(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】メンテナンス液、及びそれを使用したインクジェット記録装置のメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20220725BHJP
【FI】
B41J2/165 401
(21)【出願番号】P 2022060466
(22)【出願日】2022-03-31
(62)【分割の表示】P 2022058300の分割
【原出願日】2022-03-31
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2021062468
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021106427
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021106428
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】吉森 圭士郎
(72)【発明者】
【氏名】折笠 由佳
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴生
(72)【発明者】
【氏名】宇高 公淳
(72)【発明者】
【氏名】田村 充功
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190374(JP,A)
【文献】特開2014-084348(JP,A)
【文献】特開2007-119658(JP,A)
【文献】特開2008-274016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録装置に用いられるメンテナンス液であって、
有機溶剤を含有し、
水分の含有量がメンテナンス液全量中5質量%以下であり、
前記有機溶剤は、アミド系溶
剤を少なくとも1つ以上含有
し、
前記アミド系溶剤は、アルキルアミド系溶剤を含有し、
前記アルキルアミド系溶剤は、下記式(1-1)で表される
メンテナンス液。
【化1】
(式(1-1)中、R
1
は、水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基であり、R
2
、R
3
は、それぞれ独立して炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。
【請求項2】
前記アミド系溶剤
とラクトン系溶剤との合計含有量は、メンテナンス液全量中7質量%以上である、
請求項1に記載のメンテナンス液。
【請求項3】
前記アルキルアミド系溶剤は、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド、及びN,N-ジエチルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも1つを含有する、
請求項
1又は2に記載のメンテナンス液。
【請求項4】
前記有機溶剤は、さらにグリコールエーテル系溶剤を含有する、
請求項1から
3のいずれかに記載のメンテナンス液。
【請求項5】
前記有機溶剤は、さらに蒸発エンタルピー(EOV)が45kJ/mol以上の有機溶剤を含有する、
請求項1から
4のいずれかに記載のメンテナンス液。
【請求項6】
温度25℃、湿度55%環境下に100時間載置したときの水分の吸水量が前記メンテナンス液全量中4質量%以下である、
請求項1から
5のいずれかに記載のメンテナンス液。
【請求項7】
前記インクジェット記録装置が、非水系インク組成物を用いて記録を行うものである、
請求項1から
6のいずれかに記載のメンテナンス液。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれかに記載のメンテナンス液を使用してインクジェット記録装置のメンテナンスを行う
インクジェット記録装置のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメンテナンス液、及びそれを使用したインクジェット記録装置のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット用のインク組成物として、水、又は水と有機溶剤との混合液に色材を溶解又は分散させた水性インク組成物や水を含有しない有機溶剤に色材を溶解又は分散させた非水系インク組成物が広く用いられている。
【0003】
このようなインク組成物を用いて記録を行うインクジェット記録装置では、インク組成物に由来する成分や装置の部材に由来する成分等によりインク流路やインクジェットヘッド等に詰まりが生じると、インクの供給が阻害されたり、インクの吐出不良が生じたりする場合がある。そこで、インクジェット記録装置内のインク組成物を流通させるインク流路内に通流等させるメンテナンス液が知られている。なお、インク組成物に由来する成分とは、インクジェット記録装置により吐出されるインク組成物に含まれる色材成分や樹脂等を含む固形成分、不純物として含まれる金属に由来する金属化合物等である。また、装置部材に由来する成分とは、インク組成物が装置部材を極一部を溶解することで発生する、装置部材の析出物等である。
【0004】
例えば、特許文献1には、所定の関係を有する2種以上の有機溶剤を含むメンテナンス液が記載されている。特許文献1によれば、このメンテナンス液は、乾燥性及び保湿性に優れる。
【0005】
また、特許文献2には、ラクトン系溶剤と、溶剤系メンテナンス液の総質量に対して30質量%以上のアルキレングリコールモノエーテル系溶剤と、を含有するメンテナンス液が記載されている。特許文献1には、このメンテナンス液は、部材アタック性が低減され、かつ、有機溶剤を主成分とするインクを用いるインクジェット記録装置の洗浄に適していることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6440094号
【文献】特開2017-186451
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、このようなインクジェット記録装置に用いられるメンテナンス液は、使用時にインクジェット記録装置内の構成部材と接触する。このため、このような部材に対する部材適性が要求されることとなる。
【0008】
一方、メンテナンス液は、インク流路内等に付着したインク組成物に由来する成分を取り除くために用いられるものであり、インク流路を洗浄する洗浄性をも要求される。
【0009】
また、メンテナンス液は、インクジェット記録装置内のプラスチック収容体やプラスチック供給体内で長期間充填されたままになることがある。すると、メンテナンス液に含まれる有機溶剤が揮発して保湿性が低下することがある。すると、洗浄したインク組成物に由来する成分が再び析出してしまい、結果的に部材に付着したインク組成物が除去できなくなることがある。
【0010】
さらに、このようなインクジェット記録装置に用いられるメンテナンス液は、インク流路内等に付着したインク組成物に由来する成分を取り除くために用いられるものであり、インク流路を洗浄する洗浄性をも要求される。
【0011】
一方、メンテナンス液は、使用時にインクジェット記録装置のインクジェットヘッドと接触する。ここで、インクジェットヘッドは、樹脂硬化物により接着された構成部材を備えており、メンテナンス液がインクジェットヘッド内を通過するときやメンテナンス液を含浸させた払拭部材がインクジェットヘッのノズル開口部に接触するときにこの樹脂硬化物とメンテナンス液が接触することとなる。このため、メンテナンス液は、このような樹脂硬化物に対する部材適性が要求されることとなる。
【0012】
本発明は、インクジェット記録装置を構成する部材に対する部材適性が高く、かつ洗浄性に優れたメンテナンス液を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、インクジェット記録装置内のプラスチック収容体やプラスチック供給体内での保湿性に優れたメンテナンス液を提供することを目的とする。
【0014】
さらに、本発明は、樹脂硬化物に対する部材適性が高く、かつ洗浄性に優れたメンテナンス液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねたところ、水分の含有量が所定範囲以下に制御され、アミド系溶剤又はラクトン系溶剤を少なくとも1つ以上含有したメンテナンス液であれば、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った
【0016】
また、本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねたところ、保管試験により揮発する揮発率が所定以下の有機溶剤を含有するメンテナンス液であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
さらに、本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねたところ、所定の有機溶剤を含有したメンテナンス液であれば、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、以下のものを提供する。
【0018】
(1)インクジェット記録装置に用いられるメンテナンス液であって、有機溶剤を含有し、水分の含有量がメンテナンス液全量中5質量%以下であり、前記有機溶剤は、アミド系溶剤又はラクトン系溶剤を少なくとも1つ以上含有する、メンテナンス液。
【0019】
(2)前記アミド系溶剤と前記ラクトン系溶剤との合計含有量は、メンテナンス液全量中7質量%以上である、(1)に記載のメンテナンス液。
【0020】
(3)前記有機溶剤は、アミド系溶剤を含有する、(1)又は(2)に記載のメンテナンス液。
【0021】
(4)前記アミド系溶剤は、アルキルアミド系溶剤を含有する、(3)に記載のメンテナンス液。
【0022】
(5)前記アルキルアミド系溶剤は、下記式(1-1)で表される(4)に記載のメンテナンス液。
【化1】
(式(1-1)中、R1は、水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基であり、R2、R3は、それぞれ独立して炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。
【0023】
(6)前記アルキルアミド系溶剤は、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド、及びN,N-ジエチルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも1つを含有する、(5)に記載のメンテナンス液。
【0024】
(7)前記有機溶剤は、ラクトン系溶剤を含有する、(1)又は(2)に記載のメンテナンス液。
【0025】
(8)前記ラクトン系溶剤は、下記式(1-3)で表されるラクトン系溶剤である、(7)に記載のメンテナンス液。
【化2】
(式(1-3)中、R6は、炭素数3以上5以下のアルキレン基であり、R7は、水素若しくは炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。)
【0026】
(9)前記有機溶剤は、さらにグリコールエーテル系溶剤を含有する、(1)から(8)のいずれかに記載のメンテナンス液。
【0027】
(10)前記有機溶剤は、さらに蒸発エンタルピー(EOV)が45kJ/mol以上の有機溶剤を含有する、(1)から(9)のいずれかに記載のメンテナンス液。
【0028】
(11)温度25℃、湿度55%環境下に100時間載置したときの水分の吸水量が前記メンテナンス液全量中4質量%以下である、(1)から(10)のいずれかに記載のメンテナンス液。
【0029】
(12)前記インクジェット記録装置が、非水系インク組成物を用いて記録を行うものである、(1)から(11)のいずれかに記載のメンテナンス液。
【0030】
(13)インクジェット記録装置に用いられるメンテナンス液であって、有機溶剤A2を含有し、前記有機溶剤A2は、沸点が250℃以下であり、かつ下記の保管試験により揮発する揮発率が15質量%以下である、メンテナンス液。
保管試験:低密度ポリエチレンチューブに有機溶剤A2を充填して密閉し、50℃、1週間保管する。
【0031】
(14)前記有機溶剤A2の含有量はメンテナンス液全量中1質量%以上95質量%以下の範囲である(13)に記載のメンテナンス液。
【0032】
(15)グリコールエーテルモノアルキル、環状エステル、炭酸エステル、及びアミド系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する(13)又は(14)に記載のメンテナンス液。
【0033】
(16)環状エステルを含有し、前記環状エステルは下記式(2-1)で表される(15)に記載のメンテナンス液。
【化3】
(式(2-1)中、R
6は、炭素数3以上5以下のアルキレン基であり、R
7は、水素若しくは炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。)
【0034】
(17)アミド系溶剤を含有し、前記アミド系溶剤は下記式(2-2)で表される(15)又は(16)に記載のメンテナンス液。
【化4】
(式(2-2)中、R
1は、水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基であり、R
2R
3は、それぞれ独立して、水素もしくは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)
【0035】
(18)前記インクジェット記録装置は、メンテナンス液と接触するプラスチック部材を備える(13)から(17)のいずれかに記載のメンテナンス液。
【0036】
(19)前記プラスチック部材の少なくとも一部がポリオレフィンにより構成される(18)に記載のメンテナンス液。
【0037】
(20)前記プラスチック部材は、メンテナンス液を収容するプラスチック収容体及び/又はンテナンス液を供給するプラスチック供給体を構成する(18)又は(19)に記載のメンテナンス液。
【0038】
(21)さらに色材を含有する(13)から(20)のいずれかに記載のメンテナンス液。
【0039】
(22)色材を含有しない(13)から(20)のいずれかに記載のメンテナンス液。
【0040】
(23)さらに分散剤を含有する(13)から(22)のいずれかに記載のメンテナンス液。
【0041】
(24)樹脂硬化物を構成部材として含むインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置に用いられるメンテナンス液であって、有機溶剤を含有し、前記有機溶剤は、下記有機溶剤A3を含有するメンテナンス液。有機溶剤A3:アルキルアミド系溶剤(a1)、環状アミド系溶剤(a2)、及びラクトン系溶剤(a3)からなる群より選択される少なくとも1つ
【0042】
(25)前記樹脂硬化物は、エポキシ系樹脂及び/又はシリコン系樹脂を少なくとも含有する(24)に記載のメンテナンス液。
【0043】
(26)前記有機溶剤は、アルキルアミド系溶剤(a1)を含有し、前記アルキルアミド系溶剤(a1)は下記式(3-1)で表される(24)又は(25)に記載のメンテナンス液。
【化5】
(式(3-1)中、R
1は、水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基であり、R
2R
3は、それぞれ独立して、水素もしくは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)
【0044】
(27)前記アルキルアミド系溶剤(a1)は、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド及びN,N-ジエチルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも1つを含有する(26)に記載のメンテナンス液。
【0045】
(28)前記有機溶剤は、環状アミド系溶剤(a2)を含有し、前記環状アミド系溶剤(a2)は下記式(3-2)で表される(24)又は(25)に記載のメンテナンス液。
【化6】
(式(3-2)中、R
4は、炭素数4以上5以下のアルキレン基であり、R
5は、水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基または不飽和炭化水素基を表す。)
【0046】
(29)前記環状アミド系溶剤(a2)は、ε-カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、及びN-ビニルカプロラクタムからなる群より選択される少なくとも1つを含有する(28)に記載のメンテナンス液。
【0047】
(30)前記有機溶剤は、ラクトン系溶剤(a3)を含有し、前記ラクトン系溶剤(a3)は下記式(3-3)で表される(24)又は(25)に記載のメンテナンス液。
【化7】
(式(3-3)中、R
6は、炭素数3以上5以下のアルキレン基であり、R
7は、水素若しくは炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。)
【0048】
(31)前記ラクトン系溶剤(a3)は、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、及びε-カプロラクトンからなる群より選択される少なくとも1つを含有する(30)に記載のメンテナンス液。
【0049】
(32)さらに色材を含有する(24)から(31)のいずれかに記載のメンテナンス液。
【0050】
(33)色材を含有しない(24)から(31)のいずれかに記載のメンテナンス液。
【0051】
(34)さらに分散剤を含有する(24)から(33)のいずれかに記載のメンテナンス液。
【0052】
(35)(1)から(34)のいずれかに記載のメンテナンス液を使用してインクジェット記録装置のメンテナンスを行うインクジェット記録装置のメンテナンス方法。
【0053】
(36)(1)から(34)のいずれかに記載のメンテナンス液が使用されるインクジェット記録装置。
【0054】
(37)(13)から(23)のいずれかに記載のメンテナンス液が使用されるインクジェット記録装置であって、プラスチック収容体及び/又はプラスチック供給体を備え、その内部と前記メンテナンス液が接触する、インクジェット記録装置。
【0055】
(38)(24)から(34)のいずれかに記載のメンテナンス液が使用されるインクジェット記録装置であって、樹脂硬化物を構成部材として含むインクジェットヘッドを備え、前記メンテナンス液を前記樹脂硬化物に接触させて該メンテナンス液が使用されるインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0056】
本発明のメンテナンス液は、インクジェット記録装置を構成する部材に対する部材適性が高く、かつ洗浄性に優れる。
【0057】
本発明のメンテナンス液は、インクジェット記録装置内のプラスチック収容体やプラスチック供給体内での保湿性に優れる。
【0058】
本発明のメンテナンス液は、樹脂硬化物に対する部材適性が高く、かつ洗浄性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】本実施の形態に係るメンテナンス液を使用するインクジェットヘッドの一例を示す模式図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
≪1.概要≫
本発明のメンテナンス液は、インクジェット記録装置に用いられるメンテナンス液である。なお、「インクジェット記録装置に用いられる」とは、インクジェット記録装置内のインク流路内又はインクジェットヘッドに付着したインク組成物に由来する成分を取り除くことに用いられることを意味する。
【0061】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0062】
≪1-1.第1実施形態のメンテナンス液≫
本実施の形態に係るメンテナンス液は、インクジェット記録装置に用いられるメンテナンス液である。
【0063】
そして、本実施の形態に係るメンテナンス液は、有機溶剤を含有し、水分の含有量がメンテナンス液全量中5質量%以下である非水系のメンテナンス液であって、有機溶剤は、アミド系溶剤又はラクトン系溶剤を少なくとも1つ以上含有することを特徴としている。
【0064】
このような構成であることで、インクジェット記録装置を構成する部材に対する部材適性が高く、かつ洗浄性に優れたメンテナンス液となる。
【0065】
なお、水分の含有量は、メンテナンス液全量中3.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0066】
以下、本実施の形態に係るメンテナンス液に含有される各成分について説明する。
【0067】
[有機溶剤]
有機溶剤は、インク流路の詰まりを洗浄する機能を有する。そして、この有機溶剤は、アミド系溶剤又はラクトン系溶剤を少なくとも1つ以上含有する。アミド系溶剤又はラクトン系溶剤を少なくとも1つを含有することにより、メンテナンス液の洗浄性を向上させることができる。
【0068】
アミド系溶剤とラクトン系溶剤との合計含有量は、特に限定されないが、アミド系溶剤とラクトン系溶剤との合計含有量の下限は、メンテナンス液全量中7質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。このような範囲であることでメンテナンス液の洗浄性をより効果的に向上させることができる。アミド系溶剤とラクトン系溶剤との合計含有量の上限は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが好ましい。このような範囲であることでインクジェット記録装置を構成する部材に対する部材適性がより向上する。
【0069】
以下、有機溶剤に含有されるアミド系溶剤及びラクトン系溶剤についてそれぞれ説明する。
【0070】
(1)アミド系溶剤
アミド系溶剤とは、-C(=O)-N-基(アミド結合)を有する化合物からなる有機溶剤である。アミド系溶剤を含有することにより、メンテナンス液の洗浄性を向上させることができる。
【0071】
アミド系溶剤としては、アルキル基(CnH2n+1-)と-C(=O)-N-基(アミド結合)を有する化合物であって、水素若しくはアルキル基と-C(=O)-N-基から構成されたアルキルアミド系溶剤や、環状構造を有し、その環状構造に-C(=O)-N-基を有する環状アミド系溶剤を挙げることができる。
【0072】
アルキルアミド系溶剤は、例えばアルコキシ基を含まないような、水素若しくはアルキル基と-C(=O)-N-基のみから構成された有機溶剤であることが好ましく、例えば、以下の構造を有するものを好ましく用いることができる。
【0073】
【化8】
(式(1-1)中、R
1は、水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基であり、R
2R
3は、それぞれ独立して、水素もしくは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)
【0074】
なお、式(1-1)中のR2及びR3は、炭素数1以上4以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数2以上4以下のアルキル基であることがより好ましい。
【0075】
このようなアルキルアミド系溶剤を含有することにより、メンテナンス液の洗浄性を向上させることに加え、インクジェット記録装置を構成する部材に対する部材適性も良好となる。
【0076】
アルキルアミド系溶剤としては、具体的には、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド、N,N-ジプロピルプロパンアミド、N-エチルホルムアミド、N-エチルアセトアミド等が挙げられる。この中でも、本発明の効果を特に奏するという観点から、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド及びN,N-ジエチルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましく、この中でもN,N-ジエチルホルムアミドを含有することが特に好ましい。
【0077】
環状アミド系溶剤は、例えば以下の構造を有するものを好ましく用いることができる。
【0078】
【化9】
(式(1-2)中、R
4は、炭素数3以上5以下のアルキレン基であり、R
5は、水素若しくは炭素数1以上2以下のアルキル基または不飽和炭化水素基を表す。)
【0079】
環状アミド系溶剤としては、具体的には、3-メチル-2-オキサゾリジノン、3-エチル-2-オキサゾリジノン、N-ビニルメチルオキサゾリジノン、N-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、N-プロピルカプロラクタム、N-アセチルカプロラクタム、ε-カプロラクタム、N-ビニルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン等が挙げられる。その中でも、ε-カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、及びN-ビニルカプロラクタムからなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0080】
アミド系溶剤の含有量は、特に限定されないが、アミド系溶剤の含有量の下限は、非水系メンテナンス液全量中7質量%以上の範囲であることが好ましく、10質量%以上の範囲であることがより好ましく、15質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。
【0081】
アミド系溶剤の含有量の上限は、メンテナンス液全量中90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
【0082】
(2)ラクトン系溶剤
ラクトン系溶剤とは、環状エステル構造を有する溶剤である。ラクトン系溶剤を含有することにより、メンテナンス液の洗浄性を向上させることができる。
【0083】
ラクトン系溶剤は、例えば、以下の構造を有するラクトン系溶剤を好ましく用いることができる。
【0084】
【化10】
(式(1-3)中、R
6は、炭素数3以上5以下のアルキレン基であり、R
7は、水素若しくは炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。)
【0085】
この中でも、R6は、4以上5以下であることが好ましく、5であることがさらに好ましい。このようなラクトン系溶剤を含有するメンテナンス液であれば、インクジェット記録装置を構成する部材に対する部材適性がさらに良好となり、保湿性をも向上させることができる。なお、保湿性を有するメンテナンス液であれば、メンテナンス液がインクジェット記録装置内で揮発することを抑制できるので、洗浄後のメンテナンス液が揮発することによるインク組成物由来の固形成分の析出を抑制することが可能となる。
【0086】
このようなラクトン系溶剤としては、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサラクトン、δ-ヘプタラクトン、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン等の6員環以上のラクトン系溶剤が挙げられる。
【0087】
ラクトン系溶剤の含有量は、特に限定されないが、ラクトン系溶剤の含有量の下限は、メンテナンス液全量中7質量%以上の範囲であることが好ましく、10質量%以上の範囲であることがより好ましく、15質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。
【0088】
ラクトン系溶剤の含有量の上限は、メンテナンス液全量中90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下あることがさらに好ましい。
【0089】
本実施の形態に係るメンテナンス液は、有機溶剤は、アミド系溶剤又はラクトン系溶剤を少なくとも1つ以上含有することを特徴としている。そのなかでも、アミド系溶剤を含有することが好ましく、アミド系溶剤のなかでもアルキルアミド系溶剤を含有することがさらに好ましく、式(1-1)で表されるアルキルアミド系溶剤を含有することがさらになお好ましい。これにより、本実施の形態に係るメンテナンス液は、本発明の効果を特に効果的に奏するものとなり、さらにインクジェット記録装置を構成する部材に対する部材適性がさらに良好となる。
【0090】
(3)その他の有機溶剤
本実施の形態に係るメンテナンス液は、上記のアミド系溶剤、ラクトン系溶剤以外の有機溶剤を含有していてもよい。具体的には、グリコールエーテル系溶剤や炭酸エステルなどが挙げられる。これらの中でもグリコールエーテル系溶剤を含有することが好ましい。
【0091】
グリコールエーテル系溶剤は、グリコールの両末端のOH基がアルキル置換されたグリコールエーテルジアルキルやグリコールの片方のOH基がアルキル置換されたグリコールエーテルモノアルキルを挙げられる。グリコールエーテル系溶剤は、例えば、下記式(1-4)で表されるグリコールエーテル系溶剤を挙げることができる。
【0092】
R8-(-O-R9)n-O-R10・・・(1-4)
(式(1-4)中、R8、R10は、それぞれ独立して、水素または炭素数1以上8以下の分岐しても良いアルキル基であり、R9は炭素数1以上4以下の分岐しても良いアルキレン基を表す。nは1以上6以下の整数を表す。)
【0093】
このようなグリコールエーテル系溶剤としては、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノブチルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテルモノアルキルや、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテルジアルキルが挙げられる。
【0094】
炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられる。
【0095】
乳酸エステルとしては、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、乳酸エチルヘキシル、乳酸アミル、乳酸イソアミル等が挙げられる。
【0096】
二塩基酸エステルとしては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル等が挙げられる。
【0097】
また、その他の有機溶剤としては、グリコールエーテル系溶剤、炭酸エステル、乳酸エステル、二塩基酸エステル以外のその他の溶剤を含有してもよい。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルイソアミルケトン、ジエチルケトン、エチル-n-プロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチル-n-ブチルケトン、エチルイソブチルケトン、ジ-n-プロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、アセチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル等の酢酸エステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2-メチルブチルアセテート、3-メトキシブチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテート等のアセテート類、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ノナン、イソノナン、ドデカン、イソドデカン等の飽和炭水素類、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等の不飽和炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、デカリン等の環状飽和炭化水素類、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,1,3,5,7-シクロオクタテトラエン、シクロドデセン等の環状不飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-ホルミルモルホリンなどのモルホリン類、テルペン系溶剤、およびエーテル系溶剤など、一般的な有機溶剤を挙げることができる。
【0098】
その他の有機溶剤の含有量は、特に制限はされないが、その他の有機溶剤の含有量の下限は、10質量%以上の範囲であることが好ましく、20質量%以上の範囲であることがより好ましく、30質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。その他の有機溶剤の含有量の上限は、90質量%以下の範囲であることが好ましく、85質量%以下の範囲であることがより好ましく、80質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0099】
上記の有機溶剤(アミド系溶剤、ラクトン系溶剤又はその他の有機溶剤)は、蒸発エンタルピー(EOV)が45kJ/mol以上の有機溶剤を含むことが好ましい。本明細書において、蒸発エンタルピーとは、アドバンスト・ケミストリー・デベロップメント(Advanced Chemistry Development)(ACD/Labs)ソフト、バージョン11.02を使用して決定される計算値である。
【0100】
蒸発エンタルピー(EOV)が45kJ/mol以上の有機溶剤を含有することにより、メンテナンス液がインクジェット記録装置内で揮発することを抑制できる。メンテナンス液がヘッドに充填されている間にメンテナンス液が揮発すると、ヘッド内部に残留しているインク組成物に由来する成分などが析出したり、またはヘッド内部に気泡が混入することがあり、これによりインク充填後も正常な印刷が困難になることがある。このように蒸発エンタルピー(EOV)が45kJ/mol以上の有機溶剤を含有することによりメンテナンス液の保湿性が向上するのでインクジェット記録装置に用いられるより適したメンテナンス液となる。
【0101】
蒸発エンタルピー(EOV)が45kJ/mol以上の有機溶剤としては、3-メチル-2-オキサゾリジノン(50.4kJ/mol)、3-エチル-2-オキサゾリジノン(50.7kJ/mol)、N-メチルカプロラクタム(48.5kJ/mol)、N-アセチルカプロラクタム(47.9kJ/mol)、ε-カプロラクタム(51.1kJ/mol)、N-ビニルカプロラクタム(49.2kJ/mol)、N,N-ジメチル-β-ブトキシプロピオンアミド(48.5kJ/mol)等のアミド系溶剤や、ε-カプロラクトン(46.2kJ/mol)、δ-バレロラクトン(45.4kJ/mol)、δ-ヘキサノラクトン(45.2kJ/mol)、等のラクトン系溶剤やジエチレングリコールモノメチルエーテル(50.1kJ/mol)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(51.0kJ/mol)、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(54.3kJ/mol)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(54.7kJ/mol)、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(60.0kJ/mol)、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル(66.9kJ/mol)、ペンタエチレングリコールモノブチルエーテル(72.4kJ/mol)ヘキサエチレングリコールモノブチルエーテル(77.6kJ/mol)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(51.1kJ/mol)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(55.8kJ/mol)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(59.1kJ/mol)等のグリコールエーテルモノアルキルや、ジエチレングリコールジブチルエーテル(47.2kJ/mol)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(49.3kJ/mol)、テトラエチレングリコールジエチルエーテル(51.9kJ/mol)等のグリコールエーテルジアルキルや、プロピレンカーボネート(47.8kJ/mol)、エチレンカーボネート(49.0kJ/mol)等の炭酸エステルや乳酸エチル(45.6kJ/mol)、乳酸ブチル(49.5kJ/mol)、乳酸プロピル(47.8kJ/mol)、乳酸エチルヘキシル、乳酸アミル(51.3kJ/mol)、乳酸イソアミル(51.0kJ/mol)等の乳酸エステルやマロン酸ジプロピル(46.6kJ/mol)、コハク酸ジエチル(45.5kJ/mol)、グルタル酸ジエチル(47.3kJ/mol)、アジピン酸ジメチル(46.5kJ/mol)等の二塩基酸エステル等が挙げられる。
【0102】
[色材]
本実施の形態に係るメンテナンス液は、色材を含有してもよい。色材は、特に限定されるものではなく、染料系であってもよいし、顔料系であってもよいが、メンテナンス液中での分散性の観点から有機顔料が好ましい。本実施の形態に係るメンテナンス液において、用いることのできる顔料は特に限定されず、従来のインク組成物に使用されている有機顔料が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本実施の形態に係るメンテナンス液は、色材を含有しなくともよい。
【0103】
本実施の形態に係るメンテナンス液において顔料を用いる場合には、後述する分散剤や分散助剤(顔料誘導体)を使用することで、顔料の分散安定性を向上させることができる。具体的な有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、染料からの誘導体、フタロシアニン系有機顔料、キナクリドン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、ペリノン系有機顔料、アゾメチン系有機顔料、アントラキノン系有機顔料(アントロン系有機顔料)、キサンテン系有機顔料、ジケトピロロピロール系有機顔料、ジオキサジン系有機顔料、ニッケルアゾ系顔料、イソインドリノン系有機顔料、ピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料、キナクリドン系固溶体顔料、ペリレン系固溶体顔料等の有機固溶体顔料、その他の顔料として、レーキ顔料やカーボンブラック等が挙げられる。後述する第2、第3実施形態のメンテナンス液に含まれる具体的な有機顔料についても同様である。
【0104】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、213、214、C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48、49、52、53、57:1、97、112、122、123、146、149、150、168、177、180、184、192、202、206、208、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、269、291、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、71、73、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59、62、63、C.I.ピグメントブラウン23、25、26、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。後述する第2、第3実施形態のメンテナンス液に含まれる具体的な有機顔料についても同様である。
【0105】
顔料の含有量は、特に制限されないが、顔料の含有量の下限は、メンテナンス液全量中0.0005質量%以上の範囲であることが好ましく、0.001質量%以上の範囲であることがより好ましく、0.005質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。顔料の含有量の上限は、メンテナンス液全量中0.5質量%以下の範囲であることが好ましく、0.1質量%以下の範囲であることがより好ましく、0.05質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0106】
[分散剤]
本実施の形態に係るメンテナンス液において必要に応じて分散剤を用いてもよい。分散剤としては、高分子分散剤を用いるとよい。こうした分散剤としては、主鎖がポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系などからなり、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基などの極性基を有するものである。ポリアクリル系分散剤では、例えば、Disperbyk-2000、2001、2008、2009、2010、2020、2020N、2022、2025、2050、2070、2095、2150、2151、2155、2163、2164、BYKJET-9130、9131,9132,9133,9151(ビック・ケミー社製)、EfkaPX4310、PX4320、PX4330、PA4401、4402、PA4403、4570、7411、7477、PX4700、PX4701(BASF社製)、TREPLUS D-1200、D-1410、D-1420、MD-1000(大塚化学社製)、フローレンDOPA-15BHFS、17HF、22、G-700、900、NC-500、GW-1500(共栄社化学(株)製)、などが用いられる。ポリカプロラクトン系分散剤では、例えば、アジスパーPB821、PB822、PB881(味の素ファインテクノ(株)製)、ヒノアクトKF-1000、T-6000、T-7000、T-8000、T-8000E、T-9050(川研ファインケミカル(株)製)、Solsperse20000、24000、32000、32500、32550、32600、33000、33500、34000、35200、36000、37500、39000、71000、76400、76500、86000、88000、J180、J200(ルーブリゾール社製)、TEGO Dispers652、655、685、688、690(エボニック・ジャパン社製)などが用いられる。好ましい分散剤としては、BYKJET-9130、9131,9132,9133,9151、EfkaPX4310、PX4320、PX4330、PX4700、PX4701、Solsperse20000、24000、32000、33000、33500、34000、35200、39000、71000、76500、86000、88000、J180、J200、TEGO Dispers655、685、688、690などが用いられる。これらの単独、又はそれらの混合物を用いることができる。後述する第2、第3実施形態のメンテナンス液に含まれる分散剤についても同様である。
【0107】
分散剤の含有量は、特に制限されないが、分散剤の含有量の下限は、メンテナンス液全量中0.0001質量%以上の範囲であることが好ましく、0.0005質量%以上の範囲であることがより好ましく、0.001質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。分散剤の含有量の上限は、メンテナンス液全量中3.0質量%以下の範囲であることが好ましく、1.0質量%以下の範囲であることがより好ましく、0.5質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。後述する第2、第3実施形態のメンテナンス液に含まれる分散剤についても同様である。
【0108】
[分散助剤]
本実施の形態に係るメンテナンス液において必要に応じて分散助剤を用いてもよい。分散助剤は色材(顔料)の表面に吸着し、官能基がメンテナンス液中の有機溶剤や分散剤との親和力を高め、分散安定性を向上させる。分散助剤としては、有機顔料残基に酸性基、塩基性基、中性基などの官能基を有する公知の顔料誘導体を用いることができる。後述する第2、第3実施形態のメンテナンス液に含まれる分散助剤についても同様である。
【0109】
[界面活性剤]
本実施の形態に係るメンテナンス液においては、ノズル部やチューブ内等の機器内でのメンテナンス液の揮発抑制、固化防止、又、固化した際の再溶解性を目的として、又、表面張力を低下させ洗浄性を向上させる目的で、界面活性剤を添加してもよい。例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類であるノニオンP-208、P-210、P-213、E-202S、E-205S、E-215、K-204、K-220、S-207、S-215、A-10R、A-13P、NC-203、NC-207(日本油脂(株)製)、エマルゲン106、108、707、709、A-90、A-60(花王(株)製)、フローレンG-70、D-90、TG-740W(共栄社化学(株)製)、ポエムJ-0081HV(理研ビタミン(株)製)、アデカトールNP-620、NP-650、NP-660、NP-675、NP-683、NP-686、アデカコールCS-141E、TS-230E((株)アデカ製)等、ソルゲン30V、40、TW-20、TW-80、ノイゲンCX-100(第一工業製薬(株)製)等、フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-340(ビックケミー・ジャパン社製)等、シリコン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコンを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-313、315N、322、326、331、347、348、BYK-UV3500、3510、3530、3570(いずれもビックケミー・ジャパン社製)等、アセチレングリコール系界面活性剤としては、具体例として、サーフィノール(登録商標)82、104、465、485、TG(いずれもエアープロダクツジャパン社製)、オルフィン(登録商標)STG、E1010(いずれも日信化学株式会社製)等が例示される。なお、本実施の形態に係るメンテナンス液は、界面活性剤を含有しなくともよい。後述する第2、第3実施形態のメンテナンス液に含まれる界面活性剤についても同様である。
【0110】
界面活性剤としては、上記に限られずアニオン系、カチオン系、両性又は非イオン系のいずれの界面活性剤も用いることができ、添加目的に合わせて適宜選択されればよい。後述する第2、第3実施形態のメンテナンス液に含まれる界面活性剤についても同様である。
【0111】
[その他の成分]
本実施の形態に係るメンテナンス液は、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の光安定剤、エポキシ化物等、多価カルボン酸、表面調整剤、スリップ剤、レベリング剤(アクリル系やシリコン系等)、消泡剤、pH調整剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤、顔料、体質顔料等の公知の添加剤を任意成分として含んでもよい。後述する第2、第3実施形態のメンテナンス液に含まれる界面活性剤についても同様である。
【0112】
[水分について]
本実施の形態に係るメンテナンス液は、水分の含有量がメンテナンス液全量中5質量%以下である非水系のメンテナンス液である。このようなメンテナンス液であることで洗浄性に優れたメンテナンス液となる。
【0113】
さらに、本実施の形態に係るメンテナンス液は、大気中の水分をできるだけ吸水しないことが好ましい。具体的には、温度25℃、湿度55%環境下に100時間載置したときの水分の吸水量がメンテナンス液全量中4.0質量%以下であることが好ましい。大気中の水分をできるだけ吸水しないメンテナンス液であれば、洗浄性に優れたメンテナンス液となるとともに、水分量が多くなって除去したインク組成物に由来する成分等がインクジェット記録装置内で再び発生することを抑制できる。
【0114】
具体的に、例えば、メンテナンス液を払拭部材に浸漬させてインクジェットヘッドのノズル開口部を拭き取る場合、吸水しやすいメンテナンス液を払拭部材に浸漬させて開放状態で放置した後にノズル開口部を拭き取ると、メンテナンス液に吸湿した水分によりノズル開口部に付着したインク組成物が部分的に凝集することがある。すると、インク組成物の凝集物によってノズル開口部が詰まってしまい、ノズルが不吐出ノズルとなる。
【0115】
大気中の水分をできるだけ吸水しないメンテナンス液であることで、このような不吐出ノズルが発生することを抑制することができる。なお、本明細書では、このようなメンテナンス液の特性を放置クリーニング性と表記する。
【0116】
メンテナンス液の吸湿試験は、メンテナンス液を入れた1リットルの瓶を恒温槽(温度25℃、湿度55%)に装入し、瓶の蓋を開けた状態で緩やかに攪拌しながら恒温槽内に100時間載置し、載置後の吸水率である。
【0117】
なお、大気中の水分をできるだけ吸水しないメンテナンス液とするには、吸水性の高い有機溶剤をあまり含有しないようにすることが好ましい。
【0118】
例えば、グリコールエーテル系溶剤のうちグリコールエーテルモノアルキルは、OH基を含むため、グリコールエーテルジアルキルと比較すると、相対的に吸水性が高い有機溶剤である。このため、例えば、メンテナンス液に含まれるグリコールエーテルモノアルキルの含有量は、特に限定されないが、メンテンナンス液全量中90質量%以下にすることが好ましく、70質量%以下にすることがより好ましく、50質量%以下にすることがさらに好ましく、45質量%以下にすることがさらに好ましく、35質量%以下にすることがさらに好ましく、15質量%以下にすることがさらになお好ましい。
【0119】
また、メンテナンス液中に水分をできるだけ含まないようにするために、メンテナンス液を製造する際、有機溶剤を予め乾燥させておくことが好ましい。有機溶剤を予め乾燥させておくことで、メンテナンス液に含まれる水分量を軽減することができる。特に、-OH基を有するグリコールエーテルモノアルキルは吸水性が高く、大気中の水分を吸湿してしまうため、グリコールエーテルモノアルキルを予め乾燥させておくことが特に好ましい。有機溶剤を乾燥させる方法としては、例えば窒素等の不活性ガス雰囲気下で乾燥させた不活性ガス(例えば、窒素ガス)を所定時間吹き付ける方法や、有機溶剤を蒸留精製する方法や、水を選択的に透過する半透過膜に有機溶剤を透過させる方法や、水を吸着する水吸着剤に有機溶剤に混入した水を選択的に吸着させる方法等を挙げることができる。
【0120】
≪1-2.第2実施形態のメンテナンス液≫
本実施の形態に係るメンテナンス液は、インクジェット記録装置に用いられるメンテナンス液である。
【0121】
そして、本実施の形態に係るメンテナンス液は、有機溶剤A2を含有し、この有機溶剤A2は、下記の保管試験により揮発する揮発率が15質量%以下であることを特徴としている。
【0122】
保管試験:低密度ポリエチレンチューブに有機溶剤A2を充填して密閉し、50℃、1週間保管する。
【0123】
このような有機溶剤A2を含有するメンテナンス液であれば、インクジェット記録装置内のプラスチック収容体やプラスチック供給体内での揮発を抑制できるので、保湿性の高いメンテナンス液とすることができる。
【0124】
保管試験に使用される低密度ポリエチレンチューブは、例えば、アズワン社製のポリエチレンチューブホース(型番:6-608-03 内径3mm、外径5mm)を12センチに切断したものを使用することができる。
【0125】
なお、本明細書において、プラスチック収容体はメンテナンス液を収容するプラスチック収容体であり、プラスチック供給体はメンテナンス液を供給するプラスチック供給体を意味する。例えば、プラスチック収容体はメンテナンス液を収容するカートリッジであり、プラスチック供給体は、カートリッジとインクジェットヘッドとを接続するプラスチックチューブである。なお、「プラスチック収容体」や「プラスチック供給体」の文言は、それらを構成する部材の少なくとも一部にプラスチック部材が使用されていることを意味し、プラスチック収容体やプラスチック供給体がプラスチック部材とは異なる部材を含むことを妨げるものではない。
【0126】
また、プラスチック収容体やプラスチック供給体の少なくとも一部を構成するプラスチック部材の材質は、樹脂であれば特に限定されず、ポリオレフィン樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム、ナイロン、ポリウレタン、PTFEなど等が挙げられ、ポリエチレン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴムを使用することが好ましく、この中でも低密度ポリエチレン系樹脂を使用することが特に好ましい。
【0127】
以下、本実施の形態に係るメンテナンス液に含有される各成分について説明する。
【0128】
[有機溶剤A2]
有機溶剤A2は、下記の保管試験により揮発する揮発率が15質量%以下である溶剤である。
【0129】
保管試験:低密度ポリエチレンチューブに有機溶剤A2を充填して密閉し、50℃、1週間保管する。
【0130】
このような密閉された低密度ポリエチレンチューブ内での揮発率は、沸点や引火点、蒸発エンタルピーなどの有機溶剤自体の揮発性のパラメーターと必ずしも相関が無い。これは有機溶剤の種類によりプラスチックに対する透過性が異なっており、密閉された低密度ポリエチレンチューブ内での揮発率は、むしろプラスチックに対する透過性に起因し、具体的には、有機溶剤の化学構造、分子量、相溶性等に起因するパラメーターである。
【0131】
このような保管試験により揮発する揮発率が15質量%以下である有機溶剤としては、グリコールエーテルモノアルキル、環状エステル、炭酸エステル、及びアミド系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有するものを挙げることができる。例えば、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(揮発率は10質量%)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(揮発率は8質量%)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(揮発率は8質量%)等のグリコールエーテルモノアルキル、N,N-ジエチルホルムアミド(揮発率は11質量%)、N,N-ジエチルプロパンアミド(揮発率は12質量%)、N,N-ジエチルアセトアミド(揮発率は13質量%)等のアミド系溶剤、プロピレンカーボネート(揮発率は1質量%)等の炭酸エステル、γ-ブチロラクトン(揮発率は6質量%)、ε-カプロラクトン(3質量%)等の環状エステル、3-メトキシ-1-ブタノール(揮発率は7質量%)等のアルコール等が挙げられる。この中でも、グリコールエーテルモノアルキル、環状エステル、炭酸エステル、及びアミド系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、アミド系溶剤、環状エステルからなる群より選択される少なくとも1種を含有することがより好ましく、アミド系溶剤が特に好ましい。
【0132】
アミド系溶剤とは、-C(=O)-N-基(アミド結合)を有する化合物からなる有機溶剤である。
【0133】
アミド系溶剤は、プラスチックチューブ内での密閉された空間内での揮発性と保湿性とのバランスに優れている。このため、有機溶剤A2としてアミド系溶剤を使用することで、インクジェット記録装置内のプラスチック収容体やプラスチック供給体内での保湿性に優れることに加え、乾燥性に優れたメンテナンス液となる。乾燥性に優れたメンテナンス液であれば、洗浄後にインクジェット記録装置からメンテナンス液を迅速に除去することが可能となり、インクジェット記録装置を迅速に再使用することが可能となる。
【0134】
さらに、アミド系溶剤を含有するメンテナンス液であれば、メンテナンス液の洗浄性を向上させることが可能となり、インクジェット記録装置への部材適性も良好となる。
【0135】
アミド系溶剤としては、アルキル基(CnH2n+1-)と-C(=O)-N-基(アミド結合)を有する化合物であって、水素若しくはアルキル基と-C(=O)-N-基から構成されたアルキルアミド系溶剤等を挙げることができる。アミド系溶剤としてアルキルアミド系溶剤を使用することで上記の効果をさらに効果的に奏するメンテナンス液となる。
【0136】
アルキルアミド系溶剤は、例えばアルコキシ基を含まないような、水素若しくはアルキル基と-C(=O)-N-基のみから構成された有機溶剤であることが好ましく、例えば、以下の構造を有するものを好ましく用いることができる。
【0137】
【化11】
(式(2-2)中、R
1は、水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基であり、R
2R
3は、それぞれ独立して、水素もしくは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)
【0138】
なお、式(2-2)中のR2及びR3は、炭素数1以上4以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数2以上4以下のアルキル基であることがより好ましい。
【0139】
アルキルアミド系溶剤としては、具体的には、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド、N,N-ジプロピルプロパンアミド、N-エチルホルムアミド、N-エチルアセトアミド等のうち密閉された低密度ポリエチレンチューブ内での所定条件下での揮発率が15質量%以下のものを挙げることができる。この中でも、本発明の効果を特に奏するという観点から、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド及びN,N-ジエチルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましく、この中でもN,N-ジエチルホルムアミドを含有することが特に好ましい。
【0140】
環状エステルとは、環状エステル構造を有する溶剤である。環状エステルを含有することにより、メンテナンス液の洗浄性を向上させることができる。
【0141】
環状エステルは、例えば、以下の構造を有する環状エステルを好ましく用いることができる。
【0142】
【化12】
(式(2-1)中、R
6は、炭素数3以上5以下のアルキレン基であり、R
7は、水素若しくは炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。)
【0143】
この中でも、R6は、4以上5以下であることが好ましく、5であることがさらに好ましい。このようなラクトン系溶剤を含有するメンテナンス液であれば、インクジェット記録装置を構成する部材に対する部材適性がさらに良好となる。この上、さらに保湿性をも向上させることができる。なお、保湿性を有するメンテナンス液であれば、メンテナンス液がインクジェット記録装置内で揮発することを抑制できるので、洗浄後のメンテナンス液が揮発することによるインク組成物由来の固形成分の析出を抑制することが可能となる。
【0144】
このようなラクトン系溶剤としては、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサラクトン、δ-ヘプタラクトン、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン等の6員環以上のラクトン系溶剤のうち密閉された低密度ポリエチレンチューブ内での所定条件下での揮発率が15質量%以下のものを挙げることができる。
【0145】
また、有機溶剤A2は、上記のアミド系溶剤、ラクトン系溶剤以外の有機溶剤を含有していてもよい。具体的には、グリコールエーテルモノアルキル、炭酸エステル、乳酸エステル、アセテート、アルコールのうち密閉された低密度ポリエチレンチューブ内での所定条件下での揮発率が15質量%以下のものを挙げることができる。
【0146】
また、メンテナンス液全量に対する有機溶剤A2の含有量は、有機溶剤A2の含有量の下限は、メンテナンス液全量に対して、1質量%以上の範囲であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、15質量%以上であることがさらになお好ましい。有機溶剤A2の含有量の上限は、メンテナンス液全量に対して、95質量%以下の範囲であることが好ましく、90量%以下の範囲であることがより好ましく、85質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0147】
[その他の有機溶剤]
有機溶媒には、上記の有機溶剤A2以外のその他の有機溶剤を含有していてもよい。具体的には、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-イソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)エーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-イソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)エーテル、トリプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル)エーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーエル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)、等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルブチルエーテル、プロピレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルメチルエーテル等の多価アルコールのジアルキルエーテル類、γーブチロラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサラクトン、γ-ヘプタラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-ヘプタラクトン、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン等のラクトン類、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の炭酸エステル類、3-メチル-2-オキサゾリジノン、3-エチル-2-オキサゾリジノン、N-ビニルメチルオキサゾリジノン等のオキサゾリジノン系溶剤、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテ-ト、2-メチルブチルアセテート、3-メトキシブチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテート等のアセテート系溶剤、N-メチルカプロラクタム、N-アセチルカプロラクタム、ε-カプロラクタム、N-ビニルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-エチル-ε-カプロラクタム、N-プロピル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ε-カプロラクタム等の環状アミド系溶剤、3-メトキシプロパンアミド、3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジメチル-3-メトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-メトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジメチル-3-ブトキシプロパンアミド等のアルコキシアミド系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ペンタノール等の炭素数1~5のアルキルアルコール類、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-n-ブタノール等の1価のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルイソアミルケトン、ジエチルケトン、エチル-n-プロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチル-n-ブチルケトン、エチルイソブチルケトン、ジ-n-プロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、アセチルケトン等のケトン又はケトアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、イソブチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール等のトリオール類;メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等の4価アルコール類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル等の酢酸エステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、乳酸エチルヘキシル、乳酸アミル、乳酸イソアミル等の乳酸エステル類、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチルなどの二塩基酸エステル類、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ノナン、イソノナン、ドデカン、イソドデカン等の飽和炭水素類、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等の不飽和炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、デカリン等の環状飽和炭化水素類、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,1,3,5,7-シクロオクタテトラエン、シクロドデセン等の環状不飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-ホルミルモルホリンなどのモルホリン類、テルペン系溶剤など、一般的な有機溶剤であって、これらの有機溶剤のうち保管試験により揮発する揮発率が15質量%以下の溶剤に該当しないものを挙げることができる。組み合わせる樹脂や分散剤などに応じて、適切なHLB値の溶剤を選択することが好ましい。
【0148】
その他の有機溶剤の含有量は、特に制限はされないが、その他の有機溶剤の含有量の下限は、メンテナンス液全量中10質量%以上の範囲であることが好ましく、20質量%以上の範囲であることがより好ましく、30質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。その他の有機溶剤の含有量の上限は、メンテナンス液全量中90質量%以下の範囲であることが好ましく、85質量%以下の範囲であることがより好ましく、80質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0149】
本実施の形態に係るメンテナンス液は、水を意図的に含有させない非水系メンテナンス液であることが望ましい。非水系メンテナンス液とは、大気中の水分や、添加物等に由来するような不可避的に含まれる水を除き、水を意図的に含有させず、有機溶剤を含有するメンテナンス液であることを意味し、水、又は水と有機溶剤との混合液から作製された水系メンテナンス液とは異なる。
【0150】
なお、本実施の形態に係るメンテナンス液における水分の含有量は、メンテナンス液全量中5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量以下であることがさらになお好ましい。本実施の形態に係るメンテナンス液は、非水系インク組成物を用いて記録を行うインクジェット記録装置に適したものであるので、メンテナンス液に原料に由来する水分や製造過程で大気中等の水分が混入すると、メンテナンス液を使用した際、非水系インク組成物に含まれる成分等によって固形物が発生することがある。メンテナンス液中に水分の含有量を低減してできるだけ水分を含まないようにすること(水分を意図的に含まないようにすること)で、インクジェット記録装置の安定性等をより効果的に向上させることが可能となる。
【0151】
[色材]
本実施の形態に係るメンテナンス液は、色材を含有してもよい。色材を含有することで、メンテナンス液に含まれる有機溶剤による部材への浸食を抑制することが可能となり部材適性が良好となる。色材は、特に限定されるものではなく、染料系であってもよいし、顔料系であってもよいが、メンテナンス液中での色材の析出の観点から顔料が好ましい。本実施の形態に係るメンテナンス液において、用いることのできる顔料は特に限定されず、従来のインク組成物に使用されている有機顔料が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本実施の形態に係るメンテナンス液は、色材を含有しなくともよい。
【0152】
本実施の形態に係るメンテナンス液において顔料を用いる場合には、後述する分散剤や分散助剤(顔料誘導体)を使用することで、顔料の分散安定性を向上させることができる。具体的な有機顔料は、上述した第1実施形態のメンテナンス液に含まれる具体的な有機顔料と同様である。具体的な有機顔料のカラーインデックス(C.I.)ナンバーについても上述した第1実施形態のメンテナンス液に含まれるものと同様である。
【0153】
色材の含有量は、特に制限されないが、色材の含有量の下限は、メンテナンス液全量中0.0005質量%以上の範囲であることが好ましく、0.001質量%以上の範囲であることがより好ましく、0.005質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。色材の含有量の上限は、メンテナンス液全量中1.0質量%以下の範囲であることが好ましく、0.5質量%以下の範囲であることがより好ましく、0.3質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。後述する第3実施形態のメンテナンス液に含まれる色材の含有量についても同様である。
【0154】
なお、本実施の形態に係るメンテナンス液は、色材を含有しないことも好ましい。メンテナンス液に含まれる色材が固形分として析出する可能性を軽減できるので、メンテナンス液の洗浄性を向上させることが可能となる。後述する第3実施形態のメンテナンス液についても同様である。
【0155】
[分散剤]
本実施の形態に係るメンテナンス液は、分散剤を含有してもよい。これにより、インク組成物に由来する成分を効果的に分散させることが可能となって、メンテナンス液の洗浄性を向上させることが可能となる。具体的な分散剤としては、上述した第1実施形態のメンテナンス液に含まれる具体的な分散剤と同様である。分散剤の好ましい含有量は、上述した第1実施形態のメンテナンス液に含まれる分散剤の好ましい含有量と同様である。
【0156】
[分散助剤]
本実施の形態に係るメンテナンス液において必要に応じて分散助剤を用いてもよい。
【0157】
[界面活性剤]
本実施の形態に係るメンテナンス液においては、ノズル部やチューブ内等の機器内でのメンテナンス液の揮発抑制、固化防止、又、固化した際の再溶解性を目的として、又、表面張力を低下させ洗浄性を向上させる目的で、界面活性剤を添加してもよい。具体的な界面活性剤としては、上述した第1実施形態のメンテナンス液に含まれる具体的な界面活性剤と同様である。
【0158】
界面活性剤としては、上記に限られずアニオン系、カチオン系、両性又は非イオン系のいずれの界面活性剤も用いることができ、添加目的に合わせて適宜選択されればよい。
【0159】
[その他の成分]
本実施の形態に係るメンテナンス液は、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の光安定剤、エポキシ化物等、多価カルボン酸、表面調整剤、スリップ剤、レベリング剤(アクリル系やシリコン系等)、消泡剤、pH調整剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤、顔料、体質顔料等の公知の添加剤を任意成分として含んでもよい。
【0160】
≪1-3.第3実施形態のメンテナンス液≫
本実施の形態に係るメンテナンス液は、樹脂硬化物を構成部材として含むインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置に用いられるメンテナンス液である。
【0161】
また、「樹脂硬化物」とは、硬化性樹脂の硬化物を意味する。硬化性樹脂の硬化物であれば特に限定されず、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂やエチレン性二重結合を含む光硬化性樹脂等が挙げられる。この中でもエポキシ系樹脂及び/又はシリコン系樹脂を少なくとも含有することが好ましい。
【0162】
そして、本実施の形態に係るメンテナンス液は、有機溶剤を含有し、この有機溶剤は、下記有機溶剤A3を含有することを特徴とする。
【0163】
有機溶剤A3:アルキルアミド系溶剤(a1)、環状アミド系溶剤(a2)、及びラクトン系溶剤(a3)からなる群より選択される少なくとも1つ
【0164】
このような有機溶剤A3を含有するメンテナンス液であれば、樹脂硬化物に対する部材適性が高く、かつ洗浄性に優れるメンテナンス液となる。
【0165】
以下、本実施の形態に係るメンテナンス液に含有される各成分について説明する。
【0166】
[有機溶剤]
有機溶剤は、インク流路の詰まりを洗浄する機能を有する。そして、この有機溶剤は、有機溶剤A3(アルキルアミド系溶剤(a1)、環状アミド系溶剤(a2)、及びラクトン系溶剤(a3)からなる群より選択される少なくとも1つ)を含有する。
【0167】
(有機溶剤A3)
有機溶剤A3とは、アルキルアミド系溶剤(a1)、環状アミド系溶剤(a2)、及びラクトン系溶剤(a3)からなる群より選択される少なくとも1つである。有機溶剤A3を含有することにより、メンテナンス液の洗浄性を向上させることができる。
【0168】
(1)アルキルアミド系溶剤
アルキルアミド系溶剤とは、水素若しくはアルキル基と-C(=O)-N-基から構成された化合物からなる有機溶剤である。アルキルアミド系溶剤を含有することにより、メンテナンス液の洗浄性を向上させることができる。
【0169】
アルキルアミド系溶剤(a1)は、例えばアルコキシ基を含まないような、水素若しくはアルキル基と-C(=O)-N-基から構成された有機溶剤であることが好ましく、例えば、以下の構造を有するものを好ましく用いることができる。
【0170】
【化13】
(式(3-1)中、R
1は、水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基であり、R
2R
3は、それぞれ独立して、水素もしくは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)
【0171】
なお、式(3-1)中のR2及びR3は、炭素数1以上4以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数2以上4以下のアルキル基であることがより好ましい。
【0172】
このようなアルキルアミド系溶剤を含有することにより、メンテナンス液の洗浄性を向上させることに加え、樹脂硬化物に対する部材適性もより良好となる。
【0173】
アルキルアミド系溶剤としては、具体的には、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド、N,N-ジプロピルプロパンアミド、N-エチルホルムアミド、N-エチルアセトアミド等が挙げられる。この中でも、本発明の効果を特に奏するという観点から、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド及びN,N-ジエチルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましく、この中でもN,N-ジエチルホルムアミドを含有することが特に好ましい。
【0174】
アルキルアミド系溶剤の含有量は、特に限定されないが、アルキルアミド系溶剤の含有量の下限は、メンテナンス液全量中1質量%以上の範囲であることが好ましく、5質量%以上の範囲であることがより好ましく、10質量%以上の範囲であることがさらに好ましく、15質量%以上の範囲であることがさらになお好ましい。
【0175】
アルキルアミド系溶剤の含有量の上限は、メンテナンス液全量中90質量%以下の範囲であることが好ましく、80質量%以下の範囲であることがより好ましく、70質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0176】
(2)環状アミド系溶剤
環状アミド系溶剤とは、環状構造を有し、その環状構造に-C(=O)-N-基を有する化合物からなる有機溶剤である。環状アミド系溶剤を含有することにより、メンテナンス液の洗浄性を向上させることができる。
【0177】
環状アミド系溶剤は、例えば以下の構造を有するものを好ましく用いることができる。
【0178】
【化14】
(式(3-2)中、R
4は、炭素数3以上5以下のアルキレン基であり、R
5は、水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基または不飽和炭化水素基を表す。)
【0179】
不飽和炭化水素基とは、ビニル基などの少なくとも1つ以上の多重結合を含む炭化水素基を意味する。
【0180】
なお、R5は、水素若しくは炭素数1以上3以下のアルキル基または不飽和炭化水素基であることが好ましく、水素若しくは炭素数1以上2以下のアルキル基または不飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0181】
R4は、炭素数4以上5以下のアルキレン基であることが好ましい。
【0182】
このような環状アミド系溶剤を含有することにより、メンテナンス液の洗浄性を向上させることに加え、樹脂硬化物に対する部材適性もより良好となる。
【0183】
環状アミド系溶剤としては、具体的には、3-メチル-2-オキサゾリジノン、3-エチル-2-オキサゾリジノン、N-ビニルメチルオキサゾリジノン、N-メチルカプロラクタム、N-エチルカプロラクタム、N-プロピルカプロラクタム、N-アセチルカプロラクタム、ε-カプロラクタム、N-ビニルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン等が挙げられる。その中でも、ε-カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、及びN-ビニルカプロラクタムからなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0184】
環状アミド系溶剤の含有量は、特に限定されないが、環状アミド系溶剤の含有量の下限は、メンテナンス液全量中1質量%以上の範囲であることが好ましく、3質量%以上の範囲であることがより好ましく、10質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。
【0185】
環状アミド系溶剤の含有量の上限は、メンテナンス液全量中90質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、35質量%以下であることがさらになお好ましい。
【0186】
(3)ラクトン系溶剤
ラクトン系溶剤とは、環状エステル構造を有する溶剤である。ラクトン系溶剤を含有することにより、メンテナンス液の洗浄性を向上させることができる。
【0187】
ラクトン系溶剤は、例えば、以下の構造を有するラクトン系溶剤を好ましく用いることができる。
【0188】
【化15】
(式(3-3)中、R
6は、炭素数3以上5以下のアルキレン基であり、R
7は、水素若しくは炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。)
【0189】
この中でも、R6は、4以上5以下であることが好ましく、5であることがさらに好ましい。このようなラクトン系溶剤を含有するメンテナンス液であれば、樹脂硬化物に対する部材適性がさらに良好となる。
【0190】
このようなラクトン系溶剤としては、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサラクトン、δ-ヘプタラクトン、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン等の6員環以上のラクトン系溶剤が挙げられる。
【0191】
ラクトン系溶剤(a3)の含有量は、特に限定されないが、ラクトン系溶剤の含有量の下限は、特に限定されないが、ラクトン系溶剤の含有量の下限は、メンテナンス液全量中1質量%以上の範囲であることが好ましく、3質量%以上の範囲であることがより好ましく、10質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。
【0192】
ラクトン系溶剤の含有量の上限は、メンテナンス液全量中90質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、35質量%以下であることがさらになお好ましい。
【0193】
本実施の形態に係るメンテナンス液において、有機溶剤は、アルキルアミド系溶剤(a1)、環状アミド系溶剤(a2)、及びラクトン系溶剤(a3)からなる群より選択される少なくとも1つを含有することを特徴としている。その中でも、アルキルアミド系溶剤(a1)、及び環状アミド系溶剤(a2)からなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましく、アルキルアミド系溶剤(a1)を含有することがより好ましい。これにより、本実施の形態に係るメンテナンス液は、本発明の効果を特に効果的に奏するものとなることに加え、乾燥性に優れたメンテナンス液となる。乾燥性に優れたメンテナンス液であれば、洗浄後にインクジェット記録装置からメンテナンス液を迅速に除去することが可能となり、インクジェット記録装置を迅速に再使用することが可能となる。
【0194】
また、メンテナンス液全量に対する有機溶剤A3の含有量は、有機溶剤A3の含有量の下限は、メンテナンス液全量に対して、1質量%以上の範囲であることが好ましく、5質量%以上の範囲であることがより好ましく、10質量%以上の範囲であることがさらに好ましく、15質量%以上であることがさらになお好ましい。
【0195】
有機溶剤A3の含有量の上限は、メンテナンス液全量に対して、95質量%以下の範囲であることが好ましく、90量%以下の範囲であることがより好ましく、85質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0196】
[その他の有機溶剤]
有機溶媒には、上記の有機溶剤A3以外のその他の有機溶剤を含有していてもよい。具体的には、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-イソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)エーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-イソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)エーテル、トリプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル)エーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーエル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)、等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルブチルエーテル、プロピレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルメチルエーテル等の多価アルコールのジアルキルエーテル類、γーブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサラクトン、γ-ヘプタラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、等のラクトン類、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の炭酸エステル類、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテ-ト、2-メチルブチルアセテート、3-メトキシブチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテート等のアセテート系溶剤、3-メトキシプロパンアミド、3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジメチル-3-メトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-メトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジメチル-3-ブトキシプロパンアミド等のアルコキシアミド系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ペンタノール等の炭素数1~5のアルキルアルコール類、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-n-ブタノール等の1価のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルイソアミルケトン、ジエチルケトン、エチル-n-プロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチル-n-ブチルケトン、エチルイソブチルケトン、ジ-n-プロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、アセチルケトン等のケトン又はケトアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、イソブチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール等のトリオール類;メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等の4価アルコール類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル等の酢酸エステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、乳酸エチルヘキシル、乳酸アミル、乳酸イソアミル等の乳酸エステル類、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチルなどの二塩基酸エステル類、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ノナン、イソノナン、ドデカン、イソドデカン等の飽和炭水素類、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等の不飽和炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、デカリン等の環状飽和炭化水素類、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,1,3,5,7-シクロオクタテトラエン、シクロドデセン等の環状不飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-ホルミルモルホリンなどのモルホリン類、テルペン系溶剤など、一般的な有機溶剤を挙げることができる。組み合わせる樹脂や分散剤などに応じて、適切なHLB値の溶剤を選択することが好ましい。
【0197】
その他の有機溶剤の含有量は、特に制限はされないが、その他の有機溶剤の含有量の下限は、メンテナンス液全量中10質量%以上の範囲であることが好ましく、20質量%以上の範囲であることがより好ましく、30質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。その他の有機溶剤の含有量の上限は、メンテナンス液全量中90質量%以下の範囲であることが好ましく、85質量%以下の範囲であることがより好ましく、80質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0198】
さらに、本実施の形態に係るメンテナンス液は、沸点が250℃以上の有機溶剤を含むものが好ましい。沸点が250℃以上の有機溶剤を含むことで、メンテナンス液中の揮発性有機化合物の含有量を減らすことが可能となり、環境負荷を小さくすることができる。さらに、メンテナンス液の保湿性を向上させることができる。沸点250℃以上の有機溶剤の含有量の下限は、メンテナンス液全量中5質量%以上の範囲であることが好ましく、10質量%以上の範囲であることがより好ましく、15質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。沸点250℃以上の有機溶剤の含有量の上限は、メンテナンス液全量中30質量%以下の範囲であることが好ましく、25質量%以下の範囲であることがより好ましく、20質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。沸点が250℃以上の有機溶剤としては、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点278℃)、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点304℃)などが挙げられる。
【0199】
[色材]
本実施の形態に係るメンテナンス液は、色材を含有してもよい。色材を含有することで、メンテナンス液に含まれる有機溶剤による部材への浸食を抑制することが可能となり部材適性が良好となる。特に、本実施の形態に係るメンテナンス液は、有機溶剤A3を含有することにより樹脂硬化物に対する部材適性が高く、かつ洗浄性に優れるものであるので、さらに色材を含有することで樹脂硬化物に対する部材適性をさらに高めることができる。
【0200】
色材は、特に限定されるものではなく、染料系であってもよいし、顔料系であってもよいが、メンテナンス液中での分散性の観点から顔料が好ましい。本実施の形態に係るメンテナンス液において、用いることのできる顔料は特に限定されず、従来のインク組成物に使用されている有機顔料が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本実施の形態に係るメンテナンス液は、色材を含有しなくともよい。
【0201】
本実施の形態に係るメンテナンス液において顔料を用いる場合には、後述する分散剤や分散助剤(顔料誘導体)を使用することで、顔料の分散安定性を向上させることができる。具体的な有機顔料は、上述した第1実施形態のメンテナンス液に含まれる具体的な有機顔料と同様である。具体的な有機顔料のカラーインデックス(C.I.)ナンバーについても上述した第1実施形態のメンテナンス液に含まれるものと同様である。色材の好ましい含有量は、上述した第2実施形態のメンテナンス液に含まれる色材の好ましい含有量と同様である。
【0202】
[分散剤]
本実施の形態に係るメンテナンス液は、分散剤を含有してもよい。これにより、インク組成物に由来する成分を効果的に分散させることが可能となって、メンテナンス液の洗浄性を向上させることが可能となる。特に、本実施の形態に係るメンテナンス液は、有機溶剤A3を含有することにより樹脂硬化物に対する部材適性が高く、かつ洗浄性に優れるものであるので、分散剤を含有することでその洗浄性をさらに高めることができる。具体的な分散剤としては、上述した第1実施形態のメンテナンス液に含まれる具体的な分散剤と同様である。分散剤の好ましい含有量は、上述した第1実施形態のメンテナンス液に含まれる分散剤の好ましい含有量と同様である。
【0203】
[分散助剤]
本実施の形態に係るメンテナンス液において必要に応じて分散助剤を用いてもよい。
【0204】
[界面活性剤]
本実施の形態に係るメンテナンス液においては、ノズル部やチューブ内等の機器内でのメンテナンス液の揮発抑制、固化防止、又、固化した際の再溶解性を目的として、又、表面張力を低下させ洗浄性を向上させる目的で、界面活性剤を添加してもよい。具体的な界面活性剤としては、上述した第1実施形態のメンテナンス液に含まれる具体的な界面活性剤と同様である。
【0205】
界面活性剤としては、上記に限られずアニオン系、カチオン系、両性又は非イオン系のいずれの界面活性剤も用いることができ、添加目的に合わせて適宜選択されればよい。
【0206】
[その他の成分]
本実施の形態に係るメンテナンス液は、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の光安定剤、エポキシ化物等、多価カルボン酸、表面調整剤、スリップ剤、レベリング剤(アクリル系やシリコン系等)、消泡剤、pH調整剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤、顔料、体質顔料等の公知の添加剤を任意成分として含んでもよい。
【0207】
≪2.メンテナンス方法≫
本実施の形態に係るメンテナンス方法は、上記のメンテナンス液を使用してインクジェット記録装置のメンテナンスを行う方法である。上記の第1実施形態のメンテナンス液は、インクジェット記録装置を構成する部材に対する部材適性が高く、かつ洗浄性に優れるものであるので、このメンテナンス液を使用してインクジェット記録装置のメンテナンスを行うメンテナンス方法においてもインクジェット記録装置を構成する部材への侵食が少ない。
【0208】
上記の第2実施形態のメンテナンス液は、インクジェット記録装置内のプラスチック収容体やプラスチック供給体内での保湿性に優れたものであるので、このメンテナンス液を使用してインクジェット記録装置のメンテナンスを行うメンテナンス方法においても洗浄したインク組成物に由来する成分が再び析出することを抑制できるので、効果的に洗浄することが可能となる。
【0209】
上記の第3実施形態のメンテナンス液は、樹脂硬化物に対する部材適性が高く、かつ洗浄性に優れたものであるので、このメンテナンス液を使用してインクジェット記録装置のメンテナンスを行うメンテナンス方法であれば、インクジェットヘッドを構成する樹脂硬化物に対して浸食を抑制してインク流路内等に付着したインク組成物に由来する成分を取り除くことが可能となる。
【0210】
インクジェット記録装置内においてインク組成物が接触する部材としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット記録装置のインク流路、記録装置のヘッドキャップ、ワイパー、フラッシングエリア、プラテン、ノズルプレート、筐体内のインクミスト付着個所等が挙げられる。上記の第2実施形態のメンテナンス液は、インクジェット記録装置内のプラスチック収容体やプラスチック供給体内での保湿性に優れているものであるので、メンテナンス液と接触する部材がプラスチック部材であっても、メンテナンス液がプラスチック部材内で揮発することを抑制することが可能となる。
【0211】
インクジェット記録装置のインク流路は、インク組成物を貯留するインク組成物収容容器、インク組成物収容容器(インクカートリッジやボトル等)からインクジェットヘッドにインク組成物を供給するための供給路(チューブやダンパー等)、インクジェットヘッド内においてインク組成物をノズル開口部まで流通させるための流路等が挙げられる。
【0212】
本実施の形態に係るメンテナンス方法は、例えば、インクジェット記録装置のインク流路に上記のメンテナンス液を流通させることが挙げられる。具体的には、インク組成物が充填されたインクジェット記録装置から、インク組成物を排出し、その後、上記の第1、第2、及び第3実施形態のメンテナンス液を流通させる方法やインク組成物が充填されたインクジェット記録装置から、インク組成物を排出しない状態で、インク流路の上流から上記の第1、第2、及び第3実施形態のメンテナンス液を流通させ、インク組成物を排出する方法や上記の第1、第2、及び第3実施形態のメンテナンス液が充填されたインクジェット記録装置から、メンテナンス液を排出し、その後、インク組成物を流通させる方法やメンテナンス液が充填されインクジェット記録装置から、メンテナンス液を排出しない状態で、インク流路の上流から、インク組成物を流通させ、メンテナンス液を排出する方法等が挙げられる。
【0213】
上記の第1、第2、及び第3実施形態のメンテナンス液の流通や排出は、インクジェット記録装置の通常のクリーニング動作を用いて行ってもよい。
【0214】
また、インクジェット記録装置のヘッドキャップ、ワイパー、フラッシングエリア、プラテン、ノズルプレート、筐体内のインクミスト付着個所等のメンテナンス方法としては、特に限定されないが、例えば、これらインク組成物が付着する部材に対し、メンテナンス液を付着させ、必要に応じて、メンテナンス液を拭き取る方法が挙げられる。拭き取る際にはメンテナンス液をワイパーなどの払拭部材(ゴム系や繊維系)に浸漬させてインクジェットヘッドのノズル開口部等のインク組成物が付着する部材を拭き取ってもよい。
【0215】
また、インクジェットヘッドのノズル開口部に貫通口を有するキャップをかぶせて、貫通口にチューブを介して連通した吸引ポンプにより、キャップ内に負圧を発生させて、上記のメンテナンス液を、インクジェット記録装置のインク流路内に流通させてもよい。
【0216】
≪3.インクジェット記録装置≫
上記の第1、第2、及び第3実施形態のメンテナンス液を使用するインクジェット記録装置は、従来公知のものを使用することができる。なお、これらのメンテナンス液は、インク組成物に由来する成分を取り除くために使用されればよく、これらのメンテナンス液を本実施の形態に係るインクジェット記録装置のインク通路内に通過させてもよく、これらのメンテナンス液を本実施の形態に係るインクジェット記録装置によりインクジェット吐出してもよく、これらのメンテナンス液を含浸させた払拭部材(例えば、ワイパー等)により本実施の形態に係るインクジェット記録装置の構成部材(例えば、インクジェットヘッドのノズル開口部等)を拭き取ってもよい。
【0217】
この中でも上記の第2実施形態のメンテナンス液においては、プラスチック収容体及び/又はプラスチック供給体を備えたインクジェット記録装置であることが好ましい。上記のメンテナンス液は、プラスチック収容体やプラスチック供給体内での保湿性に優れたものであるので、プラスチック収容体及び/又はプラスチック供給体を備え、その内部と前記メンテナンス液が接触するインクジェット記録装置であることが好ましい。
【0218】
また、プラスチック収容体やプラスチック供給体の少なくとも一部を構成するプラスチック部材の材質は、樹脂であれば特に限定されず、ポリオレフィン樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム、ナイロン、ポリウレタン、PTFEなど等が挙げられ、ポリエチレン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴムを使用することが好ましく、この中でも低密度ポリエチレン系樹脂を使用することが特に好ましい。
【0219】
上記の第3実施形態のメンテナンス液は、樹脂硬化物に対する部材適性が高く、かつ洗浄性に優れたものであるので、上記のメンテナンス液をインクジェットヘッドの樹脂硬化物と接触してメンテナンス液が使用されることで、インクジェットヘッドを構成する樹脂硬化物に対して浸食を抑制しつつ、インク流路内、記録装置のヘッドキャップ、ワイパー、フラッシングエリア、プラテン、ノズルプレート、筐体内のインクミスト等に付着したインク組成物に由来する成分を取り除くことが可能となる。
【0220】
図1にインクジェットヘッドの一例を示す模式図を示す。このインクジェットヘッド1は、インクカートリッジ(メンテナンス液供給部)から供給されたメンテナンス液を吐出孔面Dから排出する。
【0221】
上記の第3実施形態のメンテナンス液をインクジェット法により吐出するインクジェット記録装置において、インクジェットヘッドを構成する樹脂硬化物としては、硬化性樹脂の硬化物であれば特に限定されず、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂やエチレン性不飽和二重結合を含む光硬化性樹脂等が挙げられる。この中でも樹脂硬化物はエポキシ系樹脂及び/又はシリコン系樹脂を少なくとも含有することが好ましい。エポキシ系樹脂やシリコン系樹脂は接着力が強く、インクジェットヘッドの構成部材を強固に接着することが可能となる。以下では、インクジェットヘッドの構成部材を接着する接着剤として使用できるエポキシ系樹脂を含む接着剤について説明する。
【0222】
接着剤に含まれる代表的なエポキシ系樹脂は、例えば、下記構造式(3-4)に示されるようなビスフェノール型エポキシ樹脂、下記構造式(3-5)に示されるようなフェノールノボラック型エポキシ樹脂、または下記構造式(3-6)に示されるようなクレゾールノボラック型エポキシ樹脂である(ただしn=0~10)。
【0223】
【0224】
【0225】
【化18】
構造式(3-4)のエポキシ系樹脂の骨格部分は、その構造式(3-4)に示したビスフェノールAのほか、テトラブロムビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールZなど、従来のエポキシ樹脂接着剤の主剤として知られている構造でもよい。
【0226】
接着剤に含まれるエポキシ系樹脂としては、上記に例示した代表的なエポキシ系樹脂に限定されず、側鎖にエポキシ基を有するものであればよい。
【0227】
エポキシ系樹脂とともにアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール類硬化剤等の硬化剤を使用することでエポキシ系樹脂を重合反応させて硬化物を得ることができる。
【0228】
接着剤がエポキシ系接着剤を含有する場合、接着剤の硬化物が含有するエポキシ系樹脂の割合は、接着剤の硬化物全量中10質量%以上であればよく、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上がさらになお好ましく、99質量%以上であることが最も好ましい。
シリコン系樹脂は、シロキサン結合の繰り返しを主鎖とし、側基としてアルキル、アリール基などを持つ重合体であり、シロキサン系の縮合物である。シリコン系樹脂としては例えば、信越化学社製「KE1831」を挙げることができる。
【0229】
メンテナンス液やインク組成物を吐出するインクジェットヘッドは、圧電素子を用いたピエゾ方式のインクジェットヘッドであっても、発熱体を用いたサーマル方式のインクジェットヘッドであってもよく、特に制限はされない。
【0230】
その中でも、インクジェット記録装置が、非水系インク組成物を用いて記録を行うものであることが好ましい。上記のメンテナンス液はアミド系溶剤又はラクトン系溶剤を少なくとも1つ以上含有するものであり、非水系インク組成物に由来する成分を効果的に取り除くことができる。なお、非水系インク組成物とは、水を主成分とする水性インク組成物とは異なり、水を意図的に含有させずに製造された有機溶剤を含むインク組成物であることを意味する。
【0231】
≪4.インク組成物≫
上記のインクジェット記録装置により吐出されるインク組成物は、従来公知のインク組成物のものであればよい。その中でも、上記のメンテナンス液を使用するインクジェット記録装置により吐出されるインク組成物は、非水系インク組成物であることが好ましい。また、上記のメンテナンス液がアミド系溶剤又はラクトン系溶剤を少なくとも1つ以上含有していた場合、非系性インク組成物に由来する成分を効果的に取り除くことができる。このなかでも、特に、アミド系溶剤又はラクトン系溶剤を少なくとも1つ以上含有する非水系インク組成物であることが好ましい。
【実施例】
【0232】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0233】
(第1実施形態)
1.メンテナンス液の製造
下記表1~5の割合になるように各成分を混合させて実施例及び比較例のメンテナンス液を製造した。単位は質量%である。
【0234】
2.インク組成物の製造
下記表6の割合になるように各成分を混合させてメンテナンス液の評価に使用するインク組成物を製造した。単位は質量%である。
【0235】
3.吸湿試験
実施例および比較例のメンテナンス液について吸湿試験を行い、試験後の水分の吸水量を測定した。具体的には、メンテナンス液を入れた1リットルの瓶を恒温槽(温度25℃、湿度55%)に装入し、瓶の蓋を開けた状態で緩やかに攪拌しながら恒温槽内に100時間載置し、載置後の水分量を測定した。水分量の測定にはカールフィッシャー水分計901(メトロームジャパン社製)を用いた。
【0236】
4.評価
(洗浄性)
実施例および比較例のメンテナンス液について洗浄性(溶解性)を評価した。具体的には、製造したインク組成物0.5gをガラスシャーレにとり、60℃オーブンに入れて2時間加熱しインク組成物を乾燥させて、インク組成物に由来する成分を析出させた。その後、25℃にて放冷し、実施例および比較例のメンテナンス液1.0gをインク組成物に由来する固化した成分に滴下し、その溶解性(洗浄性)を目視で評価した(表中、洗浄性と表記)。
評価基準
評価5:固化した成分は全て溶解し、固化した成分は全く残らなかった。
評価4:固化した成分は全て溶解し、固化した成分は殆ど残らなかった。
評価3:固化した成分は全て溶解したが、その一部が溶解しなかった。
評価2:固化した成分は全て溶解したが、解れた塊のほとんどが溶解しなかった。
評価1:固化した成分は溶解しなかった。
【0237】
(凝集性)
実施例および比較例のメンテナンス液について凝集性を評価した。具体的には、製造したインク組成物20gと、実施例および比較例のメンテナンス液20gと、を混合し、混合液を得た。その後、その混合液を室温25℃で容器内に密栓して5日間放置した。放置後の混合液を十分に振り交ぜた後、混合液5mlを10um孔径のフィルタによりろ過し、フィルタ上のインク組成物に由来する凝集物を観察した(表中、凝集性と表記)。
評価基準
評価5:凝集物の発生は全く見られなかった。
評価4:一部凝集物が確認されたが、問題なく通液した。
評価3:凝集物が確認されたが、問題なく通液した。
評価2:多量の凝集物が確認され、通液不良が発生した。
評価1:全量通液出来なかった。
【0238】
(部材適性)
実施例及び比較例のメンテナンス液について部材適性(インクジェットヘッドの部材適性)を評価した。具体的には、インクジェットヘッドの部材に使用されるエポキシ接着剤(2液硬化型エポキシ接着剤「1500」、セメダイン(株)製)を60℃1日乾燥させた硬化物、0.2gを、実施例及び比較例のメンテナンス液に浸漬して、60℃で1週間放置して、浸漬試験を行い、硬化物の重量変化を測定した(表中、「部材適性」と表記)。
評価基準
評価5:重量変化率が3%未満で、エポキシ接着剤の材質の劣化がない。
評価4:重量変化率が3%以上5%未満で、エポキシ接着剤の材質の劣化がない。
評価3:重量変化率が5%以上10%未満で、エポキシ接着剤の材質の劣化がない。
評価2:重量変化率が10%以上15%未満で、エポキシ接着剤の材質の劣化がない。
評価1:重量変化率が15%以上及び/又は、エポキシ接着剤の材質の劣化がある。
【0239】
(保湿性)
実施例及び比較例のメンテナンス液について保湿性を評価した。具体的には、クリーニングシステムを備えたインクジェット記録装置(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製)を使用)を用いて、製造したインク組成物を充填して、ノズルチェックパターンを印刷し、すべてのノズルからインク組成物が正常に吐出していることを確認した。その後、そのインク組成物を排出した後、実施例および比較例のメンテナンス液を充填し、室温25℃湿度60%にて1月放置した。その後、メンテナンス液を排出し、再度製造したインク組成物を充填して、クリーニング操作を1回実施した後、再びノズルチェックパターンを印刷し、不吐出ノズルの個数をカウントした(表中、「保湿性」と表記)。
評価基準
評価5:不吐出が0本
評価4:不吐出が1~4本
評価3:不吐出が5~10本
評価2:不吐出が11~20本
評価1:不吐出が21本以上
【0240】
(放置クリーニング性)
実施例及び比較例のメンテナンス液について放置クリーニング性を評価した。具体的には、インクジェット記録装置(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)を用いて、製造したインク組成物を充填して、ノズルチェックパターンを記録し、すべてのノズルからインク組成物が正常に吐出していることを確認した。その後、1Lボトルに充填し開放状態にした実施例及び比較例のメンテナンス液と、記録に使用したインクジェット記録装置を室温25℃湿度60%にて1カ月放置し、クリーニング操作を1回実施した後、手動にて放置したメンテナンス液を浸漬したクリーニングスティックにてノズル面を払拭した後、再びノズルチェックパターンを印刷し、不吐出ノズルの個数をカウントした(表中、「放置クリーニング性」と表記)。
評価基準
評価5:不吐出が0本
評価4:不吐出が1~4本
評価3:不吐出が5~10本
評価2:不吐出が11~20本
評価1:不吐出が21本以上
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
表1~5から分かるように、水分の含有量が所定範囲以下に制御され、アミド系溶剤又はラクトン系溶剤を少なくとも1つ以上含有した実施例のメンテナンス液であれば、洗浄性及び部材適性が良好であった。このことから本発明のメンテナンス液は、インクジェット記録装置を構成する部材に対する部材適性が高く、かつ洗浄性に優れることが分かる。
【0248】
特に、アミド系溶剤を含有し、アミド系溶剤の種類を変更した実施例1-1~1-5のメンテナンス液において、実施例1-1~1-3のメンテナンス液は、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド及びN,N-ジエチルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも1つを含有するため、実施例1-4、1-5のメンテナンス液と比較して、部材適性が良好であった。
【0249】
また、ラクトン系溶剤を含有し、ラクトン系溶剤の種類を変更した実施例1-6~1-8のメンテナンス液において、6員環以上のラクトン系溶剤を含有する実施例1-7、1-8のメンテナンス液は、実施例1-6のメンテナンス液と比較して、部材適性及び保湿性が良好であった。
【0250】
また、蒸発エンタルピー(EOV)が45kJ/mol以上の有機溶剤(トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル)を含有する実施例1-12のメンテナンス液は、実施例1-1のメンテナンス液と比較して、保湿性が良好であった。
【0251】
また、アミド系溶剤を含有し、アミド系溶剤の含有量を変更した実施例1-9、1-11~1-13、1-18、1-19、1-22~1-25のメンテナンス液において、アミド系溶剤の含有量が7質量%以上の範囲にある実施例1-11~1-13、1-18、1-19、1-22~1-25のメンテナンス液は、洗浄性が良好であった。また、アミド系溶剤の含有量が70質量%以下の範囲にある実施例1-9、1-11~1-13、1-18、1-19、1-22のメンテナンス液は、部材適性が良好であった。
【0252】
また、水分の含有量を変更した実施例1-18、1-26~1-30のメンテナンス液において、水分の含有量が1.5質量%以下である実施例1-18、1-26は、実施例1-27~1-30と比較して、洗浄性、凝集性が良好であった。
【0253】
また、アミド系溶剤とグリコールエーテル系溶剤と含有する実施例1-31~1-39のメンテナンス液において、蒸発エンタルピー(EOV)が45kJ/mol以上の有機溶剤を含有する実施例1-31~1-33、1-36、1-37、1-39のメンテナンス液は、保湿性が良好であった。
【0254】
また、グリコールエーテルモノアルキルとグリコールエーテルジアルキルとの含有量を変更した実施例1-40、1-41、1-43、1-44のメンテナンス液において、グリコールエーテルモノアルキルの含有量が多いメンテナンス液であるほど吸湿試験後の水分量が増加する傾向があった。そして、湿度55%環境下に100時間載置したときの水分の吸水量がメンテナンス液全量中4質量%以下であった実施例1-40、1-41のメンテナンス液は、実施例1-43、1-44のメンテナンス液と比較して、放置クリーニング性が良好であった。また、この放置試験後の水分の吸水量が少ないメンテナンス液であるほど洗浄性や凝集性も良好となる傾向が見られた。
【0255】
また、分散剤を含有する実施例1-45、1-46のメンテナンス液や、界面活性剤を含有する実施例1-47、1-48のメンテナンス液や、顔料と分散剤を含有する実施例1-49~1-53のメンテナンス液も本発明の効果を奏するものであった。
【0256】
一方、水分の含有量がメンテナンス液全量中5質量%超である比較例1-1のメンテナンス液や、アミド系溶剤又はラクトン系溶剤を含有しない比較例1-2、1-3のメンテナンス液は、洗浄性が悪化していた。さらに、グリコールエーテルジアルキルのみからなる比較例1-3のメンテナンス液は、部材適性も悪化していた。
【0257】
(第2実施形態)
1.メンテナンス液の製造
下記表の割合になるように各成分を混合させて実施例及び比較例のメンテナンス液(非水系メンテナンス液)を製造した。単位は質量%である。なお、非水系メンテナンス液とは、水を意図的に含有せず、水を実質的に含有しないメンテナンス液であることを意味する。
【0258】
2.インク組成物の製造
上記表6の割合になるように各成分を混合させてメンテナンス液の評価に使用するインク組成物を製造した。単位は質量%である。
【0259】
3.評価
(保湿性)
実施例及び比較例のメンテナンス液について保湿性を評価した。具体的には、クリーニングシステムを備えたインクジェット記録装置(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製)を使用)を用いて、製造したインク組成物を充填して、ノズルチェックパターンを印刷し、すべてのノズルからインク組成物が正常に吐出していることを確認した。その後、そのインク組成物を排出した後、実施例および比較例のメンテナンス液を充填し、室温25℃湿度60%にて1カ月放置した。その後、メンテナンス液を排出し、再度製造したインク組成物を充填して、クリーニング操作を1回実施した後、再びノズルチェックパターンを印刷し、不吐出ノズルの個数をカウントした(表中、「保湿性」と表記)。
評価基準
評価5:不吐出が0本
評価4:不吐出が1~4本
評価3:不吐出が5~10本
評価2:不吐出が11~20本
評価1:不吐出が21本以上
【0260】
(洗浄性)
実施例および比較例のメンテナンス液について洗浄性(溶解性)を評価した。具体的には、製造したインク組成物0.5gをガラスシャーレにとり、60℃オーブンに入れて2時間加熱しインク組成物を乾燥させて、インク組成物に由来する成分を析出させた。その後、25℃にて放冷し、実施例および比較例のメンテナンス液1.0gをインク組成物に由来する固化した成分に滴下し、その溶解性(洗浄性)を目視で評価した(表中、洗浄性と表記)。
評価基準
評価5:固化した成分は全て溶解し、固化した成分は全く残らなかった。
評価4:固化した成分は全て解れ、固化した成分は殆ど残らなかった。
評価3:固化した成分は全て解れたが、その一部が溶解しなかった。
評価2:固化した成分は全て解れたが、解れた塊のほとんどが溶解しなかった。
評価1:固化した成分は解れなかった。
【0261】
(乾燥性)
実施例および比較例のメンテナンス液について乾燥性を評価した。具体的には、プリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製)に純正マゼンタインクを充填し、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))上に100%濃度でベタ印刷し、記録物1を得た。その後、プリンターのインク交換操作にて、純正インクを排出し、実施例および比較例のメンテナンス液を充填した。さらにメンテナンス液を排出し、再度メンテナンス液を充填した。すなわち、インク交換操作を2回実施した。その状態から、前記メンテナンス液を排出し、当該プリンターを40℃無加湿の恒温室に5日間放置した後、20℃環境に取り出して1日放冷した。次に、プリンターのインク交換操作にて純正マゼンタインクを充填し、前記記録媒体に100%濃度でベタ印刷し、記録物2を得た。記録物1及び2をX-Rite eXact(エックスライト社製)を用い、視野角2°、測定範囲 4mmφ、D65光源の条件で測色し、記録物1のパターンと記録物2の色差ΔEにもとづいて、下記評価基準により乾燥性を評価した(表中、乾燥性と表記)。
評価基準
評価5:ΔEが3未満
評価4:ΔEが3以上、5未満
評価3:ΔEが5以上,7.5未満
評価2:ΔEが7.5以上、10未満
評価1:ΔEが10以上
【0262】
(部材適性)
実施例及び比較例のメンテナンス液について部材適性(インクジェットヘッドの部材適性)を評価した。具体的には、インクジェットヘッドの部材に使用されるエポキシ接着剤(2液硬化型エポキシ接着剤「1500」、セメダイン(株)製)を60℃1日乾燥させた硬化物、0.2gを、実施例及び比較例のメンテナンス液に浸漬して、60℃で1週間放置して、浸漬試験を行い、硬化物の重量変化を測定した(表中、「部材適性」と表記)。
評価基準
評価5:重量変化率が3%未満で、エポキシ接着剤の材質の劣化がない。
評価4:重量変化率が3%以上5%未満で、エポキシ接着剤の材質の劣化がない。
評価3:重量変化率が5%以上10%未満で、エポキシ接着剤の材質の劣化がない。
評価2:重量変化率が10%以上15%未満で、エポキシ接着剤の材質の劣化がない。
評価1:重量変化率が15%以上及び/又は、エポキシ接着剤の材質の劣化がある
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
【0267】
表中「MFDG」とは「ジプロピレングリコールモノメチルエーテル」を意味する。
【0268】
表中「MFTG」とは「トリプロピレングリコールモノメチルエーテル」を意味する。
【0269】
表中「DEF」とは「N,N-ジエチルホルムアミド」を意味する。
【0270】
表中「DEPA」とは「N,N-ジエチルプロパンアミド」を意味する。
【0271】
表中「M100」とは、「N,N-ジメチル-β-メトキシプロパンアミド」を意味する。
【0272】
表中「PC」とは「プロピレンカーボネート」を意味する。
【0273】
表中「GBL」とは「γ-ブチロラクトン」を意味する。
【0274】
表中「ECL」とは「ε-カプロラクトン」を意味する。
【0275】
表中「MEDG」とは「ジエチレングリコールメチルエチルエーテル」を意味する。
【0276】
表中「DEDG」とは「ジエチレングリコールジエチルエーテル」を意味する。
【0277】
表中「DMFDG」とは「ジプロピレングリコールジメチルエーテル」を意味する。
【0278】
表中「BTG」とは「トリエチレングリコールモノnブチルエーテル」を意味する。
【0279】
表中、「DESU」とは、「コハク酸ジエチル」を意味する。
【0280】
表中「EGmMEA」とは、「エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート」を意味する。
【0281】
表中「EGmBEA」とは、「エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート」を意味する。
【0282】
表中「PGmMEA」とは、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」を意味する。
【0283】
表中、「DEC」とは、「ジエチルカーボネート」を意味する。
【0284】
上記表から分かるように、保管試験により揮発する揮発率が所定以下の有機溶剤を含有する実施例のメンテナンス液であれば、インクジェット記録装置内のプラスチック収容体やプラスチック供給体内での保湿性に優れることが分かる。
【0285】
この中でも、有機溶剤A2の含有量はメンテナンス液全量中1質量%以上95質量%以下の範囲である実施例2-2~2-8のメンテナンス液は、さらに、プラスチック収容体やプラスチック供給体内での保湿性に優れることが分かる。
【0286】
また、有機溶剤A2の種類を変更した実施例2-5、2-12~2-18のメンテナンス液において、式(2-2)で表されるアルキルアミド系溶剤を含有する実施例2-5、2-14のメンテナンス液は、さらに、プラスチック収容体やプラスチック供給体内での保湿性に優れるだけでなく、洗浄性や部材適性にも優れることが分かる。
【0287】
また、色材を含有する実施例2-36~2-41は、実施例2-5と同様に樹脂硬化物に対する部材適性が高いものであった。分散剤を含有する実施例2-35~2-41は、実施例2-5と同様に洗浄性に優れるものであった。
【0288】
一方、有機溶剤A2を含有しない比較例2-1~2-4のメンテナンス液は、本発明の効果を奏するものとはなっていない。
【0289】
(第3実施形態)
1.メンテナンス液の製造
下記表の割合になるように各成分を混合させて実施例及び比較例の非水系メンテナンス液及び水性メンテナンス液を製造した。単位は質量%である。なお、非水系メンテナンス液とは、水を意図的に含有せず、水を実質的に含有しないメンテナンス液であることを意味し、水性メンテナンス液とは、水を含有するメンテナンス液であることを意味する。
【0290】
2.インク組成物の製造
上記表6及び下記表19の割合になるように各成分を混合させてメンテナンス液の評価に使用するインク組成物(非水系インク組成物及び水性インク組成物)を製造した。単位は質量%である。なお、非水系インク組成物とは、水を意図的に含有せず、水を実質的に含有しないインク組成物であることを意味し、水性インク組成物とは、水を含有するインク組成物であることを意味する。また、非水系メンテナンス液評価用のインク組成物としては非水系インク組成物を使用し、水性メンテナンス液評価用のインク組成物としては水性インク組成物を使用した。
【0291】
色材(顔料分散体)、樹脂(樹脂エマルジョン)、溶剤、水(イオン交換水)を用いて下記表の割合になるように各成分のように水性インク組成物を調製した。顔料分散体、樹脂(樹脂エマルジョン)、の作製方法を下記に示す。
【0292】
(1)顔料分散剤の作製
100℃に保たれたトルエン200g中にメタクリル酸メチル63g、アクリル酸ブチル27g、メタクリル酸ブチル30g、アクリル酸15g、メタクリル酸15g、とtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート3.6gとの混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた後冷却して、樹脂溶液を得た。樹脂溶液から樹脂をヘキサンにて精製して、重合平均分子量(ポリスチレン換算値)20000、酸価143mgKOH/gの顔料分散樹脂を得た。
【0293】
水(イオン交換水)80gに、上記で得られた顔料分散樹脂2.5gと、N,N-ジメチルアミノエタノール0.6gを溶解させ、C.I.ピグメントレッド122を15gと消泡剤(エアープロダクツ社製「サーフィノール104PG」)を0.05g加え、ジルコニアビーズを用いてペイントシェーカーにて分散し、顔料分散体を得た。
同様の方法で、C.I.ピグメントマゼンタ122をC.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントブルー15:3、カーボンブラックに変えて分散体を得た。
【0294】
(2)樹脂エマルジョンの作製
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えたフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、反応性界面活性剤(花王(株)製、商品名:ラテムルPD-104)0.75g、過硫酸カリウム0.04g、メタクリル酸1.5gと純水150gを仕込み、25℃にて攪拌し混合した。これに、メタクリル酸メチル115.5g、アクリル酸2-エチルヘキシル18g、アクリル酸ブチル15gの混合物を滴下してプレエマルジョンを調製した。又、機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えたフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、反応性界面活性剤(花王(株)製、商品名:ラテムルPD-104)3g、過硫酸カリウム0.01gと純水200gを70℃にて攪拌し混合した。その後、調製した前記プレエマルジョンを3時間かけてフラスコ内に滴下した。70℃で更に3時間加熱熟成した後冷却し、N,N-ジメチルエタノールアミンでpHを8となるよう調整し、#150メッシュ(日本織物製)にて濾過し、固形分30質量%、500gの樹脂エマルジョン(ガラス転移温度64℃、酸価7mgKOH/g 体積平均粒子径:90nm)を得た。なお、樹脂エマルジョンの体積平均粒子径(D50)は、粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル(株)製粒度分析計NANOTRACWAVE)を用いて25℃の条件下で測定した。
【0295】
3.評価
(保湿性)
実施例及び比較例のメンテナンス液について保湿性を評価した。具体的には、クリーニングシステムを備えたインクジェット記録装置を用いて、製造したインク組成物を充填して、ノズルチェックパターンを印刷し、すべてのノズルからインク組成物が正常に吐出していることを確認した。その後、そのインク組成物を排出した後、実施例および比較例のメンテナンス液を充填し、室温25℃湿度60%にて1月放置した。その後、メンテナンス液を排出し、再度製造したインク組成物を充填して、クリーニング操作を1回実施した後、再びノズルチェックパターンを印刷し、不吐出ノズルの個数をカウントした(表中、「保湿性」と表記)。
評価基準
評価5:不吐出が0本
評価4:不吐出が1~4本
評価3:不吐出が5~10本
評価2:不吐出が11~20本
評価1:不吐出が21本以上
【0296】
(洗浄性)
実施例および比較例のメンテナンス液について洗浄性(溶解性)を評価した。具体的には、製造したインク組成物0.5gをガラスシャーレにとり、60℃オーブンに入れて2時間加熱しインク組成物を乾燥させて、インク組成物に由来する成分を析出させた。その後、25℃にて放冷し、実施例および比較例のメンテナンス液1.0gをインク組成物に由来する固化した成分に滴下し、その溶解性(洗浄性)を目視で評価した(表中、洗浄性と表記)。
評価基準
評価5:固化した成分は全て溶解し、固化した成分は全く残らなかった。
評価4:固化した成分は全て解れ、固化した成分は殆ど残らなかった。
評価3:固化した成分は全て解れたが、その一部が溶解しなかった。
評価2:固化した成分は全て解れたが、解れた塊のほとんどが溶解しなかった。
評価1:固化した成分は解れなかった。
【0297】
(乾燥性)
実施例および比較例のメンテナンス液について乾燥性を評価した。具体的には、インクジェット記録装置に純正マゼンタインクを充填し、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))上に100%濃度でベタ印刷し、記録物1を得た。その後、プリンターのインク交換操作にて、純正インクを排出し、実施例および比較例のメンテナンス液を充填した。さらにメンテナンス液を排出し、再度メンテナンス液を充填した。すなわち、インク交換操作を2回実施した。その状態から、前記メンテナンス液を排出し、当該プリンターを40℃無加湿の恒温室に5日間放置した後、20℃環境に取り出して1日放冷した。次に、プリンターのインク交換操作にて純正マゼンタインクを充填し、前記記録媒体に100%濃度でベタ印刷し、記録物2を得た。記録物1及び2をX-Rite eXact(エックスライト社製)を用い、視野角2°、測定範囲 4mmφ、D65光源の条件で測色し、記録物1のパターンと記録物2の色差ΔEにもとづいて、下記評価基準により乾燥性を評価した(表中、「乾燥性」と表記)。
評価基準
評価5:ΔEが3未満
評価4:ΔEが3以上、5未満
評価3:ΔEが5以上,7.5未満
評価2:ΔEが7.5以上、10未満
評価1:ΔEが10以上
【0298】
(部材適性1)
実施例及び比較例のメンテナンス液について部材適性(インクジェットヘッドの部材適性)を評価した。具体的には、インクジェットヘッドの部材に使用されるエポキシ接着剤(2液硬化型エポキシ接着剤「1500」、セメダイン(株)製)を60℃1日乾燥させた硬化物、0.2gを、実施例及び比較例のメンテナンス液に浸漬して、60℃で1週間放置して、浸漬試験を行い、硬化物の重量変化を測定した(表中、「部材適性1」と表記)。
評価基準
評価5:重量変化率が3%未満で、エポキシ接着剤の材質の劣化がない。
評価4:重量変化率が3%以上5%未満で、エポキシ接着剤の材質の劣化がない。
評価3:重量変化率が5%以上10%未満で、エポキシ接着剤の材質の劣化がない。
評価2:重量変化率が10%以上15%未満で、エポキシ接着剤の材質の劣化がない。
評価1:重量変化率が15%以上及び/又は、エポキシ接着剤の材質の劣化がある。
【0299】
(部材適性2)
実施例及び比較例のメンテナンス液について部材適性(インクジェットヘッドの部材適性)を評価した。具体的には、インクジェットヘッドの部材に使用されるシリコン系樹脂(一液型液状ゴム「KE1831」、信越化学社製)を120℃10分乾燥させた硬化物、0.2gを、実施例及び比較例のメンテナンス液に浸漬して、60℃で1週間放置して、浸漬試験を行い、硬化物の重量変化を測定した(表中、「部材適性2」と表記)。
評価基準
評価5:重量変化率が5%未満で、シリコン系樹脂の材質の劣化がない。
評価4:重量変化率が5%以上10%未満で、シリコン系樹脂の材質の劣化がない。
評価3:重量変化率が10%以上15%未満で、シリコン系樹脂の材質の劣化がない。
評価2:重量変化率が15%以上20%未満で、シリコン系樹脂の材質の劣化がない。
評価1:重量変化率が20%以上及び/又は、シリコン系樹脂の材質の劣化がある。
【0300】
【0301】
【0302】
【0303】
【0304】
【0305】
【0306】
表中「DEF」とは「N,N-ジエチルホルムアミド」を意味する。
【0307】
表中「DEPA」とは「N,N-ジエチルプロパンアミド」を意味する。
【0308】
表中「DEAA」とは「N,N-ジエチルアセトアミド」を意味する。
【0309】
表中「DMF」とは、「N,N-ジメチルホルムアミド」を意味する。
【0310】
表中「NMC」とは「N-メチルカプロラクタム」を意味する。
【0311】
表中「NVC」とは「N-ビニルカプロラクタム」を意味する。
【0312】
表中「EC」とは「ε-カプロラクタム」を意味する。
【0313】
表中「DMI」とは「1,3-ジメチルイミダゾリジノン」を意味する。
【0314】
表中「MOZ」とは「N-メチルオキサゾリジノン」を意味する。
【0315】
表中「GBL」とは「γ-ブチロラクトン」を意味する。
【0316】
表中「GVL」とは「γ-バレロラクトン」を意味する。
【0317】
表中「DVL」とは「δ-バレロラクトン」を意味する。
【0318】
表中「DHL」とは、「δ-ヘキサノラクトン」を意味する。
【0319】
表中「ECL」とは「ε-カプロラクトン」を意味する。
【0320】
表中「DEGDBE」とは「ジエチレングリコール ジブチルエーテル」を意味する。
【0321】
表中「MEDG」とは「ジエチレングリコールメチルエチルエーテル」を意味する。
【0322】
表中「DEDG」とは「ジエチレングリコールジエチルエーテル」を意味する。
【0323】
表中「DMFDG」とは「ジプロピレングリコールジメチルエーテル」を意味する。
【0324】
表中「BTG」とは「トリエチレングリコールモノnブチルエーテル」を意味する。
【0325】
表中「MFTG」とは「トリプロピレングリコールモノメチルエーテル」を意味する。
【0326】
表中「MFDG」とは「ジプロピレングリコールモノメチルエーテル」を意味する。
【0327】
表中「PC」とは「プロピレンカーボネート」を意味する。
【0328】
【0329】
【0330】
【0331】
上記表から分かるように、有機溶剤A3を含有する実施例のメンテナンス液であれば、樹脂硬化物に対する部材適性が高く、かつ洗浄性に優れることが分かる。
【0332】
この中でも、アルキルアミド系溶剤の含有量を変更させた実施例3-1~3-6において、アルキルアミド系溶剤の含有量が5質量%以上の範囲である実施例3-2~3-6のメンテナンス液はより洗浄性に優れることが分かる。また、アルキルアミド系溶剤の含有量が、メンテナンス液全量中90質量%以下の範囲である実施例3-1~3-5のメンテナンス液はより樹脂硬化物に対する部材適性が高いことが分かる。
【0333】
また、有機溶剤A3の種類を変更させた実施例3-4、3-18~3-28において、式(3-1)で表され、R2及びR3が炭素数2以上4以下のアルキル基であるアルキルアミド系溶剤を含有する実施例3-4、3-18、3-19のメンテナンス液は、樹脂硬化物に対する部材適性と洗浄性とがバランス良いものとなっており、本発明の効果をより効果的に奏するものであることが分かる。
【0334】
また、その他の有機溶剤の種類を変更させた実施例3-29~3-40においても同様に本発明の効果を奏するものであることが分かる。
【0335】
また、色材を含有する実施例3-44~3-47は、実施例3-5と同様に樹脂硬化物に対する部材適性が高いものであった。分散剤を含有する実施例3-42~3-47は、実施例3-5と同様に洗浄性に優れるものであった。
【0336】
また、水を含有させた実施例4-1~4-14においても同様に、樹脂硬化物に対する部材適性が高く、かつ洗浄性に優れることが分かる。
【0337】
その中でも、環状アミド系溶剤又はラクトン系溶剤を含有する実施例4-7~4-11において、式(3-2)で表され、R4が炭素数4以上5以下のアルキレン基である環状アミド系溶剤を含有する実施例4-7や、式(3-3)で表され、R6が炭素数4以上5以下のアルキレン基であるラクトン系溶剤を含有する実施例4-10は、実施例4-7、4-8と比べても樹脂硬化物に対する部材適性がより高くなっており、かつ洗浄性により優れたものとなっていた。
【0338】
これに対し、有機溶剤A3を含有しない比較例3-1~3-4の非水系メンテナンス液や比較例4-1、4-2の水性メンテナンス液は本発明の効果を奏するものとなっていない。
【符号の説明】
【0339】
1 インクジェットヘッド
A 樹脂硬化物
D 吐出口
【要約】
【課題】インク流路を構成する部材に対する部材適性が高く、かつ洗浄性に優れたメンテナンス液と、インクジェット記録装置内のプラスチック収容体やプラスチック供給体内での保湿性に優れたメンテナンス液と、樹脂硬化物に対する部材適性が高く、かつ洗浄性に優れたメンテナンス液と、を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置に用いられるメンテナンス液であって、有機溶剤を含有し、水分の含有量がメンテナンス液全量中5質量%以下であり、有機溶剤は、アミド系溶剤又はラクトン系溶剤を少なくとも1つ以上含有する、メンテナンス液である。また、インクジェット記録装置に用いられるメンテナンス液であって、有機溶剤A2を含有し、前記有機溶剤A2は、沸点が250℃以下であり、かつ下記の保管試験により揮発する揮発率が15質量%以下である、メンテナンス液である。また、樹脂硬化物を構成部材として含むインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置に用いられるメンテナンス液であって、有機溶剤を含有し、前記有機溶剤は、下記有機溶剤A3を含有するメンテナンス液である。
有機溶剤A3:アルキルアミド系溶剤(a1)、環状アミド系溶剤(a2)、及びラクトン系溶剤(a3)からなる群より選択される少なくとも1つ
【選択図】なし