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特許7110473検出特性の比に基づく距離センサのミスアライメントの検出方法
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  • 特許-検出特性の比に基づく距離センサのミスアライメントの検出方法 図1
  • 特許-検出特性の比に基づく距離センサのミスアライメントの検出方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】検出特性の比に基づく距離センサのミスアライメントの検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/931 20200101AFI20220725BHJP
   G01S 15/87 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
G01S15/931
G01S15/87
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021500595
(86)(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 DE2018100632
(87)【国際公開番号】W WO2020011291
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン、トゥネルト
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル、ハレック
(72)【発明者】
【氏名】レネ、クラウゼ
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-072236(JP,A)
【文献】特開2000-056020(JP,A)
【文献】特表2010-515183(JP,A)
【文献】米国特許第06061001(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0312906(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0290169(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015103542(DE,A1)
【文献】渡辺 正浩 他,周辺監視レーダ -車々間通信への適用-,電子情報通信学会2001年総合大会講演論文集,日本,社団法人電子情報通信学会,2001年03月07日,Page 428
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価装置(3)によって自動車(1)の第1距離センサ(4)の第1センサ信号から第1検出特性を抽出するステップ(S1)と、
前記評価装置(3)によって第2距離センサ(2)の第2センサ信号から第2検出特性を抽出するステップ(S2)であって、前記2つの検出特性は同一タイプである、ステップ(S2)と、
前記評価装置(3)によって前記第2検出特性に対する前記第1検出特性の比(S3)から、前記第1距離センサ(4)のミスアライメントに関するミスアライメント情報を作成するステップ(S4)と、によって自動車の第1距離センサ(4)のミスアライメントを検出するための方法であって、
前記第1距離センサ及び前記第2距離センサは超音波センサであり、
前記2つの検出特性は、それぞれ、エコー数、特定クラスの検出物体の数、前記各センサ信号の包絡線の形状、または信号ノイズの測定結果であることを特徴とする、方法
【請求項2】
前記ミスアライメント情報に応じて、前記自動車の安全システムが一時的に停止される(S5)ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1検出特性および前記第2検出特性の両方が、平均計算を用いて形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ミスアライメント情報を作成するステップ(S5)は、特定距離を移動した後に行われることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ミスアライメント情報を作成するステップ(S4)において、前記自動車の積載状態に関する情報が、補正を目的として考慮されることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1距離センサ(4)のミスアライメントを検出するための装置であって、
- 前記第1距離センサ(4)と、
- 前記第1距離センサ(4)の第1センサ信号から第1検出特性を抽出する(31)ための評価装置(3)と、
- 第2距離センサと、
を有し、
前記第1距離センサ及び前記第2距離センサは超音波センサであり、
前記2つの検出特性は、それぞれ、エコー数、特定クラスの検出物体の数、前記各センサ信号の包絡線の形状、または信号ノイズの測定結果であり、
- 前記評価装置(3)は、第2距離センサ(4)の第2センサ信号から第2検出特性を抽出する(S2)ように設計され、前記2つの検出特性は同一タイプであり、
- 前記評価装置(3)は、前記第2検出特性に対する前記第1検出特性の比(S3)から、前記第1距離センサ(4)のミスアライメントに関するミスアライメント情報を作成する(S4)ように設計される、ことを特徴とする、装置。
【請求項7】
請求項に記載の装置を備える自動車であって、
前記2つの距離センサ(4)のうちの一方は前記車両(1)の前部に配置され、他方の距離センサ(4)は前記車両(1)の後部に配置される。
【請求項8】
請求項に記載の装置を備える自動車(1)であって、
進行方向に対して、前記2つの距離センサ(4)のうちの一方は前記自動車(1)の左側部に配置され、他方の距離センサ(4)は前記自動車(1)の右側部に配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の距離センサのセンサ信号から検出特性を抽出することにより、自動車の距離センサのミスアライメント(状態不良)を検出するための方法に関する。また、本発明は、距離センサによって距離センサのミスアライメントを検出するための対応する装置、および距離センサのセンサ信号から検出特性を抽出するための評価装置に関する。本発明は、このような装置を有する自動車にも関する。
【背景技術】
【0002】
特に、ドライバー支援システムは距離センサを使用する。このようなドライバー支援システムまたはドライバー支援装置は、道路交通での特定操作の実行において、自動車のドライバーを支援するために使用されることが知られている。現行の自動車(以下、略して車両とも称する)において、既に多数のドライバー支援システムが広範囲のタスクに使用されている。
【0003】
例えば、駐車システムとも称されるドライバー支援システムが、駐車スペースに駐車する際に車両のドライバーを支援するように使用されている。このプロセスにおいて、駐車システムは、例えば車両の側部に装着されたセンサを使用して可能な駐車スペースを測定し、ギャップデータから駐車軌道を計算し、そして例えば能動的な操縦介入により、および/またはドライバーの指示により、車両を駐車スペース内に操縦する。駐車操作中または駐車時に、駐車スペースに隣接する物体までの距離がセンサによってモニタリングされる。
【0004】
ドライバー支援システムに実装された周囲環境を検出するためのいくつかの方法およびシステムが既に知られている。これらは、例えば車両の側部に装着された単数または複数の距離センサによって周囲環境をスキャンして幾何学的データを抽出し、道路沿に駐車している車両の列における駐車スペースを検出したり、ドライバーにこのような駐車スペースを通知したり、上述の駐車システムの文脈において、ごくわずかのアプリケーションを呼び出したりする。このような既存の既知の方法およびシステムは、周囲環境にある障害物や駐車している車両等の物体であって、距離センサまたはその捕捉方向に対して垂直に相対移動する物体が、周囲環境の幾何学的形状と少なくとも大まかな対応を既に有する信号プロファイルを生成する、という性質を利用する。例えば、障害物までの距離が増加する立ち下がりエッジは、道路の脇に駐車する車両間の駐車スペースの始まりを表し、距離が減少する立ち上がりエッジは、駐車スペースの終わりを意味する。
【0005】
これらの方法およびシステムは、車両内又は車両上の少なくとも1つの距離センサの実際の位置または設置位置が把握されている限り、良好に機能する。距離センサの位置は、例えば、空間座標X、Y、Zおよび/または単数または複数の装着角度α、γにより与えられる。特に、超音波センサは、現在、自動車のフロントバンパー内に設置されている。対応する超音波システムの機能を確保するには、超音波センサの原初の配置方向が(狭い許容範囲内に)維持されることが重要である。
【0006】
しかしながら、少なくとも1つの距離センサの既知の位置または設置位置、特に単数または複数の装着角度α、γが、例えば衝撃や衝突の結果として持続的に変化することで少なくとも1つの距離センサのミスアライメントが生じた時点で、このような方法およびシステムはもはや適切に機能しなくなる。
【0007】
例えば、自動車が衝突した場合、フロントバンパーが変形したり外れたりすることがある。また、センサがバンパーのブラケットから外れたり、センサブラケット自体が外れたりする可能性もある。上述の事態全てにより、センサの原初アライメントが保証されなくなることが一般的である。この結果、影響を受けたセンサとともに下流の評価装置が検出する物体が多すぎるか少なすぎるという効果が想定される。
【0008】
一方で、UN/ECE R42規格では、低速での衝突後も、駆動ユニット、サスペンション(タイヤを含む)、ステアリング、およびブレーキシステムが正しく調整され正常に機能し続けることが求められている。
【0009】
これに沿って、特許明細書DE 196 50 863 C12は、車両の共働の評価に基づいて、距離センサの鉛直方向のミスアライメントまたは誤調整が検出可能であることを開示している。
【0010】
また、明細書DE 10 2009 031 561 A1は、距離センサのミスアライメントを検出および/または修正するための方法を開示している。距離センサの信号プロファイルがモニタリングされて統計的に評価される。信号プロファイルの顕著な非対称性が、距離センサのミスアライメントを示すものとして解釈される。
【0011】
ミスアライメントにより、例えば駐車スペースの隣に停車している車両と衝突するリスクが増加するデメリットが発生する。また、ミスアラインメントにより、例えば入車および/または出車軌道の経路を決めるために抽出された幾何学的データにアクセスする車両のドライバー支援システムの信頼性が低下するデメリットが発生する。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明の目的は、距離センサのミスアライメントを検出するためのより信頼性の高い方法と、より信頼性の高い装置とを提案することである。
【0013】
本発明によれば、この目的は、独立項に記載の方法および装置によって達成される。本発明の有利な拡張は、従属項から得られる。
【0014】
したがって、本発明によれば、自動車の第1距離センサの第1センサ信号から第1検出特性を抽出することにより、自動車の第1距離センサのミスアライメントを検出するための方法が提供される。距離センサは、自動車の特定の目標位置に設置されている。車両が衝突した場合、通常バンパーの1つに収容されている距離センサの状態が変わってしまう可能性がある。この結果としての距離センサの状態を、ミスアライメント(状態不良、配置不良)と呼ぶことができる。例えば、衝突後、距離センサはもはや水平方向における正しい位置になく、ぶら下がった状態になるかもしれない。これは、典型的なミスアライメントに対応する。ミスアライメントを検出するために、距離センサのセンサ信号が分析される。これにより、第1距離センサの第1センサ信号から第1検出特性が得られる。
【0015】
第1距離センサのミスアライメントは、第1距離センサの検出特性(第1検出特性)のみでは十分確実に決定することができないため、本発明によれば、第2距離センサの第2センサ信号から第2検出特性が抽出される。第1検出特性及び第2検出特性は、同一タイプである。第2距離センサの第2検出特性により、例えば、路面等の自動車の周囲環境のみが変化したというような可能性を排除することができる。次に、第1検出特性と第2検出特性との比から、第1距離センサのミスアライメントに関するミスアライメント情報が作成される。したがって、第1検出特性及び第2検出特性は、互いの比として表される。結果として、ミスアライメント情報は、複数の情報項目、すなわち、第1検出特性及び第2検出特性から構成される。
【0016】
例えば、検出特性は、超音波センサとして実現された距離センサのエコー数であり得る。この時、エコー数の比から、距離センサのうちの一方のミスアライメントを確実に推定することができる。例えば、第1距離センサがぶら下がった状態である場合、水平位置で通常生じるより顕著に多いエコーが受信される。この場合、信号のノイズも大きくなる。ただし、同様の状況は、自動車が砂利の上を走行しているとき、正常な距離センサ、すなわち水平方向において位置合わせされた距離センサでも発生する。この時も、通常より多くのエコーが検出されるであろう。しかしながらこの場合には、両方の距離センサが多数のエコーを記録するであろう。これに対し、検出特性(本例ではエコー数)の比が形成される場合、この比から一方の距離センサのミスアライメントの有無を信頼性高く識別することができる。
【0017】
有利な設計において、第1検出特性及び第2検出特性は、それぞれ、エコー数、特定クラスの検出物体数、各センサ信号の包絡線の形状、または信号ノイズの測定値である。「エコー数」の検出特性タイプについては、既に一例を挙げた。「特定クラスの検出物体数」の検出特性タイプについては、センサ信号に基づいて物体検出および分類が行われ得る。この場合、例えば、縁石や駐車中の車等の物体が検出され得る。各センサ信号の包絡線の形状も、距離センサの状態の特徴を示すものであり得る。特に、稜線の険しさや最大振幅等がその役割を果たし得る。別の検出特性タイプは、「信号ノイズの測定結果」であり得る。この測定結果(測定値)は、例えば、ノイズの強度またはレベルとすることができる。信号ノイズは、通常、下方を向いた距離センサで増加する。
【0018】
更に有利な設計によれば、ミスアライメント情報に応じて、自動車の安全システムが一時的に停止される。例えば、自動車の緊急ブレーキシステムが距離センサの信号により制御されている場合に、距離センサ信号の信頼性が失われたとき、または距離センサのミスアライメントが検出されたとき、この制御を一時的にオフにする、または休止させれば有利である。
【0019】
また、第1検出特性および第2検出特性の両方が、平均計算を使用して形成されれば有利であり得る。この平均計算は、例えば、より長い測定期間における複数の個別の測定値に基づいて行われる。平均計算により、各検出特性の信頼性が増す。したがって、例えば、エコー数が複数回の測定期間に亘って測定され、次いで平均値がこれらの数値から生成される場合、信頼性を高めることができる。これは、第1距離センサおよび第2距離センサの両方の評価に適用される。
【0020】
また、ミスアライメント情報が、特定距離を走行した後に作成されることが想定され得る。したがって、例えば、第1距離センサ及び第2距離センサについて、100mの走行距離に亘るエコー数が測定され得る。あるいは、任意の時間間隔、例えば1分間のエコー数が測定される。
【0021】
さらに有利な設計において、ミスアライメント情報を形成するプロセスにおいて、自動車の積載状態に関する情報が、補正を目的として考慮され得る。この理由は、自動車の積載状態が変化する場合、路面に対する各距離センサの位置または配置方向も通常変化し得ることにある。例えば、自動車のトランクに荷物を積んだ場合、車両の後部の距離センサが、自動車の前部のものより下方に位置するであろう。したがって、後部のセンサの検出特性と前部のセンサとの検出特性との比は、単に積載状態のみを理由として変化する可能性がある。このような可能性を排除する、または補正することを目的として、例えば車両のCANバスからの車両の積載状態に関する情報を利用することができる。
【0022】
また、上述の目的は、本発明によれば、第1距離センサのミスアライメントを検出するための装置によっても解決される。本装置は、第1距離センサと、第1距離センサの第1センサ信号から第1検出特性を抽出するための評価装置と、を有するとともに、第2距離センサを有している。評価装置は、第2距離センサからの第2センサ信号から第2検出特性を抽出するように設計されている。第1検出特性及び第2検出特性は同一タイプである。また、評価装置は、第2検出特性に対する第1検出特性の比から、第1距離センサのミスアライメントに関するミスアライメント情報を作成するように設計されている。
【0023】
本発明による方法および変形可能性に関する上述の利点は、必要な変更を加えた上で、本発明による装置にも当てはまる。本例において、各方法特性は、装置に関して上述した特性の機能特性としてみなされるべきである。
【0024】
上述のように、第1距離センサ及び第2距離センサは、超音波センサであり得る。これらは、その頑健性と信頼性を理由として、距離センサとして通常使用されている。しかしながら、距離センサは、レーダーセンサまたはライダーセンサであってもよい。
【0025】
上述のように、距離センサのミスアライメントを検出するための装置は、自動車に設置され得る。本例において、第1距離センサ及び第2距離センサのうち、いずれか一方の距離センサは車両の前部に配置され得るとともに、他方の距離センサは車両の後部に配置され得る。あるいは、進行方向に対して、第1距離センサ及び第2距離センサのうち、いずれか一方の距離センサは自動車の左側部に配置され得るとともに、他方の距離センサは自動車の右側部に配置され得る。複数のセンサが車両の前部および車両の後部の両方に配置される場合、前部および後部からの対応するセンサを一対の距離センサに、例えば、第1前部外側距離センサおよび第2後部外側距離センサ、または第1前部内側距離センサおよび第2後部内側距離センサに使用することができる。しかしながら更に、例えば複数対の距離センサが、車両の前部の距離センサグループのみから、または車両の後部の距離センサグループのみから形成される。
【0026】
上述の特徴および特徴の組み合わせ、および以下の図面の説明および/または図面に記載の特徴および特徴の組み合わせは、本発明の範囲から逸脱することなく、記載された各組み合わせのみならず他の組み合わせにも適用可能である。したがって、本発明のかかる実施形態は、図面に明示または説明されていないが別個の特徴の組み合わせにより記載された実施形態から出現するまたは生成され得るものであり、本発明に含まれ且つ開示されているとみなされるべきである。したがって、独立項に最初に記載された全ての特徴を有さない実施形態および特徴の組み合わせも、開示されているとみなされるべきである。更に、特許請求の範囲の相互参照に記載された特徴の組み合わせを超える、またはこれらと異なる設計および特徴の組み合わせ、特に上述の設計も開示されているとみなされるべきである。更に、特許請求の範囲の相互参照に記載された特徴の組み合わせを超える、またはこれらと異なる設計および特徴の組み合わせ、特に上述の設計も開示されているとみなされるべきである。
【0027】
本発明は添付図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態による距離センサ装置を有する自動車を示す図。
図2】本発明による方法の概略シーケンスを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、上方から見た自動車1を示す。本例における自動車1は、乗用車として設計されている。自動車1は、一例として、自動車1の駐車支援システムで使用される距離センサ装置としての超音波センサ装置2を有している。超音波センサ装置は、工場において自動車1に取り付けられ得る。超音波センサ装置がいわゆる後付けキットとして実現され、自動車の製造後に自動車1に取り付けられることも想定可能である。
【0030】
超音波センサ装置2すなわち距離センサ装置は、少なくとも2つの距離センサすなわち超音波センサ4を備えている。例示的な本実施形態において、超音波センサ装置2は、8個の超音波センサ4を備えている。これらのうち、4個の超音波センサ4が自動車1の前方セクション5に配置され、4個の超音波センサ4が自動車1の後部セクション6に配置されている。超音波センサは、例えば、自動車1のバンパーの適切な凹部または貫通孔に配置され得る。あるいは、超音波センサ4は、バンパーの背後に見えないように配置され得る。各超音波センサ4は、超音波信号を発信可能である。また、自動車1の周囲環境7における物体8から反射した超音波が、再び受信され得る。
【0031】
少なくとも2つの超音波センサ(以下、第1および第2距離センサとも称する)の他に、距離センサ装置すなわち超音波センサ装置2は、データ転送のために超音波センサ4に接続された、電子的な制御装置3を更に有している。例えば、超音波センサ4は、制御装置3にデータバスを介して接続され得る。制御装置3(以下、評価装置とも称する)は、距離センサすなわち超音波センサ4により提供されたセンサデータを評価するために使用され得る。センサ信号を評価するために、少なくとも1つの評価パラメータすなわち検出特性が利用される。この検出特性は、各超音波センサ4の設置位置および/または装着角度の関数として測定され得る。さらに、検出特性は、超音波センサ4の互いに対する相対位置の関数としても測定され得る。また、検出特性は、超音波信号の発信時の周波数および/または音圧レベルの関数として測定され得る。特に、関連する検出特性を得るように、距離センサの各センサ信号が閾値または閾値曲線と比較され得る。
【0032】
工場からの出荷時に、距離センサすなわち超音波センサ4は、車両に略水平方向に配置されている。これは、センサの主な放射線発信方向が本質的に水平であるということを意味する。車両1が障害物と衝突した場合、距離センサの状態が変化することがある。例えば、ぶら下がった状態になったり、上向きになったりすることがある。この結果、距離センサが間違った位置を占める、すなわちミスアライメントが生じる。
【0033】
本発明の目的は、単数または複数の距離センサのこのようなミスアライメントを検出することである。ミスアライメントが検出されると、種々の動作が開始される。したがって、例えば、ドライバーにミスアライメントが報知され得る、または(緊急ブレーキ等の)安全重要システムが一時的に停止され得る。
【0034】
本発明は、異なる距離センサ同士またはセンサグループ同士の検出特性の比に基づいて、ミスアライメントを検出するという考えに基づいている。比が変化した場合、ミスアライメントが存在すると推定され得る。変化の基準は、工場で自動車または制御装置に設定された値とすることができる。
【0035】
検出特性の比が計算可能であるように、各検出特性を少なくとも2つの距離センサについて測定しなければならない。したがって、少なくとも2つの距離センサを評価しなければならない。しかしながら、必要に応じて、3つ以上のセンサを比較してもよい。特に、例えば、2つのセンサグループからも適切な比が形成され得る。このようにすることにより、各グループの個々の距離センサの信号を別個に、または一緒に評価することができる。想定可能な第1グループは自動車の前方センサを含み得るとともに、想定可能な第2グループは自動車の後方センサを含み得る。こうして、グループ全体のそれぞれの検出特性、または各グループからの個々のセンサの検出特性が、比として表され得る。
【0036】
別の第1センサグループは車両の右側部のセンサであり得るとともに、第2センサグループは車両の左側部のセンサであり得る。図1に示す例のように、4つの距離センサ4が前部および後部の両方に設置されている場合、以下の個々のセンサの比較がなされ得る。例えば、前部右側内側センサが後部内側右側センサと比較され、対応する検出特性が互いの比として表される。あるいは、左側前部外側センサが前部右側外側センサと比較されてもよい、または互いに対するそれぞれの検出特性を表してもよい。原則として、任意の他のセンサ(例えば隣接するセンサ)またはセンサグループが、その都度複数のセンサと比較され得る、またはそれらの検出特性が比として表され得る。
【0037】
距離センサまたはセンサグループの信号評価中に、種々の検出特性が測定され得る。したがって、超音波センサにより、例えばエコー数が測定され得る。この場合、例えば、エコーの強度またはレベルが特定の閾値を超えると、数値が増加する。別の検出特性は、検出および/または分類された物体の個数であり得る。これを達成するために、センサ信号が物体認識および/または分類プロセスに供給される。このような物体は、例えば、縁石、駐車中の車等であり得る。
【0038】
別の検出特性は、物体の形成に寄与しないエコー数であり得る。したがって、例えばエコーが物体検出に利用できない場合、それらは、各センサのノイズ挙動を決定し得る。別の検出特性は、センサ信号の包絡線の形状であり得る。当然ながら、これに関する評価は、関係するセンサが包絡線の伝達を許可している場合のみ可能である。更に別の検出特性は、背景のノイズのレベルまたは強度であり得る。例えば、距離センサが下を向いた状態の場合には、より多くのエコーを受信し、これに応じて背景のノイズが増加する。
【0039】
図2は、自動車において距離センサのミスアライメントがいかに検出され、適切な動作が開始され得るかを示す概略的な例である。ステップS1において、第1検出特性が、第1距離センサの第1センサ信号から抽出される。続く第2ステップS2において、第2検出特性が、第2距離センサの第2センサ信号から抽出される。第1検出特性及び第2検出特性は、同一タイプである。例えば、それらは、エコー数、または検出物体の個数であり得る。その後のステップS3において、第2検出特性に対する第1検出特性の比、またはその逆が形成される。この目的のために、第1検出特性及び第2検出特性は同一タイプであって比較可能でなければならない。
【0040】
続く第4ステップS4において、ミスアライメント情報が、ステップS3の比から形成される。必要により、この比が閾値と比較され、バイナリミスアライメント情報の対応する項目が出力される。場合に応じて、この比はより精緻に評価されてもよい。これにより、ミスアライメント情報はバイナリのみならずマルチレベルであり、更には連続的でさえある。
【0041】
ミスアライメント情報に基づいて、自動車において何らかの動作が開始され得る。状況により、正しい状態にある場合に距離センサにより制御されるシステムが無効にされる。これは、制動力支援ブレーキシステム、駐車支援システム等であり得る。
【0042】
具体例において、移動中に、フロントバンパーおよびリアバンパーで生じる検出物(例えば、エコー、検出物体等)の個数が測定される。これらの検出物が比として表される。比が変化すれば、ミスアライメントが存在すると考えられる。したがって、具体的には、前部の単数または複数のセンサが、通常毎分平均10個のエコーを検出し得る一方、単数または複数の後部センサが通常毎分平均5個だけエコーを検出し得る。これは、2:1の比に相当する。この比をより長期に亘ってモニタリングする場合、この比は、正常な状態においては大きく変化すべきでない、特に所定の値範囲内にあり続けるべきである。しかしながら、例えば前部のセンサまたは後部のセンサが事故の結果、誤調整やミスアライメントの影響を受けた場合、長期に亘って比が変化し得る。これを検出することができる。
【0043】
検出特性の比を利用することで様々な利点が得られる。例えば、種々の設置位置を補正することができる。例えば、後部センサは低い位置に装着されることが多いため、前部センサより多く検出する。これは、通常、設計関連の基準比になる。この比が変化した場合、センサのうちの1つのミスアライメントが再び推定され得る。
【0044】
比を利用することの更なる利点は、種々の面を補正できることである。したがって、例えば、全てのセンサは、舗装道路上よりも砂利面で多く検出する。比の形成は、種々の周囲環境の影響や気象条件を補正できるという利点も有する。例えば雨の場合、全てのセンサは、より多くのエコーを検出する。一方、空気中を伝わる音の減衰が高い場合、全てのセンサは、より少ないエコーを検出する。
【0045】
ミスアライメント検出の機能は、車両の積載状態を考慮することで更に改善され得る。これは、例えば、車両に既に存在するセンサ装置であって、CANバスを介して、対応する積載状況の情報を提供するセンサ装置により行われ得る。本例において、例えば、検出特性の比に影響を及ぼす片側負荷が検出され得るとともに、バランスを取ったり補正したりすることができる。積載状態を検出するための想定可能なセンサは、位置センサまたは車両の油圧サスペンション内のセンサであり得る。ミスアライメントを検出するための方法は、誤調整がすぐに報告されず、所定の(有意な)距離を移動した後初めて報告されるという事実により更に改善され得る。これにより、表面状態の悪さによる二次的影響が補正され得る。
図1
図2