(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】クレーン組立補助装置
(51)【国際特許分類】
B66C 23/26 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
B66C23/26 C
(21)【出願番号】P 2018031081
(22)【出願日】2018-02-23
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小矢畑 章
(72)【発明者】
【氏名】岡 高廣
(72)【発明者】
【氏名】猪川 哲平
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-017490(JP,A)
【文献】特開昭59-230996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン本体と、
前記クレーン本体に起伏可能に取り付けられるブームと、
前記ブームに起伏可能に取り付けられるジブと、
前記ジブの先端部からロープにより吊り下げられるフックと、
を備えるクレーンの組立を補助可能なクレーン組立補助装置であって、
前記ジブの先端部を下側から支持し、前後方向に地面を走行可能なジブ置台と、
前記フックを下側から支持し、前後方向に地面を走行可能なフック置台と、
前記ジブ置台と前記フック置台とを接続する接続部材と、
を備える、
クレーン組立補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクレーン組立補助装置であって、
前記フック置台の少なくとも一部は、前記ジブ置台よりも前記クレーン本体に近い側に配置される、
クレーン組立補助装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のクレーン組立補助装置であって、
前記フック置台は、傾斜部を備え、
前記傾斜部は、前記フックに接触可能であり、水平方向から前記フックを支持し、上下方向に対して傾斜する、
クレーン組立補助装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のクレーン組立補助装置であって、
前記フック置台は、縦壁部を備え、
前記縦壁部は、前記フックに接触可能であり、水平方向から前記フックを支持し、上下方向に延びる、
クレーン組立補助装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のクレーン組立補助装置であって、
前記フック置台は、前記フック置台に対して前記フックを固定する固定部を備える、
クレーン組立補助装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のクレーン組立補助装置であって、
前記接続部材は、可撓性を有する紐状部を備え、
前記ジブ置台から前記フック置台までの距離は、可変である、
クレーン組立補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの組立を補助するクレーン組立補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1などに、従来のクレーンが記載されている。このクレーンは、ブームと、ブームに起伏自在に取り付けられるジブと、を有する。このクレーンの組立時に、ブームおよびジブが伏せられた状態(同文献の
図10などを参照)から、ジブの先端部がローラで支持された状態で、ブームが起こされる場合がある(同文献の
図6などを参照)。そして、ブームに対するジブの角度(ジブオフセット角)が、所定の角度になると、地面に対してジブを起こすこと(ジブの地切り)が可能になる。また、このジブの先端部には、ロープを介して、フックが取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブームおよびジブが伏せられた状態(同文献の
図10などを参照)のときに、ジブの先端部に、フックが取り付けられるとする。そして、ジブの先端部が支持された状態で、ブームが起こされるとする。すると、ジブの先端部の移動に伴って、フックが地面と干渉しながら移動する。すると、フックに傷が付くおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、ジブの先端部の移動に伴って、フックを地面に干渉させずに移動させることができる、クレーン組立補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のクレーン組立補助装置は、クレーンの組立を補助可能である。前記クレーンは、クレーン本体と、前記クレーン本体に起伏可能に取り付けられるブームと、前記ブームに起伏可能に取り付けられるジブと、前記ジブの先端部からロープにより吊り下げられるフックと、を備えるものである。前記クレーン組立補助装置は、ジブ置台と、フック置台と、接続部材と、を備える。前記ジブ置台は、前記ジブの先端部を下側から支持し、前後方向に地面を走行可能である。前記フック置台は、前記フックを下側から支持し、前後方向に地面を走行可能である。前記接続部材は、前記ジブ置台と前記フック置台とを接続する。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、ジブの先端部の移動に伴って、フックを地面に干渉させずに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態のクレーン組立補助装置50、および、組立姿勢のクレーン1を横から見た図である。
【
図2】
図1に示すブーム13が、
図1に示す状態よりも起こされた状態を横から見た図である。
【
図3】
図1に示すクレーン1の作業姿勢を横から見た図である。
【
図4】
図2に示すクレーン組立補助装置50などを横から見た図である。
【
図5】
図4に示すクレーン組立補助装置50などを上から見た図である。
【
図6】
図4に示す傾斜部74に後部フック30Rが支持される場合の
図4相当図である。
【
図7】
図6に示す後部フック30Rがフック支持部73に固定される場合の
図4相当図である。
【
図8】第2実施形態のクレーン組立補助装置250を示す
図4相当図である。
【
図9】
図8に示す前部フック置台70Fを前側X1から見た図である。
【
図10】第3実施形態のクレーン組立補助装置350を示す
図4相当図である。
【
図11】第4実施形態のクレーン組立補助装置450などを後側X2から見た図である。
【
図12】
図11に示すクレーン組立補助装置450などを上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1~
図7を参照して、第1実施形態のクレーン組立補助装置50、および、クレーン組立補助装置50が用いられるクレーン1について説明する。なお、
図4の後部フック置台70Rの部分は、
図5のF4a-F4a矢視断面図である。
図4の前部フック置台70Fの部分は、
図5のF4b-F4b矢視断面図である。
【0010】
クレーン1は、
図3に示すブーム13およびジブ20で吊荷を吊り上げる作業などを行う、建設機械である。クレーン1は、例えば移動式クレーンである。クレーン1は、クレーン本体11と、ブーム13と、ブーム起伏装置15と、ジブ20と、ジブ起伏装置27と、フック30と、ロープ40と、を備える。
【0011】
クレーン本体11は、下部走行体11aと、上部旋回体11bと、を備える。下部走行体11aは、クレーン1を走行させる。上部旋回体11bは、下部走行体11aよりも上側Z1に配置され、下部走行体11aに対して旋回可能である。上部旋回体11bには、ブーム13およびカウンタウエイトWなどが取り付けられる。
【0012】
(方向)
下部走行体11a(クレーン1が固定式の場合は上部旋回体11bが取り付けられる物(以下同様))に対する上部旋回体11bの旋回の回転軸の方向を上下方向Zとする。上下方向Zにおいて、下部走行体11aから上部旋回体11bに向かう側を上側Z1とし、その逆側を下側Z2とする。上部旋回体11bの長手方向を前後方向Xとする。前後方向Xにおいて、カウンタウエイトWから、上部旋回体11bへのブーム13の取り付け部に向かう側を前側X1とし、その逆側を後側X2とする。上下方向Zに直交し、かつ、前後方向Xに直交する方向を、横方向Yとする。
【0013】
ブーム13は、上部旋回体11bに起伏(回転)可能に取り付けられる。ブーム13の中心軸であって、ブーム13の長手方向に延びる中心軸を、ブーム中心軸13a(
図1参照)とする。
【0014】
ブーム起伏装置15は、上部旋回体11bに対してブーム13を起伏させる。例えば、ブーム起伏装置15は、マスト15aと、ブーム起伏ロープ15bと、ブームガイライン15cと、を備える。例えば、ブーム起伏装置15は、次のようにブーム13を起伏させる。ブーム起伏ロープ15bは、ウインチ(図示なし)により巻き取り、または繰り出しされる。すると、マスト15aは、上部旋回体11bに対して起伏する。ブーム13は、ブームガイライン15cを介してマスト15aにつながれる。よって、上部旋回体11bに対してマスト15aが起伏すると、ブーム13は、上部旋回体11bに対して起伏する。
【0015】
ジブ20は、ブーム13に起伏可能に取り付けられる。
図1に示すように、ジブ20の中心軸であって、ジブ20の長手方向に延びる中心軸を、ジブ中心軸20aとする。ジブ20を構成する面には、ジブ背面20bと、ジブ腹面20cと、がある。ジブ背面20bは、ジブ中心軸20aの方向が水平方向となるようにジブ20が配置された状態(ジブ20が伏せられた状態)のときに、ジブ20の上面(上側Z1の面)となる面である。ジブ腹面20cは、ジブ20が伏せられた状態のときに、ジブ20の下面(下側Z2の面)となる面である。ジブ20のうち、ブーム13に取り付けられる側とは反対側の端、およびその近傍の部分を、ジブ先端部21とする。ジブ20は、シーブ23(
図3参照)と、ジブ先端ピン25(
図4参照)と、を備える。
【0016】
シーブ23は、
図3に示すように、フック30の巻き上げおよび巻き下げ用のロープ40が掛けられる滑車である。シーブ23は、ジブ先端部21に回転自在に取り付けられる。シーブ23は、複数の部位に配置される。例えば、シーブ23は、先端シーブ23aと、背面シーブ23bと、腹面シーブ23cと、を備える。先端シーブ23aは、ジブ先端部21の最も先端側の部分に配置される。背面シーブ23bは、ジブ背面20bに配置される。腹面シーブ23cは、ジブ腹面20cに配置される。
【0017】
ジブ先端ピン25は、
図4に示すように、ジブ先端部21の最も先端側の部分に配置される。例えば、ジブ先端ピン25は、先端シーブ23aの回転軸と同軸に設けられる。
図5に示すように、ジブ先端ピン25は、ジブ先端部21から横方向Y両側(左右)に突出する。
【0018】
ジブ起伏装置27は、
図3に示すように、ブーム13に対してジブ20を起伏させる。例えば、ジブ起伏装置27は、ストラット27a(リアストラット27a1、フロントストラット27a2)と、ストラットガイライン27bと、ジブ起伏ロープ27cと、ジブガイライン27dと、を備える。例えば、ジブ起伏装置27は、次のようにジブ20を起伏させる。ジブ起伏ロープ27cは、ウインチ(図示なし)により巻き取り、または繰り出しされる。すると、リアストラット27a1の先端部とフロントストラット27a2の先端部との距離が変わる。リアストラット27a1は、ストラットガイライン27bを介してブーム13につながれるので、ブーム13に対して起伏しない。また、ジブ20は、ジブガイライン27dを介してフロントストラット27a2につながれる。よって、リアストラット27a1の先端部とフロントストラット27a2の先端部との距離が変わると、ジブ20が、ブーム13に対して起伏する。
【0019】
フック30は、吊荷を吊る装置である。フック30は、ジブ先端部21からロープ40により吊り下げられる。なお、ブーム13からもフックが吊り下げられる場合があるが、本実施形態における「フック30」は、ジブ20から吊り下げられるフック(ジブフック)である。フック30は、例えば複数設けられ、
図3に示す例では2つ設けられ、1つのみ設けられてもよい。フック30が2つ設けられる場合、フック30は、後部フック30Rと、前部フック30Fと、を備える。後部フック30Rは、腹面シーブ23cから、後部フック用ロープ40R(後述)により吊り下げられる。前部フック30Fは、後部フック30Rよりも前側X1に配置される。前部フック30Fは、先端シーブ23aから、前部フック用ロープ40F(後述)により吊り下げられる。以下では、主に1つのフック30、具体的には例えば後部フック30Rについて説明する。
図4に示すように、後部フック30Rの中心軸であって、フック30がロープ40で吊り下げられた状態(
図3参照)のときに上下方向Zに延びる中心軸を、フック中心軸30aとする。後部フック30Rは、フックフレーム31と、鉤部33と、フックシーブ35と、を備える。
【0020】
フックフレーム31は、鉤部33およびフックシーブ35を支持する構造物である。例えば、
図5に示すように、フックフレーム31は、2枚の板状部材と、2枚の板状部材どうしをつなぐ連結部31aと、を備える。連結部31aは、例えば、ボルトや板などである。連結部31aは、フック30がロープ40で吊り下げられた状態(
図3参照)における、フックフレーム31の前側X1および後側X2のそれぞれの部分に設けられる。例えば、
図4に示すように、フックフレーム31は、フック中心軸30aに対して傾斜する傾斜面31bを備える。鉤部33は、鉤(かぎ)状であり、吊荷を掛けることが可能に構成される。フックシーブ35は、ロープ40が掛けられる滑車である。フックシーブ35は、フックフレーム31に回転自在に取り付けられる。
【0021】
前部フック30Fは、後部フック30Rと、ほぼ同様に構成される。ただし、前部フック30Fは、フックシーブ35を備えない。また、前部フック30Fのフックフレーム31は、後部フック30Rのフックフレーム31とは異なる構造を有する。例えば、前部フック30Fのフックフレーム31は、円柱状などである。
【0022】
ロープ40は、
図3に示すように、ジブ先端部21からフック30を吊り下げる。ロープ40は、ウインチ(図示なし)により巻き取り、および繰り出しされる。これにより、フック30は、巻き上げ、および巻き下げされる。2つのフック30(前部フック30Fおよび後部フック30R)が設けられる場合、ロープ40は、後部フック用ロープ40Rと、前部フック用ロープ40Fと、を備える。
図4に示すように、フック30がフックシーブ35を備える場合(例えば後部フック30Rを参照)、ロープ40は、フックシーブ35とシーブ23との間で掛け回される(多本掛けにされる)。フック30がフックシーブ35を備えない場合(例えば前部フック30Fを参照)、ロープ40は、フック30に一本掛けされる(
図3参照)。
【0023】
クレーン組立補助装置50は、
図1および
図2に示すように、クレーン1の組立を補助可能な装置である。
図4に示すように、クレーン組立補助装置50は、ジブ先端部21およびフック30を支持する装置である。クレーン組立補助装置50は、ジブ置台60と、フック置台70と、接続部材80と、を備える。
【0024】
ジブ置台60は、ジブ先端部21を下側Z2から支持する。ジブ置台60は、地面Gを走行可能である。ジブ置台60は、ジブ置台フレーム61と、ジブ先端部支持部63と、ジブ置台走行部67と、を備える。
【0025】
ジブ置台フレーム61は、ジブ先端部支持部63を支持する構造物である。ジブ置台フレーム61は、例えば、
図5に示すように棒状部材(例えばパイプなど)を組み合わせた構造物でもよく、板状部材を組み合わせた構造物でもよく、板状部材および棒状部材を組み合わせた構造物などでもよい。
【0026】
ジブ先端部支持部63は、
図4に示すように、ジブ先端部21が接触し、ジブ先端部21を下側Z2から支持する。ジブ先端部支持部63は、例えばジブ先端ピン25を下側Z2から支持する。ジブ先端部支持部63は、ジブ置台60に対するジブ先端部21の前後方向Xへの移動を規制する。ジブ先端部支持部63は、ジブ置台フレーム61に固定される。ジブ先端部支持部63のうちジブ先端部21が接触可能な部分は、横方向Yから見て略U字状などである。
【0027】
ジブ置台走行部67は、ジブ置台60を地面Gに対して走行可能にする。ジブ置台走行部67は、ジブ置台フレーム61に取り付けられる。例えば、ジブ置台走行部67は、ジブ置台ローラ67aを備える。ジブ置台ローラ67aは、ジブ置台フレーム61に回転自在に取り付けられるローラ(車輪)である。ジブ置台ローラ67aは、例えば複数設けられ、1つのみ設けられてもよい。
図5に示す例では、ジブ置台ローラ67aは、2軸設けられ、1軸に2個ずつ(合計4個)設けられる。なお、ジブ置台ローラ67aの軸の数は1でもよく、3以上でもよい。ジブ置台ローラ67aの個数は、3以下でもよく、5以上でもよい。また、ジブ置台走行部67は、ジブ置台ローラ67aに代えて、または加えて、例えばクローラなどを備えてもよい。
【0028】
フック置台70は、
図4に示すように、フック30を下側Z2から支持する。フック置台70は、地面Gを走行可能である。フック置台70は、例えば複数設けられ、
図4に示す例では2つ設けられ、1つのみ設けられてもよい。フック置台70が2つ設けられる場合、フック置台70は、前部フック置台70Fと、後部フック置台70Rと、を備える。後部フック置台70Rは、ジブ置台60よりも後側X2(クレーン本体11(
図1参照)に近い側)に配置される。前部フック置台70Fは、ジブ置台60よりも前側X1に配置される。以下では、主に1つのフック置台70、具体的には例えば後部フック置台70Rについて説明する。後部フック置台70Rは、フック置台フレーム71と、フック支持部73と、固定部75(
図7参照)と、フック置台走行部77と、を備える。
【0029】
フック置台フレーム71は、フック支持部73を支持する構造物である。フック置台フレーム71は、例えば、
図5に示すように棒状部材(例えばパイプなど)を組み合わせた構造物でもよく、板状部材を組み合わせた構造物でもよく、板状部材および棒状部材を組み合わせた構造物でもよい。
図5に示す例では、フック置台フレーム71は、上下方向Zから見て略長方形状であるが、どのような形状でもよい。
【0030】
フック支持部73は、
図4に示すように、フック30に接触可能であり、少なくとも下側Z2からフック30を支持する。フック支持部73は、水平方向から、フック30を支持する。フック支持部73は、前側X1、後側X2、横方向Y一方側(例えば左側)、および横方向Y他方側(例えば右側)の、少なくともいずれか側からフック30を支持する。フック支持部73は、フック置台フレーム71に固定される。なお、
図4に示す例では、フック支持部73とフック置台フレーム71とが別々の部材であるが、フック支持部73の少なくとも一部と、フック置台フレーム71の少なくとも一部と、が兼ねられてもよい。フック支持部73は、フック30を支持可能であれば、どのように構成されてもよい。フック支持部73は、例えば、
図4に示すように板を組み合わせた物でもよく、棒状部材(例えばパイプなど)を組み合わせた物でもよく、板状部材および棒状部材を組み合わせた物でもよい。フック支持部73は、柵状や網状の部分(図示なし)を備えてもよい。
図4に示す例では、フック支持部73は、トレイ状である。フック支持部73は、前後方向Xおよび横方向Yから、フック30を囲む、または略囲む。フック支持部73は、フック置台70に対するフック30の前側X1、後側X2、および横方向Yへの移動を規制する。フック支持部73は、傾斜部74を備える。
【0031】
傾斜部74は、上下方向Zに対して傾斜する。傾斜部74には、前部傾斜部74fと、後部傾斜部74rと、がある。前部傾斜部74fは、フック支持部73の前側X1部分に設けられる。前部傾斜部74fは、後側X2(クレーン本体11に近い側)ほど下側Z2に配置されるように、上下方向Zに対して傾斜する。後部傾斜部74rは、フック支持部73の後側X2部分に設けられる。後部傾斜部74rは、後側X2ほど上側Z1に配置されるように、上下方向Zに対して傾斜する。
【0032】
この傾斜部74は、例えば次のように用いられる。
図4に示す例では、傾斜部74は、フックフレーム31のうちフック中心軸30aに対して傾斜する部分31tに対して、略平行である。この場合、傾斜部74と部分31tとが略平行ではない場合に比べ、傾斜部74は、部分31tを支持しやすい。また、
図6に示す例では、傾斜部74は、フック中心軸30aが上下方向Zに対して傾いた状態で、フック30を支持する(詳細は後述)。
【0033】
固定部75は、
図7に示すように、フック置台70に対してフック30を固定する。例えば、固定部75は、フック支持部73に取り付けられてもよく、フック置台フレーム71に取り付けられてもよい(図示なし)。例えば、固定部75は、金具でもよく、紐状の部材(ロープ、チェーン、またはベルトなど)でもよく、これらを組み合わせた物でもよい。なお、固定部75が用いられなくても、フック置台70に対してフック30が適切に支持され得る場合は、固定部75は用いられなくてもよい。
【0034】
フック置台走行部77は、
図4に示すように、フック置台70を地面Gに対して走行可能にする。フック置台走行部77は、フック置台フレーム71に取り付けられる。例えば、フック置台走行部77は、フック置台ローラ77aを備える。フック置台ローラ77aは、フック置台フレーム71に回転自在に取り付けられるローラ(車輪)である。フック置台ローラ77aは、例えば複数設けられ、1つのみ設けられてもよい。
図5に示す例では、1つのフック置台70に、フック置台ローラ77aは、2軸設けられ、1軸に2個ずつ(合計4個)設けられる。なお、1つのフック置台70に設けられるフック置台ローラ77aの軸の数は1でもよく、3以上でもよい。1つのフック置台70に設けられるフック置台ローラ77aの個数は、3以下でもよく、5以上でもよい。また、フック置台走行部77は、フック置台ローラ77aに代えて、または加えて、クローラなどを備えてもよい。
【0035】
接続部材80は、ジブ置台60とフック置台70とを接続する(連結する、つなぐ)。接続部材80は、ジブ置台60からフック置台70までの距離を所定範囲内に規制する。例えば、接続部材80は、ジブ置台60からフック置台70までの距離を一定に保つ。接続部材80のジブ置台60への接続位置は、
図5に示す例では、ジブ置台ローラ67aの回転軸部分(中心部分)であり、例えばジブ置台フレーム61でもよい。接続部材80のフック置台70への接続位置は、
図5に示す例では、フック置台ローラ77aの回転軸部分であり、フック置台フレーム71でもよく、フック支持部73でもよい。接続部材80は、ジブ置台ローラ67aの回転軸部分と、フック置台フレーム71およびフック支持部73の少なくともいずれかと、を接続してもよい。接続部材80は、フック置台ローラ77aの回転軸部分と、ジブ置台フレーム61と、を接続してもよい。接続部材80は、例えば棒状部材(例えばパイプなど)などである。接続部材80の長手方向は、前後方向Xである。接続部材80は、
図5に示す例では、ジブ置台ローラ67aおよびフック置台ローラ77aの横方向Y外側の両側(左右)に設けられ、ジブ置台ローラ67aおよびフック置台ローラ77aの横方向Y内側に設けられてもよい。フック置台70が2つ設けられる場合、接続部材80は、前部接続部材80Fと、後部接続部材80Rと、を備える。後部接続部材80Rは、ジブ置台60と後部フック置台70Rとを接続する。前部接続部材80Fは、ジブ置台60と前部フック置台70Fとを接続する。
【0036】
(作動)
クレーン組立補助装置50は、次のように作動する。
【0037】
(ブーム13の自立前)
図1に、クレーン1が組み立てられている途中の状態であって、ブーム13の自立前の状態を示す。この状態の詳細は次の通りである。ブーム13は、ブーム中心軸13aの方向がほぼ水平方向となるように配置された状態(伏せられた状態)である。ジブ20は、ブーム13よりも前側X1に配置され、ブーム13と同様に伏せられた状態である。
図4に示すように、ジブ先端部21は、ジブ置台60に下側Z2から支持される。フック30は、フック置台70に載せられる。なお、
図4では、ブーム13の自立前の状態のときのジブ先端部21を二点鎖線で示す。
【0038】
(ブーム13の自立)
図1に示すブーム13の自立前の状態から、ブーム13が起こされる。このとき、ブーム13は、組立用の補助クレーンによって起こされるのではなく、ブーム起伏装置15により起こされる(自立させられる)。すると、
図2に示すように、ジブ20の基端部(後側X2端部)は、ブーム13の先端部と共に上側Z1に移動する。これと同時に、ジブ先端部21は、
図4に示すジブ置台60に支持された状態で、後側X2に移動する。すると、フック置台70およびフック30は、ジブ置台60の後側X2への移動に追従して、後側X2に移動する。このとき、ジブ置台ローラ67aおよびフック置台ローラ77aが、地面Gに対して転動する。
【0039】
(ジブ20の地切り)
図2に示すブーム13が起こされると、ブーム中心軸13aに対するジブ中心軸20aの角度(ジブオフセット角度R)が大きくなる。ジブオフセット角度Rが、所定角度になると、ジブ20の地切りが可能となる。ジブ20の地切りとは、ジブ先端部21を地面Gに対して上側Z1に移動させることである。ジブ20の地切りが可能なジブオフセット角度Rは、クレーン1の安定度(モーメント)によって決まる。クレーン1の安定度は、カウンタウエイトWの質量、ブーム13の長さおよび質量、ならびに、ジブ20の長さおよび質量などによって決まる。ブーム13の自立前の状態からブーム13が起こされ、ジブ20の地切りが可能になったときの、クレーン1の状態を「ジブ20の地切り時の状態」とする。ジブ20の地切り時の状態から、ブーム13およびジブ20がさらに起こされ、
図3に示すように、クレーン1が作業可能な状態(作業姿勢)になる。
【0040】
(リービング作業)
クレーン1の組立時には、
図4に示すロープ40が、シーブ23およびフック30に取り付けられる作業(リービング作業)が行われる。リービング作業の詳細は次の通りである。具体例として、後部フック用ロープ40Rが、後部フック30Rと腹面シーブ23cとに取り付けられる場合について説明する。まず、リービングロープ(図示なし)が、後部フック30Rのフックシーブ35および腹面シーブ23cに掛けられる(通される)。次に、後部フック用ロープ40Rが、リービングロープの先端部に取り付けられる。次に、リービングロープが、ウインチ(図示なし)などで巻き取られながら、後部フック用ロープ40Rが、繰り出される。これにより、後部フック用ロープ40Rが、後部フック30Rと腹面シーブ23cとに取り付けられる。
【0041】
(リービング作業のタイミング)
リービング作業は、ブーム13の自立前の状態(
図1参照)で行われてもよく、ジブ20の地切り時の状態(
図2参照)で行われてもよく、ブーム13自立前の状態とジブ20の地切り時の状態との間の状態で行われてもよい。リービング作業は、ジブ先端部21がジブ置台60に下側Z2から支持されず、ジブ先端部21が地面Gよりも上側Z1の位置に配置された状態で(ジブ20の地切り後に)行われてもよい。
【0042】
(リービング作業の容易性)
リービング作業の容易さは、地面Gに対するジブ中心軸20aの角度、ジブ先端部21の構造、シーブ23の配置(位置、向き)、フック30の構造、フック30の配置、フックシーブ35の配置(位置、向き)、および作業現場の状況などによって変わる。例えば、腹面シーブ23cからフックシーブ35までの距離が短いほど、リービング作業を容易に行える可能性が高い。
図4では、ブーム13の自立前の状態のときのジブ先端部21を二点鎖線で示し、ジブ20の地切り時の状態のときのジブ先端部21を実線で示す。
図4に示す例では、ジブ20の地切り時の状態よりも、ブーム13の自立前の状態の方が、腹面シーブ23cからフックシーブ35までの距離が短く、リービング作業を容易に行える。一方、腹面シーブ23cからフックシーブ35までの距離が短くても、下記の角度θが大きければ、リービング作業が困難になる場合がある。
【0043】
(角度θ)
横方向Yから見たとき、フックシーブ35の中心(例えば図心)と、腹面シーブ23cの中心と、を通る直線と、フック中心軸30aと、が成す角度を角度θとする。角度θが小さいほど、後部フック用ロープ40Rが、フックフレーム31(例えば連結部31a(
図5参照))に干渉しにくい。その結果、後部フック用ロープ40Rに傷が付きにくく、また、リービング作業が容易になる。なお、例えば、フックシーブ35の回転軸の方向が横方向Yである場合は、上記「フックシーブ35の中心」は、フックシーブ35の回転軸の中心である。
【0044】
また、リービング作業中には、後部フック用ロープ40Rに張力が発生する。角度θが大きいほど、後部フック用ロープ40Rの張力により、後部フック置台70Rに対して後部フック30Rが回転しやすい(例えば倒れやすい)。一方、角度θが小さいほど、後部フック30Rが回転しにくい(例えば倒れにくい)。
【0045】
具体的には、
図4に示す例では、ジブ20の地切り時の状態よりも、ブーム13の自立前の状態(二点鎖線で示すジブ先端部21を参照)の方が、角度θが小さい。一方、
図4に示す例では、ブーム13の自立前の状態に比べ、ジブ20の地切り時の状態では、角度θが大きい。
【0046】
そこで、
図6に示すように、フック中心軸30aが、上下方向Zに対して傾いた状態で、後部フック30Rが、前部傾斜部74fに支持されてもよい。このとき、フック中心軸30aの方向が上下方向Zである場合(
図4参照)よりも、角度θが小さくなる側に、フック中心軸30aが上下方向Zに対して傾けられる。よって、後部フック用ロープ40Rのフックフレーム31への干渉を抑制できる。また、後部フック30Rは、いわば予め倒される。よって、後部フック30Rが、予め倒された状態に対して、さらに倒れることを抑制できる。なお、腹面シーブ23cが、後部フック30Rよりも後側X2に配置される場合は、後部フック30Rが、後部傾斜部74rに支持されてもよい。
【0047】
ここで、フック中心軸30aの方向が前後方向Xと一致する状態で、後部フック30Rに対してリービング作業が行われるとする。この場合、後部フック30Rは予め倒されているので、後部フック用ロープ40Rの張力により倒れることはない。しかし、ジブ20が地切りされて起こされるときに、後部フック用ロープ40Rがフックフレーム31(例えば連結部31a(
図5参照))に干渉する可能性はある。一方、
図6に示す例では、フック中心軸30aが、上下方向Zに対して傾いている。よって、ジブ20が地切りされて起こされるときにも、後部フック用ロープ40Rのフックフレーム31(例えば連結部31a(
図5参照))への干渉を抑制できる。
【0048】
(前部フック30F)
なお、前部フック30Fは、
図4に示す例では、フックシーブ35を備えず、ロープ40が1本掛けされる。そのため、前部フック30Fでは、上記のリービング作業は不要である。例えば、
図3に示す先端シーブ23aから垂らした前部フック用ロープ40Fの先端部が、前部フック30Fに取り付けられる。
【0049】
(フック置台70が設けられない場合の問題)
図4に示すフック置台70が設けられない場合、次の問題が生じるおそれがある。[問題1]
図1に示すブーム13の自立前の状態で、リービング作業が行われる場合、次の問題がある。この場合、
図1に示すブーム13が自立すると、ジブ先端部21が後側X2に移動する。このとき、フック30(
図4参照)が、地面Gに干渉しながら(引きずられながら)、後側X2に移動する。そのため、フック30に傷が付くおそれがある。
【0050】
[問題2]
図2に示すジブ20の地切り時の状態(またはそれに近い状態)で、リービング作業が行われれば、上記[問題1]は生じない。一方、この場合は、次の問題がある。ジブ20の地切り時の状態のときの、ジブ先端部21の位置を、「ジブ20の地切り位置」とする。このジブ20の地切り位置の近傍に、ブーム13の自立前に(事前に)フック30(
図4参照)が仮置きされることが考えられる。しかし、ジブ20の地切りが可能なジブオフセット角度Rは、クレーン1の安定度によって決まり、クレーン1の安定度は様々な条件によって変わる。そのため、作業者は、ジブ20の地切り位置を正確には予測できない場合がある。そのため、フック30(
図4参照)を仮置きした位置と、実際のジブ20の地切り位置とが、前後方向Xにずれる(リービング作業が適切にできない程ずれる)おそれがある。
【0051】
[問題2-1]
図4に示すフック30の位置と、ジブ先端部21の位置とがずれた状態でリービング作業が行われると、次の問題がある。この場合、フック30の位置と、ジブ先端部21の位置とのずれが大きいほど、角度θが大きくなる。[問題2-1a]上記のように、角度θが大きいと、ロープ40の張力により、フック30が倒れるおそれがある。このとき、フック30が地面Gに置かれるのみである場合は、フック30がフック支持部73に支持される場合に比べ、倒れやすい。フック30が倒れた場合、フック30を元に戻す作業に手間がかかる。また、フック30が倒れないように配慮しながらリービング作業が行われると、作業に手間がかかる。[問題2-1b]また、上記のように、角度θが大きいと、フックフレーム31にロープ40が干渉しやすく、ロープ40に傷が付くおそれがある。[問題2-1c]フック30を予め地面Gに倒した状態、具体的にはフック中心軸30aの方向が前後方向Xになるようにフック30を地面Gに置いた状態で、リービング作業が行われれば、フック30が倒れる問題は生じない。しかし、リービング作業の後、ジブ20が起こされる際に、ロープ40がフックフレーム31に干渉(例えば角当たり)し、ロープ40に傷が付くおそれがある。
【0052】
[問題2-2]フック30が仮置きされた位置と、
図2に示すジブ20の実際の地切り位置とが、前後方向Xにずれていることが判明した後、ジブ20の地切り位置の近傍にフック30(
図4参照)を運べば、上記[問題2-1]は解消される。しかし、フック30を運ぶ作業に手間がかかる。[問題2-3]フック30の仮置きを行わず、実際のジブ20の地切り位置が判明した後に、ジブ20の地切り位置の近傍にフック30を運べば、上記[問題2-1]および[問題2-2]は生じない。しかし、フック30を運ぶ工程をジブ20の地切り後にしか行えず、作業の順序が制限される。
【0053】
一方、本実施形態のクレーン組立補助装置50では、上記の各問題を、以下のように解決できる。なお、本実施形態のクレーン組立補助装置50では、上記の各問題のうち一部のみが解決できてもよい。
【0054】
(効果)
図2に示すクレーン組立補助装置50による効果は次の通りである。
【0055】
(第1の発明の効果)
クレーン組立補助装置50は、クレーン1の組立を補助可能である。クレーン1は、クレーン本体11と、ブーム13と、ジブ20と、フック30と、を備える。ブーム13は、クレーン本体11に起伏可能に取り付けられる。ジブ20は、ブーム13に起伏可能に取り付けられる。
図3に示すように、フック30は、ジブ先端部21(ジブ20の先端部)からロープ40により吊り下げられる。
図4に示すように、クレーン組立補助装置50は、ジブ置台60と、フック置台70と、接続部材80と、を備える。ジブ置台60は、ジブ先端部21を下側Z2から支持し、前後方向Xに地面Gを走行可能である。
【0056】
[構成1]フック置台70は、フック30を下側Z2から支持し、前後方向Xに地面Gを走行可能である。接続部材80は、ジブ置台60とフック置台70とを接続する。
【0057】
クレーン組立補助装置50は、上記[構成1]を備える。よって、ジブ先端部21およびジブ置台60が前後方向Xに移動すると、ジブ置台60に接続されたフック置台70が前後方向Xに移動する。すると、フック置台70に支持されたフック30も、前後方向Xに移動する。このとき、フック30は、フック置台70に下側Z2から支持されるので、フック30が地面Gに干渉しない。したがって、クレーン組立補助装置50は、ジブ先端部21の前後方向Xの移動に伴って、フック30を地面Gに干渉させずに前後方向Xに移動させることができる。その結果、次の効果が得られてもよい。例えば、
図1に示すブーム13の自立前のジブ先端部21の近傍の位置から、
図2に示すジブ20の地切り時のジブ先端部21の近傍の位置まで、
図4に示すフック30を地面Gに干渉させずに移動させることができる。
【0058】
(第2の発明の効果)
[構成2]フック置台70の少なくとも一部(後部フック置台70R)は、ジブ置台60よりもクレーン本体11(
図2参照)に近い側(後側X2)に配置される。
【0059】
通常、ジブ20は、ジブ先端部21のジブ腹面20cに設けられる腹面シーブ23cを備える。ジブ先端部21がジブ置台60に下側Z2から支持された状態のとき、腹面シーブ23cは、ジブ中心軸20aに対して、後側X2に配置される。そして、ロープ40(後部フック用ロープ40R)が、腹面シーブ23cとフック30(後部フック30R)とに取り付けられる。そこで、クレーン組立補助装置50は、上記[構成2]を備える。よって、後部フック置台70Rに支持された後部フック30Rと、腹面シーブ23cと、に後部フック用ロープ40Rが取り付けられる作業(リービング作業)の際に、後部フック用ロープ40Rが、ジブ20に干渉することを抑制できる。よってリービング作業を容易に行える。
【0060】
(第3の発明の効果)
[構成3]
図6に示すように、フック置台70は、傾斜部74を備える。傾斜部74は、フック30に接触可能であり、水平方向(前後方向Xおよび横方向Yの少なくとも一方向)からフック30を支持し、上下方向Zに対して傾斜する。
【0061】
上記[構成3]により、傾斜部74は、フック中心軸30aが上下方向Zに対して傾斜した状態でフック30を支持できる。よって、フック30に対してシーブ23が水平方向にずれた位置に配置された状態でも、フック30とシーブ23とにロープ40を取り付けるリービング作業を容易に行える。具体的には例えば、フック30に対してシーブ23が水平方向にずれた位置に配置され、かつ、フック中心軸30aの方向が上下方向Zとなるようにフック30が配置された状態で、リービング作業が行われる場合に比べ、次の効果が得られる。リービング作業時のロープ40の張力でフック30が倒れることを抑制できる。また、ロープ40がフックフレーム31に干渉することを抑制できる。
【0062】
(第5の発明の効果)
[構成5]
図7に示すように、フック置台70は、固定部75を備える。固定部75は、フック置台70に対してフック30を固定する。
【0063】
上記[構成5]により、フック30が、フック置台70上で倒れることや、フック置台70から落ちることなどを抑制できる。
【0064】
(第2実施形態)
図8および
図9を参照して、第2実施形態のクレーン組立補助装置250について、第1実施形態との相違点を説明する。なお、第2実施形態のクレーン組立補助装置250のうち、第1実施形態との共通点については、第1実施形態と同一の符号を付すなどして、説明を省略した。共通点の説明を省略する点については、後述する第3実施形態の説明も同様である。
図8に示すように、フック置台270の、フック支持部273Rおよびフック支持部273Fのそれぞれは、フック置台70(
図4参照)のフック支持部73(
図4参照)と相違する。
【0065】
フック支持部273Rは、傾斜部74を備えず、縦壁部274を備える。縦壁部274は、フック置台270に後部フック30Rが立てられた状態で、後部フック30Rを支持する。例えば、縦壁部274は、フック中心軸30aの方向が上下方向Zとなるように、フック置台270に後部フック30Rが立てられた状態で、後部フック30Rを支持する。縦壁部274は、上下方向Zに延び、フック支持部273Rの底部に対して垂直に延びる。縦壁部274には、前部縦壁部274fと、後部縦壁部274rと、がある。前部縦壁部274fは、フック支持部273Rの前側X1部分に設けられる。後部縦壁部274rは、フック支持部273Rの後側X2部分に設けられる。縦壁部274は、例えば次のように、後部フック30Rを支持する。フック置台270に後部フック30Rが立てられた状態から、フック置台270に対して後部フック30Rが回転しよう(倒れよう)としたときに、縦壁部274に後部フック30Rが接触する。これにより、フック置台270に対する後部フック30Rの回転が規制される。このとき、例えば、後部フック30Rの自重により、フック置台270に対して後部フック30Rが立てられた状態に戻る。
【0066】
フック支持部273Fは、前部フック30Fのフックフレーム31に対応した形状を有する。具体的には、前部フック30Fのフックフレーム31は、例えば円柱状である。この場合、
図9に示すように、フック支持部273Fは、輪止めのような形状を有し、弧状部273sを備える。弧状部273sは、前部フック30Fのフックフレーム31の外周に沿うような形状を有する。弧状部273sは、前後方向Xから見て、下側Z2および横方向Y外側(左右)に凸の弧状である。
【0067】
図8に示すクレーン組立補助装置250による効果は、次の通りである。
【0068】
(第4の発明の効果)
[構成4]フック置台270は、縦壁部274を備える。縦壁部274は、フック30(例えば後部フック30R)に接触可能であり、水平方向(前後方向Xおよび横方向Yの少なくとも一方向)からフック30を支持し、上下方向Zに延びる。
【0069】
上記[構成4]により、縦壁部274は、フック中心軸30aの方向が上下方向Zとなる状態で、フック30を支持できる。よって、フック30とシーブ23とにロープ40(
図4参照)を取り付けるリービング作業を容易に行える。具体的には例えば、リービング作業中にロープ40(
図4参照)の張力でフック30が倒れることを抑制できる。
【0070】
(第3実施形態)
図10を参照して、第3実施形態のクレーン組立補助装置350について、第1実施形態との相違点を説明する。相違点は、クレーン組立補助装置350が、ジブ置台突当部369と、フック置台突当部379と、を備え、後部接続部材80Rが、紐状部380を備える点である。なお、
図4では、フック置台70を断面図で示したが、
図10ではフック置台70を断面図で示していない。また、ジブ20が自立前の状態(
図1参照)のときのジブ先端部21などを、
図4では二点鎖線で示したが、
図10では実線で示した。
【0071】
ジブ置台突当部369およびフック置台突当部379は、ジブ置台60とフック置台70との距離(間隔)を規制する。ジブ置台突当部369およびフック置台突当部379は、ジブ置台60とフック置台70とが近付きすぎることを防ぎ、例えば、ジブ置台ローラ67aとフック置台ローラ77aとが干渉することを防ぐ。例えば、ジブ置台突当部369は、ジブ置台フレーム61から後側X2に突出してもよく、ジブ置台ローラ67aの回転軸部分から後側X2に突出してもよい(図示なし)。フック置台突当部379は、後部フック置台70Rに設けられる。フック置台突当部379は、ジブ置台突当部369に接触可能である。例えば、フック置台突当部379は、フック置台フレーム71から前側X1に突出してもよく、フック置台ローラ77aの回転軸部分から前側X1に突出してもよい(図示なし)。
【0072】
紐状部380は、ジブ置台60とフック置台70との距離を規制する。紐状部380は、ジブ置台60とフック置台70とが遠ざかりすぎることを防ぐ。紐状部380は、可撓性を有する。例えば、紐状部380は、ロープでもよく、チェーンでもよく、ベルトでもよい。
【0073】
(作動)
クレーン組立補助装置350は、次のように作動する。以下では、主に、第1実施形態のクレーン組立補助装置50(
図4参照)の作動に対する、クレーン組立補助装置350の作動の相違点を説明する。
【0074】
(リービング作業)
ロープ40がフック30に取り付けられるリービング作業が、次のように行われる。リービング作業が行われる前に、ジブ置台突当部369とフック置台突当部379との前後方向Xの間隔が開けられているとする。ここでは、後部フック30Rと腹面シーブ23cとが前後方向Xにずれた状態で、後部フック30Rと腹面シーブ23cとに後部フック用ロープ40Rが取り付けられる場合について説明する。この場合、後部フック用ロープ40Rの張力より、後部フック30Rに、前後方向Xにおいて腹面シーブ23cに近づく側(
図10では前側X1)の力が作用する。このとき、ジブ置台60に対して後部フック置台70Rが固定されていると、後部フック30Rが倒れる場合がある。一方、本実施形態では、ジブ置台突当部369とフック置台突当部379とが離れた状態では、後部フック置台70Rが、ジブ置台60に近づく側(
図10では前側X1)に移動する。よって、後部フック30Rが倒れることが抑制される。
【0075】
また、クレーン組立補助装置350では、後部フック置台70Rは、ジブ置台60に対して、所定範囲内で前後方向Xに移動可能である。さらに詳しくは、ジブ置台突当部369とフック置台突当部379とが接触した状態から、紐状部380が延びきった状態までの間で、後部フック置台70Rは、ジブ置台60に対して前後方向Xに移動可能である。よって、ジブ先端部21がジブ置台60に支持された状態でも、腹面シーブ23cに対する後部フック30Rの位置を調整しやすい。具体的には例えば、角度θが小さくなるように、後部フック30Rの位置を調整しやすい。
【0076】
(ジブ20の自立)
ジブ20の自立前の状態(
図1参照)から、ジブ20が起こされると、ジブ置台60が、後側X2に移動する。すると、ジブ置台突当部369が、フック置台突当部379に接触し、後部フック置台70Rを後側X2に押す。よって、後部フック置台70Rが後側X2に移動する。なお、ジブ置台突当部369がフック置台突当部379に接触しているとき、紐状部380は、たるんだ状態である。
【0077】
図10に示すクレーン組立補助装置350による効果は、次の通りである。
【0078】
(第6の発明の効果)
[構成6]接続部材80は、可撓性を有する紐状部380を備える。ジブ置台60からフック置台70(例えば後部フック置台70R)までの距離は、可変である。
【0079】
上記[構成6]により、リービング作業時のロープ40の張力によりフック30に前後方向Xの力が作用した場合、ジブ置台60に対してフック置台70が前後方向Xに移動できる。その結果、ジブ置台60に対してフック30が前後方向Xに移動できる。よって、リービング作業時のロープ40の張力でフック30が倒れることを抑制できる。また、上記[構成6]により、ジブ20に対するフック30の位置を、リービング作業を行いやすい位置に容易に調整できる。
【0080】
(第4実施形態)
図11および
図12を参照して、
図11に示す第4実施形態のクレーン組立補助装置450について、第1実施形態との相違点を説明する。相違点は、フック置台470の配置、および、傾斜部74の配置である。クレーン組立補助装置450は、第1実施形態と同様のジブ置台60と、フック置台470と、接続部材480と、を備える。
【0081】
フック置台470は、次のように配置される。
図4に示す例では、フック置台70は、ジブ置台60よりも後側X2および前側X1に配置された。一方、
図11に示すように、本実施形態では、フック置台470は、ジブ置台60よりも横方向Y外側に配置される。
図11に示す例では、フック置台470は、2つ設けられる。フック置台470は、左側フック置台470Aと、右側フック置台470Bと、を備える。
【0082】
左側フック置台470Aは、後側X2から前側X1に向かって見たときにジブ置台60よりも左側に配置される。左側フック置台470Aには、
図11に示す例では後部フック30Rが載せられ、前部フック30Fが載せられてもよい。左側フック置台470Aは、フック支持部473Aを備える。フック支持部473Aは、内側傾斜部474iと、外側傾斜部474oと、を備える。
【0083】
内側傾斜部474iは、フック支持部473Aの、ジブ置台60側部分に設けられる。内側傾斜部474iは、ジブ置台60から遠ざかる側ほど下側Z2に配置されるように、上下方向Zに対して傾斜する。外側傾斜部474oは、フック支持部473Aの、ジブ置台60側とは反対側部分に設けられる。外側傾斜部474oは、ジブ置台60から遠ざかる側ほど上側Z1に配置されるように、上下方向Zに対して傾斜する。
図12に示す例では、フック支持部473Aは、前部傾斜部74fと後部傾斜部74rとを備える。一方、フック支持部473Aは、前部傾斜部74fおよび後部傾斜部74rの少なくともいずれかを備えなくてもよく、
図8に示す前部縦壁部274fおよび後部縦壁部274rの少なくともいずれかを備えてもよい。
【0084】
右側フック置台470Bは、
図11に示すように、ジブ置台60に対して、左側フック置台470Aとは反対側(横方向Yにおける反対側)に配置される。右側フック置台470Bは、フック支持部473Bを備える。フック支持部473Bは、フック支持部473Aと同様に、内側傾斜部474iと、外側傾斜部474oと、を備える。
図12に示す例では、フック支持部473Bは、前部縦壁部274fと後部縦壁部274rとを備える。フック支持部473Bは、前部縦壁部274fおよび後部縦壁部274rの少なくともいずれかを備えなくてもよく、
図4に示す前部傾斜部74fおよび後部傾斜部74rの少なくともいずれかを備えてもよい。
【0085】
接続部材480は、次のように配置される。
図5に示す例では、接続部材80の長手方向は、前後方向Xであった。一方、
図12に示すように、本実施形態では、接続部材480の長手方向は、例えば横方向Yである。フック置台470が2つ設けられる場合、接続部材480は、左側接続部材480Aと、右側接続部材480Bと、を備える。左側接続部材480Aは、ジブ置台60と左側フック置台470Aとを接続する。右側接続部材480Bは、ジブ置台60と右側フック置台470Bとを接続する。
図12に示す例では、左側接続部材480Aは、ジブ置台ローラ67aの回転軸部とフック置台ローラ77aの回転軸部とを接続する。例えば、左側接続部材480Aは、ジブ置台ローラ67aおよびフック置台ローラ77aの共用の車軸である。
図12に示す例では、右側接続部材480Bは、ジブ置台フレーム61とフック置台フレーム71とを接続する。なお、接続部材480は、ジブ置台ローラ67aの回転軸部と、フック置台フレーム71およびフック支持部73の少なくともいずれかと、を接続してもよい。接続部材480は、フック置台ローラ77aの回転軸部と、ジブ置台フレーム61と、を接続してもよい。
【0086】
(リービング作業の容易性など)
上記のように、リービング作業の容易性は、様々な状況(フック30およびシーブ23の配置など)によって変わる。
図4に示すように、ジブ置台60よりも前側X1または後側X2にフック30が配置される場合(前後方向X配置)と、
図11に示すように、ジブ置台60よりも横方向Y外側にフック30が配置される場合(横方向Y配置)とを比べる。すると、横方向Y配置の場合に、前後方向X配置に対して、リービング作業が容易になる場合も、困難になる場合も、容易さが同じ程度である場合も考えられる。リービング作業ができるだけ容易になるように、前後方向X配置または横方向Y配置が選択されることが好ましい。
【0087】
例えば、
図4に示すフック置台70を置くスペースやリービング作業を行うためのスペースが、ジブ置台60よりも前側X1または後側X2に確保できない場合が考えられる。この場合、
図11に示すように、横方向Y配置にすることで、ジブ置台60よりも横方向Y外側のスペースにフック置台470を置くことができ、リービング作業が行いやすくなる。
【0088】
(角度φ)
前後方向Xから見たとき、フックシーブ35の中心(例えば図心)と、腹面シーブ23cの中心(例えば図心)と、を通る直線と、フック中心軸30aと、が成す角度を角度φとする。角度φが小さいほど、後部フック用ロープ40Rが、フックフレーム31に干渉しにくい。その結果、後部フック用ロープ40Rに傷が付きにくく、また、リービング作業が容易になる。
【0089】
(内側傾斜部474iによる作用)
フック置台470(
図11では左側フック置台470A)の内側傾斜部474iは、フック中心軸30aが上下方向Zに対して傾いた状態で、フック30(
図11では後部フック30R)を支持する。このとき、フック中心軸30aの方向が上下方向Zである場合よりも、角度φが小さくなる側に、フック中心軸30aが上下方向Zに対して傾けられる。よって、後部フック用ロープ40Rのフックフレーム31への干渉を抑制できる。また、後部フック30Rは、いわば予め倒される。よって、後部フック用ロープ40Rに張力がかかっても、後部フック30Rが、予め倒された状態に対して、さらに倒れることを抑制できる。
【0090】
フック30を(フックフレーム31を)構成する面のうち、できるだけ広い面を傾斜部74に支持させる(沿わせる)ことで、よりフック30を安定させることができ、リービング作業を容易に行える。具体的には例えば、
図12に示す例では、内側傾斜部474iに接触しているフックフレーム31の面は、フックフレーム31の前側X1の面や後側X2の面よりも広い。この場合は、フックフレーム31の前側X1の面や後側X2の面を内側傾斜部474iに接触させた場合よりも、フック30をより安定させることができる。
【0091】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、互いに異なる実施形態の構成要素どうしが組み合わされてもよい。例えば、各構成要素の配置や形状が変更されてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、構成要素どうしの固定や連結などは、直接的でも間接的でもよい。
【0092】
例えば、
図4に示す前部フック置台70Fおよび後部フック置台70Rのうち一方のみが設けられてもよい。例えば、
図11に示す左側フック置台470Aおよび右側フック置台470Bのうち一方のみが設けられてもよい。例えば、
図4に示す前部フック置台70Fおよび後部フック置台70Rの少なくとも一方と、
図11に示す左側フック置台470Aおよび右側フック置台470Bの少なくとも一方と、が組み合わされてもよい。
図5に示すフック置台70は、ジブ置台60に対して、後側X2かつ横方向Y外側の位置(斜め後側X2の位置)に配置されてもよい(斜め前側X1の位置も同様)。
【0093】
例えば、あるフック置台70の一部または全部が、他のフック置台70の一部または全部とされてもよい。具体的には例えば、後部フック置台70Rの一部または全部が、前部フック置台70F、
図12に示す左側フック置台470A、および右側フック置台470Bの少なくともいずれかの、一部または全部とされてもよい。
【0094】
例えば、
図4に示すフック支持部73の構成は、様々に変形されてもよい。例えば、1つのフック支持部73が、前部傾斜部74fおよび後部傾斜部74rのうち一方のみを備えてもよく、
図7に示す前部縦壁部274fおよび後部縦壁部274rのうち一方のみを備えてもよい。例えば、
図11に示す1つのフック支持部473Aが、内側傾斜部474iおよび外側傾斜部474oのうち一方のみを備えてもよい。例えば、
図4に示す前部フック置台70Fおよび後部フック置台70Rの少なくともいずれかが、
図11に示す内側傾斜部474iおよび外側傾斜部474oを備えてもよい。
【0095】
フック30の構成および配置などは、様々に変形されてもよい。例えば、後部フック30Rの一部または全部が、前部フック30Fの一部または全部とされてもよい(前後逆も同様)。フック置台70に載せられたフック30のフックシーブ35の回転軸の方向は、上記実施形態では横方向Yであるが、前後方向Xでもよく、横方向Yおよび前後方向Xに対して傾いた方向でもよい。フックシーブ35の枚数は様々に変更されてもよい。同様に、先端シーブ23aの枚数および腹面シーブ23cの枚数も様々に変更されてもよい。前部フック30Fは、上記実施形態では1本掛けにされたが、多本掛けにされてもよい。後部フック30Rは、上記実施形態では多本掛けにされたが、1本掛けにされてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 クレーン
11 クレーン本体
13 ブーム
20 ジブ
30 フック
40 ロープ
50、250、350、450 クレーン組立補助装置
60 ジブ置台
70、270、470 フック置台
74 傾斜部
75 固定部
80、480 接続部材
274 縦壁部
380 紐状部
X 前後方向(水平方向)
X1 前側
X2 後側
Y 横方向(水平方向)