(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】粉末塗布装置、粉末塗布装置を運転する方法、及び三次元的なワークピースを製造するシステム
(51)【国際特許分類】
B22F 12/50 20210101AFI20220725BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20220725BHJP
B22F 10/73 20210101ALI20220725BHJP
B22F 12/70 20210101ALI20220725BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20220725BHJP
B29C 64/205 20170101ALI20220725BHJP
B29C 64/364 20170101ALI20220725BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220725BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220725BHJP
【FI】
B22F12/50
B22F10/28
B22F10/73
B22F12/70
B28B1/30
B29C64/205
B29C64/364
B33Y10/00
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2021525622
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 EP2019080384
(87)【国際公開番号】W WO2020099211
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】102018128242.7
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514298748
【氏名又は名称】エスエルエム ソルーションズ グループ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ケルナー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ フランク
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-530459(JP,A)
【文献】特表2019-501292(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107303608(CN,A)
【文献】特表2019-523158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 12/50
B22F 10/28
B22F 10/73
B22F 12/70
B28B 1/30
B29C 64/205
B29C 64/364
B33Y 10/00
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェネレーティブ積層プロセスによって三次元的なワークピースを製造するシステム(100)内に使用するための粉末塗布装置(10)であって、前記粉末塗布装置(10)は、
- 分配エレメント(12)が、支持体(116)の表面上にジェネラティブ積層プロセスによってワークピースを製造するための原料粉末を塗布するために、前記支持体(116)の表面にわたって移動可能な、分配エレメント(12)と、
- 支持体平面(E)にわたって移動可能な粉末連行体(16)が、前記支持体平面(E)に向いた表面(20)の領域内に、表面プロフィール(22)を備えており、前記表面プロフィールが連行エレメント(24a,24b,24c)並びに通過チャネル(26a,26b,26c)を有しており、前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の移動を基準として、前記粉末連行体(16)の前で前記支持体平面(E)上に堆積された粉末状材料が、第1移動方向(R1)の前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の移動時に、前記連行エレメント(24a,24b,24c)によって引きずられ、そして前記第1移動方向(R1)とは反対の第2移動方向(R2)の前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の移動時には、前記通過チャネル(26a,26b,26c)を通して導かれるように、前記連行エレメント(24a,24b,24c)並びに前記通過チャネル(26a,26b,26c)が形成され配置されている、粉末連行体(16)と
を有している、粉末塗布装置。
【請求項2】
前記粉末連行体(16)が前記分配エレメント(12)に固定されており、具体的には前記粉末連行体(16)の前記支持体平面(E)にわたる第1及び第2の移動方向(R1,R2)に対してほぼ直角方向(R3)に、前記分配エレメント(12)の側面から延びている、請求項1に記載の粉末塗布装置。
【請求項3】
前記表面プロフィール(22)が複数の連行エレメント(24a,24b,24c)並びに前記連行エレメント(24a,24b,24c)の間に配置された複数の通過チャネル(26a,26b,26c)を有しており、
- 前記連行エレメント(24a,24b,24c)の少なくとも一部が、前記第2移動方向(R2)の前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の移動を基準として前端の領域内で先細に延びるように形成されており、且つ/又は
- 前記連行エレメント(24a,24b,24c)の少なくとも一部が、前記第1移動方向(R1)の前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の移動を基準として前端の領域内で粉末捕集区分(28)を備えている、請求項1又は2に記載の粉末塗布装置。
【請求項4】
前記表面プロフィール(22)が複数の連行エレメント(24a,24b,24c)並びに前記連行エレメント(24a,24b,24c)の間に配置された複数の通過チャネル(26a,26b,26c)を有しており、前記連行エレメント(24a,24b,24c)の少なくとも一部がV字形、楔形、及び/又はフック形に形成されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の粉末塗布装置。
【請求項5】
前記粉末連行体(16)の前記表面プロフィール(22)が連行エレメント(24a)から成る第1群を有しており、前記連行エレメント(24a)が、前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の前記第1及び第2の移動方向(R1,R2)に対してほぼ直角方向(R3)に一列に相並んで配置されており、前記第1群の互いに隣接する連行エレメント(24a)の間に、それぞれ1つの通過チャネル(26a)が存在している、請求項1から4までのいずれか1項に記載の粉末塗布装置。
【請求項6】
前記粉末連行体(16)の前記表面プロフィール(22)が連行エレメント(24b)から成る第2群を有しており、前記連行エレメントが、前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の前記第1及び第2の移動方向(R1,R2)に対してほぼ直角方向(R3)に一列に相並んで、且つ前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の第1移動方向(R1)を基準として前記第1群の連行エレメント(24a)の後ろで、少なくとも部分的に、前記第1群の前記連行エレメント(24a)の間に存在する通過チャネル(26a)内に配置されている、請求項5に記載の粉末塗布装置。
【請求項7】
前記第2群の連行エレメント(24b)が、前記第1移動方向(R1)の支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の移動時に、前記第1群の連行エレメント(24a)の間で前記通過チャネル(26a)内に入る粉末状材料を捕集して引きずるように形成され配置されている、請求項6に記載の粉末塗布装置。
【請求項8】
前記第2群の連行エレメント(24b)が、前記第2移動方向(R2)の支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の移動時に、前記通過チャネル(26a)内に入る粉末状材料を、前記通過チャネル(26a)を通して導くように形成され配置されている、請求項6又は7に記載の粉末塗布装置。
【請求項9】
- 前記第2群の連行エレメント(24b)が、前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の第1及び第2の移動方向(R1,R2)に対してほぼ直角方向(R3)に、前記第1群の連行エレメント(24a)に対してオフセット配置されており、
- 前記粉末連行体(16)の表面プロフィール(22)が連行エレメント(24c)から成る第3群を有しており、前記連行エレメント(24c)が、前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の前記第1及び第2の移動方向(R1,R2)に対してほぼ直角方向(R3)に一列に相並んで、及び/又は、第1の連行エレメント及び/又は第2群の連行エレメント(24a,24b)に対してオフセット配置されており、及び/又は、前記連行エレメント(24c)が、前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の第1移動方向(R1)を基準として前記第2群の連行エレメント(24b)の後ろで、少なくとも部分的に、前記第2群の前記連行エレメント(24b)の間に存在する通過チャネル(26bc)内に配置されており、且つ/又は、
- 前記第1群の連行エレメント(24a)、前記第2群の連行エレメント(24b)、及び/又は前記第3群の連行エレメント(24c)がほぼ同一に形成されている、
請求項6から8までのいずれか1項に記載の粉末塗布装置。
【請求項10】
- 前記第2群の連行エレメント(24b)が、前記第1群の前記連行エレメント(24a)の間に存在する通過チャネル(26a)内に完全に配置されており、且つ/又は、
- 前記第1群の連行エレメント(24a)と前記第2群の連行エレメント(24b)とがほぼ同一の幾何学的基本形状を有しており、且つ/又は前記第2群の連行エレメント(24b)が前記第1群の連行エレメント(24a)よりも小さい、
請求項6から8までのいずれか1項に記載の粉末塗布装置。
【請求項11】
ジェネレーティブ積層プロセスによって三次元的なワークピースを製造するシステム(100)内に使用するのに適した粉末塗布装置(10)を運転する方法であって、
- ジェネレーティブ積層プロセスによってワークピースを製造するための原料粉末を支持体(116)の表面上に塗布するために、前記支持体(116)の表面にわたって分配エレメント(12)を動かす工程と、
- 粉末連行体(16)を支持体平面(E)にわたって動かし、粉末連行体(16)が、前記支持体平面(E)に向いた表面(20)の領域内に、表面プロフィール(22)を備えており、前記表面プロフィールが連行エレメント(24a,24b,24c)並びに通過チャネル(26a,26b,26c)を有しており、前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の移動を基準として、前記粉末連行体(16)の前で前記支持体平面(E)上に堆積された粉末状材料が、第1移動方向(R1)の前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の移動時に、前記連行エレメント(24a,24b,24c)によって引きずられ、そして前記第1移動方向(R1)とは反対の第2移動方向(R2)の前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の移動時には、前記通過チャネル(26a,26b,26c)を通して導かれるように、前記連行エレメント(24a,24b,24c)並びに通過チャネル(26a,26b,26c)が形成され配置されている、工程と
を含む、粉末塗布装置(10)を運転する方法。
【請求項12】
前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の移動を基準として、前記粉末連行体(16)の前で前記支持体平面(E)上に堆積された粉末状材料が、前記第1移動方向(R1)における前記支持体(116)の表面にわたる前記粉末連行体(16)の移動時に、捕集シャフト(120)及び/又はガス流臨界領域の外部に位置する捕集領域内に搬送される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ジェネレーティブ積層プロセスを用いて三次元的なワークピースを製造するシステム(100)であって、前記システムが請求項1から10までのいずれか1項に記載の粉末塗布装置(10)を有している、システム。
【請求項14】
前記システムがさらに、捕集シャフト(120)及び/又はガス流臨界領域外部に位置する捕集領域とを有しており、前記捕集領域が、前記第1移動方向(R1)の前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の移動時に前記粉末連行体(16)によって引きずられた粉末状材料を収容するように構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記捕集シャフト(120)が、
- 第1移動方向(R1)の前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の移動を基準として前記支持体(116)の後ろに配置されており、及び/又は
- 前記支持体平面(E)にわたる前記粉末連行体(16)の第1移動方向及び第2移動方向(R1,R2)に対してほぼ直角方向(R3)に、前記支持体(116)に対してオフセット配置されている、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェネレーティブ積層プロセスによって三次元的なワークピースを製造するシステム内で使用するための粉末塗布装置に関する。さらに本発明は、このような粉末塗布装置を運転する方法に関する。最後に本発明は、ジェネレーティブ積層プロセスを用いて三次元的なワークピースを製造する、このような粉末塗布装置を備えたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
三次元的なワークピースを製造するためのジェネレーティブプロセス、及び具体的にはジェネレーティブ積層プロセス(generatives Schichtbauverfahren)において、原料粉末を層状に支持体上に塗布し、そして特定の箇所専用の照射によって、例えば溶融又は焼結によって凝固させることにより、最終的に所望の形状のワークピースを得ることが知られている。照射は電磁線、具体的にはレーザー線、又は粒子線によって行うことができる。ワークピース層が凝固されると、未加工の原料粉末材料から成る新たな層が、既に製造されたワークピース層上に塗布される。このために公知の積層装置又は粉末塗布装置を使用することができる。続いて、その時点で最も上側であり且つまだ加工されていない原料粉末層への新たな照射が行われる。従って、ワークピースは層毎に連続的に構築され、各層はワークピースの断面及び/又は輪郭を画定する。このような関連において、CADデータ又は同等のワークピースデータを利用することにより、ワークピースをほぼ自動的に製造することがさらに知られている。
【0003】
三次元的にワークピースを製造するための公知の装置が、例えば、特許文献1及び特許文献2に見いだされる。これらの文献に記載された装置はそれぞれ1つの支持体を有しており、この支持体は層毎に鉛直方向に下方へ向かって沈め込むことができる。1つの原料粉末層が完全に照射されたとき、そして次の粉末層が塗布される前に、支持体の相応の鉛直方向移動がこのような公知の装置内で常に行われる。これにより、照射ユニットの焦点面が原料粉末の被凝固層(すなわち最上層)内に常に位置することを保証できる。さらに、このような装置はガス回路に接続されたプロセスチャンバを有している。ガス入口を介して、プロセスチャンバには、ガス、具体的には保護ガスを供給することができる。プロセスチャンバの通流後、ガスはガス出口を介してプロセスチャンバから放出される。
【0004】
原料粉末を支持体上に塗布するために、一般には粉末塗布装置が使用される。粉末塗布装置は、支持体の表面にわたって移動可能な分配エレメントを有している。分配エレメントは、支持体の表面にわたって、又は支持体の表面に既に塗布された、少なくとも部分的に凝固された粉末層にわたって移動し、新たな粉末層を塗布する。分配エレメントはローラ、スライダ、又は原料粉末を支持体上に塗布して分配するのに適した他の構成部分を有することができる。被塗布粉末は粉末リザーバから取り出すことができる。粉末リザーバは、支持体の表面にわたって移動可能な、粉末塗布装置の分配エレメントと一体的に形成されている。しかしながらその代わりに、粉末塗布装置は定位置の粉末リザーバを有することもできる。粉末リザーバは例えば支持体に隣接して配置されており、粉末リザーバから、支持体にわたって移動可能な分配エレメントが粉末を取り出し、支持体の表面にわたって分配する。ジェネレーティブ積層プロセスを用いて三次元的なワークピースを製造するシステム内で使用するために、適切な粉末塗布装置が、例えば、特許文献3、又は特許文献4に記載されている。
【0005】
特許文献5が、ジェネレーティブ積層プロセスのための粉末塗布装置を開示している。形成されるべき新たな粉末層に対して平行な方向に粉末分配器を動かし、ウェブに蓄積された粉末を新たな粉末層のために分配することにより、新しい平らな粉末層を形成する。このために、粉末分配器は前側で櫛状に歯を有するように形成されており、1つの歯は、蓄積された粉末を有するウェブの上側部分を分割するので、新しい層のための粉末はウェブ間の溝内に移動され、ひいては平らな粉末層が生じる。溝内に収容し得ない蓄積された粉末を有するウェブの余剰の材料は、粉末分配器の上側に搬出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許出願公開第2,961,549号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2,878,402号明細書
【文献】欧州特許第2,818,305号
【文献】国際公開第2018/029059号パンフレット
【文献】中国公開特許第107,303,608号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ジェネレーティブ積層プロセスを用いて三次元的なワークピースを製造するシステム内で使用するのに適しており、そして品質的により高価値のワークピースを効率的に製造することを容易にする粉末塗布装置を提供することである。さらに、本発明の根底を成す課題は、ジェネレーティブ積層プロセスを用いて三次元的なワークピースを製造するシステム内で使用するのに適しており、そして品質的により高価値のワークピースを効率的に製造することを容易にする粉末塗布装置を運転する方法を提供することである。最後に、本発明の課題は、ジェネレーティブ積層プロセスを用いて三次元的なワークピースを製造するような粉末塗布装置を備えたシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題は、請求項1の特徴を有する粉末塗布装置、請求項11の特徴を有する粉末塗布装置を運転する方法、並びに請求項13の特徴を有する三次元的なワークピースを製造するシステムによって解決される。
【発明の効果】
【0009】
ジェネレーティブ積層プロセスによって三次元的なワークピースを製造するシステム内に使用するための粉末塗布装置は、分配エレメントを有しており、分配エレメントは、支持体の表面上にジェネラティブ積層プロセスによってワークピースを製造するための原料粉末を塗布するために、支持体の表面にわたって移動可能である。支持体は水平の表面を有することができ、水平の表面上へ、原料粉末を層状に、すなわち水平の層の形で塗布することができる。さらに、支持体は、層毎に鉛直方向に下方へ下がるように構成されていてよい。
【0010】
粉末リザーバは粉末塗布装置の、支持体の表面にわたって移動可能な分配エレメントと一体的に形成されていてよく、粉末塗布装置の運転中にはやはり支持体の表面にわたって移動することができる。粉末リザーバからの粉末放出を相応に制御することにより、支持体の表面にわたる分配エレメントの移動中に所望の量の原料粉末を支持体上に塗布することができる。しかしながらその代わりに、粉末塗布装置は定位置の粉末リザーバを有することもできる。粉末リザーバは、例えば支持体に隣接して配置されており、粉末リザーバから粉末塗布装置の分配エレメントが粉末を取り出し、支持体の表面にわたって分配する。
【0011】
支持体上へ塗布されるべき原料粉末は例えば金属又はセラミックの原料粉末であってよい。原料粉末は、製造されるワークピースの所望の特性に応じて、種々異なる粒径及び粒径分布を有することができる。しかしながら、原料粉末の粒径は100μmを下回ることが好ましい。
【0012】
さらに、粉末塗布装置は、支持体平面にわたって移動可能な粉末連行体(Pulvermitnehmer)を有している。支持体平面は、支持体の表面に対して平行に延びる平面であって、そして少なくとも支持体の所定の運転状態では、例えば支持体がその最大限に持ち上げられた位置に位置している場合には、支持体の表面に対して同一平面に配置され、少なくとも部分的には支持体の表面によって画定されていてもよい平面である。これに加えて又はこの代わりに、支持体平面は、ジェネレーティブ積層プロセスによってワークピースを製造するシステムのプロセスチャンバの底板の、支持体に隣接する領域によって画定することもできる。
【0013】
粉末連行体は、支持体平面に向いた表面の領域内に、表面プロフィールを備えており、表面プロフィールは、連行エレメント並びに通過チャネルを有している。支持体平面にわたる前記粉末連行体の移動を基準として、粉末連行体の前で支持体平面上に堆積された粉末状材料が、第1移動方向の支持体平面にわたる粉末連行体の移動時に、連行エレメントによって引きずられるように、連行エレメント及び通過チャネルが形成され配置されている。第1移動方向とは反対の第2移動方向の支持体平面にわたる粉末連行体の移動時には、支持体平面上に堆積された粉末状材料は、通過チャネルを通して導かれる。
【0014】
粉末連行体はこれによれば、粉末連行体が支持体の表面にわたって第1移動方向で移動すると、支持体平面にわたる粉末連行体の移動を基準として、粉末連行体の前で支持体平面上に堆積された粉末状材料を引きずり、そして支持体平面にわたって推しずらすことができる。これとは対照的に、粉末連行体が支持体の表面にわたって第2移動方向で移動すると、支持体平面にわたる粉末連行体の移動を基準として、粉末連行体の前で支持体平面上に堆積された粉末状材料は実質的にその元の位置に留まる。粉末連行体はこのように、支持体平面上の支持体平面の領域内に集まった粉末状材料を、粉末連行体を第1移動方向に摺動させることによって、このような領域から取り除くように使用することができる。同時に、第2移動方向の摺動時に、粉末連行体が粉末状材料をこのような支持体平面の領域内へ輸送することが阻止される。
【0015】
ジェネレーティブ積層プロセスによって三次元的なワークピースを製造するシステムの運転中、プロセスチャンバのガス出口に隣接した支持体平面の領域内には、プロセスチャンバを通って案内されたガス流によって運ばれた粉末及び/又は凝縮物が堆積することがある。このような粉末及び/又は凝縮物は、粉末連行体を用いて、第1移動方向の粉末連行体の移動によって、支持体の平面領域から搬出し、例えば捕集シャフト内へ搬送することができる。同時に、粉末連行体の表面プロフィールのデザインによって、第2移動方向の粉末連行体の摺動時に、不所望に粉末粒子及び/又は凝縮物粒子がガス出口に隣接する支持体平面の領域内へ搬送されるのが阻止される。
【0016】
これにより、支持体平面上のガス出口領域内に粉末及び/又は凝縮物が集まることによってガス出口を通るガス流が妨げられるのが阻止される。さらに、ガス出口領域内に集まった粉末粒子及び/又は凝縮物粒子による、ガス出口を介してプロセスチャンバから導出されるガス流の汚染が最小限に抑えられる。ガス出口に接続されたガス流出導管に配置されており、そしてガス流出導管を通って流れるガス流から粒子状不純物を濾過するのに役立つガスフィルタが、これにより時期尚早の詰まりから保護される。粉末塗布装置は従って、ジェネレーティブ積層プロセスによって品質的により高品質のワークピースを効率的に製造することを容易にする。
【0017】
基本的には、分配エレメントと粉末連行体とは互いに別々に形成されていて、支持体の表面もしくは支持体平面にわたって互いに分離且つ独立して移動可能であってよい。しかしながら粉末連行体は分配エレメントに固定されており、ひいては粉末塗布装置の運転中には分配エレメントと一緒に動かされることが好ましい。例えば、粉末連行体は、支持体平面にわたる粉末連行体の第1及び第2の移動方向に対してほぼ直角方向に、分配エレメントの側面から延びることができる。分配エレメントと粉末連行体とが一緒に移動すると、粉末連行体は、支持体平面にわたる粉末連行体の第1及び第2の移動方向に対してほぼ直角方向で支持体に隣接して配置された支持体平面の領域上を擦過する。
【0018】
表面プロフィールは、複数の連行エレメント並びに連行エレメントの間に配置された複数の通過チャネルを有することができる。あるいは、連行エレメントは、その形状によって複数の通過チャネルを画定するように形成されていてもよい。粉末連行体に設けられた表面プロフィールの連行エレメントの少なくとも一部は、第2移動方向の支持体平面にわたる粉末連行体の移動を基準として前端の領域内で先細に延びるように形成されていてよい。「先細に延びる」とはここでは、連行エレメントの端部が最小半径を有する構成と理解することもできる。連行エレメントのこのようなデザインは、第2移動方向の支持体平面にわたる粉末連行体の移動を基準として粉末連行体の前で支持体平面上に堆積された粉末状材料が、連行エレメントの傍らを擦過して、連行エレメント間に存在する通過チャネル内へ導かれるために役立つ。言うまでもなく、連行エレメントの先細に延びる端部は、第1移動方向の支持体平面にわたる粉末連行体の移動時には、連行エレメントの後端を形成する。
【0019】
これとは対照的に、連行エレメントの少なくとも一部は、第1移動方向の前記支持体平面にわたる粉末連行体の移動を基準として前端の領域内で粉末捕集区分を備えていてよい。これにより、第1移動方向の支持体平面にわたる粉末連行体の移動を基準として粉末連行体の前で支持体平面上に堆積された粉末状材料は、連行エレメントによって捕集され運ばされる。言うまでもなく、連行エレメントの、粉末捕集区分を備えた端部は、粉末連行体が第2移動方向の支持体平面にわたって移動する時には、連行エレメントの後端を形成する。
【0020】
連行エレメントの少なくとも一部はV字形、楔形、及び/又はフック形に形成されていてよい。具体的には、粉末連行体が支持体平面にわたって第2移動方向に動かされる時、連行エレメントは、その先細の端部が支持平面にわたる粉末連行体の移動方向を基準として前端を形成するように方向付けされている。これにより、上述のように、第2移動方向に支持体平面にわたって粉末連行体が移動すると、支持体平面上に堆積された粉末状材料が連行エレメントの先細端部から出発して、連行エレメントの外面に沿って、連行エレメント間に存在する通過チャネル内へ導かれる。連行エレメントの外面によって仕切られた通過チャネルの通過断面は、支持体平面にわたる粉末連行体の第2移動方向において減少することが好ましい。特に単純な実施形態では、連行エレメントの少なくとも一部が直線の形状を成して形成されている。
【0021】
同時に連行エレメントは具体的には、粉末連行体が支持体平面にわたって第1移動方向に動かされると、粉末捕集区分を備えた端部が、支持体平面にわたる粉末連行体の移動方向を基準として前端を形成するように方向付けされている。これにより、上述のように、第1移動方向に支持体平面にわたって粉末連行体が移動すると、支持体平面上に堆積された粉末状材料は、連行エレメントの粉末捕集区分によって捕集され運ばれる。
【0022】
粉末塗布装置の好ましい実施形態では、粉末連行体の表面プロフィールは連行エレメントから成る第1群を有しており、前記連行エレメントは、支持体平面にわたる粉末連行体の第1及び第2の移動方向に対してほぼ直角方向に一列に相並んで配置されている。第1群の互いに隣接する連行エレメントの間に、それぞれ1つの通過チャネルが存在している。第1群の互いに隣接する連行エレメント間の間隔は、連行エレメントの間に画定された通過チャネルの寸法を決定し、そして例えば、支持体平面にわたる粉末連行体の移動方向に応じて運ばれる又は通過チャネルを通して導かれるべき、そして場合によってはプロセスチャンバ内のプロセスによって影響を与えられた、支持体平面上に堆積された粉末粒子の粒径、粒径分布、及び凝集傾向に応じて選択することができる。連行エレメントの高さは必要に応じて選択することができる。例えば、粉末連行体が比較的稀にしか動かされない場合、例えば分配エレメントとは無関係に支持体平面にわたって動かされる場合には、より多くの粉末を運べるように、連行エレメントはより高く構成することができる。
【0023】
さらに、粉末連行体の表面プロフィールは連行エレメントから成る第2群を有することができ、前記連行エレメントは、支持体平面にわたる粉末連行体の第1及び第2の移動方向に対してほぼ直角方向に一列に相並んで配置されている。さらに、第2群の連行エレメントは、支持体平面にわたる粉末連行体の第1移動方向を基準として第1連行エレメント群の後ろで、第1群の連行エレメントの間に存在する通過チャネル内に、少なくとも部分的に配置されている。粉末連行体が支持体平面にわたって第1移動方向に移動すると、先ず第1群の連行エレメントが、支持体平面上に堆積された粉末状材料に遭遇する。粉末状材料の一部は次いで、既に第1群の連行エレメント、すなわち具体的にはこれらの粉末捕集区分によって捕集され運ばれる。これに対して、先ず第1群の連行エレメント間の通過チャネル内へ入った粉末状材料は、第1移動方向の支持体平面にわたる粉末連行体のさらなる移動経過中に、第2群の連行エレメントに遭遇する。
【0024】
第2群の連行エレメントは、第1移動方向の支持体平面にわたる粉末連行体の移動時に、第1群の連行エレメントの間で通過チャネル内に入った粉末状材料を捕集し運ぶように形成され配置されていると有利である。第2群の連行エレメント、すなわち具体的にはその粉末捕集区分は、第1群の連行エレメントによって運ばれなかった粉末状材料を捕集する。これにより、支持体平面上に堆積された粉末状材料は、第1移動方向の支持体平面にわたる粉末連行体の移動時に少なくとも大部分が引きずられて運ばれることが保証される。
【0025】
さらに、第2群の連行エレメントは、第2移動方向の支持体平面にわたる粉末連行体の移動時に、通過チャネル内に入った粉末状材料を、通過チャネルを通して導くように形成され配置されていることが好ましい。換言すれば、第2群の連行エレメントは、通過チャネルを閉鎖するのではなく、第2移動方向の支持体平面にわたる粉末連行体の移動時に、粉末状材料が通過チャネルを貫通するのを可能にするように形成され配置されていることが好ましい。
【0026】
支持体平面にわたる粉末連行体の第2移動方向を基準として、第2群の連行エレメントは第1群の連行エレメントの前に配置されていてよい。第2群の連行エレメントは、粉末連行体が第2移動方向に支持体平面にわたって移動すると、第1群の連行エレメントの前で、支持体平面上に堆積された材料に遭遇する。
【0027】
しかしながらこの代わりに、第2群の連行エレメントが、支持体平面にわたる粉末連行体の第2移動方向を基準として、第1群の連行エレメントと同一高さに配置されるように、粉末連行体の表面プロフィールを形成することもできる。このような場合には、第2移動方向の支持体平面にわたる粉末連行体の移動時に、第1群及び第2群の連行エレメントは同時に、支持体平面上に堆積された粉末状材料に遭遇するので、粉末状材料は第2群の連行エレメントの傍らを擦過して、第1群の連行エレメントの間に存在する通過チャネルを通って導かれる。
【0028】
粉末塗布装置の好ましい実施形態では、第2群の連行エレメントは、支持体平面にわたる粉末連行体の第1及び第2の移動方向に対してほぼ直角方向に、第1群の連行エレメントに対してオフセット配置されている。例えば、具体的には支持体平面にわたる粉末連行体の第1移動方向だけを基準とするのではなく、支持体平面にわたる粉末連行体の第2移動方向をも基準として、第1群の連行エレメントの後ろに配置された第2群の連行エレメントが、第1移動方向及び第2移動方向に対してほぼ直角方向に、第1群の連行エレメントに対してオフセット配置されて、第1群の2つの連行エレメントの間に存在する各通過チャネル内に、第2群の1つの連行エレメントが配置されるようになっていてよい。
【0029】
さらに、粉末連行体の表面プロフィールは第3連行エレメント群を有している。第3群の連行エレメントは、支持体平面にわたる粉末連行体の第1及び第2の移動方向に対してほぼ直角方向に一列に相並んで配置されていてよい。これに加えて又はこの代わりに、第3群の連行エレメントは第1及び第2の移動方向に対してほぼ直角方向に、第1群及び/又は第2群の連行エレメントに対してオフセット配置されていてよい。第3群の連行エレメントは、支持体平面にわたる粉末連行体の第1移動方向を基準として、前記第2連行エレメント群の後ろで、少なくとも部分的に、前記第2群の前記連行エレメントの間に存在する通過チャネル内に配置されていてよい。第3群の連行エレメントは、第2群の連行エレメントに対して、第1群の連行エレメントに対する第2群の連行エレメントに関して上述したものと同じ機能を果たす。所望の場合、又は必要な場合には、粉末連行体の表面プロフィールは、例えばその面積に応じてさらなる連行エレメント群を有することもできる。
【0030】
第1群の連行エレメント、第2群の連行エレメント、及び/又は第3群の連行エレメントがほぼ同一に形成されていてよい。例えば、全ての連行エレメントはほぼフック状に形成されていてよく、且つ/又は同じ大きさであってよい。第2群の連行エレメントは、第1群の連行エレメント間に存在する通過チャネル内に部分的にのみ突入していることが好ましく、第3群の連行エレメントは、第2群の連行エレメント間に存在する通過チャネル内に同様に有利には部分的にのみ突入していることが好ましい。
【0031】
粉末塗布装置の別の実施形態では、第2群の連行エレメントは、第1群の連行エレメントの間に存在する通過チャネル内に完全に配置されている。連行エレメントのこのような形態は、例えば、第2群の連行エレメントが支持体平面にわたる粉末連行体の第2移動方向を基準として、第1群の連行エレメントと同一高さに配置されている表面プロフィールに適切である。
【0032】
第1群の連行エレメントと第2群の連行エレメントとがほぼ同一の幾何学的基本形状を有することができる。例えば、第1群の連行エレメントも第2群の連行エレメントもV字形又は楔形に形成されていてよい。しかしながら、第2群の連行エレメントは第1群の連行エレメントよりも小さいことが好ましい。
【0033】
ジェネレーティブ積層プロセスによって三次元的なワークピースを製造するシステム内に使用するのに適した粉末塗布装置を運転する方法において、ジェネレーティブ積層プロセスによってワークピースを製造するための原料粉末を支持体の表面上に堆積するために、支持体の表面にわたって分配エレメントを動かす。粉末連行体を支持体平面にわたって動かし、粉末連行体が、支持体平面に向いた表面の領域内に、表面プロフィールを備えている。表面プロフィールは連行エレメント並びに通過チャネルを有している。支持体平面にわたる粉末連行体の移動を基準として、粉末連行体の前で支持体平面上に堆積された粉末状材料が、第1移動方向の支持体平面にわたる粉末連行体の移動時に、連行エレメントによって引きずられ、そして第1移動方向とは反対の第2移動方向の支持体平面にわたる粉末連行体の移動時には、通過チャネルを通して導かれるように、連行エレメント並びに通過チャネルは形成され配置されている。
【0034】
支持体平面にわたる粉末連行体の移動を基準として、粉末連行体の前で支持体平面上に堆積された粉末状材料が、第1移動方向の支持体の表面にわたる粉末連行体の移動時に、ガス流臨界領域の外部に位置する捕集シャフト内及び/又は捕集領域内に搬送される。捕集シャフト内では粉末状材料を集め、続いて処理又は廃棄することができる。
【0035】
ジェネレーティブ積層プロセスを用いて三次元的なワークピースを製造するシステムが、上記粉末塗布装置を有している。
【0036】
システムはさらに、捕集シャフト及び/又はガス流臨界領域外部に位置する捕集領域とを有していることが好ましい。捕集領域は、第1移動方向の支持体平面にわたる移動時に粉末連行体によって運ばれた粉末状材料を収容するように構成されている。第1移動方向の支持体平面にわたる粉末連行体の移動を基準として、捕集シャフトは支持体の後ろに配置されていてよい。
【0037】
三次元的なワークピースを製造するシステムはさらに、余剰の原料粉末を収容するための少なくとも1つのオーバーフローシャフトを有することができる。原料粉末は、分配エレメントによって、支持体の表面にわたるその移動時に引きずられ、支持体の表面から、支持体に隣接する支持体平面領域内へ押しずらされる。システムは、2つのオーバーフローシャフトを有していることが好ましい。これらのオーバーフローシャフトは、支持体の表面にわたる分配エレメントの移動を基準として、支持体の両側に配置されている。分配エレメントは、第1移動方向の支持体の表面にわたる移動時に、余剰の原料粉末を支持体の表面から第1オーバーフローシャフト内へ搬送することができる。第1オーバーフローシャフトは、支持体の表面にわたる分配エレメントの第1移動方向を基準として、支持体の後ろに配置されている。これに対して、第2移動方向の支持体の表面にわたる移動時には、分配エレメントは余剰の原料粉末を支持体の表面から第2オーバーフローシャフト内へ搬送することができる。第2オーバーフローシャフトは、支持体の表面にわたる分配エレメントの第2移動方向を基準として、支持体の後ろに配置されている。
【0038】
捕集シャフトは、支持体平面にわたる粉末連行体の第1及び第2移動方向に対してほぼ直角方向で、第1オーバーフローシャフトに隣接して配置されていてよい。所望の場合には、捕集シャフトと第1オーバーフローシャフトとは共通のシャフトの格子によって覆われてもよい。しかしながら、捕集シャフトは、第1オーバーフローシャフトから隔壁によって分離されていることが好ましい。これにより、粉末連行体によって捕集シャフト内へ搬送された粉末状材料を、分配エレメントによって第1オーバーフローシャフト内へ搬送された余剰の原料粉末から分離することができる。次いで捕集シャフトの粉末状材料と、第1オーバーフローシャフトの余剰の原料粉末とを互いに別々にプロセスチャンバから導出することができる。第1オーバーフローシャフトの汚染されていない余剰の原料粉末は次いで直接に再使用することができるのに対して、捕集シャフトの粉末状材料は廃棄するか、又はさらなる使用のために処理することができる。
【0039】
添付の概略図に基づいて本発明を以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、ジェネレーティブ積層プロセスによって三次元的なワークピースを製造するシステムの関連構成部分を示す概略上面図である。
【
図2】
図2は、
図1のシステムの粉末塗布装置内で使用される粉末連行体の表面プロフィールの第1実施態様を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1のシステムの粉末塗布装置内で使用される粉末連行体の表面プロフィールの第2実施態様を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1のシステムの粉末塗布装置内で使用される粉末連行体の表面プロフィールの第3実施態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、ジェネレーティブ積層プロセスによって三次元的なワークピースを製造するシステム100の関連構成部分を示す概略上面図である。システム100はプロセスチャンバ102、並びに
図1に図示されていない、プロセスチャンバ102の上方に配置された照射装置を有している。プロセスチャンバ102は周囲雰囲気に対してシールされているので、プロセスチャンバ102内には必要時に、不活性ガス雰囲気又は反応ガス雰囲気、あるいは大気圧に対して低減された圧力を設定することができる。このために、プロセスチャンバ102はガス回路104に接続されている。
【0042】
ガス入口106を介して、プロセスチャンバ102はガスをガス源108から供給することができる。プロセスチャンバ102の貫流後、ガスはガス出口110を介してプロセスチャンバ102から導出される。ガス回路104を通してガスを供給するために、ガス回路104内には、例えばブロワの形態の供給装置112が配置されている。ガス出口110を介してプロセスチャンバ102から導出されたガスは、粒子状の不純物、例えば粉末粒子、溶接煙粒子、又は凝縮物粒子を含有することがある。従って、ガス回路104内にはガスフィルタ114が配置されている。プロセスチャンバ102から導出されたガスは、ガス入口106を通ってプロセスチャンバ102内へ循環される前に、ガスフィルタを通るように導かれるので、ガスは粒子状の不純物から解放される。
【0043】
プロセスチャンバ102内には支持体116が配置されている。支持体は、原料粉末、並びにジェネレーティブ積層プロセスによって原料粉末から製造されたワークピースを受容するのに役立つ。支持体116はプロセスチャンバ102に対して鉛直方向に下方へ向かって、
図1には示されていない造形チャンバ内へ移動可能である。その代わりに、支持体116が定置のままであり、これに対して残りの構成部分が持ち上げられる逆の構成も可能である。
【0044】
ワークピースを製造するために提供された原料粉末を支持体116の表面上に層状に塗布するために、粉末塗布装置10は支持体116の表面にわたって移動可能である。粉末塗布装置10は分配エレメント12を有している。分配エレメント12は、粉末塗布装置10の運転中、水平方向に支持体116の表面にわたって、又は支持体116の表面上に既に塗布された粉末層にわたって移動し、新たな粉末層を塗布する。支持体116上へ塗布されるべき原料粉末を収容するための粉末リザーバ14が粉末塗布装置10の分配エレメント12内へ一体的に組み込まれており、ひいては分配エレメント12と一緒に支持体116の表面にわたって移動する。
【0045】
粉末塗布装置10によって支持体116上に塗布された原料粉末は、照射装置によって放射されたビームで部位選択的に照射される。照射によってもたらされた、原料粉末中への熱注入は、原料粉末の粒子を溶融もしくは焼結させる。これにより支持体116上には原料粉末から層毎にワークピースが構築される。
【0046】
照射装置はビーム源、好ましくはレーザー源を有している。レーザー源は波長約1064nmの光を放射する。照射装置はさらに光学素子、例えば走査ユニット、集束ユニット、及びF-シータレンズを有している。走査ユニットは、ビームを最も上側の原料粉末層にわたって水平平面内部(x方向及びy方向)で走査するように構成されている。集束ユニットは、ビームの焦点位置(z方向)を変化もしくは適合させるように構成されている。所望の場合には、照射装置は、複数の走査ユニット、及び場合によっては複数のビーム源を有することもできる。
【0047】
さらに、粉末塗布装置10は粉末連行体16を有している。粉末連行体16は分配エレメント12に固定されており、従って分配エレメント12と一緒にプロセスチャンバ102内で往復移動する。粉末連行体16は分配エレメント12の側面18から延びているので、粉末連行体16は分配エレメント12とは異なり、支持体116上を擦過もしくは移動するのではなく、支持体平面E上を擦過もしくは移動する。システム100の
図1に示された実施形態の場合、支持体平面Eは、プロセスチャンバ102の底板118の、支持体116に隣接する領域によって画定される。
【0048】
支持体平面Eに向いた表面20の領域内に、粉末連行体16は表面プロフィール22を備えている。
図2~4には、粉末連行体16の表面20上に形成された表面プロフィール22の種々の実施態様が示されている。表面プロフィール22は複数の連行エレメント24a,24b,24c並びに連行エレメント24a,24b,24cの間に配置された複数の通過チャネル26a,26b,26cを有している。支持体平面Eにわたる粉末連行体16の移動を基準として、粉末連行体16の前で支持体平面E上に堆積された粉末状材料Mが、第1移動方向R1の支持体平面Eにわたる粉末連行体16の移動時に、連行エレメント24a,24b,24cによって引きずられるように、連行エレメント24a,24b,24c及び通過チャネル26a,26b,26cは形成され配置されている。これに対して、第1移動方向R1とは反対の第2移動方向R2の支持体平面Eにわたる粉末連行体16の移動時には、支持体平面E上に堆積された粉末状材料Mは、通過チャネル26a,26b,26cを通して導かれる。
【0049】
粉末連行体16が第1移動方向R1に支持体平面Eにわたって移動したときの、表面プロフィール22に対する粉末状材料Mの移動経路が、
図2~4において矢印P1によって示されている。これに対して、
図2~4の矢印P2は、粉末連行体16が第2移動方向R2に支持体平面Eにわたって移動したときの、表面プロフィール22に対する粉末状材料Mの移動経路を示している。
【0050】
支持体平面E上のガス出口110の前に集まった粉末状材料Mは、粉末連行体16によって支持体平面Eのこの領域から導出し、そして粉末連行体16の第1移動方向R1に、粉末連行体16によって支持体平面Eにわたって推しずらすことができる。同時に、粉末連行体16が第2移動方向の支持体平面Eにわたる移動時に、支持体平面E上に堆積された粉末状材料Mを、ガス出口110の前に位置する支持体平面Eの領域内へ輸送することが阻止される。これにより、ガス出口110の近くにおける粉末状材料Mの不所望の集積を回避することができる。
【0051】
図2~4から最もよく判るように、粉末連行体16に形成された連行エレメント24a,24b,24cは、第2移動方向R2の支持体平面Eにわたる粉末連行体16の移動を基準として前端の領域内で先細に延びるように形成されている。これにより粉末状材料は、第2移動方向の支持体平面Eにわたる粉末連行体16の移動時には、連行エレメント24a,24b,24cの傍らを擦過して、連行エレメント24a,24b,24cの間に存在する通過チャネル26a,26b,26c内へ導くことができる。
【0052】
これとは対照的に、連行エレメント24a,24b,24cは、第1移動方向R1の前記支持体平面Eにわたる粉末連行体16の移動を基準として前端の領域内で粉末捕集区分28を備えている。
図2及び3に示された連行エレメント24a,24b,24cの場合、粉末捕集区分28はそれぞれ、連行エレメント24a,24b,24cの側壁によって仕切られた中空室によって形成されている。これとは対照的に、
図4に示された連行エレメント24a,24b,24cは、湾曲面によって形成されたそれぞれ1つの粉末捕集区分28を有している。湾曲面は、第1移動方向R1の支持体平面Eにわたる粉末連行体16の移動時に、支持体平面E上に堆積された粉末状材料Mと接触し、それによって粉末状材料Mを引きずる。
【0053】
図2に示された表面プロフィール22の連行エレメント24a,24b,24cはフック状に形成されているのに対して、
図3に示された表面プロフィール22の連行エレメント24a,24b,24cはV字形に形成されている。
図4に示された表面プロフィール22の連行エレメント24a,24b,24cはこれに対して楔状に形成されており、上述のように、湾曲面によって画定された粉末捕集区分28を備えている。
【0054】
連行エレメント24a,24b,24cはここで示された3つ全ての表面プロフィール実施態様において、複数の群に区分されている。具体的には、
図2~4に示された表面プロフィール22のそれぞれは、連行エレメント24aから成る第1群を有しており、これらの連行エレメント24aは、支持体平面Eにわたる粉末連行体16の第1及び第2の移動方向R1,R2に対してほぼ直角方向R3に一列に相並んで配置されている。第1及び第2移動方向R1,R2に対して直角の方向R3は、粉末連行体16の長手方向軸線Lに対して平行に延びている。第1群の互いに隣接する連行エレメント24aの間にはそれぞれ1つの通過チャネル26aが存在している。
【0055】
さらに、表面プロフィール22のそれぞれは連行エレメント24bから成る第2群を有することができ、これらの連行エレメント24bは、第1及び第2の移動方向R1,R2に対してほぼ直角方向R3に一列に相並んで配置されている。さらに、第2群の連行エレメント24bは、支持体平面Eにわたる粉末連行体16の第1移動方向R1を基準として第1群の連行エレメント24aの後ろで、少なくとも部分的に、第1群の連行エレメント24aの間に存在する通過チャネル26a内に配置されている。
【0056】
表面プロフィール22の
図2に示された実施形態の場合、第2群の連行エレメント24bの一区分だけが第1群の連行エレメント24aの間に存在する通過チャネル26a内に突入している。これとは対照的に、
図3及び
図4に示された表面プロフィール実施形態の第2群の連行エレメント24bはそれぞれ、第1群の連行エレメント24aの間に存在する通過チャネル26a内に完全に収容されている。
【0057】
しかしながら、
図2~4に示された全ての表面プロフィール実施形態において、第2群の連行エレメント24bは、第1移動方向R1の支持体平面Eにわたる粉末連行体16の移動時に、第1群の連行エレメント24aの間で通過チャネル26a内に入る粉末状材料を捕集し引きずるように形成され配置されている。
図2~4の矢印P1を参照されたい。従って、粉末連行体16が支持体平面Eにわたって第1移動方向R1に移動すると、先ず第1群の連行エレメント24aが、支持体平面E上に堆積された粉末状材料Mに遭遇する。粉末状材料Mの一部は次いで、既に第1群の連行エレメント24a、すなわち具体的にはこれらの粉末捕集区分28によって捕集され引きずられる。これに対して、最初に第1群の連行エレメント24a間の通過チャネル26a内へ入った粉末状材料Mは、第1移動方向R1の支持体平面Eにわたる粉末連行体のさらなる移動経過中に、第2群の連行エレメント24bに遭遇し、そしてこれらの連行エレメント24bによって、すなわち具体的にはその粉末捕集区分28によって捕集され引きずられる。
【0058】
さらに、第2群の連行エレメント24bは、第2移動方向R2の支持体平面Eにわたる粉末連行体16の移動時に、通過チャネル26a内に入った粉末状材料Mを、通過チャネル26aを通して導くように、すなわち粉末状材料Mが通過チャネル26aを貫通するのを可能にするように形成され配置されている。
図2~4の矢印P2を参照されたい。
【0059】
図2に示された表面プロフィール22の場合、第1群の連行エレメント24aは、支持体平面Eにわたる粉末連行体16の第2移動方向R2を基準として、第2群の連行エレメント24bの後ろに配置されている。従って、粉末連行体16が第2移動方向R2に支持体平面Eにわたって移動すると、先ず第2群の連行エレメント24bが、そしてそれから初めて第1群の連行エレメント24aが、支持体平面E上に堆積された材料Mに遭遇する。これとは対照的に、
図3及び4に示された表面プロフィール22は、第2群の連行エレメント24bが、支持体平面Eにわたる粉末連行体16の第2移動方向R2を基準として、第1群の連行エレメント24aと同一高さに配置されるように形成されている。このような場合には、粉末連行体16が第2移動方向R2に支持体平面Eにわたって移動すると、第1群及び第2群の連行エレメント24a,24bは、支持体平面E上に堆積された粉末状材料Mに同時に遭遇するので、粉末状材料は第2群の連行エレメント24bを擦過して、第1群の連行エレメント24aの間に存在する通過チャネル26aを通って導かれる。
【0060】
図2に示された表面プロフィール22の場合、第2群の連行エレメント24bは、支持体平面Eにわたる粉末連行体16の第1及び第2の移動方向R1,R2に対してほぼ直角方向R3に、第1群の連行エレメント24aに対してオフセット配置されている。それによって、第1群の2つの連行エレメント24aの間に存在する各通過チャネル26a内へ、第2群の連行エレメント24bが突入している。さらに、
図2に示された表面プロフィール22は、連行エレメント群24cから成る第3群を有している。第3群の連行エレメント24cは、支持体平面Eにわたる粉末連行体16の第1及び第2の移動方向R1,R2に対してほぼ直角方向R3に一列に相並んで、そして第1及び第2群の連行エレメント24a,24bに対してオフセット配置されている。
【0061】
支持体平面Eにわたる粉末連行体16の第1移動方向R1を基準として、第3群の連行エレメント24cは第2群の連行エレメント24bの後ろに配置されており、そして第2群の連行エレメント24bの間に存在する通過チャネル26b内にそれぞれ突入している。最後に、
図2に示された表面プロフィール22は通過チャネル26cを有している。これらの通過チャネル26cは、第3群の互いに隣接する2つの連行エレメント24cの間に配置されている。各通過チャネル26aは1つの通過チャネル26bに接続され、各通過チャネル26bは1つの通過チャネル26cへと次々に接続されているので、支持体平面E上に堆積された材料Mは、粉末連行体
16が支持体平面Eにわたって第2移動方向R2に移動すると、連続して通過チャネル26c,26b,26aを貫通することができる。
図2の矢印P2を参照されたい。
【0062】
図2に示された表面プロフィール22の場合、第1群の連行エレメント24aと、第2群の連行エレメント24bと、第3群の連行エレメント24cとはほぼ同一に形成されている。これとは対照的に、第1群の連行エレメント24aと第2群の連行エレメント24bとは、
図3及び4に示された表面プロフィール22の場合には、同一の幾何学的基本形状を有してはいるものの、大きさが異なる。具体的には、第2群の連行エレメント24bは第1群の連行エレメント24bよりも小さい。
【0063】
システム100の運転中、粉末連行体16によって第1移動方向R1の支持体平面Eにわたる移動時に引きずられた粉末状材料Mは、粉末連行体16によって捕集シャフト120内へ搬送される。捕集シャフトは、第1移動方向R1の支持体平面Eにわたる粉末連行体16の移動を基準として支持体116の後ろで、支持体平面Eにわたる粉末連行体16の第1及び第2移動方向R1,R2に対して直角方向R3に、支持体116に対してオフセット配置されている。これに相応して、捕集シャフト120はプロセスチャンバ102のガス出口110から十分に大きく離れている。
【0064】
捕集シャフト120は第1オーバーフローシャフト122に隣接して配置されていてよい。第1オーバーフローシャフト122は余剰の原料粉末を収容するのに役立つ。この余剰の原料粉末は、分配エレメント12によって、第1移動方向R1の支持体116の表面にわたる移動時に、支持体116の表面から搬出される。さらに、第2オーバーフローシャフト124が設けられている。第2オーバーフローシャフト124は余剰の原料粉末を収容するのに役立つ。この余剰の原料粉末は、分配エレメント12によって、第2移動方向R2の支持体116の表面にわたる移動時に、支持体116の表面から搬出される。
【0065】
捕集シャフト120と第1オーバーフローシャフト122とは共通のシャフト格子126によってカバーされている。しかしながら、捕集シャフト120は第1オーバーフローシャフト122から隔壁128によって分離されている。これにより、粉末連行体16によって捕集シャフト120内へ搬送された粉末状材料Mを、分配エレメント12によって第1オーバーフローシャフト122内へ搬送された余剰の原料粉末から分離し、これとは別個にプロセスチャンバ102から導出することができる。第1オーバーフローシャフト122の汚染されていない余剰の原料粉末は次いで直接に再使用することができる。これに対して、捕集シャフト120の粉末状材料は廃棄するか、又はさらなる使用のために処理することができる。