。前記結果は、下記図2に示した。
【0089】
図2に示すように、実施例5のリチウム-硫黄電池は、比較例3のリチウム-硫黄電池と比較して、初期容量に優れることが確認された。
図1
図2