(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】多重円板型脱水機
(51)【国際特許分類】
B01D 33/00 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
B01D33/00 B
(21)【出願番号】P 2018144761
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000150844
【氏名又は名称】株式会社鶴見製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】中野 剛
(72)【発明者】
【氏名】千賀 達也
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-135017(JP,A)
【文献】特開2008-012442(JP,A)
【文献】実開昭61-130308(JP,U)
【文献】特開2002-126799(JP,A)
【文献】特開2016-187760(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0066280(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 33/00-33/82
C02F 11/121
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、前記回転軸の軸方向に沿って積層された複数のろ片を有し、前記ろ片間にろ過溝が形成された積層状回転ろ体とを含み、上下2列で隣接して設けられる複数の回転体と、
前記回転軸の軸方向において、前記積層状回転ろ体を挟むように設けられる一対の
第1側板を含む処理槽と、
前記ろ片の最大直径よりも大きな直径を有し、前記回転体とともに回転可能なように前記
第1側板と前記積層状回転ろ体との間に設けられる円板部材と、
上下列の前記複数の回転体のうち最下流の前記積層状回転ろ体に詰まった固形物を掻き取るように構成されているスクレイパーと、
前記処理槽の供給口が設けられた第2側板の内表面と下列の最上流の前記回転体との間に設けられているシール部材と、を備え、
前記円板部材は、
下列の前記複数の回転体のうち被処理物の固体成分を送る方向の最上流の回転体および最下流の回転体には設けられておらず、最上流の前記回転体と最下流の前記回転体との間に位置する前記回転体に設けられているとともに、上列の前記複数の回転体のうち
最下流の前記回転体には設けられておらず、最下流の前記回転体よりも上流側に位置する前記回転体に設けられる、多重円板型脱水機。
【請求項2】
前記円板部材は、前記回転軸の軸方向において、前記積層状回転ろ体の両側にそれぞれ設けられている、請求項1に記載の多重円板型脱水機。
【請求項3】
前記ろ片は、複数の小径円板ろ片と、前記小径円板ろ片よりも大きな直径を有する複数の中径円板ろ片と、前記中径円板ろ片よりも大きな直径を有する複数の大径円板ろ片とを有し、
前記円板部材は、前記大径円板ろ片よりも大きな直径を有している、請求項1または2に記載の多重円板型脱水機。
【請求項4】
前記回転体は、被処理物の供給口側から排出口側に向けて上下2列で複数設けられており、軸方向から見て、列ごとに互いに重なり合うように隣接して配置され、
前記円板部材は、上下2列の列ごとに隣接する前記複数の回転体に対して、少なくとも、1つおきに設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の多重円板型脱水機。
【請求項5】
前記
第1側板と前記円板部材との間には、前記
第1側板と前記円板部材との両方に接触し、前記円板部材および前記ろ片よりも小さな直径を有するスペーサ部材が設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の多重円板型脱水機。
【請求項6】
前記円板部材の半径は、隣接する前記回転体の回転中心軸線間の距離から前記回転軸の半径を差し引いた値よりも小さい、請求項1~
5のいずれか1項に記載の多重円板型脱水機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多重円板型脱水機に関し、特に、複数の積層状回転ろ体を備える多重円板型脱水機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層状回転ろ体を備える多重円板型脱水機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、回転軸および積層状回転ろ体を含む複数の回転体と、回転軸の軸方向において、積層状回転ろ体を挟むように設けられる一対の側板を含む処理槽とを備える多重円板型脱水機が開示されている。多重円板型脱水機は、処理槽内で、積層状回転ろ体により汚泥(被処理物)の脱水を行い排出口から水分を除去された脱水汚泥(脱水ケーキ)を排出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような多重円板型脱水機では、すべり性の悪い被処理物の脱水処理を行う場合、被処理物が処理槽の一対の側板と接触することにより、回転軸の軸方向の外側の被処理物に対して摩擦力(ブレーキ)が加わることに起因して、軸方向における中央部分と比較して、一対の側板の近傍部分では、排出口からの被処理物(脱水ケーキ)の排出量が少なくなるという不都合がある。このため、被処理物が排出口の軸方向において均等に排出されないため、排出口から被処理物が効率よく排出されないという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、排出口から被処理物を効率よく排出することが可能な多重円板型脱水機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の局面による多重円板型脱水機は、回転軸と、回転軸の軸方向に沿って積層された複数のろ片を有し、ろ片間にろ過溝が形成された積層状回転ろ体とを含み、上下2列で隣接して設けられる複数の回転体と、回転軸の軸方向において、積層状回転ろ体を挟むように設けられる一対の第1側板を含む処理槽と、ろ片の最大直径よりも大きな直径を有し、回転体とともに回転可能なように第1側板と積層状回転ろ体との間に設けられる円板部材と、上下列の複数の回転体のうち最下流の積層状回転ろ体に詰まった固形物を掻き取るように構成されているスクレイパーと、処理槽の供給口が設けられた第2側板の内表面と下列の最上流の回転体との間に設けられているシール部材と、を備え、円板部材は、下列の複数の回転体のうち被処理物の固体成分を送る方向の最上流の回転体および最下流の回転体には設けられておらず、最上流の回転体と最下流の回転体との間に位置する回転体に設けられているとともに、上列の複数の回転体のうち最下流の回転体には設けられておらず、最下流の回転体よりも上流側に位置する回転体に設けられる。
【0008】
この発明の一の局面による多重円板型脱水機では、上記のように、円板部材が回転体とともに回転することにより、第1側板付近の被処理物を排出口に向けて送ることができる。また、円板部材はろ片の最大直径よりも大きな直径を有するので、円板部材はろ片よりも被処理物に対して大きく食い込いこませて被処理物に対する推進力を生む面積を広く確保することができ、円板部材が配置される第1側板近傍において、ろ片よりも大きい推進力を被処理物に与えることができる。以上の結果、被処理物に対して摩擦力(ブレーキ)が大きく生じる回転軸の軸方向の外側において、被処理物に大きい推進力を与えることにより、回転軸の軸方向における被処理物の送り量を均等化して排出口から排出することができるので、排出口から被処理物(脱水ケーキ)を効率よく排出することができる。ここで、一般的な多重円板型脱水機では、上下列の最下流の回転体にはそれぞれスクレイパー(回転体から固形物を掻き取る部材)が設けられ、下列の最上流の回転体にはシール部材(回転体と処理槽の内表面との間の隙間を埋める部材)が設けられている。このような多重円板型脱水機において、上記のように構成すれば、円板部材と、スクレイパーおよびシール部材とが互いに干渉するのを回避することができる。
【0009】
上記一の局面による多重円板型脱水機において、好ましくは、円板部材は、回転軸の軸方向において、積層状回転ろ体の両側にそれぞれ設けられている。このように構成すれば、積層状回転ろ体の両側で、側板付近の被処理物を効果的に排出口に向けて送ることができる。その結果、排出口から被処理物(脱水ケーキ)をより効率よく排出することができる。
【0010】
上記一の局面による多重円板型脱水機において、好ましくは、ろ片は、複数の小径円板ろ片と、小径円板ろ片よりも大きな直径を有する複数の中径円板ろ片と、中径円板ろ片よりも大きな直径を有する複数の大径円板ろ片とを有し、円板部材は、大径円板ろ片よりも大きな直径を有している。このように構成すれば、円板部材は大径円板ろ片の直径よりも大きな直径を有するので、円板部材は大径円板ろ片よりも被処理物に対して大きく食い込いこませて被処理物に対する推進力を生む面積を広く確保することができ、円板部材が配置される側板近傍において、大径円板ろ片よりも大きい力で被処理物を搬送することができる。これにより、被処理物に対して摩擦力(ブレーキ)が大きく生じる回転軸の軸方向の外側において、被処理物に大きい推進力を与えることができるので、排出口から被処理物(脱水ケーキ)をより効率よく排出することができる。
【0011】
上記一の局面による多重円板型脱水機において、好ましくは、回転体は、被処理物の供給口側から排出口側に向けて上下2列で複数設けられており、軸方向から見て、列ごとに互いに重なり合うように隣接して配置され、円板部材は、上下2列の列ごとに隣接する複数の回転体に対して、少なくとも、1つおきに設けられている。このように構成すれば、複数の円板部材を、回転軸の軸方向に直交する方向において互いに干渉することなく配置することができる。
【0012】
上記一の局面による多重円板型脱水機において、好ましくは、第1側板と円板部材との間には、第1側板と円板部材との両方に接触し、円板部材およびろ片よりも小さな直径を有するスペーサ部材が設けられている。このように構成すれば、スペーサ部材を設けることなく第1側板(第1側板の内表面)と円板部材とを直接接触させた場合の回転体に掛かる抵抗(第1側板と円板部材との間の摩擦により回転体に掛かる力)と比較して、回転体に掛かる抵抗(円板部材とスペーサ部材との間、または、第1側板とスペーサ部材との間の摩擦により回転体に掛かる力)を低減することができる。
【0014】
上記一の局面による多重円板型脱水機において、好ましくは、円板部材の半径は、隣接する回転体の回転中心軸線間の距離から回転軸の半径を差し引いた値よりも小さい。このように構成すれば、円板部材が、隣接する回転体の回転軸に干渉するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記のように、排出口から被処理物を効率よく排出することが可能な多重円板型脱水機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による多重円板型脱水機を斜め上方から見た断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による多重円板型脱水機を側方から見た断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による多重円板型脱水機の積層状回転ろ体と円板部材と一対の側板とを拡大して示した断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による多重円板型脱水機の積層状回転ろ体および円板部材の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
(多重円板型脱水機の構成)
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態による多重円板型脱水機100について説明する。
【0019】
図1に示す多重円板型脱水機100は、供給された被処理物(原液)を、固体成分と液体成分とに分離するように構成されている。また、多重円板型脱水機100は、分離した液体成分を処理槽1の下部に設けられたろ液貯留部(図示せず)に貯留するように構成されている。
【0020】
多重円板型脱水機100は、
図1に示すように、処理槽1と、複数の回転体2と、シール部材3と、スクレイパー(掻き取り板)4と、排出シュート5と、円板部材6とを備えている。
【0021】
処理槽1は、腐食しにくい材料により形成されている。たとえば、処理槽1は、ステンレス材料により形成されている。処理槽1は、直方体形状を有している。処理槽1は、互いに水平方向に対向する一対の側板10と、一対の側板11(
図1および
図2では、一対の側板11のうち一方のみを示している)とを含んでいる。一対の側板10の一方には、被処理物(原液)の供給口10aが設けられ、一対の側板10の他方には、被処理物(脱水ケーキ)の排出口10bが設けられている。
【0022】
以下では、水平方向のうち一対の側板10が並ぶ方向(供給口10aと排出口10bとが並ぶ方向)をX方向とし、水平方向のうちX方向に直交する方向(一対の側板11が並ぶ方向)をY方向とする。なお、Y方向は、後述する回転軸21の軸方向でもある。X方向のうち、供給口10aから排出口10bに向かう方向をX1方向とし、その逆方向をX2方向とする。また、上下方向をZ方向とする。
【0023】
回転体2は、被処理物の供給口10a側から排出口10b側に向けて上下2列で複数設けられている。具体的には、回転体2は、下列に8個、上列に6個の合計14個が配置されている。
【0024】
図2に示すように、回転体2は、後述する回転軸21の軸方向(Y方向)から見て、列ごとに互いに重なり合うように隣接して配置されている。上列の回転体2と、下列の回転体2との間の上下(Z方向)の間隔は、供給口10a側から排出口10b側(X2方向)に向かうにしたがって狭くなるように構成されている。上列および下列の回転体2は、それぞれ、供給口10a側から排出口10b側(X2方向)に向かうにつれて斜め上方に傾斜するように配置されている。
【0025】
また、下列の複数の回転体2は、所定の間隔を隔てて配置されており、互いに同じ方向(
図2において時計回り)に回転することにより、固体成分を搬送するように構成されている。また、上列の複数の回転体2は、所定の間隔を隔てて配置されており、互いに同じ方向(
図2において反時計回り)に回転することにより、固体成分を搬送するように構成されている。
【0026】
回転体2は、積層状回転ろ体20と、Y方向に延びる回転軸21とを含んでいる。積層状回転ろ体20と回転軸21とには、それぞれ、キー溝が設けられている。積層状回転ろ体20と回転軸21とは、キー溝に嵌め込まれるキー(係合部材)により互いに同期して回転するように構成されている。回転軸21は、一対の側板11を貫通し、処理槽1の外側で軸受により支持されている。回転軸21の端部には、回転体2に駆動力(トルク)を付与するモータ(図示せず)が設けられている。
【0027】
図3に示すように、積層状回転ろ体20は、複数の中径円板ろ片22と、複数の小径円板ろ片23と、複数の大径円板ろ片24と含んでいる。中径円板ろ片22は、小径円板ろ片23の直径d1よりも大きな直径d2を有している(d1<d2)。また、大径円板ろ片24は、中径円板ろ片22の直径d2よりも大きな直径d3を有している(d2<d3)。中径円板ろ片22は、樹脂材料により形成されている。小径円板ろ片23および大径円板ろ片24は、金属材料により形成されている。なお、中径円板ろ片22、小径円板ろ片23および大径円板ろ片24は、それぞれ、特許請求の範囲の「ろ片」の一例である。
【0028】
積層状回転ろ体20の中で最も大きな直径を有する大径円板ろ片24が被処理物に食い込んだ状態で、回転軸21の回転と同期して回転することにより、被処理物を排出口10bへ搬送することができる。
【0029】
積層状回転ろ体20は、Y方向に互いに接触状態で並ぶ複数の中径円板ろ片22間に、大径円板ろ片24および小径円板ろ片23を交互に配置(積層)することにより構成されている。積層状回転ろ体20は、回転軸21の軸方向(Y方向)に沿って積層されたろ片(中径円板ろ片22、小径円板ろ片23、大径円板ろ片24)間にろ過溝(隙間)Gが形成されている。
【0030】
詳細には、
図4に示すように、中径円板ろ片22には、一方表面および他方表面に、それぞれ、Y方向に突出する複数の凸部22aおよび複数の凸部22bが設けられている。複数の凸部22aおよび複数の凸部22bは、それぞれ、中径円板ろ片22の周方向に略等角度間隔(90度間隔)で設けられている。なお、凸部22aの突出量は、凸部22bの突出量と比較して十分に大きい。隣接する中径円板ろ片22間には、凸部22aおよび凸部22bが互いに当接して小径円板ろ片23または大径円板ろ片24が配置される隙間が形成されている。そして、Y方向において、中径円板ろ片22と小径円板ろ片23との間、および、中径円板ろ片22と大径円板ろ片24との間には、それぞれ、ろ液を排出するろ過溝G(隙間)(
図3参照)が形成されている。
【0031】
小径円板ろ片23には、凸部22aおよび凸部22bに係合する複数の切欠部23aが外周部に設けられている。複数の切欠部23aは、小径円板ろ片23の周方向に略等角度間隔(90度間隔)で設けられている。小径円板ろ片23の厚みは、凸部22aの突出量よりも小さい。このため、小径円板ろ片23は、凸部22aおよび凸部22bに係合した状態で、回転軸21の軸方向(Y方向)に揺動可能に構成されている。
【0032】
大径円板ろ片24には、凸部22aおよび凸部22bに嵌合する複数の貫通穴24aが設けられている。複数の貫通穴24aは、大径円板ろ片24の周方向に略等角度間隔(90度間隔)で設けられている。大径円板ろ片24の厚みは、凸部22aの突出量よりも小さい。このため、大径円板ろ片24は、凸部22aおよび凸部22bに係合した状態で、回転軸21の軸方向(Y方向)に揺動可能に構成されている。大径円板ろ片24は、小径円板ろ片23と略同じ厚みを有している。
【0033】
図2に示すように、シール部材3は、処理槽1の供給口10aが設けられた側板10の内表面と、下列の最上流の回転体2との間の隙間を埋めるように設けられている。このシール部材3により、多重円板型脱水機100は、供給口10aから供給された被処理物(固分を多く含む被処理物)が、そのまま、ろ液貯留部(図示せず)に流出するのを防止している。
【0034】
スクレイパー4は、処理槽1の排出口10bが設けられた側板10と下列の最下流の回転体2との間、および、処理槽1の排出口10bが設けられた側板10と上列の最下流の回転体2との間に、それぞれ設けられている。スクレイパー4は、最下流の積層状回転ろ体20に詰まった固形物を掻き取るように構成されている。
【0035】
排出シュート5は、排出口10bに設けられ、処理槽1から排出された被処理物(脱水ケーキ)の排出経路を構成している。排出シュート5は、処理槽1側から斜め下方に傾斜しており、ホッパー(図示せず)などに被処理物(脱水ケーキ)を送る(導く)ように構成されている。排出シュート5には、排出口10bから排出された被処理物(脱水ケーキ)を加圧するためのフラッパー51およびフラッパー加圧ネジ52が設けられている。
【0036】
(円板部材の構成)
図4に示すように、円板部材6は、小径円板ろ片23および大径円板ろ片24と同様に金属材料により形成されている。円板部材6は、Y方向を厚み方向とする板状の円環形状を有している。円板部材6には、回転軸21が挿通されるように構成されている。円板部材6には、キー溝6aが複数(4個)設けられている。円板部材6は、キー溝6a(4個のうちのいずれか1個のキー溝)に嵌め込まれるキー(係合部材)により回転軸21(積層状回転ろ体20)と同期して、回転軸21とともに回転可能なように構成されている。
【0037】
図3に示すように、円板部材6は、ろ片(中径円板ろ片22、小径円板ろ片23、大径円板ろ片24)の最大直径よりも大きな直径を有している。すなわち、円板部材6は、大径円板ろ片24の直径d3よりも大きな直径dを有している(d3<d)。一例ではあるが、中径円板ろ片22の直径が106mm、大径円板ろ片24の直径が129mm、隣接する回転体2の回転軸21間隔(回転軸21の外表面と、隣接する他の回転軸21の外表面との間の間隔)が106mmである場合に、円板部材6の直径は最大で156mmとなる。円板部材6は、小径円板ろ片23および大径円板ろ片24と略同じ厚みを有している。
【0038】
円板部材6は、大径円板ろ片24よりも大きい直径を有しているため、被処理物に対して大径円板ろ片よりも大きく食い込ませて、被処理物に対する推進力を生む面積を広く確保することができる。その結果、円板部材6は大径円板ろ片24よりも大きい力で被処理物を搬送することができる。
【0039】
円板部材6の半径(d/2)は、隣接する2個の回転体2の回転中心軸線α間の距離D(
図2参照)から回転軸21の半径R(
図2参照)を差し引いた値よりも小さい(d/2<D-R)。詳細には、円板部材6の半径は、距離Dから半径Rを差し引いた値から、さらに、回転軸21のキー溝に嵌め込まれるキー(係合部材)の大きさを差し引いた値と略同じ(キー(係合部材)の大きさを差し引いた値よりも僅かに小さい値)である。
【0040】
円板部材6は、積層状回転ろ体20と側板11との間に設けられている。円板部材6は、回転軸21の軸方向(Y方向)において、積層状回転ろ体20の両側にそれぞれ設けられている。円板部材6は、中径円板ろ片22の凸部22aまたは凸部22bの端面に接触した状態で設けられている。円板部材6は、上下2列の列ごとに互いに重なり合うように隣接する複数の回転体2に対して、1つおきに設けられている。
【0041】
ただし、円板部材6は、下列の複数の回転体2のうち被処理物の固体成分を送る方向の最上流の回転体2と最下流の回転体2との間に位置する回転体2に設けられている。すなわち、円板部材6は、下列の複数の回転体2のうち最上流および最下流の回転体2には設けられていない。これは、下列の回転体2に設けられる円板部材6と、シール部材3(
図2参照)およびスクレイパー4(
図2参照)とが干渉するのを回避するためである。
【0042】
また、円板部材6は、上列の複数の回転体2のうち最下流の回転体2よりも上流側に位置する回転体2に設けられている。すなわち、円板部材6は、上列の複数の回転体2のうち最下流の回転体2には設けられていない。これは、上列の回転体2に設けられる円板部材6と、スクレイパー4とが干渉するのを回避するためである。
【0043】
具体的には、円板部材6は、上列の複数(6個)の回転体2のうち最下流側から数えて2番目、4番目、6番目の回転体2にそれぞれ設けられている。また、円板部材6は、下列の複数(8個)の回転体2のうち最下流側から数えて2番目、4番目、6番目の回転体2にそれぞれ設けられている。なお、多重円板型脱水機100に設けられている複数の円板部材6は、互いに同一の直径を有している。
【0044】
側板11と円板部材6との間には、側板11と円板部材6との両方に接触し、円板部材6(直径d)およびろ片(小径円板ろ片23の直径d1、中径円板ろ片22の直径d2、大径円板ろ片24の直径d3)よりも小さな直径d0を有する円環形状のスペーサ部材7が設けられている(d0<d1<d2<d3)。
【0045】
スペーサ部材7は、円板部材6と略同じ厚み、または、円板部材6よりも小さな厚みを有している。すなわち、スペーサ部材7を設けることで、円板部材6と側板11との間に被処理物が侵入しやすくなることがない程度の所定の厚みを、スペーサ部材7は有している。
【0046】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0047】
本実施形態では、上記のように、円板部材6が回転体2とともに回転することにより、側板11付近の被処理物を排出口10bに向けて送ることができる。また、円板部材6はろ片(中径円板ろ片22、小径円板ろ片23、大径円板ろ片24)の最大直径よりも大きな直径を有するので、円板部材6はろ片よりも被処理物に対して大きく食い込いこませて被処理物に対する推進力を生む面積を広く確保することができ、円板部材6が配置される側板11近傍において、ろ片よりも大きい推進力を被処理物に与えることができる。以上の結果、被処理物に対して摩擦力(ブレーキ)が大きく生じる回転軸21の軸方向の外側において、被処理物に大きい推進力を与えることにより、回転軸21の軸方向における被処理物の送り量を均等化して排出口10bから排出することができるので、排出口10bから被処理物(脱水ケーキ)を効率よく排出することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、円板部材6は、回転軸21の軸方向において、積層状回転ろ体20の両側にそれぞれ設けられている。これにより、積層状回転ろ体20の両側で、側板11付近の被処理物を効果的に排出口10bに向けて送ることができる。その結果、排出口10bから被処理物(脱水ケーキ)をより効率よく排出することができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、ろ片は、複数の小径円板ろ片23と、小径円板ろ片23よりも大きな直径を有する複数の中径円板ろ片22と、中径円板ろ片22よりも大きな直径を有する複数の大径円板ろ片24とを有し、円板部材6は、大径円板ろ片24よりも大きな直径を有している。これにより、円板部材6は大径円板ろ片24の直径よりも大きな直径を有するので、円板部材6は大径円板ろ片24よりも被処理物に対して大きく食い込いこませて被処理物に対する推進力を生む面積を広く確保することができ、円板部材6が配置される側板11近傍において、大径円板ろ片24よりも大きい力で被処理物を搬送することができる。その結果、被処理物に対して摩擦力(ブレーキ)が大きく生じる回転軸21の軸方向の外側において、被処理物に大きい推進力を与えることができるので、排出口10bから被処理物(脱水ケーキ)をより効率よく排出することができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、回転体2は、被処理物の供給口10a側から排出口10b側に向けて上下2列で複数設けられており、軸方向から見て、列ごとに互いに重なり合うように隣接して配置され、円板部材6は、上下2列の列ごとに隣接する複数の回転体2に対して、少なくとも、1つおきに設けられている。これにより、複数の円板部材6を、回転軸21の軸方向に直交する方向において互いに干渉することなく配置することができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、側板11と円板部材6との間には、側板11と円板部材6との両方に接触し、円板部材6および小径円板ろ片23よりも小さな直径を有するスペーサ部材7が設けられている。これにより、スペーサ部材7を設けることなく側板11(側板11の内表面)と円板部材6とを直接接触させた場合の回転体2に掛かる抵抗(側板11と円板部材6との間の摩擦により回転体2に掛かる力)と比較して、回転体2に掛かる抵抗(円板部材6とスペーサ部材7との間、または、側板11とスペーサ部材7との間の摩擦により回転体2に掛かる力)を低減することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、円板部材6は、下列の複数の回転体2のうち被処理物の固体成分を送る方向の最上流の回転体2と最下流の回転体2との間に位置する回転体2に設けられているとともに、上列の複数の回転体2のうち最下流の回転体2よりも上流側に位置する回転体2に設けられている。ここで、一般的な多重円板型脱水機では、上下列の最下流の回転体にはそれぞれスクレイパー(回転体から固形物を掻き取る部材)が設けられ、下列の最上流の回転体にはシール部材(回転体と処理槽の内表面との間の隙間を埋める部材)が設けられている。これにより、円板部材6と、スクレイパー4およびシール部材3とが互いに干渉するのを回避することができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、円板部材6の半径は、隣接する回転体2の回転中心軸線間の距離から回転軸21の半径を差し引いた値よりも小さい。これにより、円板部材6が、隣接する回転体2の回転軸21に干渉するのを防止することができる。
【0054】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0055】
たとえば、上記実施形態では、複数の回転体のうちの一部に円板部材を設けた例を示したが本発明はこれに限らない。本発明では、すべての回転体に円板部材を設けてもよい。また、上記実施形態で示した回転体とは異なる回転体に円板部材を設けてもよい。ただし、上列(下列)の最下流の回転体に円板部材を設ける場合には、円板部材とスクレイパーとの干渉回避のために、スクレイパーの形状変更などが必要となる。また、下列の最上流の回転体に円板部材を設ける場合には、円板部材とシール部材との干渉回避のために、シール部材の形状変更などが必要となる。
【0056】
また、上記実施形態では、回転軸の軸方向において積層状回転ろ体の両側に円板部材を設けた例を示したが本発明はこれに限らない。本発明では、回転軸の軸方向において積層状回転ろ体の内側にも円板部材を設けてもよい。また、回転軸の軸方向において積層状回転ろ体の一方側のみに円板部材を設けてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、上列の回転体の数を6個、下列の回転体の数を8個とした例を示したが本発明はこれに限らない。本発明では、上列の回転体の数を6個以外の複数個としてもよい。また、下列の回転体の数を8個以外の複数個としてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、多重円板型脱水機に設けられている複数の円板部材を、互いに同一の直径を有するように形成した例を示したが本発明はこれに限らない。本発明では、多重円板型脱水機に設けられている複数の円板部材を、互いに異なる直径を有するように形成してもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、円板部材を金属材料により形成した例を示したが本発明はこれに限らない。本発明では、円板部材を樹脂材料などの金属材料以外の材料により形成してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、側板と円板部材との間には、側板と円板部材との両方に接触するスペーサ部材を設けた例を示したが本発明はこれに限らない。本発明では、スペーサ部材を設けることなく、側板と円板部材とを直接接触させた状態で配置してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、円板部材を、小径円板ろ片および大径円板ろ片と略同じ厚みに形成した例を示したが本発明はこれに限らない。本発明では、円板部材を、小径円板ろ片および大径円板ろ片よりも小さい厚みまたは大きい厚みに形成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 処理槽
2 回転体
6 円板部材
7 スペーサ部材
10a 供給口
10b 排出口
11 側板
20 積層状回転ろ体
21 回転軸
22 中径円板ろ片(ろ片)
23 小径円板ろ片(ろ片)
24 大径円板ろ片(ろ片)
100 多重円板型脱水機
G ろ過溝