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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物及びその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/00 20060101AFI20220726BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220726BHJP
   C08L 33/20 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
C08L33/00
C08K3/04
C08L33/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018018441
(22)【出願日】2018-02-05
(65)【公開番号】P2019135287
(43)【公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】396021575
【氏名又は名称】テクノUMG株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】熱田 裕之
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-335849(JP,A)
【文献】特開昭61-034045(JP,A)
【文献】特開2011-012247(JP,A)
【文献】国際公開第2011/152449(WO,A1)
【文献】特開2003-306590(JP,A)
【文献】特開平10-080940(JP,A)
【文献】特開昭63-245461(JP,A)
【文献】特開2015-093910(JP,A)
【文献】特開平09-241474(JP,A)
【文献】脇田 直樹,成形機の色替え工程に対する樹脂の粘度と極性の影響,成形加工,2013年,第25巻第2号,第95-98頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/00
C08K 3/04
C08L 33/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂と、一次粒子の数平均粒子径が10~20nmのカーボンブラック(B)とを含有し、
該アクリル系樹脂(A)は、温度240℃、せん断速度10[1/s]の条件下におけるせん断粘度ηがη<3000[Pa・s]を満たすアクリル系樹脂(A)であり、
前記アクリル系樹脂(A)が、
アクリル系モノマーおよび/またはメタクリル系モノマー単位50~90質量部、芳香族ビニル単位16~50質量部、N-フェニルマレイミド単位2~30質量部を合計で100質量部含むアクリル系樹脂、
或いは、
アクリル系モノマーおよび/またはメタクリル系モノマー単位40~80質量部、芳香族ビニル単位10~40質量部、シアン化ビニル単位10~40質量部を合計で100質量部含むアクリル系樹脂を含み、
前記熱可塑性樹脂が前記アクリル系樹脂(A)以外の他の熱可塑性樹脂を含む場合、該他の熱可塑性樹脂の含有量は、該他の熱可塑性樹脂と該アクリル系樹脂(A)の合計100質量%に対して10質量%以下である熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1において、前記カーボンブラック(B)のpHが6以下である熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記カーボンブラック(B)のDBP吸収量が40~60cm/100gである熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、熱可塑性樹脂組成物中の前記アクリル系樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記カーボンブラック(B)を0.1~5質量部含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクリル系樹脂とカーボンブラックとを含む熱可塑性樹脂組成物に係り、詳しくは、カーボンブラックによる黒色発色性と耐候性の向上効果が十分に発揮された熱可塑性樹脂組成物に関する。本発明はまた、この熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂を黒色に着色した成形品は幅広い用途に使用されている。アクリル系樹脂を含む黒色成形品においては、意匠性の点から、多くの場合、より強い黒味を呈すること、すなわち黒色発色性が高いことが求められる。
【0003】
熱可塑性樹脂成形品の黒色発色性を高める方法として、黒色染料を配合することが知られている。しかし、黒色染料は発色性に優れるものの、耐候性が低いという問題を有していた。
そこで、黒色着色剤としてカーボンブラックを用いることにより、黒色発色性と耐候性とを高めることが検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、アクリル系樹脂に、数平均粒子径が10~40nmのカーボンブラックと、脂肪酸エステル又は脂肪酸アミド等の滑剤とを配合することにより、成形品の黒色発色性及び耐候性を高めることが記載されている。
特許文献2には、メタクリル系樹脂に、脂肪酸塩又は脂肪酸アミドがコーティングされたカーボンブラックと、染料とを配合することにより、成形品の黒色発色性及び耐候性を高めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2011/152449号
【文献】特開2016-37518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者による検討の結果、特許文献1に記載の成形品では黒色発色性が不充分であり、特許文献2に記載の成形品では耐候性が不充分であった。
【0007】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決し、黒色発色性及び耐候性が共に優れ、耐候性、発色性、成形外観に優れた熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ある特定の粘度のアクリル系樹脂と、特定の粒子径のカーボンブラックを配合することで、耐候性、発色性、成形外観に優れた熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
【0010】
[1] 温度240℃、せん断速度10[1/s]の条件下におけるせん断粘度ηがη<3000[Pa・s]を満たすアクリル系樹脂(A)と、一次粒子の数平均粒子径が10~20nmのカーボンブラック(B)とを含有する熱可塑性樹脂組成物。
【0011】
[2] [1]において、前記カーボンブラック(B)のpHが6以下である熱可塑性樹脂組成物。
【0012】
[3] [1]又は[2]において、前記カーボンブラック(B)のDBP吸収量が40~60cm/100gである熱可塑性樹脂組成物。
【0013】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、熱可塑性樹脂組成物中の前記アクリル系樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記カーボンブラック(B)を0.1~5質量部含む熱可塑性樹脂組成物。
【0014】
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐候性、発色性、成形外観に優れた熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
なお、本発明において、アクリル系樹脂とは、樹脂を構成する単量体としてアクリル酸エステル等のアクリル系モノマーおよびメタクリル酸エステル等のメタクリル系モノマーよりなる群から選ばれる1種又は2種以上を主成分として含む広義のアクリル系樹脂を意味し、従って、本発明におけるアクリル系樹脂はメタクリル系樹脂を包含するものである。
【0018】
[作用効果]
本発明の熱可塑性樹脂組成物では、黒色着色剤として、一次粒子の数平均粒子径が10~20nmの小粒径のカーボンブラック(B)を使用する。この小粒径のカーボンブラック(B)は、得られる成形品の黒色発色性を高めやすい反面、凝集するなどして樹脂中の分散性が低下し、発色性を充分に発揮できないことがある。
しかし、本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、小粒径のカーボンブラック(B)と共に、せん断粘度ηの低いアクリル系樹脂(A)を混合することでカーボンブラック(B)の分散性を向上させることができる。従って、本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品の黒色発色性を向上させることができる。
【0019】
カーボンブラックは材料としての耐候性は染料よりも高いが、アクリル系樹脂との相溶性が低い傾向にある。そのため、アクリル系樹脂及びカーボンブラックを含む成形品に紫外線が長時間照射されると、カーボンブラックが成形品の表面にブリードアウトして成形品表面の色調を変化させることがある。紫外線照射によって色調が変化しやすい成形品は、耐候性が低いものである。
しかし、本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられるせん断粘度ηの低いアクリル系樹脂(A)はカーボンブラック(B)に対する濡れ性が良く、カーボンブラック(B)との相溶性を向上させることができる。そのため、本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品に紫外線が長時間照射されても、小粒径のカーボンブラック(B)が成形品の表面にブリードアウトしにくく、成形品表面の色調を変化させにくい。従って、本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、成形品としての耐候性を向上させることができる。
【0020】
以上のことから、本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、黒色発色性及び耐候性が共に優れた成形品を容易に製造できる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、カーボンブラック(B)の凝集物の発生を抑制できるため、外観に優れた成形品を容易に製造できる。
【0021】
[アクリル系樹脂(A)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるアクリル系樹脂(A)としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(メタクリル酸メチルの単独重合体)、メタクリル酸メチルとメタクリル酸メチル以外の他のアクリル系モノマー及び/又はメタクリル系モノマーとの共重合体、メタクリル酸メチルとアクリル系モノマー及びメタクリル系モノマー以外の他のビニル系モノマーとの共重合体(但し、メタクリル酸メチル単位含有量が50質量%以上、好ましくは60質量%以上100質量%未満)等が挙げられる。前記アクリル系樹脂(A)のなかでも、ポリメタクリル酸メチルを用いた場合に本発明の効果がより有効に発揮される。
【0022】
他のアクリル系モノマーおよびメタクリル系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。
メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸3-ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
これらのアクリル系モノマー、メタクリル系モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
他のビニル系モノマーとしては、例えば、芳香族ビニル(例えば、スチレン、α-メチルスチレン等)、シアン化ビニル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル等)が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
また、アクリル系樹脂(A)は、N-置換マレイミド単量体単位を含んでもよく、N-置換マレイミド単量体としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、N-フェニルマレイミド、N-o-クロロフェニルマレイミド等のN-置換アリールマレイミド類、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-t-ブチルマレイミド等のN-置換アルキルマレイミド類、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換シクロアルキルマレイミド類などが挙げられる。これらのうち、耐熱性向上効果が高いN-フェニルマレイミドが好ましい。これらのN-置換マレイミド単量体についても、必要に応じて2種類以上を併用することができるが、併用する場合、N-置換マレイミド単量体の全量に対して、N-フェニルマレイミドを25質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0025】
アクリル系樹脂(A)が、後述の実施例で用いたメタクリル酸メチルとN-フェニルマレイミドとスチレンとを共重合してなるアクリル系樹脂(A-1),(A-2)のように、アクリル系モノマーおよび/またはメタクリル系モノマーと芳香族ビニルとN-置換マレイミド単量体との共重合アクリル系樹脂である場合、アクリル系モノマーおよび/またはメタクリル系モノマー単位50~90質量部、芳香族ビニル単位5~50質量部、N-フェニルマレイミド単位2~30質量部を合計で100質量部となるように含むものが好ましい。
また、メタクリル酸メチルとスチレンとアクリルアミドとを共重合してなるアクリル系樹脂(A-3),(A-4)のように、アクリル系モノマーおよび/またはメタクリル系モノマーと芳香族ビニルとシアン化ビニルとの共重合アクリル系樹脂である場合、アクリル系モノマーおよび/またはメタクリル系モノマー単位40~80質量部、芳香族ビニル単位10~40質量部、シアン化ビニル単位10~40質量部を合計で100質量部となるように含むものが好ましい。
【0026】
アクリル系樹脂(A)は、アクリル系モノマーおよび/またはメタクリル系モノマーと必要に応じて用いられるその他のビニル系モノマーとの混合物を重合することによって得られる。重合方法は特に限定されず、公知の重合方法(乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法等)が挙げられる。
【0027】
乳化重合法によるアクリル系樹脂(A)の製造方法としては、例えば、反応器内にビニル系モノマー混合物と乳化剤と重合開始剤と連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、生成したアクリル系樹脂(A)を含む水性分散体から析出法によってアクリル系樹脂(A)を回収する方法が挙げられる。
【0028】
乳化剤としては、通常の乳化重合用乳化剤(ロジン酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)が挙げられる。
【0029】
重合開始剤としては、有機、無機の過酸化物系開始剤が挙げられる。
【0030】
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α-メチルスチレンダイマー、テルペン類等が挙げられる。
【0031】
懸濁重合法によるアクリル系樹脂(A)の製造方法としては、例えば、反応器内にビニル系モノマー混合物と懸濁剤と懸濁助剤と重合開始剤と連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、スラリーを脱水、乾燥してアクリル系樹脂(A)を回収する方法が挙げられる。
【0032】
懸濁剤としては、例えば、アニオン系水溶性高分子、ノニオン系水溶性高分子、水難溶性無機塩等が挙げられる。
【0033】
アニオン系水溶性高分子としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸カリウム、メタクリル酸ナトリウム-メタクリル酸アルキルエステル共重合体等の1種又は2種以上が挙げられる。中でも、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウムが好ましい。
【0034】
ノニオン系水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキシドなどのポリアルキレンオキシド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルアミン等の水溶性高分子の1種又は2種以上が挙げられる。好ましくは、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、更に好ましくはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体である。
【0035】
水難溶性無機塩としては、例えば、硫酸バリウム、第三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の1種又は2種以上が挙げられる。好ましくは第三リン酸カルシウムである。
【0036】
懸濁剤は、得られるアクリル系樹脂(A)100質量部に対して0.1~3質量部用いることが好ましい。
【0037】
懸濁助剤としては、カルボン酸塩(例えば、サルコシン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸カリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸等)、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等のアルキル基および/又はアルケニル基を有する二塩基酸もしくはその塩の1種又は2種以上が挙げられる。
【0038】
懸濁助剤としては、製造時の安定性、得られるアクリル系樹脂(A)の発色性等の点から、アルケニルコハク酸カリウムを用いることが好ましい。
【0039】
懸濁助剤は、得られるアクリル系樹脂(A)100質量部に対して0.0001~1質量部用いることが好ましい。
【0040】
重合開始剤としては、有機ペルオキシド類が挙げられる。重合開始剤は、得られるアクリル系樹脂(A)100質量部に対して、0.01~1.0質量部用いることが好ましい。
【0041】
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α-メチルスチレンダイマー、テルペン類等の1種又は2種以上が挙げられる。連鎖移動剤は得られるアクリル系樹脂(A)100質量部に対して0.05~1.0質量部用いることが好ましい。
【0042】
本発明で用いるアクリル系樹脂(A)の質量平均分子量に特に制限は無いが、10,000から300,000の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは70,000から100,000の範囲である。アクリル系樹脂(A)の質量平均分子量が上記範囲内であれば、本発明の熱可塑性樹脂組成物の発色性、耐候性、成形外観が優れたものとなる。
【0043】
ここで、アクリル系樹脂(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、テトラヒドロフラン(THF)に溶解して測定したものを標準ポリスチレン(PS)換算で示したものである。
【0044】
本発明のアクリル系樹脂(A)は温度240℃、せん断速度10[1/s]条件下におけるせん断粘度ηがη<3000[Pa・s]を満たすものであり、好ましくはη<2000[Pa・s]、さらに好ましくはη<1500[Pa・s]である。このせん断粘度ηが低いものほど、アクリル系樹脂(A)とカーボンブラック(B)との濡れ性が上がり、得られる熱可塑性樹脂組成物の発色性、耐候性、成形外観が優れたものとなる。
ただし、せん断粘度ηは生産性の観点から、通常500[Pa・s]以上である。
なお、本発明におけるアクリル系樹脂(A)の温度240℃、せん断速度10[1/s]条件下におけるせん断粘度ηは、以下の方法で測定される。
【0045】
<アクリル系樹脂(A)のせん断粘度ηの測定>
キャピラリーレオメーター((株)東洋製機製キャピログラフ1C型)を使用して、温度を240℃に設定し、せん断速度10[1/s]の条件下において、樹脂粘度η[Pa・s]を測定する。
【0046】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、このようなアクリル系樹脂(A)の1種を単独で含むものであってもよいし、物性やモノマー組成の異なるものの2種以上を含むものであってもよい。
【0047】
[カーボンブラック(B)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるカーボンブラック(B)は、一次粒子の数平均粒子径が10~20nmの範囲内にある小粒径のカーボンブラックであり、黒色着色剤としての役割を果たす。カーボンブラック(B)の一次粒子の数平均粒子径は10~15nmであることが好ましい。
カーボンブラック(B)の一次粒子の数平均粒子径が上記下限値以上であることにより、カーボンブラック(B)のブリードアウトを抑制でき、耐候性を向上させることができる。カーボンブラック(B)の一次粒子の数平均粒子径が上記上限値以下であることにより、成形品の黒色発色性を向上させることができる。
【0048】
本発明におけるカーボンブラック(B)の一次粒子の数平均粒子径は、以下のように求めた値である。
【0049】
<カーボンブラック(B)の一次粒子の数平均粒子径の測定>
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてカーボンブラックを観察し、輪郭を有して分離できない粒子の直径を測定する。10個以上の粒子の直径を測定し、Σ(nd)/Σnの式(nは粒子の個数、dは粒子の直径である。)より数平均粒子径を求める。
【0050】
また、カーボンブラックは一次粒子が凝集したストラクチャー構造を取ることが知られており、このストラクチャーを構成する1つ1つの粒子も一次粒子として測定する(参考文献 最新カーボンブラック大全集 P213)。
【0051】
また、カーボンブラック(B)の分散状態は、黒色を発色させるという点で、一次分散であることが好ましい。ここで、一次分散とは、カーボンブラックの粒子が一次粒子で、すなわち単位粒子が他の粒子と凝集することなく分散している状態を指す。カーボンブラック(B)の分散状態は、TEMによる観察で確認することができる。
【0052】
また、本発明で用いるカーボンブラック(B)のpHは6以下であることが好ましく、より好ましくは5以下、例えば2~5である。カーボンブラック(B)のpHが上記上限以下であると、分散性に優れたものとなり、発色性、耐候性の観点から好ましい。
【0053】
また、カーボンブラック(B)のDBP吸収量は40~60cm/100gであることが好ましい。DBP吸収量がこの範囲内のカーボンブラック(B)は発色性に優れるため好ましい。
【0054】
なお、ここで、カーボンブラック(B)のDBP吸収量はASTM
D-3493-88に従って測定された値である。pHは ASTM D-1512-84 に従って測定された値である。
【0055】
カーボンブラック(B)の種類としては、例えばチャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック、ナフタレンブラック等が挙げられ、本発明ではいずれも使用することができる。
【0056】
また、カーボンブラック(B)は、表面処理されたものであってもよい。表面処理としては、例えば、表面に官能基を付与するための酸化処理、黒鉛化するための不活性雰囲気下での加熱処理、水蒸気処理、炭酸ガス処理等が挙げられる。
【0057】
酸化処理としては、オゾン、硝酸、亜硝酸、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素のいずれかによる処理が挙げられる。このような酸化処理によってカーボンブラックの表面に、カルボキシ基、フェノール性水酸基等の酸性官能基を生成させることができる。これにより、カーボンブラックの表面における濡れ性が高くなるため、アクリル系樹脂(A)中のカーボンブラック(B)の分散性がより高くなる。
【0058】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、カーボンブラック(B)の1種を単独で含むものであってもよく、種類や物性等の異なるものの2種以上を含むものであってもよい。
また、一次粒子の数平均粒子径が10~20nmの範囲内のカーボンブラック(B)を含んでいれば、一次粒子径の数平均粒子径が前記範囲外のカーボンブラックを少量(例えば、熱可塑性樹脂組成物中のアクリル系樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂100質量部に対して3質量部以下)含んでいてもよい。
【0059】
[その他の成分]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記カーボンブラック(B)以外の添加剤を含有していてもよい。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、充填剤、難燃剤、可塑剤、シリコーンオイル等が挙げられる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、少量であれば、染料を含有していてもよい。
【0060】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前述のアクリル系樹脂(A)以外の他の熱可塑性樹脂を含有してもよい。
前述のアクリル系樹脂(A)以外の他の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレン共重合体(AES樹脂)、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-α-メチルスチレン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル-スチレン-N-置換マレイミド三元共重合体、スチレン-無水マレイン酸-N-置換マレイミド三元共重合体、メチルメタクリレート-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリアミド、スチレン系エラストマー(スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-ブタジエン(SBR)、水素添加SBS、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)等)、各種のオレフィン系エラストマー、各種のポリエステル系エラストマー等が挙げられる。他の熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
[各成分の含有割合]
本発明の熱可塑性樹脂組成物における前記カーボンブラック(B)の含有量は、アクリル系樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂100質量部(熱可塑性樹脂としてアクリル系樹脂(A)のみを含む場合はアクリル系樹脂(A)の100質量部、熱可塑性樹脂としてアクリル系樹脂(A)と他の熱可塑性樹脂を含む場合はその合計の100質量部)に対して0.1~5質量部であることが好ましく、0.3~3質量部であることがより好ましい。カーボンブラック(B)の含有量が上記下限値以上であれば、成形品の黒色発色性がより高くなる。カーボンブラック(B)の含有量が上記上限値以下であれば、成形品の耐候性がより高くなる。
【0062】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が前記添加剤を含有する場合、各添加剤の含有量は、アクリル系樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1~5質量部であることが好ましく、0.3~2質量部であることがより好ましい。各添加剤の含有量が上記下限値以上であれば、各添加剤の添加効果を充分に発揮できる。各添加剤の含有量が上記上限値以下であれば、無駄になる添加剤の量が少なくなり、経済的である。
また、全添加剤の合計の含有量は、成形品の機械的物性低下を防ぐことから、アクリル系樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂100質量部に対して0質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。
【0063】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が染料を含有する場合、成形品の耐候性低下を防止する観点から、染料の含有量が少ないことが好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂組成物における染料の含有量は、アクリル系樹脂(A)を含む熱可塑性樹脂100質量部に対して1.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることがさらに好ましく、0質量部であることが特に好ましい。
【0064】
本発明の熱可塑性樹脂組成物がアクリル系樹脂(A)以外の他の熱可塑性樹脂を含有する場合、成形品の耐候性低下を防止する観点から、他の熱可塑性樹脂の含有量が少ないことが好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂組成物における他の熱可塑性樹脂の含有量は、他の熱可塑性樹脂及びアクリル系樹脂(A)の合計100質量%に対して、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0065】
[熱可塑性樹脂組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、アクリル系樹脂(A)にカーボンブラック(B)と必要に応じてその他の添加剤や他の熱可塑性樹脂とを添加することにより得られる。アクリル系樹脂(A)にカーボンブラック(B)と必要に応じてその他の添加剤や他の熱可塑性樹脂を添加した後には、ミキサを用いて充分に混合して混合物を調製し、この混合物を、混練機を用いて溶融混練することが好ましい。
ミキサとしては、例えば、ヘンシェルミキサ、V型ブレンダ、タンブラーミキサ等を使用することができる。
混練機としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、ミキシングロール等を使用することができる。
溶融混練後、得られた溶融混練物を冷却した後、ペレタイザを用いてペレット化することが好ましい。
【0066】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する際には、カーボンブラック(B)を希釈用樹脂に混ぜ合せたカーボンブラック混合物(いわゆるマスターバッチ)とし、そのカーボンブラック混合物をアクリル系樹脂(A)に混合することが好ましい。前記カーボンブラック混合物をアクリル系樹脂(A)に混合すれば、アクリル系樹脂(A)中におけるカーボンブラック(B)の分散性がより高くなり、成形品の黒色発色性及び耐候性をより高くすることができる。
【0067】
前記カーボンブラック混合物に含まれる希釈用樹脂としては、アクリル系樹脂(A)及び前記その他の熱可塑性樹脂と同様の樹脂を使用できる。希釈用樹脂はアクリル系樹脂(A)と同一の樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。希釈用樹脂がアクリル系樹脂(A)とは異なる場合、希釈用樹脂として前述のその他の熱可塑性樹脂のうちの少なくとも1種を用いることができる。
例えば、アクリル系樹脂(A)がポリメタクリル酸メチルの場合、希釈用樹脂はポリメタクリル酸メチルであってもよいし、ポリメタクリル酸メチル以外の樹脂(例えば、スチレン-アクリロニトリル共重合体等)であってもよい。
【0068】
前記カーボンブラック混合物においては、カーボンブラック(B)の分散性をさらに向上させるための滑剤を含有してもよい。滑剤としては、公知のものを制限なく使用できる。滑剤の具体例としては、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等が挙げられる。滑剤はカーボンブラック(B)をカーボンブラック混合物とせずにアクリル系樹脂(A)に直接混合する際にも、カーボンブラック(B)と共に併用添加してもよい。
【0069】
前記カーボンブラック混合物におけるカーボンブラック(B)の含有量は、カーボンブラック(B)と希釈用樹脂の合計を100質量%とした際の20~70質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましい。カーボンブラック(B)の含有量が上記範囲内であれば、得られる成形品の黒色発色性及び耐候性を充分に向上させることができる。
【0070】
なお、前記カーボンブラック混合物は溶融混練されていることが好ましい。また、前記カーボンブラック混合物は、溶融混練後にペレット化されていることが好ましい。
【0071】
[成形品]
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を公知の成形方法によって成形加工して得られるものである。
成形方法としては、例えば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
【0072】
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を含有するため、黒色発色性及び耐候性に優れる。このような本発明の成形品は、自動車の内装材及び外装材、事務機器用部品、家電用部品、医療機器用部品、電子機器用部品、建材、日用品等として好適である。
【実施例
【0073】
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
下記例中の「部」は、特に断りのない限り、「質量部」のことである。
【0074】
[アクリル系樹脂(A)およびその他の熱可塑性樹脂]
以下の各実施例及び各比較例において用いたアクリル系樹脂(A)、その他の熱可塑性樹脂は、次のようにして製造した。
【0075】
<アクリル系樹脂(A-1)の製造方法>
撹拌機付の20リットル耐圧反応槽にメタクリル酸メチル74部、N-フェニルマレイミド10部、スチレン16部、パーブチルPV(日本油脂社製)0.1部、パーブチルO(日本油脂社製)0.05部、パーヘキサHC(日本油脂社製)0.05部、t-ドデシルメルカプタン0.6部、α-メチルスチレンダイマー0.2部を投入して混合した。次いで純水200部、第三リン酸カルシウム0.5部、アルケニルコハク酸カリウム0.003部の混合溶液を、この20リットル耐圧反応槽に仕込んで撹拌混合した。その後、撹拌しながら40℃まで昇温し重合開始させた。重合反応中における昇温速度は5~10℃/hrで9時間反応を行い、120℃にて重合を終了後、冷却、洗浄、濾過、乾燥工程を経てビーズ状の重合体であるアクリル系樹脂(A-1)を得た。アクリル系樹脂(A-1)について、240℃、せん断速度10[1/s]の条件下で測定したせん断粘度ηは2500[Pa・s]であった。
【0076】
<アクリル系樹脂(A-2)~(A-6)、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂(X-1)の製造>
モノマー配合を表1に示す配合としたこと以外は、アクリル系樹脂(A-1)と同様にアクリル系樹脂(A-2)~(A-6)及びアクリロニトリル-スチレン共重合樹脂(AS樹脂)(X-1)を製造した。
得られたアクリル系樹脂(A-2)~(A-6)及びAS樹脂(X-1)のせん断粘度ηは表1に示す通りであった。
【0077】
【表1】
【0078】
[分散状態]
以下の各実施例及び各比較例において用いたカーボンブラック(B)の仕様は次の通りである。
【0079】
(B-1)三菱ケミカル(株)製「#2900B」
一次粒子の数平均粒子径:15nm
DBP吸収量:59cm/100g
pH:2.5
(B-2)三菱ケミカル(株)製「#2600B」
一次粒子の数平均粒子径:13nm
DBP吸収量:77cm/100g
pH:6.5
(B-3)三菱ケミカル(株)製「#750B」
一次粒子の数平均粒子径:22nm
DBP吸収量:116cm/100g
pH:7.5
【0080】
[染料]
染料としては以下のものを用いた。
C-1:有本化学工業株式会社製「Plast Black DA-423」
【0081】
[熱可塑性樹脂成形品の評価]
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂成形品の評価方法は次の通りである。
【0082】
<光沢(外観)の評価>
デジタル変角光沢計(スガ試験機株式会社製「UGV-5D」)を使用して、JIS Z8741で定義される、入射角60°における成形品の表面の光沢度(Gs)を測定した。光沢度が高い程、成形品の外観に優れる。
【0083】
<色調(黒色発色性)の評価>
SCE方式の測色計(コニカミノルタジャパン株式会社製「CM-508D」)を用い、成形品の色調(L)を測定した。Lの値が小さい程、成形品の黒味が濃く、黒色発色性に優れる。
【0084】
<耐候性の評価>
成形品を、スガ試験機株式会社製の「サンシャインスーパーロングライフウェザーメーターWEL-SUN-DCH型」を用い、63℃、サイクル条件:60分(降雨:12分)の環境下に2000時間暴露して、耐候試験を行なった。耐候試験前後の成形品の変色の度合い(ΔE)を、上記のSCE方式の測色計を用いて測定した。ΔEの値が小さい程、耐候性に優れる。
【0085】
[実施例1]
アクリル系樹脂(A-1)100質量部、カーボンブラック(B-1)1.0部、エチレンビスステアリルアミド(花王株式会社製)0.4部、酸化防止剤(株式会社ADEKA製「アデカスタブAO-60」)0.2部と、光安定剤(株式会社ADEKA製「アデカスタブLA-57」)0.4部とを、ヘンシェルミキサを用いて混合した。得られた混合物を、スクリュー式押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX-30α型二軸押出機」)を用い、250℃の条件で溶融混練した。これにより得た溶融混練物を冷却後、ペレタイザを用いてペレット化して、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られたペレット状の熱可塑性樹脂組成物を用いて、射出成形機(株式会社日本製鋼所製)により成形を行って、100mm四方、厚み3mmの試験片(成形品)を作製した。
得られた成形品について、前述の光沢、色調、および耐候性の評価を行って結果を表2に示した。
【0086】
[実施例2~7および比較例1~5]
表2および表3に示すように、熱可塑性樹脂組成物の配合を変更した以外は実施例1と同様にして、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得、同様に成形品の評価を行って、結果を表2および表3に示した。
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
[考察]
表2に示すように、各実施例の熱可塑性樹脂組成物によれば、光沢度が高く、Lが小さく、耐候試験前後のΔEが小さい成形品が得られた。従って、各実施例の熱可塑性樹脂組成物によれば、外観、黒色発色性及び耐候性のいずれもが優れた成形品を得ることができたことが分かる。
【0090】
これに対し、表3に示すように、各比較例の熱可塑性樹脂組成物より得た成形品では、黒色発色性及び耐候性の一方又は双方が不充分である。
具体的には、比較例1、2では、用いたアクリル系樹脂のせん断粘度ηが高いため成形品の発色性、耐候性が劣っていた。
比較例3では、アクリル系樹脂を用いていないため、耐候性が劣っていた。
比較例4では、用いたカーボンブラックの一次粒子の数平均粒子径が20nmを超えるため、成形品の黒色発色性が劣っていた。
比較例5では着色剤として染料のみを用いているため耐候性が劣っていた。