IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジタの特許一覧

<>
  • 特許-変位計測マーカー 図1
  • 特許-変位計測マーカー 図2
  • 特許-変位計測マーカー 図3
  • 特許-変位計測マーカー 図4
  • 特許-変位計測マーカー 図5
  • 特許-変位計測マーカー 図6
  • 特許-変位計測マーカー 図7
  • 特許-変位計測マーカー 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】変位計測マーカー
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/06 20060101AFI20220725BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
G01C15/06 T
G01B11/00 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021008577
(22)【出願日】2021-01-22
(62)【分割の表示】P 2018234486の分割
【原出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2021063842
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲沢 武志
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207280470(CN,U)
【文献】特開2007-322407(JP,A)
【文献】特開2012-173027(JP,A)
【文献】特開2015-197344(JP,A)
【文献】特開2017-106796(JP,A)
【文献】国際公開第2006/011386(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106546227(CN,A)
【文献】特開2017-227459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像画像に基づき変位が計測される変位計測マーカーであって、
変位計測パターンを有するマーカー部と、
発電部と、
を備え、
前記マーカー部は、筒状であり、
前記マーカー部には、通気孔が形成されており
前記発電部は、前記マーカー部の内部に収容されている
変位計測マーカー。
【請求項2】
請求項1に記載の変位計測マーカーにおいて、
前記発電部は、風を受けて回転する回転体を備えている、
変位計測マーカー。
【請求項3】
請求項2に記載の変位計測マーカーにおいて、
前記発電部は、サボニウス型である
変位計測マーカー。
【請求項4】
請求項2に記載の変位計測マーカーにおいて、
前記発電部は、前記回転体としてクロスフローファンを備えている
変位計測マーカー。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の変位計測マーカーにおいて、
前記回転体の直径は、前記マーカー部の直径と実質的に同じである
変速計測マーカー。
【請求項6】
請求項2または請求項3に記載の変位計測マーカーにおいて、
前記回転体の外径は、前記マーカー部の内径より小さい
変速計測マーカー。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の変位計測マーカーにおいて、
前記マーカー部を照明する照明部を備え、
前記発電部で生成された電力が、前記照明部に供給される、
変位計測マーカー。
【請求項8】
請求項に記載の変位計測マーカーにおいて、
前記照明部は、面発光部材を備えている、
変位計測マーカー。
【請求項9】
請求項に記載の変位計測マーカーにおいて、
前記マーカー部に前記面発光部材が設けられている、
変位計測マーカー。
【請求項10】
請求項に記載の変位計測マーカーにおいて、
前記面発光部材により、前記変位計測パターンが形成されている、
変位計測マーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位計測マーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば立坑工事等の工事現場には、地盤の変位を計測する変位計測装置が設置される。変位計測装置により地盤が監視され、土砂崩れ等の事故発生の兆候が早期に観測される。これにより、事故発生を未然に防止し、作業者の安全が確保される。
【0003】
例えば特許文献1には、軌道などの変位、或いは異常を安価な構成で、且つより正確に検出することのできる構造物の位置変動計測装置が開示されている。具体的に述べると、位置変動計測装置は、撮像された測定マーカーの画像から得られたターゲット画像のターゲット内の輝度値を重さに割り当て、そのターゲット画像の輝度についての重心位置を算出する。そして、位置変動計測装置は、ターゲット画像内の輝度値を複数の領域別に積算し、領域別の輝度積算値を、基準となる輝度積算値と比較し、外乱光等の異常を検出することにより構造物の変位測定を行う。
【0004】
測定マーカーは、構造物だけでなく地盤に設けられてもよく、測定マーカーにより地盤の変位が計測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-036979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、強風が吹きつける環境下では、風圧により変位計測マーカーの位置がずれたり、振動が発生する場合がある。さらには、変位計測マーカーが破損に至ることも想定される。そうすると、変位の計測精度が低下するだけでなく、継続した変位計測を行うこと自体が困難となるおそれがある。特に、山岳地帯等、自由に行き来することが困難な場所で変位計測を行う場合には、これらの影響を大きく受けてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、強風の影響を低減させた変位計測マーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0009】
本発明の代表的な実施の形態による変位計測マーカーは、撮像画像に基づき変位が計測され、変位計測パターンを有するマーカー部を備えている。マーカー部には、通気孔が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。本発明の代表的な実施の形態によれば、強風の影響を低減させた変位計測マーカーを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係る変位計測システムの構成の一例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る変位計測マーカーの構成の一例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る変位計測マーカーの構成の一例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る変位計測方法の一例を示すフローチャート図である。
図5】本発明の実施の形態2に係る変位計測システムの構成の一例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態2に係る変位計測マーカー及びその周辺の構成の一例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態2に係る変位計測マーカーの構成の一例を示す図である。
図8】本発明の実施の形態2に係る変位計測マーカーの構成の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまでも一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0013】
また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0014】
<変位計測システム>
図1は、本発明の実施の形態1に係る変位計測システムの構成の一例を示す図である。図1に示すように、変位計測システム1は、変位計測装置5、変位計測マーカー50等を備えている。変位計測装置5は、撮像部10において生成される撮像画像に基づいて変位計測マーカー50の変位を計測する装置である。
【0015】
<変位計測装置>
変位計測装置5は、撮像部10において生成される撮像画像に基づいて変位計測マーカー50の変位を計測する装置である。また、変位計測装置5は、変位計測マーカー50の変位から地盤や建造物等の変位を計測する。
【0016】
〈撮像部〉
図1に示すように、変位計測装置5は、撮像部10及び変位計測部20を備えている。撮像部10は、変位計測マーカーが設けられた変位計測領域を撮像し、撮像画像を生成する機能ブロックである。なお、以下では、撮像画像を撮像画像データと呼ぶ場合もある。撮像部10は、レンズ11、イメージセンサ12、演算部13、データ格納部14、通信インタフェース15を備えている。例えば、イメージセンサ12、演算部13、データ格納部14、通信インタフェース15等は、内部バスに接続されてもよいし、個別の配線により互いに接続されてもよい。
【0017】
撮像部10は、地盤等に予め設定された撮像領域100にレンズ11が向けられるように固定される。その際、撮像部10は、変位計測を行っている期間、アングルや位置が変わらないように所定箇所に確実に固定されることが好ましい。撮像領域100は、地盤や構造物等に設定される。撮像領域100には、変位計測マーカー50が設けられている。
【0018】
レンズ11は、撮像領域100から届いた光をイメージセンサ12へ集光させる。イメージセンサ12は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)素子がアレイ状に配置されたCMOSイメージセンサや、CCD(Charge Coupled Device)素子がアレイ状に配置されたCCDイメージセンサ等で構成される。イメージセンサ12の各素子は、レンズ11で集光された光の光量に応じた電気信号を生成する。イメージセンサ12は、各素子で生成された電気信号を演算部13へ出力する。
【0019】
演算部13は、イメージセンサ12で生成された電気信号に基づき撮像画像データのファイルを生成する。なお、撮像画像データのファイルには、撮像時刻の情報が付加されてもよい。演算部13は、撮像画像に撮像時刻を合成した画像に基づく撮像画像データを生成してもよい。また、演算部13は、撮像部10の各部の動作を制御する。
【0020】
演算部13は、例えばマイコン13a及びRAM(Random Access Memory)13bを備えている。RAM13bには、例えば、データ格納部14から読み出されたプログラムが展開され、展開されたプログラムがマイコン13aで実行されることにより、撮像画像データの生成機能が実現され、撮像部10の各部が制御される。
【0021】
データ格納部14は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを備え、演算部13で生成された撮像画像データ、変位計測マーカーまでの距離情報、プログラム、各種設定情報等を格納する。なお、撮像画像データや距離情報は、後述する変位計測部20のデータ格納部23に格納されてもよい。
【0022】
通信インタフェース15は、変位計測部20の通信インタフェース21との間でデータの送受信を行う。撮像部10から、通信インタフェース15,21を介して、撮像画像データや変位計測部20への制御信号等のデータが送信される。一方、変位計測部20から、通信インタフェース21,15を介して、撮像部10への制御信号等のデータが送信される。通信インタフェース15及び通信インタフェース21は、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。また、通信インタフェース15及び通信インタフェース21は、内部ネットワーク、インターネット等の外部ネットワークを介してデータの送受信を行ってもよい。
【0023】
〈変位計測部〉
変位計測部20は、撮像部10で生成された撮像画像データに基づき、変位計測マーカーの変位を計測し、変位計測領域すなわち地盤や構造物等の変位を計測する機能ブロックである。変位計測部20は、図1に示すように、通信インタフェース21、演算部22、データ格納部23を備えている。これらは、内部バスに接続されてもよいし、個別の配線により互いに接続されてもよい。
【0024】
演算部22は、撮像画像データに対する画像処理を行い、地盤や構造物等の変位を計測する。演算部22は、例えばマイコン22a及びRAM22bを備えている。RAM22bには、例えばデータ格納部23から読み出されたプログラムが展開され、展開されたプログラムがマイコン22aで実行されることにより、画像処理や、変位計測部20の各部の制御が実行される。なお、変位計測方法については、後で詳しく説明する。
【0025】
データ格納部23は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを備え、演算部22における変位計測結果、プログラム、各種設定情報等の各データを格納する。また、データ格納部23は、撮像部10から送信された撮像画像データを格納してもよい。
【0026】
図1では、撮像部10及び変位計測部20が別体で構成されているが、これらが一体で構成されてもよい。この場合、例えば、演算部13,22が統合されてもよいし、データ格納部14,23が統合されてもよい。また、この場合には、通信インタフェース15,21は省略されてもよい。
【0027】
〈変位計測マーカー〉
図2,3は、本発明の実施の形態1に係る変位計測マーカーの構成の一例を示す図である。図2には、マーカー部の概略的な構成が模式的に示されている。図3には、マーカー部に設けられる変位計測パターンの一例が示されている。変位計測マーカー50は、図2,3に示すマーカー部や図示しない支持部等を備えている。
【0028】
マーカー部51は、変位計測に際し、撮像部10により撮像される箇所である。マーカー部51の素材には、例えば、アクリル等の樹脂が用いられる。また、マーカー部51の素材として、耐腐食性を備えた金属が用いられてもよい。マーカー部51は、例えば図3のような変位計測パターン51aを有している。変位計測パターンは、この構成に限定されるものではない。変位計測マーカー50は、マーカー部51の変位計測パターン51aが撮像部10の方向に向くよう、撮像領域100内に配置される。
【0029】
マーカー部51は、例えば中空の円筒状である。マーカー部51は、例えば図2に示すように、開口部51cが鉛直方向(Z方向)を向くように、起立した状態で設置される。その際、マーカー部51は、下方の開口部51cが地面から浮いた状態で配置されることが好ましい。マーカー部51には、通気孔51dが形成されている。具体的に述べると、図2のように、マーカー部51は、複数の通気孔51dが形成されたメッシュ状に構成される。
【0030】
一方の開口部51cからマーカー部51の内部へ吹き込んだ風は、他方の開口部51cや通気孔51dを介してマーカー部51の外部へ抜けてゆく。また、通気孔51dからマーカー部51の内部へ吹き込んだ風は、開口部51cや他の通気孔51dを介してマーカー部51の外部へ抜けてゆく。これにより、マーカー部51に掛かる風圧が低減する。
【0031】
マーカー部51の形状は、図2のような円筒状に限定されるものではなく、その他の筒状であってもよい。また、風圧の影響が抑えられるのであれば、マーカー部51の形状は、平板状等であっても構わない。また、図2では、複数の通気孔51dが形成されたメッシュ状のマーカー部51が示されているが、このような構成に限定されるものではない。例えば、マーカー部51は、一部が大きく切り抜かれた構成であってもよい。この切り抜かれた箇所が通気孔51dとなり、風が外部へ抜けてゆく。また、変位計測パターン51aに沿って、通気孔が形成されてもよい。図3を例にすると、黒地の部分や白地の部分を切り取ることで通気孔が形成される。これにより、変位計測パターン51aにおいても風を逃がすことが可能となる。
【0032】
また、筒状であれば、その形状だけで風圧を分散させることが可能な場合も想定され、その場合には、マーカー部51に、通気孔51dが設けられていなくてもよい。この場合、一方の開口部51cから吹き込んだ風は、他方の開口部51cから抜けてゆくこととなる。また、マーカー部51は、開口部が横方向(X-Y方向)を向くように配置されてもよい。
【0033】
<変位計測方法>
次に、図1の変位計測システムにおける変位計測方法について説明する。図4は、本発明の実施の形態1に係る変位計測方法の一例を示すフローチャート図である。変位計測には、図4に示すステップS11~S13の処理が実行される。なお、ステップS11の処理に先立ち、撮像部10の設置やレンズ11の位置決め等が行われているものとする。また、レンズ11の位置決めが行われたのち、予め撮像領域100の撮像が行われ、変位計測点51bの設定、及び変位計測点51bの位置(変位計測マーカー50の初期位置)の計測が行われているものとする。ここで計測される変位計測マーカー50の初期位置は、例えば撮像画像における位置である。なお、図3には、変位計測パターン51a右下部の所定位置に変位計測点51bが設定された例が示されているが、これ以外の場所に変位計測点51bが設定されてもよい。
【0034】
ステップS11では、撮像部10が、変位計測マーカー50を含む撮像領域100を撮像し、位置計測用の撮像画像データを生成する。撮像部10は、生成した撮像画像データを変位計測部20へ送信する。撮像画像データは、変位計測部20のデータ格納部23や、撮像部10のデータ格納部14に格納される。また、撮像画像データは、図示しない外部のストレージ等に格納されてもよい。
【0035】
ステップS12では、演算部22は、撮像画像データに対する画像処理を行い、地盤や構造物に設けられた変位計測マーカー50を抽出する。そして、演算部22は、例えば変位計測パターン51aに設定された所定の変位計測点51bを抽出し、撮像画像における変位計測点51bの位置を変位計測マーカー50の位置として計測する。ここで計測される変位計測マーカー50の位置は、撮像画像における位置であって、ピクセル単位で得られる値である。演算部22は、計測した変位計測マーカー50の位置を、RAM22bに保持するか、データ格納部23へ格納する。その際、演算部22は、計測した変位計測マーカー50の位置(計測位置とも呼ぶ)を、撮像時刻と対応付けてもよい。
【0036】
ステップS13では、演算部22は、変位計測マーカー50の変位を計測する。演算部22は、予め計測された変位計測マーカー50の初期位置、及びステップS12において計測された変位計測マーカー50の計測位置に基づき、撮像画像における変位計測マーカー50の変位を計測する。演算部22は、水平方向及び垂直方向のそれぞれについて、変位計測マーカー50の計測位置と初期位置との差分を算出する。これにより、演算部22は、方向ごとに変位計測マーカー50の変位を計測する。また、演算部22は、計測位置と初期位置と間の距離を算出することにより、変位計測マーカー50の変位を計測してもよい。また、演算部22は、例えば、データ格納部14等に格納された変位計測マーカーまでの距離情報を用いて、撮像画像における変位計測マーカー50の変位を実際の変位に変換してもよい。変位計測は、任意のタイミングで実行されてもよいし、所定の間隔で実行されてもよい。
【0037】
演算部22は、計測した変位計測マーカー50の変位をデータ格納部23等に格納してもよいし、図示しない外部装置へ出力してもよい。変位計測マーカー50の変位についても、撮像時刻と対応付けて格納されてもよい。
【0038】
<本実施の形態による主な効果>
本実施の形態によれば、マーカー部51には通気孔51dが形成されている。この構成によれば、通気孔51dが、マーカー部51を吹き付ける風を通過させることができるので、強風の影響を抑えることが可能となる。これにより、強風時においても、変位計測マーカー50の位置ずれや振動が抑えられ、変位の測定精度の低下が抑えられる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、マーカー部51は、複数の通気孔51dが形成されたメッシュ状である。この構成によれば、風を通過させやすくなるとともに、1の通気孔51dを通過した風を他の通気孔51dを介して外部へ逃がしやすくなる。これにより、強風の影響をより低減させることが可能となる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、マーカー部51は筒状である。この構成によれば、開口部51cを介して風を逃がすことが可能となり、強風の影響を低減させることが可能となる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、マーカー部51は円筒状である。この構成によれば、マーカー部51に掛かる風圧を均等に分散させることが可能となる。これにより、強風の影響がより抑えられる、強風の影響がより一層抑えられる。
【0042】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。なお、以下では、前述の実施の形態と重複する箇所については、原則として説明を省略する。実施の形態2では、発電部や照明部を備えた変位計測マーカーについて説明する。
【0043】
<変位計測装置>
図5は、本発明の実施の形態2に係る変位計測システムの構成の一例を示す図である。図5の変位計測装置5は、図1に示す撮像部10及び変位計測部20に加え、光センサー30を備えている。
【0044】
〈光センサー〉
光センサー30は、変位計測マーカー50付近の光量を測定するセンサーである。図5に示すように、光センサー30は、受光部31、コントローラ32、通信インタフェース33を備えている。受光部31は、例えばフォトダイオード等、受光した光を電気信号に変換する素子からなる。受光部31は、受光した光の光量(測定光量)に応じた電気信号を測定光量データとしてコントローラ32へ出力する。コントローラ32は、通信インタフェース33を介して、受光部31から出力された測定光量データを撮像部10や変位計測部20へ送信する。コントローラ32は、これ以外にも、光センサー30の各部の制御を行う。また、コントローラ32は、測定光量データを変位計測マーカー50へ送信してもよい。
【0045】
通信インタフェース33は、有線又は無線により通信インタフェース15,21等と接続されている。光センサー30は、通信インタフェース33を介して、撮像部10及び変位計測部20との間で光量データ等の各種データの送受信を行う。また、光センサー30は、撮像部10又は変位計測部20から光量測定開始や光量測定終了等、光センサー30の動作に関わる制御信号を受信する。なお、通信インタフェース33は、変位計測マーカー50と有線又は無線で接続され、変位計測マーカー50との間で光量データ等のデータの送受信を行ってもよい。
【0046】
なお、光センサー30は、変位計測装置5に含まれてもよいし、変位計測装置5とは別体で設けられてもよい。また、撮像部10に光センサー30が実装されても構わない。
【0047】
〈変位計測マーカー〉
図6は、本発明の実施の形態2に係る変位計測マーカー及びその周辺の構成の一例を示す図である。図7は、本発明の実施の形態2に係る変位計測マーカーの構成の一例を示す図である。図6には、照明部53及び発電部57を含む、接続関係が示されている。図7には、照明部53及び発電部57を含むマーカー部51付近の具体的な構成が示されている。なお、図7では、マーカー部51の詳細な構成については省略しているが、すでに述べたように、マーカー部51には、通気孔51dが形成されている。
【0048】
図6に示す変位計測マーカー50は、マーカー部51、照明部53、コントローラ55、及び発電部57を備えている。照明部53は、マーカー部51を照明する機能ブロックである。照明部53は、コントローラ55から出力される信号に基づいてマーカー部51への照明のオン・オフを切り換える。照明部53は、マーカー部51に対して撮像部10とは反対側に配置され、裏側からマーカー部51を照明する。例えば、照明部53は、円筒状のマーカー部51の内部に設置される。照明部53は、マーカー部51のバックライトとして機能する。なお、照明部53は、マーカー部51に対して撮像部10側に配置されてもよいが、照明によるハレーションを起こさないよう、照射光の光量は適切な値に調整される。照明部53の構成は特に限定されるものではなく、例えば、複数の点光源がマーカー部51の全面を照明するようにそれぞれ別体で配置されてもよいし、光源がアレイ状に配置された面発光部材を備えてもよい。
【0049】
面発光部材には、例えば、有機ELパネルやLEDシート等の消費電力が低いもの、発光塗料が塗布された発光シート等が用いられる。なお、面発光部材は、表面における反射を低減させる素材で構成されることが好ましい。変位計測パターン51aは、面発光部材に直接印刷されてもよいし、別のパネルに印刷されてもよい。
【0050】
コントローラ55は、照明部53の動作を制御する。例えば、コントローラ55は、照明をオンする信号を照明部53へ出力し、所定のタイミングで照明部53に照明を行わせる。このタイミングは、例えば、光センサー30により測定される変位計測マーカー50付近の光量に基づいて規定される。
【0051】
具体的に述べると、コントローラ55は、測定光量と所定の照明基準光量とを比較し、測定光量が照明基準光量以下になると、照明をオンする信号を照明部53へ出力する。また、照明がオンした状態で、測定光量が照明基準光量より大きくなると、コントローラ55は、照明をオフする信号を照明部53へ出力する。
【0052】
あるいは、コントローラ55は、時刻に基づき照明部53の制御を行ってもよい。具体的に述べると、コントローラ55は、所定の照明開始時刻になると、照明をオンする信号を照明部53へ出力する。そして、コントローラ55は、所定の照明終了時刻になると、照明をオフする信号を照明部53へ出力する。照明のオン・オフに関わる各種処理は、変位計測部20の演算部22において行われてもよい。また、演算部22及びコントローラ55が連携してこれらの処理を行ってもよい。
【0053】
発電部57は、電力を生成する機能ブロックである。発電部57で生成された電力は、バッテリー59に蓄電されてもよいし、照明部53やコントローラ55へ直接供給されてもよい。また、発電部57で生成された電力は、変位計測装置5へ供給されてもよい。発電部57は、例えば、風力を電力に変換する風力を行う。発電部57は、例えば、サボニウム型でもよいし、クロスフローファンを備えた構成でもよい。
【0054】
発電部57は、風を受けて回転する回転体57aを備えている。回転体57aは、円筒状である。回転体57aは、図示しないエネルギー変換部と接続され、エネルギー変換部において回転エネルギーが電力に変換される。なお、マーカー部51は、回転しないように構成されることが好ましい。なぜなら、マーカー部51が回転すると、変位計測パターン51aの位置が測定ごとに異なり、変位の計測精度が低下するおそれがあるからである。
【0055】
発電部57は、例えば図7に示すように、マーカー部51の上方に設置される。この場合、回転体57aの直径は、マーカー部51の直径とおおよそ同じに設定される。これによりマーカー部51と発電部57との境界が滑らかになり、乱流の発生が抑えられる。これにより、発電部57を設けたことに起因する振動の発生が抑えられる。
【0056】
図8は、本発明の実施の形態2に係る変位計測マーカーの構成の他の例を示す図である。図8(a)は、マーカー部と発電部との位置関係を示す斜視図、図8(b)は、マーカー部、照明部、及び発電部の位置関係を示す平面図である。なお、図8においても、マーカー部51の詳細な構成については省略しているが、すでに述べたように、マーカー部51には、通気孔51dが形成されている。図8(a)に示すように、発電部57は、マーカー部51の内部に収容されている。この場合、回転体57aの外径は、マーカー部51の内径より小さくなるよう設定される。図8(b)に示すように、照明部53は、例えば、マーカー部51と発電部57の間の空間に配置される。これにより、発電部57用のスペースを別途設ける必要がなくなる。
【0057】
バッテリー59は、電力を充電し、充電した電力を照明部53やコントローラ55へ供給する。バッテリー59は、例えば、発電部57で生成された電力を充電してもよいし、一般の電源を充電してもよい。発電部57で生成された電力を照明部53やコントローラ55へ供給するか、バッテリー59へ充電するかの選択を、コントローラ55が行ってもよい。
【0058】
<夜間等における変位計測>
次に、夜間等の暗い環境下における変位計測について説明する。例えば、光センサー30が測定した変位計測マーカー50付近の光量が所定の照明基準光量以下になると、照明部53は、マーカー部51への照明を開始する。照明部53は、照明をオフする信号を受けるまで、マーカー部51への照明を継続する。撮像部10は、照明期間中にマーカー部51の撮像を行い、変位計測マーカー50の変位が計測される。その他の処理については、すでに述べたものと同様である。
【0059】
また、照明部53は、所定のタイミングで、マーカー部51への照明のオン・オフを切り換えてもよい。このタイミングに関する情報は、予めデータ格納部14,23に格納されてもよいし、外部装置から受信してもよい。このタイミングは、例えば、日の出時刻や日没時刻等を考慮して設定される。また、悪天候時には、昼間でも十分な光量が得られない場合もあり得るので、照明のオン・オフのタイミングは、その都度設定されてもよい。
【0060】
また、照明部53は、撮像部10と連携し、撮像を行うタイミングに合わせてマーカー部51に対する照明を行い、撮像終了後、照明をオフしてもよい。
【0061】
<本実施の形態による主な効果>
本実施の形態によれば、変位計測マーカー50は、風力から電力を生成する発電部57を備えている。本実施の形態によれば、発電部57で生成された電力は、バッテリー59に蓄電される。本実施の形態によれば、発電部57は、風を受けて回転する回転体57aを備えている。
【0062】
この構成によれば、照明部53やコントローラ55への電源を確保することが可能となる。また、発電部57で生成された電力がバッテリー59に蓄電され、必要に応じてバッテリー59から電力が供給される。また、この構成によれば、例えば、通常は人が立ち入らない山岳地帯等の自由に行き来することが困難な場所に変位計測マーカー50を設置し、長期間放置した状態で継続して変位計測を行うことが可能となる。また、変位計測装置5に用いる電源を照明用に用いる必要がなくなる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、回転体57aは円筒状である。この構成によれば、回転体57aの回転に伴う振動が抑えられる。また、本実施の形態によれば、発電部57は、マーカー部51の内部に収容されている。この構成によれば、発電部57用のスペースを別途設ける必要がなく、設置面積の増大が抑えられる。
【0064】
また、本実施の形態によれば、変位計測マーカー50に照明部53が設けられている。この構成によれば、光量が不足する暗い環境下では、照明部53がマーカー部51を照明する。これにより、夜間等の暗い環境下における変位計測マーカー50の視認性が向上し、昼夜における変位計測精度のばらつきが抑えられる。また、これにより、変位計測マーカー50周辺の光量や時刻に関わらず、地盤等の常時観測が可能となる。また、撮像領域100の撮像から変位計測まで自動的に実行されるので、監視員を置く必要がなくなる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、照明部53は、面発光部材を備えている。この構成によれば、マーカー部51を均一に照明することができ、変位計測点51bの場所ごとの高度のばらつきが抑えられる。
【0066】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。実施の形態3では、照明部53がマーカー部51に設けられる。例えば、照明部53を構成する面発光部材がマーカー部51に配置される。具体的に述べると、面発光部材により、変位計測パターン51aが形成されている。変位計測パターン51aは、図3に示す構成でもよいし、簡略化された構成でもよい。
【0067】
したがって、本実施の形態では、面発光部材が変位計測パターン51aとして機能する。夜間等の暗い環境下において、面発光部材は、マーカー部51に対してではなく、撮像部10へ向けて照明する。撮像部10は、面発光部材の照明により浮かびあがる変位計測パターンを撮像する。このパターンにより、変位計測点が抽出され、変位が計測される。
【0068】
本実施の形態によれば、マーカー部51に面発光部材が設けられている。この構成によれば、夜間等の暗い環境下では、面発光部材の照明により変位計測パターン、及び変位計測点を抽出することが可能となる。
【0069】
なお、本実施の形態では、面発光部材により変位計測パターンが形成される。この構成によれば、明るい時間帯においても面発光部材の形状を基に変位計測パターン、及び変位計測点の抽出、変位計測が行われる。
【0070】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…変位計測システム、5…変位計測装置、10…撮像部、20…変位計測部、30…光センサー、50…変位計測マーカー、51…マーカー部、51a…変位計測パターン、51b…変位計測点、51c…開口部、51d…通気孔、53…照明部、57…発電部、57a…回転体、100…撮像領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8