(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】車両のサスペンション装置
(51)【国際特許分類】
B60G 11/56 20060101AFI20220726BHJP
F16F 3/04 20060101ALI20220726BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20220726BHJP
F16F 9/58 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B60G11/56
F16F3/04 Z
F16F9/32 Q
F16F9/32 T
F16F9/58 B
F16F9/32 C
(21)【出願番号】P 2018079827
(22)【出願日】2018-04-18
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】安藤 文隆
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-312610(JP,A)
【文献】実開昭56-163090(JP,U)
【文献】特開平10-220510(JP,A)
【文献】特開昭61-024608(JP,A)
【文献】特開平11-294517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 11/56
F16F 3/04
F16F 9/32
F16F 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端が車体側に取付けられるピストンと、下端が車輪側に取付けられるシリンダとから構成されるダンパと、
上記ダンパの外周の車体側にその上端が取付けられると共に、下端が上記シリンダの外周壁に取付けられるコイル状のメインスプリングと、を備えた車両のサスペンション装置であって、
上記シリンダ内部に、上記ピストンが最大ストローク位置から所定距離下方へ移動した際に当接し当該ピストンの下方への移動に伴って圧縮される補助スプリングを備え
、
上記シリンダの内底部で、かつ、上記補助スプリングの外周側にはセンタリングガイドが設けられたことを特徴とする
車両のサスペンション装置。
【請求項2】
上記車輪のフルバンプ時に、上記補助スプリングが圧接する前に、上記シリンダ上部と当接して、上記補助スプリングの圧接を阻止するバンプストッパを備えた
請求項1に記載の車両のサスペンション装置。
【請求項3】
上記シリンダは一重壁にて構成されると共に、内部にオイルが封入されており、
上記シリンダと連通するオイル貯留室と、フリーピストンを介して膨張、圧縮可能なガス室とを含むオイル貯留装置を備えた
請求項1または2に記載の車両のサスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイルスプリング同軸配置のダンパを使用する車両のサスペンション装置に関し、詳しくは、上端が車体側に取付けられるピストンと、下端が車輪側に取付けられるシリンダとから構成されるダンパと、上記ダンパの外周の車体側にその上端が取付けられると共に、下端が上記シリンダの外周壁に取付けられるコイル状のメインスプリングと、を備えた車両のサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スポーツカーのような車両に用いられるサスペンションのコイルスプリングは、操縦安定性を確保するために、バネ定数が高い所謂固いスプリングが用いられるのが常である。
一方で、ダンパにおけるピストンの最大ストローク時(フルリバウンド時)に、車輪の接地感を得るためには、当該最大ストローク近傍でコイルスプリング特性を柔らかくしたいという課題がある。
【0003】
この課題に対して、従来では、
図7に示すようなダンパ70が知られている。
すなわち、下端のダンパブッシュ71が車輪側に取付けられるシリンダ72と、ピストンロッド上端部に設けられたアッパスプリングシート73と、シリンダ72の上部外周に固定されたロアスプリングシート74と、上下方向の中間部に位置する中間スプリングシート75と、上述のアッパスプリングシート73と中間スプリングシート75との間に張架されたメインスプリング76と、上述の中間スプリングシート75とロアスプリングシート74との間に張架された補助スプリング77と、を備えたものである。
【0004】
そして、メインスプリング76のバネ定数を高く設定し、補助スプリング77のバネ定数を低く設定して、この補助スプリング77を所謂柔らかいスプリングと成し、車両の定常状態下では車両の自重で補助スプリング77を接地状態(線間接触状態)とし、メインスプリング76のみを機能させて、硬いバネ設定とし、最大ストローク近傍でのみ補助スプリング77をも機能させて柔らかいバネ設定とする構造である。
【0005】
しかしながら、上述の補助スプリング77はダンパ70外部、詳しくは、シリンダ72の外周部に位置すると共に、当該補助スプリング77が接地状態および非接地状態の何れにも用いられるため、接地時(線間接触時)に砂の噛込みによって、スプリングを塗装している塗膜が剥離して、錆が発生したり、線間接触時に異音(金属音)が発生するという懸念があり、改善の余地があった。
【0006】
ところで、特許文献1には、ストラット式サスペンション装置において、ベローズ外方に設けたメインスプリングと、ピストンの通常ストローク領域で圧接(線間接触)され、最大ストローク近傍でのみバネとして機能する補助スプリングとを備えたものが開示されている。
また、特許文献2には、シリンダ内のピストン側にリバウンド時に圧縮されるリバウンドスプリングを備えた車両用サスペンション装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開昭62-56405号公報
【文献】特開2003-118339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、補助スプリングの圧接防止により、砂の噛込みによる塗膜剥離に起因した錆の発生や異音の発生を抑制することができ、しかも、サスペンションのバネ特性をメインスプリングのバネ特性と補助スプリングのバネ特性との加算値に成すことができる車両のサスペンション装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による車両のサスペンション装置は、上端が車体側に取付けられるピストンと、下端が車輪側に取付けられるシリンダとから構成されるダンパと、上記ダンパの外周の車体側にその上端が取付けられると共に、下端が上記シリンダの外周壁に取付けられるコイル状のメインスプリングと、を備えた車両のサスペンション装置であって、上記シリンダ内部に、上記ピストンが最大ストローク位置から所定距離下方へ移動した際に当接し当該ピストンの下方への移動に伴って圧縮される補助スプリングを備え、上記シリンダの内底部で、かつ、上記補助スプリングの外周側にはセンタリングガイドが設けられたものである。
【0010】
上記構成によれば、上述の補助スプリングはシリンダ内部に配置されているので、当該補助スプリングの線間に砂が噛込むことによる塗膜の剥離に起因した錆の発生や線間接触による異音の発生を抑制することができる。
【0011】
しかも、ダンパ外周に設けたメインスプリングと、シリンダ内部に設けた補助スプリングとを備えているので、サスペンションのバネ特性を、ストロークに対応するメインスプリングのバネ特性と、補助スプリングのバネ特性との加算値に設定することができる。
【0012】
さらに、上記シリンダの内底部で、かつ、上記補助スプリングの外周側にはセンタリングガイドが設けられたものであるから、上記センタリングガイドで補助スプリングの位置決め、特に、当該補助スプリングの径方向への位置決めが成されるので、ダンパの品質がより一層安定する。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記車輪のフルバンプ時に、上記補助スプリングが圧接する前に、上記シリンダ上部と当接して、上記補助スプリングの圧接を阻止するバンプストッパを備えたものである。
上記構成によれば、上述のバンプストッパで補助スプリングの圧接(線間接触)を確実に防止することができ、これにより、塗膜の剥離に起因する錆の発生、並びに、異音の発生をより一層確実に防止することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記シリンダは一重壁にて構成されると共に、内部にオイルが封入されており、上記シリンダと連通するオイル貯留室と、フリーピストンを介して膨張、圧縮可能なガス室とを含むオイル貯留装置を備えたものである。
上記構成によれば、補助スプリングの反ピストン側端部を、内部にオイルが封入されたシリンダ下部側に固定しつつ、上記ピストンの移動に伴うオイルの移動を円滑に行なうことができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、補助スプリングの圧接防止により、砂の噛込みによる塗膜剥離に起因した錆の発生や異音の発生を抑制することができ、しかも、サスペンションのバネ特性をメインスプリングのバネ特性と補助スプリングのバネ特性との加算値に成すことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の車両のサスペンション装置を最大ストローク位置にて示す断面図
【
図2】上記サスペンション装置を最大ストローク近傍位置にて示す断面図
【
図3】サスペンション装置を所定ストローク位置にて示す断面図
【
図4】バンプストッパ当たり始め時点におけるサスペンション装置の断面図
【
図5】サスペンション装置をフルバンプ状態にて示す断面図
【
図7】従来の車両のサスペンション装置を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
補助スプリングの圧接防止により、砂の噛込みによる塗膜剥離に起因した錆の発生や異音の発生を抑制することができ、しかも、サスペンションのバネ特性をメインスプリングのバネ特性と補助スプリングのバネ特性との加算値に成すという目的を、上端が車体側に取付けられるピストンと、下端が車輪側に取付けられるシリンダとから構成されるダンパと、上記ダンパの外周の車体側にその上端が取付けられると共に、下端が上記シリンダの外周壁に取付けられるコイル状のメインスプリングと、を備えた車両のサスペンション装置であって、上記シリンダ内部に、上記ピストンが最大ストローク位置から所定距離下方へ移動した際に当接し当該ピストンの下方への移動に伴って圧縮される補助スプリングを備え、上記シリンダの内底部で、かつ、上記補助スプリングの外周側にはセンタリングガイドが設けられるという構成にて実現した。
【実施例】
【0018】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のサスペンション装置を示し、
図1は当該サスペンション装置を最大ストローク位置にて示す断面図、
図2は同サスペンション装置を最大ストローク近傍位置にて示す断面図、
図3はサスペンション装置を所定ストローク位置にて示す断面図、
図4はバンプストッパ当たり始め時点におけるサスペンション装置の断面図、
図5はサスペンション装置をフルバンプ状態にて示す断面図である。
【0019】
また、
図6は横軸にストロークを取り、縦軸にダンパに作用する荷重を取って、サスペンション装置のバネ特性を示す特性図である。なお、
図1から
図2、
図3、
図4、
図5の順にフルリバウンド(
図1参照)からフルバンプ(
図5参照)に至るダンパの変化を順に示している。
【0020】
図1~
図5に示すように、この実施例の車両のサスペンション装置10は、上端が後述するピストンロッド16を介して車体11側に取付けられるピストン12と、下端がダンパブッシュ13を介して車輪側(いわゆるタイヤ側)に取付けられるシリンダ14とでダンパ15を構成している。上述のダンパブッシュ13は内筒13aと外筒13bとを備えている。
【0021】
上述のピストン12は、その内部にバルブ(図示せず)を内蔵したもので、該ピストン12には上方に延びるピストンロッド16と下方に延びる下部ピストンロッド17とを一体に取付けている。つまり、ピストン12は両ロッドタイプに構成されている。
【0022】
上述の車体11の下面にはアッパスプリングシート18が取付けられており、このアッパスプリングシート18の径方向内側上部にはダンパブッシュ19を介してワッシャ20が配置されている。
またアッパスプリングシート18の径方向内側下部にもダンパブッシュ21を介してワッシャ22が配置されており、このワッシャ22の下面にはバンプストッパ23が固定されている。
【0023】
上述のピストンロッド16は上記各要素23,22,21,18,19,20の中央部を介してワッシャ20の上方に突出しており、この上方突出部に形成したネジ部16aにナット24を螺合して、ピストンロッド16と車体11とを一体化している。
【0024】
また、上述のピストンロッド16はシリンダ14上端部のロッドガイド25を上下方向に貫通するもので、該ピストンロッド16におけるピストン12上面と近接する部分には、リバウンドストッパ受け26が一体的に設けられている。換言すれば、上述のリバウンドストッパ受け26はピストンロッド16に固定されたものである。
【0025】
さらに、上述のロッドガイド25の下面にはリバウンドストッパ27(
図1では、当該リバウンドストッパ27をピストン12の最大ストローク位置に対応して圧縮された状態で示している)が固定される一方で、下部ピストンロッド17にはバネ座28(詳しくは、上部可動バネ座)が遊嵌されている。上述のリバウンドストッパ27およびバンプストッパ23はラバー部材、ゴム部材にて形成されている。
【0026】
上述のシリンダ14の上部外周壁にはロアスプリングシート29を固定しており、上下の各スプリングシート18,29にシートラバー30,31を介して、当該スプリングシート18,29間には、コイル状のメインスプリング32を張架している。
すなわち、該メインスプリング32は、ダンパ15の外周の車体11側にその上端が取付けられると共に、下端が上記シリンダ14の外周壁に取付けられたものである。
【0027】
ここで、上述のメインスプリング32の径方向内側には、当該メインスプリング32と離間して、円筒状のダストカバー33が設けられている。このダストカバー33の上下方向の長さは、フルバンプ時(
図5参照)において、その下端がシートラバー31と当接しない長さに設定されている。
【0028】
上述のシリンダ14内部には、ピストン12が最大ストローク位置MAX(
図1参照)から所定距離下方へ移動した際(
図3に示す所定ストローク位置B参照)に、バネ座28を介してピストン12下面に当接し、当該ピストン12の下方への移動(詳しくは、相対移動)に伴って圧縮される補助スプリング34が設けられている。
【0029】
この補助スプリング34も上述のメインスプリング32と同様にコイルスプリングにて形成されている。
上述のシリンダ14の内底部には、バネ座35(詳しくは、下部固定バネ座)を固定しており、補助スプリング34は上下の各バネ座28,35間に張架されたものである。
【0030】
上述の補助スプリング34の上端部とバネ座28とは、かしめ手段等により固定されており、同様に、補助スプリング34の下端部とバネ座35とは、かしめ手段等により固定されている。
【0031】
また、シリンダ14の内底部で、かつ上述の補助スプリング34の外周側には円筒状のセンタリングガイド36を設けている。これにより、当該センタリングガイド36で補助スプリング34の位置決め、特に、当該補助スプリング34の径方向への位置決め(いわゆる振れ止め)を行い、ダンパ15の品質安定化を図るよう構成している。
【0032】
上述のバンプストッパ23は、
図5に示す車輪のフルバンプ時に、補助スプリング34が圧接(線間接触)する前に、シリンダ14上部、詳しくはロッドガイド25上部と当接してバンプストッパ特性により、補助スプリング34の圧接を阻止するものであり、これにより、バンプストッパ23で補助スプリング34の圧接(線間接触)を確実に防止し、塗膜の剥離に起因する錆の発生、並びに異音(金属音)の発生を防止すべく構成したものである。つまり、
図5に示すフルバンプ時において補助スプリング34の上下の線間が接触しないよう構成したものである。
上述のシリンダ14は一重壁いわゆるモノチューブにて構成されており、当該シリンダ14内部にはオイルOILが封入されている。
【0033】
また、上述のシリンダ14下部とオイル通路40を介して連通するオイル貯留室41と、フリーピストン42を介して膨張、圧縮可能なガス室43とを設け、上述のオイル貯留室41、フリーピストン42、ガス室43とを含むサブタンク44を構成すると共に、上述のオイル通路40とサブタンク44との両者でオイル貯留装置45を形成している。
【0034】
これにより、補助スプリング34の反ピストン側端部、つまり下端部を、内部にオイルOILが封入されたシリンダ14下部側に固定しつつ、ピストン12の移動に伴うオイルOILの移動を円滑に行なうよう構成したものである。なお、上述のガス室43内には不活性ガスであるN2ガスを封入している。
【0035】
ここで、上述のフリーピストン42はガス室43内のN2ガスと、オイル貯留室41内のオイルOILとを完全に分離するものであり、ダンパ15をモノチューブ式と成すことで、オイルと完全に分離されたN2ガス(詳しくは、高圧ガス)をガス室43内に封入することができ、これにより、安定した減衰力特性を確保することができる。
【0036】
このように構成した車両のサスペンション装置の作用について、以下に説明する。
図6は横軸にストロークを取り、縦軸にダンパ15に作用する荷重を取って、サスペンション装置10のバネ特性を示す特性図で、
図6に示す最大ストローク位置(フルリバウンド位置)MAXは
図1に対応し、
図6に示す最大ストローク近傍位置(リバウンドストッパ離れ始め位置)Aは
図2に対応し、
図6に示す所定ストローク位置(補助スプリング当たり始め位置)Bは
図3に対応し、
図6に示すバンプストッパ当たり始め位置Cは
図4に対応し、
図6に示すフルバンプ位置Dは
図5に対応する。
【0037】
また、
図6の位置MAX,位置A間はリバウンドストッパ27の特性REを示し、実線で示す特性MAはメインスプリング32の特性を示し、点線で示す特性HEはメインスプリングの特性MAに補助スプリング34の特性が加わったものを示し、仮想線で示す特性BUは特性HEにバンプストッパ23の特性が加わったものを示している。
【0038】
図1に示す最大ストローク位置MAXにおいてはリバウンドストッパ受け26でリバウンドストッパ27が押圧、圧縮され、ピストン12およびピストンロッド16のこれ以上の上方移動が規制されており、ピストン12下面とバネ座28上面との間には、クリアランスCL2が形成されている。また、この場合、補助スプリング34は自由長となっている。
【0039】
図1に示す最大ストローク位置MAXから車輪がバンプ方向へ若干移動すると、
図2に示すように、ピストン12が僅かに下動し、リバウンドストッパ27はそのリバウンドストッパ特性REにて元の状態に復元し、同図に示す最大ストローク近傍位置(リバウンドストッパ27がリバウンドストッパ受け26から離れ始める位置)Aとなる。
【0040】
なお、
図2ではリバウンドストッパ27下面とリバウンドストッパ受け26上面とが接触している状態で図示している。
この場合、ピストン12下面とバネ座28上面との間のクリアランスCL1は、
図1のクリアランスCL2に対して小さくなる(CL1<CL2)。また、この時点においても、補助スプリング34は自由長である。
【0041】
図2に示す最大ストローク近傍位置Aから車輪がバンプ方向にさらに移動すると、
図3に示すように、ピストン12が所定距離下方へ移動し、当該ピストン12の下面がバネ座28を介して補助スプリング34に当接する所定ストローク位置Bとなる。この場合、ピストン12下面とバネ座28上面との間のクリアランスCLは、零となり、この時点から補助スプリング34の圧縮が開始される。
【0042】
図3に示す所定ストローク位置Bから車輪がバンプ方向にさらに移動すると、
図4に示すように、補助スプリング34はピストン12の下方への移動量(詳しくは、相対的な下方移動量)に応じて圧縮され、
図4に示す状態では、バンプストッパ23の下面がシリンダ14上端部に位置するロッドガイド25上面に当接する。
【0043】
図4に示すバンプストッパ23当たり始め位置Cから車輪がバンプ方向にさらに移動すると、
図5に示すように、該バンプストッパ23は
図6のバンプストッパ特性BUに沿って圧縮され、補助スプリング34の圧接(線間接触)を阻止すべくピストン12およびピストンロッド16、下部ピストンロッド17のそれ以上の下動を規制したフルバンプ位置Dとなる。
【0044】
メインスプリング32は
図6に示す最大ストローク近傍位置Aからバンプ方向への全ストローク間にてメインスプリング特性MAに沿って作用し、また、補助スプリング34は
図6に示す所定ストローク位置Bからバンプ方向への全ストローク間にて補助スプリング特性に沿って作用するので、サスペンション装置10のバネ特性は、ストロークに対応するメインスプリング32のバネ特性(メインスプリング特性MA)と、補助スプリング34のバネ特性との加算値(特性HE)に設定することができる。
【0045】
さらに、
図6に示す位置MAX,位置A間ではリバウンドストッパ特性REが作用し、位置C,位置D間ではバンプストッパ特性BUが作用する。
さらにまた、メインスプリング32のバネ定数を低く設定することで、フルリバウンド時(
図1参照)の予圧を確保するよう構成している。
【0046】
また、
図6に実線で示すメインスプリング特性MAと同図に点線で示すメインスプリングの特性に補助スプリング特性が加わった特性HEとの対比において、メインスプリング特性MAの方が特性HEと比較して、ストロークに対する荷重変化率が小さくなるように設定されている。
【0047】
なお、以上の説明においては、最大ストローク位置MAXからフルバンプ位置Dへのストローク短縮変化に相当する作用について述べたが、フルバンプ位置Dから最大ストローク位置MAXへのストローク拡大変化に相当する作用は、
図6で示した特性に沿って上述とは逆の作用となる。
【0048】
このように、上記実施例の車両のサスペンション装置は、上端が車体11側に取付けられるピストン12と、下端が車輪側に取付けられるシリンダ14とから構成されるダンパ15と、上記ダンパ15の外周の車体11側にその上端が取付けられると共に、下端が上記シリンダ14の外周壁に取付けられるコイル状のメインスプリング32と、を備えた車両のサスペンション装置であって、上記シリンダ14内部に、上記ピストン12が最大ストローク位置MAX(
図1参照)から所定距離下方へ移動した際(
図3の所定ストローク位置B参照)に当接し当該ピストン12の下方への移動に伴って圧縮される補助スプリング34を備えたものである(
図1,3参照)。
【0049】
この構成によれば、上述の補助スプリング34はシリンダ14内部に配置されているので、当該補助スプリング34の線間に砂が噛込むことによる塗膜の剥離に起因した錆の発生や線間接触による異音の発生を抑制することができる。
【0050】
しかも、ダンパ15外周に設けたメインスプリング32と、シリンダ14内部に設けた補助スプリング34とを備えているので、サスペンションのバネ特性を、ストロークに対応するメインスプリング32のバネ特性(
図6のメインスプリング特性MA参照)と、メインスプリングのバネ特性に補助スプリング34のバネ特性が加わったバネ特性(
図6の特性HE参照)との加算値に設定することができる。
【0051】
また、この発明の一実施形態においては、上記車輪のフルバンプ時(
図5参照)に、上記補助スプリング34が圧接する前に、上記シリンダ14上部と当接して、上記補助スプリング34の圧接を阻止するバンプストッパ23を備えたものである(
図5参照)。
この構成によれば、上述のバンプストッパ23で補助スプリング34の圧接(線間接触)を確実に防止することができ、これにより、塗膜の剥離に起因する錆の発生、並びに、異音の発生をより一層確実に防止することができる。
【0052】
さらに、この発明の一実施形態においては、上記シリンダ14は一重壁にて構成されると共に、内部にオイルOILが封入されており、上記シリンダ14と連通するオイル貯留室41と、フリーピストン42を介して膨張、圧縮可能なガス室43とを含むオイル貯留装置45を備えたものである(
図1~
図5参照)。
【0053】
この構成によれば、補助スプリング34の反ピストン側端部を、内部にオイルOILが封入されたシリンダ14下部側に固定しつつ、上記ピストン12の移動に伴うオイルOILの移動を円滑に行なうことができる。
【0054】
加えて、この発明の一実施形態においては、上記シリンダ14の内底部で、かつ、上記補助スプリング34の外周側にはセンタリングガイド36が設けられたものである(
図1~
図5参照)。
この構成によれば、センタリングガイド36で補助スプリング34の位置決め、特に、当該補助スプリング34の径方向への位置決めが成されるので、ダンパ15の品質がより一層安定する。
【0055】
なお、上記実施例においては、一重壁で構成されるシリンダ14を備えたモノチューブ式ガス入りダンパを例示したが、これに代えて、二重壁で構成されるシリンダを備えたツインチューブ式ガス入りダンパに、本発明を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明は、上端が車体側に取付けられるピストンと、下端が車輪側に取付けられるシリンダとから構成されるダンパと、上記ダンパの外周の車体側にその上端が取付けられると共に、下端が上記シリンダの外周壁に取付けられるコイル状のメインスプリングと、を備えた車両のサスペンション装置について有用である。
【符号の説明】
【0057】
11…車体
12…ピストン
14…シリンダ
15…ダンパ
23…バンプストッパ
32…メインスプリング
34…補助スプリング
36…センタリングガイド
41…オイル貯留室
42…フリーピストン
43…ガス室
45…オイル貯留装置
OIL…オイル