(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極及びそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20220725BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220725BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/13
(21)【出願番号】P 2021503567
(86)(22)【出願日】2019-07-31
(86)【国際出願番号】 KR2019009574
(87)【国際公開番号】W WO2020032471
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】10-2018-0092536
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジュン-ソ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ボム-ヨン・ジュン
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0027953(KR,A)
【文献】特表平10-504595(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0266310(US,A1)
【文献】特開平07-201363(JP,A)
【文献】国際公開第2011/037124(WO,A1)
【文献】特表平08-507407(JP,A)
【文献】特開2018-190527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/66
H01M 4/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極集電体と、前記電極集電体の少なくとも一面に位置し、バインダー及び導電材を含むプライマーコーティング層と、前記プライマーコーティング層上に位置する電極活物質層とを含み、
前記バインダーは、フッ化ビニリデン(VDF)由来の繰り返し単位及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来の繰り返し単位を含むPVDF‐HFP(ポリ(フッ化ビニリデン‐co‐ヘキサフルオロプロピレン))を含み、
前記PVDF‐HFPのうちHFP由来の繰り返し単位の含量は2重量%~13重量%であり、
前記プライマーコーティング層は0.8μm~5μmの厚さを有
し、
前記プライマーコーティング層が、前記バインダーを導電材100重量部を基準にして10重量部~80重量部で含む、リチウム二次電池用
正極。
【請求項2】
前記プライマーコーティング層が、前記バインダーを導電材100重量部を基準にして35重量部~65重量部で含む、請求項
1に記載のリチウム二次電池用
正極。
【請求項3】
前記PVDF‐HFPのうちHFP由来の繰り返し単位の含量が、3重量%~10重量%である、請求項1
又は2に記載のリチウム二次電池用
正極。
【請求項4】
前記プライマーコーティング層の厚さが、1μm~2μmである、請求項1から
3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用
正極。
【請求項5】
前記プライマーコーティング層の厚さが、前記電極活物質層の厚さの0.01倍~0.05倍である、請求項1から
4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用
正極。
【請求項6】
前記プライマーコーティング層の厚さが、前記電極活物質層の厚さの0.01倍~0.03倍である、請求項
5に記載のリチウム二次電池用
正極。
【請求項7】
前記バインダーが、バインダー100重量%を基準にしてPVDF‐HFPを50重量%以上で含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用
正極。
【請求項8】
前記電極活物質層が電極バインダーを含み、前記電極バインダー100重量%を基準にしてPVDF‐HFPを5重量%以下で含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用
正極。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在されたセパレータを含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用電極及びそれを含むリチウム二次電池に関し、より詳しくは、釘貫通安全性を向上させることができるリチウム二次電池用電極及びそれを含むリチウム二次電池に関する。
【0002】
本出願は、2018年8月8日出願の韓国特許出願第10-2018-0092536号に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
現在開発されている自動車用リチウム二次電池には高エネルギー密度及び高出力が求められている。しかし、このような開発方向は電池の安全性を低下させる。また、リチウム二次電池の需要が増加するにつれて、安全性に対する要求もさらに大きくなっている。特に、外部の衝撃や外形の変形によって電池パックが貫通される場合、自動車のような手動装置の爆発につながるおそれがある。このように自動車用リチウム二次電池の安全性評価項目のうち貫通安全性が重要な評価項目として認識されており、これを改善するために多くの試みがなされている。
【0004】
特に、釘貫通による爆発は、釘と電極集電体との接触、または、電極活物質層と電極集電体との接触による短絡電流によって局所的なIR(赤外線)加熱から発生すると知られている。
【0005】
このような釘貫通安全性を解決するためには、電極活物質層と電極集電体との界面抵抗を増加させることが重要である。釘貫通による短絡によってハイレートの電流が流れ、このとき、電子が電極活物質から電極集電体と釘に移動するようになるが、ここで抵抗を増加させることで、釘貫通の短絡電流を減少させてIR加熱を減少できるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、釘貫通安全性を向上させることができるリチウム二次電池用電極及びそれを含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様によれば、電極集電体と、前記電極集電体の少なくとも一面に位置し、バインダー及び導電材を含むプライマーコーティング層と、前記プライマーコーティング層上に位置する電極活物質層とを含み、前記バインダーは、フッ化ビニリデン(VDF)由来の繰り返し単位及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来の繰り返し単位を含むPVDF‐HFP(ポリ(フッ化ビニリデン‐co‐ヘキサフルオロプロピレン))を含み、前記PVDF‐HFPのうちHFP由来の繰り返し単位の含量は2重量%~13重量%であり、前記プライマーコーティング層は0.8μm~5μmの厚さを有するリチウム二次電池用電極が提供される。
【0008】
本発明の第2態様によれば、第1態様において、前記プライマーコーティング層が前記バインダーを導電材100重量部を基準にして10重量部~80重量部で含む。
【0009】
本発明の第3態様によれば、第2態様において、前記プライマーコーティング層が前記バインダーを導電材100重量部を基準にして35重量部~65重量部で含む。
【0010】
本発明の第4態様によれば、第1態様~第3態様のいずれか一態様において、前記PVDF‐HFPのうちHFP由来の繰り返し単位の含量が3重量%~10重量%である。
【0011】
本発明の第5態様によれば、第1態様~第4態様のいずれか一態様において、前記プライマーコーティング層の厚さが1μm~2μmである。
【0012】
本発明の第6態様によれば、第1態様~第5態様のいずれか一態様において、前記プライマーコーティング層の厚さが前記電極活物質層の厚さの0.01倍~0.05倍である。
【0013】
本発明の第7態様によれば、第6態様において、前記プライマーコーティング層の厚さが前記電極活物質層の厚さの0.01倍~0.03倍である。
【0014】
本発明の第8態様によれば、第1態様~第7態様のいずれか一態様において、前記バインダーがバインダー100重量%を基準にしてPVDF‐HFPを50重量%以上で含む。
【0015】
本発明の第9態様によれば、第1態様~第7態様のいずれか一態様において、前記電極活物質層が電極バインダーを含み、前記電極バインダー100重量%を基準にしてPVDF‐HFPを5重量%以下で含む。
【0016】
本発明の他の態様によれば、正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在されたセパレータを含み、前記正極または前記負極は上述した電極であるリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、PVDF‐HFPバインダー及び導電材を含むプライマーコーティング層が電極集電体と電極活物質層との間に備えられることで、電極集電体と電極活物質層との界面抵抗を増加させることができ、釘貫通が起きても釘に流れる短絡電流の量を減少させて、究極的には電池の安全性を向上させることができる。
【0018】
さらに、前記PVDF‐HFPに含まれたHFPがバインダーの熱的安全性を向上させて、IR加熱による電池内部の温度を減少させることができる。
【0019】
本明細書に添付される図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用電極の構造を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0022】
したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0023】
本発明の一実施形態は、
図1に示されたように、電極集電体10、前記電極集電体の少なくとも一面に位置し、バインダー及び導電材を含むプライマーコーティング層20、前記プライマーコーティング層上に位置する電極活物質層30を含むリチウム二次電池用電極100に関する。
【0024】
本発明の一実施形態において、前記電極集電体10は、電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されなく、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などを使用することができる。
【0025】
前記集電体の厚さは、特に制限されないが、通常適用される3μm~500μmの厚さを有し得る。
【0026】
本発明の一実施形態において、前記プライマーコーティング層20は、バインダーとしてフッ化ビニリデン(VDF)由来の繰り返し単位及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来の繰り返し単位を含むPVDF‐HFP(ポリ(フッ化ビニリデン‐co‐ヘキサフルオロプロピレン))を含むことができる。本発明の一実施形態において、前記バインダー100重量%のうちPVDF‐HFPの含量は50重量%以上、80重量%以上、90重量%以上または99重量%以上であり得る。
【0027】
前記PVDF‐HFPに含まれたHFPは、有機系電解液に対する吸収性が増加する特性があるため、HFPの含量によってPVDF‐HFPバインダーの膨れ(swelling)程度を調節することができる。すなわち、HFPの含量が増加するほど、PVDF‐HFPバインダーの膨れも増加するようになる。
【0028】
なお、電極活物質層に含まれるバインダーとしてPVDF‐HFPバインダーを使用すると、サイクル特性が低下し、電池の膨れが増加して電池性能の劣化を誘発することがあったが、本発明では、電極活物質層ではなくプライマーコーティング層にPVDF‐HFPバインダーを含むため、上述した副作用は生じない。
【0029】
すなわち、前記PVDF‐HFPバインダーを含むプライマーコーティング層は、電極集電体と電極活物質層との間に備えられ、電極全体の膨れへの影響は殆どなく、電極集電体と電極活物質層との界面抵抗は増加させることができる。それによって、釘貫通が起きても釘に流れる短絡電流の量を減少させて、究極的には電池の安全性を向上させることができる。
【0030】
また、前記HFPは、バインダーの熱的安全性を向上させて、IR加熱による電池内部の温度を減少させることができる。
【0031】
このような理由から、本発明の一実施形態では、電極集電体と電極活物質層との間のプライマーコーティング層に、HFP由来の繰り返し単位を2重量%~13重量%、詳しくは3重量%~10重量%、より詳しくは3重量%~7重量%で含むPVDF‐HFPバインダーを使用する。前記HFP由来の繰り返し単位の含量が2重量%未満である場合、HFPによるバインダーの膨れが不十分であり、熱的安全性が十分に確保されない。一方、13重量%を超過する場合は、バインダーの主機能である接着力を減少させ、膨れが過剰になってプライマーコーティング層の抵抗が増加し過ぎて寿命特性が低下するおそれがある。
【0032】
本発明において、前記繰り返し単位の重量基準の含量は、Varian 500モデルで1H‐NMR(プロトン核磁気共鳴)を用いて測定し得る。
【0033】
また、前記プライマーコーティング層は、電極全体の膨れに影響を殆ど及ぼさないためには、前記電極活物質層の厚さに比べて非常に薄く形成されなければならない。すなわち、プライマーコーティング層の厚さは、0.8μm~5μm、詳しくは1μm~2μm、より詳しくは1μm~1.5μmであることが望ましい。もし、プライマーコーティング層の厚さが0.8μm未満であれば、抵抗増加及び十分な膨れの効果が不十分であり、10μm超過の場合は、抵抗増加及び膨れが過剰になって寿命特性が劣化する問題が生じる。
【0034】
特に、このようなプライマーコーティング層の厚さは、電極活物質層の厚さの0.01倍~0.05倍、詳しくは0.01~0.03倍になるように調節されることが望ましい。
【0035】
一方、前記プライマーコーティング層は、前記PVDF‐HFPバインダーを前記導電材100重量部を基準にして10重量部~80重量部、詳しくは35重量部~65重量部、より詳しくは40重量部~50重量部の含量で含むことができる。前記PVDF‐HFPバインダーが上記の含量範囲を満たすと、バインダーの本来の目的である電極接着力を良好に維持しながら電池の釘貫通時の短絡電流の量を減少させ、安全性効果を与えることができるという点で有利である。
【0036】
前記プライマーコーティング層は、上述したようなPVDF‐HFPバインダー及び導電材を溶媒に分散させて得たスラリーを電極集電体の少なくとも一面に塗布することで形成することができる。
【0037】
ここで、前記導電材は、電極活物質層に通常使用される導電材であり得、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材から選択された1種または2種以上の混合物を含むことができる。
【0038】
本発明の一実施形態において、前記電極活物質層30は、前記プライマーコーティング層20上に活物質、電極バインダー及び導電材を溶媒に分散させて得た電極スラリーを塗布した後、乾燥及び圧延することで形成することができる。
【0039】
ここで、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用電極が正極である場合は、リチウム二次電池の正極活物質として使用可能なものであれば何れも活物質として使用できる。例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物、または、一つまたはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(xは0~0.33)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiV3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGa、x=0.01~0.3)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTa、x=0.01~0.1)、Li2Mn3MO8(M=Fe、Co、Ni、CuまたはZn)またはLiaNixCoyMnzO2(0.5<a<1.5、0<x、y、z<1、x+y+z=1)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;LiNixMn2-xO4で表されるスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2などを含むことができるが、これらに限定されることはない。
【0040】
一方、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用電極が負極である場合は、リチウム二次電池の負極活物質として使用可能なものであれば制限なく活物質として使用できる。例えば、難黒鉛化炭素、黒鉛炭素(天然黒鉛、人造黒鉛)などの炭素;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4及びBi2O5などの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li‐Co‐Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などから選択された1種または2種以上を使用することができる。具体的な一実施形態において、前記負極活物質は炭素系物質及び/またはSiを含むことができる。
【0041】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材から選択された1種または2種以上の混合物を含むことができる。このような導電材は、電極活物質層の全体重量を基準にして0.1重量%~20重量%、詳しくは1重量%~10重量%の含量で使用できる。
【0042】
そして、前記電極バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン‐トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルへキシルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリアリレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロースなどが挙げられ、このうち1種以上を含むことができるが、これに限定されることはない。一方、PVDF‐HFPは、電池の膨れ発生の問題から、電極のバインダーとして使用し難い。このようなバインダーは、電極活物質層の全体重量を基準にして20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下または1重量%以下の範囲で含むことができる。例えば、0.1重量%以下の範囲で含まれ得る。具体的な例として、前記電極バインダーは、電極バインダー100重量%のうち、PVDF‐HFPを5重量%以下、1重量%以下または0.1重量%以下の含量で含むことができる。
【0043】
本発明び他の一実施形態は、正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在されたセパレータを含むリチウム二次電池に関し、前記正極または前記負極が上述した本発明によるリチウム二次電池用電極であることを特徴とする。
【0044】
特に、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用電極は、正極であり得る。前記プライマーコーティング層に使用されたバインダーがコーティングスラリーを製造するときに有機系溶媒とともに使用され得、有機系溶媒は通常負極よりは正極の製造時に多く用いられるため、正極により有利に適用することができる。
【0045】
前記セパレータは、正極と負極との間に介在されるものであって、正極と負極とを電気的に絶縁すると同時にリチウムイオンを通過させる役割を果たす。前記セパレータは、通常のリチウム二次電池分野で使用されるセパレータであれば何れも使用でき、特に限定されることはない。
【0046】
本発明によるリチウム二次電池は、単位電池として電池モジュールに含まれ得、前記電池モジュールは電池パック、及び前記電池パックを電源として含むデバイスに使用され得る。前記デバイスの具体的な例としては、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、または電力貯蔵用システムが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明するが、後述する実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範疇がこれらに限定されることはない。
【0048】
実施例1:正極の製造
(段階1)
バインダーとしてPVDF‐HFP(HFP含量:3重量%)50重量部をアセトニトリル溶媒に溶解させてバインダー溶液を製造した後、導電材としてカーボンブラック(Super C65)100重量部を前記バインダー溶液に投入してプライマーコーティング層形成用スラリーを用意した。
【0049】
その後、厚さ20μmのアルミニウム集電体に前記プライマーコーティング層形成用スラリーを厚さ2.4μmで塗布した後、120℃で24時間真空乾燥させてプライマーコーティング層を形成した。
【0050】
(段階2)
バインダーとして4重量部のPVDFをアセトニトリル溶媒に溶解させてバインダー溶液を用意し、そこに導電材としてカーボンブラック(Super C65)6重量部及び正極活物質としてNCM811(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)90重量部を添加して均一な正極スラリーを製造した。
【0051】
前記正極スラリーを段階1で形成したプライマーコーティング層上に厚さ140μmで塗布した後、120℃で24時間真空乾燥させて正極活物質層を形成した。その後、圧延を行うことで、最終的に正極を製造した(圧延後の正極活物質層の厚さ:70μm、圧延後のプライマーコーティング層の厚さ:1.2μm、最終的な正極におけるプライマーコーティング層の正極活物質層に対する厚さ比:0.017)。
【0052】
実施例2:
段階1でバインダーとしてPVDF‐HFP(HFP含量:7重量%)を使用したことを除き、実施例1と同じ過程によって正極を製造した。
【0053】
比較例1:
段階1でバインダーとしてPVDF(HFP含量:0重量%)を使用したことを除き、実施例1と同じ過程によって正極を製造した。
【0054】
比較例2:
段階1でバインダーとしてPVDF‐HFP(HFP含量:20重量%)を使用したことを除き、実施例1と同じ過程によって正極を製造した。
【0055】
比較例3:
圧延後のプライマーコーティング層の厚さが0.3μm及び正極活物質層の厚さが70μmになるように、実施例1と同じ過程によって正極を製造した。
【0056】
比較例4:
圧延後のプライマーコーティング層の厚さが10μm及び正極活物質層の厚さが70μmになるように、実施例1と同じ過程によって正極を製造した。
【0057】
実験例:
上記のように製造された正極と下記の負極との間に、セパレータとしてポリエチレン膜(セルガード社製、厚さ:20μm)を介在させ、エチレンカーボネート、ジメチレンカーボネート及びジエチルカーボネートが1:2:1で混合された溶媒に1M LiPF6が溶解された電解液を注入してリチウム二次電池を製造した後、電池性能を評価した。
【0058】
負極は、負極活物質として人造黒鉛96.3重量%、導電材としてカーボンブラック(SuperP)1.0重量%、バインダーとしてPVdF2.7重量%を、溶媒であるNMPに分散させて負極スラリーを製造した後、それを厚さ10μmの銅ホイル上に厚さ160μmで塗布し、乾燥及び圧延して最終的な厚さが90μmになるように製造したものを使用した。
【0059】
<釘貫通安全性の評価>
製造した電池に対してそれぞれ5個のサンプルを製作し、各サンプルを4.25Vの条件で満充電させた後、釘貫通試験機(KSG‐103、Kyoung Sung Testing Machine社製)を用いて、鉄製の直径6mmの釘を上側から電池の中央に貫通させた。ここで、釘の貫通速度は12m/分と一定にした。
【0060】
5個のサンプルに対し、釘貫通安全性テストのパス可否を下記の評価基準によって決定し、パスしたサンプルの数を表1に示した。
【0061】
<評価基準>
パス:釘貫通時に煙は観察されるが、発火は発生しない
フェイル:釘貫通時に即時発火または貫通後5分以内に遅延発化
(発火:目視でスパークまたは火炎の発生が観察される場合)
【0062】
<寿命特性>
製造された電池に対し、3~4.25Vの範囲で1Cに該当する(40Ah)電流を流して充放電を行った。総100回のサイクルで充放電を行った後、容量維持率を下記のように算出して寿命特性を評価した。
容量維持率(%)=(100回サイクルの後の放電容量/1回サイクルの放電容量)×100
【0063】
【0064】
表1から分かるように、電極集電体と電極活物質層との間に備えられたプライマーコーティング層に、HFP由来の繰り返し単位の含量が2重量%~13重量%であるPVDF‐HFPが使用され、前記コーティング層の厚さが0.8μm~5μmの範囲を満たす実施例1及び実施例2は、釘貫通安全性及び優れた容量維持率を全て確保した。
【0065】
一方、上記のようなHFPの含量範囲及びプライマーコーティング層の厚さ範囲を満たさない比較例1~比較例4は、釘貫通安全性及び優れた容量維持率のいずれか一つが不良であった。
【0066】
以上のように、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。