(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】刃物ケース
(51)【国際特許分類】
B26B 9/02 20060101AFI20220725BHJP
【FI】
B26B9/02
(21)【出願番号】P 2022109811
(22)【出願日】2022-07-07
【審査請求日】2022-07-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(72)【発明者】
【氏名】月本 拓延
(72)【発明者】
【氏名】日向 紘平
(72)【発明者】
【氏名】落合 章吾
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-311049(JP,A)
【文献】登録実用新案第3216383(JP,U)
【文献】実開昭57-94468(JP,U)
【文献】特開2002-346246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃体と柄とを有する刃物を、互いにヒンジにより連結された第1ケースと第2ケースとが対向する閉状態のときに形成される収容空間に前記刃体を収容し、前記柄を前記収容空間から露出させ、スライドロック部材によって前記閉状態でロック可能に形成された刃物ケースであって、
前記第1ケースは、
第1面部と、
前記第1面部の縁から前記第1面部に対して垂直方向に突出して形成された第1壁部と、
前記閉状態のときに前記第2ケースと対向する前記第1面部に設けられたマグネットと、
前記第1ケースの短手方向において前記ヒンジ側とは逆側に形成され、前記閉状態のときに前記刃体の前記柄との接続部を挿通可能に形成された刃体挿通部と、
前記刃体挿通部の前記ヒンジ側に設けられ、前記閉状態のときに前記刃物のあごが前記収容空間から抜けないよう、前記第1面部の縁または縁近傍から前記第1面部に対して垂直方向に突出した突条により形成されたあご支持部と、
前記ヒンジとは逆側の縁部に前記第1ケースの長手方向に延びるよう設けられ、前記スライドロック部材の移動を案内するガイド部と、
前記ガイド部に取り付けられ、前記閉状態のときの閉位置と、開状態のときの開位置との間で前記ガイド部に沿ってスライド可能に形成された前記スライドロック部材と、を有し、
前記第2ケースは、
前記閉状態のときに前記第1面部と対向する第2面部と、
前記ヒンジとは逆側の縁部であって、前記閉状態のときに前記スライドロック部材の長手方向の両端を含む複数の位置に設けられたロック部と、
前記閉状態のときに前記あご支持部に対向する位置に設けられ、前記第2面部から垂直方向に突出した突条と、を有し、
前記スライドロック部材を前記開位置から前記閉位置に移動させることで、前記スライドロック部材によって前記ガイド部と前記ロック部とが覆われ、前記第1ケースから前記第2ケースが解放されないよう前記スライドロック部材の長手方向の両端を含む複数の位置で同時にロックされる、
刃物ケース。
【請求項2】
前記スライドロック部材は、前記スライドロック部材が前記閉位置から前記開位置にスライドすることを規制するスライド規制段差部を有する、
請求項1に記載の刃物ケース。
【請求項3】
前記ヒンジは、前記第1ケース及び前記第2ケースの長手方向に3つ以上に分離されて形成される、
請求項1に記載の刃物ケース。
【請求項4】
前記スライドロック部材は、表面に凹凸が形成されている、
請求項1に記載の刃物ケース。
【請求項5】
前記スライドロック部材は、前記第1ケースの前記ヒンジ側とは逆側の端面を覆うよう断面U字状に形成され、前記第1ケースの端面と対向して形成された貫通孔を有し、
前記第1ケースは、前記貫通孔から視認される態様が前記開状態のときと前記閉状態のときとで変化する開閉識別マークを有する、
請求項1に記載の刃物ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、刃物ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
包丁に代表される刃物を包み込んで不使用時に保管する刃物ケースがあり、例えば特許文献1及び2に開示されている。特許文献1に記載の刃物用鞘は、2つの鞘構成片が分離可能であり、一方の鞘構成片3にゴム磁石5が貼着された構成である。特許文献2に記載の刃体保護具(ナイフブレードプロテクター)は、ヒンジによって互いに接続された2つの板状部材により形成され、各板状部材が一方の面に磁性体を有し、各磁性体は幅方向に交互に極性を持つ複数の長手方向の極で磁化された構成である。このとき、ヒンジを折り曲げて磁性体を近接させた状態で、一方の磁性体のN極が他方の磁性体のS極と対向するよう整列された構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭57-94468号公報
【文献】英国特許出願公開第2460914号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の刃物ケースは、取り扱いに十分に注意すべき刃物を安全に保管するという観点から改善が必要な面があった。例えば、従来の刃物ケースでは、刃物を保持させた状態で不意に落下したときに簡単に開いて刃物が露出することがあった。
【0005】
また、包丁などの刃物をアウトドアで使用するために持ち出す際にはできるだけコンパクトにしたいため、刃だけをカバーし、柄はケースから出した状態にできる刃物ケースが欲しいというニーズがある。このような刃物ケースは、カバンまたは箱などに他の物品と一緒に収納された状態で持ち運ばれることが想定されるが、刃物ケースが他の物品にぶつかったり、他の物品に押されたりして、外力が与えられることがある。このときに、ケースが開いてしまったり、刃物がケースから抜け出てしまったりする場合があった。例えば、従来の、刃物を差し込んで使用する鞘型のカバーでは、カバーから刃物が抜け出しやすく、刃物が抜け出ないようにするための工夫が必要であった。
【0006】
また、従来の刃物ケースでは、ケースの中で刃物ががたついて持ち運び中に音が出てしまって不快に感じたり、会話を遮ってしまったりすることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、次のような手段を提供する。
【0008】
本発明の一態様の刃物ケースは、刃体と柄とを有する刃物を、互いにヒンジにより連結された第1ケースと第2ケースとが対向する閉状態のときに形成される収容空間に刃体を収容し、柄を収容空間から露出させ、スライドロック部材によって閉状態でロック可能に形成される。
【0009】
第1ケースは、第1面部と、第1面部の縁から第1面部に対して垂直方向に突出して形成された第1壁部と、閉状態のときに第2ケースと対向する第1面部に設けられたマグネットと、第1ケースの短手方向においてヒンジ側とは逆側に形成され、閉状態のときに刃体の柄との接続部を挿通可能に形成された刃体挿通部と、刃体挿通部のヒンジ側に設けられ、閉状態のときに刃物のあごが収容空間から抜けないよう、第1面部の縁または縁近傍から第1面部に対して垂直方向に突出した突条により形成されたあご支持部と、ヒンジとは逆側の縁部に第1ケースの長手方向に延びるよう設けられ、スライドロック部材の移動を案内するガイド部と、ガイド部に取り付けられ、閉状態のときの閉位置と、開状態のときの開位置との間でガイド部に沿ってスライド可能であり、閉位置に位置するときガイド部とロック部とを覆うよう形成されたスライドロック部材と、を有する。
【0010】
第2ケースは、閉状態のときに第1面部と対向する第2面部と、ヒンジとは逆側の縁部であって、閉状態のときにスライドロック部材の長手方向の両端を含む複数の位置に設けられたロック部と、閉状態のときにあご支持部に対向する位置に設けられ、第2面部から垂直方向に突出した突条と、を有する。
【0011】
また、当該刃物ケースでは、スライドロック部材を開位置から閉位置に移動させることで、第1ケースから第2ケースが解放されないようスライドロック部材の長手方向の両端を含む複数の位置で同時にロックする。
【0012】
上記の刃物ケースは、刃体のみを収容して、柄は収容空間から露出するようなコンパクトな構成にしているため、アウトドア等にも持ち出しやすい可搬性に優れたものとなっている。一方で、コンパクトな構成としつつも、スライドロック部材により開閉式のケースとし、あご支持部により刃物のあご部分に対応する壁を設けたことで、持ち運びの際にカバンなどの中で他の物品にぶつかって外力が与えられたりしても刃物カバーが開いてしまったり、刃物ケースから刃物が意図せず抜け出てしまったりすることを防止できる安全なものとなっている。また、ケース内に刃物を吸着して安定させるマグネットを配置しているため、持ち運び中に刃物ケースの中で刃物ががたついてしまうことを抑制でき、音の発生を抑えることができる。
【0013】
また、マグネットを設けた構成としているため、刃体を収容するとき、開いた刃物ケースの内面に刃物を置いた際に刃物を吸着して安定して保持させることができる。そのため、刃物ケースを手に持ったままの状態で刃物を収容しようとしても、刃体がずれることなく刃物ケースを閉じたりロックしたりすることができる。すなわち、ユーザが刃物を収容しようとする際の安全にも配慮した設計となっている。
【0014】
また、上記の刃物ケースでは、スライドロック部材を開位置から閉位置にスライド移動させるだけで、スライドロック部材の長手方向の両端を含む複数の位置において同時に、刃物ケースを閉状態でロックすることができる。すなわち、スライドロック部材をスライドさせるだけで、刃物を収容した状態を安全に維持することが可能となる。この閉状態では、仮に刃物ケースを不意に落下してしまった場合であっても簡単に開いてしまうことを防止できるため、従来の刃物ケースと比較して安全な構成となっている。
【0015】
また、上記刃物ケースでは、ほとんどの構成要素を第1ケース側に集中した構成としているため、製造時に組み立てやすい構成となっている。
【0016】
また、刃物ケースは実質的に平板状に構成されるが、温度変化、持ち運び時の外力、または刃物の自重などにより、ケース全体が反ったり撓んだりする場合がある。このような場合でも、当該刃物ケースでは、スライドロック部材によりロックされるロック部を両端かつ複数に設けた構成としているため、部分的な口開き等を発生させず、確実に閉状態を維持できる。
【0017】
また、SDGsの17の目標のうちの10番の「人や国の不平等をなくそう」の観点から、上記刃物ケースは、年齢、性別、及び障がいの有無等にかかわらず、すべての人にとって操作しやすい構成であるため、あらゆる人が刃物の取り扱いに平等に参加できる環境を創り出すことができる。また、SDGsの17の目標のうちの12番の「つくる責任つかう責任」の観点から、上記刃物ケースは、刃体部分のみをコンパクトに収容する構成としているため、廃棄物の発生を削減することができる。すなわち、上記刃物ケースによって、持続可能な世界に向けた製品を提供することができる。
【0018】
また、刃体挿通部がヒンジ側とは逆側に設けられているため、収容時には刃先がヒンジ側に向けられた状態となる。そのため、刃物ケースを開いたときに刃先が手指に触れづらくなり、より安全な構成となっている。
【0019】
上記の刃物ケースにおいて、好ましくは、スライドロック部材が閉位置から開位置にスライドすることを規制するスライド規制段差部をスライドロック部材が有する構成とする。
【0020】
このような構成の刃物ケースでは、スライドロック部材が閉位置から開位置にスライドすることを規制する構成とすることで、閉状態を維持しやすくなるため、さらに安全な構成にできる。
【0021】
上記の刃物ケースにおいて、好ましくは、ヒンジが第1ケース及び第2ケースの長手方向に3つ以上に分離されて形成された構成とする。
【0022】
本発明の一態様の刃物ケースでは、上記のとおり、収容する刃物の刃先がヒンジ側を向く構成となっている。そのため、刃物を収容するまたは取り出す際に刃先がヒンジに接触してしまうことがあり、このとき、ヒンジの一部が破損してしまう場合がある。そこで、上記刃物ケースは、ヒンジが長手方向に3つ以上に分離された構成とし、そのうちの1つが破損した場合であっても2つが有効に残るため、ヒンジ全体が直ぐに破損してしまうことを防止できる。これにより、耐久性を有し、かつ安全な刃物ケースを構成できる。
【0023】
上記の刃物ケースにおいて、好ましくは、スライドロック部材の表面に凹凸が形成された構成とする。
【0024】
上記の刃物ケースは可搬性に優れた構成であるため、アウトドアでの利用にも適している。アウトドアで刃物を使用する場合、屋内のキッチンほど種々の環境が整っていないケースが多く、濡れた手で種々の作業を行う必要が生じるケースがある。上記の刃物ケースではこのような状況で使用した場合であっても安全に取り扱える構成となるよう、スライドロック部材の表面に滑り止めとして作用する凹凸を設けた構成としている。これにより、アウトドアで利用する場合であっても安全に使用可能な、安全性に配慮した構成となっている。もちろん、屋内のキッチンで利用する場合にも滑り落ちることを防止しやすい構成となっているため、より安全な構成となっている。
【0025】
上記の刃物ケースにおいて、好ましくは、スライドロック部材は、第1ケースのヒンジ側とは逆側の端面を覆うよう断面U字状に形成され、第1ケースの端面と対向して形成された貫通孔を有し、第1ケースは、貫通孔から視認される態様が開状態のときと閉状態のときとで変化する開閉識別マークを有する構成とする。
【0026】
このような構成の刃物ケースでは、端面側から見た場合であっても刃物ケースが開状態または閉状態であるかを簡単に目視で判断することができる。これにより、さらに安全性を高めた構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、展開した状態の刃物ケースの斜視図である。
【
図2】
図2は、展開しスライドロック部材を取り外した状態の刃物ケースの斜視図である。
【
図3】
図3は、展開した状態の刃物ケースの斜視図である。
【
図4】
図4は、展開しスライドロック部材を取り外した状態の刃物ケースの斜視図である。
【
図5】
図5は、スライドロック部材の斜視図である。
【
図6】
図6は、閉状態の刃物ケースの斜視図である。
【
図7】
図7は、閉状態でスライドロック部材を取り外した状態の刃物ケースの斜視図である。
【
図8】
図8は、閉状態の刃物ケースの斜視図である。
【
図9】
図9は、閉状態でスライドロック部材を取り外した状態の刃物ケースの斜視図である。
【
図10】
図10は、刃物収容前の開状態の刃物ケースの平面図である。
【
図11】
図11は、刃物を載置した開状態の刃物ケースの平面図である。
【
図12】
図12は、刃物を載置し第2ケースを閉じた状態の刃物ケースの平面図である。
【
図13】
図13は、刃物を収容した閉状態の刃物ケースの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一態様の刃物ケースは、ほとんどの構成要素を第1ケース側に集中した構成とし、かつスライド操作を行うだけで、刃物を収容した状態を安全に維持することが可能な構成としている点などを特徴としている。
【0029】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0030】
[刃物ケース100]
図1~
図9は、実施形態の刃物ケース100の構成を示す図である。
図1~
図4は展開した状態の刃物ケース100の斜視図、
図5はスライドロック部材3の斜視図、
図6~
図9は閉状態の刃物ケース100の斜視図である。
図2、
図4、
図7及び
図9は、スライドロック部材3を取り外した状態を示している。
【0031】
これらの図に示されるように、本実施形態の刃物ケース100は、第1ケース1、第2ケース2、スライドロック部材3、及びヒンジ4a~4cで構成される。第1ケース1と第2ケース2とは、互いにヒンジ4a~4cによって連結される。第1ケース1、第2ケース2、スライドロック部材3、及びヒンジ4a~4cは、典型的にはいずれも樹脂で形成されるが、これに限定されるものではない。すなわち、第1ケース1、第2ケース2、スライドロック部材3、及びヒンジ4a~4cの少なくとも一部は、樹脂ではない金属等で形成されてもよい。詳細は後述するが、スライドロック部材3は第1ケースに取り付けられる。
【0032】
第1ケース1と第2ケース2とが対向し、スライドロック部材3が閉位置にある閉状態のときには、第1ケース1及び第2ケース2とによって収容空間が形成され、この収容空間に収容対象となる刃物の刃体を収容可能である。このとき、刃物の柄は収容空間外に露出する。第1ケース1と第2ケース2とを対向させた状態で、スライドロック部材3を開位置から閉位置にスライド移動させることで、刃物ケース100を閉状態でロックすることができる。
【0033】
なお、第1ケース1と第2ケース2とが対向した状態を対向状態という。対向状態において、スライドロック部材が閉位置にある状態を閉状態という。一方、第1ケース1と第2ケース2とが平面状となるよう展開された、
図1~
図4に示すような状態を開状態という。
【0034】
[第1ケース1]
第1ケース1は、第1面部11a、第1壁部11b、マグネット12、刃体挿通部13、あご支持部14、ガイド部15、ガイド溝161、嵌合溝17、及び嵌合凸部18を含んで構成される。
【0035】
第1面部11aは、第2ケース2の第2面部21aに対向するよう形成された板状の部材である。第1面部11aの4辺のうちの2辺の縁には、第2ケース2の側に向かって垂直方向に壁状に突出した第1壁部11bが形成される。第1壁部11bは、ヒンジ4a~4cが形成された側の長辺の縁、及び刃体挿通部13及びあご支持部14が形成された側とは逆側の短辺の縁に、L字状に形成される。
【0036】
マグネット12は、第1面部11aの、第2面部21aと対向する側に配置された板状の永久磁石である。マグネット12は、第1面部11aの全面に広がる大きさを有する。マグネット12は、第1面部11aに接着剤または両面テープ等で接着されるが、これに限定されるものではない。例えば、第1面部11aの全体が永久磁石で形成されマグネット12を兼ねる構成としてもよいし、インサート成形等によりマグネット12と第1ケース1とを一体に構成してもよい。
【0037】
マグネット12は、強磁性体のステンレス鋼で形成された刃体を吸着する。第1面部11aにマグネット12を設けることで、収容しようとする刃物の刃体を少なくとも一時的に安定した状態で保持することができ、安全に刃物を刃物ケース100に収容することができる。マグネット12は、上記のとおり刃体を少なくとも一時的に保持することを目的とするものであるため、適度な磁力を有するものを採用する。例えば、マグネット12は、マグネット12上に刃体を載置した状態であってもマグネット12上で刃体をある程度移動可能である一方で、第1面部11aが鉛直方向で真下に向いた状態になったとしても刃物が落下しない程度の磁力とする。マグネット12が第1面部11aの全面を覆う大きさとすることで、刃物ケース100が安全に収容可能な刃物の大きさの範囲が広がる。
【0038】
刃体挿通部13は、第1ケース1の短辺の縁において、ヒンジ4a~4cが設けられた側とは逆側に形成される。刃体挿通部13が設けられた短辺と対向する第1ケース1の短辺の縁には、第1壁部11bが形成されている。刃体挿通部13は、第1ケース1の外縁において、第1壁部11b、あご支持部14、及びガイド部15または嵌合溝17といった壁状の要素が構成されない部分であるともいえる。刃体挿通部13には、刃物ケース100に刃物を収容した際に、刃物における刃体と柄との接続部が挿通される。換言すると、刃体挿通部13は、対向状態において刃体挿通部23とともに刃物ケース100に形成された貫通孔を構成し、この貫通孔に刃物の接続部が挿通された状態にすることができる。
【0039】
あご支持部14は、刃体挿通部13のヒンジ4a~4cの側に形成された、第1面部11aの縁から、第2面部21aの側に向かって垂直方向に突出した突条で形成される。対向状態においてあご支持部14と対向する位置には、後述の第2ケース2の突条24が形成される。あご支持部14と刃体挿通部13とは、第1ケース1の短辺に沿って直線状に設けられる。ただし、あご支持部14と、第2ケース2の突条24とは、対向状態及び閉状態で互いに干渉しないよう設けられている。あご支持部14は、突条24より内側に位置しており、刃物のあごが直接当接する。なお、あご支持部14は、第1面部11aの縁ではなく、縁近傍に形成されてもよい。
【0040】
あご支持部14は、閉状態のときに刃物の刃体のあごに近接または当接し、刃物のあごが収容空間から抜け出さないよう規制する機能を有する。
【0041】
ガイド部15は、ヒンジ4a~4cが位置する側とは逆側の第1ケース1の長辺の縁部に、第1ケース1の長手方向に直線状に延びるよう設けられる。ガイド部15は、スライドロック部材3のスライド移動を案内することでユーザが操作しやすくする。また、ガイド部15は、スライドロック部材3が第1ケース1から脱落することを防止する機能を有する。
【0042】
ガイド部15は、第1ケース1から第2ケース2に向かう方向である厚さ方向に、所定の幅を有する。ガイド部15の幅は、第1ケース1及び第2ケース2で形成された収容空間の厚さ方向の長さ、すなわち刃物ケース100の長手方向及び短手方向に対して垂直な方向の長さとほぼ等しい。なお、このときマグネット12の厚さは考慮していない。
【0043】
ガイド部15は、幅方向の両端に、端面から内側に向かって形成された切り欠き15aを複数有する。切り欠き15aは、ガイド部15の幅方向において対向するように3対、ガイド部15が延びる方向において均等に形成される。すなわち、切り欠き15aは、ガイド部15の延伸方向における両端部近傍と、ガイド部15の延伸方向における中央部近傍に設けられる。これらの切り欠き15aは、後述するガイド突部36を有するスライドロック部材3を、第1ケース1に取り付けやすくするために設けられる。つまり、切り欠き15aの位置は、スライドロック部材3のガイド突部36に対向する位置となる。
【0044】
ガイド部15には、スライドロック部材3の底部31と対向する面に設けられた第3スライド規制段差部15bが形成される。第3スライド規制段差部15bは、開位置にあるスライドロック部材3の第1スライド規制段差部34に当接して、スライドロック部材3がそれ以上第1ケース1から離れる方向(開方向)に移動することを規制する。
【0045】
ガイド溝161は、ガイド部15に隣接するよう設けられ第1ケース1の長手方向に溝状に延びるよう形成される。換言すると、ガイド溝161は、第1面部11aに対して垂直方向に突出した壁状の部分によって囲まれ溝状となった部分である。刃物ケース100では、ガイド溝161は第1ケース1の両面に設けられるが、第1ケース1の片面にのみ設けられてもよい。第1ケース1にスライドロック部材3が取り付けられた状態では、ガイド溝161にガイド突部36が挿入される。ガイド突部36は、ガイド溝161が形成された範囲で移動可能になる。換言すると、ガイド突部36及びガイド溝161は、スライドロック部材3の移動範囲を画定する要素のひとつである。
【0046】
図2、
図4、
図7及び
図9に示されるように、ガイド溝161の延伸方向の両端、すなわち長手方向の両端には、移動規制部161a及び161bが形成される。第1ケース1にスライドロック部材3が取り付けられた状態において、移動規制部161a及び161bは、スライドロック部材3の移動を規制し、その移動範囲を画定する。移動規制部161aは、スライドロック部材3が開位置にあるときにガイド突部36に当接し、スライドロック部材3がそれ以上第1ケース1から離れる方向(開方向)に移動することを規制する。移動規制部161bは、スライドロック部材3が閉位置にあるときにガイド突部36に当接し、スライドロック部材3がそれ以上、上記開方向とは逆の閉方向に移動することを規制する。すなわち、移動規制部161a及び161bは、スライドロック部材3が第1ケース1から脱落するよう移動することを防止する。
【0047】
嵌合溝17は、対向状態において、第2ケース2の嵌合突条27に対向する位置に設けらる。嵌合溝17は長手方向に溝状に延びる。対向状態では、嵌合溝17に嵌合突条27が嵌合する。
【0048】
嵌合凸部18は、ヒンジ4a~4cが位置する側とは逆側の第1ケース1の長辺の縁部であって、嵌合溝17の延長線上に設けられる。嵌合凸部18は、刃体挿通部13に隣接する位置に設けられる。嵌合凸部18は、対向状態において、第2ケース2の凹部28に挿入された状態となる。
【0049】
[第2ケース2]
第2ケース2は、第2面部21a、第2壁部21b、刃体挿通部23、突条24、ロック部25a及び25b、第2スライド規制段差部25c、移動規制部25d、25e及び25f、嵌合突条27、並びに凹部28を含んで構成される。
【0050】
第2面部21aは、第1ケース1の第1面部11aに対向するよう形成された板状の部材である。第2面部21aの4辺のうちの2辺の縁には、第1ケース1の側に向かって垂直方向に壁状に突出した第2壁部21bが形成される。第2壁部21bは、ヒンジ4a~4cが形成された側の長辺の縁、及び刃体挿通部23及び突条24が形成された側とは逆側の短辺の縁に、L字状に形成される。
【0051】
刃体挿通部23は、第2ケース2の短辺の縁において、ヒンジ4a~4cが設けられた側とは逆側に形成される。刃体挿通部23が設けられた短辺と対向する第2ケース2の短辺の縁には、第2壁部21bが形成されている。刃体挿通部23は、第2ケース2の外縁において、第2壁部21b、突条24、及び嵌合突条27といった壁状の要素が構成されない部分であるともいえる。刃体挿通部23には、刃物ケース100に刃物を収容した際に、刃物における刃体と柄との接続部が挿通される。
【0052】
突条24は、刃体挿通部23のヒンジ4a~4cの側に形成された、第2面部21aから、第1面部11aの側に向かって垂直方向に突出するよう形成される。対向状態において突条24と対向する位置には、第1ケース1のあご支持部14が形成される。突条24は、あご支持部14よりも外側に位置しており、刃物のあごには直接当接しない。なお、突条24があごに当接してあごを支持する構成としてもよいが、本実施形態のようにマグネット12等の構成を有する第1ケース1があごを支持する機能を有する構成とするのが好ましい。
【0053】
嵌合突条27は、対向状態において、第1ケース1の嵌合溝17に対向する位置に設けられる。嵌合突条27は長手方向に延びる突条であり、第2面部21aから第1面部11aに向かって垂直方向に突出する。対向状態では、嵌合突条27は嵌合溝17に嵌合する。
【0054】
凹部28は、ヒンジ4a~4cが位置する側とは逆側の第2ケース2の長辺の縁部であって、嵌合突条27の延長線上に設けられる。凹部28は、刃体挿通部23に隣接する位置に設けられる。凹部28は、対向状態において、第1ケース1の嵌合凸部18に挿入された状態となる。
【0055】
ロック部25a及び25bは、ヒンジ4a~4cが位置する側とは逆側の第2ケース2の長辺の縁部であって、嵌合突条27の延長線上に設けられる。ロック部25aは、凹部28に隣接する位置に設けられる。ロック部25bは、凹部28とは逆側に設けられる。すなわち、ロック部25a及び25bは、閉状態のときにスライドロック部材3の長手方向の両端となる位置に設けられる。ロック部25a及び25bは、閉状態ではスライドロック部材3によって、第1ケース1のガイド部15とともに覆われた状態となる。これによって、第1ケース1から第2ケース2が解放されないようロックされた状態となる。
【0056】
第2スライド規制段差部25cは、ロック部25aの端面から突出するよう形成された突部である。第2スライド規制段差部25cは、閉状態ではスライドロック部材3の、第1ケース1の端面に対向する面である底部31に対向する位置に設けられる。閉状態では、第2スライド規制段差部25cには、スライドロック部材3の第1スライド規制段差部34が隣接する。第2スライド規制段差部25cは、スライドロック部材3が閉位置から開位置、または開位置から閉位置に移動する際に、第1スライド規制段差部34に接触する。このときスライドロック部材3は、第1スライド規制段差部34が第2スライド規制段差部25cを乗り越えるようにしてスライド移動するが、第2スライド規制段差部25cを乗り越えるために一定以上の力をユーザが与える必要がある。すなわち、第2スライド規制段差部25cは、スライドロック部材3が閉位置から開位置、及び開位置から閉位置にスライドすることを規制する機能を有する。
【0057】
図6~
図9に示されるように、第2ケース2は、移動規制部25d、25e、及び25fを有する。移動規制部25dは、第2面部21aにおいて、第1面部11aと対向する側とは反対側に溝状に形成された部分である。移動規制部25e及び25fは、互いに対向する位置に設けられ、第2ケース2の角に設けられた角部25gの端面に位置する。これらの移動規制部25d、25e、及び25fは、閉位置にあるスライドロック部材3に当接して、スライドロック部材3のスライド移動を規制する。
【0058】
[スライドロック部材3]
スライドロック部材3は、
図5の斜視図に示されるように、断面がU字状で棒状に延びた形状である。説明の便宜上、スライドロック部材3の断面U字の底になる部分を底部31、底部31の両端から第1面部11aに対して平行に延びた部分を壁部32と呼ぶ。スライドロック部材3は、前述のように第1ケース1に取り付けられる。具体的には、スライドロック部材3は、第1ケース1のガイド部15を覆うようにして取り付けられ、底部31と、6つのガイド突部36によってガイド部15が挟持された状態となる。
【0059】
スライドロック部材3は、第1ケース1のガイド部15に沿ってスライド移動可能となり、第1ケース1の移動規制部161a及び161b、第1ケース1の第3スライド規制段差部15b、第2ケース2の移動規制部25d、25e、及び25f(
図6~
図9参照)、並びに第2ケースの第2スライド規制段差部25cによってその移動が規制される。第2スライド規制段差部25cは、スライドロック部材3のスライド移動に一定以上の力が加わったときに第1スライド規制段差部34が乗り越える部分であって、スライドロック部材3の移動を禁止するよう作用するものではない。一方、第2スライド規制段差部25c以外の、移動規制部161a及び161b、第3スライド規制段差部15b、並びに第2ケース2の移動規制部25d、25e、及び25fは、スライドロック部材3の移動を禁止するよう作用する。
【0060】
スライドロック部材3は、開位置にあるときは、移動規制部161a及び第3スライド規制段差部15bによって開方向への移動が規制される。スライドロック部材3が開位置にあるとき、移動規制部161aがガイド突部36に当接し、第3スライド規制段差部15bが第1スライド規制段差部34に当接する。
【0061】
スライドロック部材3は、閉位置にあるときは、移動規制部161b、25d、25e、及び25fによって閉方向への移動が規制される。スライドロック部材3が閉位置にあるとき、移動規制部161bがガイド突部36に、移動規制部25dが移動規制部37に、移動規制部25e及び25fが端面39に当接する。なお、このときの移動規制部25e及び25fは、端面39の互いに異なる側に当接する(
図6及び
図8参照)。
【0062】
なお、スライドロック部材3の移動を規制する要素は上記のすべてが必須ではなく、スライドロック部材3の移動を規制する目的を達成可能な一部の要素のみを備える構成としてもよい。また、本実施形態の上記要素とは別の要素によって、スライドロック部材3の移動を規制する目的を達成してもよい。
【0063】
スライドロック部材3は、その表面に表面凹凸33が形成される。表面凹凸33は、例えば、スライドロック部材3の全体にわたって、スライドロック部材3の長手方向に垂直な方向に延びるよう設けられる。表面凹凸33は、スライドロック部材3をユーザがスライド移動させる際の滑り止めとして作用する。なお、表面凹凸33は、必ずしも本実施形態のような形状に限定されるものではなく、スライドロック部材3をユーザの指の滑り止めとして作用する他の形状であってもよい。
【0064】
スライドロック部材3の長手方向の両端には、端面38及び39が設けられる。端面39は、上記のように、スライドロック部材3が閉位置にあるときに、第2ケース2の移動規制部25eに当接する。端面38は、中央が解放された形状になっており、スライドロック部材3の移動を規制するようには作用しない。ただし、端面38が開放されておらず、端面38がスライドロック部材3の移動を規制する機能を有する構成としてもよい。
【0065】
スライドロック部材3の底部31には、3つの貫通孔35が形成される。これらの貫通孔35の近傍の壁部32には、互いに対向するよう設けられた3対のガイド突部36が形成される。前述のように、底部31とガイド突部36との間には、ガイド部15が挟持される。
【0066】
[ヒンジ4a~4c]
ヒンジ4a~4cは、第1ケース1と第2ケース2とを連結する。ヒンジ4a~4cは、第1ケース1及び第2ケース2の長手方向に3つに分割されて形成されている。すなわち、ヒンジ4a~4cのそれぞれは、所定の間隔をもって配置されている。
【0067】
[刃物の収容]
次に、本実施形態の刃物ケース100に刃物5を収容するときの各要素の状態について、
図10~
図13を参照しながら説明する。
【0068】
図10は、刃物5を収容するための、開状態の刃物ケース100の平面図である。図示されるように、第1ケース1と第2ケース2とが平面状になるよう展開され、スライドロック部材3が開位置にある。
【0069】
次いで、上記の状態から、刃物5を収容しようとするユーザは、第1ケース1のマグネット12の上に刃物5の刃体51を載置する。このとき、刃体51における柄52との接続部51aは、第1ケース1の刃体挿通部13の上に位置する。
図11は、マグネット12の上に刃体51を載置した状態の刃物ケース100の平面図である。
【0070】
次いで、ユーザは第2ケース2を閉じて、第1ケース1と第2ケース2とを対向させた対向状態にする。
図12は、第1ケース1と第2ケース2とが対向した対向状態の刃物ケース100の平面図である。これによって、第1ケース1と第2ケース2とで形成された収容空間に刃体51が収容され、この収容空間から柄52が露出した状態となる。接続部51aは、第1ケース1の刃体挿通部13と第2ケース2の刃体挿通部23とにより形成された収容空間の貫通孔の部分に位置する。この状態では、スライドロック部材3は開位置にある。
【0071】
次いで、ユーザはスライドロック部材3を開位置から閉位置に移動させて、刃物ケース100を閉状態にする。
図13は、刃物5を収容して閉状態となった刃物ケース100の平面図である。この状態では、刃物ケース100がスライドロック部材3によって閉状態でロックされており、刃物5が安全な状態で保管される。
【0072】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0073】
[変形例]
刃物ケース100は、例えば以下のような構成としてもよい。
【0074】
刃物ケース100のスライドロック部材3は、貫通孔35を有する構成としているが、この貫通孔35から、ユーザが開閉識別マークを視認できる構成としてもよい。この場合、貫通孔35の奥側に位置するガイド部15には、開閉識別マークとして、色、文字、もしくは模様、またはこれらの組み合わせが形成される。開閉識別マークは、刃物ケース100が開状態のときと閉状態のときとで、視認されるマークの態様が変化するものとする。
【0075】
このような構成にすると、刃物ケース100を端面側から見た場合であっても、刃物ケース100が開状態または閉状態であるかを簡単に目視で判断することができる。これにより、さらに安全性を高めた構成とすることができる。
【0076】
刃物ケース100のマグネット12は、第1面部11aの全面に広がるよう設けられた板状のマグネットであるが、刃物5の刃体51が簡単に脱落しないよう保持可能な磁力を有する構成とすれば、複数のマグネットを配置するような他の構成を採用してもよい。
【0077】
[刃物ケースの特徴]
このように、本実施形態の刃物ケース100は、スライドロック部材3を開位置から閉位置にスライド移動させるだけで、スライドロック部材3の長手方向の両端を含む複数の位置において同時に、閉状態でロックすることができる。すなわち、スライドロック部材3をスライドさせるだけで、刃物5を収容した状態を安全に維持することが可能となる。この閉状態では、仮に刃物ケース100を不意に落下してしまった場合であっても簡単に開いてしまうことを防止できるため、従来の刃物ケースと比較して安全な構成となっている。
【0078】
また、刃物ケース100では、ほとんどの構成要素を第1ケース1側に集中した構成としているため、製造時に組み立てやすい構成となっている。
【0079】
また、刃体51のみを刃物ケース100の収容空間に収容し、柄52は収容空間から露出する構成であるため、刃物5の全体を収容する構成と比較すると、コンパクトな構成となる。これにより、アウトドア等にも持ち出しやすい可搬性に優れた構成となっている。
【0080】
また、あご支持部14を有する構成とすることで、刃物5のあご51bがケースから抜け出ることを抑止可能である。そのため、刃物ケース100が開かない限り刃体51がケースから露出するようなことがなくなり、より安全な構成となっている。
【0081】
また、刃体挿通部13及び23がヒンジ4a~4c側とは逆側に設けられているため、収容時には刃体51がヒンジ側の状態となる。そのため、刃物ケース100を開いたときに刃先51cがユーザの手指に触れづらくなり、より安全な構成となっている。
【0082】
また、刃物ケース100では、スライドロック部材3が閉位置から開位置にスライドすることを規制する第1スライド規制段差部34を、スライドロック部材3が有する構成としている。また、第1ケース1は、第1スライド規制段差部34とともにスライドロック部材3のスライドを規制する第3スライド規制段差部15bを有する。また、第2ケース2は、第1スライド規制段差部34とともにスライドロック部材3のスライドを規制する第2スライド規制段差部25cを有する。
【0083】
このような構成の刃物ケースでは、スライドロック部材3が閉位置から開位置にスライドすることを規制する構成とすることで、閉状態を維持しやすくなるため、さらに安全な構成にできる。なお、上記の第1スライド規制段差部34、第2スライド規制段差部25c、及び第3スライド規制段差部15bは、スライドロック部材3のスライドを規制するスライド規制機構の一例に過ぎず、他の構成によってスライドロック部材3のスライドを規制する構成としてもよい。
【0084】
また、刃物ケース100では、収容する刃物5の刃先51cがヒンジ4a~4c側を向く構成となっている。そのため、刃物5を収容するまたは取り出す際に、刃先51cがヒンジ4a~4cに接触してしまうことがあり、このとき、ヒンジ4a~4cの一部が破損してしまう場合がある。しかしながら、本実施形態の刃物ケース100は、ヒンジ4a~4cが長手方向に3つに分離されているため、そのうちの1つが破損した場合であっても2つのヒンジが有効に残るため、ヒンジ全体が直ぐに破損してしまうことを防止できる。これにより、耐久性を有し、かつ安全な刃物ケースを構成できる。なお、ヒンジの数は3つに限定されるものではなく、3つ以上とすることで上記目的を達成できる。
【0085】
また、本実施形態の刃物ケース100は、可搬性に優れた構成であるため、アウトドアでの利用にも適している。アウトドアで刃物を使用する場合、屋内のキッチンほど種々の環境が整っていないケースが多く、濡れた手で種々の作業を行う必要が生じるケースがある。刃物ケース100は、このような状況にも適した構成となるよう、スライドロック部材3の表面に滑り止めとして作用する表面凹凸33を設けた構成としている。これにより、アウトドアで利用する場合であっても、安全性に配慮した構成となっている。もちろん、屋内のキッチンで利用する場合にも滑り落ちることを防止しやすい構成となっているため、より安全な構成となっている。
【符号の説明】
【0086】
100…刃物ケース、 1…第1ケース、 11a…第1面部、 11b…第1壁部、 12…マグネット、 13…刃体挿通部、 14…あご支持部、 15…ガイド部、 15a…切り欠き、 15b…第3スライド規制段差部、 161…ガイド溝、 161a、161b…移動規制部、 17…嵌合溝、 18…嵌合凸部、 2…第2ケース、 21a…第2面部、 21b…第2壁部、 23…刃体挿通部、 24…突条、 25a、25b…ロック部、 25c…第2スライド規制段差部、 25d、25e、25f…移動規制部、 27…嵌合突条、 28…凹部、 3…スライドロック部材、 31…底部、 32…壁部、 33…表面凹凸、 34…第1スライド規制段差部、 35…貫通孔、 36…ガイド突部、 37…移動規制部、 4a~4c…ヒンジ、 5…刃物、 51…刃体、 51a…接続部、 51b…あご、 51c…刃先、 52…柄
【要約】
【課題】刃物を安全に保管可能な刃物ケースを提供する。
【解決手段】刃物ケースは、刃体と柄とを有する刃物を、互いにヒンジにより連結された第1ケースと第2ケースとが対向する閉状態のときに形成される収容空間に刃体を収容し、柄を収容空間から露出させ、スライドロック部材によって閉状態でロック可能に形成される。第1ケースは、第1面部と、第1壁部と、マグネットと、刃体挿通部と、あご支持部と、ガイド部と、スライドロック部材と、を有する。第2ケースは、第2面部と、ロック部と、突条と、を有する。スライドロック部材を前記開位置から前記閉位置に移動させることで、前記スライドロック部材によって前記ガイド部と前記ロック部とが覆われ、前記第1ケースから前記第2ケースが解放されないよう前記スライドロック部材の長手方向の両端を含む複数の位置で同時にロックされる構成とする。
【選択図】
図1