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特許7110625押出ラミネート用樹脂組成物、積層体及び積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】押出ラミネート用樹脂組成物、積層体及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20220726BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20220726BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
C08L23/04
B32B27/28 101
B32B27/32 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018037339
(22)【出願日】2018-03-02
(65)【公開番号】P2019151729
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 好正
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-016465(JP,A)
【文献】特開平07-292174(JP,A)
【文献】特開平07-330974(JP,A)
【文献】特開2017-119816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分A:チューブラー製法で得られるエチレン・酢酸ビニル共重合体75~85重量%と成分B:メモリーエフェクト(ME)1.80~1.95の高圧ラジカル重合法で得られる低密度ポリエチレン15~25重量%とを含む押出ラミネート用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも片側表面に有することを特徴とする積層体。
【請求項3】
請求項1に記載の樹脂組成物からなる層を押出ラミネート法で製造することを特徴とする積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出ラミネート用樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を用いた積層体及び積層体の製造方法に関し、特には、チューブラー製法で得られたエチレン・酢酸ビニル共重合体でありながら、ネックインを小さくしつつ、延展性を向上させることが可能な押出ラミネート用樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オートクレーブ製法で重合されたエチレン・酢酸ビニル共重合体を押出ラミネート法で加工した場合、著しくネックインが優れる反面、極めて延展性に乏しいものである。その対応策に、ダイスリップ口にヒーターを取付け、延展性を改良する方法がある。
一方、チューブラーで重合されたエチレン・酢酸ビニル共重合体は、オートクレーブ法に比べ、分子量分布が狭くネックインが大きく高速加工性に優れるが、端部のラミネート厚みが増すため、トリミングロスが多くなり生産効率を著しく低下させる問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、チューブラー製法で得られたエチレン・酢酸ビニル共重合体でありながら、オートクレーブ製法並みにネックインを小さくしつつ、チューブラー特有の延展性を保有させることが可能な押出ラミネート用樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、かかる樹脂組成物を用いた積層体及び積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、チューブラー製法で得られるエチレン・酢酸ビニル共重合体に対して、特定のメモリーエフェクト値を有する高圧ラジカル重合法で得られる低密度ポリエチレンを特定の割合で配合することにより、ネックインを程よく小さくしながらも、チューブラー製法で得られるエチレン・酢酸ビニル共重合体を凌駕する優れた高速加工性を有する押出ラミネート用の樹脂組成物を提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0005】
即ち、本発明の第1の発明によれば、成分A:チューブラー製法で得られるエチレン・酢酸ビニル共重合体75~85重量%と成分B:メモリーエフェクト(ME)1.80~1.95の高圧ラジカル重合法で得られる低密度ポリエチレン15~25重量%とを含む押出ラミネート用樹脂組成物が提供される。
【0006】
本発明の第2の発明によれば、第1の発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも片側表面に有することを特徴とする積層体が提供される。
【0007】
本発明の第3の発明によれば、第1の発明の樹脂組成物からなる層を押出ラミネート法で製造することを特徴とする積層体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の押出ラミネート用樹脂組成物によれば、チューブラー製法で得られたエチレン・酢酸ビニル共重合体でありながら、ネックインを小さくしつつ、延展性を向上させることが可能な押出ラミネート用樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明の積層体及び積層体の製造方法によれば、かかる押出ラミネート用樹脂組成物を用いた積層体及び積層体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の押出ラミネート用樹脂組成物、積層体及び積層体の製造方法について、項目毎に詳細に説明する。
【0010】
I.押出ラミネート用樹脂組成物
本発明の押出ラミネート用樹脂組成物は、成分A:チューブラー製法で得られるエチレン・酢酸ビニル共重合体75~85重量%と成分B:メモリーエフェクト(ME)1.80~1.95の高圧ラジカル重合法で得られる低密度ポリエチレン15~25重量%を含むことを特徴とする。以下、本発明の押出ラミネート用樹脂組成物を単に本発明の樹脂組成物ともいう。
【0011】
(i)成分A:チューブラー製法で得られるエチレン・酢酸ビニル共重合体
本発明の樹脂組成物は、エチレン・酢酸ビニル共重合体を含むものであるが、該エチレン・酢酸ビニル共重合体は、チューブラー製法により重合されたエチレン・酢酸ビニル共重合体である。以下、チューブラー製法で得られるエチレン・酢酸ビニル共重合体を成分A又はエチレン・酢酸ビニル共重合体(A)ともいう。
ここで、チューブラー製法とは、エチレン系重合体の重合法としてオートクレーブ製法と大別される重合法の一つであり、チューブラー型の反応器(管型とも呼ばれる)を用いることを特徴とする。なお、オートクレーブ製法では、オートクレーブ型の反応器(槽型とも呼ばれる)が用いられる。
これらの重合法では、用いる反応器の形状や重合条件の違いから、得られる重合体の特性についても違いがみられるため、チューブラー製法で得られるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、オートクレーブ製法で得られるものと明確に区別される。チューブラー製法で得られるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、分子量分布が比較的狭く、溶融弾性が比較的小さいことが知られており、オートクレーブ製法で得られるものと比べて押出ラミネート加工に不適である。
【0012】
1.成分Aの分子量分布
本発明に用いるエチレン・酢酸ビニル共重合体(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.5以上、5.5以下であることが好ましい。
なお、分子量分布Mw/Mnの測定条件は次の通りである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工製AD806M/S 3本(カラムの較正は、東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量は、ポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数は、α=0.723、logK=-3.967であり、ポリエチレンはα=0.733、logK=-3.407である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/10mL
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
【0013】
2.成分Aのメルトフローレート
本発明に用いるエチレン・酢酸ビニル共重合体(A)は、押出ラミネート加工性の観点から、メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)が、5~15g/10分が好ましく、7~12g/10分がより好ましい。
なお、成分AのMFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した値である。
【0014】
3.成分Aを構成する単量体
本発明に用いるエチレン・酢酸ビニル共重合体(A)は、エチレンと酢酸ビニルの共重合体であり、共重合体を構成するエチレンの割合は88~95重量%が好ましく、共重合体を構成する酢酸ビニルの割合は5~12重量%が好ましい。
【0015】
(ii)成分B:高圧ラジカル重合法で得られる低密度ポリエチレン
本発明の樹脂組成物は、高圧ラジカル重合法で得られる低密度ポリエチレンを含む。以下、高圧ラジカル重合法で得られる低密度ポリエチレンを成分B又は高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)ともいう。
高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)は、公知の重合法により製造可能であるが、例えば、酸素、有機過酸化物などのラジカル発生剤を用いて、1000~4000atmの超高圧下、エチレンの塊状または溶液重合によって製造される。ここでの重合は、オートクレーブ型の反応器で行われたものである。
なお、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)としては、市販品を使用できる。
【0016】
1.成分Bのメモリーエフェクト
本発明に用いる高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)は、メモリーエフェクト(ME)が1.80~1.95である。成分BのMEが上記特定した範囲内にあれば、成分Aを含む樹脂組成物の押出ラミネート加工を行う際にネックインを低減できる。
【0017】
<メモリーエフェクト(ME)の測定法>
上記高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)のメモリーエフェクト(ME)は、JIS K7210で使用されるメルトインデクサー(三鈴エリー(株)製半自動メルトテンション計)を使用し、シリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件にて、以下のようにして測定される。
装置に2.095mmφのMFR測定用ノズルをセットし、樹脂を炉へ充填する。ピストンを乗せ、0.09g/分の定速押出で5分間保持し、その後3g/分の定速押出とし6分30秒までエアー抜きを行う。6分30秒経過後、3g/分を維持したままストランドをカットし、オリフィス下端からのストランド長さが20mmとなった時点でのストランドの径を、オリフィス下端から15mmの位置でKEYENCE製レーザー寸法測定器(LS-3033)を用いて測定する。測定したストランドの直径をD、ダイスのオリフィス径をD(2.095mm)として次式によりMEが求められる(ただし、MEの実測値は小数点第2位を四捨五入して求める)。
ME=D/D
【0018】
2.成分Bの密度
本発明に用いる高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)は、密度が0.916~0.921g/cmが好ましく、0.918~0.919g/cmがより好ましい。なお、密度は、JIS K-7112に準拠して測定した値である。
密度が0.921g/cmを越えると、酢酸ビニル特有の柔軟性を支障することになり、好ましくない。
【0019】
3.成分Bのメルトフローレート
本発明に用いる高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)は、押出ラミネート加工性の観点から、メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)が、3~20g/10分が好ましく、7~15g/10分がより好ましい。
なお、成分BのMFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した値である。
【0020】
(iii)成分Bの含有量
本発明の樹脂組成物中において、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)の含有量は15~25重量%が好ましい。上記成分(B)の含有量が上記特定し範囲内にあれば、成分Aを含む樹脂組成物の押出ラミネート加工時のネックインを低減できると共に、延展性も向上させることもできる。
【0021】
(iv)その他の成分
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、耐候安定剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を配合してもよい。また、本発明の樹脂組成物には、柔軟性等を付与するため、本発明の目的を損なわない範囲で、エチレン・α-オレフィン共重合体系エラストマーやスチレン系エラストマー等のエラストマーを配合してもよい。
【0022】
(v)樹脂組成物の調製
本発明の樹脂組成物は、公知の方法で調製できる。例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)と、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)と、必要に応じて適宜選択される他の成分とを、ヘンシェルミキサー等でドライブレンドし、得られたブレンドを押出機、ニーダー、バンバリー等で溶融混練する方法等が挙げられる。
【0023】
(vi)用途
本発明の樹脂組成物は、ネックインを程よく小さくしながら延展性を向上させることが可能であるため、押出ラミネート加工に好適に使用できる。特に、本発明の樹脂組成物は、チューブラー製法で得られるエチレン・酢酸ビニル共重合体を凌駕する優れた高速加工性を有する樹脂組成物であり、押出ラミネートの生産性を大幅に向上できる。
【0024】
II.積層体
本発明の積層体は、上述した本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも片側表面に有することを特徴とする。上述した本発明の樹脂組成物からなる層は、通常、シーラント層として使用され、その厚さは、15~40μmが好ましい。以下、本発明の樹脂組成物からなる層をシーラント層ともいう。
【0025】
(i)構成
本発明の積層体は、通常、基材層を有する。本発明の積層体に使用できる基材層としては、上質紙、クラフト紙、薄葉紙、ケント紙等の紙、アルミニウム箔等の金属箔、セロファン、織布、不織布、延伸ナイロン、無延伸ナイロン、特殊ナイロン(MXD6等)、Kーナイロン(ポリフッ化ビニリデンコート)等のナイロン系基材、延伸PET、無延伸PET、KーPET、アルミニウム蒸着PET(VMPET)等のPET(ポリエチレンテレフタレート)系基材、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、アルミニウム蒸着PP、K-PP、共押出フィルムPP等のポリプロピレン系基材、LDPEフィルム、LLDPEフィルム、EVAフィルム、延伸LDPEフィルム、延伸HDPEフィルム、ポリスチレン系フィルム等の合成樹脂フィルム系基材等が挙げられ、これらは印刷されたものでも差し支えない。また必要に応じて、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、紫外線処理、アンカーコート処理等の各種前処理がなされていてもよい。
【0026】
本発明の積層体において、シーラント層と基材層とは隣接するように配置されてもよいが、基材層とシーラント層の間に、必要に応じてバリヤー性材料層を設けることが望ましい。バリヤー性材料層は、酸素等の気体あるいは水蒸気等を遮断して内容物の劣化を防ぐ材料で構成されるもので、用途に応じて、ポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、アルミニウム蒸着フィルム、アルミニウム箔等の金属箔、エチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化物等などからなるものが挙げられる。特に、気体透過性および水蒸気透過性が小さいアルミニウム箔、気体透過性が小さいエチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化物が好ましい。これらの材料は、上述した基材層、例えば、アルミニウム蒸着PET、アルミニウム蒸着PPなどのバリヤー性を有する基材層と重複させてもよい。また、基材層等との接着性が悪い場合には、オゾン処理、コロナ放電処理、界面活性剤の塗布等の表面処理により二次加工性を高めてもよい。
【0027】
本発明の積層体は、これに限定されるものではなく、例えば、基材層とバリヤー性材料層の間、バリヤー性材料層とシーラント層の間、又は基材層の外側に、ポリエチレン等のポリオレフィン、アイオノマー樹脂、各種のポリオレフィン及び/又はゴムに不飽和カルボン酸又はその誘導体をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン及び/又はゴム等からなる層を更に設けてもよい。
【0028】
例えば、層構成としては、
PET系基材/PEラミ/シーラント層、PET系基材/PEラミ/Al/シーラント層、PET系基材/PEラミ/Al/PEラミ/シーラント層、PET系基材/酸変性PE/EVOH/PEラミ/シーラント層、PET系基材/Al/PEラミ/シーラント層、
ナイロン系基材/PEラミ/シーラント層、ナイロン系基材/PEラミ/Al/シーラント層、ナイロン系基材/PEラミ/Al/PEラミ/シーラント層、ナイロン系基材/酸変性PE/EVOH/シーラント層、
紙/PEラミ/シーラント層、紙/PEラミ/Al/シーラント層、紙/PEラミ/Al/PEラミ/シーラント層、紙/酸変性PE/EVOH/シーラント層、OPP/PEラミ/シーラント層、OPP/PEラミ/Al/シーラント層、K-ナイロン/酸変性PE/EVOH/シーラント層、延伸HDPE/酸変性PE/EVOH/PEラミ/シーラント層、不織布/酸変性PE/EVOH/PEラミ/シーラント層等が挙げられる。また、Alの変わりにアルミ蒸着フィルムやシリカ蒸着フィルムを使用してもよい。
(但し、PEラミ:ポリエチレン系樹脂のラミネート層、Al:アルミニウム箔、酸変性PE:無水マレイン酸変性ポリエチレンを示す)。
【0029】
(iii)用途
本発明の積層体は、上述した本発明の樹脂組成物からなる層(シーラント層)を少なくとも片側表面に有するため、包装用材料として好適に使用できる。
【0030】
III.積層体の製造方法
本発明の積層体の製造方法は、上述した本発明の樹脂組成物からなる層を押出ラミネート法で製造することを特徴とする。
ここで、押出ラミネート法は、ダイより溶融した樹脂組成物をフィルム状に押出し、基材層等の上に樹脂組成物からなる層を積層させる方法である。
例えば、基材層に、LDPEやLLDPE等の樹脂を押出ラミネーション法で積層した後に、シーラント層を押出ラミネーション法で積層する方法や、基材層にLDPEやLLDPE等の樹脂を押出ラミネーション法で積層すると同時にアルミ基材をサンドさせた後にシーラント層を押出ラミネーション法で積層する方法がある。基材層とLDPEやLLDPE等の樹脂の間に接着剤を介在させる方法をはじめ、種々の方法で行ってもよい。
【実施例
【0031】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における物性の測定と評価は、以下に示す方法によって実施した。
【0032】
1.樹脂物性の評価方法
(1)メルトフローレート(MFR)
JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した。
(2)密度
JIS K-7112に準拠して測定した。
(3)分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。測定条件は次の通りである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工製AD806M/S 3本(カラムの較正は、東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量は、ポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数は、α=0.723、logK=-3.967であり、ポリエチレンはα=0.733、logK=-3.407である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/10mL
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
(4)メモリーエフェクト(ME)
JIS K7210で使用されるメルトインデクサー(三鈴エリー(株)製半自動メルトテンション計)を使用し、シリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件にて、以下のようにして測定した。
具体的には、装置に2.095mmφのMFR測定用ノズルをセットし、樹脂を炉へ充填する。ピストンを乗せ、0.09g/分の定速押出で5分間保持し、その後3g/分の定速押出とし6分30秒までエアー抜きを行う。6分30秒経過後、3g/分を維持したままストランドをカットし、オリフィス下端からのストランド長さが20mmとなった時点でのストランドの径を、オリフィス下端から15mmの位置でKEYENCE製レーザー寸法測定器(LS-3033)を用いて測定する。測定したストランドの直径をD、ダイスのオリフィス径をD(2.095mm)として次式によりMEが求められる(ただし、MEの実測値は小数点第2位を四捨五入して求める)。
ME=D/D
【0033】
2.積層体の評価方法
(1)延展性(ドローダウン性)
下記加工条件で、クラフト紙上に樹脂組成物を押出ラミネート法で積層させた。ラミネート膜が加工可能な最高速度を測定した。
<加工条件>
加工機:モダンマシナリー製90mmφシングル押出ラミネーター
エアギャップ:115mm
チルロール:セミマット
プレッシャーロール:シリコンゴム
加工温度:(C1)200℃、(C2)230℃、(C3)250℃、(C4)250℃、(C5)250℃、(AD)250℃、(J)250℃、(D1)250℃、(D2)250℃、(D3)250℃、(D4)250℃、(D5)250℃
クラフト紙:50g/cm 500mm巾
ダイ幅:560mm
押出機の回転数:34rpm一定 (100m/minで15μ換算)
(2)ネックイン
下記加工条件で、クラフト紙上に樹脂組成物を押出ラミネート法で押出した。ダイ幅と製造したラミネート膜の幅の差からネックインを求めた。
<加工条件>
加工機:モダンマシナリー製φ90mm押出ラミネーター
エアギャップ:115mm
チルロール:セミマット
プレッシャーロール:シリコンゴム
加工温度:(C1)200℃、(C2)230℃、(C3)250℃、(C4)250℃、(C5)250℃、(AD)250℃、(J)250℃、(D1)250℃、(D2)250℃、(D3)250℃、(D4)250℃、(D5)250℃
ダイ幅:560mm
押出機の回転数:64rpm一定
ラミネート速度:100m/min
ラミネート厚み:30μm
※ダイ両端にロッド棒を挿入、ダイ開口部を560mmになるようにセットする。クラフトの面に、規定の押出回転数と速度に合せた条件でラミネートした後、ラミネートされた巾の端部をSUS製の600mmスケールで、片側の端部を560mmに合せ、もう一方の端部の数値をネックインとして測定する。
【0034】
3.使用する材料
(1)チューブラー製法のエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)
LV271:日本ポリエチレン社製ノバテック、Mw/Mn5.36、MFR10g/10分
(1)高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(LD)
LC606:日本ポリエチレン社製ノバテック、密度0.918g/cm、MFR9g/10分、ME1.94
LC701:日本ポリエチレン社製ノバテック、密度0.918g/cm、MFR14g/10分、ME1.89
LC607K:日本ポリエチレン社製ノバテック、密度0.919g/cm、MFR8g/10分、ME1.86
LC604A:日本ポリエチレン社製ノバテック、密度0.918g/cm、MFR8g/10分、ME2.13
LC600A:日本ポリエチレン社製ノバテック、密度0.918g/cm、MFR7g/10分、ME2.01
LC8001:日本ポリエチレン社製ノバテック、密度0.917g/cm、MFR20g/10分、ME1.58
【0035】
<参考例1>
モダンマシナリー製90mmΦシングルラミネート機を用いて、チューブラー製法のエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)としてLV271のみを250℃にて押出ラミネート法で押出し、延展性及びネックインの評価を行った。結果を表1に示す。
【0036】
<実施例1>
三菱重工製40mmΦ単軸押出機を用いて、チューブラー製法のエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)として80重量部のLV271と、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(LD)として20重量部のLC606とを180℃にて溶融混練してペレット化した。
このペレット化した樹脂組成物を用いて、モダンマシナリー製90mmΦ押出ラミネート機を250℃の温度で押出し、延展性及びネックインの評価を行った。結果を表1に示す。
【0037】
<実施例2>
高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(LD)をLC606からLC701に変更した以外は、実施例1と同様にして、ペレット化した樹脂組成物を作製し、延展性及びネックインの評価を行った。結果を表1に示す。
【0038】
<実施例3>
高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(LD)をLC606からLC607Kに変更した以外は、実施例1と同様にして、ペレット化した樹脂組成物を作製し、延展性及びネックインの評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
<実施例4>
LV271の配合量を85重量部に変更し、LC701の配合量を15重量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、ペレット化した樹脂組成物を作製し、延展性及びネックインの評価を行った。結果を表1に示す。
【0040】
<実施例5>
LV271の配合量を75重量部に変更し、LC701の配合量を25重量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、ペレット化した樹脂組成物を作製し、延展性及びネックインの評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
<比較例1>
高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(LD)をLC606からLC604Aに変更した以外は、実施例1と同様にして、ペレット化した樹脂組成物を作製し、延展性及びネックインの評価を行った。結果を表2に示す。
【0042】
<比較例2>
高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(LD)をLC606からLC600Aに変更した以外は、実施例1と同様にして、ペレット化した樹脂組成物を作製し、延展性及びネックインの評価を行った。結果を表2に示す。
【0043】
<比較例3>
高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(LD)をLC606からLC8001に変更した以外は、実施例1と同様にして、ペレット化した樹脂組成物を作製し、延展性及びネックインの評価を行った。結果を表2に示す。
【0044】
<比較例4>
LV271の配合量を90重量部に変更し、LC701の配合量を10重量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、ペレット化した樹脂組成物を作製し、延展性及びネックインの評価を行った。結果を表2に示す。
【0045】
<比較例5>
LV271の配合量を70重量部に変更し、LC701の配合量を30重量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、ペレット化した樹脂組成物を作製し、延展性及びネックインの評価を行った。結果を表2に示す。
【0046】
<比較例6>
LV271の配合量を40重量部に変更し、LC701の配合量を60重量部に変更した以外は、実施例2と同様にして、ペレット化した樹脂組成物を作製し、延展性及びネックインの評価を行った。結果を表2に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
表1から分かるように、実施例1~5の樹脂組成物は、特定のメモリーエフェクト値を有する高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンを特定の割合で配合したことで、チューブラー製法で得られるエチレン・酢酸ビニル共重合体を単独で用いた参考例1と比較して、ネックインを小さくしながら、延展性を向上させている。
【0050】
一方、表2から分かるように、比較例1~2の樹脂組成物では、ME値の高い高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンを配合したが、延展性の向上効果は確認できない。なお、ME値の最も高い比較例1では、延展性が低下している。比較例3の樹脂組成物では、ME値の低い高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンを配合したが、ネックインの低減効果はほとんど確認できない。
また、比較例4~6の樹脂組成物では、実施例2と同じ高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンを用いているが、その配合量が少ないと(比較例4)、ネックインの低減効果は十分でなく、また、延展性の低下も確認できる。一方、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンの配合量が多すぎると、延展性の低下が顕著であり、また、ネックインの値も低すぎる。