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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】排気還流ガスの還流機構
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/17 20160101AFI20220726BHJP
   F02M 26/50 20160101ALI20220726BHJP
   F02M 26/06 20160101ALI20220726BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20220726BHJP
   F02M 26/05 20160101ALI20220726BHJP
   F02M 31/04 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
F02M26/17
F02M26/50 321
F02M26/06 311
F02M26/06 331
F02M35/10 311E
F02M26/05
F02M35/10 311B
F02M31/04 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018136817
(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公開番号】P2020012449
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】柳川 健介
(72)【発明者】
【氏名】福田 利実
(72)【発明者】
【氏名】村上 隆
(72)【発明者】
【氏名】廣江 健太
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-349355(JP,A)
【文献】特開2010-163937(JP,A)
【文献】特開2004-257306(JP,A)
【文献】特開2015-197078(JP,A)
【文献】特開2009-024692(JP,A)
【文献】特開平09-195860(JP,A)
【文献】特開2011-208601(JP,A)
【文献】特開昭52-137532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/17
F02M 26/50
F02M 26/06
F02M 35/10
F02M 26/05
F02M 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに吸気を送り込む吸気通路と、
前記エンジンから排気を送り出す排気通路と、
前記排気通路から排気の一部を還流ガスとして前記吸気通路に戻す排気還流通路と、
前記吸気通路と前記排気還流通路との接続部近傍及び該接続部よりも該吸気通路の下流側を、吸気のみが流れる第一通路と、吸気と還流ガスの混合ガスが流れる第二通路とに区画する、前記吸気通路の延設方向に沿って形成された区画壁と、
を備え、
前記区画壁はスロットルバルブよりも下流側に位置し、
前記排気還流通路が、過給機の排気タービンの下流側から該過給機のコンプレッサの上流側に還流ガスを戻す低圧排気還流通路であり、
前記接続部における前記排気還流通路の通路断面積は、前記接続部における前記第二通路の通路断面積より大であり、
前記区画壁の前記吸気通路の下流側端部が、前記コンプレッサのインペラに臨むように延設されており、
前記第二通路は、前記コンプレッサの前記インペラの回転中心からオフセットして配置されている
排気還流ガスの還流機構。
【請求項2】
前記吸気通路の前記区画壁を形成した領域において、前記第一通路の通路断面積は、前記第二通路の通路断面積よりも大である
請求項1に記載の排気還流ガスの還流機構。
【請求項3】
前記区画壁の前記吸気通路の上流側端部が、前記接続部よりも上流側まで延設されている
請求項1又は2に記載の排気還流ガスの還流機構。
【請求項4】
前記第二通路が、前記吸気通路の前記接続部側の内面に沿って形成されている
請求項1から3のいずれか1項に記載の排気還流ガスの還流機構。
【請求項5】
前記吸気通路内に、前記第二通路に導入される吸気を加熱する加熱装置が設けられている
請求項1から4のいずれか1項に記載の排気還流ガスの還流機構。
【請求項6】
前記加熱装置は、前記第二通路内に設けられ、該第二通路に導入される吸気のみを加熱する
請求項5に記載の排気還流ガスの還流機構。
【請求項7】
前記区画壁が断熱材を有する
請求項1からのいずれか1項に記載の排気還流ガスの還流機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のエンジンに採用される排気還流ガスの還流機構に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンから排出される排気ガスに含まれる窒素酸化物を低減する等の目的のため、排気ガスの一部を還流ガスとして燃焼室に還流させる還流機構が採用されることがある。この還流機構においては、水分を含んだ高温の還流ガスと低温の吸気が混合されることによって、混合されたガス中の水分が凝縮して凝縮水となることがある。この凝縮水は、エンジンに設けられたセンサ類等の機構に悪影響を与えることがある。
【0003】
例えば、下記特許文献1に係る内燃機関の制御装置においては、吸気通路にその通路断面積を可変とするタンブルコントロールバルブを設け、内燃機関の冷間時に温間時よりも通路断面積が小さくなるように制御を行なっている。このようにすることで、冷間時の吸気通路の流速を大きくして凝縮水を吹き飛ばし、凝縮水の凍結に伴うトラブルを防止している。
【0004】
また、下記特許文献2に係る内燃機関の排気還流装置においては、ターボチャージャーのコンプレッサ(インペラ)を吸気通路と同軸に配置し、この吸気通路と同軸に開口する排気循環通路から還流ガスを導入している。このようにすることで、還流ガス中の水分が凝縮した凝縮水や、この凝縮水が凍結した氷結等の異物が、インペラの周方向速度が相対的に小さい中央部分に衝突するようにし、異物によるインペラの破損等のトラブルを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-163937号公報
【文献】特開2009-24692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す構成においては、内燃機関の冷間時と温間時で吸気通路の通路断面積が異なることから、吸気量に差が生じやすく、内燃機関の燃焼特性が安定しない虞がある。また、凝縮水が下流側に吹き飛ばされるため、その凝縮水によって内燃機関の機構にトラブルが生じる虞がある。また、特許文献2に示す構成においても、特許文献1に示す構成と同様に、吸気通路の下流側に凝縮水等の異物が送られるため、仮にインペラにトラブルが生じなくても、さらにその下流側の機構にトラブルが生じる虞がある。両特許文献に係るこれらの問題は、いずれも凝縮水の発生が不可避であることに起因している。
【0007】
そこで、この発明は、排気還流ガスの還流機構において、凝縮水の発生を予防することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明においては、エンジンに吸気を送り込む吸気通路と、前記エンジンから排気を送り出す排気通路と、前記排気通路から排気の一部を還流ガスとして前記吸気通路に戻す排気還流通路と、前記吸気通路と前記排気還流通路との接続部近傍及び該接続部よりも該吸気通路の下流側を、吸気のみが流れる第一通路と、吸気と還流ガスの混合ガスが流れる第二通路とに区画する、前記吸気通路の延設方向に沿って形成された区画壁と、を備え、前記接続部における前記排気還流通路の通路断面積は、前記接続部における前記第二通路の通路断面積より大である排気還流ガスの還流機構を構成した。
【0009】
前記構成においては、前記吸気通路の前記区画壁を形成した領域において、前記第一通路の通路断面積は、前記第二通路の通路断面積よりも大であるであるのが好ましい。
【0010】
前記各構成においては、前記区画壁の前記吸気通路の上流側端部が、前記接続部よりも上流側まで延設されているのが好ましい。
【0011】
前記各構成においては、前記第二通路が、前記吸気通路の前記接続部側の内面に沿って形成されているのが好ましい。
【0012】
前記各構成においては、前記吸気通路内に、前記第二通路に導入される吸気を加熱する加熱装置を設けることができる。この場合、前記加熱装置は、前記第二通路内に設けられ、該第二通路に導入される吸気のみを加熱するのが好ましい。
【0013】
前記各構成においては、前記排気還流通路が、過給機の排気タービンの下流側から該過給機のコンプレッサの上流側に還流ガスを戻す低圧排気還流通路であるのが好ましい。
【0014】
この構成においては、前記区画壁の前記吸気通路の下流側端部が、前記コンプレッサのインペラに臨むように延設されているのが好ましい。
【0015】
前記各構成においては、前記区画壁が断熱材を有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る排気還流ガスの還流機構においては、吸気をエンジンに導入する吸気通路を区画壁によって、吸気のみが流れる第一通路と、吸気と還流ガスの混合ガスが流れる第二通路とに区画した。このようにすることにより、水分を含んだ高温の還流ガスが、低温の吸気によって大きく冷却されて、還流ガスに含まれる水分が凝縮して凝縮水が生じるのを予防することができる。このため、凝縮水に起因するエンジンの不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明に係る排気還流ガスの還流機構を備えたエンジンの全体図である。
図2図1に示す排気還流ガスの還流機構(第一例)を示す図である。
図3図2に示す区画壁の他例を示す図である。
図4図1に示す排気還流ガスの還流機構の他例(第二例)を示す図である。
図5図1に示す排気還流ガスの還流機構の他例(第三例)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明に係る排気還流ガスの還流機構(以下、単に還流機構と称する。)を備えたエンジン1の全体図を図1に、排気還流ガスの還流機構(第一例)を図2に示す。このエンジン1は、自動車用のエンジン1であって、ピストン2を収容したエンジン1の気筒(吸気ポート3)に吸気を送り込む吸気通路4、エンジンの気筒(排気ポート5)から排気を送り出す排気通路6、燃料噴射装置7等を備えている。吸気ポート3及び排気ポート5は、それぞれバルブによって開閉される。
【0019】
吸気通路4には、吸気ポート3から上流側に向かって、吸気通路4の通路断面積を調節する第一スロットルバルブ8、吸気通路4を流れる吸気を冷却するインタークーラ9、過給機10のコンプレッサ11、吸気通路4の通路断面積を調節する第二スロットルバルブ12、吸気(外気)の温度と湿度をモニタする温湿度センサ13、及び、エアクリーナを収容したエアクリーナケース14が設けられている。
【0020】
排気通路6には、排気ポート5から下流側に向かって、過給機10のタービン15、排気中の窒素酸化物等を除去する触媒等を備えた排気浄化部16、及び、排気管17が設けられている。
【0021】
排気通路6のタービン15と排気ポート5との中途部分と、吸気通路4の吸気ポート3と第一スロットルバルブ8との中途部分は、高圧排気ガス再循環装置を構成する高圧排気還流通路18によって連通している。高圧排気還流通路18を介して、エンジン1から排出される排気ガスの一部が、高圧還流ガスとして吸気通路4に還流する。
【0022】
高圧排気還流通路18には、高圧排気還流弁19が設けられている。高圧排気還流弁19の開閉と、第一スロットルバルブ8の開閉に伴う吸気通路4内の圧力状態に応じて、高圧還流ガスが吸気通路4内の吸気に合流する。
【0023】
また、排気通路6の排気浄化部16の下流側に位置する排気管17と、吸気通路4のコンプレッサ11と第二スロットルバルブ12との中途部分は、低圧排気ガス再循環装置を構成する低圧排気還流通路20によって連通している。低圧排気還流通路20を介して、エンジン1から排出される排気の一部が、低圧還流ガスとして吸気通路4のコンプレッサ11の上流側に還流する。
【0024】
低圧排気ガス再循環装置の低圧排気還流通路20には、排気管17との接続部から下流側に向かって、低圧還流ガスを冷却する還流ガスクーラ21、低圧排気還流通路20内の低圧還流ガスの流れを制御する低圧排気還流弁22、及び、低圧還流ガスの温度をモニタする温度センサ23が設けられている。
【0025】
還流ガスクーラ21として、この実施形態では冷媒として冷却水を用いた水冷式冷却装置を採用しているが、冷媒として空気を用いた空冷式冷却装置を採用することもできる。低圧排気還流弁22の開閉と、第二スロットルバルブ12の開閉に伴う吸気通路4内の圧力状態に応じて、低圧還流ガスが吸気通路4内の吸気に合流する。
【0026】
上記の高圧排気ガス再循環装置は、一部の過給域において吸気圧力が排気圧力よりも高くなり、その過給域で高圧還流ガスを吸気通路に還流できないことがある。これに対し、低圧排気ガス再循環装置は、その過給域においても低圧還流ガスを吸気通路に還流することができる。
【0027】
図2に示すように、排気還流ガスの還流機構は、低圧排気還流通路20側に設けられている。以下、低圧還流ガス、低圧排気還流通路20の「低圧」を省略して単に還流ガス、排気還流通路20と称する。この還流機構は、吸気通路4、排気通路6、排気還流通路20、及び、区画壁24を主要な構成要素としている。
【0028】
区画壁24は、吸気通路4を、吸気のみが流れる第一通路25と、吸気と還流ガスの混合ガスが流れる第二通路26とに区画する壁である。この区画壁24の吸気通路4の上流側端部は、吸気通路4と排気還流通路20の接続部よりも上流側まで延設されている。このようにすると、排気還流通路20から吸気通路4に向かって流れる還流ガスを、確実に第二通路26側に導くことができる。
【0029】
区画壁24の吸気通路4の下流側端部は、コンプレッサ11のインペラに臨むように延設されている。区画壁24の下流側端部とインペラとの間の隙間は、両者が接触しない限りにおいて狭いほど好ましい。このようにすると、第一通路25を流れる吸気と、第二通路26を流れる混合ガスがコンプレッサ11に導入されるまで混ざらない。このため、吸気と混ざることによる混合ガスの温度低下を極力抑制して、混合ガス中に凝縮水が生じるのを予防することができる。
【0030】
区画壁24は、吸気通路4の延設方向(吸気通路4内の吸気の流れ方向)に沿って形成されている。このため、この区画壁24の形成に伴って、吸気抵抗が増大する問題は生じない。
【0031】
第二通路26は、吸気通路4内の吸気通路4と排気還流通路20の接続部側の内面に沿って形成されている。このようにすると、排気還流通路20を流れる還流ガスを第二通路26に導くための管路を別途形成する必要がないため、吸気通路4の吸気の流動抵抗を極力小さくすることができる。
【0032】
図2に示す還流機構においては、吸気通路4と排気還流通路20との接続部における排気還流通路20の通路断面積に対する、この接続部における第二通路26の通路断面積の割合を50%としている。このように、両通路断面積の割合を規定することにより、還流ガスに起因する凝縮水の発生を予防している。ここでいう、「通路断面積」とは、吸気通路4や排気還流通路20のガス流れ方向に対する垂直な面で各通路4、20を切断したときの、各通路4、20の内周面よりも内側の面積のことを指す(後述する第二通路26の通路断面積も同様である。)。
【0033】
ここで、上記のように両通路断面積の割合を規定したことによる凝縮水の発生予防効果について説明する。
【0034】
水分を含んだ高温のガスを冷却すると、そのガスの温度が露点温度に達したときに凝縮水が発生する。還流ガスと吸気を混合した混合ガスにおいては、還流ガスと吸気のそれぞれに含まれる水分量の総量(混合ガスの湿度)に対し、混合ガスが露点温度以下となったときに凝縮水が発生する。
【0035】
一般的な排気ガス再循環装置においては、還流ガスと吸気の混合ガス中の還流ガスの濃度が10~15%程度となるように、還流ガスが吸気通路4に導入されることが多い。この還流ガスの温度は、例えば100℃程度であり、吸気の温度は、冬季に例えば0℃程度となる。この還流ガスと吸気を還流ガス濃度が上記濃度(10~15%)となるように混合すると、その混合割合に対応して混合ガスの温度が20~30℃程度となる。一般的に、混合ガスの露点温度は50℃程度であることが多く、上記のように混合ガスの温度が20~30℃の場合、凝縮水が発生する虞がある。
【0036】
そこで、上記のように、排気還流通路20の通路断面積に対する、第二通路26の通路断面積の割合を50%とすると、還流ガスと吸気との混合割合が2:1程度となり、例えば約100℃の還流ガスと、約0℃の吸気を混合しても、混合ガスの温度は少なくとも50℃を上回り、凝縮水の発生を確実に予防することができる。
【0037】
この排気還流通路20と第二通路26の両通路断面積は、エンジン1の特性(排気温度等)、排気還流通路20と吸気通路4のガス流量、車両が使用される環境(寒冷地かどうか)等を考慮して適宜変更することが可能であるが、吸気通路4と排気還流通路20との接続部における排気還流通路20の通路断面積は、前記接続部における第二通路26の通路断面積より大であり、吸気通路4の区画壁24を形成した領域において、第一通路25の通路断面積は、第二通路26の通路断面積よりも大である。
【0038】
具体的には、排気還流通路20の通路断面積に対する、第二通路26の通路断面積の割合を10%以上100%未満の範囲内、さらに、20%以上90%以下の範囲内、さらに、30%以上80%以下の範囲内とすると、凝縮水の発生予防の点でより好ましい。
【0039】
また、図2に示す還流機構においては、区画壁24を形成した領域における、吸気通路4の通路断面積に対する、第二通路26の通路断面積の割合を20%とし、吸気通路4を流れる吸気の一部のみを第二通路26に流している。このため、還流ガスと吸気の混合に伴って混合ガスの温度が露点温度以下となって凝縮水が発生するのをより確実に予防することができる。
【0040】
吸気通路4と第二通路26の両通路断面積の割合は、上記と同様に、エンジン1の特性等を考慮して適宜変更することが可能であるが、10%以上40%以下の範囲内、さらに、15%以上30%以下の範囲内とするのが、凝縮水の発生予防の点でより好ましい。
【0041】
図2に示す還流機構においては、区画壁24を吸気通路4の内壁に固定された固定壁としたが、この区画壁24を図2中に矢印Mで示す方向に移動可能とした可動壁とすることもできる。このようにすると、還流ガスや吸気の温度や湿度に対応して還流ガスと吸気の混合割合を適宜変更する、より具体的には、例えば吸気温度が低くなるほど第二通路26の通路断面積を小さくすることにより、混合ガスの温度が露点温度以下となって凝縮水が発生するのを一層確実に予防することができる。
【0042】
区画壁24の素材は適宜選択することができるが、断熱材を用いた断熱壁とすることができる。このようにすると、第一通路25を流れる低温の吸気によって、第二通路26を流れる混合ガスが冷却されるのを防止して、凝縮水の発生を一層確実に予防することができる。
【0043】
区画壁24の素材に断熱材を採用する場合、図3に示すように、区画壁24の第一通路25側を断熱層27とする一方で、第二通路26側を金属等の熱伝導性の高い素材を採用した伝熱層28とすることができる。このようにすると、第一通路25を流れる低温の吸気によって、第二通路26を流れる混合ガスの温度が露点温度以下となって凝縮水が発生するのをさらに確実に予防することができる。さらに、この伝熱層28にヒータ等の加熱装置(図示せず)を併設した構成とすることもできる。
【0044】
図1に示す排気還流ガスの還流機構の他例(第二例)を図4に示す。この還流機構は、図2に示した還流機構と基本構成は共通するが、第二通路26内に、この第二通路26に導入される吸気のみを加熱する加熱装置29が設けられている点で相違する。この実施例では、加熱装置29として電熱式のヒータを採用している。このように、第二通路26を流れる吸気を加熱することにより、還流ガスと吸気を混合した混合ガスの温度が露点温度以下となって凝縮水が発生するのを一層確実に予防することができる。
【0045】
加熱装置29による加熱量は一定としてもよいが、吸気通路4に設けられた温湿度センサ13、及び、排気還流通路20に設けられた温度センサ23でのモニタ結果に基づいて、吸気温度が低いほど加熱量を大きくする等のように、加熱量を変更可能とした構成とすることもできる。また、加熱装置29は電熱式のヒータに限定されず、例えば、エンジン1によって温められた冷却水が流れる冷却水配管を第二通路26内に通した構成とすることもできる。
【0046】
図1に示す排気還流ガスの還流機構の他例(第三例)を図5に示す。この還流機構は、図4に示した還流機構に対し、吸気通路4の上流側にさらに加熱装置30を設けたものである。この実施例では、いずれの加熱装置29、30も電熱式のヒータを採用している。このように、吸気通路4を流れる吸気を加熱することにより、還流ガスと吸気を混合した混合ガスの温度が露点温度以下となって凝縮水が発生するのを一層確実に予防することができる。
【0047】
両加熱装置29、30による加熱量は、図4に示した第二例の構成と同様に一定としてもよいが、吸気温度が低いほど加熱量を大きくする等のように、加熱量を変更可能とした構成とすることもできる。また、両加熱装置29、30が電熱式のヒータに限定されない点についても同様である。
【0048】
上記において説明した排気還流ガスの還流機構の構成は、この発明を説明するための単なる例示に過ぎず、排気還流ガスの還流機構において、凝縮水の発生を予防する、というこの発明の課題を解決し得る限りにおいて、上記の構成要素に適宜変更を加えることができる。
【0049】
例えば、上記の各実施例においては、排気還流ガスの還流機構を、低圧排気還流通路20側に設けた構成について示したが、高圧排気還流通路18側に設けた構成とすることもできる。高圧排気ガス再循環装置に、センサ類のように水の付着によってトラブルが生じ得る虞がある機器がある場合には、凝縮水の発生を予防する必要性があるためである。
【符号の説明】
【0050】
1 エンジン
2 ピストン
3 吸気ポート
4 吸気通路
5 排気ポート
6 排気通路
7 燃料噴射装置
8 第一スロットルバルブ
9 インタークーラ
10 過給機
11 コンプレッサ
12 第二スロットルバルブ
13 温湿度センサ
14 エアクリーナケース
15 タービン
16 排気浄化部
17 排気管
18 高圧排気還流通路
19 高圧排気還流弁
20 低圧排気還流通路(排気還流通路)
21 還流ガスクーラ
22 低圧排気還流弁
23 温度センサ
24 区画壁
25 第一通路
26 第二通路
27 断熱層
28 伝熱層
29、30 加熱装置
図1
図2
図3
図4
図5