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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】車両用蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/18 20190101AFI20220726BHJP
   B60L 3/04 20060101ALI20220726BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220726BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20220726BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B60L58/18
B60L3/04 D
H01M10/44 A
H01M10/44 P
H02H7/18
H02J7/00 H
H02J7/00 P
H02J7/00 S
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018053917
(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2019169246
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】花岡 輝彦
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107264305(CN,A)
【文献】特開2008-288109(JP,A)
【文献】特開2017-190022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/18
B60L 3/04
H01M 10/44
H02H 7/18
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動用の電力を供給するために複数の蓄電モジュールを直列に接続して構成された主回路部と、前記複数の蓄電モジュールから個別に出力させた電力を放電するための放電回路部を備えた車両用蓄電装置において、
車両の衝突を予測する衝突予測手段と、
前記放電回路部に出力させた電力を昇圧するための昇圧手段と、
前記複数の蓄電モジュールのうちの選択した蓄電モジュールをバイパスして前記主回路部に接続するためのバイパス路をさらに備え、
前記衝突予測手段が車両の衝突を予測した場合に、前記複数の蓄電モジュールのうちの破損が予測される蓄電モジュールを選択して前記選択した蓄電モジュール以外の蓄電モジュールを前記主回路部に直列接続して前記車両駆動用の電力を出力すると共に前記選択した蓄電モジュールを前記放電回路部に接続して電力を出力し、
前記選択した蓄電モジュールの電力を前記昇圧手段により昇圧して前記選択した蓄電モジュール以外の蓄電モジュールを充電することを特徴とする車両用蓄電装置。
【請求項2】
前記選択した蓄電モジュール以外の蓄電モジュールを充電できない場合には前記放電回路部に放電させることを特徴とする請求項1に記載の車両用蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用蓄電装置に関し、特に電気自動車を駆動するための電力を供給する車両用蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行中には二酸化炭素等を排出しない電気自動車(Electric Vehicle:EV)についての関心が高まっている。EVは、電力を蓄える蓄電装置を備え、この蓄電装置から供給される車両駆動用の電力で電動モータを回転駆動することにより駆動輪を駆動して走行する。また、この蓄電装置の電力により制動装置や操舵装置、前照灯やエアコン等の電装品を作動させる。
【0003】
EVに搭載される蓄電装置は、最大限に蓄えられた電力で走行可能な距離(航続距離)が長くなるように大容量のものになっている。蓄電装置に電力を蓄える充電は、主に駐車時に商用電源等からの電力供給により行われ、走行時には回生ブレーキによりEVの運動エネルギを電気エネルギに変換して充電される。
【0004】
ところで、EVの衝突によりその車両の蓄電装置が破損すると、蓄電装置を構成する蓄電池の内部で電極板がショートして短絡電流により発熱し、可燃性の電解液が発火する場合がある。この危険の回避のため、特許文献1のように、衝突を検知したときに蓄電装置を構成する蓄電池のうちの一部の蓄電池の電力を放電部で安全に放電させて、発火しないようにする技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2015-518702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、EVに搭載される蓄電装置は大容量であり、一部の蓄電池の放電であってもある程度時間を要するので、衝突してから放電を開始しても間に合わずに発火する虞がある。また、衝突による蓄電装置内の断線等によって安全に放電できない虞もある。そこで、衝突が予測された場合に蓄電装置の放電を衝突前に実行することが考えられる。このとき放電された電力は熱となって消費されるので、軽度の衝突又は衝突が回避されて自走できる場合であっても蓄電装置に電力がほとんど残っておらず、走行可能な距離が略ゼロまで減少して走行できなくなる。
【0007】
本発明の目的は、EVの衝突を予測した場合に蓄電装置の破損予測に基づいて蓄電装置の発火を予防すると共に、その後の走行可能な距離の減少を軽減するように構成した車両用蓄電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、車両駆動用の電力を供給するために複数の蓄電モジュールを直列に接続して構成された主回路部と、前記複数の蓄電モジュールから個別に出力させた電力を放電するための放電回路部を備えた車両用蓄電装置において、車両の衝突を予測する衝突予測手段と、前記放電回路部に出力させた電力を昇圧するための昇圧手段と、前記複数の蓄電モジュールのうちの選択した蓄電モジュールをバイパスして前記主回路部に接続するためのバイパス路をさらに備え、
前記衝突予測手段が車両の衝突を予測した場合に、前記複数の蓄電モジュールのうちの破損が予測される蓄電モジュールを選択して前記選択した蓄電モジュール以外の蓄電モジュールを前記主回路部に直列接続して前記車両駆動用の電力を出力すると共に前記選択した蓄電モジュールを前記放電回路部に接続して電力を出力し、前記選択した蓄電モジュールの電力を前記昇圧手段により昇圧して前記選択した蓄電モジュール以外の蓄電モジュールを充電することを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、EVの衝突を予測した場合にその衝突により破損が予測される蓄電モジュールを選択してその電力を放電回路部に出力させ、出力電力を昇圧手段により昇圧して破損が予測されていない他の蓄電モジュールに充電する。従って、選択した蓄電モジュールの電力を減少させて車両用蓄電装置の発火を予防できる。また、軽度の衝突により又は衝突が回避されて自走可能な場合に、選択されていない他の蓄電モジュールに蓄えられている電力に加えて、充電により選択した蓄電モジュールから他の蓄電モジュールに移動させた電力も駆動用電力として供給できるので、走行可能な距離の減少を軽減することができる。しかも、選択した蓄電モジュールを主回路部から切り離して選択した蓄電モジュール以外の他の蓄電モジュールから車両駆動用の電力を供給可能である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記選択した蓄電モジュール以外の蓄電モジュールを充電できない場合には前記放電回路部に放電させることを特徴としている。
上記構成によれば、選択されていない他の蓄電モジュールが満充電状態のために充電できない場合に、選択した蓄電モジュールの電力を放電回路部により放電させるので、衝突による車両用蓄電装置の発火を予防できる。また、熱に変換される放電量を充電によって少なくすることができるので、衝突予測と衝突回避が繰り返された場合でも放電回路部の過熱による破損を回避できる。
【0011】
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両用蓄電装置によれば、EVの衝突を予測した場合に車両用蓄電装置の破損予測に基づいて車両用蓄電装置の発火を予防すると共に、その後の走行可能な距離の減少を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態によるEV車両の構成を説明するブロック図である。
図2】本発明の実施形態による蓄電装置の要部分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態による電力供給の1例を示す回路図である。
図4】本発明の実施形態による蓄電部の要部分解斜視図である。
図5】本発明の実施形態による充電の1例を示す回路図である。
図6】本発明の実施形態による放電の1例を示す回路図である。
図7】本発明の実施形態による発火予防制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態による車両用蓄電装置について説明する。最初に、図1に基づいてEVの全体構成について説明する。
EVは、車両駆動用の電動モータ2、制動装置3、車速センサ4、車載カメラ5、ミリ波レーダ6等を含む各種センサ、これらに供給する直流電力の電圧を調整するDCDCコンバータ7等を車両側負荷1として備え、車両側負荷1に供給する車両駆動用の電力を蓄える蓄電装置10と、車両側負荷1及び蓄電装置10を制御する制御部(ECU8)を搭載している。
【0015】
ECU8は、CPUと各種プログラムを記憶するメモリと入出力装置等を備えたコンピュータにより構成されている。このECU8は、各種センサから周期的に出力される信号を処理して、電動モータ2、制動装置3、蓄電装置10等に対して適切に作動させるための制御信号を出力する。蓄電装置10の充電状態(State Of Charge:SOC)は、ECU8により管理され、運転者に現在のSOCや走行可能距離等を報知する。
【0016】
車速センサ4は検知した自車両の走行速度データをECU8に出力する。車載カメラ5は、自車両の周囲を撮像した画像データをECU8に出力する。この画像データに基づいてECU8が例えば車両、歩行者、その他物体等の対象物を特定する。
【0017】
ミリ波レーダ6は、自車両の周囲に電波を発して対象物で反射された反射波を受信することにより、自車両から対象物までの距離と、自車両と対象物の相対速度を検知してECU8に出力する。尚、ミリ波レーダ6に代えてレーザ光や超音波を利用するレーダによって、又はこれらを併用して対象物までの距離及び相対速度を検知するように構成してもよく、車車間通信等によって対象物である他車両までの距離及び相対速度を検知するように構成してもよい。
【0018】
次に、蓄電装置10について説明する。
蓄電装置10は、図2に示すようにEV車両のフロアパネルの下方空間に配設するための耐振性(剛性)と耐水性(防水性)を確保できるように、支持部材11とカバー部材12により密閉状に収容されている。そして蓄電装置10から発生する熱を、熱伝導等を利用して支持部材11に伝熱させ、走行風等を利用して支持部材11から車両外部に放熱する。尚、図中の矢印Uは上方を示し、矢印Fは車両前方を示し、矢印Lは車両左方を示す。
【0019】
図2図3に示すように、蓄電装置10は、複数の蓄電モジュールM1~Mnを複数のバスバー13によって直列に接続してEVの車両駆動用の電力を供給するように構成された主回路部20と、複数の蓄電モジュールM1~Mnから個別に電力を出力させるための放電回路部30を備えている。尚、EVに搭載される蓄電モジュールの数は、そのEVの仕様等に応じて適宜設定される。
【0020】
複数の蓄電モジュールM1~Mnは同じ構成であり、以下では蓄電モジュールM1について説明して他の蓄電モジュールM2~Mnの説明を省略する。
蓄電モジュールM1は、電力を蓄える蓄電部21と、蓄電部21をバイパスするためのバイパス路22と、第1切替えスイッチ23と、第2切替えスイッチ24と、冷却ユニット25と、冷却スイッチ26と、第1放電切替えスイッチ27と、第2放電切替えスイッチ28を備えている。
【0021】
第1切替えスイッチ23は、蓄電部21の負極側に配設され、主回路部20との接続を蓄電部21又はバイパス路22に切替える。第1切替えスイッチ23をバイパス路22に切替えることにより、蓄電モジュールM1をバイパスして他の蓄電モジュールから車両駆動用の電力を供給するように主回路部20に接続される。第2切替えスイッチ24は、蓄電部21を主回路部20から切り離すために蓄電部21の正極側に配設されている。第1放電切替えスイッチ27は蓄電部21の負極側に、第2放電切替えスイッチ28は蓄電部21の正極側に配設され、蓄電モジュールM1を放電回路部30に接続又は接続解除に切替える。
【0022】
蓄電部21は、例えば図4に示すように、規格電圧を有して上面に正極端子と負極端子が配設された直方体形状の複数(例えば、12個)の蓄電池21aを、セパレータ21bを間に介して直方体形状となるように水平方向に整列させ、複数のバスバー21cにより例えば2つの蓄電池21aを並列接続したものを6つ直列接続して構成され、その両端部に蓄電部21の正極端子21dと負極端子21eを備えている。バイパス路22は、この正極端子21dと負極端子21eに夫々第1切替えスイッチ23、第2切替えスイッチ24を介して配設されている。
【0023】
整列方向両端部に配設された1対のエンドプレート21fと、この1対のエンドプレート21fを連結する1対のアルミ合金製のバインドバー21gと、蓄電部21の上側を覆う合成樹脂製のアッパプレート21hにより、この蓄電部21の所定箇所の温度を検知するために配設された温度センサハーネス21iとバイパス路22を含む蓄電部21を覆って一体化されている。アッパプレート21hは、例えば図示外の複数のクランプ部材によって、1対のエンドプレート21fと1対のバインドバー21gの上端に載置された状態で固定される。尚、バイパス路22は、アッパプレート21hの上側に配設してもよい。
【0024】
アッパプレート21hは、正極端子21dと負極端子21eに対応する位置に、正極端子21dと負極端子21eが露出し且つ温度センサハーネス21iを挿通する切欠部を備えている。1対のバインドバー21gの一方には、シート状の加熱装置を備えたヒータユニット21jが密着状に装着され、低温時に蓄電部21を所定の温度域に温める。
【0025】
一体化された蓄電部21は、例えば締結部材によって支持部材11に締結固定されている。蓄電部21は、その全ての蓄電池21aの下面部に密着する冷却ユニット25を間に介して、熱伝導性が優れた金属製(例えばアルミ合金製)の板状の支持部材11に密着する。
【0026】
蓄電池21aは、例えば二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池であり、充放電時には発熱するため、所定の安全温度(例えば60℃)以下で充放電できるように冷却ユニット25によって冷却する。
【0027】
冷却ユニット25は吸熱部と放熱部を備えたペルチェ素子冷却ユニットであり、吸熱部を密着させた蓄電部21の電力により作動して吸熱部に伝わる蓄電部21の熱を放熱部に移動させ、放熱部が密着する支持部材11に伝熱させる。図3に示すように、冷却ユニット25の作動と停止の切替えは、蓄電部21との接続又は接続解除を切替える冷却スイッチ26により行われる。
【0028】
図2図3に示すように、放電回路部30は、放電回路部30に出力された電力を消費して熱として散逸させるための放電用抵抗31を有する。また、放電回路部30には放充電切替えスイッチ32が配設され、放電回路部30に出力された電力の供給先を放電用抵抗31と充電用DCDCコンバータ33(昇圧手段)とに切替える。蓄電装置10に搭載される第1切替えスイッチ23等のスイッチは、瞬間的に流れる例えば100A以上の大電流を許容可能なメカニカルリレーや半導体素子で構成され、蓄電部21の正極端子21d又は負極端子21eの近傍に配設されている。尚、放電用抵抗31と充電用DCDCコンバータ33は、空冷のためにカバー部材12に覆われていなくてもよい。
【0029】
ECU8は、機能的に、車載カメラ5の画像データやミリ波レーダ6の測定データ等、各種センサの検知データに基づいて自車両と他の車両や物体等の対象物との衝突を予測する衝突予測手段を備えている。このECU8と蓄電装置10とで車両用蓄電装置を構成し、衝突判定ステップと充電ステップと放電ステップを有する発火予防制御を行う。
【0030】
図3は信号待ち等の停車時を含む走行中の蓄電装置10の電力供給の状態の1例を示している。衝突判定ステップは、この走行中に自車両の周囲の画像データ、対象物との距離及び相対速度等の測定データ、自車両の走行速度データ、進行方向のデータに基づいて、ECU8が衝突する虞のある対象物を特定し、近い将来(例えば10秒後)に衝突するか否か判定する。そして衝突すると判定した場合には、同様のデータに基づいてその対象物の形状、大きさ、対象物との相対速度を特定して、自車両における衝突部位を予測し、衝突により何れかの蓄電モジュールが破損するか否か判定する。
【0031】
充電ステップは、例えば図5に示すように、衝突が予測され且つ衝突により蓄電モジュールの破損が予測された蓄電モジュールM1,M2を選択し、この蓄電モジュールM1,M2の電力を選択されていない他の蓄電モジュールM3~Mnに充電することにより、選択された蓄電モジュールM1,M2の電力を減少させる。尚、選択する蓄電モジュールは1つだけ又は3つ以上の場合もある。
【0032】
放電ステップは、選択した蓄電モジュールM1,M2以外の他の蓄電モジュールM3~Mnが例えば満充電状態のためそれ以上の充電ができず、且つ選択した蓄電モジュールM1,M2に電力が残っている場合に、図6に示すようにこの電力を放電回路部30で放電させることにより、選択した蓄電モジュールM1,M2の電力を減少させる。
【0033】
上記の車両用蓄電装置の発火予防制御について、図7のフローチャートに基づいて説明する。図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。
S1において、車載カメラ5の画像データ、ミリ波レーダ6の測定データ、自車両の走行速度等の衝突予測用データを取得する。
【0034】
S2において、取得した衝突予測用データに基づいて、例えば10秒後に自車両が対象物と衝突するか否か判定する。衝突を予測して判定がYesの場合はS3に進み、衝突が予測されず判定がNoの場合はS1に戻る。
【0035】
S3において、予測した衝突によって車両用蓄電装置の何れかの蓄電モジュールが破損するか否か判定する。判定がYesの場合はS4に進み、判定がNoの場合はS1に戻る。ここまでのS1~S3が衝突判定ステップである。
【0036】
次にS4において、破損が予測された蓄電モジュールとして例えば蓄電モジュールM1,M2を選択して、夫々の第1,第2切替えスイッチ23,24の切替えによって主回路部20から蓄電部21を切り離すと共に、この蓄電部21をバイパスするようにバイパス路22を主回路部20に接続してS5に進む。選択した蓄電モジュールM1,M2以外の蓄電モジュールM3~Mnは、直列に接続した状態を維持して駆動用電力を車両側負荷1に供給する(図5参照)。これにより衝突回避の動作や充電ステップ又は放電ステップ後の走行を可能にする。
【0037】
S5において、選択した蓄電モジュールM1,M2を放電回路部30に接続して電力を出力するようにこの蓄電モジュールM1、M2の夫々の第1,第2放電切替えスイッチ27,28を切替えてS6に進む(図5参照)。
【0038】
S6において、選択した蓄電モジュールM1,M2から出力する電力を充電用DCDCコンバータ33によって昇圧して選択した蓄電モジュールM1,M2以外の蓄電モジュールM3~Mnを充電するように、放充電切替えスイッチ32を充電用DCDCコンバータ33側に切替えてS7に進む(図5参照)。尚、昇圧した電力は車両側負荷1に供給することも可能である。
【0039】
S7において、選択した蓄電モジュールM1,M2のSOCが0%より大きいか否か判定する。判定がYesの場合はS8に進み、判定がNoの場合は破損が予測された蓄電モジュールM1,M2の短絡電流による発火の虞がなくなったのでこの発火予防制御を終了してリターンする。
【0040】
S8において、選択した蓄電モジュールM1,M2以外の他の蓄電モジュールM3~MnのSOCが100%(満充電状態)か否か判定する。判定がYesの場合はS9に進み、判定がNoの場合はS7に戻る。ここまでのS4~S8が充電ステップである。
【0041】
S9において、他の蓄電モジュールM3~Mnに充電できないので、放充電切替えスイッチ32を放電用抵抗31側に切替えて、選択した蓄電モジュールM1,M2に蓄えられた電力がなくなるように放電させて発火予防制御を終了する(図6参照)。このS9が放電ステップである。尚、選択した蓄電モジュールの放電が終わったら、第1,第2放電切替えスイッチ27,28と冷却スイッチ26を接続解除するように構成することもできる。
【0042】
次に、本発明の作用、効果について説明する。
EVである自車両は、走行中に対象物との衝突の予測、即ち上記衝突判定ステップを周期的に行っている。そして自車両の衝突が予測されると車両用蓄電装置を構成する蓄電モジュールの破損を判定し、破損が予測された場合に当該破損が予測された蓄電モジュールを選択する。
【0043】
選択した蓄電モジュールは、衝突により破損して発火する虞があるため、この発火の予防のために選択した蓄電モジュールに蓄えられた電力を減少させる。このとき、破損が予測されていない他の蓄電モジュールに選択した蓄電モジュールの電力を移動させるために、選択した蓄電モジュールの電力による他の蓄電モジュールの充電、即ち上記充電ステップを実行する。また、充電ステップによって他の蓄電モジュールが満充電状態になっても選択した蓄電モジュールの電力が残っている場合には、上記放電ステップによりその電力を放電する。
【0044】
従って、選択した蓄電モジュールが衝突による短絡電流よって発火することを予防できる。また、選択した蓄電モジュールを主回路部20から切り離して他の蓄電モジュールから車両駆動用の電力を供給可能であり、選択した蓄電モジュールから他の蓄電モジュールに移動させた電力も車両駆動用電力として供給できるので、衝突が回避されて又は衝突が軽度でその後自車両が自走できる場合に、走行可能な距離の減少を軽減することができる。その上、他の蓄電モジュールに充電することにより熱に変換される電力を少なくすることができるので、衝突予測と衝突回避が繰り返された場合でも放電回路部30における放電用抵抗31の過熱による破損を回避できる。
【0045】
その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0046】
1 :車両側負荷
4 :車速センサ
5 :車載カメラ
6 :ミリ波レーダ
8 :ECU
10 :蓄電装置
11 :支持部材
20 :主回路部
21 :蓄電部
21a :蓄電池
22 :バイパス路
23 :第1切替えスイッチ
24 :第2切替えスイッチ
25 :冷却ユニット
26 :冷却スイッチ
27 :第1放電切替えスイッチ
28 :第2放電切替えスイッチ
30 :放電回路部
31 :放電用抵抗
32 :放充電切替えスイッチ
33 :充電用DCDCコンバータ
M1~Mn :蓄電モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7