(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
G03G15/20 510
(21)【出願番号】P 2017198768
(22)【出願日】2017-10-12
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-033767(JP,A)
【文献】特開2011-053380(JP,A)
【文献】特開2015-114372(JP,A)
【文献】米国特許第04937631(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/20
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
B65H 5/02
B65H 5/06
B65H 5/22
B65H 7/00- 7/20
B65H 29/12-29/24
B65H 29/32
B65H 43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着ベルトと、
定着ニップに進入する記録媒体の幅方向一端側縁における撓みの大きさと幅方向他端側縁における撓みの大きさとが異なるゆがみを検出するゆがみ検出部と、
前記定着ニップで前記定着ベルトに対向して配置される加圧ローラーと、
前記記録媒体に対する前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更する搬送速度変更部と、
前記ゆがみが検出された場合、前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更させることにより前記ゆがみを解消するように、前記搬送速度変更部を制御する制御部と、
を備え、
前記加圧ローラーは、前記幅方向の中央部に配置される中央加圧ローラー、および、前記幅方向の端部に配置される端加圧ローラーを有し、
前記搬送速度変更部は、少なくとも前記端加圧ローラーの駆動および非駆動を切り替えることにより、前記端加圧ローラーから前記定着ベルトに伝達される駆動力を調整して、前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更させるように構成され、前記中央加圧ローラーから前記定着ベルトに伝達される駆動力の伝達経路および前記端加圧ローラーから前記定着ベルトに伝達される駆動力の伝達経路のうちから少なくとも1つを選択して、前記定着ベルトの搬送速度を前記幅方向に均等な第1搬送速度と、前記幅方向の端部が前記幅方向の中央部より大きい第2搬送速度との間で切り替え、
前記制御部は、前記定着ベルトの端部における搬送速度が前記定着ベルトの中央部における搬送速度より小さいことにより前記ゆがみが検出された場合、前記定着ベルトの搬送速度を前記第1搬送速度から前記第2搬送速度に切り替えさせることにより前記ゆがみを解消するように、前記搬送速度変更部を制御する、定着装置。
【請求項2】
定着ベルトと、
定着ニップに進入する記録媒体の幅方向一端側縁における撓みの大きさと幅方向他端側縁における撓みの大きさとが異なるゆがみを検出するゆがみ検出部と、
前記定着ニップで前記定着ベルトに対向して配置される加圧ローラーと、
前記記録媒体に対する前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更する搬送速度変更部と、
前記ゆがみが検出された場合、前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更させることにより前記ゆがみを解消するように、前記搬送速度変更部を制御する制御部と、
を備え、
前
記加圧ローラーは、前記幅方向の中央部に配置される中央加圧ローラー、および、前記幅方向の端部に配置される端加圧ローラーを有し、前記記録媒体が搬送される場合、当該記録媒体が搬送される範囲外で前記定着ベルトと接触する位置に配置され、
前記搬送速度変更部は、少なくとも前記端加圧ローラーの駆動および非駆動を切り替えることにより、前記端加圧ローラーから前記定着ベルトに伝達される駆動力を調整して、前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更させる、定着装置。
【請求項3】
定着ベルトと、
定着ニップに進入する記録媒体の幅方向一端側縁における撓みの大きさと幅方向他端側縁における撓みの大きさとが異なるゆがみを検出するゆがみ検出部と、
前記定着ニップで前記定着ベルトに対向して配置される加圧ローラーと、
前記記録媒体に対する前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更する搬送速度変更部と、
前記ゆがみが検出された場合、前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更させることにより前記ゆがみを解消するように、前記搬送速度変更部を制御する制御部と、
を備え、
前
記加圧ローラーは、前記幅方向の中央部に配置される中央加圧ローラー、および、前記幅方向の端部に配置される端加圧ローラーを有し、
前記端加圧ローラーの外径は、前記中央加圧ローラーの外径より大きく、
前記搬送速度変更部は、少なくとも前記端加圧ローラーの駆動および非駆動を切り替えることにより、前記端加圧ローラーから前記定着ベルトに伝達される駆動力を調整して、前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更させる、定着装置。
【請求項4】
定着ベルトと、
定着ニップに進入する記録媒体の幅方向一端側縁における撓みの大きさと幅方向他端側縁における撓みの大きさとが異なるゆがみを検出するゆがみ検出部と、
前記定着ニップで前記定着ベルトに対向して配置される加圧ローラーと、
前記記録媒体に対する前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更する搬送速度変更部と、
前記ゆがみが検出された場合、前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更させることにより前記ゆがみを解消するように、前記搬送速度変更部を制御する制御部と、
を備え、
前
記加圧ローラーは、前記幅方向の中央部に配置される中央加圧ローラー、および、前記幅方向の端部に配置される端加圧ローラーを有し、
前記端加圧ローラーの摩擦係数は、中央加圧ローラーの摩擦係数よりも大きく、
前記搬送速度変更部は、少なくとも前記端加圧ローラーの駆動および非駆動を切り替えることにより、前記端加圧ローラーから前記定着ベルトに伝達される駆動力を調整して、前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更させる、定着装置。
【請求項5】
前記中央加圧ローラーに連結され、前記端加圧ローラーに連結可能にされる駆動軸を備え、
前記搬送速度変更部は、前記駆動軸に対する前記端加圧ローラーの連結と非連結とを切り替え、
前記制御部は、前記ゆがみが検出された場合、前記駆動軸に対して前記端加圧ローラーを連結させるように、前記ゆがみが検出されない場合、前記駆動軸に対して前記端加圧ローラーを非連結させるように、前記搬送速度変更部を制御する、請求項1から4のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記中央加圧ローラーに連結される第1駆動軸と、前記端加圧ローラーに連結される第2駆動軸とを備え、
前記搬送速度変更部は、前記第2駆動軸の回転と非回転とを切り替え、
前記制御部は、前記ゆがみが検出された場合、前記第2駆動軸を回転させるように、前記ゆがみが検出されない場合、前記第2駆動軸を非回転させるように、前記搬送速度変更部を制御する、請求項1から4のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記定着ベルトの片寄りを調整するベルトステアリング機構をさらに備え、
前記制御部は、前記ゆがみが検出され、前記ゆがみを解消するように前記搬送速度変更部を制御する場合、前記定着ベルトの片寄りを調整するように前記ベルトステアリング機構を制御する、請求項1から4のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の定着装置を備える、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、FAX等の電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置としては、内部に熱源を有する上加圧ローラーと、上加圧ローラーに圧接され定着ニップを形成する下加圧ローラーとを備え、印字時に、上下の加圧ローラーにより、未定着トナー像が形成された記録媒体を挟持搬送しつつ加熱して、トナー像を記録媒体に定着させる熱ローラー方式の定着装置がある。
【0003】
また、例えば、内部に熱源を有する加熱ローラーと、上加圧ローラーと、これらのローラーに巻き掛けられる定着ベルトと、定着ベルトを介して上加圧ローラーに圧接され、定着ニップを形成する下加圧ローラーとを備え、印字時に、定着ベルトおよび下加圧ローラーにより記録媒体を挟持搬送しつつ定着ベルトを介して加熱して、トナー像を記録媒体に定着させるベルト方式の定着装置がある。
【0004】
なお、定着ニップの記録媒体搬送方向の上流側には、感光体表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置が配置されている。転写装置は、モーターに駆動連結される駆動ローラーと、駆動ローラーから離間して配置される従動ローラーと、これらのローラーに巻き掛けられる転写ベルトと、転写ベルトを介して従動ローラーに対向して配置される転写ローラーとが配置されている。トナー像が転写された記録媒体は、転写ローラーから定着ニップに搬送される。
【0005】
同一軸上に配置された複数のローラーを備え、複数のローラー同士で回転速度を異ならせることにより、記録媒体の向きを90度変換させる用紙搬送装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、転写ローラーから定着装置の定着ニップまでの距離が記録媒体の搬送方向の長さより短い場合に、記録媒体の先端縁が傾いて定着ニップに進入すると、定着ニップによる記録媒体の搬送速度は、記録媒体の幅方向(搬送方向と直交する方向)一端部で大きく、幅方向他端部で小さくなり、記録媒体の搬送速度が幅方向に均等にならない。一方で、転写ローラーによる記録媒体の搬送速度は幅方向で均等であるため、記録媒体の幅方向他端側縁がループ状に撓んだゆがみ(片ループ)が発生する。また、転写ローラーの軸と定着ローラーの軸とが互いに平行でない場合、転写ローラーにおける記録媒体の搬送方向と定着ローラーにおける記録媒体の搬送方向とが異なる。これにより、ゆがみが発生する。このゆがみは、例えば、画像のズレなどの画像不良が生じる要因になる。
【0008】
なお、上記の特許文献1に記載の用紙搬送装置は、記録媒体の向きを変換させることを課題としており、記録媒体のゆがみを解消することを課題としておらず、当該用紙搬送装置の構成によって、記録媒体のゆがみを解消することは困難である。
本発明は、記録媒体のゆがみを解消することが可能な定着装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明における定着装置は、
定着ベルトと、
定着ニップに進入する記録媒体の幅方向一端側縁における撓みの大きさと幅方向他端側縁における撓みの大きさとが異なるゆがみを検出するゆがみ検出部と、
前記定着ニップで前記定着ベルトに対向して配置される加圧ローラーと、
前記記録媒体に対する前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更する搬送速度変更部と、
前記ゆがみが検出された場合、前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更させることにより前記ゆがみを解消するように、前記搬送速度変更部を制御する制御部と、
を備え、
前記加圧ローラーは、前記幅方向の中央部に配置される中央加圧ローラー、および、前記幅方向の端部に配置される端加圧ローラーを有し、
前記搬送速度変更部は、少なくとも前記端加圧ローラーの駆動および非駆動を切り替えることにより、前記端加圧ローラーから前記定着ベルトに伝達される駆動力を調整して、前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更させるように構成され、前記中央加圧ローラーから前記定着ベルトに伝達される駆動力の伝達経路および前記端加圧ローラーから前記定着ベルトに伝達される駆動力の伝達経路のうちから少なくとも1つを選択して、前記定着ベルトの搬送速度を前記幅方向に均等な第1搬送速度と、前記幅方向の端部が前記幅方向の中央部より大きい第2搬送速度との間で切り替え、
前記制御部は、前記定着ベルトの端部における搬送速度が前記定着ベルトの中央部における搬送速度より小さいことにより前記ゆがみが検出された場合、前記定着ベルトの搬送速度を前記第1搬送速度から前記第2搬送速度に切り替えさせることにより前記ゆがみを解消するように、前記搬送速度変更部を制御する。
また、本発明における定着装置は、
定着ベルトと、
定着ニップに進入する記録媒体の幅方向一端側縁における撓みの大きさと幅方向他端側縁における撓みの大きさとが異なるゆがみを検出するゆがみ検出部と、
前記定着ニップで前記定着ベルトに対向して配置される加圧ローラーと、
前記記録媒体に対する前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更する搬送速度変更部と、
前記ゆがみが検出された場合、前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更させることにより前記ゆがみを解消するように、前記搬送速度変更部を制御する制御部と、
を備え、
前記加圧ローラーは、前記幅方向の中央部に配置される中央加圧ローラー、および、前記幅方向の端部に配置される端加圧ローラーを有し、前記記録媒体が搬送される場合、当該記録媒体が搬送される範囲外で前記定着ベルトと接触する位置に配置され、
前記搬送速度変更部は、少なくとも前記端加圧ローラーの駆動および非駆動を切り替えることにより、前記端加圧ローラーから前記定着ベルトに伝達される駆動力を調整して、前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更させる。
また、本発明における定着装置は、
定着ベルトと、
定着ニップに進入する記録媒体の幅方向一端側縁における撓みの大きさと幅方向他端側縁における撓みの大きさとが異なるゆがみを検出するゆがみ検出部と、
前記定着ニップで前記定着ベルトに対向して配置される加圧ローラーと、
前記記録媒体に対する前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更する搬送速度変更部と、
前記ゆがみが検出された場合、前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更させることにより前記ゆがみを解消するように、前記搬送速度変更部を制御する制御部と、
を備え、
前記加圧ローラーは、前記幅方向の中央部に配置される中央加圧ローラー、および、前記幅方向の端部に配置される端加圧ローラーを有し、
前記端加圧ローラーの外径は、前記中央加圧ローラーの外径より大きく、
前記搬送速度変更部は、少なくとも前記端加圧ローラーの駆動および非駆動を切り替えることにより、前記端加圧ローラーから前記定着ベルトに伝達される駆動力を調整して、前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更させる。
また、本発明における定着装置は、
定着ベルトと、
定着ニップに進入する記録媒体の幅方向一端側縁における撓みの大きさと幅方向他端側縁における撓みの大きさとが異なるゆがみを検出するゆがみ検出部と、
前記定着ニップで前記定着ベルトに対向して配置される加圧ローラーと、
前記記録媒体に対する前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更する搬送速度変更部と、
前記ゆがみが検出された場合、前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更させることにより前記ゆがみを解消するように、前記搬送速度変更部を制御する制御部と、
を備え、
前記加圧ローラーは、前記幅方向の中央部に配置される中央加圧ローラー、および、前記幅方向の端部に配置される端加圧ローラーを有し、
前記端加圧ローラーの摩擦係数は、中央加圧ローラーの摩擦係数よりも大きく、
前記搬送速度変更部は、少なくとも前記端加圧ローラーの駆動および非駆動を切り替えることにより、前記端加圧ローラーから前記定着ベルトに伝達される駆動力を調整して、前記定着ベルトの幅方向における搬送速度を変更させる。
【0010】
また、本発明における画像形成装置は、上記定着装置を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録媒体のゆがみを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の全体構成を概略的に示す図
【
図2】本実施の形態に係る画像形成装置の制御系の主要部を示す図
【
図4】片ループを発生した場合における用紙の説明図
【
図5】用紙搬送方向から下加圧ローラーを見た場合の矢視図
【
図6】用紙搬送方向から下加圧ローラーを見た場合の矢視図
【
図8】片ループが検出されない場合における搬送速度変更部の説明図
【
図9】右ループが検出される場合における搬送速度変更部の説明図
【
図10】用紙の搬送速度の切替処理を示すフローチャート
【
図11】変形例1に係る搬送速度変更部を概略的に示す図
【
図12A】用紙搬送方向から下加圧ローラーを見た場合の矢視図
【
図13A】加熱ローラーを上方から見たときの矢視図
【
図13B】加熱ローラーを上方から見たときの矢視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。
図2は、本実施の形態に係る画像形成装置1の制御系の主要部を示す。
図1、2に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙S(記録媒体)に二次転写することにより、画像を形成する。
【0014】
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0015】
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60および制御部100を備える。
【0016】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0017】
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データ(入力画像データ)を受信し、この画像データに基づいて用紙Sに画像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0018】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
【0019】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0020】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0021】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
【0022】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0023】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0024】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示すこととする。
図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0025】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、及びドラムクリーニング装置415等を備える。
【0026】
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0027】
制御部100が感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413は一定の周速度で回転する。
【0028】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0029】
現像装置412は、例えば二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0030】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード等を有し、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーを除去する。
【0031】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
【0032】
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0033】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0034】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0035】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0036】
その後、用紙Sが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙Sに二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙Sの裏面側(二次転写ローラー424と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙Sに静電的に転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部60に向けて搬送される。
【0037】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。なお、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成(いわゆるベルト式の二次転写ユニット)を採用しても良い。
【0038】
定着部60は、用紙Sの定着面(トナー像が形成されている面)側に配置される上加圧ローラー63、用紙Sの裏面(定着面の反対の面)側に配置される下加圧ローラー65、及び加熱源60C等を備える。上加圧ローラー63に下加圧ローラー65が圧接されることにより、用紙Sを狭持して搬送する定着ニップが形成される。
【0039】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Sを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。定着部60の詳細については後述する。
【0040】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、及び搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙Sが予め設定された種類毎に収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー対を有する。
【0041】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0042】
次に、
図3を参照し、定着部60の構成について説明する。
図3は、定着部60の構成を概略的に示す図である。
図3において紙面に垂直な方向を幅方向といい、手前方向を「左端側」又は「左側」、奥方向を「右端側」又は「右側」という場合がある。なお、定着部60および制御部100は、定着装置として機能する。定着部60および制御部100は、ユニットとして構成されて画像形成装置1に取り付けられても良いし、それぞれが別々に画像形成装置1に組み込まれて、定着装置として機能するものであっても良い。
【0043】
定着部60は、無端状の定着ベルト61、加熱ローラー62、上加圧ローラー63、下加圧ローラー65、ゆがみ検出部66、および、搬送速度変更部67を有する。
【0044】
定着ベルト61は、加熱ローラー62と上加圧ローラー63とに巻き掛けられている。定着ベルト61は、トナー像が形成された用紙Sに接触して、当該トナー像を用紙Sに加熱定着させる。
【0045】
加熱ローラー62は、定着ベルト61を加熱する。加熱ローラー62は、定着ベルト61を加熱する例えばハロゲンヒーターである加熱源60Cを内蔵している。加熱ローラー62は、例えば、アルミニウム等から形成された円筒状の芯金における外周面をPTFEでコーティングした樹脂層で被覆されている。
【0046】
下加圧ローラー65は、定着部60における駆動軸65A(
図5参照)により駆動回転する。下加圧ローラー65は、上加圧ローラー63に定着ベルト61を介して圧接される。下加圧ローラー65の駆動力、及び、下加圧ローラー65から定着ベルト61に伝達される駆動力によって、用紙Sが搬送される。
【0047】
図3に示すように、用紙Sは、二次転写ローラー424から定着部60における定着ニップに向けて搬送される。二次転写ローラー424と定着ニップとの間の距離が用紙Sの搬送方向の長さより短い場合、用紙Sの先端縁が傾いて定着ニップに進入すると、定着ニップによる用紙Sの搬送速度は用紙Sの幅方向一端部で大きく、用紙Sの幅方向他端部で小さくなり、搬送速度が幅方向に均等にならない。また、二次転写ローラー424による用紙Sの搬送速度は幅方向に均等である(
図4参照)。これにより、用紙Sの幅方向他端側縁がループ状に撓んだ片ループ(ゆがみ)が発生する。また、二次転写ローラー424の軸と上加圧ローラー63の軸とが互いに平行でない場合、二次転写ローラー424における用紙Sの搬送方向と、上加圧ローラー63における用紙Sの搬送方向とが異なる。これにより、片ループ(ゆがみ)が発生する。
図3に、片ループが発生した用紙Sを想像線で表し、片ループが発生しない場合における用紙Sを破線で表す。以下、用紙Sにおける用紙搬送方向の右側に発生した片ループを「右ループ」といい、左側に発生した片ループを「左ループ」という。また、
図4にハッチングを施した箇所は、紙面の奥方向に撓んだ窪みであって、用紙Sに発生した左ループの一例である。
【0048】
図3に示すように、定着ニップより用紙搬送方向下流のガイド板64に複数のゆがみ検出部66が幅方向に配置されている。ゆがみ検出部66は、アクチュエータを有し、アクチュエータが片ループに押されることで、片ループを検出するものである。
図3において紙面の手前方向(左端側)に配置されたゆがみ検出部66は、アクチュエータが押された量(ループ量)が所定量を超える場合、右ループを検出する。また、
図3において紙面の奥方向(右端側)に配置されたゆがみ検出部66は、アクチュエータが押された量(ループ量)が所定量を超える場合、左ループを検出する。
【0049】
図5および
図6は、用紙搬送方向から下加圧ローラー65を見た場合の矢視図である。
図5および
図6において、用紙搬送方向と直交する幅方向Xを示す。
【0050】
図5に示すように、下加圧ローラー65は幅方向Xに分割されている。下加圧ローラー65は、幅方向Xの中央部に配置される中央加圧ローラー65Cと、幅方向Xの左端部に配置される左端加圧ローラー65Lと、幅方向Xの右端部に配置される右端加圧ローラー65Rとを有する。
図5に用紙Sを想像線で示すように、左端加圧ローラー65Lおよび右端加圧ローラー65Rは、用紙Sが搬送される範囲外でかつ用紙Sが搬送される時に定着ベルト61と接触する位置に配置される。
【0051】
中央加圧ローラー65Cは、駆動軸65Aに連結されている。左端加圧ローラー65Lおよび右端加圧ローラー65Rは、駆動軸65A回りに回転するように支持されている。
【0052】
図6に示すように、左端加圧ローラー65Lの外径は、中央加圧ローラー65Cの外径より大きい。右端加圧ローラー65Rの外径は、中央加圧ローラー65Cの外径より大きい。
【0053】
図7は、搬送速度変更部67を概略的に示す図である。
図7に示すように、下加圧ローラー65の幅方向Xの左端部には、搬送速度変更部67Lが配置されている。
【0054】
搬送速度変更部67Lは電磁クラッチ68を有する。電磁クラッチ68は、左端加圧ローラー65Lと一体的に設けられている。電磁クラッチ68は、通電により駆動軸65Aと左端加圧ローラー65Lとを連結し、非通電により駆動軸65Aと左端加圧ローラー65Lとの連結を解除する。電磁クラッチ68が駆動軸65Aと左端加圧ローラー65Lとを連結する場合、左端加圧ローラー65Lが駆動され、駆動力が左端加圧ローラー65Lから定着ベルト61に伝達される。一方、電磁クラッチ68が駆動軸65Aと左端加圧ローラー65Lとの連結を解除する場合、左端加圧ローラー65Lが駆動されないで、駆動力が左端加圧ローラー65Lから定着ベルト61に伝達されない。制御部100は、左端加圧ローラー65Lが駆動軸65Aに連結又は非連結されるように電磁クラッチ68を制御する。
【0055】
図7に示さないが、下加圧ローラー65の幅方向Xの右端部に搬送速度変更部67Rが配置されている(
図8参照)。搬送速度変更部67Rは、駆動軸65Aと右端加圧ローラー65Rとの連結及び連結の解除(非連結)を行う電磁クラッチ68を有する。電磁クラッチ68が駆動軸65Aと右端加圧ローラー65Rとを連結する場合、駆動力が右端加圧ローラー65Rから定着ベルト61に伝達される。一方、電磁クラッチ68が駆動軸65Aと右端加圧ローラー65Rとの連結を解除する場合、右端加圧ローラー65Rが駆動されないで、駆動力が右端加圧ローラー65Rから定着ベルト61に伝達されない。制御部100は、右端加圧ローラー65Rが駆動軸65Aに連結又は非連結されるように電磁クラッチ68を制御する。
【0056】
次に、搬送速度変更部67の詳細について
図8および
図9を参照して説明する。
図8は、片ループが検出されない場合における搬送速度変更部67の説明図である。
図9は、右ループが検出される場合における搬送速度変更部67の説明図である。
図8および
図9に、下加圧ローラー65による用紙Sの搬送速度の大きさ及び定着ベルト61による用紙Sの搬送速度の大きさを、矢印の大きさで示す。
【0057】
先ず、定着ニップに進入する用紙Sの搬送速度が幅方向Xに均等な場合について、
図8を参照して説明する。定着ニップに進入する用紙Sの搬送速度が幅方向Xに均等な場合、片ループが検出されない。
【0058】
制御部100は、片ループが検出されない場合、左端加圧ローラー65Lが駆動軸65Aに連結されないように電磁クラッチ68を制御する。また、制御部100は、右端加圧ローラー65Rを駆動軸65Aに連結されないように電磁クラッチ68を制御する。この場合、駆動軸65Aの駆動力が中央加圧ローラー65Cから定着ベルト61の幅方向中央部に伝達される。このとき、左端加圧ローラー65Lおよび右端加圧ローラー65Rから定着ベルト61の幅方向端部に駆動力が伝達されないため、定着ベルト61の幅方向端部は、中央加圧ローラー65Cに対向する定着ベルト61の幅方向中央部と同じ速度で駆動される。これにより、
図8に示すように、定着ベルト61による用紙Sの搬送速度は幅方向Xに均等になるため、中央加圧ローラー65Cおよび定着ベルト61の幅方向中央部は、用紙Sを幅方向Xに均等な搬送速度で搬送する。なお、片ループが検出されない場合、右端加圧ローラー65R(左端加圧ローラー65L)は、用紙Sの通紙範囲外で、通紙時に用紙Sに接触しない。これにより、右端加圧ローラー65R(左端加圧ローラー65L)が定着ベルト61の幅方向端部に従動することで、右端加圧ローラー65R等の搬送速度が中央加圧ローラー65Cの搬送速度より遅くなっても問題が生じることはない。
【0059】
次に、定着ニップに進入する用紙Sの搬送速度が幅方向Xに均等でない場合について、
図9を参照して説明する。定着ニップに進入する用紙Sの搬送速度が幅方向Xに均等でない場合、片ループが検出される。ここでは、例えば、右ループが検出される場合について説明する。
【0060】
制御部100は、右ループが検出される場合、右端加圧ローラー65Rを駆動軸65Aに連結させるように電磁クラッチ68を制御する。一方、制御部100は、左端加圧ローラー65Lを駆動軸65Aに連結されないように電磁クラッチ68を制御する。この場合、駆動軸65Aの駆動力が中央加圧ローラー65Cから定着ベルト61の幅方向中央部に伝達される。また、駆動軸65Aの駆動力が右端加圧ローラー65Rから定着ベルト61の幅方向右端部に伝達される。なお、駆動力は左端加圧ローラー65Lから定着ベルト61の幅方向左端部に伝達されない。右端加圧ローラー65Rの外径が中央加圧ローラー65Cの外径より大きいため、右端加圧ローラー65Rの周速は、中央加圧ローラー65Cの周速より大きい。これにより、右端加圧ローラー65Rに対向する定着ベルト61の幅方向右端部は、中央加圧ローラー65Cに対向する定着ベルト61の幅方向中央部より大きな速度で駆動される。その結果、
図9に示すように、定着ベルト61による用紙Sの搬送速度が幅方向Xに片寄りを生じて(幅方向右側が大きく、幅方向左側が小さい)、用紙Sの右側側縁の搬送速度が左側側縁の搬送速度より大きくなるため、右ループが小さくなって解消される。制御部100は、右ループが解消された場合(右ループが検出されない場合)、右端加圧ローラー65Rが駆動軸65Aに連結されないように電磁クラッチ68を制御する。
【0061】
次に、用紙Sの搬送速度の切替処理について
図10を参照して説明する。
図10は用紙Sの搬送速度の切替処理を示すフローチャートである。本フローは、二次転写ローラー424から定着部60に向けて用紙Sが搬送されるとき(通紙時)に開始される。
【0062】
ステップS100において、制御部100は、ゆがみ検出部66の検出結果に基づいて、片ループが検出されたことを判断する。
【0063】
次に、ステップS110において、制御部100は、用紙Sのどちら側で片ループが検出されたかを判断する。
【0064】
片ループが用紙Sのどちら側でもない場合(ステップS110:CASE=1)、制御部100は、左右両側の電磁クラッチ68を制御して、駆動軸65Aと左端加圧ローラー65Lとの連結を解除し、また、駆動軸65Aと右端加圧ローラー65Rとの連結を解除する(ステップS120)。
【0065】
次に、ステップS130において、制御部100は通紙が終了か否かについて判断する。通紙が終了である場合(ステップS130:YES)、処理は終了する。通紙が終了でない場合(ステップS130:NO)、処理はステップS100に移る。
【0066】
片ループが用紙Sの右側で発生している場合(ステップS110:CASE=2)、制御部100は、右側の電磁クラッチ68を制御して、駆動軸65Aと右端加圧ローラー65Rとを連結する(ステップS140)。その後、処理はステップS130に移る。
【0067】
片ループが用紙Sの左側で発生している場合(ステップS110:CASE=3)、制御部100は、左側の電磁クラッチ68を制御して、駆動軸65Aと左端加圧ローラー65Lとを連結する(ステップS150)。その後、処理はステップS130に移る。
【0068】
上記実施の形態に係る定着装置によれば、定着ベルト61と、定着ニップに進入する用紙Sのゆがみを検出するゆがみ検出部66と、定着ベルト61の幅方向における搬送速度を変更する搬送速度変更部67と、ゆがみが検出された場合、定着ベルト61の幅方向における搬送速度を変更させることによりゆがみを解消するように、搬送速度変更部67を制御する制御部100と、を備える。これにより、片ループが検出された場合、制御部100がゆがみを解消するように定着ベルト61による搬送速度を変更させる。その結果、片ループが小さくなって、片ループを解消することができる。
【0069】
次に、本実施の形態の変形例1について説明する。上記実施の形態では、搬送速度変更部67は、駆動軸65Aと電磁クラッチ68とを有する。中央加圧ローラー65Cが駆動軸65Aに連結されている。例えば、左端加圧ローラー65Lが電磁クラッチ68を介して駆動軸65Aに連結又は非連結される。制御部100は、左端加圧ローラー65Lが駆動軸65Aに連結又は非連結されるように電磁クラッチ68を制御する。
【0070】
図11は、変形例1に係る搬送速度変更部67Aを概略的に示す図である。搬送速度変更部67Aは、下加圧ローラー65の左側および右側に設けられている。以下、搬送速度変更部67を代表して、左側の搬送速度変更部67Aについて説明する。変形例1では、
図11に示すように、搬送速度変更部67Aは、駆動軸65Aと、駆動軸65Bと、二つの歯車69A,69Bを有する歯車伝達機構とを備える。中央加圧ローラー65Cが駆動軸65Aに連結されている。歯車69Aが駆動軸65Bに連結される。歯車69Bが左端加圧ローラー65Lに一体的に設けられている。これにより、駆動軸65Aから中央加圧ローラー65Cに伝達される駆動力の伝達経路と、駆動軸65Bから歯車伝達機構(歯車69A,69B)を介して左端加圧ローラー65Lに伝達される駆動力の伝達経路とが相互に独立して設けられる。
【0071】
制御部100は、片ループが検出されない場合、駆動軸65Aを所定速度で回転させる一方で、駆動軸65Bを回転停止(非回転)させる。これにより、駆動軸65Aの駆動力が中央加圧ローラー65Cから定着ベルト61の幅方向中央部に伝達される。このとき、左端加圧ローラー65Lおよび右端加圧ローラー65Rから定着ベルト61の幅方向端部に駆動力が伝達されないため、定着ベルト61の幅方向左端部は、中央加圧ローラー65Cに対向する定着ベルト61の幅方向中央部と同じ速度で駆動される。また、定着ベルト61の幅方向右端部も、中央加圧ローラー65Cに対向する定着ベルト61の幅方向中央部と同じ速度で駆動される。その結果、定着ベルト61による用紙Sの搬送速度は幅方向に均等になるため、中央加圧ローラー65Cおよび定着ベルト61の幅方向中央部は、用紙Sを幅方向に均等な搬送速度で搬送する。
【0072】
制御部100は、例えば左ループが検出される場合、左側の搬送速度変更部67Aにおける駆動軸65Bを所定速度で回転させる。これにより、歯車伝達機構を介して左端加圧ローラー65Lから定着ベルト61に駆動軸65Bの駆動力が伝達される。このとき、左端加圧ローラー65Lの外径が中央加圧ローラー65Cの外径より大きいため、左端加圧ローラー65Lから定着ベルト61の幅方向左端部に伝達される駆動軸65Bの駆動力は、中央加圧ローラー65Cから定着ベルト61の幅方向中央部に伝達される駆動軸65Aの駆動力より大きくなる。その結果、定着ベルト61の幅方向左端部の搬送速度が定着ベルト61の幅方向中央部の搬送速度より大きくなる。また、左端加圧ローラー65Lの搬送速度が中央加圧ローラー65Cの搬送速度より大きくなる。これにより、左ループが小さくなって解消される。
【0073】
なお、変形例1においては、制御部100が例えば、駆動軸65Aに対する駆動軸65Bの相対回転速度を可変させてもよい。これにより、中央加圧ローラー65Cによる用紙Sの搬送速度と左端加圧ローラー65L(又は右端加圧ローラー65R)による用紙Sの搬送速度との差を自在に調整することができる。また、中央加圧ローラー65Cに対向する定着ベルト61の幅方向中央部による用紙Sの搬送速度と、左端加圧ローラー65L(又は右端加圧ローラー65R)に対向する定着ベルト61の幅方向端部による用紙Sの搬送速度との差を自在に調整することができる。その結果、片ループをループ量に応じて解消することができる。
【0074】
次に、本実施の形態の変形例2について説明する。上記実施の形態では、左端加圧ローラー65L(右端加圧ローラー65R)の外径が中央加圧ローラー65Cの外径より大きく。これにより、左端加圧ローラー65L(右端加圧ローラー65R)の周速を中央加圧ローラー65Cの周速より大きくして、左端加圧ローラー65L(右端加圧ローラー65R)に対向する定着ベルト61の幅方向端部による用紙Sの搬送速度を、中央加圧ローラー65Cに対向する定着ベルト61の幅方向中央部による用紙Sの搬送速度より大きくする。その結果、用紙Sの幅方向一端側縁に発生した片ループを解消する。
【0075】
図12Aは、変形例2に係る下加圧ローラー65を用紙搬送方向から見た場合の矢視図である。
図12B及び
図12Cは、
図12Aの部分矢視図である。変形例2では、
図12Aに示すように、左端加圧ローラー65L(右端加圧ローラー65R)の外径と中央加圧ローラー65Cの外径とは同じである。左端加圧ローラー65L(右端加圧ローラー65R)の摩擦係数μ2は、中央加圧ローラー65Cの摩擦係数μ1より大きい。
【0076】
図12Bに、片ループが検出されない場合における下加圧ローラー65による用紙Sの搬送速度の大きさ及び定着ベルト61による用紙Sの搬送速度の大きさを、矢印の大きさで示す。片ループが検出されない場合、制御部100は右端加圧ローラー65R(左端加圧ローラー65L)を駆動軸65Aに非連結させるように電磁クラッチ68を制御する。これにより、中央加圧ローラー65Cから定着ベルト61の幅方向中央部に駆動力が伝達される。このとき、中央加圧ローラー65Cの摩擦係数μ1が比較的小さいため、定着ベルト61の幅方向中央部は、中央加圧ローラー65Cの搬送速度に対して所定の割合だけ遅い速度で駆動される。定着ベルト61の幅方向端部は、右端加圧ローラー65Rから定着ベルト61の幅方向端部に駆動力が伝達されないため、定着ベルト61の幅方向中央部と同じ速度で駆動される(
図12B参照)。これにより、中央加圧ローラー65Cおよび定着ベルト61の幅方向中央部は、用紙Sを幅方向に均等な搬送速度で搬送する。なお、片ループが検出されない場合、右端加圧ローラー65R(左端加圧ローラー65L)は、用紙Sの通紙範囲外で、通紙時に用紙Sに接触しない。これにより、右端加圧ローラー65R(左端加圧ローラー65L)が定着ベルト61の幅方向端部に従動することで、それらの搬送速度が中央加圧ローラー65Cの搬送速度より遅くなっても問題が生じることはない。
【0077】
図12Cに、右ループが検出される場合における下加圧ローラー65による用紙Sの搬送速度の大きさ及び定着ベルト61による用紙Sの搬送速度の大きさを、矢印の大きさで示す。右ループが検出される場合、制御部100は、右端加圧ローラー65Rを駆動軸65Aに連結させるように電磁クラッチ68を制御する。一方、制御部100は、左端加圧ローラー65Lを駆動軸65Aに非連結させるように電磁クラッチ68を制御する。この場合、駆動軸65Aの駆動力が中央加圧ローラー65Cから定着ベルト61の幅方向中央部に伝達される。また、駆動軸65Aの駆動力が右端加圧ローラー65Rから定着ベルト61の幅方向右端部に伝達される。なお、駆動力は左端加圧ローラー65Lから定着ベルト61の幅方向左端部に伝達されない。右端加圧ローラー65Rの摩擦係数μ2が中央加圧ローラー65Cの摩擦係数μ1より大きいため、右端加圧ローラー65Rから定着ベルト61の幅方向右端部に伝達される駆動力は、中央加圧ローラー65Cから定着ベルト61の幅方向中央部に伝達される駆動力より大きい。これにより、中央加圧ローラー65C及び右端加圧ローラー65Rが同じ回転速度であっても、右端加圧ローラー65Rに対向する定着ベルト61の幅方向右端部は、中央加圧ローラー65Cに対向する定着ベルト61の幅方向中央部より大きな速度で駆動される(
図12B参照)。その結果、定着ベルト61による用紙Sの搬送速度が幅方向に片寄りを生じて(幅方向右側が大きく、幅方向左側が小さい)、用紙Sの右側側縁の搬送速度が左側側縁の搬送速度より大きくなるため、右ループが小さくなって、解消される。
【0078】
次に、本実施の形態の変形例3について説明する。上記実施の形態では、片ループが検出された場合、搬送速度変更部67Rが制御されて、右端加圧ローラー65R(左端加圧ローラー65L)が回転し、右端加圧ローラー65R(左端加圧ローラー65L)に対向する定着ベルト61の幅方向端部が定着ベルト61の幅方向中央部より大きな速度で駆動されるため、定着ベルト61の片寄りが発生する場合がある。
【0079】
図13Aおよび
図13Bは、変形例3に係る加熱ローラー62を上方から見たときの矢視図である。
図13Aに示すように、定着ベルト61の片寄りを調整するステアリング機構(図示略)が設けられている。ステアリング機構は、加熱ローラー62の回転軸を幅方向中央部回りに所定角度範囲で回転させる。制御部100は、例えば左ループが検出され、左側の搬送速度変更部67Lを制御する場合、定着ベルト61が片寄り方向(
図13Aに白抜きの矢印で示す左方向)に対して、加熱ローラー62の回転軸を
図13Aに実線の矢印で示す時計回りの方向に回転させるように、ステアリング機構を制御する。その結果、定着ベルト61の片寄りに対して、加熱ローラー62が遠ざかるように移動するため、定着ベルト61と加熱ローラー62との相対的な位置関係が一定に保たれる。
【0080】
なお、
図13Bに示すように、例えば、左ループが検出される傾向にある場合、加熱ローラー62の中心軸を、
図13Bに破線の矢印で示すように、時計回りの方向に予め所定角度だけ傾けておくとよい。
【0081】
なお、上記実施の形態では、アクチュエータを有するゆがみ検出部66が設けられているが、本発明はこれに限らず、ゆがみ検出部66には、公知の技術、例えば、片ループをレーザー光にて非接触で検出するレーザー変位計が用いられてもよい。
【0082】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明の実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0083】
60 定着部
61 定着ベルト
62 加熱ローラー
63 上加圧ローラー
64 ガイド板
65 下加圧ローラー
65A,65B 駆動軸
65C 中央加圧ローラー
65L 左端加圧ローラー
65R 右端加圧ローラー
66 ゆがみ検出部
67,67A,67L,67R 搬送速度変更部
68 電磁クラッチ
69A,69B 歯車
100 制御部