(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】樹脂組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 1/02 20060101AFI20220726BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20220726BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
C08L1/02
C08L23/26
C08L23/06
(21)【出願番号】P 2018076519
(22)【出願日】2018-04-12
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】重森 一範
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 友浩
(72)【発明者】
【氏名】真嶋 佑樹
【審査官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-167249(JP,A)
【文献】国際公開第2015/050117(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/087801(WO,A1)
【文献】特開2016-030881(JP,A)
【文献】特表2007-523252(JP,A)
【文献】特開2008-019355(JP,A)
【文献】特開2013-095810(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08F 6/00 - 246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径が1~3000nmのセルロース繊維(A)、側鎖および酸性基含有α-オレフィン共重合物(B)、およびポリオレフィンを含む樹脂組成物であって、
側鎖および酸性基含有α-オレフィン共重合物(B)は、α-オレフィンと、マレイン酸、無水マレイン酸およびマレイン酸エステル化合物からなる群より選択される1種以上の化合物(X)との共重合物であり、
前記側鎖は、酸性基と、アルキレンオキシ基含有化合物、アミノ化合物およびアルコールからなる群より選択される1種以上との反応ユニットであり、
側鎖および酸性基含有α-オレフィン共重合物(B)の酸価は5~400mgKOH/g、かつ重量平均分子量は3,000~30,000であり、
前記セルロース繊維(A)を前記樹脂組成物100質量%中に1~60質量%含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記側鎖および酸性基含有α-オレフィン共重合物(B)を前記樹脂組成物100質量%中に1~20質量%含む、請求項
1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィンが、融点55℃以上130℃以下であり、かつ真密度0.92g/cm
3以下であり、メタロセンプラストマーであるポリエチレン(C)を含む、請求項
1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~
3いずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維を含む樹脂組成物およびその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から成形体の機械強度を高めるため補強材として、ガラス繊維やタルクの配合が行われている。しかし、これらの補強材を使用すると、成形体を焼却処理する際に、ガラス繊維は、灰として残留するため、廃棄物の飛散により人体や生物への健康被害が懸念される。
【0003】
近年、注目されているセルロース繊維は、植物の持つ微小繊維をほぐして使用するため安価であり、焼却後に廃棄物中に残留しない。そのため、健康被害等の問題が生じ難い利点がある。
【0004】
特許文献1では、熱可塑性樹脂、セルロース繊維、植物繊維修飾材を含む樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、セルロース繊維を樹脂中に分散することは困難であるため、従来の樹脂組成物は、セルロース繊維の含有量を10%以下に制御しなければ、機械強度を高めた成形体を作製できなかった。また、成形品の機械強度は、従来からさほど高い訳では無かった。
【0007】
本発明は、セルロース繊維を高濃度で含み、機械強度が良好な成形体を作製できる樹脂組成物、および成形体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、平均繊維径が1~3000nmのセルロース繊維(A)、側鎖および酸性基含有α-オレフィン共重合物(B)、およびポリオレフィンを含む樹脂組成物であって、
前記セルロース繊維(A)を前記樹脂組成物100質量%中に1~60質量%含む。
【発明の効果】
【0009】
上記の本発明によれば、セルロース繊維を高濃度で含み、機械強度が良好な成形体を作製できる樹脂組成物、および成形体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、平均繊維径が1~3000nmのセルロース繊維(A)、側鎖および酸性基含有α-オレフィン共重合物(B)、およびポリオレフィンを含み、
前記セルロース繊維(A)を前記樹脂組成物100質量%中に1~60質量%含む。なお、本明細書で機械強度は、引張破壊点伸び率、曲げ強度及び曲げ弾性率である。
【0011】
<セルロース繊維(A)>
セルロース (cellulose) とは、分子式(C6H10O5)nで表される炭化水素である。本明細書でいうセルロース繊維(A)は、分子状のものとは異なり、溶剤に難溶の平均繊維径1~3000nmの繊維状のセルロースである。
【0012】
セルロース繊維(A)は、平均繊維径1~3000nmであり、10~1000nmが好ましく、100~500nmがより好ましく、100~300nmがさらに好ましい。平均繊維径が10nm以上になることで、セルロース繊維同士のネットワーク構造が形成しやすくなり、成形体の曲げ弾性率が向上することに加え、成形体の表面をより平滑にすることができる。また、平均繊維径が3000nm以下になることで質量あたりの繊維の本数が増えて、成形体の機械的特性が向上する。また、成形体の表面が平滑になると、光沢が有り美観が向上するため、パソコン、携帯電話およびエアコン室内機等のように人の目に触れる用途に好適である。
【0013】
セルロース繊維(A)のアスペクト比は、30~10000が好ましく、50~5000がより好ましく、50~1000がさらに好ましい。適度なアスペクト比を有するとセルロース繊維(A)の分散が容易となり、成形体の外観や機械物性がより向上する。なお、アスペクト比は、平均繊維長を平均繊維径で除した数値である。また、平均繊維長および平均繊維径は、電子顕微鏡で観察した任意のセルロース繊維10本の平均値である。
【0014】
セルロース繊維(A)の原料は、植物(例えば広葉樹や針葉樹からなる木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農作物残廃物、布、パルプ、再生パルプ、とうもろこし、古紙)が挙げられる。特に、古紙や木材から作製されるパルプを高圧ホモジナイザーもしくは二軸押出し機で解繊する方法が、安価であり、繊維凝集物が少なく、解繊できるため好ましい。
【0015】
セルロース繊維(A)を製造するには、一般的には、セルロース繊維含有材料をリファイナー、高圧ホモジナイザー、媒体攪拌ミル、石臼、グラインダー、二軸押し出し機等により磨砕及び/又は叩解することによって解繊又は微細化して製造される。また、微生物(例えば、酢酸菌(アセトバクター))を利用して製造することもできる。特にナノレベルまで解繊する場合は、上記の装置を複数回使用することによって段階的に解繊することが好ましく、繊維径を大きくする場合は、装置の使用回数を減らすことで調整できる。
【0016】
セルロース繊維(A)は、一般的に水を使用しながら解繊されるため、解繊直後は水中に分散した状態である。しかし、樹脂との溶融混練時には100℃以上となる事が多いため、水を除去した状態の粉末状セルロース繊維を使用することが好ましい。粉末状セルロース繊維としては、例えば、セルロース繊維の水分散液をそのまま乾燥させた乾燥物や該乾燥物を機械処理で粉末化したもの、セルロース繊維の水分散液をアセトン、アルコール等の非水系溶媒と混合させてセルロース繊維を凝集させ、その凝集物を乾燥させたもの、セルロース繊維の水分散液を公知のスプレードライ法により粉末化したもの、セルロース繊維の水分散液を公知のフリーズドライ法により粉末化したもの等が挙げられる。上記スプレードライ法は、上記セルロースナノファイバーの水分散液を気中で噴霧し乾燥させる方法である。特に、セルロース繊維が酸化又はカルボキシル基が導入されている場合、アセトン、アルコール等の非水系溶媒と混合させてセルロース繊維を凝集させ、その凝集物を乾燥させる方法が好ましい。市販の粉末状セルロース繊維としては、日本製紙ケミカル社製のKCフロック、旭化成ケミカルズ社製のセオラス、FMC社製のアビセル等が挙げられる。
【0017】
セルロース繊維(A)は、リグニンを含むことができる。リグニンは、植物中に含まれる高分子フェノール性化合物である。リグニンを含んだセルロース繊維をリグノセルロースと呼ぶ場合がある。
【0018】
セルロース繊維(A)の含有量は、樹脂組成物100質量%中に、1~60質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましい。上記の範囲内であると、セルロース繊維の分散が容易となり、成形体の外観や機械物性がより向上する。
【0019】
セルロース繊維(A)は、カルボキシル基を有することが好ましい。セルロース繊維にカルボキシル基を導入する方法としては、例えば、セルロース繊維(A)の水酸基と、カルボキシル基含有化合物、酸無水物、酸イミド、および酸ハロゲン化物のいずれかとを反応させる方法、または、セルロースの水酸基を酸化する方法等が挙げられる。
【0020】
酸無水物は、例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等が挙げられる。酸イミドは、例えば、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸のイミドが挙げられる。酸ハロゲン化物は、例えば、クロロ酢酸、ブロモ酢酸等の酢酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0021】
セルロースの水酸基を酸化する方法は、N-オキシル化合物を酸化触媒とし、共酸化剤を作用させる方法(TEMPO酸化)、紫外線を照射する方法、コロナ放電処理等が挙げられる。この中でも、セルロース繊維を劣化させずに水酸基を酸化させられるTEMPO酸化が好ましい。
【0022】
セルロース繊維(A)は、ポリオレフィンとの親和性を向上させるために、表面処理剤(例えば、シラン化合物、アルコキシシラン)を使用して表面に被覆層を形成しても良い。シラン化合物は、例えば、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のグリシジル基含有シランカップリング剤;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン等のビニル基含有シランカップリング剤;γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤等を挙げられる。
アルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。尚、シラン化合物を反応させる場合、セルロース繊維を酸化又はアセチル化することで、シラン化合物により有機置換基が導入しやすくなるため、あらかじめ酸化又はカルボキシル基を導入することが好ましい。
【0023】
表面処理剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0024】
前記被覆層の形成は、直接処理法(例えば乾式法、スラリー法、スプレー法等)、インテグラルブレンド法(例えば直接法、マスターバッチ法等)、ドライコンセントレート法等の公知の方法を使用できる。また、セルロース繊維(A)を製造する過程の水中での解繊過程で、表面処理剤を加える方法も好ましい。
【0025】
表面処理剤の使用量は、セルロース繊維(A)100質量部に対して、1~300質量部が好ましい。表面処理剤を適量使用すると、セルロース繊維(A)とポリオレフィンとの親和性がより向上し、成形体の機械強度がより向上する。
【0026】
<側鎖および酸性基含有α-オレフィン共重合物(B)>
側鎖および酸性基含有α-オレフィン共重合物(B)(以下、共重合物(B)という)は、酸性基含有モノマー、必要に応じてその他モノマーを使用した共重合物であり側鎖を有する。共重合物(B)の合成は、例えば、特開2007-58125号公報に記載の方法が挙げられる。また、市販の樹脂を使用することも可能である。市販品は、例えば、ダイヤカルナM30(三菱ケミカル社製)、セラマーシリーズ(ベーカーペトロライト社製)などが挙げられる。なお、モノマーは、エチレン性不飽和二重結合含有単量体である。エチレン性不飽和二重結合は、例えば、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
【0027】
[α-オレフィン]
α-オレフィンは、共重合物(B)とポリオレフィンとの相溶性を向上させる。α-オレフィンの炭素数は6~40が好ましく、炭素数8~35がより好ましく、炭素数10~30がさらに好ましく、炭素数12~30が特に好ましい。
α-オレフィンは、例えば、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、1-ドコセン、1-テトラコセン、1-オクタコセン、1-トリアコンテン、1-ドトリアコンテン、1-テトラトリアコンテン、1-ヘキサトリアコンテン、1-オクタトリアコンテン等が挙げられる。
【0028】
α-オレフィンは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0029】
酸性基含有モノマーは、酸性基がセルロース繊維(A)の分散性に寄与する。また、酸性基は、側鎖形成の反応点としても機能する場合がある。酸性基は、例えば、カルボキシル基(酸無水物基を含む)、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。
酸性基含有モノマーのうちカルボキシル基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、カルボキシベタイン構造を有するモノマーが挙げられる。
また、スルホン酸基含有モノマーは、ビニルスルホン酸、アクリロニトリル―t―ブチルスルホン酸、ベタイン構造およびスルホン酸含有モノマーが挙げられる。これらの中でも、カルボキシル基含有モノマーが好ましく、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、テトラヒドロフタル酸等がより好ましく、無水マレイン酸がさらに好ましい。
【0030】
酸性基含有モノマーは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0031】
[その他モノマー]
その他モノマーは、α-オレフィンおよび酸性基含有モノマー以外のモノマーである。その他モノマーは、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、アミドモノマー、ビニルエーテル、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ビニルモノマーが挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)、ターシャリブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートの環状アルキル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、及び3-メチル-3-オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、及びテトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
芳香族(メタ)アクリレートは、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミドモノマーは、例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド;N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミドなどのN-(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ビニルエーテルは、例えば、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、2-(又は3-)ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-(又は3-又は4-)ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのヒドロキシアルキルビニルエーテル等が挙げられる。
水酸基含有モノマーは、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2(又は3)-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2(又は3又は4)-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミノ基含有モノマーは、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の三級アミノ基を有する(メタ)アクリレート類;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びN,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の三級アミノ基を有する(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ビニルモノマーは、例えば、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル;等が挙げられる。
【0032】
その他モノマーは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0033】
また、共重合物(B)は、α-オレフィンと、マレイン酸、無水マレイン酸およびマレイン酸エステル化合物からなる群より選択される1種以上の化合物(X)とをラジカル重合する共重合物が好ましい。ラジカル重合は、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられるところ、反応制御が容易な溶液重合が好ましい。
溶液重合は、例えば、α-オレフィン、無水マレイン酸、重合開始剤、連鎖移動剤、および有機溶剤を使用して重合する方法が好ましい。また、共重合物(B)は、溶液重合に変えて塊状重合で合成することもできる。
α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合物は、α-オレフィンと無水マレイン酸の交互共重合物である。無水マレイン酸の含有量は適宜調節することができる。また、2種類以上のα-オレフィンを用いた場合には、ランダムに配列したα-オレフィンの間に無水マレイン酸が交互に配列する共重合物が得られる。
【0034】
共重合物(B)の実施態様のひとつとして、α-オレフィンと化合物(X)とのモル比は、前者/後者として30/70~99/1が好ましく、40/60~95/5がより好ましく、45/55~80/20がさらに好ましい。適切な比率で使用すると分散安定性がより向上する。
【0035】
重合開始剤は、アゾ化合物、過酸化物が好ましい。アゾ化合物は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス2,4-ジメチルバレロニトリル等が挙げられる。過酸化物は、例えば、キュメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジt-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
【0036】
共重合体(B)の側鎖は、酸性基と、アルキレンオキシ基含有化合物、アミノ化合物およびアルコールからなる群より選択される1種以上との反応ユニットが好ましい。酸性基は、側鎖の導入しやすさの面で無水マレイン酸が好ましい。側鎖の形成は、エステル化、アミノ化、イミノ化等、公知の合成法を使用できる。なお、側鎖は、同一または異なっていてもよい。
【0037】
アルキレンオキシ基含有化合物は、水酸基およびアルキレンオキシ基を有する化合物である。前記アルキレンオキシ基は、炭素原子数1~6が好ましく、炭素原子数2~3がより好ましい。アルキレンオキシ基含有化合物は、例えば、下記一般式(1)で示す化合物、および下記一般式(2)で示す化合物が好ましく、下記一般式(1)で示す化合物がより好ましい。
【0038】
【0039】
[一般式(1)中、R1は水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、又は炭素原子数1~9のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。A1O及びA2Oは、それぞれ独立して、炭素原子数1~6のアルキレンオキシ基を表し、m及びnは、アルキレンオキシ基の平均付加モル数を表し、0~100の整数であり、m+nは、1以上を満たす。]
【0040】
【0041】
[一般式(2)中、R1は水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、又は炭素原子数1~9のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。A1O及びA2Oは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキレンオキシ基を表し、m及びnはアルキレンオキシ基の平均付加モル数を表し、0~100の整数であり、m+n=1以上を満たす。]
【0042】
上記一般式(1)及び(2)において、R1は、水素原子又は炭素数1以上20以下のアルキル基又は水素原子が炭素数1以上9以下のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基が好ましく、炭素数1以上12以下のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。適切な置換基を選択するとセルロース繊維(A)の分散安定性がより向上する。
【0043】
上記一般式(1)及び(2)において、m+nは、4以上100以下が好ましく、4以上70以下がより好ましく、9以上40以下がさらに好ましく、9以上30以下が特に好ましい。m+nを適切な範囲に調整するとセルロース繊維(A)の分散安定性がより向上する。
【0044】
一般式(1)及び(2)において、A1O及びA2Oは、炭素数1~6のアルキレンオキシ基であり、インク中での水及び水溶性溶剤との親和性向上に寄与する。また、樹脂組成物中でアルキレンオキシ基がポリオレフィン中で立体障害基として働き、セルロース繊維(A)の安定化や分散に寄与することで成形体の強度を向上させる。 アルキレンオキシ基は、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基がより好ましい。
【0045】
一般式(1)で示す化合物は、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。これらの中でもポリオキシエチレンモノメチルエーテルが好ましい。市販品は、例えば、ユニオックスM-400、同M-550、同M-1000(以上、日油社製)が挙げられる。
【0046】
一般式(2)で示す化合物は、例えば、ポリオキシエチレンモノラウリレート、ポリオキシエチレンモノステアリレート、ポリオキシエチレンモノオレートが挙げられる。これらの中でもポリオキシエチレンモノラウリレートが好ましい。市販品は、例えば、ノニオンL-2、同L-4、同S-4、同O-4(以上、日油社製)が挙げられる。
【0047】
(アミノ化合物)
アミノ化合物は、アミノ基を有する化合物である。アミノ化合物は、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、o-トルイジン、2-エチルアニリン、2-フルオロアニリン、o-アニシジン、m-トルイジン、m-アニシジン、m-フェネチジン、p-トルイジン、2,3-ジメチルアニリン、5-アミノインダン、アスパラギン酸、グルタミン酸、γ-アミノ酪酸等が挙げられる。
【0048】
アルコールは、水酸基を有し、アルキレンオキシ基を有さない化合物である。
アルコールは、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、α-オキシ酪酸、12-ヒドロキシステアリン酸、乳酸等が挙げられる。
【0049】
アルコールは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0050】
共重合物(B)は、酸価を有することが好ましい。酸価は、5~400mgKOH/gが好ましく、20~200mgKOH/gがより好ましく、30~160mgKOH/gがさらに好ましく、50~160mgKOH/gが特に好ましい。酸価を適切な範囲に調整すると、共重合物(B)とセルロース繊維(A)との親和性がより向上し、ポリオレフィン樹脂(C)との相溶性がより向上する。
【0051】
共重合物(B)の重量平均分子量は、3,000~30,000が好ましく、4,000~25,000がより好ましく、6,000~20,000がさらに好ましい。重量平均分子量を適切な範囲に調整すると、樹脂組成物の分散安定性がより向上する。
【0052】
共重合物(B)は、樹脂組成物100重量%中に1~20質量%含むことが好ましく、5~15質量%がより好ましい。これにより曲げ強度及び曲げ弾性率がより向上する。
【0053】
<ポリオレフィン>
ポリオレフィンは、ポリエチレン(C)、およびポリプロピレン(D)を含むことが好ましい。ポリエチレン(C)、およびポリプロピレン(D)を併用すると成形体の曲げ強度・曲げ弾性率や衝撃強度がより向上する。
【0054】
< ポリエチレン(C)>
ポリエチレン(C)は、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、メタロセン化合物を重合触媒として用いて得られたポリエチレン、環状ポリエチレンの他に無水マレイン酸変性ポリエチレン、グリシジル(メタ)アクリレート変性ポリエチレン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート変性ポリエチレン等の変性ポリエチレンが挙げられる。これらの中でも成形温度を抑制し、成形物の軽量化が可能になる面で低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、メタロセン化合物を重合触媒として用いて得られたポリエチレン好ましく。融点55℃以上130℃以下でありかつ真密度が0.92g/cm3以下のポリエチレン(メタロセンプラストマー)がより好ましい。なお、真密度の下限は、0.85g/cm3である。
【0055】
<ポリプロピレン(D)>
ポリプロピレン(D)は、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックプロピレン共重合体、ランダムプロピレン共重合体、エチレンプロピレン共重合ゴム、メタロセン化合物を重合触媒として用いて得られたポリプロピレンの他に、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、グリシジル(メタ)アクリレート変性ポリプロピレン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート変性ポリプロピレン等の変性ポリプロピレン樹脂が挙げられる。これらの中でも成形体の剛性や衝撃強度の耐久性が向上する面でホモポリプロピレンが好ましい。
【0056】
ポリオレフィンの含有量は、樹脂組成物100質量%中、10~94質量%が好ましく、40~90質量%がより好ましい。
また、ポリエチレン(C)の含有量は、樹脂組成物100質量%中、1~50重量%が好ましく、4~30質量%がより好ましい。
また、ポリプロピレン(D)の含有量は、樹脂組成物100質量%中、10~90重量%が好ましく、40~80重量%がより好ましい。
【0057】
ポリオレフィンは、そのメルトフローレイト(MFR)が1~100g/10minが好ましい。なお、MFRはJIS K-7210に準拠して求めたものである。
【0058】
樹脂組成物は、課題を解決できる範囲内であれば各種添加剤を配合できる。各種添加剤は、例えば、熱安定剤、可塑剤、分散剤、相溶化剤、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、離型剤、ポリエチレンワックス等の滑剤、顔料、無機充填剤(タルク、マイカ、クレー、ワラストナイト、炭酸カルシウムなど)、発泡剤(有機系、無機系、マイクロカプセル系など)、難燃剤(ハロゲン系、リン酸エステル系、金属塩系、赤リン、金属水和物など)難燃助剤、動剤(PTFE粒子など)、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、帯電防止剤、流動改質剤、結晶核剤、無機及び有機の抗菌剤、グラフトゴムに代表される衝撃改質剤、赤外線吸収剤およびフォトクロミック剤が挙げられる。
【0059】
各種添加剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0060】
樹脂組成物は、セルロース繊維(A)、共重合物(B)、ポリエチレン(C)、ポリプロピレン(D)を溶融混錬することで製造できる。前記溶融混錬は、バンバリーミキサーのような回分式混練機、ならびに二軸押出機、単軸押出機およびローター型二軸混練機等の公知の混錬装置を使用できる。また、樹脂組成物の形態は、例えば、ペレット状、パウダー状、ビーズ状が一般的である。
【0061】
また、樹脂組成物は、マスターバッチとして作製できる。マスターバッチは、セルロース繊維(A)を3~60質量%含むことが好ましい。セルロース繊維(A)を適量含有すると、希釈樹脂との混練する際、セルロース繊維(A)をより分散し易くなる。
【0062】
<成形体>
本明細書の成形体は、樹脂組成物を含む。
成形体は、樹脂組成物、または、樹脂組成物と希釈樹脂を、溶融・混練し、成形機を使用して作製できる。成形方法は、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ成形、インフレーション成形、圧縮成形、パイプ押出成形、ラミネート成形、および真空成形などが挙げられる。
【0063】
本発明の成形体は、例えば、建築材料用途でいうと、例えば、地中熱交換用熱交換パイプ、搬送材[コンテナ、フレキシブルコンテナ、台車、トレー、キャリアテープ、パレット、シートスキッド(自動車シート搬送用)、ストレッチフィルム(荷崩れ防止用)、結束バンド、発泡緩衝材、エアーキャップ(緩衝材)など]、生活資材用成形品[家具(椅子、机、ハンガー等)、住宅等の建材(玄関・室内等の各種ドア、内・外壁材、天井材、屋根材、タイル等)が挙げられる。
【0064】
筐体用途でいうと、例えば、容器および包装材[食料品(生鮮食料品、加工食料品、清涼飲料等)用容器および包装材、雑貨(食器、玩具、文房具、電気部品、家電品、家具、嗜好品等)用容器および包装材、薬品(工業用薬品、医薬品等)用容器および包装材、自動車用部品[インスツルメントパネル、ドアトリム、ピラー等の内装材、バンパー等の外装材、ガソリンタンク、バルブ等の内部部品等]、家電製品[テレビ、録画再生機(ビデオ、ハードディスク、DVD、BD等)、パソコン機器[パソコン本体、ディスプレー(CRT、液晶、プラズマ、プロジェクターおよび有機EL等)、ノートパソコン、プリンター、記録媒体ドライブ(ハードディスク、MO、メモリーカード、CD、DVD、BD、フレキシブルディスク等)、記録媒体(USBメモリー、ICカード等)筐体、マウスなどの筐体および内部部品]の筐体、小型携帯機器[無線機、携帯電話、PHS、PDA、スマートフォン、携帯ゲーム機およびゲームソフト、テレビ、ナビゲーション機器、GPS機器、ヘッドホンステレオ、光学カメラ、デジタルカメラ電子辞書および計算機、リチウムイオン充電器などの筐体および内部部品等]の筐体、事務用機器[コピー、ファクシミリ、スキャナおよびそれらの複合機、シュレッダー、紙折機、電子黒板、タイムレコーダー、ネットワークカメラ、喫煙カウンター、ラベルライター、電子レジスタ、電子チェックライター、ラミネーターおよび製本機など]の筐体、遊技機[アーケード型ゲーム機、パチンコ、スロットマシーンなど]の筐体、医療機器[ドライイメージャー、メディカルプリンター、メディカルレコーダー、メディカルカメラ、X線テレビシステム、CTスキャナシステム、マンモグラフシステム、血管撮影システムおよび超音波診断システムなどの筐体などで使用することができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下「質量%」は「%」と記載する。表中の配合量は、質量%である。
以下の実施例及び比較例で用いた原料を説明する。セルロース繊維(A)の性状を表1に示す。
【0066】
<セルロース繊維(A-1~A-4)の製造>
旭化成ケミカル社製のセオラスKG-1000 100gと、エタノール1000mLとを加えて、アイメックス社製3本ロールミル[BR-230V]を用いて、20回繰り返し通過させた後に真空乾燥を行い、粉末状のセルロース繊維(A-1)を得た。繰り返し機械を通過させる回数を調整することにより、平均繊維径の異なるA-2、A-3、A-4を得た。
【0067】
<アセチル化セルロース繊維(A-5)の製造>
日本製紙ケミカル社製のKCフロック50gとTEMPO(SigmaAldrich社製)150mgと臭化ナトリウム1000mgを溶解した水溶液500mlに加え、均一に分散するまで攪拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素5%)50mlと亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素5%)添加した後、pHを10に調整し、酸化反応を開始した。pH10に調整しながら、2時間反応した後、ガラスフィルターで濾過し、十分に水洗し、真空乾燥することで、粉末状の酸化セルロース繊維(A-5)を得た。
【0068】
<疎水化セルロース繊維(A-6)の製造>
アセチル化セルロース繊維(A-5)50gとヘキシルトリエトキシシラン(東京化成工業社製)5gをエタノール300mL中で、60℃でマグネチックスターラーを用いて加熱撹拌を1時間おこなった。その後、真空乾燥により溶媒を除去することで、疎水化セルロース繊維(A-6)を得た。
【0069】
(A-7)セルロース繊維(旭化成ケミカル社製、セオラスKG-1000、平均繊維系4500nm)
【0070】
【0071】
(重量平均分子量(Mw))
重量平均分子量(Mw)は、TSKgelカラム(東ソ-社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソ-社製、HLC-8320GPC)で、展開溶媒にTHFを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
【0072】
(酸価)
三角フラスコ中に試料、約1gを精密に量り採り、蒸留水/ジオキサン(重量比:蒸留水/ジオキサン=1/9)混合液50mlを加えて溶解する。上記試料溶液に対して、電位差測定装置(京都電子工業株式会社製、装置名「電位差自動滴定装置AT-710M」)を用いて、0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液(力価a)で滴定を行い、滴定終点までに必要な水酸化カリウム・エタノール溶液の量(b(mL))を測定した。乾燥状態の樹脂の値として、酸価(mgKOH/g)を次式により求めた。
酸価(mgKOH/g)={(5.611×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液の消費量(ml)
F:0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液の力価
【0073】
<酸性基含有α-オレフィン共重合物(B)>
(共重合物BQ-1)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、α-オレフィンとして1-ヘキセンを46.2g、無水マレイン酸を53.8g仕込み、キシレン10gをフラスコに仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら130℃まで加熱した。反応容器中にパーブチルO(日油株式会社)1.0gとキシレン20gとの混合物を、2時間かけて滴下した。その後、反応温度を130℃に保持し、さらに1時間反応を行った。次いで、キシレンを減圧濃縮して完全に除去して、共重合物BQ-1を得た。得られた共重合物BQ-1の重量平均分子量(Mw)は約10,000、酸価は615.7mgKOH/gであった。
【0074】
(共重合物BQ-2~BQ-7)
表2に記載した原料と仕込み量に変更した以外は(BQ-1)と同様にして合成を行い、それぞれ共重合物BQ-2~BQ-7を得た。なお、分子量の調整はパーブチルOの添加量を変更し、適宜調整した。それぞれの重量平均分子量(Mw)、酸価は表2に記載した通りである。
【0075】
【0076】
以下に、表2中の略称を示す。
マレイン酸エステル:無水マレイン酸に対して、1.0当量のイソブチルアルコールでモノエステル化したエステル化合物
【0077】
(共重合物BR-1)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に共重合物BQ-1を32.2g、化合物X-2(一般式(2)において、R1=メチル基、A1O=C2H4O、m=12、n=0である分子内に1つ以上の水酸基を持つ水酸基含有化合物)を67.8g、触媒としてジアザビシクロウンデセンを0.2g加え、撹拌しながら130℃に加熱した。1時間後に温度を110℃に変更してさらに1時間保持し、さらに90℃に変更し4時間保持して、α-オレフィン-無水マレイン酸共重合物とポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとのエステル化合物である変性共重合物BR-1を得た。得られた共重合物の重量平均分子量(Mw)は約13,000、酸価は99mgKOH/gであった。
【0078】
(共重合物BR-1~BR-12)
表3に記載した原料と仕込み量に変更した以外は(BR-1)と同様にして合成を行い、それぞれ共重合物BR-2~BR-12を得た。
【0079】
【0080】
以下に、表3中の略称を示す。
(1)-1:一般式(1)において、R1=メチル基、A1O=C2H4O、m=4、n=0である化合物
(2)-1:一般式(2)において、R1=メチル基、A1O=C2H4O、m=12、n=0である化合物
【0081】
<ポリエチレン(C)>
C-1:ポリエチレン1(メタロセン系プラストマー、日本ポリエチレン社製KJ640T、真密度0.88g/cm3、MFR=30g/10min、融点58℃)
C-2:ポリエチレン2(メタロセン系プラストマー、住友化学社製エクセレンFX558、真密度0.89g/cm3、MFR=75g/10min、融点79℃)
C-3:高密度ポリエチレン(プライムポリマー社製ハイゼックス7000F、真密度0.95g/cm3、MFR=0.04g/10min、融点131℃)
【0082】
<ポリプロピレン(D)>
D-1:ポリプロピレン(PP、真密度0.90g/cm3、MFR=5g/10min、融点130℃)
【0083】
<添加剤>
E-1:無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三洋化学工業社製ユーメックス1001)
E-2:ガラス繊維(日東紡製カットファイバーE-301、平均繊維系10μm)
【0084】
[実施例1]
〔樹脂組成物の製造〕
セルロース繊維(A-1)20%、共重合物(BR-7)10%と、ポリエチレン(C-1)10%と、ポリプロピレン樹脂(D-1)60%を、ヘンシェルミキサーに投入した。次いで、温度20℃、時間3分の条件でプレミックスした後、スクリュー直径30mm、L/D(スクリュー径/スクリュー長さ)=38~42の押出機に供給し、回転数200rpm、設定温度190℃の条件で溶融混練し、押し出したものをペレタイザーでカットしてペレット状の樹脂組成物を得た。
【0085】
[実施例2~20、比較例1~4]
実施例1の原料を表4および表5に記載した組成に変更した以外は、実施例1と同様に行うことで、それぞれ実施例2~20、比較例1~4のペレット状の樹脂組成物を作成した。
【0086】
【0087】
【0088】
〔評価方法〕
得られた樹脂組成物を使用して下記の評価項目について試験を行った。その結果を表6に示す。
【0089】
〔引張破壊点伸び率〕
得られた樹脂組成物を熱プレスシート成形機に投入し200℃に加熱して、縦200mm・横200mm・厚み1.5mmのプレスシートを成形した。得られたプレスシートを2号ダンベル型に打抜いて試験片とした。得られた試験片を使用して引張り速度100mm/分の条件で、JISK-7127に準じて、引張破壊点伸び率を測定した。なお、試験前の試験片を伸び率100%とした。伸び率が大きい場合、成形体の柔軟性が上がり、衝撃を加えた際に割れやヒビが生成し難い。200%以上が実用域である。
【0090】
〔曲げ強度及び曲げ弾性率〕
得られた樹脂組成物を射出成形機(東芝機械社製)に投入し、温度190℃にて短冊試験片に成形した。短冊試験片は、JISK7139記載のタイプB2(縦80mm×横10mm×厚さ4mm)の規格に則った。作製した短冊試験片をJISK7171準じて、全自動曲げ試験機ベントグラフII(東洋精機社製)を用いて、曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。曲げ強度及び曲げ弾性率が高いほど剛性が増し、成形物に荷重がかかった際に変形しにくくなる。なお、曲げ強度は、20MPa以上が実用域である。また、曲げ弾性率は、1000MPa以上が実用域である。
【0091】
〔比重測定〕
上記引張破壊点伸び率試験と同様に作製したプレスシートを縦80mm×横60mmの長方形に打ち抜き試験片を作製した。前記試験片をJISK7112に準拠してアルキメデス法にて測定した。
【0092】
〔衝撃強度〕
上記曲げ強度及び曲げ弾性率試験と同様に短冊試験片を作製した。得られた短冊形試験片の中央部に2mmの切れ込み(ノッチ)を形成し、デジタル衝撃試験機(東洋精機製作所社製)を用い、JIS K 7111に準拠し、ノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。シャルピー衝撃強度の値が高いほど衝撃強度が増し、成形物の割れにくくなる。
・衝撃強度3.5kJ/m2以上 良好
・衝撃強度3kJ/m2以上~3.5kJ/m2未満 実用域
・衝撃強度 3kJ/m2未満 実用不可
【0093】
【0094】
表6の結果から実施例1~32は、セルロース繊維を高濃度に含有しつつ、機械強度が良好な成形体を作製できた。