(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】アレイ給電反射鏡アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/01 20060101AFI20220726BHJP
H01Q 19/10 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
H01Q3/01
H01Q19/10
(21)【出願番号】P 2021512452
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2019068880
(87)【国際公開番号】W WO2020012007
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-03-02
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512276430
【氏名又は名称】エアバス ディフェンス アンド スペイス リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】521011525
【氏名又は名称】エアバス ディフェンス アンド スペイス エスエーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スターランド、サイモン
(72)【発明者】
【氏名】フラグノール、デニス
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-273340(JP,A)
【文献】特開平08-032346(JP,A)
【文献】特開2006-304196(JP,A)
【文献】特開平06-037535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/00- 3/46
H01Q 19/00- 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ給電反射鏡(AFR)アンテナアセンブリであって、
フィードアレイおよび反射鏡を有するAFRアンテナと、
前記反射鏡の焦点領域が、前記フィードアレイの位置に対して移動可能となるように、前記反射鏡の位置を、前記フィードアレイの前記位置に対して移動させる機構と、
を備え、
前記反射鏡の表面のプロファイルは、前記AFRアンテナがマルチビームカバレッジを持つよう、前記フィードアレイの各々のフィードが複数のビームを生成するようなものであり、
前記機構は、
前記複数のビームの各々が、フルフォーカス、フルデフォーカス、または、部分デフォーカスとなるように、前記反射鏡の前記位置を、前記フィードアレイの前記位置に対して移動させるように構成され
る、AFRアンテナアセンブリ。
【請求項2】
前記機構は、前記反射鏡が前記フィードアレイに対してズーム可能となるように、前記反射鏡をフィードアレイ取り付け部に結合させる伸縮アームを含む、請求項1に記載のAFRアンテナアセンブリ。
【請求項3】
前記反射鏡は、前記伸縮アームにより提供される、前記反射鏡と、前記フィードアレイとの間の最大距離に基づいて構成されるサイズを有する、請求項2に記載のAFRアンテナアセンブリ。
【請求項4】
前記機構は、前記反射鏡の向きを、前記フィードアレイの向きに対して傾斜させる手段を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のAFRアンテナアセンブリ。
【請求項5】
前記反射鏡の表面に成形機能を適用する手段を備え、
前記成形機能を適用する手段は、前記反射鏡の表面の、1または複数の可動部に結合される、1または複数のアクチュエータを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のAFRアンテナアセンブリ。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載のAFRアンテナアセンブリと、
前記機構の駆動を制御するために地上局から信号を受信する制御手段と、
を備えるシステム。
【請求項7】
請求項5に記載のAFRアンテナアセンブリと、
前記機構の駆動を制御するために地上局から信号を受信する制御手段と、
を備えるシステム。
【請求項8】
前記反射鏡と、前記フィードアレイとの相対位置に基づいて、前記反射鏡の前記表面に対する最適な成形機能を決定する最適化手段をさらに備える、
請求項7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再構成可能なアンテナに関し、特に、ズーム可能アレイ給電反射鏡(AFR)アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
AFRアンテナは、無線周波数(RF)信号の送受信に反射鏡を使用する。RF信号は、反射鏡と1または複数のアナログまたはデジタルビームフォーミングネットワークとの間で、フィードホーンのアレイにより伝送される。各フィードは、それぞれ自身で個別のビームレットを生成する。アンテナのビームはそれぞれ、個別のフィードからのビームレットを重畳することで構成される。フィードの位置により、そのビームレットの方向が決まる。
【0003】
AFRアンテナは、L、S、Ka、Ku帯通信に共通に使用され、開口サイズが同一の、直接放射フェーズドアレイアンテナに必要な数よりも少ないフィード(したがって、よりシンプルなビームフォーミング)を使用して、限られた視野内で、複数のフレキシブルビームを生成可能とする。
【0004】
AFRアンテナは通常、アンテナの具体的な用途に応じた構成を有する。フルフォーカスAFRシステム(FAFR)とは、反射鏡の焦点面にフィードアレイが配置されたものである。一方、フルデフォーカスシステム(撮像フェーズドシステム、IPA)は、フィードアレイが、反射鏡の焦点面よりもかなり反射鏡寄りに配置されたものである。利用される具体的な構成は、ミッション要求により特定される複数のパラメータの内の1または複数に応じる。同パラメータの例としては、スポットビーム毎に利用可能な電力(「電力プーリング」)、各個別のビーム形成に関連するビーム形成器の複雑性、所与の指向性要件に必要なフィード総数、反射鏡開口サイズなどが挙げられる。本明細書では「デフォーカス」AFR(DAFR)システムと称する、FAFRとIPAの間の中間構成も利用可能である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、AFRアンテナの再構成を可能とするため、AFRアセンブリにズーム可能反射鏡を設ける。そのような実施形態のズーム可能な反射鏡は、フィードアレイの位置に対して反射鏡の位置を移動する機構を介して実現され、反射鏡の焦点領域と、フィードアレイの位置との間の相対位置の制御について、軌道上での柔軟性を導入するものである。
【0006】
本発明の一態様によると、フィードアレイおよび反射鏡を有するAFRアンテナと、上記反射鏡の焦点領域が、上記フィードアレイの位置に対して移動可能となるように、上記反射鏡の位置を、上記フィードアレイの上記位置に対して移動させる機構と、を備えるAFRアンテナアセンブリが提供される。
【0007】
上記機構は、上記反射鏡が上記フィードアレイに対してズーム可能となるように、上記反射鏡をフィードアレイ取り付け部に結合させる伸縮アームを含み得る。
【0008】
上記伸縮アームは、上記AFRアンテナがフルフォーカスAFR、フルデフォーカスAFR、および部分デフォーカスAFRとして構成可能なように、上記反射鏡をズームするように配置され得る。
【0009】
上記反射鏡は、上記伸縮アームにより提供される、上記反射鏡と、上記フィードアレイとの間の最大距離に基づいて構成されるサイズを有する。
【0010】
上記機構は、上記反射鏡の向きを、上記フィードアレイの向きに対して傾斜させる手段を含み得る。
【0011】
上記AFRアンテナアセンブリは、上記反射鏡の表面に成形機能を適用する手段をさらに備え得、上記成形機能を適用する手段は、上記反射鏡の表面の、1または複数の可動部に結合される、1または複数のアクチュエータを含む。
【0012】
本発明の別の態様によると、上記に定義されたAFRアンテナアセンブリと、上記機構の駆動を制御するために地上局から信号を受信する制御手段と、を備えるシステムが提供される。
【0013】
上記システムは、上記反射鏡と、上記フィードアレイとの相対位置に基づいて、上記反射鏡の上記表面に対する最適な成形機能を決定する最適化手段をさらに備え得る。
【0014】
要件が動的に変化する用途の場合、要件が変わるたびに常に同じAFRアンテナが適切ではない可能性がある。したがって、本発明の実施形態は、異なるミッション要求を満たせるように、従来技術の固定構成配置と比較して、再構成可能AFRアンテナシステムを有利に可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の実施形態を、以下の図を参照に、あくまで例示的に説明する。
【
図1】本発明の実施形態に係る、フルフォーカス構成におけるAFRアセンブリを示す。
【
図2】本発明の実施形態に係る、デフォーカス構成におけるAFRアセンブリを示す。
【
図3】本発明の実施形態に係る、AFRアンテナ反射鏡の形状を最適化するための処理を示す。
【
図4】本発明の実施形態に係る、軌道上のAFRアンテナ反射鏡の形状を動的に最適化するシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るAFRアセンブリを示す。AFRアセンブリは、フィードアレイ10と、反射鏡20とを有するAFRアンテナを備える。フィードアレイ10は、反射鏡20を介したRF信号の送受信を可能とするため、ビームフォーミングネットワーク(不図示)とインタフェースする、複数のフィードホーン11を備える。反射鏡20に対するフィードホーン11のサイズは、説明をしやすくするため、誇張している。AFRアセンブリは、衛星において使用されるもので、反射鏡20を介して受信または送信するRF信号の処理およびルーティングを行う任意の適切な衛星に結合され得る。
【0017】
動作時、ビーム利得、サイドローブレベルなどの要件を考慮して、フィードアレイ10の特定のサブセットからの寄与を適切に重み付けすることで、アンテナに求められるビームが合成される。一例として、インマルサット4アンテナは、それぞれ約20から120個の要素からの寄与を利用する、250個に近いビームを合計で生成する、120個のフィードのアレイを有する。この種のアンテナにおいて、各要素が同要素のアレイにおける物理的位置によりその方向が決定されるビームレットを生成するため、フィードアレイの外周は、全体的なカバレッジ形状と同様である。したがって、アンテナは視野内の地球を網羅する数のビームの生成を求められるため、インマルサット4フィードアレイは略円形となる。
【0018】
図1に示す構成の反射鏡20は、説明を簡潔にするため、焦点21(2本の信号路22の交点として示す)を有する放物面鏡である。放物面鏡20によると、フィードアレイ10の形状が、アンテナカバレッジの全体形状に一致する。AFRアセンブリは、反射鏡の焦点21がフィードアレイ10の位置に対して移動可能となるように、反射鏡20の位置を、フィードアレイ10の位置に対して動かすための機構30をさらに備える。
【0019】
図示の実施形態において、機構30は、反射鏡20をフィードアレイ10の取り付け面12に結合する、伸縮アーム31またはブームの形態をとる。これにより、反射鏡20がアーム31の長手延在方向に沿って、フィードアレイ10に対して移動可能となる。伸縮アーム31は、アクチュエータ32により駆動される。アクチュエータ32は、例えば、AFRアセンブリが結合された衛星ペイロード(不図示)に搭載された制御モジュールなどの制御手段から、または直接地上局から、AFRアンテナの上りリンクを介して、またはAFRアンテナが構成された群内に属する別の衛星から受信した制御信号の制御下で、衛星ペイロードから給電される。制御信号は、軌道上でAFRアンテナの再構成を可能とする。
【0020】
図示の実施形態において、アクチュエータ32は、伸縮アーム31の収縮または伸張により、それぞれフィードアレイ10に対して反射鏡20が接近または離間するように移動可能となるように、フィードアレイ10の取り付け面12に配置される。
【0021】
図1の構成では、反射鏡20の焦点21の面内にフィードアレイ10が存在するように配置された反射鏡20を示す。したがって、
図1の構成はFAFRシステムのものである。
【0022】
図2は、伸縮アーム31が、
図1における伸張位置に対して収縮した、
図1のAFRアセンブリを示す。伸縮アーム31の収縮は、
図2の構成がDAFRシステムのものとなるように、反射鏡20の焦点21がフィードアレイ10の後ろに来るという効果をもたらす。DAFRシステムにおいて、いくつかのフィード11が、ビームフォーミングネットワークにより管理された1つのビームの形成に寄与する。
【0023】
本発明の範囲から逸脱することなく、
図1および2に示す構成に対して多数の変形例が実現され得ることを理解されたい。そのような変形例については後述する。
【0024】
伸縮アーム31は、フィードアレイ10の取り付け面12に結合されるように図示されているが、これに代わって、AFRアセンブリが取り付けられる衛星ペイロード上の表面に結合され得る。したがって、伸縮アーム31は、直接フィードアレイ10に結合されることなく、フィードアレイ10に対して反射鏡20を移動可能である。
【0025】
アクチュエータ32は、フィードアレイ10に対して離間または接近するように、反射鏡20を押すまたは引くように効果的に動作すると上述したが、別の実施形態において、アクチュエータ32は反射鏡20のフレーム上など、反射鏡20に配置され得る。これにより、フィードアレイ10は反射鏡20に対して、効果的に押されるまたは引かれる。さらなる実施形態において、アクチュエータは反射鏡20およびフィードアレイ10の両方に配置され得、あるいはその代わりに伸縮アーム31そのもの内に配置され得る。
【0026】
アクチュエータ32は、電気機械モータまたはポンプなどの任意の適切な形式により構成され得、反射鏡20およびフィードアレイ10の相対位置を制御するために、いくつかのアクチュエータが配置され得る。上述の実施形態は、一方向、具体的には伸縮アーム31の長手延在方向における相対移動を行い易くするものと記載されているが、別の実施形態では、アクチュエータを異なる軸配向に配置することで、または多次元アクチュエータおよびジンバルを利用することで、さらなる相対移動自由度が実現可能である。これにより、反射鏡20およびフィードアレイ10の向きの相対的傾斜と、長手方向における移動が可能となる。
【0027】
反射鏡とフィードアレイとの必要な相対運動を可能とするさらなる実施形態においては、伸縮アーム/アクチュエータシステムに対する任意の適切な代替形態も採用可能であることが理解されたい。例えば、一連のケーブルおよびプーリにより、反射鏡20のフレームを、それをフィードアレイ10に向かって引くまたはフィードアレイ10から解放するように、構造に対して結合してよい。例えば、衛星ペイロードに結合された枢動部を有する、枢動アームシステムが、一方のアームがフィードアレイ10に結合され、他方のアームが反射鏡20に結合された、2本の枢動アームが互いに対して開くまたは閉じることに基づく相対運動を可能にし得る。
【0028】
機構30は、AFRアンテナがフルフォーカス構成、フルデフォーカス構成、または中間位置に配置可能なように、移動範囲を有するように構成可能であるが、完全な柔軟性が求められない場合に、より制限された機構も使用され得る。例えば機構30は、移動範囲がミッション要求の所望の柔軟性を満たすのに必要十分である場合、システム要件に応じて、AFRアンテナを、フルフォーカス構成および中間位置の間のみ、または中間位置およびフルデフォーカス位置の間のみ、2つの中間位置の間でズーム可能とするような移動範囲を有し得る。
【0029】
FAFRモードにおいて、ビームフォーミングはもっとも単純なもので、ビームフォーミングネットワークに、ビーム毎に最少数のフィード11を利用して、最大数のビームを生成することを可能にするものである。この理由は、フィードアレイ10が反射鏡20の焦点21にある場合、信号がフィードアレイ10のより大きな範囲を網羅するデフォーカス配置と対照的に、フィードアレイ10の最小部(具体的には焦点の周囲にあるもの)と、反射鏡20との間でRF信号が伝送されるように指向性が最大化されるためである。DAFRまたはIPAモードでは、各ビーム送信または受信に寄与するために、より多くの数の、または場合によっては全てのフィード11が必要となり、ビームフォーミングはより複雑となる。しかしながら、利用可能な電力の効率的使用を維持しながら、より少数(1つのみを含む)のスポットビームまたは成形ビームの効率的生成を可能とするように、電力プーリングは増加する。フィード11の数の最大化はまた、各フィード11が典型的にそれ自身の各々の増幅器に関連付けられる場合、利用可能な信号の増幅を最大化する。
【0030】
所与の数のフィード11について、任意の所与のスポットビームで実現可能な最大指向性は、指定されたカバレッジエリアにより範囲が定まる、立体角と略反比例する。その結果、本発明の実施形態は、低(広角および低利得)倍率IPAモードと高(挟角および高利得)倍率IPAモードとの間での再構成を可能とする。これにより、所与の数のフィード11により、アンテナは広視野にわたる中指向性ビーム、またはより狭視野にわたる高指向性ビームを生成し得る。
【0031】
上述のように、反射鏡20およびフィードアレイ10の相対位置を制御するためのアクチュエータの内の1または複数を駆動する制御信号は、特定のミッション内の再構成を可能にする軌道上AFRアンテナの制御を行い易くするものであり得る。その結果、特定のミッションの可能性が増し、そうでなければ特定のAFRアンテナを動作させるのに必要となり得る衛星再配置操作の数が低減可能となる。
【0032】
そのような軌道上での柔軟性が有利である例としては、カバレッジ要件が異なり得る、異なる領域間で移動する静止地球軌道(GEO)衛星の場合が挙げられる。別の例としては、カバレッジエリアの見かけサイズが、地球の表面に対するビームの角度の結果として、経時的に変化するような、非円形軌道における衛星の場合が挙げられる。
【0033】
反射鏡20の焦点21が、機構のズーム可能範囲内で、フィードアレイ10の前方および後方の両方に配置され得ることを理解されたい。例えば、コンパクトな配置において、反射鏡20がフィードアレイ10に近い場合、焦点21はフィードアレイ10の後方にあり得る。反射鏡20がフィードアレイ10から遠い場合、焦点21はフィードアレイ10の前方にあり得る。これにより、反射鏡20により反射されたビームと、フィードアレイ10との間の遮蔽が防止可能となる。反射鏡20そのものがフィードアレイ10から最大距離となる場合にあり得るように、反射鏡20が、その焦点21がフィードアレイ10から最も遠くなるように配置されていると、この最大デフォーカス状態により、フィードアレイ10の多数のフィード11が採用された場合、FAFRモードにおいて同数のフィード11を採用する場合に求められる反射鏡20のサイズと比較して、反射鏡20に最大サイズ要件が課される。したがって、本発明の実施形態のAFRアンテナの反射鏡20は、全ての構成では使用が求められない可能性のあるサイズであるが、全ての必要な構成で反射鏡20が動作可能となることを保証するサイズを有するという意味で、「オーバーサイズ」であるとみなされ得る。
【0034】
より一般的には、ミッション要求は、AFRアンテナの所望のカバレッジサイズ、物理的ビームサイズとその指向性、使用されるフィードの数に応じた反射鏡サイズの影響を含む。
【0035】
例えば、所望のカバレッジサイズを実現するのに、特定の物理的ビームサイズおよび指向性が必要となり得る。物理的ビームサイズおよび指向性はさらに、フィードの数やフィードアレイ内のフィードの密度および分布に影響する。これはさらに、使用される反射鏡のサイズに影響する。例えば、所与の数のフィードに対して、カバレッジ要件を低減すると、反射鏡が大きくなり、ビームが小さくなる。
【0036】
上述のように、反射鏡サイズは、所与の数のフィードに対して実現可能な、特定のデフォーカスレベルを特定することで、物理的ビームサイズおよび指向性の選択にも影響し得る。したがってAFRアンテナの特定の設計および、実現されるデフォーカス化は、多数の要因と、それら要因の相対的優先順位づけに依存する。
【0037】
要約すると、フォーカス構成により、指向性とキャリア対干渉比が向上する。デフォーカス構成は、電力プーリングの向上、ビームフォーミング柔軟性の向上、カバレッジエリアにわたって不規則的実効等方放射電力(EIRP)を形成する能力の向上に帰結する。
【0038】
したがって、本発明の実施形態は、より小さいビームおよびより高い指向性により、軌道上でカバレッジを低減可能とする。従来、より小さいカバレッジは、ビームサイズまたは指向性を変化することなく、ビームフォーミングネットワーク制御を介してのみ、実現可能であった。本発明の実施形態は、ビームフォーミングに柔軟性が求められない場合の指向性を可能とする、超デフォーカスAFR構成(vD-AFR)に、フォーカス動作を適用可能ともする。従来、vD-AFRは、指向性の不利益と引き換えに、ビーム毎に少数の要素のみを利用可能であった。若干デフォーカスされたAFRシステムから始まって、ビームフォーミングに柔軟性が求められる場合にはさらなるデフォーカスも可能である。
【0039】
図1および
図2に示す実施形態において、放物面鏡20が示される。このような放物面鏡20は本明細書において、「非成形」反射鏡とも称される。反射鏡20は単一の焦点21を有するように示されるが、フィードアレイ10のサイズは単一点よりも大きく、その結果、アレイの一部のフィードホーン11は焦点21そのものに配置されないことを理解されたい。この理由により、上述の「焦点」についての言及は、「焦点面」についての言及とみなされるものである。したがって、フィードアレイ10は反射鏡の焦点21を含む面内の点で表される距離だけ反射鏡20から離間して配置可能である。
【0040】
別の実施形態において、反射鏡20は放物状でなくてよく、さらに、単一焦点21を有さなくてよい。そのような非放物面鏡を、本明細書において「成形」反射鏡と称する。反射鏡の特定の形状に応じて、反射鏡の焦点動作は、一連の焦点、または焦点「領域」に関して特徴付けられ得る。本明細書において、概略的な「焦点領域」は、焦点、複数の焦点を含む領域、または焦点面を表すのに使用する。
【0041】
アンテナカバレッジを、本土から離れたカバレッジ領域を含む(例えば、米国のシステムにおけるハワイ、欧州のシステムにおける大西洋の島々)、性能要件の異なる領域に分割することに対する要求が高まっている。従来のシステムでは、これは多くの場合、主要群から大きく離間した要素を含む、分散フィードアレイに帰結する。この場合、フィードアレイを宇宙船に含めることが困難となる(例えば、ハワイのフィードはブームに配備する必要があるなど、宇宙船の外周外に、フィードを配置する必要がある)。
【0042】
本発明の実施形態において、成形反射鏡はアクティブなフィードから、複数のスポットビームを生成可能とする。これにより、ビーム分布形状が、フィードの形状から少なくとも一部切り離される。上述の例において、反射鏡形状は理想的には、宇宙船収容が単純となる、コンパクトおよび/または規則的フィードアレイから、マルチビームカバレッジが得られるものである。例えば、適切に成形された反射鏡は、円形、六角形、または正方形のような、一般的形状をフィードアレイに利用可能にでき、その上で不規則な地理的領域を完全に網羅可能である。したがって、必要なカバレッジを実現するために、フィードの総数を増やす必要がないことが保証される。
【0043】
本発明の実施形態に係るAFRアンテナのさらなる柔軟性は、上述のズーム可能機能に加えて、あるいはいくつかの比較例においてその代わりに、反射鏡の表面を再構成可能にすることで実現され得る。
【0044】
図3は、本発明の実施形態に係る、AFRアンテナ反射鏡の形状を最適化する処理を示す。
【0045】
最適化処理は、カバレッジ外周の仕様と、個別のスポットビームについての指向性要件、周波数再利用方式、フィードアレイについてのあらゆる物理的収容制約(例えば、発射装置外周など)、および既存のフィードアレイが利用可能か(エンジニアリング費用を繰り返し投入せず節約することを示し、本明細書では「ヘリテージ」要件と称する)についての情報とを入力とする。
【0046】
最適化処理は、最初に所望のビーム指向性と、周波数再利用を実現するために必要な反射鏡径を決定するS10。さらに、最適化処理は、決定された直径の標準的な放物面鏡と共に利用することが求められる、フィードアレイの要素の数、その配置を決定するように動作するS20。
【0047】
段階S30で、決定されたフィードアレイ仕様が必要十分であるかが判定される。フィードアレイ仕様が(例えば、収容についてまたはヘリテージ要件と比較して)不十分であれば、S40において、必要な仕様に適合するように、フィードアレイ配置を調整可能にする(簡略化による)、最適な反射鏡プロファイルを決定する処理が実行される。フィードアレイが必要十分であれば、方法は段階S50に進む。
【0048】
パラメータ化された成形最適化に、全アンテナ合成処理が組み込まれた、単一の処理にて、最適な反射鏡プロファイル決定が実施可能である。しかし、反射鏡形状合成方法を、二次計画法に基づいて決定された単一の反射鏡要素について決定されたビーム形状に適用することで、より早い技術となる。使用される周波数帯に典型的に依存する、反射鏡技術の物理的制限に関連する制約が、成形最適化処理に適用され得る。
【0049】
したがって、最適化処理の出力は、簡略化された(例えば、汎用または準汎用のヘリテージ)フィードアレイとともに使用される、最適に成形された反射鏡の仕様である。
【0050】
図4は、本発明の実施形態に係る、軌道上のAFRアンテナ反射鏡の形状を動的に最適化するシステムを示す。
【0051】
システムは、最適な反射鏡プロファイルを決定するための最適化モジュール40と、最適なプロファイルを、成形機能を表す一連の作動信号55に変換する形状制御モジュール50とを備える。同機能は、反射鏡60に、それに応じて自身の表面のプロファイルを調整させるように適用される。
【0052】
最適化モジュール40は、地上局から、あるいはアンテナ上りリンクまたは衛星間リンクを介して受信した制御信号70から入力を得る。さらに、現在の反射鏡60の構成およびそのフィードアレイからの相対位置を報告する、反射鏡の表面上のセンサを表す入力も得る。距離は、例えば、レーザー式測距システムにより判定され得る。そのような測定システムは、例えば伸縮アーム31の適正な動作を検証するため、
図1および
図2に示す実施形態の機構内に組み込まれ得る。最適化モジュール40は
図3に示すものと類似した処理を適用するが、
図3の処理がAFRアンテナの地球からの打ち上げ前に確定される必要のある、反射鏡径およびフィードアレイ形状などのAFRアンテナの態様をシミュレーションする一方、
図4の処理は、ミッション要求に基づき、特定の反射鏡径およびフィードアレイが与えられた、制御信号70から決定される最適な形状と、必要な動作位置またはフィードアレイに対する反射鏡位置の調整範囲を、上述の実施形態に記載された形でモデル化する。
【0053】
上述の実施形態において、AFRアセンブリペイロードホストにより、ミッション要求が継続的に受信され得ることが規定されている。別の実施形態において、ミッション開始時に一連のミッション要求が一度にアップロードされ、その後ペイロード内の制御機構から定期的にまたは所定の回数アクセスされ、最適化モジュールに入力され得る。
【0054】
最適化モジュール40は、反射鏡の利用可能なプロファイルを特定する情報により構成される。同情報は、その内から最適な選択がなされ得る一組の個別のプロファイルの形態をとり得、または特定の表面のプロファイルを生成するために実現可能な反射鏡の表面の要素への分割および隣接する要素の相対移動を指定し得る。このような情報は、AFRアンテナが取り付けられる衛星ペイロードに搭載された、または地上にある、各種メーカーおよびモデルについて反射鏡構成を規定するデータベース80から得られる。一例として、Ku帯放射に利用される反射鏡は、約2.5メートルの直径を有し得、30個×30個の制御可能要素のアレイを有し得る。
【0055】
システムは、フィードアレイから特定の距離で、フィードアレイとともに特定の反射鏡プロファイルが利用されると実現可能なビーム形状をシミュレーション可能なビームモデラー90を備える。ビームモデラーは、フィードアレイとインタフェースするビームフォーミングネットワークについての知識を有する。これにより、ビームレット形状、カバレッジエリア、指向性、電力拡散などについての所望のミッション要求が実現可能となるように、フィードアレイを介して信号にビームフォーミングがいかに適用されるかが制御される。
【0056】
最適化モジュール40は、そもそも反射鏡の表面のプロファイルの調整が必要か、またはビームフォーミングネットワークへの調整により、ミッション要求を満たすことが可能かを判定するため、ビームモデラー90とインタフェースする。したがってこれは、信号処理、または機械的システム構成、あるいはこれら2つの技術の組合せにより、ミッション要求を実現するかを判定する機構である。例えば、比較的小さな調整が求められるような特定の状況では、特定の物理的構成を維持し、ビームフォーミングネットワークを制御したほうが、特定のビーム形状を実現するのに効率的であり得る。一方、別の状況では、必要な調整はビームフォーミングネットワークの制御で実現可能な範囲を超えるため、その代わりにAFRアンテナのフォーカス/デフォーカス、および/または形状調整が必要となる。
【0057】
決定された最適な反射鏡プロファイルに基づいて、形状制御モジュール50は必要な駆動信号55を、それに応じて反射鏡の表面を成形するため、反射鏡の表面の形状に関連付けられた1または複数のアクチュエータに適用する。
【0058】
図4に示すコンポーネントは、ハードウェア、ソフトウェア、またはこれら2つの組合せにより実施され得る。
図4では個別のコンポーネントが示されるが、コンポーネントの内の1または複数は互いに、または衛星ペイロードに搭載されたマスターコントローラに一体化され得る。
【0059】
上述のように、本発明の実施形態は、異なるフォーカス構成間、ならびに高および低倍率モード間の切り替えを容易にし得る。いずれの場合でも、フォーカス構成または倍率モード間で、動作範囲について特定の反射鏡の表面のプロファイルが選択されると、全動作範囲にわたる性能と、所望のアンテナ特性との間の最良の折衷を実現するように、特定の成形機能が反射鏡に適用されることが好ましい。
【0060】
特許請求の範囲から逸脱することなく、上述の実施形態に対して多数の変形例が可能であることを理解されたい。変形例はミッション要求、特に当該要件の動的性質に応じる。反射鏡およびフィードアレイの相対位置を調整する手段への適切な調整、反射鏡の適切な形状、サイズ、およびフィードアレイの構成は、AFRアセンブリの所望の動作に応じて選択可能である。
[他の可能な請求項]
【0061】
(項目1)
アレイ給電反射鏡(AFR)アンテナアセンブリであって、
フィードアレイおよび反射鏡を有するAFRアンテナと、
上記反射鏡の焦点領域が、上記フィードアレイの位置に対して移動可能となるように、上記反射鏡の位置を、上記フィードアレイの上記位置に対して移動させる機構と、
を備え、
上記機構は、上記AFRアンテナがフルフォーカスAFR、フルデフォーカスAFR、および部分デフォーカスAFRとして構成可能なように、上記反射鏡の上記位置を、上記フィードアレイの上記位置に対して移動させるように構成される、AFRアンテナアセンブリ。
【0062】
(項目2)
上記機構は、上記反射鏡が上記フィードアレイに対してズーム可能となるように、上記反射鏡をフィードアレイ取り付け部に結合させる伸縮アームを含む、項目1に記載のAFRアンテナアセンブリ。
【0063】
(項目3)
上記反射鏡は、上記伸縮アームにより提供される、上記反射鏡と、上記フィードアレイとの間の最大距離に基づいて構成されるサイズを有する、項目1または項目2に記載のAFRアンテナアセンブリ。
【0064】
(項目4)
上記機構は、上記反射鏡の向きを、上記フィードアレイの向きに対して傾斜させる手段を含む、前述の項目のいずれか一項に記載のAFRアンテナアセンブリ。
【0065】
(項目5)
上記反射鏡の表面に成形機能を適用する手段を備え、
上記成形機能を適用する手段は、上記反射鏡の表面の、1または複数の可動部に結合される、1または複数のアクチュエータを含む、前述の項目のいずれか一項に記載のAFRアンテナアセンブリ。
【0066】
(項目6)
上記AFRアンテナはマルチビームアンテナである、前述の項目のいずれか一項に記載のAFRアンテナアセンブリ。
【0067】
(項目7)
前述の項目のいずれか一項に記載のAFRアンテナアセンブリと、
上記機構の駆動を制御するために地上局から信号を受信する制御手段と、
を備えるシステム。
【0068】
(項目8)
上記反射鏡と、上記フィードアレイとの相対位置に基づいて、上記反射鏡の上記表面に対する最適な成形機能を決定する最適化手段をさらに備える、項目5に従属する場合の、項目7に記載のシステム。