(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20220726BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
G03G15/20 535
G03G15/20 510
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2018105304
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下平 善樹
(72)【発明者】
【氏名】荒木 光太郎
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-221652(JP,A)
【文献】特開平04-194967(JP,A)
【文献】特開2010-025986(JP,A)
【文献】特開2016-157007(JP,A)
【文献】特開2015-022053(JP,A)
【文献】特開2008-013366(JP,A)
【文献】特開2003-149987(JP,A)
【文献】特開平11-084770(JP,A)
【文献】特開平06-003989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が形成された記録媒体の非画像面を非加圧で加熱する加熱部と、
前記加熱部で加熱された記録媒体を加圧して、前記画像を記録媒体に定着する定着部と、
を備え、
前記記録媒体が透明材であるとき、前記加熱部の前記記録媒体に対する接触長さを変更して定着する第一モード、及び、前記定着部の加圧を解除して定着する第二モードの少なくとも一方を選択可能とされ、
前記第一モードとして、前記接触長さを最大よりも短く変更して定着するモードが選択されたときは、前記定着部の加圧が解除されない
定着装置。
【請求項2】
前記第一モードとして、前記接触長さを最大よりも短く変更して定着するモードが選択されたときは、前記定着部が前記記録媒体を加熱する温度を上昇させる
請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
画像が形成された記録媒体の非画像面を非加圧で加熱する加熱部と、
前記加熱部で加熱された記録媒体を加圧して、前記画像を記録媒体に定着する定着部と、
を備え、
前記記録媒体が透明材であるとき、前記加熱部の前記記録媒体に対する接触長さを変更して定着する第一モード、及び、前記定着部の加圧を解除して定着する第二モードの少なくとも一方を選択可能とされ、
前記第二モードが選択されたときは、前記接触長さを最大にする
定着装置。
【請求項4】
画像が形成された記録媒体の非画像面を非加圧で加熱する加熱部と、
前記加熱部で加熱された記録媒体を加圧して、前記画像を記録媒体に定着する定着部と、
を備え、
前記記録媒体が透明材であるとき、前記加熱部の前記記録媒体に対する接触長さを変更して定着する第一モード、及び、前記定着部の加圧を解除して定着する第二モードの少なくとも一方を選択可能とされ、
通常色トナーに加えて特別色トナーを用いて画像を記録媒体に形成するときは、前記第一モード及び前記第二モードを選択できない
定着装置。
【請求項5】
前記記録媒体が透明材以外のとき、前記第一モード及び前記第二モードを選択できない
請求項1~4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記加熱部の一部が前記定着部を兼ね、
前記定着部は、該一部との間で記録媒体を加圧及び加熱する加熱部材を有する
請求項1~5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記加熱部材は、前記加熱部の記録媒体に対する接触領域における搬送方向の最下流で前記記録媒体を加圧及び加熱する
請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
前記記録媒体が透明材であるとき、前記第一モード及び前記第二モードとは別に、前記定着部が記録媒体に付与する熱量を変更して定着するモードを選択可能とされた
請求項1~7のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
連続記録媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部に搬送され且つ画像が形成された前記連続記録媒体に対して該画像を定着する請求項1~8のいずれか1項に記載の定着装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トナー像が転写された連帳フィルムが巻き掛けられトナー像をトナーの溶融温度以上に加熱しながら搬送する加熱搬送ロールと、加熱搬送ロールとニップを形成して連帳フィルムを搬送すると共に連帳フィルムが離間する位置で連帳フィルムが熱変形温度以下になるように連帳フィルムを冷却する冷却ロールと、を備えている加熱搬送装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、記録媒体が透明材であるときは、透明材に形成された画像の透過像鮮明度を調整できることが望ましい。なお、「透過像鮮明度」は、光源からの光が試験片を透過する光量を、移動する光学櫛を通して測定し、計算によって求められる(
図9参照)。具体的には、試験片の透過光の光線軸に直交する光学櫛を移動させて、光線軸に櫛の透過部分があるときの光量(M)と、櫛の遮光部分があるときの光量(m)を求め、両者の差(M-m)と和(M+m)との比率(%)が「透過像鮮明度」となる。
【0005】
本発明は、透明材に形成された画像の透過像鮮明度を調整できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様は、画像が形成された記録媒体の非画像面を非加圧で加熱する加熱部と、前記加熱部で加熱された記録媒体を加圧して、前記画像を記録媒体に定着する定着部と、を備え、前記記録媒体が透明材であるとき、前記加熱部の前記記録媒体に対する接触長さを変更して定着する第一モード、及び、前記定着部の加圧を解除して定着する第二モードの少なくとも一方を選択可能とされている。
【0007】
第2態様は、前記記録媒体が透明材以外のとき、前記第一モード及び前記第二モードを選択できない。
【0008】
第3態様では、前記第一モードとして、前記接触長さを最大よりも短く変更して定着するモードが選択されたときは、前記定着部の加圧が解除されない。
【0009】
第4態様では、前記第一モードとして、前記接触長さを最大よりも短く変更して定着するモードが選択されたときは、前記定着部が前記記録媒体を加熱する温度を上昇させる。
【0010】
第5態様では、前記第二モードが選択されたときは、前記接触長さを最大にする。
【0011】
第6態様は、前記加熱部の一部が前記定着部を兼ね、前記定着部は、該一部との間で記録媒体を加圧及び加熱する加熱部材を有する。
【0012】
第7態様では、前記加熱部材は、前記加熱部の記録媒体に対する接触領域における搬送方向の最下流で前記記録媒体を加圧及び加熱する。
【0013】
第8態様は、前記記録媒体が透明材であるとき、前記第一モード及び前記第二モードとは別に、前記定着部が記録媒体に付与する熱量を変更して定着するモードを選択可能とされている。
【0014】
第9態様では、通常色トナーに加えて特別色トナーを用いて画像を記録媒体に形成するときは、前記第一モード及び前記第二モードを選択できない。
【0015】
第10態様は、連続記録媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部に搬送され且つ画像が形成された前記連続記録媒体に対して該画像を定着する請求項1~9のいずれか1項に記載の定着装置と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
第1態様の構成によれば、透明材に形成された画像の透過像鮮明度を調整できる。
【0017】
第2態様の構成によれば、記録媒体が透明材以外のときでも第一モード及び第二モードが選択できる構成に比べ、定着不良を抑制できる。
【0018】
第3態様の構成によれば、第一モードとして、接触長さを最大よりも短く変更して定着するモードが選択されたときに、定着部の加圧が解除される構成に比べ、定着不良を抑制できる。
【0019】
第4態様の構成によれば、第一モードとして、接触長さを最大よりも短く変更して定着するモードが選択されたときに、定着部が記録媒体を加熱する温度が維持される構成に比べ、定着不良を抑制できる。
【0020】
第5態様の構成によれば、第二モードが選択されたときに、接触長さが最大よりも短くされる構成に比べ、定着不良を抑制できる。
【0021】
第6態様の構成によれば、加熱部とは、別に定着部を有する構成に比べ、省スペース化を図ることができる。
【0022】
第7態様の構成によれば、加熱部材が接触領域の搬送方向の中間で記録媒体を加圧及び加熱する構成に比べ、加熱部材による加圧が解除されたときと、加熱部材による加圧が非解除のときとにおいて、定着前の画像が非加圧で加熱される搬送方向の長さのばらつきが小さい。
【0023】
第8態様の構成によれば、透明材に形成された画像の透過像鮮明度とは別に、画像の光沢度を調整できる。
【0024】
第9態様の構成によれば、通常色トナーに加えて特別色トナーを用いて画像を記録媒体に形成するときにも、第一モードを選択できる構成に比べ、ブリスタの発生を抑制でき、通常色トナーに加えて特別色トナーを用いて画像を記録媒体に形成するときにも、第二モードを選択できる構成に比べ、定着不良を抑制できる。
【0025】
第10態様の構成によれば、枚葉紙を用いて画像を形成する場合に比べ、非画像面の加熱部への接触長さを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【
図2】特別色(W)のトナー像形成部を有する画像形成装置を示す概略構成図である。
【
図3】本実施形態に係る画像形成装置に用いられるトナー像形成部を示す概略構成図である。
【
図4】本実施形態に係る定着装置を示す概略構成図である。
【
図5】第一モードにおける定着装置を示す概略構成図である。
【
図6】第二モードにおける定着装置を示す概略構成図である。
【
図7】定着装置に備えられた接離機構を示す概略構成図である。
【
図8】定着装置の第一冷却部(第二冷却部)の冷却機構の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図9】「透過像鮮明度」の求め方を説明するための説明図である。
【
図10】定着装置において第一モード及び第二モードが選択される手順の一例を示すフローである。
【
図11】透過像鮮明度を選択可能な選択画面の一例を示す図である。
【
図12】比較例において、連続記録媒体上の定着前のトナー像を示す模式的な拡大断面図である。
【
図13】比較例において、連続記録媒体上のトナー像を定着部により定着する過程を示す模式的な拡大断面図である。
【
図14】比較例において、連続記録媒体上のトナー像を定着部により定着する状態を示す模式的な拡大断面図である。
【
図15】比較例において、連続記録媒体上のトナー像が定着された状態を示す模式的な拡大断面図である。
【
図16】本実施形態において、連続記録媒体上のトナー像が定着された状態を示す模式的な拡大断面図である。
【
図17】変形例に係る定着装置が適用された画像形成装置を示す概略構成図である。
【
図18】変形例に係る定着装置を示す概略構成図である。
【
図19】第一モードにおける
図18の定着装置を示す概略構成図である。
【
図20】第二モードにおける
図18の定着装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づいて説明する。なお、各図に示す矢印Hは鉛直方向であって装置上下方向を示し、矢印Wは、水平方向であって装置幅方向を示す。
【0028】
<画像形成装置10>
画像形成装置10の構成について説明する。
図1には、画像形成装置10を正面側から見た構成が示されている。
【0029】
図1に示される画像形成装置10は、連続記録媒体に画像を形成する装置である。具体的には、画像形成装置10は、
図1に示されるように、予め搬送経路に配置された連続記録媒体Pを予め定められた搬送方向(
図1の矢印B方向)へ搬送し、当該連続記録媒体Pに画像を形成する装置である。換言すれば、画像形成装置10は、連続記録媒体Pを搬送する搬送装置ともいえる。以下、「連続記録媒体Pが搬送される搬送方向」を単に「搬送方向」という場合がある。
【0030】
画像形成装置10は、さらに具体的には、搬送部50と、画像形成部12と、定着装置60と、制御部100と、を有している。以下、画像形成装置10の画像形成対象である連続記録媒体Pと、画像形成装置10の各部(制御部100、搬送部50、画像形成部12及び定着装置60)と、について説明する。
【0031】
(連続記録媒体P)
連続記録媒体Pは、記録媒体の一例である。この連続記録媒体Pは、搬送方向へ連続した記録媒体である。具体的には、連続記録媒体Pは、搬送方向へ連続した複数ページの画像形成が可能な記録媒体である。
【0032】
連続記録媒体Pとしては、例えば、透明材が用いられる。透明材としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPP(ポリプロピレン)等の樹脂材料で形成された透明な樹脂フィルムが用いられる。なお、「透明」とは、透過性を有することをいう。したがって、透明材は、完全に透明である必要はなく、透明材には、例えば、カラーフィルタや曇りガラス状のものも含まれる。
【0033】
さらに、連続記録媒体Pは、予め搬送経路に配置された状態から搬送される記録媒体である。また、連続記録媒体Pは、搬送方向に沿って張力が付与された状態で搬送される記録媒体でもある。そして、連続記録媒体Pは、例えば、表面が、画像が形成される画像面2A(
図4参照)とされ、裏面が、画像が形成されない非画像面2B(
図4参照)とされている。
【0034】
なお、本実施形態では、記録媒体として、透明材だけでなく、普通紙(植物繊維その他の繊維を膠着させて製造したもの)や、金属箔(例えばアルミ箔など)等の使用が可能となっている。
【0035】
(制御部100)
制御部100は、搬送部50、画像形成部12及び定着装置60を含む画像形成装置10の各部の動作を制御する機能を有する部分である。制御部100には、搬送部50、画像形成部12及び定着装置60を含む画像形成装置10の各部が接続されている。
【0036】
(搬送部50)
搬送部50は、連続記録媒体を搬送する搬送部の一例である。具体的には、搬送部50は、連続記録媒体Pに搬送方向に沿って張力を付与した状態で該連続記録媒体Pを搬送する機能を有している。さらに具体的には、搬送部50は、
図1に示されるように、巻出ロール51と、巻取ロール53と、駆動部55と、巻掛ロール52、54、56と、を有している。
【0037】
巻出ロール51は、連続記録媒体Pを巻き出すロールである。巻出ロール51には、連続記録媒体Pの後端側部分(搬送方向の上流側部分)が予め巻き付けられている。巻出ロール51は、一方向(
図1の矢印C方向)へ回転することで、巻き付けられた連続記録媒体Pを、後述の転写部35(二次転写位置NT)へ向けて巻き出す。換言すれば、巻出ロール51は、後述の転写部35(二次転写位置NT)へ向けて連続記録媒体Pを供給する供給部として機能する。
【0038】
巻掛ロール52、54、56は、連続記録媒体Pが巻き掛けられるロールである。具体的には、巻掛ロール52、54、56は、巻出ロール51と後述の転写部35(二次転写位置NT)との間で連続記録媒体Pに巻き掛けられている。これにより、巻出ロール51から後述の転写部35までの連続記録媒体Pの搬送経路が定められている。
【0039】
巻取ロール53は、連続記録媒体Pを巻き取るロールである。巻取ロール53には、連続記録媒体Pの先端側部分(搬送方向の下流側部分)が巻き掛けられている。この巻取ロール53は、駆動部55によって、一方向(
図1の矢印D方向)へ回転駆動される。これにより、巻取ロール53が連続記録媒体Pを巻き取る。換言すれば、巻取ロール53は、後述の転写部35(二次転写位置NT)から連続記録媒体Pを回収する回収部として機能する。
【0040】
そして、巻取ロール53が連続記録媒体Pを巻き取ることで、連続記録媒体Pが引っ張られて、巻出ロール51が連続記録媒体Pを巻き出す。このように、駆動部55の回転駆動によって、巻取ロール53が連続記録媒体Pを巻き取ると共に、巻出ロール51が連続記録媒体Pを巻き出すことで、連続記録媒体Pは張力が付与された状態で、搬送方向(
図1の矢印B方向)に搬送される。
【0041】
(画像形成部12)
画像形成部12は、電子写真方式により連続記録媒体Pに画像を形成する機能を有する部分である。具体的には、画像形成部12は、トナー像を形成するトナー像形成部20と、トナー像形成部20で形成されたトナー像を連続記録媒体Pに転写する転写装置30と、を有している。連続記録媒体Pとして透明材が用いられる場合には、例えば、透明材の非画像面2B側から透明材を透過して視認される画像として、トナー像が連続記録媒体Pに形成される。この場合は、画像は、透明材の画像面2Aに反転された状態で形成される。
【0042】
トナー像形成部20は、色ごとにトナー像を形成するように複数備えられている。
図1に示される構成では、通常色としてのイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナー像形成部20が設けられている。
図1に示す(Y)、(M)、(C)、(K)は、上記各色に対応する構成部分を示している。
【0043】
なお、画像形成装置10としては、
図2に示されるように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、特別色(W)の計5色のトナー像形成部20が設けられている構成であってもよい。特別色は、通常色(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))とは異なる色である。特別色としては、例えば、透明、ホワイト(白)、メタリック(例えば銀、金等)、オレンジ、ブルー、バイオレットなどの色がある。特別色(W)のトナー像形成部20は、例えば、後述の転写ベルト31の回転方向において、通常色のトナー像形成部20に対する下流側であって、後述の二次転写位置NTに対する上流側に配置されている。
図2に示す(Y)、(M)、(C)、(K)、(W)は、上記各色に対応する構成部分を示している。
【0044】
なお、画像形成装置10では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、特別色(W)を区別する必要がある場合は、各部材の符号の後にY、M、C、K、Wを付し、各色を区別する必要がない場合は、Y、M、C、K、Wを省略する。
【0045】
〔トナー像形成部20〕
各色のトナー像形成部20は、用いるトナーを除き基本的に同様に構成されている。具体的には、各色のトナー像形成部20は、
図3に示されるように、
図3における時計周り方向に回転する感光体ドラム21(感光体)と、感光体ドラム21を帯電させる帯電器22と、帯電器22によって帯電された感光体ドラム21を露光して感光体ドラム21に静電潜像を形成する露光装置23と、を有している。さらに、各色のトナー像形成部20は、露光装置23によって感光体ドラム21に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置24と、後述の転写ベルト31へのトナー像の転写後に感光体ドラム21の表面に残留したトナーを除去する除去体としてのブレード25と、を有している。
【0046】
帯電器22は、例えば、感光体ドラム21の表面(感光層)を負極性に帯電させる。負極性に帯電した感光体ドラム21の表面は、露光装置23によって露光光Lが照射された部分が正極性を呈し、感光体ドラム21の表面に静電潜像が形成される。そして、現像装置24内で負極性に摩擦帯電されたトナーが、正極性を呈する静電潜像に付着して静電潜像が現像される。このように、感光体ドラム21の表面(外周面)にトナー像が形成される。ブレード25は、感光体ドラム21の表面に接触して、感光体ドラム21の表面に残留したトナーを掻き取る。
【0047】
〔転写装置30〕
転写装置30は、各色の感光体ドラム21のトナー像を、中間転写体としての転写ベルト31に重畳して一次転写し、該重畳されたトナー像を二次転写位置NT(ニップ部)で連続記録媒体Pに二次転写する。具体的には、転写装置30は、
図1、2に示されるように、転写ベルト31と、一次転写ロール33と、転写部35と、を備えている。
【0048】
[転写ベルト31]
転写ベルト31は、
図1、2に示されるように、無端状を成し、複数のロール32に巻き掛けられて姿勢が決められている。この実施形態では、転写ベルト31は、正面視で装置幅方向に長い逆鈍角三角形状の姿勢とされている。複数のロール32のうち、
図1、2に示すロール32Dは、図示しないモータの動力により転写ベルト31を矢印A方向に回転させる駆動ロールとして機能する。転写ベルト31は、矢印A方向に回転することで、一次転写された画像を二次転写位置NTへ搬送する。
【0049】
また、複数のロール32のうち、
図1、2に示すロール32Tは、転写ベルト31に張力を付与する張力付与ロールとして機能する。複数のロール32のうち、
図1、2に示すロール32Bは、二次転写ロール34の対向ロール32Bとして機能する。対向ロール32Bには、前述の通り逆鈍角三角形状の姿勢とされた転写ベルト31の鈍角を成す下端側の頂部が巻き掛けられている。この転写ベルト31は、前述した姿勢で装置幅方向に延びる上辺部において、各色の感光体ドラム21に下方から接触している。
【0050】
[一次転写ロール33]
一次転写ロール33は、各感光体ドラム21のトナー像を転写ベルト31に転写させるロールであり、
図1、2に示されるように、転写ベルト31の内側に配置されている。各一次転写ロール33は、転写ベルト31を挟んで対応する色の感光体ドラム21に対して対向配置されている。また、一次転写ロール33と感光体ドラム21との間には、給電部37(
図3参照)によって、一次転写電圧が印加される。これにより、感光体ドラム21に形成されたトナー像が、感光体ドラム21と一次転写ロール33との間の一次転写位置T(
図3参照)で転写ベルト31に転写される。
【0051】
[転写部35]
転写部35は、転写電圧が印加され、トナー像を連続記録媒体Pに転写する機能を有している。具体的には、転写部35は、二次転写ロール34と、前述の対向ロール32Bと、印加部39と、を有している。
【0052】
二次転写ロール34は、
図1、2に示されるように、対向ロール32Bとの間に転写ベルト31を挟むように配置されており、二次転写ロール34と転写ベルト31とは予め定められた荷重にて接触している。このように接触している二次転写ロール34と転写ベルト31の間が二次転写位置NTとされる。この二次転写位置NTには、巻出ロール51から連続記録媒体Pが供給されるようになっている。二次転写ロール34は、
図1、2における時計周り方向へ回転駆動される。
【0053】
また、二次転写ロール34と対向ロール32Bとの間には、印加部39によって、二次転写電圧が印加される。これにより、転写ベルト31に転写されたトナー像と、二次転写位置NTに搬送された連続記録媒体Pとの間に電位差が生じる。すなわち、二次転写位置NTにおいて、連続記録媒体Pとトナー像との間に連続記録媒体Pの厚み方向に沿って電圧が印加される。これにより、転写ベルト31に重畳された負極性のトナー像に対して静電力が作用し、二次転写位置NTを通過する連続記録媒体Pに、転写ベルト31からトナー像が転写される。
【0054】
(定着装置60)
定着装置60は、画像を記録媒体に定着する定着装置の一例である。具体的には、定着装置60は、搬送部に搬送され且つ画像が形成された連続記録媒体に対して該画像を定着する定着装置の一例である。
【0055】
図1、2に示されるように、定着装置60は、連続記録媒体Pの搬送方向における二次転写位置NTの下流側に配置されている。この定着装置60は、
図4に示されるように、第一支持部57と、第一加熱部62と、定着部61と、接離機構90と、第一冷却部82と、第二冷却部84と、第二支持部102と、を有している。以下、定着装置60の各部(第一支持部57、第一加熱部62、定着部61、接離機構90、第一冷却部82、第二冷却部84、及び第二支持部102)について説明する。
【0056】
〔第一支持部57〕
図4に示される第一支持部57は、連続記録媒体Pを支持する機能を有する部分である。具体的には、第一支持部57は、二次転写位置NT(
図1参照)と定着部61との間で、連続記録媒体Pを支持する機能を有している。さらに具体的には、第一支持部57は、
図4に示されるように、支持ロール58、59を有している。
【0057】
支持ロール58、59は、搬送方向の上流側からこの順で二次転写位置NTと定着部61との間に配置されている。支持ロール58、59は、外周面が連続記録媒体Pの非画像面2Bに接触することで、連続記録媒体Pを支持している。これにより、連続記録媒体Pは、二次転写位置NTから定着部61へ予め定められた搬送経路で搬送される。
【0058】
また、支持ロール58、59は、連続記録媒体Pの移動に従動して回転する構成とされている。さらに、支持ロール59は、図示しない移動機構により連続記録媒体Pの厚み方向(矢印H方向)に移動することで、連続記録媒体Pに張力を付与する構成とされている。
【0059】
〔第一加熱部62〕
図4に示される第一加熱部62は、画像が形成された記録媒体の非画像面を非加圧で加熱する加熱部の一例である。具体的には、第一加熱部62は、トナー像が形成された連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱する機能を有している。
【0060】
なお、「記録媒体の非画像面を非加圧で加熱する」とは、記録媒体を加圧していない状態で記録媒体の非画像面を加熱することをいう。記録媒体を加圧していない状態とは、記録媒体を厚み方向に挟んで記録媒体を厚み方向に加圧する状態(記録媒体を加圧した状態)ではない状態をいう。したがって、記録媒体を厚み方向に挟んでいなければよく、記録媒体の片面に接触する部材がない状態で、該片面に対する反対面が例えば張力により加熱部に巻き付く状態は、記録媒体を加圧していない状態に含まれる。
【0061】
第一加熱部62は、具体的には、連続記録媒体Pの非画像面2Bを加熱する加熱ロールで構成されている。さらに具体的には、第一加熱部62は、一例として、円筒状のロール62Aと、ロール62Aの内部に配置された加熱源62Bと、を備えている。ロール62Aは、連続記録媒体Pの移動に従動して回転する構成とされている。加熱源62Bは、例えば、単一又は複数のハロゲンランプで構成されている。
【0062】
加熱ロールである第一加熱部62は、外周面が連続記録媒体Pの非画像面2Bに接触している。具体的には、連続記録媒体Pの非画像面2Bが、予め定められた範囲で第一加熱部62に巻き掛けられている。
【0063】
第一加熱部62は、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触領域Rにおいて、画像面2Aに接触部材(具体的には、後述の加熱ロール64)が接触していない領域(以下、非加圧領域RAという)を有している。換言すれば、接触領域Rにおいて、画像面2Aが露出する領域である。さらに換言すれば、非加圧領域RAは、連続記録媒体Pの片面(具体的には、非画像面2B)のみに接触部材(具体的には、第一加熱部62)が接触する領域である。
【0064】
そして、第一加熱部62は、非加圧領域RAにおいて、連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱する。非加圧領域RAの周方向長さ(搬送方向に沿った長さ)は、例えば、314mmとされている。
【0065】
第一加熱部62の外周面と対向する位置(連続記録媒体Pが通過しない対向部)には、温度センサ66が配置されている。制御部100は、温度センサ66で検出された温度に基づき、第一加熱部62を予め定められた温度に制御している。
【0066】
〔定着部61〕
図4に示される定着部61は、加熱部で加熱された記録媒体を加圧して、画像を記録媒体に定着する定着部の一例である。
【0067】
具体的には、定着部61は、第一加熱部62によって加熱された連続記録媒体Pの画像面2A及び非画像面2Bを加圧及び加熱して、トナー像を連続記録媒体Pに定着する機能を有している。さらに具体的には、定着部61は、
図4に示されるように、加熱ロール64を有する第二加熱部63を備えている。さらに、第一加熱部62の一部が定着部61を兼ねている。
【0068】
[第二加熱部63]
第二加熱部63は、連続記録媒体Pの画像面2Aを加熱する機能を有する部分である。この第二加熱部63は、第一加熱部62が連続記録媒体Pの加熱を開始した後に、連続記録媒体Pの画像面2Aを加熱する機能を有している。
【0069】
具体的には、第二加熱部63は、加熱ロール64と、外部加熱ロール70と、清掃部73と、を有している。加熱ロール64は、加圧部の一部との間で記録媒体を加圧及び加熱する加熱部材の一例である。具体的には、加熱ロール64は、連続記録媒体Pの画像面2Aを加熱するロールである。さらに具体的には、加熱ロール64は、以下のように構成されている。
【0070】
加熱ロール64は、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触領域Rの最下流の位置で、連続記録媒体Pの画像面2Aと接触している。これにより、加熱ロール64は、接触領域Rの最下流で、第一加熱部62とで連続記録媒体Pを挟む領域(ニップ部)を形成し、該領域で連続記録媒体Pを加圧及び加熱する。
【0071】
加熱ロール64は、一例として、表面側が弾性を有する材料で形成された円筒状のロール64Aと、ロール64Aの内部に配置された加熱源64Bと、を備えている。ロール64Aは、例えば、表面がシリコーンゴム等で形成されたソフトロールとされている。また、ロール64Aは、連続記録媒体Pの移動に従動して回転する構成とされている。加熱源64Bは、例えば、単一又は複数のハロゲンランプで構成されている。
【0072】
加熱ロール64の外周面と対向する位置(連続記録媒体Pが通過しない対向部)には、温度センサ68が配置されている。制御部100は、温度センサ68で検出された温度に基づき、加熱ロール64を予め定められた温度に制御している。
【0073】
外部加熱ロール70は、加熱ロール64を加熱するロールである。外部加熱ロール70は、具体的には、以下のように、構成されている。
【0074】
外部加熱ロール70は、加熱ロール64に対する第一加熱部62とは反対側の位置に配置されている。外部加熱ロール70は、一例として、金属により形成された円筒状のロール70Aと、ロール70Aの内部に配置されたハロゲンランプ等の加熱源70Bと、を備えている。ロール70Aは、加熱ロール64の回転に従動して回転する構成とされている。加熱源70Bは、例えば、単一又は複数のハロゲンランプで構成されている。
【0075】
外部加熱ロール70の外周面と対向する位置には、温度センサ72が配置されている。制御部100は、温度センサ72で検出された温度に基づき、外部加熱ロール70を予め定められた温度に制御している。
【0076】
清掃部73は、加熱ロール64を清掃する機能を有する部分である。清掃部73は、具体的には、清掃ロール74と、清掃ウェブ76と、ロール78と、を有している。
【0077】
清掃ロール74は、加熱ロール64の外周面に接触した状態で回転し、加熱ロール64の外周面の付着物を除去する。清掃ウェブ76は、ロール78によって清掃ロール74の外周面に押し付けられている。清掃ウェブ76は、清掃ロール74の周方向に沿って新しい面(未使用の面)が供給されるように移動し、清掃ロール74を清掃する。
【0078】
さらに、第二加熱部63は、加熱ロール64が連続記録媒体Pの画像面2Aから離間する離間位置(
図6に示される位置)と、加熱ロール64が連続記録媒体Pの画像面2Aに接触する接触位置(
図4及び
図5に示される位置)と、に移動可能に支持されている。そして、第二加熱部63は、移動機構65によって、離間位置と、接触位置と、に移動される。移動機構65は、例えば、カム等の機械要素を用いて、第二加熱部63を移動させる機構により構成されている。
【0079】
[第一加熱部62における定着部61を兼ねる一部]
第一加熱部62は、接触領域Rにおいて、画像面2Aに加熱ロール64が接触する領域(以下、加圧領域RBという)を有している。第一加熱部62は、加圧領域RBにおいて、定着部61を兼ねている。
【0080】
この加圧領域RBは、連続記録媒体Pの両面(具体的には、非画像面2B及び画像面2A)に接触部材(具体的には、第一加熱部62及び加熱ロール64)が接触する領域であるともいえる。さらに換言すれば、加圧領域RBは、第一加熱部62と加熱ロール64とが連続記録媒体Pを厚み方向に挟む領域である。さらに換言すれば、加圧領域RBは、接触領域Rにおいて、前述の非加圧領域RAに対する搬送方向下流側の領域である。加圧領域RBの周方向長さ(搬送方向に沿った長さ)は、非加圧領域RAの周方向長さよりも短く、例えば、24mmとされている。
【0081】
〔定着部61の定着動作〕
定着部61では、第一加熱部62の非加圧領域RAにおいて非画像面2Bが加熱された連続記録媒体Pを、第一加熱部62の加圧領域RBにおいて、第一加熱部62と加熱ロール64とが挟んで、連続記録媒体P及びトナー像G(
図4参照)を加圧すると共に加熱する。これにより、連続記録媒体Pに形成されたトナー像Gを連続記録媒体Pに定着させる。
図4では、連続記録媒体Pに形成されたトナー像Gの一部のみを図示している。
【0082】
なお、定着部61の出口、すなわち、連続記録媒体Pを介して接触する第一加熱部62と加熱ロール64との挟み部(接触部)の出口には、剥離部材が設けられていない。換言すれば、定着部61の出口には、連続記録媒体Pに接触する接触部材(例えば、爪やバッフルなど)は設けられていない。
【0083】
〔接離機構90〕
図7に示される接離機構90は、第一加熱部62を連続記録媒体Pに対して接離させる機構である。なお、「連続記録媒体Pに対して接離させる」とは、「連続記録媒体Pに対して接触又は離間させること」をいう。
【0084】
接離機構90は、具体的には、第一加熱部62の非加圧領域RAを連続記録媒体Pに対して接離させる機構である。さらに具体的には、接離機構90は、以下のように構成されている。
【0085】
接離機構90は、
図7に示されるように、接離部材92と、駆動部99と、を有している。接離部材92は、第一加熱部62の非加圧領域RAを連続記録媒体Pに対して接離させる部材である。具体的には、接離部材92は、連続記録媒体Pの非画像面2Bに接触する接触部92Aと、接触部92Aを支持する一対の支持部92Bと、を有している。
【0086】
接触部92Aは、第一加熱部62の外周面の一部を覆い、且つ、第一加熱部62の周方向に沿って湾曲している。すなわち、接触部92Aは、第一加熱部62の軸方向(
図7のX方向)に見て、円弧状に形成されている。接触部92Aは、第一加熱部62の軸方向長さよりも広い幅を有している。接触部92Aの幅方向(
図7のX方向)の両端は、それぞれ、第一加熱部62の軸方向(
図7のX方向)の両端に対して、幅方向の外側に張り出している。
【0087】
一対の支持部92Bの各々は、幅方向(
図7のX方向)に見て、第一加熱部62の軸中心から径方向外側へ向かって徐々に幅広とされた扇状に形成されている。一対の支持部92Bの各々の一端部(幅広部分)は、接触部92Aの幅方向の両端の各々に連結されている。一対の支持部92Bの他端部(幅狭部分)は、第一加熱部62と同軸上に回転可能に支持されている。これにより、接離部材92は、接触部92Aが連続記録媒体Pを第一加熱部62から離間させる離間位置(
図5及び
図7に示される位置)と、第一加熱部62と連続記録媒体Pと接触させる接触位置(
図4及び
図6に示される位置)と、に第一加熱部62の周方向に沿った一方及び他方に回転可能(移動可能)に支持される。
【0088】
接離部材92は、
図5に示されるように、離間位置において、接触部92Aが連続記録媒体Pと第一加熱部62との間で、連続記録媒体Pの非画像面2Bに接触して、非画像面2Bを第一加熱部62の非加圧領域RAから離間させる。すなわち、接離部材92は、離間位置において、接触部92Aが連続記録媒体Pと第一加熱部62との間で、連続記録媒体Pの張力を支持して、非画像面2Bを第一加熱部62の非加圧領域RAから離間させる。
【0089】
なお、連続記録媒体Pの非画像面2Bが、第一加熱部62の非加圧領域RAの全領域から離間する必要はない。すなわち、接離部材92が離間位置に位置する状態において、第一加熱部62の非加圧領域RAの一部(搬送方向の下流側の部分)が、連続記録媒体Pの非画像面2Bと接触した状態が維持されてもよい。
【0090】
接離部材92は、
図4及び
図6に示されるように、接触位置において、接触部92Aが連続記録媒体Pと第一加熱部62との間の位置から退避し、連続記録媒体Pの非画像面2Bを第一加熱部62の非加圧領域RAに接触させる。
【0091】
駆動部99は、接離部材92を離間位置(
図5に示される位置)と、接触位置(
図4及び
図6に示される位置)との間で、正転及び逆転させる駆動モータで構成されている。
【0092】
〔第一冷却部82〕
図4に示される第一冷却部82は、定着部61に対する搬送方向の下流側で、連続記録媒体Pの非画像面2Bを冷却する機能を有している。第一冷却部82は、具体的には、連続記録媒体Pの非画像面2Bを冷却する冷却ロールで構成されている。第一冷却部82は、さらに具体的には、以下のように構成されている。
【0093】
第一冷却部82は、金属等により形成された円筒状のロールで構成されている。第一冷却部82は、外周面が連続記録媒体Pの非画像面2Bに接触している。具体的には、連続記録媒体Pの非画像面2Bが、予め定められた範囲で第一冷却部82の外周面に巻き掛けられている。なお、連続記録媒体Pの第一冷却部82に対する接触長さ(巻き掛け長さ)は、連続記録媒体Pの第一加熱部62に対する接触長さ(巻き掛け長さ)よりも大きくされている。
【0094】
換言すれば、第一冷却部82による連続記録媒体Pの非画像面2Bの冷却時間は、第一加熱部62による連続記録媒体Pの非画像面2Bの加熱時間より長くされている。
【0095】
第一冷却部82は、連続記録媒体Pを冷却する冷却機構81を有している。ここでの冷却は、連続記録媒体Pを積極的に冷却すること(強制冷却)をいい、当該冷却には、連続記録媒体Pに単に接触して冷却すること(自然冷却)が含まれない。
【0096】
冷却機構81は、具体的には、空冷(空気との熱交換)により連続記録媒体Pを冷却する機構である。さらに具体的には、冷却機構81は、第一冷却部82の内部から冷却する機構として、
図8に示されるように、ダクト81Aと、ファン81Bと、を有している。ダクト81Aは、円筒状に形成されている。ダクト81Aの軸方向一端部が、第一冷却部82の軸方向一端部に接続されている。ファン81Bは、ダクト81Aの軸方向他端部に設けられている。このファン81Bの回転により、ダクト81Aを介して第一冷却部82の内部に風を流すことで、第一冷却部82に接触する連続記録媒体Pを非画像面2Bから冷却する構成とされている。
【0097】
なお、
図8では、第一冷却部82の構成を分かりやすくするため、第一冷却部82の軸方向の一部を切断した状態で模式的に示している。また、図示を省略するが、第一冷却部82は、軸方向両側に延在される軸部を備えており、連続記録媒体Pの移動に従動して回転する構成とされている。
【0098】
さらに、冷却機構81は、第一冷却部82の外部から冷却する機構として、
図4に示されるように、複数(本実施形態では2つ)のファン94を有している。複数のファン94は、第一冷却部82の連続記録媒体Pと接触しない領域と対向する位置に配置されている。複数のファン94の回転により、第一冷却部82の温度を下げることで第一冷却部82が連続記録媒体P及びトナー像Gを冷却する構成とされている。以上のように、第一冷却部82は、連続記録媒体Pの非画像面2Bに接触することで、非画像面2B側から連続記録媒体P及びトナー像Gを冷却する。
【0099】
なお、冷却機構81は、上記の構成に限定されるものではない。冷却機構81としては、例えば、第一冷却部82の内部から冷却する機構(ダクト81A及びファン81B)と、第一冷却部82の外部から冷却する機構(ファン94)との一方のみを有する構成であってもよい。また、第一冷却部82の内部から冷却する機構としては、例えば、第一冷却部82の内部に水を通して連続記録媒体Pを非画像面2Bから冷却する機構(水冷)でもよい。
【0100】
〔第二冷却部84〕
図4に示される第二冷却部84は、第一冷却部82に対する搬送方向の下流側で、連続記録媒体Pの画像面2Aを冷却する機能を有している。第二冷却部84は、具体的には、連続記録媒体Pの画像面2Aを冷却する冷却ロールで構成されている。第二冷却部84は、さらに具体的には、以下のように構成されている。
【0101】
第二冷却部84は、金属等により形成された円筒状のロールで構成されている。第二冷却部84は、外周面が連続記録媒体Pの画像面2Aに接触している。具体的には、連続記録媒体Pの画像面2Aが、予め定められた範囲で第二冷却部84の外周面に巻き掛けられている。
【0102】
なお、連続記録媒体Pの第二冷却部84に対する接触長さ(巻き掛け長さ)は、連続記録媒体Pの第一冷却部82に対する接触長さ(巻き掛け長さ)、及び、連続記録媒体Pの第一加熱部62に対する接触長さ(巻き掛け長さ)よりも小さくされている。
【0103】
換言すれば、第二冷却部84による連続記録媒体Pの画像面2Aの冷却時間は、第一冷却部82による連続記録媒体Pの非画像面2Bの冷却時間、及び、第一加熱部62による連続記録媒体Pの非画像面2Bの加熱時間より短くされている。
【0104】
また、第二冷却部84の外径は、第一冷却部82の外径より小さい。さらに、本実施形態では、連続記録媒体Pの第二冷却部84への巻き付け角度が、連続記録媒体Pの第一冷却部82への巻き付け角度より大きい。
【0105】
第二冷却部84は、連続記録媒体Pを冷却する冷却機構87を有している。ここでの冷却は、連続記録媒体Pを積極的に冷却すること(強制冷却)をいい、当該冷却には、連続記録媒体Pに単に接触して冷却すること(自然冷却)が含まれない。
【0106】
冷却機構87は、具体的には、空冷により連続記録媒体Pを冷却する機構である。さらに具体的には、冷却機構87は、第二冷却部84の内部から冷却する機構として、
図8に示されるように、ダクト87Aと、ファン87Bと、を有している。ダクト87Aは、円筒状に形成されている。ダクト87Aの軸方向一端部が、第二冷却部84の軸方向一端部に接続されている。ファン87Bは、ダクト87Aの軸方向他端部に設けられている。このファン87Bの回転により、ダクト87Aを介して第二冷却部84の内部に風を流すことで、第二冷却部84に接触する連続記録媒体Pを画像面2Aから冷却する構成とされている。
【0107】
なお、
図8では、第二冷却部84の構成を分かりやすくするため、第二冷却部84の軸方向の一部を切断した状態で模式的に示している。また、図示を省略するが、第二冷却部84は、軸方向両側に延在される軸部を備えており、連続記録媒体Pの移動に従動して回転する構成とされている。
【0108】
さらに、冷却機構87は、第一冷却部82の外部から冷却する機構として、
図4に示されるように、ファン95を有している。ファン95は、第二冷却部84の連続記録媒体Pと接触しない領域と対向する位置に配置されている。ファン95の回転により、第二冷却部84の温度を下げることで第二冷却部84が連続記録媒体P及びトナー像Gを冷却する構成とされている。以上のように、第二冷却部84は、第一冷却部82に対する搬送方向の直下流で、連続記録媒体Pの画像面2Aに接触することで、画像面2A側から連続記録媒体P及びトナー像Gを冷却する。
【0109】
なお、冷却機構87は、上記の構成に限定されるものではない。冷却機構87としては、例えば、第二冷却部84の内部から冷却する機構(ダクト87A及びファン87B)と、第二冷却部84の外部から冷却する機構(ファン95)との一方のみを有する構成であってもよい。また、第二冷却部84の内部から冷却する機構としては、例えば、第二冷却部84の内部に水を通して連続記録媒体Pを非画像面2Bから冷却する機構(水冷)でもよい。
【0110】
〔第二支持部102〕
第二支持部102は、連続記録媒体Pを支持する機能を有する部分である。具体的には、第二支持部102は、第二冷却部84と巻取ロール53との間で、連続記録媒体Pを支持する機能を有している。さらに具体的には、第二支持部102は、支持ロール103、104、105を有している。
【0111】
支持ロール103は、第二冷却部84の下方に配置されている。支持ロール103は、外周面が連続記録媒体Pの画像面2Aに接触することで、連続記録媒体Pを支持している。そして、支持ロール103は、第二冷却部84から下方へ搬送される連続記録媒体Pを水平方向(
図4の右側)へ方向転換させる。
【0112】
支持ロール104は、支持ロール103の側方側(
図4の右側)に配置されている。支持ロール104は、外周面が連続記録媒体Pの画像面2Aに接触することで、連続記録媒体Pを支持している。そして、支持ロール104は、支持ロール103から水平方向(
図4の右側)へ搬送される連続記録媒体Pを上方へ方向転換させる。
【0113】
支持ロール105は、支持ロール104の上方側に配置されている。支持ロール105は、外周面が連続記録媒体Pの非画像面2Bに接触することで、連続記録媒体Pを支持している。そして、支持ロール105は、支持ロール104から上方側へ搬送される連続記録媒体Pを水平方向(
図4の右側)に巻取ロール53に向けて方向転換させる。
【0114】
なお、支持ロール103、104、105は、連続記録媒体Pの移動に従動して回転する構成とされている。
【0115】
(定着装置60の動作モード)
次に、定着装置60の動作モードについて説明する。定着装置60は、動作モードとして、初期モード(
図4参照)と、第一モード(
図5参照)と、第二モード(
図6参照)と、を有している。
【0116】
〔初期モード〕
図4に示される初期モードは、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さが、初期設定された長さである状態で、トナー像を連続記録媒体Pに定着するモードである。具体的には、初期モードでは、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さは、定着装置60において調整可能な長さのうち、最大とされている。
【0117】
本実施形態では、
図4に示されるように、初期モードにおいて、接離部材92を接触位置に位置させる。接離部材92が接触位置に位置することで、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さが、定着装置60において調整可能な長さのうち、最大とされる。
【0118】
さらに、初期モードは、定着部61において、加熱ロール64と第一加熱部62とが連続記録媒体Pを挟んで連続記録媒体Pを加圧した状態で、トナー像を連続記録媒体Pに定着するモードである。初期モードでは、具体的には、
図4に示されるように、第二加熱部63を接触位置に位置させる。第二加熱部63が接触位置に位置することで、第一加熱部62の加圧領域RBにおいて、第一加熱部62と加熱ロール64とが連続記録媒体Pを挟んで、連続記録媒体P及びトナー像G(
図4参照)を加圧する。
【0119】
したがって、初期モードでは、最初に、第一加熱部62が非加圧領域RAにおいて、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さが最大とされた状態で、連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱する。次に、第一加熱部62の加圧領域RBにおいて、第一加熱部62と加熱ロール64とで連続記録媒体Pを挟んで、連続記録媒体Pを加圧及び加熱して、トナー像を連続記録媒体Pに定着する。
【0120】
〔第一モード〕
図5に示される第一モードは、加熱部の記録媒体に対する接触長さを変更して定着するモードの一例である。具体的には、第一モードは、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さを初期モードにおける接触長さから変更して、トナー像を連続記録媒体Pに定着するモードである。さら具体的には、第一モードは、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さを初期モードにおける接触長さから短くして定着するモードである。
【0121】
したがって、第一モードでは、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さは、最大よりも短くされる。すなわち、第一モードは、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さを最大よりも短く変更して定着するモードである。
【0122】
なお、「接触長さを変更する」及び「接触長さを短くする」には、「接触長さを0(ゼロ)にする」場合が含まれる。
【0123】
この第一モードでは、具体的には、
図5に示されるように、接離部材92を離間位置に位置させる。接離部材92が離間位置に位置することで、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さは、最大よりも短くされる。
【0124】
さらに、第一モードが選択されたときには、定着部61の加圧の解除が禁止される。すなわち、第一モードとして、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さを最大よりも短く変更して定着するモードが選択されたときには、定着部61の加圧が解除されない。
【0125】
具体的には、
図5に示されるように、第一モードが選択されたときに、第二加熱部63を接触位置に位置させる。これにより、第一加熱部62の加圧領域RBにおいて、第一加熱部62と加熱ロール64とが連続記録媒体Pを挟んで、連続記録媒体P及びトナー像Gを加圧する状態が維持される。
【0126】
換言すれば、第一モードは、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さを最大よりも短くし、且つ、定着部61の加圧が解除されないモードともいえる。
【0127】
さらに、第一モードが選択されたときには、定着部61の定着温度を上昇させる。すなわち、第一モードとして、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さを最大よりも短く変更して定着するモードが選択されたときには、定着部61が連続記録媒体Pを加熱する温度を上昇させる。
【0128】
換言すれば、第一モードは、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さを最大よりも短くし、且つ、定着部61の加圧が解除されず、さらに、定着部61の連続記録媒体Pに対する加熱温度を上昇させるモードともいえる。
【0129】
したがって、第一モードでは、最初に、第一加熱部62が、非加圧領域RAにおいて、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さが初期モードにおける接触長さよりも短い状態で、連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱する。次に、第一加熱部62の加圧領域RBにおいて、第一加熱部62と加熱ロール64とで連続記録媒体Pを挟んで連続記録媒体Pを加圧し、且つ、初期モードよりも高い加熱温度で加熱して、トナー像を連続記録媒体Pに定着する。なお、第一モードでは、非加圧領域RAにおいて、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する加熱が実施されなくてもよい。
【0130】
〔第二モード〕
図6に示される第二モードは、定着部の加圧を解除して定着するモードの一例である。具体的には、第二モードは、第一加熱部62と加熱ロール64とによる連続記録媒体Pの加圧を解除して、トナー像を連続記録媒体Pに定着するモードである。
【0131】
この第二モードでは、具体的には、
図6に示されるように、第二加熱部63を離間位置に位置させる。第二加熱部63が離間位置に位置することで、第一加熱部62と加熱ロール64とによる連続記録媒体Pの加圧が解除される。なお、第二加熱部63が離間位置に位置することで、加熱ロール64による連続記録媒体Pの画像面2Aの加熱も行われない。
【0132】
さらに、第二モードが選択されたときには、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さが最大とされる。
【0133】
具体的には、
図6に示されるように、第二モードが選択されたときに、接離部材92を接触位置に位置させる。これにより、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さが、定着装置60において調整可能な長さのうち、最大とされる。すなわち、第二モードが選択されたときは、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さは、初期モードと同じである最大に維持される。
【0134】
換言すれば、第二モードは、定着部61の加圧を解除し、且つ、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さを最大にするモードともいえる。
【0135】
したがって、第二モードでは、最初に、第一加熱部62が、非加圧領域RAにおいて、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さが最大とされた状態で、連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱する。次に、第一加熱部62の加圧領域RBにおいて、第一加熱部62が連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱するか、加圧領域RBでの第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する加熱が実施されないで、トナー像を連続記録媒体Pに定着する。
【0136】
〔モード選択〕
定着装置60では、連続記録媒体Pが透明材であるとき、第一モード及び第二モードの一方を選択可能とされている。具体的には、例えば、連続記録媒体Pの種類として、透明材が操作者(ユーザ)によって選択された場合に、「連続記録媒体Pが透明材であるとき」として、第一モード及び第二モードの一方を選択可能とされる。具体的には、例えば、連続記録媒体Pの種類として、透明材が操作者(ユーザ)によって選択された場合に、第一モード及び第二モードの選択可能であることを、操作パネル等の報知手段により、操作者(ユーザ)に報知する。
【0137】
そして、第一モード及び第二モードの選択は、例えば、操作パネル等の操作部において、操作者(ユーザ)によって行われる。また、モードの選択は、一例として、後述のように、画像の鮮明度の程度(例えば「大」「中」「小」)を選択することで、行われる構成であってもよい。すなわち、モードの選択は、間接的に行われてもよい。モードの選択が行われると、制御部100によって、定着装置60の動作が制御されて、選択されたモードが実行される。
【0138】
定着装置60は、連続記録媒体Pが透明材以外のとき、第一モード及び第二モードを選択できないように構成されている。具体的には、例えば、連続記録媒体Pの種類として、透明材以外のもの(例えば普通紙)が操作者(ユーザ)によって選択された場合に、「連続記録媒体Pが透明材以外のとき」として、第一モード及び第二モードを選択できない構成とされている。換言すれば、連続記録媒体Pが透明材以外のとき、第一モード及び第二モードの選択が禁止されている。具体的には、例えば、第一モード及び第二モードの選択画面が表示されないようになっている。
【0139】
透明材としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPP(ポリプロピレン)等の樹脂材料で形成された透明な樹脂フィルムが挙げられる。
【0140】
さらに、通常色のトナー像形成部20に加えて、特別色(W)のトナー像形成部20を有する画像形成装置10(
図2参照)では、通常色トナーに加えて特別色トナーを用いてトナー像を連続記録媒体Pに形成するときは、第一モード及び第二モードを選択できないように構成されている。すなわち、通常色トナーに加えて特別色トナーを用いてトナー像を連続記録媒体Pに形成するときは、連続記録媒体Pの種類として透明材が選択された場合を含め、第一モード及び第二モードの選択が禁止されている。
【0141】
さらに、定着装置60では、連続記録媒体Pが透明材であるとき、第一モード及び第二モードとは別に、定着部61が連続記録媒体Pに付与する熱量を変更して定着するモードを選択可能とされている。定着部61が連続記録媒体Pに付与する熱量は、例えば、第一加熱部62及び加熱ロール64の加熱温度及び加熱時間を変更することで、変更される。
【0142】
具体的には、第一加熱部62及び加熱ロール64の少なくとも一方の加熱温度を上昇させることで、定着部61が連続記録媒体Pに付与する熱量を増加させ、第一加熱部62及び加熱ロール64の少なくとも一方の加熱温度を低下させることで、定着部61が連続記録媒体Pに付与する熱量を減少させる。
【0143】
さらに、第一加熱部62及び加熱ロール64の加熱時間を長くすることで、定着部61が連続記録媒体Pに付与する熱量を増加させ、第一加熱部62及び加熱ロール64の加熱時間を短くすることで、定着部61が連続記録媒体Pに付与する熱量を減少させる。
【0144】
第一加熱部62及び加熱ロール64の加熱時間は、連続記録媒体Pの搬送速度によって変更される。すなわち、連続記録媒体Pの搬送速度を低下させることで、第一加熱部62及び加熱ロール64の加熱時間が長くなり、連続記録媒体Pの搬送速度を上昇させることで、第一加熱部62及び加熱ロール64の加熱時間が短くなる。
【0145】
<画像形成動作>
次に、
図2に示される画像形成装置10による連続記録媒体Pとしての透明材への画像形成動作を説明する。
【0146】
本実施形態では、まず、例えば、画像形成装置10の使用者の手作業により、連続記録媒体Pが画像形成装置10の搬送経路に予め配置される。連続記録媒体Pは、例えば、巻出ロール51より巻き出されて、巻出ロール51から搬送経路に沿って巻取ロール53まで配置される。
【0147】
図2に示される画像形成装置10では、画像形成指令を受けた制御部100は、各トナー像形成部20などを作動させる。
図3に示されるように、各色の感光体ドラム21は、回転されながら帯電器22によって帯電される。また、制御部100は、画像信号処理部で画像処理が施された画像データを、各露光装置23に送る。各露光装置23は、画像データに応じて各露光光Lを出射して、帯電した各感光体ドラム21に露光する。これにより、各感光体ドラム21の外周面に静電潜像が形成される。各感光体ドラム21に形成された静電潜像は、現像装置24によって現像され、各色の感光体ドラム21には、各色のトナー像が形成される。
【0148】
図2に示される画像形成装置10では、例えば、通常色としてのイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナーを用いて連続記録媒体Pに画像を形成する通常色モードと、通常色トナーに加えて特別色トナーを用いて連続記録媒体Pに画像を形成する特別色モードと、を有している。画像形成モードとして、通常色モードが選択された場合には、制御部100は、通常色のトナー像形成部20などを作動させる。これにより、各色の感光体ドラム21には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像が形成される。画像形成モードとして、特別色モードが選択された場合には、制御部100は、通常色及び特別色のトナー像形成部20などを作動させる。これにより、各色の感光体ドラム21には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、特別色(W)のトナー像が形成される。
【0149】
各色の感光体ドラム21に形成された各色のトナー像は、各一次転写位置Tにおいて各色の一次転写ロール33によって、周回する転写ベルト31に順次一次転写される。これにより、転写ベルト31には、4色分のトナー像が重畳されたトナー像が形成される。この重畳されたトナー像は、転写ベルト31の周回によって二次転写位置NTに搬送される。二次転写位置NTにおいて、転写ベルト31から重畳されたトナー像G(
図4参照)が連続記録媒体Pに転写される。具体的には、連続記録媒体Pとしての透明材には、非画像面2B側から透明材を透過して視認される画像として、連続記録媒体Pの画像面2Aにトナー像Gが転写される。このとき、トナー像Gは、連続記録媒体Pの画像面2Aに反転された状態で転写される。
【0150】
なお、
図2に示される画像形成装置10において、特別色モードが選択された場合では、例えば、通常色のトナー像Gが、連続記録媒体Pに転写され、特別色(W)のトナー像Gが下地層として、通常色のトナー像G上に重なるように、連続記録媒体Pに転写される。
【0151】
トナー像Gが二次転写された連続記録媒体Pは、定着装置60に向けて搬送される。定着装置60では、初期モードにおいて、最初に、第一加熱部62が非加圧領域RAにおいて第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さが最大とされた状態で、連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱する。次に、第一加熱部62の加圧領域RBにおいて、加熱ロール64と第一加熱部62が、連続記録媒体Pを挟んで連続記録媒体P及びトナー像G(
図4参照)を加圧すると共に加熱する。これにより、連続記録媒体Pに形成されたトナー像Gを連続記録媒体Pに定着させる。
【0152】
さらに、第二加熱部63の下流側で連続記録媒体Pは、第一冷却部82に向けて搬送される。第一冷却部82では、連続記録媒体Pの非画像面2Bから冷却される。さらに、第一冷却部82の搬送方向下流側で、連続記録媒体Pの画像面2Aに第二冷却部84が接触されることで、トナー像Gが冷却される。そして、第二冷却部84に冷却された連続記録媒体Pは巻取ロール53に巻き取られる。
【0153】
<作用>
本実施形態の作用について説明する。
【0154】
画像形成装置10の定着装置60では、連続記録媒体Pが透明材であるとき、第一モード及び第二モードの一方を選択可能とされている。
【0155】
図5に示される第一モードが選択された場合には、最初に、第一加熱部62が、非加圧領域RAにおいて、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さが初期モードにおける接触長さよりも短い状態で、連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱する。次に、第一加熱部62の加圧領域RBにおいて、第一加熱部62と加熱ロール64とで連続記録媒体Pを挟んで連続記録媒体Pを加圧し、且つ、初期モードよりも高い加熱温度で加熱して、トナー像を連続記録媒体Pに定着する。
【0156】
図6に示される第二モードが選択された場合には、最初に、第一加熱部62が、非加圧領域RAにおいて、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さが最大とされた状態で、連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱する。次に、第一加熱部62の加圧領域RBにおいて、第一加熱部62が連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱するか、加圧領域RBでの第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する加熱が実施されないで、トナー像を連続記録媒体Pに定着する。
【0157】
ここで、第一加熱部62が、非加圧領域RAにおいて、連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱することで、トナー像の表面に微小な凹凸(例えば20μm以上40μm以下のピッチの凹凸)が形成される。これにより、定着されたトナー像の透過像鮮明度が低下する。
【0158】
当該微小な凹凸は、第一加熱部62の加圧領域RBにおいて、第一加熱部62と加熱ロール64とで連続記録媒体Pを挟んで連続記録媒体Pを加圧及び加熱すると、小さくなる。これにより、定着されたトナー像の透過像鮮明度が上昇する。
【0159】
したがって、第一モードが選択された場合では、連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱する範囲が初期モードに比べ小さくなると共に、第一加熱部62と加熱ロール64とで加熱及び加圧するため、初期モードに比べ透過像鮮明度が上昇する。
【0160】
一方、第二モードが選択された場合では、非加圧領域RAにおいて、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さが最大とされた状態で、連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱すると共に、第一加熱部62と加熱ロール64とによる加熱及び加圧が実施されないため、初期モードに比べ透過像鮮明度が低下する。
【0161】
このように、本実施形態によれば、第一モード及び第二モードの一方が選択されることで、透明材に形成された画像の透過像鮮明度が調整される。
【0162】
すなわち、本実施形態では、非加圧領域RAでの第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さと、定着部61での連続記録媒体Pに対する加圧の有無と、によって、透明材に形成された画像の透過像鮮明度が調整される。
【0163】
なお、「透過像鮮明度」は、写像性(像鮮明度)とも称され、以下のように測定されるものである。「透過像鮮明度」は、
図9に示されるように、光源からの光が試験片を透過する光量を、移動する光学櫛を通して測定し、計算によって求められる。具体的には、試験片の透過光の光線軸に直交する光学櫛を移動させて、光線軸に櫛の透過部分があるときの光量(M)と、櫛の遮光部分があるときの光量(m)を求め、両者の差(M-m)と和(M+m)との比率(%)が「透過像鮮明度」となる。
【0164】
ここで、
図2に示される画像形成装置10の定着装置60において第一モード及び第二モードが選択される具体的な手順の一例について、
図10に示されるフローを用いて説明する。
【0165】
画像形成装置10では、まず、ステップ300にて、操作者(ユーザ)によって、画像形成装置10の画像形成モードの選択が行われる。次に、ステップ302にて、操作者(ユーザ)によって、連続記録媒体Pの種類の選択が行われる。
【0166】
次に、ステップ304にて、ステップ300において選択された画像形成モードが、通常色トナーに加えて特別色トナーを用いて画像を形成する特別色モードであるか否かが判定される。この結果、選択された画像形成モードが特別色モードであると判定された場合は、初期モードが実行される。
【0167】
すなわち、ステップ316に移行して、第一加熱部62が非加圧領域RAにおいて、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さが最大とされた状態で、連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱する。さらに、ステップ322にて、第一加熱部62の加圧領域RBにおいて、第一加熱部62と加熱ロール64とで連続記録媒体Pを挟んで、連続記録媒体Pを加圧及び加熱して、トナー像を連続記録媒体Pに定着する。
【0168】
ステップ304での判定の結果、選択された画像形成モードが特別色モードであるとの判定が得られなかった場合は、ステップ306に移行し、ステップ302において選択された連続記録媒体Pの種類が透明であるか否かが判定される。この結果、選択された連続記録媒体Pの種類が透明であるとの判定が得られなかった場合は、初期モードが実行される(ステップ316、322)。
【0169】
ステップ306での判定の結果、選択された連続記録媒体Pの種類が透明であると判定された場合は、ステップ308に移行して、透過像鮮明度を選択可能な選択画面120(
図11参照)を操作パネルに表示し、操作者(ユーザ)によって、透過像鮮明度の選択が行われる。当該画面120では、例えば、
図11に示されるように、透過像鮮明度が、大中小の三段階選択可能とされる。
【0170】
次に、ステップ310にて、ステップ308において選択された透過像鮮明度が、「中」であるか否かが判定される。この結果、選択された透過像鮮明度が、「中」であると判定された場合は、初期モードが実行される(ステップ316、322)。
【0171】
ステップ310での判定の結果、ステップ308において選択された透過像鮮明度が、「中」であるとの判定が得られなかった場合は、ステップ314に移行し、ステップ308において選択された透過像鮮明度が、「大」であるか否かが判定される。この結果、選択された透過像鮮明度が、「大」であると判定された場合は、第一モードが実行される。
【0172】
すなわち、ステップ318に移行し、第一加熱部62が、非加圧領域RAにおいて、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さが初期モードにおける接触長さよりも短い状態で、連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱する。さらに、ステップ323にて、第一加熱部62の加圧領域RBにおいて、第一加熱部62と加熱ロール64とで連続記録媒体Pを挟んで、連続記録媒体Pを加圧及び加熱して、トナー像を連続記録媒体Pに定着する。なお、第一モードでの加熱温度は、初期モードでの加熱温度よりも高くされる。
【0173】
ステップ314での判定の結果、ステップ308において選択された透過像鮮明度が、「大」であるとの判定が得られなかった場合、すなわち、選択された透過像鮮明度が、「小」である場合は、第二モードが実行される。
【0174】
すなわち、ステップ320に移行して、第一加熱部62が非加圧領域RAにおいて、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さが最大とされた状態で、連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱する。さらに、ステップ324にて、第一加熱部62の加圧領域RBにおいて、第一加熱部62が連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱するか、加圧領域RBでの第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する加熱が実施されないで、トナー像を連続記録媒体Pに定着する。以上のように、前述の手順では、操作者(ユーザ)によって、透過像鮮明度「大」が選択されることで、第一モードが選択されて、第一モードが実行される。また、操作者(ユーザ)によって、透過像鮮明度「小」が選択されることで、第二モードが選択されて、第二モードが実行される。
【0175】
ここで、第一モードは、連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱する範囲が初期モードに比べ小さくなる分、初期モードに比べ連続記録媒体Pに付与される熱量が低下する。また、第二モードでは、第一加熱部62と加熱ロール64とによる加圧及び加熱が実施されない分、初期モードに比べ連続記録媒体Pに付与される熱量が低下する。
【0176】
これに対して、本実施形態では、画像を形成する対象である連続記録媒体Pが透明材以外のとき、第一モード及び第二モードを選択できないように構成されている。例えば、前述の
図10に示される手順では、ステップ306での判定の結果、選択された連続記録媒体Pの種類が透明であるとの判定が得られなかった場合は、初期モードが実行され(ステップ316、322)、第一モード及び第二モードを選択できない。このため、連続記録媒体Pが透明材以外のときに、連続記録媒体Pに付与される熱量が維持され、定着不良が抑制される。
【0177】
また、本実施形態では、前述のように、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さを最大よりも短く変更して定着する第一モードが選択されたときには、定着部61の加圧が解除されない。すなわち、第一モードが選択されたときには、第一加熱部62と加熱ロール64とで加熱及び加圧される。
【0178】
例えば、前述の
図10に示される手順では、ステップ314での判定の結果、選択された透過像鮮明度が、「大」であると判定された場合、すなわち、第一モードが選択された場合は、ステップ318、ステップ322に移行する。ステップ322にて、第一加熱部62の加圧領域RBにおいて、第一加熱部62と加熱ロール64とで連続記録媒体Pを挟んで、連続記録媒体Pを加圧及び加熱して、トナー像を連続記録媒体Pに定着する。
【0179】
このため、第一モードが選択されたときに、定着部61の加圧が解除される構成に比べ、連続記録媒体Pに付与される熱量の低下が抑えられ、定着不良が抑制される。
【0180】
また、本実施形態では、前述のように、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さを最大よりも短く変更して定着する第一モードが選択されたときには、定着部61が連続記録媒体Pを加熱する温度を上昇させる。例えば、前述の
図10に示される手順では、ステップ322にて、第一モードでの加熱温度は、初期モードでの加熱温度よりも高くされる。
【0181】
このため、第一モードが選択されたときに、定着部61が連続記録媒体Pを加熱する温度が維持される構成に比べ、連続記録媒体Pに付与される熱量の低下が抑えられ、定着不良が抑制される。
【0182】
また、本実施形態では、前述のように、第二モードが選択されたときには、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さを最大にする。
【0183】
例えば、前述の
図10に示される手順では、ステップ314での判定の結果、ステップ308において選択された透過像鮮明度が、「大」であるとの判定が得られなかった場合、すなわち、選択された透過像鮮明度が、「小」である場合は、ステップ320に移行する。ステップ320にて、第一加熱部62が非加圧領域RAにおいて、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さが最大とされた状態で、連続記録媒体Pの非画像面2Bを非加圧で加熱する。
【0184】
このため、第二モードが選択されたときに、接触長さが最大よりも短くされる構成に比べ、連続記録媒体Pに付与される熱量の低下が抑えられ、定着不良を抑制できる。
【0185】
また、本実施形態では、通常色のトナー像形成部20に加えて、特別色(W)のトナー像形成部20を有する画像形成装置10(
図2参照)において、通常色トナーに加えて特別色トナーを用いてトナー像を連続記録媒体Pに形成するときは、第一モード及び第二モードを選択できない。
【0186】
例えば、前述の
図10に示される手順では、ステップ304での判定の結果、選択された画像形成モードが特別色モードであると判定された場合は、初期モードが実行され、第一モード及び第二モードを選択できない。
【0187】
ここで、通常色トナーに加えて特別色トナーを用いてトナー像を連続記録媒体Pに形成する場合では、連続記録媒体Pにおける単位面積あたりのトナー量が多くなりやすい。そして、通常色トナーに加えて特別色トナーを用いてトナー像を連続記録媒体Pに形成するときにも、第二モードを選択できる構成(第一構成)では、第二モードが選択された場合に、第一加熱部62と加熱ロール64とによる連続記録媒体Pへの加圧及び加熱がなされないため、定着不良が生じる場合がある。
【0188】
これに対して、本実施形態では、通常色トナーに加えて特別色トナーを用いてトナー像を連続記録媒体Pに形成するときは、第一モード及び第二モードを選択できないことで、第一加熱部62と加熱ロール64とによる連続記録媒体Pへの加圧及び加熱がなされるので、第一構成に比べ、定着不良が抑制される。
【0189】
さらに、通常色トナーに加えて特別色トナーを用いてトナー像を連続記録媒体Pに形成するときにも、第一モードを選択できる構成(第二構成)では、第一モードが選択された場合に、以下のように、ブリスタが発生する場合がある。
【0190】
図12には、前述の第二構成において、定着が行われる前の連続記録媒体P上のトナー像Gの状態が示されている。
図12に示されるように、定着前には、連続記録媒体P上には、多数の略楕円状のトナーTの粒子が様々な方向を向いた状態で載っている。
【0191】
図13には、前述の第二構成において、第一モードにて、連続記録媒体P上のトナー像Gが加熱及び加圧される状態が示されている。
図13に示されるように、第一モードでは、連続記録媒体P上のトナー像Gは、第一加熱部62と加熱ロール64とのニップ部で押されることで、多数の略楕円状のトナーTの向きが揃い(トナーTが整頓され)、この状態でトナーTが加熱及び加圧される。
【0192】
図14には、前述の第二構成において、第一モードにて定着されたトナー像Gの状態が示されている。通常色トナーに加えて特別色トナーを用いてトナー像を連続記録媒体Pに形成する場合では、連続記録媒体Pにおける単位面積あたりのトナー量が多くなるため、
図14に示されるように、連続記録媒体P上のトナー像Gが第一加熱部62と加熱ロール64とのニップ部で加熱及び加圧されると、トナー像Gの中の空気A1が連続記録媒体P中に逃げにくい。このため、溶融したトナー像Gの中に空気A1が多数閉じ込められる。
【0193】
図15には、前述の第二構成において、第一モードにて定着されたトナー像Gの定着後の状態が示されている。
図15に示されるように、第一モードにて定着されたトナー像Gは、第一加熱部62と加熱ロール64とのニップ部を出て圧力が開放されると同時に空気A1(
図14参照)がトナー像Gから飛び出す。これにより、トナー像Gの表面にクレータのような複数の穴210、すなわちブリスタが発生する。
【0194】
これに対し、本実施形態の定着装置60では、通常色トナーに加えて特別色トナーを用いてトナー像を連続記録媒体Pに形成するときは、第一モード及び第二モードを選択できないので、初期モードにおいて、第二加熱部63で連続記録媒体Pが加熱される前に、第一加熱部62が連続記録媒体Pの非画像面2Bから非加圧状態で加熱する。これにより、連続記録媒体P上のトナー像Gのうち、連続記録媒体Pに近い側からトナーが溶ける。このため、連続記録媒体Pの未定着のトナー像G内の空気が、
図16に示されるように、トナー像Gの表面側から逃げやすい。これにより、定着装置60では、前述の第二構成に比べ、ブリスタの発生が抑制される。
【0195】
特に、特別色として、ホワイト(白)が用いられる場合には、第一モード及び第二モードを選択できない構成とされていることが望ましい。白色のトナーは、下地層として隠蔽性が高いことが求められるため、光透過しやすくなるのを抑制するためである。また、下地層として用いると、単位面積当たりのトナー量が多くなるが、第一モード及び第二モードを選択できないことで、連続記録媒体Pに付与される熱量が維持されるため、定着不良が抑制される。
【0196】
さらに、本実施形態では、連続記録媒体Pが透明材であるとき、第一モード及び第二モードとは別に、定着部61が連続記録媒体Pに付与する熱量を変更して定着するモードを選択可能とされている。なお、本モードは、例えば、鮮明度とは別に選択されるように、鮮明度選択画面120(
図11参照)とは別に、操作パネルに選択画面が表示される。そして、本モードを選択することで、第一加熱部62と加熱ロール64とによる加圧した状態での連続記録媒体Pに対する熱量が変更される。これにより、透明材に形成されたトナー像の透過像鮮明度とは別に、トナー像の光沢度が調整される。なお、トナー像の表面の微小な凹凸(透過像鮮明度に影響を与える凹凸よりも微小な凹凸であり、例えば1μm程度のピッチの凹凸)の有無により、光沢度が調整される。
【0197】
また、本実施形態では、第一加熱部62は、加圧領域RBにおいて、定着部61を兼ねている。このため、第一加熱部62とは別に定着部61を有する構成に比べ、省スペース化が図られる。
【0198】
また、本実施形態では、加熱ロール64は、接触領域Rの最下流で、第一加熱部62とで連続記録媒体Pを挟んで、連続記録媒体Pを加圧及び加熱する。
【0199】
ここで、加熱ロール64が接触領域Rの搬送方向の中間で連続記録媒体Pを加圧及び加熱する構成(第三構成)では、加熱ロール64による加圧が解除されていない場合において、接触領域Rにおける加熱ロール64に対する搬送方向上流側の範囲で、定着前のトナー像が非加圧で加熱される。一方、加熱ロール64による加圧が解除された場合では、接触領域Rにおける加熱ロール64に対する搬送方向上流側の範囲に加えて、加熱ロール64に対する搬送方向下流側の範囲でも、定着前のトナー像が非加圧で加熱される。
【0200】
これに対して、本実施形態では、加熱ロール64は、接触領域Rの最下流で、第一加熱部62とで連続記録媒体Pを挟んで、連続記録媒体Pを加圧及び加熱するので、加熱ロール64による加圧が解除された場合でも、加熱ロール64に対する搬送方向下流側の範囲で、定着前のトナー像が非加圧で加熱されない。このため、第三構成に比べ、加熱ロール64の加圧が解除されたときと、非解除のときとにおいて、定着前のトナー像が非加圧で加熱される搬送方向の長さのばらつきが小さい。
【0201】
また、本実施形態では、記録媒体の一例としての連続記録媒体Pを搬送部50が搬送し、該連続記録媒体Pに定着装置60がトナー像を定着する。このように、本実施形態では、記録媒体の一例として、搬送方向へ連続した連続記録媒体Pを用いて画像を形成する。このため、枚葉紙を用いて画像を形成する場合に比べ、連続記録媒体Pの非画像面2Bの第一加熱部62への接触長さが確保される。
【0202】
<変形例に係る定着装置160>
画像形成装置10は、
図17に示されるように、定着装置60に代えて定着装置160を有する構成であってもよい。定着装置60では、第一加熱部62の一部が定着部61を兼ねていたのに対して、定着装置160は、第一加熱部62とは独立した定着部61を有する構成とされている。
【0203】
以下、
図18~
図20に基づき、定着装置160の具体的な構成について説明する。なお、定着装置60と同様の機能を有する部分には、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0204】
定着装置160では、
図18に示されるように、第一支持部57は支持ロール59を有しておらず、支持ロール58で構成されている。また、定着装置160では、第二支持部102は、支持ロール103を有しておらず、支持ロール104、105で構成されている。
【0205】
また、定着部61は、加熱ロール64を有する第二加熱部63と、加圧ロール67と、を有している。加圧ロール67は、加熱ロール64との間に連続記録媒体Pを挟んで加圧するロールである。定着部61では、第一加熱部62で非画像面2Bが加熱された連続記録媒体Pを、加熱ロール64と加圧ロール67とが挟んで、連続記録媒体P及びトナー像G(
図4参照)を加圧すると共に加熱する。これにより、連続記録媒体Pに形成されたトナー像Gを連続記録媒体Pに定着させる。
【0206】
定着装置160では、第一加熱部62は、連続記録媒体Pの非画像面2Bから離間する離間位置(
図19に示される位置)と、加熱ロール64が連続記録媒体Pの非画像面2Bに接触する接触位置(
図18及び
図20に示される位置)と、に移動可能に支持されている。さらに、定着装置160では、定着装置60における接離機構90に代えて、第一加熱部62を連続記録媒体Pに対して接離させる機構としての移動機構69を有している。
【0207】
移動機構69は、第一加熱部62を離間位置と、接触位置と、に移動させる。移動機構69は、例えば、カム等の機械要素を用いて、第一加熱部62を移動させる機構により構成されている。
【0208】
定着装置160における初期モードでは、
図18に示されるように、第一加熱部62を接触位置に位置させる。第一加熱部62が接触位置に位置することで、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さが、定着装置60において調整可能な長さのうち、最大とされる。また、初期モードでは、第二加熱部63を接触位置に位置させる。第二加熱部63が接触位置に位置することで、加熱ロール64と加圧ロール67が連続記録媒体Pを挟んで、連続記録媒体P及びトナー像Gを加圧する。
【0209】
定着装置160における第一モードでは、
図19に示されるように、第一加熱部62を離間位置に位置させる。第一加熱部62が離間位置に位置することで、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さを0(ゼロ)にする。すなわち、第一加熱部62を連続記録媒体Pに対して非接触とする。また、第一モードでは、第二加熱部63を接触位置に位置させる。これにより、加熱ロール64と加圧ロール67が連続記録媒体Pを挟んで、連続記録媒体P及びトナー像Gを加圧する状態が維持される。
【0210】
第二モードでは、第二加熱部63を離間位置(
図20に示される位置)に位置させる。第二加熱部63が離間位置に位置することで、第一加熱部62と加熱ロール64とによる連続記録媒体Pの加圧が解除される。また、第二モードでは、第一加熱部62を接触位置に位置させる。これにより、第一加熱部62が連続記録媒体Pに接触した状態が維持される。
【0211】
<変形例>
本実施形態では、記録媒体の一例として、連続記録媒体Pを用いたが、これに限られない。例えば、記録媒体の一例としては、枚葉紙(カット紙)を用いてもよい。
【0212】
また、本実施形態では、記録媒体が透明材であるとき、第一モード及び第二モードの一方を実行可能とされていたが、これに限られない。例えば、第一モード及び第二モードを実行する第三モードを実行可能とされていてもよい。すなわち、第三モードでは、加熱部の記録媒体に対する接触長さを変更し、且つ、定着部の加圧を解除して定着するモードである。具体的には、第三モードは、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さを初期モードにおける接触長さから変更し、且つ、第一加熱部62と加熱ロール64とによる連続記録媒体Pの加圧を解除して、トナー像を連続記録媒体Pに定着するモードである。さら具体的には、第三モードは、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さを初期モードにおける接触長さから短くし、第一加熱部62と加熱ロール64とによる連続記録媒体Pの加圧を解除して、トナー像を連続記録媒体Pに定着するモードである。このように、記録媒体が透明材であるとき、第一モード、及び第二モードの少なくとも一方を選択可能とされていればよい。
【0213】
また、本実施形態では、定着装置60は、第一モード、及び第二モードを有していたが、第一モード、及び第二モードの一方のみを有する構成であってもよい。
【0214】
また、本実施形態では、第一モードが選択されたときに、定着部61の定着温度を上昇させていたが、これに限られない。例えば、第一モードが選択されたときに、定着部61の定着温度を初期モードと同じ温度に維持してもよい。
【0215】
また、本実施形態では、初期モードにおいて、第一加熱部62の連続記録媒体Pに対する接触長さが、最大とされ、第一モードにおいて、当該接触長さを初期モードにおける接触長さから短くされていたが、これに限られない。例えば、初期モードにおける接触長さが、最大よりも短く、第一モードにおいて、接触長さを初期モードにおける接触長さから長く変更する構成であってもよい。さらに、初期モードにおける接触長さから長く変更するモードと、初期モードにおける接触長さから短く変更するモードと、の両方を有していてもよい。
【0216】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0217】
2A 画像面
2B 非画像面
10 画像形成装置
50 搬送部
60 定着装置
61 定着部
62 第一加熱部(加熱部の一例)
64 加熱ロール(加熱部材の一例)
P 連続記録媒体