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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】試験装置及び、試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/38 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
G01N33/38
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018092005
(22)【出願日】2018-05-11
(65)【公開番号】P2019197014
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】500370702
【氏名又は名称】株式会社マルイ
(74)【代理人】
【識別番号】100171619
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 顕雄
(74)【代理人】
【識別番号】110002550
【氏名又は名称】AT特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石田 知子
(72)【発明者】
【氏名】中越 一成
(72)【発明者】
【氏名】三上 和也
(72)【発明者】
【氏名】長見 直樹
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-299205(JP,A)
【文献】特開2010-090689(JP,A)
【文献】特開2005-060165(JP,A)
【文献】特開昭52-082806(JP,A)
【文献】米国特許第09341558(US,B1)
【文献】特開2013-238415(JP,A)
【文献】登録実用新案第3205243(JP,U)
【文献】特開平08-178828(JP,A)
【文献】特開2009-025156(JP,A)
【文献】特開2003-307464(JP,A)
【文献】特開平05-099834(JP,A)
【文献】実開昭57-146049(JP,U)
【文献】小野修司,モルタル充填式継手で接合したプレキャスト部材接合部の水密性について,コンクリート工学年次論文集,2001年,23巻、3号,565頁~570頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体の透水性を評価する試験装置であって、
所定圧の水を圧送する圧送手段と、
前記供試体内に埋設されると共に、前記圧送手段から圧送される水を前記供試体の内部から透水させる透水手段と、
前記供試体内を透過した水を計量手段に集水する集水手段と、を備え、
前記供試体は、コンクリート又はモルタルを先行打設した一次層と、後行打設した二次層とを有する供試体であり、
前記透水手段は、前記一次層と前記二次層との打継目に位置して埋設されて該打継目に水を透水させ、
前記集水手段は、前記打継目を透過して漏出する水を集水し、
前記透水手段は、前記圧送手段から圧送される水を浸透可能な多孔質体で形成された透水部材と、該透水部材を挟み込んで対向する一対のプレート部材とを有すると共に、該プレート部材の平面を前記打継目に並行させて前記供試体内に埋設される
ことを特徴とする試験装置。
【請求項2】
一端を前記圧送手段に接続されると共に、他端を前記一対のプレート部材の何れか一方に固定されて、その内部流路を前記透水部材に連通させた水供給配管をさらに備える
請求項に記載の試験装置。
【請求項3】
一端を前記一対のプレート部材の何れか一方に固定されて、その内部流路を前記透水部材に連通させると共に、他端を大気に開放された空気排出配管と、
前記空気排出配管の内部流路を開閉可能なバルブと、をさらに備える
請求項又はに記載の試験装置。
【請求項4】
前記集水手段は、前記打継目から漏出する水を集水する漏斗を含み、前記計量手段は、前記漏斗から滴下される水を貯留する計量容器である
請求項1からの何れか一項に記載の試験装置。
【請求項5】
供試体の透水性を評価する試験方法であって、
所定圧の水を前記供試体内に埋設された透水手段に圧送する圧送工程と、
圧送される水を前記透水手段から前記供試体の内部透水させる透水工程と、
前記供試体内を透過した水を計量する計量工程と、を含み、
前記供試体は、コンクリート又はモルタルを先行打設した一次層と、後行打設した二次層とを有する供試体であり、
前記透水手段は、前記一次層と前記二次層との打継目に位置して埋設されており、圧送される水を浸透可能な多孔質体で形成された透水部材と、該透水部材を挟み込んで対向する一対のプレート部材とを有すると共に、該プレート部材の平面を前記打継目に並行させて前記供試体内に埋設され、
前記圧送工程では、前記透水手段に前記所定圧の水を圧送し、前記透水工程では、前記透水手段に圧送される水を前記打継目に透水させ、前記計量工程では、前記打継目を透過して漏出する水を計量する
ことを特徴とする試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験装置及び、試験方法に関し、特に、供試体の透水性を評価する試験装置及び、試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、コンクリート構造物においては、先行打設したコンクリートと後行打設したコンクリートとの境界部位に打継目が生じる。特に、水上等に設置されるコンクリート製浮体構造物においては水密性が要求されるため、このような打継目の透水性が問題となる。このため、施工に際しては、施工条件を考慮したコンクリート供試体を準備し、該供試体の透水性を予め試験装置等により評価することが望まれる。
【0003】
例えば、特許文献1には、容器内に収容したコンクリート供試体の外側から水圧を加えると共に、該供試体内を透過した水の量を計測することにより透水係数を求める試験装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08-178828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1記載の技術では、コンクリート供試体の外側から水圧を加えるため、供試体を容器内に密閉状態で収容する必要がある。このため、施工条件等を考慮した大型のコンクリート供試体には対応できない課題がある。
【0006】
また、打継目の透水性を正確に評価するには、コンクリート供試体の内部、すなわち、打継目部分に水圧を直接的に作用させることが望ましい。上記特許文献1記載の技術では、コンクリート供試体の外側から水圧を加えているため、供試体全体の透水性は評価できるが、打継目の透水性は正確に評価できない課題がある。
【0007】
本開示の技術は、上記課題に鑑みてなされたものであり、供試体の内部に水圧を直接的に作用させることにより、供試体の透水性を効果的に評価することができる試験装置及び試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の装置は、供試体の透水性を評価する試験装置であって、所定圧の水を圧送する圧送手段と、前記供試体内に埋設されると共に、前記圧送手段から圧送される水を前記供試体の内部から透水させる透水手段と、前記供試体内を透過した水を計量手段に集水する集水手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記供試体は、先行打設した一次コンクリート層と、後行打設した二次コンクリート層とを有するコンクリート供試体であり、前記透水手段は、前記一次コンクリート層と前記二次コンクリート層との打継目に位置して埋設されて該打継目に水を透水させ、前記集水手段は、前記打継目を透過して漏出する水を集水することが好ましい。
【0010】
また、前記透水手段は、前記圧送手段から圧送される水を浸透可能な多孔質体で形成された透水部材と、該透水部材を挟み込んで対向する一対のプレート部材とを有すると共に、該プレート部材の平面を前記打継目に並行させて前記コンクリート供試体内に埋設されることが好ましい。
【0011】
また、一端を前記圧送手段に接続されると共に、他端を前記一対のプレート部材の何れか一方に固定されて、その内部流路を前記透水部材に連通させた水供給配管をさらに備えることが好ましい。
【0012】
また、一端を前記一対のプレート部材の何れか一方に固定されて、その内部流路を前記透水部材に連通させると共に、他端を大気に開放された空気排出配管と、前記空気排出配管の内部流路を開閉可能なバルブと、をさらに備えることが好ましい。
【0013】
また、前記集水手段は、前記打継目から漏出する水を集水する漏斗を含み、前記計量手段は、前記漏斗から滴下される水を貯留する計量容器であることが好ましい。
【0014】
本開示の方法は、供試体の透水性を評価する試験方法であって、所定圧の水を前記供試体内に圧送する圧送工程と、圧送される水を前記供試体の内部から透水させる透水工程と、前記供試体内を透過した水を計量する計量工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
また、前記供試体は、先行打設した一次コンクリート層と、後行打設した二次コンクリート層とを有するコンクリート供試体であり、前記圧送工程では、前記一次コンクリート層と前記二次コンクリート層との打継目に前記所定圧の水を圧送し、前記透水工程では、圧送される水を前記打継目に透水させ、前記計量工程では、前記打継目を透過して漏出する水を計量することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本開示の技術によれば、供試体の内部に水圧を直接的に作用させることにより、供試体の透水性を効果的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)は、本実施形態に係る試験装置及び、供試体を示す模式的な斜視図であり、(B)は、本実施形態に係る試験装置を示す模式的な側面図である。
図2】(A)は、本実施形態に係る透水機構を示す模式的な斜視図であり、(B)は、本実施形態に係る透水機構の模式的な縦断面図である。
図3】本実施形態に係る透水機構が供試体内に埋設された状態を示す模式的な縦断面図である。
図4】本実施形態に係る供試体の作製手順を説明する模式図である。
図5】本実施形態に係る試験装置を用いた供試体の透水性の評価手順を説明する模式的な縦断面図である。
図6】本実施形態に係る試験装置を用いた供試体の透水性の評価手順を説明する模式的な横断面図である。
図7】他の実施形態に係る試験装置の模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に基づいて、本実施形態に係る試験装置及び、試験方法について説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0019】
[全体構成]
図1(A)は、本実施形態に係る試験装置10及び、供試体100を示す模式的な斜視図であり、図1(B)は、本実施形態に係る試験装置10を示す模式的な側面図である。同図に示すように、試験装置10は、供試体100を収容する収容部20と、収容部20を載せる載置台30と、載置台30を支持する支持フレーム部40と、脚部50と、一対の集水機構60A,60B(集水手段)と、給排機構70とを備えている。
【0020】
なお、以下の説明では、試験装置10の給排機構70が配置されている側を前側、給排機構70とは反対側を後側とする。また、作業者が試験装置10を前側(給排機構70側)から正面視したときの左方を左側、右方を右側とする。
【0021】
供試体100は、先行打設した一次コンクリート層110と、後行打設した二次コンクリート層120とを有する二層構造の略直方体状に形成されている。供試体100は、前後方向の長さL1を約400mm、左右方向の長さL2を約500mm、上下方向の長さL3を約300mmで形成されている。供試体100は、一次コンクリート層110と二次コンクリート層120との打継目130が略鉛直方向となるように試験装置10に設置される。供試体100の詳細な作製手順については後述する。
【0022】
収容部20は、上下前後の計4枚の金属プレート等で構成されている。具体的には、収容部20は、供試体100の上面を覆う上側プレート部材21と、供試体100の下面を覆う下側プレート部材22と、供試体100の前面を覆う前側プレート部材23と、供試体100の後面を覆う後側プレート部材24とを備えている。
【0023】
上側プレート部材21及び下側プレート部材22は、供試体100の上下面の形状と略同形状の方形状に形成されている。これら上側プレート部材21及び下側プレート部材22は、供試体100内に埋設された不図示のアンカーボルトに不図示のナットを締結することにより固定されている。なお、上側プレート部材21及び下側プレート部材22の固定方法は、アンカーボルトに限定されず、ブラケット等を介して前側プレート部材23及び後側プレート部材24に固定してもよい。
【0024】
前側プレート部材23及び後側プレート部材24は、供試体100の前後面の形状と略同形状の方形状に形成されている。これら前側プレート部材23及び後側プレート部材24は、供試体100内に埋設された4本のアンカーボルト150にナット160を締結することにより固定されている。前側プレート部材23には、後述する給排機構70の配管73,75をそれぞれ挿通させる上下一対の貫通孔23A,23Bが設けられている。
【0025】
載置台30は、例えば金属プレート等で略矩形枠体状に形成されており、前板部31と、後板部32と、左板部33と、右板部34とを備えている。左板部33及び右板部34の長手方向の長さは、好ましくは、供試体100の前後方向の長さL1と略同等の長さで形成されている。前板部31及び後板部32の長手方向の長さは、好ましくは、供試体100の左右方向の長さL2よりも短く形成されている。左板部33及び右板部34には、後述する集水機構60A,60Bの各漏斗62A,62Bをそれぞれ保持する左右一対の固定部材35,36(右側の固定部材36は図1(B)参照)が取り付けられている。
【0026】
支持フレーム部40は、左右一対の上側フレーム部材41,42と、前後一対の下側フレーム部材43,44と、補強用フレーム部材45とを備えている。
【0027】
上側フレーム部材41,42は、載置台30の下方を前後方向に並行に延びる長板状の金属プレートであって、載置台30にブラケット46を介して固定されている。上側フレーム部材41,42の長手方向の長さは、好ましくは、供試体100の前後方向の長さL1よりも長く形成されている。
【0028】
下側フレーム部材43,44は、下方に開口する断面略U字状の鋼材であって、上側フレーム部材41,42の下方を左右方向に延設されている。下側フレーム部材43,44は、箱状部材47を介して上側フレーム部材41,42の長手方向端部に固定されている。下側フレーム部材43,44の長手方向の長さL4は、好ましくは、供試体100の左右方向の長さL2よりも長い約600mmで形成されている。また、下側フレーム部材43,44の短手方向の長さL5は、好ましくは、約100mmで形成されている。さらに、各下側フレーム部材43,44の離間幅Wは、供試体100の前後方向の長さL1よりも長い約480mmで設定されている。
【0029】
補強用フレーム部材45は、載置台30の下方を前後方向に延設されており、その長手方向の両端部を下側フレーム部材43,44に固定されている。下側フレーム部材43,44の長手方向の両端部からは、4本の脚部50がそれぞれ垂下されている。
【0030】
集水機構60A,60Bは、供試体100の打継目130から外部に漏出する水を集水するもので、一対の樋部材61A,61Bと、一対の漏斗62A,62Bと、一対の計量容器63A,63B(計量手段)とを備えている。
【0031】
樋部材61A,61Bは、横断面略U字状に湾曲する長板材で形成されている。樋部材61A,61Bは、その長手方向が上下方向、且つ、その開口側が打継目130と対向するように、供試体100の左右側面にベルト部材64等を介して保持されている。樋部材61A,61Bの長手方向の長さは、好ましくは、その上下両端が供試体100の上下面よりも突出するように、供試体100の上下方向の長さL3よりも長く形成されている。打継目130から水が勢いよく漏出した際には、当該水が樋部材61A,61Bの内周面によって確実に受け止められるようになっている。
【0032】
漏斗62A,62Bは、上端側から下端側に向かうに従い縮径する略逆円錐状に形成されている。漏斗62A,62Bは、好ましくは、その中心軸線X(図1(B)参照)が打継目130(図1(A)参照)の左右端部と略一致するように固定部材35,36に保持されている。漏斗62A,62Bの下方には、メスシリンダ等の計量容器63A,63Bが配置されている。すなわち、打継目130の左右端部から漏出する水が、漏斗62A,62Bを介して下方の計量容器63A,63B内に滴下されるようになっている。
【0033】
給排機構70は、水を圧送する水圧ポンプ71(圧送手段)と、水圧を計測する圧力計72と、少なくとも水を流通させる水供給配管73と、供試体100の打継目130に水を浸透(透水)させる透水機構74(透水手段)と、少なくとも空気を流通させる空気排出配管75と、空気排出配管75の流路を開閉可能なエア抜きバルブ76とを備えている。
【0034】
水圧ポンプ71は、例えば、0.2~5.0MPaの水圧を吐出可能な電動式又は手動式の水圧ポンプである。水圧ポンプ71の吐出口は、不図示の配管継手等を介して水供給配管73の上流端に接続されている。水圧ポンプ71と隣接する水供給配管73には、圧力計72が設けられている。
【0035】
水供給配管73及び、空気排出配管75は、例えば、内径12.7mm:外径17.3mmの鉄パイプ等で形成されている。水供給配管73の下流側及び、空気排出配管75の上流側は、供試体100内に埋設されている。また、水供給配管73の下流端及び、空気排出配管75の上流端には、透水機構74が接続されている。さらに、空気排出配管75の下流端には、エア抜きバルブ76が設けられている。エア抜きバルブ76を開状態で水圧ポンプ71を駆動させると、透水機構74の内部空気が空気排出配管75を介して外気に放出されるようになっている。
【0036】
[透水機構]
次に、図2,3に基づいて、本実施形態に係る透水機構74の詳細について説明する。図2(A)は、透水機構74を示す模式的な斜視図であり、図2(B)は、透水機構74の模式的な縦断面図である。同図に示すように、透水機構74は、第1プレート部材74Aと、透水部材74Bと、第2プレート部材74Cとを順に積層して構成されている。
【0037】
第1プレート部材74A及び、第2プレート部材74Cは、平板状の金属プレート等で略矩形状に形成されている。第1プレート部材74A及び、第2プレート部材74Cは、好ましくは、長幅W1を約240mm、短幅W2を約100mmで形成されている。第2プレート部材74Cの略中心部には、水供給配管73の下流端を嵌入固定する第1貫通孔74Dが設けられている。また、第2プレート部材74Cの一端部には、空気排出配管75の上流端を嵌入固定する第2貫通孔74Eが設けられている。これら各配管73,74は、好ましくは溶接等により第2プレート部材74Cに固設されている。
【0038】
透水部材74Bは、水を浸透可能なモノリス多孔質体等(例えば、スリーエムジャパン株式会社製、商品名「スコッチブライト」等を好ましくは二枚重ね)で略矩形状に形成されている。透水部材74Bは、好ましくは接着剤等により第1プレート部材74A及び、第2プレート部材74Cにそれぞれ接合されており、各配管73,74の内部流路と連通する。透水部材74Bの寸法は、特に限定されないが、長幅W3を約230mm、短幅W2を約100mmで形成されている。
【0039】
以上のように構成された透水機構74は、図3に示すように、透水部材74Bが一次コンクリート層110と二次コンクリート層120との打継目130に略一致するように供試体100内に埋設される。すなわち、エア抜きバルブ76を閉弁した状態で、水圧ポンプ71により水圧を加えると、水供給配管73から透水部材74B内に浸透した水が、第1及び第2プレート部材74A,74Cの対向面に沿って案内されながら、打継目130に向けて確実に導かれるように構成されている。このように、透水部材74B内に浸透した水を第1及び第2プレート部材74A,74Cに沿って流通させることにより、水が打継目130以外の他の部位(例えば、各配管73,75と二次コンクリート層120との間等)に透水することを効果的に防止することが可能になる。供試体100の透水性試験の詳細な手順については後述する。
【0040】
[供試体の作製手順]
次に、図4に基づいて、本実施形態に係る供試体100の作製手順について説明する。
【0041】
まず、図4(A)に示すように、コンクリートを不図示の型枠内に約200mmの高さまで流し込み、一次コンクリート層110を打設する。この際、後述する前側及び後側プレート部材23,24を取り付けるための4本のアンカーボルト150、さらには、上側及び下側プレート部材21,22を取り付けるための2本のアンカーボルト170も一次コンクリート層110内に埋設する。
【0042】
次いで、図4(B)に示すように、一次コンクリート層110が固化するよりも前に、一次コンクリート層110の略中心位置に、透水機構74の第1プレート部材74A及び、透水部材74Bの一部を埋め込むように配置する。
【0043】
次いで、一次コンクリート層110が少なくとも透水機構74を自立させられる程度に固化したならば、図4(C)に示すように、コンクリートを一次コンクリート層110の上面から約200mmの高さまで流し込むことにより、二次コンクリート層120を打設する。この際、上側及び下側プレート部材21,22を取り付けるための2本のアンカーボルト170も二次コンクリート層120内に埋設する。
【0044】
最後に、図4(D)に示すように、二次コンクリート層120が固化したならば、不図示の型枠から供試体100を取り出し、アンカーボルト150にナット160を締結して前側及び後側プレート部材23,24を取り付け、アンカーボルト170にナット180を締結して上側及び下側プレート部材21,22を取り付けて、供試体100の作製を終了する。
【0045】
[評価手順]
次に、図5,6に基づいて、本実施形態に係る試験装置10を用いた供試体100の評価手順について説明する。本実施形態では、打継目130の止水性の指標の一つである透水係数kを求めるものとする。
【0046】
[1:エア抜き・圧送工程]
まず、図5(A)に示すように、エア抜きバルブ76を開弁した状態で、水圧ポンプ71から水供給配管73を介して透水部材74Bに水を圧送する。透水部材74Bに水が供給されると、これに伴い、水よりも比重の軽い内部空気は上方の空気排出配管75を介して大気に放出される。このように、水圧ポンプ71により水圧を加えて内部空気を押し出すことで、透水部材74Bから内部空気を早期に排出することができる。
【0047】
透水部材74Bの内部空気が完全に抜け切り、エア抜きバルブ76から水が漏出し始めたならば、エア抜きバルブ76を閉弁状態に切り替えることによりエア抜き工程を終了する。なお、図中において、黒塗り矢印は水の流れを示し、白抜き矢印は内部空気の流れを示している。
【0048】
[2:圧送・透水工程]
次に、図5(B)に示すように、エア抜きバルブ76を閉弁した状態で、水圧ポンプ71により、所望の水圧の水を水供給配管73から透水部材74Bに供給する。水圧の設定は、例えば、水深20m相当の施工条件を評価するのであれば約0.2MPa、水深500m相当の施工条件を評価するのであれば約5.0MPaに設定すればよい。水圧ポンプ71の吐出圧の調節作業は、圧力計72の計測値を確認しながら行えばよい。
【0049】
透水部材74Bに加圧状態で供給される水は、透水部材74B内を第1及び第2プレート部材74A,74Cの対向面に沿って浸透しながら打継目130に到達し、打継目130内に次第に透水し始める。本実施形態では、透水部材74Bが打継目130と略並行な一対のプレート部材74A,74Cによって挟み込まれているので、透水部材74B内を浸透する水は、打継目130以外の他の部位に浸透することなく、打継目130に向けて確実に案内されるようになる。
【0050】
[3:計量工程]
次に、図6に示すように、所定時間Tが経過して打継目130から外部に水が漏出し、該漏出水が漏斗62A,62Bを介して計量容器63A,63Bに集水されたならば、該計量容器63A,63B内の水量Qを計量する。計量は、計量容器63A,63Bが例えばメスシリンダであれば、該メスシリンダの目盛を読み取ればよい。
【0051】
水量Qを計量したならば、水量Q及び経過時間Tに基づいて単位時間当たりに打継目130の単位面積を通り抜けた水量を計算すると共に、該計算値と圧力計72の水圧値P(又は、水圧ポンプ71が自動制御式であれば設定圧値)との関係から透水係数kを計算する。透水係数kは、例えば、ダルシーの法則等の公式に基づいて算出すればよい。
【0052】
以上詳述した本実施形態によれば、水圧ポンプ71により圧送される水を供試体100の内部に埋設された透水機構74に供給して打継目130に浸透させ、該打継目130から漏出する水を漏斗62A,62Bにより滴下して計量容器63A,63Bに集水するように構成されている。これにより、打継目130からの漏水量を正確に把握することが可能となり、打継目130の透水性を高精度に評価することができる。
【0053】
また、水圧ポンプ71により圧送される水を供試体100の内部に埋設した透水機構74から浸透させるため、従前装置のような供試体を完全に密閉する収容器等が不要となり、施工条件等を考慮した大型の供試体100にも適宜に対応することが可能になる。
【0054】
なお、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態において、透水機構74は、透水部材74Bが打継目130と略一致するように供試体100内に埋設されるものとして説明したが、図7に示すように、第1プレート部材74Aが一次コンクリート層110と二次コンクリート層120との打継目130に着座するように埋設されてもよい。この場合は、図4(B)に示す工程において、一次コンクリート層110が固化した際に、第1プレート部材74Aを一次コンクリート層110の上面に着座させればよい。
【0056】
また、空気排出配管75は、その上流端を第2プレート部材74Cに固定されるものとして説明したが、第1プレート部材74Aに固定されてもよい。この場合は、空気排出配管75の上流側を一次コンクリート層110内に埋設すればよい。
【0057】
また、供試体100は、試験装置10に打継目130が略鉛直方向となるように設置されるものとして説明したが、打継目130が水平方向となるように設置されてもよい。この場合は、漏斗62A,62Bの上端側開口を打継目130の水平方向の長さに応じて拡張するか、或は、設置個数を増加すればよい。
【0058】
また、供試体100の寸法や形状は、上記実施形態に限定されず、さらに大型又は小型の供試体であってもよい。
【0059】
また、供試体100の適用範囲は、コンクリート供試体に限定されず、モルタル供試体等の他の供試体にも広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
10…試験装置,20…収容部,30…載置台,40…支持フレーム部,50…脚部,60A,60B…集水機構(集水手段),61A,61B…樋部材,62A,62B…漏斗,63A,63B…計量容器(計量手段),70…給排機構,71…水圧ポンプ(圧送手段),72…圧力計,73…水供給配管,74…透水機構74(透水手段),74A…第1プレート部材,74B…透水部材,74C…第2プレート部材,75…空気排出配管,76…エア抜きバルブ,100…供試体,110…一次コンクリート層,120…二次コンクリート層,130…打継目
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7