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  • 特許-固液分離装置のスクリーン 図1
  • 特許-固液分離装置のスクリーン 図2
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  • 特許-固液分離装置のスクリーン 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】固液分離装置のスクリーン
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/10 20060101AFI20220726BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20220726BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20220726BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220726BHJP
   B01D 29/17 20060101ALI20220726BHJP
   B01D 29/25 20060101ALI20220726BHJP
   B01D 29/37 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B01D39/10
B01D29/10 510D
B01D29/10 530A
B01D29/10 520Z
C09D201/00
C09D7/61
B01D29/30 501
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018207874
(22)【出願日】2018-11-05
(65)【公開番号】P2020075195
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2020-10-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第55回下水道研究発表会講演集
(73)【特許権者】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】大西 邦佳
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-018020(JP,A)
【文献】特開2014-142139(JP,A)
【文献】特開2014-199152(JP,A)
【文献】特開2008-279339(JP,A)
【文献】特開2011-235250(JP,A)
【文献】特開2010-058076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00 - 39/20
B01D 29/00 - 29/48
C09D 201/00
C09D 7/61
C02F 11/121
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板に無数の細孔(6)を形成した固液分離装置のスクリーン(2)において、
スクリーン(2)の表面(7)、裏面(8)及び周部にバリ(9)が存在する細孔(6)の内周面にコーティング剤で形成される第1層(11)及び第2層(12)と、第2層(12)の表面に表面処理剤で形成される第3層(13)で構成されるコーティング層(10)を備え、
コーティング層(10)は親水性の樹脂でバリ(9)の高さ以上となる板厚の1/32~1/16の厚みとなるように形成する
ことを特徴とする固液分離装置のスクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドラム型濃縮機、スクリュープレス等の固液分離装置のスクリーンに関し、排水作用を向上させたスクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水、し尿、あるいは食品生産加工排水等の有機性汚泥を濃縮・脱水するドラム型濃縮機、スクリュープレス等は一般に知られている。ドラム型濃縮機は、円筒状のスクリーンにスクリュー軸に巻き掛けたスクリュー羽根や、リボンスクリューを内挿し、汚泥を搬送しながら固液分離するものが特許文献1や特許文献2に開示されている。スクリュープレスも同様に、スクリーンにスクリュー羽根を内挿してあり、スクリュー羽根を回転して汚泥を搬送しつつスクリーンにて固液分離を行うものが特許文献3に開示されている。
【0003】
これらのドラム型濃縮機、スクリュープレスに用いられる円筒スクリーンは、金属板にパンチング加工で細孔を形成することでスクリーン内の汚泥からろ液を分離可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3832330号公報
【文献】特開2016-123946号公報
【文献】特許第4023109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、金属製の板にパンチング加工で形成した細孔は微細で、細孔に水分が残りやすい。また、細孔の周囲にはバリが残り、仕上げ加工によりバリを取り除いても、細孔の周部には小さなバリが残ってしまう。
さらに、パンチング加工後にロールプレスなどで形を整えると、細孔の内側につぶれたバリが残ってしまう。
【0006】
特許文献1及び特許文献2において、細孔に水分が残りやすい上、このようなバリを残した状態のスクリーンを用いて固液分離を行うと、スクリーンからろ液が排水される際に、ろ液が細孔のバリに吸着し、スムーズに排出されない問題があった。
【0007】
この発明は、スクリーンに親水性のコーティングを施すことで、細孔からの水捌けをよくし、さらにバリの影響を低減してスクリーンの排水性能を向上させた固液分離装置のスクリーンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
金属板に無数の細孔を形成した固液分離装置のスクリーンにおいて、スクリーンの表面、裏面及び周部にバリが存在する細孔の内周面にコーティング剤で形成される第1層及び第2層と、第2層の表面に表面処理剤で形成される第3層で構成されるコーティング層を備え、コーティング層は親水性の樹脂でバリの高さ以上となる板厚の1/32~1/16の厚みとなるように形成することで、コーティングの親水作用によりろ液の排水性能が向上すると共に、コーティング層の耐久性も向上するうえ、バリの高さまでコーティング層を積層できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、スクリーンに親水性の樹脂でコーティングを施すことにより、ろ液の排出が容易となる。また、コーティングがパンチング加工により生じたバリを覆い、細孔の周部が平らになる。従って、スクリーンの排水性能が向上すると共に、スクリーンの加工時にバリ取りが不要となる。
親水性のコーィング剤でコーティング層を形成することで、ろ過速度が向上すると共に、目詰まりを防止する。
コーティング層は、表面に表面処理剤による層を形成することで、ろ液に含まれる夾雑物がコーティング層に付着することを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係る円筒スクリーンを用いたドラム型濃縮機の断面図である。
図2図2は、同じくコーティング前のスクリーンの概略断面図である。
図3図3は、同じくコーティング後のスクリーンの概略断面図である。
図4図4は、同じくコーティング層の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明に係る円筒スクリーンを用いたドラム型濃縮機の断面図である。
本発明のスクリーンは以下のようなドラム型濃縮機のスクリーンとして用いることができる。
ドラム型濃縮機1は、略水平な中心軸を持つ円筒のスクリーン2と、スクリーン2内に同軸配置されスクリーン2の中心軸周りに回転するスクリュー軸3と、スクリュー軸3に螺旋状に巻き掛けたスクリュー羽根4と、を備えている。
スクリュー軸3は内部に汚泥供給路5を形成し、スクリュー軸3の供給口5aからスクリーン2内に原液を供給する。スクリーン2内に供給された原液はスクリーン2の細孔6からろ液が排出されると共に、固形物がスクリュー羽根4により搬送される。
【0016】
図2は本発明に係るコーティング前のスクリーンの概略断面図である。
ドラム型濃縮機1のスクリーン2は、薄い金属板にパンチング加工で無数の微細な孔を設けた後、円筒形に形成したものである。パンチング加工は金属板の表面7からパンチを打ち抜くことで細孔6を形成するため、金属板の裏面8の細孔6周部には変形によるバリ9が発生する。
一般的に、バリ9の高さは板厚の1/80~1/32となる。
【0017】
スクリーン2で固液分離を行う場合、表面7に原液を供給し、細孔6からろ液を排出する。
バリ9を残した状態で固液分離を行うと、ろ液がバリ9に吸着し、ろ液の排水抵抗が増加する。
このバリ9は、従来であれば仕上げ加工により平らに取り除かれるが、本発明では後述するコーティングにより平らにするため、仕上げ加工は不要である。
【0018】
図3は本発明に係るコーティング後のスクリーンの概略断面図である。
スクリーン2の表面7、裏面8及び細孔6の内周面に、親水性の樹脂でコーティングを施し、コーティング層10を形成する。親水性の樹脂は公知の手段で塗布し、コーティング層10を形成する。
コーティング層10は、バリ9の高さ以上に積層させるため、板厚の1/32~1/16の厚みを有する。
【0019】
スクリーン2の表面7にコーティング層10を形成することで、コーティング層10の親水作用により、ろ液が細孔6に向かってスムーズに移動する。
スクリーン2の裏面8にコーティング層10を形成することで、パンチング加工により形成されたバリ9を覆い、裏面8をフラットにする。従って、細孔6を通ったろ液がバリ9に留まることなくスムーズに排水される。
スクリーン2の細孔6の内周面にコーティング層10を形成することで、毛細管現象が発生しやすくなり、ろ液の排出量が増加する。
【0020】
図4は本発明に係るコーティング層の要部断面図である。
本発明のコーティング層10は3層構造であって、スクリーン2に接する第1層11、及び第1層11に積層する第2層12は、コーティング剤を塗布することにより形成する。
コーティング剤として、親水性の樹脂を使用する。
樹脂には、リン酸アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、リン酸複合酸化物、を混合し、親水性を付与する。
【0021】
第2層12に積層する第3層13は、表面処理剤を塗布することにより形成する。
表面処理剤として、親水性の樹脂を使用する。
樹脂には、二酸化ケイ素、リン酸アルミニウム、二酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水、を混合し、親水性を付与する。
【0022】
コーティング剤で第1層11及び第2層12を形成することにより、コーティング層10をバリ9の高さ以上に積層することができる。また、親水性の効果が得やすくなり、耐久性も向上する。
【0023】
コーティング剤で形成した第1層11及び第2層12の表面7にはざらつきが発生するため、例えばろ液に含まれる凝集剤の鉄分などが、コーティング層10に付着する。表面処理剤をコーティ ング層10の表面7に用いることで、コーティング層10は表面処理がなされ、ろ液に含まれる夾雑物がコーティング層10に付着することなく、ろ液と共にスムーズに排出される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る固液分離装置のスクリーンは、金属製のスクリーンに親水性の樹脂をコーティングすることで排水性能が向上するため、本実施例に限定されるものでなく、リボンスクリューを配置したドラム型濃縮機の他、スクリュープレス等、公知の金属製のスクリーンを用いる固液分離装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0025】
2 スクリーン
6 細孔
7 表面
8 裏面
10 コーティング層
11 第1層
12 第2層
13 第3層
図1
図2
図3
図4