(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】ガスバリアー層を含む成形体、これを含む包装容器および成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/32 20060101AFI20220725BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220725BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220725BHJP
B65D 1/34 20060101ALI20220725BHJP
B29C 51/08 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
B32B5/32
B32B27/00 B
B32B27/36
B65D1/34
B29C51/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021019866
(22)【出願日】2021-02-10
(62)【分割の表示】P 2019517938の分割
【原出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0074664
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519112232
【氏名又は名称】フュービス・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HUVIS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】チェ・ジョンハン
(72)【発明者】
【氏名】ハム・ジンス
(72)【発明者】
【氏名】イ・グァンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ホ・ミ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ウジン
(72)【発明者】
【氏名】ハ・サンフン
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0003378(US,A1)
【文献】特開平07-009547(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062623(WO,A1)
【文献】特開2000-109042(JP,A)
【文献】特開平10-180952(JP,A)
【文献】特開平03-111244(JP,A)
【文献】特開2001-063749(JP,A)
【文献】登録実用新案第3216770(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0073827(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1723815(KR,B1)
【文献】特開2000-343665(JP,A)
【文献】特開2002-067212(JP,A)
【文献】特開平05-130829(JP,A)
【文献】特開2010-241475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 5/32
B32B 27/00
B32B 27/36
B65D 1/34
B29C 51/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1発泡シート、ガスバリアー層および第2発泡シートが順に積層された構造であり、
前記第1発泡シートおよび第2発泡シートはポリエステル樹脂の発泡体であり、
前記第1発泡シートおよび第2発泡シートの平均厚さはそれぞれ0.5~1.5mmであることを特徴とする、成形体。
【請求項2】
下記の数学式1を満足することを特徴とする、請求項1に記載の成形体:
[数学式1]
H/D≧0.01
数学式1において、
収容部および開口部を含む容器構造の成形体を形成するものの、
Hは収容部の深さを示し、1cm~10cmであり、
Dは開口部の直径を示したものである。
【請求項3】
ASTM F 1249による水蒸気透過度が37℃、100%の相対湿度条件下で、50g/m
2・day以下であり、
ASTM
D 3985による酸素透過度が23℃の条件下で、20cc/m
2・day以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の成形体。
【請求項4】
ガスバリアー層の平均厚さは0.01~2mmであり、成形体の平均厚さは1mm~5mm範囲であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の成形体。
【請求項5】
ガスバリアー層は、エチレンビニルアルコール、ポリビニリデンクロライドおよびポリエチレンテレフタレートのうち1種以上を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の成形体。
【請求項6】
ガスバリアー層の融点(T
m)は、平均150℃~190℃であり、
第1および第2発泡シートの融点(T
m)は、平均240℃~260℃であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の成形体。
【請求項7】
ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)樹脂であることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の成形体。
【請求項8】
第1および第2発泡シートはそれぞれ0.5~9.0重量%の炭酸カルシウムを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の成形体。
【請求項9】
下記の数学式2を満足することを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の成形体:
[数学式2]
|T
2-T
1|≧10℃
前記数学式2において、
T
1は20℃、1atm条件で、成形体に100℃の水を入れて1分経過したときに測定した成形体の外側の表面温度であり、
T
2は20℃、1atm条件で、成形体に100℃の水を入れて1分経過したときに測定した成形体の内部の水の温度である。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載された成形体を含む、包装容器。
【請求項11】
包装容器は食品包装容器であることを特徴とする、請求項10に記載の包装容器。
【請求項12】
第1発泡シート、ガスバリアー層および第2発泡シートが順に積層された構造のシートを、成形装置の雌型金型と雄型金型の間に配置させる段階;および
雄型金型を加圧して成形体を成形する段階;を含み、
前記第1発泡シートおよび第2発泡シートはポリエステル樹脂の発泡体であり、
前記第1発泡シートおよび第2発泡シートの平均厚さはそれぞれ0.5~1.5mmであることを特徴とする、成形体の製造方法。
【請求項13】
成形する段階は、シートの表面温度が140~160℃となるように熱を印加し、前記雌型金型および雄型金型の表面温度を60~200℃に設定して成形体を成形することを特徴とする、請求項12に記載の成形体の製造方法。
【請求項14】
雌型金型は、一側に内部空間を減圧する減圧ホールが形成された構造であることを特徴とする、請求項12または13に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスバリアー層を含む成形体、これを含む包装容器および成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の食品包装容器として使われている製品は発泡式と非発泡式に分かれる。発泡式の食品包装容器はポリスチレンを発泡ガスと混合させて押出させた製品が使われているが、これは厚さを比較的厚く維持することができるため形態の維持、断熱性、価格競争力が高い長所がある。その反面、このような発泡式製品は高温で有害物質が検出される短所がある。
【0003】
非発泡式の食品包装容器の場合、熱に安定したポリプロピレンをフィルム形態に製作した製品が使われている。一方、このような非発泡式の食品包装容器は高温で形態の変化率が小さく、有害物質が検出されない長所がある。しかし、値段が高く断熱が悪い短所がある。
【0004】
一方、現代社会において、次第に生活が便利になるにつれて使い捨て用品の使用が増加し、単身世帯の増加による出前料理および簡便料理製品の需要が次第に増えている。これに伴い、食品包装容器の需要も増加していて、有害物質から安全かつ用途による機能が付与された新しい容器の素材に対する消費者のニーズがますます大きくなってきている。
【0005】
これと関連して、食品包装容器関連業者では便利さ、安全性、環境に優しい性能および価格競争力をすべて備えた食品包装容器を製造するために多くの努力がなされている。
【0006】
その例として、環境に優しい耐熱材およびこれを含む包装容器(大韓民国登録特許第10-1778629号)に対する技術が提案されてある。具体的には、前記登録特許にはポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate、PET)発泡体の少なくとも一面にエチレンビニルアルコール(ethylene vinyl alcohol、EVOH)ガスバリアー層を含む2層構造の耐熱材を有する包装容器が開示されている。
【0007】
しかし、前記エチレンビニルアルコールはバリアー性は優秀であるものの、ポリエチレンテレフタレートとの融点差が大きいため成形が難しい短所がある。具体的には、ポリエチレンテレフタレートの耐熱性を向上させるために高温の熱処理が必要であるが、このような場合、前記エチレンビニルアルコールが融解して食品包装容器の全体面積にガスバリアー層を形成できないなど、食品包装容器の構成状態が不良となる問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前述した問題点を解決するためのものであって、容器の成形時にガスバリアー層の損傷を防止できる成形体、これを含む包装容器およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1発泡シート、ガスバリアー層および第2発泡シートが順次積層された構造であり、下記の数学式1を満足する成形体であって、前記第1発泡シートおよび第2発泡シートはポリエステル樹脂の発泡体であり、前記成形体の平均厚さは1~5mm範囲であり、ASTM D 3985による酸素透過度が23℃の条件下で、20cc/m2・day以下であることを特徴とする成形体を提供する:
【0010】
[数学式1]
H/D≧0.01
【0011】
数学式1において、収容部および開口部を含む容器構造の成形体を形成するものの、Hは収容部の深さを示し、1~10cmであり、Dは開口部の直径を示したものである。
【0012】
また、本発明は前記成形体を含む包装容器を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、第1発泡シート、ガスバリアー層および第2発泡シートが順次積層された構造のシートを、成形装置の雌型金型と雄型金型の間に配置させる段階;および雄型金型を加圧して成形体を成形する段階;を含み、前記第1発泡シートおよび第2発泡シートはポリエステル樹脂の発泡体であることを特徴とする成形体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る成形体は、ガスバリアー層の両面にそれぞれ第1および第2発泡シートを含むことによって、酸素および水分透過度を最小化することができる。併せて、前記成形体を食品包装容器に使う場合、酸素および水分による食品の腐敗などを防止するため食品の保存が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明に係る成形体の製造方法を順に図示した図面。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明はガスバリアー層を含む成形体、これを含む包装容器および成形体の製造方法に関するものである。特に、本発明に係る成形体はガスバリアー層の両面に第1および第2発泡シートを含むことによって、酸素および水分透過度を最小化することができる。併せて、前記成形体を食品包装容器に使う場合、酸素および水分による食品の腐敗などを防止するため食品の保存が容易である。
【0017】
図1は本発明に係る成形体の断面図、
図2は本発明に係る成形体の製造方法を順に図示した図面である。以下、
図1および
図2を参照して、本発明に係る成形体について詳細に説明する。
【0018】
本発明は、第1発泡シート101、ガスバリアー層102および第2発泡シート101’が順次積層された構造であり、下記の数学式1を満足する成形体10であって、前記第1発泡シート101および第2発泡シート101’はポリエステル樹脂の発泡体であり、前記成形体10の平均厚さは1mm~5mm範囲であり、ASTM D 3985による酸素透過度が23℃の条件下で、20cc/m2・day以下であることを特徴とする成形体を提供する:
【0019】
[数学式1]
H/D≧0.01
【0020】
数学式1において、収容部および開口部を含む容器構造の成形体を形成するものの、Hは収容部の深さを示し、1cm~10cmであり、Dは開口部の直径を示したものである。
【0021】
具体的には、本発明に係る成形体はASTM D3985に基づいて測定した酸素透過度が0.1~20cc/m2・dayであり得る。より具体的には、製造された成形体の試片(横×縦×高さ40mm×40mm×3mm)を(23±1)℃条件で30分の間酸素透過度を測定する場合、成形体の酸素透過度は0.1~20cc/m2・day、0.1~15cc/m2・day、0.1~13cc/m2・day、0.1~10cc/m2・day、0.1~7cc/m2・day、0.1~5cc/m2・day、または0.1~3cc/m2・dayであり得る。
【0022】
これは、前述した通り、ポリエステル樹脂の第1および第2発泡シート101、101’をそれぞれ成形体10の断面外層に形成し、前記第1および第2発泡シート101、101’の間にガスバリアー層102を形成することによって、前記のような酸素透過度を満足させることができる。すなわち、本発明に係る成形体10は、前記範囲内の酸素透過度を有することによって酸素を遮蔽する性能が優秀であるため、食品の保存期限を延長させることができる利点がある。
【0023】
具体的には、本発明に係る成形体10は前記ガスバリアー層102の両面にそれぞれ第1および第2発泡シート101、101’を形成し、酸素透過度を前記範囲内に制御することができる。
【0024】
併せて、ASTM F 1249による水蒸気透過度が37℃、100%の相対湿度条件下で、50g/m2・day以下であることを特徴とする。例えば、前記水蒸気透過度は0.1~50g/m2・day、0.1~40g/m2・day、0.1~30g/m2・day、0.1~20g/m2・day、0.1~10g/m2・day、0.1~7g/m2・day、0.1~5g/m2・dayまたは0.1~3g/m2・day範囲であり得る。本発明に係る成形体10は前記水蒸気透過度を有することによって、ガスバリアー特性が要求される製品に広く使用され得る。例えば、食品包装容器として使う場合、食品が水蒸気と反応して腐敗することを防止できるため、食品の保管が容易であり得る。
【0025】
ポリエステル樹脂は酸成分とジオール成分から誘導される繰り返し単位を含むことができる。具体的には、ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とグリコール成分またはヒドロキシカルボン酸から合成された芳香族および脂肪族ポリエステル樹脂からなる群から選択された1種以上であり得る。
【0026】
前記ポリエステル樹脂は例えば、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate、PET)、ポリブチレンテレフタレート(Polybutylene Terephthalate、PBT)、ポリ乳酸(Poly Lactic acid、PLA)、ポリグリコール酸(Polyglycolic acid、PGA)、ポリエチレンアジペート(Polyehtylene adipate、PEA)、ポリヒドロキシアルカノエート(Polyhydroxyalkanoate、PHA)、ポリトリメチレンテレフタレート(Polytrimethylene Terephthalate、PTT)およびポリエチレンナフタレン(Polyethylene naphthalate、PEN)からなる群から選択された一つ以上であり得る。一例として、本発明ではポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate、PET)が使用され得る。
【0027】
併せて、前記ガスバリアー層102は、エチレンビニルアルコール(ethylene vinyl alcohol、EVOH)、ポリビニリデンクロライド(polyvinylidene chloride、PVdC)およびポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)のうち1種以上を含むことができる。
【0028】
具体的には、前記バリアー層102はエチレンビニルアルコールを利用して形成することができる。この場合、包装容器の内部にある食品で発生するガスは、外部への排出は可能であるとともに外部からの酸素の供給は遮断することができる。
【0029】
本発明に係る成形体10は多層構造であり、成形体10を形成する多層構造の平均厚さは1mm~5mm範囲であり得る。
【0030】
例えば、成形体10は3層構造であり得、この場合、3層構造の全体厚さは、平均1.2~4mm、1.5~3.5mm、1.8~3mmあるいは2mmであり得る。また、前記ガスバリアー層102の平均厚さは0.01~2mmであり得、0.05~2mm、0.1~1.9mm、0.2~1.85mm、0.3~1.8mm、0.5~1.6mm、0.7~1.4mm、0.9~1.2mm、または1mmであり得る。
【0031】
併せて、第1発泡シート101および第2発泡シート101’の平均厚さはそれぞれ0.5~1.5mmであり得、0.6~1.3mm、0.7~1.2mm、0.8~1.0mm、0.9~0.95mmであり得る。本発明の成形体10は前記範囲の厚さを有する発泡シート101、101’およびガスバリアー層102で構成されることによって、前述した酸素透過度および水蒸気透過度を満足させることができるとともに圧縮強度を向上させて軽量性などを同時に満足させることができる。
【0032】
一つの例示において、前記第1および第2発泡シート101、101’の融点Tmは平均240~260℃であり得る。具体的には、第1および第2発泡シート101、101’の平均融点は242℃~257℃、245℃~255℃、247℃~253℃、または248℃~251℃であり得る。一例として、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)樹脂を含む第1および第2発泡シート101、101’の融点は、平均248℃~251℃であり得る。
【0033】
併せて、前記ガスバリアー層102の融点Tmは、平均150℃~190℃であり得る。具体的には、ガスバリアー層102の融点は、平均150℃~190℃、155℃~185℃、160℃~180℃、165℃~175℃または169℃~171℃であり得る。一例として、エチレンビニルアルコールからなるガスバリアー層の融点は、平均170±0.5℃であり得る。
【0034】
一方、ポリエチレンテレフタレートとエチレンビニルアルコールは融点の差が大きいため、2層構造(発泡シート/ガスバリアー層)成形体の成形時にエチレンビニルアルコールが剥離または融解して成形体の全体面積に前記バリアー層102を等しく形成できないなどの問題点があったが、前記発泡シート101、101’をガスバリアー層102の両面にそれぞれ積層させることによって、前記ガスバリアー層102が融解してなくなったり発泡シート101、101’から剥離されるなどの問題点を解決することができる。
【0035】
一つの例として、本発明に係る成形体10は、底部11および底部11の周りに沿って上端が開放された状態の壁部12を含み、前記数学式1でH/D値は0.01~1.3、0.05~1.2、0.1~1.1、0.3~1.0、0.4~0.9、0.5~0.8、0.55~0.7または0.6~0.65であり得る。併せて、前記数学式1でH値は1~10cmであり得る。一例として、成形体10の開口部の直径は10cmであり得、収容部の深さが3cmであり得る。併せて、本発明に係る成形体10は容器の形状であり得、円筒形または四角形の容器の形状であり得る。
【0036】
一方、本発明に係る成形体10は前記ガスバリアー層102の両面にそれぞれ第1および第2発泡シート101、101’を形成することによって、下記の数学式2を満足する成形体10を提供することができる:
【0037】
[数学式2]
|T2-T1|≧10℃
【0038】
前記数学式2において、T1は20℃、1atm条件で、成形体に100℃の水を入れて1分経過したときに測定した成形体の外側の表面温度であり、T2は20℃、1atm条件で、成形体に100℃の水を入れて1分経過したときに測定した成形体の内部の水の温度である。
【0039】
本発明に係る成形体10は第1、2発泡シート101、101’を含むことによって、優秀な熱遮断性を示す。具体的には、常温(20℃)、1気圧条件で、成形体の内部に100℃の水を70%(v/v)入れた状態で、1分経過した時点での成形体内部の水の温度と成形体外部の表面の温度差が10℃以上であり得る。これは本発明に係る成形体10の熱遮断性が優秀であることを示すものであるが、具体的には、製造された成形体に100℃の水を70%(v/v)入れた状態で、1分経過した時点での成形体10の内部に収容された水の温度と成形体10の外部表面の温度差である。
【0040】
一つの例として、本発明に係る成形体10に100℃の水を70%(v/v)入れた状態で、1分経過した時点での成形体の外部温度が40℃である場合、成形体10の内部に収容された水の温度は95℃であり得る。本発明に係る成形体10は、前記条件で成形体10の内部に収容された水の温度と成形体10の外部表面の温度差を比較的に高く維持することによって優秀な熱遮断性を示すことが分かり、これによって食品の保温を効果的に向上させることができる。
【0041】
一方、本発明の第1および第2発泡シート101、101’はそれぞれ0.5~9重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)を含むことができる。
【0042】
具体的には、前記炭酸カルシウム(CaCO3)は無機粒子であり、前記のような無機粒子を含むことによって、本発明の第1および第2発泡シート101、101’はシートの表面が均一であり、優秀な熱成形性を示すことができる。
【0043】
前記炭酸カルシウムの熱伝導率は1.0kcal/mh℃~3.0kcal/mh℃であり得る。具体的には、炭酸カルシウムの熱伝導率は1.2kcal/mh℃~2.5kcal/mh℃、1.5kcal/mh℃~2.2kcal/mh℃または1.8kcal/mh℃~2.0kcal/mh℃であり得る。より具体的には、炭酸カルシウムの熱伝導率は1.5kcal/mh℃~2.5kcal/mh℃または1.8kcal/mh℃~2.3kcal/mh℃であり得る。前記のように炭酸カルシウムを含む第1および第2発泡シート101、101’は優秀な熱伝導率を示すことによって均一な表面を有し、優秀な熱成形性を示すことができる。
【0044】
例えば、前記炭酸カルシウムの含量は0.5~9重量%であり得る。具体的には、炭酸カルシウムの含量は0.5~8重量%、0.6~7重量%、0.7~6重量%、0.8~5重量%、0.9~4重量%、1.0~3.0重量%、2重量%~3.5重量%であり得る。一例として、1.0重量%または3重量%であり得る。
【0045】
一つの例示において、発泡シート101、101’の密度(KS M ISO 845)は、平均300~700kg/m3であり得る。具体的には、発泡シート101、101’の密度は、平均325~650kg/m3、350~600kg/m3、375~550kg/m3、400~500kg/m3または425~450kg/m3であり得る。
【0046】
他の一つの例示において、本発明に係る発泡シート101、101’は200℃で10秒の条件で高温伸び率は325~375%であり得る。具体的には、発泡シート101、101’は200℃で10秒の条件で高温伸び率は330~360%、345~370%または335~360%であり得る。より具体的には、発泡シート101、101’は200℃で10秒の条件で高温伸び率は345~355%であり得る。
【0047】
前記のようなポリエステルおよび炭酸カルシウムを含むことによって、本発明に係る発泡シート101、101’は優秀な加工性を示すことができる。
【0048】
本発明に係る成形体10の第1および第2発泡シート101、101’はポリエステル樹脂の発泡体であり、前記第1および第2発泡シート101、101’のポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate、PET)樹脂であり得る。前記PET樹脂を使うことによって、環境に優しく、再使用が容易である。
【0049】
食品医薬品安全処の器具および容器包装とその原材料に関する規格を基準として、湧出規格の測定時、総湧出量が30ppm以下であり、アンチモン、ゲルマニウム、テレフタル酸、イソフタル酸、アセトアルデヒド物質が検出されず、残留規格の測定時、揮発性物質が検出されないことを特徴とする。
【0050】
具体的には、本発明に係る成形体10は前記のように環境に優しい素材であるポリエステル樹脂を使うことによって、大韓民国食品医薬品安全処で発行している器具および容器包装の基準および規格告示全文告示第2015-7号に記載された憂慮物質を許容範囲内に調節することができる。
【0051】
このような素材を利用した成形体10を利用して食品包装容器10を製造することによって、環境に優しい食品容器を提供することができる。
【0052】
一つの例として、本発明に係る成形体10は、バリアー(Barrier)性能、親水化機能または防水機能を有することができ、界面活性剤、親水化剤、熱安定剤、防水剤、セル大きさ拡大剤、赤外線減衰剤、可塑剤、防火化学薬品、顔料、弾性ポリマー、押出補助剤、酸化防止剤、空転防止剤およびUV吸収剤からなる群から選択される一つ以上の機能性添加剤をさらに含むことができる。具体的には、本発明の樹脂発泡シートは増粘剤、熱安定剤および発泡剤を含むことができる。
【0053】
前記増粘剤は特に限定しないが、本発明では例えばピロメリット酸二無水物(PMDA)が使用され得る。
【0054】
前記熱安定剤は、有機または無機リン化合物であり得る。前記有機または無機リン化合物は、例えば、リン酸およびその有機エステル、亜リン酸およびその有機エステルであり得る。例えば、前記熱安定剤は商業的に入手可能な物質であって、リン酸、アルキルホスフェートまたはアリールホスフェートであり得る。具体的には、本発明で熱安定剤はトリフェニルホスフェートであり得るが、これに制限されるものではなく、前記樹脂発泡シートの熱的安定性を向上させることができるものであれば、通常の範囲内で制限なく使用可能である。
【0055】
前記発泡剤の例としては、N2、CO2、フレオン、ブタン、ペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、メチルクロライドなどの物理的発泡剤またはアゾジカルボンアミド(azodicarbonamide)系化合物、P、P’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)[P、P’-oxy bis(benzene sulfonyl hydrazide)]系化合物、N、N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(N、N’-dinitroso pentamethylene tetramine)系化合物などの化学的発泡剤があり、具体的には、本発明ではCO2が使用され得る。
【0056】
また、本発明は成形体の製造方法を提供する。
【0057】
図2は、本発明に係る成形体の製造方法を順に図示した図面である。
図2を参照すると、本発明は、第1発泡シート、ガスバリアー層および第2発泡シートが順に積層された構造のシート1を成形装置の雌型金型21と雄型金型22の間に配置させる段階;および雄型金型22を加圧して成形体10を成形する段階を含み、前記第1発泡シートおよび第2発泡シートはポリエステル樹脂の発泡体であることを特徴とする成形体の製造方法を提供する。
【0058】
一方、第1および第2発泡シートについての製造方法は具体的に限定されないが、例えば、第1および第2発泡シートはポリエステル樹脂を押出発泡して製造することができる。具体的には、発泡方法の種類には大きくビーズ発泡または押出発泡がある。前記ビーズ発泡は、一般的に、樹脂ビーズを加熱して1次発泡させ、これを適当な時間の間熟成させた後に板状、筒状の金型に満たしてさらに加熱し、2次発泡によって融着、成形して製品を作る方法である。その反面、押出発泡は樹脂を加熱して溶融させ、前記樹脂溶融物を連続的に押出および発泡させることによって、工程段階を単純化することができ、大量生産が可能であり、ビーズ発泡時のビーズの間で亀裂と粒状破壊現象などを防止することができる。
【0059】
次いで、加工する段階は、第1発泡シート、ガスバリアー層および第2発泡シートが順に積層された構造のシート1を、成形体成形装置20の雌型金型21と雄型金型22の間に配置させる段階および雄型金型22を加圧して成形体10を成形する段階を提供する。
【0060】
具体的には、雌型金型21と雄型金型22の間に配置されたシート1は、熱成形されることによって成形体10に成形され得る。前記熱成形としては、真空成形、圧空成形または真空成形と圧空成形を組み合わせた真空圧空成形、雄型金型(プラグ)を使いつつ、または雄型金型22を使った後、真空および/または圧空成形するなどの熱成形がある。
【0061】
図2を参照すると、
図2の(a)はシート1を成形する前にシート1を成形装置の雌型金型21と雄型金型22の間に配置する配置段階を示す。
図2の(b)は延伸工程および熱工程を示す図面であって、
図2(b)のように、雄型金型22を下降させてシート1を延伸し、雌型金型21からの真空吸引によって雌型金型21のキャビティの形状に賦形され、熱が加えられる。
図2(c)は、雄型金型22の加圧と雌型金型21からの圧縮空気によって、成形されているシート1が雄型金型22の形状に賦形されて最終成形品である成形体10が成形されることを示す。次いで、成形された成形体10は冷却後に雄型金型22を上昇させることによって取り出され得る。
【0062】
併せて、成形する段階は、シートの表面温度が140~160℃となるように熱を印加し、前記雌型金型21および雄型金型22の表面温度を60℃~200℃に設定して成形体10を成形することができる。
【0063】
一方、成形段階で雄型金型22の表面と雌型金型21のキャビティの表面温度は互いに異なり得る。好ましくは、雄型金型22の表面温度はそれぞれ250~280℃、255~275℃、260~270℃または265℃であり得、雌型金型21のキャビティの表面温度は200~250℃、210~240℃、215~235℃、220~230℃または225±3℃であり得る。
【0064】
一つの例示において、雄型金型22の表面温度は265±1℃であり得、雌型金型21の表面温度は225℃であり得、雄型金型22は0.5秒~15秒の間雌型金型21に接触させることが好ましい。併せて、雌型金型21は一側に内部空間であるキャビティを減圧するための減圧ホール23が形成された構造であり得る。
【0065】
これにより、前述した成形体の製造方法によってポリエステル樹脂の第1発泡シート、ガスバリアー層、およびポリエステル樹脂の第2発泡シートが順に積層された容器の形状の成形体または前記成形体を含む包装容器を製造することができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例および実験例によってより詳細に説明する。
【0067】
ただし、下記の実施例および実験例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の内容は下記の実施例および実験例に限定されるものではない。
【0068】
製造例1.
PET樹脂100重量部を130℃で乾燥させて水分を除去したし、第1押出機で前記水分が除去されたPET樹脂100重量部、PMDA(pyromellitic dianhydride)1重量部、炭酸カルシウム(CaCO3)1重量部、Irganox(IRG 1010)0.1重量部を混合し、280℃に加熱して樹脂溶融物を製造した。その後、第1押出機に発泡剤としてブタンガスを混合し、樹脂溶融物を第2押出機に送って220℃に冷却した。冷却された樹脂溶融物はダイ(Die)を通過しながら発泡シートを形成した。
【0069】
この時、製造されたポリエステル樹脂発泡シートの密度は380kg/m3であり、厚さは1mmであった。
【0070】
実施例1
製造例1で製造した発泡シートの一面にバリアー層として0.05mmのEVOHフィルムをラミネーティングし、その上に製造例1で製造した発泡シートを積層した。そして、積層した3層構造のシートを容器の形状に成形し、H/D=0.3の成形体(H:収容部の深さD:開口部の直径)を製造した。前記成形体の開口部の直径は10cmであった。一方、成形体の成形時に、雄型金型の表面温度は60℃であり、雌型金型の表面温度は120℃であった。
【0071】
実施例2.
バリアー層としては、EVOH0.02mmとPET0.03mmフィルム2 Layerで構成されたことを除いては実施例1と同じ方法で成形体を製造した。
【0072】
実施例3.
H/Dの値が0.5であることを除いては実施例1と同じ方法で成形体を製造した。
【0073】
比較例1
厚さが2mmであることを除いては製造例1と同じ方法で製造した発泡シートの一面に、バリアー層として0.05mmのEVOHフィルムをラミネーティングして2層構造のシートを製造した。そして、積層した2層構造のシートを容器の形状に成形し、H/D=0.3の成形体(H:収容部の深さD:開口部の直径)を製造した。前記成形体の開口部の直径は10cmであった。一方、雄型金型の表面温度は60℃であり、雌型金型の表面温度は120℃であった。
【0074】
比較例2
PP多層シート(PP/EVOH/PP)を使ってH/D0.3の実施例1と同じ構造の容器を成形したし、成形する時の金型の温度は20℃を維持した。
【0075】
実施例および比較例で成形体のシートの種類および成形条件を下記の表1のように異ならせて成形体を製造した。
【0076】
【0077】
実験例1.酸素透過度の測定
実施例と比較例で製造した成形体に対して、23℃の温度および50%の相対湿度条件下で酸素透過度を測定した。一方、ガスバリアー層が成形体内に均一に分布されたかを確認するために、成形体の試片をランダムに切って測定した。そして、その結果を下記の表2に表した。
【0078】
<酸素透過度試験>
-試験方法:ASTM D 3985
-試験機器:OX-TRAN 702(MOCON社、アメリカ)
-試験温度:23℃
-試験時間:30分
-測定範囲:0.1~2000cc/m2day
-試片の大きさ:横×縦×高さ40mm×40mm×3mm
【0079】
【0080】
前記表2を参照すると、本発明に係る成形体は酸素透過度が低いことを確認することができ、これに伴い、酸素の透過をほぼ防止できることが分かる。これは、ガスバリアー層が成形体の全体面積に均一に分布されていることを意味する。その反面、比較例1の成形体は酸素透過度が高いことを確認することができた。これは、成形体の成形時にガスバリアー層が損傷したためであると判断される。併せて、非発泡製品である比較例2の場合、酸素透過度は低いものの、後述される熱遮断性試験で熱遮断性が優秀でないことを確認することができる。
【0081】
反面、比較例1の成形体は酸素透過度が高いことを確認することができた。これは、成形体の成形時にガスバリアー層が損傷したためであると判断される。併せて、非発泡製品である比較例2の場合、酸素透過度は低いものの、後述される熱遮断性試験で熱遮断性が優秀でないことを確認することができる。
【0082】
実験例2.水蒸気透過度の測定
実施例と比較例で製造した成形体に対して、ASTM F 1249を基準として、37℃の温度および100%の相対湿度条件下で、水蒸気透過度を測定した。そして、その結果を下記の表3に表した。
【0083】
【0084】
表3を参照すると、実施例1-3による成形体の場合、それぞれ8.5g/m2day、17g/m2dayおよび18g/m2dayと低い結果を示した。これは、ガスバリアー層が成形体の全体面積に均一に分布されていることを意味する.併せて、比較例1の場合、19g/m2dayであって、実施例より高い結果を示した。これは比較例1成形体の成形時にガスバリアー層が損傷したためであると判断される。併せて、非発泡製品である比較例2の場合、酸素透過度は低いものの、後述される熱遮断性試験で熱遮断性が優秀でないことを確認することができる。
【0085】
実験例3.熱遮断性測定
実施例と比較例による成形体の熱遮断性を評価するために、成形体の内部に100℃の水を70%(v/v)入れた状態で、2分経過した時点で、成形体内部の任意の地点と容器外部の任意の地点の温度を測定した。そして、その結果を表4と表5に表した:
【0086】
[数学式2]
|T2-T1|≧10℃
【0087】
前記数学式2において、T1は20℃、1atm条件で、成形体に100℃の水を入れて1分経過したときに測定した成形体の外側の表面温度であり、T2は20℃、1atm条件で、成形体に100℃の水を入れて1分経過したときに測定した成形体の内部の水の温度である。
【0088】
【0089】
前記表4を参照すると、実施例に係る成形体は成形体の内部に収容された水の温度と成形体表面の温度差が10℃以上に示されて、優れた熱遮断性を示すことが分かる。その反面、比較例1および2による成形体は、|T2-T1|がそれぞれ27℃と0℃であり、熱遮断性が顕著に低かった。したがって、本発明に係る成形体はPET発泡シートを含むことによって優秀な熱遮断性を有し、これによって優れた保温特性および取り扱いの安全性を具現することができることを確認した。
【0090】
特に、ガスバリアー層の両面にそれぞれ第1および第2発泡シートを含むことによって優秀な熱遮断性を有することを確認することができた。
【0091】
これを通じて、本発明に係る成形体は、低い水蒸気透過度および酸素透過度を有し、熱遮断性が優秀であることが分かる。
【0092】
本発明に係る成形体は、ガスバリアー層の両面にそれぞれ第1および第2発泡シートを含むことによって酸素および水分透過度を最小化することができるため、これを食品包装容器に使う場合、酸素および水分による食品の腐敗などを防止することができ、食品の保存が容易である。
【符号の説明】
【0093】
1:シート
10:成形体
101:第1発泡シート
101’:第2発泡シート
102:ガスバリアー層
11:底部
12:壁部
13:フランジ
20:金型
21:雌型金型
22:雄型金型
23:減圧ホール