(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】ロボット用のジャケット
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
B25J19/00 H
(21)【出願番号】P 2018135874
(22)【出願日】2018-07-19
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】町田 聖二
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-167847(JP,A)
【文献】特開平10-076577(JP,A)
【文献】特開昭63-065973(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0106493(US,A1)
【文献】特開平05-052096(JP,A)
【文献】特開昭57-137137(JP,A)
【文献】特開昭61-089380(JP,A)
【文献】実開平01-069659(JP,U)
【文献】特開平03-287395(JP,A)
【文献】特開2014-083665(JP,A)
【文献】米国特許第04904514(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 17/02-19/00
B05C 11/11
B29C 41/12-70/16
B32B 25/02
E21D 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護ジャケットを装着したロボットにおいて当該保護ジャケットの内側に装着されるロボット用のジャケットであって、
前記ロボットの表面に形成されている角部を覆う位置に設けられ、前記角部を覆っている表面を当該角部よりも鈍角にすることを特徴とするロボット用のジャケット。
【請求項2】
伸縮性の材料により筒状に形成され、収縮することによって前記ロボットの表面に密に接触するとともに、自身の厚みによって前記角部を覆う箇所の表面を当該角部よりも鈍角にすることを特徴とする請求項1記載のロボット用のジャケット。
【請求項3】
前記伸縮性を有する材料は、シート状のゴム材の表面に平織りまたはメリヤス織りした表面生地を貼り付けたものであることを特徴とする請求項2記載のロボット用のジャケット。
【請求項4】
硬質性の材料により形成され、自身の硬さによって前記角部を覆う箇所の表面を当該角部よりも鈍角にすることを特徴とする請求項1記載のロボット用のジャケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに装着されるロボット用のジャケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットにジャケットを装着することがある(例えば、特許文献1参照)。このようなジャケットは、外部からの異物によってロボットが損傷することを防止したり、ロボットの内部からオイル等の異物が外部に飛散したりすることを防止したりすること等を目的として装着されている。以下、このような目的で装着されているジャケットを、便宜的に保護ジャケットと称する。また、ここでいうロボットとは、様々な用途に対応可能な汎用的なもの、つまりは、いわゆる垂直多関節型ロボットや水平多関節型ロボットを想定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、ロボットは、一般的には予め教示された動作を繰り返し行うように制御されている。そして、保護ジャケットは、ロボットの動作つまりは姿勢の変化を妨げないように形成されている。そのため、保護ジャケットは、ロボットが同じ動作が繰り返した場合には、ロボットの姿勢の変化に追従して引っ張られたり捩れたりすることがある。
【0005】
しかしながら、ロボットは、その表面にボルトの頭が露出していたり、ボルトを挿入するためのザグリが設けられていたり、アームの表面に稜線が形成されていたりする。以下、このようにロボットの表面に存在する凹凸や稜線によって形成される尖った部位を、角部と称する。
【0006】
そのため、ロボットが姿勢の変化を繰り返すと、保護ジャケットの内面が角部に何度も接触したり擦れたりすることになり、保護ジャケットが摩耗したり、保護ジャケットの表面にラミネートが貼られている場合にはそのラミネートが剥離したりする等、保護ジャケットが損傷するおそれがある。
そこで、保護ジャケットが損傷するおそれを低減することができるロボット用のジャケットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した発明では、ロボット用のジャケットは、保護ジャケットを装着するロボットに対して当該保護ジャケットの内側に装着されるものであって、ロボットの表面に形成されている角部を覆う位置に設けられ、角部を覆っている表面を当該角部よりも鈍角にする。
【0008】
このようなジャケットを装着することにより、角部に対応する位置の表面は、実際の角部よりも鈍角になっている。これにより、保護ジャケットは、自重やロボットの姿勢の変化によって角部に対応する位置に接触するとしても、角部に直接的に接触することは無く、インナージャケットの表面に接触する。そして、角度に対応するジャケットの表面は、鈍角つまりは鋭さが低減されていることから、保護ジャケットの内面を削ったり、角部に力が集中したりすることが抑制される。したがって、保護ジャケットの摩耗や、例えば保護ジャケットの表面にコーティングされているラミネートの剥離等が防止され、保護ジャケットが損傷するおそれを低減することができる。
【0009】
また、ジャケットは、角部を覆うように設けられる。ロボットは、手先側から設置部へ向かう長手方向において関節が回転するだけで無く、腕を捻るようにして関節が回転することがある。そのため、保護ジャケットは、全周から角部に接触する可能性がある。そのため、ジャケットにより角部を覆うことにより、角部の全周に渡って保護ジャケットの損傷を低減することができる。
【0010】
さらに、ジャケットは、保護ジャケットとは別体で設けられている。保護ジャケットを保護する場合、例えば保護ジャケットの内側に当て布のようにして緩衝材等を縫い付けることも考えられる。しかし、緩衝材を縫い付ける縫い目から液体が浸入あるいは離脱するおそれがあるとともに、ロボットの姿勢が変化した際には角部に対して緩衝材が相対的に移動することで緩衝材自体が損傷するおそれがある。そして、緩衝材が損傷した場合には、保護ジャケットを全体的に取り外すことが必要になる。
【0011】
これに対して、保護ジャケットとは別体になっているジャケットを装着することにより、角部に対して相対的に移動することが無い又は少ないことからジャケット自体が損傷することを低減できるとともに、仮にジャケットが破損した場合にはジャケット単体を交換すれば良い。そのため、保護ジャケットやロボットに手を加えること無く、容易に交換でき、使い勝手を向上させることができる。
【0012】
請求項2に記載した発明によれば、ロボット用のジャケットは、伸縮性の材料により筒状に形成され、収縮することによってロボットの表面に密に接触するとともに、自身の厚みによって角部を覆う箇所の表面を当該角部よりも鈍角にする。
【0013】
これにより、ジャケットは、内側に向かって収縮する力によってロボットに密着するとともに、自身の厚みによって、つまりは、角部の実際の形状を再現しない程度の厚みによって角部を覆う箇所の表面を実際の角度よりも鈍角にする。したがって、別途固定部材を要することなくジャケットをロボットに容易に固定することができるとともに、筒状に形成されていることから、例えばハンド等を取り外すこと無くロボットに容易に着脱することができる。
【0014】
請求項3に記載した発明によれば、ロボット用のジャケットは、伸縮性を有する材料として、シート状のゴム材の表面に平織りまたはメリヤス織りした表面生地を貼り付けたものを採用する。これにより、伸縮性を確保することができるとともに、角部の実際の形状を再現しない程度の厚み、つまりは、角部に対応する位置の表面を実際の角部よりも鈍角にするための厚みを、シート状のゴム材によって容易に確保することができる。
【0015】
請求項4に記載した発明によれば、ロボット用のジャケットは、硬質性の材料により形成され、自身の硬さによって角部を覆う箇所の表面を当該角部よりも鈍角にする。この場合、ロボット用のジャケットは、例えばプラスチックや金属等の硬質性の材料により形成することができる。このような構成によっても、角部を覆う形状となっていることから、角部に対応する位置の表面が実際の角部よりも鈍角になり、保護ジャケットの摩耗や角部に力が集中することによるラミネートの剥離等が防止され、保護ジャケットが損傷するおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ロボットの姿勢が変化する態様を模式的に示す図
【
図2】インナージャケットの取り付け態様を模式的に示す図
【
図4】インナージャケットによる角部の鈍角化の態様を模式的に示す図
【
図5】インナージャケットの他の構成を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。以下では、本発明によるジャケットをインナージャケット1と称し、外部からの異物による損傷や内部からの異物の飛散等を防止する目的で装着されるジャケットを保護ジャケット2と称して説明する。
【0018】
図1に示すように、ロボット3は、設置環境によっては保護ジャケット2が装着されることがある。ここでは、ロボット3として複数のアームを有する垂直多関節型ロボットである6軸ロボットを想定しているが、いわゆる7軸ロボットや水平多関節型のいわゆる4軸ロボットもインナージャケット1(
図2参照)の適用対象である。なお、
図1では、説明の簡略化のために、インナージャケット1については図示を省略している。
【0019】
ロボット3は、周知のように設置面に設置された状態で図示しないコントローラに姿勢を制御されつつ各種の作業を実行する。具体的には、ロボット3は、ベース3a上に連結されているショルダ3b、ショルダ3bに連結されている下アーム3c、下アーム3cに連結されている第一上アーム3d、第一上アーム3dに連結されている第二上アーム3e、第二上アーム3eに連結されている手首3f、手首3fに連結されているフランジ3gを備えている。また、フランジ3gには、保護ジャケット2を固定するアタッチメント4、および作業用のハンドが取り付けられる。
【0020】
このような、ロボット3は、作業中にその姿勢が何度も変化する。具体的には、ロボット3の作業中には、例えば姿勢Aと姿勢Bとして一例を示すような姿勢の変化が何度も行われる。そして、ロボット3には、例えばボルトの頭等、ロボット3の表面から突出している状態の角部5が存在する。
【0021】
この角部5は、ロボットの3表面に形成される一般的に言う鋭く尖ったような形状の部位であり、ボルトを挿入するためのザグリや、アームの表面に形成されている稜線等も含まれる。つまり、角部5は、ロボット3の表面から突出している部位だけで無く、窪んだ部位も含んである。なお、説明の簡略化のために
図1では保護ジャケット2とロボット3との間に隙間を設けて示しているが、実際には、保護ジャケット2はロボット3と接触した状態になることがある。
【0022】
保護ジャケット2は、ロボット3の手先側からベース3a側までの全体を覆う筒状のシート状部材2aと、シート状部材2aの長手方向の複数箇所において複数箇所で内面側に設けられてシート状部材2aをロボット3側に接続する内面バンド2b、および、シート状部材2aの表面に設けられている外面バンド2cを備えている。なお、説明の簡略化のために、保護ジャケット2についてはシート状部材2aの断面にて示している。
【0023】
シート状部材2aは、耐水性と例えば次亜塩素酸系の洗浄液等により洗浄することができるように耐薬品性とを有するものを採用している。このシート状部材2aは、長手方向の途中に、シート状部材2aを長手方向に折り重ねることにより当該シート状部材2aの周方向の全域に渡る袋状に形成され、保護ジャケット2の長手方向における見かけ上の長さを可変とする伸縮部2dが形成されており、いわゆる亀の首のような構造をしている。
【0024】
また、シート状部材2aは、その表面に設けられ、伸縮部2dの表面と、当該伸縮部2dによって覆われる連結位置よりも長手方向において後段側に位置するシート状部材2aの表面、特には、後段側に他の伸縮部2dを設けられている場合にはその伸縮部2dの表面との間を連結する伸縮性の外面バンド2cを備えている。これらにより、保護ジャケット2は、ロボット3の姿勢の変化に追従可能な構造、つまりは、ロボット3の動作を妨げない構造となっている。なお、保護ジャケット2は、ロボット3の手先側で一端が固定されている。
【0025】
インナージャケット1は、
図2に断面視にて示すように、保護ジャケット2を装着したロボット3において、角部5を覆う位置に装着されている。なお、
図2ではロボット3の手先側にインナージャケット1を装着した例を示しているが、インナージャケット1は、手先側だけで無く、角部5が存在する場所に適宜装着することができる。
【0026】
このインナージャケット1は、
図3に示すように、伸縮性の材料により両端が開口した筒状に形成されている。具体的には、インナージャケット1は、クロロプレンをシート状に成形したゴム材1aの表面に、平織りまたはメリヤス織りしたいわゆるジャージのような表面生地1bを貼り付けた伸縮性の材料を筒状にすることで形成されている。このとき、ロボット3の手先側に装着されるインナージャケット1の場合であれば、その内径(W10)は、フランジ3gの外径(W1。
図2参照)よりも小さく形成されている。
【0027】
また、インナージャケット1は、角部5を含んだアームの外径(W2。
図2参照)に伸長可能な伸縮性を有している。そのため、インナージャケット1は、収縮することによって、ロボット3の表面に密に接触する。つまり、インナージャケット1は、角部5に対して相対的に移動することが抑制されている。
【0028】
また、インナージャケット1は、平織りまたはメリヤス織りした表面生地1bによって、その表面が滑らかに形成されている。本実施形態では、インナージャケット1は、天竺とも称される平織りしたものを採用している。また、インナージャケット1は、ゴム材1aと表面生地1bとを積層することにより、ある程度の厚み(W11)を有している。このため、インナージャケット1は、いわゆるウェットスーツのような表面仕上がりで形成されており、表面の摩擦抵抗が比較的小さくなっている。なお、
図3は、説明のために意図的に厚み(W11)を拡大して示している。
【0029】
このインナージャケット1の厚み(W11)は、角部5の大きさに応じて設定することもできるが、例えばロボット3の表面から垂直方向に突出する角部5のうち最大のものを想定し、インナージャケット1を装着した状態における角部5の表面が、角部5よりも鈍角になるような厚み(W11)を採用することができる。なお、インナージャケット1の長さ(W12)は、例えば1箇所の角部5を覆う長さにしたり、隣り合う複数の角部5を覆う長さにしたりする等、装着する部位に応じて選択することができる。
【0030】
次に、インナージャケット1の作用について説明する。
上記したように、ロボット3は、同じ動作を繰り返し行うように制御されることから、例えば
図1に示した姿勢Aと姿勢Bとの間の姿勢変化等が繰り返し発生する。そして、保護ジャケット2は、ロボット3の姿勢が変化すると、その姿勢の変化に追従して引っ張られたり捩れたりすることがある。そして、保護ジャケット2の内面が角部5に何度も接触したり擦れたりすると、保護ジャケット2が摩耗したり、保護ジャケット2の表面に耐水性や耐薬品性を持たせるためのラミネートがコーティングされている場合には、角部5によって力が集中する等の理由により、ラミネートが剥離したりすることがある。すなわち、角部5との接触等によって保護ジャケット2が損傷するおそれがある。
【0031】
そこで、本実施形態では、保護ジャケット2を装着したロボット3に対して、その保護ジャケット2の内面側に、インナージャケット1をさらに装着している。このインナージャケット1は、上記したようにゴム材1aと表面生地1bとを貼り合わせて形成されていることから、比較的滑らかな表面とある程度の厚み(W12)とを有しており、ウェットスーツのような手触りと厚みとなるように仕上げられている。そして、筒状に形成されているインナージャケット1は、ハンド等を外すこと無く、ロボット3の手先側から装着可能となっている。
【0032】
さて、
図4に比較例(インナー無し)として示すように、ボルトの頭のような角部5は、ロボット3の表面から概ね垂直に設けられていることが多く、側面から見るとロボット3の表面に対して概ね90度で突出し、鋭い端部(R1)を有する形状となっている。そのため、インナージャケット1を装着しない場合には、保護ジャケット2が直接的に鋭利な角部5に接触するため、上記したような損傷を招くおそれがある。なお、
図4では、説明の簡略化のために保護ジャケット2が角部5に接触していない状態を示しているが、保護ジャケット2は、自重あるいはロボット3の姿勢の変化によって角部5に接触することになる。
【0033】
これに対して、
図4に実施例(インナー有り)として示すように、インナージャケット1を装着した場合には、インナージャケット1は、収縮によりロボット3の表面に密に接触する。その一方で、インナージャケット1は、ある程度の厚みを有していることから、その厚みによって、角部5の近傍においては角部5に密に接触することが無い。換言すると、角部5を覆うようにインナージャケット1を設けた場合、角部5の端部(R2)の表面が、角部5の実際の形状ではなく、角部5の前段側から後段側まで滑らかに形状が変化する状態、つまりは、角部5の実際の角度よりも鈍角になった状態になる。
【0034】
このため、角部5に対応する位置で保護ジャケット2がインナージャケット1の表面に接触したとしても、インナージャケット1の表面が実際の角部5よりも滑らかになっていることから、また、インナージャケット1の表面自体の摩擦が比較的小さいことから、保護ジャケット2が摩耗したり、力が集中してラミネートが剥離したりすることが抑制される。このようにして、インナージャケット1は、保護ジャケット2の損傷を抑制する。
【0035】
以上説明したインナージャケット1によれば、次のような効果を得ることができる。
インナージャケット1は、保護ジャケット2を装着したロボット3において当該保護ジャケット2の内側に装着されるものであって、ロボット3の表面に形成されている角部5を覆う位置に設けられ、前記角部5を覆っている表面を当該角部5よりも鈍角にする。
【0036】
これにより、保護ジャケット2が自重やロボット3の姿勢の変化によって角部5に対応する位置に接触したとしても、インナージャケット1を装着することによって角部5に対応する位置の表面が、実際の角部5よりも鈍角になる。したがって、保護ジャケット2の摩耗や角部5に力が集中することによるラミネートの剥離等が防止され、保護ジャケット2が損傷するおそれを低減することができる。
【0037】
また、インナージャケット1は、角部5を覆うように設けられる。ロボット3は、手先側から設置部へ向かう長手方向において関節が回転するだけで無く、腕を捻るようにして関節が回転することがある。そのため、保護ジャケット2は、全周から角部5に接触する可能性がある。そのため、インナージャケット1により角部5を覆うことにより、角部5の全周に渡って保護ジャケット2の損傷を低減することができる。
【0038】
さらに、インナージャケット1は、保護ジャケット2とは別体で設けられている。保護ジャケット2を保護する場合、例えば保護ジャケット2の内側に当て布のようにして緩衝材等を縫い付けることも考えられる。しかし、緩衝材を縫い付ける縫い目から液体が浸入あるいは離脱するおそれがあるとともに、ロボット3の姿勢が変化した際には角部5に対して緩衝材が相対的に移動することで緩衝材自体が損傷するおそれがある。そして、緩衝材が損傷した場合には、保護ジャケット2を全体的に取り外すことが必要になる。
【0039】
これに対して、保護ジャケット2とは別体になっているインナージャケット1を装着することにより、角部5に対して相対的に移動することが無い又は少ないことからインナージャケット1自体が損傷することを低減できるとともに、仮にインナージャケット1が破損した場合にはインナージャケット1単体を交換すれば良い。そのため、保護ジャケット2やロボット3に手を加えること無く、容易に交換でき、使い勝手を向上させることができる。
【0040】
また、インナージャケット1は、伸縮性の材料により筒状に形成され、収縮することによってロボット3の表面に密に接触するとともに、自身の厚みによって角部5を覆う箇所の表面を当該角部5よりも鈍角にする。このとき、インナージャケット1は、内側に向かって収縮する力によってロボット3に密着するとともに、自身の厚みによって、つまりは、角部5の実際の形状を再現しない程度の厚みによって角部5を覆う箇所の表面を当該角部5よりも鈍角にする。このため、インナージャケット1は、他の部材を要することなくロボット3に容易に固定することができるとともに、アタッチメント4やハンドを取り外すこと無くロボット3に容易に着脱することができる。
【0041】
また、インナージャケット1は、伸縮性を有する材料として、クロロプレンゴムをシート状に成形したゴム材1aの表面に、平織りまたはメリヤス織りしたジャージのような表面生地1bを貼り付けたものを採用している。これにより、角部5の実際の形状を再現しない程度の厚みを容易に確保することができる。このとき、表面生地1bを保護ジャケット2と接触する側にのみ設けたことから、ロボット3と接触する内面側はゴム材1aが露出しており、インナージャケット1の収縮力およびゴム材1aの摩擦抵抗によって、ロボット3の姿勢が変化した場合であってもインナージャケット1がずれたり手先側に寄ってしまったりすることを防止できる。
【0042】
さて、ここまでは伸縮性を有する材料つまりは柔軟な材料で形成したインナージャケット1の例を示したが、硬質性の材料により形成することもできる。例えば、インナージャケット1は、
図5に示すように、例えばプラスチックや金属等の硬質性の材料により、角部5を覆うとともに、角部5に対応する位置の表面が実際の角部5よりも鈍角になるように形成することができる。このような構成によっても、保護ジャケット2の摩耗や角部5に力が集中することによるラミネートの剥離等が防止され、保護ジャケット2が損傷するおそれを低減することができる。
【0043】
実施形態では1つのインナージャケット1を設ける構成を例示したが、1つのロボット3に対して複数箇所にインナージャケット1を設ける構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0044】
図面中、1はインナージャケット(ロボット用のジャケット)、1aはゴム材、1bは表面生地、2は保護ジャケット、3はロボット、5は角部、R2は角部の端部(角部に対応する位置の表面)を示す。