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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20220725BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
G05B23/02 R
G05B19/418 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021211609
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2022-01-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315001682
【氏名又は名称】岩井ファルマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 正貴
(72)【発明者】
【氏名】中倉 久雄
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-150621(JP,A)
【文献】特開2000-010604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品又は飲料食品を製造する設備を制御する制御プログラムを実行するとともに前記設備で不定期に発生したイベント情報を記憶する制御装置と、前記制御装置が記憶したイベント情報を読み取る情報処理装置とを備えた管理システムであって、
前記制御装置は、
前記イベント情報を記憶する情報記憶部と、
前記情報記憶部に記憶された前記イベント情報が前記情報処理装置によって読み取られたか否かを記憶する既読管理部と、
前記設備で不定期に発生したイベントの内容を表わす前記イベント情報を作成し、その前記イベント情報を作成した日時とともに前記情報記憶部に記憶させる情報作成部と、を備え、
前記情報作成部は、
前記既読管理部を参照して前記情報処理装置により読み取られた前記イベント情報を特定し(以下、既読イベント情報と称する)、前記情報記憶部のうち未使用の領域又は前記既読イベント情報が記憶されていた領域に、前記情報作成部が作成した前記イベント情報を記憶させるとともに当該イベント情報が前記情報処理装置により読み取られていないことを前記既読管理部に記憶させ、
前記情報処理装置は、定期的に、
前記既読管理部を参照して前記情報処理装置に読み取られていない前記イベント情報を前記情報記憶部から読み出し、その後、前記イベント情報を読み取ったことを前記既読管理部に記憶させるか又は前記イベント情報が記憶されていた領域を未使用であると前記既読管理部に記憶させ
さらに、
前記設備の運転状況に基づいて前記設備の異常を判定する警報部を備え、
前記情報作成部は、前記警報部により前記設備に異常があると判定されたときに、前記イベント情報として前記設備に異常が生じた旨を表す情報である警報情報を作成し、
前記制御装置は、入出力装置、及び前記入出力装置を介して前記制御プログラムの実行を管理又は前記制御プログラムの設定を変更する実行管理・設定機能を備え、
前記情報作成部は、前記イベント情報として前記入出力装置を介して利用者が行った前記実行管理・設定機能を利用するための操作を表わす情報である操作情報を作成し、
前記情報処理装置は、利用者により指定された前記警報情報が発生した日時よりも前の前記イベント情報を検索することで警報原因の調査を支援する支援手段を備える
ことを特徴とする管理システム。
【請求項2】
請求項に記載の管理システムにおいて、
前記設備は、複数の装置からなり、
前記イベント情報には、不定期に発生したイベントの元となる前記装置の情報(以下、装置情報)が含まれ、
前記支援手段は、利用者により指定された前記警報情報が発生した日時よりも前であり、かつ前記装置情報が共通する前記イベント情報を検索する
ことを特徴とする管理システム。
【請求項3】
請求項に記載の管理システムにおいて、
前記設備は、複数の装置からなり、
前記情報処理装置は、前記装置の配置及び接続に関する情報である図データを有し、
前記イベント情報には、不定期に発生したイベントの元となる前記装置の情報(以下、装置情報)が含まれ、
前記支援手段は、利用者により指定された前記警報情報に含まれる装置情報と配置上の関連がある周辺装置を前記図データから抽出し、前記周辺装置と同じ前記装置情報を含む前記イベント情報を検索する
ことを特徴とする管理システム。
【請求項4】
請求項1から請求項の何れか一項に記載の管理システムにおいて、
前記制御プログラムは、医薬品又は飲料食品を製造するために前記設備に含まれる各装置を制御する命令からなる複数の工程を含み、
前記情報作成部は、前記イベント情報として前記制御プログラムによって実行された工程の内容を表わす工程情報を作成する
ことを特徴とする管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品や飲料食品を製造するプラントなどの設備において運転状況を管理する管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファクトリーオートメーションによる製造工程においては、プラントを構成する各設備を制御するプログラマブルロジックコントローラ(以下、PLCと称する)が用いられている。PLCは、設備の制御内容を定めた制御プログラムが記憶されており、その制御プログラムを実行することで各設備を動作させている。
【0003】
また、PLCは、PLCの記憶装置に設備の運転状況を記憶したり、その運転状況をパーソナルコンピュータ等の情報処理装置との間で送受信する機能が備わっている。運転状況とは、例えば、設備を構成する各種装置で計測されたセンサーの値や平均値等を内容とする実績レコードである。情報処理装置は、PLCの記憶装置から設備の運転状況を取得し、蓄積する。運転状況を取得するタイミングは、定期的に行っている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1に係る技術では、運転状況など定期的に発生する情報を対象とするものであり、異常の発生など不定期に発生するイベント情報を対象としていない。また、不定期に発生するイベント情報の発生日時を、情報処理装置がPLCからイベント情報を取得した日時とすると、実際のイベント情報が発生した日時を正確に記録できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-212645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、設備で不定期に発生するイベント情報をより正確に記録することができる管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の態様は、医薬品又は飲料食品を製造する設備を制御する制御プログラムを実行するとともに前記設備で不定期に発生したイベント情報を記憶する制御装置と、前記制御装置が記憶したイベント情報を読み取る情報処理装置とを備えた管理システムであって、前記制御装置は、前記イベント情報を記憶する情報記憶部と、前記情報記憶部に記憶された前記イベント情報が前記情報処理装置によって読み取られたか否かを記憶する既読管理部と、前記設備で不定期に発生したイベントの内容を表わす前記イベント情報を作成し、その前記イベント情報を作成した日時とともに前記情報記憶部に記憶させる情報作成部と、を備え、前記情報作成部は、前記既読管理部を参照して前記情報処理装置により読み取られた前記イベント情報を特定し(以下、既読イベント情報と称する)、前記情報記憶部のうち未使用の領域又は前記既読イベント情報が記憶されていた領域に、前記情報作成部が作成した前記イベント情報を記憶させるとともに当該イベント情報が前記情報処理装置により読み取られていないことを前記既読管理部に記憶させ、前記情報処理装置は、定期的に、前記既読管理部を参照して前記情報処理装置に読み取られていない前記イベント情報を前記情報記憶部から読み出し、その後、前記イベント情報を読み取ったことを前記既読管理部に記憶させるか又は前記イベント情報が記憶されていた領域を未使用であると前記既読管理部に記憶させ、さらに、前記設備の運転状況に基づいて前記設備の異常を判定する警報部を備え、前記情報作成部は、前記警報部により前記設備に異常があると判定されたときに、前記イベント情報として前記設備に異常が生じた旨を表す情報である警報情報を作成し、前記制御装置は、入出力装置、及び前記入出力装置を介して前記制御プログラムの実行を管理又は前記制御プログラムの設定を変更する実行管理・設定機能を備え、前記情報作成部は、前記イベント情報として前記入出力装置を介して利用者が行った前記実行管理・設定機能を利用するための操作を表わす情報である操作情報を作成し、前記情報処理装置は、利用者により指定された前記警報情報が発生した日時よりも前の前記イベント情報を検索することで警報原因の調査を支援する支援手段を備えることを特徴とする管理システムにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、設備で不定期に発生するイベント情報をより正確に記録することができる管理システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】管理システム及びその管理対象となる設備の概略構成を示す図である。
図2】管理システムの機能を説明する図である。
図3】情報作成部の動作を説明する図である。
図4】取得手段の動作を示す図である。
図5】取得手段によるイベント情報を取得するタイミングを示す図である。
図6】情報処理装置の記憶装置に記憶されたイベント情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る管理システム及びその管理対象となる設備の概略構成を示す図である。図1(a)に示すように、設備10は、複数の装置からなる製造ラインA、製造ラインBを有している。設備10を管理する管理システムIは、制御装置の一例であるプログラマブルロジックコントローラ(以下、PLCと称する。)1と、PLC1から各種の情報を取得する情報処理装置の一例としてパーソナルコンピュータ(以下、PC)2を備えている。製造ラインAを管理するPLC1と、製造ラインBを管理するPLC1は、何れも共通の一台のPC2に接続されているが、このような構成に限らない。例えば、設備10(製造ラインA及び製造ラインB)を管理する一台のPLC1と、一台のPC2とで管理システムIとしてもよい。いずれにしても、PLC1の台数や、1台のPLC1が管理する対象の装置構成、PC2の台数に限定はない。以後、製造ラインAを管理するPLC1をPLC1A、製造ラインBを管理するPLC1をPLC1Bとも称し、特に区別しない場合はPLC1と称する。
【0012】
図1(b)に製造ラインAの構成を示す。製造ラインBは製造ラインAと同様の構成であるので図示は省略する。もちろん、製造ラインAと製造ラインBは異なる構成であってもよい。製造ラインAは、調合タンク11、殺菌装置12、フィルター装置13、貯留タンク14が直列的に配管で接続された構成である。また、これらの製造ラインAを構成する各種装置を洗浄、殺菌するためのCIP/SIP装置15が備わっている。
【0013】
調合タンク11は、各種の原料が供給される容器であり、その内部で原料が攪拌されて溶液が製造される。調合タンク11には、空気や窒素などの気体が供給され、その圧力で製造した溶液(以下、製品と称する)が下流に圧送される。殺菌装置12により製品が殺菌され、フィルター装置13により異物が除去されて貯留タンク14に貯留される。貯留タンク14の製品は、下流の充填装置(図示せず)に送られる。このような製造工程は、PLC1が各装置を制御することで実現され、目的とする医薬品又は飲料食品が製造される。
【0014】
CIP/SIP装置15は、製造ラインAを構成する各装置を定置洗浄(CIP)する洗浄装置及び定置滅菌(SIP)をするための滅菌装置である。具体的には、CIP/SIP装置15は、洗浄用液体及び蒸気を配管を介して調合タンク11、殺菌装置12、フィルター装置13、貯留タンク14に供給する。洗浄用液体及び蒸気により製造ラインAの各装置は洗浄及び滅菌される。洗浄及び滅菌後、洗浄用液体及び蒸気はCIP/SIP装置15に戻され、適宜処理されて廃棄又は再利用される。このような洗浄及び滅菌についても、PLCが各装置を制御することで実現される。
【0015】
また、製造ラインAには、調合タンク11~CIP/SIP装置15の他にも、製品を圧送するための空気等をタンクに送り込むための装置類、調合タンク11の原料を攪拌するための攪拌装置、調合タンク11及び貯留タンク14の製品の温度を保つための保温装置、配管に設けられるバルブやポンプなども特に図示しないが備わっている。そして、製造ラインAには、各装置の運転状況や製品の状態を測定する測定装置(図示せず)が設けられている。例えば、調合タンク11や貯留タンク14には製品の温度、水位を計測する計器類、殺菌装置12には入口及び出口における製品や熱媒の温度及び流量を計測する計器類、フィルター装置13にはフィルターの一次側及び二次側における製品の圧力や流量を計測する計器類などが設けられている。
【0016】
PLC1は、プログラマブルロジックコントローラ又はシーケンサとも称される。PLC1は、CPUや記憶装置、入出力装置としてタッチパネル3(図ではTPと略記してある)を備えている。タッチパネル3は、PLC1の記憶装置に記録された各種情報を表示したり、利用者の入力を受け付けるために用いられる。
【0017】
記憶装置には制御プログラムが記憶されている。制御プログラムは、複数の機能を備えており、一つは、設備10を構成する各装置を動作させる命令を組み合わせた工程(例えば、原料を投入する工程、原料を攪拌して製品を得る工程、殺菌工程、ろ過工程など)からなる製品製造を実現するための機能である。他の機能としては、制御プログラムには、各装置を対象とする測定装置から測定値を読み取る機能や測定値をタッチパネル3に表示する機能が備わっている。
【0018】
さらに、制御プログラムは、製品製造を実現する命令からなる各工程をタッチパネル3の操作により一時的に停止させたり、進行させたり、各工程で必要となるパラメータを変更したり、工程を組み合わせて新たな製造工程を作成するなどの実行管理・設定機能(以下、設定機能と略す)が備わっている。
【0019】
PLC1は、PC2と通信可能となっている。PC2は、CPU、メモリ、ハードディスク、入出力装置、通信手段、入出力I/F(インタフェース)などを備えた一般的な情報処理装置であり、汎用OSが実行されるものである。詳細は後述するが、PC2は、通信手段を介してPLC1の記憶装置から設備10に関する情報を取得することが可能となっている。読み取った情報は、例えば、表計算ソフトなどに読み込み、表示、保存することが可能となっている。
【0020】
図2は、管理システムIの機能を説明する図である。PLC1の制御プログラムは、PLC1に備わる記憶装置30に記憶されており、上述したような設備を動作させる機能の他に、設備10の運転状況やイベント情報など各種情報を作成する機能として情報作成部21、及び設備10の設備の運転状況に基づいて警報を発する警報部22を有している。
【0021】
まず、PLC1で作成される各種情報について説明する。各種情報としては、設備10で製造工程を行うと定期的に発生する情報と、不定期に発生するイベントを表わすイベント情報とがある。定期的に発生する情報としては、設備10において製品を製造する工程を実施しているときの測定装置の測定値や測定値の平均値等を内容とする実績レコードである。この実績レコードは、制御プログラムのワンサイクル毎に更新され、記憶装置30の一領域に記憶されており、PC2により参照可能となっている。表1に実績レコードを例示する。
【0022】
【表1】
【0023】
表1の各行は、製造ラインAを管理するPLC1Aにおいて作成された実績レコードである。例えば1行目は調合タンク11に設けられた測定装置により計測された製品温度が「20℃」であることと、その日時が記録されている。2行目は調合タンク11に設けられた測定装置により計測された製品の液面が「500mm」であり、その日時が記録されている。このような実績レコードは、PLC1の制御プログラムの一機能である情報作成部21が設備10の各装置に設けられた測定装置の計測値を読み取り、その値から作成している。
【0024】
一方、設備で生じたイベントを表わすイベント情報は不定期に発生する。不定期とは、後述するようにPC2が定期的にPLC1の情報記憶部32からイベント情報を取得するが、このPC2の定期的な取得タイミングとは無関係にイベント情報が発生することを意味する。設備10で不定期に発生するイベントを表わすイベント情報としては、工程情報、操作情報及び警報情報が挙げられる。表2に工程情報を例示する。
【0025】
【表2】
【0026】
表2の各行は、製造ラインAを管理するPLC1Aにおいて作成された工程情報である。工程情報とは、制御プログラムによって実行された製品製造のための各工程の内容を表す情報である。例えば1行目は、製造ラインAの調合タンク11において、運転準備工程が開始されたことを表す工程情報と、その日時が記録されている。このような工程情報は、制御プログラムの一機能である情報作成部21が各工程の開始、終了など工程に変化があったタイミングで作成するようになっている。このような工程情報や後述する操作情報及び警報情報は、製造ラインBについてもPLC1Bにおいて作成される。
【0027】
また、工程情報には、工程情報の元となる装置の情報(装置情報)が含まれている。表2の例では、工程情報S1-S8は調合タンクにおける工程を表すものであるので、装置情報としては「調合タンク」が含まれている。同様に工程情報S9-S14は殺菌装置における工程を表すものであるので、装置情報としては「殺菌装置」が含まれている。このように情報作成部21は、工程情報を作成する際には、工程の対象となる装置情報(表3では装置の名称)を含めて工程情報を作成する。
【0028】
表3に操作情報を例示する。
【0029】
【表3】
【0030】
表3の各行は、製造ラインAを管理するPLC1Aにおいて作成された操作情報である。操作情報とは、タッチパネル3を介して利用者が行った設定機能を利用するための操作を表す情報である。また、操作情報には、操作情報の元となる装置の情報(装置情報)が含まれている。表3の例では、操作情報O3、O5は調合タンクに関するパラメータ編集を行っているので、装置情報としては「調合タンク」が含まれている。操作情報O4の装置情報としては「殺菌装置」が含まれている。このように情報作成部21は、操作情報を作成する際には、操作の対象となる装置情報(表4では装置の名称)を含めて操作情報を作成する。
【0031】
[制御プログラムの実行管理に関する操作情報]
制御プログラムの実行管理とは、制御プログラムによる設備10を構成する装置を動作させる命令の実行をタッチパネル3の操作に基づいて行うことをいう。例えば、表2に示したような各工程単位でタッチパネル3に表示し、利用者によって所定の操作がタッチパネル3に行われたときに次工程に進むといったような実行管理に関する機能が制御プログラムに備わっている。
【0032】
表3の操作情報O1は、そのような実行管理に関する機能を使用するための操作の具体例として「利用者Aによってタッチパネル3を介して運転準備工程を開始させるという操作が行われた」という旨の操作情報を表している。前記機能が利用者の操作によって使用されたとき、PLC1の制御プログラム(情報作成部21)はその操作について操作情報O1を作成する。
【0033】
特に例示しないが、現在実行中の工程を停止させるといったような実行管理に関する機能が制御プログラムに備わっている。この機能が利用者の操作によって使用されたときは「利用者Aによってタッチパネル3を介して運転準備工程を停止させるという操作が行われた」という旨の操作情報が情報作成部21により作成される。
【0034】
[制御プログラムの編集に関する操作情報]
PLC1の記憶装置には、製品を製造するための複数のプログラムが製品の種別ごとに記憶装置に記憶されている。そして、制御プログラムは、制御プログラムの編集の一態様として、タッチパネル3の操作によって複数種類ある製品ごとのプログラムを切り替えることができる機能を備えている。
【0035】
表3の操作情報O2は、そのような制御プログラムの編集に関する機能を使用するための操作の具体例として「利用者Bによってタッチパネル3を介して製品Xを製造するためのプログラムに切り替えるための操作が行われた」という旨の操作情報を表している。前記機能が利用者の操作によって使用されたとき、PLC1の制御プログラム(情報作成部21)はその操作について操作情報O2を作成する。
【0036】
また、制御プログラムの編集の他の態様としては次のようなものもある。すなわち、設備の装置を動作させる命令や装置に与える設定値を組み合わせて製品を製造するための一連の制御プログラムをタッチパネル3の操作により作成又は編集する機能である。このような機能により設備10の現場で制御プログラムがタッチパネル3を介してを作成・編集されたとき、PLC1の制御プログラム(情報作成部21)が制御プログラムが作成又は編集された旨の操作情報を作成する。
【0037】
[制御プログラムのパラメータ編集に関する操作情報]
制御プログラムは、製品を製造するために設備10の各装置を制御するが、各装置に与えるパラメータ(設定値)をタッチパネル3の入力により変更することができる機能を備えている。表3の操作情報O3は、そのような制御プログラムのパラメータ編集に関する機能を使用するための操作の具体例として「調合タンクについて、利用者Cによってタッチパネル3を介して溶解攪拌工程の撹拌回数が300rpmから450rpmに設定変更するための操作が行われた」という旨の操作情報を表している。同様に表3の操作情報O4は、「殺菌装置について、利用者Dによってタッチパネル3を介して運転準備工程における入口側熱媒温度を80℃から85℃に設定変更するための操作が行われた」という旨の操作情報を表している。前記機能が利用者の操作によって使用されたとき、PLC1の制御プログラム(情報作成部21)はその操作について操作情報O3、操作情報O4を作成する。
【0038】
[運転状況の表示に関する操作情報]
制御プログラムは、設備10の各装置に備わる測定装置から測定値を取得可能となっており、測定値を設備10の運転状況としてタッチパネル3に表示する機能を備えている。表3の操作情報O5は、そのような運転状況の表示に関する機能を使用するための操作の具体例として「利用者Eによってタッチパネル3を介して調合タンクの温度及び液面を表示させるための操作が行われた」という旨の操作情報を表している。前記機能が利用者の操作によって使用されたとき、PLC1の制御プログラム(情報作成部21)はその操作について操作情報O5を作成する。
【0039】
なお、PLC1にはタッチパネル3の操作者を特定することが可能な認証機能を有しており、制御プログラムの情報作成部21はその認証機能を用いて利用者を含む操作情報を作成している。このような認証機能については公知の技術であるので、詳細は省略する。
【0040】
表4に警報情報を例示する。警報情報とは、設備に異常が生じた旨を表す情報である。また、警報情報には、警報が解除された(例えば異常状態が正常に戻った)という内容を含む。
【0041】
【表4】
【0042】
表4の各行は、製造ラインAを管理するPLC1Aにおいて作成された警報情報である。一行目は調合タンクにおいて温度異常があったことを表している。二行目は殺菌装置において温度異常があったことを表している。三行目は殺菌装置の温度異常が正常に戻った(復帰)ことを表わしている。四行目はフィルター装置において一次側の製品の圧力に異常があったことを表している。五行目はフィルター装置の圧力の異常が正常に戻った(復帰)ことを表わしている。
【0043】
このような異常は、制御プログラムの一機能である警報部22が設備10の各装置に備わる測定装置から測定値を定期的に取得し、予め記憶装置に設定した閾値と比較することにより判定する。例えば、調合タンクを流通する製品の温度が30℃以上であれば異常であるとするならば、予めPLC1の記憶装置に30℃を記憶させておき、その温度と測定装置から得た実際の測定値(温度)と比べ、測定値が30℃以上であれば調合タンクに温度異常が発生したと判定する。また、異常判定をした後に温度が閾値未満であれば正常状態に復帰したと判定する。
【0044】
なお、警報部22は、PLC1の制御プログラムの一機能としたが、このような場合に限定されない。例えば、各装置の異常を検知する公知の異常検知システムを用い、PLC1の制御プログラムは、その異常検知システムから警報を受け取り警報情報を作成してもよい。この場合、異常検知システムが警報部に相当することになる。
【0045】
また、警報情報には、警報情報の元となる装置の情報(装置情報)が含まれている。表4の例では、警報情報W1は調合タンクに関する警報であるので、装置情報としては「調合タンク」が含まれている。このように情報作成部21は、警報情報を作成する際には、警報の原因となる装置情報具体例としては装置の名称など)を含めて警報情報を作成する。
【0046】
情報作成部21は、上述したような定期的な実績レコード、並びに不定期なイベント情報である工程情報、操作情報及び警報情報を作成し、これらをその発生時刻とともにPLC1の記憶装置30に記憶する。詳細には、記憶装置30には、既読管理部31及び情報記憶部32が設定されている。
【0047】
情報記憶部32は、情報作成部21によって作成されたイベント情報、すなわち工程情報、操作情報及び警報情報が記憶される記憶装置の一領域である。情報記憶部32は、記憶装置30のアドレスによって特定された領域にイベント情報を記憶させる。
【0048】
既読管理部31は、情報記憶部32に記憶されたイベント情報がPC2によって読み取られたか否か、さらには未使用であるかが記憶される記憶装置30の一領域である。一つのイベント情報はアドレスとして例えば「10000番地-10100番地」で指定される情報記憶部32の一領域に記憶されている。既読管理部31には、イベント情報が記憶されたアドレスである「10000番地-10100番地」はPC2により読み取られた又は読み取られていないかを表わす情報が記憶される。なお、既読管理部31には、イベント情報が記憶されていないこと(未使用)も記憶される。
【0049】
図3は、情報作成部21の動作を説明する図である。同図の情報記憶部32は、表2-表4に示したような具体的なイベント情報である警報情報W1-W3、工程情報S1-S3、操作情報O1-O3が記憶されていることを表わしている。また既読管理部31には、警報情報W1、W2についてPC2には読み取られていない「未読」状態であることを表わす情報が記録されている。さらに既読管理部31には警報情報W3については、PC2に読み取られた「既読」状態であることを表わす情報が記憶されている。工程情報S1-S3、操作情報O1-O3についても同様に「既読」又は「未読」状態であることが既読管理部31に記憶されている。
【0050】
また、情報記憶部32のうちイベント情報が記憶されていない領域については、その領域が「未使用」状態であることが既読管理部31に記憶されている。
【0051】
情報作成部21は、イベント情報を作成したら、既読管理部31を参照してPC2により読み取られたイベント情報を特定する。このイベント情報を既読イベント情報と称する。図3(a)に示す例では、警報情報W3、工程情報S3、操作情報O3が既読イベント情報となる。情報作成部21は、情報記憶部32のうち、既読イベント情報が記憶されていた領域又は未使用の領域に、新たに作成したイベント情報をそのイベント情報を作成した日時とともに記憶させる。そして、新たに作成したイベント情報が未読であることを既読管理部31に記憶させる。
【0052】
警報情報W4を作成した場合を例にとると、図3(a)に示すように警報情報W3が既読であるから、図3(b)に示すように警報情報W3が記憶されていた領域に警報情報W4で上書きし、警報情報W4が未読であることを既読管理部31に記憶させる。もちろん、情報記憶部32のうち未使用の領域に警報情報W4を記憶させてもよい。また、新たに記憶しようとする警報情報W4のデータのサイズが上書き対象の警報情報W3よりも大きい場合は、既読であり、かつデータのサイズが大きい他の警報情報に上書きするか、未使用の領域に警報情報W4を記憶させればよい。
【0053】
このように、情報作成部21は既読管理部31を参照して、新たなイベント情報を既読のインベント情報に上書き、又は未使用の情報記憶部32に記憶するので、未読のイベント情報を新たなイベント情報で上書きしてしまうことを回避することができる。
【0054】
上述のようにして作成されたイベント情報はPC2により読み取られる。そのための構成として、PC2は、PLC1が記憶したイベント情報を読み取る取得手段40を備えている。取得手段40は、PC2に、PLC1からイベント情報を取得させるための手段であり、具体的にはPC2で実行されるプログラムとして実装されている。
【0055】
図4は取得手段の動作を示す図である。図4(a)に示すように、取得手段40は、定期的に、PLC1の既読管理部31を参照して未読状態のイベント情報を特定する。同図の例では、未読である警報情報W4が特定される。次に、図4(b)に示すように、取得手段40は、情報記憶部32から警報情報W4を読み出してPC2の記憶装置に記憶する。その後、取得手段40は、既読管理部31に警報情報W4が既読であることを記憶させる。又は、特に図示しないが、取得手段40は、既読の警報情報W3、W4について未使用である旨を既読管理部31に記憶させる。さらに、取得手段40は、複数のPLC1のうち、どのPLC1から取得したかを合わせてイベント情報を記憶する。
【0056】
図5は取得手段によるイベント情報を取得するタイミングを示す図である。PLC1において時刻t1において警報情報W1が作成され、時刻t2において警報情報W2が作成されている。一方、PC2では、定期的な間隔を空けて時刻t3、時刻t4に情報記憶部32からイベント情報を取得している。
【0057】
警報情報W1は不定期に発生する一方、PC2は定期的に警報情報W1などイベント情報を読み取りに行くので、警報情報W1の発生時刻t1、PC2が警報情報W2が取得した取得時刻t3とは、大きくズレる可能性が高い。しかしながら、警報情報W1はその発生時刻t1とともに情報記憶部32に記憶されているので、PC2の取得タイミングによらずに正確な発生時刻とともに警報情報W1をPC2の記憶装置に蓄積することができる。警報情報W2についても同様である。また、同様に、図示しない操作情報や工程情報についても、PC2の取得タイミングによらず正確な発生日時とともにPC2に蓄積することができる。
【0058】
また、取得手段40は未読のイベント情報を情報記憶部32から取得し、一度読み出したイベント情報は既読又は未使用とするので、同じイベント情報を重複して取得することを回避することができる。
【0059】
図6にPC2の記憶装置に記憶されたイベント情報を例示する。PC2には、PLC1A又はPLC1Bから取得したイベント情報が記憶される。設備10の製造ラインA、製造ラインBで生じ、PC2に記憶されたイベント情報を履歴情報と称する。PC2では履歴情報が記憶されるので、設備10で得られた全てのイベント情報をPC2で管理することができる。履歴情報は、PC2がイベント情報を取得した順に並ぶことになるが、履歴情報に並び替えやフィルターを適用することで、目的に応じた履歴情報を抽出することができる。例えば、PLC1A(製造ラインA)で取得したもののみを抽出するフィルターと、時系列に並び替えることで、製造ラインAで生じた履歴情報を利用者に提供することができる。もちろん、フィルターの適用先はPLC1AやPLC1Bなどに限らず、各表に示したイベント情報の任意の内容を対象とすることができる。
【0060】
以上に説明した管理システムIでは、PLC1で制御プログラムが実行されることで、設備10において製品を製造するための工程が実行され、目的とする医薬品や飲料食品が製造される。この制御プログラムの実行に伴いイベント情報が情報記憶部32に記憶され、PC2に蓄積される。より具体的には、情報作成部21は、既読管理部31を参照して既読のイベント情報に新たなイベント情報を上書きするか、又は未使用の領域に新たなイベント情報を記憶させる。つまり、未読のイベント情報が別のイベント情報で上書きされずに情報記憶部32に維持することができる。そして、PC2は情報記憶部32の未読のイベント情報を読み取ればよく、イベント情報を重複して取得することを回避できる。このようにして設備10で不定期に発生するイベント情報をより確実に蓄積することができる。
【0061】
そして、管理システムIは、図5にも示したようにイベント情報が不定期に発生するが、その発生日時とともに情報記憶部32に記憶させる。これにより、PC2が定期的にイベント情報を取得しても正確な発生日時とともにイベント情報を取得することができる。
【0062】
管理システムIは、イベント情報として警報情報を作成し、PC2の記憶装置に記憶することができる。これにより、設備10で発生した異常や異常からの復帰といった不定期に発生する事象について、その発生日時とともに正確に把握することができる。
【0063】
管理システムIは、イベント情報として操作情報を作成し、PC2の記憶装置に記憶することができる。これにより、利用者によりタッチパネル3を介してPLC2に行われた操作を、その発生日時とともに正確に把握することができる。
【0064】
管理システムIは、イベント情報として工程情報を作成し、PC2の記憶装置に記憶することができる。これにより、設備10で行われている工程の進捗状況を、その発生日時とともに正確に把握することができる。
【0065】
また、図2に示すように、管理システムIは、支援手段41を備えている。支援手段41は、PC2で実行されるプログラムとして実装されており、警報情報の原因に関連するイベント情報を抽出する。
【0066】
具体的には、支援手段41は、利用者に指定された警報情報が発生した日時よりも前のイベント情報をPC2の記憶装置から検索する。「利用者に指定された警報情報」は、例えば、PC2に蓄積されたイベント情報から警報情報を抽出してディスプレイなどの出力装置に表示し、その中から利用者がマウスやキーボード、タッチパネルなどの入力装置により選ばれた警報情報である。また、利用者が直接警報情報を選択する場合に限らず、利用者が日時や内容などを指定し、その指定した事項に合致したものを「利用者に指定された警報情報」としてもよい。
【0067】
例えば、利用者によって表4から警報情報W1が指定されたとする。この場合、支援手段41は、警報情報W1の日時である「2011/11/1 10:20」よりも前に発生した工程情報S1-S10をPC2の記憶装置から抽出する(表5)。
【0068】
【表5】
【0069】
このような支援手段41により抽出された工程情報S1-S10は、警報情報W1「調合タンクの温度異常」の発生原因である可能性がある工程として利用者に提示される。
【0070】
また、利用者によって表4から警報情報W1が指定されたとする。この場合、支援手段41は、警報情報W1の日時である「2011/11/1 10:20」よりも前に発生した操作情報O1-O3をPC2の記憶装置から抽出する(表6)。
【0071】
【表6】
【0072】
支援手段41により抽出された操作情報O1-O3は、警報情報W2「殺菌装置の温度異常」の発生原因である可能性がある工程として利用者に提示される。また、特に例示しないが、支援手段41は、利用者に指定された警報情報の発生日時より前であり、かつ同日の工程情報又は操作情報を検索してもよい。表6の例では警報情報W1と同日の操作情報O3のみが抽出されることになる。
【0073】
このような支援手段41によれば、利用者は警報情報を指定することで、その原因となった可能性がある工程情報や操作情報をすぐに把握することができ、原因の究明やその対策を速やかに行うことができる。上述の例では、利用者は警報情報W1を指定すると、表5の工程履歴や表6の操作情報を得ることができるので、これを元に溶解攪拌工程において撹拌回数の設定変更をしたことが原因で生じたと推定することができる。支援手段41は、このような利用者による警報情報の原因を調査する作業を支援することができる。
【0074】
また、利用者によって警報情報W1が指定されたとき、表5や表6に示した工程情報及び操作情報を検索したが、警報情報W1よりも前に発生した警報情報を検索してもよい。これにより、例えば同じ装置で同じような異常が起きている、同じような時刻で異常が起きているといったことを利用者に提示することができる。
【0075】
さらに支援手段41は、利用者により警報情報が指定されたとき、その警報情報に含まれる装置情報が共通するイベント情報を検索する機能も有している。例えば、利用者により警報情報W1が指定されたとき、その警報情報W1には装置情報として「調合タンク」が含まれている。支援手段41は、装置情報に「調合タンク」を有する工程情報や操作情報を検索する。この検索結果を表7及び表8に示す。
【0076】
【表7】
【0077】
【表8】
【0078】
表7に示すように工程情報は調合タンクに関するものに限定され、表8に示すように操作情報は調合タンクに関するものに限定されている。表5及び表6と比べて、警報の原因と考えられる工程情報や操作情報が絞り込まれている。このような支援手段41によれば利用者による警報情報の原因を推定する作業をより効率的に支援することができる。
【0079】
さらに支援手段41は、利用者により警報情報が指定されたとき、設備10の図データを用いてイベント情報を検索する機能を有している。
【0080】
図データとは、設備10を構成する装置の配置及び接続を表す情報であり、具体的には、名称、種類、配置場所など個々の装置に関する情報や、設備機器同士の接続関係を表す情報から構成されている。図データの例としては電子データとして構成されたP&IDが挙げられる。
【0081】
支援手段41は、利用者により警報情報が指定されたとき、その警報情報に含まれる装置情報と配置上の関連がある周辺装置を図データから抽出する。配置上の関連がある周辺装置とは、例えば、ある製造ラインに接続された複数の装置であったり、一つの装置に付随する部品群をいう。一本の配管に接続された調合タンク11、殺菌装置12、フィルター装置13、貯留タンク14などが周辺装置となる。他にも、一つのタンクとこれに付随する撹拌装置、各種センサーなどが周辺装置となる。
【0082】
図データには、各装置の配置や接続関係が表現されているため、支援手段41は図データを元に、利用者により指定された警報情報に含まれている装置情報を元に、当該装置情報と配置上関連がある周辺装置を抽出する。そして、支援手段41は、その装置情報と周辺装置を含むイベント情報を検索する。
【0083】
例えば、表4の警報情報W2の装置情報は「殺菌装置」である。したがって、支援手段41は、警報情報W2の日時より前であり、かつ殺菌装置、及び殺菌装置の周辺装置(例えば調合タンク)を装置情報に含むイベント情報を検索する。例えば、利用者により警報情報W2が指定されたとき、その警報情報W2には装置情報として「殺菌装置」が含まれている。支援手段41は、図データから殺菌装置に配置上関連のある周辺機器として例えば「調合タンク」を得る。支援手段41は、周辺装置である「調合タンク」を装置情報に含む工程情報や操作情報を検索する。この検索結果を表9及び表10に示す。
【0084】
【表9】
【0085】
【表10】
【0086】
表9は結果としては表5と同じであるが、表10は指定した警報情報W2の装置情報「殺菌装置」とは異なる「調合タンク」を含んだ操作情報O3も検索されている。この表10をみれば、警報情報W2の「殺菌装置」と配置上関連する他の周辺装置である「調合タンク」に関する操作情報O3が検索されるので、調合タンクに行った操作が原因で殺菌装置において警報が発せられたかもしれない、と利用者は推定することができる。このように支援手段41によれば、実際の警報原因を究明する作業をより効率的に支援することができる。
【0087】
なお、図データを用いる場合、利用者により指定された警報情報W2より前のイベント情報のみならず、その後のイベント情報を抽出してもよい。
【0088】
また、配置上関連のある周辺装置の選択方法としては、利用者により指定された警報情報の装置情報(上述の例では警報情報W2の「殺菌装置」)を基準として、同じ製造ラインの上流側の装置(上述の例では調合タンクであるが、さらにそれより上流の図示しない任意の装置を含む)を周辺装置として選択することが挙げられる。他にも、同じ製造ライン上で上流側又は下流側に隣接する装置(上述の例では、殺菌装置の上流側の調合タンク、及び殺菌装置の下流側のフィルター装置)を周辺装置として選択することが挙げられる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0090】
例えば、上述の実施形態では、製造ラインの調合タンク11、殺菌装置12、フィルター装置13、貯留タンク14において製品を製造する際のイベント情報を収集したが、このようなイベント情報に限定されない。管理システムIは、CIP/SIP装置15を動作させて製造ラインを洗浄及び殺菌する際に発生する工程情報、操作情報及び警報情報を収集することもできる。
【0091】
PC2がPLC1の情報記憶部32からイベント情報を取得する際には、一度に全ての未読のイベント情報を取得してもよいし、一度に決まった個数の未読のイベント情報を取得してもよい。
【0092】
また、PC2がPLC1の情報記憶部32からイベント情報を定期的に取得する間隔は、イベント情報の発生頻度や情報記憶部32の容量を考慮して設定することが好ましい。これにより、PLC1の情報記憶部32は、既読のイベント情報で溢れず、新しい(未読の)イベント情報を記憶できる状態とすることができる。
【0093】
また、PLC1には、ハートビート信号を定期的に出力する機能が備わっている。PC2ではこのハートビート信号を監視し、一定時間ハートビートに変化がなければ、PLC1のハートビートが異常である旨を記憶装置に記憶する。
【符号の説明】
【0094】
1…PLC(制御装置)、2…PC(情報処理装置)、3…タッチパネル(TP;入出力装置)、10…設備、21…情報作成部、22…警報部、30…記憶装置、31…既読管理部、32…情報記憶部、40…取得手段、41…支援手段
【要約】
【課題】医薬品や飲料食品を製造する設備で不定期に発生するイベント情報をより正確に記録することができる管理システムを提供する。
【解決手段】PLC1は、イベント情報を記憶する情報記憶部32と、情報記憶部32に記憶されたイベント情報がPC2によって読み取られたか否かを記憶する既読管理部31と、設備で不定期に発生したイベントの内容を表わすイベント情報を作成し、その作成日時とともに情報記憶部32に記憶させる情報作成部21と、を備え、情報作成部21は、既読管理部31を参照して情報記憶部32のうち既読のイベント情報が記憶されていた領域にイベント情報を記憶させるとともに当該イベント情報がPC2により読み取られていないことを既読管理部31に記憶させ、PC2は、定期的に、既読管理部31を参照して未読のイベント情報を情報記憶部32から読み出し、既読であることを既読管理部31に記憶させる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6