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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20220725BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20220725BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALN20220725BHJP
   H01L 21/31 20060101ALN20220725BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
H01L21/302 101G
H01L21/31 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021507176
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2020009189
(87)【国際公開番号】W WO2020189287
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2019050246
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹林 央史
(72)【発明者】
【氏名】岩田 祐磨
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-7810(JP,A)
【文献】特開2016-9715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
H01L 21/3065
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ載置面を有するセラミックス製のプレートと、
前記プレートを厚さ方向に貫通する複数の貫通穴と、
前記プレートに設けられ、静電力を発生させるための正負一対の電極と、
を備えた静電チャックであって、
前記プレートは、前記貫通穴の数に仮想的に分割された分割領域を有し、
前記正負一対の電極は、前記分割領域ごとに、前記貫通穴に近接する正極起点及び負極起点のそれぞれから前記分割領域の全体に行き渡るように並行に設けられた正負一対の渦巻き状電極部を有し、
前記正負一対の電極のうちの正極は、各分割領域の正の渦巻き状電極部を前記プレートの中央部及び外周部のいずれか一方で連結したものであり、
前記正負一対の電極のうちの前記負極は、各分割領域の負の渦巻き状電極部を前記プレートの中央部及び外周部のいずれか他方で連結したものである、
静電チャック。
【請求項2】
前記貫通穴の直径は、隣合う前記正極と前記負極との電極間距離よりも大きい、
請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記正極の線幅は、前記負極の線幅と同じである、
請求項2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記プレートは、円形であり、
前記複数の貫通穴は、前記プレートの同心円上に等間隔に設けられ、
前記分割領域は、前記プレートの半径方向の線分によって前記プレートを前記貫通穴の数に等分した領域である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
静電チャックは、半導体製造プロセス中に静電力を利用してウエハを吸着保持するのに用いられる。例えば特許文献1には、こうした静電チャックとして、セラミック製の円形プレートに正、負一対の薄膜電極をパターン形成したものが開示されている。ここでは、各電極のパターン形状を外周縁が円弧状である櫛形とし、双方の電極の帯状櫛歯を互い違いに入り組ませて形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-237148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように双方の電極の帯状櫛歯を互いに入り組ませて形成した静電チャックでは、ウエハを昇降させるリフトピンを挿通するためのリフトピン穴を複数設けようとすると、リフトピン穴を回避するように櫛歯の形状を変更する必要があった。具体的には、図3に示すように、リフトピン穴110の周りの正極の櫛歯106と負極の櫛歯108を円弧状に形成してリフトピン穴110を回避する必要があった。こうすると、リフトピン穴110を回避した影響が外側の櫛歯106,108にも及ぶことになり、電極パターンの規則性に乱れが生じ、ウエハ載置面内での吸着力のバラツキが生じる原因になることがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ウエハ載置面内での吸着力のバラツキを低減することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の静電チャックは、
ウエハ載置面を有するセラミックス製のプレートと、
前記プレートを厚さ方向に貫通する複数の貫通穴と、
前記プレートに設けられ、静電力を発生させるための正負一対の電極と、
を備えた静電チャックであって、
前記プレートは、前記貫通穴の数に仮想的に分割された分割領域を有し、
前記正負一対の電極は、前記分割領域ごとに、前記貫通穴に近接する正極起点及び負極起点のそれぞれから前記分割領域の全体に行き渡るように並行に設けられた正負一対の渦巻き状電極部を有し、
前記正負一対の電極のうちの正極は、各分割領域の正の渦巻き状電極部を前記プレートの中央部及び外周部のいずれか一方で連結したものであり、
前記正負一対の電極のうちの前記負極は、各分割領域の負の渦巻き状電極部を前記プレートの中央部及び外周部のいずれか他方で連結したものである。
【0007】
この静電チャックでは、セラミックス製のプレートは貫通穴の数と同数の分割領域に仮想的に分割されている。正負一対の電極は、分割領域ごとに、貫通穴に近接する正極起点及び負極起点のそれぞれから分割領域の全体に行き渡るように並行に設けられた正負一対の渦巻き状電極部を有する。正極の渦巻き状電極部と負極の渦巻き状電極部は互い違いに入り組んだ形態となる。また、正極は、各分割領域の正の渦巻き状電極部をプレートの中央部及び外周部のいずれか一方で連結したものであり、負極は、各分割領域の負の渦巻き状電極部をプレートの中央部及び外周部のいずれか他方で連結したものである。そのため、正極及び負極は貫通穴の周りを円弧状に回避する必要がなく、電極パターンの規則性を良好に維持することができる。したがって、ウエハ載置面内での吸着力のバラツキを低減することができる。
【0008】
本発明の静電チャックにおいて、前記貫通穴の直径は、隣合う前記正極と前記負極との電極間距離と同じかそれより大きくてもよい。この場合、隣合う正極と負極との間に貫通穴を設けようとすると、正負一対の電極の少なくとも一方は貫通穴と干渉するため、貫通穴を迂回する必要がある。そのため、本発明を適用する意義が高い。
【0009】
このとき、前記正極の線幅は、前記負極の線幅と同じであり、前記貫通穴の直径は、前記電極間距離と前記線幅との和と同じかそれより大きくしてもよい。この場合、正負一対の電極の少なくとも一方は貫通穴をより大きく迂回する必要があるため、本発明を適用する意義が高い。
【0010】
本発明の静電チャックにおいて、前記プレートは、円形であり、前記複数の貫通穴は、前記プレートの同心円上に等間隔に設けられ、前記分割領域は、前記プレートの半径方向の線分によって前記プレートを前記貫通穴の数に等分した領域としてもよい。こうした貫通穴としては、例えばウエハを昇降させるリフトピンを挿通する孔が挙げられる。なお、「等間隔」とは、必ずしも正確に等しい間隔である必要はなく、誤差(例えば±2~3%)を含んでいてもよい。「等分」についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】静電チャック2の斜視図。
図2】正極6及び負極8を含む面でプレート4を切断したときの断面図。
図3】リフトピン穴110の周りの櫛歯106,108の様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。図1は静電チャック2の斜視図、図2は正極6及び負極8を含む面でプレート4を切断したときの断面図である。なお、図2では、便宜上、プレート4の断面のハッチングを省略した。
【0013】
静電チャック2は、プレート4と、リフトピン穴10,20,30と、分割領域A1~A3と、静電吸着用の正負一対の電極(正極6及び負極8)とを備える。
【0014】
プレート4は、セラミックス製(例えばアルミナ製や窒化アルミニウム製)の円形プレートである。プレート4の表面には、ウエハWを載置するウエハ載置面4aが設けられている。
【0015】
リフトピン穴10,20,30は、プレート4を厚さ方向に貫通する穴であり、プレート4と同心円上に等間隔となるように設けられている。
【0016】
分割領域A1,A2,A3は、プレート4をリフトピン穴10,20,30の数に仮想的に分割した領域(図2で点線で囲った領域)である。本実施形態では、分割領域A1,A2,A3は、円形のプレート4をプレート4の半径方向の線分によって3つに等分した中心角が約120°の扇形領域である。
【0017】
正極6は、各分割領域A1,A2,A3の正の渦巻き状電極部16,26,36を連結部41,42,43で連結したものであり、負極8は、各分割領域A1,A2,A3の負の渦巻き状電極部18,28,38を連結部45で連結したものである。
【0018】
扇形の分割領域A1には、リフトピン穴10に近接する正極起点16a及び負極起点18aのそれぞれから分割領域A1の全体に行き渡るように正極終点16b及び負極終点18bのそれぞれまで、正負一対の渦巻き状電極部16,18が並行に設けられている。そのため、分割領域A1における正の渦巻き状電極部16と負の渦巻き状電極部18とは、互い違いに入り組んでいる。渦巻き状電極部16,18の渦の形は、分割領域A1の扇形とほぼ相似になっている。
【0019】
扇形の分割領域A2には、リフトピン穴20に近接する正極起点26a及び負極起点28aのそれぞれから分割領域A2の全体に行き渡るように正極終点26b及び負極終点28bのそれぞれまで、正負一対の渦巻き状電極部26,28が並行に設けられている。そのため、分割領域A2における正の渦巻き状電極部26と負の渦巻き状電極部28とは、互い違いに入り組んでいる。渦巻き状電極部26,28の渦の形は、分割領域A2の扇形とほぼ相似になっている。
【0020】
扇形の分割領域A3には、リフトピン穴30に近接する正極起点36a及び負極起点38aのそれぞれから分割領域A3の全体に行き渡るように正極終点36b及び負極終点38bのそれぞれまで、正負一対の渦巻き状電極部36,38が並行に設けられている。そのため、分割領域A3における正の渦巻き状電極部36と負の渦巻き状電極部38とは、互い違いに入り組んでいる。渦巻き状電極部36,38の渦の形は、分割領域A3の扇形とほぼ相似になっている。
【0021】
分割領域A1の正の渦巻き状電極部16と分割領域A2の正の渦巻き状電極部26とはプレート4の外周部に設けられた連結部41で連結され、分割領域A2の正の渦巻き状電極部26と分割領域A3の正の渦巻き状電極部36とはプレート4の外周部に設けられた連結部42で連結され、分割領域A3の正の渦巻き状電極部36と分割領域A1の正の渦巻き状電極部16とはプレート4の外周部に設けられた連結部43で連結されている。正極6は、このように各分割領域A1,A2,A3の正の渦巻き状電極16,26,36がプレート4の外周部の連結部41,42,43で連結されたものである。
【0022】
分割領域A1の負の渦巻き状電極部18と分割領域A2の負の渦巻き状電極部28と分割領域A3の負の渦巻き状電極部38とはプレート4の中央部に設けられた三角形状の連結部45で連結されている。負極8は、このように各分割領域A1,A2,A3の負の渦巻き状電極18,28,38がプレート4の中央部の連結部45で連結されたものである。
【0023】
リフトピン穴10,20,30の直径φは、隣合う正極6と負極8との電極間距離dと同じかそれより大きい(φ≧d)。また、正極6の線幅wは、負極8の線幅wと同じである。線幅wと電極間距離dとの和(w+d)は、1mm以上4mm以下が好ましい。電極間距離dは、2mm以下が好ましい。各リフトピン穴10,20,30の直径φは、1mm以上が好ましい。
【0024】
次に、静電チャック2の使用例について説明する。静電チャック2は、図示しないチャンバに配置されて使用される。静電チャック2のウエハ載置面4aには、円盤状のウエハWが載置される。ウエハWは正極6と負極8との間に電圧が印加されることにより静電力によってウエハ載置面4aに吸着される。静電力としては、クーロン力、グラディエント力、ジョンソン・ラーベック力が挙げられるが、本実施形態では、ウエハWが絶縁物である場合は主としてグラディエント力によりウエハWはウエハ載置面4aへ吸着される。グラディエント力を得るには、線幅wや電極間距離dをできるだけ小さくすることが好ましい。ウエハ載置面4aにウエハWを吸着した状態で、チャンバの内部を所定の真空雰囲気(又は減圧雰囲気)になるように設定し、チャンバの天井面に設けられた図示しないシャワーヘッドからプロセスガスを供給しながら、プレート4に埋設された図示しないRF電極とシャワーヘッドとの間に高周波電力を供給してプラズマを発生させる。そして、そのプラズマを利用してウエハにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。
【0025】
以上説明した本実施形態の静電チャック2によれば、正極6及び負極8はリフトピン穴10,20,30の周りを円弧状に回避する必要がなく、電極パターンの規則性を良好に維持することができ、電極配置の密度差も小さくすることができる。したがって、ウエハ載置面4a内での吸着力のバラツキを低減することができる。
【0026】
また、リフトピン穴10,20,30の直径φは、電極間距離dと同じかそれより大きい。この場合、隣合う正極6と負極8との間にリフトピン穴を設けようとすると、正極6及び負極8の少なくとも一方はリフトピン穴と干渉するため、リフトピン穴を迂回する必要がある。そのため、本発明を適用する意義が高い。
【0027】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0028】
例えば、上述した実施形態において、プレート4を厚さ方向に貫通するガス供給穴を複数設けてもよい。ガス供給穴は、熱伝導用のガス(例えばHeガス)をウエハWの裏面に供給するためのものであり、その直径は電極間距離dより小さいものとする。これにより、ガス供給穴は、隣合う正極6と負極8との間に設けることができる。
【0029】
上述した実施形態において、プレート4にヒータ電極(抵抗発熱体)を埋設し、ヒータ電極へ供給する電力を制御することによりウエハWの温度を制御してもよい。また、プレート4を複数のゾーンに分け、ゾーンごとに独立したヒータ電極を設けてもよい。こうすれば、ゾーンごとに温度を制御することができる。
【0030】
上述した実施形態では、リフトピン穴10,20,30の直径φは、電極間距離dと同じかそれより大きいとしたが、電極間距離dより小さくてもよい。直径φが電極間距離dより小さくても、隣合う正極6と負極8との間にリフトピン穴を設けることが難しい場合には、本発明を適用する意義がある。
【0031】
上述した実施形態では、本発明の貫通穴としてリフトピン穴10,20,30を例示したが、特にリフトピン穴に限定されるものではない。例えば、前出のガス供給穴を本発明の貫通穴としてもよい。特に、隣合う正極6と負極8との電極間距離dが小さい場合には、ガス供給穴を隣合う正極6と負極8との間に設けることができないことがあるため、ガス供給穴を本発明の貫通穴として採用する意義がある。
【0032】
上述した実施形態において、正極6を負極、負極8を正極としてもよい。その場合、負の渦巻き状電極部はプレート4の外周部で連結され、正の渦巻き状電極部はプレート4の中央部で連結される。
【0033】
上述した実施形態において、静電チャック2のプレート4の裏面(ウエハ載置面4aとは反対側の面)に金属製の冷却板を取り付けてもよい。冷却板の内部には、冷媒流路を設けてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、プレート4の形状を円形としたが、特に円形に限定されるものではなく、例えば長方形や正方形などとしてもよい。
【0035】
上述した実施形態では、プレート4に3つのリフトピン穴10,20,30を設けた場合を例示したが、リフトピン穴を4つ以上設けてもよい。例えばリフトピン穴を4つ設ける場合、分割領域は4つになり、その形状は中心角が約90°の扇形になる。
【0036】
上述した実施形態では、3つのリフトピン穴10,20,30をプレート4の同心円上に等間隔に設けたが、特にこれに限定されるものではない。例えば、3つのリフトピン穴をプレート4の同心円から外れた位置に設けたりプレート4の同心円上に異なる間隔で設けたりしてもよい。
【0037】
本出願は、2019年3月18日に出願された日本国特許出願第2019-050246号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、例えば半導体製造プロセス中に静電力を利用してウエハを吸着保持するのに利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
2 静電チャック、4 プレート、4a ウエハ載置面、6 正極、8 負極、10,20,30 リフトピン穴、16,26,36 正の渦巻き状電極部、16a,26a,36a 正極起点、16b,26b,36b 正極終点、18,28,38 負の渦巻き状電極部、18a,28a,38a 負極起点、18b,28b,38b 負極終点、41,42,43,45 連結部、106 正極の櫛歯、108 負極の櫛歯、110 リフトピン穴、A1,A2,A3 分割領域、W ウエハ。
図1
図2
図3