IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロンヘルスケア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-血圧計 図1
  • 特許-血圧計 図2
  • 特許-血圧計 図3
  • 特許-血圧計 図4
  • 特許-血圧計 図5
  • 特許-血圧計 図6
  • 特許-血圧計 図7
  • 特許-血圧計 図8
  • 特許-血圧計 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】血圧計
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
A61B5/022 500L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018002070
(22)【出願日】2018-01-10
(65)【公開番号】P2019118708
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】澤野井 幸哉
(72)【発明者】
【氏名】今村 美貴
【審査官】伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-257522(JP,A)
【文献】特開2007-135717(JP,A)
【文献】中国実用新案第2882529(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 - 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定部位を圧迫する血圧測定用カフの圧力を表示画面に電子的にグラフ表示する血圧計であって、
上記表示画面が表示される領域を空間的に画定するフレームと、
上記表示画面に一方向に沿って表示され、圧力の値を読み取り可能にするための目盛表示と、
上記表示画面に表示され、上記カフの圧力を上記目盛表示に対する位置によって表すマークと、
上記圧力が変化するとき、上記マークが上記フレーム内に収まるように、予め定められた圧力変化速度または上記カフの加圧過程若しくは減圧過程で実測して得られた圧力変化速度に対応するスライド速度で、上記フレームに対して上記目盛表示を上記一方向に沿ってスライドさせる制御を行う表示制御部と
を備えたことを特徴とする血圧計。
【請求項2】
請求項1に記載の血圧計において、
上記表示制御部は、上記マークが上記フレーム内に表示された上記目盛表示の中央から予め定められた許容範囲内を指しているとき、上記圧力の変化にかかわらず、上記フレームに対して上記目盛表示のスライドを停止させる制御を行うことを特徴とする血圧計。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血圧計において、
上記実測して得られた圧力変化速度として、上記カフの圧力から上記被測定部位が示す脈波に伴う圧力変動成分を除去して、少なくとも或る期間にわたって定常的な圧力変化速度を得る圧力変化速度取得部を備えたことを特徴とする血圧計。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記目盛表示は、上記表示画面に上記一方向としての縦方向に沿って表示され、
上記マークは上記目盛表示に沿って上記縦方向に延在する棒グラフであり、
上記表示制御部は、上記目盛表示を上記縦方向に沿ってスライドさせることを特徴とする血圧計。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記カフに空気を供給し又は上記カフから空気を排出して圧力を制御する圧力制御部と、
上記カフの加圧過程若しくは減圧過程で、上記カフの圧力に基づいてオシロメトリック法により血圧を算出する血圧算出部と
を備えたことを特徴とする血圧計。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記フレーム内に表示される上記目盛表示が示す圧力範囲は、最小目盛0mmHgから最大目盛300mmHgまでの範囲内の一部である100mmHg乃至110mmHg分に相当することを特徴とする血圧計。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記表示制御部は、上記フレームの対向する2辺のうち上記目盛表示の低圧側に相当する第1の辺と高圧側に相当する第2の辺との間で、最小目盛0mmHgが上記第1の辺に沿った所から上記第2の辺側へ向かって離れるのを禁止する一方、最大目盛300mmHgが上記第2の辺に沿った所から上記第1の辺側へ向かって離れるのを禁止することによって、上記フレームに対して上記目盛表示がスライドする範囲を規制する制御を行うことを特徴とする血圧計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は血圧計に関し、より詳しくは、血圧測定用カフの圧力を表示画面に電子的にグラフ表示する血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
水銀柱血圧計のような水銀を使った機器の製造、輸出入は、2020年以降、原則として禁止される(水銀に関する水俣条約)。このため、水銀柱を模した電子的なグラフ表示を行う血圧計が注目されている。例えば、特許文献1(特開2007-135717号公報)には、カフの中の圧力の測定値を、棒グラフ(バーグラフ)として表示するためのアナログ状表示器を備えたものが開示されている。このアナログ状表示器は、0mmHgから300mmHgまでの目盛に沿って並べられた、各々1mmHgまたは2mmHgの圧力量に相当する複数のセグメントを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-135717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の血圧計では、表示器に0mmHgから300mmHgまでの目盛の全範囲が固定して表示されているため、表示画面のサイズ(縦方向のサイズ)が大きい割に表示の分解能が1mmHgまたは2mmHg単位というように粗い、という問題がある。
【0005】
そこで、この発明の課題は、血圧測定用カフの圧力を表示画面に電子的にグラフ表示できる上、表示の分解能を高めることができる血圧計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この開示の血圧計は、
被測定部位を圧迫する血圧測定用カフの圧力を表示画面に電子的にグラフ表示する血圧計であって、
上記表示画面が表示される領域を空間的に画定するフレームと、
上記表示画面に一方向に沿って表示され、圧力の値を読み取り可能にするための目盛表示と、
上記表示画面に表示され、上記カフの圧力を上記目盛表示に対する位置によって表すマークと、
上記圧力が変化するとき、上記マークが上記フレーム内に収まるように、予め定められた圧力変化速度または上記カフの加圧過程若しくは減圧過程で実測して得られた圧力変化速度に対応するスライド速度で、上記フレームに対して上記目盛表示を上記一方向に沿ってスライドさせる制御を行う表示制御部と
を備えたことを特徴とする。
【0007】
ここで、「予め定められた圧力変化速度」は、例えば加圧過程若しくは減圧過程での圧力変化速度が既知である場合に、その圧力変化速度に対応するスライド速度を用いることを意味する。上記カフの「加圧過程若しくは減圧過程で実測して得られた圧力変化速度」は、典型的には、その加圧過程若しくは減圧過程の初期に圧力変化速度を実測して求め、その圧力変化速度に対応するスライド速度を用いることを意味する。
【0008】
この開示の血圧計では、表示画面に、上記カフの圧力の値を読み取り可能にするための目盛表示が一方向に沿って表示される。また、上記表示画面に、上記カフの圧力を上記目盛表示に対する位置によって表すマークが表示される。血圧測定用カフの圧力が変化するとき、表示制御部は、上記マークが上記フレーム内に収まるように、予め定められた圧力変化速度または上記カフの加圧過程若しくは減圧過程で実測して得られた圧力変化速度に対応するスライド速度で、上記フレームに対して上記目盛表示を上記一方向に沿ってスライドさせる制御を行う。これにより、上記マークが上記フレーム内に収まる状態で、上記カフの圧力が上記マークの上記目盛表示に対する位置によって読み取り可能となる。このようにして、上記カフの圧力が表示画面に電子的にグラフ表示される。したがって、ユーザ(医師、看護師などの医療関係者、および、被験者などを含む。)は、伝統的な水銀柱血圧計を見るときと同様のアナログ的な感覚で、上記圧力の値を読み取ることができる。しかも、この血圧計では、上記フレーム内で上記目盛表示が示す圧力範囲は、スライドによって表示可能な全範囲(例えば、伝統的な水銀柱血圧計と同じ最小目盛0mmHgから最大目盛300mmHgまでの範囲)内の一部の範囲として設定することができる。そのようにした場合、上記目盛表示のスライド方向に関する表示画面のサイズ(上記フレームのサイズに相当)の割に表示の分解能を高めることができる。
【0009】
一実施形態の血圧計では、上記表示制御部は、上記マークが上記フレーム内に表示された上記目盛表示の中央から予め定められた許容範囲内を指しているとき、上記圧力の変化にかかわらず、上記フレームに対して上記目盛表示のスライドを停止させる制御を行うことを特徴とする。
【0010】
上記マークが上記フレーム内に表示された上記目盛表示の中央から予め定められた許容範囲内を指しているとき、上記目盛表示をスライドさせる必要性は少ない。そこで、この一実施形態の血圧計では、上記表示制御部は、上記マークが上記フレーム内で上記目盛表示の中央から予め定められた許容範囲内を指しているとき、上記圧力の変化にかかわらず、上記フレームに対して上記目盛表示のスライドを停止させる制御を行う。これにより、ユーザが上記圧力の値を読み取り易くなる。
【0011】
一実施形態の血圧計では、上記実測して得られた圧力変化速度として、上記カフの圧力から上記被測定部位が示す脈波に伴う圧力変動成分を除去して、少なくとも或る期間にわたって定常的な圧力変化速度を得る圧力変化速度取得部を備えたことを特徴とする。
【0012】
ここで、「或る期間」とは、典型的には、加圧過程若しくは減圧過程の初期の1秒間ないし数秒間の期間を指す。ただし、圧力変化速度取得部は、加圧過程若しくは減圧過程の進行に伴って逐次、定常的な圧力変化速度を得てもよい。
【0013】
この一実施形態の血圧計では、圧力変化速度取得部は、上記実測して得られた圧力変化速度として、上記カフの圧力から上記被測定部位が示す脈波に伴う圧力変動成分を除去して、少なくとも或る期間にわたって定常的な圧力変化速度を得る。上記表示制御部は、この圧力変化速度に対応するスライド速度で、上記フレームに対して上記目盛表示をスライドさせる。これにより、上記マークが上記フレーム内に収まるように、上記フレームに対して上記目盛表示を適切なスライド速度でスライドさせることができる。特に、上記カフの圧力に含まれた上記脈波に伴う圧力変動成分によって上記フレームに対する上記目盛表示のスライド速度または位置が受ける影響を少なくすることができる。
【0014】
なお、仮に、上記カフの圧力から上記被測定部位が示す脈波に伴う圧力変動成分を除去せず、上記カフの圧力変化速度にそのまま対応させて上記フレームに対して上記目盛表示をスライドさせる場合は、上記脈波に伴う圧力変動成分のせいで、上記フレームに対する上記目盛表示のスライド速度が短時間に変動したり、上記目盛表示の位置が短時間に上下したりする。このため、上記表示画面を見ているユーザに違和感を与える結果となる。
【0015】
一実施形態の血圧計では、
上記目盛表示は、上記表示画面に上記一方向としての縦方向に沿って表示され、
上記マークは上記目盛表示に沿って上記縦方向に延在する棒グラフであり、
上記表示制御部は、上記目盛表示を上記縦方向に沿ってスライドさせることを特徴とする。
【0016】
この一実施形態の血圧計では、表示画面の外観が伝統的な水銀柱血圧計におけるのと略同じになる。したがって、伝統的な水銀柱血圧計の使用に慣れたユーザにとって、この血圧計を使用する際の違和感が少ない。
【0017】
一実施形態の血圧計では、
上記カフに空気を供給し又は上記カフから空気を排出して圧力を制御する圧力制御部と、
上記カフの加圧過程若しくは減圧過程で、上記カフの圧力に基づいてオシロメトリック法により血圧を算出する血圧算出部と
を備えたことを特徴とする。
【0018】
この一実施形態の血圧計では、圧力制御部が、上記カフに空気を供給し又は上記カフから空気を排出して圧力を制御する。これとともに、血圧算出部が、上記カフの加圧過程若しくは減圧過程で、上記カフの圧力に基づいてオシロメトリック法により血圧を算出する。したがって、自動的に血圧値が測定され得る。
【0019】
なお、それに代えて、例えば医師が、上記血圧計の表示画面を見ながら、被験者の被測定部位に聴診器を当てて、聴診法により血圧を測定してもよい。
【0020】
一実施形態の血圧計では、上記フレーム内に表示される上記目盛表示が示す圧力範囲は、最小目盛0mmHgから最大目盛300mmHgまでの範囲内の一部である100mmHg乃至110mmHg分に相当することを特徴とする。
【0021】
この一実施形態の血圧計では、表示画面のサイズの割に表示の分解能が高まる。すなわち、上記目盛表示のスライド方向に関する上記フレームのサイズ(表示画面のサイズに相当)が同じであれば、上記フレーム内に最小目盛0mmHgから最大目盛300mmHgまでの全範囲が同時に表示される場合に比して、表示の分解能が約3倍に高まる。逆に、上記目盛表示のスライド方向に関する表示の分解能が同じで良ければ、上記目盛表示のスライド方向に関する上記フレームのサイズを小さくすることができる。
【0022】
なお、仮に、上記フレーム内に表示された上記目盛表示が示す圧力範囲が、例えば150mmHg分よりも広いときは、表示の分解能を十分に高めることができない。一方、上記フレーム内で上記目盛表示が示す圧力範囲が、例えば50mmHg分よりも狭いときは、表示画面内で上記カフの圧力に含まれた上記脈波に伴う圧力変動成分が大きく見えすぎて、むしろ使い難くなる。
【0023】
一実施形態の血圧計では、上記表示制御部は、上記フレームの対向する2辺のうち上記目盛表示の低圧側に相当する第1の辺と高圧側に相当する第2の辺との間で、最小目盛0mmHgが上記第1の辺に沿った所から上記第2の辺側へ向かって離れるのを禁止する一方、最大目盛300mmHgが上記第2の辺に沿った所から上記第1の辺側へ向かって離れるのを禁止することによって、上記フレームに対して上記目盛表示がスライドする範囲を規制する制御を行うことを特徴とする。
【0024】
この一実施形態の血圧計では、上記フレームに対して上記目盛表示が血圧計として無用な範囲にスライドするのが規制される。したがって、使い勝手が良くなる。例えば、伝統的な水銀柱血圧計の使用に慣れたユーザにとって、この血圧計を使用する際の違和感が少ない。
【発明の効果】
【0025】
以上より明らかなように、この開示の血圧計によれば、血圧測定用カフの圧力を表示画面に電子的にグラフ表示できる上、表示の分解能を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の一実施形態の電子血圧計(以下、単に「血圧計」と呼ぶ。)の外観を示す斜視図である。
図2】上記血圧計の制御系のブロック構成を示す図である。
図3】上記血圧計におけるオシロメトリック法による血圧測定モードのフローを示す図である。
図4】上記血圧計における聴診器による血圧測定モードのフローを示す図である。
図5図5(A)~図5(C)は、上記血圧計の表示器の表示内容が変化してゆく態様を例示する図である。
図6図6(A)~図6(C)は、上記血圧計の表示器の表示内容が変化してゆく態様を例示する図である。
図7図7(A)~図7(C)は、上記血圧計の表示器の表示内容が変化してゆく態様を例示する図である。
図8図8(A)は、上記血圧計による血圧測定に伴う、カフ圧の時間的変化を例示する図である。図8(B)は、カフ圧の時間的変化に伴う、上記表示器における目盛表示のスライド量を例示する図である。
図9】カフ圧が260mmHg以上に上昇した場合の、上記血圧計の表示器の表示内容を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図1は、この発明の一実施形態の血圧計(全体を符号1で示す。)の外観を示している。この血圧計1は、被測定者の上腕に装着される血圧測定用カフ20と、自立型の本体10と、カフ20と本体10とを接続するフレキシブルなエアチューブ38とを備えている。カフ20には上腕を圧迫するための流体袋22(図2参照)が内包されている。本体10の前面には、表示器50と、操作部52とが設けられている。
【0029】
表示器50は、この例ではLCD(液晶表示素子)からなり、後述の制御部としてのCPU(Central Processing Unit)100(図2参照)からの制御信号に従って、表示画面500に電子的にグラフ表示、および、その他の血圧測定に関連する表示を行う。この例では、表示画面500が表示される領域は、一方向(この例では、縦方向)に細長い矩形枠状のフレーム500Fによって空間的に画定されている。この例では、表示画面500は、縦方向に沿って目盛表示501を表示するとともに、この目盛表示501に沿ってマークをなす棒グラフ502を表示するようになっている。目盛表示501は、後述するようにフレーム500Fに対して縦方向に沿ってスライドされ、カフ20(流体袋22)の圧力(以下、「カフ圧Pc」と呼ぶ。)の値を読み取り可能にする。棒グラフ502は、目盛表示501に対する頂部502Tの位置によって、カフ20の圧力Pcを表す。詳しくは、図5(A)に示すように、この例では、表示画面500(フレーム500F)の中央に棒グラフ502が表示され、この棒グラフ502の両側に、目盛表示501が左右2つの部分501L,501Rに分かれて表示される。この結果、表示画面500の外観が伝統的な水銀柱血圧計におけるのと略同じになる。したがって、伝統的な水銀柱血圧計の使用に慣れたユーザにとって、この血圧計1を使用する際の違和感が少ない。
【0030】
フレーム500F内に表示される目盛表示501が示す圧力範囲は、最小目盛0mmHgから最大目盛300mmHgまでの範囲内の一部である約100mmHg分に相当する。図5(A)の例では、フレーム500Fの低圧側に相当する第1の辺としての下辺500Fbと高圧側に相当する第2の辺としての上辺500Faとの間に、目盛0mmHgから目盛100mmHgまでが表示されている。これにより、表示画面500のサイズの割に表示の分解能が高まる。すなわち、フレーム500Fの縦方向のサイズ(表示画面500の縦方向のサイズに相当)が同じであれば、フレーム500F内に最小目盛0mmHgから最大目盛300mmHgまでの全範囲が同時に表示される場合に対して、表示の分解能が約3倍に高まる。逆に、フレーム500F内に最小目盛0mmHgから最大目盛300mmHgまでの全範囲が同時に表示される場合に対して表示の分解能が同じで良ければ、フレーム500Fの縦方向のサイズを小さくすることができる。
【0031】
より具体的には、この例では、フレーム500F内の下部(下辺500Fbに沿った所)と上部(上辺500Faに沿った所)にそれぞれ圧力値(図5(A)の例では、「0mmHg」と「100mmHg」という表示)が表示されるように、フレーム500F内に表示される目盛表示501が示す圧力範囲は、100mmHg分よりも数mmHg分だけ広く、せいぜい110mmHg分までに設定されている。以下では、簡単のため、これを100mmHg分と称する。
【0032】
図1に示すように、操作部52は、この例では、本体10の前面のうち表示器50の右側に配置された電源スイッチ52A、測定開始スイッチ52Bおよび測定停止スイッチ52Cと、表示器50の下側に配置された加圧値設定ボリューム52Dおよび測定モード切換スイッチ52Eとを含んでいる。電源スイッチ52Aは、ユーザ(医師、看護師などの医療関係者、および、被験者などを含む。)がこの血圧計1の電源のオン/オフを行うためのスイッチである(なお、以下の説明では、電源スイッチ52Aがオンされているものとする。)。測定開始スイッチ52B、測定停止スイッチ52Cは、それぞれユーザが血圧測定の開始、停止を指示するためのスイッチである。加圧値設定ボリューム52Dは、血圧測定の際のカフ20による加圧設定値(上限値)をユーザ設定可能にするスイッチである。測定モード切換スイッチ52Eは、ユーザがこの血圧計1の測定モードを切り換えて設定するためのスイッチである。この例では、オシロメトリック法により自動的に血圧値を測定するモードと、ユーザが聴診器を用いて血圧値を測定するモード(カフ20の加圧、減圧は自動的に行われる)とが切り換え可能になっているものとする。これらのスイッチ52A,52B,52C,52D,52Eは、ユーザによる指示に応じた操作信号をCPU100に入力する。
【0033】
図2に示すように、本体10には、上述の表示器50と操作部52に加えて、CPU100と、メモリ51と、電源部53と、カフ圧Pcを検出するためのピエゾ抵抗式の圧力センサ31と、流体袋22に流体としての空気を供給するポンプ32と、その空気を外部環境(大気圧にある)へ放出してカフ圧Pcを調節するための弁33と、圧力センサ31からの出力を周波数に変換する発振回路310と、ポンプ32を駆動するポンプ駆動回路320と、弁33を駆動する弁駆動回路330とが搭載されている。圧力センサ31、ポンプ32、弁33は、本体内部に設けられたエア配管39とこのエア配管39に連通する上記エアチューブ38とを介して、カフ20に内包された流体袋22と接続されている。これにより、圧力センサ31、ポンプ32、弁33と、流体袋22との間で、流体としての空気が流通するようになっている。
【0034】
メモリ51は、血圧計1を制御するためのプログラム、血圧計1の各種機能を設定するための設定データ、血圧値の測定結果のデータを記憶する。また、メモリ51は、プログラムが実行されるときのワークメモリなどとして用いられる。
【0035】
電源部53は、CPU100、圧力センサ31、ポンプ32、弁33、表示器50、メモリ51、発振回路310、ポンプ駆動回路320、および弁駆動回路330の各部に電力を供給する。
【0036】
発振回路310は、圧力センサ31からのピエゾ抵抗効果による電気抵抗の変化に基づく電気信号値に基づき発振して、圧力センサ31の電気信号値に応じた周波数を有する周波数信号をCPU100に出力する。
【0037】
CPU100は、メモリ51に記憶された血圧計1を制御するためのプログラムに従って圧力制御部として働いて、操作部52からの操作信号に応じて、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32を駆動するとともに、弁駆動回路330を介して弁33を駆動する制御を行う。弁33は、流体袋22の空気を排出し、または封入してカフ圧Pcを制御するために開閉される。また、CPU100は、オシロメトリック法による血圧測定モードでは血圧算出部として働いて、圧力センサ31からの信号に基づいて血圧値を算出する。また、CPU100は、表示制御部として表示器50の表示内容を制御するとともに、メモリ51を制御する。
【0038】
図3は、血圧計1におけるオシロメトリック法による血圧測定モード(この例では、測定モード切換スイッチ52Eによって指示されているものとする。)のフローを示している。ここで、図3図5図8を参照しながら、血圧測定に伴う表示画面500の表示内容について説明する。なお、測定に際して予め、被験者の被測定部位(この例では上腕)にカフ20が巻き付けられる。
【0039】
i) 測定開始スイッチ52Bによる操作によって測定開始が指示されると、この血圧計1は、まず初期化の処理を行う(図3のステップS1)。すなわち、CPU100は、処理用メモリ領域を初期化する。また、CPU100は、ポンプ32をオフし、弁33を開いて、カフ20(流体袋22)内の空気を排気し、圧力センサ31の0mmHg調整(大気圧を0mmHgに設定する。)を行う。
【0040】
このとき、カフ圧Pcは、図8(A)中の時刻t0の状態にある。また、図5(A)に示すように、CPU100が表示制御部として働いて、表示器50に現在のカフ圧Pcである0mmHgを表示させる。具体的には、既述のように、表示器50における目盛表示501としては、表示可能な全範囲(最小目盛0mmHgから最大目盛300mmHgまでの範囲)のうち0mmHgから100mmHgまでの100mmHg分が表示されている。この目盛表示501に対する棒グラフ502の頂部502Tの位置が、現在のカフ圧Pcである0mmHgを指している。
【0041】
ii) 次に、CPU100は圧力制御部として働いて、弁33を閉鎖し、ポンプ32を駆動して、圧力センサ31によってカフ圧Pcを観測しながら、流体袋22に空気を送る制御を行う。これにより、流体袋22を膨張させるとともにカフ圧Pcを徐々に加圧していく(図3のステップS2)。カフ圧Pcの加圧速度は、例えば、20mmHg/秒~30mmHg/秒の範囲内の一定値に設定されているものとする。
【0042】
これにより、カフ圧Pcは、図8(A)中の時刻t0~t1に示すように、この例では一定の加圧速度で加圧されてゆく。この加圧過程で、図5(B)に示すように、CPU100が表示制御部として働いて、表示器50に現在のカフ圧Pcをリアルタイムで表示させる。図5(B)の例では、目盛表示501に対する棒グラフ502の頂部502Tの位置が、約45mmHgを指している。
【0043】
iii) また、この加圧過程で、CPU100が圧力変化速度取得部として働いて、圧力センサ31の出力に基づいて、実測して得られた圧力変化速度としての加圧速度を取得する(図3のステップS3)。このとき、CPU100は、実際のカフ20の圧力Pcから被測定部位が示す脈波に伴う圧力変動成分Pm(図8(A)参照)を除去して、少なくとも或る期間(典型的には、加圧過程の初期の1秒間ないし数秒間の期間)にわたって定常的な加圧速度を得る。なお、この加圧過程の全期間にわたって逐次、定常的な加圧速度を得てもよい。
【0044】
iv) また、この加圧過程で、CPU100が表示制御部として働いて、棒グラフ502の頂部502Tの位置がフレーム500F内に表示された目盛表示501の中央から予め定められた許容範囲AA内を指しているか否かを判断する(図3のステップS4)。
【0045】
この例では、図5(A)に示すように、許容範囲AAは、フレーム500F内に表示された目盛表示501の中央から±10mmHgの範囲として予め定められている(なお、後述のように、仮にフレーム500Fに対して目盛表示501が縦方向にスライドしたとしても、許容範囲AAは、フレーム500F内に現に表示された目盛表示501の中央から±10mmHgの範囲、言い換えれば、フレーム500Fの縦方向に関して中央近傍の範囲として定められている。)。すなわち、図5(A)~図5(C)に例示するように、表示器50における目盛表示501として0mmHgから100mmHgまでの100mmHg分が表示されている場合は、許容範囲AAは、40mmHgから60mmHgまでの範囲に相当する(なお、表示画面500には、許容範囲AAの上下限を示す破線は表示されない。)。ここで、例えば図5(B)の状態では、現在のカフ圧Pcが約45mmHgであり、したがって、棒グラフ502の頂部502Tの位置が許容範囲AA内を指している。このように、棒グラフ502の頂部502Tの位置が許容範囲AA内を指しているとき(図3のステップS4でYES)、CPU100は表示制御部として働いて、カフ圧Pcの変化にかかわらず、フレーム500Fに対して目盛表示501のスライドを停止させる制御を行う(図3のステップS5)。これにより、ユーザが圧力Pcの値を読み取り易くなる。
【0046】
v) 一方、棒グラフ502の頂部502Tの位置が許容範囲AA内を指していないとき(言い換えれば、許容範囲AAを外れようとしているとき)(図3のステップS4でNO)、CPU100は表示制御部として働いて、棒グラフ502の頂部502Tの位置が許容範囲AA内に収まるように、ステップS3で実測して得られた加圧速度に対応するスライド速度で、フレーム500Fに対して目盛表示501を縦方向に沿ってスライド(この加圧過程では、下降)させる制御を行う(図3のステップS6)。例えば、カフ圧Pcについて実測して得られた既述の加圧速度が25mmHg/秒であれば、フレーム500Fに対して目盛表示501は、左右2つの部分501L,501Rを一体として、25mmHg/秒に相当するスライド速度で下降される。これにより、フレーム500Fに対して目盛表示501を適切なスライド速度でスライドさせることができる。特に、カフ圧Pcに含まれた脈波に伴う圧力変動成分Pmによってフレーム500Fに対する目盛表示501のスライド速度または位置が受ける影響を少なくすることができる。
【0047】
この例では、この加圧過程で、図8(A)中に示すように、時刻t1にカフ圧Pcが60mmHgに達したものとする。それに応じて、図5(C)に示すように、棒グラフ502の頂部502Tの位置が許容範囲AAの上限(フレーム500F内に現に表示された目盛表示501では、目盛60mmHgに相当)に達すると、フレーム500Fに対して矢印Dで示すように目盛表示501が下降し始める。この目盛表示501の下降に伴って、フレーム500F内の上部(上辺500Faに沿った所)には順次大きい値の目盛が現れる(入ってくる)一方、フレーム500F内の下部(下辺500Fbに沿った所)から順次小さい値の目盛が消えてゆく(出てゆく)。フレーム500F内に表示される目盛は、現に表示される範囲として100mmHg分を維持しながら、表示可能な全範囲(最小目盛0mmHgから最大目盛300mmHgまでの範囲)内で、次第に上昇してゆく。
【0048】
この加圧過程における、フレーム500Fに対する目盛表示501の下降の間、フレーム500Fに対する棒グラフ502の頂部502Tの位置は、基本的に許容範囲AAの上限の所に維持されながら、カフ圧Pcにおいて脈波に伴う圧力変動成分Pmが現れると、その圧力変動成分Pmに応じて許容範囲AAの上限の所から一時的に変動する。
【0049】
このようにして、図8(B)中に示すように、時刻t1から後述の時刻t2まで、フレーム500Fに対して目盛表示501がスライド(下降)される。
【0050】
vi) 次に、CPU100は、圧力センサ31の出力に基づいて、カフ圧Pcが加圧設定値Puよりも大きくなったか否かを判断する(図3のステップS7)。この例では、加圧設定値Puは、加圧値設定ボリューム52Dによって、Pu=167mmHgに設定されているものとする。なお、加圧設定値Puは、予想される最高血圧(収縮期血圧)よりも30mmHg~40mmHg高い値に設定することが推奨されている。ここで、カフ圧Pcが未だ加圧設定値Puよりも大きくなっていないときは(図3のステップS7でNO)、図3のステップS2~S6の処理を繰り返す。一方、カフ圧Pcが加圧設定値Puよりも大きくなったとき(言い換えれば、大きくなろうとするとき)は(図3のステップS7でYES)、CPU100は圧力制御部として働いて、ポンプ32を停止して、カフ20の加圧を停止する。
【0051】
この例では、図8(A)中に示すように、時刻t2にカフ圧Pcが加圧設定値Pu(=167mmHg)に達し、加圧が停止されたものとする。それに応じて、図6(A)に示すように、CPU100が表示制御部として働いて、フレーム500Fに対する目盛表示501の下降を停止させる。このとき、許容範囲AAの上限の所にある棒グラフ502の頂部502Tの位置は、目盛表示501の167mmHgを指している。
【0052】
vii) 次に、CPU100は圧力制御部として働いて、圧力センサ31によってカフ圧Pcを観測しながら、弁33を開いて、流体袋22から空気を排出する制御を行う。これにより、カフ圧Pcを徐々に減圧していく(図3のステップS8)。カフ圧Pcの減圧速度は、例えば、5mmHg/秒~8mmHg/秒の範囲内の一定値に設定されているものとする。
【0053】
これにより、カフ圧Pcは、図8(A)中の時刻t2~t3に示すように、この例では一定の減圧速度で減圧されてゆく。この減圧過程で、図6(B)に示すように、CPU100が表示制御部として働いて、表示器50に現在のカフ圧Pcをリアルタイムで表示させる。図6(B)の例では、目盛表示501に対する棒グラフ502の頂部502Tの位置が、約157mmHgを指している。
【0054】
viii) また、この減圧過程で、CPU100が圧力変化速度取得部として働いて、圧力センサ31の出力に基づいて、実測して得られた圧力変化速度としての減圧速度を取得する(図3のステップS9)。このとき、CPU100は、実際のカフ20の圧力Pcから被測定部位が示す脈波に伴う圧力変動成分Pm(図8(A)参照)を除去して、少なくとも或る期間(典型的には、減圧過程の初期の1秒間ないし数秒間の期間)にわたって定常的な減圧速度を得る。なお、この減圧過程の全期間にわたって逐次、定常的な減圧速度を得てもよい。
【0055】
ix) また、この減圧過程で、CPU100が表示制御部として働いて、棒グラフ502の頂部502Tの位置がフレーム500F内に表示された目盛表示501の中央から予め定められた許容範囲AA内を指しているか否かを判断する(図3のステップS10)。
【0056】
ここで、例えば図6(B)の状態では、許容範囲AAは、147mmHgから167mmHgまでの範囲に相当する。また、現在のカフ圧Pcが約157mmHgであり、したがって、棒グラフ502の頂部502Tの位置が許容範囲AA内を指している。このように、棒グラフ502の頂部502Tの位置が許容範囲AA内を指しているとき(図3のステップS10でYES)、CPU100は表示制御部として働いて、カフ圧Pcの変化にかかわらず、フレーム500Fに対して目盛表示501のスライドを停止させる制御を行う(図3のステップS11)。これにより、ユーザが圧力Pcの値を読み取り易くなる。
【0057】
このようにして、図8(B)中に示すように、時刻t2から後述の時刻t3まで、フレーム500Fに対して目盛表示501のスライドが停止される。
【0058】
x) 一方、棒グラフ502の頂部502Tの位置が許容範囲AA内を指していないとき(言い換えれば、許容範囲AAを外れようとしているとき)(図3のステップS10でNO)、CPU100は表示制御部として働いて、棒グラフ502の頂部502Tの位置が許容範囲AA内に収まるように、ステップS9で実測して得られた減圧速度に対応するスライド速度で、フレーム500Fに対して目盛表示501を縦方向に沿ってスライド(この減圧過程では、上昇)させる制御を行う(図3のステップS12)。例えば、カフ圧Pcについて実測して得られた既述の減圧速度が6mmHg/秒であれば、フレーム500Fに対して目盛表示501は、左右2つの部分501L,501Rを一体として、6mmHg/秒に相当するスライド速度で上昇される。これにより、フレーム500Fに対して目盛表示501を適切なスライド速度でスライドさせることができる。特に、カフ圧Pcに含まれた脈波に伴う圧力変動成分Pmによってフレーム500Fに対する目盛表示501のスライド速度または位置が受ける影響を少なくすることができる。
【0059】
この例では、この減圧過程で、図8(A)中に示すように、時刻t3にカフ圧Pcが147mmHg(フレーム500F内に現に表示された目盛表示501では、許容範囲AAの下限に相当)に達したものとする。それに応じて、図6(C)に示すように、棒グラフ502の頂部502Tの位置が許容範囲AAの下限に達すると、フレーム500Fに対して矢印Eで示すように目盛表示501が上昇し始める。この目盛表示501の上昇に伴って、フレーム500F内の上部(上辺500Faに沿った所)から順次大きい値の目盛が消えてゆく(出てゆく)一方、フレーム500F内の下部(下辺500Fbに沿った所)には順次小さい値の目盛が現れる(入ってくる)。フレーム500F内に表示される目盛は、現に表示される範囲として100mmHg分を維持しながら、表示可能な全範囲(最小目盛0mmHgから最大目盛300mmHgまでの範囲)内で、次第に下降してゆく。
【0060】
この減圧過程における、フレーム500Fに対する目盛表示501の上昇の間、フレーム500Fに対する棒グラフ502の頂部502Tの位置は、基本的に許容範囲AAの下限の所に維持されながら、カフ圧Pcにおいて脈波に伴う圧力変動成分Pmが現れると、その圧力変動成分Pmに応じて許容範囲AAの下限の所から一時的に変動する。
【0061】
このようにして、図8(B)中に示すように、時刻t3から後述の時刻t4まで、フレーム500Fに対して目盛表示501がスライド(上昇)される。
【0062】
x) この減圧過程で、CPU100は血圧算出部として働いて、カフ圧Pcに基づいて公知のオシロメトリック法により血圧値(収縮期血圧と拡張期血圧)の算出を試みる(図3のステップS13)。ここで、データ不足により未だ血圧を算出できないときは(図3のステップS13でNO)、図3のステップS8~S12の処理を繰り返す。
【0063】
この例では、この減圧過程で、図8(A)中に示すように、時刻t4にカフ圧Pcが40mmHgに達し、これに伴って、図7(A)に示すように、フレーム500F内の下部(下辺500Fbに沿った所)に目盛表示501の最小目盛0mmHg(特に、「0mmHg」という圧力表示を含む。)が現れたものとする。すると、CPU100は、表示制御部として働いて、最小目盛0mmHgがフレーム500F内の下部(下辺500Fbに沿った所)から上辺500Fa側へ向かって離れるのを禁止する。つまり、図8(B)に示すように、時刻t4に、フレーム500Fに対する目盛表示501のスライドを停止する。この後、カフ圧Pcが40mmHg未満に低下したとしても、図7(B)、図7(C)に示すように、フレーム500Fに対する目盛表示501の位置は、図7(A)におけるのと同じに維持される。
【0064】
これにより、フレーム500Fに対して目盛表示501が血圧計1として無用な範囲にスライドするのが規制される。したがって、使い勝手が良くなる。例えば、伝統的な水銀柱血圧計の使用に慣れたユーザにとって、この血圧計1を使用する際の違和感が少ない。
【0065】
xi) 上記減圧過程で、血圧値(収縮期血圧と拡張期血圧)を算出できたときは(図3のステップS13でYES)、CPU100は圧力制御部として働いて、弁33を全開して急速排気を行う(図3のステップS14)。例えば図8(A)中に示すように、時刻t5に弁33が全開されると、カフ圧Pcが急速に減少し、この例では時刻t6に大気圧(0mmHg)になっている。
【0066】
なお、上記減圧過程で早期に血圧(収縮期血圧と拡張期血圧)を算出できた場合は、フレーム500Fに対する目盛表示501のスライド(上昇)が停止される時刻(上の例では、時刻t4)よりも、急速排気が開始される時刻(上の例では、時刻t5)が先行することがある。
【0067】
このように、この血圧計1では、カフ圧Pcが変化するとき、CPU100が表示制御部として働いて、棒グラフ502がフレーム500F内に収まるように、カフ20の加圧過程若しくは減圧過程で実測して得られた圧力変化速度に対応するスライド速度で、フレーム500Fに対して目盛表示501をスライドさせる。これにより、棒グラフ502がフレーム500F内に収まる状態で、カフ20の圧力Pcが棒グラフ502の目盛表示501に対する位置によって読み取り可能となる。このようにして、カフ圧Pcが表示画面500に電子的にグラフ表示される。したがって、ユーザは、伝統的な水銀柱血圧計を見るときと同様のアナログ的な感覚で、カフ圧Pcの値を読み取ることができる。しかも、この血圧計1では、フレーム500F内で目盛表示501が示す圧力範囲は、スライドによって表示可能な全範囲(例えば、伝統的な水銀柱血圧計と同じ最小目盛0mmHgから最大目盛300mmHgまでの範囲)内の一部の範囲(この例では、100mmHg乃至110mmHg分)として設定することができる。そのようにした場合、目盛表示501のスライド方向に関する表示画面500のサイズ(フレーム500Fのサイズに相当)の割に表示の分解能を高めることができる。
【0068】
xii) また、このオシロメトリック法による血圧測定モードでは、急速排気(図3のステップS14)を開始した後、CPU100は、伝統的な水銀柱血圧計におけるのと略同じ外観をもつアナログ的な表示画面500に代えて、または、アナログ的な表示画面500に加えて、表示器50に、測定された収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)と脈拍数とを、例えば下の表1のようにデジタル表示させる(図3のステップS15)。これにより、ユーザは、測定された血圧値と脈拍数とを数値で知ることができる。
(表1)
【0069】
上の例では、理解の容易を図るために、図3のステップS8~S12の減圧過程で初めて、CPU100が表示制御部として働いて、図7(A)~図7(C)に示したように、最小目盛0mmHgがフレーム500F内の下部(下辺500Fbに沿った所)から上辺500Fa側へ向かって離れるのを禁止することを説明した。しかしながら、実際には、図3のステップS2~S7の加圧過程においても、CPU100が表示制御部として働いて、図5(A)~図5(C)に示したように、最小目盛0mmHgがフレーム500F内の下部(下辺500Fbに沿った所)から上辺500Fa側へ向かって離れるのを禁止している。これにより、フレーム500Fに対して目盛表示501が血圧計1として無用な範囲にスライドするのが規制される。
【0070】
また、仮に、カフ圧Pcが260mmHg以上に上昇した場合は、例えば図9(この図9の例では、カフ圧Pc=271mmHgに達している。)に示すように、フレーム500Fに対する目盛表示501がスライド(下降)して、最大目盛300mmHg(特に、「300mmHg」という圧力表示を含む。)がフレーム500F内の上部(上辺500Faに沿った所)に現れる。その場合も、CPU100が表示制御部として働いて、最大目盛300mmHgがフレーム500F内の上部(上辺500Faに沿った所)から下辺500Fb側へ向かって離れるのを禁止する。これにより、フレーム500Fに対して目盛表示501が血圧計1として無用な範囲にスライドするのが規制される。したがって、使い勝手が良くなる。例えば、伝統的な水銀柱血圧計の使用に慣れたユーザにとって、この血圧計1を使用する際の違和感が少ない。
【0071】
また、上の例では、図3のステップS7で、加圧設定値Puは、加圧値設定ボリューム52DによってPu=167mmHgに設定されているものとした。しかしながら、これに限られるものではない。例えば、前回の血圧測定で得られた血圧値(収縮期血圧)をメモリ51に記憶に記憶させておくものとする。そして、今回の血圧測定の際に、CPU100がメモリ51からその血圧値(収縮期血圧)を読み出し、その血圧値(収縮期血圧)に例えば40mmHgを加えて得られた値を、加圧設定値Puとして用いてもよい。
【0072】
それに代えて、CPU100は、例えば200mmHgというように固定された値を、加圧設定値Puとして用いてもよい。
【0073】
また、上の例では、図3のステップS6,S12で、CPU100は、フレーム500Fに対して目盛表示501をスライドさせるとき、カフ20の加圧過程若しくは減圧過程で実測して得られた圧力変化速度に対応するスライド速度でスライドさせるものとした。しかしながら、これに限られるものではない。例えば加圧過程若しくは減圧過程での圧力変化速度が既知である場合に、フレーム500Fに対して目盛表示501をスライドさせるとき、CPU100は、その圧力変化速度に対応するスライド速度でスライドさせてもよい。そのようにした場合、CPU100の処理を簡素化できる利点が得られる。
【0074】
図4は、血圧計1における聴診器による血圧測定モード(この例では、測定モード切換スイッチ52Eによって指示されているものとする。)のフローを示している。既述のオシロメトリック法による血圧測定モードでは、CPU100が血圧算出部として働いて血圧値(収縮期血圧と拡張期血圧)を算出した(図3のステップS13)。それに代えて、この聴診器による血圧測定モードでは、ユーザ(例えば、医師)が聴診器によって血圧値(収縮期血圧と拡張期血圧)を測定する点が異なっている。
【0075】
具体的には、CPU100は、図4のステップS101~S112まで、図3のステップS1~S12と同様に処理を進める。この聴診器による血圧測定モードでも、カフ圧Pcが変化するとき、CPU100が表示制御部として働いて、棒グラフ502がフレーム500F内に収まるように、カフ20の加圧過程若しくは減圧過程で実測して得られた圧力変化速度に対応するスライド速度で、フレーム500Fに対して目盛表示501をスライドさせる。これにより、棒グラフ502がフレーム500F内に収まる状態で、カフ20の圧力Pcが棒グラフ502の目盛表示501に対する位置によって読み取り可能となる。このようにして、カフ圧Pcが表示画面500に電子的にグラフ表示される。
【0076】
そして、減圧過程(図4のステップS108~S112)で、ユーザが聴診器によって被測定部位が示すコロトコフ音を聴き、コロトコフ音の発生、消滅のタイミングで、表示画面500に表示されたカフ圧Pcを目視で読み取る。これにより、血圧値(収縮期血圧と拡張期血圧)が測定される。このとき、ユーザは、伝統的な水銀柱血圧計を見るときと同様のアナログ的な感覚で、カフ圧Pcの値を読み取ることができる。
【0077】
カフ圧Pcの読み取りが完了すると、ユーザが測定停止スイッチ52Cを押す(図4のステップS113)。測定停止スイッチ52Cが押されると(図4のステップS113でYES)、CPU100は圧力制御部として働いて、弁33を全開して急速排気を行う(図4のステップS114)。この後、図3のステップS15に相当するデジタル表示は行われない。
【0078】
この聴診器による血圧測定モードは、聴診器によって血圧値を測定するのに慣れたユーザに適する。
【0079】
上の図3図4のフローの例では、いずれも、CPU100が圧力制御部として働いてポンプ32と弁33を制御し、カフ圧Pcを加圧または減圧した。しかしながら、これに限られるものではない。ポンプ32と弁33に代えて、カフ20にエアチューブを介して伝統的なゴム球(排気弁を含む)を取り付け、手動によってカフ圧Pcを加圧または減圧してもよい。そのようにした場合、伝統的な水銀柱血圧計の使用に慣れたユーザにとって、この血圧計1を使用する際の違和感がさらに少なくなる。
【0080】
また、上の例では、表示画面500において、目盛表示501と、マークとしての棒グラフ502とが、縦方向に沿って表示され、縦方向に沿ってスライド可能であるものとした。しかしながら、これに限られるものではない。例えば、表示画面500において、カフ圧Pcの値を読み取り可能にする目盛表示と、カフ圧Pcを目盛表示501に対する位置によって表すマークとしての帯グラフとが、横方向に表示され、横方向に沿ってスライド可能であってもよい。また、マークは、棒グラフまたは帯グラフに限られるものではなく、目盛表示のうちの特定の目盛を指す矢印などのマークであってもよい。
【0081】
また、上の例では、表示器50は、LCDからなるものとしたが、これに限られるものではない。表示器50は、EL(エレクトロ・ルミネッセンス)ディスプレイなど、表示画面に目盛表示と棒グラフのようなマークとをスライド可能に表示できるものであればよい。
【0082】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 血圧計
20 カフ
22 流体袋
33 弁
50 表示器
51 メモリ
100 CPU
500 表示画面
500F フレーム
501 目盛表示
502 棒グラフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9