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特許7110732センサシステムの異常診断方法、センサシステムの異常診断装置並びにセンサシステムおよびこれを備える車両
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  • 特許-センサシステムの異常診断方法、センサシステムの異常診断装置並びにセンサシステムおよびこれを備える車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】センサシステムの異常診断方法、センサシステムの異常診断装置並びにセンサシステムおよびこれを備える車両
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/08 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
G01M17/08
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018102298
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019207142
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】越智 清仁
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-332720(JP,A)
【文献】特開2002-322942(JP,A)
【文献】実開平01-145705(JP,U)
【文献】特開平08-140033(JP,A)
【文献】特開2013-127403(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0161495(US,A1)
【文献】特開平10-278795(JP,A)
【文献】特開2001-114089(JP,A)
【文献】特開2008-157663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00- 17/10
G01H 1/00- 17/00
G01M 13/00- 13/045
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両が連結器で相互に連結された編成を有する連結型車両に用いられ、振動センサおよび速度センサを含む3以上の複数のセンサを有するセンサシステムにおいて異常診断をする方法であって、
3以上の複数のセンサの、前記連結型車両に対するセンサシステム全体の動作論理に基づき設定した動作状態を監視し、前記複数のセンサ相互の前記動作状態を閾値を基準に切り分けて設定した多数派と少数派に分ける多数決により、該多数決を採択可能なとき(同数を除く)に、前記複数のセンサのうちいずれのセンサに異常が生じているか否かを推定することを特徴とする連結型車両用センサシステムの異常診断方法。
【請求項2】
前記多数決により前記複数のセンサを多数派と少数派に分けた結果
前記複数のセンサ総てが多数派であれば、前記センサシステムが正常であると推定する請求項1に記載の連結型車両用センサシステムの異常診断方法。
【請求項3】
前記多数決により前記複数のセンサを多数派と少数派に分けた結果
前記複数のセンサのうち多数派であると認定されたセンサは正常であると推定し、少数派であると認定されたセンサに異常が生じていると推定する請求項1または2に記載の連結型車両用センサシステムの異常診断方法。
【請求項4】
前記異常診断において複数のセンサのうちのいずれかのセンサに異常が生じているとの推定が最初になされたときを一時故障と呼ぶとき、
一次故障後において前記複数のセンサのうち、残る2以上の複数のセンサ相互の前記動作状態の比較により前記異常診断を継続する請求項1~3のいずれか一項に記載の連結型車両用センサシステムの異常診断方法。
【請求項5】
複数の車両が連結器で相互に連結された編成を有する連結型車両に用いられ、振動センサおよび速度センサを含む3以上の複数のセンサを有する連結型車両用センサシステムの異常診断をする装置であって、
前記複数のセンサのうちいずれのセンサに異常が生じているか否かを診断する異常診断部を有し、
前記異常診断部は
前記3以上の複数のセンサの、前記連結型車両に対するセンサシステム全体の動作論理に基づき設定した動作状態に応じた出力情報を取得する出力情報取得部と
該出力情報取得部で取得された前記複数のセンサ相互の出力情報を前記複数のセンサ相互の前記動作状態を閾値を基準に切り分けて設定した多数派と少数派に分ける多数決により比較する出力情報比較部と
該出力情報比較部で比較した結果から異常の生じているセンサを前記多数決を採択可能なとき(同数を除く)に推定する異常センサ推定部と
を有することを特徴とする連結型車両用センサシステムの異常診断装置。
【請求項6】
速度センサおよび振動センサを含む3以上の複数のセンサと、請求項5に記載の連結型車両用センサシステムの異常診断装置と、を備えることを特徴とする連結型車両用センサシステム。
【請求項7】
複数の車両が連結器で相互に連結された編成を有する連結型車両用のセンサシステムであって、
一の車両内に、前記連結型車両用センサシステムの異常診断装置と、一の速度センサおよび複数の振動センサと、を有する請求項6に記載の連結型車両用センサシステム。
【請求項8】
複数の車両が連結器で相互に連結された編成を有する連結型車両用のセンサシステムであって、
一の車両内に、前記連結型車両用センサシステムの異常診断装置と、一の振動センサおよび複数の速度センサと、を有する請求項6に記載の連結型車両用センサシステム。
【請求項9】
複数の車両が連結器で相互に連結された編成を有する連結型車両用のセンサシステムであって、
各車両には、振動センサが一台設置され、
さらに、連結型車両の編成全体として、前記連結型車両用センサシステムの異常診断装置および速度センサを各一台有する請求項6に記載の連結型車両用センサシステム。
【請求項10】
複数の車両が連結器で相互に連結された編成を有する連結型車両であって、
請求項6~9のいずれか一項に記載の連結型車両用センサシステムを備えることを特徴とする連結型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動センサと速度センサ等の異種センサを含む3以上の複数のセンサを備えるセンサシステムにおいて、センサシステムの異常を診断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に装備されたセンサシステムの異常を診断する装置として、特許文献1には、速度センサおよび振動センサを有するセンサシステムにおいて、走行速度と振動との関係からシステム全体としての異常の有無を検知する技術が開示されている。
同文献記載の技術では、一つの速度センサと一つの振動センサとの信号を比較して、その関係から、装備されているセンサシステム全体としての動作が正常か異常かを判別している。
同文献によれば、走行速度と振動との組み合わせによって正常と異常を判別することによって、走行速度信号、振動信号がそれぞれ単独では正常な範囲内にある場合であっても、他の信号との関係で異常と認められる場合には、システム全体としての異常と判定することができ、異常検出精度を向上できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-127403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、同文献記載の異常判別技術で異常を検出した場合、システム全体としての動作の異常診断はできるものの、速度センサと振動センサのうちのいずれのセンサに異常が生じているかを特定して診断することが困難である。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、異常があるセンサを特定し得る、センサシステムの異常診断方法、センサシステムの異常診断装置並びにセンサシステムおよびこれを備える車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで、振動センサおよび速度センサを含む3以上の複数のセンサを有するセンサシステムにおいて、通常、センサシステム全体として、複数のセンサのうち2以上のセンサが同時に故障することは極めて稀である。
そして、故障が生じているセンサは、センサシステム全体から見て、複数のセンサ相互の動作状態(ステータス)を多数派と少数派とに分けて相互を比較すれば、複数のセンサのうち多数派であると認定されたセンサは正常であると推定し、少数派であると認定されたセンサに異常が生じていると推定することができる。
なお、複数のセンサ相互の動作状態(ステータス)は、センサシステム全体の動作論理式に基づいて予め設定することができる。例えば、本発明の一態様に係るセンサシステムが車両であれば、当該車両の動作状態として、高速走行時、低速走行または停止時等を設定し、それぞれの動作状態に対応する各センサの正常時の動作状態(例えば出力の大小を閾値を基準に切り分けて設定)を多数決の対象として比較することができる。
【0006】
すなわち、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るセンサシステムの異常診断方法は、振動センサおよび速度センサを含む3以上の複数のセンサを有するセンサシステムにおいて異常を診断する方法であって、3以上の複数のセンサの動作状態を監視し、前記複数のセンサ相互の動作状態の多数決により、前記複数のセンサのうちいずれのセンサに異常が生じているか否かを推定することを特徴とする。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るセンサシステムの異常診断装置は、振動センサおよび速度センサを含む3以上の複数のセンサを有するセンサシステムの異常を診断する装置であって、前記複数のセンサのうちいずれのセンサに異常が生じているか否かを診断する異常診断部を有し、前記異常診断部は、前記3以上の複数のセンサの動作状態に応じた出力情報を取得する出力情報取得部と、該出力情報取得部で取得された前記複数のセンサ相互の出力情報を比較する出力情報比較部と、該出力情報比較部で比較した結果から異常の生じているセンサを多数決により推定する異常センサ推定部と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るセンサシステムは、速度センサおよび振動センサを含む3以上の複数のセンサと、本発明の一態様に係るセンサシステムの異常診断装置と、を備えることを特徴とする。また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る車両は、本発明の一態様に係るセンサシステムを備えることを特徴とする。
本発明のいずれか一の態様によれば、複数のセンサ相互の動作状態(ステータス)の多数決により、複数のセンサのいずれのセンサに異常が生じているかを推定するので、故障が生じているセンサを高い確率で特定できる。
【発明の効果】
【0009】
上述のように、本発明によれば、異常があるセンサを特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一態様に係るセンサシステムを備える車両の第一実施形態を説明する模式図である。
図2図1のセンサシステムで実行される異常診断処理のプログラムを説明するフローチャートである。
図3図1に示す車両において、ある動作状態(車両のステータス:高速走行)における複数のセンサの動作状態を説明する図((a)正常時、(b)異常時)である。
図4図1に示す車両において、ある動作状態(車両のステータス:低速走行または停止)における複数のセンサの動作状態を説明する図((a)正常時、(b)異常時)である。
図5】本発明の一態様に係るセンサシステムを備える車両の第二実施形態を説明する模式図である。
図6】本発明の一態様に係るセンサシステムを備える車両の第三実施形態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0012】
[第一実施形態]
まず、本発明の一態様に係るセンサシステムを備える車両の第一実施形態について説明する。第一実施形態は、図1に示すように、一の車両1に、異常診断装置10と、一の速度センサ21と複数の振動センサ11、12とを有する構成例である。なお、本実施形態は、本発明を構成する3以上の複数のセンサの最小構成例である。
詳しくは、同図に示すように、この車両1には、台車2の適所に異常診断装置10が装備されるとともに、台車2の前後に離隔した二つの車軸に対応する位置に、振動センサ11、12がそれぞれ搭載され、さらに、一方の車軸に対応する位置に速度センサ21が搭載されている。
【0013】
本実施形態では、これら3台のセンサ11、12、21から、随時の動作状態に応じた出力情報を信号線を介して異常診断装置10に集約し、異常診断装置10が各センサ11、12、21の異常判定を行うように構成されている。
異常診断装置10は、複数のセンサ11、12、21のうちいずれのセンサに異常が生じているか否かを診断する異常診断部を備える。異常診断部は、周知のマイクロコンピュータを含む情報処理装置として構成されている。
【0014】
詳しくは、異常診断装置10は、以下不図示の、演算およびシステム全体を制御するCPUと、異常診断処理を含む制御プログラム等のデータを所定領域に予め格納している記憶装置およびROMと、記憶装置およびROM等から読み出したデータやCPUの演算過程で必要な演算結果を格納するためのRAMと、表示装置、入力装置およびデータベース等を含む外部装置並びにセンサシステム全体に対してデータの入出力を媒介するインターフェースとを備えて構成される。これらは、データを転送するための信号線であるバスで相互にかつデータ授受可能に接続されている。異常診断装置10は、車両全体を管理する上位コンピュータからの制御指令に応じて異常診断処理を実行する。
【0015】
異常診断装置10で異常診断処理が実行されると、図2に示すように、まずステップS10に移行して、故障診断が一次診断か否かを判定し、一次診断であれば(Yes)処理を継続してステップS11に移行し、そうでなければ(No)処理を戻す。一次診断か否かの判定は、複数の診断段階ごとに設定されたステータスのフラグを参照して行うことができる。なお、本実施形態では、複数の故障診断のための処理のうち、一次診断について説明し、他の診断処理については説明を省略する。
【0016】
一次診断が続行されると、ステップS11に移行して、複数のセンサ11、12、21からの出力情報をそれぞれ取得してステップS12に移行する。ステップS12では、複数のセンサ11、12、21からの出力情報に対応する出力ステータスを付与してステップS13に移行する。ここで、出力ステータスは、予め設定されているセンサシステム全体の動作論理式に基づいて、例えば所定の閾値にて切り分けることで表1に示すように設定される。表1は、第一実施形態におけるセンサシステム全体の動作論理式(複数のセンサの動作状態のステータス)を示すテーブルである。
【0017】
【表1】
【0018】
次いで、処理が続くステップS13に移行すると、付与された出力ステータスを相互に比較して、多数派と少数派とに分ける分別処理が行われる。この分別処理後、ステップS14に移行して、分別の結果が多数派のみか否かが判定される。分別結果が多数派のみであれば(Yes)、センサシステムが正常と推定し、処理をステップS11に戻して一次診断が継続される。一方、分別結果が多数派のみでない場合(No)にはステップS15に移行して、少数派があるか否かを確認し、少数派があることが確認されたら(Yes)ステップS16に移行し、そうでなければ(No)処理を戻す。ステップS16では、少数派であると確認された、対応する出力ステータスが付与されたセンサを異常があるセンサと推定して処理を戻す。
【0019】
異常診断装置10は、ステップS16の異常判定により、複数のセンサ11、12、21のうち、いずれかのセンサに異常が検出された場合には、上述した、車両全体を管理する上位コンピュータ等の他の装置またはユーザに対して異常が発生していると推定されるセンサおよびその部位を通知する。
ここで、上記異常診断処理において、ステップS11に係るプログラムおよびこれを実行するハードウエアが、3以上の複数のセンサ11、12、21の動作状態に応じた出力情報を取得する出力情報取得部に対応する。また、ステップS12からステップS15の一連の処理に係るプログラムおよびこれを実行するハードウエアが、出力情報取得部で取得された複数のセンサ相互の出力情報を、センサシステム全体の動作論理式に基づいて比較する出力情報比較部に対応する。また、ステップS16に係るプログラムおよびこれを実行するハードウエアが、出力情報比較部で比較した結果から、異常の生じているセンサを多数決により推定する異常センサ推定部に対応している。異常センサ推定部での異常判定処理は、上記表1を参照して行われる。
【0020】
より具体的には、例えば図3において、同図(a)に示すように、車両のステータスが「高速走行中」にあっては、監視対象となる3つのセンサ11、12、21は、速度センサおよび振動センサとも、正常動作時にはいずれの出力もステータスが「大」となる。
これに対し、異常動作のセンサが含まれる時には、この異常が生じたセンサでは、本来のステータス「大」が出力されず、ことなるステータス「小」が出力される場合がある。このとき、本実施形態の異常診断装置10では、上述したように、センサ出力に対応するステータスの「大」「小」を多数派と少数派とに分け、半数に満たない少数派を異常があるセンサと推定することができる。
【0021】
つまり、この例では、同図(b)に示すように、3つのセンサ11、12、21中、2個のセンサ21、12はステータスが「大」を出力しているのに対し、他の1個のみがステータス「小」を出力していることから、多数決判定により、当該ステータス「小」を出力しているセンサ11が、異常があるセンサと推定される。
同様にして、例えば図4において、同図(a)に示すように、車両のステータスが「低速走行中又は停止時」にあっては、監視対象となる3つのセンサ11、12、21は、速度センサ21および振動センサ11、12ともに、正常動作時にはいずれの出力もステータスが「小」となる。
【0022】
これに対し、異常動作のセンサが含まれる時には、異常が生じたセンサでは、本来のステータス「小」が出力されず、ことなるステータス「大」が出力される場合がある。このとき、本実施形態の異常診断装置10では、上述したように、センサ出力に対応するステータスの「大」「小」を多数派と少数派とに分け、多数決判定により、半数に満たない少数派を異常があるセンサと推定することができる。
つまり、この例では、同図(b)に示すように、3つのセンサ11、12、21中、2個のセンサ21、12はステータス「小」を出力しているのに対し、他の1個のみがステータス「大」を出力していることから、当該ステータス「大」を出力しているセンサ11が、異常があるセンサと推定される。
【0023】
このように、本実施形態の異常診断装置10によれば、車両1の走行等の動作状態に応じ、それに対応して設定する各センサのステータスを利用してセンサシステムの異常の有無を検知できる。さらに、本実施形態の異常診断装置10によれば、ステータスの比較による多数決により、異常があるセンサを特定(推定)できる。つまり、複数のセンサ11、12、21のうち、車両1の走行等の動作状態に応じたセンサ出力に対応するステータスの「大」「小」を多数派と少数派とに分け、多数決判定により、半数に満たない少数派を異常があるセンサとの推定により、センサ自体の異常を特定できるのである。
【0024】
[第二実施形態]
次に、本発明の一態様に係るセンサシステムを備える車両の第二実施形態について説明する。第二実施形態は、図4に示すように、一の車両1に、異常診断装置10と、一の振動センサ11および複数の速度センサ21、22と、を有する構成例である。なお、本実施形態は、本発明を構成する3以上の複数のセンサの、他の最小構成例である。
同図に示すように、振動センサ11が一台であっても、複数台の速度センサ21、22が搭載されていれば、本発明を適用できる。第二実施形態の構成の場合、3台のセンサ11、21、22からの情報を信号線を介して異常診断装置10に集約し、異常診断装置10がセンサ自体の異常判定を行う。異常センサ推定部での異常判定処理は、表2を参照して行われる。表2は、第二実施形態におけるセンサシステム全体の動作論理式(複数のセンサの動作状態のステータス)を示すテーブルである。
【0025】
【表2】
【0026】
異常診断時の動作は、上記第一実施形態同様である。つまり、異常判定処理により、いずれかのセンサに異常が検出された場合には、異常診断装置10が、他の装置またはユーザに対して異常が発生していると推定されるセンサおよびその部位を通知する。
【0027】
[第三実施形態]
次に、本発明の一態様に係るセンサシステムを備える車両の第三実施形態について説明する。第三実施形態は、図5に示すように、複数の車両1A、1Bが連結器4で相互に連結された編成を有する車両用のセンサシステムであって、各車両1A、1Bの台車2には、振動センサ11、12が一台設置され、さらに、編成全体として、異常診断装置10および速度センサ21を各一台有する。この例では、異常診断装置10および速度センサ21は、車両1Bの台車2に装備されている。
【0028】
第三実施形態の構成の場合、同図に示すように、車両内ネットワークを通じて情報を異常診断装置10に集約し、異常診断装置10が異常判定を行う。判定条件(表1)や異常検出時の動作は、上記第一実施形態と同様である。このように、複数の車両1A、1Bが連結器4で相互に連結された編成を有する車両であって、一の車両1Aに振動センサ11が一台のみ搭載されている場合であっても、連結された他の車両1Bに、振動センサおよび速度センサを含む複数のセンサが搭載されていれば本発明を適用できる。
以上説明したように、上述した実施形態のセンサシステムの異常診断方法、センサシステムの異常診断装置並びにセンサシステムおよびこれを備える車両によれば、複数のセンサ相互の動作状態(ステータス)の多数決により、複数のセンサのいずれのセンサに異常が生じているかを推定するので、故障が生じているセンサを高い確率で特定できる。
【0029】
なお、本発明に係るセンサシステムの異常診断方法、センサシステムの異常診断装置並びにセンサシステムおよびこれを備える車両は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
例えば、上記実施形態では、異常診断装置10の診断処理は、複数のセンサ相互の動作状態(ステータス)の多数決により、複数のセンサのいずれのセンサに異常が生じているかを推定する点を説明したが、これに限定されず、動作状態(ステータス)の多数決に加え、他の処理を追加したり、並列処理できることは勿論である。
【0030】
また、例えば、図2に示した一次診断での故障診断後においても、センサシステム全体の動作論理式に基づいて異常を判別すれば、複数のセンサのうち、残る2以上の複数のセンサ相互の動作状態の比較により異常を判別可能である。そのため、一次診断での故障診断後であっても、引き続き各センサの健全性を確認することができる。
【符号の説明】
【0031】
1、1A、1B 車両
2 台車
3 車輪
4 連結器
10 異常診断装置
11 第一の振動センサ、振動センサ
12 第二の振動センサ
21 第一の速度センサ、速度センサ
22 第二の速度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6